以下に、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明でいう作業車両の一例として示すトラクタの全体側面図で、機体前部のボンネット1内に搭載したコモンレール式のディゼルエンジン2の動力をPTO軸回転一定ミッションケース3A或いはPTO軸回転車速順応型ミッションケース3B内で適宜に変速して前輪軸4と後輪軸5に伝動して前輪6と後輪7の両方或は後輪7のみを駆動し、機体上のキャビン26内に設ける座席10に座った作業者が中央に立設するステアリングホイール8を操作して前輪6を操向しながら走行する。ステアリングホイール8の下方には前後進レバー180が設けられ、車両の前進、後進を切り替える。座席10の右側には副変速レバー183が設けられ、後述する副変速装置Dをメカリンクにより直接操作して変速比を変更する。前後進レバー180及び副変速レバー183の操作位置はそれぞれ前後進レバー操作位置センサ146及び副変速レバー操作位置センサ147により検出され、走行系ECU149に入力される(図4参照)。なお、前後進レバー180は本発明におけるクラッチ操作手段及び前後進クラッチ操作手段に相当し、副変速レバー183は、変速クラッチ操作手段に相当し、前後進レバー操作位置センサ146は、クラッチ操作検出手段及び前後進クラッチ操作検出手段に相当し、副変速レバー操作位置センサ147は変速クラッチ操作検出手段に相当する。
機体の後方へ突出するロワリンク9には、ロータリ耕運機などの作業機を装着し、ミッションケース3A(3B)から後方へ向かって突出するPTO軸11で装着する作業機を駆動する。
図2は、PTO軸回転一定ミッションケース3Aの動力伝動線図で、エンジン2の出力軸にメイン継手105で連結したメイン入力軸13に入力する。このメイン入力軸13には三個の第一メインギヤ106と第二メインギヤ108と第三メインギヤ20を固着して、第一メインギヤ106が前後進クラッチAの正転ギヤ107と第二メインギヤ108が第一カウンタギヤ18を介して前後進クラッチAの逆転ギヤ19と噛み合い、第三メインギヤ20がPTOクラッチFのPTO入力ギヤ21と噛み合って動力伝動している。
従って、前後進クラッチAの前進クラッチA1を入れると前後進クラッチAを装着した第一メイン軸23が正転し後進クラッチA2を入れると第一メイン軸23が逆転し、PTOクラッチFを入れるとPTOクラッチ軸103が回転する。
前後進クラッチAには前後進切換ソレノイド150及び前後進昇圧ソレノイド151を介して作動油が供給されており、前後進切換ソレノイド150によって前進クラッチA1又は後進クラッチA2のどちらかに作動油を供給する油路、あるいはどちらにも供給しない油路に切り換えることができる。
前後進昇圧ソレノイド151にはコイルに流す電流の大きさに比例する電磁力と弁機構内部のばねの弾性力とのバランスによって弁開度を任意に調節することができる比例制御弁が用いられており、これが作動油供給油路のリリーフ圧を調節することによって、前進クラッチA1及び後進クラッチA2の接続時のショックを低減している。
通常の走行時は、前後進レバー180を前進側に操作すると、前後進レバー操作位置センサ146がその位置を読み取って走行系ECU149に送信し、走行系ECU149はその値に応じて、前後進切換ソレノイド150を前進クラッチA1側に作動油供給する方向に切り換えて、前後進昇圧ソレノイド151に流す電流値を調整する。
反対に前後進レバー180を後進側に操作すると、前後進レバー操作位置センサ146がその位置を読み取って走行系ECU149に送信し、走行系ECU149はその値に応じて、前後進切換ソレノイド150を後進クラッチA2側に作動油供給する方向に切り換えて、前後進昇圧ソレノイド151に流す電流値を調整する。
さらに、前後進レバー180を中立位置に操作すると、前後進レバー操作位置センサ146がその位置を読み取って走行系ECU149に送信し、走行系ECU149はその値に応じて、前後進切換ソレノイド150をどちらにも供給しない油路に切り換えるので、前後進クラッチAは内部のばねの弾性力によって中立に保たれる。
このように前後進クラッチAは走行系ECU149によって動力の接続、遮断を自在に制御できる。
