JP2018029489A - 肥料供給装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】肥料の配合、保管、及び取り扱いが容易であり、植物栽培に必要な肥料成分を培地に供給することができる肥料供給装置を提供する。【解決手段】酸性液を貯留する液タンク1と、酸性液によって溶出可能な肥料成分を含む造粒体が充填される通液可能な肥料カートリッジ2と、液タンク1から肥料カートリッジ2に酸性液を移送する送液ポンプ3と、肥料カートリッジ2から流出する流出液のpH値及びEC値を検出する第一センサ4と、送液ポンプ3の動作を制御する制御部5と、を備え、肥料カートリッジ2は、互いに異なる肥料成分を含む複数種の造粒体を種類毎に隔離した状態で収納し、造粒体の種類毎に酸性液が供給されるように構成されており、制御部5は、第一センサ4の検出値に基づいて、肥料カートリッジ2への酸性液の送液量を、造粒体の種類毎に制御可能に構成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、植物栽培用の培地に肥料を供給する肥料供給装置に関する。
肥料供給装置は、水耕栽培や植物工場等において広く採用されている。肥料供給装置の開発にあたっては、栽培する野菜や果樹等の品種や生長に合った適切な配合の肥料を供給することが求められる。特に、植物等の各生長段階に対して肥料の配合が適切であることは、発育不良を起こさず量産していく上で重要なことである。
従来の肥料供給装置の例として、栽培する植物の種類、栽培周辺の環境に併せて、肥料である養液に含まれる栄養分の割合や、養液の供給量、供給時刻を自由に設定できる養液栽培システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、複数の原液タンクに貯留された互いに異なる肥料成分からなる原液を供給することにより、各原液の割合及び供給量の制御を可能としている。
特許文献1の養液栽培システムは、夫々の原液タンクから供給された原液が一度養液タンクに集められて混合されるため、培地に供給される原液の種類毎のpH値やEC値等の情報は不明であり、原液の種類毎に適したpH値やEC値に調整することは不可能である。また、肥料成分からなる原液が液体であることから、保管時及び使用時に雑菌の繁殖や害虫の発生が起こり易い。このため、定期的な原液の入れ替えや、雑菌を除去するための原液タンクの洗浄等が必要となる。また、植物の種類や各生長段階に応じて必要とされる肥料の配合は、多種多様であり、且つ夫々細かく異なる。このため、植物の種類や各生長段階に応じて肥料の配合を変更する場合、液肥のタンクの入れ替えや、洗浄等が必要となる。このように、従来の養液栽培システムは、原液の配合、保管、及び取り扱いの点で改善の余地があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、肥料の配合、保管、及び取り扱いが容易であり、植物栽培に必要な肥料成分を培地に供給することができる肥料供給装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る肥料供給装置の特徴構成は、
植物栽培用の培地に肥料を供給する肥料供給装置であって、
酸性液を貯留する液タンクと、
前記酸性液によって溶出可能な肥料成分を含む造粒体が充填される通液可能な肥料カートリッジと、
前記液タンクから前記肥料カートリッジに前記酸性液を移送する送液ポンプと、
前記肥料カートリッジから流出する流出液のpH値及びEC値を検出する第一センサと、
前記送液ポンプの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記肥料カートリッジは、互いに異なる肥料成分を含む複数種の造粒体を種類毎に隔離した状態で収納し、前記造粒体の種類毎に前記酸性液が供給されるように構成されており、
前記制御部は、前記第一センサの検出値に基づいて、前記肥料カートリッジへの前記酸性液の送液量を、前記造粒体の種類毎に制御可能に構成されていることにある。
植物栽培用の培地に肥料を供給する肥料供給装置であって、
酸性液を貯留する液タンクと、
前記酸性液によって溶出可能な肥料成分を含む造粒体が充填される通液可能な肥料カートリッジと、
前記液タンクから前記肥料カートリッジに前記酸性液を移送する送液ポンプと、
前記肥料カートリッジから流出する流出液のpH値及びEC値を検出する第一センサと、
前記送液ポンプの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記肥料カートリッジは、互いに異なる肥料成分を含む複数種の造粒体を種類毎に隔離した状態で収納し、前記造粒体の種類毎に前記酸性液が供給されるように構成されており、
前記制御部は、前記第一センサの検出値に基づいて、前記肥料カートリッジへの前記酸性液の送液量を、前記造粒体の種類毎に制御可能に構成されていることにある。
本構成の肥料供給装置によれば、液タンクに貯留された酸性液が肥料カートリッジに送液ポンプによって移送されることにより、肥料カートリッジに充填された造粒体から肥料成分を溶出することができる。肥料カートリッジは、互いに異なる肥料成分を含む複数種の造粒体を種類毎に隔離した状態で収納し、造粒体の種類毎に酸性液が供給されるように構成されていることにより、造粒体の種類毎に供給された酸性液の量に応じた量の肥料成分を溶出することができる。第一センサが肥料カートリッジから流出する流出液のpH値及びEC値を検出することにより、制御部が検出値に基づいて、肥料カートリッジへの酸性液の送液量を、造粒体の種類毎に制御する。これにより、肥料成分の種類毎の溶出量が制御可能であるため、植物栽培に必要な肥料成分を培地に供給することができ、植物の生育性を良好にすることができる。また、肥料成分が固体である造粒体に担持されているため、液体と比べて雑菌の繁殖や害虫の発生を抑制することができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記制御部は、前記流出液のpH値が2.0〜3.0、EC値が2.5〜7.5mS/cmを維持するように、前記送液量を制御することが好ましい。
