上記構造によると、ワンタッチ操作で簡単にグリル皿を繰り出し位置へ移動させることができるので、手動でグリル皿を引出す必要がなく便利である。
しかしながら、例えば、グリル調理が終了した後、あるいは、グリル調理の途中で調理具合を見るためにグリル皿を繰り出す際、等において、グリル庫で加熱されて熱くなったグリル皿が、繰り出し位置へ移動して使用者に接触する虞があった。
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、使い勝手を損なうことなく、使用者が、熱くなったグリル皿等に接触するのを抑制することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
(1)本発明に係るグリル付き加熱調理器は、前面に開口部を有するグリル庫を備え、被加熱物が載置される被加熱物載置部が、前記開口部を介して出し入れされるグリル付き加熱調理器であって、
前記被加熱物載置部を、前記グリル庫内に収納した収納位置と、該収納位置から前記開口部を介して前方へ送り出した送出し位置との間で前後方向に移動させる駆動部と、前記被加熱物載置部を、前記送出し位置へ前進させるために操作されると共に、前記収納位置へ後退させるために操作される操作部と、前記グリル庫の温度を検知する温度検知部と、前記操作部の操作及び前記温度検知部によって検知される検知温度に基づいて、前記駆動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記駆動部による前記被加熱物載置部の前記移動の速度を、前記検知温度に基づいて、前記検知温度が高いときは、前記検知温度が低いときに比べて、低速にする。
本発明によると、例えば、グリル調理が終了した後、調理した被加熱物を取り出すため、あるいは、グリル調理中に調理具合を見るために被加熱物載置部を送出し位置へ前進移動させる場合、もしくは、調理具合を見た後、再び被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、温度検知部によるグリル庫の検知温度が高いので、被加熱物載置部も高温であるとして、被加熱載置部を、低速で前進移動あるいは後退移動させる。このようにグリル調理終了後、あるいは、グリル調理途中のようにグリル庫の検知温度が高いときには、グリル庫で加熱された被加熱物載置部は、低速で移動するので、使用者は、手や身体を被加熱物載置部の移動経路から離す余裕があり、高温の被加熱物載置部に接触するのを抑制することができる。
また、例えば、グリル調理前に被加熱物載置部を、送出し位置へ前進移動させて食材を装填し、その後、被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、グリル庫の検知温度は低いので、被加熱物載置部の前進移動及び後退移動が高速で行われることになり、速やかに調理を開始することができる。また、被加熱物載置部の前進移動中または後退移動中に、万一、被加熱物載置部に接触するようなことがあっても、グリル調理前で被加熱物載置部は熱くなっていないので、不具合は生じない。
(2)本発明に係るグリル付き加熱調理器は、前面に開口部を有するグリル庫を備え、被加熱物が載置される被加熱物載置部が、前記開口部を介して出し入れされるグリル付き加熱調理器であって、
前記被加熱物載置部を、前記グリル庫内に収納した収納位置と、該収納位置から前記開口部を介して前方へ送り出した送出し位置との間で前後方向に移動させる駆動部と、前記被加熱物載置部を、前記送出し位置へ前進させるために操作されると共に、前記収納位置へ後退させるために操作される操作部と、前記グリル庫の温度を検知する温度検知部と、前記操作部の操作及び前記温度検知部によって検知される検知温度に基づいて、前記駆動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記操作部が操作されてから、前記駆動部によって前記被加熱物載置部が前記移動を開始するまでの遅延時間を、前記検知温度に基づいて、前記検知温度が高いときは、前記検知温度が低いときに比べて、長くする。
本発明によると、例えば、グリル調理が終了した後、調理した被加熱物を取り出すため、あるいは、グリル調理中に調理具合を見るために被加熱物載置部を送出し位置へ前進移動させる場合、もしくは、調理具合を見た後、再び被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、温度検知部によるグリル庫の検知温度が高いので、被加熱物載置部も高温であるとして、被加熱物載置部を前進移動あるいは後退移動させるために操作部を操作した後、長い遅延時間をもって前進移動あるいは後退移動が開始される。このようにグリル調理終了後、あるいは、グリル調理途中のようにグリル庫の検知温度が高いときには、グリル庫で加熱された被加熱物載置部は、操作部による操作から移動開始までの遅延時間が長いので、使用者は、手や身体を被加熱物載置部の移動経路から離す余裕があり、高温の被加熱物載置部に接触するのを抑制することができる。
