以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、利用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、顧客との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客によって入金される紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙により、紙葉状に構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
因みに筐体2は、後面が開放されており、且つこの開放された部分に開閉可能な後扉が設けられている。この後扉は、顧客との間で取引を行う運用時には、閉塞されると共に所定の錠(図示せず)により施錠され、作業員等により保守作業が行われる保守時には、この錠が解錠された上で開放される。筐体2は、後扉が開放された場合、紙幣入出金機10の前側部分を外部に露出させた状態となる。
[2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、内部に媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。紙幣入出金機10は、大きく分けて、全体の外側部分を構成する紙幣入出金機フレーム10Fと、該紙幣入出金機フレーム10Fにおける上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ユニット10Uと、その下側部分を占める下部ユニット10Lとにより構成されている。これを換言すれば、紙幣入出金機10は、ほぼ水平な分割線により、上側の上部ユニット10U及び下側の下部ユニット10Lに分割されている。
紙幣入出金機フレーム10Fは、筐体2(図1)の内部に取り付けられている。上部ユニット10U及び下部ユニット10Lは、この紙幣入出金機フレーム10Fに対し、それぞれ前後方向に沿ったスライドレール(図示せず)を介して取り付けられている。このため紙幣入出金機10では、筐体2の後扉が開放された状態において、図3(A)及び(B)に示すように、紙幣入出金機フレーム10Fに対し上部ユニット10U及び下部ユニット10Lをそれぞれ後方へ引き出すことができる。また紙幣入出金機10では、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを前方へ押し込むことにより、図2に示したように、紙幣入出金機フレーム10F内にそれぞれ格納することができる。
[3.上部ユニットの構成]
図2の一部を拡大した図4に示すように、上部ユニット10Uには、紙幣制御部11、接客部12、接客搬送部13、上前搬送部14、鑑別部15、上後搬送部16、一時保留部17、表裏反転部18及び出金搬送部19が設けられている。特に上部ユニット10Uの最も下側である下端部分には、前側から後側へ向けて、上前搬送部14、鑑別部15及び上後搬送部16が順次配置されている。
制御部としての紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
[3−1.接客部及び接客搬送部の構成]
入出部としての接客部12は、顧客との間で紙幣を受け渡す(授受する)ことにより、該顧客に紙幣を入金させ、又は該顧客に紙幣を出金する。この接客部12は、上部ユニット10Uの内部における上部前寄りの位置、すなわち現金自動預払機1(図1)内において顧客と対峙する位置に配置されている。
また接客部12は、外側部分を構成する接客部フレーム30の内部に、紙幣を収容する収容器31を有している。収容器31は、上側が開放された中空の直方体状に構成されており、例えば最大で200枚の紙幣を、それぞれの紙面を前後方向に向けて前後方向に沿って整列させた状態、すなわち集積した状態で収容できる。因みに収容器31の内部には、前後方向へ移動可能な板状の仕切板(図示せず)が設けられている。この仕切板は、収容器31内の空間を前後方向に仕切り、また収容されている紙幣を前方向へ押し付けることにより、後述する紙幣の放出や分離を補助するようになっている。
また接客部フレーム30における収容器31の上側部分には、上下方向に貫通した孔部が形成されており、この孔部を可動式のシャッタ32により開放又は閉塞し得るようになっている。因みにシャッタ32は、筐体2の入出金口5(図1)に設けられたシャッタと連動するようになっている。このため接客部12は、シャッタ32を入出金口5のシャッタと共に開放した場合には、顧客に収容器31内へ紙幣を投入させ、或いは該収容器31内から紙幣を取り出させることができる。また接客部12は、シャッタ32を入出金口5のシャッタと共に閉塞した場合には、収容器31内に収容されている紙幣を保護することができる。
収容器31の前下側には、収容器31内に収容されている紙幣を1枚ずつに分離して下方へ搬送する分離部31Sが設けられている。分離部31Sの下側には、紙幣を案内する搬送ガイドや回転する搬送ローラ等により、概ね上下方向に沿った搬送路33が形成されている。接客部12は、分離部31Sにより分離された紙幣を搬送路33に沿って下方へ搬送し、下側に位置する上前搬送部14に引き渡す。
また接客部12には、分離部31Sの下側における左右方向に離れた複数箇所に複数の光学センサ(図示せず)が配置されている。各光学センサは、搬送路33を挟んで互いに対向する位置に、所定の検知光を発光する発光素子と、該検知光を受光してその光量に応じた検知信号を生成し、これを紙幣制御部11に供給する受光素子とにより構成されている。この検知光は、搬送路33に沿って搬送される紙幣により遮断されると、受光素子に到達した段階での光量が変化することになる。
紙幣制御部11は、各光学センサから得られる検知信号の変化を基に、紙幣が搬送されているか否か、搬送されている紙幣の搬送方向に沿った長さが1枚の紙幣における短辺の長さに相当するか否か、或いは検知信号が変化するタイミングが左右で一致するか否か等を判断する。
ここで紙幣の搬送方向に沿った長さが1枚の紙幣における短辺の長さを大きく超えている場合、搬送路33では、2枚以上の紙幣が一部を重ねた状態で連なって搬送される、いわゆる重送が発生している可能性がある。また、左右で検知信号が変化するタイミングが一致していない場合、左右方向に対して紙幣の長辺が大きく傾斜した、いわゆるスキューが発生している可能性がある。説明の都合上、以下では、分離部31Sにより分離された紙幣に重送やスキューが発生することを分離異常と呼ぶ。
また接客部12では、分離部31Sにおいて分離された紙幣に分離異常が発生した場合であっても、該紙幣を搬送路33に沿って逆送させて収容器31内に戻し、再び分離部31Sによって分離させることにより、分離異常を解消できる可能性がある。
そこで紙幣制御部11は、各光学センサから得られる検知信号を基に、接客部12の分離部31Sにおいて分離異常が発生したと判断した場合、この紙幣を搬送路33に沿って逆送させ、収容器31内に戻してから再び分離部31Sにより分離させる(すなわちリトライする)ようになっている。説明の都合上、以下ではこのような動作を接客分離異常リトライ処理と呼ぶ。
また収容器31の後下側には、紙幣を収容器31内へ放出する放出部31Eが設けられている。放出部31Eの下側には、下側に配置された接客搬送部13との間に、複数の搬送ガイド及び搬送ローラ等により、概ね上下方向に沿って搬送路34が形成されている。接客部12では、接客搬送部13から紙幣を受け取ると、この紙幣を搬送路34に沿って上方へ進行させ、放出部31Eから収容器31内へ放出することにより、該収容器31内に集積させることができる。
接客搬送部13は、接客部12における下側部分のうち後側の約半分を占めると共に、出金搬送部19の前側となる位置に配置されている。この接客搬送部13には、その前側部分、すなわち接客部12における搬送路34の下側であって、且つ上前搬送部14における後端近傍の上側となる部分に、複数の搬送ローラや複数の搬送ガイド等により搬送路37が形成されている。
搬送路37は、出金搬送部19と接続された後端から前方向へ向けて概ね水平に進行し、やがて上斜め前方へ屈曲され、その上端において接客部12における搬送路34の下端と接続されている。このため接客搬送部13は、後側の出金搬送部19から紙幣を受け取ると、これを搬送路37に沿って前方及び上斜め前方へ進行させ、接客部12の搬送路34に引き渡すことができる。
[3−2.上前搬送部の構成]
上前搬送部14は、上部ユニット10Uにおける下側部分のうち前側の約1/3ないし2/5の範囲を占めており、前側の約半分が接客部12の前端より前側に突出するように位置し、後側の約半分が接客部12及び接客搬送部13の下側に位置している。
上前搬送部14には、その内部における中央付近であり、接客部12における搬送路33のほぼ真下となる位置に上前切替部41が配置されている。上前切替部41は、ブレードと呼ばれる部材(図中三角形で示す)及びその周囲に配置された複数のローラにより構成されている。ブレードは、左右方向に長く、且つ左右方向から見て楔形に形成されており、回転して傾斜方向を変化させることで、紙幣の搬送方向を2通りに切り替える。各ローラは、紙幣の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されている。上前切替部41は、紙幣制御部11の制御に従い、各紙幣の搬送先に応じてブレードの傾斜方向を変化させると共に各ローラを所定の回転方向へ回転させることにより、紙幣の搬送経路を適宜切り替えて所望の搬送先へ搬送することができる。
上前切替部41の周囲には、複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイド等により3本の搬送路43、44及び45が形成されている。搬送路43は、上前切替部41から上方へ向かい、接客部12の搬送路33と接続されている。搬送路44は、上前切替部41から後方へ向かい、鑑別部15の前端部分と接続されている。搬送路45は、上前切替部41から前方へ向かい、さらに下向きに屈曲されて下方へ向かうように形成されている。この搬送路45の下端は、上部ユニット前受渡口T12となっており、後述するように、下部ユニット10Lとの間で紙幣を受け渡すことができる。
この上前切替部41は、紙幣制御部11の制御に基づき、上側の搬送路43及び後側の搬送路44を接続する搬送経路と、後側の搬送路44及び前側の搬送路45を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
かかる構成により上前搬送部14は、紙幣制御部11の制御に基づいて上前切替部41の搬送経路を適切に切り替えることにより、様々な搬送経路に沿って紙幣を搬送することができる。すなわち上前搬送部14は、例えば接客部12の搬送路33から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路43及び44に沿って進行させ、後側の鑑別部15に引き渡すことができる。
また上前搬送部14は、例えば鑑別部15から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路44及び45に沿って進行させ、下側の下部ユニット10L(図2)に引き渡すことができる。さらに上前搬送部14は、これと反対に、下側の下部ユニット10Lから紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路45及び44に沿って進行させ、前側の鑑別部15に引き渡すことができる。
[3−3.鑑別部の構成]
鑑別部15は、上部ユニット10Uにおける下側部分のうち中央付近の約1/3ないし1/4の範囲を占めており、接客部12及び接客搬送部13よりも下側であって、且つ上前搬送部14の後側に位置している。この鑑別部15は、その内部において、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等により、前端15F及び後端15Rを直線状に結ぶ、すなわち前後方向に貫通するような直線状の鑑別搬送路48が形成されている。そのうえで鑑別部15は、この鑑別搬送路48に沿って前方から後方へ向けて真偽センサ49A、イメージセンサ49B及び走行センサ49Cといった複数種類のセンサ49が順次配置されている。
真偽センサ49Aは、例えば磁気センサでなり、搬送経路上を搬送される紙幣の磁気を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、真偽センサ49Aから供給された検知結果を基に、紙幣が真正なもの(いわゆる真券)又は偽造されたもの(いわゆる偽券)の何れであるかを判断する。
イメージセンサ49Bは、鑑別搬送路48を挟んで対向する2個の撮像素子を有している。この撮像素子は、鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣の両面をそれぞれ撮像して画像データを生成し、これらを紙幣制御部11へ送出する。紙幣制御部11は、予め記憶している金種ごとの画像データと供給された画像データとを比較することにより、各紙幣の金種や損傷の程度等を認識し、さらに各紙幣に記されている個別の記番号を認識するようになっている。
走行センサ49Cは、例えば厚みセンサ及び光学センサを有している。厚みセンサは、鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣の厚みを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ供給する。紙幣制御部11は、厚みセンサから供給された検知結果を基に、搬送されている紙幣の厚みが1枚分に相当するか、或いは2枚以上に相当するかを判断するようになっている。
光学センサは、例えば光を発光する発光素子とこの光を受光する受光素子とが鑑別搬送路48を挟んで対向するように配置されており、当該鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣により光が遮光されたか否かを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。
