JP2018010525A - 高分子材料のシミュレーション方法 - Google Patents

高分子材料のシミュレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ビーズでモデル化された分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に精度よく換算する。【解決手段】 コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法である。このシミュレーション方法は、高分子鎖の全原子モデル又はユナイテッドアトムモデルからなる第1分子鎖モデルの屈曲度合を示す第1パラメータを計算する工程S3、高分子鎖を複数のビーズで単純化した第2分子鎖モデルの屈曲度合を示す第2パラメータを計算する工程S6、第1パラメータと第2パラメータとに基づいて、第2分子鎖モデルのビーズ数と、高分子鎖のモノマー数との比を計算する第3計算工程S7、及び、第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比に基づいて、第2分子鎖モデルの長さの単位を、前記高分子鎖の長さの単位に換算する工程S8を含む。【選択図】図5

Description

本発明は、高分子材料のシミュレーション方法に関し、詳しくは、ビーズでモデル化された分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に精度よく換算することができる高分子材料のシミュレーション方法に関する。
近年、ゴム材料等の高分子材料の反応を、コンピュータを用いて評価するためのシミュレーション方法(数値計算)が種々提案されている。この種のシミュレーション方法では、例えば、高分子鎖を複数のビーズでモデル化した分子鎖モデルが、コンピュータに入力される。そして、分子鎖モデルが予め定められた空間に配置され、コンピュータによる分子動力学計算が行われる。
分子鎖モデルを用いた分子動力学計算では、現実の高分子鎖とは異なる単位系が用いられている。このため、下記特許文献1は、分子鎖モデルの単位系を、高分子鎖の単位系に換算する方法を提案している。
下記特許文献1の換算方法は、先ず、分子鎖モデル及び全原子モデルの理想鎖のパラメータ(Rouseのパラメータ)をそれぞれ求めている。そして、下記特許文献1の換算方法は、分子鎖モデルの理想鎖のパラメータと、全原子モデルの理想鎖のパラメータとが同一となるとみなして、分子鎖モデルの単位系を、高分子鎖の単位系に換算している。
特開2014−206913号公報
上記特許文献1では、長さの単位の換算精度が十分ではなく、さらなる改善の余地があった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ビーズでモデル化された分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に精度よく換算できる高分子材料のシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法であって、前記高分子鎖の全原子モデル又はユナイテッドアトムモデルからなる第1分子鎖モデルを、前記コンピュータに入力する第1モデル設定工程、前記コンピュータが、分子動力学計算に基づいて、前記第1分子鎖モデルの緩和した構造を計算する工程、前記コンピュータが、構造緩和後の前記第1分子鎖モデルの屈曲度合を示す第1パラメータを計算する第1計算工程、前記高分子鎖を複数のビーズで単純化した第2分子鎖モデルを、前記コンピュータに入力する第2モデル設定工程、前記コンピュータが、分子動力学計算に基づいて、前記第2分子鎖モデルの緩和した構造を計算する工程、前記コンピュータが、構造緩和後の前記第2分子鎖モデルの屈曲度合を示す第2パラメータを計算する第2計算工程、前記コンピュータが、前記第1パラメータと前記第2パラメータとに基づいて、前記第2分子鎖モデルのビーズ数と、前記高分子鎖のモノマー数との比を計算する第3計算工程、並びに、前記第2分子鎖モデルの前記ビーズ数と前記高分子鎖の前記モノマー数との比に基づいて、前記第2分子鎖モデルの長さの単位を、前記高分子鎖の長さの単位に換算する工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1モデル設定工程は、前記モノマー数が異なる前記第1分子鎖モデルを設定する工程を含み、前記第1計算工程は、前記モノマー数が異なる前記第1分子鎖モデル毎に、前記第1パラメータを計算する工程を含むのが望ましい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第2モデル設定工程は、前記ビーズ数が異なる前記第2分子鎖モデルを設定する工程を含み、前記第2計算工程は、前記ビーズ数が異なる前記第2分子鎖モデル毎に、前記第2パラメータを計算する工程を含むのが望ましい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータは、下記式(1)で計算されるのが望ましい。
Figure 2018010525
ここで、
Kuhn:Kuhnのセグメント数
L:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの全長
g:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの慣性半径
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータは、下記式(2)で計算されるのが望ましい。
