JP6822247B2 - ヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法 - Google Patents
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風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Al2O3(アルミナ)、Si3N4(窒化ケイ素)などのセラミックスからなる絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えた絶縁回路基板が、従来から広く用いられている。なお、絶縁回路基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属層を形成したものも提供されている。
また、ヒートシンクとしてAlSiCを用いた場合に限らず、ヒートシンクにアルミニウム合金を用いた場合でもアルミニウム合金母材の部分的な溶融が起こるおそれがある。
また、加熱温度が550℃未満の場合、液相の生成量が少なくなるため、接合性が低下する。575℃を超えた場合、ろうこぶやヒートシンク母材の溶融が生じる。
この場合は、ヒートシンクを構成しているAl−Si合金中にMg層のMgが拡散することによって、AlとMg2SiとMgとが共存する領域やAlとMg2SiとSiとが共存する領域が形成される。よって、比較的低温での加熱により液相を生成して、金属層とヒートシンクとを接合することが可能となる。なお、絶縁回路基板の金属層のヒートシンクとの接合面および積層ろう材のAl部材層を構成しているAl部材としては、純AlもしくはSi含有量が0.1原子%未満のAl合金を用いることができる。
この場合は、積層ろう材のAl部材層を構成しているAl−Si合金中にMg層中のMgが拡散することによって、AlとMg2SiとMgとが共存する領域やAlとMg2SiとSiとが共存する領域が形成される。よって、比較的低温での加熱により液相を生成して、金属層とヒートシンクとを接合することが可能となる。なお、絶縁回路基板の金属層のヒートシンクとの接合面およびヒートシンクを構成しているAl部材としては、純AlもしくはSi含有量が0.1原子%未満のAl合金を用いることができる。
この場合、MgとSiとが反応してMg2Siが生成されるが、Mg2Siの生成に使われたSi以外の余剰のSiが金属層とヒートシンクとの間に存在することで、接合界面の組成がAl−Mg2Si−Siの擬3元系となり、固相線温度が低くなる。よって、比較的低温条件であっても、接合界面に液相を出現させることができ、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとを確実に接合することができる。
この場合は、絶縁回路基板の金属層を構成しているAl−Si合金中にMg層中のMgが拡散することによって、AlとMg2SiとMgとが共存する領域やAlとMg2SiとSiとが共存する領域が形成される。よって、比較的低温での加熱により液相を生成して、金属層とヒートシンクとを接合することが可能となる。なお、積層ろう材のAl部材層およびヒートシンクを構成しているAl部材としては、純AlもしくはSi含有量が0.1原子%未満のAl合金を用いることができる。
この場合、絶縁回路基板及びヒートシンクに亀裂や破損を生じさせずに、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとを高い接合信頼性で確実に接合することが可能となる。
図1は、本発明のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法によって得られるヒートシンク付絶縁回路基板の一例を示す概略断面図である。図2は、図1における金属層とヒートシンクとの接合層の拡大断面図である。
なお、Mg2Si相41は、SiとMgとの包晶反応で形成されることから、Mg2Si相41の中心にSiが存在し、このSiの周囲にMg2Siが形成されている場合もある。
ここで、接合層40の厚さtは、3μm以上50μm以下の範囲内とされている。なお、ヒートシンク30の接合面及び金属層23の接合面には、酸化アルミニウム膜とMgとが反応して形成されたMg酸化物(MgO、MgAl2O4(スピネル)等)が存在しており、それぞれ酸素偏析層として観察されるため、これら酸素偏析層に挟まれた領域が接合層40となる。
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。
また、Mg層52は、Al部材層51の表裏両面に形成してもよい。
Al部材層51Sの厚さは、3μm以上50μm以下の範囲内にあることが好ましい。
Mg層52は、Mg濃度が80原子%以上であることが好ましく、90原子%以上であることが特に好ましい。Mg層52のMg濃度が80原子%以上であると、後述する加熱工程においてMg2Siが生成し易くなる。