また走行センサ49Cには、複数の光学センサが左右方向、すなわち搬送方向である前後方向と交差する方向に沿って配置されている。紙幣制御部11は、各光学センサから供給された検知結果及びその時間的な変化等を基に、搬送されている紙幣の搬送方向に沿った長さ、搬送方向に沿った紙幣同士の間隔、及び搬送方向に対する紙幣の傾斜を認識するようになっている。
すなわち走行センサ49Cは、厚みセンサ及び各光学センサの検知結果をそれぞれ紙幣制御部11へ供給することにより、紙幣同士の間隔、搬送方向に対する紙幣の傾き(いわゆるスキュー)の有無、及び紙幣同士の重なり(いわゆる重送や連鎖)の有無等といった紙幣の搬送状態を当該紙幣制御部11に認識させるようになっている。
このように鑑別部15は、各センサ49(真偽センサ49A、イメージセンサ49B及び走行センサ49C)により、鑑別搬送路48に沿って搬送される紙幣からそれぞれ得られる検知結果を鑑別結果として紙幣制御部11へ送出するようになっている。これに応じて紙幣制御部11は、この鑑別結果を基に紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)を判断すると共に搬送状態を認識し、得られた結果を基に該紙幣の搬送先を決定するようになっている。
[3−4.上後搬送部の構成]
上後搬送部16は、上部ユニット10Uにおける下側部分のうち後側の約1/3の範囲を占めており、鑑別部15の後側に位置している。この上後搬送部16は、その内部における比較的前寄りに上後第1切替部51が配置され、その後側に一時保留切替部としての上後第2切替部52が配置されている。また上後搬送部16内には、上後第1切替部51及び上後第2切替部52の周囲に、複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイドにより、合計5本の搬送路53、54、55、56及び57が形成されている。
上後第1切替部51及び上後第2切替部52は、何れも中心に位置するブレードを回転させてその傾斜角度を変化させることにより紙幣の搬送経路を切り替えるものの、上前切替部41と異なり、紙幣の搬送経路を3通りに切り替える、いわゆる3ウェイブレード方式となっている。
このため上後第1切替部51は、紙幣制御部11の制御に基づき、前側の搬送路53及び上側の搬送路54を接続する搬送経路と、上側の搬送路54及び後側の搬送路55を接続する搬送経路と、前側の搬送路53及び後側の搬送路55を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
また上後第2切替部52は、紙幣制御部11の制御に基づき、前側の搬送路55及び上側の搬送路56を接続する搬送経路と、上側の搬送路56及び後側の搬送路57を接続する搬送経路と、前側の搬送路55及び後側の搬送路57を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
搬送路53は、上後第1切替部51から前方へ向かい、鑑別部15に接続されている。搬送路54は、上後第1切替部51から上方へ向かい、表裏反転部18に接続されている。搬送路55は、上後第1切替部51から後方へ向かい、上後第2切替部52の前側に接続されている。搬送路56は、上後第2切替部52から上方へ向かい、一時保留部17に接続されている。搬送路57は、上後第2切替部52から後方へ向かい、さらに下向きに屈曲されて下方へ向かうように形成されている。この搬送路57の下端は、上部ユニット後受渡口T11となっており、後述するように、下部ユニット10Lとの間で紙幣を受け渡すことができる。
かかる構成により上後搬送部16は、例えば前側の鑑別部15から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路53及び54に沿って進行させ、上側前寄りの表裏反転部18に引き渡すこと、又は搬送路53、55及び56に沿って進行させ、上側後寄りの一時保留部17に引き渡すこと、或いは搬送路53、55及び57に沿って進行させ、下側の下部ユニット10L(図2)に引き渡すことができる。
また上後搬送部16は、例えば上側後寄りの一時保留部17から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路56、55及び53に沿って進行させ、前側の鑑別部15に引き渡すこと、又は搬送路56及び57に沿って進行させ、下側の下部ユニット10L(図2)に引き渡すことができる。
さらに上後搬送部16は、例えば下側の下部ユニット10L(図2)から紙幣が搬送されてきた場合、この紙幣を搬送路57及び56に沿って進行させ上側後寄りの一時保留部17に引き渡すこと、搬送路57、55及び54に沿って進行させ上側前寄りの表裏反転部18に引き渡すこと、或いは搬送路57、55及び53に沿って進行させ、前側の鑑別部15に引き渡すことができる。
ところで上部ユニット10Uにおける下側部分では、上前搬送部14の搬送路45及び44、鑑別部15の鑑別搬送路48、並びに上後搬送部16の搬送路53、55及び57により、前後方向に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで以下では、この搬送路を上基幹搬送路WU(図2)と呼び、また前側の上前搬送部14、中程の鑑別部15及び後側の上後搬送部16をまとめて上搬送部10UC(図4)とも呼ぶ。この上基幹搬送路WUは、上部ユニット10Uにおける前後方向(以下これを主搬送方向とも呼ぶ)に関する一端側である前側の上部ユニット前受渡口T12と、他端側である後側の上部ユニット後受渡口T11とを結ぶ搬送路となっている。
[3−5.一時保留部の構成]
一時保留部17は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、ドラム61、搬送路62、リール63、テープ64及び走行監視センサ65等を有している。
ドラム61は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、回転可能に支持されている。このドラム61は、紙幣制御部11により制御されるモータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、巻取方向U1又は巻戻方向U2へ回転される。このモータは、例えばステッピングモータやDCブラシレスモータ等となっている。このため紙幣制御部11は、これらのモータの正確な回転角度を把握しており、またこれに所定の係数を乗じる等の演算処理を施すことにより、ドラム61の回転数や回転角度に加えて、周側面に対するテープ64の巻付距離(すなわち長さ)も把握している。
搬送路62は、複数のローラや搬送ガイド等の組合せにより構成されており、一時保留部17の筐体における下端の中央近傍とドラム61の周側面近傍とを結んでいる。リール63は、中心軸を左右方向に向けた糸巻き状に形成されており、回転可能に支持されている。テープ64は、薄く細長いフィルム状に形成されており、リール63の周側面に巻き取られている。リール63から引き出されたテープ64は、筐体内を適宜走行するよう引き回された後、搬送路62に沿ってドラム61の周側面に近接し、やがて該ドラム61の周側面に到達して巻き付けられる。このテープ64の先端は、ドラム61の周側面に固定されている。
一時保留検知部としての走行監視センサ65は、鑑別部15の走行センサ49Cに設けられた光学センサと同様に構成されており、紙幣の搬送状態を検知して、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、搬送路62によって搬送される紙幣同士の間隔やスキューの有無、紙幣の重なりや搬送方向の長さ等を認識することができる。
かかる構成において一時保留部17は、上後搬送部16から受け取った紙幣を順次収納する収納処理を行う場合、搬送路62により当該紙幣を上方へ搬送すると共にドラム61を巻取方向U1に回転させ、当該ドラム61の周側面にテープ64と共に紙幣を巻き付ける。
このとき一時保留部17は、搬送路62における紙幣の搬送速度を上後搬送部16に合わせており、またドラム61の回転速度を調整することでテープ64の走行速度及び当該ドラム61における最外周部分の線速度も当該紙幣の搬送速度に揃えている。このため一時保留部17は、上後搬送部16から順次搬送されてくる紙幣の搬送方向に対するスキューや紙幣同士の間隔を維持したまま、すなわち搬送状態を維持したまま、各紙幣をテープ64と共にドラム61の周側面に巻き付け、収納していくことができる。
また一時保留部17は、上後搬送部16へ紙幣を順次繰り出す繰出処理を行う場合、リール63を所定の方向に回転させてテープ64を巻き取らせると共にドラム61を巻戻方向U2へ回転させることにより、ドラム61の周囲に巻き付いていた紙幣をテープ64と共に引き剥がして搬送路62に引き渡す。搬送路62は、この紙幣を下方へ搬送して上後搬送部16へ引き渡す。
このとき一時保留部17は、やはり搬送路62における紙幣の搬送速度を上後搬送部16に合わせ、且つテープ64の走行速度及びドラム61における最外周部分の線速度も当該紙幣の搬送速度に揃えている。このため一時保留部17は、紙幣をドラム61の周側面に巻き付けたときの搬送状態、すなわち紙幣の搬送方向に対するスキューや紙幣同士の間隔を維持したまま、各紙幣を収納時と反対の順序で順次繰り出し、上後搬送部16に引き渡していくことができる。
このように一時保留部17は、紙幣をテープ64と共にドラム61の周側面に巻き付けることにより、搬送状態を保ったまま紙幣を収納し、またドラム61を巻き戻して当該紙幣を引き剥がすことにより、搬送状態を保ったまま繰り出すようになっている。
[3−6.表裏反転部及び出金搬送部の構成]
表裏反転部18は、上後搬送部16の前上側であって一時保留部17の前側且つ出金搬送部19の後側に配置されており、その内部に切替器66が設けられている。またこの切替器66の周囲には、複数の搬送ローラ及び複数の搬送ガイドにより、3本の搬送路67、68及び69が形成されている。
切替器66は、上述した上後第1切替部51等と同様の3ウェイブレード方式でなる切替器として構成されており、下側の搬送路67、上側の搬送路68及び前側の搬送路69とそれぞれ接続されている。このため切替器66は、紙幣制御部11の制御に基づき、下側の搬送路67及び上側の搬送路68を接続する搬送経路と、上側の搬送路68及び前側の搬送路69を接続する搬送経路と、下側の搬送路67及び前側の搬送路69を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
搬送路67は、切替器66から下方へ向かい、上後搬送部16の搬送路53と接続されている。搬送路68は、切替器66から上方へ向かい、その先に何も接続されていない状態、いわゆる行き止まりとなっている。搬送路69は、切替器66から前方へ向かい、出金搬送部19と接続されている。
かかる構成により表裏反転部18は、紙幣制御部11から紙幣の表裏を反転させる表裏反転指示を受け付けた場合、切替器66による搬送経路を切り替えることにより、まず上後搬送部16の搬送路54から受け取った紙幣を搬送路67から搬送路68へ搬送し、停止させる。続いて表裏反転部18は、切替器66による搬送経路を切り替えた上で、紙幣を搬送路68から搬送路69へ搬送し、前方の出金搬送部19に引き渡す。この結果、表裏反転部18は、上後搬送部16から受け取った段階と出金搬送部19に引き渡す段階との間で、搬送される紙幣をスイッチバックさせることにより、紙幣の先端側及び末端側を入れ替えると共に表裏を反転させることができる。
一方、表裏反転部18は、紙幣制御部11から紙幣の表裏を維持したまま通過させる通過指示を受け付けた場合、切替器66による搬送経路を切り替えることにより、搬送路54から受け取った紙幣を搬送路67から搬送路69へ搬送し、前方の出金搬送部19に引き渡す。すなわち表裏反転部18は、上後搬送部16から受け取った紙幣を、その表裏を反転させること無く搬送することにより通過させ、出金搬送部19に引き渡すことができる。
かくして表裏反転部18は、紙幣制御部11の制御に応じて、上後搬送部16から受け取った紙幣の表裏を反転しながら搬送し、又は反転させずに搬送して、出金搬送部19に引き渡すことができる。
出金搬送部19は、表裏反転部18の前側且つ接客部12及び接客搬送部13の後側に配置されており、その内部に前後方向に沿った搬送路70が形成されている。この搬送路70は、複数の搬送ガイドや複数の搬送ローラ等により構成されており、後側に位置する表裏反転部18の搬送路69と、前側に位置する接客搬送部13の搬送路37とそれぞれ接続されている。これにより出金搬送部19は、表裏反転部18から受け取った紙幣を接客搬送部13に引き渡すことができる。
説明の都合上、以下では、上後搬送部16の搬送路54から接客部12の放出部31Eまでの搬送路を形成する部分、すなわち表裏反転部18、出金搬送部19及び接客搬送部13を、まとめて上第2搬送部とも呼ぶ。また以下では、上第1切替部51を放出切替部とも呼ぶ。
[4.下部ユニットの構成]
図2の一部を拡大した図5に示すように、下部ユニット10Lにおける最も上側の上端部分には、概ね前後方向に沿って紙幣を搬送する下搬送部21が配置されている。該下搬送部21の下側における前側の約半分の範囲には、前端部分から後方へ向けて、紙幣収納庫22A、22B、22C及び22Dが順に配置されている。紙幣収納庫22Dの後側には、上側から順にリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28が配置されている。
一方、下搬送部21の下側における後側の部分には、後端部分から前方へ向けて、補充回収庫24、補充リジェクト庫25及び下後搬送部27が配置されている。すなわちリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、紙幣収納庫22(22A〜22D)と、補充回収庫24との間に配置されている。また下後搬送部27は、前側のリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28と後側の補充リジェクト庫25との間に形成されている。
