JP2018041719A - 電極材料、該電極材料の製造方法、電極、及びリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池に比べて、軽量かつ小型で高エネルギーを有しており、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯用電子機器の電源として用いられているが、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動工具などの高出力電源としても検討されている。これらの高出力電源として用いられる電池の電極活物質には、高速の充放電特性が求められている。また、発電負荷の平滑化や、定置用電源、バックアップ電源などの大型電池への応用も検討されており、長期の安全性、信頼性と共に資源量の問題が無いことも重要視されている。
しかしながら、多量の導電性物質を用いた複合化は電極密度の低下を招くために、電池の密度低下、即ち単位容積当たりの容量低下を引き起こしてしまう。この問題を解決する方法として、電子導電性物質である炭素前駆体として、有機物溶液を用いた炭素被覆法が見出された。有機物溶液と電極活物質粒子を混合後、乾燥し、非酸化性雰囲気下で熱処理することで、有機物を炭化させる本手法は、必要最低限の電子導電性物質を、電極活物質粒子表面に、極めて効率良く被覆させることが可能であり、電極密度を大きく低下させることなく、導電性の向上を図ることができる。
ところが、炭素源である有機物の炭化温度は一般に高温であるため、これらの電極材料の製造の際に、活物質粒子同士が接触し、高温炭化時に一部が焼結、粒子成長してしまい、微細な粒子が得られない等の問題があった。特に、より高結晶性の(高導電性の)炭素被覆を得るためには炭化温度が高い方が好ましいのに対し、活物質粒子同士の焼結、粒子成長を抑制するためには高温に暴露させないことが重要であり、両者はトレードオフの関係であった。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子と、前記電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子を被覆する炭素質被膜とを有する炭素質被覆電極活物質からなり、前記炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径が30nm以上200nm以下、X線回折測定における(020)面の半値幅から求めた結晶子径が30nm以上100nm以下であり、前記炭素質被覆電極活物質の二次粒子の平均粒子径が0.5μm以上60μm以下であり、前記炭素質被覆電極活物質のBET法により求めた比表面積が10m2/g以上25m2/g以下、炭素含有量が0.5質量%以上2.5質量%以下であることを特徴とする電極材料。
[2]前記電極活物質が、下記一般式(1)で表される電極活物質材料であることを特徴とする上記[1]に記載の電極材料。
LiaAxBO4 (1)
(但し、式中、AはMn、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される少なくとも1種、BはP、Si、及びSからなる群より選択される少なくとも1種、0≦a<4、0<x<1.5である。)
[3]炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する第一工程と、前記第一工程で得られた混合物を加湿して、固形物を得る第二工程と、前記第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する第三工程とを有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の電極材料の製造方法。
[4]前記高吸水性高分子(B)は自重の10倍以上の水を吸収する高分子であることを特徴とする上記[3]に記載の電極材料の製造方法。
[5]上記[1]及び[2]に記載の電極材料を用いてなることを特徴とする電極。
[6]上記[5]に記載の電極からなる正極を備えたことを特徴とするリチウムイオン電池。
本発明の電極材料は、電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体と、電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体を被覆する炭素質被膜とを有する炭素質被覆電極活物質からなり、該電極材料は、造粒された顆粒体である。また、該炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径が30nm以上200nm以下、X線回折測定における(020)面の半値幅から求めた結晶子径が30nm以上100nm以下、BET法により求めた比表面積が10m2/g以上25m2/g以下、炭素含有量が0.5質量%以上2.5質量%以下であることを特徴とする。
LiaAxBO4 (1)
(但し、式中、AはMn、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される少なくとも1種、BはP、Si、及びSからなる群より選択される少なくとも1種、0≦a<4、0<x<1.5である。)
BはP、Si、及びSからなる群より選択される少なくとも1種であり、中でも、安全性及びサイクル特性に優れる観点から、Pが好ましい。
aは、0以上4未満であり、好ましくは0.5以上3以下、より好ましくは0.5以上2以下であり、特に1が好ましい。xは、0超過1.5未満であり、好ましくは0.5以上1以下であり、中でも1が好ましい。
LiaAxBO4は、例えば、Li源と、A源と、B源と、水と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成し、得られた沈殿物を水洗して得られる。また、水熱合成により電極活物質前駆体を生成し、さらに電極活物質前駆体を焼成することでも同様の活物質粒子が得られる。水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
ここで、Li源としては、酢酸リチウム(LiCH3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩及び水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられ、酢酸リチウム、塩化リチウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