Figure 2018010525
ここで、
Kuhn:Kuhnのセグメント数
L:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの全長
R:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの末端間ベクトルの長さ
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1分子鎖モデルは、前記高分子鎖のモノマーをモデル化したモノマーモデルを、予め定められた前記モノマー数で連結して設定され、前記第1分子鎖モデルの全長Lは、前記各モノマーモデルの長さを平均した平均モノマー長と、前記モノマー数とを乗じることにより求められるのが望ましい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第2分子鎖モデルの全長Lは、隣接する前記ビーズの平衡核間距離と、前記ビーズ数とを乗じることによって求められるのが望ましい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第2計算工程は、前記第2パラメータと前記ビーズ数との第2関係を求める工程を含み、前記第3計算工程は、前記第2関係を、下記式(3)で定義される曲線にフィッティングする工程を含むのが望ましい。
Figure 2018010525

ここで、
kuhn:Kuhnのセグメント数
CG:第2分子鎖モデルのビーズ数
a、b、c:フィッティングパラメータ
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1計算工程は、前記第1パラメータと前記モノマー数との第1関係を求める工程を含み、前記第3計算工程は、下記式(4)に基づいて、前記第1関係を、前記曲線にフィッティングする工程を含むのが望ましい。
Figure 2018010525

ここで、
FA:第1分子鎖モデルのモノマー数
CG:第2分子鎖モデルのビーズ数
d:フィッティングパラメータ
本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、高分子鎖の全原子モデル又はユナイテッドアトムモデルからなる第1分子鎖モデルについて、屈曲度合を示す第1パラメータを求める。また、本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、高分子鎖を複数のビーズで単純化した第2分子鎖モデルについて、屈曲度合を示す第2パラメータを求める。そして、本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、第1パラメータと第2パラメータとに基づいて、第2分子鎖モデルのビーズ数と、高分子鎖のモノマー数との比を計算し、第2分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に換算している。
第1分子鎖モデル及び第2分子鎖モデルは、それらの屈曲度合に応じて、第1分子鎖モデル及び第2分子鎖モデルの慣性半径や、末端間ベクトルの長さ等の空間的な広がりが変化する。このため、第1パラメータ及び第2パラメータを用いることにより、屈曲度合の鎖長依存性を考慮して、同一鎖長で空間的な広がりが同じとなるような、第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比を精度よく求めることができる。
第2分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に換算するには、第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比(1ビーズあたりのモノマー数)に、モノマー1つあたりの長さを乗じ、さらに、ビーズ1つあたりの長さで除することで行うことができる。これにより、第2分子鎖モデルには、第1分子鎖モデルの特定の原子集団を特定のビーズに1対1で対応させた、所謂ユナイテッドアトムモデルを用いなくても、第1分子鎖モデルとの長さの対応が自明でないKremer Grestモデル等の抽象的なバネビーズモデルを用いることができる。
また、本発明の高分子材料のシミュレーション方法では、屈曲度合の鎖長依存性を考慮して、ビーズ数とモノマー数との比を計算しているため、鎖長の短い(即ち、モノマー数が小さい)第1分子鎖モデルを用いることができる。これにより、第1分子鎖モデルの緩和した構造を短時間で得ることができるため、換算に要する時間を短縮することができる。
本発明のシミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。 ポリブタジエンの構造式である。 第1分子鎖モデルの一例を示す概念図である。 第2分子鎖モデルの一例を示す概念図である。 本実施形態のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第1緩和計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第1分子鎖モデルが配置された高分子材料モデルの一例を示す概念図である。 第1分子鎖モデルのポテンシャルを説明する概念図である。 第1計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第1分子鎖モデルの第1パラメータ(Kuhnのセグメント数)とモノマー数との第1関係を示すグラフである。 