以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、媒体取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、利用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、顧客との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客によって入金される紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙により、紙葉状に構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
因みに筐体2は、前面の下側部分が開放されており、且つこの開放された部分に開閉可能な前扉が設けられている。この前扉は、顧客との間で取引を行う運用時には、閉塞されると共に所定の錠(図示せず)により施錠され、作業員等により保守作業が行われる保守時には、この錠が解錠された上で開放される。筐体2は、前扉が開放された場合、紙幣入出金機10の前側部分を外部に露出させた状態となる。
[1−2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、内部に媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。紙幣入出金機10は、大きく分けて、全体の外側部分を構成する紙幣入出金機フレーム10Fと、該紙幣入出金機フレーム10Fにおける上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ユニット10Uと、その下側部分を占める下部ユニット10Lとにより構成されている。
紙幣入出金機フレーム10Fは、筐体2(図1)の内部に取り付けられている。上部ユニット10U及び下部ユニット10Lは、この紙幣入出金機フレーム10Fに対し、それぞれ前後方向に沿ったスライドレール(図示せず)を介して取り付けられている。このため紙幣入出金機10では、筐体2の前扉が開放された状態において、図3(A)及び(B)に示すように、紙幣入出金機フレーム10Fに対し上部ユニット10U及び下部ユニット10Lをそれぞれ前方へ引き出すことができる。また紙幣入出金機10では、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを後方へ押し込むことにより、図2に示したように、紙幣入出金機フレーム10F内にそれぞれ格納することができる。
[1−3.上部ユニットの構成]
図2の一部を拡大した図4(A)に示すように、上部ユニット10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部11、接客部12、接客搬送部13、上前搬送部14、鑑別部15、上後搬送部16、及び一時保留部17が設けられている。
上部ユニット10Uは、その前側部分において、上側前部に位置する接客部12の前端を基準位置P0とすると、下側前部に位置する上前搬送部14の前端がこの基準位置P0に揃えられている。また上部ユニット10Uは、その後側部分において、上側後部に位置する一時保留部17の後端である位置P1よりも、下側後部に位置する上後搬送部16の後端である位置P2の方が後側に位置している。すなわち上部ユニット10Uでは、基準位置P0から一時保留部17における後端の位置P1までの距離L1よりも、該基準位置P0から上後搬送部16における後端の位置P2までの距離L2の方が長くなっている。
制御部としての紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
[1−3−1.接客部及び接客搬送部の構成]
入出部としての接客部12は、顧客との間で紙幣を受け渡す(授受する)ことにより、該顧客に紙幣を入金させ、又は該顧客に紙幣を出金する。この接客部12は、上部ユニット10Uの内部における前上部であり、現金自動預払機1(図1)内において顧客と対峙する位置に配置されている。
また接客部12は、外側部分を構成する接客部フレーム30の内部に、紙幣を収容する収容器31を有している。収容器31は、上側が開放された中空の直方体状に構成されており、例えば最大で200枚の紙幣を、それぞれの紙面を前後方向に向けて前後方向に沿って整列させた状態、すなわち集積した状態で収容できる。因みに収容器31の内部には、前後方向へ移動可能な板状の仕切板(図示せず)が設けられている。この仕切板は、収容器31内の空間を前後方向に仕切り、また収容されている紙幣を前方向へ押し付けることにより、後述する紙幣の放出や分離を補助するようになっている。
また接客部フレーム30における収容器31の上側部分には、上下方向に貫通した孔部が形成されており、この孔部を可動式のシャッタ32により開放又は閉塞し得るようになっている。因みにシャッタ32は、筐体2の入出金口5(図1)に設けられたシャッタと連動するようになっている。このため接客部12は、シャッタ32を入出金口5のシャッタと共に開放した場合には、顧客に収容器31内へ紙幣を投入させ、或いは該収容器31内から紙幣を取り出させることができる。また接客部12は、シャッタ32を入出金口5のシャッタと共に閉塞した場合には、収容器31内に収容されている紙幣を保護することができる。
収容器31の前下側には、収容器31内に収容されている紙幣を1枚ずつに分離して下方へ搬送する分離部31Sが設けられている。分離部31Sの下側には、紙幣を案内する搬送ガイドや回転する搬送ローラ等により、概ね上下方向に沿った搬送路33が形成されている。接客部12は、分離部31Sにより分離された紙幣を搬送路33に沿って下方へ搬送し、下側に位置する上前搬送部14に引き渡す。
また接客部12には、分離部31Sの下側における左右方向に離れた複数箇所に複数の光学センサ(図示せず)が配置されている。各光学センサは、搬送路33を挟んで互いに対向する位置に、所定の検知光を発光する発光素子と、該検知光を受光してその光量に応じた検知信号を生成し、これを紙幣制御部11に供給する受光素子とにより構成されている。この検知光は、搬送路33に沿って搬送される紙幣により遮断されると、受光素子に到達した段階での光量が変化することになる。
紙幣制御部11は、各光学センサから得られる検知信号の変化を基に、紙幣が搬送されているか否か、搬送されている紙幣の搬送方向に沿った長さが1枚の紙幣における短辺の長さに相当するか否か、或いは左右で検知信号が変化するタイミングが一致するか否か等を判断する。
ここで紙幣の搬送方向に沿った長さが1枚の紙幣における短辺の長さを大きく超えている場合、搬送路33では、2枚以上の紙幣が一部を重ねた状態で連なって搬送される、いわゆる重送が発生している可能性がある。また、左右で検知信号が変化するタイミングが一致していない場合、左右方向に対して紙幣の長辺が大きく傾斜した、いわゆるスキューが発生している可能性がある。説明の都合上、以下では、分離部31Sにより分離された紙幣に重送やスキューが発生することを分離異常と呼ぶ。
また接客部12では、分離部31Sにおいて分離された紙幣に分離異常が発生した場合であっても、該紙幣を搬送路33に沿って逆送させて収容器31内に戻し、再び分離部31Sによって分離させることにより、分離異常を解消できる可能性がある。
そこで紙幣制御部11は、各光学センサから得られる検知信号を基に、接客部12の分離部31Sにおいて分離異常が発生したと判断した場合、この紙幣を搬送路33に沿って逆送させ、収容器31内に戻してから再び分離部31Sにより分離させる(すなわちリトライする)ようになっている。説明の都合上、以下ではこのような動作を接客分離異常リトライ処理と呼ぶ。
また収容器31の後下側には、紙幣を収容器31内へ放出する放出部31Eが設けられている。放出部31Eの下側には、下側に配置された接客搬送部13との間に、複数の搬送ガイド及び搬送ローラ等により、概ね上下方向に沿って搬送路34が形成されている。接客部12では、接客搬送部13から紙幣を受け取ると、この紙幣を搬送路34に沿って上方へ進行させ、放出部31Eから収容器31内へ放出することにより、該収容器31内に集積させることができる。
接客搬送部13は、接客部12における下側部分のうち後側の約半分を占める位置に配置されている。この接客搬送部13には、その前側部分、すなわち接客部12における搬送路34の下側であって、且つ上前搬送部14における後端近傍の上側となる部分に、駆動ローラ36等の複数の搬送ローラや複数の搬送ガイドが設けられ、これにより搬送路37及び搬送路38が形成されている。
駆動ローラ36は、図示しないモータから図示しないギア等を介して駆動力が供給されることにより、所定方向へ回転する。搬送路37は、駆動ローラ36の上側において概ね上下方向に沿って形成されており、その上端が接客部12における搬送路34の下端と接続されている。搬送路38は、該駆動ローラ36の下側において概ね上下方向に沿って形成しており、その下端が上前搬送部14と接続されている。因みに搬送路37及び搬送路38は、駆動ローラ36を含む複数の搬送ローラや複数の搬送ガイド等により構成されている。
かかる構成により接客搬送部13は、下側の上前搬送部14から紙幣を受け取ると、これを搬送路38及び37に沿って上方へ進行させ、接客部12の搬送路34に引き渡すことができる。説明の都合上、以下では搬送路38及び37を上排出搬送路とも呼ぶ。
[1−3−2.上前搬送部の構成]
上前搬送部14は、上部ユニット10Uにおける下側部分のうち前側の約1/3の範囲を占めており、接客部12及び接客搬送部13の下側における前寄りの部分に位置している。この上前搬送部14には、その内部における比較的前寄りに上前第1切替部41が配置されると共に、比較的後寄りに上前第2切替部42が配置されており、その周囲に複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイドにより搬送路が3本ずつ形成されている。
上前第1切替部41は、ブレードと呼ばれる部材(図中三角形で示す)及びその周囲に配置された複数のローラにより構成されている。ブレードは、左右方向に長く、且つ左右方向から見て楔形に形成されており、回転して傾斜方向を変化させることで、紙幣の搬送方向を2通りに切り替える。各ローラは、紙幣の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されている。リジェクト切替部としての上前第1切替部41は、紙幣制御部11の制御に従い、各紙幣の搬送先に応じてブレードの傾斜方向を変化させると共に各ローラを所定の回転方向へ回転させることにより、紙幣の搬送経路を適宜切り替えて所望の搬送先へ搬送することができる。
上前第1切替部41の周囲には、該上前第1切替部41から上方へ向かい接客部12の搬送路33と接続された搬送路43、該上前第1切替部41から後方へ向かい上前第2切替部42と接続された搬送路44、及び該上前第1切替部41から下方へ向かう搬送路45が形成されている。因みに搬送路45の下端は、上部ユニット前受渡口T12となっており、後述するように、下部ユニット10Lとの間で紙幣を受け渡すことができる。
この上前第1切替部41は、紙幣制御部11の制御に基づき、上側の搬送路43及び後側の搬送路44を接続する搬送経路と、後側の搬送路44及び下側の搬送路45を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
上切替部としての上前第2切替部42は、上前第1切替部41と同様に構成されている。この上前第2切替部42の周囲には、上述した搬送路44に加えて、該上前第2切替部42から上斜め後方へ向かい接客搬送部13の搬送路38に接続された搬送路46、及び該上前第2切替部42から後方へ向かい鑑別部15の前側に接続された搬送路47が設けられている。
この上前第2切替部42は、紙幣制御部11の制御に基づき、後側の搬送路47及び上側の搬送路46を接続する搬送経路と、後側の搬送路47及び前側の搬送路44を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
かかる構成により上前搬送部14は、紙幣制御部11の制御に基づいて上前第1切替部41及び上前第2切替部42における搬送経路をそれぞれ適切に切り替えることにより、様々な搬送経路に沿って紙幣を搬送することができる。
すなわち上前搬送部14は、例えば接客部12の搬送路33から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路43、44及び47に沿って進行させ、後側の鑑別部15に引き渡すことができる。また上前搬送部14は、例えば鑑別部15から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路47及び46に沿って進行させ、上側の接客搬送部13に引き渡すことや、この紙幣を搬送路47,44及び45に沿って進行させ、下側の下部ユニット10L(図2)に引き渡すことができる。
また上前搬送部14は、搬送路45、44及び47を分割線として、上側の上前搬送上部14Uと、下側の上前搬送下部14Lとに分割し得るように構成されている。さらに上前搬送部14は、その前下端近傍に設けられた上前搬送部回動軸14Xを回動中心として、上前搬送下部14Lに対し上前搬送上部14Uを回動し得るようになっている。
このため上前搬送部14は、上部ユニット10Uが紙幣入出金機フレーム10Fの前方へ引き出された上で(図3(A))、上前搬送上部14Uを接客部12及び接客搬送部13と一体に矢印R1方向へ回動させることにより、図4(B)に示すように、搬送路45、44及び47を外部に露出させること、すなわち開放させることができる。また上前搬送部14は、この状態から上前搬送上部14Uを矢印R2方向へ回動させることにより、図4(A)に示した状態に戻して、搬送路45、44及び47を外部から遮蔽すること、すなわち閉塞することができる。
[1−3−3.鑑別部の構成]
鑑別部15は、上部ユニット10Uにおける下側部分のうち中央付近の約1/3の範囲を占めており、接客部12及び接客搬送部13よりも下側であって、且つ上前搬送部14の後側に位置している。この鑑別部15は、その内部において、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等により、前端15F及び後端15Rを直線状に結ぶ、すなわち前後方向に貫通するような直線状の鑑別搬送路48が形成されている。そのうえで鑑別部15は、この鑑別搬送路48に沿って前方から後方へ向けて真偽センサ49A、イメージセンサ49B及び走行センサ49Cといった複数種類のセンサ49が順次配置されている。
真偽センサ49Aは、例えば磁気センサでなり、搬送経路上を搬送される紙幣の磁気を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、真偽センサ49Aから供給された検知結果を基に、紙幣が真正なもの(いわゆる真券)又は偽造されたもの(いわゆる偽券)の何れであるかを判断する。
また真偽センサ49Aは、上前搬送部14の上前第2切替部42との距離が極めて短くなるよう設置されている。このため上部ユニット10Uでは、紙幣を鑑別部15の鑑別搬送路48に沿って前方へ搬送し、当該紙幣から得られた検知結果を基に紙幣制御部11により該紙幣の真偽が判断される前に、当該紙幣の先端が上前第2切替部42に到達する場合がある。
イメージセンサ49Bは、鑑別搬送路48を挟んで対向する2個の撮像素子を有している。この撮像素子は、鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣の両面をそれぞれ撮像して画像データを生成し、これらを紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、予め記憶している金種ごとの画像データと供給された画像データとを比較することにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を認識し、さらに各紙幣に記されている個別の記番号を認識するようになっている。
走行センサ49Cは、例えば厚みセンサ及び光学センサを有している。厚みセンサは、鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣の厚みを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ供給する。紙幣制御部11は、厚みセンサから供給された検知結果を基に、搬送されている紙幣の厚みが1枚分に相当するか、或いは2枚以上に相当するかを判断するようになっている。
光学センサは、例えば光を発光する発光素子とこの光を受光する受光素子とが鑑別搬送路48を挟んで対向するように配置されており、当該鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣により光が遮光されたか否かを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。
また走行センサ49Cには、複数の光学センサが左右方向、すなわち搬送方向である前後方向と交差する方向に沿って配置されている。紙幣制御部11は、各光学センサから供給された検知結果及びその時間的な変化等を基に、搬送されている紙幣の搬送方向に沿った長さ、搬送方向に沿った紙幣同士の間隔、及び搬送方向に対する紙幣の傾斜を認識するようになっている。
すなわち走行センサ49Cは、厚みセンサ及び各光学センサの検知結果をそれぞれ紙幣制御部11へ供給することにより、紙幣同士の間隔、搬送方向に対する紙幣の傾き(いわゆるスキュー)の有無、及び紙幣同士の重なり(いわゆる重送や連鎖)の有無等といった紙幣の搬送状態を当該紙幣制御部11に認識させるようになっている。
このように鑑別部15は、各センサ49(真偽センサ49A、イメージセンサ49B及び走行センサ49C)により、鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣からそれぞれ得られる検知結果を鑑別結果として紙幣制御部11へ送出するようになっている。これに応じて紙幣制御部11は、この鑑別結果を基に紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)を判断すると共に搬送状態を認識し、得られた結果を基に該紙幣の搬送先を決定するようになっている。
[1−3−4.上後搬送部の構成]
上後搬送部16は、上部ユニット10Uにおける下側部分のうち後側の約1/3の範囲を占めており、鑑別部15の後側に位置している。この上後搬送部16は、その内部における中央付近に上後切替部51が配置されており、その周囲に複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイドにより3本の搬送路が形成されている。
一時保留切替部としての上後切替部51は、上述した上前第1切替部41等と同様に、中心に位置するブレードを回転させて傾斜角度を変化させるものの、該上前第1切替部41等と異なり、紙幣の搬送経路を3通りに切り替える、いわゆる3ウェイブレードとなっている。
上後搬送部16には、上後切替部51に接続された搬送路として、該上後切替部51から前方へ向かい鑑別部15に接続された搬送路52、該上後切替部51から上方へ向かい一時保留部17と接続された搬送路53、及び該上後切替部51から後方へ向かい、さらに下方へ向かう搬送路54が形成されている。因みに搬送路54の下端は、上部ユニット後受渡口T11となっており、後述するように、下部ユニット10Lとの間で紙幣を受け渡すことができる。
このため上後切替部51は、紙幣制御部11の制御に基づき、前側の搬送路52及び上側の搬送路53を接続する搬送経路と、上側の搬送路53及び後側の搬送路54を接続する搬送経路と、前側の搬送路52及び後側の搬送路54を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
すなわち上後搬送部16は、例えば前側の鑑別部15から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路52及び53に沿って進行させ、上側の一時保留部17に引き渡すこと、又は搬送路52及び54に沿って進行させ、下側の下部ユニット10L(図2)に引き渡すことができる。また上後搬送部16は、例えば上側の一時保留部17から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路53及び52に沿って進行させ、前側の鑑別部15に引き渡すこと、又は搬送路53及び54に沿って進行させ、下側の下部ユニット10L(図2)に引き渡すことができる。さらに上後搬送部16は、例えば下側の下部ユニット10L(図2)から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路54及び53に沿って進行させ、上側の一時保留部17に引き渡すこと、又は搬送路54及び52に沿って進行させ、前側の鑑別部15に引き渡すことができる。
また上後搬送部16は、上前搬送部14と同様に、搬送路52及び54を分割線として、上側の上後搬送上部16Uと、下側の上後搬送下部16Lとに分割し得るように構成されている。さらに上後搬送部16は、その後下端近傍に設けられた上後搬送部回動軸16Xを回動中心として、上後搬送下部16Lに対し上後搬送上部16Uを回動し得るようになっている。
このため上後搬送部16は、上部ユニット10Uが紙幣入出金機フレーム10Fの前方へ引き出された上で(図3(A))、上後搬送上部16Uを一時保留部17と一体に矢印R2方向へ回動させることにより、図4(B)に示すように、搬送路52及び54を外部に露出させること、すなわち開放させることができる。また上後搬送部16は、この状態から上後搬送上部16Uを矢印R1方向へ回動させることにより、図4(A)に示した状態に戻して、搬送路52及び54を外部から遮蔽すること、すなわち閉塞することができる。
ところで上部ユニット10Uにおける下側部分では、上前搬送部14の搬送路44及び47、鑑別部15の鑑別搬送路48、並びに上後搬送部16の搬送路52及び54により、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで以下では、この搬送路を上基幹搬送路WU(図2)又は上搬送路と呼び、また前側の上前搬送部14、中程の鑑別部15及び後側の上後搬送部16をまとめて上搬送部10UC(図4(A))とも呼ぶ。この上基幹搬送路WUは、上部ユニット10Uにおける前後方向(以下これを主搬送方向とも呼ぶ)に関する一端側である後側の上部ユニット後受渡口T11と、他端側である前側の上部ユニット前受渡口T12とを結ぶ搬送路となっている。
因みに上部ユニット10Uでは、図4(B)に示したように上前搬送上部14U及び上後搬送上部16Uをそれぞれ開放することにより、上基幹搬送路WUのうち上前搬送部14内の部分及び上後搬送部16内の部分である上前搬送路WU14及び上後搬送路WU16を、それぞれ外部に露出させ得ることになる。
[1−3−5.一時保留部の構成]
一時保留部17は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、ドラム55、一時保留搬送路56、リール57、テープ58及び走行監視センサ59等を有している。
