JP6209053B2 - 植物育成培地、及び植物育成キット - Google Patents

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Description

本発明は、複数種の人工土壌粒子を含む植物育成培地、及び当該植物育成培地を用いた植物育成キットに関する。
近年、生育条件がコントロールされた環境下で野菜等の植物を栽培する植物工場が増加している。これまでの植物工場は、レタス等の葉物野菜の水耕栽培が中心であったが、最近では水耕栽培には向かない根菜類についても植物工場での栽培を試みる動きがある。
根菜類を栽培するには、成長段階に合わせて、植物への水分供給量及び施肥量を調整する必要がある。例えば、播種の後から発根までの期間は、水分供給量を多めに設定する必要がある。そのため、高保水性の培地を使用することが望ましい。発根後においては、培地の液相率を下げて一定の気相率を確保し、且つ適量の肥料を植物に供給することが望ましい。従って、植物工場において植物(特に、根菜類等)を栽培するためには、植物の根の成長に合わせて水分供給量や施肥量を調整できる等の天然土壌では実現が困難な高度な機能を備えた人工土壌(植物育成培地)が求められる。
従来の人工土壌を用いた植物育成培地として、例えば、播種がなされるゲル培地の周囲に複数のゲル培地を配置したものや、播種がなされるゲル培地の下方に複数のゲル培地を積層配置したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2011−250763号公報
特許文献1には、複数のゲル培地を組み合わせた植物育成培地を使用して植物を栽培する方法が開示されている。この植物育成培地で栽培される植物は、播種から発芽を経て苗となり、その後、成体に成長する。ところが、この植物育成培地を構成するゲル培地は植物の根が侵入するための間隙が小さいため、植物の根が十分に成長するための空間と通気性とを確保することができない。従って、栽培植物が発根しても、その後は土壌環境に適応できず、生育不良となる虞がある。また、植物の根の伸張によってゲル培地が崩壊し、植物を支えることができなくなる虞もある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、成長段階によって水分供給量や施肥量が異なる植物(例えば、根菜類等)の栽培を可能にする植物育成培地、及び当該植物育成培地を用いた植物育成キットを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る植物育成培地の特徴構成は、
複数種の人工土壌粒子を含む植物育成培地であって、
表面側に所定値以上の保水性を有し、且つ所定値以下のサイズを有する人工土壌粒子を配置し、
深さ方向に沿って、人工土壌粒子の保水性を連続的又は段階的に小さくし、電気伝導度を連続的又は段階的に大きくし、且つサイズを連続的又は段階的に大きくした傾斜構造を有することにある。
本構成の植物育成培地によれば、表面側に所定値以上の保水性を有し、且つ所定値以下のサイズを有する人工土壌粒子を配置していることから、植物の初期の成長段階では、播種又は挿し木から効率的に発根を促すことができる。また、植物育成培地の深さに沿って人工土壌粒子の保水性を連続的又は段階的に小さくし、電気伝導度を連続的又は段階的に大きくし、且つサイズを連続的又は段階的に大きくしていることから、植物の後期の成長段階では、栽培植物の根の伸長に合わせて、根が成長するための空間と通気性とを確保しながら、適量の水分及び肥料を栽培植物に供給することができる。その結果、成長段階によって水分供給量や施肥量が異なる根菜類等の栽培が可能となる。
本発明に係る植物育成培地において、
保水性が大きく、電気伝導度が小さく、且つサイズが小さい第一人工土壌粒子を含み、植物の発根を促す発根層として機能する上層と、
前記第一人工土壌粒子より保水性が小さく、電気伝導度が大きく、且つサイズが大きい第二人工土壌粒子を含み、植物の根の成長を促す育成層として機能する下層と、
を備えることが好ましい。
本構成の植物育成培地によれば、保水性が大きく、電気伝導度が小さく、且つサイズが小さい第一人工土壌粒子を含む上層を備えることから、植物の初期の成長段階では、播種又は挿し木から効率的に発根を促すことができる。また、第一人工土壌粒子より保水性が小さく、電気伝導度が大きく、且つサイズが大きい第二人工土壌粒子を含む下層を備えることから、植物の後期の成長段階では、栽培植物の根の伸長に合わせて、根が成長するための空間と通気性とを確保しながら、適量の水分及び肥料を栽培植物に効率よく供給することができる。その結果、成長段階によって水分供給量や施肥量が異なる根菜類等の栽培が可能となる。
本発明に係る植物育成培地において、
前記上層の保水量は、前記第一人工土壌粒子100cc当たり40cc以上であり、
前記下層の保水量は、前記第二人工土壌粒子100cc当たり20cc以上40cc未満であることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、上層の保水量は、第一人工土壌粒子100cc当たり40cc以上であることから、植物の初期の成長段階では、播種又は挿し木からさらに効率的に発根を促すことができる。また、下層の保水量は、第二人工土壌粒子100cc当たり20cc以上40cc未満であることから、植物の後期の成長段階では、栽培植物の根の伸長に合わせて、適量の水分を効率よく供給することができる。その結果、成長段階によって水分供給量が異なる根菜類等に適量の水分を確実に供給することができる。
本発明に係る植物育成培地において、
前記上層は、pF値が2.3以下の範囲で水分を24時間以上保持することが好ましい。
本構成の植物育成培地によれば、上層はpF値が2.3以下の範囲で水分を24時間以上保持することから、植物が利用可能な水分、いわゆる易効水を長時間保持することができる。従って、植物の初期の成長段階では、播種又は挿し木からの発根率を高めることができ、その結果、根菜類等をさらに効率よく栽培することができる。
本発明に係る植物育成培地において、
前記第一人工土壌粒子のサイズは、0.1mm以上2.0mm未満であり、
前記第二人工土壌粒子のサイズは、2.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい。
本構成の植物育成培地によれば、第一人工土壌粒子のサイズは、0.1mm以上2.0mm未満であることから、第一人工土壌粒子の間に水分を効率的に保持させることができる。これにより、上層は高保水性の培地となるため、播種又は挿し木から確実に発根を促すことができる。また、第二人工土壌粒子のサイズは、2.0mm以上10.0mm未満であることから、第二人工土壌粒子の間に適切なサイズの隙間を形成することができる。これにより、根が成長するための空間と通気性とを確保しながら、適量の水分を確実に供給することができる。
本発明に係る植物育成培地において、
前記上層の電気伝導度は、1.5mS/cm未満であり、
前記下層の電気伝導度は、1.5mS/cm以上10.0mS/cm以下であることが好ましい。
本構成の植物育成培地によれば、上層の電気伝導度は、1.5mS/cm未満であることから、植物の初期の成長段階では、肥料を少なくし、植物の肥料やけを防止することができる。また、下層の電気伝導度は、1.5mS/cm以上10.0mS/cm以下であることから、植物の後期の成長段階では、植物の成長に適量の肥料を供給し、植物の成長を促進させることができる。これにより、植物の成長に合わせて、最適な量の肥料を最適なタイミングで栽培植物に供給することができ、その結果、根菜類等をさらに効率よく栽培することが可能となる
