JP2018035209A - 光学ガラス用洗浄剤および光学ガラスの洗浄方法 - Google Patents

光学ガラス用洗浄剤および光学ガラスの洗浄方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学ガラスの表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、超音波洗浄機を用いても潜傷やヤケの発生を防ぐことのできる光学ガラス用洗浄剤の提供。
【解決手段】(a)有機アルカリ剤を5.0〜15質量%、(b)キレート剤を5.0〜30質量%、(c)アニオン系界面活性剤を0.1〜5.0質量%、ノニオン系界面活性剤を0.5〜5.0質量%含有し残部を水とし、0.4%以上の一定質量%水溶液を20℃で測定したときの表面張力が35mN/m以下である、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈する光学ガラス用洗浄剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学ガラス表面に付着した汚れ、ゴミ、パーテイクル等を除去する光学ガラス用洗浄剤およびそれを用いた光学ガラスの洗浄方法に関する。
光学ガラス用洗浄剤は、レンズ、プリズム、光ファイバー等の光学ガラスに付着した切断の際の切粉、研磨粒子、保護膜や油汚れ、粉塵のゴミ等を洗浄するための洗浄剤であり、アルカリ洗浄剤、酸洗浄剤をはじめとして、各種洗浄剤が用いられている。
光学ガラスは、地球の環境保護、資源の有効利用から鉛、砒素、錫を含まない環境対応ガラスが増大してきている。これらは、軟硝材と言われておりアルカリ成分や超音波等の物理的ダメージを受けやすく潜傷といわれる微細な傷が発生し易い。一部の硝種では水洗によっても潜傷が発生してしまい超音波洗浄も適用できない。潜傷は研磨によって生じたガラス表面の微小な凹凸が洗浄剤の溶解作用により増幅し、研磨痕状の傷として確認される現象とされている。更に、洗浄剤によって溶出したガラス成分が光学ガラス表面に再付着してガラス表面の成分均一性が失われ、粗さも増大することで、曇りのような白濁状のダメージが発生する。通常、この曇りを白ヤケ、青ヤケとも言われている。
これら潜傷や曇りが発生しないようにするためには超音波洗浄機を用いず、手拭の洗浄等を強いられており、洗浄効率の悪いものであった。また、洗浄剤中のガラス成分を溶出させる成分の配合を減らす必要があり、本来の汚れ除去性能を犠牲にしてしまい洗浄剤として十分機能できず、軟硝材を用いる光学ガラスの洗浄剤としては満足できないものであった。
従来、洗浄液によるエッチングによって発生したガラス基板面の潜傷による微小な面荒れや、洗浄後にガラス基板表面に吸着した残存アルカリ金属などの金属不純物あるいはパーテイクル等を付着させず、しかも洗浄時にガラス表面に潜傷やヤケ等のダメージを生じさせない有機アルカリからなる洗浄剤として、水酸化第四級アンモニウム塩基を主体とし、非イオン界面活性剤、アルカノールアミンとを含有する実質的に金属イオンを含まないガラス用洗浄剤組成物(特許文献1)が提案されている。
また、光学ガラスの洗浄において、潜傷の顕在化を抑制し、かつ硝材によらず洗浄剤を変更することなく使用できる光学ガラス用洗浄剤として、質量平均分子量が1500以上のポリカルボン酸を10〜60質量%、界面活性剤を1〜20質量%、水、メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水溶性溶媒を20〜89質量%含有し、pHが9以上である洗浄剤(特許文献2)が提案されている。
特許文献1、2の洗浄剤は、いずれも洗浄能力には優れ、潜傷やヤケの発生を防げるとしている。しかし、特許文献1の洗浄剤は、実質的に金属イオンを含まない超高純度の各成分を必要とし、使用できる原料が制限されてしまうと言う問題がある。特許文献2の洗浄剤は、水溶性溶媒を用いるとしているものの実際には純水を用いた例しか示されていない。いずれもいかなるガラス種の軟硝材にも対応でき、潜傷やヤケの発生を防ぐのに十分満足できるものではなかった。
光学ガラスを製品化するのには、ガラス基材をメーカーから受け入れ、加工、荒ずり、砂かけ、研磨、芯取り工程などがあり、これらの工程中で洗浄することは必須の工程である。その際に用いる洗浄剤としては、アルカリ剤や界面活性剤等を含むアルカリ洗浄剤を通常、水によって希釈し、超音波洗浄機を用いるのが効率的であるとされている。いかなる軟硝材を用いた光学ガラスにおいても、超音波洗浄機を用いても潜傷やヤケの発生を防ぐことのできる光学ガラス用洗浄剤、および洗浄方法の提供が望まれていた。
特開平5−271699号公報 特開2012−233063号公報
