JP2018025038A - 建築物の外壁改修工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既設外壁へのネットの張設施工を実施しなくても、既設外壁を剥がすことなく外壁の改修施工が可能で、かつ変形に対する抵抗力に優れたタイル張りが可能である簡便な外壁改修工法を提供する。【解決手段】建築物の外壁にワッシャーを介してビスを打ち込む工程aと、工程aの後、B型粘度計で、23℃下1rpmの回転数で測定した粘度が1000〜6000Pa・sである下地材料を、該下地材料の内部にビスの頭部が埋め込まれるようにして、外壁上に塗布する工程bと、工程bの後、下地材料が硬化した下地の上に接着剤を塗布する工程cと、工程cの後、接着剤上にタイルを張り付ける工程dと、を有し、下地と、ビス及びワッシャーの表面部との引張り接着強度が0.30N/mm2以上である建築物の外壁改修工法とする。【選択図】図2

Description

本発明は、既設の外壁上にタイル張り施工を施す、建築物の外壁改修工法に関する。
建築物の外壁は経年により劣化して美観が損なわれる。また、外壁材に用いられる材料によっては、構造体からの浮きや剥がれが発生し、美観劣化のみならず、強度低下や雨水等の浸水といった建築物としての基本的機能の低下が問題となる。このような美観劣化、機能低下を修復する目的で、外壁改修工事が行われる。
外壁がラスモルタル等のモルタル仕上げ、又はサイディングボードの貼付け仕上げとなっている場合の改修工事では、劣化した既設のモルタルやサイディングを剥がし、新たにモルタル塗装を行ったり、新しいサイディングボードを張り付けたりする工事が行われることもある。しかし、通常は、外壁全体が劣化しているわけではなく一部のみが劣化している場合がほとんどであり、全面的な塗り替えや張り替え工事は、施工効率、廃材処理、施工コスト等の点でデメリットが大きい。一方、劣化した部分だけの塗り替えや張り替え工事は、手間がかかる割には、既設外壁部分と新設外壁部分との外観状の差が認められ、クリア塗装には不向きで、全面的な有色塗装が必要となる。また、全面タイル張り施工を実施したい場合には、劣化した部分だけの塗り替えや張り替えでは対応できない。
さらには、既設外壁は特に劣化しているわけではないものの、外壁をタイル張りの外観に変更したいとのニーズも存在する。
すなわち、既設外壁の劣化の存否やその程度にかかわらず、簡便かつ低コストで、外壁を美麗で高級感を醸すタイル張りに改修したいとの要望が高まっている。
このような外壁改修に係る市場の要請に対応して、既設の外壁を剥がすことなく、既設外壁の上にタイル張りを施工する工法が提案されている。
特許文献1では、外壁をタイル張りする工法において、外壁にネットを重ね、ワッシャーを介して皿ビスを外壁にねじ込むことによりネットを外壁に留め付け、ネットの上から外壁に接着剤を塗着し、次いでタイル張りする工法が開示されている。特許文献1の特徴は、ワッシャーのビスとの嵌合部をテーパー状とすることにより、ビスの頭部がワッシャーから突出せず、ネット外面からのビスの突出厚みがワッシャーの厚みに抑えられ、それによって施工作業が容易になる点にある。
特許文献2では、既設壁面に外壁材を貼り付ける外壁材の施工方法において、既設壁面にネット材を張設し、その上から下地調整材を塗布し、つづいて、下地調整材に対し接着性に優れた接着剤を塗布した後、接着剤に外壁材を貼り付ける施工方法が開示されている。特許文献2の特徴は、下地調整材に対し接着性に優れた接着剤を塗布することにより、下地調整材上にプライマーの塗布が不要となるため、施工工数を削減することのできる外壁材の施工方法及び外壁を提供できる点にある。
特許文献3では、既存壁面にタイル張り改修を施す壁面の改修方法において、既存壁面に有機系接着剤を塗着した後、硬化させて接着剤による下地を形成し、この下地の上に有機系接着剤によってタイルを張り付ける改修方法が開示されている。特許文献3の特徴は、有機系接着剤系下地を形成した後、下地を固定用金具によって躯体に固定すると共に、下地の上に有色の有機系接着剤によってタイルを張り付けることにより、既存壁面を防水性に優れた美麗なタイル張り壁面に簡単に改修することができる点にある。
特開2005−133493号公報 特開2003−239500号公報 特開2003−56157号公報
しかしながら、特許文献1及び2の施工方法はいずれもネット材を外壁に張設することが必須であるため、簡便な外壁改修工法とは言い難い。また、既設外壁への保持のためにネット材を必要とする下地では、既設外壁への保持力が十分ではなく、またネットがその内部に比較的大きな占有率で存在することによって、粘弾性性状が不均一となり、変形に対する抵抗力が経年によって大きく低下することが懸念される。