前記制御部は、前記流出液のpH値が2.0〜3.0、EC値が2.5〜7.5mS/cmを維持するように、前記送液量を制御することが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、制御部が流出液のpH値及びEC値を所定の範囲に維持するように制御することにより、植物の栽培に好適な肥料成分を培地に供給することができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記造粒体は、粒径が0.5〜10mmであり、かさ比重が0.7g/cc以下であり、イオン交換容量が10meq/100cc以上であることが好ましい。
前記造粒体は、粒径が0.5〜10mmであり、かさ比重が0.7g/cc以下であり、イオン交換容量が10meq/100cc以上であることが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、造粒体は、粒径、及びかさ比重が適切な範囲に設定されているため、肥料カートリッジの内部に充填されても、肥料カートリッジ内部において液体が十分に通流可能であり、造粒体の通水抵抗が過大にならない。また、造粒体のイオン交換容量が適切な範囲に設定されているため、造粒体に十分な量の肥料成分を担持させることができる。その結果、効率よくかつ効果的に肥料成分を培地に供給することができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記造粒体の種類毎に含まれる肥料成分の元素は、夫々、N、P、K、Mg、Ca、及びSからなる群から選択される何れか一種であることが好ましい。
前記造粒体の種類毎に含まれる肥料成分の元素は、夫々、N、P、K、Mg、Ca、及びSからなる群から選択される何れか一種であることが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、造粒体の種類毎に含まれる肥料成分の元素として、上記の適切な元素を選択することで、植物の生長に不可欠なこれらの代表的なイオンが培地に供給され、栽培植物の生長を促すことができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記酸性液は、pH値が1.5〜2.5であり、EC値が1.5〜7.0mS/cmであることが好ましい。
前記酸性液は、pH値が1.5〜2.5であり、EC値が1.5〜7.0mS/cmであることが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、酸性液として、所定の範囲のpH値及びEC値を有するものを選択することで、肥料カートリッジに充填された造粒体に含まれる肥料成分が十分に流出液中に溶出され、植物の栽培に好適な肥料成分を培地に供給することができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記制御部は、予め設定されたスケジュールに基づいて、前記送液量を制御することが好ましい。
前記制御部は、予め設定されたスケジュールに基づいて、前記送液量を制御することが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、制御部が、予め設定されたスケジュールに基づいて、肥料カートリッジへの酸性液の送液量を制御することで、植物の種類や生長段階に応じたスケジュールに沿って必要な肥料成分を供給することができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記培地のpH値及びEC値を検出する第二センサを備え、
前記制御部は、前記第二センサの検出値の変化率を算出し、当該変化率に基づいて、前記送液量を制御することが好ましい。
前記培地のpH値及びEC値を検出する第二センサを備え、
前記制御部は、前記第二センサの検出値の変化率を算出し、当該変化率に基づいて、前記送液量を制御することが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、培地のpH値及びEC値を検出する第二センサを備え、第二センサの検出値の変化率を算出し、変化率に基づいて、肥料カートリッジへの酸性液の送液量を制御することで、培地の状態変化を示す検出値の変化率から植物の生長の状態を把握することができる。その結果、植物が必要としている肥料成分を随時供給することができる。
本発明に係る肥料供給装置において、
前記制御部は、前記変化率が所定の閾値以下になったとき、前記送液ポンプを停止させることが好ましい。
前記制御部は、前記変化率が所定の閾値以下になったとき、前記送液ポンプを停止させることが好ましい。
本構成の肥料供給装置によれば、第二センサの検出値の変化率が所定の閾値以下になったとき、送液ポンプを停止させることで、培地に肥料成分が過剰に供給されることが無くなり、植物の立ち枯れ、雑菌の繁殖、害虫の発生等が防止される。
以下、本発明に係る肥料供給装置に関する実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係る肥料供給装置100のブロック図である。肥料供給装置100は、植物栽培用の培地に肥料を供給する装置である。図1に示すように、肥料供給装置100は、液タンク1、肥料カートリッジ2、送液ポンプ3、第一センサ4、及び制御部5を備え、さらに、データ格納部6、及び演算部7を備える。以下、第一実施形態に係る肥料供給装置100が備える各構成について説明する。
図1は、第一実施形態に係る肥料供給装置100のブロック図である。肥料供給装置100は、植物栽培用の培地に肥料を供給する装置である。図1に示すように、肥料供給装置100は、液タンク1、肥料カートリッジ2、送液ポンプ3、第一センサ4、及び制御部5を備え、さらに、データ格納部6、及び演算部7を備える。以下、第一実施形態に係る肥料供給装置100が備える各構成について説明する。
