JP2018043579A - 作業車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】定置作業においても盗難防止状態を維持出来る作業車両を提供する。【解決策】トラクタ100は、エンジン2と、前輪6及び後輪7と、エンジンからの動力を前輪及び後輪に伝達可能なPTO軸回転一定動力伝動装置3Aと、動力の伝達を入り切りする前後進クラッチAと、前後進クラッチAの入り切り動作を制御する走行制御部149と、走行制御部149に対して、前後進クラッチAの入り動作を規制する規制指令の送信と、規制指令による規制内容を解除する解除指令の送信が可能なモバイル端末173と、を備え、走行制御部149は、モバイル端末から送信された規制指令を記録するメモリ部149aを有し、モバイル端末から規制指令と解除指令を走行制御部149に対して指示する第1ルートとは異なる、少なくとも解除指令を走行制御部149に対して指示する第2ルートとを備えた(ステップS109)。【選択図】図10
Description
本発明は、作業車両に関する。
エンジンを搭載する作業車両において、モバイル端末と通信可能な制御部を有し、モバイル端末からのアクセスにより、盗難防止状態にある作業車両のエンジンの始動制限を解除する技術が公知である(特許文献1)。
一方、上記作業車両においては、例えば、木材破砕機などの定置型作業機を装着して、車両自体は走行させずにエンジンの動力のみを使用して定置作業を行う場合がある。
しかし、上記の従来の作業車両では、定置作業を行う場合でもモバイル端末によるエンジン始動制限の解除を必ず行わなければならず、定置作業においては盗難防止状態を維持出来ないという問題がある。
本発明は、上記従来の作業車両のこの様な課題に鑑みて、定置作業においても盗難防止状態を維持出来る作業車両を提供することを目的とする。
第1の本発明は、
エンジンと、
駆動輪と、
前記エンジンからの動力を前記駆動輪に伝達可能な動力伝達装置と、
前記動力の伝達を入り切りするクラッチと、
前記クラッチの入り切り動作を制御する第1制御部と、
前記第1制御部に対して、前記クラッチの入り動作を規制する規制指令の送信と、前記規制指令による規制内容を解除する解除指令の送信が可能な第2制御部と、を備え、
前記第1制御部は、前記第2制御部から送信された前記規制指令を記録するメモリ部を有し、前記メモリ部の記録内容に基づいて前記クラッチの入り切り動作を制御し、
前記第2制御部から前記規制指令と前記解除指令を前記第1制御部に対して指示する第1ルートとは異なる、少なくとも前記解除指令を前記第1制御部に対して指示する第2ルートと、を備えたことを特徴とする作業車両である。
エンジンと、
駆動輪と、
前記エンジンからの動力を前記駆動輪に伝達可能な動力伝達装置と、
前記動力の伝達を入り切りするクラッチと、
前記クラッチの入り切り動作を制御する第1制御部と、
前記第1制御部に対して、前記クラッチの入り動作を規制する規制指令の送信と、前記規制指令による規制内容を解除する解除指令の送信が可能な第2制御部と、を備え、
前記第1制御部は、前記第2制御部から送信された前記規制指令を記録するメモリ部を有し、前記メモリ部の記録内容に基づいて前記クラッチの入り切り動作を制御し、
前記第2制御部から前記規制指令と前記解除指令を前記第1制御部に対して指示する第1ルートとは異なる、少なくとも前記解除指令を前記第1制御部に対して指示する第2ルートと、を備えたことを特徴とする作業車両である。
これにより、通常の走行作業のみならず、定置作業においても盗難防止状態を維持出来る。
また、規制指令を記録するメモリ部を第1制御部に設けることで、第1制御部と第2制御部との間の通信異常が発生した場合でも、第1制御部は規制指令を実行出来るので、作業車両の盗難防止が可能となる。
また、第1制御部に対して解除指令を指示する際、第1ルートの他に第2ルートが設けられているので、例えば、第1ルートが使用出来ない場合でも、作業車両の運転が可能となる。
また、第2の本発明は、
前記第2ルートにより指示された前記解除指令の実行は、前記第1制御部と前記第2制御部との間の通信異常が検知された場合に可能となる、上記第1の本発明の作業車両である。
前記第2ルートにより指示された前記解除指令の実行は、前記第1制御部と前記第2制御部との間の通信異常が検知された場合に可能となる、上記第1の本発明の作業車両である。
これにより、第1制御部と第2制御部との間の通信異常が検知された場合に、第2ルートにより指示された解除指令の実行を可能にしたことで、例えば、正規の作業者が作業車両を運転出来なくなる状態を回避することが出来る。
また、第3の本発明は、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記エンジンの出力を所定の出力以下に抑制する、ことを特徴とする上記第2の本発明の作業車両である。
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記エンジンの出力を所定の出力以下に抑制する、ことを特徴とする上記第2の本発明の作業車両である。
これにより、第2ルートにより指示された解除指令に基づいて規制内容が解除された場合は、エンジンの出力を所定の出力以下に抑制することで作業車両を盗難され難くすることが出来る。
また、第4の本発明は、
前記動力伝達装置は、前記動力を、副変速1速を下限とする複数段の何れかに変速する副変速部を有し、
前記副変速部の変速段の切り替え操作を行う副変速操作部と、
前記副変速部による前記切り替え操作の内容を検出する副変速センサと、を備え、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記第1制御部は、前記副変速センサの検出結果から前記変速段が前記副変速1速の変速段以外に切り替えられていると判定した場合は、前記クラッチの入り動作を規制する、ことを特徴とする上記第2または第3の本発明の作業車両である。
前記動力伝達装置は、前記動力を、副変速1速を下限とする複数段の何れかに変速する副変速部を有し、
前記副変速部の変速段の切り替え操作を行う副変速操作部と、
前記副変速部による前記切り替え操作の内容を検出する副変速センサと、を備え、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記第1制御部は、前記副変速センサの検出結果から前記変速段が前記副変速1速の変速段以外に切り替えられていると判定した場合は、前記クラッチの入り動作を規制する、ことを特徴とする上記第2または第3の本発明の作業車両である。
これにより、第2ルートにより指示された解除指令に基づいて規制内容が解除された場合は、副変速部が副変速1速(低速)の変速段以外に切り替えられている場合は、第1制御部が、クラッチの入り動作を規制し、盗難され難くすることが出来る。
また、第5の本発明は、
前記動力伝達装置は、前記動力を、主変速1速を下限とする複数段の何れかに変速する主変速部を有し、
前記主変速部の変速段の切り替え操作を行う主変速操作部を備え、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記第1制御部は、前記主変速操作部の前記切り替え操作に関わらず、前記主変速部を前記主変速1速の変速段に固定する、ことを特徴とする上記第2乃至第4の何れか一つの本発明の作業車両である。
前記動力伝達装置は、前記動力を、主変速1速を下限とする複数段の何れかに変速する主変速部を有し、
前記主変速部の変速段の切り替え操作を行う主変速操作部を備え、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記第1制御部は、前記主変速操作部の前記切り替え操作に関わらず、前記主変速部を前記主変速1速の変速段に固定する、ことを特徴とする上記第2乃至第4の何れか一つの本発明の作業車両である。
これにより、第2ルートにより指示された解除指令に基づいて規制内容が解除された場合は、主変速操作部の切り替え操作に関わらず、第1制御部が、主変速部を主変速1速(低速)の変速段に固定することが出来、作業車両を低速でしか走行出来ない状態として、盗難され難くすることが出来る。
また、第6の本発明は、
前記第1制御部は、前記第1制御部と前記第2制御部との間の前記通信異常が検知されている場合において、前記第2ルートとしての所定の入力操作を検知した際、前記検知した前記所定の入力操作は前記解除指令の実行を意味するものと判定し、前記所定の入力操作が有する本来の機能は実行しない構成であり、
前記所定の入力操作の設定は、前記第2制御部により予め実行出来る、ことを特徴とする上記第2乃至第5の何れか一つの本発明の作業車両である。
前記第1制御部は、前記第1制御部と前記第2制御部との間の前記通信異常が検知されている場合において、前記第2ルートとしての所定の入力操作を検知した際、前記検知した前記所定の入力操作は前記解除指令の実行を意味するものと判定し、前記所定の入力操作が有する本来の機能は実行しない構成であり、
前記所定の入力操作の設定は、前記第2制御部により予め実行出来る、ことを特徴とする上記第2乃至第5の何れか一つの本発明の作業車両である。
これにより、通信異常が検知されている場合において、第2ルートとしての所定の入力操作が検知された際は、その所定の入力操作が有する本来の機能は実行されないので、作業者が予期せぬ動作が作業車両により実行されることを防止出来、解除指令を安全に実行出来る。
