以下、本発明の実施の形態による緩衝器として油圧緩衝器を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、油圧緩衝器1は、シリンダ装置2と、直動型アクチュエータ21とを備えている。シリンダ装置2は、外筒3、内筒4、ピストンロッド5、ピストン6、車体取付マウント10等を有している。
外筒3は、シリンダ装置2の外殻をなす筒状に形成されている。この外筒3は、内筒4の外周側を覆って設けられている。外筒3の軸方向一側となる基端側(図1中の下端)は、ボトムキャップ(図示せず)によって閉塞された閉塞端となっている。外筒3の軸方向他側となる先端側(図1中の上端)は、開口端部となっている。外筒3の開口端部と内筒4との間には、ロッドガイド7とピストンシール9が設けられている。
外筒3の内部には、外筒3と同軸に内筒4が設けられている。この内筒4は、外筒3と共にシリンダパイプを構成している。内筒4の基端側は、ボトムバルブ(図示せず)に嵌合して取付けられている。内筒4の先端側は、ロッドガイド7に嵌合して取付けられている。外筒3内および内筒4内には作動流体としての作動液(図示せず)が封入されている。なお、作動液としてはオイルに限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
内筒4と外筒3との間には、環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、作動液(油液)と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド5の縮小時(縮み行程)にピストンロッド5の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストンロッド5は、基端側が内筒4内に挿入され、先端側がロッドガイド7、シリンダ外殻8等を介して内筒4の外部へと伸縮可能に突出(延出)している。ピストンロッド5の基端側には、ピストン6が連結されている。
ピストン6は、ピストンロッド5の基端側に設けられ、内筒4内に摺動可能に嵌装されている。このピストン6は、内筒4内を下側のボトム側室Bと上側のロッド側室Cとを連通可能な油路6A,6Bが形成されている。さらに、ピストン6の上面側(先端面側)には、縮小側のディスクバルブ6Cが設けられている。縮小側のディスクバルブ6Cは、ピストンロッド5が縮小方向に摺動変位するときに油路6Aを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生させる。一方、ピストン6の下面側(基端面側)には、伸長側のディスクバルブ6Dが設けられている。伸長側のディスクバルブ6Dは、ピストンロッド5が伸長方向に摺動変位するときに油路6Bを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生させる。
ロッドガイド7は、外筒3の開口端側に嵌合されると共に、内筒4の開口端側にも固定して設けられている。これにより、ロッドガイド7は、内筒4の開口端側を外筒3と同軸となるように位置決めしている。これに加え、ロッドガイド7は、その内周側でピストンロッド5を軸方向へと摺動可能に案内(ガイド)している。
シリンダ外殻8は、外筒3の開口端部を覆って外筒3に取り付けられ、外筒3の開口端側を閉塞する蓋体を構成している。シリンダ外殻8は、円筒状の筒部8Aと、筒部8Aの軸方向先端側に設けられ径方向内向きに突出した円板状の閉塞板部8Bとを有している。閉塞板部8Bの径方向中心部分には、ピストンロッド5が挿通される挿通孔8Cが設けている。
ピストンシール9は、円環状に形成され、シリンダ外殻8の閉塞板部8Bとロッドガイド7との間に取り付けられている。このピストンシール9は、例えば金属製リングにゴム等の弾性材料を焼き付けることによって形成されている。ピストンシール9は、その中心にピストンロッド5が挿通されると共に、その内周がピストンロッド5の外周側に摺接している。これにより、ピストンシール9は、ピストンロッド5との間をシールしている。
