本発明の好ましい一実施形態に係る補強壁の施工方法は、例えば図1及び図2に示すような、補強用制震耐力壁構造10を、例えば軸組工法による既存の木造の建物の壁30に、新たに形成するための方法として採用されたものである。本実施形態では、補強用制震耐力壁構造10は、例えば平成10年度に導入された新しい耐震基準以前の、旧来の耐震基準に基づいて建築された木造の軸組工法による既存の建物として、例えば既存の木造住宅建築物の壁30を、面状部材14を用いて、好ましくは天井材25や天井下地材(図示せず)を残置したまま、且つ既存の筋交い31(図2、図7参照)を取り外さなくても施工できる場合には当該筋交い31を残置したまま、簡易な作業によって効率良く耐震補強して、新しい耐震基準を満たすように効果的に耐震改修できるようにする壁構造となっている。
例えば、平成10年度以前に建築された木造の軸組工法による既存の建物は、壁の骨組み構造を構成する、矩形架構13の上下一対の横架材11a,11bと左右一対の垂直材12a,12bが、一般に105mm、120mm、135mm、又は150mm(本実施形態では105mm)の幅の角材を用いて形成されていて、矩形架構13は、一般に105mm、120mm、135mm、又は150mm(本実施形態では105mm)の狭い奥行きしか有しておらず、また矩形架構13の上部は、天井材25や天井下地材の上方に形成された天井懐部26に配置されていることから、既存の建物の壁30を面状部材14によって補強しようとすると、壁30の壁面材や壁下地材の他、天井材25や天井下地材をも撤去する必要を生じることになる。本実施形態の補強壁の施工方法は、好ましくは上述の補強用制震耐力壁構造10を、既存の建物の壁30に、天井材25及び天井下地材を残置したまま、且つ好ましくは既存の筋交い31を残置したまま、建物の屋内での簡易な作業によって設けることを可能にして、既存の木造の建物の壁30を効果的に耐震改修できるようにするための施工方法として採用されたものである。
また、本実施形態の補強壁の施工方法によって形成される補強用制震耐力壁構造10は、制震ゴム20(図7(a)、(b)参照)を挟み込んだ状態で設けられていることによって、耐力壁として必要な好ましくは短期基準耐力が0.9〜14.0kN/mの壁耐力を確保しつつ、所望の制震性能を発揮できるようになっている。
そして、本実施形態の補強壁の施工方法は、既存の木造の建物の壁の骨組として形成された、上下一対の横架材11a,11bと左右一対の垂直材12a,12bとからなる矩形架構13の内側に、面状部材14を取り付けて建物を耐震補強する補強壁の施工方法であって、天井材25よりも下方の部分の壁30の表面側の壁面材、及び壁下地材を撤去して、天井材25及び天井下地材を残したまま施工されるようになっている。面状部材14は、図1に示すように、左右一対の垂直材12a,12bと上下一対の横架材11a,11bとによって囲まれる矩形架構13の内側領域に取り付けられる、矩形架構13の内側領域の横幅と同様の横幅を有する、上下方向に分割された少なくとも2段(本実施形態では2段)の分割面状部材14e,14fからなっている。本実施形態の補強壁の施工方法は、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、分割面状部材14e、14fの側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分を当接させるための、中間部受け材19を取り付ける工程と、最上段(上段)の分割面状部材14eを、両側の側辺部16a,16bの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構13の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の側辺部16a,16bを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、上辺部17a,17bを縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する工程と、最下段(下段)の分割面状部材14fを、両側の側辺部16c,16dの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構13の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の側辺部16c,16dを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、下辺部17c,17dを縁部接合金物22を用いて下方の横架材11bの内側面(上面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する工程と、上下方向に隣接する上段側の分割面状部材14eの下辺部18a,18bと、下段側の分割面状部材14fの上辺部18c,18dとを、中間部接合金物23を介して接合固定する工程とを含んでいる。
