JP2018032732A - セラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法、及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents

セラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法、及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを、比較的低温での加熱によって、Al−SiC複合材料中のアルミニウム材を溶出させずに、かつ高強度で接合することができるセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】Al−SiC複合材料が、ケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有し、セラミックス部材およびAl−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、を備えているセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とが接合されてなるセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法、及びパワーモジュール用基板のセラミックス基板とAl−SiC複合材料で構成されているヒートシンクとが接合されてなるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、例えばAlN(窒化アルミ)、Al(アルミナ)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えたパワーモジュール用基板が、従来から広く用いられている。また、回路層に搭載した半導体素子等から発生した熱を効率的に放散させるために、セラミックス基板の他方の面にヒートシンクを接合したヒートシンク付パワーモジュール用基板が提供されている。
ヒートシンクの材料としては、SiCからなる多孔質体と、この多孔質体に含浸されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材とを有するAl−SiC複合材料(アルミニウム基複合材料ともいう)が知られている。
例えば、特許文献1には、天板部がAl−SiC複合材料で構成されているヒートシンクを、セラミックス基板に接合したヒートシンク付パワーモジュール用基板が開示されている。この特許文献1には、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを接合する方法として、Al−SiC複合材料のアルミニウム材を純度99.98%以上のアルミニウム(純アルミニウム)とし、Al−Si系のろう材を用いて、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを接合する方法が記載されている。また、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを接合する別の方法として、Al−SiC複合材料のアルミニウム材を融点が600℃以下のアルミニウム合金(Al−Si合金)とし、そのAl−SiC複合材料のセラミックス基板側部分にAl−Si合金からなるスキン層を形成して、そのスキン層の一部を溶融させる方法が記載されている。
特開2010−98058号公報
ところで、特許文献1に記載されているように、アルミニウム材が純度99.98%以上のアルミニウムであるAl−SiC複合材料とセラミックス基板とをAl−Si系のろう材を用い接合する場合には、接合温度を600℃よりも高い温度とする必要があった。
一方、融点が600℃以下のAl−Si合金からなるスキン層が形成されたAl−SiC複合材料とセラミックス基板とを、Al−SiC複合材料のスキン層の一部を溶融させて接合する場合は、接合温度を600℃以下にすることは可能である。しかしながら、Al−SiC複合材料のスキン層の一部のみを溶融させることは難しく、スキン層を溶融させると、Al−SiC複合材料中のアルミニウム合金も溶融し、その一部が溶出して、Al−SiC複合材料中に空隙(ボイド)が生成するおそれがあった。Al−SiC複合材料中に空隙が生成すると、Al−SiC複合材料の熱伝導性が低下する要因となる。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを、比較的低温での加熱によって、Al−SiC複合材料中のアルミニウム材を溶出させずに、かつ高強度で接合することができるセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法、及び、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
このような課題を解決して前記目的を達成するために、本発明のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法は、セラミックス部材と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有するAl−SiC複合材料とを接合するセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法であって、前記セラミックス部材および前記Al−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、を備えていることを特徴としている。
この構成のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法によれば、Al−SiC複合材料のアルミニウム材が、ケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金で構成されていて、セラミックス部材とAl−SiC複合材料との間に配置されたマグネシウム層がAl−Si合金と接触しているので、550℃以上575℃以下と比較的低温での加熱によって、セラミックス部材とAl−SiC複合材料を接合することができる。