車体取付マウント10は、ピストンロッド5の先端部に取り付けられている。この車体取付マウント10は、車体取付部を構成し、油圧緩衝器1のピストンロッド5の先端部を車体に取付けるものである。また、車体取付マウント10は、段付筒状に形成され、2つのばね受け10A,10Bを備えている。外径側ばね受け10Aは、ピストンロッド5から径方向に離れた外径側に配置され、スプリングシート11との間でサスペンションスプリング12(懸架ばね)を支持している。内径側ばね受け10Bは、外径側ばね受け10Aよりも内径側に配置され、直動型アクチュエータ21との間で第1のばね33を支持している。
スプリングシート11は、その中心に外筒3が挿入され、溶接等の手段を用いて外筒3に位置決めされている。このスプリングシート11は、ピストンロッド5の車体取付マウント10との間で、ピストンロッド5を伸長側に常時付勢するサスペンションスプリング12を支持している。
これにより、シリンダ装置2は、車体取付部となる車体取付マウント10と、減衰機構であるピストン6と、ピストン6と車体取付マウント10とに繋がれたピストンロッド5と、ピストンロッド5の一部とピストン6とが内部に包含されたシリンダパイプとしての外筒3および内筒4とを備えている。
次に、制御力を発生させる直動型アクチュエータ21について説明する。図1および図2に示すように、直動型アクチュエータ21は、外筒3に固定された固定部22と、固定部22に対して軸方向に変位可能となった可動部25とを有している。このとき、直動型アクチュエータ21は、固定部22の永久磁石24と可動部25のコイル26との間で作用する電磁力によって、ピストンロッド5に沿って軸方向一側となる基端側(図1中の下側)または軸方向他側となる先端側(図1中の上側)に向けて制御力を発生させる。
固定部22は、アクチュエータロッド23と、永久磁石24とを備えている。アクチュエータロッド23は、円筒状に形成され、その内部にピストンロッド5が挿通される挿通孔23Aを有している。アクチュエータロッド23の基端部(下端部)は、シリンダ外殻8に取り付けられている。これにより、固定部22は、シリンダ外殻8と共に、外筒3に固定されている。一方、アクチュエータロッド23の先端部(上端部)は、シリンダ外殻8と車体取付マウント10との間に位置して、自由端となっている。
アクチュエータロッド23には、軸方向の中間部位に位置して環状凹部23Bが設けられている。環状凹部23Bは、アクチュエータロッド23の外周部位で周囲よりも径方向内側に窪んだ円環状に形成されている。環状凹部23Bには、円筒状の永久磁石24が取り付けられている。また、アクチュエータロッド23には、凹部23Bを挟んだ軸方向両側に環状突起部23C,23Dが設けられている。環状突起部23C,23Dは、アクチュエータロッド23の外周面よりも径方向外側に突出した円環状に形成されている。このとき、環状突起部23Cは、凹部23Bよりもアクチュエータロッド23の先端側に位置している。環状突起部23Dは、凹部23Bよりもアクチュエータロッド23の基端側に位置している。
可動部25は、コイル26と、コイルヨーク27と、ガイド28とを備えている。コイル26は、アクチュエータロッド23を取囲む円筒状に形成され、永久磁石24と対向する位置に配置されている。このとき、コイル26は、供給される電流の方向に応じて、永久磁石24との間で作用する電磁力の方向が変化する。即ち、例えば順方向の電流がコイル26に供給されたときには、永久磁石24よりもピストンロッド5の先端側にコイル26を変位させる電磁力が、永久磁石24とコイル26との間に発生する。これに対し、例えば逆方向の電流がコイル26に供給されたときには、永久磁石24よりもピストンロッド5の基端側にコイル26を変位させる電磁力が、永久磁石24とコイル26との間に発生する。
コイルヨーク27は、内部にコイル26を収容した状態で円筒状に形成されている。コイルヨーク27の内周部分には、軸方向の中間部分に位置して円環状の凹部27Aが形成されている。凹部27Aは、軸方向に対して永久磁石24および環状突起部23C,23Dを含めた長さ寸法よりも大きな長さ寸法を有し、永久磁石24および環状突起部23C,23Dを収容している。これにより、可動部25は、永久磁石24に対して軸方向に変位可能となっている。