本発明におけるクラッチの接続を制限された状態では、前後進レバー操作位置センサ146の値にかかわらず、前後進クラッチAが中立に保たれる。
前後進クラッチAを中立に保つと、正転ギヤ107及び逆転ギヤ19の回転が第一メイン軸23に伝達されず、エンジン2の回転動力は切断された状態となる。
第一メイン軸23の回転は、主変速装置BCを構成する四段変速クラッチBと高低切換クラッチCと副変速装置Dを構成するメカ四段変速クラッチDで変速して走行最終変速軸であるベベルギヤ軸14に伝動され、変速段が4×2×4=32の32段で変速される。ベベルギヤ軸14から伝動される前輪6の回転は、増速クラッチEで後輪7よりも早く回転可能である。
メイン入力軸13から第三メインギヤ20とPTO入力ギヤ21で伝動されるPTOクラッチ軸103の回転は、PTOクラッチFから第一PTO軸22に伝動され、PTO変速機構Gで正転三段と逆転1段に変速される。
以下、動力伝動機構を詳細に説明する。
前後進クラッチA(前進クラッチA1と後進クラッチA2)で伝動された第一メイン軸23の回転は、軸端に固着した第一ギヤ15が四段変速クラッチBの一・三変速クラッチB1を装着した第一変速軸24に固着した第一変速ギヤ16と四段変速クラッチBの二・四変速クラッチB2を装着した第二変速軸25に固着した第二変速ギヤ17に噛み合って伝動する。
第一変速軸24と第二変速軸25の回転は、一速クラッチB11を繋ぐと第七ギヤ40から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第六ギヤ39に伝動して第二メイン軸42を回転し、二速クラッチB22を繋ぐと第九ギヤ38から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第八ギヤ37に伝動して第二メイン軸42を回転し、三速クラッチB13を繋ぐと第十一ギヤ31から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第十ギヤ30に伝動して第二メイン軸42を回転し、四速クラッチB24を繋ぐと第十三ギヤ36から第二メイン軸42にスプライン嵌合した第十二ギヤ41に伝動して第二メイン軸42を回転する。
一速クラッチB11は変速1ソレノイド153、三速クラッチB13は変速3ソレノイド154、二速クラッチB22は変速2ソレノイド155、四速クラッチB24は変速4ソレノイド156をそれぞれ走行系ECU149からの信号によって制御することで接続、遮断を自在にコントロールできる。これら4つのクラッチをすべて遮断すると、エンジン2の回転動力は遮断された状態となり、駆動輪まで伝達されない。
第二メイン軸42の回転は、第一継手43で高低切換軸44に伝動され、高低切換クラッチCの高速クラッチC1を繋ぐと高速クラッチギヤ45から第一カウンタ軸47の第十四ギヤ46に伝動され、高低切換クラッチCの低速クラッチC2を繋ぐと低速クラッチギヤ48から第一カウンタ軸47の第十六ギヤ49に伝動される。
高低切換クラッチCを駆動側軸に装着することで、メカ四段変速クラッチDの変速時に切る高低切換クラッチCの慣性回転力を少なく出来て、メカ四段変速クラッチDのシンクロ機能が良好になる。
また、高低切換クラッチCを四段変速クラッチBとメカ四段変速クラッチDとの間に設けることで、四段変速クラッチBを二重噛みで慣性回転を止めて高低切換クラッチCを切ることで、メカ四段変速クラッチDのシンクロ機能が良好に働き、変速が良好に行える。
高速クラッチC1は高速クラッチソレノイド157、低速クラッチC2は低速クラッチソレノイド158をそれぞれ走行系ECU149で制御することにより自在に接続、遮断することができる。両クラッチを遮断すると、エンジン2の回転動力は遮断された状態となり、駆動輪まで伝達されない。
第一カウンタ軸47の回転は、第二継手50で第二カウンタ軸51に伝動され、メカ四段変速クラッチDのメカ高変速クラッチD1を第十八ギヤ53側へ切り換えると、第十七ギヤ52から第十八ギヤ53に伝動しメカ高変速クラッチD1からベベルギヤ軸14を高速で駆動する。
また、メカ四段変速クラッチDのメカ高変速クラッチD1を第二十ギヤ55側へ切り換えると、第十九ギヤ54から第二十ギヤ55に伝動しメカ高変速クラッチD1からベベルギヤ軸14を中速で駆動する。