また、本実施形態の補強壁の施工方法では、上段の分割面状部材14eは、矩形架構13の内側領域の横幅方向の中央部分で2分割された、左右一対の単位面状部材14a,14bを含んでおり、左右一対の単位面状部材14a,14bは、矩形架構13の内側領域に固定されるのに先立って、対向配置される中央側の側辺部15a,15b同士が制震ゴム20を挟み込んで互いに接合されることで、上段の分割面状部材14eを形成している。同様に、下段の分割面状部材14fは、矩形架構13の内側領域の横幅方向の中央部分で2分割された、左右一対の単位面状部材14c,14dを含んでおり、左右一対の単位面状部材14c,14dは、矩形架構13の内側領域に固定されるのに先立って、対向配置される中央側の側辺部15c,15d同士が制震ゴム20を挟み込んで互いに接合されることで、下段の分割面状部材14fを形成している。
本実施形態では、補強壁の施工方法によって、図1及び図2に示すような補強用制震耐力壁構造10が形成されるようになっており、補強用制震耐力壁構造10は、軸組工法による既存の木造の建物の壁部分の骨組として形成された、上下一対の横架材11a,11bと左右一対の垂直材12a,12bとからなる矩形架構13の内側に、面状部材14を取り付けて建物を補強する補強用の壁構造となっている。
図1、図2、及び図4(a)、(b)に示すように、面状部材14は、矩形架構13の内側の開口形状を縦方向分割線及び横方向分割線によって4分割した形状に近似する、略縦長矩形形状を備える左右一対及び上下2段の4枚の単位面状部材14a,14b,14c,14dからなり、上段の左右一対の単位面状部材14a,14bは、上述のように、対向配置される中央側の側辺部15a,15b同士が制震ゴム20(図7(a)、(b)参照)を挟み込んで互いに接合されることで、上段の分割面状部材14eを形成すると共に、外側の側辺部16a,16bが縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定され、且つ上辺部17a,17bが縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合固定された状態で、矩形架構13の内側の上半部分に取り付けられている。
下段の左右一対の単位面状部材14c,14dは、上述のように、対向配置される中央側の側辺部15c,15d同士が制震ゴム20(図7(a)、(b)参照)を挟み込んで互いに接合されることで、上段の分割面状部材14eを形成すると共に、外側の側辺部16c,16dが縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定され、且つ下辺部17c,17dが縁部接合金物22を用いて下方の横架材11bの内側面(上面)に接合固定された状態で、矩形架構13の内側の下半部分に取り付けられている。上段の左右一対の単位面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の左右一対の単位面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとが、中間部接合金物23を介して、好ましくは突き合わされた状態で接合固定されている。
また、本実施形態では、単位面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置される中央側の側辺部15a,15b,15c,15dに接合補強金物21が各々取り付けられており、これらの接合部補強金物21の間に制震ゴム20が挟み込まれている(図2参照)。
本実施形態では、建物の壁部分の骨組である矩形架構13を構成する上下一対の横架材11a,11bは、土台や梁の他、下枠、上枠、頭繋等を含むものであり、例えば木製の角材を用いて設置される。上方横架材11a及び下方横架材11bは、例えば1800〜3500mm程度の高さ方向の中心間間隔をおいて横方向に平行に延設することにより、矩形架構13の上下の短辺部分を形成している。
なお、本実施形態では、左右一対の垂直材12a,12bの端部の上下の横架材11a,11bへの接合は、例えば短ほぞ差しによって行われると共に、適宜引寄せ金物等を用いて、接合部分の固定状態が補強されている。また、本実施形態では、矩形架構13の内側領域に、補強用の1本の既存の筋交い31が、矩形架構13の上端部分の一方の角部から下端部分の他方の角部に向けて対角線方向に斜めに架設されて(図3参照)、取り付けられている。筋交い31は、本実施形態では、矩形架構13の背面側に片寄せて取り付けられており(図2参照)、これによって既存の筋交い31を矩形架構13の内側領域に残置したまま、筋交い31よりも表面側の部分において、補強用制震耐力壁構造10を形成できるようになっている。