本発明によれば、定置作業においても盗難防止状態を維持出来る作業車両を提供することが出来る。
以下に、本発明の作業車両の一実施の形態のトラクタについて、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の作業車両の一例として示すトラクタ100の全体左側面図である。
図1に示す通り、本実施の形態のトラクタ100は、機体前部のボンネット1内に搭載したコモンレール式のディゼルエンジン2の動力をPTO軸回転一定動力伝動装置3A(図2参照)で、或いは、他の例としてのPTO軸回転車速順応型動力伝動装置3B(図3参照)で適宜に変速して前輪軸4と後輪軸5に伝動して前輪6と後輪7の両方、或は後輪7のみを駆動し、機体上のキャビン26内に設ける座席10に座った作業者が中央に立設するステアリングホイール8を操作して前輪6を操向しながら走行する。機体の後方へ突出するロワリンク9には、ロータリ耕運機や、木材破砕機などの定置型作業機を装着し、PTO軸回転一定動力伝動装置3A(又はPTO軸回転車速順応型動力伝動装置3B)から後方へ向かって突出するPTO軸11(図2、図3参照)で装着する作業機を駆動する。
なお、本実施の形態のPTO軸回転一定動力伝動装置3A(又はPTO軸回転車速順応型動力伝動装置3B)は、本発明の動力伝達装置の一例にあたる。
図2は、PTO軸回転一定動力伝動装置3Aの動力伝動線図である。
図2に示す通り、エンジン2の出力軸の回転が、当該出力軸にメイン継手105で連結されたメイン入力軸13に入力される。このメイン入力軸13には三個の第一メインギヤ106と第二メインギヤ108と第三メインギヤ20を固着して、第一メインギヤ106が前後進クラッチAの正転ギヤ107と噛み合い、第二メインギヤ108が第一カウンタギヤ18を介して前後進クラッチAの逆転ギヤ19と噛み合い、第三メインギヤ20がPTOクラッチFのPTO入力ギヤ21と噛み合って動力伝動している。
従って、前後進クラッチAの前進クラッチA1を入れると前後進クラッチAを装着した第一メイン軸23が正転し後進クラッチA2を入れると第一メイン軸23が逆転し、PTOクラッチFを入れるとPTOクラッチ軸103が回転する。
前後進クラッチAには前後進切換ソレノイド150及び前後進昇圧ソレノイド151(図4、図9参照)を介して作動油が供給されており、前後進切換ソレノイド150によって前進クラッチA1又は後進クラッチA2(図2、図9参照)のどちらかに作動油を供給する油路、あるいはどちらにも供給しない油路に切り換えることができる。
前後進昇圧ソレノイド151(図4、図9参照)にはコイルに流す電流の大きさに比例する電磁力と弁機構内部のばねの弾性力とのバランスによって弁開度を任意に調節することができる比例制御弁が用いられており、これが作動油供給油路のリリーフ圧を調節することによって、前進クラッチA1及び後進クラッチA2の接続時のショックを低減している。
なお、図9は、本実施の形態のトラクタ100の油圧回路を示す概略構成図である。図9に示す通り、メインポンプP10から、作業機系油圧装置(図示省略)と走行系油圧装置200に圧油が供給される。
通常の走行時は、前後進レバー180(図1、図8参照)を前進側に操作すると、前後進レバー操作位置センサ146(図4参照)がその位置を読み取って走行制御部(走行系ECU)149に送信し、走行制御部149(図4参照)はその値に応じて、前後進切換ソレノイド150を前進クラッチA1側に作動油供給する方向に切り換えて、前後進昇圧ソレノイド151に流す電流値を調整する(図4、図9参照)。
反対に前後進レバー180を後進側に操作すると、前後進レバー操作位置センサ146がその位置を読み取って走行制御部149に送信し、走行制御部149はその値に応じて、前後進切換ソレノイド150を後進クラッチA2側に作動油供給する方向に切り換えて、前後進昇圧ソレノイド151に流す電流値を調整する。
さらに、前後進レバー180を中立位置に操作すると、前後進レバー操作位置センサ146がその位置を読み取って走行制御部149に送信し、走行制御部149はその値に応じて、前後進切換ソレノイド150をどちらにも供給しない油路に切り換えるので、前後進クラッチAは内部のばねの弾性力によって中立に保たれる。
このように前後進クラッチAは走行制御部149によって動力の接続、遮断を自在に制御でき、本発明におけるクラッチの一例に相当する。
本発明におけるクラッチの接続を制限された状態では、前後進レバー操作位置センサ146の値にかかわらず、前後進クラッチAが中立に保たれる。
前後進クラッチAを中立に保つと、正転ギヤ107及び逆転ギヤ19の回転が第一メイン軸23に伝達されず、エンジン2の回転動力の伝達は切断された状態となる。
第一メイン軸23の回転は、主変速装置BCを構成する四段変速クラッチBと高低切換クラッチCと、メカ四段クラッチから成る副変速装置Dで変速して走行最終変速軸であるベベルギヤ軸14に伝動され、変速段が4×2×4=32の32段で変速される。ベベルギヤ軸14から伝動される前輪6の回転は、増速クラッチEで後輪7よりも早く回転可能である。つまり、主変速装置BCは、主変速1速を下限とし主変速8速を上限とする8段の変速段を有し、副変速装置Dは、副変速1速を下限とし副変速4速を上限とする4段の変速段を有している。
なお、本実施の形態の主変速装置BCは、本発明の主変速部の一例にあたり、本実施の形態の副変速装置Dは、本発明の副変速部の一例にあたる。
メイン入力軸13から第三メインギヤ20とPTO入力ギヤ21で伝動されるPTOクラッチ軸103の回転は、PTOクラッチFから第一PTO軸22に伝動され、PTO変速機構Gで正転三段と逆転1段に変速される。
以下、図2を参照しながら、本実施の形態のトラクタ100の動力伝動機構を詳細に説明する。
前後進クラッチA(前進クラッチA1と後進クラッチA2)で伝動された第一メイン軸23の回転は、軸端に固着した第一ギヤ15が四段変速クラッチBの一・三変速クラッチB1を装着した第一変速軸24に固着した第一変速ギヤ16と四段変速クラッチBの二・四変速クラッチB2を装着した第二変速軸25に固着した第二変速ギヤ17に噛み合って伝動する。
第一変速軸24と第二変速軸25の回転は、一速クラッチB11を繋ぐと第七ギヤ31から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第六ギヤ30に伝動して第二メイン軸42を回転し、二速クラッチB22を繋ぐと第九ギヤ38から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第八ギヤ37に伝動して第二メイン軸42を回転し、三速クラッチB13を繋ぐと第十一ギヤ40から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第十ギヤ39に伝動して第二メイン軸42を回転し、四速クラッチB24を繋ぐと第十三ギヤ36から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第十二ギヤ41に伝動して第二メイン軸42を回転する。
一速クラッチB11は変速1ソレノイド153、三速クラッチB13は変速3ソレノイド155、二速クラッチB22は変速2ソレノイド154、四速クラッチB24は変速4ソレノイド156をそれぞれ走行制御部149からの信号によって制御することで接続、遮断を自在にコントロールできる。
なお、これら4つのクラッチ(1速クラッチB11、2速クラッチB22、3速クラッチB13、及び4速クラッチB24)をすべて遮断すると、エンジン2の回転動力は切断された状態となる。よって、本実施の形態では、前後進クラッチAが本発明のクラッチの一例である場合について説明したが、これに限らず例えば、四段変速クラッチBを本発明におけるクラッチの一例として構成しても良い。
第二メイン軸42の回転は、第一継手43で高低切換軸44に伝動され、高低切換クラッチCの高速クラッチC1を繋ぐと高速クラッチギヤ45から第一カウンタ軸47の第十四ギヤ46に伝動され、高低切換クラッチCの低速クラッチC2を繋ぐと低速クラッチギヤ48から第一カウンタ軸47の第十六ギヤ49に伝動される。
高低切換クラッチCを駆動側軸に装着することで、副変速装置Dの変速時に切る高低切換クラッチCの慣性回転力を少なく出来て、副変速装置Dのシンクロ機能が良好になる。
また、高低切換クラッチCを四段変速クラッチBと副変速装置Dとの間に設けることで、四段変速クラッチBを二重噛みで慣性回転を止めて高低切換クラッチCを切ることで、副変速装置Dのシンクロ機能が良好に働き、変速が良好に行える。
高速クラッチC1は高速クラッチソレノイド157、低速クラッチC2は低速クラッチソレノイド158をそれぞれ走行制御部149で制御することにより自在に接続、遮断することができる。
なお、両クラッチ(高速クラッチC1、及び低速クラッチC2)を遮断すると、エンジン2の回転動力は切断された状態となる。よって、本実施の形態では、前後進クラッチAが本発明のクラッチの一例である場合について説明したが、これに限らず例えば、高低切換クラッチCを、本発明におけるクラッチの一例として構成しても良い。