[液タンク]
液タンク1は、内部に酸性液を貯留する容器である。酸性液としては、植物に対して無害な酸であれば特に限定されず、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピシジン酸、ムギネ酸、又はこれらの二種類以上を混合した混酸を含む水溶液が挙げられる。
液タンク1は、内部に酸性液を貯留する容器である。酸性液としては、植物に対して無害な酸であれば特に限定されず、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピシジン酸、ムギネ酸、又はこれらの二種類以上を混合した混酸を含む水溶液が挙げられる。
[肥料カートリッジ]
肥料カートリッジ2は、複数の中空構造のカラム2a、2b、2cを含むように構成される。なお、図1では、3つのカラム2a、2b、2cを含むものを例示しているが、肥料カートリッジ2のカラムは複数個あればよく、3つに限らない。図2は、肥料カートリッジ2の説明図である。肥料カートリッジ2には、互いに異なる肥料成分を含む複数種の以下に詳述する造粒体30が収納されている。すなわち、カラム2a、2b、2cには、造粒体30がカラム毎に隔離した状態で収納され、さらに、カラム2a、2b、2c毎に、互いに異なる肥料成分を含む造粒体30(30a、30b、30c)が充填されている。各カラム2a、2b、2c内において、隣接する造粒体30a、30b、又は30c同士の間には、一定の隙間Sが存在し、この隙間Sを液体が通過可能である。また、肥料カートリッジ2自体も、上下方向で通液可能な構造となっている。従って、造粒体30(30a、30b、30c)が充填されたカラム2a、2b、2cの上側から液を注入すると、液は造粒体30(30a、30b、30c)と接触しながらカラム2a、2b、2cの内部を通過し、カラム2a、2b、2cの下側から抜ける。肥料カートリッジ2は、造粒体30(30a、30b、30c)の種類毎に液タンク1の酸性液が供給されるように、液タンク1と3つのカラム2a、2b、2cとの間に個別の流路が形成されている。
肥料カートリッジ2は、複数の中空構造のカラム2a、2b、2cを含むように構成される。なお、図1では、3つのカラム2a、2b、2cを含むものを例示しているが、肥料カートリッジ2のカラムは複数個あればよく、3つに限らない。図2は、肥料カートリッジ2の説明図である。肥料カートリッジ2には、互いに異なる肥料成分を含む複数種の以下に詳述する造粒体30が収納されている。すなわち、カラム2a、2b、2cには、造粒体30がカラム毎に隔離した状態で収納され、さらに、カラム2a、2b、2c毎に、互いに異なる肥料成分を含む造粒体30(30a、30b、30c)が充填されている。各カラム2a、2b、2c内において、隣接する造粒体30a、30b、又は30c同士の間には、一定の隙間Sが存在し、この隙間Sを液体が通過可能である。また、肥料カートリッジ2自体も、上下方向で通液可能な構造となっている。従って、造粒体30(30a、30b、30c)が充填されたカラム2a、2b、2cの上側から液を注入すると、液は造粒体30(30a、30b、30c)と接触しながらカラム2a、2b、2cの内部を通過し、カラム2a、2b、2cの下側から抜ける。肥料カートリッジ2は、造粒体30(30a、30b、30c)の種類毎に液タンク1の酸性液が供給されるように、液タンク1と3つのカラム2a、2b、2cとの間に個別の流路が形成されている。
造粒体30(30a、30b、30c)は、粒径が0.5〜10mmであり、かさ比重が0.7g/cc以下であり、イオン交換容量が10meq/100cc以上であることが好ましい。これにより、造粒体30(30a、30b、30c)が夫々肥料カートリッジ2のカラム2a、2b、2c内部に充填されても、カラム2a、2b、2c内部において液体が十分に通流可能であり、造粒体30(30a、30b、30c)の通水抵抗が過大にならない。また、造粒体30(30a、30b、30c)は、イオン交換容量が10meq/100cc以上であるため、造粒体30(30a、30b、30c)に十分な量のイオン(肥料成分)を担持させることができ、効率よく、かつ効果的に肥料成分を培地に供給することができる。粒径が0.5mm未満の場合、造粒体30が微細なものとなって、カラム2a、2b、2c内で造粒体30が密に充填されるため、液体の通流が妨げられる。一方、造粒体30の粒径が10mmを超えると、造粒体30と液体との接触面積が小さくなり、十分な量のイオンが溶出されない。その結果、十分な量の肥料成分を培地に供給することができず、植物の生長が阻害される虞がある。造粒体30の粒径は、造粒工程における原材料の配合、造粒時間、又は造粒後の篩掛け等により調整することができる。造粒体30のかさ比重が0.7g/ccを超えると、造粒体30に保持できる水分が少なくなるとともに、少量の水分が強い力で造粒体30に吸着するため、イオン交換が十分に行われず、十分な量の肥料成分を培地に供給することができなくなって、植物の生長が阻害される虞がある。また、イオン交換容量が10meq/100cc未満であると、造粒体30に十分にイオンが取り込まれず、取り込まれたイオンも早期に流出してしまう虞がある。
造粒体30は、異なる3種類の造粒体30a、30b、30cを含有する。これら3種類の造粒体30(30a、30b、30c)は、夫々の種類毎に植物の生育に必要な異なる元素を含むイオン、すなわち肥料成分を担持可能である。なお、造粒体30は、例示した造粒体30(30a、30b、30c)以外に、他の種類の造粒体や、抗菌剤、防カビ剤等の追加成分を含むものであってもよい。
造粒体30(30a、30b、30c)の種類毎に含まれる肥料成分の元素は、夫々、N、P、K、Mg、Ca、及びSからなる群から選択される何れか一種であることが好ましい。すなわち、造粒体30a、30b、30cは夫々、N、P、K、Mg、Ca、及びSのうちの何れか一種のイオンを含む。このため、造粒体30から植物の生長に不可欠なこれらの代表的な3種類のイオンが培地に供給され、栽培植物の生長を促すことができる。
