JP2014193148A - 人工土壌培地 - Google Patents

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Abstract

【課題】栽培植物体内の硝酸の蓄積を低減させるとともに、栽培植物の成長を促すことができる人工土壌培地を提供する。
【解決手段】硝酸態窒素及びモリブデンを含有する人工土壌培地100であり、硝酸態窒素及びモリブデン、並びに、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ホウ素、塩素、及びケイ酸からなる群から選択される少なくとも一種の微量要素を含有する人工土壌粒子で構成されている。当該モリブデンをモリブデン酸塩として含有し、硝酸態窒素の含有量は0.05〜10重量%であり、モリブデンの含有量は0.01〜0.50重量%であり、硝酸態窒素及びモリブデンの含有量がモル比で1:6〜1:0.0006に設定されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、植物体内への硝酸の蓄積を低減する人工土壌培地に関する。
近年、生育条件がコントロールされた環境下で野菜等の植物を栽培する植物工場が増加している。これまでの植物工場は、レタス等の葉物野菜の水耕栽培が中心であったが、最近では水耕栽培には向かない根菜類についても栽培が試みられている。
植物の成長には、窒素、リン、カリウムの三要素が必要であることが知られているが、その中でも、特に窒素は、植物体を構成するための重要な要素である。植物は、養分としての窒素成分(窒素養分)の多くを硝酸態窒素の形態で取り込んでいる。一般に、有機肥料等に含まれている窒素養分はアンモニア態窒素として存在しているが、アンモニア態窒素は土壌中に存在する硝化菌により硝酸態窒素へと変換される。植物は、この変換された硝酸態窒素を体内に取り込んで利用している。
植物工場において、天然土壌に代えて人工土壌を使用する場合、植物に与える窒素養分として、アンモニア態窒素ではなく硝酸態窒素を与える必要がある。これは、アンモニア態窒素は、窒素養分として植物に吸収され難いためである。人工土壌にアンモニア態窒素を与えたとしても、人工土壌には天然土壌に常在する硝化菌が存在しないため、アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換することはできない。このため、植物に与える窒素養分を全て硝酸態窒素にすると、硝酸態窒素は植物に吸収され易いため、植物中に硝酸(硝酸イオン、硝酸塩を含む)が蓄積され易くなる。硝酸は、ヒトの体内に吸収されると、有害な亜硝酸に還元されることになる。従って、人工土壌を用いて植物を栽培する場合、植物への硝酸の蓄積を低減することが必要となり、例えば、欧州ではホウレンソウに含有される硝酸の基準値を3000ppm以下(10〜3月収穫)と定めている。
これまで開発された植物体内の硝酸濃度の低減に関連する技術として、亜リン酸又はその塩を有効成分とする農作物中の硝酸態窒素濃度を低下させるための農園芸用組成物があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の農園芸用組成物では、亜リン酸又はその塩が、農作物中の硝酸を低下させる効果があるとされている。
また、糖類発酵有機酸水溶液と、マグネシウム塩溶液と、グリシンと、アミノ酪酸と、メチオニンとを含有してなる植物体内の残留硝酸を低減させるための葉面散布剤があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の葉面散布剤は、葉の保湿効果を高めることにより葉の水分の蒸散を抑制し、根から硝酸態窒素を含む水を吸収することを制限し、さらに、植物体内の硝酸の代謝を高めて植物体内の残留硝酸を低減しようとするものである。
また、苦汁成分を含有する水溶液を食用作物に与えることにより食用作物の硝酸濃度を低減する硝酸濃度低減方法があった(例えば、特許文献3を参照)。特許文献3の硝酸濃度低減方法では、苦汁成分が食用作物中の硝酸濃度を低減させる効果があるとされている。
特開2007−20468号公報 特開2007−63213号公報 特開2007−65号公報
特許文献1〜3の植物体内の硝酸濃度の低減に関する技術は、天然土壌で栽培した作物を対象としている。天然土壌の場合、作物に与える窒素養分の多くがアンモニア態窒素の形態で与えられており、植物体内に取り込まれる硝酸態窒素は元々制限された状態となっている。つまり、天然土壌を使用することで、植物体内の硝酸濃度は必然的にある程度抑えられる。これに対して、人工土壌では、窒素養分を全て硝酸態窒素の形態で供給する必要がある。従って、特許文献1〜3の技術を、人工土壌を用いた植物体の栽培にそのまま適用しても、植物体内の硝酸の蓄積を十分に低減できるとは限らない。
例えば、特許文献1のように葉面散布による方法は、天然土壌を用いて農作物の栽培を行った場合は、硝酸態窒素の農作物への吸収が制限されることから、植物体内の硝酸濃度は元々少ないものとなっている。しかしながら、人工土壌を用いて農作物の栽培を行うと、常時硝酸態窒素が植物中に吸収されるため、植物体内の硝酸濃度が高くなる虞があり、葉面散布を行ったとしても、植物体内の硝酸の蓄積を十分低減できるとは限らない。
また、特許文献2では、葉の保湿効果を高めて葉の水分の蒸散を抑制し、根から硝酸態窒素を含む水の吸収を制限しているが、葉の保湿効果を制御することは難しく、むしろ根から水の吸収を阻害することになって、植物の成長に悪影響を及ぼす虞がある。