第一カウンタ軸47の回転は、第二継手50で第二カウンタ軸51に伝動され、副変速装置Dのメカ高変速クラッチD1を第十八ギヤ53側へ切り換えると、第十七ギヤ52から第十八ギヤ53に伝動しメカ高変速クラッチD1からベベルギヤ軸14を高速で駆動する。
また、副変速装置Dのメカ高変速クラッチD1を第二十ギヤ55側へ切り換えると、第十九ギヤ54から第二十ギヤ55に伝動しメカ高変速クラッチD1からベベルギヤ軸14を中速で駆動する。
メカ低変速クラッチD2を第二十二ギヤ57側へ切り換えると、第十九ギヤ54から第二十ギヤ55に伝動し、第二十五ギヤ60から第二十六ギヤ61に伝動し、第二十七ギヤ62から第二十八ギヤ63に伝動し、メカ低変速クラッチD2からベベルギヤ軸14を低速で駆動する。
メカ低変速クラッチD2を第二十四ギヤ59側へ切り換えると、第十九ギヤ54から第二十ギヤ55に伝動し、第二十五ギヤ60から第二十六ギヤ61に伝動し、第二十七ギヤ62から第二十八ギヤ63に伝動し、第二十二ギヤ57から第二十一ギヤ56に伝動し、第二十三ギヤ58から第二十四ギヤ59に伝動し、メカ低変速クラッチD2からベベルギヤ軸14を極低速で駆動する。
副変速装置Dは、第二十一ギヤ56と第二十六ギヤ61を第二カウンタ軸51に遊嵌することで、ベベルギヤ軸14と第二カウンタ軸51の二軸構成となって省スペースとなっている。
また、副変速装置Dは、変速用の第十七ギヤ52と第十九ギヤ54と第二十六ギヤ61と第二十七ギヤ62と第二十一ギヤ56と第二十三ギヤ58が第二カウンタ軸51に設けられることで、シンクロ機能が良好になる。
ベベルギヤ軸14の回転は、このベベルギヤ軸14と一体に形成した第一ベベルギヤ64が後輪駆動軸65の第二ベベルギヤ66と噛み合って、後ベベルギヤ組83と後輪駆動軸65と後遊星ギヤ組84を介して後輪7を装着する後輪軸5を駆動する。
また、ベベルギヤ軸14にスプライン嵌合する第二十九ギヤ67が第三十ギヤ68と第三十一ギヤ69を介して第一前輪駆動軸71に固着の第三十二ギヤ70に噛み合って、第一前輪駆動軸71も駆動する。
第一前輪駆動軸71の前軸端に増速クラッチEを装着し、等速クラッチE2を繋ぐと第一前輪駆動軸71の回転がそのままで第二前輪駆動軸79に伝動し、増速クラッチE1を繋ぐと第三十三ギヤ75と第三十四ギヤ76と第三十五ギヤ77と第三十六ギヤ78を介して第一前輪駆動軸71の回転が増速して第二前輪駆動軸79に伝動される。
第二前輪駆動軸79の先は、従来と同様に、前ベベルギヤ組80と前縦駆動軸81と前遊星ギヤ組82を介して前輪6を装着する前輪軸4を駆動する。
前記PTO入力ギヤ21の回転は、PTOクラッチFを入れることでPTOクラッチ軸103から第三継手85と第一PTO軸22と第四継手86を介して第二PTO軸73を回転する。
第二PTO軸73に並設するPTOクラッチ軸104には、PTO変速機構Gを構成する第一PTO変速クラッチG1と第二PTO変速クラッチG2を設け、第一PTO変速クラッチG1を第三十八ギヤ88側に入れると第二PTO軸73の回転が第三十七ギヤ87と第三十八ギヤ88でPTOクラッチ軸104に低速で伝動され、第一PTO変速クラッチG1を第四十ギヤ91側に入れると第二PTO軸73の回転が第三十九ギヤ90と第四十ギヤ91でPTOクラッチ軸104に中速で伝動され、第二PTO変速クラッチG2を第四十二ギヤ93側に入れると第二PTO軸73の回転が第四十一ギヤ92と第四十二ギヤ93でPTOクラッチ軸104に高速で伝動され、第二PTO変速クラッチG2を第四十四ギヤ96側に入れると第二PTO軸73の回転が第四十三ギヤ95と第四十五ギヤ101と第四十四ギヤ96でPTOクラッチ軸104が逆回転で伝動される。
図3は、PTO軸回転車速順応型動力伝動装置3Bの伝動線図であり、図2に示すPTO軸回転一定動力伝動装置3Aの伝動線図のPTO変速機構Gの一部を変更した構成を示す。
なお、上述した通り、PTO軸回転一定動力伝動装置3A(図2の伝動線図参照)は、本実施の形態のトラクタの動力伝動装置の一例であり、PTO軸回転車速順応型動力伝動装置3B(図3の伝動線図参照)は、本実施の形態のトラクタの動力伝動装置の他の例である。
第四十五ギヤ101に噛み合う第二PTO軸73の第四十三ギヤ95を無くし、第四十五ギヤ101を固着するカウンタ軸97にベベルギヤ軸14の回転を伝動する第三十ギヤ68と噛み合う第四十六ギヤ98を設けて、第二PTO変速クラッチG2を第四十四ギヤ96側に切り替えると、第二十九ギヤ67から第三十ギヤ68と第四十六ギヤ98と第四十五ギヤ101と第四十四ギヤ96へ伝動して、ベベルギヤ軸14の回転変動に応じてPTOクラッチ軸104つまりはPTO軸11が変速する走行速度順応PTO回転(グランドPTO)となる。
第二十九ギヤ67から回転を受ける第三十ギヤ68と第三十二ギヤ70に回転を送る第三十一ギヤ69は一体となっていて、第三十ギヤ68に第四十六ギヤ98を噛み合わせることで走行速度順応PTO回転を得ているので、PTO軸回転一定動力伝動装置3AとPTO軸回転車速順応型動力伝動装置3Bの共通化が図られている。
また、一体化した第三十ギヤ68と第三十一ギヤ69をPTOクラッチ軸104に遊嵌することで、構成を単純化出来ている。
本発明においては、後述する発進規制モードが設定されている場合、クラッチの接続を制限して、即ち、クラッチの入り動作を規制して、走行が不可能な状態であっても、エンジンは始動し、PTOクラッチFの作動油供給を制御するPTOクラッチソレノイド152は制限しないため、作業車両を走行させることなく使用する作業機、すなわちPTOから動力をとる定置型の作業機(例えば、発電機や木材破砕機など)は使用することができる。これについては、図5を用いて後述する。
次に、図4の制御ブロック図を用いて、本実施の形態のトラクタ100における制御信号の流れを説明する。
図4は、本実施の形態のトラクタ100の制御ブロック図である。
まず、エンジン制御部(エンジンECU)124には、エンジンモード選択スイッチ125からエンジンモードの選択信号が入り、エンジン回転センサ126からエンジン回転数のデータ信号が入り、エンジンオイル圧力センサ127からエンジン潤滑オイルの圧力のデータ信号が入り、エンジン水温センサ128から冷却水の温度のデータ信号が入り、レール圧センサ129からコモンレールの圧力のデータ信号が入り、燃料高圧ポンプ130に駆動信号が出力され、4つの高圧インジェクタ131に燃料供給調整制御信号が出力される。
次に、作業機昇降制御部(作業機昇降ECU)132には、作業機昇降レバー406(図11参照)に設ける作業機昇降センサ123の操作信号とリフトアームセンサ122の昇降信号と上げ位置規制ダイアル120の上げ位置規制信号と下げ速度調整ダイアル121の降下速度設定信号がそれぞれ入力し、メイン上昇ソレノイド133とメイン下降ソレノイド134に作業機昇降信号が出力し作業機昇降シリンダ135を作動する。
なお、図4では、ソレノイドをsolと表記した。
また、作業機昇降制御部132には、作業機用コネクタ171が設けられており、接続された作業機と定められた通信規格により双方向の通信を行うことができる。
エンジン制御部124、作業機昇降制御部132、走行制御部149及び通信ユニット172、メータパネル136はそれぞれが情報の処理能力を有しており、互いに双方向の通信を行うことが出来る。 これらは互いに制御信号を交信し、メータパネル136(図4、図6参照)にエンジンの状態や作業機の昇降状態、走行装置の走行速度等が表示される。
通信ユニット172はタブレット端末やスマートフォンなどのモバイル端末173(図4、図7参照)との間で無線通信によって信号の送受信を行う。車両には外付GPS174が設置され、その信号を受信しているときは、モバイル端末173から送信される内蔵GPS175の情報よりも外付GPS174の情報を優先し、外付GPS174からの信号を受信していないときは、内蔵GPS175の情報を使用する。
また、モバイル端末173からPTO操作の命令を受信すると、走行制御部149を介してPTOクラッチソレノイド152を操作するなどして、遠隔操作が可能に構成されている。
また、本実施の形態の図5に示すフローチャートの例では、後述する発進規制モードのON設定及びOFF設定(即ち、ON設定の解除)の記録は、走行制御部149に設けられている不揮発性のメモリ部149a(図4参照)に対して、モバイル端末173(図4、図7参照)を用いて行われる。本実施の形態のメモリ部149aは、本発明のメモリ部の一例にあたる。図5に示すフローチャートの例については、更に後述する。
走行制御部149には、変速1クラッチ圧力センサ138と変速2クラッチ圧力センサ139と変速3クラッチ圧力センサ140と変速4クラッチ圧力センサ141(図4、図9参照)からそれぞれの検知信号が入力されると共に、高速クラッチ圧力センサ142と低速クラッチ圧力センサ143(図4、図9参照)からそれぞれの検知信号が入力される。
なお、変速1クラッチ圧力センサ138、変速2クラッチ圧力センサ139、変速3クラッチ圧力センサ140、変速4クラッチ圧力センサ141、高速クラッチ圧力センサ142、及び低速クラッチ圧力センサ143(図4、図9参照)は、1速クラッチB11、2速クラッチB22、3速クラッチB13、4速クラッチB24、高速クラッチC1、及び低速クラッチC2(図4、図9参照)に設けられた各油圧シリンダに供給される圧油の圧力を検知する圧力センサである。
また、走行制御部149には、主変速スイッチ148(図4、図11参照)からの操作信号が入力される。