メカ低変速クラッチD2を第二十二ギヤ57側へ切り換えると、第十九ギヤ54から第二十ギヤ55に伝動し、第二十五ギヤ60から第二十六ギヤ61に伝動し、第二十七ギヤ62から第二十八ギヤ63に伝動し、メカ低変速クラッチD2からベベルギヤ軸14を低速で駆動する。
メカ低変速クラッチD2を第二十四ギヤ59側へ切り換えると、第十九ギヤ54から第二十ギヤ55に伝動し、第二十五ギヤ60から第二十六ギヤ61に伝動し、第二十七ギヤ62から第二十八ギヤ63に伝動し、第二十二ギヤ57から第二十一ギヤ56に伝動し、第二十三ギヤ58から第二十四ギヤ59に伝動し、メカ低変速クラッチD2からベベルギヤ軸14を極低速で駆動する。
メカ四段変速クラッチDは、第二十一ギヤ56と第二十六ギヤ61を第二カウンタ軸51に遊嵌することで、ベベルギヤ軸14と第二カウンタ軸51の二軸構成となって省スペースとなっている。
また、メカ四段変速クラッチDは、変速用の第十七ギヤ52と第十九ギヤ54と第二十六ギヤ61と第二十七ギヤ62と第二十一ギヤ56と第二十三ギヤ58が第二カウンタ軸51に設けられることで、シンクロ機能が良好になる。
ベベルギヤ軸14の回転は、このベベルギヤ軸14と一体に形成した第一ベベルギヤ64が後輪駆動軸65の第二ベベルギヤ66と噛み合って、後ベベルギヤ組83と後輪駆動軸65と後遊星ギヤ組84を介して後輪7を装着する後輪軸5を駆動する。
また、ベベルギヤ軸14にスプライン嵌合する第二十九ギヤ67が第三十ギヤ68と第三十一ギヤ69を介して第一前輪駆動軸71に固着の第三十二ギヤ70に噛み合って、第一前輪駆動軸71も駆動する。
第一前輪駆動軸71の前軸端に増速クラッチEを装着し、等速クラッチE2を繋ぐと第一前輪駆動軸71の回転がそのままで第二前輪駆動軸79に伝動し、増速クラッチE1を繋ぐと第三十三ギヤ75と第三十四ギヤ76と第三十五ギヤ77と第三十六ギヤ78を介して第一前輪駆動軸71の回転が増速して第二前輪駆動軸79に伝動される。
第二前輪駆動軸79の先は、従来と同様に、前ベベルギヤ組80と前縦駆動軸81と前遊星ギヤ組82を介して前輪6を装着する前輪軸4を駆動する。
前記PTO入力ギヤ21の回転は、PTOクラッチFを入れることでPTOクラッチ軸103から第三継手85と第一PTO軸22と第四継手86を介して第二PTO軸73を回転する。
第二PTO軸73に並設するPTOクラッチ軸104には、PTO変速機構Gを構成する第一PTO変速クラッチG1と第二PTO変速クラッチG2を設け、第一PTO変速クラッチG1を第三十八ギヤ88側に入れると第二PTO軸73の回転が第三十七ギヤ87と第三十八ギヤ88でPTOクラッチ軸104に低速で伝動され、第一PTO変速クラッチG1を第四十ギヤ91側に入れると第二PTO軸73の回転が第三十九ギヤ90と第四十ギヤ91でPTOクラッチ軸104に中速で伝動され、第二PTO変速クラッチG2を第四十二ギヤ93側に入れると第二PTO軸73の回転が第四十一ギヤ92と第四十二ギヤ93でPTOクラッチ軸104に高速で伝動され、第二PTO変速クラッチG2を第四十四ギヤ96側に入れると第二PTO軸73の回転が第四十三ギヤ95と第四十五ギヤ101と第四十四ギヤ96でPTOクラッチ軸104が逆回転で伝動される。
図3は、PTO軸回転車速順応型ミッションケース3Bで、PTO軸回転一定ミッションケース3AのPTO変速機構Gの一部を変更して構成する。
第四十五ギヤ101に噛み合う第二PTO軸73の第四十三ギヤ95を無くし、第四十五ギヤ101を固着するカウンタ軸97にベベルギヤ軸14の回転を伝動する第三十ギヤ68と噛み合う第四十六ギヤ98を設けて、第二PTO変速クラッチG2を第四十四ギヤ96側に切り替えると、第二十九ギヤ67から第三十ギヤ68と第四十六ギヤ98と第四十五ギヤ101と第四十四ギヤ96へ伝動して、ベベルギヤ軸14の回転変動に応じてPTOクラッチ軸104つまりはPTO軸11が変速する走行速度順応PTO回転(グランドPTO)となる。
第二十九ギヤ67から回転を受ける第三十ギヤ68と第三十二ギヤ70に回転を送る第三十一ギヤ69は一体となっていて、第三十ギヤ68に第四十六ギヤ98を噛み合わせることで走行速度順応PTO回転を得ているので、PTO軸回転一定ミッションケース3AとPTO軸回転車速順応型ミッションケース3Bの共通化となっている。