A源としては、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。例えば、A源がFeである場合、Fe源としては、塩化鉄(II)(FeCl2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)、硫酸鉄(II)(FeSO4)等の2価の鉄塩が挙げられ、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、及び硫酸鉄(II)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
B源としては、P、Si、及びSからなる群より選択される少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。例えば、B源がPである場合、P源としては、リン酸(H3PO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)等のリン酸化合物が挙げられ、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、及びリン酸水素二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、上記結晶子径は、X線回折装置(例えば、RINT2000、RIGAKU製)により測定し、得られる粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、及び回折角(2θ)を用い、シェラーの式により算出することができる。
上記一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察により測定した200個以上の粒子の粒子径を個数平均することで求めることができる。
なお、上記比表面積は、BET法により、比表面積計(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて測定することができる。
なお、上記炭素含有量は、炭素分析計(例えば、株式会社堀場製作所製、炭素硫黄分析装置EMIA−810W)を用いて測定することができる。
なお、上記圧粉体の抵抗率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の電極材料の製造方法は、炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する第一工程と、前記第一工程で得られた造粒物を加湿して、固形物を得る第二工程と、前記第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する第三工程とを有することを特徴とする。
本工程は、炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する工程である。
有機物(A)、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)としては、それぞれ上記[電極材料]の項で説明したものを用いることができる。
また、本明細書において高吸水性高分子(B)とは、35℃、相対湿度100%で48時間放置した際に、少なくとも自重の数倍から数十倍の水を吸水して膨潤する性質を有する高分子材料のことを意味する。
本発明では、電極活物質の粒子成長、及び焼成を抑制する観点から、上記高吸水性高分子(B)は、自重の10倍以上の水を吸収する高分子であることが好ましく、自重の100倍以上の水を吸収する高分子であることがより好ましい。
本工程は、第一工程で得られた造粒物(混合物)を加湿して、固形物を得る工程である。
第一工程で得られた造粒物を加湿すると、該造粒物中の高吸水性高分子(B)が膨潤するため、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)の粒子間隙が拡大し、該電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)の粒子間で物質移動が抑制される。これにより、後述する熱処理の際に、高温で加熱しても該粒子の成長、及び焼結が起こりにくくなり、電極活物質の結晶子径を前述の範囲内とすることができる。
本工程は、第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する工程である。
非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H2)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、熱処理時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O2)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入してもよい。
熱処理温度が600℃未満では、有機物の炭化が不十分となり、電子伝導性を高めることができないおそれがあり、1000℃超過では、活物質の分解が生じたり、粒子成長を抑制できないおそれがある。
また、昇温速度は、好ましくは10℃/分以上、より好ましくは20℃/分以上で行う。10℃/分以上とすることで、第二工程で膨潤した高吸水性高分子の乾燥収縮が抑制され、電極活物質の粒子成長、及び焼結を起こしにくくすることができる。
本発明の電極は、本発明の電極材料を用いてなる。
本発明の電極を作製するには、上記の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部〜30質量部、好ましくは3質量部〜20質量部とする。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、直流抵抗を低下させ、放電容量を高めることができる電極を作製することができる。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の電極からなる正極を備える。
このリチウムイオン電池は、本発明の電極材料を用いて電極を作製することにより、電極の内部抵抗を小さくすることができる。したがって、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下するおそれもなく、高速の充放電を行うことができるリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の電極からなる正極を備えるため、高い放電容量を有する。