[4−1.下搬送部の構成]
下搬送部21の内部には、後端近傍から前方向へ向けて互いに離れた箇所に切替部71、72、73、74、75、76及び77が配置されると共に、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等によりそれぞれ構成された複数の搬送路が形成されている。切替部71〜77は、何れも上前切替部41と同様に構成されており、紙幣制御部11の制御に基づいてブレードの傾斜方向を変化させ、紙幣の搬送経路を2通りに切り替えるようになっている。
切替部71は、補充回収庫24のほぼ真上に配置されており、その周囲に、該切替部71から上方へ向かう搬送路81、該切替部71から下方へ向かい補充回収庫24と接続された搬送路82、及び該切替部71から前方へ向かい切替部72と接続された搬送路83が形成されている。この切替部71は、上側の搬送路81及び下側の搬送路82を接続する搬送経路と、上側の搬送路81及び前側の搬送路83を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路81の上端は、下部ユニット後受渡口T21となっており、上部ユニット10Uの上部ユニット後受渡口T11(図4)との間で紙幣を受け渡すことができる。
切替部72は、補充リジェクト庫25のほぼ真上に配置されており、その周囲に、上述した搬送路83に加えて、該切替部72から下方へ向かい補充リジェクト庫25と接続された搬送路84、及び該切替部72から前方へ向かい切替部73に接続された搬送路85が設けられている。この切替部72は、前側の搬送路85及び後側の搬送路83を接続する搬送経路と、前側の搬送路85及び下側の搬送路84を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部73は、下後搬送部27のほぼ真上に配置されており、その周囲に、上述した搬送路85に加えて、該切替部73から下方へ向かい該下後搬送部27と接続された搬送路86、及び該切替部73から前方へ向かい切替部74に接続された搬送路87が設けられている。この切替部73は、後側の搬送路85及び下側の搬送路86を接続する搬送経路と、後側の搬送路85及び前側の搬送路88を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部74は、紙幣収納庫22Dのほぼ真上に配置されており、その周囲に、上述した搬送路87に加えて、該切替部74から下方へ向かい該紙幣収納庫22Dと接続された搬送路88、及び該切替部74から前方へ向かい切替部75に接続された搬送路89が設けられている。この切替部74は、前側の搬送路89及び後側の搬送路87を接続する搬送経路と、前側の搬送路89及び下側の搬送路88を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部75は、紙幣収納庫22Cのほぼ真上に配置されており、その周囲に、上述した搬送路89に加えて、該切替部75から下方へ向かい該紙幣収納庫22Cと接続された搬送路90、及び該切替部75から前方へ向かい切替部76に接続された搬送路91が設けられている。この切替部75は、前側の搬送路91及び後側の搬送路89を接続する搬送経路と、前側の搬送路91及び下側の搬送路90を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部76は、紙幣収納庫22Bのほぼ真上に配置されており、その周囲に、上述した搬送路91に加えて、該切替部76から下方へ向かい該紙幣収納庫22Bと接続された搬送路92、及び該切替部76から前方へ向かい切替部77に接続された搬送路93が設けられている。この切替部76は、前側の搬送路93及び後側の搬送路91を接続する搬送経路と、前側の搬送路93及び下側の搬送路92を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部77は、紙幣収納庫22Aのほぼ真上に配置されており、その周囲に、上述した搬送路93に加えて、該切替部77から上方へ向かう搬送路94、及び該切替部77から下方へ向かい該紙幣収納庫22Aに接続された搬送路95が設けられている。この切替部77は、上側の搬送路94及び後側の搬送路93を接続する搬送経路と、上側の搬送路94及び下側の搬送路95を接続する搬送経路とを切り替えることができる。因みに搬送路94の上端は、下部ユニット前受渡口T22となっており、上部ユニット10Uの上部ユニット前受渡口T12(図4)との間で紙幣を受け渡すことができる。
かかる構成により下搬送部21は、上部ユニット10Uから下部ユニット後受渡口T21を介して紙幣を受け取った場合、この紙幣を搬送路81及び82に沿って補充回収庫24へ搬送すること、又は搬送路81、83、85及び86に沿って下後搬送部27へ搬送することができる。また下搬送部21は、補充回収庫24から繰り出された紙幣を搬送路82及び81に沿って下部ユニット後受渡口T21へ搬送し、上部ユニット10U(図4)へ引き渡すこともできる。
さらに下搬送部21は、上部ユニット10Uから下部ユニット前受渡口T22を介して紙幣を受け取った場合、この紙幣を搬送路94及び95に沿って紙幣収納庫22Aへ搬送すること、又は搬送路94、93及び92に沿って紙幣収納庫22Bへ搬送することができる。これに加えて下搬送部21は、搬送路94、93、91及び90に沿って紙幣収納庫22Cへ搬送すること、搬送路94、93、91、89及び88に沿って紙幣収納庫22Dへ搬送すること、又は搬送路94、93、91、89、87、85及び84に沿って補充リジェクト庫25へ搬送することもできる。
そのうえ下搬送部21は、紙幣収納庫22A、22B、22C又は22Dから繰り出された紙幣を、これらの搬送路を逆方向に進行させることにより下部ユニット前受渡口T22へ搬送し、上部ユニット10U(図4)へ引き渡すこともできる。
また他の観点から見ると、下搬送部21内には、搬送路83、85、87、89、91及び93により、前後方向(すなわち主搬送方向)に沿って概ね一直線状となる一本の搬送路が形成されている。そこで以下では、この搬送路を下基幹搬送路WL(図2)とも呼ぶ。
[4−2.下後搬送部の構成]
下後搬送部27内には、上端のやや下側に切替部101が配置され、該切替部101から下方へやや離れた箇所に切替部102が配置されると共に、複数の搬送ガイドや搬送ローラ等によりそれぞれ構成された複数の搬送路が形成されている。切替部101及び102は、何れも下搬送部21の切替部71等と同様に構成され、紙幣制御部11の制御に基づいてブレードの傾斜方向を2通りに変化させ、紙幣の搬送経路を2通りに切り替えるようになっている。
切替部101は、リジェクト庫23Aのほぼ真後ろに配置されており、その周囲に、下搬送部21の搬送路86と該切替部101とを接続する搬送路103、該切替部101と前側のリジェクト庫23Aとを接続する搬送路104、及び該切替部101と下側の切替部102とを接続する搬送路105が設けられている。この切替部101は、上側の搬送路103及び前側の搬送路104を接続する搬送経路と、上側の搬送路103及び下側の搬送路105を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
切替部102は、リジェクト庫23Bのほぼ真後ろに配置されており、その周囲に、上述した搬送路105に加えて、該切替部102と前側のリジェクト庫23Bとを接続する搬送路106、及び該切替部102と前方下側の取忘収納庫28とを接続する搬送路107が設けられている。この切替部102は、上側の搬送路105及び前側の搬送路106を接続する搬送経路と、上側の搬送路105及び下側の搬送路107を接続する搬送経路とを切り替えることができる。
かかる構成により下後搬送部27は、下搬送部21の搬送路86から紙幣を受け取った場合、この紙幣を搬送路103及び104に沿ってリジェクト庫23Aへ搬送すること、搬送路103、105及び106に沿ってリジェクト庫23Bへ搬送すること、又は搬送路103、105及び106に沿って取忘収納庫28へ搬送することができる。
[4−3.紙幣収納庫、リジェクト庫及び取忘収納庫の構成]
紙幣収納庫22(22A、22B、22及び22D)は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状に形成されている。紙幣収納庫22の内部には、紙幣を集積して収納する収納空間、該収納空間の上側に配置され紙幣の分離処理及び放出処理を行う分離放出部、及び該分離放出部と紙幣収納庫22の上端との間で紙幣を搬送する収納庫搬送部等が設けられている。また各紙幣収納庫22は、紙幣制御部11において、収納すべき紙幣の金種がそれぞれ割り当てられている。
紙幣収納庫22は、紙幣を収納する収納処理を行う場合、上側の下搬送部21から紙幣を受け取ると、この紙幣を収納庫搬送部により分離放出部へ搬送して収納空間内へ放出し、該収納空間内に集積した状態で収納する。また紙幣収納庫22は、紙幣を繰り出す繰出処理を行う場合、収納空間内に集積された紙幣を分離放出部により1枚ずつに分離し、これを収納庫搬送部により上方へ搬送して上側の下搬送部21に引き渡すことにより繰り出す。因みに紙幣収納庫22は、紙幣制御部11の制御により、繰出処理のみを行う出金庫として動作することや、収納処理のみを行う入金庫として動作することもできる。
リジェクト庫23A及び23B(以下、これらをまとめてリジェクト庫23とも呼ぶ)は、概ね直方体状に形成されており、紙幣収納庫22と比較して、左右方向の長さがほぼ同等である一方、上下方向の長さが半分以下であり、また前後方向の長さがある程度短縮されている。また取忘収納庫28は、概ね直方体状に形成されており、リジェクト庫23A及び23Bと比較して、左右方向及び前後方向の長さがほぼ同等である一方、上下方向の長さが半分程度に短縮されている。因みに取忘収納庫28は、下部ユニット10Lの構造上、上下方向の長さ(すなわち高さ)が紙幣収納庫22よりも小さく(すなわち低く)なるため、全体として該紙幣収納庫22よりも小型に構成された収納庫となっている。
リジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、紙幣収納庫22と一部類似した構成となっており、紙幣を集積して収納する収納空間を有するものの、その上側に、紙幣の放出処理のみを行う(すなわち分離処理を行わない)放出部等が設けられている。かかる構成によりリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、リジェクト紙幣(以下これをリジェクト媒体とも呼ぶ)が下搬送部21により搬送されて来ると、当該紙幣を内部に収納する収納処理として、この紙幣を下搬送部21から受け取り、放出部により収納空間内へ放出し、集積した状態で収納する。
因みに各紙幣収納庫22、リジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、いわゆるカセットとして構成されており、下部ユニット10Lに形成されたスロット(後述する)に対し、それぞれ装填し又は取り出し得るようになっている。すなわち各紙幣収納庫22、リジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10Lが引き出された状態で(図3(B))、スロットから引き抜かれ、或いは当該スロットに装填される。
スロットから取り外された紙幣収納庫22は、金融機関の職員等により、所定の場所へ運搬された後、その内部に収納されていた紙幣が取り出され、或いは紙幣が収納される。このとき紙幣収納庫22に収納される紙幣は、所定の紙幣処理装置等により金種、真偽、損傷の程度等が鑑別された、再利用可能な紙幣であり、出金処理において顧客へ出金し得るような良好な状態となっている。
また、スロットから取り外されたリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、金融機関の職員等により、それぞれの内部に収納されていた紙幣が取り出され、回収される。このためリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28は、下部ユニット10Lのスロット(図示せず)に装填される場合には、内部に紙幣を収納していない状態、すなわち空の状態となっている。
[4−4.補充回収庫及び補充リジェクト庫の構成]
補充回収庫24は、下搬送部21における切替部71のほぼ真下に、すなわち下部ユニット10Lの最後端に位置している。この補充回収庫24は、上述した紙幣収納庫22と概ね同様に構成されており、全体として直方体状に形成され、その内部に収納空間、分離放出部及び収納庫搬送部等が設けられている。
このため補充回収庫24は、紙幣収納庫22と同様に、紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣を収納する収納処理や紙幣を繰り出す繰出処理を行うことができる。因みに補充回収庫24における紙幣の最大収納枚数は、紙幣収納庫22と同等となっている。
補充リジェクト庫25は、下搬送部21における切替部72のほぼ真下であり、補充回収庫24の前側となる位置に配置されている。この補充リジェクト庫25は、該補充回収庫24と比較して、上下方向及び左右方向の長さが同等である一方、前後方向の長さが1/3ないし1/4程度に短くなっている。この補充リジェクト庫25は、上述したリジェクト庫23A、23B及び取忘収納庫28と同様の機能を有しており、下搬送部21から受け取った紙幣を内部に収納することができる。
さらに、補充回収庫24及び補充リジェクト庫25は、図6(A)に示すように、該補充回収庫24の前面と該補充リジェクト庫25の後面とを重ねるように一体化され、補充回収カセット26を構成している。この補充回収カセット26は、上述した紙幣収納庫22等と同様、下部ユニット10Lに形成されたスロット(後述する)に対し着脱可能に構成されている。