ドラム55は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、回転可能に支持されている。このドラム55は、紙幣制御部11により制御されるモータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、巻取方向U1又は巻戻方向U2へ回転される。このモータは、例えばステッピングモータやDCブラシレスモータ等となっている。このため紙幣制御部11は、これらのモータの正確な回転角度を把握しており、またこれに所定の係数を乗じる等の演算処理を施すことにより、ドラム55の回転数や回転角度に加えて、周側面に対するテープ58の巻付距離(すなわち長さ)も把握している。
一時保留搬送路56は、複数のローラや搬送ガイド等の組合せにより構成されており、一時保留部17の筐体における下端の中央近傍とドラム55の周側面近傍とを結んでいる。リール57は、中心軸を左右方向に向けた糸巻き状に形成されており、回転可能に支持されている。テープ58は、薄く細長いフィルム状に形成されており、リール57の周側面に巻き取られている。リール57から引き出されたテープ58は、筐体内を適宜走行するよう引き回された後、一時保留搬送路56に沿ってドラム55の周側面に近接し、やがて該ドラム55の周側面に到達して巻き付けられる。このテープ58の先端は、ドラム55の周側面に固定されている。
一時保留検知部としての走行監視センサ59は、鑑別部15の走行センサ49Cに設けられた光学センサと同様に構成されており、紙幣の搬送状態を検知して、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、一時保留搬送路56によって搬送される紙幣同士の間隔やスキューの有無、紙幣の重なりや搬送方向の長さ等を認識することができる。
かかる構成において一時保留部17は、上後搬送部16から受け取った紙幣を順次収納する収納処理を行う場合、一時保留搬送路56により当該紙幣を上方へ搬送すると共にドラム55を巻取方向U1に回転させ、当該ドラム55の周側面にテープ58と共に紙幣を巻き付ける。
このとき一時保留部17は、一時保留搬送路56における紙幣の搬送速度を上後搬送部16に合わせており、またドラム55の回転速度を調整することでテープ58の走行速度及び当該ドラム55における最外周部分の線速度も当該紙幣の搬送速度に揃えている。このため一時保留部17は、上後搬送部16から順次搬送されてくる紙幣の搬送方向に対するスキューや紙幣同士の間隔を維持したまま、すなわち搬送状態を維持したまま、各紙幣をテープ58と共にドラム55の周側面に巻き付け、収納していくことができる。
また一時保留部17は、上後搬送部16へ紙幣を順次繰り出す繰出処理を行う場合、リール57を所定の方向に回転させてテープ58を巻き取らせると共にドラム55を巻戻方向U2へ回転させることにより、ドラム55の周囲に巻き付いていた紙幣をテープ58と共に引き剥がして一時保留搬送路56に引き渡す。一時保留搬送路56は、この紙幣を下方へ搬送して上後搬送部16へ引き渡す。
このとき一時保留部17は、やはり一時保留搬送路56における紙幣の搬送速度を上後搬送部16に合わせ、且つテープ58の走行速度及びドラム55における最外周部分の線速度も当該紙幣の搬送速度に揃えている。このため一時保留部17は、紙幣をドラム55の周側面に巻き付けたときの搬送状態、すなわち紙幣の搬送方向に対するスキューや紙幣同士の間隔を維持したまま、各紙幣を収納時と反対の順序で順次繰り出し、上後搬送部16に引き渡していくことができる。
このように一時保留部17は、紙幣をテープ58と共にドラム55の周側面に巻き付けることにより、搬送状態を保ったまま紙幣を収納し、またドラム55を巻き戻して当該紙幣を引き剥がすことにより、搬送状態を保ったまま繰り出すようになっている。
[1−4.下部ユニットの構成]
図2の一部を拡大した図5に示すように、下部ユニット10Lにおける上端部分には、概ね前後方向に沿って紙幣を搬送する下搬送部21が配置されている。該下搬送部21の下側における後側ないし中程には、後端から前方向へ向けて、再利用(リサイクル)が可能な紙幣を収納する4個の紙幣収納庫22(22D、22C、22B及び22A)が前後方向に沿って配置されている。さらに下搬送部21の下側における最も前側の部分、すなわち紙幣収納庫22Aの前側には、再使用すべきでない紙幣(リジェクト紙幣)を収納するリジェクト庫23が配置されている。
下部ユニット10L(図2)は、上部ユニット10Uと共に紙幣入出金機フレーム10F内に格納された状態において、その前端が該上部ユニット10Uの前端である基準位置P0に揃えられ、その後端が該上部ユニット10Uにおける上後搬送部16の後端である位置P2に揃えられている。
[1−4−1.下搬送部の構成]
下搬送部21(図5)には、その内部における後端近傍であって、紙幣収納庫22Dのほぼ真上となる位置に、切替部61が配置されている。また下搬送部21には、切替部61の前方であって紙幣収納庫22Cのほぼ真上となる箇所に切替部62が配置され、さらに該切替部62の前方であって紙幣収納庫22Bのほぼ真上となる箇所に切替部63が配置されている。
切替部61〜63は、何れも上部ユニット10U(図4)の上前第1切替部41等と同様に構成されており、紙幣制御部11の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を切り替えるようになっている。また切替部61、62及び63の周囲には、上前第1切替部41等の場合と同様に、その周囲に複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイドにより搬送路が3本ずつ形成されている。
切替部61の周囲には、該切替部61から上方へ向かう搬送路71、該切替部61から下方へ向かい紙幣収納庫22Dと接続された搬送路72、及び該切替部61から前方へ向かい切替部62と接続された搬送路73が形成されている。この切替部61は、上側の搬送路71及び下側の搬送路72を接続する搬送経路と、上側の搬送路71及び前側の搬送路73を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路71の上端は、下部ユニット後受渡口T21となっており、上述した上部ユニット10Uの上部ユニット後受渡口T11(図4)との間で紙幣を受け渡すことができる。
切替部62の周囲には、上述した搬送路73に加えて、該切替部62から下方へ向かい紙幣収納庫22Cと接続された搬送路74、及び該切替部62から前方へ向かい切替部63に接続された搬送路75が設けられている。この切替部62は、後側の搬送路73及び下側の搬送路74を接続する搬送経路と、前側の搬送路73及び後側の搬送路75を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部63の周囲には、上述した搬送路75に加えて、該切替部63から下方へ向かい紙幣収納庫22Bと接続された搬送路76、及び該切替部63から前方へ向かい紙幣収納庫22Aの上側に到達する搬送路77が設けられている。この搬送路77は、該紙幣収納庫22Aの上側において、上下方向に沿って形成された搬送路78に接続されている。この搬送路78の下端は、紙幣収納庫22Aに接続されている。この切替部63は、後側の搬送路75及び下側の搬送路76を接続する搬送経路と、前側の搬送路75及び後側の搬送路77を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
すなわち下搬送部21は、例えば上部ユニット10U(図4)から下部ユニット後受渡口T21を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路71及び72に沿って進行させ、下側の紙幣収納庫22Dに引き渡すことができる。この他に下搬送部21は、この紙幣を搬送路71、73及び74に沿って進行させ、下側の紙幣収納庫22Cに引き渡すことや、搬送路71、73、75及び76に沿って進行させ、下側の紙幣収納庫22Bに引き渡すこと、或いは搬送路71、73、75、77及び78に沿って進行させ、下側の紙幣収納庫22Aに引き渡すこともできる。
これと同様に下搬送部21は、これらの4通りの搬送経路に沿って紙幣を反対方向へ進行させることにより、紙幣収納庫22D、22C、22B又は22Aから受け取った紙幣を下部ユニット後受渡口T21へ搬送し、上部ユニット10U(図4)へ引き渡すこともできる。
これを他の観点から見ると、下搬送部21は、搬送路73、75及び77により、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで以下では、この搬送路を下基幹搬送路WL(図2)とも呼ぶ。
さらに上前搬送部14における前側部分であって、リジェクト庫23のほぼ真上となる箇所には、複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイドにより、上下方向に沿った搬送路80が形成されている。リジェクト搬送路としての搬送路80の上端は、下部ユニット前受渡口T22となっており、上述した上部ユニット10Uの上部ユニット前受渡口T12(図4)との間で紙幣を受け渡すことができる。搬送路80の下端は、リジェクト庫23と接続されている。
[1−4−2.紙幣収納庫及びリジェクト庫の構成]
紙幣収納庫22(22A、22B、22及び22D)は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状に形成されている。紙幣収納庫22の内部には、紙幣を集積して収納する収納空間、該収納空間の上側に配置され紙幣の分離処理及び放出処理を行う分離放出部、及び該分離放出部と紙幣収納庫22の上端との間で紙幣を搬送する収納庫搬送部等が設けられている。また各紙幣収納庫22は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。
紙幣収納庫22は、紙幣を収納する収納処理を行う場合、上側の下搬送部21から紙幣を受け取ると、この紙幣を収納庫搬送部により分離放出部へ搬送して収納空間内へ放出し、該収納空間内に集積した状態で収納する。また紙幣収納庫22は、紙幣を繰り出す繰出処理を行う場合、収納空間内に集積された紙幣を分離放出部により1枚ずつに分離し、これを収納庫搬送部により上方へ搬送して上側の下搬送部21に引き渡すことにより繰り出す。因みに紙幣収納庫22は、紙幣制御部11の制御により、繰出処理のみを行う出金庫として動作することや、収納処理のみを行う入金庫として動作することもできる。
一方、リジェクト庫23は、直方体状に形成されているものの、紙幣収納庫22と比較して、左右方向の長さがほぼ同等である一方、上下方向の長さがやや短く、また前後方向の長さが半分程度に短縮されている。このリジェクト庫23は、紙幣収納庫22と類似した構成となっており、紙幣を集積して収納する収納空間、該収納空間の上側に配置され紙幣の放出処理を行う放出部、及び該放出部とリジェクト庫23の上端との間で紙幣を搬送するリジェクト庫搬送部等が設けられている。すなわちリジェクト庫23は、集積されて紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す分離機能を有していない。
リジェクト庫23は、リジェクト紙幣(以下、これをリジェクト媒体とも呼ぶ)が下搬送部21により搬送されて来ると、当該紙幣を内部に収納する収納処理として、この紙幣を下搬送部21から受け取り、リジェクト庫搬送部により放出部へ搬送して収納空間内へ放出し、該収納空間内に集積した状態で収納する。
因みに各紙幣収納庫22及びリジェクト庫23は、いわゆるカセットとして構成されており、下部ユニット10Lに形成されたスロット(図示せず)に対し、装填し又は取り出し得るようになっている。すなわち各紙幣収納庫22及びリジェクト庫23は、紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10Lが引き出された状態で(図3(B))、スロットから引き抜かれ、或いは当該スロットに装填される。
スロットから取り外された紙幣収納庫22は、金融機関の職員等により、所定の場所へ運搬された後、その内部に収納されていた紙幣が取り出され、或いは紙幣が収納される。このとき収納される紙幣は、所定の紙幣処理装置等により金種、真偽、損傷の程度等が鑑別されたものであり、出金処理において顧客へ出金し得るような良好な状態となっている。
またスロットから取り外されたリジェクト庫23は、金融機関の職員等により、その内部に収納されていた紙幣(すなわちリジェクト紙幣)が取り出され、回収される。すなわちリジェクト庫23は、下部ユニット10Lのスロット(図示せず)に装填される場合には、内部に紙幣を収納していない状態、すなわち空の状態となっている。
[1−5.紙幣入出金機における各種処理]
次に、図6に示すように紙幣入出金機10(図2、図4及び図5)を模式化した上で、該紙幣入出金機10における紙幣の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等について、それぞれ詳細に説明する。
紙幣入出金機10は、紙幣入出金機フレーム10F(図2)に上部ユニット10U及び下部ユニット10Lが格納されることにより、その後端近傍において上部ユニット後受渡口T11(図4)及び下部ユニット後受渡口T21(図5)を接続し、これにより両者の間で紙幣を受け渡す後受渡部C1(図2、図6)を形成している。またこのとき紙幣入出金機10は、その前端近傍において、上部ユニット前受渡口T12(図4)及び下部ユニット前受渡口T22(図5)を接続し、これにより両者の間で紙幣を受け渡す前受渡部C2(図2、図6)を形成している。
図6では、接客部12、鑑別部15、一時保留部17、紙幣収納庫22(22A〜22D)及びリジェクト庫23(以下、これらを単にモジュールとも呼ぶ)を、それぞれ単純な長方形により表している。また図6では、上前搬送部14の上前第1切替部41及び上前第2切替部42、上後搬送部16の上後切替部51、並びに下搬送部21の切替部61、62及び63(以下、これらを単に切替部とも呼ぶ)を、それぞれ単純な三角形により表している。
さらに図6では、各モジュール及び各切替部をそれぞれ結ぶ搬送路を線分(すなわち直線、曲線又はこれらの組合せ)により表している。ただしこの図6では、一部において、各モジュールや各搬送部において互いに接続された複数の搬送路をまとめて1つの搬送路としている。
すなわち、搬送路W1は、接客部12の搬送路33及び上前搬送部14の搬送路43に相当する。搬送路W2は、上前搬送部14の搬送路44に相当する。搬送路W3は、上前搬送部14の搬送路45及び下搬送部21の搬送路80に相当する。搬送路W4は、上前搬送部14の搬送路46、接客搬送部13の搬送路38及び37、並びに接客部12の搬送路34に相当する。
また、搬送路W5は、上前搬送部14の搬送路47、鑑別部15の鑑別搬送路48及び上後搬送部16の搬送路52に相当する。搬送路W6は、上後搬送部16の搬送路53に相当する。搬送路W7は、上後搬送部16の搬送路54及び下搬送部21の搬送路71に相当する。
さらに、搬送路W8D、W8C及びW8Bは、それぞれ搬送路73、75及び77に相当する。またこの搬送路W8D、W8C及びW8Bをまとめて搬送路W8又は収納搬送路とも呼ぶ。搬送路W9D、W9C、W9B及びW9Aは、それぞれ搬送路72、74、76及び78とそれぞれ対応する。またこの搬送路W9D、W9C、W9B及びW9Aをまとめて搬送路W9とも呼ぶ。
因みに、上述した上基幹搬送路WUは、搬送路W2、W5及びW7の一部分に相当する。また上述した下基幹搬送路WLは、搬送路W8D、W8C及びW8B(すなわち搬送路W8)に相当する。
[1−5−1.入金処理及び収納処理]
まず、現金自動預払機1(図1)において顧客との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、紙幣入出金機10は、前段の入金処理(入金計数処理とも呼ばれる)により、顧客に入金された紙幣の金種等を鑑別しながら枚数を計数し、これに続く後段の収納処理(入金収納処理とも呼ばれる)により、各紙幣を適切な収納箇所へ搬送して収納するようになっている。この入金処理は、紙幣入出金機10の外部から紙幣を受け入れる受入処理となっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して顧客から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金処理を開始する。
このとき紙幣入出金機10は、まず入出金口5(図1)のシャッタ及び接客部12のシャッタ32(図4)を開いて顧客に収容器31内へ紙幣を投入させる。次に紙幣制御部11は、顧客から操作表示部6(図1)を介して紙幣の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、入出金口5のシャッタ及び接客部12のシャッタ32を閉塞した上で、分離部31Sにより当該収容器31内の紙幣を1枚ずつに分離し、その下流側に位置する搬送路W1に順次引き渡す。
このとき紙幣入出金機10は、図7(A)に示す矢印R1のように、紙幣を搬送路W1、W2及びW5に沿って搬送することにより、鑑別部15において該紙幣を鑑別し、得られた鑑別結果を紙幣制御部11へ供給する。
これに応じて紙幣制御部11は、取得した鑑別結果を基に、まず各紙幣における損傷の程度や金種、或いは真偽を判断する。次に紙幣制御部11は、各紙幣について、正常な紙幣として認識でき以降の処理を継続できる入金受入紙幣であるか、或いは正常な紙幣として認識できないため一度顧客に返却すべき入金リジェクト紙幣であるかを判断する。多くの場合、例えば折り畳まれた状態の紙幣、多くの皺が形成された紙幣、或いは誤って接客部12に投入された紙幣以外の紙(メモ用紙やレシート等)等が入金リジェクト紙幣として判断される。
さらに紙幣制御部11は、入金受入紙幣について、損傷の程度が大きいリジェクト紙幣についてはリジェクト庫23を、正常であり再利用可能な紙幣については金種ごとの各紙幣収納庫22を、それぞれ最終的な搬送先として決定する。さらに紙幣制御部11は、紙幣の搬送順序と対応付けて、各紙幣の金種、記番号、搬送状態(すなわちスキュー及び紙幣同士の間隔)、並びに決定した搬送先等を、鑑別部15における入金時情報として記憶部に記憶しておく。
次に紙幣入出金機10は、紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣ごとの鑑別結果に応じて上後切替部51における搬送経路を切り替えながら、紙幣を搬送する。具体的に紙幣入出金機10は、入金受入紙幣については、矢印R2として示すように、搬送路W5及びW6に沿って搬送し、一時保留部17へ進行させる。
一時保留部17は、上述した収納処理を行うことにより、上流の上後切替部51から順次引き渡される入金受入紙幣を順次収納していく。このとき一時保留部17は、搬送路W6と同等の搬送速度で一時保留搬送路56(図4)により紙幣を搬送すると共にテープ58を走行させ、且つ周側面がこれらと同等の線速度となるようドラム55を回転させる。これにより一時保留部17は、搬送路W5等における紙幣の搬送状態、すなわち搬送方向に対する各紙幣の傾斜角度や前後の紙幣同士の間隔等を維持したまま、各紙幣を順次巻き付けていく。
またこのとき一時保留部17は、走行監視センサ59(図4)により各紙幣の搬送状態(以下これを収納時搬送状態とも呼ぶ)を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、この検知結果を紙幣の搬送順序と対応付け、一時保留部17における収納時搬送状態を表す収納時搬送情報として、記憶部に記憶させる。
一方、紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣については、矢印R3として示すように、搬送路W5、W7及びW8に沿って搬送し、下搬送部21内へ進行させる。このとき紙幣入出金機10では、上流の搬送路W7から下流の搬送路W8へ搬送された入金リジェクト紙幣を、この搬送路W8内に順次貯留していく。換言すれば、搬送路W8は、本来的には紙幣を主に主搬送方向である前後方向へ搬送する部分として機能するものの、入金処理においては紙幣を貯留する部分(以下これを搬送路貯留部WSとも呼ぶ)として機能するようになっている。
因みに紙幣入出金機10は、上流の搬送路W7から入金リジェクト紙幣が搬送されてくると、搬送路W8において紙幣1枚分及び僅かな隙間に相当する搬送距離だけ各搬送ローラを回転させ、直ちに停止する。紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣が発生する度にこの動作を繰り返すことにより、入金リジェクト紙幣同士の間隔を搬送時における紙幣同士の間隔よりも短縮しながら、当該入金リジェクト紙幣を搬送路貯留部WSに貯留していく。すなわち紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣が搬送されてくる毎に、搬送路貯留部WSへ間欠的に搬送し、貯留していく。
ところで紙幣入出金機10は、搬送路W8が形成された下搬送部21の各搬送ローラを駆動するモータ(図示せず)への制御信号等を基に、紙幣制御部11により、最初の入金リジェクト紙幣における後端の位置を把握している。このため紙幣制御部11は、当該後端が搬送路貯留部WSの前端に到達すると、当該搬送路貯留部WSの内部における貯留可能な全ての箇所に入金リジェクト紙幣を貯留した状態、いわゆる満杯の状態となり、新たな入金リジェクト紙幣を貯留し得ないと判断する。
この場合、紙幣入出金機10は、まず入金処理を一時的に中断して接客部12からの紙幣の搬送を一度停止させる。次に紙幣入出金機10は、図7(B)に矢印R4として示すように、搬送路貯留部WSの内部に貯留している全ての入金リジェクト紙幣を搬送路W8,W7、W5及びW4に沿って順次搬送し、すなわち入金処理の場合とは反対方向に逆送させて、接客部12の収容器31内へ戻す。さらに紙幣入出金機10は、接客部12のシャッタ32(図4)等を解放すると共に操作表示部6(図1)に所定のメッセージを表示させることにより、顧客に対し、紙幣の状態を確認すると共に収容器31の内部に紙幣を入れ直すように促す。その後紙幣制御部11は、入金処理を再開する。
やがて紙幣入出金機10は、接客部12の収容器31から全ての紙幣を取り込み終えると、搬送路貯留部WSに入金リジェクト紙幣が貯留されていれば、これを接客部12へ搬送(すなわち逆送)して顧客に返却した上で、確認及び再投入させる。一方、紙幣入出金機10は、搬送路貯留部WSに入金リジェクト紙幣が貯留されていなければ、入金処理を完了する。
このとき紙幣入出金機10は、紙幣制御部11において、接客部12から取り込んだ紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部6(図1)に表示させ、顧客にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか否かを選択させる。
ここで紙幣入出金機10は、顧客により入金取引の中止が指示された場合、一時保留部17に保留している全ての紙幣を搬送路W6、W5及びW4に沿って順次搬送し、接客部12の収容器31内に放出してから、シャッタ32(図4)等を解放して顧客に返却する。
一方、紙幣入出金機10は、顧客により入金取引の継続が指示された場合、図8に示すように、収納処理を開始する。具体的に紙幣制御部11は、まず一時保留部17において繰出処理を開始することにより、収納している紙幣(入金受入紙幣)を順次繰り出し、搬送路W6に沿って下流の上後切替部51へ引き渡す。
このとき一時保留部17は、ドラム55(図4)の周側面における線速度、テープ58の走行速度及び一時保留搬送路56における紙幣の搬送速度を搬送路W6の搬送速度に合わせる。これにより一時保留部17は、収納時の搬送状態、すなわち搬送方向に対する各紙幣の傾斜角度や前後の紙幣同士の間隔等を再現しながら、紙幣を収納時とは逆順で下流の搬送路W6へ順次引き渡していく。
