JP2018032732A - セラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法、及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Al−SiC複合材料が、ケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有し、セラミックス部材およびAl−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、を備えているセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法。
【選択図】図1
Description
一方、融点が600℃以下のAl−Si合金からなるスキン層が形成されたAl−SiC複合材料とセラミックス基板とを、Al−SiC複合材料のスキン層の一部を溶融させて接合する場合は、接合温度を600℃以下にすることは可能である。しかしながら、Al−SiC複合材料のスキン層の一部のみを溶融させることは難しく、スキン層を溶融させると、Al−SiC複合材料中のアルミニウム合金も溶融し、その一部が溶出して、Al−SiC複合材料中に空隙(ボイド)が生成するおそれがあった。Al−SiC複合材料中に空隙が生成すると、Al−SiC複合材料の熱伝導性が低下する要因となる。
即ち、マグネシウム層のマグネシウムがセラミックス部材やAl−SiC複合材料の表面の酸化被膜を除去するとともに、Al−SiC複合材料のアルミニウム材へ拡散して、セラミックス部材とAl−SiC複合材料との間に、アルミニウムと、マグネシウムと、ケイ素と、拡散してきたマグネシウムとケイ素との反応によって形成されたMg2Siとによって、固相と液相が混在した固液共存領域が形成される。そして、この固液共存領域が凝固することによって、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とが、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む接合部を介して接合される。また、これらの酸化被膜とマグネシウムの反応によってマグネシウム酸化物が生じる。
そして、この液相が凝固した部分(接合部)によって、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを高強度で接合することができる。
また、マグネシウム層の厚さが0.1μm未満の場合、加熱時に生成するMg2Siの量が少なくなりセラミックス基板とAl−SiC複合材料との接合性が低下する。一方、マグネシウム層の厚さが10μmを超えた場合、固液共存領域中の液相が多くなり、接合性が低下する。
さらに、加熱温度が550℃未満の場合、固液共存領域中の液相量が少なくなるため、接合性が低下する。575℃を超えた場合、ヒートシンク母材の溶融が生じる。
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に接合された回路層12を備えている。
セラミックス基板11は、回路層12とヒートシンク20との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性および放熱性に優れたSi3N4(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)、Al2O3(アルミナ)等のセラミックスで構成されている。本実施形態では、AlNで構成されている。セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
Al−SiC複合材料30はスキン層を有していてもよい。このスキン層は、多孔質体31となるSiCにアルミニウム材32を溶融して含浸させてAl−SiC複合材料を製造する際に、このアルミニウム材32の一部が表面に滲み出すことによって形成される層である。従って、スキン層は、アルミニウム材32と同じ組成となる。スキン層の厚さは、滲み出したアルミニウム材を切削加工することによって調整される。
ヒートシンク20の厚さは0.5mm〜5.0mmとすることができる。なお、ヒートシンク20の厚さはスキン層が形成されている場合はそのスキン層の厚さを含んだ厚さである。また、スキン層の片面当たりの厚さは、ヒートシンク20の厚さの0.01倍〜0.1倍とするとよい。
なお、本実施形態のヒートシンク付パワーモジュール用基板1において、ヒートシンク20の面積は、セラミックス基板11の面積と同じか、又は、大きくなるように設定されている。
以上の回路層接合工程S01により、本実施形態におけるパワーモジュール用基板10が製造される。
次に、パワーモジュール用基板10のセラミックス基板11と、ヒートシンク20となるAl−SiC複合材料30とを接合して、ヒートシンク付パワーモジュール用基板1を製造する。このヒートシンク接合工程S02は、図3に示すように、マグネシウム層形成工程S21と積層工程S22と接合工程S23とを有する。
ここで、マグネシウム層53に存在しているマグネシウム量は、マグネシウム層53の純度と厚さと密度から求めることができる。Al−SiC複合材料30の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在しているケイ素量は、Al−SiC複合材料30のケイ素含有量から求めることができる。なお、Al−SiC複合材料30がスキン層を有している場合、Al−SiC複合材料30のケイ素含有量は、スキン層中のケイ素量を含む。
なお、Al−SiC複合材料30がスキン層33を有する場合、接合部40は、スキン層33内のセラミックス基板11側に形成される。スキン層33を有しない場合、接合部40は、アルミニウム材32内のセラミックス基板11側に形成される。
また、マグネシウム酸化物41はこれらの酸化被膜とマグネシウムの反応によって生じる。また、接合温度が高い場合や保持時間が長い場合では、接合部40にMg2Siがほとんど観察されない場合もある。なお、固液共存領域の凝固は、冷却による凝固であってもよいし、マグネシウムの拡散等によって固液共存領域中の液相の融点が上昇して、加熱温度を保ったまま凝固する、いわゆる等温凝固によるものであってもよい。
また、付与する荷重が低くなりすぎると、固液共存領域がAl−SiC複合材料30に接触しにくくなり、接合不良となるおそれがある。付与する荷重が高くなりすぎると、回路層12、セラミックス基板11又はAl−SiC複合材料30に亀裂や破損が生じるおそれがある。
例えば、本実施形態では、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、セラミックス部材とAl−SiC複合材料とを接合したセラミックス/Al−SiC複合材料接合体であればよい。
さらに、回路層が、アルミニウムと銅(若しくはそれらの合金)の積層体から構成されていてもよい。この場合、セラミックス基板上にアルミニウム層が形成され、アルミニウム層上に銅層が形成されている。
表1に示すように、回路層形成用金属板と、セラミックス基板(40mm×40mm、AlN及びAl2O3の場合:厚さ0.635mm、SiNの場合:0.32mm)と、Al−SiC複合材料(AlSiC)の板材(50mm×60mm×厚さ5mm(スキン層が有る場合:スキン層は両面、片面の厚さは0.2mm))と、ろう材とを準備した。