本発明は、いかなる軟硝材を用いた光学ガラスの表面に付着した汚れ、ゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、超音波洗浄機を用いても潜傷やヤケの発生を防ぐことのできる光学ガラス用洗浄剤、およびその洗浄剤を用いた洗浄方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、光学ガラス用洗浄剤として、(a)有機アルカリ剤を5.0〜15質量%、(b)キレート剤を5.0〜30質量%、(c)アニオン系界面活性剤を0.1〜5.0質量%、ノニオン系界面活性剤を0.5〜5.0質量%含有し残部を水とし、0.4%以上の一定質量%水溶液を20℃で測定したときの表面張力が35mN/m以下である、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈する光学ガラス用洗浄剤が、光学ガラスの表面に付着した汚れ、ゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、超音波洗浄機を用いても潜傷やヤケの発生を防ぐことを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、次のとおりのものである。
[1](a)有機アルカリ剤を5.0〜15質量%、(b)キレート剤を5.0〜30質量%、(c)アニオン系界面活性剤を0.1〜5.0質量%、ノニオン系界面活性剤を0.5〜5.0質量%含有し残部を水とし、0.4%以上の一定質量%水溶液を20℃で測定したときの表面張力が35mN/m以下である、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈する光学ガラス用洗浄剤。
[2]水を30〜70質量%含有する混合溶媒に希釈することを特徴とする項[1]に記載の光学ガラス用洗浄剤。
[3]項[1]に記載の光学ガラス用洗浄剤を、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤を用い、被処理物を浸漬処理することを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
[4]項[3]に記載の光学ガラスの洗浄方法において、水を30〜70質量%含有する混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤を用いることを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
[5]項[3]又は項[4]に記載の光学ガラスの洗浄方法において、超音波洗浄を併用することを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
本発明の光学ガラス用洗浄剤によれば、光学ガラスの表面に付着した汚れ、ゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、超音波洗浄機を用いても潜傷やヤケの発生を防ぐことのできる光学ガラス用洗浄剤、およびそれを用いた光学ガラスの洗浄方法を提供できる。
以下に、本発明を具体的に説明する。本発明の光学ガラス用洗浄剤は、(a)有機アルカリ剤を5.0〜15質量%、(b)キレート剤を5.0〜30質量%、(c)アニオン系界面活性剤を0.1〜5.0質量%、ノニオン系界面活性剤を0.5〜5.0質量%含有し残部を水とし、0.4%以上の一定質量%水溶液を20℃で測定したときの表面張力が35mN/m以下である、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈する光学ガラス用洗浄剤である。
本発明は、光学ガラス用洗浄剤を、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤を用い、被処理物を浸漬処理する光学ガラスの洗浄方法にも関する。更に、洗浄する際に超音波洗浄を併用する光学ガラスの洗浄方法にも関する。
光学ガラス基材としては、用途、組成は限定されるものではなく各種光学ガラスが例示できる。なかでも、鉛、砒素、錫を含まない環境対応ガラスおよび軟硝材と言われる硝材が例示できる。これら軟硝材と言われる硝種、SK材、FK材、LAK材の潜傷といわれる微細な傷が発生し易い、又は曇りを発生し易い硝種の洗浄に好ましく用いることができる。
本発明の光学ガラス用洗浄剤は、(a)成分として、有機アルカリ剤のうち少なくとも1種を用いる。有機アルカリ剤は、洗浄性だけでなく、ガラス表面の研磨傷などを微溶解する作用をし、腐食防止効果の向上や、他の成分を配合する際の相溶性および洗浄剤の安定性を向上させることができる。また、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ剤を併用することもできる。(a)成分の有機アルカリ剤は、洗浄剤中に5.0〜15質量%配合することが必要であり、より好ましくは7.0〜15質量%洗浄剤中に含有させることができる。
有機アルカリ剤としては、一級、二級および/または三級アミン性の窒素原子を1分子中に1〜5個有し、かつ分子量50〜10000を有するアミン系化合物ならびに水酸化第四級アンモニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種などがあげられる。