またこのとき一時保留部17は、走行監視センサ59(図4)により紙幣の搬送状態を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、このとき得られた検知結果を一時保留部17における繰出時搬送情報とし、これを記憶部に記憶している収納時搬送情報と比較することにより、収納時の搬送状態が正しく再現されているか否かを逐次判定する。
ここで紙幣制御部11は、収納時の搬送状態が正しく再現されている紙幣については、入金処理において鑑別部15から取得した鑑別結果を基に紙幣ごとに決定した搬送先をそのまま利用できるものと見なし、この搬送先に応じて上後切替部51の搬送経路を切り替えさせる。
すなわち紙幣入出金機10は、決定された搬送先が紙幣収納庫22(22A〜22D)であれば、紙幣を矢印R5のように搬送路W6、W7、W8及びW9に沿って搬送する。このとき紙幣入出金機10は、切替部61、62及び63におけるそれぞれの搬送経路を適切に切り替えさせることにより、紙幣の金種に応じて定められた搬送先である各紙幣収納庫22(22A〜22D)へそれぞれ搬送し、収納させる。
また紙幣入出金機10は、決定された搬送先がリジェクト庫23であれば、紙幣(すなわちリジェクト紙幣)を矢印R6のように搬送路W6、W5、W2及びW3に沿ってリジェクト庫23へ搬送し、収納させる。
かくして紙幣入出金機10は、再利用すべき通常の紙幣を金種ごとに分類して各紙幣収納庫22に収納でき、また再利用すべきで無いリジェクト紙幣をリジェクト庫23に収納できる。やがて紙幣入出金機10は、一時保留部17に収納された全ての紙幣をそれぞれの搬送先へ搬送し終えると、この収納処理を終了する。
一方、紙幣制御部11は、収納時の搬送状態が正しく再現されていない紙幣については、決定された搬送先を利用すべきで無いものと見なし、当該紙幣及びこれに続く紙幣の搬送先をリジェクト庫23に変更する。ここで収納時の搬送状態が正しく再現されていない紙幣とは、例えば搬送方向に対する傾斜角度(いわゆるスキュー)や紙幣同士の間隔が収納時と相違している紙幣や、他の紙幣と連なった状態の(すなわち重送や連鎖となっている)紙幣等である。具体的に紙幣入出金機10は、矢印R6として示したように、この紙幣を搬送路W6及びW5に沿って搬送し、鑑別部15を通過させる。
ここで紙幣制御部11は、これらの紙幣を鑑別部15において再度鑑別させ、特に紙幣の金種や記番号、並びに搬送状態を再度認識する。そのうえで紙幣制御部11は、認識した紙幣の金種や記番号、並びに搬送状態等の情報を入金処理において記憶した入金時情報と照合し、高い割合で一致した場合には、当該紙幣及びこれ以降の紙幣については入金処理において決定した搬送先を利用できるものと判断する。
このとき紙幣制御部11は、当該紙幣及びこれ以降の紙幣を逆送させて上流の一時保留部17に再度収納させた上で、改めて紙幣ごとに決定された搬送先に応じて、矢印R5又はR6として示した各搬送路に沿って搬送し、その搬送先に収納させる。因みに紙幣制御部11は、認識した紙幣の金種や記番号、並びに搬送状態が入金処理時に記憶した金種や記番号、並びに入金搬送状態と一致しなかった場合には、当該紙幣を再利用できないものと見なし、搬送路W2及びW3に沿ってリジェクト庫23へ搬送し、収納させる。
このように紙幣入出金機10は、入金取引において、前段の入金処理において紙幣を鑑別した際に各紙幣の搬送先を決定しながら一時保留部17に収納し、入金取引の継続が指示されると、後段の収納処理において各紙幣を鑑別部15により再度鑑別すること無く、既に決定している搬送先へ搬送する。
[1−5−2.出金処理]
次に、現金自動預払機1(図1)において顧客との間で出金取引が行われる場合について説明する。この場合、紙幣入出金機10は、顧客に指定された金額に応じた金種及び枚数の紙幣を出金する出金処理を行うようになっている。この出金処理は、紙幣入出金機10内の紙幣を外部へ排出する排出処理となっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して顧客から出金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、出金処理を開始する。
このとき紙幣入出金機10は、まず操作表示部6を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付けると、紙幣制御部11において出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。続いて紙幣入出金機10は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫22の内部に集積された状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W9に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機10は、図9(A)に示す矢印R7のように、紙幣を搬送路W9、W8、W7及びW5に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機10は、まず鑑別部15内の最も後方に位置する走行センサ49C(図4)により紙幣の走行状態のみを検知し、その検知結果を直ちに紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、当該紙幣の走行状態に応じてその搬送先を接客部12又はリジェクト庫23に決定する。
具体的に紙幣制御部11は、紙幣の走行状態に問題が無ければ、その搬送先を接客部12に決定し、矢印R8として示すように、該紙幣を搬送路W5及びW4に沿って下流の接客部12へ搬送し、収容器31の内部に放出して集積させる。
一方、紙幣制御部11は、例えば重送されている等、紙幣の走行状態に問題があれば、その搬送先をリジェクト庫23に決定し、上前第2切替部42及び上前第1切替部41の搬送経路を切り替えさせ、矢印R9として示すように、該紙幣を搬送路W5、W2及びW3に沿って下流のリジェクト庫23へ搬送して、その内部に収納させる。なお上前第1切替部41は、この出金処理において上側の搬送路43及び後側の搬送路44(図4)を接続する搬送経路を形成する機会が無いため、予め、後側の搬送路44及び下側の搬送路45(図4)を接続する搬送経路に切り替えておいても良い。
ところで鑑別部15(図4)は、上流側に位置する走行センサ49Cにより走行状態を検知してその検知結果を紙幣制御部11へ送出した後、その下流側に位置するイメージセンサ49B及び真偽センサ49Aによる検知結果を紙幣制御部11へ送出する。すなわち紙幣制御部11は、走行センサ49Cにより走行状態に応じて各紙幣の搬送先を決定した後に、イメージセンサ49B及び真偽センサ49Aによる検知結果を取得することになる。
このため紙幣入出金機10は、紙幣制御部11においてイメージセンサ49B及び真偽センサ49Aからの検知結果により紙幣が正常で無く出金すべきで無いと判断された場合、図9(B)に矢印R10として示すように、搬送中の当該紙幣を直ちに、すなわち搬送路W5及びW4に沿って搬送している途中で停止させる。さらに紙幣入出金機10は、矢印R11として示すように、当該紙幣を逆送させて鑑別部15の後側まで到達させた後、当該紙幣のみ搬送先をリジェクト庫23に設定して上前第2切替部42の搬送経路を切り替えさせ、図9(C)矢印R12として示すように、当該紙幣をリジェクト庫23へ搬送して収納させる。
因みに紙幣入出金機10は、後続の正常な紙幣については、再び上前第2切替部42の搬送経路を切り替えさせ、矢印R8(図9(A))として示したように、搬送路W5及びW4に沿って下流の接客部12へ搬送し、放出部31Eにより収容器31の内部に放出して集積させる。やがて紙幣入出金機10は、出金額に応じた全ての紙幣を接客部12における収容器31の内部に集積し終えると、シャッタ32(図4)等を開放させて顧客に当該紙幣を取り出させ、出金処理を完了する。
このように紙幣入出金機10は、出金処理において、鑑別部15からの検知結果に基づいて上前第2切替部42の搬送経路を切り替えながら、出金額に応じた紙幣を上流の各紙幣収納庫22から下流の接客部12まで搬送し、顧客に引き渡す。
[1−5−3.紙幣移動処理]
次に、紙幣入出金機10において紙幣収納庫22同士の間で紙幣を移動させる紙幣移動処理について説明する。この紙幣移動処理では、移動元となる一の紙幣収納庫22から接客部12へ紙幣を搬送し、その後該接客部12から移動先となる他の紙幣収納庫22へ紙幣を搬送する。
具体的に紙幣入出金機10は、作業員等により操作表示部6(図1)を介して移動元及び移動先の紙幣収納庫22、並びに移動する紙幣の枚数等の指示を受け付けると、紙幣移動処理を開始する。まず紙幣入出金機10は、移動元として指定された紙幣収納庫22から、出金処理の場合と同様に、内部に集積された状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W9に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機10は、図9(A)に示した矢印R7のように、紙幣を搬送路W9、W8、W7及びW5に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機10は、出金処理の場合と同様、走行センサ49C(図4)から得られた検知結果を基に紙幣の走行状態を判断し、その搬送先を決定する。
すなわち紙幣入出金機10は、紙幣の走行状態に問題が無ければ搬送先を接客部12に決定し、矢印R8に沿って接客部12へ搬送して、収容器31の内部に放出して集積させ、紙幣の走行状態に問題があれば、矢印R9に沿ってリジェクト庫23へ搬送し、その内部に収納させる。
因みに紙幣入出金機10は、出金処理の場合と異なり、矢印R7に沿って紙幣を搬送する段階では、イメージセンサ49B及び真偽センサ49A(図4)による検知結果を基に紙幣の状態を判断しない。これは、移動元の紙幣収納庫22に収納されている紙幣が、一度は鑑別部15において正常と鑑別された紙幣、又は外部の紙幣処理装置等において正常と鑑別されてから収納された紙幣であり、走行状態以外の状態について改めて判断する必要性が低いためである。
やがて紙幣入出金機10は、接客部12の収容器31に収容可能な最大枚数である200枚の紙幣を搬送し終え、或いは操作者等に指示された枚数の紙幣を搬送し終えると、図10(A)に矢印R11として示すように、接客部12から紙幣を繰り出して搬送路W1、W2及びW5に沿って搬送し、鑑別部15において該紙幣を鑑別する。
ここで紙幣入出金機10は、正常と鑑別された紙幣については、矢印R12として示すように、搬送路W5、W7、W8及びW9に沿って搬送し、切替部61、62及び63における搬送経路を適宜切り替えることにより、該紙幣を移動先である紙幣収納庫22へ搬送して収納させる。
また紙幣入出金機10は、異常と鑑別された紙幣については、矢印R14として示すように、搬送路W5及びW6に沿って搬送し、一時保留部17に収納させる。やがて紙幣入出金機10は、接客部12に収納していた全ての紙幣を繰り出した後に、一時保留部17から紙幣を順次繰り出し、図10(B)に矢印R15として示すように搬送路W6、W5、W4、W2及びW3に沿って搬送し、リジェクト庫23に収納させる。かくして紙幣入出金機10は、一連の紙幣移動処理を終了する。
因みに紙幣入出金機10では、各紙幣収納庫22における紙幣の最大収納枚数が例えば2000〜3000枚程度である一方、接客部12における紙幣の最大収納枚数が、1回の取引処理において取り扱う最大枚数である200枚程度となっている。このため紙幣入出金機10では、200枚よりも多い枚数の紙幣を移動させる場合には、複数回に分けて紙幣移動処理を行うようになっている。
このように紙幣入出金機10は、紙幣移動処理において、接客部12を一時的な紙幣の収納場所として利用しながら、移動元の紙幣収納庫22から移動先の紙幣収納庫22へ紙幣を移動させる。
[1−5−4.接客分離異常リトライオーバ処理]
ところで紙幣入出金機10では、上述した入金処理等において、接客部12の収容器31(図4)から分離部31Sにより紙幣を1枚ずつに分離する場合、上述したように分離異常が発生する恐れがある。このため紙幣入出金機10では、この分離異常が発生した場合、上述した接客分離異常リトライ処理を行うことにより、分離異常の解消を図る。
ここで紙幣入出金機10では、1回の接客分離異常リトライ処理によって分離異常を解消できない場合、この接客分離異常リトライ処理を繰り返すことになる。しかしながら紙幣入出金機10では、例えば濡れた状態の複数の紙幣が互いに貼り付いている場合等、接客分離異常リトライ処理を複数回実行しても分離異常を解消できない場合がある。このような場合、紙幣入出金機10では、分離異常を解消できない紙幣を利用者に返却する、接客分離異常リトライオーバ処理を行うようになっている。
具体的に紙幣入出金機10は、接客部12において収容器31から分離部31Sにより紙幣を分離して繰り出す場合、紙幣制御部11により、該接客部12の光学センサ(図示せず)から得られる検出信号を基に、各紙幣が正常に分離されているか否かを監視する。
紙幣制御部11は、分離異常の発生を検知した場合、接客部12の分離部31S及び搬送路33により、上述した接客分離異常リトライ処理を実行させる。このとき紙幣制御部11は、1回の接客分離異常リトライ処理では分離異常を解消できなかった場合、該接客分離異常リトライ処理を繰り返させると共に、該接客分離異常リトライ処理を繰り返した回数(以下これをリトライ回数と呼ぶ)を計数する。そのうえで紙幣制御部11は、このリトライ回数が所定の閾値(例えば5回)以上となった場合、紙幣入出金機10により接客分離異常リトライオーバ処理を開始させる。
すなわち紙幣入出金機10は、まず図11(A)に示す矢印R16のように、重送やスキューが発生した状態のまま、紙幣を搬送路W1、W2及びW5に沿って搬送し、該搬送路W5上で静止させる。次に紙幣入出金機10は、上前第2切替部42の搬送路経路を切り替えた上で、図11(B)に示す矢印R17のように、この紙幣を搬送路W5及びW4に沿って搬送し、接客部12において放出部31Eにより収容器31内へ放出する。これにより紙幣入出金機10は、接客分離異常リトライオーバ処理を終了する。
その後紙幣入出金機10は、接客部12のシャッタ32(図4)を開放し、顧客に紙幣の状態を確認させ、必要に応じて紙幣を再度投入させるようになっている。
[1−5−5.取忘取込処理]
ところで紙幣入出金機10は、上述した出金処理において、出金額の紙幣を接客部12における収容器31の内部に集積し終えると、シャッタ32(図4)等を開放して顧客に紙幣が取り出されるのを待ち受ける。
ここで紙幣入出金機10は、図示しないセンサを用いて紙幣が取り出されたか否かを監視しており、シャッタ32等を開放してから所定時間(例えば30秒間)以内に紙幣が取り出されなかった場合、顧客が紙幣を取り忘れて立ち去ったものと判断する。以下、このとき収容器31内に残された紙幣を取忘紙幣と呼ぶ。
このとき紙幣入出金機10は、取忘紙幣を内部に取り込む取忘取込処理として、入金処理(図7(A)及び(B))並びに収納処理(図8)の場合と概ね同様に紙幣を搬送することにより、各紙幣を紙幣収納庫22又はリジェクト庫23へ搬送して収納させるようになっている。
因みにこの場合、収容器31内には、本来的には出金処理により出金された、正常であり再利用可能な紙幣のみが収納されているはずであるが、誤って異物等が投入されてしまう可能性や、悪意のある者により紙幣がすり替えられる可能性もある。このため紙幣入出金機10は、この取忘取込処理において、入金処理及び収納処理の場合と同様に、収容器31内に収納されている紙幣が外部から新たに投入されたものと見なして鑑別処理等を行うようになっている。
具体的に紙幣入出金機10は、まず矢印R1(図7(A))のように紙幣を搬送路W1、W2及びW5に沿って搬送し、鑑別部15において鑑別する。このとき紙幣制御部11は、得られた鑑別結果を基に紙幣の搬送状態や損傷の程度等を判断し、その搬送先を入金処理の場合と同様に決定する。
すなわち紙幣入出金機10は、正常な紙幣として認識できた入金受入紙幣については、再利用可能であれば、搬送先をその金種に応じた紙幣収納庫22に決定し、再利用不可能であれば(すなわちリジェクト紙幣であれば)、搬送先をリジェクト庫23に決定する。そのうえで紙幣入出金機10は、この入金受入紙幣を矢印R2のように搬送路W5及びW6に沿って一時保留部17へ搬送し、収納させる。
また紙幣入出金機10は、リジェクト紙幣については、まず矢印R3(図7(A))のように搬送路W5、W7及びW8に沿って搬送し、この搬送路W8上(すなわち搬送路貯留部WS)に貯留させる。紙幣入出金機10は、搬送路貯留部WSが満杯になると、矢印R4(図7(B))のように搬送路W8、W7、W5及びW4に沿って順次搬送し、収容器31内へ戻す。このとき収容器31に戻された紙幣は、その後分離部31Sにより分離され、矢印R1(図7(A))で示した搬送路に沿って搬送される。
やがて紙幣入出金機10は、接客部12の収容器31から全ての紙幣を取り込み終えると、一時保留部17に収納している紙幣をそれぞれの搬送先へ搬送する。すなわち紙幣入出金機10は、再利用可能であり搬送先が紙幣収納庫22に決定された紙幣については、矢印R5(図8)のように搬送路W6、W7、W8及びW9に沿って紙幣収納庫22へ搬送し、収納させる。また紙幣入出金機10は、再利用不可能であり搬送先がリジェクト庫23に決定された紙幣(リジェクト紙幣)については、矢印R6(図8)のように搬送路W6、W5、W2及びW3に沿って紙幣収納庫22へ搬送し、収納させる。
このように紙幣入出金機10は、出金処理において紙幣の取り忘れが発生した場合、取忘取込処理として、取忘紙幣を入金処理及び収納処理と同様の搬送経路により紙幣収納庫22又はリジェクト庫23へ搬送し、収納するようになっている。
[1−6.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、上部ユニット10U(図4)の下側部分に配置された上前搬送部14、鑑別部15及び上後搬送部16により上搬送部10UCを構成し、前後方向に沿った一直線状の上基幹搬送路WU(図2、図6)を形成した。また紙幣入出金機10は、下部ユニット10L(図5)の上側部分に下搬送部21を配置し、比較的後寄りの部分において、前後方向に沿った一直線状の下基幹搬送路WL(図2、図6)を形成した。
さらに紙幣入出金機10は、上部ユニット10Uの下端における前後両端の近傍に、上部ユニット前受渡口T12及び上部ユニット後受渡口T11(図4)を設け、また下部ユニット10Lの上端における前後両端の近傍に下部ユニット前受渡口T22及び下部ユニット後受渡口T21(図5)をそれぞれ設けた。
そのうえで紙幣入出金機10では、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lが紙幣入出金機フレーム10F内に格納された場合に(図2)、後端近傍において上部ユニット後受渡口T11(図4)及び下部ユニット後受渡口T21(図5)を接続し、両者の間で紙幣を受け渡す後受渡部C1(図2、図6)を形成するようにした。また紙幣入出金機10では、この場合に、前端近傍において、上部ユニット前受渡口T12(図4)及び下部ユニット前受渡口T22(図5)を接続し、両者の間で紙幣を受け渡す前受渡部C2(図2、図6)を形成するようにした。
すなわち紙幣入出金機10では、前後方向に沿った上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを後側の後受渡部C1により互いに接続し、左右方向から見て英大文字の「C」又は「U」を描くような構成とした。これを換言すれば、紙幣入出金機10は、上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLにより直線を1回のみ折り返したような形状の搬送路を形成し、その中ほどに鑑別部15を配置した上で、該鑑別部15の一方に接客部12及びリジェクト庫23を接続し、他方に一時保留部17及び紙幣収納庫22を接続した構成とした。
これにより紙幣入出金機10は、特許文献1の紙幣入出金機等と比較して、紙幣の搬送経路における屈曲箇所の数を大幅に削減できると共に、搬送経路長も短く抑えることができるので、紙幣の搬送に伴う詰まり等の発生頻度を最小限に抑えて、各処理を円滑に進めることができる。
また紙幣入出金機10は、仮に上後切替部51(図6)の後側に接続された搬送路W7及び搬送路W8を前後方向に沿った一直線状の搬送路とした場合、該上後切替部51よりも後側に4個の紙幣収納庫22を配置するために、装置全体の前後長が極めて長くなる恐れがあった。
これに対して本実施の形態による紙幣入出金機10は、搬送路W7に対し搬送路W8を折り返すように屈曲させたため、上後切替部51よりも前側に紙幣収納庫22の一部を配置することができ、装置全体の前後長を比較的短く抑えることができる。これにより、この紙幣入出金機10が組み込まれる現金自動預払機1(図1)は、やはり前後長を比較的短く抑え得るため、例えばコンビニエンスストアの店内等、前後方向の長さが比較的短い設置場所に対し、容易に設置することができる。
さらに紙幣入出金機10では、上部ユニット10Uにおける最も下側に上搬送部10UCを配置すると共に(図4)、下部ユニット10Lにおける最も上側に下搬送部21を配置した(図5)。このため紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム10Fから上部ユニット10Uを引き出すだけで、その下面側において上搬送部10UCを外部に露出させることができ(図3(A))、また紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10Lを引き出すだけで、その上面側において下搬送部21を外部に露出させることができる。
これにより紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム10Fから上部ユニット10U又は下部ユニット10Lを引き出す、といった極めて簡易な作業により(図3)、一般に紙幣の詰まり等のような障害の発生頻度が比較的高い搬送路及びその近傍を、容易に且つ素早く外部に露出でき、保守作業の容易化や時間短縮を図ることができる。
これを他の観点から見れば、紙幣入出金機10では、上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを何れも前後方向に沿った直線状に形成し、且つ上下方向に互いに近接した位置に配置し、且つ後受渡部C1において両者を接続した。このため紙幣入出金機10では、上部ユニット10U又は下部ユニット10Lを紙幣入出金機フレーム10Fから引き出すだけで両者を容易に分離でき、保守作業の容易化や効率化を図ることができる。また紙幣入出金機10では、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを何れも紙幣入出金機フレーム10F内に格納するだけで、両者を接続して連続した基幹搬送路を形成できる。
さらに紙幣入出金機10では、紙幣を長期的に収納する箇所、すなわち各入金取引や出金取引等が完了した後に紙幣を保有している箇所である紙幣収納庫22及びリジェクト庫23を、何れも下部ユニット10L側に配置した。これを換言すれば、紙幣入出金機10では、紙幣を長期的に収納する箇所を上部ユニット10U側に設けず、それぞれの入金取引や出金取引等が完了した時点で、上部ユニット10U側に紙幣を保有しないようにした。