矩形架構13の内側に取り付けられる面状部材14は、本実施形態では、好ましくは例えば厚さが24mm程度のスギ材からなる構造用合板を用いて形成されており、矩形架構13の内側の開口形状を縦方向分割線及び横方向分割線によって4分割した形状に近似する、略縦長矩形形状を備える、左右一対及び上下2段の4枚の単位面状部材14a,14b,14c,14dを、組み合わせることによって構成されている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の上段左側に配置される、上段の分割面状部材14eを構成する単位面状部材14aは、図4(a)にも示すように、対向配置される中央側の側辺部15aにおける、上下方向の中間部分を除いたこれの上方部分及び下方部分が縦長に切り欠かれていると共に、外側の側辺部16aにおける上下方向の上半部分が縦長に切り欠かれており、且つ上辺部17aにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の上段右側に配置される、上段の分割面状部材14eを構成する単位面状部材14bは、図4(a)にも示すように、対向配置される中央側の側辺部15bにおける、上下方向の中間部分を除いたこれの上方部分及び下方部分が縦長に切り欠かれていると共に、外側の側辺部16bにおける上下方向の上半部分が縦長に切り欠かれており、且つ上辺部17bにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の下段左側に配置される、下段の分割面状部材14fを構成する単位面状部材14cは、図4(a)にも示すように、対向配置される中央側の側辺部15cにおける、上下方向の上方部分が縦長に切り欠かれていると共に、外側の側辺部16cにおける上下方向の下半部分が縦長に切り欠かれており、且つ下辺部17cにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の下段右側に配置される、下段の分割面状部材14fを構成する単位面状部材14dは、図4(a)にも示すように、対向配置される中央側の側辺部15dにおける、上下方向の上方部分が縦長に切り欠かれていると共に、外側の側辺部16dにおける上下方向の下半部分が縦長に切り欠かれており、且つ下辺部17dにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
4枚の単位面状部材14a,14b,14c,14dは、これらの部材の外側の側辺部16a,16b,16c,16dを、縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定すると共に、上辺部17a,17bや下辺部17c,17dを、上方の横架材11aの内側面(下面)や、下方の横架材11bの内側面(上面)に接合固定し、さらに、対向配置された上段の中央側の側辺部15a,15b同士、及び下段の中央側の側辺部15c,15d同士を、好ましくは接合補強金物21を介在させて、制震ゴム20を挟み込んだ状態で接合すると共に、上段の単位面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の単位面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを、中間部接合金物23を用いて好ましくは突き合わせた状態で接合固定することによって、これらが一体となった面状部材14として、矩形架構13の内側に取り付けられることになる。
ここで、単位面状部材14a,14b,14c,14dを、垂直材12a,12bの内側面や横架材11bの内側面に接合固定する縁部接合金物22は、図5(a)、(b)に示すように、例えば1mm程度の厚さの金属プレートに、L字断面形状を備えるように折曲げ加工を施すと共に、孔開け加工を施したものを、好ましく用いることができる。これによって縁部接合金物22は、L字断面形状部分を有することになる。本実施形態では、このような縁部接合金物22として、より具体的には、例えば商品名「背割りコーナー」(カネシン製)を、好ましく用いることができる。
本実施形態では、縁部接合金物22は、L字断面形状部分の長辺部22a及び短辺部22bの各々に、例えば固定ビスを打ち込むための複数の打込み孔22cが開口形成されている。図1及び図2に示すように、縁部接合金物22の長辺部22aを、単位面状部材14a,14b,14c,14dの外側の側辺部16a,16b,16c,16dや上辺部17a,17bや下辺部17c,17dの表面に沿わせると共に、短辺部22bを、垂直材12a,12bの内側面や横架材11a,11bの内側面に沿わせた状態で、打込み孔22cを介して、単位面状部材14a,14b,14c,14dや垂直材12a,12bや横架材11bに向けて、固定ビス等を打ち込むことにより、分割面状部材14a,14b,14c,14dを、垂直材12a,12bの内側面や横架材11bの内側面に接合固定できるようになっている。
本実施形態では、縁部接合金物22は、上段の単位面状部材14a,14bの外側の側辺部16a,16bに各々5箇所に配置され、下段の単位面状部材14c,14dの外側の側辺部16c,16dに各々5箇所に配置され、且つ上段の単位面状部材14a,14bの外側の側辺部16a,16bと下段の単位面状部材14c,14dの外側の側辺部16c,16dとの境目部分に、上段の単位面状部材14a,14bと下段の単位面状部材14c,14dとに跨るようにして、各々1箇所に配置された状態で、取り付けられている。また、縁部接合金物22は、上段の単位面状部材14a,14bの上辺部17a,17bに各々2箇所に配置され、下段の単位面状部材14c,14dの下辺部17c,17dに各々2箇所に配置された状態で、取り付けられている。