なお、Al−SiC複合材料のアルミニウム材の融点は、ADC12が570℃、4Nアルミニウムが660℃、3Nアルミニウムが655℃、2Nアルミニウムが650℃である。
回路層形成用金属板が4N−Alの場合、セラミックス基板の一方の面に、回路層形成用金属板(37mm×37mm×厚さ0.4mm)を、ろう材(Al−7.5mass%Si、厚さ:12μm)を介して積層した。次いで、積層方向に加圧しながら加熱することによって、セラミックス基板に回路層形成用金属板を接合し、回路層が形成されたセラミックス基板を得た。なお、積層方向の荷重は0.6MPa、接合温度は645℃、保持時間は45分とした。
回路層形成用金属板がCuの場合、セラミックス基板の一方の面に無酸素銅からなる銅板(37mm×37mm×厚さ0.6mm)を、ろう材(Ag−9.8mass%Ti)を介して積層し、荷重0.6MPa、接合温度830℃、保持時間30分の条件で接合し、回路層が形成されたセラミックス基板を得た。
マグネシウム層のマグネシウム量は、マグネシウム層の純度と厚さを測定し、マグネシウム層の密度を1.74g/cm3として求めた。マグネシウム層の純度はEPMAを用いて測定し、厚さは、断面SEM観察により測定した。
Al−Si合金中のケイ素量は、スキン層有りのAl−SiC複合材料の場合は、スキン層のケイ素濃度を測定することによって求めた。スキン層無しのAl−SiC複合材料の場合は、Al−SiC複合材料内のケイ素濃度を測定することによって求めた。ケイ素濃度はEPMAを用いて測定した。
そして、求められたマグネシウム量とケイ素量とからSiとMgとの比(Si/Mg)を求めた。
本発明例1と同様に回路層を接合した後、回路層が形成されたセラミックス基板の他方の面に、Al−SiC複合材料を、表1に記載のAl−Si系ろう材箔を介して積層し、次いで、積層方向に加圧しながら加熱することによって、評価用試料(ヒートシンク付パワーモジュール用基板)を作製した。
得られた評価用試料を用いて、セラミックス基板とヒートシンクとの接合率を測定して、初期接合性を評価した。
具体的には、超音波探傷装置(インサイト社製INSIGHT−300)を用いて評価し、以下の式から算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわちセラミックス基板の面積(40mm×40mm)とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。評価結果を表1に示す。
(接合率)={(初期接合面積)−(非接合部面積)}/(初期接合面積)×100
冷熱サイクル後の接合性は、冷熱衝撃試験機エスペック社製TSB−51を使用し、上述の評価用試料に対して、液相(フロリナート)で、−40℃×10分←→175℃×10分の2000サイクルを実施し、上述した方法と同じ方法で接合率を測定して、評価した。評価結果を表1に示す。
得られた評価用試料のAl−SiC複合材料表面を目視で観察し、母材溶融によるアルミニウムの流出や割れが確認された試料を「×」、確認されなかった試料を「○」と評価した。なお、図5は、母材溶融が発生したAl−SiC複合材料の一例の側面の写真であり、(a)は、母材溶融によるアルミニウムの流出が生じたAl−SiC複合材料の側面写真であり、(b)は、母材溶融による割れが生じたAl−SiC複合材料の角部の側面写真である。図5(a)に示すように、母材溶融によるアルミニウムの流出が生じた場合、アルミニウムはAl−SiC複合材料表面に玉状になって存在する。
Mg層の厚さが0.1μm未満と薄くされた比較例1、Mg層の膜厚が10μmよりも厚くされた比較例2、Al−SiC複合材料のアルミニウム材のSi濃度が0.1原子%未満の比較例3、接合温度が低い比較例4では、接合率が低くなった。接合温度が高かった比較例5では、母材溶融が生じていた。
10 パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
20 ヒートシンク
21 流路
30 Al−SiC複合材料
31 多孔質体
32 アルミニウム材
33 スキン層
40 接合部
41 マグネシウム酸化物
51 アルミニウム部材
52 ろう材
53 マグネシウム層
Claims (4)
- セラミックス部材と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有するAl−SiC複合材料とを接合するセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法であって、
前記セラミックス部材および前記Al−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、
前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、
前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス部材と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、
を備えていることを特徴とするセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法。 - 前記積層体において、前記Al−SiC複合材料の前記セラミックス部材との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在している前記Al−Si合金中のケイ素の量と、前記マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス/Al−SiC複合材料接合体の製造方法。
- セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に接合された回路層とを有するパワーモジュール用基板の前記セラミックス基板と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなるアルミニウム材を有するAl−SiC複合材料で構成されているヒートシンクとを接合するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板および前記Al−SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、
前記セラミックス基板と前記Al−SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、
得られた積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス基板と前記Al−SiC複合材料とを接合する工程と、
を備えていることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記積層体において、前記Al−SiC複合材料の前記セラミックス基板との接合面の表面から厚さ50μmまでの範囲に存在している前記Al−Si合金中のケイ素の量と、前記マグネシウム層に存在しているマグネシウムの量との比(Si/Mg)が、原子比で0.01以上99.0以下の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
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