また、例えば、グリル調理前に被加熱物載置部を、送出し位置へ前進移動させて食材を装填し、その後、被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、グリル庫の検知温度は低いので、操作部を操作した後、短い遅延時間をもって被加熱物載置部の前進移動及び後退移動が開始されることになり、速やかに調理を開始することができる。また、被加熱物載置部の前進移動中または後退移動中に、万一、被加熱物載置部に接触するようなことがあっても、グリル調理前で被加熱物載置部は熱くなっていないので、不具合は生じない。
(3)本発明の好ましい実施態様では、上記(1)の発明において、前記制御部は、前記駆動部による前記被加熱物載置部の前記移動の速度を、前記検知温度が所定温度以上と高いときは、前記検知温度が前記所定温度未満と低いときに比べて、低速にする。
この実施態様によると、温度検知部によるグリル庫の検知温度が所定温度以上の高温であるときには、前記検知温度が前記所定温度未満の低温であるときに比べて、被加熱物載置部の移動の速度を低速にするので、例えば、グリル調理が終了した後、調理した被加熱物を取り出すため、あるいは、グリル調理中に調理具合を見るために被加熱物載置部を送出し位置へ前進移動させる場合、もしくは、調理具合を見た後、再び被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、グリル庫の検知温度が高く、所定温度以上であるときには、被加熱物載置部も高温であるとして、被加熱載置部を、低速で前進移動あるいは後退移動させる。また、グリル調理前に被加熱物載置部を、送出し位置へ前進移動させて食材を装填し、その後、被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、グリル庫の検知温度が、低く、所定温度未満であるときには、被加熱物載置部の移動が高速で行われる。
(4)本発明の好ましい実施態様では、上記(2)の発明において、前記制御部は、前記操作部が操作されてから、前記駆動部によって前記被加熱物載置部が前記移動を開始するまでの遅延時間を、前記検知温度が所定温度以上と高いときは、前記検知温度が前記所定温度未満と低いときに比べて、長くする。
この実施態様によると、温度検知部によるグリル庫の検知温度が所定温度以上の高温であるときには、前記検知温度が前記所定温度未満の低温であるときに比べて、操作部の操作がされてから、被加熱物載置部が前進移動または後退移動を開始するまでの遅延時間を長くするので、例えば、グリル調理が終了した後、調理した被加熱物を取り出すため、あるいは、グリル調理中に調理具合を見るために被加熱物載置部を送出し位置へ前進移動させる場合、もしくは、調理具合を見た後、再び被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、グリル庫の検知温度が高く、所定温度以上であるときには、被加熱物載置部も高温であるとして、被加熱物載置部を前進移動あるいは後退移動させるために操作部を操作した後、長い遅延時間をもって前進移動あるいは後退移動が開始される。また、グリル調理前に被加熱物載置部を、送出し位置へ前進移動させて食材を装填し、その後、被加熱物載置部を収納位置へ後退移動させる場合には、グリル庫の検知温度が低く、所定温度未満であるときには、操作部を操作した後、短い遅延時間をもって速やかに被加熱物載置部の前進移動及び後退移動が開始される。
(5)本発明の他の実施態様では、前記制御部によって制御されると共に、前記駆動部による前記被加熱物載置部の前記移動を報知する報知部を備え、前記制御部は、前記検知温度が高いときの前記報知部による報知の態様と、前記検知温度が低いときの前記報知部による報知の態様とを、異ならせる。
この実施態様によると、被加熱物載置部を前進移動または後退移動させるために、操作部を操作すると、温度検知部によるグリル庫の検知温度に対応して異なった態様で報知がなされることになり、使用者は、移動する被加熱物載置部が、高温であるか否かを認識することができ、高温の被加熱物載置部への接触を回避することが容易となる。
(6)本発明の更に他の実施態様では、前記報知部による報知が、音声による報知である。