本発明に係る植物育成培地において、
前記第一人工土壌粒子は、繊維を集合してなる繊維塊状体を含み、
前記第二人工土壌粒子は、細孔を有する複数のフィラーを造粒してなる多孔質体を含むことが好ましい。
本構成の植物育成培地によれば、第一人工土壌粒子を含む上層は繊維塊状体に起因する高い保水性を有するため、播種又は挿し木から確実に発根させることができる。第二人工土壌粒子を含む下層は細孔を有するフィラーに肥料を担持させることができるため、成長した栽培植物に肥料を供給することができる。その結果、根菜類等を成体となるまで確実に成長させることができる。
上記課題を解決するための本発明に係る植物育成キットの特徴構成は、
上記何れか一つの植物育成培地を用いたことにある。
本構成の植物育成培地を使用した植物育成キットによれば、上記何れか一つの植物育成培地を使用していることから、根菜類や観葉植物等を播種又は挿し木から確実に成体となるまで成長させることができる。
図1は、複数種の人工土壌粒子を使用した植物育成培地の断面図である。 図2は、二種類の人工土壌粒子を概念的に示した説明図である。 図3は、植物育成培地を用いた植物育成キットを例示した斜視図である。
以下、本発明に係る植物育成培地、及び当該植物育成培地を用いた植物育成キットに関する実施形態を図1〜3に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
〔植物育成培地〕
図1は、複数種の人工土壌粒子50を使用した植物育成培地100の断面図である。図1(a)の植物育成培地100は、保水性及び保肥性の異なる2種の人工土壌粒子50(50a,50b)で構成されている。図1(b)の植物育成培地100は、保水性及び保肥性の異なる3種の人工土壌粒子50(50a,50b,50b)で構成されている。図1に示すように、植物育成培地100は、播種又は挿し木から効率的に発根を促す保水性の高い上層1と、根が成長するための空間と通気性とを確保しながら、適量の水分及び肥料を植物に供給する下層2とから構成されている。上層1は、保水性の高い第一人工土壌粒子50aから構成され、下層2は、適量の水分及び肥料を保持する第二人工土壌粒子50bから構成されている。第一人工土壌粒子50a及び第二人工土壌粒子50bの構造の詳細については、後述する。
図1(a)に示すように、植物育成培地100の上層1は、第一人工土壌粒子50aのサイズを小さくすることにより第一人工土壌粒子50a間の隙間3を小さくして、水の保持能力を高めている。植物育成培地100の上層1は、保水性が高くなるように調製されているため、播種及び挿し木を実施する際に植物20の発根を促す発根層として機能する。植物育成培地100の下層2は、第二人工土壌粒子50bのサイズを第一人工土壌粒子50aのサイズより大きくして通気性を高め、さらに第二人工土壌粒子50bの肥料濃度が第一人工土壌粒子50aの肥料濃度よりも高くなるように肥料を含有させて、保肥性を高めている。下層2に使用する第二人工土壌粒子50bは、上層1に使用する第一人工土壌粒子50aよりもサイズを大きくしているため、第二人工土壌粒子50b間の隙間3が一定以上のサイズとなり、地中の通気性を確保することができる。さらに、下層2は保肥性を高めているため、植物20の成長に合わせて適量の肥料を植物20に供給することができる。したがって、植物育成培地100の下層2は、植物20の成長を促す育成層として機能する。植物育成培地100の肥料濃度は、電気伝導度(EC:Electric Conductivity)によって表される。土壌中の肥料濃度(塩類濃度)が高くなると、電気が流れ易くなるため、電気伝導度が高くなる。つまり、電気伝導度は、土壌中のイオン化した肥料(例えば、NO -)の濃度を表している。なお、本明細書において「人工土壌粒子のサイズ」は、人工土壌粒子の粒径分布、又は平均粒径存在範囲として表される。例えば、人工土壌粒子のサイズを2mm以上10mm以下と表した場合、当該人工土壌粒子は、粒径が2〜10mmの粒径分布を有するか、あるいは平均粒径が2mmから10mmの間に存在することを意味する。
植物育成培地100は、人工土壌粒子50の保水性、肥料濃度(電気伝導度)、及びサイズを連続的又は段階的に変更して、植物育成培地100を傾斜構造に構成することができる。図1(b)に示す第一人工土壌粒子50a、第二人工土壌粒子50b、及び第二人工土壌粒子50bは、順に、保水性が小さくなるように、電気伝導度が大きくなるように、サイズが大きくなるように調製されている。図1(b)の植物育成培地100は、第二人工土壌粒子50bを最下層に配置し、次いで第二人工土壌粒子50bの上に第二人工土壌粒子50bを積層し、さらにその上に第一人工土壌粒子50aを積層している。これにより、図1(b)の植物育成培地100は、人工土壌粒子50の保水性を深さ方向に沿って段階的に小さくなるように、人工土壌粒子50の電気伝導度を深さ方向に沿って段階的に大きくなるように、人工土壌粒子50のサイズを深さ方向に沿って段階的に大きくなるように設定されている。その結果、植物育成培地100の上層1では、播種又は挿し木から効率的に発根を促し、植物育成培地100の下層2では、植物20の根21の伸長に合わせて、根21が伸長するための空間と通気性とを確保しながら、適量の水分及び肥料をさらに効果的に植物20に供給することができる。本実施形態では、植物育成培地100の下層2を1層及び2層に分けた例を示したが、栽培する植物の種類、栽培する形態に応じて適宜変更することが可能である。例えば、植物育成培地100の下層2を3層以上に分けてもよく、さらには、人工土壌粒子50の保水性を深さ方向に沿って連続的に小さくなるように、電気伝導度を深さ方向に沿って連続的に大きくなるように、サイズを深さ方向に沿って連続的に大きくなるように変更してもよい。
図1に示すように、人工土壌粒子50間には一定の隙間3が形成され、当該隙間3に一定の水分が保持される。隙間3のサイズは水分の保持力に関係しており、隙間3のサイズが大きくなり過ぎると、隙間3に水分を保持する力が弱まり、植物育成培地100の保水性が低下する。一方、隙間3のサイズが小さくなり過ぎると、水分を隙間3に保持する力が過剰となり、植物育成培地100の通気性が低下する。人工土壌粒子50間に形成される隙間3のサイズは、人工土壌粒子50のサイズに関係している。人工土壌粒子50のサイズが大きいと、人工土壌粒子50間に形成される隙間3のサイズが大きくなり、人工土壌粒子50のサイズが小さいと、人工土壌粒子50間に形成される隙間3のサイズも小さくなる。つまり、人工土壌粒子50のサイズを変更することにより、植物育成培地100の保水性及び通気性を変更することができる。
上層1は、播種又は挿し木の発根を促すため、高い保水性を備える必要がある。上層1を構成する第一人工土壌粒子50aのサイズは、0.1〜2.0mmが好ましい。第一人工土壌粒子50aのサイズが0.1mmより小さいと、灌水等により、上層1がスラリー状態となって、上層1としての形状を維持できなくなり、植物を支えることができなくなる虞がある。また、人工土壌粒子50aが下層2の間隙3を通って流出したり、下層2の間隙3を埋没させてしまう虞もある。その結果、下層2の通気性が悪化し、植物20の根21の成長に悪影響を及ぼす虞がある。一方、第一人工土壌粒子50aのサイズが2.0mmより大きいと、通気性が過剰となり、播種及び挿し木からの発根を十分に促すことができなくなる虞がある。