走行制御部149は、主変速スイッチ148からの上記操作信号に基づいて、主変速装置BCの変速段を切り換える。
本実施の形態の主変速スイッチ148は、作業者が、主変速装置BCの変速段の切り替え操作を行うためのスイッチであり、本発明の主変速操作部の一例にあたる。
また、走行制御部149には、前進クラッチ圧力センサ144と後進クラッチ圧力センサ145からそれぞれの検知信号が入力される。
なお、前進クラッチ圧力センサ144、及び後進クラッチ圧力センサ145(図4、図9参照)は、前進クラッチA1、及び後進クラッチA2(図9参照)に設けられた各油圧シリンダに供給される圧油の圧力を検知する圧力センサである。
また、走行制御部149には、前後進レバー180(図1、図8参照)の切り換え操作位置を検出する前後進レバー操作位置センサ146から前進・中立・後進の何れかの操作位置を示す検知信号と、副変速レバー405(図11参照)の切り換え操作を検知する副変速レバー操作位置センサ147から変速操作位置検知信号と、アクセル操作レバー402(図11参照)の切り換え操作位置と、アクセルペダル401(図12参照)の操作位置をそれぞれ検知するアクセルセンサ159からのアクセル指示信号とが入力される。本実施の形態のアクセル操作レバー402(図11参照)は、エンジン2の出力の増減を作業者が手動で操作するための操作レバーである。
走行制御部149は、前後進レバー操作位置センサ146からの上記検知信号に基づいて、前後進クラッチAを前進・中立・後進の何れかに切り換える。
また、副変速装置Dは、メカ四段クラッチから成ることは上述した通りであり、作業者が副変速レバー405を操作する操作力によりシフターが移動して変速段が切り換えられる構成である。
なお、本実施の形態の副変速レバー405は、本発明の副変速操作部の一例にあたり、副変速レバー操作位置センサ147は、本発明の副変速センサの一例にあたる。
さらに走行制御部149には、車速センサ163から走行速度、作動油の油温センサを兼ねるミッションオイル油温センサ164からオイル温度、クラッチボタン162から副変速装置Dの切換信号、PTO入り切りスイッチ165からPTOクラッチソレノイド152の切換信号がそれぞれ入力される。
走行制御部149からは、前後進切換ソレノイド150に前後進クラッチAの切換信号が出力され、前後進昇圧ソレノイド151に前後進クラッチ作動油供給油路のリリーフ圧調整信号が出力されてクラッチ接続のショックを低減する(図4、図9参照)。また、走行制御部149からは、PTOクラッチソレノイド152に入・切信号が出力され、一・三変速クラッチB1の一速クラッチB11を入切する油圧シリンダを制御する変速1ソレノイド153に一速クラッチB11の制御信号が出力され、三速クラッチB13を入切する油圧シリンダを制御する変速3ソレノイド155に三速クラッチB13の制御信号が出力され、二・四変速クラッチB2の二速クラッチB22を入切する油圧シリンダを制御する変速2ソレノイド154に二速クラッチB22の制御信号が出力され、四速クラッチB24を入切する油圧シリンダを制御する変速4ソレノイド156に四速クラッチB24の制御信号が出力され、高低切換クラッチCの高速を駆動する油圧シリンダを作動する高速クラッチソレノイド157と低速を駆動する油圧シリンダを作動する低速クラッチソレノイド158に高速クラッチC1の入信号及び低速クラッチC2の入信号が出力される(図4、図9参照)。
なお、本実施の形態の走行制御部149は、本発明の第1制御部の一例にあたる。また、本実施の形態の通信ユニット172及び専用アプリケーションソフトがインストールされたモバイル端末173を包括する構成は、本発明の第2制御部の一例にあたる。
以下、主として図5を用いて、発進規制モードについて説明する。
図5は、発進規制モードの設定及び解除に関する制御システムのフローチャートである。
なお、図5に示すフローチャートと、後述する図10に示すフローチャートとの繋がりを示すために、丸で囲んだ1と丸で囲んだ2を記載した。
本実施の形態の図5に示す構成例(第1制御システムと称す)では、モバイル端末173(図4、図7参照)から通信ユニット172を介して走行制御部149に対し、発進規制指令の送信と、その発進規制指令を解除する解除指令の送信が可能に構成されている。また、走行制御部149は、モバイル端末173から発進規制指令や解除指令を受信した場合、走行制御部149に設けられたメモリ部149a(図4参照)に対して、発進規制モードのON設定及びOFF設定を記録する構成である。
発進規制モードのON設定がメモリ部149aに記録されている状態において、作業者がトラクタ100の電源を投入すると、エンジンは始動するが、前後進クラッチA(図2、図4参照)が自動的に中立の状態(クラッチ切り状態)に固定される構成である。
これにより、発進規制モードのON設定が記録されている状態でトラクタ100の電源を投入すると、エンジンは始動するが、トラクタ100を走行させることができないので、トラクタ100の盗難を防止することができる。
即ち、トラクタ100の電源が投入されるとエンジン2が始動しアイドリング状態となる。その後、図5に示す様に、走行制御部149のメモリ部149aに記録されている発進規制モードの設定状態(ON状態又はOFF状態)が、走行制御部149にて判定され(ステップS1)、ON状態(即ち、発進規制モードがON設定された状態)である場合、前回電源を切るまでにモバイル端末173内の認証コード182(図4参照)と走行制御部149内に記憶されている解除コード181(図4参照)とが一致しており、かつ前回の電源OFFから基準時間が経過しているか否かが、走行制御部149にて判定される(ステップS2)。
前回電源を切るまでにモバイル端末173内の認証コード182と、走行制御部149内に記憶されている解除コード181とが一致しており、かつ前回の電源OFFから基準時間が経過していると判定された場合は、走行制御部149により発進規制モードが実行されて、前後進クラッチAの接続が規制され(ステップS3)、そうでない場合は図5に示す処理が終了し、後述する図10に示す処理に移行する。
ステップS3において、走行制御部149により前後進クラッチAの接続が規制されると、作業者が、前後進レバー180を前進位置または後進位置に操作しても、前後進切換ソレノイド150及び前後進昇圧ソレノイド151に走行制御部149が電流を流さないため、前後進クラッチAは中立のまま動力を伝達しない状態が保たれる。
前後進クラッチAの接続が規制されている状態で、作業者がモバイル端末173の解除送信ボタン173B(図7参照)を押すことにより、解除信号が通信ユニット172に送信される。通信ユニット172が、モバイル端末173から発進規制モードの解除信号を受信すると(ステップS4)、走行制御部149に記憶されている解除コード181がモバイル端末173に送信され、モバイル端末173内に記憶された認証コード182と走行制御部149内に記憶された解除コード181の比較をモバイル端末173にて行い(ステップS5)、一致していることを確認できない場合はコード認証が失敗したことをモバイル端末173及びメータパネル136に表示する(ステップS6)。発進規制モードの解除信号を受信しないとき、又は認証コード182と解除コード181が一致しないときは、ステップS4の直前に戻り、発進規制モードの解除信号受信の確認を繰り返す。
認証コード182と解除コード181が一致すると、走行制御部149は、前後進レバー操作位置センサ146の検知信号から前後進レバー180の位置を確認し(ステップS7)、ニュートラル(中立)でなければ、作業者にニュートラル操作を促すメッセージをメータパネル136に表示して(ステップS8)、ニュートラルであると判定した場合は、走行制御部149は、メモリ部149aに記録されている発進規制モードのON設定状態を、OFF設定状態に書き換えると共に、前後進クラッチAの接続規制を解除する(ステップS9)。
また、ステップS9では、走行制御部149は、発進規制モードの設定が、ON設定からOFF設定に切り替わった旨を、メータパネル136の制御部、及び通信ユニット172を介してモバイル端末173に送信し、メータパネル136の発進規制モード設定状況表示部136D(図6参照)と、モバイル端末173の表示部にその旨をそれぞれ表示させる。これにより、発進規制モードのON/OFF設定が切り替わったことを作業者に確実に知らせることが出来る。
また、モバイル端末173は、走行制御部149から、発進規制モードの設定がON設定からOFF設定に切り替わった旨を示す「設定完了情報」を受信したとき、通信ユニット172への解除信号の送信を終了する。これにより、発進規制モードのON/OFF設定が切り替わった後、再び発進規制モードのON/OFF設定が切り替わる事態を抑制出来る。
なお、図5に示す制御システム(第1制御システム)では、発進規制モードのON設定が走行制御部149のメモリ部149aに記録されており、且つ、発進規制モードが実行されているときに、例えば、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生した場合、発進規制モードを解除するための解除指令を、モバイル端末173から走行制御部149に送信することが出来ないため、作業者は、発進規制モードを解除することが出来ない。