上段の分割面状部材14eを構成する単位面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の分割面状部材14fを構成する単位面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを接合固定する中間部接合金物23は、図6(a)、(b)に示すように、例えば0.6mm程度の厚さの、略縦長矩形形状を有する平板形状の金属プレートからなり、中央の分割線23dを挟んだ両側部分23a,23bに、例えば固定ビスを打ち込むための複数の打込み孔23cが、各々開口形成されている。また、中間部接合金物23には、分割線23dから片側に凹形状の切込みを形成すると共に、切込みの内側部分を垂直に折り立たせることによって、係止爪23eが設けられている。本実施形態では、このような中間部接合金物23として、より具体的には、例えば商品名「フィックステンプレ−ト」(カネシン製)を、好ましく用いることができる。
本実施形態では、中間部接合金物23は、矩形架構13の内側に4枚の単位面状部材14a,14b,14c,14dが取り付けられた後に、好ましくは突き合わされた状態の上段の単位面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと下段の単位面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとの境目部分に係止爪23eを差し込むようにしながら、単位面状部材14a,14b,14c,14dの表面側に、上段の単位面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと下段の単位面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとに跨るようにして取り付けられる。しかる後に、打込み孔23cを介して、単位面状部材14a,14b,14c,14dの下辺部18a,18bや上辺部18c,18dに向けて、固定ビス等を打ち込むことにより、上段の単位面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の単位面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを、好ましくは突き合わせた状態で、当該中間部接合金物23を介して接合固定できるようになっている。
単位面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置される中央側の側辺部15a,15b,15c,15dに各々取り付けられる接合補強金物21は、単位面状部材14a,14b,14c,14dの中央側の側辺部15a,15b,15c,15dを挟んで、これの表裏の両側に一対の補強枠材27が添設された部分となっている(図1、図2参照)、当該接合補強金物21の取付け部位の外周形状に沿った、コの字断面形状を備えるように折り曲げ加工されると共に、例えば300mm程度の長さを有するように形成されている。接合補強金物21は、図7(a)、(b)に示すように、前面板21a及び一対の側面板21bからなるコの字断面形状を備えており、一対の側面板21bには、複数のビス孔21cが穿孔形成されている。これらのビス孔21cを介して、補強枠材27に向けて固定ビスを打ち込むことにより、コの字断面形状の接合補強金物22を、補強枠材27を介在させた状態で、分割面状部材14a,14b,14c,14dの一方の側辺部15a,15b,15c,15dに、強固に固定できるようになっている。
本実施形態では、接合補強金物21は、一対の当該接合補強金物21の前面板21aの間に、例えば5mm程度の厚さの制震ゴム20を挟み込んだ状態で予め一体化された、制震ゴムユニット24を形成している。制震ゴムユニット24は、単位面状部材14a,14b,14c,14dの中央側の側辺部15a,15b,15c,15dの表裏の両側に、一対の補強枠材27が添設された接合補強金物21の取付け部位において、両側の各々の接合補強金物21を、単位面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置された両側の一対の中央側の側辺部15a,15b,15c,15dに各々固定することによって、単位面状部材14a,14b,14c,14dに取り付けられる。これによって、図1及び図4(a)に示すように、上段の左右一対の単位面状部材14a,14bの対向配置された中央側の側辺部15a,15b同士を、制震ゴム20を挟み込んだ状態で互いに接合すると共に、下段の左右一対の単位面状部材14c,14dの対向配置された中央側の側辺部15c,15d同士を、制震ゴム20を挟み込んで互いに接合することがきるようになっている。またこれによって、左右一対の単位面状部材14a,14bが制震ゴムユニット24を介して接合一体化された上段の分割面状部材14eや、左右一対の単位面状部材14c,14dが制震ゴムユニット24を介して接合一体化された下段の分割面状部材14fを形成することが可能になる。