また、特許文献3では、有効成分として苦汁成分を使用しているが、苦汁は海水等を濃縮して製造しているため、品質面において常時安定した成分が得られるとは言い難い。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、栽培植物体内の硝酸の蓄積を低減させるとともに、栽培植物の成長を促すことができる人工土壌培地を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌培地の特徴構成は、
硝酸態窒素及びモリブデンを含有することにある。
モリブデンは、植物の成長に必要な微量要素であり、植物の硝酸還元酵素に含まれていることが知られている。硝酸還元酵素は、植物体内に吸収された硝酸を亜硝酸に還元する酵素である。亜硝酸は、さらにアンモニアに還元され、タンパク質等の植物体内の含窒素化合物に取り込まれる。つまり、硝酸還元酵素は、植物体内の窒素同化を開始させる最初の酵素である。この硝酸還元酵素が十分機能しないと、植物体内の硝酸が十分還元されずに植物中に蓄積する。
この点に関し、本構成の人工土壌培地によれば、硝酸態窒素及びモリブデンを含有するため、植物に必要な窒素源としての硝酸態窒素と、微量要素のモリブデンとを同時に供給することができる。従って、植物体内における窒素の代謝を活性化させることができ、その結果、植物体内の硝酸の蓄積を低減させるとともに、植物の成長を促すことができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記硝酸態窒素及び前記モリブデン、並びに、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ホウ素、塩素、及びケイ酸からなる群から選択される少なくとも一種の微量要素を含有する人工土壌粒子で構成されていることが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、硝酸態窒素及びモリブデン、並びに、上記微量要素を含有する人工土壌粒子で構成されていることから、人工土壌粒子の設計により、栽培植物への硝酸態窒素及びモリブデン、並びに、上記微量要素の供給量を適量に制御することができる。従って、植物体内での窒素の代謝を効果的に活性化させることができ、その結果、植物体内での硝酸の蓄積を効果的に低減させるとともに、植物の成長を促すことができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記モリブデンをモリブデン酸塩として含有することが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、モリブデンをモリブデン酸塩として含有しているため、モリブデン酸塩が水に溶解するとモリブデン酸イオンとなる。従って、人工土壌培地に散水を行うと、植物は人工土壌培地から放出されたモリブデン酸イオンを容易に吸収することができる。さらに、植物体内での窒素の代謝を効率的に活性化させることができる。その結果、植物体内での硝酸の蓄積を効率的に低減させるとともに、植物の成長を促すことができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記硝酸態窒素の含有量は0.05〜10重量%であり、前記モリブデンの含有量は0.01〜0.50重量%であることが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、硝酸態窒素及びモリブデンを上記の範囲で含有することにより、栽培植物に適量の硝酸態窒素及びモリブデンを同時に供給することができる。従って、植物体内での窒素の代謝をさらに効率的に活性化させることができ、その結果、植物体内での硝酸の蓄積をさらに効率的に低減させるとともに、植物の生育を増進させることができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記硝酸態窒素及び前記モリブデンの含有量がモル比で1:6〜1:0.0006に設定されていることが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、硝酸態窒素とモリブデンの含有量が上記モル比の範囲に設定されていることから、栽培植物に最適な量の硝酸態窒素及びモリブデンを同時に供給することができる。従って、植物体内の窒素の代謝を最適な状態にすることができ、その結果、植物体内での硝酸の蓄積を確実に低減させるとともに、植物の生育を増進させることができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記人工土壌粒子にイオン交換能が付与されていることが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、イオン交換能が付与された人工土壌粒子に硝酸態窒素及びモリブデンを坦持させることができる。従って、人工土壌粒子から硝酸態窒素及びモリブデンを徐々に放出することが可能となり、長期に亘って植物体内での硝酸の過剰な蓄積を抑制することができる。また、本構成の人工土壌培地は、人工土壌粒子にイオン交換能が付与されていることから優れた保肥性を示し、栽培対象の植物に対して養分を適切に供給することができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記人工土壌粒子に保水性材料が導入されていることが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、人工土壌粒子に保水性材料が導入されていることから、人工土壌培地としての保水性が高まる。その結果、厳しい乾燥条件にも耐え得る人工土壌培地を実現することができる。