各造粒体30(30a、30b、30c)は、イオンを担持させるため、イオン交換体が用いられる。例えば、第1造粒体30aはリン(P)のイオン交換体、第2造粒体30bは窒素(N)のイオン交換体、第3造粒体30cはカリウム(K)のイオン交換体を夫々含むように構成される。これにより、第1造粒体30a、第2造粒体30b、及び第3造粒体30cは、夫々の造粒体毎に異なるイオンを担持可能である。イオン交換体の種類としては、植物の生育に必要なイオンを取り込み可能なイオン交換性鉱物が好ましい。本実施形態の場合、造粒体30(30a、30b、30c)は、植物の生育に必要なイオンを3種含むことができる。従って、イオンとして適切なものを選択すれば、植物の生育に好ましい養分が含まれた造粒体30(30a、30b、30c)を構成することができる。
造粒体30は、造粒体30(30a、30b、30c)毎に異なる元素が含まれるイオンが担持されるため、造粒体30のイオン交換体の種類を変更することにより、造粒体30に含有可能な肥料成分の配合を調整することができる。このような造粒体30を用いれば、栽培植物30の種類や生長に応じて、イオンの種類(すなわち、肥料の種類)、及びイオンの供給量(すなわち、施肥量)を細かくコントロールすることができ、植物の生育性を良好に維持することができる。また、肥料成分が固体である造粒体30(30a、30b、30c)に担持されているため、液体と比べて雑菌の繁殖やボウフラ等の害虫の発生を抑制することができる。
造粒体30を代表して、造粒体30aの形成方法について説明する。造粒体30aの材料として、ゼオライトのような無機天然鉱物を使用する場合、高分子ゲル化剤のゲル化反応を利用して粒状化させることができる。高分子ゲル化剤のゲル化反応として、例えば、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応、カルボキシメチルセルロース(CMC)のゲル化反応、カラギーナン等の多糖類の二重らせん構造化反応によるゲル化反応が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不溶であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こりゲル化する。本実施形態の場合、ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にイオン交換体を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にイオン交換体が分散した混合液とする。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸ゲル中にイオン交換体が分散した粒状物が得られる。
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、イオン交換体を添加した混合液の攪拌や、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化する2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的ではない。
造粒体30aの形成にあたっては、バインダーを用いて粒状化を行うこともできる。例えば、イオン交換体にバインダーや溶媒等を加えて混合し、この原料混合物を造粒機に導入して、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により、粒状物を形成する。また、イオン交換体にバインダーを加え、さらに必要に応じて溶媒等を加えて混練し、これを乾燥してブロック状にしたものを、乳鉢及び乳棒、ハンマーミル、ロールクラッシャー等の粉砕手段で適宜粉砕して粒状物とすることも可能である。粒状物は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、造粒体30aとされる。
造粒体30aを構成するバインダーは、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、ポリ塩化ビニル系バインダー、ポリエステル系バインダー、スチロール系バインダー、及びポリ酢酸ビニル系バインダー等の合成樹脂系バインダー、デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、及びアルギン酸等の多糖類、膠等の動物性たんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
バインダーは、水不溶性のバインダーを用いることが好ましい。これにより、酸性液が通過するときに造粒体30aの構造が崩壊することを防ぐことができる。水不溶性のバインダーとしては、例えば、樹脂材料が挙げられる。そのような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂、酢酸ビニル、及びエチレン酢酸ビニル等の酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン、及びビニルウレタン等のウレタン系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂材料に代えて、アクリルアミド等の高分子ゲル化剤、アルギン酸塩やカラギーナン等の天然多糖類系ゲル化剤、天然ゴムやシリコーンゴム等のゴム系コーティング剤等を使用することも可能である。さらに、樹脂架橋剤を使用することもできる。そのような樹脂架橋剤としては、例えば、イソシアネート、ビニルスルホン化合物、アジリジン、ジヒドラジド、メチル化アミン、ジグリシジルエーテル、カルボジイミド、ホルムアルデヒド、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
