JP2018041998A - アンテナ、およびアンテナを有する電子装置 - Google Patents

アンテナ、およびアンテナを有する電子装置 Download PDF

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橋本  修
良介 須賀
Ryosuke Suga
良介 須賀
鈴木 達也
Tatsuya Suzuki
達也 鈴木
赤塚 泰昌
Yasumasa Akatsuka
泰昌 赤塚
茂木 繁
Shigeru Mogi
繁 茂木
洋和 小森
Hirokazu Komori
洋和 小森
剛志 稲葉
Tsuyoshi Inaba
剛志 稲葉
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Abstract

【課題】回路用基板を用いて、比較的高い周波数でも高いアンテナ利得得る。【解決手段】フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料である誘電体基板101と、フッ素樹脂に接する面の二次元粗度Raが0.2μm未満である銅箔102・103との積層体である回路用基板を有し、前記銅箔103によってアンテナパターンである放射素子部103aが形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、平面アンテナ、マイクロストリップアンテナ、パッチアンテナ等と称される、電波の送受信に用いられるアンテナ、およびそのようなアンテナを有する電子装置に関するものである。
電波を送受信するアンテナは、例えば電波の周波数が高くなるのに伴って、電子回路が形成されるプリント配線基板等と称される回路用基板上に、電子回路の配線パターンを利用して形成されることが多くなっている。
上記プリント配線基板等には、一般的に、エポキシ樹脂やポリイミドが広く用いられているが、周波数が数十ギガヘルツの高周波領域においては、誘電特性や吸湿性の観点から銅箔上にフッ素樹脂の絶縁層を形成した積層体が主に用いられている。
フッ素樹脂は、一般的に金属との接着力が高くないため、接着性を向上させるために金属の表面を粗化させる必要がある。しかしながら、1ギガヘルツ以上の高周波になると、信号は金属の表面を伝わりやすくなることが知られており(表皮効果)、伝送線路となる金属箔表面の凹凸が大きい場合、電気信号は導体の内部ではなく凹凸部の表面を迂回して伝わり、結果として伝送損失が大きくなるという問題が生じる。特許文献1の実施例においては表面粗度(Rz)が0.6〜0.7μmのものが例示されている。しかしながら高周波回路においては、例えば15ギガヘルツの場合、電気信号は金属表面から0.5μmの深さを伝わると言われており、更に周波数が高くなるにつれて、その深度は浅くなるため、このレベルの表面粗度では大きすぎる。
また、フッ素樹脂は線膨張率が一般的に100ppm/℃以上と高く、寸法安定性に問題がある。特許文献2から4には、フッ素樹脂フィルムとガラスクロスを組み合わせた回路用基板が記載されている。特許文献2では接着性を高めるために、接着剤付き銅箔が使用されているが、接着剤は通常エポキシ樹脂のため誘電特性が悪いと考えられ、高周波用途には適していない。また特許文献3では実施例において、銅箔として、三井金属株式会社製の3EC(厚さ18μm)が使用されているが、この銅箔の表面粗度Rzは同社の技術資料によれば5μm以上であり、前記のように高周波領域での使用には全く適さない。特許文献4には、表面粗度(Ra)が0.2μmの両面が粗化処理されていない銅箔が使用されているが、フッ素樹脂製の絶縁基板との接着のために、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルと液晶ポリマー樹脂とのブレンド体の複合フィルムである接着用樹脂フィルムを使用している。
特開2009−246201号公報 特開平1−317727号公報 特開平5−269918号公報 特開2007−98692号公報
本発明は、回路用基板を用いて、マイクロ波、ミリ波帯などの比較的高い周波数でも高い利得を容易に得ることができるアンテナ、およびそのようなアンテナを有する電子装置を提供することを目的としている。
本願発明者らは、本願発明に先立って、まず、表面粗度の低い銅箔と、フッ素樹脂フィルムと、ガラスクロスとを、接着用フィルムを用いることなく圧着して、高い周波数の信号に対して伝送損失が低い伝送路を形成でき、かつ、銅箔の接着性が高い回路用基板を得ることに成功した。そして、さらに、そのような回路用基板を用いると、伝送路の伝送損失を低減できるだけでなく、アンテナを形成することによって、比較的高い周波数でも高いアンテナ利得を容易に得られることを見出して、本願発明を完成した。
すなわち、第1の発明は、
アンテナであって、
フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料と、
前記フッ素樹脂に接する面の二次元粗度Raが0.2μm未満である銅箔との積層体である回路用基板を有し、
前記銅箔によってアンテナパターンが形成されていることを特徴とする。
第2の発明は、
アンテナであって、
2枚の銅箔の間にn枚のフッ素樹脂フィルムとn−1枚のガラスクロスが交互に積層されている回路用基板(nは2以上10以下の整数)を有し、
前記銅箔の樹脂に接する面の二次元粗度Raが0.2μm未満であり、
前記銅箔によってアンテナパターンが形成されていることを特徴とする。
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明のアンテナであって、
前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムの表面における、ESCAを用いて観察した際のOの存在割合が1.0%以上であることを特徴とする。
第4の発明は、
第1の発明から第3の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記銅箔は、少なくとも回路用基板の両面側に設けられ、一方面側の銅箔によってアンテナパターンが形成される一方、他方面側の銅箔によって地導体が形成されることにより、マイクロストリップアンテナが構成されていることを特徴とする。
第5の発明は、
第1の発明から第4の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料、またはフッ素樹脂フィルムとガラスクロスとが積層されているものの厚さが25μm以上、2mm以下であることを特徴とする。
第6の発明は、
第5の発明のアンテナであって、
前記フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料、またはフッ素樹脂フィルムとガラスクロスとが積層されているものの厚さが50μm以上、1mm以下であることを特徴とする。
第7の発明は、
第1の発明から第6の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記銅箔によって、さらに、前記アンテナパターンに接続される給電線が形成されていることを特徴とする。
第8の発明は、
第1の発明から第7の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記回路用基板が、3層以上の前記銅箔を有する多層基板であることを特徴とする。
第9の発明は、
第1の発明から第8の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムが表面改質されていることを特徴とする。
第10の発明は、
第1の発明から第9の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記銅箔と、前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムとの間の、前記回路用基板に対して90度方向への銅箔引きはがし強さが0.8N/mm以上であることを特徴とする。
第11の発明は、
第1の発明から第10の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むことを特徴とする。
第12の発明は、
第1の発明から第11の発明のうち何れか1つのアンテナであって、
前記回路用基板における誘電率が2以上、3.5以下、誘電正接が0.0003以上、0.005以下であることを特徴とする。
第13の発明は、
第12のアンテナであって、
前記回路用基板における誘電率が2.2以上、3.3以下、誘電正接が0.0005以上、0.004以下であることを特徴とする。
第14の発明は、
電子装置であって、
第1の発明から第13の発明のうち何れか1つのアンテナと、
前記回路用基板に設けられた電子回路とを有し、
前記銅箔によって、さらに、前記電子回路の配線パターンが形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、回路用基板を用いたアンテナにおいて、比較的高い周波数でも高い利得を容易に得ることができる。
発明の実施形態と比較例の伝送損失の例を示すグラフである。 発明の実施形態における減衰定数のシミュレート値と実測値の例を示すグラフである。 比較例における減衰定数のシミュレート値と実測値の例を示すグラフである。 発明の実施形態のアンテナを有する電子装置の構成を模式的に示す平面図である。 発明の実施形態のアンテナを有する電子装置の構成を模式的に示す正面図である。 発明の実施形態と比較例のアンテナ利得の例を示すグラフである。 発明の実施形態の変形例の電子装置の構成を模式的に示す正面図である。