この実施態様によると、報知内容を瞬時に理解することができ、状況把握が迅速かつ的確なものとなり、高温の被加熱物載置部への接触を回避することが一層容易となる。
(7)本発明の他の実施態様では、前記被加熱物載置部を支持して前記被加熱物載置部と共に前後方向に移動する支持体を備え、前記支持部材には、グリル扉が、前記被加熱物静置部よりも前方位置に設けられ、前記グリル扉は、前記被加熱物載置部が、前記収納位置にあるときには、前記グリル庫の前記開口部を閉止し、前記被加熱物載置部が、前記送出し位置にあるときには、前記グリル庫の前記開口部を開放するものである。
この実施態様によると、被加熱物載置部を支持して該被加熱物載置部と共に前後方向に移動する支持体には、その前方位置にグリル扉が設けられており、被加熱物載置部が収納位置と送出し位置との間で前後方向に移動することによって、グリル扉は、グリル庫の前面の開口部を、自動的に閉止あるいは開放するので、使い勝手が良い。しかも、支持体に設けられたグリル扉は、被加熱物載置部と共に一体に移動するので、グリル庫の検知温度に応じて、その移動速度や移動開始までの遅延時間が制御されることになり、自動で開閉する高温のグリル扉に使用者が触れるのを抑制することができる。
(8)本発明の更に他の実施態様では、前記駆動部は、前後方向に延びる駆動軸を有し、前記駆動軸は、前記収納位置にある前記被加熱物載置部の下方に配設されており、前記駆動軸の上方を覆うカバーを備える。
この実施態様によると、グリル調理中に収納位置にある被加熱物載置部から漏れ落ちてきた油や汁が駆動軸に付着して固化することを防止して、長期に亘って駆動部を適正に作動させることができる。
本発明によれは、操作部の操作によって、被加熱物載置部を、グリル庫内に収納した収納位置と、前方へ送り出した送出し位置との間で、移動させることができるので、手動で被加熱物載置部を出し入れする必要がなく、便利である。
しかも、被加熱物載置部の移動の速度、あるいは、被加熱物載置部を移動させるための操作部の操作から被加熱物載置部の移動が開始されるまでの遅延時間を、グリル庫の検知温度が高温であるときには、被加熱物載置部も高温であるとして、グリル庫の検知温度が低温であるときに比べて、低速、あるいは、長くするので、使用者は、手や身体を被加熱物載置部の移動経路から離す時間的余裕があり、高温の被加熱物載置部に接触するのを抑制することができる。
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態のグリル付き加熱調理器として、コンロ部とグリルとを備えたビルトイン型のグリル付きガスコンロ1について、添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、グリル付きガスコンロ1の上面には、火力の異なった周知構造の3つコンロ部2が設置されていると共に、左右中央部位には前方から開閉可能なグリル3が設けられ、かつ、グリル付きガスコンロ1の上面奥部には、グリル3で発生した燃焼ガスを排出する排気口4が設けられている。
図2は、グリル3の横断平面を含む要部の概略構成を示す図であり、図3は、グリル3のグリル皿を送出した状態を示す横断平面図であり、図4は、グリル3の概略構成を示す縦断正面図ある。
これらの図に示すように、グリル3は、グリル付きガスコンロ1の本体内の中央部に設けられるグリル庫5、このグリル庫5に前後方向に移動可能に組み込まれたグリル皿22、グリル庫内上部に配備されるグリルバーナ7、等を備えている。グリル庫5の前面の開口部が、収納されたグリル皿22の前端側のグリル扉23によって閉止されるようになっている。
図1に示すように、グリル付きガスコンロ1における正面の左側上方には、左側手前のコンロ部2と奥側のコンロ部2の各コンロバーナ8を点火および消火するための二つの点消火ボタン10が左右に並べて設けられる。グリル付きガスコンロ1における正面の右側上方には、右側手前のコンロ部2のコンロバーナ8を点火および消火するための点消火ボタン10と、グリルバーナ7を点火および消火するための点消火ボタン11が左右に並べて設けられている。また、各点消火ボタン10、11の上方には、各バーナ8、7へのガス供給量を調節して火力を加減するため火力調節レバー12、13が、左右に移動操作可能に配備されている。
また、グリル付きガスコンロ1における正面の左側下方には、内蔵された制御部15(図2参照)等の電源となる電池を収容する電池ケース16が設けられている。
この実施形態では、上記図2〜図4に示すように、グリル庫5内の下部には、左右一対の固定レール24が前後水平に固定配備されている。この一対の固定レール24に対して、一対の中間レール25が前後スライド自在に係合支持され、更に、一対の中間スライドレール25に対して、前後にスライド移動可能に一対の可動枠21が係合支持されている。