粒状物は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、造粒体30aとされる。イオンが担持される前の造粒体30aは、適当なイオンを含む液に浸漬された後に、必要に応じてさらに乾燥される。これにより、イオンが担持された造粒体30aが得られる。
[送液ポンプ]
送液ポンプ3は、液タンク1と肥料カートリッジ2との間の流路上に設置される。詳細には、送液ポンプ3(3a、3b、3c)は夫々、液タンク1と肥料カートリッジ2のカラム2a、2b、2cとの間の流路上に設置される。送液ポンプ3(3a、3b、3c)を駆動することにより、液タンク1から肥料カートリッジ2のカラム2a、2b、2cに酸性液が夫々移送される。送液ポンプ3としては、例えば、タービンポンプ、カスケードポンプ、ピストンポンプ、ギヤーポンプ等の各種ポンプを使用することができる。送液ポンプ3a、3b、3cを制御することにより、夫々のカラム2a、2b、2cへの酸性液の送液量を制御することが可能となる。
送液ポンプ3は、液タンク1と肥料カートリッジ2との間の流路上に設置される。詳細には、送液ポンプ3(3a、3b、3c)は夫々、液タンク1と肥料カートリッジ2のカラム2a、2b、2cとの間の流路上に設置される。送液ポンプ3(3a、3b、3c)を駆動することにより、液タンク1から肥料カートリッジ2のカラム2a、2b、2cに酸性液が夫々移送される。送液ポンプ3としては、例えば、タービンポンプ、カスケードポンプ、ピストンポンプ、ギヤーポンプ等の各種ポンプを使用することができる。送液ポンプ3a、3b、3cを制御することにより、夫々のカラム2a、2b、2cへの酸性液の送液量を制御することが可能となる。
酸性液がカラム2a、2b、2cの内部に通液されると、造粒体30のイオン交換体に担持された肥料成分が溶出される。酸性液は、pH値が1.5〜2.5であり、EC値が1.5〜7.0mS/cmであることが好ましい。酸性液として、所定の範囲のpH値及びEC値を有するものを選択することで、肥料カートリッジに充填された造粒体に含まれる肥料成分が十分に流出液中に溶出され、植物の栽培に好適な肥料成分を培地に供給することができる。酸性液のpH値が1.5未満の場合、培地に供給される流出液が強酸側に偏るため、植物の生長が阻害される虞がある。酸性液のpH値が2.5を超える場合、造粒体30から十分な量の肥料成分が溶出されず、植物の生長が阻害される虞がある。EC値が1.5未満の場合、必要な量の肥料成分が植物に供給されずに、植物が発育不良を起こす虞がある。一方、EC値が7.0を超える場合、必要以上の量の肥料成分が培地に供給されるため、植物の立ち枯れが発生したり、余った肥料成分を栄養分として雑菌や害虫が繁殖する虞がある。
[第一センサ]
第一センサ4は、肥料カートリッジ2の下流側である酸性液の流出側に設けられる。すなわち、第一センサ4a、4b、4cは、カラム2a、2b、2cの流出側に夫々設置される。第一センサ4は、肥料カートリッジ2から流出する流出液のpH値及びEC値を検出する。すなわち、第一センサ4a、4b、4cは、夫々、カラム2a、2b、2cから流出する夫々の流出液のpH値及びEC値を個別に検出する。
第一センサ4は、肥料カートリッジ2の下流側である酸性液の流出側に設けられる。すなわち、第一センサ4a、4b、4cは、カラム2a、2b、2cの流出側に夫々設置される。第一センサ4は、肥料カートリッジ2から流出する流出液のpH値及びEC値を検出する。すなわち、第一センサ4a、4b、4cは、夫々、カラム2a、2b、2cから流出する夫々の流出液のpH値及びEC値を個別に検出する。
[制御部]
制御部5は、送液ポンプ3a、3b、3cを制御するとともに、第一センサ4a、4b、4cからの検知信号を受信可能である。また、制御部5は、データ格納部6、及び演算部7に接続されている。制御部5には、パソコン等の情報処理装置を使用することができる。制御部5は、第一センサ4(4a、4b、4c)の夫々の検出値に基づいて、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御し、肥料カートリッジ2への酸性液の送液量を造粒体の種類毎に調整することができる。ここで、制御部5は、流出液のpH値が2.0〜3.0、EC値が2.5〜7.5mS/cmを維持するように、送液量を制御することが好ましい。制御部5が流出液のpH値及びEC値を上記所定の範囲に維持するように制御することにより、植物の栽培に好適な肥料成分を培地に供給することができる。流出液のpH値が2.0未満の場合、培地に供給される流出液が強酸側に偏るため、植物の生長が阻害される虞がある。流出液のpH値が3.0を超える場合、造粒体30から十分な量の肥料成分が溶出されず、植物の生長が阻害される虞がある。EC値が2.5未満の場合、必要な量の肥料成分が植物に供給されずに、植物が発育不良を起こす虞がある。一方、EC値が7.5を超える場合、必要以上の量の肥料成分が培地に供給されて、植物に吸収されるため、植物の立ち枯れが発生したり、余った肥料成分を養分として雑菌や害虫が繁殖する虞がある。
制御部5は、送液ポンプ3a、3b、3cを制御するとともに、第一センサ4a、4b、4cからの検知信号を受信可能である。また、制御部5は、データ格納部6、及び演算部7に接続されている。制御部5には、パソコン等の情報処理装置を使用することができる。制御部5は、第一センサ4(4a、4b、4c)の夫々の検出値に基づいて、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御し、肥料カートリッジ2への酸性液の送液量を造粒体の種類毎に調整することができる。ここで、制御部5は、流出液のpH値が2.0〜3.0、EC値が2.5〜7.5mS/cmを維持するように、送液量を制御することが好ましい。制御部5が流出液のpH値及びEC値を上記所定の範囲に維持するように制御することにより、植物の栽培に好適な肥料成分を培地に供給することができる。流出液のpH値が2.0未満の場合、培地に供給される流出液が強酸側に偏るため、植物の生長が阻害される虞がある。流出液のpH値が3.0を超える場合、造粒体30から十分な量の肥料成分が溶出されず、植物の生長が阻害される虞がある。EC値が2.5未満の場合、必要な量の肥料成分が植物に供給されずに、植物が発育不良を起こす虞がある。一方、EC値が7.5を超える場合、必要以上の量の肥料成分が培地に供給されて、植物に吸収されるため、植物の立ち枯れが発生したり、余った肥料成分を養分として雑菌や害虫が繁殖する虞がある。