例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノアミルアミン、モノヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの直鎖アルキルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−メチルブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの分岐鎖アルキル基を有する分岐鎖アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの環式アミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルキルアルカノールアミン、モルホリン類、複素環式アミン、ジアミノプロパン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、ジアミノドデカンなどのジアミン、ポリアミン、またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)などの水酸化第四級アンモニウム化合物があげられる。好ましくは、直鎖、分岐アルキルアミン、アルキルアルカノールアミンのなかから選ばれる有機アルカリ剤を用いる。
(b)成分のキレート剤は洗浄剤中に5.0〜30質量%含有させる。キレート剤は、溶解するガラス成分やよごれ成分を洗浄剤中に分散させガラス表面に再付着するのを防ぐ作用をなしている。より好ましくは洗浄剤中に5.0〜20質量%含有させることができる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、これらのアルカリ金属または低級アミン塩など、ホスホン酸基を有するキレート剤としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン1−1,1−ジホスホン酸、4−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、ピロリドン−5,5−ジホスホン酸、1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、ジメチルアミノメタンジホスホン酸、N−カルボキシメチルアミノ−アルカンジホスンホン酸などが挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、アザシクロアルカン−2,2−ジホスホン酸が好ましい。キレート剤は、単独でまたは2種以上を混合しても用いることができる。
本発明のガラス用洗浄剤は、(c)成分としてアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のうちそれぞれ少なくとも1種を用いる。アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤は、それぞれ少なくとも1種類用いるが、2種類以上用いてもよい。アニオン系界面活性剤は洗浄剤中に0.1〜5.0質量%配合し、好ましくは0.1〜3.0質量%配合することができる。ノニオン系界面活性剤は洗浄剤中に0.5〜5.0質量%配合し、好ましくは0.5〜3.0質量%配合することができる。
(c)成分としてのアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤は、光学ガラス界面の自由エネルギーを低下させ汚れなどの洗浄対象物への浸透・湿潤力を増し除去性能を向上させる作用をするものである。又浸透・湿潤力だけでなく、他の成分を配合する際の相溶性および洗浄剤の安定性を向上させることができる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸又はその塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸又はその塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル類を使用することができ、特に炭素数が10〜20、好ましくは10〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニル(炭素数炭素数が10〜20、好ましくは10〜15)エーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル(炭素数炭素数が10〜20、好ましくは10〜15)硫酸塩、飽和脂肪酸又はその塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニル硫酸塩を使用する場合は、エチレンオキシド平均付加モル数は1〜6、特に1.5〜4が好ましい。また、これらは市販されている中から選ぶことができる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ノノキシノール 、ノノキシノール-9 、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのエーテル型の非イオン界面活性剤、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールなどのエステルエーテル型非イオン界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド 、コカミドDEAなどのアルカノールアミド型非イオン界面活性剤が例示できる。またこれらは市販されている中から選ぶことができる。