下層2は、植物20の根21の伸長に合わせて、根21が伸長するための空間と通気性とを確保しながら、植物20に適量の水分を供給する。従って、人工土壌粒子50間に形成される隙間3を一定以上確保する必要がある。下層2を構成する第二人工土壌粒子50bのサイズは、2.0〜10.0mmが好ましい。第二人工土壌粒子50bのサイズが2.0mmより小さいと、第二人工土壌粒子50b間に形成される隙間3のサイズが小さくなり過ぎて、下層2の排水性が低下する。その結果、植物20は、根21から酸素を吸収し難くなり、根腐れが生じる虞がある。一方、第二人工土壌粒子50bのサイズが10.0mmより大きいと、第二人工土壌粒子50b間に形成される隙間3のサイズが大きくなり過ぎて、排水性が過剰になる。その結果、植物20は、十分な水分を吸収し難くなり、枯死する虞がある。また、植物育成培地100が疎になって植物20が横倒れする虞もある。なお、人工土壌粒子50のサイズは、例えば、光学顕微鏡観察及び画像処理法を用いて測定することができる。
上層1の保水量は、下層2の保水量より大きくなるように設定されている。上層1の保水量は、第一人工土壌粒子50aの容積100cc当たり40cc以上が好ましい。上層1の保水量が第一人工土壌粒子50aの容積100cc当たり40ccを下回ると、植物20の発根率が低下し、植物20の栽培自体ができなくなる可能性がある。下層2の保水量は、第二人工土壌粒子50bの容積100cc当たり20cc以上40cc未満であることが好ましい。下層2の保水量が第二人工土壌粒子50bの容積100cc当たり20ccを下回ると、植物20が利用できる水分が少なくなり、成長に悪影響を及ぼす虞がある。また、下層2の保水量が第二人工土壌粒子50bの容積100cc当たり40cc以上とした場合は、下層2の通気性が低下し、植物20の根21から酸素を吸収し難くなって、根腐れが生じる虞がある。
土壌が水分を保持する力は、pF値として表される。pF値とは、水柱の高さで表した土壌水分の吸引圧の常用対数値のことであり、土壌中の水分が土壌の毛管力によって引き付けられている強さの程度を表す値である。pF値が2.0のとき、水柱100cmの圧力に相当する。pF値は土壌と水分の吸着の強さを表すものでもあり、土壌と水分の吸着力が弱いとpF値は低くなり、植物の根が水分を吸収し易い状態となる。一方、土壌と水分の吸着力が強いとpF値は高くなり、植物の根が水分を吸収するためには大きな力を要する。土壌中の隙間に空気が存在せず、全て水で充たされているときの状態がpF値0であり、100℃の熱乾状態の土壌で、土壌と化合した水しか存在しない状態がpF値7となる。植物が根から吸収できる土壌中の水分は、降雨又は灌水後、通常24時間後に土壌中に残っている水分(pF1.7)から、植物が萎れ始める初期萎れ点(pF3.8)までの水分である。一般の土壌の場合、植物を栽培可能なpF値、いわゆる易効水の範囲はpF値1.7〜2.7である。しかし、本発明者らが実際に植物の栽培を行うと、pF値が2.3を超える場合、植物の生育性が低下する傾向があることが明らかとなった。そこで、本発明においては、易効水のpF値の上限としてpF値2.3を使用する。植物育成培地100の上層1のpF値は、pF値2.3以下の範囲で水分を24時間以上保持することが好ましい。pF値2.3以下の範囲の水分を保持できる時間が24時間を下回る場合は、植物が容易に利用できる水分が少ないため、播種又は挿し木から効率よく発根ができなくなる虞がある。土壌のpF値は、pFメータ(テンシオメーター)を用いて測定することができる。
植物育成培地100の電気伝導度は、下層2の電気伝導度の値が上層1の電気伝導度の値を上回るように設定されている。植物育成培地100の上層1の電気伝導度は、1.5mS/cm未満であることが好ましい。上層1は植物20の発根を促すための発根層であるため、最低限の肥料が含まれていればよい。例えば、種子等を上層1に播く場合は、種子自体に栄養成分が含まれているため、肥料を添加する必要がない。一方、挿し木は若干の肥料を必要とするが、上層1の電気伝導度を1.5mS/cm以上にすると、植物20がいわゆる肥料やけを起こす虞がある。植物育成培地100の下層2の電気伝導度は、1.5mS/cm以上10.0mS/cm以下であることが好ましい。下層2の電気伝導度が1.5mS/cm未満であると、植物20に十分な量の肥料を供給することができず、植物20の成長に悪影響を及ぼす虞がある。一方、下層2の電気伝導度が10.0mS/cmを超えても、肥料の添加量に比べて効果が大きく向上せず、経済的にも不利である。また、植物20が肥料やけを起こす虞もある。植物育成培地100の上層1及び下層2の電気伝導度を上記範囲に設定することにより、植物20の幼苗等の初期の成長段階では、植物20に供給する肥料を少なくし、植物20が成熟した成体となる後期の成長段階では植物20の成長に必要な量の肥料を供給することができる。
上述のように、本発明の植物育成培地100に使用する第一人工土壌粒子50aは、保水性が高くなるように調製され、第二人工土壌粒子50bは根が成長するための空間と通気性とを確保しながら、適量の水分及び肥料を植物に供給するように調整されるものである。そこで、このような異なる特性を備えた第一人工土壌粒子50a及び第二人工土壌粒子50bの構成例について、図2を参照しながら説明する。
〔第一人工土壌粒子〕
図2は、二種類の人工土壌粒子50を模式的に示した説明図である。図2(a)の第一人工土壌粒子50aは、繊維塊状体10として構成される。繊維塊状体10は、複数本の繊維11を集合させたものである。繊維塊状体10を構成する繊維11の間には、空隙12が形成されている。繊維塊状体10は、空隙12に水分を保持することができる。従って、繊維塊状体10の空隙12の状態は、繊維塊状体10の保水性に関係する。空隙12の状態は、繊維塊状体10を形成する際の繊維11の使用量(密度)、繊維11の種類、太さ、長さ等を変更することにより調整可能である。なお、繊維11のサイズは、太さが5〜100μmのものが好ましく、長さが0.3〜10mmのものが好ましい。第一人工土壌粒子50aとして繊維塊状体10を使用することにより、植物育成培地100の上層1の保水性をさらに高めることができ、播種又は挿し木から効率よく発根させることができる。
繊維塊状体10は、その内部に水分を保持できるように構成するため、繊維11として親水性の繊維を使用することが好ましい。繊維11の種類は、天然繊維又は合成繊維が適宜選択される。好ましい親水性の繊維として、例えば、天然繊維では、綿、羊毛、レーヨン、セルロースファイバーが挙げられ、合成繊維では、例えば、ビニロン、ウレタン、ナイロン、アセテートが挙げられる。これらの繊維うち、綿、セルロースファイバー、及びビニロンがより好ましい。繊維11として、天然繊維と合成繊維とを混繊したものを使用することも可能である。
繊維塊状体10は、公知の造粒法により形成される。例えば、セルロースファイバーや、綿、又はビニロン等をカーディング装置等で引揃え、3〜10mm程度の長さに切断し、切断した繊維11を転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒等の方法によって粒状に造粒し、繊維塊状体10を形成する。造粒の際、繊維11に樹脂や糊等のバインダーを混合すると、繊維塊状体10を効率よく形成することができる。バインダーは、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、ポリ酢酸ビニル系バインダー等の合成樹脂系バインダー、デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸などの多糖類、膠などの動物性たんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。なお、繊維11として絡み易いもの(例えば、屈曲した繊維)を使用する場合、造粒を行うだけで繊維11が互いに容易に絡み合うため、この場合は特にバインダーを使用しなくても繊維塊状体10の形成が可能となる。