Mg層52の厚さは、0.1μm以上10μm以下の範囲内にあることが好ましい。Mg層52の厚さが薄くなりすぎと、後述する加熱工程の際に生成するMg2Siの量が少なくなり、金属層23とヒートシンク30とを接合するのが困難になるおそれがある。一方、Mg層52の厚さが厚くなりすぎると、後述する加熱工程の際に、Al−Mg合金の液相が過剰に生成して、金属層23とヒートシンク30との接合層にろうこぶが発生するおそれがある。また、接合層にボイドが生じ、熱抵抗となるおそれがある。なお、Mg層52をAl部材層51Sの表裏両面に形成した場合、Mg層52の厚さはその合計の厚さである。
本実施形態では、AlSiCで構成されている。
加熱工程において、積層体11aの加熱温度は、550℃以上575℃以下の温度範囲である。積層体11aの加熱温度が低くなりすぎると、液相の生成量が少なくなるため接合性が低下する。一方、積層体11aの加熱温度が高くなりすぎると、ろうこぶやヒートシンク30の母材の溶融が生じる。
本実施形態では、Mg層52のMg量〔Mg〕と積層ろう材50SのAl部材層51SのSi量〔Si〕と原子比〔Mg〕/〔Si〕が2.0未満となるように、Mg層52のMg濃度及び厚さ、Al部材層51SのSi濃度及び厚さを調整していることから、接合界面の組成がAl−Mg2Si−Siの擬3元系となり、固相線温度が低くなるため、積層体11aの加熱温度を低温条件とすることができる。
加熱は、10−6Pa以上10−2Pa以下の真空又は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
3Mg2Si+8Al2O3 → 6MgAl2O4+3Si
3Mg2Si+2Al2O3 → 6MgO+3Si
そして、接合後には、接合層40の内部にMg2Si相41及びSi単体相42が分散される。また、ヒートシンク30及び金属層23の内部にまでMg2Si相41が分散されている。
図5は、第1実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。
Al部材層51は、純度99.99質量%以上の純AlまたはSi含有量が0.1原子%未満であるAl合金で構成されていることが好ましい。Al部材層51の厚さは、3μm以上50μm以下の範囲内にあることが好ましい。
本実施形態では、ヒートシンク30Sは、炭化ケイ素中にSi含有量が0.1原子%以上のAl−Si合金からなるAl部材が充填されたAlSiCで構成されている。
図6は、第3実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。なお、第3実施形態では第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明し、これらの実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付して再度の説明を省略する。
次に、絶縁回路基板の金属層が接合体とされているヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法について説明する。
図8は、第4実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。なお、第4実施形態では第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態との相違点を中心に説明し、これらの実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付して再度の説明を省略する。
例えば、第1実施形態では、絶縁回路基板20の金属層23をAl−Si合金からなるAl部材で構成して、金属層23とヒートシンク30の両方のAl部材をAl−Si合金としてもよい。このとき、積層ろう材50は、Al部材層51の表裏両面にMg層52を形成して、金属層23とヒートシンク30の両者に、積層ろう材50のMg層52を接触させることが好ましい。この場合、金属層23とヒートシンク30の両者にMg層52のMgが拡散するので、Mg2Siが生成しやすくなる。
上述した実施形態に記載した方法で表1記載の条件で各ヒートシンク付絶縁回路基板を作製した。
表1の実施形態は、各絶縁回路基板がどの実施形態に該当するかを示している。また、加熱雰囲気は真空雰囲気とした。
従来例のヒートシンク付絶縁回路基板は、積層ろう材の代わりに、Mg含有ろう材(組成:Al:Si:Mg=89.1:8.8:1.1(at%))を、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとの間を配置した。
得られた絶縁回路基板に対し、ろうこぶの有無及び接合層の接合率を評価した。
ろうこぶの有無は、ヒートシンク付絶縁回路基板を目視で観察し、ろうこぶが生じていたものを「×」、生じていなかったものを「○」と評価した。
ヒートシンクと絶縁回路基板との接合層の超音波探傷像を、超音波探傷装置(株式会社日立パワーソリューションズ製FineSAT200)を用いて測定し、以下の式から接合率を算出した。
ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち絶縁回路基板の金属層の面積とした。
(接合率)={(初期接合面積)−(剥離面積)}/(初期接合面積)