第2緩和計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第2分子鎖モデルが配置された高分子材料モデルの一例を示す概念図である。 第2分子鎖モデルのポテンシャルを説明する概念図である。 第2計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第2分子鎖モデルの第2パラメータ(Kuhnのセグメント数)とビーズ数との第2関係を示すグラフである。 第1分子鎖モデルの第1パラメータと、第2分子鎖モデルの第2パラメータとをフィッティングしたグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の高分子材料のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある)は、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法である。高分子材料としては、例えば、ゴム、樹脂又はエラストマー等が含まれる。
図1は、本発明のシミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んで構成されている。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。
高分子材料としては、例えば、ゴム、樹脂又はエラストマー等が含まれる。本実施形態では、高分子材料として、cis-1,4ポリブタジエン(以下、単に「ポリブタジエン」ということがある。)が例示される。図2は、ポリブタジエンの構造式である。このポリブタジエンを構成する高分子鎖2は、メチレン基(−CH−)とメチン基(−CH−)とからなるモノマー5{−[CH−CH=CH−CH]−}が、重合度で連結されて構成されている。また、高分子材料の末端には、メチレン基(−CH)に替えて、メチル基(−CH)が連結される。なお、高分子材料には、ポリブタジエン以外の高分子材料が用いられてもよい。
本実施形態のシミュレーション方法では、高分子材料の高分子鎖2をモデル化した第1分子鎖モデル3、及び、第2分子鎖モデル4が用いられる。図3は、第1分子鎖モデル3の一例を示す概念図である。図4は、第2分子鎖モデル4の一例を示す概念図である。
第1分子鎖モデル3は、全原子モデルとして構成される。全原子モデルは、図2に示した高分子鎖2の実際の構造に基づいて、原子をモデル化した粒子モデル7で表現したものである。なお、第1分子鎖モデル3は、ユナイテッドアトムモデル(図示省略)として構成されてもよい。ユナイテッドアトムモデルは、図2に示した高分子鎖2において、炭素原子と、炭素原子に結合した水素原子とを、一つの粒子モデル(図示省略)として扱うものである。このような第1分子鎖モデル3は、第2分子鎖モデル4に比べて、微細な構造や運動を取り扱うことができ、シミュレーション精度を向上しうる。
図4に示されるように、第2分子鎖モデル4は、高分子鎖2を複数のビーズ16で単純化したものである。各ビーズ16は、直径を持った球として表現される。第2分子鎖モデルの一例としては、Kremer-Grestモデルや、DPD(散逸粒子動力学法)に基づくモデル等が採用されうる。本実施形態の第2分子鎖モデルとしては、Kremer-Grestモデルとして構成される。このような第2分子鎖モデル4は、第1分子鎖モデル3に比べて、大きな時空間を扱うことができる利点がある。
第1分子鎖モデル3(図3に示す)を用いた分子動力学計算では、現実の高分子鎖2(図2に示す)に基づいた長さの単位が用いられている。他方、第2分子鎖モデル4(図4に示す)を用いた分子動力学計算では、現実の高分子鎖2とは異なる長さの単位が用いられている。このため、第2分子鎖モデル4の分子動力学計算の計算結果を、実際の高分子鎖2の運動として取り扱うためには、第2分子鎖モデル4の長さの単位を、高分子鎖2の長さの単位に精度よく換算することが重要である。
本実施形態のシミュレーション方法では、第2分子鎖モデル4(図4に示す)を用いたシミュレーションに先立ち、第2分子鎖モデル4の長さの単位を、高分子鎖2(図2に示す)の長さの単位に換算している。図5は、本実施形態のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、第1分子鎖モデル3を、コンピュータ1に入力する(第1モデル設定工程S1)。図3に示されるように、第1分子鎖モデル3は、複数の粒子モデル7と、粒子モデル7、7間を結合するボンド8とを含んで構成されている。
粒子モデル7及びボンド8は、図2に示した高分子鎖2のモノマー5を表す単位構造に基づいて連結されることにより、モノマーモデル11が設定される。このモノマーモデル11が、予め定められたモノマー数(即ち、分子量(重合度))に基づいて連結されることにより、第1分子鎖モデル3が設定される。
粒子モデル7は、後述の分子動力学計算に基づいたシミュレーションにおいて、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、粒子モデル7には、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。本実施形態の粒子モデル7は、高分子鎖2の炭素原子をモデル化した炭素粒子モデル7C、及び、高分子鎖2の水素原子をモデル化した水素粒子モデル7Hを含んでいる。