単位面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置された中央側の側辺部15a,15b,15c,15dの間に挟み込まれる制震ゴム20は、制震ゴムとしてとして知られる種々のゴム材料を用いて形成することができる。制震ゴム20は、好ましくは特開2009−84876号公報に記載されるような、振幅が増加しても、剛性の増加が頭打ちになる性質を備えるものを用いることができる。
また、本実施形態では、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、中間部受け材19(図3(a)参照)が取り付けられており、この中間部受け材19に、単位面状部材14a,14b,14c,14dの外側の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分が密着した状態となっている(図2参照)。
中間部受け材19は、例えば75mm×45mmの木製角材からなり、図1及び図4(a)、(b)に示すように、単位面状部材14a,14b,14c,14dの外側の側辺部16a,16b,16c,16dにおける、切り欠かれた上半部分又は下半部分を除いた、切り欠かれていない下半部分又は上半部分の長さの略2倍の長さを有している。中間部受け材19は、一対の垂直材12a,12bの内側面に縁部接合金物22を用いて接合固定される、外側の側辺部16a,16b,16c,16dの切り欠かれていない下半部分又は上半部分が配置される部分となる、垂直材12a,12bの中間部分において、例えば固定ねじ19aを、矩形架構13の内側から、一対の垂直材12a,12bに向けて複数本ねじ込むことによって、垂直材12a,12bの内側面に強固に固定されている。
中間部部受け材19には、本実施形態の補強壁の施工方法において、矩形架構13の内側領域に上段の分割面状部材14eや下段の分割面状部材14fが固定される際に、上段の単位面状部材14a,14bや下段の単位面状部材14c,14dの外側の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分が当接して、矩形架構13の奥行き方向の位置が位置決めされる結果、分割面状部材14a,14b,14c,14dの外側の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分が、密着した状態となっている(図2参照)。
本実施形態では、上述の構成を備える補強用制震耐力壁構造10は、図3(a)〜(d)に示すように、本実施形態の補強壁の施工方法によって、好ましくは屋内での作業により、天井材25及び天井下地材に加えて、好ましくは筋交い31を残置したまま、例えば軸組工法による既存の木造住宅建築物の壁30に形成されて、既存の木造住宅建築物を耐震補強することができる。
すなわち、本実施形態の補強壁の施工方法は、上述のように、中間部受け材19を取り付ける工程と、最上段(上段)の分割面状部材14eを矩形架構13の内側領域に固定する工程と、最下段(下段)の分割面状部材14fを矩形架構13の内側領域に固定する工程と、上段側の分割面状部材14eの下辺部18a,18bと、下段側の分割面状部材14fの上辺部18c,18dとを、接合固定する工程とを含んでいる。
また、本実施形態では、上述のように、上段及び下段の分割面状部材14e,14fは、矩形架構13の内側領域の横幅方向の中央部分で2分割された、左右一対の単位面状部材14a,14bや、左右一対の単位面状部材14c,14dからなっているで、分割面状部材14e,14fを矩形架構13の内側領域に固定する工程に先立って、左右一対の単位面状部材14a,14bや、左右一対の単位面状部材14c,14dは、上述の制震ゴムユニット24を用いて、制震ゴム20を挟み込んだ状態で互いに接合されることで、これらが一体となった分割面状部材14e,14fを予め形成することになる。
本実施形態の補強壁の施工方法は、天井材25よりも下方の部分の壁30の表面側の壁面材、及び壁下地材を撤去して、天井材25及び天井下地材を残置したまま施工できるようになっており、壁30の表面側の壁面材、及び壁下地材を撤去したら、中間部受け材19を取り付ける工程として、図3(a)に示すように、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、分割面状部材14e,14fの外側の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分を当接させるための、中間部受け材19を取り付ける。中間部受け材19は、一対の垂直材12a,12bの内側面に縁部接合金物22を用いて接合固定される、分割面状部材14e,14fの外側の側辺部16a,16b,16c,16dの切り欠かれていない下半部分又は上半部分が配置される部分となる中間部分に、例えば固定ねじ19aを、矩形架構13の内側から、一対の垂直材12a,12bに向けて複数本ねじ込むことによって、垂直材12a,12bの内側面に強固に固定することができる。