補充回収カセット26は、補充回収庫24の前面及び補充リジェクト庫25の後面における一辺、例えば右辺の近傍に蝶番(図示せず)が設けられており、この蝶番により補充回収庫24に対し補充リジェクト庫25を回動させ得るようになっている。すなわち補充回収カセット26は、下部ユニット10Lに取り付けられる場合には、図6(A)に示したように補充回収庫24の前面及び補充リジェクト庫25の後面を互いに重ねて、1個の直方体状となる。
一方、補充回収カセット26は、保守作業等において下部ユニット10Lから取り出された上で、図6(B)に示すように、蝶番において補充回収庫24に対し補充リジェクト庫25を回動させると、補充回収庫24の前面及び補充リジェクト庫25の後面を互いに引き離すことができる。以下、この状態を開いた状態と呼ぶ。さらに補充回収カセット26には、補充回収庫24の前面及び補充リジェクト庫25の後面の間に、回動可能な内扉26Dが設けられている。
このため補充回収カセット26では、図6(B)に示したように、開いた状態において補充回収庫24の収納空間にアクセスすること、すなわち紙幣の取出又は装填を行うことができる。また補充回収カセット26では、図6(C)に示すように、開いた状態において内扉26Dを補充回収庫24側へ回動させることにより、補充リジェクト庫25の収納空間から紙幣を取り出すことができる。
ところで下部ユニット10Lは、図7(A)及び(B)に示すように、大きく分けて、主フレーム111と、その後側に配置された後フレーム112と、該主フレーム111及び該後フレーム112の上側に配置された搬送フレーム113とにより構成されている。
主フレーム111は、前後方向に十分な長さを有する中空の直方体状に形成されており、上面が開放されると共にその内部が前後方向に沿って複数に仕切られることにより、複数のスロットが形成されている。これらのスロットには、紙幣収納庫22A〜22D、リジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28(図5)がそれぞれ装填される。因みに主フレーム111の後端部分には、下後搬送部27が組み込まれている。
後フレーム112は、前後方向に比較的短い中空の直方体状に構成されており、上面が開放されることにより1個のスロットを形成している。このスロットには、補充回収カセット26(図5及び図6)が装填される。
搬送フレーム113は、前後方向に長く上下方向に短い直方体状に構成されており、その内部に下搬送部21が組み込まれている。この搬送フレーム113は、主フレーム111に対し、右側に設けられた蝶番114を介して回動可能に取り付けられている。このため搬送フレーム113は、主フレーム111に対し回動されることにより、該主フレーム111及び後フレーム112の各スロットを開放又は閉塞することができる。
かかる構成に加えて、後フレーム112は、主フレーム111に対しスライドレール115を介して取り付けられている。このスライドレール115は、前後方向に沿ってスライドし得るように構成されており、主フレーム111に対し後フレーム112を前方向又は後方向へ移動させることができる。
すなわち後フレーム112は、前方向へ移動された場合には、図7(A)及び(B)に示したように、その前面を主フレーム111に近接させると共にその後面を搬送フレーム113の後面とほぼ揃えた後フレーム収納状態となる。一方、後フレーム112は、後方向へ移動された場合には、図7(C)に示すように、その前面を主フレーム111から引き離して搬送フレーム113の後面よりも後側に位置させた後フレーム引出状態となる。
このため下部ユニット10Lでは、現金自動預払機1(図1)の後扉(図示せず)が開放されていれば、該下部ユニット10Lが紙幣入出金機フレーム10Fの内部に収納された状態(図2)であっても、後フレーム112を後フレーム引出状態(図7(C))とすることにより、補充回収カセット26を着脱することができる。
[5.紙幣入出金機における各種処理]
次に、図8に示すように紙幣入出金機10(図2、図4及び図5)を模式化した上で、該紙幣入出金機10における紙幣の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等について、それぞれ詳細に説明する。
紙幣入出金機10は、紙幣入出金機フレーム10F(図2)に上部ユニット10U及び下部ユニット10Lが格納されることにより、その後端近傍において上部ユニット後受渡口T11(図4)及び下部ユニット後受渡口T21(図5)を接続し、これにより両者の間で紙幣を受け渡す後受渡部C1(図2、図8)を形成している。またこのとき紙幣入出金機10は、その前端近傍において、上部ユニット前受渡口T12(図4)及び下部ユニット前受渡口T22(図5)を接続し、これにより両者の間で紙幣を受け渡す前受渡部C2(図2、図8)を形成している。
図8では、接客部12、鑑別部15、一時保留部17、紙幣収納庫22(22A〜22D)、リジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28(以下、これらを単にモジュールとも呼ぶ)を、それぞれ単純な長方形等により表している。また図8では、上前搬送部14の上前切替部41、上後搬送部16の上後第1切替部51及び上後第2切替部52、並びに下搬送部21の切替部71〜77(以下、これらを単に切替部とも呼ぶ)を、それぞれ単純な三角形により表している。
さらに図8では、各モジュール及び各切替部をそれぞれ結ぶ搬送路を線分(すなわち直線、曲線又はこれらの組合せ)により表している。ただしこの図8では、一部において、各モジュールや各搬送部において互いに接続された複数の搬送路をまとめて1つの搬送路としている。
すなわち、搬送路W1は、接客部12の搬送路33及び上前搬送部14の搬送路43に相当する。搬送路W2は、上前搬送部14の搬送路44、鑑別部15の鑑別搬送路48及び上後搬送部16の搬送路53に相当する。搬送路W3は、上前搬送部14の搬送路45及び下搬送部21の搬送路94に相当する。搬送路W4は、上後搬送部16の搬送路55に相当する。
また、搬送路W5は、上後搬送部16の搬送路54及び表裏反転部18の搬送路67に相当する。搬送路W6は、上後搬送部16の搬送路56に相当する。搬送路W7は、上後搬送部16の搬送路57及び下搬送部21の搬送路81に相当する。搬送路W8は、表裏反転部18の搬送路69、出金搬送部19の搬送路70、接客搬送部13の搬送路37及び接客部12の搬送路34に相当する。
すなわち上後搬送部16の上後第2切替部52には、上基幹搬送路WUのうち上部ユニット前受渡口T12側を占める搬送路W4と、上部ユニット後受渡口T11側を占める搬送路W7と、一時保留部17内の搬送路62に接続された搬送路W6(以下これを一時保留搬送路とも呼ぶ)とが接続されている。これを換言すれば、上後第2切替部52は、上搬送部10UC内に形成された上基幹搬送路WUと搬送路W6(すなわち一時保留搬送路)との接続箇所に配置されている。
さらに、搬送路W11は、下搬送部21の搬送路83に相当する。搬送路W12は、下搬送部21の搬送路82に相当する。搬送路W13は、下搬送部21の搬送路85に相当する。搬送路W14は、下搬送部21の搬送路84に相当する。搬送路W15は、下搬送部21の搬送路87に相当する。
また、搬送路W17C、W17B及びW17Aは、それぞれ搬送路89、91及び93に相当する。またこの搬送路W17C、W17B及びW17Aをまとめて搬送路W17とも呼ぶ。搬送路W18D、W18C、W18B及びW18Aは、それぞれ搬送路88、90、92及び95とそれぞれ対応する。またこの搬送路W18D、W18C、W18B及びW18Aをまとめて搬送路W18とも呼ぶ。さらに、搬送路W21は、搬送路86及び103に相当する。また搬送路W22、W23、W24及びW25は、それぞれ搬送路104、105、106及び107に相当する。
因みに、上述した上基幹搬送路WUは、搬送路W3、搬送路W2、搬送路W4及び搬送路W7に相当する。また上述した下基幹搬送路WLは、搬送路W11、W13及びW15、並びに搬送路W17C、W17B及びW17A(すなわち搬送路W17)に相当する。
このように紙幣入出金機10では、図8に示したように、上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLが前端の前受渡部C2及び後端の後受渡部C1において互いに接続されており、ループ状の(すなわち環状、円環状若しくは周回状の)搬送路を形成している。また紙幣入出金機10では、上部ユニット10Uの接客部12及び一時保留部17と、下部ユニット10Lの紙幣収納庫22、補充回収庫24及び補充リジェクト庫25とが、環状の搬送路を挟んで互いに反対側に、すなわち上下に振り分けるようにして、それぞれ配置されている。
[5−1.入金処理及び収納処理]
まず、現金自動預払機1(図1)において顧客との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、紙幣入出金機10は、前段の入金処理(入金計数処理とも呼ばれる)により、顧客に入金された紙幣の金種等を鑑別しながら枚数を計数し、これに続く後段の収納処理(入金収納処理とも呼ばれる)により、各紙幣を適切な収納箇所へ搬送して収納するようになっている。この入金処理は、紙幣入出金機10の外部から紙幣を受け入れる受入処理となっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して顧客から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金処理を開始する。
まず紙幣入出金機10は、入出金口5(図1)のシャッタ及び接客部12のシャッタ32(図4)を開いて顧客に収容器31内へ紙幣を投入させる。次に紙幣制御部11は、顧客から操作表示部6(図1)を介して紙幣の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、入出金口5のシャッタ及び接客部12のシャッタ32を閉塞した上で、分離部31Sにより当該収容器31内の紙幣を1枚ずつに分離し、その下流側に位置する搬送路W1に順次引き渡す。
このとき紙幣入出金機10は、図9(A)に示す矢印R1のように、紙幣を搬送路W1及びW2に沿って搬送することにより、鑑別部15において該紙幣を鑑別し、得られた鑑別結果を紙幣制御部11へ供給する。
これに応じて紙幣制御部11は、取得した鑑別結果を基に、まず各紙幣における損傷の程度や金種、或いは真偽を判断する。次に紙幣制御部11は、各紙幣について、正常な紙幣として認識でき以降の処理を継続できる入金受入紙幣であるか、或いは正常な紙幣として認識できないため一度顧客に返却すべき入金リジェクト紙幣であるかを判断する。多くの場合、例えば折り畳まれた状態の紙幣、多くの皺が形成された紙幣、或いは誤って接客部12に投入された紙幣以外の紙(メモ用紙やレシート等)等が入金リジェクト紙幣として判断される。
さらに紙幣制御部11は、入金受入紙幣について、損傷の程度が大きいリジェクト紙幣についてはリジェクト庫23(23A又は23B)を、正常であり再利用可能な紙幣については金種ごとの各紙幣収納庫22を、それぞれ最終的な搬送先として決定する。さらに紙幣制御部11は、紙幣の搬送順序と対応付けて、各紙幣の金種、記番号、搬送状態(すなわちスキュー及び紙幣同士の間隔)、並びに決定した搬送先等を、鑑別部15における入金時情報として記憶部に記憶しておく。
次に紙幣入出金機10は、紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣ごとの鑑別結果に応じて上後第2切替部52における搬送経路を切り替えながら、紙幣を搬送する。具体的に紙幣入出金機10は、入金受入紙幣については、矢印R2として示すように、搬送路W2、W4及びW6に沿って搬送し、一時保留部17へ進行させる。
一時保留部17は、上述した収納処理を行うことにより、上流の上後第2切替部52から順次引き渡される入金受入紙幣を順次収納していく。このとき一時保留部17は、搬送路W6と同等の搬送速度で搬送路62(図4)により紙幣を搬送すると共にテープ64を走行させ、且つ周側面がこれらと同等の線速度となるようドラム61を回転させる。これにより一時保留部17は、搬送路W4等における紙幣の搬送状態、すなわち搬送方向に対する各紙幣の傾斜角度や前後の紙幣同士の間隔等を維持したまま、各紙幣を順次巻き付けていく。
またこのとき一時保留部17は、走行監視センサ65(図4)により各紙幣の搬送状態(以下これを収納時搬送状態とも呼ぶ)を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、この検知結果を紙幣の搬送順序と対応付け、一時保留部17における収納時搬送状態を表す収納時搬送情報として、記憶部に記憶させる。
一方、紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣については、矢印R3として示すように、搬送路W2、W4及びW7に沿って搬送し、さらに下搬送部21内の搬送路W11、W13、W15及びW17、すなわち下基幹搬送路WLへ進行させる。このとき紙幣入出金機10では、上流の搬送路W7から下流の下基幹搬送路WL等へ搬送された入金リジェクト紙幣を、この下基幹搬送路WL内の一部分に順次貯留していく。換言すれば、下基幹搬送路WLは、本来的には紙幣を主に主搬送方向である前後方向へ搬送する部分として機能するものの、入金処理においては紙幣を貯留する部分(以下これを搬送路貯留部WSとも呼ぶ)として機能するようになっている。
因みに紙幣入出金機10は、上流の搬送路W7から入金リジェクト紙幣が搬送されてくると、下基幹搬送路WLにおいて紙幣1枚分及び僅かな隙間に相当する搬送距離だけ各搬送ローラを回転させ、直ちに停止する。紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣が発生する度にこの動作を繰り返すことにより、入金リジェクト紙幣同士の間隔を搬送時における紙幣同士の間隔よりも短縮しながら、当該入金リジェクト紙幣を搬送路貯留部WSに貯留していく。すなわち紙幣入出金機10は、入金リジェクト紙幣が搬送されてくる毎に、搬送路貯留部WSへ間欠的に搬送し、貯留していく。