本発明の光学ガラス用洗浄剤は、成分(a)、成分(b)、成分(c)以外に水を含有させることができる。水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水等いずれでもかまわない。本発明の洗浄剤を構成する水は、上記各成分を溶解し、洗浄剤を非危険物、非毒劇物とするためのものであり、成分(a)、成分(b)、成分(c)などを加えた残りの残部量配合することができる。
本発明の光学ガラス用洗浄剤は、(a)成分〜(c)成分、および水を含有するものである。更に、実質的に(a)成分〜(c)成分と水のみからなるものでもよい。ここで「実質的に」は、剥離用処理剤が各種添加剤を含有してもよいが、主要成分としての(a)成分〜(c)成分と水以外の成分を含有しないことを意味する。
本発明の光学ガラス用洗浄剤は、必要に応じて適宜、従来の洗浄剤に配合されている各種添加剤、例えばpH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、増粘剤、顔料などの着色剤、消泡剤などを添加してもよい。添加剤の添加量は、本発明の光学ガラス用洗浄剤の洗浄作用、密着性、付着性に影響しない範囲の量ならばかまわない。より好ましくは、0.1〜10質量%である。
本発明の光学ガラス用洗浄剤を使用する際には、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈して洗浄用処理剤として用いる。グリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンを用いることができる。これらは沸点が100℃以上であり、水との溶解性もよい。なかでもエチレングリコールを用いるのがより好ましい。光学ガラス用洗浄剤は、通常使用する際には、水で希釈して用いるものであるが、本発明では、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈して洗浄用処理剤として用いる。これは軟硝材が水により洗浄時にダメージを受けやすく、潜傷や曇りが発生してしまうのを、希釈剤としてグリコール系溶剤と水との混合溶媒を用いることで、洗浄時のダメージの発生を防止することができる。
洗浄剤を希釈するグリコール系溶剤と水との混合溶媒の両者の混合割合は、水30〜70質量%に対してグリコール系溶剤70〜30質量%の割合で用いるのが好ましい。この範囲を外れると、洗浄において洗浄性が劣ったり、ダメージが発生しやすくなり好ましくない。
本発明の光学ガラス用洗浄剤の表面張力は、従来のガラス用洗浄剤に比べて低い表面張力を有している。この低表面張力化によりガラス表面の汚れとガラス界面との浸透力が増し、汚れの除去効果が向上する。更に、洗浄作用を保つことができる。光学ガラス用洗浄剤0.4%以上の一定質量%水溶液の20℃での表面張力は35mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは34mN/m以下である。この範囲とすることで、汚れの除去効果、洗浄作用を長期間保つことができる。従来のガラス用洗浄剤では、一般的に45mN/m〜38mN/m程度である。
本発明の光学ガラス用洗浄剤をグリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤としたときの表面張力は、従来のガラス用洗浄剤に比べて低い。表面張力は水の含有量の増大により減少していく。例えば、後述する実施例1の光学ガラス用洗浄剤を用い水/エチレングリコール/光学ガラス用洗浄剤の質量%を30/68/2としたとき39.3mN/m、同じく50/48/2としたとき34.2mN/m、同じく70/28/2としたとき33.4mN/mと通常の洗浄剤より低い表面張力を有する洗浄用処理剤である。
本発明の光学ガラス用洗浄剤を用いる洗浄方法は、特に限定されるものではなく、通常ガラスの洗浄法に用いる方法を使用することができる。例えば、浸漬法、浸漬揺動法、超音波洗浄法、液中噴流法、スプレー法、手拭き法、枚葉式、バッチ式などの各種の洗浄方法を使用できる。洗浄したのち、溶剤、温水、常温の水などでリンスするなどの方法を連続的に行う方法などが、効率の良い洗浄方法として挙げられる。また、リンスするすすぎ水としては、表面の汚染物を除去しうるものであれば特に限定されないが、例えば、超純水、純水、イオン交換水、蒸留水、アセトン、イソプロピルアルコールなどの各種溶剤がリンス性の面から好ましい。なかでも浸漬法において超音波洗浄法を併用するのがより好ましい。
本発明の洗浄用処理剤を用いる洗浄時間は、好ましくは1秒〜2時間、より好ましくは2秒〜600秒の処理時間である。洗浄する際の洗浄用処理剤は、常温、加温状態での温度で行うことができる。なかでも常温以上50℃に加温して洗浄するのが、洗浄効率からして好ましい。
本発明の光学ガラス用洗浄剤は、好ましくはレンズ、プリズム、光ファイバー等の光学ガラスの洗浄に用いることができるが、他のガラスの洗浄にも用いることができる。なかでも、鉛、砒素、錫を含まない環境対応ガラスおよび軟硝材と言われる硝材及びSK材、FK材、LAK材の潜傷といわれる微細な傷が発生し易い、又は曇りを発生し易い硝種の洗浄に好ましく用いることができる。