中間部受け材19を取り付けたら、最上段(上段)の分割面状部材14eを固定する工程として、図3(b)に示すように、制震ゴムユニット24及び補強枠材27を介在させて接合一体化された、矩形架構13の内側領域の横幅と同様の横幅を有する、上段の一対の単位面状部材14a,14bからなる分割面状部材14eを、両側の外側の側辺部16a,16bの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構13の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の外側の側辺部16a,16bを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、上辺部17a,17bを縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する。
最上段(上段)の分割面状部材14eを固定したら、最下段(下段)の分割面状部材14fを固定する工程として、図3(c)に示すように、制震ゴムユニット24及び補強枠材27を介在させて接合一体化された、矩形架構13の内側領域の横幅と同様の横幅を有する、下段の一対の単位面状部材14c,14dからなる分割面状部材14fを、両側の外側の側辺部16c,16dの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構13の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の外側の側辺部16c,16dを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、下辺部17c,17dを縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する。
最上段(上段)の分割面状部材14eを固定したら、さらに、上下方向に隣接する上段側の分割面状部材14eの単位面状部材14a,14bによる下辺部18a,18bと、下段側の分割面状部材14fの単位面状部材14c,14dによる上辺部18c,18dとを、中間部接合金物23を介して、好ましくは突き合わせた状態で接合固定することによって、補強用制震耐力壁構造10を形成することができる。
ここで、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの対向配置された一方の側辺部15a,15bと、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの対向配置された一方の側辺部15c,15dは、制震ゴムユニット24の接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられる部分を除いて、縦長に切り欠かれており、これによって上段の分割面状部材14a,14bの接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられる部分と、下段の分割面状部材14c,14dの接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられる部分との間には、間隔が保持されている(図7(c),(d)参照)。この間隔部分に既存の筋交い31を通すことで、当該接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられた部分が相当の厚さを有していても、既存の筋交い31と干渉させることなく、上段の分割面状部材14a,14bや下段の分割面状部材14c,14dを取り付けることが可能になる。
また、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの他方の側辺部16a,16bの上半部分と、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの他方の側辺部16c,16dの下半部分とが縦長に切り欠かれており、これによって上段の分割面状部材14a,14bの、上方の横架材11aと垂直材12a,12bとの角部分や、下段の分割面状部材14c,14dの、下方の横架材11bと垂直材12a,12bとの角部分には、垂直材12a,12bの内側面に沿って縦長の間隔部分が形成されている(図7(c),(d)参照)。これによって、上方の横架材11aと垂直材12a,12bとの角部分や、下方の横架材11bと垂直材12a,12bとの角部分に、引き寄せ金物等の接合金物が配置されている場合でも、これらの接合金物と干渉させることなく、上段の分割面状部材14a,14bや下段の分割面状部材14c,14dを取り付けることが可能になる。
補強用制震耐力壁構造10を形成したら、補強用制震耐力壁構造10が設けられた壁30の、壁面材及び壁下地材が撤去された表面側を覆って、石膏ボード等からなる表面側の壁下地材を取り付けると共に、壁仕上げ用の壁面材を取り付け、さらに、必要に応じて取り外した床板下地材や床面材を取り付け直すことによって、既存の木造住宅建築物の壁30を耐震補強する作業を終了する。
そして、上述の構成を備える本実施形態の補強壁の施工方法によれば、天井材25や天井下地材を残置したまま、簡易な作業によって、既存の木造の建物の壁30を、面状部材14を用いて効果的に耐震補強することが可能になる。