例えば、本実施例では、導電助剤としてアセチレンブラックを用いているが、カーボンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料を用いてもよい。また、対極にLi4Ti5O12を用いた電池で評価しているが、当然ながら天然黒鉛、人造黒鉛、コークスのような炭素材料、Li金属やLi合金等の負極材料を用いてもよい。また、非水電解液(非水電解質溶液)として1mol/LのLiPF6を含む炭酸エチレンと炭酸ジエチルを体積%で1:1に混合したものを用いているが、LiPF6の代わりにLiBF4やLiClO4、炭酸エチレンの代わりにプロピレンカーボネートやジエチルカーボネートを用いてもよい。また電解液とセパレーターの代わりに固体電解質を用いてもよい。
LiFePO4の合成は以下のようにして水熱合成で行った。
Li源としてLiOH、P源としてNH4H2PO4、Fe源(B源)としてFeSO4・7H2Oを用い、これらを物質量比でLi:Fe:P=3:1:1となるように純水に混合して200mlの均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量500mLの耐圧密閉容器に入れ、170℃で12時間、水熱合成を行った。この反応後に室温(25℃)になるまで冷却して、沈殿しているケーキ状態の反応生成物を得た。この沈殿物を蒸留水で複数回、十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持しケーキ状物質とした。このケーキ状物質を若干量採取し、70℃で2時間真空乾燥させて得られた粉末をX線回折で測定したところ、単相のLiFePO4が形成されていることが確認された。
B源として、FeSO4・7H2Oの代わりにMnSO4・H2Oを用いた以外は、製造例1と同様にしてLiMnPO4を合成した。
B源として、FeSO4・7H2O:MnSO4・H2O=25:75(物質量比)の混合物を用いた以外は、製造例1と同様にしてLi[Fe0.25Mn0.75]PO4を合成した。
製造例1で得られたLiFePO4(電極活物質)20gと、炭素源としてポリビニルアルコール(PVA)0.73gと、高吸水性高分子としてポリアクリル酸ナトリウム0.05gとを総量で100gとなるように水に混合し、5mmφのジルコニアボール150gとともにボールミルで粉砕混合して、スラリー(混合物)を得た。
次いで、得られたスラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒した。その後、得られた造粒物を高湿度環境(30℃、相対湿度100%RH)で1時間静置し、ポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性高分子)を膨潤させた後、窒素(N2)雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、温度770℃で4時間、熱処理を行い、炭素質被覆電極活物質からなる電極材料を得た。
高吸水性高分子として、ポリアクリル酸ナトリウムの代わりにポリアルギン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして炭素質被覆電極活物質からなる電極材料を得た。
実施例1と同様にして造粒物を得た。該造粒物を100cm2の矩形容器に均一に広げた後、該造粒物に重量の1%相当の水を霧吹きでかけることで、高吸水性高分子を膨潤させた。次いで、窒素(N2)雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、温度770℃で4時間、熱処理を行い、炭素質被覆電極活物質からなる電極材料を得た。
LiFePO4の代わりに、LiMnPO419gと、炭化触媒として、LiFePO41g相当の炭酸Li−酢酸鉄(II)−リン酸(Li:Fe:P=1:1:1)混合溶液とを用い、炭素源としてポリビニルアルコール(PVA)1.1g、高吸水性高分子としてポリアクリル酸ナトリウム0.05gを用いた以外は実施例1と同様にして炭素質被覆電極活物質からなる電極材料を得た。
LiFePO4の代わりに、Li[Fe0.25Mn0.75]PO4を用いた以外は実施例1と同様にして炭素質被覆電極活物質からなる電極材料を得た。
高吸水性高分子として、ポリアクリル酸ナトリウムの代わりにポリアルギン酸ナトリウムを用い、添加量を2倍の0.1gとした以外は実施例1と同様にして炭素質被覆電極活物質からなる電極材料を得た。
高吸水性高分子を添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の電極材料を得た。
製造例1で得られたLiFePO4(電極活物質)20gと、炭素源としてポリビニルアルコール(PVA)0.73gと、高吸水性高分子としてポリアクリル酸ナトリウム0.05gとを総量で100gとなるように水に混合し、5mmφのジルコニアボール150gとともにボールミルで粉砕混合して、スラリー(混合物)を得た。
次いで、得られたスラリー中の高吸水性高分子を膨潤させないように、該スラリーをスプレードライヤーで乾燥した直後、窒素(N2)雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、温度770℃で4時間、熱処理を行い、比較例2の電極材料を得た。
熱処理時の昇温速度を1.5℃/分に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の電極材料を得た。
高吸水性高分子を添加しなかった以外は実施例4と同様にして比較例4の電極材料を得た。
高吸水性高分子を添加しなかった以外は実施例5と同様にして比較例5の電極材料を得た。
炭素源としてショ糖2.5gを加え、高吸水性高分子を添加せず、熱処理を温度600℃で0.5時間とした以外、実施例1と同様にして比較例6の電極材料を得た。
実施例及び比較例で得られた電極材料と、導電助材としてアセチレンブラック(AB)と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、電極材料:AB:PVdF=90:5:5の重量比で、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に混合し、正極材料ペーストとした。得られたペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔上に塗布、乾燥後、所定の密度となるように圧着して電極板とした。
得られた電極板を3×3cm2(塗布面)+タブしろの板状に打ち抜き、タブを溶接して試験電極を作製した。
一方、対極には同様にLi4Ti5O12を塗布した塗布電極を用いた。セパレーターとしては、多孔質ポリプロピレン膜を採用した。また、非水電解液(非水電解質溶液)として1mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)溶液を用いた。なお、このLiPF6溶液に用いられる溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを体積%で1:1に混合し、添加剤として炭酸ビニレン2%を加えたものを用いた。