ところで紙幣入出金機10は、下基幹搬送路WLが形成された下搬送部21の各搬送ローラを駆動するモータ(図示せず)への制御信号等を基に、紙幣制御部11により、最初の入金リジェクト紙幣における後端の位置を把握している。このため紙幣制御部11は、当該後端が搬送路貯留部WSの前端に到達すると、当該搬送路貯留部WSの内部における貯留可能な全ての箇所に入金リジェクト紙幣を貯留した状態、いわゆる満杯の状態となり、新たな入金リジェクト紙幣を貯留し得ないと判断する。
この場合、紙幣入出金機10は、まず入金処理を一時的に中断して接客部12からの紙幣の搬送を一度停止させる。次に紙幣入出金機10は、図9(B)に矢印R4として示すように、搬送路貯留部WSの内部に貯留している全ての入金リジェクト紙幣を搬送路W7、W4、W5及びW8に沿って順次搬送し、接客部12の収容器31内へ戻す。さらに紙幣入出金機10は、接客部12のシャッタ32(図4)等を解放すると共に操作表示部6(図1)に所定のメッセージを表示させることにより、顧客に対し、紙幣の状態を確認すると共に収容器31の内部に紙幣を入れ直すように促す。その後紙幣制御部11は、入金処理を再開する。
やがて紙幣入出金機10は、接客部12の収容器31から全ての紙幣を取り込み終えると、搬送路貯留部WSに入金リジェクト紙幣が貯留されていれば、これを接客部12へ搬送(すなわち逆送)して顧客に返却した上で、確認及び再投入させる。一方、紙幣入出金機10は、搬送路貯留部WSに入金リジェクト紙幣が貯留されていなければ、入金処理を完了する。
このとき紙幣入出金機10は、紙幣制御部11において、接客部12から取り込んだ紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部6(図1)に表示させ、顧客にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか否かを選択させる。
ここで紙幣入出金機10は、顧客により入金取引の中止が指示された場合、一時保留部17に保留している全ての紙幣を搬送路W6、W4、W5及びW8に沿って順次搬送し、接客部12の収容器31内に放出してから、シャッタ32(図4)等を解放して顧客に返却する。
一方、紙幣入出金機10は、顧客により入金取引の継続が指示された場合、図10に示すように、収納処理を開始する。具体的に紙幣制御部11は、まず一時保留部17において繰出処理を開始することにより、収納している紙幣(入金受入紙幣)を順次繰り出し、搬送路W6に沿って下流の上後第2切替部52へ引き渡す。
このとき一時保留部17は、ドラム61(図4)の周側面における線速度、テープ64の走行速度及び搬送路62における紙幣の搬送速度を搬送路W6の搬送速度に合わせる。これにより一時保留部17は、収納時の搬送状態、すなわち搬送方向に対する各紙幣の傾斜角度や前後の紙幣同士の間隔等を再現しながら、紙幣を収納時とは逆順で下流の搬送路W6へ順次引き渡していく。
またこのとき一時保留部17は、走行監視センサ65(図4)により紙幣の搬送状態を検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、このとき得られた検知結果を一時保留部17における繰出時情報とし、これを記憶部に記憶している収納時搬送情報と比較することにより、収納時の搬送状態が正しく再現されているか否かを逐次判定する。
ここで紙幣制御部11は、収納時の搬送状態が正しく再現されている紙幣については、入金処理において鑑別部15から取得した鑑別結果を基に紙幣ごとに決定した搬送先をそのまま利用できるものと見なし、この搬送先に応じて上後第2切替部52の搬送経路を切り替えさせる。
すなわち紙幣入出金機10は、決定された搬送先が紙幣収納庫22(22A〜22D)であれば、紙幣を図10に示す矢印R5のように搬送路W6、W4、W2、W3、W17及びW18に沿って搬送する。このとき紙幣入出金機10は、切替部77、76及び75におけるそれぞれの搬送経路を適切に切り替えさせることにより、紙幣の金種に応じて定められた搬送先である各紙幣収納庫22(22A〜22D)へそれぞれ搬送し、収納させる。
また紙幣入出金機10は、決定された搬送先がリジェクト庫23A又は23Bであれば、紙幣(すなわちリジェクト紙幣)を矢印R6のように搬送路W6、W7、W11、W13、W21及びW22に沿って該リジェクト庫23Aへ搬送し、又は該搬送路W22に代えて搬送路W23及びW24に沿って該リジェクト庫23Bへ搬送して、収納させる。
かくして紙幣入出金機10は、再利用すべき通常の紙幣を金種ごとに分類して各紙幣収納庫22(22A〜22D)に収納でき、また再利用すべきで無いリジェクト紙幣をリジェクト庫23(23A又は23B)に収納できる。やがて紙幣入出金機10は、一時保留部17に収納された全ての紙幣をそれぞれの搬送先へ搬送し終えると、この収納処理を終了する。
一方、紙幣制御部11は、一時保留部17において収納時の搬送状態が正しく再現されていない紙幣については、決定された搬送先を利用すべきで無いものと見なし、当該紙幣及びこれに続く紙幣の搬送先をリジェクト庫23に変更して、上述した矢印R6に沿って搬送する。ここで収納時の搬送状態が正しく再現されていない紙幣とは、例えば搬送方向に対する傾斜角度(いわゆるスキュー)や紙幣同士の間隔が収納時と相違している紙幣や、他の紙幣と連なった状態の(すなわち重送や連鎖となっている)紙幣等である。
このように紙幣入出金機10は、入金取引において、前段の入金処理において紙幣を鑑別した際に各紙幣の搬送先を決定しながら一時保留部17に収納し、入金取引の継続が指示されると、後段の収納処理において各紙幣を鑑別部15により再度鑑別すること無く、既に決定している搬送先へ搬送する。
[5−2.出金処理]
次に、現金自動預払機1(図1)において顧客との間で出金取引が行われる場合について説明する。この場合、紙幣入出金機10は、顧客に指定された金額に応じた金種及び枚数の紙幣を出金する出金処理を行うようになっている。この出金処理は、紙幣入出金機10内の紙幣を外部へ排出する排出処理となっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して顧客から出金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、出金処理を開始する。
このとき紙幣入出金機10は、まず操作表示部6を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付けると、紙幣制御部11において出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。続いて紙幣入出金機10は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫22の内部に集積された状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W18に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機10は、図11に示す矢印R7のように、紙幣を搬送路W18、W17、W3及びW2に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させ、得られた鑑別結果を紙幣制御部11に通知する。紙幣制御部11は、この鑑別結果に応じてその搬送先を接客部12又はリジェクト庫23(23A若しくは23B)に決定する。またこのとき鑑別部15は、各紙幣の表裏も判別する。
具体的に紙幣入出金機10は、紙幣に問題が無く出金可能であれば、紙幣制御部11によりその搬送先を接客部12に決定させ、矢印R8として示すように、該紙幣を搬送路W2及びW5に沿って搬送し、表裏反転部18に引き渡す。続いて紙幣入出金機10は、表裏反転部18により、裏向きであった紙幣を表向きに反転しながら搬送させ、表向きであった紙幣をそのまま通過させて、さらに搬送路W8に沿って下流の接客部12へ搬送し、収容器31の内部に放出して集積させる。
一方、紙幣制御部11は、例えば重送されている等、紙幣に問題があり出金すべきで無い場合には、その搬送先をリジェクト庫23に決定する。そのうえで紙幣入出金機10は、上後第1切替部51の搬送経路を切り替えさせ、矢印R9として示すように、該紙幣を搬送路W2、W4、W7、W11、W13、W21及びW22(又はW23及びW24)に沿って下流のリジェクト庫23へ搬送して、その内部に収納させる。
やがて紙幣入出金機10は、出金額に応じた全ての紙幣を接客部12における収容器31の内部に集積し終えると、シャッタ32(図4)等を開放させて顧客に当該紙幣を取り出させ、出金処理を完了する。
このように紙幣入出金機10は、出金処理において、鑑別部15からの検知結果に基づいて上後第1切替部51の搬送経路を切り替えながら、出金額に応じた紙幣を上流の各紙幣収納庫22から下流の接客部12まで搬送し、顧客に引き渡す。
[5−3.補充処理]
紙幣入出金機10は、紙幣収納庫22(22A〜22D)に紙幣を補充する場合、上述したように、該紙幣収納庫22では無く補充回収カセット26(図6)が下部ユニット10Lから取り外され、補充回収庫24に紙幣が装填された上で、該下部ユニット10Lに再び装着される(図7)。続いて紙幣入出金機10は、補充回収庫24から紙幣収納庫22へ紙幣を移動させる補充処理を行う。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6を介して金融機関の職員等から紙幣の補充を行う旨の操作入力を受け付けると、補充処理を開始する。このとき紙幣入出金機10は、操作表示部6を介して移動先となる紙幣収納庫22(22A〜22D)及び移動する紙幣の枚数を含む所定の操作入力を受け付けた上で、補充回収庫24に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W12(図12)に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機10は、図12に示す矢印R10のように、紙幣を搬送路W7、W4及びW2に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機10は、紙幣制御部11により、鑑別部15から得られる検知結果を基に鑑別し、各紙幣の搬送先を決定する。
ここで紙幣入出金機10は、紙幣が正常であれば、矢印R11のように搬送路W2、W3、W17及びW18に沿って各紙幣収納庫22へ搬送して収納させる。また紙幣入出金機10は、紙幣が何らかの異常を有する補充リジェクト紙幣(以下これを補充リジェクト媒体とも呼ぶ)であれば、矢印R12のように搬送路W2、W3、W17、W15、W13及びW14に沿って補充リジェクト庫25へ搬送して収納させる。やがて紙幣入出金機10は、補充回収庫24から全ての紙幣を繰り出し、又は指定された枚数の紙幣を移動先の紙幣収納庫22へ移動させると、補充処理を終了する。
このように紙幣入出金機10は、補充処理において、上基幹搬送路WUを経由する搬送経路により、紙幣を補充回収庫24から移動先の紙幣収納庫22へ搬送して移動することができる。またこのとき紙幣入出金機10は、補充リジェクト紙幣が発生した場合には、これを補充リジェクト庫25へ搬送して収納することができる。
[5−4.回収処理]
紙幣入出金機10では、紙幣収納庫22(22A〜22D)に収納された紙幣を回収する場合、上述したように、下部ユニット10Lから該紙幣収納庫22を着脱させるのでは無く、該紙幣収納庫22から補充回収庫24へ移動させる回収処理を行った上で、補充回収カセット26を着脱させるようになっている(図7)。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6を介して金融機関の職員等から紙幣の回収を行う旨の操作入力を受け付けると、回収処理を開始する。このとき紙幣入出金機10は、操作表示部6を介して移動元となる紙幣収納庫22(22A〜22D)の指定を含む所定の操作入力を受け付けた上で、この移動元に指定された紙幣収納庫22に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、搬送路W18(図13)に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機10は、図13に示す矢印R13のように、紙幣を搬送路W18、W17、W3及びW2に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機10は、紙幣制御部11により、鑑別部15から得られる検知結果を基に、各紙幣の状態に応じて搬送先を決定する。
すなわち紙幣入出金機10は、紙幣が正常であれば、矢印R14として示すように、該紙幣を搬送路W2、W4、W7及びW12に沿って補充回収庫24へ搬送して、その内部に収納させる。また紙幣入出金機10は、紙幣が異常であれば、すなわちリジェクト紙幣であれば、矢印R15として示すように、該紙幣を搬送路W2、W4、W7、W11、W13、W21及びW22(又はW23及びW24)に沿って下流のリジェクト庫23へ搬送して、その内部に収納させる。
このように紙幣入出金機10は、回収処理において、補充処理の場合と同様に上基幹搬送路WUを経由する搬送経路により、紙幣を移動元の紙幣収納庫22から補充回収庫24へ搬送して移動することができる。またこのとき紙幣入出金機10は、リジェクト紙幣が発生した場合には、これをリジェクト庫23へ搬送して収納することができる。
[5−5.紙幣移動処理]
次に、紙幣入出金機10において紙幣収納庫22同士の間で紙幣を移動させる紙幣移動処理について説明する。この紙幣移動処理では、移動元となる一の紙幣収納庫22から接客部12へ紙幣を搬送し、その後該接客部12から移動先となる他の紙幣収納庫22へ紙幣を搬送する。