このため紙幣入出金機10では、紙幣収納庫22及びリジェクト庫23に対する紙幣の補充や回収のような、比較的高い頻度で行う必要がある保守作業において、紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10L側のみを引き出せば良く(図3(B))、上部ユニット10U側を引き出す必要が無い。このとき紙幣入出金機10では、上部ユニット10U側を引き出し、また格納するといった作業が不要になるだけで無く、下部ユニット10Lの上側を空けた状態で、作業員等に無理な姿勢をさせること無く効率良く保守作業を行わせることができる。
また他の観点から見れば、紙幣入出金機10では、例えば一時保留部17内に紙幣が残留している場合等、正常に収納されている紙幣とは関係無く、偶発的に発生した障害を解消するための保守作業等を行う場合にのみ、上部ユニット10Uを引き出して保守作業を行わせれば良い。
ところで、特許文献1に示した従来の紙幣入出金機では、入金処理において、入出金部の下方から繰り出され鑑別部において鑑別された紙幣が入金リジェクト紙幣であった場合、該入出金部の下側ないし後側を結ぶようにループ状に形成された搬送経路を利用して、この紙幣を該入出金部に直ちに搬送することができた。このため従来の紙幣入出金機では、大量の入金リジェクト紙幣が発生した場合にも、随時入出金部へ戻すことができ、入金処理を中断すること無く対処することができた。
ここで、実際の入金処理において入金リジェクト紙幣が発生する頻度を集計すると、国や地域により相違するものの、例えば1〜2%程度のように極めて低いことが判明した。紙幣入出金機では、1回の取引処理において処理し得る紙幣の最大枚数が例えば100〜200枚程度であるため、入金リジェクト紙幣の実際の発生枚数は多くとも4〜5枚程度と想定される。このため紙幣入出金機では、最大で4〜5枚程度の入金リジェクト紙幣を一時的に貯留できる箇所を用意でき、且つこの入金リジェクト紙幣を入出金部に搬送することができれば、必ずしもループ状の搬送経路を構成する必要が無い。
このような技術的思想に基づき、本実施の形態による紙幣入出金機10では、入金処理(入金処理)において、紙幣を一時保留部17に収納しており、下側の紙幣収納庫22へ搬送することが無いため、これに伴って使用されない下搬送部21内の搬送経路を搬送路貯留部WSとし、ここに入金リジェクト紙幣を貯留するようにした(図7)。
他の観点から見れば、紙幣入出金機10は、上搬送部10UC及び下搬送部21により、鑑別部15を貫通すると共に1回折り返されて英大文字の「C」又は「U」を描くような搬送経路を形成した。そのうえで紙幣入出金機10は、鑑別部15の一方(例えば前側)の搬送路に接客部12及びリジェクト庫23を接続し、他方(例えば後側)の搬送路に一時保留部17及び紙幣収納庫22をそれぞれ接続する構成とした(図6)。これを換言すれば、紙幣入出金機10は、鑑別部15を貫通する搬送路(鑑別搬送路48)の両側に、1又は2以上の切替部を直列に接続した搬送路をそれぞれ接続した。
さらに異なる観点から見れば、紙幣入出金機10は、上後切替部51により、接客部12へ向かう搬送路W5と、一時保留部17へ向かう搬送路W6と、紙幣収納庫22へ向かう搬送路W7とのうち2つを互いに接続するよう切り替えるようにした。これに加えて紙幣入出金機10は、接客部12へ向かう搬送路W5上に鑑別部15を配置し、当該鑑別部15から見て接客部12側にある搬送路W2に、上前第1切替部41を介してリジェクト庫23を接続した(図6)。
これにより紙幣入出金機10では、入金処理を適切に行い得る構成としながら、上搬送部10UC及び下搬送部21により形成される搬送路をループ状では無く直線を1回折り返したような形状としたことで、従来よりも構成を簡略化でき、小型化や部品点数の削減、さらにはこれに伴う障害発生頻度の低減や保守作業の省力化等を図ることができる。
また別の観点から見れば、紙幣入出金機10では、下部ユニット10Lにおいて、各紙幣収納庫22が接続された下基幹搬送路WLと、搬送路80(すなわちリジェクト搬送路)とを切り離し、互いに接続しないように構成した。これにより紙幣入出金機10では、例えば収納処理(図8)の途中で下部ユニット10L側において紙幣の詰まりが発生し、保守作業が行われる際に、紙幣収納庫22へ搬送される正常な紙幣と、リジェクト庫23へ搬送されるリジェクト紙幣とを混在させること無く、完全に分離した状態を維持でき、紙幣を容易に分別させることができる。
また、特許文献1の紙幣入出金機では、収納処理において、一時保留部から繰り出された紙幣が鑑別部を通過したときにその金種や損傷の程度を鑑別して搬送先を決定して搬送していた。このためこの紙幣入出金機では、一時保留部から繰り出された紙幣が鑑別部を通過して紙幣収納庫へ向かうような搬送経路を形成する必要があった。
ここで一時保留部17(図4)は、いわゆるテープエスクロ方式を採用したため、各紙幣をテープ58と共にドラム55に巻き付けて収納することで、紙幣の順序や紙幣同士の間隔、或いはスキュー等を維持したまま収納し、また繰り出すことができる。換言すれば、この一時保留部17は、紙幣収納庫22のように紙幣を集積して収納する方式とは異なり、繰り出す際の紙幣の分離時に新たに重送や搬送順序の逆転が原理的に殆ど発生せず、収納時の搬送状態を良好に維持できる。
このことを踏まえて本実施の形態による紙幣入出金機10では、入金処理において紙幣をこの一時保留部17に収納すると共に、鑑別部15により得られた鑑別結果及びこれを基に決定した搬送先を記憶しておき、その後の収納処理において、記憶された内容を読み出し、一時保留部17からこの搬送先へ搬送するようにした(図8)。これにより紙幣入出金機10は、一時保留部17から繰り出された紙幣が鑑別部15を通過せずに紙幣収納庫22等へ搬送するような搬送路を形成できるため、従来の紙幣入出金機よりも搬送路を短縮して構成を簡略化することができる。
また紙幣入出金機10は、一時保留部17において紙幣の収納時に走行監視センサ59により紙幣の搬送状態を検知して収納時搬送情報として記憶しておき、紙幣の繰出時に再度走行監視センサ59により紙幣の搬送状態を検知して繰出時搬送情報とし、これを収納時搬送情報と照合するようにした。
これにより紙幣入出金機10は、仮に一時保留部17内での搬送中等に紙幣が周囲に引っかかる等して新たにスキューや重送が発生した場合には、照合結果が大きく相違することで搬送状態が変化したことを検知できる。このような場合、紙幣入出金機10は、搬送状態が変化した紙幣及びこれ以降の紙幣を再利用できないと見なし、リジェクト庫23へ搬送して収納することにより、入金処理時に記憶した搬送先を異なる紙幣に誤設定してしまうことを未然に防止できる。
さらに紙幣入出金機10は、一時保留部17とリジェクト庫23との間に鑑別部15を配置しているため、当該リジェクト庫23へ向かう紙幣を当該鑑別部15により再度鑑別できる。このとき紙幣入出金機10は、鑑別部15において得られた再鑑別結果を入金処理の際に記憶した収納時搬送情報と比較することで、特に金種及び記番号を基に、当該紙幣と対応する収納時搬送情報を特定できる可能性がある。
このような場合、紙幣入出金機10は、当該紙幣及びこれ以降の紙幣について収納時搬送情報を利用できるものと見なし、上搬送部10UCにより当該紙幣及びこれ以降の紙幣を上後切替部51よりも一時保留部17側、すなわち当該一時保留部17内へ逆送させた後、収納時搬送情報に基づいて適切な搬送先に搬送し収納する。これにより紙幣入出金機10は、搬送状態が変化したものの本来的には再利用可能な紙幣について、不必要にリジェクト庫23に搬送させること無く、紙幣収納庫22へ搬送して収納することで、当該紙幣を有効に再利用できる。
ところで紙幣入出金機10では、出金処理において紙幣収納庫22から繰り出される紙幣が、入金処理において鑑別部15において再利用可能と鑑別された紙幣、或いは下部ユニット10Lのフレームから取り外されて所定の紙幣処理装置等により鑑別された上で装填された、再利用可能な状態の紙幣である。このため紙幣入出金機10では、出金処理時にリジェクト紙幣が発生する場合、主にスキューや重送のような搬送状態の不良に起因するものであり、金種の誤りや偽券の検知に起因する可能性が極めて低い。
すなわち紙幣入出金機10では、出金処理において、鑑別部15(図4)の走行センサ49Cからの紙幣の検知結果のみに基づいて当該紙幣の搬送先を決定したとしても、イメージセンサ49B及び真偽センサ49Aからの検知結果によりこの決定が覆される可能性は極めて低い。
このような技術的思想に基づき、本実施の形態による紙幣入出金機10では、出金処理において、紙幣制御部11が鑑別部15の走行センサ49Cからの検知結果のみに基づいて各紙幣の搬送先を接客部12又はリジェクト庫23に決定し、これに応じて上前第2切替部42における搬送経路を切り替えるようにした(図9(A))。これにより紙幣入出金機10は、鑑別部15の前端から上前第2切替部42までの搬送路を比較的短く抑えることができ、特許文献1の紙幣入出金機等と比較して、装置構成の簡略化や小型化に寄与し、特に装置全体の前後長を短縮することができる。
また紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、稀ではあるが、走行センサ49Cからの紙幣の検知結果を基にその搬送先を接客部12に決定し、上前第2切替部42の搬送経路を切り替えさせた後に、イメージセンサ49B及び真偽センサ49Aからの検知結果を基に、当該紙幣の搬送先をリジェクト庫23に変更する場合がある。
この場合、当該紙幣は既に上前第2切替部42を通過し、搬送路W4上に到達している。そこで紙幣制御部11は、当該紙幣の搬送を直ちに停止させてから搬送路W5上まで、例えば鑑別部15の後側まで逆送させ(図9(B))、上前第2切替部42における搬送経路をリジェクト庫23側である搬送路W2側に切り替えさせる(図9(C))。これにより紙幣入出金機10は、当該紙幣を誤って接客部12の収容器31内へ放出すること無く、リジェクト庫23に搬送して収納させることができる。
このとき紙幣入出金機10では、紙幣の搬送を一度停止させ、さらに逆送させるため、出金処理の完了までに要する時間が増加することになる。しかしながら紙幣入出金機10では、上述したように出金処理において金種の誤りや偽券を検知する可能性が極めて低いため、特許文献1の紙幣入出金機等と比較した場合、搬送経路長が短縮されたことにより、出金処理に要する平均的な所要時間を短縮することが可能となる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、上部ユニット10Uに前後方向に沿った上基幹搬送路WUを形成し、下部ユニット10Lに前後方向に沿った下基幹搬送路WLを形成し、両者を後端近傍の後受渡部C1で接続した。これにより紙幣入出金機10は、基幹となる搬送路を1回のみ折り返された直線状に形成でき、屈曲箇所の数を大幅に削減できると共に、搬送経路長も短く抑えることができ、紙幣の搬送に伴う詰まり等の発生頻度を最小限に抑えて、各処理を円滑に進めることができる。その一方で紙幣入出金機10は、装置の前後長を抑えて小型化を図ることができ、さらに後受渡部C1で上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを切り離すことにより保守作業を容易化できる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣入出金機110は、図2と対応する図12に示すように、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lに代わる上部ユニット110U及び下部ユニット110Lを有しており、さらに該上部ユニット110Uの上側に施封ユニット120が追加されている。施封ユニット120は、上部ユニット110Uから搬送されてくる紙幣を所定の枚数(例えば100枚)ずつ集積し、帯封を巻き付けて施封する、といった施封処理を行うようになっている。
また紙幣入出金機110は、第1の実施の形態(図3)と同様、紙幣入出金機フレーム(図示せず)に対し上部ユニット110U及び下部ユニット110Lをそれぞれ単独で前方へ引き出し得るようになっている。
因みに紙幣入出金機110では、上部ユニット110U及び下部ユニット110Lにおける前後方向の長さ(長さL1及びL2)が、第1の実施の形態による紙幣入出金機10の上部ユニット10U及び下部ユニット10L(図2)と同一に揃えられている。
[2−1.上部ユニットの構成]
上部ユニット110Uは、図4と対応する図13に示すように、第1の実施の形態による上部ユニット10Uと比較して、紙幣制御部11及び接客搬送部13に代わる紙幣制御部111及び接客搬送部113を有する他、施封搬送部118を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣制御部111は、紙幣制御部11と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部111は、やはり紙幣制御部11と同様、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
接客搬送部113は、第1の実施の形態による接客搬送部13(図4)と比較して、駆動ローラ36の近傍に切替部135が追加されると共に、この切替部135から後方の施封搬送部118へ向かう搬送路139が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。説明の都合上、以下では搬送路139を第2上排出搬送路とも呼ぶ。
因みに接客搬送部113では、搬送路37及び38を構成する搬送ガイドや搬送ローラ等の大部分、並びに駆動ローラ36等が、第1の実施の形態による接客搬送部113と共通化されている。
施封搬送部118は、鑑別部15の上側であって、接客部12及び接客搬送部113の後側且つ一時保留部17の前側に配置されており、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等により、前側下方と上側とを結ぶ搬送路140が形成されている。搬送路140の前側端部は、接客搬送部113の搬送路139と接続されている。また搬送路140の上側端部は、上側に配置された施封部としての施封ユニット120(図12)と接続されている。
[2−2.下部ユニットの構成]
下部ユニット110Lは、図5と対応する図14に示すように、第1の実施の形態による下部ユニット10Lと比較して、下搬送部21に代わる下搬送部121を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
下搬送部121は、第1の実施の形態による下搬送部21(図4)と比較して、紙幣収納庫22Aの上側における搬送路77及び78の接続箇所に切替部164が追加され、該切替部164から前方へ向かう搬送路179(以下これを下接続搬送路とも呼ぶ)が追加されている点において相違する。また下搬送部121は、下搬送部21と比較して、搬送路80に代えて搬送路181及び182が設けられ、さらに搬送路179、181及び182の接続部分に切替部165が追加されている点においても相違するものの、他の点については同様に構成されている。また搬送路181の上端は、搬送路80(図5)の上端と同様、下部ユニット前受渡口T22となっている。
切替部164及び165は、何れも切替部61〜63と同様に構成されており、紙幣制御部111の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を切り替えるようになっている。具体的に切替部164は、紙幣制御部111の制御に基づき、後側の搬送路77及び下側の搬送路78を接続する搬送経路と、後側の搬送路77及び前側の搬送路179を接続する搬送経路とを切り替えることができる。また切替部165は、紙幣制御部111の制御に基づき、上側の搬送路181及び下側の搬送路182を接続する搬送経路と、上側の搬送路181及び後側の搬送路179を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
すなわち下搬送部121は、第1の実施の形態による下搬送部21と同様、例えば上部ユニット110U(図13)から下部ユニット後受渡口T21を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を適切な搬送経路に沿って進行させ、下側の紙幣収納庫22D〜22Aにそれぞれ引き渡すことができる。これと同様に下搬送部121は、これらの4通りの搬送経路に沿って紙幣を反対方向へ進行させることにより、紙幣収納庫22D〜22Aから受け取った紙幣を下部ユニット後受渡口T21へ搬送し、上部ユニット110U(図13)へ引き渡すこともできる。
さらに下搬送部121は、上部ユニット110U(図13)から下部ユニット前受渡口T22を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路181、179、77、75、73及び71に沿って進行させ、下部ユニット後受渡口T21から再び上部ユニット110Uへ引き渡すこともできる。
これを他の観点から見ると、下搬送部21は、搬送路73、75、77及び179により、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで第2の実施の形態では、この搬送路を下基幹搬送路WL2(図12)とも呼ぶ。
[2−3.紙幣入出金機における各種処理]
次に、図6と対応する図15に示すように、紙幣入出金機110(図12、図13及び図14)を模式化した上で、該紙幣入出金機110における紙幣の搬送を伴う種々の処理について、それぞれ詳細に説明する。
この図15では、図6と同様、接客部12等の各モジュールを単純な長方形により表し、上前第1切替部41、上前第2切替部42、上後切替部51、並びに切替部61、62及び63に加えて切替部164及び165を、それぞれ単純な三角形により表している。また図15では、図6と同様、各モジュール及び各切替部をそれぞれ結ぶ搬送路を線分により表している。
すなわち搬送路W1、W2、W5〜W9は、それぞれ第1の実施の形態(図6)と同様に構成されている。搬送路W11は、上前搬送部14の搬送路45及び下搬送部121の搬送路181に相当する。搬送路W12は、下搬送部121の搬送路182に相当する。搬送路W13は、下搬送部121の搬送路179に相当する。すなわち第1の実施の形態における搬送路W3(図6)は、搬送路W11及びW12と対応している。
さらに、搬送路W14は、上前搬送部14の搬送路46及び接客搬送部113の搬送路38に相当する。搬送路W15は、接客搬送部113の搬送路37及び接客部12の搬送路34に相当する。搬送路W16は、接客搬送部113の搬送路139及び施封搬送部118の搬送路140に相当する。すなわち第1の実施の形態における搬送路W4(図6)は、搬送路W14及びW15と対応している。
因みに、上述した下基幹搬送路WL2は、搬送路W8D、W8C及びW8B(すなわち搬送路W8)並びに搬送路W13に相当する。また紙幣入出金機110では、後端近傍において上部ユニット後受渡口T11(図13)及び下部ユニット後受渡口T21(図14)を互いに接続すると共に、前端近傍において上部ユニット前受渡口T12(図13)及び下部ユニット前受渡口T22(図14)を互いに接続する。これにより紙幣入出金機110では、第1の実施の形態と同様、両者の間で紙幣を受け渡す後受渡部C1及び前受渡部C2(図15)を形成している。
この図15から分かるように、第2の実施の形態による紙幣入出金機110では、搬送路W13が設けられたことにより、上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WL2が前端の前受渡部C2及び後端の後受渡部C1において互いに接続されており、ループ状の(すなわち環状、円環状若しくは周回状の)搬送路を形成している。また紙幣入出金機110では、上部ユニット110Uの接客部12及び一時保留部17と、下部ユニット110Lの紙幣収納庫22及びリジェクト庫23とが、環状の搬送路を挟んで互いに反対側に、すなわち上下に振り分けるようにして、それぞれ配置されている。
[2−3−1.入金処理及び収納処理]
紙幣入出金機110は、入金処理を行う場合、図7(A)及び(B)とそれぞれ対応する図16(A)及び(B)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機110は、入金処理において、矢印R1、R2、R3及びR4とそれぞれ対応する矢印R21、R22、R23及びR24に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。ただし紙幣入出金機110は、第1の実施の形態における搬送路W4に代えて搬送路W14及びW15に沿って紙幣を搬送する。
また紙幣入出金機110は、収納処理を行う場合、図8と対応する図17に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機110は、収納処理において、矢印R5及びR6とそれぞれ対応する矢印R25及びR26に沿って紙幣を搬送する。ただし紙幣入出金機110は、第1の実施の形態における搬送路W3に代えて搬送路W11及びW12に沿って紙幣を搬送する。
これにより紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、入金取引において、前段の入金処理において紙幣を鑑別した際に各紙幣の搬送先を決定しながら一時保留部17に収納し、入金取引の継続が指示されると、後段の収納処理において各紙幣を鑑別部15により再度鑑別すること無く、既に決定している搬送先へ搬送することができる。
[2−3−2.出金処理]
紙幣入出金機110は、出金処理を行う場合、図9(A)、(B)及び(C)とそれぞれ対応する図18(A)、(B)及び(C)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機110は、出金処理において、矢印R7、R8、R9、R10、R11及びR12とそれぞれ対応する矢印R27、R28、R29、R30、R31及びR32に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。ただし紙幣入出金機110は、第1の実施の形態における搬送路W3に代えて搬送路W11及びW12に沿って紙幣を搬送し、また第1の実施の形態における搬送路W4に代えて搬送路W14及びW15に沿って紙幣を搬送する。
これにより紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、出金処理において、鑑別部15からの検知結果に基づいて上前第2切替部42の搬送経路を切り替えながら、出金額に応じた紙幣を各紙幣収納庫22から接客部12まで搬送し、顧客に引き渡すことができる。
[2−3−3.紙幣移動処理]
紙幣入出金機110は、移動処理において、まず上述した出金処理の場合(図18(A))と同様、矢印R27、R28及びR29に沿って紙幣をそれぞれ搬送することにより、移動元の紙幣収納庫22から、正常な紙幣を接客部12へ搬送して収容器31内に集積し、また正常で無い紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクト庫23へ搬送して収納する。
続いて紙幣入出金機110は、図10(A)及び(B)とそれぞれ対応する図19(A)及び(B)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送することにより、接客部12内の紙幣を移動先となる紙幣収納庫22又はリジェクト庫23へ搬送して収納する。すなわち紙幣入出金機110は、紙幣移動処理において、矢印R13、R14、R15及びR16とそれぞれ対応する矢印R33、R34、R35及びR36に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。ただし紙幣入出金機110は、第1の実施の形態における搬送路W3に代えて搬送路W11及びW12に沿って紙幣を搬送する。