特許文献3の施工方法は、下地の上からピンや釘等の固定用金具を打ち込むことにより、下地の既設外壁に対する保持力を補強しているが、塗布された下地材料が硬化して下地を形成するまでの間に下地材料の自重等により、既設外壁との密着が不十分となるおそれがある。また、下地を形成した後では、既設外壁の剥がれ等の不具合部分が不明瞭となるため、有効な固定用金具の打ち込みができず、改修後の外壁の補強が不十分となるおそれがある。
そこで、本発明は、既設外壁へのネットの張設施工を実施しなくても、既設外壁を剥がすことなく外壁の改修施工が可能で、かつ変形に対する抵抗力に優れたタイル張りが可能である簡便な外壁改修工法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の物性を有する下地材料と、該下地材料が硬化した下地の上に塗布する接着剤とを用い、かつ特定の方法でビス打ちをする新規な外壁改修工法を開発し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、建築物の外壁にワッシャーを介してビスを打ち込む工程aと、工程aの後、JIS K 6833に準拠してB型粘度計で、23℃下1rpmの回転数で測定した粘度が1000〜6000Pa・sである下地材料を、該下地材料の内部に前記ビスの頭部が埋め込まれるようにして、外壁上に塗布する工程bと、工程bの後、下地材料が硬化した下地の上に接着剤を塗布する工程cと、工程cの後、該接着剤上にタイルを張り付ける工程dと、を有し、下地と、ビス及びワッシャーの表面部との引張り接着強度が0.30N/mm2以上である、建築物の外壁改修工法が提供される。
好ましくは、外壁はラスモルタル又はサイディングであり、ビスは外壁を介して外壁を保持する柱及び間柱に打ち込まれる建築物の外壁改修工法が提供される。
より好ましくは、ビスの左右方向のビス打ち間隔が150〜600mmであり、ワッシャーの外径が10〜40mmである外壁改修工法が提供される。
本発明の外壁改修工法は、特定の物性を有する下地材料と接着剤を組み合わせ、さらにビス打ちを特定の方法としているので、既設外壁へのネットの張設施工を実施しなくても、既設外壁を剥がすことなく外壁の改修が可能である。さらに、従来の施工方法に比較して簡便な方法で変形に対する抵抗力に優れ、かつ美麗なタイル張りに外観を改修できる。
本発明の一実施形態に係る外壁改修の概略を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る外壁改修施工終了後の、ビス打ち部の左右方向断面図である。 ビス及びワッシャーの表面部及び外周部を説明する概略図である。 本発明の一実施形態に係るビス打ち間隔を示す概略図である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の外壁改修工法を適用できる建築物の外壁は特に制限がなく、ラスモルタル等のモルタル、サイディング、タイル、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネル、及び鉄筋コンクリート等のいずれであってもよい。本発明の効果をより発現できる点において、ラスモルタル又はサイディングで仕上げられている外壁に適用することが好ましい。
本発明の工程aに用いるビス及びワッシャーは、特に限定されるものではなく、建築物の固定用金具として使用されるものであり、ビスとワッシャーが別個の部品となっているものを組み合わせ、ビスをワッシャーのビス貫通孔を通して既設の外壁に打ち込むことができる。あるいは、ワッシャーがビスの頭部に固着されて一体化されているものを使用してもよい。ワッシャーは、図4に示すように平面視円形の物を使用する。
既設の外壁がラスモルタル又はサイディングの場合は、ビスはこれらの外壁の内側に設置されている柱及び/又は間柱の存在部に、これらの柱に到達するように所定の間隔で打ち込むことが好ましい。また、胴縁が設置されている場合は、胴縁存在部に打ち込んでもよい。
工程aでのビス打ちの間隔としては、上下方向、左右方向とも150〜600mmの間隔が好ましく、ワッシャーの外径が10〜40mmであることが好ましい。左右方向のビス打ちは、柱及び/又は間柱の設置間隔に整合させてビス打ちの間隔を設定する。また、外壁全体における、左右方向のビス打ち間隔の平均、上下方向のビス打ち間隔の平均、及びワッシャーの外径との関係が下記式(1)を充足することがより好ましい。ワッシャーの外径に対して、左右方向及び上下方向の平均ビス打ち間隔を、このように設定することで、後述する下地保持効果がより良好となるからである。