具体的に紙幣入出金機10は、作業員等により操作表示部6(図1)を介して移動元及び移動先の紙幣収納庫22、並びに移動する紙幣の枚数等の指示を受け付けると、紙幣移動処理を開始する。まず紙幣入出金機10は、移動元として指定された紙幣収納庫22から、出金処理の場合と同様に、内部に集積された状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、下流の搬送路W18に順次引き渡す。
続いて紙幣入出金機10は、図14(A)に示す矢印R16のように、紙幣を搬送路W17、W3及びW2に沿って搬送し、鑑別部15を通過する際に鑑別させる。ここで紙幣入出金機10は、紙幣制御部11により、鑑別部15から得られる検知結果を基に、各紙幣の状態及に応じて搬送先を決定する。
すなわち紙幣入出金機10は、紙幣の走行状態に問題が無ければ搬送先を一時保留部17に決定し、矢印R17のように搬送路W2、W4及びW6に沿って一時保留部17へ搬送して収納させる。また紙幣入出金機10は、紙幣の走行状態に問題があれば、すなわちリジェクト紙幣であれば、該紙幣を矢印R18のように搬送路W2、W4、W7、W11、W13、W21及びW22(又はW23及びW24)に沿って下流のリジェクト庫23へ搬送して、その内部に収納させる。
やがて紙幣入出金機10は、一時保留部17に収納可能な最大枚数である200枚の紙幣を搬送し終え、或いは操作者等に指示された枚数の紙幣を搬送し終えると、図14(B)に矢印R19として示すように、一時保留部17から紙幣を順次繰り出して搬送路W6、W2、W3、W17及びW18に沿って搬送する。さらに紙幣入出金機10は、切替部77、76及び75における搬送経路を適宜切り替えることにより、該紙幣を移動先である紙幣収納庫22へ搬送して収納させる。これにより紙幣入出金機10は、一連の紙幣移動処理を終了する。
因みに紙幣入出金機10では、各紙幣収納庫22における紙幣の最大収納枚数が例えば2000〜3000枚程度である一方、一時保留部17における紙幣の最大収納枚数が、1回の取引処理において取り扱う最大枚数である200枚程度となっている。このため紙幣入出金機10では、200枚よりも多い枚数の紙幣を移動させる場合には、複数回に分けて紙幣移動処理を行う。
このように紙幣入出金機10は、紙幣移動処理において、一時保留部17を一時的な紙幣の収納場所として利用しながら、移動元の紙幣収納庫22から移動先の紙幣収納庫22へ紙幣を移動させる。
[5−6.接客分離異常リトライオーバ処理]
ところで紙幣入出金機10では、上述したように、入金処理等において、接客部12の収容器31(図4)から分離部31Sにより紙幣を1枚ずつに分離する場合に分離異常が発生する恐れがある。このため紙幣入出金機10では、この分離異常が発生した場合、上述した接客分離異常リトライ処理を行うことにより、分離異常の解消を図る。
ここで紙幣入出金機10では、1回の接客分離異常リトライ処理によって分離異常を解消できない場合、この接客分離異常リトライ処理を繰り返すことになる。しかしながら紙幣入出金機10では、例えば濡れた状態の複数の紙幣が互いに貼り付いている場合等、接客分離異常リトライ処理を複数回実行しても分離異常を解消できない場合がある。このような場合、紙幣入出金機10では、分離異常を解消できない紙幣を利用者に返却する、接客分離異常リトライオーバ処理を行うようになっている。
具体的に紙幣入出金機10は、接客部12において収容器31から分離部31Sにより紙幣を分離して繰り出す場合、紙幣制御部11により、該接客部12の光学センサ(図示せず)から得られる検出信号を基に、各紙幣が正常に分離されているか否かを監視する。
紙幣制御部11は、分離異常の発生を検知した場合、接客部12の分離部31S及び搬送路33により、上述した接客分離異常リトライ処理を実行させる。このとき紙幣制御部11は、1回の接客分離異常リトライ処理では分離異常を解消できなかった場合、該接客分離異常リトライ処理を繰り返させると共に、該接客分離異常リトライ処理を繰り返した回数(以下これをリトライ回数と呼ぶ)を計数する。そのうえで紙幣制御部11は、このリトライ回数が所定の閾値(例えば5回)以上となった場合、紙幣入出金機10により接客分離異常リトライオーバ処理を開始させる。
すなわち紙幣入出金機10は、まず図15(A)に示す矢印R20のように、分離異常が発生した状態のまま、紙幣を搬送路W1、W2、W5及びW8に沿って搬送し、該搬送路W8上で静止させる。次に紙幣入出金機10は、接客部12において、収容器31内における仕切板(図示せず)の位置を移動させる等、紙幣を集積するための準備処理を行う。続いて紙幣入出金機10は、図15(B)に示す矢印R21のように、搬送路W8上において停止させていた紙幣の搬送を再開し、接客部12において放出部31Eにより収容器31内へ放出する。これにより紙幣入出金機10は、接客分離異常リトライオーバ処理を終了する。
その後紙幣入出金機10は、接客部12のシャッタ32(図4)を開放し、顧客に紙幣の状態を確認させ、必要に応じて紙幣を再度投入させるようになっている。
[5−7.取忘取込処理]
ところで紙幣入出金機10は、上述した出金処理において、出金額の紙幣を接客部12における収容器31の内部に集積し終えると、シャッタ32(図4)等を開放して顧客に紙幣が取り出されるのを待ち受ける。ここで紙幣入出金機10は、図示しないセンサを用いて紙幣が取り出されたか否かを監視しており、シャッタ32等を開放してから所定時間(例えば30秒間)以内に紙幣が取り出されなかった場合、顧客が紙幣を取り忘れて立ち去ったものと判断する。以下、このとき収容器31内に残された紙幣を取忘紙幣と呼ぶ。
このとき紙幣入出金機10は、取忘紙幣を内部に取り込む取忘取込処理として、入金処理(図9(A)及び(B))の場合と概ね同様に紙幣を一時保留部17へ搬送した後、取忘収納庫28へ搬送して収納させるようになっている。因みにこの場合、接客部12では、分離部31Sにより紙幣を正常に分離できず、重送やスキュー等のような搬送異常を発生させる場合がある。このため紙幣入出金機10は、この取忘取込処理において、入金処理の場合と同様に鑑別処理等を行うようになっている。
具体的に紙幣入出金機10は、まず入金処理の場合と同様に、矢印R1(図9(A))のように紙幣を搬送路W1及びW2に沿って搬送し、鑑別部15において鑑別する。このとき紙幣制御部11は、得られた鑑別結果を基に紙幣の搬送状態を判断し、この搬送状態に応じて搬送先を一時保留部17又は搬送路貯留部WSに決定する。
すなわち紙幣入出金機10は、紙幣の搬送状態が正常であれば、この紙幣を矢印R2のように搬送路W2、W4及びW6に沿って一時保留部17へ搬送し、収納させる。また紙幣入出金機10は、搬送状態が正常で無い紙幣については、入金処理における入金リジェクト紙幣と同様、矢印R3(図9(A))のように、搬送路W2、W4及びW7に沿って搬送し、さらに下搬送部21内の下基幹搬送路WL(すなわち搬送路貯留部WS)へ搬送して貯留させる。
紙幣入出金機10は、搬送路貯留部WSが満杯になると、矢印R4(図9(B))のように搬送路W7、W4、W5及びW8に沿って順次搬送し、接客部12の収容器31内へ戻す。このとき収容器31に戻された紙幣は、その後分離部31Sにより再び分離されることにより、搬送状態の正常化が図られた上で、矢印R1(図9(A))で示した搬送路に沿って搬送される。
やがて紙幣入出金機10は、接客部12の収容器31から全ての紙幣を取り込み終えると、図16に示す矢印R22のように、一時保留部17から紙幣(取忘紙幣)を順次繰り出し、搬送路W6、W7、W11、W13、W21、W23及びW25に沿って取忘収納庫28へ搬送して、収納させる。
かくして紙幣入出金機10は、出金処理において紙幣の取り忘れが発生した場合、取忘取込処理として、取忘紙幣を入金処理と同様に一時保留部17へ取り込んだ後、専用の取忘収納庫28へ搬送して収納することができる。
[6.効果等]
以上の構成において、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、上部ユニット10U(図4)の下側部分に配置された上前搬送部14、鑑別部15及び上後搬送部16により上搬送部10UCを構成し、前後方向に沿った一直線状の上基幹搬送路WU(図2、図8)を形成した。また紙幣入出金機10は、下部ユニット10L(図5)の上側部分に下搬送部21を配置し、前後方向に沿った一直線状の下基幹搬送路WL(図2、図8)を形成した。
さらに紙幣入出金機10は、上部ユニット10Uの下端における前後両端の近傍に、上部ユニット前受渡口T12及び上部ユニット後受渡口T11(図4)を設け、また下部ユニット10Lの上端における前後両端の近傍に下部ユニット前受渡口T22及び下部ユニット後受渡口T21(図5)をそれぞれ設けた。
そのうえで紙幣入出金機10では、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lが紙幣入出金機フレーム10F内に格納された場合に(図2)、後端近傍において上部ユニット後受渡口T11(図4)及び下部ユニット後受渡口T21(図5)を接続し、両者の間で紙幣を受け渡す後受渡部C1(図2、図8)を形成するようにした。また紙幣入出金機10では、この場合に、前端近傍において、上部ユニット前受渡口T12(図4)及び下部ユニット前受渡口T22(図5)を接続し、両者の間で紙幣を受け渡す前受渡部C2(図2、図8)を形成するようにした。
すなわち紙幣入出金機10では、前後方向に沿った上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを後側の後受渡部C1及び前側の前受渡部C2により互いに接続し、ループ状(環状又は円環状)の搬送路を構成した。これを他の観点から見れば、紙幣入出金機10は、上基幹搬送路WUの中ほどに鑑別部15を配置した上で、該鑑別部15の一方に接客部12及び紙幣収納庫22を接続し、他方に一時保留部17並びにリジェクト庫23(23A及び23B)を接続した構成とした。
これにより紙幣入出金機10は、特許文献1の紙幣入出金機等と比較して、基幹となる紙幣の搬送路を2本の直線状に形成できるため、屈曲箇所の数を削減できると共に、搬送経路長も短く抑えることができるので、紙幣の搬送に伴う詰まり等の発生頻度を最小限に抑えて、各処理を円滑に進めることができる。
これを他の観点から見ると、紙幣入出金機10では、何れも直線状でなる上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを互いの前端及び後端において接続することにより環状の搬送路を形成し、この環状の搬送路から分岐する短い搬送路を介して接客部12や紙幣収納庫22等の各モジュールを接続するようにした(図8)。これにより紙幣入出金機10では、環状の搬送路において後受渡部C1の近傍及び前受渡部C2の近傍のみに屈曲した部分を形成すれば良く、搬送路全体において屈曲箇所を極めて少なく抑えることができ、紙幣の詰まりのような搬送に関する障害の発生頻度を格段に低減させることができる。
また紙幣入出金機10は、仮に下基幹搬送路WLを紙幣収納庫22Dの後側近傍で分割し、それぞれを上基幹搬送路WUの前後に接続するようにして、1本の基幹となる搬送路を形成した場合、紙幣入出金機における前後方向の長さが極めて長くなる恐れがあった。これに対して本実施の形態による紙幣入出金機10は、基幹となる搬送路を2本に分けて上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLとし、且つ両者を上下方向に重ねるように配置した。これにより、この紙幣入出金機10が組み込まれる現金自動預払機1(図1)は前後長を比較的短く抑えることができ、その設置に必要な場所の前後長を必要最小限に抑えることができる。
また他の観点から見ると、紙幣入出金機10では、紙幣を長期的に収納する箇所、すなわち各入金取引や出金取引等が完了した後に紙幣を保有している箇所である紙幣収納庫22及びリジェクト庫23等を、何れも下部ユニット10L側に配置した。これを換言すれば、紙幣入出金機10では、紙幣を長期的に収納する箇所を上部ユニット10U側に設けず、それぞれの入金取引や出金取引等が完了した時点で、上部ユニット10U側に紙幣を保有しないようにした。
これにより紙幣入出金機10では、紙幣収納庫22に対する紙幣の補充や回収のような、比較的高い頻度で行う必要がある保守作業において、紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10L側のみを引き出せば良く(図3(B))、上部ユニット10U側を引き出す必要が無い。このとき紙幣入出金機10では、上部ユニット10U側を引き出し、また格納するといった作業が不要になるだけで無く、下部ユニット10Lの上側を空けた状態で、作業員等に無理な姿勢をさせること無く効率良く保守作業を行わせることができる。
また別の観点から見れば、紙幣入出金機10では、例えば一時保留部17内に紙幣が残留している場合等、正常に収納されている紙幣とは関係無く、偶発的に発生した障害を解消するための保守作業等を行う場合にのみ、上部ユニット10Uを引き出して保守作業を行わせれば良い。
さらに紙幣入出金機10では、上部ユニット10Uにおける最も下側(すなわち下端)に上搬送部10UCを配置すると共に(図4)、下部ユニット10Lにおける最も上側(すなわち上端)に下搬送部21を配置した(図5)。このため紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム10Fから上部ユニット10Uを引き出すだけで、その下面側において上搬送部10UCを外部に露出させることができ(図3(A))、また紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10Lを引き出すだけで、その上面側において下搬送部21を外部に露出させることができる(図3(B))。