被加熱物載置部としてのグリル皿22は、一対の可動枠21の一定位置に跨るように搭載支持されており、可動枠21の前端には、グリル庫5の前面の開口部を開閉するグリル扉23が、起立姿勢で連結されている。グリル皿22は、後述のように自動で出し入れされるので、グリル扉23の前面には、グリル皿22を手動で出し入れするための取っ手は設けられていない。
グリル庫5における内奥の左右には、グリル皿22を前後方向に移動させる、ステッピングモータの回転をギヤ減速して出力するギヤモータ26が設置され、各ギヤモータ26によって正逆に回転駆動される駆動軸としてのネジ軸27が、前記固定レール24と平行に配備されている。
可動枠21における奥端部の左右には、前記ネジ軸27に螺合されたナット28が連結されており、ネジ軸27の正逆回転に伴って、支持体としての可動枠21に支持されたグリル皿22が、グリル庫5内に収納されてグリル扉23でグリル庫5の開口部が閉止される収納位置と、グリル皿22が、前方へ送出されてグリル庫5外に大きく露出する送出し位置とに亘って前後方向に移動するように構成されている。被加熱物は、このグリル皿22上に、図示しない焼き網を介して載置される。なお、グリル皿22上に被加熱物が直接載置されるように構成してもよい。
左右の各ギヤモータ26、各ネジ軸27、各ナット28、及び、各レール24,25等によって、グリル皿22を、前後方向へ移動させる駆動部が構成される。
なお、グリル皿22の移動位置は、ステッピングモータの回転量として検知されており、グリル皿22が設定された送出し位置および収納位置に到達すると自動的にステッピングモータの作動が停止される。
また、ネジ軸27の前端には、ナット28が当接するストッパ29が設けられており、グリル皿22が所定の送出し位置を超えて前方へ移動しても、ナット28がストッパ29に当接してグリル皿22のそれ以上の前方移動が阻止される。また、グリル皿22の前方移動が当接阻止されてギヤモータ26の負荷電流が増大したことが検知されることで、ギヤモータ26の前進駆動が自動的に停止されるようになっている。
この実施形態のグリル付きガスコンロ1では、図2に示すように、グリル皿22を、前方の送出し位置へ送り出すために操作される操作部としての送出しスイッチ31と、グリル皿22を、グリル庫5内の収納位置へ後退させるために操作される操作部としての収納スイッチ32と、グリル庫5の温度を検知する温度検知部としての温度センサ33と、前記各スイッチ31,32の操作及び温度センサ33からの検知温度に基づいて、駆動部の前記ギヤモータ26,26を制御する制御部15と、グリル皿22の移動を報知する報知部34とを備えている。
送出しスイッチ31及び収納スイッチ32は、図1に示されるように、グリル付きガスコンロ1における正面右側のグリルバーナ7の点消火ボタン11の下方に配備されている。
制御部15は、送出しスイッチ31の操作に応答して、ギヤモータ26,26を、正転起動させてグリル皿22を前進させ、収納位置から送出し位置へ移動させる。また、収納スイッチ32の操作に応答して、ギヤモータ26,26を逆転起動させてグリル皿22を後退させ、送出し位置から収納位置へ移動させる。
このように制御部15は、これらスイッチ31、32のワンタッチ操作に応答して、ギヤモータ26,26の駆動を制御して、グリル皿22を、収納位置から送出し位置に前進させ、あるいは、送出し位置から収納位置に後退させる。
温度センサ33は、例えば、サーミスタからなり、グリル庫5内の適所に設けられて、グリル庫5の温度を検知する。グリル皿22は、調理前に食材を載置する場合、調理中に調理具合を確認する場合、あるいは、調理後に食材を取出す場合等を除いて、通常、グリル庫5内の収納位置に収納されており、グリル皿22の温度は、グリル庫5内の温度に対応している。したがって、温度センサ33によって検知されるグリル庫5の検知温度が、高温のときはグリル皿22も高温である場合が多い。
制御部15は、ギヤモータ26,26による可動枠21に支持されたグリル皿22の前後方向の移動速度を、温度センサ33による検知温度に基づいて、制御する。この実施形態では、検知温度が、所定温度としての60℃以上の高温であるときには、60℃未満の低温であるときに比べて、前記移動速度を低速にする。所定温度は、60℃に限らず、他の温度としてもよい。
報知部24は、グリル皿22に移動、すなわち、グリル庫5内に収納されているグリル皿22が、送出し位置へ前進移動すること、及び、グリル庫5外の送出し位置にあるグリル皿22が、グリル庫5内の収納位置へ後退移動することをそれぞれ報知するものである。