(アンテナを形成するための回路用基板)
まず、本発明の実施形態のアンテナを形成するための回路用基板について説明する。
本発明の回路用基板に用いられる銅箔としては、少なくとも一方の面の表面粗度(Ra)が0.2μm未満の範囲内にあることが好ましく、0.15μm以下の範囲内にあることがより好ましい。表面粗度が0.2μm以上あると伝送損失が大きくなり、実用性能を満足しないことがある。銅箔の種類には電解箔と圧延箔があるが、どちらでも使用することができる。銅箔の厚さとしては通常5〜50μmであり、好ましくは8〜40μmである。
銅箔表面は、無処理の銅箔表面でもよく、また、該表面が金属メッキ処理、例えばニッケル、鉄、亜鉛、金、銀、アルミニウム、クロム、チタン、パラジウムまたは錫より選ばれる1種以上の金属でメッキ処理されていてもよく、また、無処理の銅箔表面もしくは前記金属メッキ処理された銅箔表面にシランカップリング剤などの薬剤で処理されていてもよい。好ましい金属メッキ処理としてはニッケル、鉄、亜鉛、金またはアルミニウムより選ばれる1種以上の金属メッキ処理であり、より好ましくはニッケル又はアルミニウムでの金属メッキ処理である。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、エチレン〔Et〕−TFE共重合体〔ETFE〕、Et−クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、CTFE−TFE共重合体、TFE−HFP共重合体〔FEP〕、TFE−PAVE共重合体〔PFA〕、及び、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
電気特性(誘電率・誘電正接)や耐熱性などの観点から、フッ素樹脂は、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素共重合体であることがより好ましい。
PFAは、TFEに基づく重合単位(TFE単位)、及び、PAVEに基づく重合単位(PAVE単位)を含む共重合体である。上記PFAにおいて、使用するPAVEは特に限定されず、例えば、下記一般式(1):CF=CF−ORf (1)(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。
上記PAVEとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であるものが好ましい。上記パーフルオロアルキル基の炭素数として、より好ましくは1〜5である。具体的には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)〔PBVE〕からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、耐熱性に優れる点でPPVEであることが特に好ましい。
上記PFAは、PAVE単位が1〜10モル%であるものが好ましく、PAVE単位が3〜6モル%であるものがより好ましい。また、上記PFAは、全重合単位に対して、TFE単位及びPAVE単位の合計が90〜100モル%であることが好ましい。
上記PFAは、さらに、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に基づく重合単位を含むことができる。上記TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一又は異なっており、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン及びCF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
PFAが、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に基づく重合単位を有するものである場合、PFAは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0〜10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90〜99.9モル%である。
FEPは、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位(TFE単位)、及び、ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位(HFP単位)を含む共重合体である。
FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70〜99/30〜1である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、80〜97/20〜3である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90〜99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
上述した共重合体の各単量体の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。上記フッ素樹脂は、メルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上であることが好ましく、2.5g/10分以上であることがより好ましく、10g/10分以上であることが更に好ましい。MFRの上限は、例えば、100g/10分である。
上記MFRは、ASTM D3307に準拠して、温度372℃、荷重5.0kgの条件下で測定し得られる値である。
フッ素樹脂の融点は、320℃以下であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましい。融点は、耐熱性および両面基盤を作製する上での加工性も鑑みると290℃以上が好ましく、295℃以上がより好ましい。
上記融点は、DSC(示差走査熱量測定)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークに対応する温度である。
フッ素樹脂フィルムを得る方法としては、上記溶融加工可能なフッ素樹脂又は該フッ素樹脂を含む組成物を成形することが挙げられる。成形方法としては、溶融押出し成形法、溶媒キャスト法、スプレー法等の方法が挙げられる。
本発明において用いられるフッ素樹脂フィルムの表面は、接着性を高めるために表面改質を行う。フッ素樹脂フィルムの表面改質は、従来より行なわれているコロナ放電処理やグロー放電処理、プラズマ放電処理、スパッタリング処理などによる放電処理が採用できる。例えば、放電雰囲気中に酸素ガス、窒素ガス、水素ガスなどを導入することで表面自由エネルギーをコントロールできる他、有機化合物を含む不活性ガスである有機化合物含有不活性ガスの雰囲気に改質すべき表面を曝し、電極間に高周波電圧をかけることにより放電を起こさせ、これにより表面に活性種を生成し、ついで有機化合物の官能基を導入もしくは重合性有機化合物をグラフト重合することによって表面改質を行うことができる。上記不活性ガスとしては、たとえば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
前記有機化合物含有不活性ガス中の有機化合物としては酸素原子を含有する重合性又は非重合性有機化合物が挙げられ、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル類;グリシジルメタクリレートなどのアクリル酸エステル類;ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、グリシジルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸、ギ酸などのカルボン酸類;メチルアルコール、エチルアルコール、フェノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、ギ酸エチルなどのカルボン酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸などのアクリル酸類などである。これらのうち改質された表面が失活しにくい、すなわち、寿命が長い点、安全性の面で取扱いが容易な点から、ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、ケトン類が好ましく、特に酢酸ビニル、グリシジルメタクリレートが好ましい。
前記有機化合物含有不活性ガス中の有機化合物の濃度は、その種類、表面改質されるフッ素樹脂の種類などによって異なるが、通常0.1〜3.0容量%、好ましくは0.1〜1.0容量%である。放電条件は目的とする表面改質の度合い、フッ素樹脂の種類、有機化合物の種類や濃度などによって適宜選定すればよい。通常、荷電密度が0.3〜9.0W・sec/cm2、好ましくは0.3W・sec/cm2以上3.0W・sec/cm2未満の範囲で放電処理する。処理温度は0℃以上100℃以下の範囲の任意の温度で行なうことができる。フィルムの伸びや皺などの懸念から80℃以下であることが好ましい。表面改質の度合いはESCAによって観察した際にO(酸素原子)の存在割合が1.0%以上のものであり、1.2%以上が好ましく、1.8%以上がより好ましく、2.5%以上が更に好ましい。上限に関しては特に規定はしないが、生産性やその他の物性への影響を鑑みると、15%以下であることが好ましい。N(窒素原子)の存在割合は特に規定されないが、0.1%以上あることが好ましい。またPFAフィルム1枚の厚さは通常10〜100μmであり、より好ましくは20〜80μmである。