本発明に係る人工土壌培地において、
前記人工土壌粒子は0.2〜10mmの粒径を有することが好ましい。
本構成の人工土壌培地によれば、人工土壌粒子が0.2〜10mmの粒径を有することから、特に根菜類の栽培に適した取り扱いの容易な人工土壌培地とすることができる。
図1は、人工土壌粒子を含む本発明の人工土壌培地の概念図である。 図2は、本発明の人工土壌培地を構成する人工土壌粒子を概念的に示した説明図である。 図3は、本発明の人工土壌培地を構成する被覆層を有する人工土壌粒子を概念的に示した説明図である。 図4は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの生育性を示したグラフである。 図5は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの根の成長を示したグラフである。 図6は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの根における硝酸の低減効果を示したグラフである。 図7は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの生育性を示したグラフである。
人工土壌培地を用いて植物を栽培する場合、窒素肥料として硝酸態窒素を与える必要がある。この場合、植物への硝酸の蓄積が問題となるため、これまで窒素肥料の供給量を減らして栽培する等の方法が採られていた。しかし、このような方法では植物に生育阻害や収量の低下等の悪影響を及ぼす虞がある。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、硝酸態窒素とモリブデンとを人工土壌培地に含有させることにより、植物の硝酸の過剰な蓄積を抑制しながら、植物の生育を促すことができることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明に係る人工土壌培地に関する実施形態を図1〜7に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
図1は、人工土壌粒子50を含む本発明の人工土壌培地100の概念図である。本発明の人工土壌培地100は、複数の人工土壌粒子50から構成されており、隣接する人工土壌粒子50の間に一定の隙間Sを有している。この隙間Sは、空気及び水が通過することができるため、植物Pに必要な水分を保持しながら余分な水分を排出することができる。硝酸態窒素(NO3−)及びモリブデン(Mo)は、人工土壌培地100(人工土壌粒子50)に含まれている。図1では、硝酸態窒素をグレーの丸印で示し、モリブデンを白抜きの四角印で示してある。人工土壌粒子50内に担持された硝酸態窒素及びモリブデンは、人工土壌粒子50内に侵入した水に溶出し、人工土壌粒子50から徐々に放出される。これにより、植物Pは、硝酸態窒素及びモリブデンを利用することができる。
硝酸態窒素及びモリブデンは、植物Pが利用可能な状態で人工土壌培地100に含まれていればよく、その含有形態は限定されない。人工土壌培地100に硝酸態窒素及びモリブデンを含有させる方法としては、例えば、灌水等により硝酸態窒素及びモリブデンを人工土壌培地100に添加する方法、硝酸態窒素及びモリブデンを含有する材料を人工土壌培地100に添加する方法、人工土壌粒子50の表面を硝酸態窒素及びモリブデンを含有する樹脂等で被覆する方法、人工土壌培地100を構成する人工土壌粒子50内に硝酸態窒素及びモリブデンを直接保持(担持)させる方法、及びこれらを組み合せた方法等が挙げられる。このうち、人工土壌培地100を構成する人工土壌粒子50内に硝酸態窒素及びモリブデンを直接保持させる方法が好ましい。
本発明で用いるモリブデンは、植物が利用できる形態であればよい。好ましいモリブデンの形態は、水溶性のモリブデン酸塩類であり、例えば、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム等のモリブデン酸のアルカリ金属塩類や、モリブデン酸アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、及びモリブデン酸カリウムは、市販品を容易に入手可能である。以下、硝酸態窒素及びモリブデンを保持する担体としての機能を備えた人工土壌粒子50について説明する。
<人工土壌粒子>
図2は、本発明の人工土壌培地100を構成する人工土壌粒子50を概念的に示した説明図である。人工土壌粒子50は、複数のフィラー1が集合して粒状に構成されたものである。図2(a)は、フィラー1として、多孔質天然鉱物であるゼオライト1aを使用した人工土壌粒子50を例示したものである。図2(b)は、フィラー1として、層状天然鉱物であるハイドロタルサイト1bを使用した人工土壌粒子50を例示したものである。図2は人工土壌粒子50の構造を示すものであるため、硝酸態窒素及びモリブデンの記載は省略してある。