制御部15は、報知部34による報知を、温度センサ33による検知温度に基づいて、制御するものであり、具体的には、検知温度が、所定温度としての60℃以上の高温であるときと、60℃未満の低温であるときとで、報知の態様を異ならせるようにしている。
この実施形態では、グリル調理が行われる前などにおいては、グリル庫5内の温度が低いので、グリル皿22の温度も低いとして、この場合は、ギヤモータ26の作動速度は「高速」とされ、グリル皿22は、速やかに移動する。また、例えば、グリル調理中や調理直後においては、グリル庫5内の温度が高いので、グリル皿22の温度も高いとして、この場合は、ギヤモータ26の作動速度は「低速」とされ、熱くなっているグリル皿22は、緩慢に移動する。
例えば、グリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0(60℃)未満の場合(θ<θ0)には、グリル皿22の移動速度は、例えば、15mm/秒とされ、グリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0(60℃)以上の場合(θ≧θ0)には、グリル皿22の移動速度は、所定温度θ0(60℃)未満の場合に比べて、低速、例えば、10mm/秒とされる。
また、制御部15は、スイッチ操作に応答して、温度センサ33で検知されたグリル庫5の検知温度に対応して、報知部34を制御し、報知部34は、例えば、以下のような音声メッセージによる報知を行う。
すなわち、検知されたグリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0(60℃)未満の場合(θ<θ0)には、例えば、「グリル皿が移動します。」といった音声メッセージが報知部34から出力され、また、検知されたグリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0(60℃)以上の場合(θ≧θ0)には、例えば、「グリル皿が移動します。熱くなっています。ご注意ください。」といった音声メッセージが報知部34から出力されて、使用者に注意を促す。
このようにグリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0(60℃)未満の場合と、所定温度θ0(60℃)以上の場合とで、その報知の態様が異なる、すなわち、音声メッセージの内容が異なるので、使用者は、移動するグリル皿22やその前端のグリル扉23が、高温であるか否かを認識することができ、高温のグリル皿22やグリル扉23への接触を回避することが容易となる。
上記のように本実施形態によれば、送出しスイッチ31や収納スイッチ32のワンタッチ操作によって、グリル皿22が、自動的に収納位置から送出し位置に前進移動し、また、自動的に送出し位置から収納位置に後退移動するので、使用者が、手動でグリル皿22を出し入れする必要がなく、便利である。
しかも、温度センサ33によって検知されるグリル庫5の検知温度が、所定温度である60℃以上の高温であるときには、グリル皿22の温度も高温であるとして、グリル庫5の検知温度が60℃未満の低温であるときに比べて、グリル皿22を、送出し位置へ前進移動させる移動速度、及び、グリル皿22を、収納位置へ後退移動させる移動速度を、低速(例えば、10mm/秒)にする。
したがって、例えば、グリル調理が終了した後、調理した被加熱物を取り出すため、あるいは、グリル調理中に調理具合を見るためにグリル皿22を送出し位置へ前進移動させる場合、もしくは、調理具合を見た後、再びグリル皿22を収納位置へ後退移動させる場合には、温度センサ33によるグリル庫5の検知温度が高く、所定温度以上であるときには、グリル皿22の温度も高温であるとして、グリル皿22は、低速で前進移動あるいは後退移動する。これによって、使用者は、手や身体をグリル皿22やその前端のグリル扉23の移動経路から離す余裕があり、前進あるいは後退する高温のグリル皿22や前端のグリル扉23に接触するのを抑制することができる。
一方、グリル調理前にグリル皿22を、送出し位置へ前進移動させて食材を装填し、その後、グリル皿22を収納位置へ後退移動させる場合には、調理前であるので、温度センサ33によって検知されるグリル庫5の検知温度は低く、所定温度未満であるときには、グリル皿22の温度も低温であるとして、グリル皿22の前進及び後退の移動速度を高速(例えば、15mm/秒)にし、速やかにグリル調理を開始することができる。また、グリル皿22の移動中に、万一、グリル皿22やグリル扉23に瞬間的に接触するようなことがあっても、グリル皿22等は低温であるので、やけどすることはない。