π(外径/2)2/(左右間隔×上下間隔)≧3410 (1)
式(1)において、π、外径、左右間隔、及び上下間隔は以下の意味である。
π;円周率
外径;ワッシャーの外径(mm)
左右間隔;左右方向の平均ビス打ち間隔(m)
上下間隔;上下方向の平均ビス打ち間隔(m)
外壁全体としては、均等にバランスの良い間隔でビス打ちすることが好ましい。しかし、既設外壁の形状により適宜ビス打ち間隔を調節してもよく、既設外壁の浮き等の劣化部分が存在する場合には、当該部へのビス打ちを優先することが好ましい。劣化部分の補強に資するからである。
一方、鉄筋コンクリート壁の様に柱や間柱が設置されていない外壁の場合は、150〜600mmの間隔で所望により調節してビス打ちをすればよい。
本発明において、ワッシャーを介してビスを既設外壁に打ち込む主たる目的は、ビス打ち込み後の工程bで形成する下地の効果的な保持、並びに既設外壁の強化及び構造体からの浮き等の劣化部分の補強であり、従来の工法におけるネットの保持ではない。なお、本出願において、下地材料とは下地形成のために既設外壁上に塗布する硬化前の材料、下地とは下地材料が硬化したもの、として区別して表すものとする。
「下地の効果的な保持」とは、既設外壁と形成された下地との間にズレや剥離が生じることなく、長期間に渡って既設外壁からの下地の剥がれを防止することを意味する。この様な効果が得られる理由は、既設外壁に打ち込まれているビス及びワッシャーの表面部と、下地とが0.30N/mm2以上の引張強度で接着していることにより、既設外壁上への下地の接着保持が補強されるからである。これによって、工程dで張り付けられるタイルが、タイル張り部の下地と共に既設外壁から剥落することを長期間防止できる。
以後、このような下地を保持する効果を「下地保持効果」と称する。
ワッシャー外径、及びビス打ち間隔に係る式(1)の要件を充足すること、並びに下地とビス及びワッシャーの表面部との引張り接着強度が0.30N/mm2以上であることの組み合わせにより、下地の自重による歪み、外壁面を構成する材質の異なる他の材料の膨張・収縮による歪、あるいは地震等で起こる建築物の歪などに対する耐性が極めて高くなる。ビス及びワッシャーの表面部とは、ワッシャーを介したビス打ち後の平面図で表される部分である。
本発明の一特徴に関連するビス及びワッシャーの表面部を図3に示す。図4で説明すると、ビス及びワッシャーを示す二重円で示される部分である。
図2、3では、ビスの頭部がワッシャーに嵌合されてワッシャーから突出していない例を示しているが、ビス頭部はワッシャーから突出していてもよい。
工程bは、工程aでビス打ちされた既設外壁上に下地材料を塗布する工程である。下地材料が下地となった時点で、次工程の工程cに移行する。
本発明に用いる下地材料は、JIS K 6833に準拠してB型粘度計で、23℃下1rpmの回転数で測定した粘度が1000〜6000Pa・sである。さらに、下地と、前記ビス及びワッシャーの表面部との引張り接着強度が0.30N/mm2以上である。引張り接着強度は大きいほどよく、特に上限値はないが、性能的に5.0N/mm2程度が上限である。引張り接着強度は、JIS A 5557(6.3.3接着強さ試験方法)に準拠して測定する値である。試験機としては、エー・アンド・デイ社製のTENSIRON RTF−2350を例示できる。
下地材料の粘度、及び下地と、前記ビス及びワッシャーの表面部との引張り接着強度が上記の範囲を満足することにより、上記したように下地が良好な下地保持効果を発揮する。
下地材料の具体例としては、ウレタン樹脂又は変成シリコーン樹脂に、充填材及び硬化剤等を配合した、ウレタン系組成物や、変成シリコーン系組成物を挙げることができる。
工程cは、下地材料硬化後の下地の上に接着剤を塗布する工程である。
接着剤の具体例としては、タイルエースPro(セメダイン株式会社製)等を挙げることができる。
工程dは、工程cで塗布した接着剤の上にタイルを張り付ける工程である。タイルは接着剤塗布後、使用する接着剤に規定される張り付け可能時間以内に張り付ける。
タイルとしては、建築物の外壁用として使用できるもので有れば特に制限はなく、例えば、モザイクタイル、45二丁、小口平、ボーダータイル等を挙げることができる。