繊維塊状体10を造粒するにあたり、繊維11として短繊維や、繊維パウダーを使用することも可能である。この場合、短繊維や繊維パウダーを撹拌混合造粒装置で撹拌しながらバインダーとして樹脂エマルジョンを少量ずつ投入して造粒する。これにより、繊維塊状体10を形成する短繊維や繊維パウダー同士が一部で固定化され、強固な繊維塊状体10を形成することができる。
繊維塊状体10の外表部には、被覆層を形成してもよい。被覆層を設けることで、繊維塊状体の急激な乾燥を防止し、水分吸放出特性をコントロールすることができる。被覆層は、水分子が通過可能な超微細孔を有する膜である。あるいは、水分が一方側から浸透して他方側に移動可能な浸透性膜とすることもできる。被覆層は、例えば、以下の方法により繊維塊状体10の外表部に形成される。先ず、造粒した繊維塊状体を容器に移し、繊維塊状体10の体積(占有容積)の半分程度の水を加え、繊維塊状体10の空隙12に水を浸み込ませる。次に、水を浸み込ませた繊維塊状体10に、繊維塊状体10の体積の1/3〜1/2の樹脂エマルジョンを添加する。樹脂エマルジョンには、顔料、香料、殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、殺虫剤等の添加物を混合しておくことも可能である。次に、繊維塊状体10の外表部に樹脂エマルジョンが均一に付着するように転動させながら、繊維塊状体10の外表部から樹脂エマルジョンを含浸させる。このとき、繊維塊状体10の中心部には水が浸み込んでいるため、樹脂エマルジョンは繊維塊状体10の外表部付近で留まる。その後、樹脂エマルジョンが付着した繊維塊状体10をオーブンで乾燥させ、次いで、樹脂を溶融させ、繊維塊状体10の外表部付近の繊維11に樹脂を融着させて被覆層としての樹脂被膜を形成する。これにより、繊維塊状体10の外表部を被覆層で被覆した第一人工土壌粒子50aを作製することができる。
被覆層の材質は、水に不溶性で酸化され難いものが好ましく、例えば、樹脂材料が挙げられる。そのような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂材料に代えて、ポリエチレングリコール、アクリルアミド等の高分子ゲル化剤、アルギン酸塩やカラギーナン等の天然多糖類系ゲル化剤、天然ゴムやシリコーンゴム等のゴム系コーティング剤等を使用することも可能である。
繊維塊状体10及び被覆層には、イオン交換能を付与することもできる。繊維塊状体及び被覆層の少なくとも何れか一方にイオン交換能を付与することで、挿し木の発根に必要な肥料成分を第一人工土壌粒子50aに担持させることができるため、挿し木から効率的に発根を促すことができる。イオン交換能が付与された材料の詳細については、第二人工土壌粒子の項で説明する。
〔第二人工土壌粒子〕
図2(b)の第二人工土壌粒子50bは、複数のフィラー13が集合して粒状に構成された多孔質体を含む。複数のフィラー13は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、一粒子内でバインダー等を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していれば、複数のフィラー13が集合して粒状になったものと考えることができる。
第二人工土壌粒子50bの多孔質体を構成するフィラー13は、表面から内部にかけて多数の細孔14を有する。細孔14は、種々の形態を含む。例えば、フィラー13が図2(b)に示すゼオライトの場合、当該ゼオライトの結晶構造中に存在する空隙が細孔14である。また、フィラー13がハイドロタルサイト(図示せず)の場合、当該ハイドロタルサイトの層構造中に存在する層間が細孔14である。つまり、本発明において「細孔」とは、フィラー13の構造中に存在する空隙部、層間部、空間部等を意図し、これらは「孔状」の形態に限定されるものではない。
フィラー13の細孔14のサイズは、サブnmオーダー乃至サブμmオーダーとなる。例えば、細孔4のサイズは、0.2〜800nm程度に設定可能であるが、フィラー13が図2(b)に示すゼオライトの場合、ゼオライトの結晶構造中に存在する空隙のサイズ(径)は、0.3〜1.3nm程度である。フィラー13がハイドロタルサイトの場合、当該ハイドロタルサイトの層構造中に存在する層間のサイズ(距離)は、0.3〜3.0nm程度である。この他に、フィラー13として有機多孔質材料を使用することもでき、その場合の細孔径は、0.1〜0.8μm程度となる。フィラー13の細孔14のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定される。
複数のフィラー13の間には、水分を保持可能なサブμmオーダー乃至サブmmオーダーの連通孔15が形成されている。連通孔15の周囲には細孔14が分散配置されている。連通孔15には主に水分が保持されるため、第二人工土壌粒子50bに一定の保水性を持たせることができる。連通孔15のサイズ(フィラー13間の距離の平均値)は、フィラー13やバインダーの種類、組成、造粒条件により変化し得るが、サブμmオーダー乃至サブmmオーダーとなる。連通孔15のサイズは、0.1〜500μm程度に設定可能であるが、フィラー13が図2(b)に示すゼオライトである場合、連通孔15のサイズは、0.1〜20μmである。連通孔15のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定することができる。
フィラー13は、第二人工土壌粒子50bが十分な保肥力を有するように、細孔14にイオン交換能が付与された材料を使用することが好ましい。この場合、イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換能が付与された材料、陰イオン交換能が付与された材料、又は両者の混合物を使用することができる。また、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の細孔14に上記のイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これをフィラー13として使用することも可能である。陽イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換性鉱物、腐植、及び陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換能が付与された材料として、陰イオン交換性鉱物、及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。
陽イオン交換性鉱物は、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系鉱物、雲母系鉱物、バーミキュライト、ゼオライト、腐植等が挙げられる。陽イオン交換樹脂は、例えば、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ゼオライト、又はベントナイトが好ましい。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂における陽イオン交換容量は、10〜700meq/100gに設定され、好ましくは20〜700meq/100gに設定され、より好ましくは30〜700meq/100gに設定される。陽イオン交換容量が10meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陽イオン交換容量が700meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