本発明の光学ガラス用洗浄剤原液、および光学ガラス用洗浄剤をグリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈して洗浄用処理剤を調整し、洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験、バリウム(Ba)溶出量試験、ダメージ試験、芯取油残渣除去性試験を行い洗浄用処理剤の洗浄性能を評価した。また、光学ガラス用洗浄剤及び洗浄用処理剤の表面張力も測定し界面への浸透性を評価した。
[洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験]
光学ガラスとして硝種(株式会社オハラ製:S−FPL53)を酸化セリウム(ローデア社製:セロックス1650)2質量%水溶液をワイプに染み込ませ、光学ガラス片面にたたきながら塗布し、その後純水で簡易シャワーし、未乾燥状態の光学ガラス試料を作成した。洗浄用処理剤を用い25℃の洗浄剤浸漬槽中に1分間浸漬洗浄し、次いで純水で30秒間シャワーリンス処理し、1分間温風乾燥させてから、集光機を用い光学ガラス外観を目視観察した。浸漬槽には超音波振動装置(日本エマソン社製BRANSONIC8510J−DTH)を設け44kHz、250W/Lで超音波振動を与えた。洗浄性確認(酸化セリウム除去性)の評価は、洗浄後の残渣を目視で観察し、残渣50%未満を◎、残渣50〜75%を○、残渣75%超を×とした。
[バリウム(Ba)溶出量試験]
光学ガラスとして硝種1(株式会社オハラ製:S−BSM14)、硝種2(株式会社オハラ製:S−BSM15)をアセトン洗浄後、洗浄用処理剤を用い25℃の洗浄剤浸漬槽中に3日間浸漬洗浄処理後、その浸漬槽中の洗浄用処理液をICP発光分光分析(ホリバ・ジョバンイボン社製、ULTIMA2)しバリウムの溶出量を測定した。また、光学ガラスとして硝種3(株式会社オハラ製:S−FPL53)を、洗浄用処理剤を用い25℃の洗浄剤浸漬槽中に120秒間浸漬洗浄処理後、その浸漬槽中の洗浄用処理液をICP発光分光分析しバリウムの溶出量を測定した。硝種3の浸漬槽には超音波振動装置(日本エマソン社製BRANSONIC8510J−DTH)を設け44kHz、250W/Lで超音波振動を与えた。バリウム溶出量の評価は、バリウム溶出量5ppm未満を◎、バリウム溶出量5〜10ppm未満を○、バリウム溶出量10ppm以上を×とした。
[ダメージ試験1]
光学ガラスとして硝種(株式会社オハラ製:S−LAL7、S−LAL8、S−BSM14、S−BSM15)を前洗浄として、25℃においてアセトンで5分間浸漬処理し、洗浄用処理剤を用いて、25℃の洗浄用処理剤浸漬層中に3日間浸漬洗浄し、次いで純水で30秒間シャワーリンス処理し、イソプロピルアルコールで後洗浄し、窒素ガスブローで30秒間常温乾燥させてから、潜傷によるダメージの有無を目視観察した。
[ダメージ試験2]
光学ガラスとして硝種(株式会社オハラ製:S−FPL51、S−FPL53)を前洗浄として、25℃においてアセトンで5分間浸漬処理し、洗浄用処理剤を用いて、25℃の洗浄用処理剤浸漬層中に4時間浸漬洗浄し、次いで純水で10秒間シャワーリンス処理し、アセトンで後洗浄し、窒素ガスブローで30秒間常温乾燥させてから、潜傷によるダメージの有無を目視観察した。
[芯取油残渣除去性試験]
光学ガラスに鉱物油系芯取油(日本工作油社製、B−256M)を全面に塗布し、25℃の洗浄用処理剤浸漬層中に60秒間浸漬洗浄し、次いで純水で30秒間シャワーリンス処理し、超音波洗浄リンス(超音波振動装置:日本エマソン社製BRANSONIC8510J−DTH)を用い44kHz、250W/Lの条件で超音波振動を与えつつ60秒純水リンスし、窒素ガスブローで30秒間常温乾燥させてから、蒸気による曇り面比較する吸気法により、有機系汚れ除去性を目視観察した。
[表面張力の測定]
光学ガラス用洗浄剤及び洗浄用処理剤の表面張力を測定した。表面張力はキブロン社製ポータブル表面張力計を使用し20℃で測定した値である。
以下には、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
[実施例1]
光学ガラス用洗浄剤1の調製:有機アルカリ成分として、モノイソプロパノールアミン9.1質量%、水酸化ナトリウム3.2質量%、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸5.4質量%、アニオン系界面活性剤(ヘンエイコ酸アシッド)0.5質量%、ノニオン系界面活性剤2.1質量%(ジスチレン化フェニルアルキルエーテル1.2質量%:イソトリデシルアルコール0.9質量%)、残部として水を混合し光学ガラス用洗浄剤1を調製した。ダメージ試験1によると、微小潜傷が観察された。25℃における洗浄剤1自体のpHは10.8、2%水希釈時のpHは10.6である。洗浄剤1の2質量%水溶液の芯取油残渣除去性試験によれば、洗浄性において、従来品より曇り部がなく清浄度が高かった。光学ガラス用洗浄剤1の0.3〜5.0%水溶液の20℃で測定した表面張力を表1に示す。
Figure 2018035209
[実施例2]
洗浄用処理剤1の調製:(光学ガラス用洗浄剤1)2質量%を、エチレングリコール68質量%と水30質量%の混合溶媒で希釈して洗浄用処理剤1(以下、処理剤1)を調製した。処理剤1による洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験、バリウム溶出量試験の結果、表面張力の測定値を表2に示す。ダメージ試験2によると、白濁、潜傷によるダメージは観察されなかった。
