JP2018014897A - 生揚げの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
図8に生揚げの製造手順を簡単に示す。以下の説明では、絹生揚げ、生揚げ(地域によっては厚揚げという)を総称して「生揚げ」と呼称する。この生揚げの製造方法によれば、まず、乾燥大豆を水中に浸漬した後、粉砕処理して豆乳を得る。この豆乳に、糖類と、酵素であるトランスグルタミナーゼ(TG)とを添加して撹拌する。次いで、豆乳に凝固剤を添加して撹拌し、豆乳を凝固させる。そして、TGを十分に作用させるため、凝固撹拌後の生地を静置して、保温しながら熟成させる。得られた熟成後の生地を所定サイズに切り出し、成型して、生揚げ用の生地にする。そして、この生揚げ用の生地を、膨化させずに適度な揚げ色が付くまでフライする。以上の工程により、生揚げが出来上がる。このようにして製造された生揚げは、木綿豆腐を生地にした生揚げでも、絹ごし豆腐を生地にした絹生揚げでも、綺麗で、柔らかな皮に仕上げられていた。
(1) 豆乳を凝固させて豆腐生地を調製し、得られた豆腐生地を油で揚げる生揚げの製造方法であって、
前記豆乳に、少なくともタンパク質架橋酵素を含む添加剤液を注入する添加剤注入工程と、
前記豆乳に凝固剤液を注入する凝固剤注入工程と、
前記豆乳に微細気泡を混入させる微細気泡混入工程と、
を含むことを特徴とする生揚げの製造方法。
(2) 前記添加剤液は、糖類を含むことを特徴とする(1)に記載の生揚げの製造方法。
(3) 前記微細気泡混入工程は、前記豆乳内にエアを撹拌して混入させて微細に分散する処理を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の生揚げの製造方法。
(4) 前記微細気泡混入工程は、少なくとも前記豆乳を加熱しながら前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の生揚げの製造方法。
(5) 前記微細気泡混入工程は、前記添加剤液に前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載の生揚げの製造方法。
(6) 前記微細気泡混入工程は、前記凝固剤液に前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一つに記載の生揚げの製造方法。
(7) 前記微細気泡混入工程は、前記添加剤液と前記凝固剤液のいずれかが添加された前記豆乳に、前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一つに記載の生揚げの製造方法。
(8) 前記豆腐生地は、比重が1.030以下0.850以上、又は、含まれる気体が前記豆腐生地の0.1〜10%、又は、前記比重が、用いた前記豆乳の比重より小さく、前記油の比重よりも大きい
ことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一つに記載の生揚げの製造方法。
(9) 豆乳を凝固させて豆腐生地を調製し、得られた豆腐生地を油で揚げる生揚げの製造装置であって、
前記豆乳に、少なくともタンパク質架橋酵素を含む添加剤液を注入する添加剤注入部と、
前記豆乳に凝固剤液を注入する凝固剤注入部と、
前記豆乳に微細気泡を混入させる微細気泡混入部と、
を備えることを特徴とする生揚げの製造装置。
(10) 前記添加剤液は、糖類を含むことを特徴とする(9)に記載の生揚げの製造装置。
(11) 前記豆乳を貯留する豆乳タンクを備え、
微細気泡混入部は、前記豆乳に加圧エアを噴射する噴射ノズルを有することを特徴とする(9)又は(10)に記載の生揚げの製造装置。
(12) 前記微細気泡の分散手段を備えることを特徴とする(11)に記載の生揚げの製造装置。
(13) 前記分散手段は、ポンプ、分散機、ミキサーのいずれかを含むことを特徴とする(12)に記載の生揚げの製造装置。
(14) 前記噴射ノズルは、前記分散手段の吸い込み口側の送液管路に配置されることを特徴とする(12)又は(13)に記載の生揚げの製造装置。
(15) 前記噴射ノズルは、前記豆乳タンクから前記分散手段との間の管路に配置されることを特徴とする(12)又は(13)に記載の生揚げの製造装置。
(16) 前記噴射ノズルは、前記豆乳タンクの内部に配置されることを特徴とする(11)〜(13)のいずれか一つに記載の生揚げの製造装置。