陰イオン交換性鉱物は、例えば、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーライト、シェーグレン石、緑青等の主骨格として複水酸化物を有する天然層状複水酸化物、合成ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様物質、アロフェン、イモゴライト、カオリン等の粘土鉱物が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ハイドロタルサイトが好ましい。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂における陰イオン交換容量は、5〜500meq/100gに設定され、好ましくは20〜500meq/100gに設定され、より好ましくは30〜500meq/100gに設定される。陰イオン交換容量が5meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陰イオン交換容量が500meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
フィラー13がゼオライトやハイドロタルサイトのような無機天然鉱物である場合、複数のフィラー13を集合して粒状物(第二人工土壌粒子50b)を構成するために、高分子ゲル化剤のゲル化反応が好適に利用される。高分子ゲル化剤のゲル化反応として、例えば、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングルコールエステル、ジェランガム、グルコマンナン、ペクチン、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)と多価金属イオンとのゲル化反応、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガムなどの多糖類の二重らせん構造化反応によるゲル化反応が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不要であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こりゲル化する。本実施形態の場合、ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にフィラー13を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にフィラー13が分散した混合液を形成する。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸ゲル中にフィラー13が分散した粒状物としての第二人工土壌粒子50bが得られる。
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、フィラー13を添加した混合液の攪拌や、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化が起きる2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的でない。
第二人工土壌粒子50bを形成するためのフィラー13の粒状化は、上述のゲル化反応の他、バインダーを用いた造粒法によって行うこともできる。これは、例えば、フィラー13にバインダーや溶媒等を加えて混合し、混合物を造粒機に導入し、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により行うことができる。得られた造粒体は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、第二人工土壌粒子50bが完成する。また、フィラー13にバインダーを加え、さらに必要に応じて溶媒等を加えて混練し、これを乾燥してブロック状にしたものを、乳鉢及び乳棒、ハンマーミル、ロールクラッシャー等の粉砕手段で適宜粉砕して粒状物とすることも可能である。この粒状物は、そのまま第二人工土壌粒子50bとして用いることもできるが、篩にかけて所望のサイズに調整することが好ましい。
バインダーは、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、ポリ酢酸ビニル系バインダー等の合成樹脂系バインダー、デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸などの多糖類、膠などの動物性たんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
フィラー13が有機多孔質材料である場合、第二人工土壌粒子50bの形成は、バインダーを用いた上述のフィラー13の粒状化法と同様の方法で行ってもよいが、フィラー13を、当該フィラー13を構成する有機多孔質材料(高分子材料等)の融点以上の温度に加熱し、複数のフィラー13の表面同士を熱融着させて粒状化することにより、第二人工土壌粒子50bを形成することも可能である。この場合、バインダーを使用しなくても、複数のフィラー13が集合した粒状物を得ることができる。そのような有機多孔質材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、セルロール等の有機高分子材料を発泡させた有機高分子発泡体、前記有機高分子材料の粉体を加熱溶融して連続気泡構造を形成した有機高分子多孔質体が挙げられる。
なお、図示しないが、第二人工土壌粒子50bの多孔質体の外表部に、第一人工土壌粒子50aと同様の被覆層を設けることも可能である。被覆層を設けることにより、第二人工土壌粒子50bの水分吸放出特性をより精密にコントロールすることが可能となる。
また、第二人工土壌粒子50bは、第二人工土壌粒子50bのサイズ、及び吸水性を適宜変更することで、第一人工土壌粒子50aとして使用することができる。第二人工土壌粒子50bを第一人工土壌粒子50aとして使用する場合、第二人工土壌粒子50bのサイズは、0.1〜1.0mmに調製することが好ましい。これにより、人工土壌粒子50間に形成される隙間3に水分を効率的に保持することができる。
〔植物育成キット〕
図3は、本発明の植物育成培地100を用いた植物育成キット200を例示した斜視図である。本実施形態の植物育成キット200は、図3に示すように、包装用フィルム等を用いて植物育成培地100を包装して包装体30を形成し、当該包装体30を容器として使用できるように構成している。包装体30の上部には、種や挿し木を植えることができる挿入口31が形成され、さらに、当該挿入口31を塞ぐように開封片32が剥離可能に接着されている。植物育成キット200の製造方法としては、例えば、挿入口31から第二人工土壌粒子50bを添加して包装体30の下部に敷き詰め、次いで第一人工土壌粒子50aを添加して第二人工土壌粒子50bの上に積層した後、挿入口31に開封片32を接着する。植物育成キット200の使用に際しては、開封片32を包装体30から剥離して挿入口31を開口させて、植物育成培地100の上層1を露出させることにより、播種又は挿し木を容易に行うことができる。植物育成キット200は、包装フィルムで植物育成培地100を包装しているため、保存性に優れ、持ち運びも容易なため、植物工場はもちろん、家庭内でも使用することができる。