そして、以上のようにして作製した試験電極、対極および非水電解液を用いて、ラミネート型のセルを作製し、実施例および比較例の電池とした。
実施例及び比較例で得られた電極材料、及び該電極材料が含む成分について物性を評価した。評価方法は、以下の通りである。なお、結果を表1に示す。
電極活物質の結晶子径は、X線回折測定(X線回折装置:RINT2000、RIGAKU製)により測定した粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、及び回折角(2θ)を用い、シェラーの式により算出した。
炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察により測定した200個以上の一次粒子の粒子径を個数平均することで求めた。
炭素分析計(株式会社堀場製作所製、炭素硫黄分析装置EMIA−810W)を用いて、電極材料の炭素量(質量%)を測定した。
比表面積計(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて、電極材料の比表面積を、窒素(N2)吸着によるBET法により測定した。
電極材料を金型に投入して50MPaの圧力にて成形し、試料を作製した。低抵抗率計(三菱化学株式会社製、商品名:Loresta−GP)を用いて、25℃にて四端子法により、試料の粉体抵抗値(Ω・cm)を測定した。
ポリビニルピロリドン0.1%を水に溶解した分散媒に、電極材料を懸濁させて、レーザー回折式粒度分析装置を用いて測定した。
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン電池を用いて放電容量と充放電の直流抵抗(DCR)を測定した。結果を表1に示す。
環境温度0℃にて、実施例1、2、3、6及び比較例1、2、3、6の電池では、カットオフ電圧を1−2V(vsLi4Ti5O12)とし、実施例4、5、及び比較例4、5の電池では、カットオフ電圧を1.2−3V(vsLi4Ti5O12)とし、充電電流を1C、放電電流を3Cとして定電流充放電により放電容量を測定した。
リチウムイオン電池について、環境温度0℃にて0.1Cの電流で5時間充電し、充電深度を調整した(充電率(SOC)50%)。SOC50%に調整した電池に、第1サイクルとして「1C充電を10秒→休止10分→1C放電を10秒→休止10分」、第2サイクルとして「3C充電を10秒→休止10分→3C放電を10秒→休止10分」、第3サイクルとして「5C充電を10秒→休止10分→5C放電を10秒→休止10分」、第4サイクルとして「10C充電を10秒→休止10分→10C放電を10秒→休止10分」を、この順で実施し、その際の各充電、放電時10秒後の電圧を測定した。各電流値を横軸に、10秒後の電圧を縦軸にプロットして近似直線を描き、近似直線における傾きをそれぞれ充電時の直流抵抗(充電DCR)、放電時の直流抵抗(放電DCR)とした。
実施例1〜6の電極材料は、高吸水性高分子の膨潤に伴う電極活物質の粒子間隙の拡張により、粒子間の物質移動が抑制され、高温での熱処理においても粒子の成長、焼結が抑制されたため、少量の炭素源添加(炭素量)でも、炭素質被膜の電子伝導性は十分に向上し、放電容量が増加し、直流抵抗の低減が確認できた。
一方、比較例1、4、及び5の電極材料は、高吸水性高分子を添加しないため、電極活物質の粒子間隙が拡張せずに、熱処理に伴う粒子の成長が起こり、その結果、放電容量が低下し、直流抵抗の増加が見られた。比較例2の電極材料は、高吸水性高分子を膨潤させていないため、電極活物質の粒子間隙が拡張せずに、熱処理に伴う粒子の成長が起こり、その結果、放電容量が低下し、直流抵抗の増加が見られた。比較例3の電極材料は、熱処理時の昇温速度が遅く、膨潤した高吸水性高分子が再び乾燥収縮してしまい、再度、電極活物質の粒子間隙が近接し、その後に高温炭化したことで、粒子の成長が起こり、その結果、放電容量が低下し、直流抵抗の増加が見られた。また、比較例6の電極材料は高吸水性高分子を添加していないものの、熱処理温度が低く、時間も短いことから、粒子の成長は激しくはない。しかしながら、その分有機物の炭化が不十分で、圧粉体抵抗が大きく、直流抵抗も大きくなっている。
Claims (6)
- 下記一般式(1)で表される電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子と、
前記電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子を被覆する炭素質被膜とを有する炭素質被覆電極活物質からなり、
前記炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径が30nm以上200nm以下、X線回折測定における(020)面の半値幅から求めた結晶子径が30nm以上100nm以下であり、
前記炭素質被覆電極活物質の二次粒子の平均粒子径が0.5μm以上60μm以下であり、
前記炭素質被覆電極活物質のBET法により求めた比表面積が10m2/g以上25m2/g以下、炭素含有量が0.5質量%以上2.5質量%以下であることを特徴とする電極材料。
LiaAxBO4 (1)
(但し、式中、AはMn、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される少なくとも1種、BはP、Si、及びSからなる群より選択される少なくとも1種、0≦a<4、0<x<1.5である。) - 前記炭素質被覆電極活物質を50MPaの圧力で成形した圧粉体の抵抗率が1MΩ・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極材料。
- 炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する第一工程と、
前記第一工程で得られた造粒物を加湿して、固形物を得る第二工程と、
前記第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する第三工程とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電極材料の製造方法。 - 前記高吸水性高分子(B)は自重の10倍以上の水を吸収する高分子であることを特徴とする請求項3に記載の電極材料の製造方法。
- 請求項1及び2に記載の電極材料を用いてなることを特徴とする電極。
- 請求項5に記載の電極からなる正極を備えたことを特徴とするリチウムイオン電池。
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