即ち、マグネシウム層のマグネシウムがセラミックス部材やAl−SiC複合材料の表面の酸化被膜を除去するとともに、Al−SiC複合材料のアルミニウム材へ拡散して、セラミックス部材とAl−SiC複合材料との間に、アルミニウムと、マグネシウムと、ケイ素と、拡散してきたマグネシウムとケイ素との反応によって形成されたMgSiとによって、固相と液相が混在した固液共存領域が形成される。そして、この固液共存領域が凝固することによって、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とが、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む接合部を介して接合される。また、これらの酸化被膜とマグネシウムの反応によってマグネシウム酸化物が生じる。
そして、この液相が凝固した部分(接合部)によって、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを高強度で接合することができる。
また、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを、固液共存領域を形成させて接合しているので、Al−SiC複合材料中のアルミニウム材を溶出させずに、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを接合することができる。さらにAl−SiC複合材料中のアルミニウム材が溶出しないので、Al−SiC複合材料のアルミニウム材が流出することによる空隙(ボイド)の発生や、Al−SiC複合材料のひび割れを抑制することができる。
ここで、Al−SiC複合材料のアルミニウム材のケイ素含有量が0.1原子%未満だと、固液共存領域の液相量が少なくなり、セラミックス基板とAl−SiC複合材料との接合性が低下するおそれがある。
また、マグネシウム層の厚さが0.1μm未満の場合、加熱時に生成するMgSiの量が少なくなりセラミックス基板とAl−SiC複合材料との接合性が低下する。一方、マグネシウム層の厚さが10μmを超えた場合、固液共存領域中の液相が多くなり、接合性が低下する。
さらに、加熱温度が550℃未満の場合、固液共存領域中の液相量が少なくなるため、接合性が低下する。575℃を超えた場合、ヒートシンク母材の溶融が生じる。
ここで、本発明のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法においては、前記積層体において、前記Al−SiC複合材料の前記セラミックス部材との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在している前記Al−Si合金中のケイ素の量と、前記マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内にあることが好ましい。
この場合、加熱によって生成する固液共存領域中にMgSiが生成し易くなるので、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを確実に接合することが可能となる。
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に接合された回路層とを有するパワーモジュール用基板の前記セラミックス基板と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有するAl−SiC複合材料で構成されているヒートシンクとを接合するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、前記セラミックス基板および前記Al−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、前記セラミックス基板と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、得られた積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス基板と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、を備えていることを特徴としている。
この構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、上述のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法の場合と同様に、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを、550℃以上575℃以下と比較的低温での加熱によって、Al−SiC複合材料中のアルミニウム材を溶出させずに、かつ高強度で接合することができる。
ここで、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法においては、前記積層体において、前記Al−SiC複合材料の前記セラミックス基板との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在している前記Al−Si合金中のケイ素の量と、前記マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内にあることが好ましい。
この場合、上述のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法の場合と同様に、固液共存領域中にMgSiが生成し易くなるので、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを確実に接合することが可能となる。
本発明によれば、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを、比較的低温での加熱によって、Al−SiC複合材料中のアルミニウム材を溶出させずに、かつ高強度で接合することができるセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法、及び、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することが可能となる。
発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によって得られるヒートシンク付パワーモジュール用基板の断面図である。 本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によって得られるヒートシンク付パワーモジュール用基板のセラミックス基板と金属層とが接合されている部分の拡大断面図である。 本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示すフロー図である。 本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。 実施例における母材溶融が発生したAl−SiC複合材料を説明する写真である。