ガラスクロスとしては市販のものが使用でき、樹脂との親和性を高めるためにシランカップリング剤処理を施されたものが好ましい。ガラスクロスの材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられるが、入手が容易である点からEガラス、Sガラス、NEガラスが好ましい。繊維の織り方としては平織でも綾織でも構わない。ガラスクロスの厚さは通常5〜90μmであり、好ましくは10〜75μmであるが、使用するフッ素樹脂フィルムよりは薄いものを用いる。
銅箔とフッ素樹脂とガラスクロスを複合化する方法としては、以下の二つの方法が挙げられるが、生産性を考慮すると(i)の方法が好ましい:(i)あらかじめ成形され表面処理がなされたフッ素樹脂のフィルムとガラスクロス及び銅箔を加熱下で圧着する方法、(ii)ダイスなどから押し出されたフッ素樹脂の溶融物とガラスクロスと加熱下で複合化した後、表面処理を行い銅箔と加熱下で圧着する方法。
前記加熱下での圧着、すなわち、熱圧着は通常250〜400℃の範囲内で、1〜20分間、0.1〜10メガパスカルの圧力で行うことが出来る。熱圧着温度に関しては、高温になると樹脂のしみ出しや、厚みの不均一化が起こる懸念があり、340℃未満であることが好ましく、330℃以下であることがより好ましい。熱圧着はプレス機を用いてバッチ式に行うこともでき、また高温ラミネーターを用いて連続的に行うこともできる。プレス機を用いる場合は空気の挟み込みを防ぎ、フッ素樹脂がガラスクロス内へ入り込みやすくするために、真空プレス機を用いることが好ましい。フッ素樹脂のガラスクロスへ入り込みにくい場合は、スルーホールを形成する際、メッキ液がガラスクロス内に浸透してしまい、スルーホール間にショートを生ぜしめるといった問題が発生し易い。
表面処理を行ったフッ素樹脂フィルムは、単体では表面粗度の低い銅箔に対して十分に接着することができず、熱圧着時に銅箔から染み出し、厚みの均一化も図れないが、上述の通り、ガラスクロスと複合化した場合は、線膨張率が十分下がり、さらに樹脂の染み出しも低減し、表面粗度Raが0.2μm未満である銅箔に対しても高い接着性を発現する。
積層体の構成は2枚の銅箔の間に、n枚のフッ素樹脂フィルムとn−1枚のガラスクロスを交互に積層したもの(nは2〜10の整数)からなるが、nの値は8以下が好ましく、6以下が更に好ましい。フッ素樹脂フィルムの厚さやガラスクロスの種類、及びnの値を変えることによって本発明の誘電体層のXY方向の線膨張率を変えることが出来るが、線膨張率の値は5〜50ppm/℃の範囲内が好ましく、10〜40ppm/℃の範囲内が更に好ましい。誘電体層の線膨張率が50ppm/℃を超えると銅箔と誘電体層との密着性が低くなり、また銅箔エッチング後に基板の反りや波打ちなどの不具合を生じやすくなる。
誘電体層においては、該表面から1〜50μmの深さに、ガラス繊維の一部または全部が存在することが好ましい。該範囲にガラス繊維の一部または全部が存在することにより、銅箔のピール強度が良好となり、更に溶融はんだ等の熱による変形等を抑えることができる。
本発明において高周波回路とは、単に高周波信号のみを伝送する回路からなるものだけでなく、高周波信号を低周波信号に変換して、生成された低周波信号を外部へ出力する伝送路や、高周波対応部品の駆動のために供給される電源を供給するための伝送路等、高周波信号ではない信号を伝送する伝送路も同一平面上に併設された回路も含まれる。
(回路用基板の実験例)
以下、回路用基板の実験例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明の回路用基板は以下の実験例に限定されるものではない。
<銅箔表面の測定方法>
株式会社小坂研究所製のSE−500を用い、触針法にて銅箔の表面粗度Raを測定した。
<フッ素樹脂表面のESCA分析>
X線光電子分光装置(株式会社島津製作所製のESCA−750)により測定した。
<銅箔・PFAフィルム層間の接着強度の測定方法>
JIS C5016−1994に準拠して、毎分50mmの速度で銅箔(厚さ18μm)を銅箔除去面に対して90°の方向に引きはがしながら、引っ張り試験機により、銅箔の引きはがし強さを測定し、得られた値を接着強度とした。
<誘電体層の線膨張率の測定方法>
JIS 6911に準拠して、TMA(熱機械測定装置)により測定した。
<誘電率、誘電正接の測定方法>
作成した両面基板の銅箔をエッチングした後、空洞共振器(関東電子応用開発株式会社製)により1GHzにて測定し、ネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー株式会社製、型式8719ET)にて解析した。