[データ格納部]
データ格納部6は、第一センサ4(4a、4b、4c)で検出された夫々の検出値を格納する。また、データ格納部6は、外部入力される予め設定されたスケジュール等を格納することも可能である。データ格納部6には、制御部5を介してデータの入出力が行われる。
データ格納部6は、第一センサ4(4a、4b、4c)で検出された夫々の検出値を格納する。また、データ格納部6は、外部入力される予め設定されたスケジュール等を格納することも可能である。データ格納部6には、制御部5を介してデータの入出力が行われる。
[演算部]
演算部7は、必要に応じて、データ格納部6に格納されたデータを制御部5に要求し、制御部5は、データ格納部6から必要なデータを演算部7に送信する。演算部7は、夫々の検出値から、予め設定されたデータとの差分やデータの変化率等の演算をする。また、演算部7は、予め設定されているデータ等を基に、変化率から必要な送液量を算出することも可能である。
演算部7は、必要に応じて、データ格納部6に格納されたデータを制御部5に要求し、制御部5は、データ格納部6から必要なデータを演算部7に送信する。演算部7は、夫々の検出値から、予め設定されたデータとの差分やデータの変化率等の演算をする。また、演算部7は、予め設定されているデータ等を基に、変化率から必要な送液量を算出することも可能である。
肥料供給装置100においては、制御部5は、予め設定されたスケジュールに基づいて、送液量を制御することが好ましい。ユーザーは、栽培予定の植物に適した肥料成分の供給スケジュールをデータ格納部6に予め格納しておく。制御部5は、予め設定されたスケジュールに基づいて、肥料カートリッジ2への酸性液の送液量を制御する。すなわち、所定のスケジュールに沿って送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御し、カラム2a、2b、2cへ送液する酸性液の送液量を制御することにより、培地に供給する肥料の種類や配合を肥料成分毎に制御できる。その結果、植物の種類や生長段階に応じたスケジュールに沿って植物に必要な肥料成分を供給することができる。
<第二実施形態>
図3は、第二実施形態に係る肥料供給装置101のブロック図である。図3に示すように、肥料供給装置101においては、第一実施形態の肥料供給装置100に加えて、判定部8、及び第二センサ9を備える。判定部8は、演算部7で算出された変化率等の値について判定を行う。制御部5は、判定部8で判定された結果に基づいて、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御することができる。第二センサ9は、培地の状態を示すpH値及びEC値を検出する。培地のpH値及びEC値は、供給される肥料カートリッジ2からの流出液、及び植物が培地から吸収又は培地に排出する成分によって変化する。すなわち、植物の生長の具合によって培地の状態は随時変化する。第二センサ9によって検出された検出値は、データ格納部6に随時格納される。例えば、所定の時間毎に第二センサ9の検出値が抽出されて、演算部7で変化率が算出される。演算部7は、当該変化率に基づいて、植物に必要な肥料成分を肥料カートリッジ2から抽出することができる酸性液の送液量を算出する。制御部5は、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御し、算出された送液量の酸性液を肥料カートリッジ2に供給する。このように、培地の状態変化を示す検出値の変化率から植物の生長の状態を把握することにより、植物が必要としている肥料成分を随時供給することができる。
図3は、第二実施形態に係る肥料供給装置101のブロック図である。図3に示すように、肥料供給装置101においては、第一実施形態の肥料供給装置100に加えて、判定部8、及び第二センサ9を備える。判定部8は、演算部7で算出された変化率等の値について判定を行う。制御部5は、判定部8で判定された結果に基づいて、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御することができる。第二センサ9は、培地の状態を示すpH値及びEC値を検出する。培地のpH値及びEC値は、供給される肥料カートリッジ2からの流出液、及び植物が培地から吸収又は培地に排出する成分によって変化する。すなわち、植物の生長の具合によって培地の状態は随時変化する。第二センサ9によって検出された検出値は、データ格納部6に随時格納される。例えば、所定の時間毎に第二センサ9の検出値が抽出されて、演算部7で変化率が算出される。演算部7は、当該変化率に基づいて、植物に必要な肥料成分を肥料カートリッジ2から抽出することができる酸性液の送液量を算出する。制御部5は、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を制御し、算出された送液量の酸性液を肥料カートリッジ2に供給する。このように、培地の状態変化を示す検出値の変化率から植物の生長の状態を把握することにより、植物が必要としている肥料成分を随時供給することができる。
制御部5は、第二センサ9によって検出された検出値の変化率が所定の閾値以下になったとき、送液ポンプ3(3a、3b、3c)を停止させることが好ましい。例えば、植物が十分に生長してそれ以上の生長が殆ど見られなくなった場合、植物が培地から吸収する肥料成分の量が減少し、培地のpH値及びEC値の変化が小さくなる。判定部8は、演算部7で算出された変化率が所定の閾値以下であるか否かを判定する。変化率が所定の閾値以下である場合、その判定結果が制御部5に伝達され、制御部5は、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を停止する。これにより、培地に肥料成分が過剰に供給されることが無くなり、植物の立ち枯れ、雑菌の繁殖、害虫の発生等が防止される。なお、変化率が所定の閾値より大きい場合は、制御部5は、送液ポンプ3(3a、3b、3c)の動作を連続して稼働させる。これにより、引き続き培地に肥料成分が供給され、植物の生長が促される。