また、コイルヨーク27の内周側には、凹部27Aの軸方向両側に位置して、アクチュエータロッド23を案内する円筒状のガイド28,29が取り付けられている。ガイド28,29は、アクチュエータロッド23に対して可動部25が軸方向に変位可能となるように、アクチュエータロッド23の外周面に摺接している。また、コイルヨーク27の内周側には、凹部27Aの軸方向両側に位置して、径方向内側に突出した段部30,31が形成されている。このとき、段部30は、凹部27Aよりもコイルヨーク27の先端側に位置している。段部31は、凹部27Aよりもコイルヨーク27の基端側に位置している。
このため、永久磁石24よりもコイル26が基端側(図1中の下側)に変位すると、段部30は、環状突起部23Cに接触する。永久磁石24よりもコイル26が先端側(図1中の上側)に変位すると、段部31は、環状突起部23Dに接触する。これにより、段部30,31および環状突起部23C,23Dは、可動部25が軸方向に過大に変位するのを規制すると共に、可動部25とアクチュエータロッド23とが分離するのを防止している。
コイルヨーク27の外周側には、径方向外側に突出した環状のフランジ部32が形成されている。フランジ部32は、例えばコイルヨーク27のうちシリンダ外殻8に近い基端側に配置されている。コイルヨーク27のフランジ部32は、ピストンロッド5の車体取付マウント10との間で、弾性部品としての第1のばね33を支持している。また、コイルヨーク27とシリンダ外殻8との間には、弾性部品としての第2のばね34が取り付けている。
第1のばね33は、互いに軸方向で対面するコイルヨーク27のフランジ部32と車体取付マウント10の内径側ばね受け10Bとの間に挟持されている。第1のばね33は、例えばコイルバネによって形成され、その内周側にコイルヨーク27が挿入されている。これにより、第1のばね33は、コイルヨーク7の外周側を覆っている。第1のばね33は、サスペンション上部の車体取付マウント10に取り付けられ、車体取付マウント10およびピストンロッド5を介して、ピストン6に連結されている。
第2のばね34は、互いに軸方向で対面するコイルヨーク27の端面とシリンダ外殻8の端面との間に挟持されている。これにより、第2のばね34は、シリンダ外殻8に連結されている。第2のばね34は、例えば複数枚(図1中は4枚)の皿バネを積み重ねて形成されている。なお、皿バネの枚数は、図1中に図示したものに限らず、1枚の場合も含めて、任意の枚数が採用可能である。
これにより、直動型アクチュエータ21は、可動部25の軸方向両端に2つのばね33,34が直列に接続されている。このため、第1のばね33と第2のばね34とは、可動部25を挟んで軸方向に並んで配置されている。このとき、第1のばね33は、可動部25とピストンロッド5の先端部とに接続されている。第2のばね34は、可動部25と外筒3とに接続されている。なお、2つのばね33,34は、可動部25(コイルヨーク27)との接続部が分離しないように、予め十分な予圧が与えられている。また、第2のばね34は、第1のばね33に対して十分に剛なものが用いられる。
直動型アクチュエータ21は、その一端となる固定部22がシリンダ外殻8(ばね下部材)に直結され、シリンダ外殻8を介してシリンダ装置2の外筒3およびサスペンション下部に接続されている。直動型アクチュエータ21は、その他端となる可動部25がばね33,34に支えられて、直動型アクチュエータ21の出力に応じて相対運動が可能なように取り付けられている。
このとき、直動型アクチュエータ21は、電磁誘導の原理により駆動する直動型の荷重発生機構である。このような直動型の荷重発生機構を用いることで、運動変換機構を必要とせず、電磁力を直接的に直進運動に変換することが可能である。加えて、直動型アクチュエータ21の駆動部には、コイル26、コイルヨーク27、少なくとも1個の永久磁石24、アクチュエータロッド23、低摩擦案内のためのガイド28,29さえ含まれればよく、簡易な構成とすることができる。こうした簡易な構成とすることで、直動型アクチュエータ21を駆動のための荷重減衰作用を持つ機械要素も大きな慣性質量も必要としない。また、直動型アクチュエータ21は、運動変換機構もしくは減衰作用、慣性質量に依拠する応答遅れがない。このため、直動型アクチュエータ21は、遅くとも0.1秒以下の応答時間、もしくは10Hz以上の周波数の高速駆動が可能である。