更に、温度センサ33によって検知されるグリル庫5の検知温度が、所定温度である60℃以上の高温である場合に、グリル皿22を前進移動または後退移動させるときには、その旨が音声によって報知されるので、使用者は、高温のグリル皿22が、前進移動または後退移動することを瞬時に把握することができ、高温のグリル皿22やグリル扉23に接触するのを、一層確実に回避することができる。
(実施形態2)
図5は、本発明の他の実施形態の図2に対応する概略構成図である。
この実施形態において、グリル皿22を、送出し位置と収納位置との間で前後方向に移動させる構造自体は、上記実施形態と同様である。
この実施形態では、制御部15´は、グリル皿22の前進移動及び後退移動の度に、温度センサ33によって検知されたグリル庫5の検知温度に基づいて、ギヤモータ26の起動を遅延させる遅延制御を行う。
例えば、検知されたグリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0としての60℃未満の低温の場合(θ<θ0)には、送出しスイッチ31または収納スイッチ32の操作からモータ起動までの遅延時間が、例えば、0. 2秒以下とされ、スイッチ操作の後、直ちにグリル皿22が移動を開始する。また、検知されたグリル庫5の検知温度θが、所定温度θ0(60℃)以上の高温の場合(θ≧θ0)には、所定温度θ0未満の低温の場合に比べて、遅延時間を長く、例えば、3秒とされ、スイッチ操作の後、時間差をもってグリル皿22が移動を開始する。
この実施形態によれば、例えば、グリル調理が終了した後、調理した被加熱物を取り出すため、あるいは、グリル調理中に調理具合を見るためにグリル皿22を送出し位置へ前進移動させる場合、もしくは、調理具合を見た後、再びグリル皿22を収納位置へ後退移動させる場合には、温度センサ33によるグリル庫5の検知温度が高く、所定温度以上の高温のときには、グリル皿22の温度も高温であるとして、送出しスイッチ31または収納スイッチ32の操作から、グリル皿22が前進移動あるいは後退移動を開始するまでの遅延時間を長く、例えば、3秒にする。
これによって、使用者は、手や身体をグリル皿22やその前端のグリル扉23の移動経路から離す余裕があり、前進あるいは後退する高温のグリル皿22や前端のグリル扉23に接触するのを抑制することができる。
一方、グリル調理前にグリル皿22を、送出し位置へ前進移動させて食材を装填し、その後、グリル皿22を収納位置へ後退移動させる場合には、調理前であるので、温度センサ33によって検知されるグリル庫5の検知温度は低く、所定温度未満であるときには、グリル皿22の温度も低温であるとして、送出しスイッチ31または収納スイッチ32の操作から、グリル皿22が前進移動あるいは後退移動を開始するまでの遅延時間を短く、例えば、0. 2秒以下にし、速やかにグリル調理を開始することができる。
なお、この実施形態におけるグリル皿22の移動速度は、グリル庫5の検知温度に拘わらず一定の「高速」(例えば、15mm/秒)としているが、上記実施形態と同様に、グリル庫5の検知温度に対応して高低に切り換えてもよい。
(その他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
(1)図6に示すように、グリル皿22をネジ送り駆動する駆動軸としての左右の各ネジ軸27及び各ナット28を、上方からそれぞれ覆う前後方向に延びるカバー36をそれぞれ設けて、グリル皿22から漏れ落ちた油や汁がネジ軸27に付着するのを防止してもよい。また、各ギヤモータ26を併せて覆うようにしてもよい。
(2)図7に示すように、左右方向の中央に配置した単一のネジ軸27でグリル皿22を前後方向に移動させることもできる。
(3)図8に示すように、グリル扉23をグリル庫5の前端下部に、支点p周りに起伏回動可能に枢支すると共に、グリル扉23をねじりバネなどによって起立方向に回動付勢する。送出し位置へ前進移動するグリル皿22を支持する可動枠21の前端によって、グリル扉23を当接押圧して回動させて、グリル庫5の前面の開口部を開放する。また、収納位置へ後退移動するグリル皿22を支持する可動枠21の前端に追従して、グリル扉23が起立回動し、グリル庫5の前面の開口部を閉止する。
これによると、グリル皿22が送出し位置にある時、グリル皿22の下方にグリル扉23が入り込むことになるので、送出されたグリル皿22への食材の装填や取出しを、グリル扉23に邪魔されることなく容易に行うことができる。