<伝送損失の測定方法>
エッチングにより、長さ10cmのマイクロストリップラインを作成し、ネットワークアナライザーを用いて20GHzにおける伝送損失を測定した。
(実験例1)
表面粗度Raが0.08μmである厚さ18μmの無粗処理電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製 製品名CF−T9DA−SV−18)2枚、厚さ50μmの両面に表面処理(フィルムを60〜65℃で予熱し、コロナ放電装置の放電電極とロール状接地電極(60℃)の近傍に、酢酸ビニルが0.13容量%含まれる窒素ガスを流しながら、フィルムをロール状接地電極に添わせて連続的に通過させ、荷電密度1.7w・s/cmでフィルムの両面をコロナ放電処理した)がなされ、ESCA表面分析による表面のO(酸素原子)の存在割合が2.62%であるテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルム(TFE/PPVE=98.5/1.5(モル%)、MFR:14.8g/10分、融点:305℃)を2枚、厚さ16μmのガラスクロス(株式会社製有沢製作所製IPCスタイル名1027)1枚を用意し、銅箔のマット面を内側にして、銅箔/PFAフィルム/ガラスクロス/PFAフィルム/銅箔の順に積層し、真空プレス機を用いて325℃で30分間熱プレスすることにより、厚さが134μmである本発明のアンテナに用いられる両面基板1を作成した。
(実験例2)
実験例1において両面処理がなされたPFAフィルムの代わりに、片面にのみ実験例1と同じ条件で表面処理がなされ、処理面のESCA表面分析によるO(酸素原子)の存在割合が2.62%であり、非処理面のESCA表面分析によるOの存在割合が0.61%であるテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルム(TFE/PPVE=98.5/1.5(モル%)、MFR:14.8g/10分、融点:305℃)2枚を用い、銅箔のマット面とPFAフィルムの処理面が向かい合うように、銅箔/PFAフィルム/ガラスクロス/PFAフィルム/銅箔の順に積層した以外は同様にして、厚さが132μmである本発明のアンテナに用いられる両面基板2を作成した。
(比較例1)
実験例1において銅箔を粗度Raが0.39μmである有粗化処理電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製 製品名CF−V9W−SV−18)に代えた以外は同様にして、厚さが135μmである比較両面基板1を作成した。
(比較例2)
実験例1において、ガラスクロスを除き、銅箔/PFAフィルム/PFAフィルム/銅箔の順に積層した以外は同様にして、比較両面基板2を作成した。
上記実験例1、2、比較例1、2の両面基板における銅箔とフッ素樹脂層の引きはがし強さを測定した。また銅箔をエッチングし、絶縁体層の誘電率、誘電正接及び線膨張率を測定した。更にマイクロストリップラインを作成し20GHzでの伝送損失を測定した。結果を下記(表1)に示す。
Figure 2018041998
上記表より、次のことがわかる。
1.実験例と比較例1の対比から、表面粗度の小さい銅箔を使用した本発明回路のほうが伝送損失が7割程度に少なくなっている。
2.実験例と比較例2の対比から、ガラスクロスを使用した本発明回路のほうが線膨張率が小さく、銅箔引きはがし強さも強い。ガラスクロスを使用しない比較例2では、フッ素樹脂フィルムの、ESCAを用いて表面観察した際、O(酸素原子)の存在割合が1.0%以上である面が銅箔に接着しているにもかかわらず、そのピール強度が1.4と低く、またプレス時に樹脂が銅箔から流れ出し、厚さは平均66μmまで低下し、更に厚さが不均一であったため、伝送損失は測定できなかった。
また、実験例1、2(本実施形態)の基板を用いたマイクロストリップラインについて、伝送信号の周波数に応じた伝送損失を測定した結果を図1に示す。また、同図には、参考例として、ROGERS社製のRO3003について測定した結果も併せて示す。実験例1、2、および参考例の何れの基板でも、周波数が高いほど伝送損失は大きくなるが、その増加程度は、実験例1、2の方が小さくなっている。
さらに、実験例1、2、比較例1の基板を用いたマイクロストリップラインについて、伝送信号の周波数に応じた減衰定数を実測するとともにシミュレーションによって求めた。実験例1、2、比較例1についての実測値とシミュレート値との比較を図2、図3に示す。
実験例1、2の場合の実測値は、図2に示すように、少なくとも50GHz以下の周波数全域に亘って、導体層の純銅に対する比導電率σr=1としたときのシミュレート値と比較的よく一致した。一方、比較例1の場合の実測値は、図3に示すように、周波数によって、比導電率σr=0.2〜0.6としたときのシミュレート値の範囲に変動した。