本実施の形態による油圧緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作形態について、図3ないし図5を参照して説明する。
直動型アクチュエータ21に通電を行うと、電磁力が発生し、内部の永久磁石24とコイル26との間に引力および斥力を生ずる。この電磁力の作用により、直動型アクチュエータ21には、相対運動を促す制御力が発生する。このとき、直動型アクチュエータ21の一端(固定部22)をシリンダ装置2の外筒3に固定すれば、他端(可動部25)が相対的に独立運動可能となる。このため、直動型アクチュエータ21は、直動型アクチュエータ21に接続した外部部品(ばね上部材)に制御力を与えることができる。
また、図5に示すように、直動型アクチュエータ21には、第1,第2のばね33,34が接続されている。このため、直動型アクチュエータ21が発生する制御力は、第1,第2のばね33,34に作用する。第1のばね33に与えられた制御力は、車体取付マウント10およびピストンロッド5を介して、内筒4内のピストン6に上下方向(軸方向)の制御力を与える。第2のばね34に与えられた制御力は、シリンダ外殻8に対して、上下方向(軸方向)の制御力を与える。両者に与えられた制御力は、最終的にシリンダ装置2の伸長または縮小を促す作用を生じる。
具体的には、例えばコイル26に順方向の電流を供給したときには、コイル26と永久磁石24との間には、可動部25が先端側に変位する電磁力が発生する。このとき、図3に示すように、直動型アクチュエータ21は、シリンダ装置2の伸長を促す制御力を発生する。一方、例えばコイル26に逆方向の電流を供給したときには、コイル26と永久磁石24との間には、可動部25が基端側に変位する電磁力が発生する。このとき、図4に示すように、直動型アクチュエータ21は、シリンダ装置2の縮小を促す制御力を発生する。
また、本実施の形態で用いた直動型アクチュエータ21は電磁式であるため、高い応答性をもって制御力を与えることが可能である。制御力を介する機械要素には特段の減衰作用が生じないから、応答遅れや荷重減衰作用を伴うことなく、所望の制御力周波数に応じて、速やかにサスペンションに伸縮荷重を与えることができる。
また、直動型アクチュエータ21の与える制御力は、第1,第2のばね33,34の変位にほぼ依存しないから、第1,第2のばね33,34の伸長または縮小の如何に依らず、またそれに伴うピストン6の位置にも依らず、任意のピストン6の位置でシリンダ装置2に所望の制御力を与えることができる。
ところで、ピストン6の運動に伴って、ピストンロッド5とピストンシール9との間には摩擦力に起因する抵抗力が働く。この抵抗力の大きさは一般に20N程度と知られている。これに対し、本実施の形態では、ピストンシール9で発生する摩擦抵抗の他には、制御力の伝達を妨げる反作用を生じ得る要素部品、運動変換機構、もしくは減衰要素を設けていない。この結果、抵抗力の反作用を超えて能動的にピストン6に制御力を与えるためには、直動型アクチュエータ21の出力は、少なくとも20N程度あればよい。これに鑑みて、直動型アクチュエータ21の出力を必要最小な値に抑えることによって、直動型アクチュエータ21の小型化、低発熱、低消費電力を図ることが可能である。
また、第2のばね34は、第1のばね33に対して十分に剛なものを用いる。これにより、ピストン6の伸縮に伴う第2のばね34の変形量はごく僅かに限られる。直動型アクチュエータ21の運動範囲は、第2のばね34の変形範囲に限られる。このため、直動型アクチュエータ21の動作範囲も、第2のばね34の軸方向寸法と同じ程度の短い距離に限られる。結果として、直動型アクチュエータ21の動作範囲をカバーする永久磁石24も軸方向の長さ寸法が短いものでよいため、直動型アクチュエータ21は、永久磁石24を少なくとも1個だけ備えていればよい。これにより、直動型アクチュエータ21は、簡便、低コスト、かつ一層の小型化を図ることができる。
かくして、本実施の形態によれば、シリンダ装置2の軸方向に変位可能な可動部25を有する直動型アクチュエータ21と、直動型アクチュエータ21が出力する制御力をピストンロッド5とシリンダパイプとなる外筒3および内筒4との間に伝達するために、直動型アクチュエータ21の可動部25を挟んで直列接続された複数のばね33,34とを有する構成とした。