また、一体化した第三十ギヤ68と第三十一ギヤ69をPTOクラッチ軸104に遊嵌することで、構成を単純化出来ている。
本発明においては、クラッチの接続を制限して走行が不可能な状態であっても、エンジンは始動し、PTOクラッチFの作動油供給を制御するPTOクラッチソレノイド152は制限しないため、作業車両を動かすことなく使用する作業機、すなわちPTOから動力をとる定置型の作業機(例えば、発電機や木材破砕機など)は使用することができる。
次に、図4の制御ブロック図で、制御信号の流れを説明する。
まず、エンジンECU124には、エンジンモード選択スイッチ125からエンジンモードが入り、エンジン回転センサ126からエンジン回転数が入り、エンジンオイル圧力センサ127からエンジン潤滑オイルの圧力が入り、エンジン水温センサ128から冷却水の温度が入り、レール圧センサ129からコモンレールの圧力が入り、燃料高圧ポンプ130に駆動信号が出力され、高圧インジェクタ131に燃料供給調整制御信号が出力される。
次に、作業機昇降ECU132には、作業機昇降レバーに設ける作業機昇降センサ123の操作信号とリフトアームセンサ122の昇降信号と上げ位置規制ダイアル120の上げ位置規制信号と下げ速度ダイアル121の降下速度設定信号がそれぞれ入力し、メイン上昇ソレノイド133とメイン下降ソレノイド134に作業機昇降信号が出力し作業機昇降シリンダ135を作動する。
また、作業機昇降ECUには作業機用コネクタ171が設けられており、接続された作業機と定められた通信規格により双方向の通信を行うことができる。
エンジンECU124、作業機昇降ECU132、走行系ECU149及び通信ユニット172、メータパネル136はそれぞれが情報の処理能力を有しており、互いに双方向の通信を行うので、いずれも本発明における制御部としての機能を有する。
これらは互いに制御信号を交信し、メータパネル136の表示装置136Cにエンジンの状態や作業機の昇降状態、走行装置の走行速度等が表示される。メータパネル136には入力スイッチ166からの信号が入力され、入力スイッチ166の操作により、表示装置136Cの画面を切り替えながら、発進規制モードの設定や認証コードの入力等を行う。
通信ユニット172はタブレット端末やスマートフォンなどのモバイル端末173との間で無線通信によって信号の送受信を行う。車両には外付GPS174が設置され、その信号を受信しているときは、モバイル端末173から送信される内蔵GPS175の情報よりも外付GPS174の情報を優先し、外付GPS174からの信号を受信していないときは、内蔵GPS175の情報を使用する。
また、モバイル端末173からPTO操作の命令を受信すると、走行系ECUを介してPTOクラッチソレノイド152を操作するなどして、遠隔操作が可能に構成されている。
走行系ECU149は、変速1クラッチ圧力センサ138と変速2クラッチ圧力センサ139と変速3クラッチ圧力センサ140と変速4クラッチ圧力センサ141からクラッチ入信号即ちメカ四段変速クラッチDの変速段が入力し、高速クラッチ圧力センサ142と低速クラッチ圧力センサ143からメカ四段変速クラッチDの変速位置が入力し、前進クラッチ圧力センサ144と後進クラッチ圧力センサ145から前後進クラッチAの前進・中立・後進が入力し、前後進レバー180の操作位置を検出する、前後進レバー操作位置センサ146と副変速レバー操作位置センサ147から変速操作位置信号が入力し、スロットルレバーのアクセルセンサ159からアクセル指示信号が入力する。
さらに走行系ECU149には、車速センサ163から走行速度、作動油の油温センサを兼ねるミッションオイル油温センサ164からオイル温度、クラッチボタン162からメカ四段変速クラッチDの切換信号、PTOスイッチ165からPTOクラッチ152の切換信号がそれぞれ入力する。