第一実施形態に係る肥料供給装置を使用して小松菜の生育性について評価した。造粒体として、K+、NH4 +、NO3 −、PO4 3−、Mg2+、Ca2+、及びSO4 2−を夫々担持させたもの(造粒体1〜7)を調製し、肥料カートリッジに各造粒体を種類毎に別々に充填した。造粒体の組み合わせ、並びに酸性液として使用するクエン酸のpH値及びEC値が異なる肥料供給装置(実施例1〜4)を使用し、小松菜の生育性を評価した。また、参考のため、酸性液としてpH値が5.0、1.4のクエン酸を使用した肥料供給装置(参考例1及び2)、並びに市販の混合液肥を用いて栽培したもの(参考例3)について評価した。
造粒体1〜7について、K+、NH4 +、Mg2+、及びCa2+の陽イオンを担持する造粒体には原材料としてゼオライト(イタヤゼオライトZ−05、0.1〜0.3mm分級品、ジークライト株式会社製)を使用し、NO3 −、PO4 3−、及びSO4 2−の陰イオンを担持する造粒体には原材料としてハイドロタルサイト(和光純薬株式会社製)を使用した。各原材料を結合するバインダーとしてアンモニウムカルボキシメチルセルロース(キッコレート(登録商標)NA−H、ニチリン化学工業株式会社製)を使用した。
(造粒体1)
陽イオン交換性鉱物としてゼオライト2000gと、バインダー300gと、水2000gとを攪拌混合造粒装置(MGS12型、有限会社G−Labo製)に投入し、数分間攪拌及び転動して粒状物を形成した。この粒状物を80℃で12時間乾燥し、さらに130℃で3時間熱処理を行い、その後冷却して造粒体とした。得られた造粒体を篩にかけ、粒径が3〜4mmに分級したものを0.5mol/LのKCl水溶液に3時間浸漬した。この造粒体を大量の水で3回洗浄した後、これを乾燥してK+を担持する造粒体1とした。
陽イオン交換性鉱物としてゼオライト2000gと、バインダー300gと、水2000gとを攪拌混合造粒装置(MGS12型、有限会社G−Labo製)に投入し、数分間攪拌及び転動して粒状物を形成した。この粒状物を80℃で12時間乾燥し、さらに130℃で3時間熱処理を行い、その後冷却して造粒体とした。得られた造粒体を篩にかけ、粒径が3〜4mmに分級したものを0.5mol/LのKCl水溶液に3時間浸漬した。この造粒体を大量の水で3回洗浄した後、これを乾燥してK+を担持する造粒体1とした。
(造粒体2)
バインダー400gを使用したこと、及び造粒体を0.5mol/LのNH4Cl水溶液に浸漬したこと以外は造粒体1と同様にしてNH4 +を担持する造粒体2を得た。
バインダー400gを使用したこと、及び造粒体を0.5mol/LのNH4Cl水溶液に浸漬したこと以外は造粒体1と同様にしてNH4 +を担持する造粒体2を得た。
(造粒体3)
陰イオン交換性鉱物としてハイドロタルサイト2000gを使用したこと、及び造粒体を0.5mol/LのNH4NO3水溶液に浸漬したこと以外は造粒体2と同様にして、NO3 −担持する造粒体3を得た。
陰イオン交換性鉱物としてハイドロタルサイト2000gを使用したこと、及び造粒体を0.5mol/LのNH4NO3水溶液に浸漬したこと以外は造粒体2と同様にして、NO3 −担持する造粒体3を得た。
(造粒体4)
造粒体を0.5mol/Lの(NH4)2HPO4水溶液に浸漬したこと以外は造粒体3と同様にして、PO4 3−を担持する造粒体4を得た。
造粒体を0.5mol/Lの(NH4)2HPO4水溶液に浸漬したこと以外は造粒体3と同様にして、PO4 3−を担持する造粒体4を得た。
(造粒体5)
造粒体を0.5mol/LのMgCl2水溶液に浸漬したこと以外は造粒体2と同様にして、Mg2+を担持する造粒体5を得た。
造粒体を0.5mol/LのMgCl2水溶液に浸漬したこと以外は造粒体2と同様にして、Mg2+を担持する造粒体5を得た。
(造粒体6)
造粒体を0.5mol/LのCaCl2水溶液に浸漬したこと以外は造粒体2と同様にして、Ca2+を担持する造粒体6を得た。
造粒体を0.5mol/LのCaCl2水溶液に浸漬したこと以外は造粒体2と同様にして、Ca2+を担持する造粒体6を得た。
(造粒体7)
造粒体を0.5mol/LのMgSO4水溶液に浸漬したこと以外は造粒体3と同様にして、SO4 2−を担持する造粒体7を得た。
造粒体を0.5mol/LのMgSO4水溶液に浸漬したこと以外は造粒体3と同様にして、SO4 2−を担持する造粒体7を得た。
〔実施例1〜4〕
表1に示す条件(クエン酸のpH値及びEC値、並びに造粒体の組み合わせ)に従って第一実施形態に準じた肥料供給装置(実施例1〜4)を構成し、小松菜の生育性について評価した。肥料カートリッジに、造粒体1〜7を夫々200g充填し、予め小松菜の生育に好ましく設定されたスケジュールに基づいて酸性液を肥料カートリッジに供給することにより、溶出された各肥料成分を培地に供給した。
表1に示す条件(クエン酸のpH値及びEC値、並びに造粒体の組み合わせ)に従って第一実施形態に準じた肥料供給装置(実施例1〜4)を構成し、小松菜の生育性について評価した。肥料カートリッジに、造粒体1〜7を夫々200g充填し、予め小松菜の生育に好ましく設定されたスケジュールに基づいて酸性液を肥料カートリッジに供給することにより、溶出された各肥料成分を培地に供給した。
〔参考例〕
参考例1及び2として、実施例1〜4と同様に、表1に示す条件(クエン酸のpH値及びEC値、並びに造粒体の組み合わせ)に従って小松菜を生育し、評価した。参考例3については、肥料供給装置を使用せず、市販の液肥をそのまま小松菜に施肥した。液肥は、OATハウス1号(OATアグリオ株式会社製)3重量部に対して、OATハウス2号(OATアグリオ株式会社製)2重量部を混合した混合液肥を使用した。