このとき、直動型アクチュエータ21は、電磁誘導の原理により駆動する直動型の荷重発生機構であるから、電磁力を直接的に直進運動に変換することができる。これに加えて、直動型アクチュエータ21の駆動部には、コイル26、コイルヨーク27、少なくとも1個の永久磁石24、アクチュエータロッド23、低摩擦案内のためのガイド28,29さえ含まれればよく、簡易な構成とすることができる。この結果、小型の直動型アクチュエータ21を利用することができ、簡便かつ安価で小型なアクティブサスペンションを提供することが可能となる。
また、直動型アクチュエータ21が小型であるため、消費電力が少ない。このため、能動制御に伴う車両の燃料消費を抑制することができる。これに加えて、直動型アクチュエータ21が小型であるため、発熱が少なく、温度上昇に伴う電線の電気抵抗も少ない。このため、一層の消費電力抑制を図ることができる。
さらに、直動型アクチュエータ21が小型であるため、油圧緩衝器1が従来のサスペンション・ダンパと同等のサイズに収まる。このため、既存の車両に対して、油圧緩衝器1を容易に適用することができる。
直動型アクチュエータ21は、電磁誘導を利用して可動部25を変位させるから、高い応答性をもって制御力を与えることが可能である。これに加え、制御力を介する機械要素には特段の減衰作用が生じないから、応答遅れや荷重減衰作用を伴うことなく、所望の制御力周波数に応じて、速やかにサスペンションに伸縮荷重を与えることができる。
このとき、直動型アクチュエータ21は、0.1秒以下の応答速度、または10Hz以上の周波数で駆動可能であるから、油圧緩衝器1は、良好な応答速度をもって振動抑制の制御を行うことができる。このため、例えばばね下共振周波数を含む高周波域にまで至る路面入力振動に対しても、振動抑制効果を得ることができる。
直動型アクチュエータ21は、少なくとも20Nの出力荷重を付与可能である。このとき、ピストンロッド5とピストンシール9との間には摩擦力に起因する抵抗力が働くが、直動型アクチュエータ21は、この抵抗力の反作用を超えて能動的にピストン6に制御力を与えることができる。
これに加え、直動型アクチュエータ21の出力を、20Nを超える範囲で必要最小な値に抑えることができる。これにより、直動型アクチュエータ21の小型化、低発熱、低消費電力を図ることが可能である。
第1,第2のばね33,34は、コイルバネおよび皿バネを含むバネ部品であるから、直動型アクチュエータ21に接続されたばね33,34によって衝撃を吸収することができる。このため、段差乗り越え等により、油圧緩衝器1に衝撃力が生じる場合であっても、ばね33,34が衝撃を吸収し、車体に振動が伝播するのを抑制することができる。
また、直動型アクチュエータ21に接続されたばね33,34が衝撃を吸収するため、衝撃力によって直動型アクチュエータ21および周辺の部品が破損する懸念がなく、信頼性を高めることができる。
さらに、直動型アクチュエータ21は、可動部25の内部にピストンロッド5が挿通され、車体取付マウント10(車体取付部)と外筒3(シリンダパイプ)との間に可動部25を挟んで複数のばね33,34が配置されている。このため、可動部25を軸方向に変位させることによって、車体取付マウント10と外筒3との間に制御力を付与することができる。
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、直動型アクチュエータがシリンダパイプの内部に収容され、ピストンとシリンダパイプとの間に可動部を挟んで複数の弾性部品が配置されたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態による油圧緩衝器41は、シリンダ装置2と、直動型アクチュエータ51とを備えている。このとき、シリンダ装置2の外筒3の基端側(下端側)は、ボトムキャップ42により溶接手段等を用いて閉塞されている。また、外筒3の基端側(底部側)には、外筒3内に位置して、ボトムバルブ43が設けられている。このボトムバルブ43は、リザーバ室Aとボトム側室Cとを画成し、両室A,C間を流通する油液により減衰力を発生させるものである。また、ピストン6の下側(基端側)には、第1のばね61を支持するためのばね受け44が取り付けられている。