以下、図面を参照して、本発明のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法およびヒートシンク付きパワーモジュール用基板の製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
まず、本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によって得られるヒートシンク付パワーモジュール用基板の構成を、図1と図2を参照して説明する。
図1において、ヒートシンク付パワーモジュール用基板1は、パワーモジュール用基板10とヒートシンク20とを備える。
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に接合された回路層12を備えている。
セラミックス基板11は、回路層12とヒートシンク20との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性および放熱性に優れたSi(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)、Al(アルミナ)等のセラミックスで構成されている。本実施形態では、AlNで構成されている。セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム部材が接合されることで形成されている。アルミニウム部材としては、純度が99mass%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)や純度が99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)を用いることができる。本実施形態では、4Nアルミニウムの圧延板を用いている。回路層12の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では0.4mmに設定されている。回路層12とセラミックス基板11とは、例えば、Al−Si系ろう材によって接合されている。
ヒートシンク20は、パワーモジュール用基板10側の熱を放散するためのものである。このヒートシンク20には、冷却用の流体が流れるための流路21が設けられている。
ヒートシンク20は、Al−SiC複合材料(いわゆるAlSiC)30で構成されている。Al−SiC複合材料は、SiCからなる多孔質体31と、この多孔質体31に含浸されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材32とを有する。アルミニウム材32としては、純度が99mass%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)や純度が99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)等の純アルミニウムや、Al:80mass%以上99.99mass%以下、Si:0.01mass%以上13.5mass%以下、Mg:0.03mass%以上5.0mass%以下、残部:不純物の組成を有するアルミニウム合金を用いることができる。また、ADC12やA356等のアルミニウム合金を用いることもできる。
Al−SiC複合材料30はスキン層を有していてもよい。このスキン層は、多孔質体31となるSiCにアルミニウム材32を溶融して含浸させてAl−SiC複合材料を製造する際に、このアルミニウム材32の一部が表面に滲み出すことによって形成される層である。従って、スキン層は、アルミニウム材32と同じ組成となる。スキン層の厚さは、滲み出したアルミニウム材を切削加工することによって調整される。
ヒートシンク20の厚さは0.5mm〜5.0mmとすることができる。なお、ヒートシンク20の厚さはスキン層が形成されている場合はそのスキン層の厚さを含んだ厚さである。また、スキン層の片面当たりの厚さは、ヒートシンク20の厚さの0.01倍〜0.1倍とするとよい。
なお、本実施形態のヒートシンク付パワーモジュール用基板1において、ヒートシンク20の面積は、セラミックス基板11の面積と同じか、又は、大きくなるように設定されている。
ここで、セラミックス基板11とヒートシンク20との接合部分の構造について、図2を用いて説明する。
図2において、セラミックス基板11とヒートシンク20であるAl−SiC複合材料30とは、接合部40を介して接合されている。図2の(a)は、Al−SiC複合材料30がスキン層33を有する場合であり、接合部40は、スキン層33内に形成されている。(b)は、Al−SiC複合材料30がスキン層33を有しない場合であり、接合部40は、Al−SiC複合材料30のアルミニウム材32内に形成されている。
接合部40は、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む。接合部40は、後述するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを、マグネシウム層を介して積層した積層体を加熱することによって生成した、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む固液共存領域が凝固して形成された層である。
接合部40には、マグネシウム酸化物41が析出している。マグネシウム酸化物41は、セラミックス基板11と接合部40との接合界面近傍に析出している。マグネシウム酸化物41は、通常、酸化マグネシウム(MgO)、スピネル(MgAl)およびこれらの複合物である。マグネシウム酸化物41は、後述するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、セラミックス基板11の表面と、Al−SiC複合材料30の表面とにそれぞれ存在していた酸化被膜と、マグネシウム層中のマグネシウムが反応することによって生成した生成物である。接合部40にはさらに、MgSiが析出している場合もある。