これにより紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム10Fから上部ユニット10U又は下部ユニット10Lを引き出す、といった極めて簡易な作業により(図3)、一般に紙幣の詰まり等のような障害の発生頻度が比較的高い搬送路及びその近傍を、容易に且つ素早く外部に露出でき、保守作業の容易化や時間短縮を図ることができる。
これを他の観点から見れば、紙幣入出金機10では、上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを、何れも左右方向から見て前後方向に沿った直線状に形成し、且つ上下方向に互いに近接した位置に配置し、さらに後受渡部C1及び前受渡部C2において両者を接続した。このため紙幣入出金機10では、上部ユニット10U又は下部ユニット10Lを紙幣入出金機フレーム10Fから引き出すだけで両者を容易に分離でき、保守作業の容易化や効率化を図ることができる。また紙幣入出金機10では、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを何れも紙幣入出金機フレーム10F内に格納するだけで、両者を接続して連続した基幹搬送路を形成できる。
また紙幣入出金機10では、鑑別部15における一方の端部である前端15Fから紙幣収納庫22及び補充リジェクト庫25へ紙幣を搬送し得るように構成し、その反対側となる他方の端部である後端15Rから補充回収庫24及びリジェクト庫23に紙幣を搬送し得るように構成した(図8)。
これにより紙幣入出金機10は、図12に示したように、補充処理において、補充回収庫24から鑑別部15を通る搬送経路によって紙幣を鑑別しながら、紙幣収納庫22へ搬送して収納させることができる。また紙幣入出金機10は、この補充処理において入金リジェクト紙幣が発生した場合、これを正常な紙幣と同様に搬送路W17まで搬送し、切替部74等によって搬送経路を切り替えることにより、補充リジェクト庫25へ直接搬送して収納できる。
さらに紙幣入出金機10では、図13に示したように、回収処理において、紙幣収納庫22から鑑別部15を通る搬送経路によって紙幣を鑑別しながら、補充回収庫24へ搬送して収納させることができる。また紙幣入出金機10は、この回収処理においてリジェクト紙幣が発生した場合、これを正常な紙幣と同様に搬送路W7まで搬送し、切替部71等によって搬送経路を切り替えることにより、リジェクト庫23へ直接搬送して収納できる。
すなわち紙幣入出金機10は、補充処理及び回収処理の何れにおいても、紙幣をそれぞれの目的とするモジュール(紙幣収納庫22、補充リジェクト庫25、補充回収庫24又はリジェクト庫23)へ直接搬送することができ、途中で一時保留部17等に収納させる必要が無いため、各処理に要する時間を短く抑えることができる。
ところで、特許文献1に示した紙幣入出金機等では、保守作業の効率化等の観点から、各モジュール同士の隙間等を利用して上下方向に分割し、それぞれを前後方向へスライドし得るように構成することが考えられる。しかしながらこれらの紙幣入出金機では、内部に配置された各モジュール等の配置によっては、分割の境界線が左右方向から見て直線状にならず、折れ線状に形成される場合があった。このような場合、例えば下側のユニットを単独で前方へ引き出すことができない等の制約が生じる可能性があった。
この点において本実施の形態による紙幣入出金機10では、左右方向から見て前後方向に沿った一直線状の境界線により、すなわち水平な分割線により、上側の上部ユニット10U及び下側の下部ユニット10Lに分割した(図2)。このため紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム10Fに対し、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを互いに独立して前後方向へスライドさせることができる(図3)。また紙幣入出金機10では、仮に紙幣入出金機フレーム10Fの前側を開放して上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを前方へスライドさせるように構成した場合であっても、該上部ユニット10U及び該下部ユニット10Lの構成を変更すること無く、それぞれを互いに独立して前後方向へスライドさせることができる。
そのうえ下部ユニット10Lでは、補充回収カセット26を最後端に配置すると共に、該補充回収カセット26を装填するための後フレーム112を、その前側の主フレーム111に対し後方へスライドさせ得るようにした(図7)。これにより紙幣入出金機10では、紙幣入出金機フレーム10F内に主フレーム111を格納して入金処理等の各種処理を行い得る運用状態を維持したまま、後フレーム112のみを後方へ引き出して補充回収カセット26を着脱させることにより、紙幣の補充や回収を行うことができる。
さらに紙幣入出金機10では、補充回収庫24及び補充リジェクト庫25を一体化して補充回収カセット26としたため(図7)、両者を互いに独立した構成とする場合と比較して、下部ユニット10Lから取り外した状態での運搬作業等を容易化することができる。
ところで、実際の入金処理において入金リジェクト紙幣が発生する頻度を集計すると、国や地域により相違するものの、例えば1〜2%程度のように極めて低いことが判明した。紙幣入出金機では、1回の取引処理において処理し得る紙幣の最大枚数が例えば100〜200枚程度であるため、入金リジェクト紙幣の実際の発生枚数は多くとも4〜5枚程度と想定される。このため紙幣入出金機では、最大で4〜5枚程度の入金リジェクト紙幣を一時的に貯留できる箇所を用意でき、且つこの入金リジェクト紙幣を後から接客部に搬送することができれば、必ずしも該入金リジェクト紙幣を直ちに接客部へ戻す必要が無い。
このような技術的思想に基づき、本実施の形態による紙幣入出金機10では、入金処理の段階において、紙幣を一時保留部17に収納しており、下側の紙幣収納庫22等へ搬送することが無いため、これに伴って使用されない下搬送部21内の搬送経路を搬送路貯留部WSとし、ここに入金リジェクト紙幣を貯留するようにした(図9)。これにより紙幣入出金機10では、入金リジェクト紙幣を収納しておくための収納庫等を別途設ける必要が無い。
また、特許文献1の紙幣入出金機では、収納処理において、一時保留部から繰り出された紙幣が鑑別部を通過したときにその金種や損傷の程度を鑑別して搬送先を決定して搬送していた。このためこの紙幣入出金機では、一時保留部から繰り出された紙幣が鑑別部を通過して紙幣収納庫へ向かうような搬送経路を形成する必要があった。
この点において、本実施の形態における一時保留部17(図4)は、いわゆるテープエスクロ方式を採用したため、各紙幣をテープ64と共にドラム61に巻き付けて収納することで、紙幣の順序や紙幣同士の間隔、或いはスキュー等を維持したまま収納し、また繰り出すことができる。換言すれば、この一時保留部17は、紙幣収納庫22のように紙幣を集積して収納する方式とは異なり、繰り出す際の紙幣の分離時に新たに重送や搬送順序の逆転が原理的に殆ど発生せず、収納時の搬送状態を良好に維持できる。
このことを踏まえて本実施の形態による紙幣入出金機10では、入金処理において紙幣をこの一時保留部17に収納すると共に、鑑別部15により得られた鑑別結果及びこれを基に決定した搬送先を記憶しておき、その後の収納処理において、記憶された内容を読み出し、一時保留部17からこの搬送先へ搬送するようにした(図10)。これにより紙幣入出金機10は、一時保留部17から繰り出された紙幣が鑑別部15を通過せずにリジェクト庫23A及び23Bへ搬送されるような搬送路を形成できるため、従来の紙幣入出金機よりも搬送路を短縮して構成を簡略化することができる。
また紙幣入出金機10は、一時保留部17において紙幣の収納時に走行監視センサ65により紙幣の搬送状態を検知して収納時搬送情報として記憶しておき、紙幣の繰出時に再度走行監視センサ65により紙幣の搬送状態を検知して繰出時搬送情報とし、これを収納時搬送情報と照合するようにした。
これにより紙幣入出金機10は、仮に一時保留部17内での搬送中等に紙幣が周囲に引っかかる等して新たにスキューや重送が発生した場合には、照合結果が大きく相違することで搬送状態が変化したことを検知できる。このような場合、紙幣入出金機10は、搬送状態が変化した紙幣及びこれ以降の紙幣を再利用できないと見なし、リジェクト庫23へ搬送して収納することにより、入金処理時に記憶した搬送先を異なる紙幣に誤設定してしまうことを未然に防止できる。
また紙幣入出金機10では、取忘紙幣を収納するための取忘収納庫28を設けたため(図5)、本来的に顧客の所有物である取忘紙幣を、金融機関等の所有物である他の紙幣と区別した状態で保管することができる。
以上の構成によれば、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、上部ユニット10Uに前後方向に沿った上基幹搬送路WUを形成し、下部ユニット10Lに前後方向に沿った下基幹搬送路WLを形成し、両者を後受渡部C1及び前受渡部C2で接続した。これにより紙幣入出金機10は、基幹となる搬送路の大部分を2本の直線状に形成でき、屈曲箇所の数を大幅に削減できると共に、搬送経路長も短く抑えることができ、紙幣の搬送に伴う詰まり等の発生頻度を最小限に抑えて、各処理を円滑に進めることができる。その一方で紙幣入出金機10は、装置の前後長を抑えて小型化を図ることができ、さらに後受渡部C1及び前受渡部C2において上基幹搬送路WU及び下基幹搬送路WLを切り離すことにより、保守作業を容易化できる。
[7.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、紙幣入出金機フレーム10Fに対し上部ユニット10U及び下部ユニット10Lをそれぞれ後方向へ移動(スライド)させることにより外部に露出させるようにした場合について述べた(図3)。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣入出金機フレーム10Fに対し上部ユニット10U及び下部ユニット10Lをそれぞれ他の方向、例えば前方向へ移動(スライド)させることにより外部に露出させるようにしても良い。
また上述した実施の形態においては、上部ユニット10Uの最下部に上搬送部10UCを設けると共に、下部ユニット10Lの最上部に下搬送部21を設けた場合、すなわち上搬送部10UC及び下搬送部21間を境界として上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを分割する場合について述べた(図2、図4及び図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下搬送部21を下部ユニット10Lから上部ユニット10Uに移すことにより、該下搬送部21の下面と紙幣収納庫22、リジェクト庫23A、補充回収庫24及び補充リジェクト庫25の上面との間を境界とする等、他の種々の箇所を境界として、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを分割しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣入出金機10を上部ユニット10U及び下部ユニット10Lといった2個のユニットに分割する場合について述べた(図2、図4及び図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上搬送部10UC及び下搬送部21を中間ユニットとし、接客部12、接客搬送部13、一時保留部17、表裏反転部18及び出金搬送部19を上部ユニットとし、紙幣収納庫22、リジェクト庫23A及び23B、補充回収庫24、補充リジェクト庫25及び取忘収納庫28等を下部ユニットとすることにより、3個のユニットに分割する等、3個以上のユニットに分割しても良い。この場合、各ユニットを紙幣入出金機フレーム10Fに対しそれぞれ前方向又は後方向へ個別に引き出し得るようにすることが望ましい(図3)。
さらに上述した実施の形態においては、上搬送部10UCを大きく上前搬送部14、鑑別部15及び上後搬送部16といった3個のモジュールに分割した構成とした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば当該上搬送部10UCを種々の分け方により複数に分けても良く、或いはこれらを分けること無く1個の上搬送部10UCとしても良い。同様に、下搬送部21についても、前後方向に2個以上のモジュールに分割した構成としても良い。
さらに上述した実施の形態においては、上部ユニット10U及び下部ユニット10Lを水平な分割線により分割する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下部ユニット10Lの後端部分を上方へ突出させて分割線における後端部分を上方に屈曲させた構成としても良い。この場合、下部ユニット10Lは後方へのみ引き出すことが可能となり、また上部ユニット10Uを後方へ引き出す場合に下部ユニット10Lも同時に引き出すことになる。
さらに上述した実施の形態においては、補充リジェクト庫25を設け、補充処理において発生した補充リジェクト紙幣を該補充リジェクト庫25に搬送して収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補充リジェクト庫25を省略し、補充処理において発生した補充リジェクト紙幣をリジェクト庫23に搬送して収納しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、補充回収庫24及び補充リジェクト庫25を一体化して補充回収カセット26を構成する場合について述べた(図7)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補充回収庫24及び補充リジェクト庫25をそれぞれ独立した1個のカセットとして下部ユニット10Lに対し着脱し得るようにしても良い。