第2の実施の形態では、直動型アクチュエータ51は、シリンダ装置2の外筒3の内部に収容され、外筒3の底部とピストン6との間に配置されている。
次に、制御力を発生させる直動型アクチュエータ51について説明する。直動型アクチュエータ51は、外筒3に固定された固定部52と、固定部52に対して軸方向に変位可能となった可動部57とを有している。このとき、直動型アクチュエータ51は、固定部52のコイル53と可動部57の永久磁石59との間で作用する電磁力によって、外筒3に沿って基端側(図6中の下側)または先端側(図6中の上側)に向けて制御力を発生させる。
固定部52は、コイル53と、コイルヨーク54とを備えている。コイル53は、円筒状に形成され、その周囲がコイルヨーク54によって覆われている。コイルヨーク54は、円筒状のコイルマウント55内に挿入されると共に、コイルマウント55と一緒にボトムバルブ43に固定されている。このとき、コイルヨーク54の外周面と下端面は、コイルマウント55に接触している。また、コイルマウント55と外筒3との間で油液の流通が可能となるように、コイルマウント55の外周面と外筒3の内周面との間には、隙間が形成されている。
一方、コイルヨーク54の上端面と内筒4の下端との間には、段付円筒状のばねマウント56が取り付けられている。ばねマウント56は、内筒4が挿入される筒部56Aと、筒部56Aの下側に位置して筒部56Aよりも径方向内側に突出した底部56Bと、底部56Bの中心部位に形成されてアクチュエータロッド58が挿通される挿通孔56Cとを有している。
これにより、固定部52は、内筒4の下端部とボトムバルブ43との間に挟持された状態で、外筒3および内筒4に固定されている。
可動部57は、アクチュエータロッド58と、永久磁石59とを備えている。アクチュエータロッド58は、円筒状に形成され、その内部に軸方向に延びて油液が流通可能な油路58Aを有している。アクチュエータロッド58の基端部(下端部)は、コイル53内に挿入されている。アクチュエータロッド58の基端部には、コイル53と対面する位置に円筒状の永久磁石59が取り付けられている。
一方、アクチュエータロッド58の先端部(上端部)には、径方向外側に突出した鍔状のばね受け60が取り付けられている。アクチュエータロッド58の先端部は、ばね受け60と共に内筒4内に挿入されている。
第1のばね61は、互いに軸方向で対面するアクチュエータロッド58のばね受け60と、ピストン6のばね受け44との間に挟持されている。第1のばね61は、例えばコイルバネによって形成され、その下端側にはアクチュエータロッド58の先端部が挿入されている。そして、第1のばね61は、ピストン6に連結されている。
第2のばね62は、互いに軸方向で対面するばね受け60とばねマウント56の底部56Bとの間に挟持されている。第2のばね62は、外筒3の下端部(ボトムバルブ43)に連結されている。第2のばね62は、例えば複数枚(図6中は4枚)の皿バネを積み重ねて形成されている。なお、皿バネの枚数は、図6中に図示したものに限らず、1枚の場合も含めて、任意の枚数が採用可能である。
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。また、直動型アクチュエータ51は、シリンダ装置2の内部に納まる程度の十分な小型化が可能である。このため、従来のサスペンションと比較して特段の外観寸法の変化を伴うことなく、油圧緩衝器41に乗り心地向上のための付加作用を与えることができる。
さらに、直動型アクチュエータ51は、外筒3の内部に収容され、ピストン6と外筒3との間に可動部57を挟んで複数のばね61,62が配置されている。このため、可動部57を軸方向に変位させることによって、ピストン6と外筒3との間に制御力を付与することができる。
即ち、第2の実施の形態に示すように、直動型アクチュエータ51の与える制御力は、必ずしもピストンロッド5等の中間部材を介して伝達する必要はなく、直接ピストン6に作用させる構造としてもよい。
なお、第2の実施の形態では、直動型アクチュエータ51のコイル53およびコイルヨーク54を外筒3に固定し、アクチュエータロッド58を変位させる構成とした。本発明はこれに限らず、第1の実施の形態による直動型アクチュエータ21と同様に、アクチュエータロッドをシリンダ装置の外筒に固定し、コイルを変位させてもよい。従って、直動型アクチュエータの固定側および可動側(駆動側)の構成部品は、コイルとアクチュエータロッドのいずれであっても構わない。このように、本発明に用いる直動型アクチュエータは、直動運動を出力可能であればよく、その配置や構成部品の名称、もしくは固定方法に拠らない。