人工土壌粒子50中の複数のフィラー1は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、一粒子内でバインダー等を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していれば、複数のフィラー1が集合して粒状に構成したものと考えることができる。人工土壌粒子50を構成するフィラー1は、表面から内部にかけて多数の細孔2を有する。細孔2は、種々の形態を含む。例えば、フィラー1が、図2(a)に示すゼオライト1aの場合、当該ゼオライト1aの結晶構造中に存在する空隙2aが細孔2であり、図2(b)に示すハイドロタルサイト1bの場合、当該ハイドロタルサイト1bの層構造中に存在する層間2bが細孔2である。つまり、本発明において「細孔」とは、フィラー1の構造中に存在する空隙部、層間部、空間部等を意図し、これらは「孔状」の形態に限定されるものではない。細孔2には、硝酸態窒素、モリブデン、及び他の肥料成分を保持することができる。なお、複数のフィラー1の間には連通孔3が形成されており、当該連通孔3の周囲に細孔2が分散配置されている。この連通孔3は、主に水分を保持することができる。連通孔3の周囲に分散配置された細孔2に保持されている硝酸態窒素、モリブデン、及び他の肥料成分は、連通孔3に保持されている水に徐々に溶出し、連通孔3から人工土壌粒子50の外部に水とともに放出される。
人工土壌粒子50に硝酸態窒素及びモリブデン酸を確実に坦持させるため、フィラー1として陰イオン交換能が付与された材料を使用することが好ましい。陰イオン交換能を有するフィラー1を粒状化した人工土壌粒子50は、モリブデン酸及び硝酸態窒素を事後的に添加した場合にも、それらをフィラー1に坦持させることができる。従って、陰イオン交換能を有さない天然土壌と異なり、本発明の人工土壌培地100に追肥によりモリブデン及び硝酸態窒素を添加した場合でも、人工土壌培地100からモリブデン及び硝酸態窒素が流出する虞が無い。また、人工土壌粒子50は、他の肥料成分も坦持できるように、陽イオン交換能をさらに付与することが好ましい。これにより、人工土壌粒子50は両イオン交換能を有することになるため、人工土壌培地100は十分な保肥力を有する。また、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の孔に上記のイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これをフィラー1として使用することも可能である。陽イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換性鉱物、腐植、及び陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換能が付与された材料として、陰イオン交換性鉱物、及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。
フィラー1として、ゼオライトやハイドロタルサイトのような無機天然鉱物を使用する場合、高分子ゲル化剤のゲル化反応を利用して粒状化させることができる。高分子ゲル化剤のゲル化反応として、例えば、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応、カルボキシメチルセルロース(CMC)のゲル化反応、カラギーナン等の多糖類の二重らせん構造化反応によるゲル化反応が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不要であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こりゲル化する。本実施形態の場合、ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にフィラー1を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にフィラー1が分散した混合液とする。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸ゲル中にフィラー1が分散した粒状物が得られる。粒状物は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、人工土壌粒子50とされる。人工土壌粒子50の好ましい粒径は、0.2〜10mmの範囲である。
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、フィラー1を添加した混合液の攪拌や、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化する2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的ではない。
粒状物の形成にあたっては、バインダーを用いて粒状化を行うこともできる。例えば、フィラー1にバインダーや溶媒等を加えて混合し、この原料混合物を造粒機に導入して、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により、粒状物を形成する。また、フィラー1にバインダーを加え、さらに必要に応じて溶媒等を加えて混練し、これを乾燥してブロック状にしたものを、乳鉢及び乳棒、ハンマーミル、ロールクラッシャー等の粉砕手段で適宜粉砕して粒状物とすることも可能である。粒状物は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、人工土壌粒子50とされる。