次に、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板1の製造方法について、図3と図4を参照して説明する。本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板1の製造方法は、図3に示すように、回路層接合工程S01とヒートシンク接合工程S02とを有する。
まず、図4に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、回路層12となるアルミニウム部材51を、ろう材52を介して積層する。次いで、積層方向に加圧しながら加熱することによって、セラミックス基板11に回路層12を接合する。
以上の回路層接合工程S01により、本実施形態におけるパワーモジュール用基板10が製造される。
(ヒートシンク接合工程S02)
次に、パワーモジュール用基板10のセラミックス基板11と、ヒートシンク20となるAl−SiC複合材料30とを接合して、ヒートシンク付パワーモジュール用基板1を製造する。このヒートシンク接合工程S02は、図3に示すように、マグネシウム層形成工程S21と積層工程S22と接合工程S23とを有する。
マグネシウム層形成工程S21において、図4に示すように、セラミックス基板11およびAl−SiC複合材料30のうちの少なくとも一方の表面にマグネシウム層53を形成する。本実施形態では、マグネシウム層53はAl−SiC複合材料30の表面に形成されている。
マグネシウム層53は、マグネシウム濃度が80原子%以上であることが好ましく、90原子%以上であることが特に好ましい。マグネシウム層53のマグネシウム濃度が80原子%以上であると、後述の接合工程S23において、固液共存領域が生成し易くなり、また固液共存領域中にMgSiが生成し易くなる。
マグネシウム層53の厚さは、0.1μm以上10μm以下(セラミックス基板11およびAl−SiC複合材料30の両方に形成される場合は、合計の厚さ)の範囲とされている。マグネシウム層53の厚さが薄くなりすぎると、後述の接合工程S23において、生成するMgSiの量が少なくなり、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30との接合強度が低下する。一方、マグネシウム層53の厚さが厚くなりすぎると、後述の接合工程S23において、固液共存領域中に液相が過剰に生成して、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30との接合性が低下するおそれがある。
マグネシウム層53の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、マグネシウム粉末のペーストを塗布して乾燥する方法を用いることができる。
次に、積層工程S22では、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを、マグネシウム層53を介して積層して、積層体を得る。
得られた積層体は、Al−SiC複合材料30のセラミックス基板11との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在しているAl−Si合金中のケイ素の量と、マグネシウム層53に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内とされている。SiとMgとの存在量比が上記の範囲内にあると、後述の接合工程S23において、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを接合するのに必要なMgSiが生成しやすくなり、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを確実に接合することができる。Si/Mgは、1.1以上6.7以下の範囲内にあることが好ましい。
ここで、マグネシウム層53に存在しているマグネシウム量は、マグネシウム層53の純度と厚さと密度から求めることができる。Al−SiC複合材料30の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在しているケイ素量は、Al−SiC複合材料30のケイ素含有量から求めることができる。なお、Al−SiC複合材料30がスキン層を有している場合、Al−SiC複合材料30のケイ素含有量は、スキン層中のケイ素量を含む。
次に、接合工程S23では、得られた接合体を積層方向に加圧しながら、550℃以上575℃以下の温度範囲にて加熱する。この加熱によって、マグネシウム層53のマグネシウムがセラミックス基板11やAl−SiC複合材料30の表面に存在する酸化被膜を除去するとともに、Al−SiC複合材料30のアルミニウム材32に拡散して、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30との間に、アルミニウムと、マグネシウムと、ケイ素と、拡散してきたマグネシウムとケイ素との反応によって形成されたMgSiとによって、固液共存領域が生成される。そして、固液共存領域が凝固することによって、図2に示すようにセラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とが、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む接合部40を介して接合される。
なお、Al−SiC複合材料30がスキン層33を有する場合、接合部40は、スキン層33内のセラミックス基板11側に形成される。スキン層33を有しない場合、接合部40は、アルミニウム材32内のセラミックス基板11側に形成される。
また、マグネシウム酸化物41はこれらの酸化被膜とマグネシウムの反応によって生じる。また、接合温度が高い場合や保持時間が長い場合では、接合部40にMgSiがほとんど観察されない場合もある。なお、固液共存領域の凝固は、冷却による凝固であってもよいし、マグネシウムの拡散等によって固液共存領域中の液相の融点が上昇して、加熱温度を保ったまま凝固する、いわゆる等温凝固によるものであってもよい。
本実施形態では、上記の接合体の接合条件として、積層方向の荷重を0.1MPa以上3.5MPa以下(1kgf/cm以上35kgf/cm以下)の範囲内、接合温度を550℃以上575℃以下の範囲内、保持時間を15分以上180分以下の範囲内とされている。接合温度が低くなりすぎると固液共存領域が生成しないおそがある。一方、接合温度が高くなりすぎると、Al−SiC複合材料30の母材の溶融が生じるおそれがある。なお、接合温度は、Al−SiC複合材料30のアルミニウム材32の流出を抑えるために、アルミニウム材32の融点よりも低い温度であることが好ましい。