(17) 前記豆乳タンクは、前記豆乳タンク内の豆乳を循環させるループ状の循環管路が設けられ、
前記噴射ノズルは、前記循環管路の一部に配置されることを特徴とする(11)〜(13)のいずれか一つに記載の生揚げの製造装置。
(18) 前記噴射ノズルは、1本又は複数本が設けられていることを特徴とする(11)〜(17)のいずれか一つに記載の生揚げの製造装置。
<第1構成例>
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、生揚げ製造装置を模式的に示すブロック構成図である。
本構成の生揚げ製造装置(以降は、製造装置と略称する)100は、豆乳を得る前段処理部として、水に浸漬した大豆を粉砕する粉砕処理部11と、粉砕後の生呉を煮沸する煮沸処理部13と、煮沸された煮呉を搾り、オカラと豆乳に分離させる搾り処理部15とを備える。
次に、上記構成の製造装置100を用いて生揚げを製造する手順を説明する。
図2は生揚げの製造方法の各手順を概略的に示すフローチャートである。この製造方法においては、まず、乾燥大豆を所定時間水中に所定時間浸漬させた後、浸し水を除去して(排水)して浸漬大豆を得る。この浸漬大豆を、図1に示す粉砕処理部11によって、粉砕、注水処理して生呉を生成する。この粉砕時には、エアが撹拌されて豆乳内にエアが自然に混入する。
フェノールオキシダーゼとしては、ポリペプチド中の標的チロシンを基質として該ポリペプチドを架橋するチロシナーゼ(チロシン−チロシン間結合)、フェノラーゼ、モノフェノール・オキシダーゼ、クレソラーゼ、カテコール・オキシダーゼ、ポリフェノラーゼ、DOPAオキシダーゼ、ポリフェノール・オキシダーゼ、チロシン−DOPAオキシダーゼ、ラッカーゼ(laccase)等が挙げられる。
糖類としては、主として澱粉が用いられる。澱粉は、その量に対して0.5〜10倍量(好ましくは1倍量)の水に溶き準備し、豆乳の全質量に対して澱粉として0.1〜10%、好ましくは2〜4%の質量比で豆乳に添加される。この澱粉としては、市販の食用澱粉、食用加工澱粉、デキストリン、多糖類等や、その他に澱粉を含む米粉、小麦粉等の食品原材料、特に限定されるものではない。
以上の工程によって生揚げが製造される。
比重0.85未満の場合、高温のフライ油(≒比重0.85)の中で最初から浮き上り、フライしにくい。つまり、生地が遊動しやすく、隣同士の生地が付着して、白揚がり(フライ後も部分的に生地の色(白色)のままとなり製品にならない状態)によるロスになり易い。また、比重が1.035より大きいと、エア注入の効果が得られない。
微細気泡を分散させる分散手段としては、上記の遠心ポンプの他、ステータ&ロータ式分散機、高圧ホモ、スタティックミキサー等、エアを細かく分散する手段であれば、特に限定はしない。
上記の製造装置100においては、エア注入部33が豆乳タンク17とポンプP1との間の送液管路41に接続される。エア注入のタイミングは、上記構成による添加剤、凝固剤注入前のタイミングに限らず、他のタイミングでエア注入を行ってもよい。
例えば、エア注入部33Aを、ミキサー23の手前の管路49に接続して、糖類・酵素溶液と凝固剤液が添加された豆乳に微細気泡を混入させる構成にしてもよい。また、ミキサー23の分散室に直接エアを注入してもよい。
その場合、澱粉のアルファ化(糊化)やタンパク質架橋酵素によるタンパク質の結合や凝固剤によるタンパク質の凝固が始まることによって、豆乳の粘度が少し高まり、抱き込んだエアの合一や浮上分離を妨げ、均一な微小エア分布を得る効果がある。また、酵素澱粉液を分散する静止型ミキサー56の手前、又は静止型ミキサー56に直接エアを供給し、酵素澱粉と共に、エアも均質に混合してもよい。
このように、粉砕処理部の上流部よりも、ミキサー等の凝固直前や直後にエアを注入すれば、豆乳中に均一にエアを分散させた状態で凝固させることができる。このため、フライ時の表面をより綺麗に仕上げることができる。また、バッチ式よりも連続的に安定してエアを豆乳に混合・分散ができるため、豆乳流量やエア流量の調節制御しやすく、大量生産ラインに好適に適用できる。また、エアの消費量も最小限に抑えることができる。