参考例1及び2として、実施例1〜4と同様に、表1に示す条件(クエン酸のpH値及びEC値、並びに造粒体の組み合わせ)に従って小松菜を生育し、評価した。参考例3については、肥料供給装置を使用せず、市販の液肥をそのまま小松菜に施肥した。液肥は、OATハウス1号(OATアグリオ株式会社製)3重量部に対して、OATハウス2号(OATアグリオ株式会社製)2重量部を混合した混合液肥を使用した。
実施例1〜4、及び参考例1〜3について、小松菜の生育性、単独肥料の濃度管理、及び肥料成分の微調整について評価した。
培地を入れたポットに植物として小松菜の種子を播種し、栽培開始時に培地に十分な散水を行った。その後、適宜灌水を行い、30日間に亘って植物を栽培した。実施例1〜4、並びに参考例1及び2については、肥料供給装置を使用した。植物の生育性を確認するため、栽培期間終了後における生育状況を目視で確認した。実施例1〜4、及び参考例1〜3における生育性を表1に示す。
実施例1〜4の肥料供給装置で栽培した植物は、栽培初期から良好な生育状態を示し、その後も順調に生育し、栽培期間終了後における生育状況はいずれも良好であった。また、実施例1〜4においては、本発明に係る肥料供給装置を使用することで、単独肥料の濃度管理、及び肥料成分の微調整が可能であった。一方、参考例1及び2の植物は、生育が悪く、栽培期間終了後における生育状況はいずれも不良であった。参考例3の植物は、順調に生育したが、単独肥料の濃度管理、及び肥料成分の微調整においては、既に混合されている肥料であるため不可能であった。
以上より、本発明の肥料供給装置を用いると、単独肥料の濃度管理、及び肥料成分の微調整が可能であり、且つ良好に植物を生長させることが確認された。
本発明の肥料供給装置は、植物工場等における植物の栽培において利用可能であるが、ビニールハウスや屋外での植物の栽培においても利用可能である。
1 液タンク
2(2a、2b、2c) 肥料カートリッジ
3(3a、3b、3c) 送液ポンプ
4(4a、4b、4c) 第一センサ
5 制御部
9 第二センサ
30(30a、30b、30c) 造粒体
100、101 肥料供給装置
2(2a、2b、2c) 肥料カートリッジ
3(3a、3b、3c) 送液ポンプ
4(4a、4b、4c) 第一センサ
5 制御部
9 第二センサ
30(30a、30b、30c) 造粒体
100、101 肥料供給装置
Claims (8)
- 植物栽培用の培地に肥料を供給する肥料供給装置であって、
酸性液を貯留する液タンクと、
前記酸性液によって溶出可能な肥料成分を含む造粒体が充填される通液可能な肥料カートリッジと、
前記液タンクから前記肥料カートリッジに前記酸性液を移送する送液ポンプと、
前記肥料カートリッジから流出する流出液のpH値及びEC値を検出する第一センサと、
前記送液ポンプの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記肥料カートリッジは、互いに異なる肥料成分を含む複数種の造粒体を種類毎に隔離した状態で収納し、前記造粒体の種類毎に前記酸性液が供給されるように構成されており、
前記制御部は、前記第一センサの検出値に基づいて、前記肥料カートリッジへの前記酸性液の送液量を、前記造粒体の種類毎に制御可能に構成されている肥料供給装置。 - 前記制御部は、前記流出液のpH値が2.0〜3.0、EC値が2.5〜7.5mS/cmを維持するように、前記送液量を制御する請求項1に記載の肥料供給装置。
- 前記造粒体は、粒径が0.5〜10mmであり、かさ比重が0.7g/cc以下であり、イオン交換容量が10meq/100cc以上である請求項1又は2に記載の肥料供給装置。
- 前記造粒体の種類毎に含まれる肥料成分の元素は、夫々、N、P、K、Mg、Ca、及びSからなる群から選択される何れか一種である請求項1〜3の何れか一項に記載の肥料供給装置。
- 前記酸性液は、pH値が1.5〜2.5であり、EC値が1.5〜7.0mS/cmである請求項1〜4の何れか一項に記載の肥料供給装置。
- 前記制御部は、予め設定されたスケジュールに基づいて、前記送液量を制御する請求項1〜5の何れか一項に記載の肥料供給装置。
- 前記培地のpH値及びEC値を検出する第二センサを備え、
前記制御部は、前記第二センサの検出値の変化率を算出し、当該変化率に基づいて、前記送液量を制御する請求項1〜5の何れか一項に記載の肥料供給装置。 - 前記制御部は、前記変化率が所定の閾値以下になったとき、前記送液ポンプを停止させる請求項7に記載の肥料供給装置。
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Cited By (1)
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WO2020059858A1 (ja) * | 2018-09-21 | 2020-03-26 | 中越パルプ工業株式会社 | 養液栽培用栽培剤、及び養液栽培用栽培剤を使用する養液栽培方法。 |
-
2016
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WO2020059858A1 (ja) * | 2018-09-21 | 2020-03-26 | 中越パルプ工業株式会社 | 養液栽培用栽培剤、及び養液栽培用栽培剤を使用する養液栽培方法。 |
JP6693003B1 (ja) * | 2018-09-21 | 2020-05-13 | 中越パルプ工業株式会社 | 養液栽培用分散液、及び養液栽培用分散液を使用する養液栽培方法。 |
JP2020110183A (ja) * | 2018-09-21 | 2020-07-27 | 中越パルプ工業株式会社 | 養液栽培用分散液、及び養液栽培用分散液を使用する養液栽培方法。 |
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