すなわち、本実施形態の補強壁の施工方法は、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、分割面状部材14e、14fの側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分を当接させるための、中間部受け材19を取り付ける工程と、最上段(上段)の分割面状部材14eを、両側の側辺部16a,16bの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構13の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の側辺部16a,16bを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、上辺部17a,17bを縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する工程と、最下段(下段)の分割面状部材14fを、両側の側辺部16c,16dの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構13の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の側辺部16c,16dを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、下辺部17c,17dを縁部接合金物22を用いて下方の横架材11bの内側面(上面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する工程と、上下方向に隣接する上段側の分割面状部材14eの下辺部18a,18bと、下段側の分割面状部材14fの上辺部18c,18dとを、中間部接合金物23を介して接合固定する工程とを含んで構成されている。
これによって、本実施形態によれば、上段の一対の分割面状部材14eを、矩形架構13の内側領域に固定する際に、上辺部17a,17bに縁部接合金物22が取り付けられた分割面状部材14eの上端部を天井懐部26に差し込んで、上辺部17a,17bを、縁部接合金物22の短辺部22bと共に上方の横架材11aの内側面に当接させた状態で、短辺部22bの打込み孔22cに固定ビス等を打ち込むことにより、分割面状部材14a,14bを横架材11abの内側面に接合固定するので、天井材や天井下地材を残置したまま、簡易な作業によって、上段の分割面状部材14eを矩形架構13の内側領域に容易に固定することが可能になる。
ここで、上段の分割面状部材14eの上辺部17a,17bに取り付けられた縁部接合金物22の、短辺部22bに設けられた打込み孔22cに固定ビス等を打ち込む作業は、天井懐部26における、狭い空間での作業になるが、例えばL型ビットや長ビットを使用したビス打込み装置を用いることによって、このような幅の狭い空間において、上方の横架材11aの内側面に向けて、縁部接合金物22の短辺部22bの打込み孔22cに固定ビス等を打ち込む作業を、容易に行うことが可能になる。
また、本実施形態によれば、面状部材14は、上段の分割面状部材14eを構成する一対の分割面状部材14a,14bや、下段の分割面状部材14fを構成する一対の分割面状部材14c,14dの間に、制震ゴム20を挟み込むと共に、これらの他方の側辺部16a,16b,16c,16dや上辺部17a,17bや下辺部17c,17dを、縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面や上方の横架材11aや下方の横架材11bに接合固定した状態で、矩形架構13の内側領域の略全体に取り付けられているので、特開2009−84876号公報に記載の制震耐力壁構造と同様の機能を発揮して、好ましくは短期基準耐力が0.9〜14.0kN/mの壁耐力を確保しつつ、所望の制震性能を発揮できるように、既存の木造の建物の壁30を、効果的に耐震補強することが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、面状部材は、矩形架構の内側領域を上下方向に分割した2段の分割面状部材からなるものである必要は必ずしもなく、3段以上に分割されたものであっても良い。3段以上に分割されたものである場合、本発明の補強壁の施工方法は、最上段の分割面状部材と、最下段の分割面状部材との間に、1又は2以上の中間部分の分割面状部材を、両側の側辺部の背面側縁部分を中間部受け材に当接させることで、矩形架構の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の側辺部を縁部接合金物を用いて垂直材の内側面に接合することにより、矩形架構の内側領域に固定する工程を含むように構成することができる。
また、分割面状部材は、対向配置される一方の側辺部同士が制震ゴムを挟み込んで互いに接合されることで、当該分割面状部材を形成する、左右一対の単位面状部材からなるものである必要は必ずしもなく、一枚の面状部材からなるものであっても良い。さらに、単位面状部材の対向配置される一方の側辺部に、制震ゴムを挟み込む接合補強金物や制震ゴムユニットを取り付けて、分割面状部材を形成する必要は必ずしもない。