しかし、本実施の形態のトラクタ100は、この様な場合でも、作業者が発進規制モードを解除することが出来る制御システム(第2制御システム)を備えている。この第2制御システムについては、図10を用いて更に後述する。
ここで、再び図5の説明に戻る。
走行制御部149により、走行制御部149のメモリ部149aに記録されている発進規制モードの設定状態(ON状態又はOFF状態)がON状態(即ち、発進規制モードがON設定された状態)でないと判定された場合(ステップS1)は、モバイル端末173からの発進規制モードの設定信号の受信確認を繰り返し(ステップS10)、受信するとモバイル端末173内の認証コード182と走行制御部149内の解除コード181をモバイル端末173内にて比較し(ステップS11)、一致しない場合はコード認証が失敗した旨をモバイル端末173及びメータパネル136に表示して(ステップS12)、発進規制モードの設定信号の受信確認(ステップS10)に戻る。認証コード182と解除コード181が一致すると、メータパネル136が速度表示や燃料残量表示などの通常画面であるかを判定し(ステップS13)、通常画面でない場合は発進規制モードの設定が通常画面表示時以外不可であることを表示し(ステップS14)、発進規制モードの設定信号の受信確認(ステップS10)に戻る。
メータパネル136が通常画面表示であれば、走行制御部149は、メモリ部149aに記録されている発進規制モードのOFF設定状態を、ON設定状態に書き換えると共に(ステップS15)、前後進レバー180がニュートラル位置に位置しているか否かを前後進レバー操作位置センサ146(図4参照)からの検知信号により確認し(ステップS16)、ニュートラル位置に位置していると判定した場合は、走行制御部149は、発進規制モードの設定が、OFF設定からON設定に切り替わった旨を、メータパネル136の制御部、及び通信ユニット172を介してモバイル端末173に送信し、メータパネル136の発進規制モード設定状況表示部136D(図6参照)と、モバイル端末173の表示部にその旨をそれぞれ表示させる。これにより、発進規制モードのON/OFF設定が切り替わったことを作業者に確実に知らせることが出来る。
また、モバイル端末173は、走行制御部149から、発進規制モードの設定がOFF設定からON設定に切り替わった旨を示す「設定完了情報」を受信したとき、通信ユニット172への発進規制信号の送信を終了する。これにより、発進規制モードのON/OFF設定が切り替わった後、再び発進規制モードのON/OFF設定が切り替わる事態を抑制出来る。なお、この状態で、作業者が、トラクタ100の電源をOFFすれば、不揮発性のメモリ部149aに記録された、発進規制モードのON設定状態がそのまま維持される。
一方、走行制御部149は、前後進レバー180がニュートラル位置以外に操作されたと判定した場合は、メモリ部149aに記録されている、発進規制モードのON設定をOFF設定に書き換える(ステップS17)。
また、ステップS17では、走行制御部149は、発進規制モードの設定が、ON設定からOFF設定に切り替わった旨を、メータパネル136の制御部、及び通信ユニット172を介してモバイル端末173に送信し、メータパネル136の発進規制モード設定状況表示部136D(図6参照)と、モバイル端末173の表示部にその旨をそれぞれ表示させる。これにより、発進規制モードのON/OFF設定が切り替わったことを作業者に確実に知らせることが出来る。
図6は、本実施の形態のトラクタ100のメータパネル136の正面図である。
図6に示す様に、メータパネル136は、中央に液晶画面部136C、左側にタコメータ136L、右側に各種機能の入り切り状況を表示する機能表示部136R、中央下方にメモリ部149aに記録されている発進規制モードのON設定/OFF設定の状況を表示する発進規制モード設定状況表示部136Dを備えている。液晶画面部136Cの通常画面時は車速や変速段、燃料残量や累積稼働時間等、運転時の情報が表示され、通常画面以外の表示に切り替えての液晶のコントラストを設定したり、異常発生時に記録される異常コードを確認したりすることができる。発進規制モードの設定は通常画面表示時に限定されており、プログラムの単純化、メモリの小容量化が図られている。
図7は、モバイル端末173の表示画面の正面図である。
図7では、本実施の形態のトラクタ100の発進規制モードの設定及び解除の指令を送信するための設定送信ボタン173Aと解除送信ボタン173Bが表示されているが、上述した様に、メモリ部149aに記録されている発進規制モードのON設定/OFF設定の状況を表示することも可能である(図5のステップS9、S15、S17参照)。
モバイル端末173には、専用アプリケーションソフトをインストールすることで発進規制モードの設定送信ボタン173Aと解除送信ボタン173Bが表示され(図7参照)、それぞれのボタンをタップすると、通信ユニット172に信号を送信する。通信ユニット172は発進規制モードの設定及び解除信号を受信すると、走行制御部149内に記憶されている解除コード181をモバイル端末173に送信し、モバイル端末173にて認証コード182と解除コード181の比較を行う。各コードが一致すると一致確認の信号が送信され、上述した条件の下で、メモリ部149aに対する発進規制モードのON設定/OFF設定の書き換えや、前後進クラッチAの接続規制が解除される(図5のステップS9参照)。
図8は、本実施の形態のトラクタ100の前後進レバー180周辺の斜視図である。
作業者は、ステアリングホイール8の下方に配置された前後進レバー180にて前後進クラッチAを操作し、さらにその下方に設けられた入力スイッチ176によりトラクタ100のメータパネル136に対して各種設定を行うことができる。
本実施例ではクラッチ接続規制の対象として主に前後進クラッチAについて述べたが、これに限らず例えば、電子制御されるクラッチで、中立操作が可能なものであれば、四段変速クラッチBまたは高低切換クラッチCであってもよい。
また、解除コード181については走行制御部149に記憶されたものとして述べたが、これに限らず例えば、記憶装置を備え、情報処理機能を有するものであれば、エンジン制御部124、作業機昇降制御部132、メータパネル136、通信ユニット172に解除コード181を記憶させても、同様の効果を奏する。
以上説明したことから、本実施の形態のトラクタ100では、図5に示す様に、メモリ部149aに発進規制モードのON設定状態が記録されている場合は、前後進クラッチAの接続が規制されるため、発進規制モードを解除するまで、トラクタ100を走行させることができず、盗難を防止することができる。また、メモリ部149aに発進規制モードのON設定状態が記録されている場合でも、エンジンの始動は可能であり、かつPTOクラッチFの接続は規制しないため、トラクタ100を走行させることなく行う作業、すなわち定置作業は発進規制モードを解除せずとも実行することが可能である。さらに、定置作業中は運転者が搭乗していないことが想定されるため、走行が規制されている方がより安全に作業できる。
上述した通り、図5に示す制御システム(第1制御システム)では、例えば、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生した場合、発進規制モードを解除するための解除指令を、モバイル端末173から走行制御部149に送信することが出来ないため、作業者は、発進規制モードを解除することが出来ない。
そこで、本実施の形態のトラクタ100は、図10に示す様に、モバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作レバー、操作スイッチ等の操作部の操作を、発進規制モードを解除するための解除指令として機能させることが可能な第2制御システムを備えている。これにより、例えば、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している場合でも、低速走行のみ許可される等の制限のもとで、発進規制モードを解除することが出来る。
なお、本実施の形態の、モバイル端末173やメータパネル136から走行制御部149に対して指示される発進規制指令や解除指令(図5参照)は、本発明の第1ルートによる指令の一例にあたり、上述したモバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作レバー、操作スイッチ等の操作部により指示される解除指令(図10参照)は、本発明の第2ルートにより指示される解除指令の一例にあたる。
次に、本実施の形態のトラクタ100の、モバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作レバー、操作スイッチ等の操作部の操作を、発進規制モードを解除するための解除指令として機能させるために、作業者が当該操作部による解除操作の手順を、モバイル端末173にインストールされた専用アプリケーションソフトを用いて、トラクタ100による作業開始に先立って任意で設定する場面について説明する。なお、ここで説明する、操作部の操作を予め設定することは、本発明の所定の入力操作の設定の一例にあたる。
モバイル端末173を初期画面(図示省略)に戻し、表示された各種モードの中から「解除操作手順の設定モード」を選択すると、モバイル端末173の表示画面に「設定スタート」ボタンと、「設定取り消し」ボタンが表示される(図示省略)。