包装体30の下部には、排水のための排水孔(図示せず)を設け、当該排水孔を水溶性フィルムで覆うようにしてもよい。植物育成キット200に灌水を開始すると、水溶性フィルムが溶解するため、挿入口31から供給した過剰な水が排水孔から効率よく排出し、植物育成キット200の通気性を確保することができる。また、包装用フィルムは、防水性フィルムを使用することが好ましい。防水性フィルムを用いることにより、挿入口31から灌水した水が、包装体30の側面などから外部に漏れだすことを防止することができる。
〔植物育成培地を用いたラディシュの播種による育成試験〕
実施例1〜3として、第一人工土壌粒子を含む上層と、第二人工土壌粒子を含む下層とから構成される植物育成培地にラディシュを播種し、ラディシュの成長を評価した。人工土壌粒子の特性については、以下の(1)〜(6)に示す方法により評価した。ラディシュの育成試験は、種子からの発芽の有無、及び結実の有無により評価した。
(1)人工土壌粒子のサイズ
人工土壌粒子又は人工土壌団粒体を篩によって予め所定のサイズに分級し、分級したものについて画像処理を用いた測定法でサイズを測定し、これを試料として使用した。
人工土壌粒子のサイズは、光学顕微鏡観察及び画像処理法を用いて測定した。先ず、測定対象の人工土壌粒子をスケールとともに顕微鏡で観察し、その顕微鏡画像を画像処理ソフト(二次元画像解析処理ソフトウェア「WinROOF」、三谷商事株式会社製)を使用して取得した。画像から100個の人工土壌粒子を選択し、人工土壌粒子の輪郭をトレースし、トレースした図形の周長から、相当円の直径を算出した。人工土壌粒子から求めた相当円の直径(100個)の平均を平均サイズ(単位:ピクセル)とした。そして、平均サイズを顕微鏡画像中のスケールと比較し、単位長さ(μmオーダー乃至mmオーダー)に変換して、人工土壌粒子のサイズを算出した。
(2)保水量
クロマト管に試験対象の植物育成培地を充填し、植物育成培地の全てが水没するように水を注入して1時間静置後、クロマト管の下部より水を抜き、3分間クロマト管から落水しなくなったときの重量を測定した。これを、予め測定しておいた試験対象の植物育成培地の重量を差し引くことにより保水量を算出した。
(3)粗間隙率
植物育成培地を水道水に24時間浸漬して飽和含水状態にし、さらに1時間静置した。植物育成培地の重力水を流下させた後、植物育成培地の形状を出来るだけ維持しながら100ml試料用円筒に採取し、デジタル実容積測定装置(DIK−1150、大起理化工業株式会社製)にセットして粗間隙率を測定した。
(4)保肥量
メスシリンダーを用いて人工土壌粒子を50cc秤量して、クロマト管に充填した。次いで、100ccの蒸留水をクロマト管の上部からゆっくりと注水し、水が流下した後、再度100ccの水を注水した。この注水操作を100回繰り返した。その後、100ccの1%クエン酸溶液をクロマト管の上部からゆっくりと注水して、人工土壌粒子内に吸着している吸着イオンを抽出した。抽出液を3Cろ紙でろ過し、ろ液中の抽出イオンの量を測定した。このクエン酸を用いる抽出操作を100回繰返し、吸着イオンの総抽出量を算出した。
(5)電気伝導度
容量200mlのポリエチレン製容器を使用し、容器の底面には排水用の穴を開けて、底に水が溜まらないようにした。当該容器に人工土壌粒子200ml添加し、容器の上部から水100mlを注水して、底面の排水用の穴から排出される水を200mlのポリエチレン製容器に採取した。採取した水を3Cろ紙でろ過し、ろ液を電気伝導度計(DS−71、株式会社堀場製作所製)で測定した。
(6)pF値2.3以下の水分の保持時間
容量500mlのポリエチレン製容器を使用し、容器の底面に排水用の穴を開けて、容器の底に水が溜まらないようにした。当該容器に砂(粒径2〜5mm)を100ml添加し、その上に飽和含水状態にした人工土壌粒子400ml添加した。1時間放置後、容器の排水用の穴にpFメーター(DIK−8343、大起理化工業株式会社製)を差し込んで固定し、pF値の経時変化の推移を測定した。
〔実施例1〕
植物育成培地の容器には、容量300mlのポリエチレン製容器を使用し、容器の底面に排水用の穴を開けて、容器の底に水が溜まらないようにした。実施例1の植物育成培地は、当該容器に第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。ラディッシュの種を上層表面に播種して上面灌水(1回/日)を行った。第一人工土壌粒子及び第二人工土壌粒子は、以下の方法で作製した。
〔第一人工土壌粒子の作製〕
見かけの容積で1000ccのビニロン短繊維(長さ0.5mm、繊維径20μm 株式会社クラレ製)を撹拌混合造粒装置(有限会社G−Labo製)で撹拌、転動させながらポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の繊維塊状体を形成した。次いで、同じポリエチレンエマルジョンを体積の1/2となるように加えて外表部にエマルジョンが均一に付着するように転がしながら含浸させた。エマルジョンが含浸した繊維塊状体をオーブンで60℃で乾燥した後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることによりビニロン短繊維同士を固定化し、第一人工土壌粒子を得た。この第一人工土壌粒子のサイズは1.0〜2.0mmの範囲となるように調製した。第一人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第一人工土壌粒子100cc当たり40cc
pF値2.3以下の水分の保持時間:48時間
〔第二人工土壌粒子の作製〕
フィラーとしてゼオライト及びハイドロタルサイトを使用し、アルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムを使用し、多価金属イオン水溶液として5%塩化カルシウム水溶液を使用した。和光純薬工業株式会社製の試薬アルギン酸ナトリウムを水に溶解させて濃度0.5%の水溶液を調製し、アルギン酸ナトリウム0.5%水溶液100重量部に株式会社エコウエル製の人工ゼオライト「琉球ライト600」10重量部、及び和光純薬工業株式会社製の試薬ハイドロタルサイト10重量部を添加して混合した。混合液を5%塩化カルシウム水溶液中に1滴/秒の速度で滴下した。滴下した液滴が粒子状にゲル化した後、粒子状ゲルを回収して十分に水洗し、55℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させた。この人工土壌粒子のサイズは2.0〜4.0mmの範囲となるように調製した。肥料成分である水溶性リン酸肥料、水溶性カリウム肥料、水溶性硝酸肥料の溶液に浸漬して、フィラーに坦持させた。第二人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第二人工土壌粒子100cc当たり30cc
粗間隙率:40%
保肥量:第二人工土壌粒子1L当たり320mg(肥料総量)
電気伝導度(EC):2.0〜5.0mS/cm
〔実施例2〕
実施例2の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。ラディッシュの種を上層表面に播種して上面灌水(1回/日)を行った。第一人工土壌粒子は、以下の方法で作製した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔第一人工土壌粒子の作製〕