これにより紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、紙幣移動処理において、接客部12を一時的な紙幣の収納場所として利用しながら、移動元の紙幣収納庫22から移動先の紙幣収納庫22へ紙幣を移動させることができる。
[2−3−4.接客分離異常リトライオーバ処理]
紙幣入出金機110は、接客分離異常リトライオーバ処理を行う場合、図11(A)及び(B)とそれぞれ対応する図20(A)及び(B)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機110は、接客分離異常リトライオーバ処理において、矢印R17及びR18とそれぞれ対応する矢印R37及びR38に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。ただし紙幣入出金機110は、第1の実施の形態における搬送路W4に代えて搬送路W14及びW15に沿って紙幣を搬送する。
これにより紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、接客分離異常リトライオーバ処理において、分離部31Sにより正常に分離できなかった紙幣を接客部12から一度繰り出させ、再び接客部12に戻して放出部31Eから収容器31内へ放出させ、集積することができる。
[2−3−5.取忘取込処理]
紙幣入出金機110は、取忘取込処理を行う場合、第1の実施の形態と同様に、入金処理及び収納処理と同様の処理手順によって紙幣を順次搬送する。すなわち紙幣入出金機110は、まず図16(A)及び(B)に示したように、矢印R21、R22、R23及びR24に沿って紙幣をそれぞれ搬送することにより、取忘紙幣を一時保留部17へ搬送する。続いて紙幣入出金機110は、図17に示したように、矢印R25及びR26に沿って紙幣をそれぞれ搬送することにより、取忘紙幣を紙幣収納庫22又はリジェクト庫23へ搬送して収納させる。
これによりの紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、出金処理において紙幣の取り忘れが発生した場合、取忘取込処理として、取忘紙幣を入金処理及び収納処理と同様の搬送経路により紙幣収納庫22又はリジェクト庫23へ搬送し、収納することができる。
[2−3−6.束出金処理]
ところで紙幣入出金機110は、金融機関の職員等の操作に応じて束出金処理を行い得るようになっている。この束出金処理とは、紙幣収納庫22に収納されている所定枚数(例えば100枚)の紙幣を施封ユニット120(図12)へ搬送し、集積した状態で紙帯を巻き付ける施封処理を行うことにより紙幣の束(以下これを紙幣束と呼ぶ)を生成して出金する処理である。
具体的に紙幣入出金機110の紙幣制御部111は、現金自動預払機101の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6を介して金融機関の職員等から束出金を行う旨の操作入力を受け付けると、束出金処理を開始する。このとき紙幣入出金機110は、該操作表示部6を介して出金する紙幣の金種や枚数を含む所定の操作入力を受け付けた上で、各紙幣収納庫22の内部に集積された状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W9に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機110は、上述した出金処理(図18(A))の場合と一部同様の搬送処理を行う。すなわち紙幣入出金機110は、図21(A)に示す矢印R39のように、紙幣を搬送路W9、W8、W7及びW5に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機110は、紙幣制御部111により、鑑別部15から得られる検知結果を基に、各紙幣の走行状態及び表裏に応じて、その搬送先を施封ユニット120、搬送路W13又はリジェクト庫23に決定する。
すなわち紙幣入出金機110は、紙幣の走行状態に問題が無く、且つ紙幣が表向き(すなわち鑑別部15を通過するときに表面を上方に向けている)であれば、矢印R40として示すように、該紙幣を搬送路W5、W14及びW16に沿って施封ユニット120へ搬送する。
また紙幣入出金機110は、例えば重送されている等、紙幣の走行状態に問題があれば、矢印R41として示すように、該紙幣を搬送路W5、W2、W11及びW12に沿ってリジェクト庫23へ搬送して収納させる。
一方、紙幣入出金機110は、紙幣の走行状態に問題が無く、且つ紙幣が裏向き(すなわち鑑別部15を通過するときに裏面を上方に向けている)であれば、矢印R42として示すように、該紙幣を搬送路W5、W2、W11及びW13に沿って搬送する。続いて紙幣入出金機110は、図21(B)に示す矢印R43のように、該紙幣を搬送路W8,W7及びW6に沿って一時保留部17へ搬送し、収納させる。
やがて紙幣入出金機110は、紙幣収納庫22から繰り出した紙幣からリジェクト庫23に収納された紙幣(リジェクト紙幣)を除外した枚数が、最初に指定された枚数に到達すると、該紙幣収納庫22からの紙幣の繰り出しを中止する。続いて紙幣入出金機110は、一時保留部17に収納されている紙幣を順次繰り出し、図21(C)に示す矢印R44のように、搬送路W6、W5、W14及びW16に沿って施封ユニット120へ搬送する。このとき紙幣入出金機110では、裏向きであった紙幣を搬送路W7側から一時保留部17へ収納させ、該一時保留部17から搬送路W5側へ繰り出すことにより、該紙幣のスイッチバックを行ったことになり、表裏を反転させて表向きとすることができる。
その後紙幣入出金機110は、施封ユニット120において、紙幣を束状に集積し、さらに集積した状態の(すなわち束状態の)紙幣に紙帯を巻き付けて施封することにより紙幣束を生成し、これを出金する。
このように紙幣入出金機110は、束出金処理において、紙幣収納庫22に収納されている紙幣のうち、表向きの紙幣をそのまま施封ユニット120へ搬送する一方、裏向きの紙幣を下基幹搬送路WL2(図15)を介して後側に戻し、一時保留部17を利用して表裏反転させてから施封ユニット120へ搬送する。これにより紙幣入出金機110は、施封ユニット120において、指定された金種及び枚数でなる紙幣を、表裏を揃えた状態で紙幣束とすることができる。
[2−3−7.整理施封処理]
また紙幣入出金機110は、金融機関の職員等の操作に応じて、上述した束出金処理と一部類似した処理である整理施封処理を行い得るようになっている。この整理施封処理では、紙幣収納庫22に収納されている紙幣では無く、接客部12に投入された紙幣を施封ユニット120へ搬送し、紙幣束を生成するようになっている。
具体的に紙幣入出金機110の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して金融機関の職員等から整理施封処理を行う旨の操作入力を受け付けると、整理施封処理を開始する。
まず紙幣入出金機110は、図22(A)に示す矢印R45のように、紙幣を搬送路W1、W2及びW5に沿って搬送することにより、鑑別部15において該紙幣を鑑別し、得られた鑑別結果を基に紙幣の状態及び表裏を判別する。
ここで紙幣入出金機110は、紙幣が入金受入紙幣であれば、矢印R46のように搬送路W5及びW6に沿って一時保留部17へ搬送して収納させると共に、その表裏を記憶しておく。また紙幣入出金機110は、紙幣が入金リジェクト紙幣であれば、矢印R47のように搬送路W5、W7、W8及びW13に沿って搬送し、貯留させる。すなわちこの場合、紙幣入出金機110は、搬送路W8に加えて搬送路W13にも紙幣を貯留させる。以下では、搬送路W8及びW13をまとめて搬送路貯留部WS2と呼ぶ。
やがて紙幣入出金機110は、この搬送路貯留部WS2が満杯になると、図22(B)に示す矢印R48のように、紙幣(入金リジェクト紙幣)を搬送路W13、W8、W7、W5、W14及びW15に沿って接客部12へ搬送し、収容器31内に集積させて返却し、金融機関の職員等により紙幣の確認や再投入を行わせる。
次に紙幣入出金機110は、接客部12に投入された全ての紙幣を一時保留部17に保留し終えると、その表裏に応じて、該一時保留部17から互いに異なる搬送経路を経由して施封ユニット120へ搬送する。すなわち紙幣入出金機110は、表向きであった紙幣については、図22(C)に示す矢印R49のように、一時保留部17から繰り出した後、搬送路W6、W5、W14及びW16に沿って施封ユニット120へ搬送する。
また紙幣入出金機110は、裏向きであった紙幣については、矢印R50のように、一時保留部17から繰り出した後、搬送路W6、W7、W8及びW13に沿って搬送し、この搬送路W8及びW13に貯留させる。すなわち紙幣入出金機110は、この場合も搬送路W8及びW13を搬送路貯留部WS2として使用する。やがて紙幣入出金機110は、この搬送路貯留部WS2が満杯になると、一時保留部17からの紙幣の繰り出しを一時的に中断した上で、図23に示す矢印R51のように、搬送路W13、W8、W7、W5、W14及びW16に沿って施封ユニット120へ搬送する。このとき紙幣入出金機110では、裏向きであった紙幣を搬送路W5側から一時保留部17へ収納させ、該一時保留部17から搬送路W7側へ繰り出すことにより、束出金処理の場合と同様に該紙幣のスイッチバックを行ったことになり、表裏を反転させて表向きとすることができる。
その後紙幣入出金機110は、施封ユニット120において、紙幣を束状に集積し、さらに集積した状態の(すなわち束状態の)紙幣に紙帯を巻き付けて施封することにより紙幣束を生成し、これを出金する。
このように紙幣入出金機110は、整理施封処理において、接客部12に投入された紙幣を一時保留部17に収納した後、表向きの紙幣をそのまま施封ユニット120へ搬送する一方、裏向きの紙幣を搬送路W7側へ搬送してから搬送路W5側へ搬送することにより表裏反転させてから施封ユニット120へ搬送する。これにより紙幣入出金機110は、施封ユニット120において、接客部12に投入された紙幣を、表裏を揃えた状態で紙幣束とすることができる。
[2−4.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と同様の構成に加えて、接客搬送部113に切替部135及び搬送路139を設け、施封搬送部118を設け、下搬送部121に切替部164及び165並びに搬送路179を設けた(図12、図13及び図14)。
すなわち紙幣入出金機110では、上部ユニット110Uにおいて第1の実施の形態と同様の上基幹搬送路WUを形成する一方、下部ユニット110Lにおいて下基幹搬送路WL(図6)を前方向へ延長したような下基幹搬送路WL2を形成した(図15)。
これにより紙幣入出金機110では、第1の実施の形態と同様に、特許文献1の紙幣入出金機等と比較して、紙幣の搬送経路における屈曲箇所の数を十分に削減できると共に、搬送経路長も短く抑えることができるので、紙幣の搬送に伴う詰まり等の発生頻度を抑えて、各処理を円滑に進めることができる。
これに加えて紙幣入出金機110では、接客搬送部113及び施封搬送部118に切替部135及び搬送路W16(図15)を設け、さらに施封ユニット120を設けた。このため紙幣入出金機110では、紙幣収納庫22に収納されている紙幣又は接客部12に投入された紙幣をこの施封ユニット120へ搬送することにより、紙幣束を生成して出金することができる(図21、図22及び図23)。
特に紙幣入出金機110では、搬送路W13により搬送路W11及び搬送路W8が接続されている。このため紙幣入出金機110では、下部ユニット110L側の紙幣収納庫22から繰り出されて搬送路W8、W7及びW5に沿って搬送され、上部ユニット110U側の鑑別部15において鑑別された紙幣を、引き続き搬送路W5、W2、W11及びW13に沿って搬送することにより、再び下部ユニット110L側に戻すことができる(図21(A))。
これを他の観点から見れば、紙幣入出金機110では、矢印R39及びR40(図21(A))に沿って紙幣を搬送する場合、上後切替部51を通過した後に鑑別部15を通過することになる。ここで、仮に第1の実施の形態による紙幣入出金機10(図6)のように搬送路W13が設けられていない場合、鑑別部15において裏向きと判別された紙幣を上後切替部51において表裏反転させるには、搬送路W5に沿って紙幣を逆送させる(後方向へ搬送する)必要が生じるため、処理時間が格段に増加するおそれがあった。
この点において本実施の形態による紙幣入出金機110では、搬送路W13及び搬送路W8を利用することにより、鑑別部15を通過した紙幣を逆送させること無く、下基幹搬送路WL2(図15)を経由して上後切替部51に到達させることができ、円滑に表裏を反転させることができる。
また紙幣入出金機110では、整理施封処理(図22(A))において、搬送路W8及び搬送路W13を搬送路貯留部WS2として入金リジェクト紙幣を貯留させるようにしたため、搬送路W8のみを搬送路貯留部WSとする場合(図7(A)等)と比較して、貯留可能な紙幣の最大枚数を増加させることができる。
さらに紙幣入出金機110では、上部ユニット110Uにおいて、第1の実施の形態における接客搬送部13に代えて接客搬送部113を設け、この接客搬送部113内に切替部135及び搬送路139を設け、さらに搬送路140により搬送路139と上側の施封ユニット120とを接続させた(図13)。これにより紙幣入出金機110では、上前搬送部14、鑑別部15及び上後搬送部16、並びに接客部12及び一時保留部17を、何れも第1の実施の形態における紙幣入出金機10と同一の構成としたまま、上側の施封ユニット120へ紙幣を搬送するための搬送経路を形成でき(図21(A)等)、部品の共通化によるコストの低廉化を図ることができる。
そのうえ接客搬送部113は、接客搬送部13と同様の駆動ローラ36並びに搬送路37及び38の他に、切替部135及び搬送路139を追加した構成とした(図4及び図13)。このため紙幣入出金機110では、接客搬送部113を構成する部品の大部分を接客搬送部13と共用することができる。特に接客搬送部113では、駆動ローラ36の位置を接客搬送部13と同一に揃えることができ、該駆動ローラ36に駆動力を伝達するためのギア等についても共通化でき、コストの低廉化を図ることができる。
さらに紙幣入出金機110では、下部ユニット110L(図14)において、第1の実施の形態と比較して、下搬送部21に代わる下搬送部121を設ける一方、紙幣収納庫22及びリジェクト庫23を共通の構成とした。また下搬送部121については、下搬送部21(図5)と比較して、切替部164及び165並びに搬送路179を追加するものの、搬送路80を上下に分けて搬送路181及び182とすることで実質的に同一部品とし、また切替部61〜63並びに搬送路71〜78を共通の構成とした。
これにより紙幣入出金機110では、紙幣収納庫22及びリジェクト庫23や、下搬送部121のうち切替部61〜63並びに搬送路71〜78に関する部品等を、第1の実施の形態と共通化することができるので、やはりコストの低廉化を図ることができる。
また紙幣入出金機110は、その他の点においても、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、上部ユニット110Uに前後方向に沿った上基幹搬送路WUを形成し、下部ユニット110Lに前後方向に沿った下基幹搬送路WL2を形成し、両者を後端近傍の後受渡部C1及び前受渡部C2で接続した。これにより紙幣入出金機110は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と多くの部品を共通化しながら、基幹となる搬送路における屈曲箇所の数を比較的少なく抑えると共に、搬送経路長も短く抑えることができ、紙幣の搬送に伴う詰まり等の発生頻度を最小限に抑えて、各処理を円滑に進めることができる。さらに紙幣入出金機110は、紙幣の表裏に応じて搬送経路を切り替えることにより、紙幣の逆送のような時間を要する処理を行うこと無く、表裏反転させた上で、施封ユニット120により施封させることができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣入出金機210は、図2と対応する図24に示すように、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lに代わる上部ユニット210U及び下部ユニット210Lを有している。また紙幣入出金機210は、第1の実施の形態(図3)と同様、紙幣入出金機フレーム(図示せず)に対し上部ユニット210U及び下部ユニット210Lをそれぞれ単独で前方へ引き出し得るようになっている。
[3−1.上部ユニットの構成]
上部ユニット210Uは、第1の実施の形態による上部ユニット10Uと比較して、紙幣制御部11、上前搬送部14及び上後搬送部16に代わる紙幣制御部211、上前搬送部214及び上後搬送部216を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
上部ユニット210Uは、その前側部分において、上側前部に位置する接客部12の前端を基準位置P0とすると、下側前部に位置する上前搬送部214における前端の位置P3がこの基準位置P0よりも距離L3だけ前側に位置している。その一方で上部ユニット210Uは、その後側部分において、上後搬送部216の後端を一時保留部17の後端と同一の位置P1に揃えている。
また上部ユニット10Uは、その後側部分において、上側後部に位置する一時保留部17の後端が第1の実施の形態と同様に位置P1となっており、且つその下側に位置する上後搬送部216の後端もこの位置P1となっている。すなわち基準位置P0を基準とした場合、上後搬送部216の後端は、第1の実施の形態における上後搬送部216の後端よりも前側に位置している。
紙幣制御部211は、紙幣制御部11等と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部211は、やはり紙幣制御部11等と同様、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
図4と対応する図25に示すように、上前搬送部214は、第1の実施の形態による上前搬送部14と比較して、前方へ延長されており、搬送路45に代わる搬送路245を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。搬送路245は、上前第1切替部41の前側に接続されており、該上前第1切替部41から前方へ向かい、さらに下方へ向かうよう屈曲されている。この搬送路245の下端は、搬送路45(図4)の場合と同様、上部ユニット前受渡口T12となっている。
上後搬送部216は、第1の実施の形態による上後搬送部16と比較して、後側部分が短縮されており、搬送路54に代わる搬送路254を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。搬送路254は、搬送路54と比較して、前後方向に沿った部分の長さが短縮されている。また搬送路254の下端は、搬送路54(図4)の場合と同様、上部ユニット後受渡口T11となっている。
このように上部ユニット210Uは、第1の実施の形態による上部ユニット10Uと比較して、上部ユニット後受渡口T11及び上部ユニット前受渡口T12が何れも前方に位置しており、これに合わせて搬送路245及び254の形状が搬送路45及び54とそれぞれ相違している。
すなわち上部ユニット210Uにおける下側部分では、上前搬送部214の搬送路245、44及び47、鑑別部15の鑑別搬送路48、並びに上後搬送部216の搬送路52及び54により、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで以下では、この搬送路を上基幹搬送路WU3(図24)と呼び、また前側の上前搬送部214、中程の鑑別部15及び後側の上後搬送部216をまとめて上搬送部210UC(図25)とも呼ぶ。
[3−2.下部ユニットの構成]
下部ユニット210Lは、図5と対応する図26に示すように、第1の実施の形態による下部ユニット10Lと比較して、下搬送部21に代わる下搬送部221を有している。また下部ユニット210Lは、紙幣収納庫22A及びリジェクト庫23に代わる補充回収庫224及びリジェクト庫223を有し、さらに補充リジェクト庫225、下前搬送部227及び取忘収納庫228を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
因みに下部ユニット210Lの後端は、上部ユニット210Uにおける一時保留部17及び上後搬送部216の後端と同一の位置P1に揃えられている。また下部ユニット210Lの前端は、上部ユニット210Uにおける上前搬送部214の前端と同一の位置P3に揃えられている。換言すれば、下部ユニット210Lは、第1及び第2の実施の形態と異なり、その前端が基準位置P0よりも距離L3だけ前側の位置P3に位置している。
[3−2−1.下搬送部の構成]
下搬送部221は、第1の実施の形態による下搬送部21と比較して、主に前方向に延長された構成となっており、切替部264、265及び266が追加され、且つ搬送路279、281、282、283及び284が追加された点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
切替部264は、搬送路77及び78の接続箇所に設けられており、さらに前側に搬送路279が接続されている。一方、搬送路281及び282は、第1の実施の形態における搬送路80(図5)を上下に2分割したような構成となっており、その接続箇所に切替部265が配置されている。搬送路281の上端は、搬送路80の上端と同様、下部ユニット前受渡口T22となっている。また搬送路282の下端は、後述する下前搬送部227と接続されている。
切替部265は、後側に搬送路283が接続されている。この搬送路283は、後側の搬送路279と接続され、その接続箇所に切替部266が配置されている。この切替部266の下側には、搬送路284が接続されている。搬送路284の下端は、後述する補充リジェクト庫225に接続されている。
切替部264、265及び266は、何れも切替部61〜63と同様に構成されており、紙幣制御部211の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を切り替えるようになっている。具体的に切替部264は、後側の搬送路77及び下側の搬送路78を接続する搬送経路と、前側の搬送路279及び下側の搬送路78を接続する搬送経路とを切り替えることができる。すなわち切替部264は、第2の実施の形態における切替部164(図14)と異なり、後側の搬送路77と前側の搬送路279とを接続する搬送経路を形成することはできない。説明の都合上、以下では切替部264を補充回収庫切替部とも呼び、また搬送路78を補充回収搬送路とも呼ぶ。
切替部265は、上側の搬送路281及び下側の搬送路282を接続する搬送経路と、上側の搬送路281及び後側の搬送路283を接続する搬送経路とを切り替えることができる。また切替部266は、前側の搬送路283及び下側の搬送路284を接続する搬送経路と、前側の搬送路283及び後側の搬送路279を接続する搬送経路とを切り替えることができる。説明の都合上、以下では搬送路283及び279をまとめて下接続搬送路とも呼ぶ。