超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合層内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。
結果を表1に示す。
一方、本発明例のヒートシンク付絶縁回路基板では、ろうこぶが生じることもなく、接合層の接合率が高いことが確認された。
AlNからなるセラミックス板(40mm×40mm×0.635mmt)の一方の面及び他方の面に純度99.99質量%のアルミニウム板(37mm×37mm×0.6mmt)を接合し、絶縁回路基板を作成した。
この絶縁回路基板とAlSiCヒートシンク(50mm×60mm×5mmt、含侵されているアルミニウムはADC12)とを、表2記載の積層ろう材を介して積層し、表2記載の加熱条件で接合した。接合雰囲気は1×10−5Paの真空雰囲気とした。
得られたヒートシンク付絶縁回路基板について、実施例1と同様に、ろうこぶ、及び、接合層の接合率(初期接合率)を評価した。冷熱サイクル後における接合層の接合率(冷熱サイクル後接合率)について評価した。冷熱サイクルの条件は、−40℃←→150℃のサイクルを2000回行った後の接合率を実施例1と同様の方法で評価した。
また、本発明例1のヒートシンク付絶縁回路基板において、金属層とヒートシンクの接合界面をEPMA(日本電子株式会社製JEOL JXA−8530F)で観察し、BEI像及びO、Mg、Siのマッピング像を取得した(図9)。
特に、前記Mg層のMg量〔Mg〕と前記ろう材の前記Al部材層のSi量〔Si〕と原子比〔Mg〕/〔Si〕が2.0未満とされた本発明例31〜33,36,37,44,45においては、他の本発明例に比べて冷熱サイクル後の接合率が高くなっていることが確認された。
11a、11b、11c 積層体
20、20S、70 絶縁回路基板
21、71 セラミックス基板
22、72 回路層
23、23S、73 金属層
30、30S ヒートシンク
74 Cu部材金属層
75 Ti部材金属層
76 Al部材金属層
40、80 接合層
41 Mg2Si相
50、50S 積層ろう材
51、51S Al部材層
52 Mg層
Claims (6)
- 絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁層の他方の面に形成された金属層とを有する絶縁回路基板の前記金属層と、ヒートシンクとをろう材を用いて接合するヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法であって、
前記金属層は、前記ヒートシンクとの接合面がAlまたはAl合金からなるAl部材で構成され、
前記ヒートシンクは、AlまたはAl合金からなるAl部材、もしくは炭化ケイ素質部材中にAlまたはAl合金からなるAl部材が充填されたAl基複合材料で構成されており、
前記ろう材は、AlまたはAl合金で構成されているAl部材層と、このAl部材層の表裏面の少なくとも一方の面に形成されたMg層とを有する積層ろう材であり、
前記金属層の前記ヒートシンクとの接合面、前記ヒートシンクおよび前記Al部材層を構成するAl部材のうちの少なくとも一つは、Si含有量が0.1原子%以上であるAl−Si合金からなり、
前記Al−Si合金と前記Mg層とが接触するように配置された前記積層ろう材を介して、前記金属層と前記ヒートシンクとを積層して、積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱して、前記金属層と、ヒートシンクとを接合する加熱工程と、
を備えていることを特徴とするヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。 - 前記ヒートシンクを構成するAl部材が前記Al−Si合金であって、
前記積層工程において、前記Mg層が前記ヒートシンクと接触するように、前記積層ろう材を配置することを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。 - 前記ろう材の前記Al部材層を構成するAl部材が前記Al−Si合金であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。
- 前記Mg層のMg量〔Mg〕と前記ろう材の前記Al部材層のSi量〔Si〕と原子比〔Mg〕/〔Si〕が2.0未満であることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。
- 前記金属層の前記ヒートシンクとの接合面を構成するAl部材が前記Al−Si合金であって、
前記積層工程において、前記Mg層が前記金属層と接触するように、前記積層ろう材を配置することを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。 - 前記加熱工程にて、前記積層体を、積層方向に0.1MPa以上3.5MPa以下の圧力を付与しながら加熱することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。
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