セルロースファイバー(アボセルB800、昭和化学工業株式会社製)をカーディング装置で引きそろえ、3〜10mm程度の長さに切断して、回転する2枚の板の間に入れて転がさせながら、ポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の繊維塊状体を形成した。次いで、同じポリエチレンエマルジョンを体積の1/2となるように加えて外表部にエマルジョンが均一に付着するように転がしながら含浸させた。エマルジョンが含浸した繊維塊状体をオーブンで60℃で乾燥した後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることにより、セルロースファイバー同士を固定化し、第一人工土壌粒子を得た。この第一人工土壌粒子のサイズは0.1〜2.0mmの範囲となるように調製した。第一人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第一人工土壌粒子100cc当たり40cc
pF値2.3以下の水分の保持時間:36時間
〔実施例3〕
実施例3の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。ラディッシュの種を上層表面に播種して上面灌水(1回/日)を行った。第一人工土壌粒子は、以下の方法で作製した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔第一人工土壌粒子の作製〕
フィラーとしてタルクを使用し、アルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムを使用し、多価金属イオン水溶液として5%塩化カルシウム水溶液を使用した。和光純薬工業株式会社製の試薬アルギン酸ナトリウムを水に溶解させて濃度0.5%の水溶液を調製し、アルギン酸ナトリウム0.5%水溶液100重量部にタルク(SW、日本タルク株式会社製)10重量部を添加して混合した。混合液を5%塩化カルシウム水溶液中に1滴/秒の速度で滴下した。滴下した液滴が粒子状にゲル化した後、粒子状ゲルを回収して十分に水洗し、55℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させた。この人工土壌粒子のサイズは0.5〜1.0mmの範囲となるように調製した。第一人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第一人工土壌粒子100cc当たり40cc
pF値2.3以下の水分の保持時間:36時間
〔比較例1〕
比較例1の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、同じ種類の人工土壌粒子を300ml添加して植物育成培地とした。ラディッシュの種を植物育成培地の表面に播種して上面灌水(1回/日)を行った。比較例1の人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
<試験結果>
実施例1〜3、及び比較例1によるラディシュの育成試験の結果を表1に示す。
Figure 0006209053
実施例1〜3の植物育成培地では、播種したラディシュは、播種後、3日目に発芽し、25日目には、結実して収穫することができた。これに対して、比較例1では、植物育成培地上面の保水性が低いため、発芽が認められなかった。
〔植物育成培地を用いたシュガーパインの挿し木による育成試験〕
実施例4〜6として、第一人工土壌粒子を含む上層と、第二人工土壌粒子を含む下層とから構成される植物育成培地にシュガーパインを挿し木し、シュガーパインの成長を評価した。実施例7及び8として、下層にさらに2つの異なる人工土壌粒子を使用して二層(中層、最下層)としたものを用いた。人工土壌粒子の特性については、「植物育成培地を用いたラディシュの播種による育成試験」の項で述べた(1)〜(6)に示す方法により評価した。シュガーパインの挿し木による育成試験は、挿し木からの発根の有無、及び成体への成長の有無により評価した。
〔実施例4〕
実施例4の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、以下の方法で作製した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔第一人工土壌粒子の作製〕
フィラーとしてゼオライト及びハイドロタルサイトを使用し、アルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムを使用し、多価金属イオン水溶液として5%塩化カルシウム水溶液を使用した。和光純薬工業株式会社製の試薬アルギン酸ナトリウムを水に溶解させて濃度0.5%の水溶液を調製し、アルギン酸ナトリウム0.5%水溶液100重量部に株式会社エコウエル製の人工ゼオライト「琉球ライト600」10重量部、及び和光純薬工業株式会社製の試薬ハイドロタルサイト10重量部を添加して混合した。混合液を5%塩化カルシウム水溶液中に1滴/秒の速度で滴下した。滴下した液滴が粒子状にゲル化した後、粒子状ゲルを回収して十分に水洗し、55℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させた。この人工土壌粒子のサイズは0.1〜1.0mmの範囲となるように調製した。第一人工土壌粒子を、肥料成分である水溶性リン酸肥料、水溶性カリウム肥料、水溶性硝酸肥料の溶液に浸漬して、低濃度の肥料をフィラーに坦持させた。第一人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第一人工土壌粒子100cc当たり40cc
pF値2.3以下の水分の保持時間:36時間
電気伝導度(EC):1.4mS/cm
〔実施例5〕
実施例5の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、実施例1の第一人工土壌粒子(ビニロン短繊維)と、実施例4の第一人工土壌粒子と、を等量混同したものを使用した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔実施例6〕
実施例6の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、以下の方法で作製した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔第一人工土壌粒子の作製〕
見かけの容積で1000ccのビニロン短繊維(長さ0.5mm、繊維径20μm 株式会社クラレ製)に、ゼオライト及びハイドロタルサイトを夫々50g添加して、撹拌混合造粒装置(有限会社G−Labo製)で撹拌、転動させながら、ポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の繊維塊状体を形成した。エマルジョンが含浸した繊維塊状体を60℃のオーブンで乾燥させた後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることによりビニロン短繊維同士を固定化し、第一人工土壌粒子を得た。この第一人工土壌粒子のサイズは1.0〜2.0mmの範囲となるように調製した。第一人工土壌粒子を、肥料成分である水溶性リン酸肥料、水溶性カリウム肥料、水溶性硝酸肥料の溶液に浸漬して、低濃度の肥料をフィラーに坦持させた。第一人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第一人工土壌粒子100cc当たり40cc