すなわち下搬送部221は、第1の実施の形態による下搬送部21と同様、例えば上部ユニット210U(図25)から下部ユニット後受渡口T21を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を適切な搬送経路に沿って進行させ、下側の紙幣収納庫22D〜22B又は補充回収庫224にそれぞれ引き渡すことができる。これと同様に下搬送部221は、これらの4通りの搬送経路に沿って紙幣を反対方向へ進行させることにより、紙幣収納庫22D〜22B又は補充回収庫224から受け取った紙幣を下部ユニット後受渡口T21へ搬送し、上部ユニット210U(図25)へ引き渡すこともできる。
また下搬送部221は、上部ユニット210U(図25)から下部ユニット前受渡口T22を介して紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路281及び282に沿って進行させて下前搬送部227に引き渡すことや、搬送路281、283及び284に沿って進行させて補充リジェクト庫225に引き渡すことができる。
さらに下搬送部221は、この紙幣を搬送路281、283、279及び78に沿って進行させて補充回収庫224に引き渡すこともできる。これと同様に下搬送部221は、この搬送経路に沿って紙幣を反対方向へ進行させることにより、補充回収庫224から受け取った紙幣を下部ユニット後受渡口T21へ搬送し、上部ユニット210U(図25)へ引き渡すこともできる。
因みに下搬送部221では、第1の実施の形態における下搬送部21と同様、搬送路73、75及び77により構成された、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路を下基幹搬送路WL(図24)と呼ぶ。すなわち下搬送部221では、下基幹搬送路WL及び搬送路78(すなわち補充回収搬送路)の合流箇所に、切替部264(補充回収切替部)が設けられていることになる。
[3−2−2.補充回収庫及び補充リジェクト庫の構成]
補充回収庫224は、紙幣収納庫22Bの前側に配置され、第1の実施の形態による紙幣収納庫22と概ね同様に構成されている。すなわち補充回収庫224は、全体として直方体状に形成され、その内部に収納空間、分離放出部及び収納庫搬送部等が設けられている。このため補充回収庫224は、やはり紙幣収納庫22と同様に、紙幣制御部211の制御に基づき、紙幣を収納する収納処理や紙幣を繰り出す繰出処理を行うことができる。また補充回収庫224は、下搬送部221における切替部264のほぼ真下に位置している。因みに補充回収庫224における紙幣の最大収納枚数は、紙幣収納庫22と同等となっている。
補充リジェクト庫225は、補充回収庫224の前側に配置されており、該補充回収庫224と比較して、上下方向及び左右方向の長さが同等である一方、前後方向の長さが1/3ないし1/4程度に短くなっている。この補充リジェクト庫225は、第1の実施の形態によるリジェクト庫23と同様、下搬送部221から受け取った紙幣を内部に収納する機能を有する一方、内部に収納されている紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す分離機能を有していない。また補充リジェクト庫225は、下搬送部221における切替部266のほぼ真下に位置している。
さらに、補充回収庫224及び補充リジェクト庫225は、図27(A)に示すように、該補充回収庫224の前面と該補充リジェクト庫225の後面とを重ねるように一体化され、補充回収カセット226を構成している。この補充回収カセット226は、下部ユニット210Lに対し着脱可能に構成されている。
補充回収カセット226は、補充回収庫224の前面及び補充リジェクト庫225の後面における一辺、例えば右辺の近傍に蝶番(図示せず)が設けられており、この蝶番により補充回収庫224に対し補充リジェクト庫225を回動させ得るようになっている。すなわち補充回収カセット226は、下部ユニット210Lに取り付けられる場合には、図27(A)に示したように補充回収庫224の前面及び補充リジェクト庫225の後面を互いに重ねて、1個の直方体状となる。
一方、補充回収カセット226は、保守作業等において下部ユニット210Lから取り出された上で、図27(B)に示すように、蝶番において補充回収庫224に対し補充リジェクト庫225を回動させると、補充回収庫224の前面及び補充リジェクト庫225の後面を互いに引き離すことができる。以下、この状態を開いた状態と呼ぶ。さらに補充回収カセット226には、補充回収庫224の前面及び補充リジェクト庫225の後面の間に、回動可能な内扉226Dが設けられている。
このため補充回収カセット226では、図27(B)に示したように、開いた状態において補充回収庫224の収納空間にアクセスすること、すなわち紙幣の取出又は装填を行うことができる。また補充回収カセット226では、図27(C)に示すように、開いた状態において内扉226Dを補充回収庫224側へ回動させることにより、補充リジェクト庫225の収納空間から紙幣を取り出すことができる。
因みに第3の実施の形態による紙幣入出金機210では、下部ユニット210Lに対し、紙幣収納庫22(22D〜22B)を着脱せず、主に補充回収カセット226を着脱させることにより、紙幣の補充や回収を行うことが想定されている。
[3−2−3.リジェクト庫、下前搬送部及び取忘収納庫の構成]
リジェクト庫223は、下搬送部221の下側における最も前側となる部分の上寄りに配置されており、第1の実施の形態におけるリジェクト庫23(図5)と同様、搬送されてきた紙幣を内部に収納することができる。因みにリジェクト庫223は、紙幣収納庫22と比較して、左右方向の長さが同等である一方、上下方向の長さが半分以下に抑えられている。またリジェクト庫223は、紙幣収納庫22等と異なり、上面では無く後面における上端近傍に、外部から紙幣を受け取る受取口が設けられている。
取忘収納庫228は、下搬送部221の下側における最も前側となる部分の下寄り、すなわちリジェクト庫223の下側に配置されている。この取忘収納庫228は、リジェクト庫223と同様に構成されており、搬送されてきた紙幣を内部に収納することができる。因みに取忘収納庫228は、下部ユニット210Lの構造上、上下方向の長さ(すなわち高さ)が紙幣収納庫22よりも小さく(すなわち低く)なるため、全体として該紙幣収納庫22よりも小型に構成されている。
下前搬送部227は、下搬送部221における切替部265及び搬送路282の下側であって、補充リジェクト庫225の前側且つリジェクト庫223及び取忘収納庫228の後側に位置している。下前搬送部227内には、上端のやや下側に切替部291が配置されている。切替部291は、下搬送部221の切替部61等と同様に構成され、紙幣制御部211の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を切り替えるようになっている。
切替部291の周囲には、下搬送部221における搬送路282の下端と該切替部291とを接続する搬送路292、該切替部291と前側のリジェクト庫223とを接続する搬送路293、及び該切替部291と前方下側の取忘収納庫228とを接続する搬送路294が設けられている。この搬送路292、293及び294は、下搬送部221における搬送路71等と同様、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等によりそれぞれ構成されている。このため切替部291は、上側の搬送路292及び前側の搬送路293を接続する搬送経路と、上側の搬送路292及び下側の搬送路294を接続する搬送経路とを切り替えることができる。説明の都合上、以下では搬送路292及び294を下分岐搬送路とも呼ぶ。
すなわち下前搬送部227は、例えば下搬送部221の搬送路282から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路292及び293に沿って進行させてリジェクト庫223に引き渡すことや、この紙幣を搬送路292及び294に沿って進行させて取忘収納庫228に引き渡すことができる。
[3−3.紙幣入出金機における各種処理]
次に、図6及び図15と対応する図28に示すように、紙幣入出金機210(図24、図25及び図26)を模式化した上で、該紙幣入出金機110における紙幣の搬送を伴う種々の処理について、それぞれ詳細に説明する。
この図28では、図6及び図15と同様、接客部12等の各モジュールを単純な長方形により表し、上前第1切替部41、上前第2切替部42、上後切替部51、並びに切替部61、62及び63に加えて、切替部264、265、266及び291を、それぞれ単純な三角形により表している。さらに図28では、図6及び図15と同様、各モジュール及び各切替部をそれぞれ結ぶ搬送路を線分により表している。
すなわち搬送路W1、W2、W4〜W9は、それぞれ第1の実施の形態(図6)と同様に構成されている。搬送路W11は、上前搬送部14の搬送路45及び下搬送部221の搬送路281に相当する。搬送路W21は、下搬送部221の搬送路78に相当する。搬送路W22は、下搬送部221の搬送路279に相当する。搬送路W23は、下搬送部221の搬送路283に相当する。搬送路W24は、下搬送部221の搬送路284に相当する。
また搬送路W25は、下搬送部221の搬送路282及び下前搬送部227の搬送路292に相当する。搬送路W26は、下前搬送部227の搬送路293に相当する。搬送路W27は、下前搬送部227の搬送路294に相当する。すなわち、第1の実施の形態における搬送路W3(図6)は、搬送路W11、W25及びW26と対応している。
この図28から分かるように、紙幣入出金機210では、上基幹搬送路WU3と補充回収庫224とを結ぶ搬送経路として、後側の搬送路W8の他に、前側の搬送路W22及びW23を選択することもできる。ただし紙幣入出金機210では、第2の実施の形態による紙幣入出金機110と異なり、切替部264の後側に位置する搬送路W8と前側に位置する搬送路W22との間で紙幣を搬送することはできない。これを換言すれば、紙幣入出金機210では、下部ユニット210L(図26)側において、後受渡部C1及び前受渡部C2の間で紙幣を搬送することはできない。
因みに、上基幹搬送路WU3は、搬送路W7、W5、W2及びW11に相当している。また下基幹搬送路WLは、第1の実施の形態と同様、搬送路W8D、W8C及びW8B(すなわち搬送路W8)に相当している。
[3−3−1.入金処理及び収納処理]
紙幣入出金機210は、入金処理を行う場合、図7(A)及び(B)とそれぞれ対応する図29(A)及び(B)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機210は、入金処理において、矢印R1、R2、R3及びR4とそれぞれ対応する矢印R61、R62、R63及びR64に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。
また紙幣入出金機210は、収納処理を行う場合、図8と対応する図30に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機210は、収納処理において、矢印R5及びR6とそれぞれ対応する矢印R65及びR66に沿って紙幣を搬送する。
このとき紙幣入出金機210は、補充回収庫224を紙幣収納庫22B〜22Dと同様に位置づけて、所定の金種を割り当てており、この金種の再利用可能な紙幣を該補充回収庫224に搬送して収納する。また紙幣入出金機210は、紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクト庫223へ搬送する場合、第1の実施の形態における搬送路W3に代えて、搬送路W11、W25及びW26に沿って搬送する。
これにより紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、入金取引において、前段の入金処理において紙幣を鑑別した際に各紙幣の搬送先を決定しながら一時保留部17に収納し、入金取引の継続が指示されると、後段の収納処理において各紙幣を鑑別部15により再度鑑別すること無く、既に決定している搬送先へ搬送することができる。
[3−3−2.出金処理]
紙幣入出金機210は、出金処理を行う場合、図9(A)、(B)及び(C)とそれぞれ対応する図31(A)、(B)及び(C)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機210は、出金処理において、矢印R7、R8、R9、R10、R11及びR12とそれぞれ対応する矢印R67、R68、R69、R70、R71及びR72に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。ただし紙幣入出金機210は、紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクト庫223へ搬送する場合、第1の実施の形態における搬送路W3に代えて、搬送路W11、W25及びW26に沿って搬送する。
このとき紙幣入出金機210は、入金処理の場合と同様、補充回収庫224を紙幣収納庫22B〜22Dと同様に位置づけて、所定の金種を割り当てており、出金すべき紙幣がこの金種であれば、該補充回収庫224から紙幣を繰り出して搬送する。
これにより紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、出金処理において、鑑別部15からの検知結果に基づいて上前第2切替部42の搬送経路を切り替えながら、出金額に応じた紙幣を各紙幣収納庫22又は補充回収庫224から接客部12まで搬送し、顧客に引き渡すことができる。
[3−3−3.補充処理]
紙幣入出金機210は、紙幣収納庫22(22B〜22D)に紙幣を補充する場合、上述したように、該紙幣収納庫22では無く補充回収カセット226(図27)が下部ユニット210Lから取り外され、補充回収庫224に紙幣が装填された上で、該下部ユニット210Lに再び装着される。続いて紙幣入出金機210は、補充回収庫224から紙幣収納庫22へ紙幣を移動させる補充処理を行う。
具体的に紙幣入出金機210の紙幣制御部211は、現金自動預払機201の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6を介して金融機関の職員等から紙幣の補充を行う旨の操作入力を受け付けると、補充処理を開始する。このとき紙幣入出金機210は、操作表示部6を介して移動先となる紙幣収納庫22(22B〜22D)及び移動する紙幣の枚数を含む所定の操作入力を受け付けた上で、補充回収庫224に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W21に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機210は、図32(A)に示す矢印R73のように、紙幣を搬送路W21、W22、W23、W11、W2及びW5に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機210は、紙幣制御部211により、鑑別部15から得られる検知結果を基に鑑別し、各紙幣の搬送先を決定する。
ここで紙幣入出金機210は、紙幣が正常であれば、矢印R74のように搬送路W5、W7、W8及びW9に沿って紙幣収納庫22へ搬送して収納させる。また紙幣入出金機210は、紙幣が何らかの異常を有する補充リジェクト紙幣であれば、矢印R75のように搬送路W5及びW6に沿って一時保留部17へ搬送して収納させる。
やがて紙幣入出金機210は、補充回収庫224から全ての紙幣を繰り出し、又は指定された枚数の紙幣を移動先の紙幣収納庫22へ移動させると、一時保留部17に収納していた紙幣(補充リジェクト紙幣)を移動させる。すなわち紙幣入出金機210は、一時保留部17から紙幣(補充リジェクト紙幣)を繰り出し、図32(B)に示す矢印R76のように、搬送路W5、W2、W11、W23及びW24に沿って補充リジェクト庫225へ搬送して収納させる。
このように紙幣入出金機210は、補充処理において、上基幹搬送路WU3を経由する搬送経路により、紙幣を補充回収庫224から移動先の紙幣収納庫22へ搬送して移動することができる。またこのとき紙幣入出金機210は、補充リジェクト紙幣が発生した場合には、これを補充リジェクト庫225へ搬送して収納することができる。
[3−3−4.回収処理]
紙幣入出金機210では、紙幣収納庫22(22B〜22D)に収納された紙幣を回収する場合、上述したように、下部ユニット210Lから該紙幣収納庫22を着脱させるのでは無く、該紙幣収納庫22から補充回収庫224へ移動させる回収処理を行った上で、補充回収カセット226(図27)を着脱させるようになっている。
具体的に紙幣入出金機210の紙幣制御部211は、現金自動預払機201の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6を介して金融機関の職員等から紙幣の回収を行う旨の操作入力を受け付けると、回収処理を開始する。このとき紙幣入出金機210は、操作表示部6を介して移動元となる紙幣収納庫22(22B〜22D)の指定を含む所定の操作入力を受け付けた上で、この移動元に指定された紙幣収納庫22に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W9に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機210は、図33に示す矢印R77のように、紙幣を搬送路W9、W8、W7及びW5に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機210は、紙幣制御部211により、鑑別部15から得られる検知結果を基に、各紙幣の状態及に応じて搬送先を決定する。
すなわち紙幣入出金機210は、紙幣が正常であれば、矢印R78として示すように、該紙幣を搬送路W5、W2、W11、W23、W22及びW21に沿って補充回収庫224へ搬送して収納させる。また紙幣入出金機210は、紙幣が異常であれば、すなわちリジェクト紙幣であれば、矢印R79として示すように、該紙幣を搬送路W5、W2、W11、W23及びW24に沿って補充リジェクト庫225へ搬送して収納させ、又は搬送路W5、W2、W11、W25及びW26に沿ってリジェクト庫223へ搬送して収納させる。
このように紙幣入出金機210は、回収処理において、補充処理の場合と同様に上基幹搬送路WU3を経由する搬送経路により、紙幣を移動元の紙幣収納庫22から補充回収庫224へ搬送して移動することができる。またこのとき紙幣入出金機210は、リジェクト紙幣が発生した場合には、これを補充リジェクト庫225又はリジェクト庫223へ搬送して収納することができる。
[3−3−5.紙幣移動処理]
紙幣入出金機210は、移動処理を行う場合、まず上述した出金処理の場合(図31(A))と同様、矢印R67、R68及びR69に沿って紙幣をそれぞれ搬送する。これにより紙幣入出金機210は、移動元の紙幣収納庫22又は補充回収庫224から、正常な紙幣を接客部12へ搬送して収容器31内に集積し、また正常で無い紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクト庫223へ搬送して収納する。
続いて紙幣入出金機210は、図10(A)及び(B)とそれぞれ対応する図34(A)及び(B)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送することにより、接客部12内の紙幣を移動先となる紙幣収納庫22、補充回収庫224又はリジェクト庫223へ搬送して収納する。すなわち紙幣入出金機210は、紙幣移動処理において、矢印R13、R14、R15及びR16とそれぞれ対応する矢印R81、R82、R83及びR84に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。ただし紙幣入出金機210は、紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクト庫223へ搬送する場合、第1の実施の形態における搬送路W3に代えて、搬送路W11、W25及びW26に沿って搬送する。
これにより紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、紙幣移動処理において、接客部12を一時的な紙幣の収納場所として利用しながら、移動元の紙幣収納庫22又は補充回収庫224から移動先の紙幣収納庫22又は補充回収庫224へ紙幣を移動させることができる。
[3−3−6.接客分離異常リトライオーバ処理]
紙幣入出金機210は、接客分離異常リトライオーバ処理を行う場合、図11(A)及び(B)とそれぞれ対応する図35(A)及び(B)に示すように、概ね第1の実施の形態と同様に紙幣を搬送する。すなわち紙幣入出金機210は、接客分離異常リトライオーバ処理において、矢印R17及びR18とそれぞれ対応する矢印R85及びR86に沿って、紙幣をそれぞれ搬送する。
これにより紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、接客分離異常リトライオーバ処理において、分離部31Sにより正常に分離できなかった紙幣を接客部12から一度繰り出させ、再び接客部12に戻して放出部31Eから収容器31内へ放出させ、集積することができる。
[3−3−7.取忘取込処理]
紙幣入出金機210は、取忘取込処理を行う場合、第1の実施の形態と一部のみ同様に、入金処理と同様の処理手順によって紙幣を順次搬送する。すなわち紙幣入出金機210は、まず図29(A)及び(B)に示したように、矢印R61、R62、R63及びR64に沿って紙幣をそれぞれ搬送することにより、取忘紙幣を一時保留部17へ搬送する。
その後紙幣入出金機210は、入金処理の場合とは異なり、図36に示す矢印R87のように、一時保留部17から紙幣(取忘紙幣)を順次繰り出し、搬送路W6、W5、W2、W11、W25及びW27に沿って取忘収納庫228へ搬送して、収納させる。
これによりの紙幣入出金機210は、出金処理において紙幣の取り忘れが発生した場合、取忘取込処理として、取忘紙幣を入金処理と同様の搬送経路により一時保留部17へ取り込んだ後、専用の取忘収納庫228へ搬送して収納することができる。
[3−4.効果等]
以上の構成において、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10の紙幣収納庫22Aに代えて補充回収庫224を設け、これと共に切替部264及び265並びに搬送路W22及びW23等を設けた(図28)。
このため紙幣入出金機210は、補充処理において、補充回収庫224から上部ユニット210U側の上基幹搬送路WU3を経由して移動先の紙幣収納庫22へ紙幣を移動させることができる(図32(A)及び(B))。また紙幣入出金機210は、回収処理において、移動元の紙幣収納庫22から上部ユニット210U側の上基幹搬送路WU3を経由して補充回収庫224へ紙幣を移動させることができる(図33)。
すなわち紙幣入出金機210は、補充処理及び回収処理において、その大部分を占める正常な紙幣については、第1の実施の形態における移動処理(図9(A)及び図10(A))等と異なり、接客部12や一時保留部17に一度収納させること無く、紙幣を移動元から移動先まで搬送できる。これにより紙幣入出金機210は、紙幣収納庫22及び補充回収庫224の間で、多数の紙幣を比較的短い時間で効率良く移動させることができる。