(4)グリル皿22の移動を使用者に知らせる報知部としては、グリル庫5の検知温度に応じて周期の異なる警報音を発する電子ブザーを用いることもできる。この場合、検知されたグリル庫5の検知温度が、所定温度未満の低温の場合には、周期の長い報知音(例えば「ピーピーピー」)で報知し、検知されたグリル庫5の検知温度が、所定温度以上の高温の場合には、周期の短い報知音(例えば「ピピピ」や「ピツピツピツ」)で報知することで、使用者の注意を促すことができる。
(5)上記実施形態では、温度センサ33によって検知されるグリル庫5の検知温度が、所定温度以上であるか、所定温度未満であるかの2段階で、グリル皿22の移動速度あるいは移動開始までの遅延時間を異ならせたが、3段階以上で実施することもできる。
例えば、第1所定温度と、それより高温の第2所定温度とによって、温度センサ33による検知温度を3段階に区分し、温度センサ33による検知温度が、
第2所定温度以上であるときは、グリル皿22の移動速度を低速とし、あるいは、グリル皿22の移動開始までの遅延時間を長い第1遅延時間とし、温度センサ33による検知温度が、第1所定温度以上第2所定温度未満であるときは、グリル皿22の移動速度を前記低速よりも速い中速とし、あるいは、グリル皿22の移動開始までの遅延時間を前記第1遅延時間より短い第2遅延時間とし、温度センサ33による検知温度が、第1所定温度未満であるときは、グリル皿22の移動速度を前記中速よりも速い高速とし、あるいは、グリル皿22の移動開始までの遅延時間を第2遅延時間より短い第3遅延時間としてもよい。
また、関数を利用して、温度センサ33による検知温度が高いほど、グリル皿22の移動速度を低速に、あるいは、グリル皿22の移動開始までの遅延時間を長くなるように、多段階に変化させてもよい。
(6)使用者が熱くなったグリル皿22やグリル扉23に接触するのは、グリル皿22等が送出し位置へ前進移動する時の方が、グリル皿22等が収納位置へ後退移動する時に比べて多いので、グリル庫5の検知温度が高温の時の送出し位置への前進移動の速度を「低速」、グリル庫5の検知温度が高温の時の収納位置への後退移動の速度を「中速」、グリル庫5の検知温度が低温の時の送出し位置への前進移動の速度及び収納位置への後退移動の速度を共に「高速」にし、グリル皿22の収納位置への移動を極力速やかに行う形態とすることもできる。
(7)グリル皿22が移動している途中で、送出しスイッチ31あるいは収納スイッチ32のいずれかを操作すると、その進退移動が停止され、次に送出しスイッチ31が操作されると、送出し位置への前進移動が行われ、送出しスイッチ31に替えて収納スイッチ32が操作されると、収納位置への後退移動が行われるようにしてもよい。
これによると、グリル調理中に送出しスイッチ31を操作してグリル皿22を送出し位置へ前進移動させ、少しグリル庫外へグリル皿22が露出した位置で送出しスイッチ31あるいは収納スイッチ32のいずれかを操作して移動を中止させ、少しグリル庫外へ露出したグリル皿22を覗き込んで調理具合を確認し、調理不足であれば収納スイッチ32を操作してグリル皿22を収納位置へ後退移動させ、また、十分調理されていることが確認されると、送出しスイッチ31操作して引き続き大きく送出されるような進退操作を容易に行うことができる。
(8)グリル皿22を前後方向に進退移動させる駆動部としては、上記したネジ送り構造の他に種々の形態のものを利用することができる。例えば、図9に示すように、可動枠21に沿って備えた前後に長いラックギヤ37に、ギヤモータ26よって正逆転駆動されるピニオンギヤ38を咬合させて、グリル皿22を前後に咬合移動させるラック・ピニオン構造としてもよい。また、図10に示すように、ギヤモータ26によって正逆に駆動回動可能に巻回したチェーンやワイヤなどの索条体39に可動枠21を連結し、索条体39の正逆回動によってグリル皿22を前後に牽引移動させる牽引構造、等を任意に利用することもできる。
(9)上記したラック・ピニオン構造や牽引構造でグリル皿22を出退駆動する場合、駆動機構の回転伝動系にスリップクラッチを介在しておくことで、駆動機構にトラブルが発生して、スイッチ操作でグリル皿22を出退できなくなった場合に、グリル皿22を手動で強制的に進退することが可能となる。なお、この場合には、グリル皿22におけるグリル扉23の前面に断熱構造の取っ手を備えておく必要がある。
(10)上記報知部34を備えない仕様で実施してもよい。
(11)本発明のグリル付き加熱調理器は、コンロ部を備えたガス燃焼式の加熱調理器に限らず、電気ヒータや電磁式の加熱調理器にも同様に適用できるものである。
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。