エア注入部33Bを、糖類・酵素タンク19とポンプP2との間の送液管路53に接続して、糖類・酵素溶液に微細気泡を混入させる構成にしてもよい。また、エア注入部33Bを、ポンプP2の吐出管路55に接続して、ポンプP2の吐出液中に微細気泡を混入させる構成にしてもよい。その直後に糖類・酵素溶液が添加された豆乳は、直後から澱粉のアルファ化(糊化)やタンパク質架橋酵素によるタンパク質の結合が始まることによって、上記の通り、豆乳の粘度が少し高まり、微小気泡も均質に安定化される。なお、トランスグルタミナーゼの場合、酸素によって徐々に酵素失活する性質がある。エア注入後に長時間が経過すると、酵素失活、活性低下の懸念が生じるため、酵素活性の懸念がある場合には、窒素ガス、炭酸ガス等、酸素を含まない不活性な気体を使用するとよい。
エア注入部33Cを、凝固剤タンク21とポンプP3との間の送液管路57に接続して、凝固剤液に微細気泡を混入させる構成にしてもよい。また、エア注入部33Cを、ポンプP3の吐出管路59に接続して、ポンプP3の吐出液中に微細気泡を混入させる構成にしてもよい。なお、乳化ニガリ等の粘度が高い凝固剤液を使用する場合は、専用の分散用ミキサーを別途に設けて、更にエアの微小化を兼ねてもよい。また、エアと、凝固剤液である乳化ニガリとを、同時又は順次に豆乳に分散させてもよい。その直後に豆乳が凝固し始めることによって、上記の通り、豆乳の粘度が少し高まり、微小気泡も均質に安定化される。
エア注入部33Dを、煮沸処理部13又は煮沸処理部13から搾り処理部15までの管路63に接続して、煮呉中に微細気泡を混入させる構成にしてもよい。煮呉煮沸時は、100℃以上で微細気泡を混入させる際は、有圧下となるために、煮呉からへのエアの分散、溶解が効率よく行える。この場合、消泡剤は極少なめか、添加されない方が効果的で、豆乳の起泡性、乳化性を活かした無消泡剤製法に適する。
微細気泡の混入は、例えば、エア注入部33Eを、生搾り処理部29からの送液管路65に接続して、生豆乳に微細気泡を混入させてもよい。また、エア分散用のミキサーを送液管路65に設置してもよい。または、図示しないが、生豆乳煮沸処理部31の後にエア注入するようにしてもよい。この場合も、消泡剤は極少なめか、添加されない方が効果的で、豆乳の起泡性、乳化性を活かした無消泡剤製法に適する。
次に、上述した各エア注入部33,33A〜33Eの具体的な機構について説明する。
図3は、図1のエア注入部33の具体的な構成を示す概略構成図である。エア注入部33は、エア供給源71と、バルブ73と、流量計75と、噴射ノズル77とを備える。
噴射ノズル77は、インジェクションノズル、多孔のエアレーションノズル、マイクロバブル用ノズル等からなり、送液管路41を流れる豆乳と、エア供給源71からのエアとが混合されて、微細気泡を含む豆乳を噴射する。この場合、インラインで定量的注入が正確に行える。噴射ノズル77は、内径0.1〜10mmの孔径のものが、長時間使用して詰まらないため望ましい。また、ノズルは、1本〜複数本であってもよい。
図4はエア注入部の第1変形例を示す概略構成図である。本構成においては、搾り処理部15からの送液管路79と、エア供給源71とに接続された噴射ノズル77が、豆乳タンク17内に浸漬される。
図5はエア注入部の第2変形例を示す概略構成図である。本変形例の構成は、前述したエア注入部33の他、エア注入部33B,33Cについても同様に適用可能である。つまり、本構成においては、豆乳タンク17(糖類・酵素タンク19,凝固剤タンク21も同様)から延びる送液管路41(53,57)に、ポンプP1(P2,P3)が接続される。このポンプP1(P2,P3)からの吐出管路43(55,59)に、エア注入部の噴射ノズル77と、図示しないが、豆乳用流量計が配置される。
図6はエア注入部の第3変形例を示す概略構成図である。本構成は、エア注入部33の他、エア注入部33B,33Cについても同様に適用可能である。本構成においては、噴射ノズル77が、蒸気発生源81からの管路と、ポンプP1(P2,P3も同様)の吐出管路43(55,59)に接続される。また、エア供給源71からのエアが、バルブ73,流量計75を介して吐出管路43(55,59)に供給される。
図7はエア注入部の第4変形例を示す概略構成図である。本構成は、エア注入部33の他、エア注入部33B,33Cについても同様に適用可能である。本構成においては、ループ状に形成されたタンク内循環管路83を有し、このタンク内循環管路83の一部に噴射ノズル77が配置される。噴射ノズル77には、エア供給源71からのエアが、バルブ73,流量計75を介して供給される。
次に、糖類・酵素タンク19に貯留する添加剤について詳細に説明する。なお、添加剤としては、糖類が含まれないものであってもよい。
(酵素:タンパク質架橋酵素(トランスグルタミナーゼ))