作業者が、「設定スタート」ボタンにタッチすると、モバイル端末173の表示画面に「設定を開始してください」の表示と、「設定確定」ボタンと、「設定取り消し」ボタンが表示されると共に、モバイル端末173から通信ユニット172を介して、走行制御部149に対して、「解除操作手順の設定モード」の開始信号を送信する。
「解除操作手順の設定モード」の開始信号を受信した走行制御部149は、作業者により行われる各種操作部の一連の操作の内容と順番の情報を、「解除操作手順」として、一時的に保存する。
なお、走行制御部149は、「解除操作手順の設定モード」が実行されている間、及び後述する「発進規制解除モード」(図10のステップS108参照)が実行されている間は、作業者により入力される操作部の操作に基づくその操作本来の制御を実行しない構成である。これにより、「解除操作手順の設定モード」の実行中、及び、「発進規制解除モード」の実行中に、トラクタ100が予期せぬ動作を行うことを禁止することが出来、安全に「解除操作手順の設定モード」、及び「発進規制解除モード」を実行出来る。
ここで、作業者による各種操作部の一連の操作の内容と順番の一例を説明する。
即ち、作業者が、例えば、定回転スイッチ400のアクセルメモリA400aを押した後、アクセルメモリB400b(図11参照)を押し、その後、モバイル端末173の表示画面に表示されている「設定確定」ボタンにタッチすると、モバイル端末173から通信ユニット172を介して走行制御部149に「設定確定」信号が送信されて、アクセルメモリA400aを押した後、アクセルメモリB400b(図11参照)が押された一連の操作手順が、走行制御部149によりメモリ部149aに記録されると共に、「解除操作手順の設定モード」は終了し、通常モードに戻る。
なお、作業者による一連の操作手順の設定は、上記の例に限定されるものでは無い。一連の操作手順の設定の他の例として、例えば、定回転スイッチ400のアクセルメモリA400aを押した後、アクセルメモリB400b(図11参照)を押し、更に、主変速スイッチ148(図11参照)の増速ボタン148aを押す操作であっても良い。更に、他の例として、例えば、アクセルペダル401(図12参照)をアイドル指示位置からフルスロットル位置に操作した後、アクセル操作レバー402(図11参照)をアイドル指示位置からフルスロットル位置に操作することにより、アクセルセンサ159(図4参照)等の特定のセンサを操作する例であっても良い。
図11は、トラクタ100の座席10の右側に設けられた操作パネル上に配置された各種操作部の斜視図であり、図12は、トラクタ100の座席10の前方下部の斜視図である。
また、上記の構成例では、モバイル端末173に表示されている「設定確定」ボタンにタッチすることにより、モバイル端末173から通信ユニット172を介して走行制御部149に「設定確定」信号が送信されて、走行制御部149に一時的に保存されている「解除操作手順」を、走行制御部149によりメモリ部149aに記録される場合について説明したが、これに限らず例えば、各種操作部による操作が予め定められた規定回数行われたとき、その一連の操作と順番を「解除操作手順」として、走行制御部149によりメモリ部149aに記録される構成であっても良い。具体的には、操作部による規定回数が2回であると予め定められている場合、作業者が、例えば、定回転スイッチ400のアクセルメモリA400aを押した後、アクセルメモリB400b(図11参照)を押したとき、その一連の操作と順番を「解除操作手順」として、走行制御部149によりメモリ部149aに記録される。
以上説明した様に、「解除操作手順の設定モード」において、作業者が操作部による解除操作の手順を任意に設定出来る構成としたことにより、盗難防止機能を高めることが出来る。
以下、図10を用いて、本実施の形態の第2制御システムについて説明する。
図10は、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生した場合でも、発進規制モードを解除することが出来る第2制御システムのフローチャートであり、図5で説明した制御システム(第1制御システム)を包含する構成である。
まず、作業者によりトラクタ100の電源が投入されると、エンジン2が始動しアイドリング状態となる(ステップS101)。走行制御部149は、通信ユニット172を介してモバイル端末173に対して確認信号を送信し、且つ、それに対する確認応答信号が通信ユニット172を介してモバイル端末173から正常に受信出来るか否かを判定することにより、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間での通信異常の有無を走行制御部149が判定する(ステップS102)。
ステップS102において、走行制御部149により、通信異常が無いと判定された場合、走行制御部149は、主変速スイッチ148の設定操作に関わらず、主変速装置BCの変速段が主変速1速(低速)に固定された状態にあるか否かを判定する(ステップS103参照)。
ステップS103において、走行制御部149により、主変速装置BCの変速段が主変速1速(低速)に固定された状態ではないと判定された場合、走行制御部149は、アクセル操作レバー402及びアクセルペダル401の操作位置に関わらず、エンジン出力がアイドル状態に固定されているか否かを判定する(ステップS104参照)。
ステップS104において、走行制御部149により、エンジン出力がアイドル状態に固定されていないと判定された場合、図5に示した第1制御システムのフローチャートに移行し、ステップS1〜ステップS17(図5参照)が適宜実行され、再び、図10の第2制御システムのフローチャートにおけるステップS102の直前に戻る。
これにより、作業者がトラクタ100の電源をONし、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間での通信異常が無ければ、図5に示した第1制御システムのステップS1〜ステップS17が適宜実行され、図5で説明した効果が発揮される。
また、ステップS104において、走行制御部149により、エンジン出力がアイドル状態に固定されていると判定された場合、後述するステップS121へ進む。
一方、作業者がトラクタ100の電源をONした後、ステップS102において、走行制御部149により、通信異常が有ると判定された場合、走行制御部149は、走行制御部149の制御基板に設けられたスピーカ(図示省略)から、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している旨を知らせるアナウンスを発生させ、作業者に注意を喚起する(ステップS105参照)。
更に、走行制御部149は、走行制御部149のメモリ部149aに記録されている発進規制モードの設定状態(ON状態又はOFF状態)を判定し(ステップS106参照)、ON状態であればステップS107へ進み、OFF状態であればステップS106の直前に戻る。
ステップS107では、走行制御部149により発進規制モードが実行されて、前後進クラッチAの接続が規制され、前後進クラッチAは中立のまま動力を伝達しない状態が保たれる。
ステップS108では、走行制御部149は、発進規制モードを解除するためのモードである「発進規制解除モード」への所定の切替操作が操作部から入力されたか否かを判定し、所定の切替操作の入力が無いと判定すれば、ステップS108の直前に戻り、このステップを繰り返す。ここで、作業者は、発進規制モードを解除するために、各種操作部を操作することにより、予め定められた所定の切替操作を行うと、走行制御部149は、通常モードから「発進規制解除モード」に切り替わり、ステップS109へ進む。
なお、上述した、予め定められている所定の切替操作としては、例えば、クラッチペダル403及び左右のブレーキペダル404L、404Rを踏み込んだ状態で、前後進レバー180(図1、図8参照)を中立位置から前進位置に切り換える操作などが挙げられる。
作業者は、上述した通り、予め定められた所定の切替操作を行った後(ステップS108参照)、引き続き、モバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作スイッチによる操作を実行する。具体的には、アクセルメモリA400aを押した後、アクセルメモリB400b(図11参照)を押す。走行制御部149は、その一連の操作手順が、メモリ部149aに予め記録されている「解除操作手順」と一致しているか否かを判定し(ステップS109参照)、一致していると判定した場合は、メモリ部149aに記録されている発進規制モードのON設定状態を、OFF設定状態に書き換えて(ステップS110参照)、ステップS111へ進む。
なお、ステップS108で「発進規制解除モード」に切り替わっているので、上述した通り、走行制御部149は、作業者により入力される操作部の操作に基づくその操作本来の制御を実行しない構成である。これにより、「発進規制解除モード」の実行中に、トラクタ100が予期せぬ動作を行うことを禁止することが出来、安全に「発進規制解除モード」を実行出来る。
ステップS111では、走行制御部149は、エンジン制御部124を介して、エンジン出力をアイドル状態に固定する。