また、付与する荷重が低くなりすぎると、固液共存領域がAl−SiC複合材料30に接触しにくくなり、接合不良となるおそれがある。付与する荷重が高くなりすぎると、回路層12、セラミックス基板11又はAl−SiC複合材料30に亀裂や破損が生じるおそれがある。
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板1の製造方法によれば、ヒートシンク接合工程S02において、パワーモジュール用基板10のセラミックス基板11とヒートシンク20となるAl−SiC複合材料30とを、マグネシウム層53のマグネシウムをAl−SiC複合材料30のAl−Si合金に拡散させて、固液共存領域を形成させて接合しているので、Al−SiC複合材料30中のアルミニウム材32を溶出させずに、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを高強度で接合することができる。また、Al−SiC複合材料中のアルミニウム材が溶出しないので、Al−SiC複合材料のアルミニウム材が流出することによる空隙(ボイド)の発生や、Al−SiC複合材料のひび割れを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、Al−SiC複合材料30のセラミックス基板11との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在しているAl−Si合金中のケイ素の量と、マグネシウム層53に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内とされているので、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを接合するのに必要なMgSiが生成しやすくなり、セラミックス基板11とAl−SiC複合材料30とを確実に接合することができる。
従って、本実施形態での製造方法によって得られたヒートシンク付パワーモジュール用基板1は、セラミックス基板11とヒートシンク20(Al−SiC複合材料30)との接合強度が高く、また、ヒートシンク中の空隙(ボイド)が少ないので、ヒートサイクル信頼性が優れたものとなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを接合したセラミックス/Al−SiC複合材料接合体であればよい。
また、本実施形態では、回路層12を4Nアルミニウムの圧延板が接合されることで形成したが、これに限らず、銅又は銅合金板をセラミックス基板11に接合することで、銅又は銅合金からなる回路層(厚さ0.3mm〜3.0mm)を形成してもよい。この場合、銅又は銅合金板をセラミックス基板11に接合する場合には、Ag−Cu−TiやAg−Tiろう材による、活性金属ろう付け法が好適に用いられる。
さらに、回路層が、アルミニウムと銅(若しくはそれらの合金)の積層体から構成されていてもよい。この場合、セラミックス基板上にアルミニウム層が形成され、アルミニウム層上に銅層が形成されている。
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
[本発明例1〜16、比較例1〜5]
表1に示すように、回路層形成用金属板と、セラミックス基板(40mm×40mm、AlN及びAlの場合:厚さ0.635mm、SiNの場合:0.32mm)と、Al−SiC複合材料(AlSiC)の板材(50mm×60mm×厚さ5mm(スキン層が有る場合:スキン層は両面、片面の厚さは0.2mm))と、ろう材とを準備した。
なお、Al−SiC複合材料のアルミニウム材の融点は、ADC12が570℃、4Nアルミニウムが660℃、3Nアルミニウムが655℃、2Nアルミニウムが650℃である。
回路層形成用金属板とセラミックス基板とを下記のようにして接合して、回路層が形成されたセラミックス基板を得た。
回路層形成用金属板が4N−Alの場合、セラミックス基板の一方の面に、回路層形成用金属板(37mm×37mm×厚さ0.4mm)を、ろう材(Al−7.5mass%Si、厚さ:12μm)を介して積層した。次いで、積層方向に加圧しながら加熱することによって、セラミックス基板に回路層形成用金属板を接合し、回路層が形成されたセラミックス基板を得た。なお、積層方向の荷重は0.6MPa、接合温度は645℃、保持時間は45分とした。
回路層形成用金属板がCuの場合、セラミックス基板の一方の面に無酸素銅からなる銅板(37mm×37mm×厚さ0.6mm)を、ろう材(Ag−9.8mass%Ti)を介して積層し、荷重0.6MPa、接合温度830℃、保持時間30分の条件で接合し、回路層が形成されたセラミックス基板を得た。
次に、表1に示すように、回路層が接合されたセラミックス基板およびAl−SiC複合材料の表面のうちの一方にマグネシウム層を、表1に示す厚さで形成した。マグネシウム層は、蒸着法(イオンプレーティング法)により形成した。
形成したマグネシウム層の純度と、Al−SiC複合材料のセラミックス部材との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在しているアルミニウム材(Al−Si合金)中のケイ素の量と、マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)を、下記の表1に示す。なお、Si/Mgは、以下の方法により測定した。
(Si/Mgの測定方法)
マグネシウム層のマグネシウム量は、マグネシウム層の純度と厚さを測定し、マグネシウム層の密度を1.74g/cmとして求めた。マグネシウム層の純度はEPMAを用いて測定し、厚さは、断面SEM観察により測定した。
Al−Si合金中のケイ素量は、スキン層有りのAl−SiC複合材料の場合は、スキン層のケイ素濃度を測定することによって求めた。スキン層無しのAl−SiC複合材料の場合は、Al−SiC複合材料内のケイ素濃度を測定することによって求めた。ケイ素濃度はEPMAを用いて測定した。
そして、求められたマグネシウム量とケイ素量とからSiとMgとの比(Si/Mg)を求めた。
次に、セラミックス基板とAl−SiC複合材料とを、マグネシウム層を介して積層して、積層体を得た。次いで、積層方向に加圧しながら加熱することによって、セラミックス基板にAl−SiC複合材料(ヒートシンク)を接合して、評価用試料(ヒートシンク付パワーモジュール用基板)を作製した。接合条件は、表1の通りとした。