さらにこの場合、互いに独立した補充回収庫24及び補充リジェクト庫25を後フレーム112(図7)にそれぞれ装填し得るようにし、この後フレーム112を主フレーム111の後方へ引き出すことにより、補充回収庫24及び補充リジェクト庫25を下部ユニット10Lに対しそれぞれ着脱し得るようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、下部ユニット10Lの主フレーム111に対し、後フレーム112を前後方向へ移動させ得るようにした場合について述べた(図7)。
しかしながら本発明はこれに限らず、後フレーム112を主フレーム111に対し固定しても良い。この場合、紙幣入出金機フレーム10Fから下部ユニット10Lを後方へ引き出した状態で、補充回収カセット26を着脱するようにすれば良い(図3(B))。
さらに上述した実施の形態においては、下部ユニット10L内におけるリジェクト庫23Bの下側に、取忘紙幣を他の紙幣と区別して収納するための取忘収納庫28を設け、搬送路107及び105等を介して搬送路86と接続させる場合について述べた(図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15により偽造されていると鑑別された紙幣(いわゆる偽券)を他の紙幣と区別して収納するための偽券収納庫等、他の種々の収納庫を設け、適宜搬送路を配置することにより搬送路86と接続させても良い。
さらに上述した実施の形態においては、搬送経路を3通りに切り替える上後第1切替部51を、1枚のブレードの傾斜角度を変化させて紙幣の搬送方向を切り替える、いわゆる3ウェイブレード方式とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば搬送経路を2通りに切り替えることができる2ウェイブレード方式の切替部を3個組み合わせることにより、全体として3通りに搬送経路を切り替えるようにしても良い。上後第2切替部52についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、上前切替部41を、後側の搬送路44及び上側の搬送路43を接続する搬送経路と、後側の搬送路44及び前側の搬送路45を接続する搬送経路とを切り替える、いわゆる2ウェイブレード方式とした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上前切替部41を上後第1切替部51等と同様の3ウェイブレード方式としても良い。また、例えば下搬送部21の切替部75〜77を、それぞれ3ウェイブレード方式としても良い。この場合、紙幣移動処理(図14(A)及び(B))において、紙幣を一時保留部17等に一時的に収納させること無く、紙幣収納庫22同士の間で紙幣を直接搬送することができる。これにより、鑑別部15を通過しないために鑑別処理を行い得なくなることと引き替えに、処理時間を大幅に短縮できる。他の切替部についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣入出金機10に設ける一時保留部17をいわゆるテープエスクロ方式とし、紙幣をテープ64と共にドラム61の周側面に巻き付けて収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣入出金機10に他の種々の方式の一時保留部を設けても良い。この場合、一時保留部としては、実施の形態と同様に、入金処理や出金処理において取り扱う最大枚数(例えば200枚)の紙幣を一時的に収納することができ、さらに当該紙幣を繰り出す際に、収納時における各紙幣の順序を正順又は逆順に維持できれば良い。さらに一時保留部としては、紙幣のスキューや紙幣同士の間隔も維持したまま繰り出し得ることが好ましい。
さらに上述した実施の形態においては、接客部12における収容器31の内部に前後方向へ移動可能な仕切板を1枚設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば収容器31の内部に2枚以上の仕切板を設けても良く、或いは該収容器31から仕切板を省略しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、接客搬送部13を接客部12と区別した構成とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば接客搬送部13を接客部12に組み込んだ構成とても良い。
さらに上述した実施の形態においては、入金処理において、紙幣制御部11により、紙幣の搬送順序と対応付けて、各紙幣の金種、記番号及び搬送先や、その搬送状態、すなわちスキューや紙幣同士の間隔等を、鑑別部15における入金時情報として記憶させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣の金種及び記番号のみ、或いは搬送状態のみ等、各センサから得られた検知結果に基づいた種々の情報を適宜取捨選択した上で入金時情報として記憶させるようにしても良い。また搬送状態についても、スキューのみ、或いは紙幣同士の間隔のみ等、走行センサ49Cの検知結果を基に得られる種々の情報を適宜取捨選択して用いても良い。要は、収納処理において搬送先を読み出すことができ、又は記憶された情報を基に搬送先を決定できれば良い。一時保留部17の収納時搬送情報についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、入金処理において一時保留部17に紙幣を収納する際における搬送状態を走行監視センサ65により検知し、その検知結果を収納時搬送情報として記憶させておく場合について述べた。その後、収納処理において走行監視センサ65から得られた搬送状態を収納時搬送情報と比較して、収納時の搬送状態が正しく再現されているか否かを判断するようにした。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば一時保留部17において収納時の搬送状態を極めて高精度に維持できる場合に、走行監視センサ65を省略すると共に搬送状態が再現されているか否かについて特に判断しないようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、一時保留部17の走行監視センサ65により検知する紙幣の搬送状態として、具体的に紙幣同士の間隔及び各紙幣のスキュー(すなわち搬送方向又は左右方向に対する各辺の傾斜)を検知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣同士の間隔及び各紙幣のスキューの何れか一方としても良く、また紙幣の厚みを検知しても良く、さらにはこれらを適宜組み合わせても良い。
さらに上述した実施の形態においては、入金処理での鑑別部15における入金時情報や走行監視センサ65による収納時搬送情報を紙幣制御部11の記憶部に記憶させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば主制御部9の記憶部や、所定のネットワークを介して接続された外部のサーバ装置(図示せず)の内部に設けられた記憶部等、情報を記憶可能な種々の箇所に入金時情報及び収納時搬送情報を記憶させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、下搬送部21の下基幹搬送路WLを搬送路貯留部WSとして入金リジェクト紙幣を貯留しておき、接客部12内の全紙幣を鑑別部15により鑑別し終えた後などに、当該入金リジェクト紙幣を接客部12へ戻すようにした場合について述べた(図9(A)及び(B))。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15により入金リジェクト紙幣を検知する度に、上後第1切替部51の搬送経路を切り替えて、当該入金リジェクト紙幣を搬送路W5及びW8に沿って搬送し、当該接客部12へ戻すようにしても良い。この場合、下搬送部21の下基幹搬送路WLを搬送路貯留部WSとして使用する必要が無い。
さらに上述した実施の形態においては、入金リジェクト紙幣を下搬送部21の搬送路貯留部WSに貯留する際、紙幣同士の間隔を短縮する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣同士の間隔を短縮すること無く、維持したまま貯留しても良い。この場合、下搬送部21における下基幹搬送路WLを構成する各搬送ローラ等の回転を上搬送部10UCにおける各搬送ローラ等と同様に一定の回転速度で回転させれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、下搬送部21の各搬送ローラを駆動するモータへの制御信号等を基に、搬送路貯留部WSの内部に貯留している入金リジェクト紙幣の後端の位置を紙幣制御部11が認識する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば当該モータの制御精度が比較的低い場合に、下搬送部21の内部における前端近傍に光学センサを設け、当該光学センサによる紙幣の検知結果を基に、搬送路貯留部WSの内部に貯留している入金リジェクト紙幣の後端の位置を紙幣制御部11が認識しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、走行センサ49Cを厚みセンサ及び光学センサにより構成し、それぞれの検知結果を基に紙幣制御部11において重送の有無、各紙幣のスキュー及び紙幣同士の間隔を認識する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々のセンサにより走行センサを構成しても良い。要は、入金処理において各紙幣が入金リジェクト紙幣であるか否かを検知でき、且つ出金処理において各紙幣がリジェクト紙幣であるか否かを検知できれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、鑑別部15に走行センサ49C、イメージセンサ49B及び真偽センサ49Aといった3種類のセンサを設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、鑑別部15に2種類以下又は4種類以上のセンサを設けても良い。要は、得られる検知結果を基に紙幣制御部11において、少なくとも入金処理において各紙幣が正常な紙幣又は入金リジェクト紙幣の何れであるかを判断することができ、且つその後の収納処理における搬送先を定めることができれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、鑑別部15の各センサにおける検知結果を紙幣制御部11へ送出することにより、当該紙幣制御部11により紙幣の金種、真偽及び損傷の程度等を認識した上でその搬送先を決定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部15に専用の鑑別制御部を設け、鑑別部15の各センサにおける検知結果を当該鑑別制御部へ送出して、当該鑑別制御部において紙幣の金種、真偽、損傷の程度等を認識させるようにしても良い。この場合、鑑別制御部において認識した金種、真偽及び損傷の程度等を表す情報を紙幣制御部11へ送出することにより、当該紙幣制御部11において紙幣の搬送先を決定すれば良い。これにより、紙幣制御部11の処理負荷を軽減することができる。
さらに上述した実施の形態においては、出金処理において、表裏反転部18により裏向きの紙幣の表裏を反転させて表向きとし、出金する紙幣を全て表向きに揃える場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、出金処理の開始時に表裏反転を行うか否かを顧客に指示させ、表裏反転を行わない指示を受けた場合に、表裏反転部18において全ての紙幣をそのまま通過させるようにしても良い。或いは、例えば表裏反転部18を省略し、出金搬送部19を後方へ延長して搬送路70に搬送路67及び69に相当する部分を形成しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、下部ユニット10Lに4個の紙幣収納庫22(22A〜22D)を設ける場合について述べた(図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、下部ユニット10Lに3個以下又は5個以上の紙幣収納庫22を設けても良い。
さらに上述した実施の形態においては、下部ユニット10Lに2個のリジェクト庫23A及び23B並びに取忘収納庫28を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばリジェクト庫23Bを省略して1個のリジェクト庫23Aのみを設けるようにしても良い。この場合、切替部102及び搬送路106を省略できる。或いは、例えばリジェクト庫23Bに代えて、偽券を収納するための偽券収納庫を設けても良い。また取忘収納庫28については、省略しても良い。この場合、切替部102及び搬送路107を省略できる。
さらに上述した実施の形態においては、顧客との間で媒体としての紙幣に関する取引処理を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば各種金券や証券等、或いは入場券や乗車券のような種々の紙葉状の媒体を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、上搬送部としての上搬送部10UCと、入出部としての接客部12と、一時保留部としての一時保留部17と、鑑別部としての鑑別部15と、制御部としての紙幣制御部11と、下搬送部としての下搬送部21と、媒体収納庫としての紙幣収納庫22と、リジェクト庫としてのリジェクト庫23A及び23Bと、補充回収庫としての補充回収庫24と、第1受渡部としての後受渡部C1と、第2受渡部としての前受渡部C2とによって媒体処理装置としての紙幣入出金機10を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる上搬送部と、入出部と、一時保留部と、鑑別部と、制御部と、下搬送部と、媒体収納庫と、リジェクト庫と、補充回収庫と、第1受渡部と、第2受渡部とによって媒体処理装置を構成しても良い。