本発明において、プライマー及びネットは必須ではないが、これらを使用することを排除するものではなく、所望により使用してもよい。例えば、工程aにおいて、既設外壁にワッシャーを介してビスを打ち込む前や、工程bにおいて、下地材料を塗布する前にプライマーを塗布してもよい。プライマーを塗布することにより、既設外壁と下地等との接着がより強固となることに加え、既設外壁を補強できる利点がある。
また、例えば、工程aにおいて、ビス打ちの前にネットを既設外壁に張設してもよい。本発明の外壁改修工法では優れた下地保持効果を発現し得るので、ネットは特に必要ではなく、施工の簡便さの点からはネットは使用しない方がよい。
次に、本発明に係る建築物の外壁改修工法の一実施形態について図を参照しながら説明する。しかし、本発明は該実施形態に限られるものではない。
(実施形態)
本実施形態では、サイディングの既設外壁に対する外壁改修工法を説明する。図1及び2に改修工法の全体の概略を示す。図1は外壁改修の概略斜視図であり、柱、サイディング、下地等の各構成部の相対関係を示すため各構成部を一部省略している。図2は改修終了後のビス打ち部の左右方向断面図を示している。
サイディングの既設外壁4は、胴縁2を介して柱1及び間柱3に張り付けて設置されている。本実施形態では胴縁2がある例を示したが、胴縁の無い外壁であってもよい。
1.工程a
まず、既設外壁4にワッシャー5を介してビス6を、柱1、間柱3及び胴縁2の存在部に打ち込んだ(図1、2)。本実施形態では、ビス及びワッシャーはすべて同一規格の物を使用した。また、ワッシャーは外径30mmのものを使用した。
ビス打ち間隔は、図4に示すように左右方向、上下方向いずれも455mmとした。
2.工程b
次に、既設外壁上にプライマーを塗布した(図示せず)。
プライマー塗布後、図1、2に示す下地7を形成するための下地材料を5mm厚で塗布した。下地材料は、B型粘度計で、23℃下1rpmの回転数で測定した粘度が2500Pa・sであり、硬化後の下地7の引張り接着強度が1.00N/mm2であるものを使用した。また、下地材料は、図2に示すようにワッシャー5及びビス6が下地材料(下地7)の内部に埋め込まれるように塗布された。
引張り接着強度は、次のようにして作製した試料を用い、下記条件にて測定した。
サイディング材(縦70mm×横70mm×厚さ14mm)上に、下地材を5mm厚で塗布し、直ちにワッシャー(外径30mm×厚さ1mm)を載せ、指で軽く圧締し、下地材に十分に密着させた。その後、23℃50%RH環境下で4週間養生した。
養生後の試料を用いて、JIS A5557(6.3.3接着強さ試験方法)に準拠して試験機(エー・アンド・デイ社製 TENSIRON RTF−2350)を用い、引張速度3mm/minで測定した。
3.工程c
下地材料が硬化して下地7が形成された後、下地7上に、接着剤8を塗布した。
4.工程d
接着剤8塗布後すぐに、タイル9を図2、3に示すように、接着剤8上に張り付けた。
以上の外壁改修工法により、美麗で、変形に対する抵抗力に優れたタイル張りの外壁へ簡便に改修することができた。
1 柱
2 胴縁
3 間柱
4 既設外壁
5 ワッシャー
6 ビス
7 下地(下地材料)
8 接着剤
9 タイル

Claims (4)

  1. 建築物の外壁にワッシャーを介してビスを打ち込む工程aと、
    工程aの後、JIS K 6833に準拠してB型粘度計で、23℃下1rpmの回転数で測定した粘度が1000〜6000Pa・sである下地材料を、該下地材料の内部に前記ビスの頭部が埋め込まれるようにして、前記外壁上に塗布する工程bと、
    工程bの後、前記下地材料が硬化した下地の上に接着剤を塗布する工程cと、
    工程cの後、前記接着剤上にタイルを貼付する工程dと、を有し、
    前記下地と、前記ビス及びワッシャーの表面部との引張り接着強度が0.30N/mm2以上である、
    建築物の外壁改修工法。
  2. 前記外壁はラスモルタル又はサイディングであり、
    前記ビスは、前記外壁を介して前記外壁を保持する柱及び間柱に打ち込まれる、
    請求項1に記載の建築物の外壁改修工法。
  3. 前記ビスの左右方向のビス打ち間隔が150〜600mmであり、
    前記ワッシャーの外径が10〜40mmである、
    請求項1又は2に記載の建築物の外壁改修工法。
  4. 前記下地材料は、ウレタン樹脂又は変成シリコーン樹脂を含有する、
    請求項1〜3いずれか一項に記載の建築物の外壁改修工法。
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