[従来例1〜4]
本発明例1と同様に回路層を接合した後、回路層が形成されたセラミックス基板の他方の面に、Al−SiC複合材料を、表1に記載のAl−Si系ろう材箔を介して積層し、次いで、積層方向に加圧しながら加熱することによって、評価用試料(ヒートシンク付パワーモジュール用基板)を作製した。
(初期接合性)
得られた評価用試料を用いて、セラミックス基板とヒートシンクとの接合率を測定して、初期接合性を評価した。
具体的には、超音波探傷装置(インサイト社製INSIGHT−300)を用いて評価し、以下の式から算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわちセラミックス基板の面積(40mm×40mm)とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。評価結果を表1に示す。
(接合率)={(初期接合面積)−(非接合部面積)}/(初期接合面積)×100
(冷熱サイクル後の接合性)
冷熱サイクル後の接合性は、冷熱衝撃試験機エスペック社製TSB−51を使用し、上述の評価用試料に対して、液相(フロリナート)で、−40℃×10分←→175℃×10分の2000サイクルを実施し、上述した方法と同じ方法で接合率を測定して、評価した。評価結果を表1に示す。
(母材溶融の評価)
得られた評価用試料のAl−SiC複合材料表面を目視で観察し、母材溶融によるアルミニウムの流出や割れが確認された試料を「×」、確認されなかった試料を「○」と評価した。なお、図5は、母材溶融が発生したAl−SiC複合材料の一例の側面の写真であり、(a)は、母材溶融によるアルミニウムの流出が生じたAl−SiC複合材料の側面写真であり、(b)は、母材溶融による割れが生じたAl−SiC複合材料の角部の側面写真である。図5(a)に示すように、母材溶融によるアルミニウムの流出が生じた場合、アルミニウムはAl−SiC複合材料表面に玉状になって存在する。
Al−Siろう材箔やAl−Si―Mgろう材箔を用い、610℃で接合した従来例1及び従来例2では、Al−SiC複合材料に母材溶融が確認された。560℃で接合した従来例3及び従来例4では、接合率が低かった。
Mg層の厚さが0.1μm未満と薄くされた比較例1、Mg層の膜厚が10μmよりも厚くされた比較例2、Al−SiC複合材料のアルミニウム材のSi濃度が0.1原子%未満の比較例3、接合温度が低い比較例4では、接合率が低くなった。接合温度が高かった比較例5では、母材溶融が生じていた。
一方、本発明例で得られたヒートシンク付パワーモジュール用基板は、いずれも母材溶融が生じることもなく、セラミックス基板とAl−SiC複合材料(ヒートシンク)との接合率も高い値を示すことが確認された。
1 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
10 パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
20 ヒートシンク
21 流路
30 Al−SiC複合材料
31 多孔質体
32 アルミニウム材
33 スキン層
40 接合部
41 マグネシウム酸化物
51 アルミニウム部材
52 ろう材
53 マグネシウム層

Claims (4)

  1. セラミックス部材と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有するAl−SiC複合材料とを接合するセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法であって、
    前記セラミックス部材および前記Al−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、
    前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、
    前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、
    を備えていることを特徴とするセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法。
  2. 前記積層体において、前記Al−SiC複合材料の前記セラミックス部材との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在している前記Al−Si合金中のケイ素の量と、前記マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法。
  3. セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に接合された回路層とを有するパワーモジュール用基板の前記セラミックス基板と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有するAl−SiC複合材料で構成されているヒートシンクとを接合するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
    前記セラミックス基板および前記Al−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、
    前記セラミックス基板と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、
    得られた積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス基板と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、
    を備えていることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
  4. 前記積層体において、前記Al−SiC複合材料の前記セラミックス基板との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在している前記Al−Si合金中のケイ素の量と、前記マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
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