走行系ECU149からの出力は、前後進切換ソレノイド150に前後進切換クラッチ101の切換信号が出力し、前後進昇圧ソレノイド151に前後進クラッチ作動油供給油路のリリーフ圧調整信号が出力してクラッチ接続のショックを低減し、PTOクラッチソレノイド152に入・切信号が出力し、一・三変速クラッチB1の一速を入切する油圧シリンダを制御する変速1ソレノイド153に一速の制御信号が出力し、三速を入切する油圧シリンダを制御する変速3ソレノイド154に三速の制御信号が出力し、二・四変速クラッチB2の二速を入切する油圧シリンダを制御する変速2ソレノイド155に二速の制御信号が出力し、四速を入切する油圧シリンダを制御する変速4ソレノイド156に四速の制御信号が出力し、高低切換クラッチCの高速を駆動する油圧シリンダを作動する高速クラッチソレノイド157と低速を駆動する油圧シリンダを作動する低速クラッチソレノイド158に高速クラッチの入信号及び低速クラッチの入信号が出力する。
図5は発進規制モードの設定及び解除に関するシステムのフローチャートである。はじめに発進規制モードの設定状態が判定され(ステップS1)、設定状態である場合、発進規制モードが設定状態であることをモバイル端末173に通知する信号を送信する(ステップS2)。モバイル端末173は発進規制モードが設定中であることを認識すると、画面上の発進規制モード設定ボタン173Aを非表示にする(ステップS3)。また、モバイル端末173はメータパネル136の表示装置136Cの表示画面も認識し(ステップS4)、表示画面が車速や変速段等を表示する通常画面でなければ、解除ボタンを設定不可表示にする(ステップS5)。
次に走行系ECU149は発進規制モードの解除操作が行われたかを判定し(ステップS6)、解除操作がない場合は処理を終了する。解除操作が行われた場合は、その解除操作がモバイル端末によるものかを判定する(ステップS7)、モバイル端末173による解除操作ではない場合、すなわち車両の入力スイッチ166による解除操作である場合は手動入力による認証コードを要求する(ステップS8)。モバイル端末173による解除操作である場合は、解除コード181をモバイル端末173に送信し(ステップS9)、モバイル端末173において解除コード181と、モバイル端末173に記憶された認証コード182とを比較して(ステップS10)、一致しない場合はコード認証が失敗した旨をメータパネルに表示して(ステップS11)処理を終了する。なお、解除操作が車両の入力スイッチ166による解除操作である場合、解除コードと入力された認証コードとの比較は走行系ECU149にて行われる。
解除コード181と認証コードが一致した場合は前後進レバー180の中立監視(ステップS12)と、副変速レバー183の中立監視(ステップS13)を行い、どちらか一方でも中立でなければ、中立位置に操作するように指示し(ステップS14)、両レバーの監視を繰り返す。両レバーが中立状態になれば、発進規制モードを解除し、前後進クラッチAを接続可能となる。
はじめの発進規制モードの設定状態の判定(ステップS1)で、発進規制モードが解除状態であれば、発進規制モードが解除状態であることをモバイル端末173に通知する信号を送信する(ステップS16)。モバイル端末173は発進規制モードが解除中であることを認識すると、画面上の発進規制モード解除ボタン173Bを非表示にする(ステップS17)。
次にメータパネル136の表示装置136Cの表示画面の認識(ステップS18)と、前後進レバー180の中立監視(ステップS20)と、副変速レバー183の中立監視(ステップS21)を行い、表示画面が通常画面で、かつ前後進レバー180と副変速レバー183がどちらも中立でない場合は、モバイル端末173の発進規制モード設定ボタン173Aを使用不可表示にする。
表示装置136Cの表示画面が通常画面で、かつ前後進レバー180と副変速レバー183がどちらも中立である場合は、発進規制モードの設定操作が行われたかどうかを判定し(ステップS22)、設定操作がなければ処理を終了し、設定操作があれば、モバイル端末173による設定か否かを判定する(ステップS23)。
モバイル端末173による設定操作ではない場合、すなわち車両の入力スイッチ166による設定操作である場合は手動入力による認証コードを要求する(ステップS24)。モバイル端末173による設定操作である場合は、解除コード181をモバイル端末173に送信し(ステップS25)、モバイル端末173において解除コード181と、モバイル端末173に記憶された認証コード182とを比較して(ステップS26)、一致しない場合はコード認証が失敗した旨をメータパネルに表示して(ステップS27)処理を終了する。