pF値2.3以下の水分の保持時間:48時間
電気伝導度(EC):1.2mS/cm
〔実施例7〕
実施例7の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子100mlを添加して最下層とし、その上に第二人工土壌粒子のサイズを変更した人工土壌粒子100mlを添加して中層とし、さらにその上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、実施例6と同じ第一人工土壌粒子を使用した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ方法で作製し、最下層の第二人工土壌粒子のサイズを4.0〜6.0mmの範囲、中層の第二人工土壌粒子のサイズを2.0〜4.0mmの範囲となるように調製した。
〔実施例8〕
実施例8の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子100mlを添加して最下層とし、その上に第二人工土壌粒子のサイズを変更した人工土壌粒子100mlを添加して中層とし、さらにその上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/日)を行った。第一人工土壌粒子は、実施例4と同じ第一人工土壌粒子を使用した。第二人工土壌粒子は、実施例1の第二人工土壌粒子と同じ方法で作製し、最下層の第二人工土壌粒子のサイズを4.0〜6.0mmの範囲、中層の第二人工土壌粒子のサイズを2.0〜4.0mmの範囲となるように調製した。
〔比較例2〕
比較例2の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、実施例4の第一人工土壌粒子と同じ方法で作製し、第一人工土壌粒子のサイズを4.0〜6.0mmの範囲となるように調製した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔比較例3〕
比較例3の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、実施例4と同じ第一人工土壌粒子を使用した。第二人工土壌粒子は、実施例1の第二人工土壌粒子と同じ方法で作製し、第二人工土壌粒子のサイズを0.1〜0.5mmの範囲となるように調製した。第二人工土壌粒子の特性の評価値を以下に示す。
保水量:第二人工土壌粒子100cc当たり45cc
pF値2.3以下の水分の保持時間:60時間
保肥量:第二人工土壌粒子1L当たり320mg(肥料総量)
電気伝導度(EC):1.2mS/cm
〔比較例4〕
比較例4の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、第二人工土壌粒子200mlを添加して下層とし、その上に第一人工土壌粒子100mlを添加して上層とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。第一人工土壌粒子は、実施例4の第一人工土壌粒子と同じ方法で作製し、電気伝導度(EC)を2.0〜3.0mS/cmとなるように調製した。第二人工土壌粒子は、実施例1と同じ第二人工土壌粒子を使用した。
〔比較例5〕
比較例5の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、同じ種類の人工土壌粒子を300ml添加して植物育成培地とした。シュガーパインの挿し木を植物育成培地の表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。人工土壌粒子は、実施例2と同じ第一人工土壌粒子を使用した。
〔比較例6〕
比較例6の植物育成培地は、実施例1と同じ容器に、同じ種類の人工土壌粒子を300ml添加して植物育成培地とした。シュガーパインの挿し木を上層表面に挿して上面灌水(1回/2日)を行った。人工土壌粒子は、実施例1の第二人工土壌粒子と同じ方法で作製し、電気伝導度を4.0〜5.0mS/cmの範囲、サイズを0.5〜1.0mmの範囲となるように調製した。
<試験結果>
実施例4〜8、及び比較例2〜6によるシュガーパインの育成試験の結果を表2に示す。
Figure 0006209053
実施例4〜8の植物育成培地では、挿し木したシュガーパインは、挿し木後、10日目に発根し、順調に成長して、成熟した成体となった。これに対して、比較例2では、発芽することなく、最終的に枯死した。比較例3は、上面灌水により発根したが、植物育成培地の下層の人工土壌粒子のサイズが小さいため、培地の通気性が悪く、根腐れが生じて枯死した。比較例4及び比較例6は、上層の電気伝導度が高いため、挿し木が肥料やけを起こして枯死した。比較例5は、上面灌水により発根したが、成熟した成体となるまで生育することはできなかった。
本発明の人工土壌粒子及び植物育成培地は、植物工場等で行われる植物の栽培に利用可能であるが、その他の用途として、施設園芸用土壌培地、緑化用土壌培地、成型土壌培地、土壌改良剤等にも利用可能である。
1 上層
2 下層
10 繊維塊状体
11 繊維
13 フィラー
14 細孔
50 人工土壌粒子
50a 第一人工土壌粒子
50b(50b,50b) 第二人工土壌粒子
100 植物育成培地
200 植物育成キット

Claims (6)

  1. 複数種の人工土壌粒子を含む植物育成培地であって、
    表面側に所定値以上の保水性を有し、且つ所定値以下のサイズを有する人工土壌粒子を配置し、
    深さ方向に沿って、人工土壌粒子の保水性を連続的又は段階的に小さくし、電気伝導度を連続的又は段階的に大きくし、且つサイズを連続的又は段階的に大きくした傾斜構造を有し、
    保水性が大きく、電気伝導度が小さく、且つサイズが小さい第一人工土壌粒子を含み、植物の発根を促す発根層として機能する上層と、
    前記第一人工土壌粒子より保水性が小さく、電気伝導度が大きく、且つサイズが大きい第二人工土壌粒子を含み、植物の根の成長を促す育成層として機能する下層と、
    を備え、
    前記第一人工土壌粒子は、繊維を集合してなる被覆層を有する繊維塊状体を含み、
    前記第二人工土壌粒子は、細孔を有する複数のフィラーを造粒してなる多孔質体を含む植物育成培地。
  2. 前記上層の保水量は、前記第一人工土壌粒子100cc当たり40cc以上であり、
    前記下層の保水量は、前記第二人工土壌粒子100cc当たり20cc以上40cc未満である請求項1に記載の植物育成培地。
  3. 前記上層は、pF値が2.3以下の範囲で水分を24時間以上保持する請求項1又は2に記載の植物育成培地。
  4. 前記第一人工土壌粒子のサイズは、0.1mm以上2.0mm未満であり、
    前記第二人工土壌粒子のサイズは、2.0mm以上10.0mm以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の植物育成培地。
  5. 前記上層の電気伝導度は、1.5mS/cm未満であり、
    前記下層の電気伝導度は、1.5mS/cm以上10.0mS/cm以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の植物育成培地。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の植物育成培地を用いた植物育成キット。
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