また紙幣入出金機210は、補充回収庫224に金種を割り当て、再利用可能な紙幣を収納させるようにしたため、該補充回収庫224を補充処理又は回収処理で使用しない場合にも、有効に利用することができる。
これを他の観点から見れば、紙幣入出金機210では、紙幣収納庫22と補充回収庫224との間で紙幣を搬送する場合に、鑑別部15を通過させてリジェクト紙幣を排除する必要がある。すなわち紙幣入出金機210では、鑑別部15を挟んで紙幣収納庫22と反対側に補充回収庫224を接続する必要がある。
その一方で紙幣入出金機210では、補充回収庫224を紙幣収納庫22と同様に再利用可能な紙幣の収納場所として利用するためには、該補充回収庫224を、鑑別部15や一時保留部17に対して紙幣収納庫22と同様の搬送経路を形成し得るように接続する必要、すなわち後受渡部C1(図28)と接続する必要がある。
そこで紙幣入出金機210では、補充回収庫224の上側に切替部264を設け、該補充回収庫224と接続された搬送路W21を、後側の搬送路W8及び前側の搬送路W22の何れとも接続し得るようにした。これにより紙幣入出金機210では、補充処理及び回収処理において紙幣を短時間で搬送できることに加えて、該補充回収庫224を紙幣収納庫22と同様に再利用可能な紙幣の収納場所として利用することができる。
また紙幣入出金機210では、リジェクト庫223に加えて補充リジェクト庫225を設けたため、補充処理において発生した補充リジェクト紙幣を他のリジェクト紙幣と区別して収納することができる(図32)。
さらに紙幣入出金機210では、補充回収庫224及び補充リジェクト庫225を一体化して補充回収カセット226としたため(図27)、両者を互いに独立した構成とする場合と比較して、下部ユニット210Lから取り外した状態での運搬作業等を容易化することができる。
そのうえ紙幣入出金機210では、取忘紙幣を収納するための取忘収納庫228を設けたため(図26)、本来的に顧客の所有物である取忘紙幣を、金融機関等の所有物である他の紙幣と区別した状態で保管することができる。
さらに紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10(図2、図4及び図5)と比較して、接客部12、接客搬送部13、鑑別部15、一時保留部17及び紙幣収納庫22B〜22Dを同一の構成とした。また紙幣入出金機210は、上前搬送部214における搬送路245以外の部分、上後搬送部216における搬送路254以外の部分、並びに下搬送部221における切替部61〜63及び搬送路71〜78を、何れも紙幣入出金機10と同一の構成とした。これにより紙幣入出金機210は、紙幣入出金機10との間で多くの部品を共通化でき、コストの低廉化を図ることができる。
また紙幣入出金機210は、その他の点においても、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210は、上部ユニット210Uに前後方向に沿った上基幹搬送路WU3を形成し、下部ユニット210Lに前後方向に沿った下基幹搬送路WLを形成し、両者を後受渡部C1で接続した。また紙幣入出金機210は、切替部264により、補充回収庫224と接続される搬送路W21を後側の搬送路W8及び前側の搬送路W22の何れとも接続させ得るようにした。これにより紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と多くの部品を共通化しながら、補充処理及び回収処理を効率良く短時間で完了でき、且つ補充回収庫224に再利用可能な紙幣を収納して紙幣収納庫22と同様に利用することができる。
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態による現金自動預払機301(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機310を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣入出金機310は、図2と対応する図37に示すように、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lに代わる上部ユニット310U及び下部ユニット310Lを有している。また紙幣入出金機310は、第1の実施の形態(図3)と同様、紙幣入出金機フレーム310Fに対し上部ユニット310U及び下部ユニット310Lをそれぞれ単独で前方へ引き出し得るようになっている。
因みに上部ユニット310U及び下部ユニット310Lの後端は、基準位置P0から距離L1及びL2(図2、図12)よりも長い距離L4だけ離れた位置P4に、すなわち図2等における位置P1及びP2よりも後側に、揃えられている。その一方で、上部ユニット310Uにおける上前搬送部314の前端及び下部ユニット310Lの前端は、第3の実施の形態による紙幣入出金機210(図24)と同様の位置P3に揃えられている。
さらに現金自動預払機301(図1)は、筐体2の後側に開閉可能な後扉が設けられており、且つ紙幣入出金機フレーム310Fにおける後面の下側部分が開放されている。
[4−1.上部ユニットの構成]
図4と対応する図38に示すように、上部ユニット310Uは、第1の実施の形態による上部ユニット10Uと比較して、紙幣制御部11、接客搬送部13、上前搬送部14及び上後搬送部16に代わる紙幣制御部311、接客搬送部313、上前搬送部314及び上後搬送部316を有する点において相違する。さらに上部ユニット310Uは、上後搬送部316及び接客搬送部313の間を接続する接客出金搬送部318を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣制御部311は、紙幣制御部11等と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部311は、やはり紙幣制御部11等と同様、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
接客搬送部313は、第1の実施の形態による接客搬送部13(図4)と比較して、搬送路38が省略される一方、第2の実施の形態における接客搬送部113(図13)と同様の搬送路139が設けられている点において相違するものの、駆動ローラ36及び搬送路37については同様に構成されている。
上前搬送部314は、第1の実施の形態による上前搬送部14(図4)と比較して、上前第2切替部42及び搬送路47が省略され、搬送路44及び46に相当する搬送路344が設けられ、搬送路45に代えて第3の実施の形態における上前搬送部214(図25)と同様の搬送路245を有する点において相違する。その一方で上前搬送部314は、上前搬送部14と同様の上前第1切替部41及び搬送路43を有している。
上後搬送部316は、第1の実施の形態による上後搬送部16(図4)と比較して、全体的に後方向へ延長され、上後切替部51の後側に上後第2切替部351が設けられ、該上後切替部51及び該上後第2切替部351を結ぶ搬送路352が設けられ、該上後第2切替部351から上方へ向かう搬送路353が設けられた点において相違する。その一方で上後搬送部316は、上後搬送部16と同様の上後切替部51並びに搬送路52、53及び54を有している。
搬送路353の上端は、一時保留部17に接続されている。これに伴い搬送路53の上端は、接客出金搬送部318の搬送路340と接続されている。この搬送路340は、後下端において搬送路53の上端と接続されており、前端において接客搬送部313における搬送路139の後端と接続されている。
かかる構成により上部ユニット310Uでは、紙幣を上後切替部51から搬送路53、340、139、37及び34に沿って搬送することにより、接客部12の放出部31Eへ引き渡して収容器31内へ放出させること、すなわち出金することができる。
また上部ユニット310Uにおける下側部分では、上前搬送部314の搬送路245及び344、鑑別部15の鑑別搬送路48、並びに上後搬送部316の搬送路52、352及び54により、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで以下では、この搬送路を上基幹搬送路WU4(図37)と呼び、また前側の上前搬送部314、中程の鑑別部15及び後側の上後搬送部316をまとめて上搬送部310UC(図38)とも呼ぶ。
[4−2.下部ユニットの構成]
図5と対応する図39に示すように、下部ユニット310Lは、第1の実施の形態による下部ユニット10Lと比較して、紙幣収納庫22(22A〜22D)が同様に構成されているものの、他の部分の構成が相違している。すなわち下部ユニット310Lは、下搬送部21及びリジェクト庫23とそれぞれ対応する下搬送部321並びにリジェクト庫323A及び323Bを有しており、さらに補充回収庫324、補充リジェクト庫325、下後搬送部327及び取忘収納庫328を有している。
この下部ユニット310Lでは、前端部分から後方へ向けて、順に紙幣収納庫22A、22B、22C及び22Dが配置されている。すなわち下部ユニット310Lでは、第1の実施の形態による下部ユニット10Lと比較して、紙幣収納庫22A、22B、22C及び22Dが前方向へ移動されたような配置となっている。
紙幣収納庫22Dの後側には、上側から順にリジェクト庫323A及び323B並びに取忘収納庫328が配置されている。このリジェクト庫323A及び323B並びに取忘収納庫328の後側には、下後搬送部327が配置されている。さらに下後搬送部327の後側には、補充リジェクト庫325及び補充回収庫324が配置されている。この補充回収庫324は、下部ユニット310Lにおける後端部分に位置している。
リジェクト庫323A及び323Bは、何れも第3の実施の形態によるリジェクト庫223(図26)と同様に構成されている。補充回収庫324及び補充リジェクト庫325は、それぞれ第3の実施の形態による補充回収庫224及び補充リジェクト庫225(図26)と同様に構成されている。また補充回収庫324及び補充リジェクト庫325は、第3の実施の形態と同様に一体化され、補充回収カセット326となっている(図27)。取忘収納庫328は、第3の実施の形態による取忘収納庫228(図26)と同様に構成されている。
[4−2−1.下搬送部の構成]
下搬送部321の内部には、後端近傍から前方向へ向けて互いに離れた箇所に切替部361、362、363、364、365、366及び367が配置されている。この切替部361〜367は、何れも第1の実施の形態による切替部61等と同様に構成されており、紙幣制御部311の制御に基づき2通りの搬送経路を切り替えるようになっている。
切替部361の周囲には、該切替部361から上方へ向かう搬送路371、該切替部361から下方へ向かい補充回収庫324と接続された搬送路372、及び該切替部361から前方へ向かい切替部362と接続された搬送路373が形成されている。この切替部361は、上側の搬送路371及び下側の搬送路372を接続する搬送経路と、上側の搬送路371及び前側の搬送路373を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路371の上端は、下部ユニット後受渡口T21となっており、上部ユニット310Uの上部ユニット後受渡口T11(図38)との間で紙幣を受け渡すことができる。
切替部362の周囲には、上述した搬送路373に加えて、該切替部362から下方へ向かい補充リジェクト庫325と接続された搬送路374、及び該切替部362から前方へ向かい切替部363に接続された搬送路375が設けられている。この切替部362は、前側の搬送路375及び後側の搬送路373を接続する搬送経路と、前側の搬送路375及び下側の搬送路374を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部363の周囲には、上述した搬送路375に加えて、該切替部363から下方へ向かい下後搬送部327と接続された搬送路376、及び該切替部363から前方へ向かい切替部364に接続された搬送路377が設けられている。この切替部363は、後側の搬送路375及び下側の搬送路376を接続する搬送経路と、後側の搬送路375及び前側の搬送路378を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部364の周囲には、上述した搬送路377に加えて、該切替部364から下方へ向かい紙幣収納庫22Dと接続された搬送路378、及び該切替部364から前方へ向かい切替部365に接続された搬送路379が設けられている。この切替部364は、前側の搬送路379及び後側の搬送路377を接続する搬送経路と、前側の搬送路379及び下側の搬送路378を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部365の周囲には、上述した搬送路379に加えて、該切替部365から下方へ向かい紙幣収納庫22Cと接続された搬送路380、及び該切替部365から前方へ向かい切替部366に接続された搬送路381が設けられている。この切替部365は、前側の搬送路381及び後側の搬送路379を接続する搬送経路と、前側の搬送路381及び下側の搬送路380を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部366の周囲には、上述した搬送路381に加えて、該切替部366から下方へ向かい紙幣収納庫22Bと接続された搬送路382、及び該切替部366から前方へ向かい切替部367に接続された搬送路383が設けられている。この切替部366は、前側の搬送路383及び後側の搬送路381を接続する搬送経路と、前側の搬送路383及び下側の搬送路382を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部367の周囲には、上述した搬送路383に加えて、該切替部367から上方へ向かう搬送路384、及び該切替部367から下方へ向かい紙幣収納庫22Aに接続された搬送路385が設けられている。この切替部367は、上側の搬送路384及び後側の搬送路383を接続する搬送経路と、上側の搬送路384及び下側の搬送路385を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路384の上端は、下部ユニット前受渡口T22となっており、上部ユニット310Uの上部ユニット前受渡口T12(図38)との間で紙幣を受け渡すことができる。
かかる構成により下搬送部321は、紙幣制御部311の制御に基づいて各切替部の搬送経路を適宜切り替えることにより、上部ユニット310Uから下部ユニット後受渡口T21を介して受け取った紙幣を、補充回収庫324又は下後搬送部327へ搬送することができる。また下搬送部321は、補充回収庫324から繰り出された紙幣を下部ユニット後受渡口T21へ搬送して上部ユニット310Uへ引き渡すこともできる。
さらに下搬送部321は、紙幣制御部311の制御に基づいて各切替部の搬送経路を適宜切り替えることにより、上部ユニット310Uから下部ユニット前受渡口T22を介して受け取った紙幣を、紙幣収納庫22A、22B、22C、22D又は補充リジェクト庫325へ搬送して収納させることができる。また下搬送部321は、紙幣収納庫22A、22B、22C又は22Dから繰り出された紙幣を下部ユニット前受渡口T22へ搬送して上部ユニット310Uへ引き渡すこともできる。
因みに下搬送部321では、搬送路373、375、377、379、381及び383により構成された、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路を下基幹搬送路WL4(図37)と呼ぶ。
[4−2−2.下後搬送部の構成]
下後搬送部327内には、上端のやや下側に切替部391が配置され、該切替部391から下方へやや離れた箇所に切替部392が配置されている。切替部391及び392は、何れも下搬送部321の切替部361等と同様に構成され、紙幣制御部311の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を切り替えるようになっている。
切替部391の周囲には、下搬送部321における搬送路376の下端と該切替部391とを接続する搬送路393、該切替部391と前側のリジェクト庫323Aとを接続する搬送路394、及び該切替部391と下側の切替部392とを接続する搬送路395が設けられている。また切替部392の周囲には、上述した搬送路395に加えて、該切替部392と前側のリジェクト庫323Bとを接続する搬送路396、及び該切替部392と前方下側の取忘収納庫328とを接続する搬送路397が設けられている。搬送路393、394、395、396及び397は、下搬送部321における搬送路371等と同様、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等によりそれぞれ構成されている。
切替部391は、上側の搬送路393及び前側の搬送路394を接続する搬送経路と、上側の搬送路393及び下側の搬送路395を接続する搬送経路とを切り替えることができる。また切替部392は、上側の搬送路395及び前側の搬送路396を接続する搬送経路と、上側の搬送路395及び下側の搬送路397を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
かかる構成により下後搬送部327は、紙幣制御部311の制御に基づいて切替部391及び392の搬送経路を適宜切り替えることにより、下搬送部321の搬送路376から受け取った紙幣をリジェクト庫323A、323B又は取忘収納庫328へそれぞれ搬送して収納させることができる。
[4−3.効果等]
以上の構成において、第4の実施の形態による現金自動預払機301の紙幣入出金機310は、上部ユニット310Uにおいて、上後搬送部316の上後切替部51と接客部12の放出部31Eとを接続する搬送経路を形成した(図38)。
このため紙幣入出金機310は、入金処理において入金リジェクト紙幣が発生した場合に、該入金リジェクト紙幣を上後切替部51から放出部31Eへ搬送して直ちに収容器31内へ戻すことができる。これにより紙幣入出金機310は、搬送路貯留部WS(図7)に紙幣を貯留させる必要が無く、また該搬送路貯留部WSが満杯になった場合に必要であった、接客部12から紙幣を繰り出す処理を一時停止させて入金リジェクト紙幣を該接客部12へ搬送する、といった時間を要する処理を行う必要も無い。
また紙幣入出金機310は、下部ユニット310L(図39)において、後端に補充回収庫324を配置し、その直前に補充リジェクト庫325を配置した。また現金自動預払機301(図1)は、筐体2の後側に開閉可能な後扉が設けられ、紙幣入出金機フレーム310Fにおける後面の下側部分が開放されている(図37)。
このため紙幣入出金機310は、現金自動預払機301における筐体2の後扉が開放されていれば、下部ユニット310Lが紙幣入出金機フレーム310Fに格納された状態であっても、該下部ユニット310Lに対し補充回収カセット326の着脱を行うことができる。これにより紙幣入出金機310は、現金自動預払機301の運用を停止させること無く、補充回収カセット326の装着又は取り外しを行うことができ、該現金自動預払機301における可用性を高めることができる。
さらに紙幣入出金機310は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10(図2、図4及び図5)と比較して、接客部12、鑑別部15、一時保留部17及び紙幣収納庫22(22A〜22D)を同一の構成とした。また紙幣入出金機310は、上前搬送部314における上前第1切替部41及び搬送路43、接客搬送部313における駆動ローラ36及び搬送路37並びに上後搬送部316における上後切替部51、搬送路52、53及び54を、何れも紙幣入出金機10と同一の構成とした。
さらに紙幣入出金機310は、上前搬送部314における搬送路344を第1の実施の形態における搬送路44及び46と同様に構成し、接客搬送部313の搬送路139を第2の実施の形態と同様に構成し、上後搬送部316の上後第2切替部351を上後切替部51と同等の構成とした。また紙幣入出金機310は、補充回収カセット326を第3の実施の形態における補充回収カセット226と同様に構成した。
これにより紙幣入出金機310は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10、第2の実施の形態による紙幣入出金機110及び第3の実施の形態による紙幣入出金機210との間で多くの部品を共通化でき、コストの低廉化を図ることができる。
また紙幣入出金機310は、その他の点においても、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第4の実施の形態による現金自動預払機301の紙幣入出金機310は、上部ユニット310Uに前後方向に沿った上基幹搬送路WU4を形成し、下部ユニット310Lに前後方向に沿った下基幹搬送路WL4を形成し、両者を後受渡部C1及び前受渡部C2で接続した。また紙幣入出金機310は、下部ユニット310Lにおける後端に補充回収カセット326を配置した。これにより紙幣入出金機310は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10等と多くの部品を共通化しながら、運用を停止させること無く補充回収カセット326を着脱することができ、現金自動預払機301における可用性を格段に高めることができる。