すなわち、比較例1のような基板を用いる場合の減衰定数をシミュレーションによって求めようとすると、例えば比導電率σrを実測して求めたりする必要がある。これに対して、実験例1、2のような基板を用いる場合には、シミュレーションによって減衰定数を求めることが容易にでき、回路設計をする際などの手間や時間を大幅に削減することができる。
なお、上記のような回路基板における誘電体層の誘電率は、2以上であることが好ましく、2.2以上であることが、より好ましい。また、3.5以下であることが好ましく、3.3以下であることが、より好ましい。また、誘電正接は、0.0003以上であることが好ましく、0.0005以上であることが、より好ましい。また、0.005以下であることが好ましく、0.004以下であることが、より好ましい。
(回路用基板用いたアンテナ、および送受信装置)
以下、上記実験例1、2で説明したような回路用基板を用いて構成されたアンテナ、およびそのようなアンテナを有する送受信装置の例について説明する。
上記送受信装置は、図4、図5に示すように、誘電体基板101の両面に銅箔102・103が設けられて成る回路用基板に、電子部品が実装された送受信回路部104が設けられて構成されている。
誘電体基板101の一方の面に設けられた銅箔102は、誘電体基板101の略全面に亘って配置され、地導体として作用するようになっている。一方、101の他方の面に設けられた銅箔103の一部は、矩形にパターニングされ、アンテナとして作用する放射素子部103aを構成している。また、銅箔103の他の一部は、細い帯状にパターニングされ、マイクロストリップラインとして作用する給電線部103bを構成している。
送受信回路部104は、例えばトランジスタなどの能動素子や抵抗、キャパシタなどの受動素子が、銅箔103の図示しない一部や他の多層に形成された銅箔による配線パターンなどにより接続されて、発振回路や変調回路、復調回路などを構成している。
上記のように構成されたアンテナについて所定の周波数での利得を測定した結果を図6に示す。ここで、図6における横軸は、図4に矢印Aで示す方向の線分を含み銅箔103に垂直な平面内で、銅箔103に垂直な方向の線分となす角度を示す。比較例1の回路用基板を用いた場合に比べて、実験例1、2の回路用基板を用いた場合には、より高い利得が得られた。すなわち表面粗度Raを小さく設定することによって、伝送損失が低減されるだけでなく、マイクロストリップアンテナを形成したときに高い利得を得ることができた。
(その他の事項)
上記の例では、放射素子部103aが矩形に形成されている例を示したが、これに限らず、例えば円形マイクロストリップアンテナが構成されるようにしたり、アレー化したりしてもよい。
また、回路用基板としては、誘電体層の両面側に銅箔が設けられた両面回路用基板が形成されて用いられる例について説明したが、これに限らず、片面回路用基板が用いられるようにしてもよいし、複数の誘電体層の間にも銅箔が設けられた多層基板が用いられるようにしてもよい。上記のような多層基板が、放射素子部の設けられている部分に適用される場合には、下記種々の給電方式を用いることやインピーダンス整合を取ることなどが容易になる。一方、多層基板が送受信回路部などの回路部に適用される場合には、回路素子や配線パターンの配置の自由度を高めることが容易にできる。
また、放射素子部103aへの給電は、放射素子部103aと同様にして形成された給電線部103bを介して行われる例を示したが、これに限らず、背面同軸給電方式や、共平面給電方式、スロット結合給電方式、近接結合給電方式、電磁結合方式などが用いられるようにアンテナパターンが形成されるようにしてもよい。
また、回路用基板上に、アンテナと共に送受信回路部が設けられている例を示したが、これに限らず、放射素子部103aと給電線部103bとが誘電体基板101に設けられて、別途設けられた送受信回路が給電線部103bに接続されるようにしてもよい。また、送受信装置に限らず、送信装置や、受信装置、その他のアンテナを用いる種々の電子装置を構成するようにしてもよい。
また、回路用基板は平面状に保たれたままで用いられるのに限らず、例えば図7に示すように放射素子部103aが形成された部分と、送受信回路部104が設けられた部分とが折り返されて用いられるようにしてもよい。これにより、装置の小型化を図ったり、アンテナと電子回路部との干渉を防止したりすることが容易にできる。
また、基板の厚さは、特に限定されないが、製造の容易さの点では、25μm以上が好ましく、50μm以上が、より好ましい。また、表面粗度が小さいことによる効果をより大きく得やすい点では、2mm以下が好ましく、1mm以下が、より好ましい。