人工土壌粒子50を造粒するためのバインダーとしては、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル等の酢酸ビニル系バインダー、ウレタン樹脂、ビニルウレタン樹脂等のウレタン樹脂系バインダー、アクリル樹脂系バインダー、シリコーン樹脂系バインダー等の合成樹脂系バインダー、デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸塩等の多糖類、ポリアミノ酸、膠等のたんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸塩系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
人工土壌粒子50を設計するに際し、連通孔3の保水性を高めることも可能である。連通孔3の保水性を向上させる一つの方法として、人工土壌粒子50の連通孔3に保水性材料を導入することが挙げられる。保水性材料は、例えば、連通孔3の全体に保水性材料を充填したり、連通孔3の表面を保水性材料の膜でコーティングしたりすることで導入可能である。このとき、連通孔3の少なくとも一部に保水性材料が存在していればよい。保水性材料の導入は、例えば、保水性のある高分子材料を溶媒に溶解して高分子溶液を調製し、当該高分子溶液を人工土壌粒子50に含浸させることによって行われる。
保水性材料として使用可能な高分子材料は、例えば、ポリアクリル酸塩系ポリマー、ポリスルホン酸塩系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド系ポリマー等の合成高分子系保水性材料、ポリアスパラギン酸塩系ポリマー、ポリグルタミン酸塩系ポリマー、ポリアルギン酸塩系ポリマー、セルロース系ポリマー、デンプン等の天然高分子系保水性材料が挙げられる。これらの保水性材料は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
<硝酸態窒素及びモリブデンの導入方法>
人工土壌粒子50を製造する過程において、人工土壌粒子50に硝酸態窒素及びモリブデンの一方又は両方が導入される。例えば、高分子ゲル化剤水溶液(例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液)に硝酸態窒素及び/又はモリブデンを溶解させておくと、ゲル化反応時にゲル中に硝酸態窒素及び/又はモリブデンが取り込まれる。また、造粒前の原料に硝酸態窒素及び/又はモリブデンを混合しておくと、造粒物に硝酸態窒素及び/又はモリブデンが含まれることになる。人工土壌粒子50に硝酸態窒素及びモリブデンを導入する他の方法としては、イオン吸着能を有するフィラー1で人工土壌粒子50を作製後、人工土壌粒子50を硝酸態窒素及びモリブデンの溶液に浸漬し、硝酸態窒素及びモリブデンを人工土壌粒子50に坦持させる方法がある。人工土壌粒子50に導入された硝酸態窒素やモリブデンは、複数のフィラー1の間に形成される連通孔3に高分子ゲル化剤やバインダーの固着力によって保持されたり、イオン吸着能を有するフィラー1にイオンとして吸着された状態となる。人工土壌粒子50内に保持された硝酸態窒素及びモリブデンは、外部環境に存在する水や根酸等により溶出し、徐々に外部に放出されるが、人工土壌粒子50を崩壊可能に構成し、人工土壌粒子50の崩壊に伴って硝酸態窒素及びモリブデンが放出されるように構成してもよい。人工土壌粒子50を崩壊性とするためには、例えば、造粒に使用する高分子ゲル化剤やバインダーとして水溶性の材料を用いる。この場合、植物に灌水を行うと、人工土壌粒子50が水分を吸収して崩壊し、内部の硝酸態窒素及びモリブデンが放出される。
モリブデンは、硝酸を還元する硝酸還元酵素の補因子であり、酵素の触媒活性に必要な元素である。植物体内に取り込まれた硝酸を亜硝酸に還元するためには、硝酸還元酵素が必要であり、その硝酸還元酵素を機能させるにはモリブデンが必要となる。そこで、植物体内に取り込まれる硝酸及びモリブデンの量を一定の範囲に調整することにより、植物体内での硝酸の蓄積を低減し、さらに植物の生育を増進させることができる。人工土壌培地100における硝酸態窒素の好ましい含有量は0.05〜10重量%であり、より好ましい含有量は0.10〜10重量%である。硝酸態窒素の含有量が0.05重量%より少ないと、植物の生育に悪影響を及ぼす虞があり、10重量%より多いと、植物体内に硝酸が過剰に蓄積する虞がある。人工土壌培地100におけるモリブデンの好ましい含有量は0.01〜0.50重量%であり、より好ましい含有量は0.02〜0.10重量%である。モリブデンの含有量が0.01重量%より少ないと、植物中に硝酸が過剰に蓄積する虞があり、0.50重量%より多くしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
また、人工土壌培地100に含まれる硝酸態窒素及びモリブデンの比率は、モル比で、好ましくは1:6〜1:0.0006であり、より好ましくは1:6〜1:0.001である。硝酸態窒素及びモリブデンのモル比が1:0.0006より大きい場合は、モリブデンに対して硝酸態窒素が過剰となるため、植物中に硝酸が必要以上に蓄積される虞がある。硝酸態窒素及びモリブデンのモル比が1:6より小さい場合は、硝酸態窒素に対してモリブデンは十分であるが、植物体内の硝酸の蓄積を低減させる効果は大きく向上せず、経済的ではない。