ここで用いられる添加剤は、例えば特許第3652799号に記載のトランスグルタミナーゼ(TG)単品のもの以外に、トランスグルタミナーゼを含み、その他、「デンプンやデキストリン等の糖質」や「塩化ナトリウム、リン酸塩、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩類」や「大豆粉末や分離大豆蛋白質やカゼインナトリウム等のタンパク質」を含んでいる製剤や「トランスグルタミナーゼを含む魚肉」も利用することができ、前述したように、チロシナーゼ等の他のタンパク質架橋酵素やそれらを含む原材料や粗抽出物等も利用できる。
糖類としては、グルコース、キシロース、ガラクトース、フルクトース等の単糖類、ショ糖、ラクトース、トレハロース等の二糖類、前記単糖類からなるオリゴ糖、セルロース、デンプン、デンプン加水分解物(デキストリン)、サイクロデキストリン等の多糖類、糖アルコール(ソルビトール)等、保水性を有する糖類が使用できる。豆腐生揚げに適したものとしては、フライ時の着色(褐変反応)を起こし難いもの、甘味の低いもの、が選ばれる。ただし、好みによって着色を起こしやすい糖(グルコース、キシロース、デキストリン等)をブレンドして赤みや黄みを帯びた製品にすることもできる。豆腐生地の保水性を発揮するための糖類添加量は、豆乳に対して1〜10%程度が好ましく、甘味が強いと豆腐の味、凝固剤の味を隠してしまうので甘味度の低いものが選ばれる。
凝固剤としては、ニガリ(塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム含有物、粗製海水塩化マグネシウム)、すまし粉(硫酸カルシウム)、塩化カルシウム、GDL(グルコノデルタラクトン)等の豆腐製造に一般に使われる凝固剤を利用できる。特にGDLは生揚げ生地の硬さを補強するが、揚げ色が赤くなるので、従来利用しにくい点があった。しかし、本製造装置100による製造工程によれば、トランスグルタミナーゼによる弾力と硬さの補強作用と、微小エアによる表皮の微細な発泡状態にする作用によって、GDLを用いても表皮の皮がソフトになり、揚げ上がりの白い、綺麗な生揚げを作ることが可能になる。トランスグルタミナーゼは、豆乳に含まれる気泡の膜(大豆タンパク質の薄膜)を弾力あるものにして、微細気泡の合一を防ぎ、気泡を安定にさせる効果がある。
豆乳は、通常の豆腐用豆乳であればよく、予めに消泡剤や乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の消泡剤を含む)やpH調製剤(炭酸カルシウム等)等の品質改良剤を含んでいてもよい。
大豆は市販の米国産の黒目大豆を用いて、乾燥大豆15kgを10℃の水に20時間浸漬し、浸漬大豆を得た。株式会社高井製作所製豆乳製造プラントNS 2000を用いて、浸漬大豆に加水しながらグラインダーにより粉砕して生呉を得た。生呉は、大豆の吸水、粉砕時の加水も含め、乾燥大豆の全質量に対して5.5倍量になるように加水した。
上記のようにして得た生呉を、常法の加熱方法(煮沸時間5分間(〜100℃まで3分間 + 100〜105℃まで2分間))で煮沸し、煮呉を得た。得られた煮呉を、株式会社高井製作所製の搾り機(ミラクルエイト)を使用してオカラと分離させ、濃度が13.0%brixの豆乳を得た。
TG製剤には豆腐用酵素製剤である味の素(株)製の「アクティバ」スーパーカード(トランスグルタミナーゼ0.2%製剤)を使用し、豆乳の全質量に対して0.15%の添加量とした。糖類としての澱粉は、松谷化学工業(株)製の「雪華2」(タピオカ澱粉)を使用し、豆乳の全質量に対して3.0%の添加量とした。
凝固剤には市販の乳化剤を使用しない乳化凝固剤を使用し(特許第5753146号)、豆乳には塩化マグネシウム換算で0.3w/w%の添加量とした。まず、市販の塩化マグネシウム製剤である赤穂化成(株)製のソフトウエハを50w/w%の濃度になるように水に溶解した(溶液1)。この溶液1を植物油(築野食品工業株式会社の米白絞油)と体積比で1:1の割合で混合・乳化させ、乳化凝固剤とした。なお、乳化には株式会社高井製作所製のN凝固機(特許第3654623号)を使用し、ロータの回転数を15000rpm、背圧を0.1MPa、溶液1と植物油各流量375ml/分で連続的に乳化分散を行った。
図1、図3に示す製造装置100を用い、得られた豆乳に所定量エア(表1)を連続的に注入し、株式会社高井製作所製のTDミキサ(60Hz)により連続的に豆乳中に分散・溶解させた。