前記各実施の形態は、マクファーソン式サスペンションを例に示しているが、サスペンションの形式は、これに限らない。また、サスペンション構成の有するサスペンションスプリング12(懸架ばね)は本発明の作用に必ずしも必要ではなく、対象とする製品範囲は懸架ばねを持たない単なるダンパ構造もしくはショックアブソーバであっても構わない。
前記各実施の形態では、直動型アクチュエータ21,51がソレノイドタイプである場合を例示したが、電磁誘導の原理を利用した直動型アクチュエータであれば駆動方式はこれに限らない。直動型アクチュエータは、リニアモータやロッドレスシリンダ、ボイスコイルモータ、または電磁石等であってもよい。
前記各実施の形態では、第1のばね33,61は、単一のコイルバネによって構成するものとしたが、本発明はこれに限らない。例えばコイルバネの軸方向寸法が長くなることによって、ばねの座屈が問題になる場合には、第1のばねは、中間にコマを配置した2個のコイルバネによって構成してもよく、3個以上のコイルバネによって構成してもよい。
前記各実施の形態では、第2のばね34,62は、小型化のために皿バネを用いているが、本発明はこれに限らない。第2のばねは、第1のばねに対して十分に剛なバネ定数を有していればよく、板ばねや輪ばね、円錐コイルばね等に代表される他種のばねであっても構わない。
前記各実施の形態では、第1のばね33,61および第2のばね34,62は圧縮荷重を支える部材としているが、負荷の態様はこれに限らない。第1のばねおよび第2のばねは、直動型アクチュエータにより発生した制御力をピストンに伸縮を伴って伝える部材であればよく、引張ばねやねじりばねを用いても構わない。
また、第1のばねおよび第2のばねの分類は、必ずしも機械ばねに限らない。第1のばねおよび第2のばねは、適切な弾性反力を有し、シリンダ装置の伸縮に追従するように変形する部材であればよく、例えば高弾性ゴムや伸縮性ポリマ、それらを素材とするコラムやワッシャ等であってもよい。
前記各実施の形態では、外筒3と内筒4とを備えた複筒式の油圧緩衝器1,41に適用した場合を例に挙げて説明したが、単筒式の緩衝器に適用してもよい。
以上説明した実施の形態に基づく緩衝器として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、車体取付部と、減衰機構であるピストンと、前記ピストンと前記車体取付部とに繋がれたピストンロッドと、前記ピストンロッドの一部と前記ピストンとが内部に包含されたシリンダパイプとによって構成されたシリンダ装置を有する緩衝器において、前記シリンダ装置の軸方向に変位可能な可動部を有する直動型アクチュエータと、前記直動型アクチュエータが出力する制御力を前記ピストンロッドと前記シリンダパイプとの間に伝達するために、前記直動型アクチュエータの可動部を挟んで直列接続された複数の弾性部品とを有している。
第2の態様としては、第1の態様において、前記直動型アクチュエータは、電磁誘導を利用して前記可動部を変位させる。
第3の態様としては、第1または第2の態様において、前記直動型アクチュエータは、少なくとも20Nの出力荷重を付与可能である。
第4の態様としては、第1ないし第3のいずれかの態様において、前記直動型アクチュエータは、0.1秒以下の応答速度、または10Hz以上の周波数で駆動可能である。
第5の態様としては、第1ないし第4のいずれかの態様において、前記弾性部品は、コイルバネおよび皿バネを含むバネ部品である。
第6の態様としては、第1ないし第5のいずれかの態様において、前記直動型アクチュエータは、前記可動部の内部に前記ピストンロッドが挿通され、前記車体取付部と前記シリンダパイプとの間に前記可動部を挟んで複数の前記弾性部品が配置されている。
第7の態様としては、第1ないし第5のいずれかの態様において、前記直動型アクチュエータは、前記シリンダパイプの内部に収容され、前記ピストンと前記シリンダパイプとの間に前記可動部を挟んで複数の前記弾性部品が配置されている。