人工土壌粒子50には、硝酸態窒素及びモリブデン以外に、その他の肥料成分も導入することができる。肥料成分を人工土壌粒子50に導入すれば、人工土壌粒子50から肥料成分が徐々に放出されるので、栽培期間中に追肥をしなくても栽培対象の植物を生育させることができる。人工土壌粒子50に導入する肥料成分としては、三大要素であるリン、カリウムの各成分の他、中量要素であるマグネシウム、カルシウム、硫黄等の各成分、微量要素である鉄、銅、亜鉛、マンガン、ホウ素、塩素、ケイ酸等の各成分が挙げられる。これら肥料成分の導入方法は、硝酸態窒素及びモリブデンの導入方法と同様の方法を用いることができる。人工土壌粒子50に肥料成分を導入するにあたっては、人工土壌培地100中の含有量として0.01〜10重量%となるように添加することが好ましい。
<被覆層の形成>
図3は、本発明の人工土壌培地100を構成する別のタイプの人工土壌粒子50を概念的に示した説明図である。図3は人工土壌粒子50の構造を示すものであるため、硝酸態窒素及びモリブデンの記載は省略してある。図3に示すように、粒状物の外表に被覆層10を形成することができる。人工土壌粒子50に被覆層10を設けると、人工土壌粒子50に坦持した硝酸態窒素及びモリブデンの放出状態をより精密に制御することができる。被覆層10は、例えば、硝酸態窒素及びモリブデンを徐々に放出するように分解性材料で構成したものや、硝酸態窒素及びモリブデンが通過可能な微細孔を有する多孔性膜で構成したものとすることができる。あるいは、これらの構成を組み合わせることも可能である。被覆層10は、硝酸態窒素及びモリブデンだけでなく、人工土壌粒子50に坦持した他の肥料成分の放出も制御することができる。また、被覆層10自体に、硝酸態窒素、モリブデン、及びその他の肥料を保持させ、これらを徐々に放出させることも可能である。
被覆層10の形成方法としては、例えば、以下に説明する含浸法が挙げられる。上述の「人工土壌粒子」の項目で例示した粒状物を容器に投入し、粒状物の体積(占有容積)の半分程度の水を加え、粒状物の細孔2及び連通孔3に水を浸み込ませる。次に、水を浸み込ませた粒状物を、被覆用の樹脂の溶液又は樹脂のコロイド溶液に投入し、所定時間撹拌して粒状物の表面に均一に樹脂を付着させる。ここで、被覆層10にも硝酸態窒素及びモリブデンを保持させる場合は、樹脂溶液に硝酸態窒素及びモリブデンを添加しておく。その後、粒状物を取り出し、加熱して粒状物の外表に付着した樹脂を溶融させ、粒状物の外表付近のフィラー1に樹脂を融着させて被覆層10を形成する。これにより、粒状物の外表が被覆層10で被覆された人工土壌粒子50が完成する。この方法では、含浸させる樹脂溶液中の樹脂の種類及び濃度を調整することにより、粒状物の外表に形成される被覆層10の特性を変更することができる。これにより、人工土壌粒子50の硝酸態窒素及びモリブデンの放出特性を調整することができる。含浸法に使用する樹脂としては、粒状物の造粒に使用したバインダーと同様のものを使用することができる。
<硝酸態窒素及びモリブデンを含有する材料>
硝酸態窒素及びモリブデンを含有する材料は、例えば、硝酸態窒素及びモリブデンを無機鉱物や有機材料に混合し、造粒や押出成形等を行って製剤化した材料や、硝酸態窒素及びモリブデンをカプセルに封入し、カブセル化した材料等が挙げられる。硝酸態窒素及びモリブデンの添加量は、上記人工土壌粒子の項目で説明した添加量と同等とすることができる。
(モリブデン添加による植物体内への硝酸の蓄積の低減及び生育性の評価)
本発明の人工土壌培地で栽培した植物の体内への硝酸の蓄積の低減、植物の生育性、及び植物の根の成長について評価する試験を実施した。試験結果を以下に説明する。なお、説明中の濃度の百分率は重量%を表す。
(1)粒状物の作製
和光純薬工業株式会社製の試薬アルギン酸ナトリウムを水に溶解させて濃度0.5%の水溶液を調製し、アルギン酸ナトリウム0.5%水溶液100重量部に株式会社エコウエル製の人工ゼオライト「琉球ライト600」10重量部、及び和光純薬工業株式会社製の試薬ハイドロタルサイト10重量部を添加し、ミキサー(SM−L57:三洋電機(株)製)を用いて3分間撹拌して混合液を作製した。得られた混合液を、多価金属イオン水溶液である5%塩化カルシウム水溶液に滴下してゲル化物を生成した。生成したゲル化物を溶液から回収し、洗浄した後、55℃の乾燥機中で24時間乾燥させて粒状物を作製した。
(2)人工土壌粒子及び人工土壌培地の調製
上記作製した粒状物に養分を導入して、人工土壌粒子を表1の配合に従って調製した。
実施例1:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、5%硫酸マグネシウム水溶液、及び0.2%モリブデン酸ナトリウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料成分を坦持させた人工土壌粒子を調製した。これら4種類の人工土壌粒子を同量ずつ混合して人工土壌培地とした。