凝固工程で用いられる器具及び撹拌方法等は、従来公知の手法で構わないが、ここでは、株式会社高井製作所製の凝固機であるN凝固機を用いた。なお、N凝固機は凝固剤液の乳化・注入部、TG・糖類添加液の注入部、エア注入部、凝固・エア分散部(TDミキサ;ロータ&ステータ型分散機)が備わっており、凝固剤液の調製から豆乳の凝固までを連続的に行った。なお、豆乳へのエア分散と凝固剤分散にはN凝固機に附属している同一のTDミキサーを併用した。
トランスグルタミナーゼを十分に作用させるため、凝固撹拌の生地を静置し、60〜65℃に保温しながら、45分間静置した(熟成した)。熟成後の生地を所定サイズにカットして、80mm×40mm×H(高さ)30mmに成型して生揚げ用生地とした。
上記により得た生揚げ用の生地を、油温180℃、揚げ時間3分間の条件でフライした。なお、フライの条件は、適度な揚げ色を付けること、及びトランスグルタミナーゼの熱失活を行うことを前提条件とした。
A.生地の比重測定(生地に含まれるエア量の推測)
1.試験区1〜7の生揚げ生地を10mm角のキューブ状にカットした。
2.カットした生地を各試験区10個ずつ測定し、平均値を各試験区の比重とした。
比重の測定は、SARTORIUS製の電子天秤CPA224Sと比重/密度測定キットYDK01を用いて実施した。
1.80mm×40mm×H(高さ)30mmのフライした生揚げを、頂面と底面の対角線で2等分割した生揚げ(三角形状×2)と、80mm×40mm×H(高さ)30mmの生揚げ(長方形)を出汁で60min間煮込んだ。なお、出汁にはヱスビー食品(株)のおでんの素を使用した。(1000mlの水に20g(1袋)を投入)
2.粗熱を取った後、冷蔵庫で1晩静置した。
3.出汁浸漬前と浸漬後の重量の差を求め、出汁の染込み具合とした。
1.上記Bに記載の方法で生揚げを出汁に浸漬した。
2.浸漬後の生揚げを不動工業株式会社製のレオメータNRM−2002J型で測定した。
1.フライ後の生揚げを目視による評価を行った。
A.生地の比重測定(生地に含まれるエア量の推測)
表2に示すように、エア注入量に伴い、生地の比重が小さくなっており、生地中にエアが保持されている。なお、表中の標準偏差は、各試験区を線形近似した場合の近似式からの偏差を表している。
表3に示すように、エア注入量が増えるにつれ、出汁の保持率が向上していることがわかる。少なくとも基準とする試験区1よりは出汁の染込みが向上する。比重との相関性は明確ではなかった。表皮付近のみ染込み、内部までは染込みにくい傾向があった。
表4に示すように、エア注入量が増えるにつれ、皮の柔らかさが向上していることがわかる。少なくとも基準とする試験区1よりは表皮が柔らかくなることがわかった。また、比重との正の相関性が認められた。
試験区2は比較対照の試験区1と差異が感じられなかったが、試験区3、4は表面がボツボツとした揚げ上がりであった。なお、試験区5以降は、表面のボツボツはなくなるが、試験区5、6、7の順で皮のみが膨潤した状態で、冷えると角が盛り上がる状態であった。
各試験区の手油揚風生揚げの、出汁の仕込み具合、皮の柔らかさ、見た目の項目から判定した総評を表5に示す。総評「A」は、既存の生揚げと差別化でき、製品価値が高い非常に良好なレベル、総評「B」は、既存の生揚げと差別化できるが、総評「A」程差異が見られないが良好なレベル、総評「C」は、既存の生揚げと明確な差異が見られず、明確に良好とは言えないレベルである。
試験区5〜7、特に試験区6と7は、出汁の染込み具合や皮の柔らかさが良好なだけではなく、手揚げ風の見た目で、表面が滑らかであるため製品価値が高い(総評A)。
つまり、生地比重が1.030以下0.850以上であるか、又は、生地に0.1〜10%の空気(気体)を含むか、又は、用いる豆乳の比重より小さく、フライ油の比重よりも大きいものとする。
本構成の生揚げの製造装置及び製造方法に用いる豆乳は、いかなる大豆種類由来であってもよく、添加される原材料も消泡剤やpH調整等の品質改良材や、油脂や塩等の如何なる食品素材を含んでいてもよく、また加熱搾り、生搾り、無消泡剤・有消泡剤、殺菌済豆乳、成分調整豆乳等いずれであってもよく、豆腐製造が可能な豆乳であれば、豆乳の種類や加熱方法には限定されない。
13 煮沸処理部
15 搾り処理部
17 豆乳タンク
19 糖類・酵素タンク(添加剤注入部)
21 凝固剤タンク(凝固剤注入部)
23 ミキサー(分散手段)
25 凝固処理部
27 揚げ処理部
29 生搾り処理部
31 生豆乳煮沸処理部
33,33A,33B,33C,33D,33E エア注入部