[5.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、上部ユニット10Uの下端に上搬送部10UCを配置する場合について述べた(図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上部ユニット10U内における上搬送部10UCの下側に種々のモジュールを配置しても良い。また、下部ユニット10L(図5)についても、その上端に下搬送部21を配置する構成に限らず、例えば該下部ユニット10Lにおける該下搬送部21よりも上側に種々のモジュールを配置しても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機フレーム10Fに対し上部ユニット10U及び下部ユニット10Lをそれぞれ前方向へ移動(スライド)させることにより外部に露出させるようにした場合について述べた(図3)。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣入出金機フレーム10Fに対し上部ユニット10U及び下部ユニット10Lをそれぞれ他の方向、例えば後方向へ移動(スライド)させることにより外部に露出させるようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、上部ユニット10Uの最下部に上搬送部10UCを設けると共に、下部ユニット10Lの最上部に下搬送部21を設けた場合、すなわち上搬送部10UC及び下搬送部21間を境界として上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを分割する場合について述べた(図2、図4及び図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下搬送部21を下部ユニット10Lから上部ユニット10Uに移すことにより、該下搬送部21の下面と紙幣収納庫22及びリジェクト庫23の上面との間を境界とする等、他の種々の箇所を境界として、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを分割しても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機10を上部ユニット10U及び下部ユニット10Lといった2個のユニットに分割する場合について述べた(図2、図4及び図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上搬送部10UC及び下搬送部21を中間ユニットとし、接客部12、接客搬送部13及び一時保留部17を上部ユニットとし、紙幣収納庫22及びリジェクト庫23を下部ユニットとすることにより、3個のユニットに分割する等、3個以上のユニットに分割しても良い。この場合、各ユニットを紙幣入出金機フレーム10Fに対しそれぞれ前方向又は後方向へ個別に引き出し得るようにすることが望ましい(図3)。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、上搬送部10UCを大きく上前搬送部14、鑑別部15及び上後搬送部16に分けた構成とした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば当該上搬送部10UCを種々の分け方により複数に分けても良く、或いはこれらを分けること無く1個の上搬送部10UCとしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、上前搬送部14の上前搬送部回動軸14Xを回動中心として、上前搬送下部14Lに対し上前搬送上部14Uを接客部12及び接客搬送部13と一体に回動させることにより、搬送路45、44及び47(すなわち上前搬送路WU14)を開放又は閉塞させる場合について述べた(図4)。また、上後搬送部16の上後搬送部回動軸16Xを回動中心として、上後搬送下部16Lに対し上後搬送上部16Uを一時保留部17と一体に回動させることにより、搬送路52及び54(すなわち上後搬送路WU16)を開放又は閉塞させる場合について述べた(図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15を搬送路に沿って上下に分割可能に構成し、その上側部分を上前搬送上部14U又は上後搬送上部16Uと一体に回動させるようにしても良い。これにより、上基幹搬送路WUの全範囲を容易に開放又は閉塞することができる。要は、上搬送部10UCを上基幹搬送路WUに沿って分割した一方側の少なくとも一部分を、他方側に対して上前搬送部回動軸14X等を中心として回動させることにより、該上基幹搬送路WUの少なくとも一部を開放又は閉塞することができれば良い。さらには、上前搬送上部14Uと、上後搬送上部16Uと、鑑別部15の上側部分とを一体に構成し、上前搬送部回動軸14X又は上後搬送部回動軸16Xを回動中心として一体に回動させることにより、上基幹搬送路WUの全範囲を容易に開放又は閉塞するようにしても良い。下搬送部21についても同様であり、また第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送経路を3通りに切り替える上後切替部51を、1枚のブレードの傾斜角度を変化させて紙幣の搬送方向を切り替える、いわゆる3ウェイブレード方式とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば搬送経路を2通りに切り替えることができる2ウェイブレード方式の切替部を3個組み合わせることにより、全体として3通りに搬送経路を切り替えるようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、上前第2切替部42を、後側の搬送路47及び上側の搬送路46を接続する搬送経路と、後側の搬送路47及び前側の搬送路44を接続する搬送経路とを切り替える、いわゆる2ウェイブレード方式とした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上前第2切替部42を上後切替部51と同様の3ウェイブレード方式としても良い。この場合、上前第2切替部42は、例えば接客分離異常リトライオーバ処理において、前側の搬送路44及び上側の搬送路46を接続する搬送経路に切り替えることにより、接客部12の分離部31Sから繰り出した紙幣(分離異常となった紙幣)を直ちに該接客部12に戻して放出部31Eから収容器31内へ放出させることができる。これにより、第1の実施の形態(図11(A)及び(B))と比較して、接客分離異常リトライオーバ処理における処理時間を短縮でき、また分離異常となった紙幣が搬送路W5内、特に鑑別部15内等で詰まりを生じる可能性も排除できる。
また、例えば下搬送部21の切替部61〜63についても、3ウェイブレード方式としても良い。この場合、紙幣移動処理(図9(A)、図10(A)及び(B))において、紙幣を接客部12や一時保留部17に一時的に収納させること無く、紙幣収納庫22同士の間で紙幣を直接搬送することができる。これにより、鑑別部15を通過しないために鑑別処理を行い得なくなることと引き替えに、処理時間を大幅に短縮できる。第2〜第4の実施の形態についても同様である。特に第2の実施の形態(図15)では、切替部62、63及び164を3ウェイブレード方式とした場合に、移動元の紙幣収納庫22から繰り出した紙幣を上基幹搬送路WU経由で移動先の紙幣収納庫22へ搬送するように搬送経路を形成することにより、鑑別部15を通過して鑑別処理を行いながら、処理時間を短縮できる。また第3の実施の形態(図28)における切替部62、63及び264についても同様の効果を期待できる。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機10に設ける一時保留部17をいわゆるテープエスクロ方式とし、紙幣をテープ58と共にドラム55の周側面に巻き付けて収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣入出金機10に他の種々の方式の一時保留部を設けても良い。この場合、一時保留部としては、第1の実施の形態と同様に、入金処理や出金処理において取り扱う最大枚数(例えば200枚)の紙幣を一時的に収納することができ、さらに当該紙幣を繰り出す際に、収納時における各紙幣の順序を正順又は逆順に維持できれば良い。さらに一時保留部としては、紙幣のスキューや紙幣同士の間隔も維持したまま繰り出し得ることが好ましい。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、接客部12における収容器31の内部に前後方向へ移動可能な仕切板を1枚設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば収容器31の内部に2枚以上の仕切板を設けても良く、或いは該収容器31から仕切板を省略しても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、接客搬送部13を接客部12と区別した構成とすることにより、第2及び第4の実施の形態との間で該接客部12を共通化する場合について述べた(図4、図13及び図38)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば接客搬送部13を接客部12に組み込んだ構成とし、第2及び第4の実施の形態において第1の実施の形態と異なる構成の接客部を使用しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、上基幹搬送路WUに上前第2切替部42を設け、該上基幹搬送路WUと接客部12との間に搬送路W1及び搬送路W2といった2本の搬送路を設ける場合について述べた(図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上前第2切替部42に代わる切替部を搬送路W1上に設けることにより、上基幹搬送路WUと接客部12との間を1本の搬送路W1のみによって接続しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、第1の実施の形態による接客搬送部13、第2の実施の形態による接客搬送部113及び第3の実施の形態による接客搬送部313の間で駆動ローラ36及び搬送路37を共通化し、さらに接客搬送部113及び313の間で搬送路139を共通化する場合について述べた(図4、図13及び図38)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば接客搬送部13、113及び313の間で駆動ローラ36及び搬送路37の位置や構成を互いに相違させても良い。搬送路139等についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、第1の実施の形態による上後搬送部16及び第4の実施の形態による上後搬送部316の間で、鑑別部15の後端からの上後切替部51の位置を共通化する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上後搬送部316における鑑別部15の後端からの上後切替部51の位置を、上後搬送部16の場合と相違させても良い。また上後搬送部316においては、上後第2切替部351の構成を上後切替部51と相違させても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、補充回収庫224及び補充リジェクト庫225を一体化して補充回収カセット226を構成する場合について述べた(図27)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補充回収庫224及び補充リジェクト庫225をそれぞれ独立した1個のカセットとして下部ユニット210Lに対し着脱し得るようにしても良い。第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第3の実施の形態においては、補充リジェクト庫225を設け、補充処理において発生した補充リジェクト紙幣を該補充リジェクト庫225に搬送して収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補充リジェクト庫225を省略し、補充処理において発生した補充リジェクト紙幣をリジェクト庫223に搬送して収納しても良い。第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、入金処理において、紙幣制御部11により、紙幣の搬送順序と対応付けて、各紙幣の金種、記番号及び搬送先や、その搬送状態、すなわちスキューや紙幣同士の間隔等を、鑑別部15における入金時情報として記憶させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣の金種及び記番号のみ、或いは搬送状態のみ等、各センサから得られた検知結果に基づいた種々の情報を適宜取捨選択した上で入金時情報として記憶させるようにしても良い。また搬送状態についても、スキューのみ、或いは紙幣同士の間隔のみ等、走行センサ49Cの検知結果を基に得られる種々の情報を適宜取捨選択して用いても良い。要は、収納処理において搬送先を読み出すことができ、又は記憶された情報を基に搬送先を決定できれば良い。一時保留部17の収納時搬送情報についても同様であり、また第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第3の実施の形態においては、下部ユニット210L内におけるリジェクト庫223の下側に、取忘紙幣を他の紙幣と区別して収納するための取忘収納庫228を設け、搬送路294及び292等を介して搬送路282と接続させる場合について述べた(図26)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15により偽造されていると鑑別された紙幣(いわゆる偽券)を他の紙幣と区別して収納するための偽券収納庫等、他の種々の収納庫を設け、適宜搬送路を配置することにより搬送路282と接続させても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、入金処理において一時保留部17に紙幣を収納する際における搬送状態を走行監視センサ59により検知し、その検知結果を収納時搬送情報として記憶させておき、収納処理において走行監視センサ59から得られた搬送状態を収納時搬送情報と比較して、収納時の搬送状態が正しく再現されているか否かを判断する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば一時保留部17において収納時の搬送状態を極めて高精度に維持できる場合に、走行監視センサ59を省略すると共に搬送状態が再現されているか否かについて特に判断しないようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納処理において一時保留部17から繰り出される紙幣が収納時の搬送状態を正しく再現していないと判断した場合、当該紙幣を上搬送部10UCによりリジェクト庫23へ搬送する途中で鑑別部15により再鑑別させ、記憶している入金時情報と一致した場合には、入金処理において決定した搬送先を利用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば収納処理において一時保留部17から繰り出される紙幣が収納時の搬送状態を正しく再現していないと判断した場合、鑑別部15による再鑑別の結果に拘わらず、一律にリジェクト庫23へ搬送させるようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、一時保留部17の走行監視センサ59により検知する紙幣の搬送状態として、具体的に紙幣同士の間隔及び各紙幣のスキュー(すなわち搬送方向に対する傾斜)を検知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣同士の間隔及び各紙幣のスキューの何れか一方としても良く、また紙幣の厚みを検知しても良く、さらにはこれらを適宜組み合わせても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、入金処理での鑑別部15における入金時情報や走行監視センサ59による収納時搬送情報を紙幣制御部11の記憶部に記憶させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば主制御部9の記憶部や、所定のネットワークを介して接続された外部のサーバ装置(図示せず)の内部に設けられた記憶部等、情報を記憶可能な種々の箇所に入金時情報及び収納時搬送情報を記憶させるようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、下搬送部21の搬送路W8を搬送路貯留部WSとして入金リジェクト紙幣を貯留しておき、接客部12内の全紙幣を鑑別部15により鑑別し終えた後などに、当該入金リジェクト紙幣を接客部12へ戻すようにした場合について述べた(図7(A)及び(B))。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15により入金リジェクト紙幣を検知する度に、接客部12からの紙幣の取込を中断し、当該入金リジェクト紙幣を当該接客部12へ戻すようにしても良い。この場合、下搬送部21の搬送路W8を搬送路貯留部WSとして使用する必要が無い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、入金リジェクト紙幣を下搬送部21の搬送路貯留部WSに貯留する際、紙幣同士の間隔を短縮する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣同士の間隔を短縮すること無く、維持したまま貯留しても良い。この場合、下搬送部21における搬送路W8を構成する各搬送ローラ等の回転を上搬送部10UCにおける各搬送ローラ等と同様に一定の回転速度で回転させれば良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、下搬送部21の各搬送ローラを駆動するモータへの制御信号等を基に、搬送路貯留部WSの内部に貯留している入金リジェクト紙幣の後端の位置を紙幣制御部11が認識する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば当該モータの制御精度が比較的低い場合に、下搬送部21の内部における前端近傍に光学センサを設け、当該光学センサによる紙幣の検知結果を基に、搬送路貯留部WSの内部に貯留している入金リジェクト紙幣の後端の位置を紙幣制御部11が認識しても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金処理において、紙幣の搬送先をリジェクト庫23に決定した際に何れのセンサの検知結果に基づいているかに応じて、その搬送動作を相違させるようにした場合について述べた。具体的には、走行センサ49Cによる検知結果を基に紙幣の搬送先をリジェクト庫23に決定した場合には、当該紙幣が上前第2切替部42に到達する前に当該上前第2切替部42における搬送経路の切替動作を完了させた(図9(A))。その一方で、イメージセンサ49B及び真偽センサ49Aによる検知結果を基に紙幣の搬送先をリジェクト庫23に決定した場合には、当該紙幣が上前第2切替部42を通過して接客部12の近傍まで搬送された後、当該紙幣を当該上前第2切替部42の後方まで逆送させ、当該上前第2切替部42における搬送経路を切り替えた(図9(B)及び(C))。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばイメージセンサ49B及び真偽センサ49Aから上前第2切替部42までの搬送経路が比較的長い場合に、何れのセンサの検知結果を基に紙幣の搬送先をリジェクト庫23に決定した場合であっても、当該紙幣が上前第2切替部42に到達する前に搬送経路の切替動作を完了させるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、走行センサ49Cを厚みセンサ及び光学センサにより構成し、それぞれの検知結果を基に紙幣制御部11において重送の有無、各紙幣のスキュー及び紙幣同士の間隔を認識する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々のセンサにより走行センサを構成しても良い。要は、入金処理において各紙幣が入金リジェクト紙幣であるか否かを検知でき、且つ出金処理において各紙幣がリジェクト紙幣であるか否かを検知できれば良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、出金処理において、鑑別部15の走行センサ49Cにおける検知結果のみを基に、紙幣制御部11において各紙幣の搬送先を接客部12又はリジェクト庫23に決定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば出金処理において、走行センサ49C及びイメージセンサ49Bの双方からの検知結果を基に、紙幣制御部11において各紙幣の搬送先を決定する等、種々のセンサからの検知結果を基に各紙幣の搬送先を決定しても良い。この場合、要は各紙幣を各センサにより検知した後、当該紙幣を前方へ搬送して上前第2切替部42に到達させるまでの間に、各センサから得られる検知結果を基に紙幣制御部11より搬送先を決定し、さらに上前第2切替部42において搬送経路の切替動作を完了することができれば良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、鑑別部15に走行センサ49C、イメージセンサ49B及び真偽センサ49Aといった3種類のセンサを設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、鑑別部15に2種類以下又は4種類以上のセンサを設けても良い。要は、得られる検知結果を基に紙幣制御部11において、少なくとも入金処理において各紙幣が正常な紙幣又は入金リジェクト紙幣の何れであるかを判断することができ、且つその後の収納処理における搬送先を定めることができれば良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、鑑別部15の各センサにおける検知結果を紙幣制御部11へ送出することにより、当該紙幣制御部11により紙幣の金種、真偽及び損傷の程度等を認識した上でその搬送先を決定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15に専用の鑑別制御部を設け、鑑別部15の各センサにおける検知結果を当該鑑別制御部へ送出して、当該鑑別制御部において紙幣の金種、真偽、損傷の程度等を認識させるようにしても良い。この場合、鑑別制御部において認識した金種、真偽及び損傷の程度等を表す情報を紙幣制御部11へ送出することにより、当該紙幣制御部11において紙幣の搬送先を決定すれば良い。これにより、紙幣制御部11の処理負荷を軽減することができる。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、束出金処理(図21(A)〜(C))及び整理施封処理(図22(A)〜(C)及び図23)において、裏向きの紙幣を表向きに反転させる表裏反転処理を行った上で、紙幣を施封ユニット120へ搬送する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば処理の開始時に金融機関の職員等により表裏反転処理を行うか否かを指示させ、行わない指示を受けた場合には表裏反転処理を行うこと無く紙幣を施封ユニット120へ搬送するようにしても良い。或いは、出金処理において、顧客に指定された場合に表裏反転処理を行うようにしても良い。この場合、例えば表裏反転処理には時間を要する旨を顧客に伝えた上で、表裏反転せずに短時間で出金するか、或いは時間をかけて表裏を揃えた状態で出金するかを選択させれば良い。さらには、表裏反転処理を行わないようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、下部ユニット10Lに4個の紙幣収納庫22(22A〜22D)を設ける場合について述べた(図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、下部ユニット10Lに3個以下又は5個以上の紙幣収納庫22を設けても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、顧客との間で媒体としての紙幣に関する取引処理を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば各種金券や証券等、或いは入場券や乗車券のような種々の紙葉状の媒体を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、上搬送部としての上搬送部10UCと、入出部としての接客部12と、一時保留部としての一時保留部17と、鑑別部としての鑑別部15と、制御部としての紙幣制御部11と、下搬送部としての下搬送部21と、媒体収納庫としての紙幣収納庫22と、リジェクト庫としてのリジェクト庫23と、リジェクト搬送部としての搬送路80と、第1受渡部としての後受渡部C1と、第2受渡部としての前受渡部C2とによって媒体処理装置としての紙幣入出金機10を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる上搬送部と、入出部と、一時保留部と、鑑別部と、制御部と、下搬送部と、媒体収納庫と、リジェクト庫と、リジェクト搬送部と、第1受渡部と、第2受渡部とによって媒体処理装置を構成しても良い。