これにより、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している場合でも、エンジン出力をアイドル状態に固定して低速走行のみ許可するという制限のもとで、発進規制モードを解除することが出来る。
また、エンジンの出力を所定の出力以下、即ち、アイドル状態に抑制することでトラクタ100を盗難され難くすることが出来る。この様に、一定の制限のもとで発進規制モードを解除する構成とした理由は、上述した通信異常の発生や、ステップS109で説明した第2ルートによる解除操作が、不正者により行われた場合を考慮したためである。
ステップS112では、走行制御部149は、副変速レバー操作位置センサ147の検出結果から、副変速装置Dの変速段が副変速1速(低速)であるか否かを判定し、NOであれば、前後進切換ソレノイド150等へ制御信号を出力して、前後進クラッチAを「中立(切り状態)」にし(ステップS113参照)、ステップS112の直前に戻り、また、YESであれば、走行制御部149は、車速センサ163の検出結果から、車速が0.2km/h以下になるまでステップS114の判定を繰り返す(ステップS114参照)。
これにより、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している場合であって、ステップS109で説明した第2ルートによる解除操作が行われた場合は、低速走行のみ許可するという制限を設けているので、トラクタ100を盗難され難くすることが出来る。
なお、ステップS114での、判定基準である車速0.2km/hは一例であり、この値に限定されるものでは無い。
走行制御部149は、ステップS114において、YESと判定した場合、主変速スイッチ148(図4、図11参照)の操作に関わらず、主変速装置BCの変速段を主変速1速(低速)に固定する(ステップS115参照)。
なお、ステップS115では、走行制御部149は、1速クラッチB11と低速クラッチC2が接続され、且つ、2速クラッチB22〜4速クラッチB24、及び高速クラッチC1が遮断される様に、変速1ソレノイド153〜変速4ソレノイド156、高速クラッチソレノイド157、及び低速クラッチソレノイド158に所定の制御信号を出力することで、主変速装置BCの変速段を主変速1速(低速)に固定する。
これにより、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生した場合であって、ステップS109で説明した第2ルートによる解除操作が行われた場合は、主変速部を急に「主変速1速(低速)」にしてしまうと急減速してしまう。このため、車速に規定値(0.2km/h)を予め設定し、この規定値以下になるまでは「主変速1速(低速)」に固定する制御を行わない様にしておくことで、車速の急減速を防止することが出来る。
また、ステップS116では、走行制御部149は、上述した通信異常の有無の判定を定期的に実行し(ステップS116)、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が無いと判定した場合、この判定結果は、ステップS102で判定された通信異常が解消したことを意味するので、通常走行への移行を可能にするためにステップS103へ進む。
この場合、エンジン出力は、ステップS111において、アイドル状態に固定されており、且つ、主変速装置BCの変速段は、ステップS115において、主変速1速(低速)に固定された状態である。
従って、ステップS116からステップS103へ移行した場合は、走行制御部149により、主変速装置BCの変速段が主変速1速(低速)に固定された状態であると判定されるので、走行制御部149は、主変速スイッチ148の増速ボタン148a及び減速ボタン148b(図4、図11参照)の操作信号から、主変速スイッチ148の当該操作が、主変速1速の変速段に対応する操作であるか否かを判定し(ステップS117参照)、YESと判定すれば、走行制御部149は、主変速装置BCの変速段が主変速1速(低速)に固定された状態を解除し(ステップS118参照)、また、NOと判定すれば、走行制御部149は、主変速装置BCの変速段が主変速1速(低速)に固定された状態を継続する(ステップS119参照)。
ステップS117〜S119を設けたことにより、通信異常が解消されたときに(ステップS116参照)、主変速装置BCの変速段を、主変速スイッチ148の操作に対応する段に自動で合わせてしまうと、トラクタ100の車速が急加速することがあるので、これを防止することで安全性を向上させることが出来る。また、主変速スイッチ148の操作が主変速1速の変速段に対応すると判定された場合は、主変速装置BCの変速段が主変速1速(低速)に固定されている状態が速やかに解除され、操作性が回復する。
また、ステップS120では、走行制御部149は、エンジンの出力がアイドル状態に固定された状態であるか否かを判定し、YESであれば、走行制御部149は、アクセルセンサ159からの検知信号によりアクセル操作レバー402(図11参照)及びアクセルペダル401(図12参照)の操作位置がアイドル位置(アイドリング位置とも称す)に設定されているか否かを判定する(ステップS121参照)。
また、走行制御部149は、ステップS121において、YESと判定すれば、エンジン制御部124を介して、エンジン出力についてアイドル状態の固定を解除し(ステップS122参照)、ステップS102の直前に戻り、また、NOと判定すれば、エンジン出力についてアイドル状態の固定を維持し(ステップS123参照)、ステップS102の直前に戻る。
これにより、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間での通信異常が解消されたときに、エンジンの出力をアクセル操作レバー402等の操作位置に自動で合わせてしまうと、トラクタ100が急加速することがあるので、これを防止することで安全性を向上させることが出来る。また、アクセル操作レバー402等の操作位置がアイドル位置にあると判定された場合は、エンジン出力のアイドル固定状態が速やかに解除され、操作性が回復する。
また、作業者がトラクタ100の電源をONし、ステップS102で通信異常が有ると判定された後、上述した各ステップでの処理が行われる過程において、通信異常が解消された結果(ステップS116参照)、ステップS116からステップS103へ移行し、ステップS104を介して、図5に示す第1制御システムのフローチャートに移行し、各処理工程(図5のステップS1〜ステップS17参照)が適宜実行される。この様に、ステップS102で通信異常が有ると判定された後に、ステップS116で通信異常が解消されたと判定された場合において、ステップS104からステップS1(図5参照)に移行した場合は、トラクタ100の電源が投入された直後か否かに関わらず、ステップS1の処理が実行される構成である。
以上説明した様に、本実施の形態のトラクタ100によれば、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している場合でも、メモリ部149aに記録されている発進規制モードのON/OFF設定状態に応じて、前後進クラッチAの接続が規制されるため、盗難を防止することができ、且つ、モバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作レバー、操作スイッチ等の操作部による、メモリ部149aに予め記録されている一連の操作により、低速走行のみ許可される等の制限のもとで、発進規制モードを解除することが出来る。
なお、上記実施の形態では、発進規制モードの設定及び解除は、モバイル端末173から行うものとして説明したが、これに限らず例えば、メータパネル136にタッチパネル式の入力機能を設ける等して、発進規制モードのON設定、及びOFF設定(即ち、ON設定の解除)のための暗証番号の入力を行う構成としても良いし、或いは、ON設定ボタン、及びOFF設定ボタンをメータパネル136上のタッチパネルに表示して、これらのボタンにタッチすることで発進規制モードのON設定、及びOFF設定を行う構成としても良い。この場合、ステップS102、S116において判定対象となる通信異常は、メータパネル136の制御部と走行制御部149との間の通信異常である。また、この場合のメータパネル136の制御部は、本発明の第2制御部の一例にあたる。
また、上記実施の形態では、本実施の形態のトラクタ100の、モバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作レバー、操作スイッチ等の操作部の操作を、発進規制モードを解除するための解除指令として機能させるために、作業者が当該操作部による解除操作の手順を、モバイル端末173にインストールされた専用アプリケーションソフトを用いて設定する場合について説明したが、これに限らず例えば、当該操作部による解除操作の手順を走行制御部149に設けられたメモリ部149aに予め記録するための「解除操作設定モード」をメータパネル136のメモリ部(図示省略)に格納した構成とし、トラクタ100による作業開始に先立って、作業者が、例えば、入力スイッチ176(図8参照)を操作することで、メータパネル136の制御部において「解除操作設定モード」を起動させる構成としても良い。