実施例2:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、及び5%硫酸マグネシウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料成分(モリブデンを含まない)を坦持させた人工土壌粒子を調製した。これら3種類の人工土壌粒子を同量ずつ混合して人工土壌培地とした。なお、モリブデンの添加については、人工土壌粒子に直接担持させるのではなく、人工土壌粒子にモリブデンを含有する水溶液を灌水させて行った。
実施例3:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、及び5%硫酸マグネシウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料成分(モリブデンを含まない)を坦持させた人工土壌粒子を調製した。また、上記粒状物作製時に、フィラーとしてモリブデンを含有する肥料成分を0.5%混合してゲル化し、モリブデンを含有する人工土壌粒子を調製した。これら4種類の人工土壌粒子を同量ずつ混合して人工土壌培地とした。
比較例1:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、及び5%硫酸マグネシウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料(モリブデンを含まない)を坦持させた人工土壌粒子を調製した。これら3種類の人工土壌粒子を同量ずつ混合して人工土壌培地とした。
比較例2は、人工土壌培地に対するコントロールとして、培養土(株式会社花ごころ社製、商品名「花ちゃん(登録商標)培養土」)を使用した。
Figure 2014193148
(3)ラディッシュに含まれる硝酸の低減試験
上記各試験土壌を用いてラディッシュを栽培し、蓄積される硝酸の低減効果について評価した。ラディッシュの栽培方法は、以下のとおりである。
容量300mlのポリエチレン製カップの底面に排水用の穴を開け、さらに底に砂(粒径2〜5mm)を敷き詰め、カップの底面に水が溜まらないようにし、その上に200ml(約120g)の人工土壌粒子(実施例1、実施例2、実施例3、比較例1)又は培養土(比較例2)を入れ、ラディッシュ(レッドキング)の種1個を播種し、十分な水分を与え発芽させた後、30mlの水道水を毎日与え、25日間栽培した。実施例2は、播種後11日目以降、灌水に加えて毎日0.2%モリブデン含有水溶液20mlを与え、人工土壌培地にモリブデンを含ませた。栽培後、ラディッシュの葉及び根の部位の硝酸含有量を測定した。なお、硝酸は作物を絶乾状態にした後、粉砕して粉末状にしたものをアルカリ還元・ジアゾ色素法により測定した。
ラディッシュの葉における硝酸態窒素の濃度は、実施例2が737ppmであり、比較例1が4355ppmであり、比較例2が20ppmであった。また、ラディッシュの根における硝酸態窒素の濃度は、実施例2が243ppmであり、比較例1が1195ppmであり、比較例2が50ppmであった。モリブデンを添加した実施例2は、比較例1のモリブデンを添加していない人工土壌粒子と比較して、ラディッシュの葉及び根のいずれにおいても硝酸の蓄積の低減効果が認められた。実施例1及び3においても、ラディッシュの葉及び根のいずれも硝酸の蓄積の低減効果が認められた(データ示さず)。
(4)ラディッシュの生育試験
図4は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの生育性を示したグラフである。図5は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの根の成長を示したグラフである。上記栽培したラディッシュを収穫し、葉、根(実)の生重量、及び根長、根径を測定し、各試験土壌での生育性を評価した。
図4の結果から、実施例1及び2は、モリブデンを含まない人工土壌粒子を用いた比較例1の人工土壌培地及び比較例2の天然土壌に比して、葉及び根の重量が増加した。また、図5の結果から、実施例1及び2は、人工土壌粒子を用いた比較例1の人工土壌培地に比して、ラディッシュの根の根長及び根径が増加した。実施例3においても、実施例1と略同等の結果が得られた(データ示さず)。上記結果から、硝酸態窒素及びモリブデンを含む人工土壌粒子を用いて人工土壌培地を調製することにより、栽培植物の成長を増進させることが可能であるが明らかとなった。
(微量要素添加による植物体内への硝酸の低減及び生育性の評価)
微量要素を添加した人工土壌培地で栽培した植物の体内への硝酸の蓄積の低減、及び植物の生育性について評価する試験を実施した。試験結果を以下に説明する。
(1)粒状物の作製
粒状物は、上記と同じ手法を用いて作製した。実施例4の微量要素を含む粒状物には、表2の配合量にしたがって、粒状物100g当たり、フィラーとして5gの微量要素(モリブデンの含有量:0.5g)を含有させた。当該微量要素には、モリブデンの他に、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ホウ素、塩素、及びケイ酸が含まれている。
(2)人工土壌粒子及び人工土壌培地の調製
作製した粒状物に養分を導入して、人工土壌粒子を表2の配合に従って調製した。