解除コード181と認証コードが一致した場合は発進規制モードを設定して前後進クラッチAの接続を禁止し、車両は走行できなくなる。
図6はメータパネル136の正面図である。中央に液晶画面部136C、左側にタコメータ136L、右側に各種機能の入り切り状況を表示する機能表示部136Rを備えている。液晶画面部136Cの通常画面時は車速や変速段、燃料残量や累積稼働時間等、運転時の情報が表示され、通常画面以外の表示に切り替えての液晶のコントラストを設定したり、異常発生時に記録される異常コードを確認したりすることができる。発進規制モードの設定は通常画面表示時に限定されており、プログラムの単純化、メモリの小容量化が図られている。
図7は前後進レバー180周辺の斜視図である。作業者はステアリングホイール8の下方に前後進レバー180にて前後進クラッチを操作し、さらにその下方に設けたれた入力スイッチ166により作業車両のメータパネル136に対して各種設定を行うことができる。モバイル端末173を使用せずに発進規制モードの設定または解除を実行する場合は、この入力スイッチ166を使用して表示装置136Cの表示画面を切換えながら、認証コードの入力を行う。
図8はモバイル端末173の画面である。専用アプリをインストールすることで発進規制モードの設定ボタン173Aと解除送信ボタン173Bが表示され、それぞれのボタンをタップすると、通信ユニット172に信号を送信する。通信ユニット172は発進規制モードの設定及び解除信号を受信すると、走行系ECU内に記憶されている解除コード181をモバイル端末173に送信し、モバイル端末173にて認証コード182と解除コード181の比較を行う。各コードが一致すると一致確認の信号が送信され、発進規制モードの入り切りが実行される。
図9(A)は使用不可状態の解除ボタン173Bを示す図であり、図9(B)は使用不可状態の設定ボタン173Aを示す図である。表示画面が通常画面以外を表示している場合や前後進レバー180または副変速レバー183が中立でない場合には設定ボタン173A及び解除ボタン173Bは使用不可状態となり、この場合に各ボタンをタップしてもモバイル端末173から発進規制モードを入り切りする信号は送信されない。
このように走行できる状態での発進規制モードの入り切りを禁止することで車両の走行中にモード設定することによる急停止を防ぐことができ、使用者も容易にモード設定の操作を行うことができる。また、クラッチを操作するレバーを検出する代わりに、車速センサ163や外付GPSまたはモバイル端末173の内臓GPS175により車両の運動を検出して、設定及び解除ボタンの使用不可表示を切り替えてもよい。
本実施例ではクラッチ接続規制の対象として主に前後進クラッチAについて述べたが、電子制御されるクラッチで、中立操作が可能なものであれば、四段変速クラッチBまたは高低クラッチCであってもよい。解除コード181については走行系ECUに記憶されたものとして述べたが、記憶装置を備え、情報処理機能を有するものであれば、エンジンECU124、作業機昇降系ECU132、メータパネル136、通信ユニット172に解除コード181を記憶させても、同様の効果を奏する。解除コードと認証コードとの比較については、モバイル端末173を用いた設定または解除ではモバイル端末173、入力スイッチ166による設定または解除では走行系ECU149にて行われたが、この処理も同様に情報処理機能を有するものであれば、エンジンECU124、作業機昇降系ECU132、メータパネル136、通信ユニット172で行ってもよい。
本実施例において、発進規制モードが有効な状態では、クラッチの接続が規制されているため、発進規制モードを無効にするまで、車両を走行させることができず、盗難を防止することができる。しかし、発進規制モードが有効な状態でもエンジンの始動は可能であり、かつPTOクラッチの接続は規制しないため、車両を走行させることなく行う作業、すなわち定置作業は発進規制モードを無効にせずとも実行することが可能である。さらに、定置作業中は運転者が搭乗していないことが想定されるため、走行が規制されている方がより安全に作業できる。