[実施例3]
洗浄用処理剤2の調製:(光学ガラス用洗浄剤1)2質量%を、エチレングリコール48質量%と水50質量%の混合溶媒で希釈して洗浄用処理剤2(以下、処理剤2)を調製した。処理剤2による洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験、バリウム溶出量試験の結果、表面張力の測定値を表2に示す。
[実施例4]
洗浄用処理剤3の調製:(光学ガラス用洗浄剤1)2質量%を、エチレングリコール28質量%と水70質量%の混合溶媒で希釈して洗浄用処理剤3(以下、処理剤3)を調製した。処理剤3による洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験、バリウム溶出量試験の結果、表面張力の測定値を表2に示す。
[比較例1]
洗浄用処理剤4の調製:(光学ガラス用洗浄剤1)2質量%を、エチレングリコール98質量%溶媒で希釈して洗浄用処理剤4(以下、処理剤4)を調製した。処理剤4による洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験、バリウム溶出量試験の結果、表面張力の測定値を表2に示す。
[比較例2]
洗浄用処理剤5の調製:(光学ガラス用洗浄剤1)2質量%を、水98質量%で希釈して洗浄用処理剤5(以下、処理剤5)を調製した。処理剤5による洗浄性確認(酸化セリウム除去性)試験、バリウム溶出量試験の結果、表面張力の測定値を表2に示す。ダメージ試験2によると、白濁、潜傷によるダメージが観察された。
Figure 2018035209
実施例2の洗浄用処理剤1を用いた洗浄処理では、酸化セリウム除去性による洗浄性確認評価は残渣が50%未満と非常に良好であり、軟硝材の硝種によらずバリウム(Ba)溶出量は5ppm未満と非常に良好であった。実施例3の洗浄用処理剤2を用いた洗浄処理では、酸化セリウム除去性による洗浄性確認評価は残渣が50%未満と非常に良好であり、軟硝材の硝種1、3ではバリウム(Ba)溶出量は5ppm未満と非常に良好、軟硝材の硝種2ではバリウム(Ba)溶出量は5〜10ppm未満と良好であった。
実施例4の洗浄用処理剤3を用いた洗浄処理では、酸化セリウム除去性による洗浄性確認評価は残渣が50〜75%と良好であり、軟硝材の硝種2以外はバリウム(Ba)溶出量は5〜10ppmと良好であった。実施例4の結果によれば、希釈する混合溶媒中の水の量が多く上限値近くになると硝種2などの耐洗剤性が低い硝種には適用できないことがわかる。
比較例1の希釈する溶媒がエチレングリコールだけになるとバリウムの溶出量は非常に少ないが、酸化セリウム除去性を示す洗浄後の残渣が多く洗浄性が悪いものであった。比較例2の希釈する溶媒が水だけになると硝種3に対してのバリウムの溶出量は少ないが、酸化セリウム除去性を示す洗浄後の残渣が多く洗浄性が悪いものであった。また、ダメージ試験2によると、白濁、潜傷によるダメージが観察された。
本発明は、光学ガラスの表面に付着した汚れ、ゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、超音波洗浄機を用いても潜傷やヤケの発生を防ぐことのできる光学ガラス用洗浄剤、および光学ガラス用洗浄剤をグリコール溶剤と水との混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤として用いる光学ガラスの洗浄方法を提供でき有用である。

Claims (5)

  1. (a)有機アルカリ剤を5.0〜15質量%、(b)キレート剤を5.0〜30質量%、(c)アニオン系界面活性剤を0.1〜5.0質量%、ノニオン系界面活性剤を0.5〜5.0質量%含有し残部を水とし、0.4%以上の一定質量%水溶液を20℃で測定したときの表面張力が35mN/m以下である、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈する光学ガラス用洗浄剤。
  2. 水を30〜70質量%含有する混合溶媒に希釈することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス用洗浄剤。
  3. 請求項1に記載の光学ガラス用洗浄剤を、グリコール系溶剤と水との混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤を用い、被処理物を浸漬処理することを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
  4. 請求項3に記載の光学ガラスの洗浄方法において、水を30〜70質量%含有する混合溶媒に希釈した洗浄用処理剤を用いることを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
  5. 請求項3又は4に記載の光学ガラスの洗浄方法において、超音波洗浄を併用することを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
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