実施例4:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、及び5%硫酸マグネシウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物(微量要素を含まない)をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料成分を坦持させた人工土壌粒子を調製した。これら3種類の人工土壌粒子をそれぞれ30重量%と、上記微量要素を含有させた人工土壌粒子10重量%とを混合して人工土壌培地とした。人工土壌培地の微量要素及び硝酸態窒素の含有量は、微量要素が0.5重量%(モリブデン:0.05重量%)、硝酸態窒素が0.25重量%である。人工土壌培地の硝酸態窒素及びモリブデンの含有量のモル比(NO:Mo)は、1:0.13である。
実施例5:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、及び5%硫酸マグネシウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物(微量要素を含まない)をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料成分を坦持させた人工土壌粒子を調製した。これら3種類の人工土壌粒子を同量ずつ混合して人工土壌培地とした。なお、微量要素の添加については、人工土壌粒子に直接担持させるのではなく、人工土壌粒子に0.14重量%の微量要素を含有する水溶液(モリブデン:0.014重量%)を灌水させて行った。
比較例3:5%硝酸カリウム水溶液、2.5%リン酸2水素カリウム水溶液、及び5%硫酸マグネシウム水溶液の各水溶液に、上記粒状物をそれぞれ6時間浸漬して、それぞれの肥料(微量要素を含まない)を坦持させた人工土壌粒子を調製した。これら3種類の人工土壌粒子を同量ずつ混合して人工土壌培地とした。
Figure 2014193148
(3)ラディッシュに含まれる硝酸の低減試験
上記各人工土壌培地を用いてラディッシュを栽培し、蓄積される硝酸の低減効果について評価した。ラディッシュの栽培方法は、以下のとおりである。
容量300mlのポリエチレン製カップの底面に排水用の穴を開け、さらに底に砂(粒径2〜5mm)を敷き詰め、カップの底面に水が溜まらないようにし、その上に200ml(約120g)の人工土壌粒子を入れ、ラディッシュ(レッドキング)の種1個を播種し、十分な水分を与え発芽させた後、30mlの水道水を毎日与え、25日間栽培した。実施例5は、播種後11日目以降、毎日0.14重量%の微量要素を含む30mlの水道水を毎日与え、25日間栽培した(微量要素の総添加量(モリブデン):0.6g(0.06g))。栽培後、ラディッシュの根(実)の部位の硝酸含有量を測定した。なお、硝酸は作物を絶乾状態にした後、粉砕して粉末状にしたものをアルカリ還元・ジアゾ色素法により測定した。
図6は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの根における硝酸の低減効果を示したグラフである。図6の結果に示されるように、実施例4及び5は、微量要素を含まない人工土壌粒子を用いた比較例3の人工土壌培地に比して、ラディッシュの根における硝酸の蓄積の低減効果が認められた。特に、微量要素を含有させた人工土壌粒子を用いた実施例4の人工土壌培地では、硝酸の蓄積の顕著な低減効果が確認された。
(4)ラディッシュの生育試験
図7は、本発明の人工土壌培地で栽培したラディッシュの生育性を示したグラフである。上記栽培したラディッシュを収穫し、葉、根(実)の生重量を測定し、各試験土壌での生育性を評価した。図7の結果に示されるように、実施例4及び5は、微量要素を含まない人工土壌粒子を用いた比較例3の人工土壌培地に比して、葉及び根の重量が増加した。特に、微量要素を含有させた人工土壌粒子を用いた実施例4の人工土壌培地では、顕著な生育の増進効果が認められた。
本発明の人工土壌培地は、植物工場等で行われる植物の栽培に利用可能であるが、その他の用途として、施設園芸用土壌培地、緑化用土壌培地、成型土壌培地、土壌改良剤等にも利用可能である。
50 人工土壌粒子
100 人工土壌培地

Claims (8)

  1. 硝酸態窒素及びモリブデンを含有する人工土壌培地。
  2. 前記硝酸態窒素及び前記モリブデン、並びに、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ホウ素、塩素、及びケイ酸からなる群から選択される少なくとも一種の微量要素を含有する人工土壌粒子で構成されている請求項1に記載の人工土壌培地。
  3. 前記モリブデンをモリブデン酸塩として含有する請求項1又は2に記載の人工土壌培地。
  4. 前記硝酸態窒素の含有量は0.05〜10重量%であり、前記モリブデンの含有量は0.01〜0.50重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工土壌培地。
  5. 前記硝酸態窒素及び前記モリブデンの含有量がモル比で1:6〜1:0.0006に設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の人工土壌培地。
  6. 前記人工土壌粒子にイオン交換能が付与されている請求項2〜5のいずれか一項に記載の人工土壌培地。
  7. 前記人工土壌粒子に保水性材料が導入されている請求項2〜6のいずれか一項に記載の人工土壌培地。
  8. 前記人工土壌粒子は0.2〜10mmの粒径を有する請求項2〜7のいずれか一項に記載の人工土壌培地。
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