また、上記実施の形態では、操作部による解除操作の手順を作業者が任意に選定して走行制御部149に設けられたメモリ部149aに予め記録する構成について説明したが、これに限らず例えば、操作部による解除操作の手順は製造段階において一律に定められている構成としても良い。
また、上記実施の形態では、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している場合において、モバイル端末173及びメータパネル136以外の既存の操作レバー、操作スイッチ等の操作部の操作を、発進規制モードを解除するための解除指令として機能させる構成について説明したが、これに限らず例えば、通信ユニット172と走行制御部149との間、又は、通信ユニット172とモバイル端末173との間で通信異常が発生している場合でも、発進規制モードを解除することが可能な専用の解除スイッチ(図示省略)を走行制御部149に設けた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、通信異常が有ると判定された場合に限り(ステップS102参照)、第2ルートによる解除操作で発進規制が解除される(ステップS109、S110参照)場合について説明したが、これに限らず例えば、通信異常の有無に関わらず、第2ルートによる解除操作で発進規制が解除される構成としても良い。
また、上記実施の形態では、通信異常が発生した場合、ステップS114(図10参照)において、車速が予め定められた規定値(0.2km/h)以下であると判定された場合に、走行制御部149は、主変速スイッチ148の操作に関わらず、主変速装置BCの変速段を主変速1速(低速)に固定する(ステップS115参照)構成について説明したが、これに限らず例えば、ステップS114の判定を省略した構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、本発明の主変速操作部の一例として押しボタンスイッチタイプの構成を用いた場合について説明したが、これに限らず例えば、ロータリースイッチタイプ、押しボタンスイッチタイプ、スクロールスイッチタイプ等により、主変速部の変速段の切り替え操作についての操作信号を直接に、又は、レバータイプである主変速レバーの変速位置を検知センサで検知してその検知結果を走行制御部に送信できる構成であればどの様な構成でも良い。
また、上記実施の形態では、副変速装置Dがメカ4段クラッチから成る場合について説明したが、これに限らず例えば、副変速装置Dは、昇圧ソレノイドによる油圧駆動で入り切り制御可能なクラッチで構成されていても良い。また、この構成の場合の副変速装置のクラッチを本発明のクラッチの一例として構成しても良い。
また、上記実施の形態では、ステップS102において通信異常が有ると判定された場合、ステップS111(図10参照)において、エンジン出力をアイドル状態に固定する構成について説明したが、これに限らず例えば、ステップS111において、エンジン出力をアイドル状態以外の、例えば、通常の走行時には用いない様な低速回転状態に固定する構成であっても良い。要するに、ステップS111において、エンジンの出力は、PTO軸11(図2参照)に装着する定置型作業機を駆動出来る程度の出力であって、通常の走行用としては低速走行しか出来ない出力に固定される構成であれば良い。これにより、通信異常が有る場合でも、定置型作業機による定置作業を可能としながら、トラクタ100の盗難防止状態を維持出来る。
本発明にかかる作業車両は、定置作業においても盗難防止状態を維持出来るという効果を有し、作業車両として有用である。
A 前後進クラッチ
B 四段変速クラッチ
C 高低切換クラッチ
BC 主変速装置
D 副変速装置
2 エンジン
3A PTO軸回転一定動力伝動装置
3B PTO軸回転車速順応型動力伝動装置
4 前輪
7 後輪
100 トラクタ
124 エンジン制御部(エンジンECU)
132 作業機昇降制御部(作業機昇降ECU)
136 メータパネル
148 主変速スイッチ
149 走行制御部(走行系ECU)
149a メモリ部
172 通信ユニット
173 モバイル端末
180 前後進レバー
181 解除コード
182 認証コード
B 四段変速クラッチ
C 高低切換クラッチ
BC 主変速装置
D 副変速装置
2 エンジン
3A PTO軸回転一定動力伝動装置
3B PTO軸回転車速順応型動力伝動装置
4 前輪
7 後輪
100 トラクタ
124 エンジン制御部(エンジンECU)
132 作業機昇降制御部(作業機昇降ECU)
136 メータパネル
148 主変速スイッチ
149 走行制御部(走行系ECU)
149a メモリ部
172 通信ユニット
173 モバイル端末
180 前後進レバー
181 解除コード
182 認証コード
Claims (6)
- エンジンと、
駆動輪と、
前記エンジンからの動力を前記駆動輪に伝達可能な動力伝達装置と、
前記動力の伝達を入り切りするクラッチと、
前記クラッチの入り切り動作を制御する第1制御部と、
前記第1制御部に対して、前記クラッチの入り動作を規制する規制指令の送信と、前記規制指令による規制内容を解除する解除指令の送信が可能な第2制御部と、を備え、
前記第1制御部は、前記第2制御部から送信された前記規制指令を記録するメモリ部を有し、前記メモリ部の記録内容に基づいて前記クラッチの入り切り動作を制御し、
前記第2制御部から前記規制指令と前記解除指令を前記第1制御部に対して指示する第1ルートとは異なる、少なくとも前記解除指令を前記第1制御部に対して指示する第2ルートと、を備えたことを特徴とする作業車両。 - 前記第2ルートにより指示された前記解除指令の実行は、前記第1制御部と前記第2制御部との間の通信異常が検知された場合に可能となる、請求項1に記載の作業車両。
- 前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記エンジンの出力を所定の出力以下に抑制する、ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
- 前記動力伝達装置は、前記動力を、副変速1速を下限とする複数段の何れかに変速する副変速部を有し、
前記副変速部の変速段の切り替え操作を行う副変速操作部と、
前記副変速部による前記切り替え操作の内容を検出する副変速センサと、を備え、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記第1制御部は、前記副変速センサの検出結果から前記変速段が前記副変速1速の変速段以外に切り替えられていると判定した場合は、前記クラッチの入り動作を規制する、ことを特徴とする請求項2または3に記載の作業車両。 - 前記動力伝達装置は、前記動力を、主変速1速を下限とする複数段の何れかに変速する主変速部を有し、
前記主変速部の変速段の切り替え操作を行う主変速操作部を備え、
前記規制内容が前記第2ルートによる前記解除指令に基づいて解除された場合は、前記第1制御部は、前記主変速操作部の前記切り替え操作に関わらず、前記主変速部を前記主変速1速の変速段に固定する、ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の作業車両。 - 前記第1制御部は、前記第1制御部と前記第2制御部との間の前記通信異常が検知されている場合において、前記第2ルートとしての所定の入力操作を検知した際、前記検知した前記所定の入力操作は前記解除指令の実行を意味するものと判定し、前記所定の入力操作が有する本来の機能は実行しない構成であり、
前記所定の入力操作の設定は、前記第2制御部により予め実行出来る、ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか一つに記載の作業車両。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016178606A JP2018043579A (ja) | 2016-09-13 | 2016-09-13 | 作業車両 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016178606A JP2018043579A (ja) | 2016-09-13 | 2016-09-13 | 作業車両 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018043579A true JP2018043579A (ja) | 2018-03-22 |
Family
ID=61694184
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016178606A Pending JP2018043579A (ja) | 2016-09-13 | 2016-09-13 | 作業車両 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018043579A (ja) |
-
2016
- 2016-09-13 JP JP2016178606A patent/JP2018043579A/ja active Pending
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