上記のように、本発明によれば、表面粗度の低い銅箔とフッ素樹脂フィルムとの密着性、及び、寸法安定が高く、よって、線膨張率が小さく、また銅箔引きはがし強さが強く、かつ、高周波回路における電気信号の伝送損失を低減することができる回路用基板が得られることに加えて、さらに、比較的高い周波数でも高い利得を容易に得ることができるアンテナを得ることができる。
101 誘電体基板
102 銅箔
103 銅箔
103a 放射素子部
103b 給電線部
104 送受信回路部

Claims (14)

  1. フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料と、
    前記フッ素樹脂に接する面の二次元粗度Raが0.2μm未満である銅箔との積層体である回路用基板を有し、
    前記銅箔によってアンテナパターンが形成されていることを特徴とするアンテナ。
  2. 2枚の銅箔の間にn枚のフッ素樹脂フィルムとn−1枚のガラスクロスが交互に積層されている回路用基板(nは2以上10以下の整数)を有し、
    前記銅箔の樹脂に接する面の二次元粗度Raが0.2μm未満であり、
    前記銅箔によってアンテナパターンが形成されていることを特徴とするアンテナ。
  3. 請求項1または請求項2のアンテナであって、
    前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムの表面における、ESCAを用いて観察した際のOの存在割合が1.0%以上であることを特徴とするアンテナ。
  4. 請求項1から請求項3のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記銅箔は、少なくとも回路用基板の両面側に設けられ、一方面側の銅箔によってアンテナパターンが形成される一方、他方面側の銅箔によって地導体が形成されることにより、マイクロストリップアンテナが構成されていることを特徴とするアンテナ。
  5. 請求項1から請求項4のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料、またはフッ素樹脂フィルムとガラスクロスとが積層されているものの厚さが25μm以上、2mm以下であることを特徴とするアンテナ。
  6. 請求項5のアンテナであって、
    前記フッ素樹脂とガラスクロスとを含む複合材料、またはフッ素樹脂フィルムとガラスクロスとが積層されているものの厚さが50μm以上、1mm以下であることを特徴とするアンテナ。
  7. 請求項1から請求項6のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記銅箔によって、さらに、前記アンテナパターンに接続される給電線が形成されていることを特徴とするアンテナ。
  8. 請求項1から請求項7のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記回路用基板が、3層以上の前記銅箔を有する多層基板であることを特徴とするアンテナ。
  9. 請求項1から請求項8のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムが表面改質されていることを特徴とするアンテナ。
  10. 請求項1から請求項9のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記銅箔と、前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムとの間の、前記回路用基板に対して90度方向への銅箔引きはがし強さが0.8N/mm以上であることを特徴とするアンテナ。
  11. 請求項1から請求項10のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記フッ素樹脂、またはフッ素樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むことを特徴とするアンテナ。
  12. 請求項1から請求項11のうち何れか1項のアンテナであって、
    前記回路用基板における誘電率が2以上、3.5以下、誘電正接が0.0003以上、0.005以下であることを特徴とするアンテナ。
  13. 請求項12のアンテナであって、
    前記回路用基板における誘電率が2.2以上、3.3以下、誘電正接が0.0005以上、0.004以下であることを特徴とするアンテナ。
  14. 請求項1から請求項13のうち何れか1項のアンテナと、
    前記回路用基板に設けられた電子回路とを有し、
    前記銅箔によって、さらに、前記電子回路の配線パターンが形成されていることを特徴とする電子装置。
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