41,53,57 送液管路
56 静止型ミキサー(分散手段)
77 噴射ノズル
83 タンク内循環管路
100 生揚げ製造装置
P1 ポンプ(分散手段)
P2 ポンプ(添加剤注入部、分散手段)
P3 ポンプ(凝固剤注入部、分散手段)
Claims (18)
- 豆乳を凝固させて豆腐生地を調製し、得られた豆腐生地を油で揚げる生揚げの製造方法であって、
前記豆乳に、少なくともタンパク質架橋酵素を含む添加剤液を注入する添加剤注入工程と、
前記豆乳に凝固剤液を注入する凝固剤注入工程と、
前記豆乳に微細気泡を混入させる微細気泡混入工程と、
を含むことを特徴とする生揚げの製造方法。 - 前記添加剤液は、糖類を含むことを特徴とする請求項1に記載の生揚げの製造方法。
- 前記微細気泡混入工程は、前記豆乳内にエアを撹拌して混入させて微細に分散する処理を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生揚げの製造方法。
- 前記微細気泡混入工程は、少なくとも前記豆乳を加熱しながら前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の生揚げの製造方法。
- 前記微細気泡混入工程は、前記添加剤液に前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の生揚げの製造方法。
- 前記微細気泡混入工程は、前記凝固剤液に前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の生揚げの製造方法。
- 前記微細気泡混入工程は、前記添加剤液と前記凝固剤液のいずれかが添加された前記豆乳に、前記微細気泡を混入させる処理を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の生揚げの製造方法。
- 前記豆腐生地は、比重が1.030以下0.850以上、又は、含まれる気体が前記豆腐生地の0.1〜10%、又は、前記比重が、用いた前記豆乳の比重より小さく、前記油の比重よりも大きい
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の生揚げの製造方法。 - 豆乳を凝固させて豆腐生地を調製し、得られた豆腐生地を油で揚げる生揚げの製造装置であって、
前記豆乳に、少なくともタンパク質架橋酵素を含む添加剤液を注入する添加剤注入部と、
前記豆乳に凝固剤液を注入する凝固剤注入部と、
前記豆乳に微細気泡を混入させる微細気泡混入部と、
を備えることを特徴とする生揚げの製造装置。 - 前記添加剤液は、糖類を含むことを特徴とする請求項9に記載の生揚げの製造装置。
- 前記豆乳を貯留する豆乳タンクを備え、
微細気泡混入部は、前記豆乳に加圧エアを噴射する噴射ノズルを有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の生揚げの製造装置。 - 前記微細気泡の分散手段を備えることを特徴とする請求項11に記載の生揚げの製造装置。
- 前記分散手段は、ポンプ、分散機、ミキサーのいずれかを含むことを特徴とする請求項12に記載の生揚げの製造装置。
- 前記噴射ノズルは、前記分散手段の吸い込み口側の送液管路に配置されることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の生揚げの製造装置。
- 前記噴射ノズルは、前記豆乳タンクから前記分散手段との間の管路に配置されることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の生揚げの製造装置。
- 前記噴射ノズルは、前記豆乳タンクの内部に配置されることを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載の生揚げの製造装置。
- 前記豆乳タンクは、前記豆乳タンク内の豆乳を循環させるループ状の循環管路が設けられ、
前記噴射ノズルは、前記循環管路の一部に配置されることを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載の生揚げの製造装置。 - 前記噴射ノズルは、1本又は複数本が設けられていることを特徴とする請求項11〜請求項17のいずれか一項に記載の生揚げの製造装置。
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