ボンド8は、粒子モデル7、7間を拘束するものである。本実施形態のボンド8は、炭素粒子モデル7C、7Cを連結する主鎖8A、及び、炭素粒子モデル7Cと水素粒子モデル7Hとの間を連結する側鎖8Bとを含んでいる。これらの主鎖8A及び側鎖8Bは、例えば、平衡長とバネ定数とが定義されたバネとして取り扱われる。
第1分子鎖モデル3は、各粒子モデル7、7間の結合長さである結合長、ボンド8を介して連続する3つの粒子モデル7がなす角度である結合角、及び、ボンド8を介して連続する4つの粒子モデル7において、隣り合う3つの粒子モデル7が作る二面角などが定義される。これにより、第1分子鎖モデル3は、三次元構造を有する。第1分子鎖モデル3は、慣例に従い、外力又は内力を受けることによって、結合長、結合角及び二面角が変化する。これにより、第1分子鎖モデル3は、その三次元構造を変化させることができる。
結合長、結合角及び二面角は、例えば、論文1(J. Comput. Chem. 25, 1157-1174 (2004))に基づいて設定されるポテンシャル(GAFF)によって定義されうる。ポテンシャルは、高分子鎖2の構造に応じて設定されるのが望ましい。このような第1分子鎖モデル3は、材料物性シミュレーションソフトウェア(例えば、(株)JSOL社製のJ−OCTA)を用いて作成することができる。
モノマー数については、高分子材料の種類や、後述の分子動力学計算を実施するコンピュータ1の性能等に基づいて、緩和計算が現実的な計算時間で完了しうる範囲内で設定されるのが望ましい。なお、モノマー数は、計算精度を維持するために、極端に小さい値を除外するのが望ましい。モノマー数の一例としては、10〜60から選択されうる。なお、このようなモノマー数に限定されるわけではない。
本実施形態の第1モデル設定工程S1は、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3が設定される。即ち、第1モデル設定工程S1では、複数のモノマー数に基づいて、モノマーモデル11がそれぞれ連結される。これにより、モノマー数が異なる複数の第1分子鎖モデル3が設定される。また、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3の種類については、適宜設定されうる。モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3は、例えば、2〜8種類程度設定されるのが望ましい。本実施形態では、モノマー数が20、30及び40に設定された3種類の第1分子鎖モデル3が設定されている。これらの第1分子鎖モデル3は、コンピュータ1で取り扱い可能な数値データであり、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータが、分子動力学計算に基づいて、第1分子鎖モデルの緩和した構造を計算する(第1緩和計算工程S2)。図6は、第1緩和計算工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第1緩和計算工程S2では、先ず、コンピュータ1が、モノマー数が異なる各第1分子鎖モデル3の初期配置を決定する(工程S21)。工程S21では、予め定められた空間に、第1分子鎖モデル3が配置された高分子材料モデルが設定される。図7は、第1分子鎖モデル3が配置された高分子材料モデル10の一例を示す概念図である。
本実施形態の工程S21では、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3が、独立して設けられた空間(セル)9にそれぞれ配置される。これにより、工程S21では、各第1分子鎖モデル3の初期配置が決定された高分子材料モデル10がそれぞれ定義される。各高分子材料モデル10には、同一のモノマー数の第1分子鎖モデル3が複数本配置されている。第1分子鎖モデル3は、モンテカルロ法に基づいて、空間9内に配置されるのが望ましい。
空間9は、解析対象の高分子材料の微小構造部分に相当する。本実施形態の空間9は、互いに向き合う三対の平面9S、9Sを有する立方体として定義されている。各平面9Sには、周期境界条件が定義されている。これにより、空間9では、例えば、一方の平面9Saから出て行った第1分子鎖モデル3の一部が、反対側の平面9Sbから入ってくるように計算することができる。従って、一方の平面9Saと、反対側の平面9Sbとが連続している(繋がっている)ものとして取り扱うことができる。
各空間9に配置される第1分子鎖モデル3の本数については、モノマー数や、空間9の大きさに基づいて適宜設定される。なお、第1分子鎖モデル3の本数が少ないと、後述の分子動力学計算において、一方の平面9Saから出て行きかつ反対側の平面9Sbから入ってきた第1分子鎖モデル3の一端と、平面9Sb側に配置されている第1分子鎖モデル3の他端とが絡まりやすくなり、計算落ちするおそれがある。さらに、第1分子鎖モデル3の慣性半径を精度良く計算するためには、平衡時において第1分子鎖モデル3同士の絡まりを可能な限り防ぐ必要がある。このため、第1分子鎖モデル3の本数としては、平衡時の周期境界長が平衡時の慣性半径の3倍以上に長くなりうる本数、本実施形態では、20本以上に設定されるのが望ましい。
逆に、第1分子鎖モデル3の本数が多くても、運動方程式の質点として取り扱われる粒子モデル7の粒子数が増大し、多くの計算時間を要するおそれがある。このような観点より、空間9に配置される第1分子鎖モデル3の本数は、200本以下に設定されるのが望ましい。
空間9の一辺の長さLaは、適宜設定することができる。本実施形態の長さLaは、系内の粒子モデル7の初期密度が、例えば0.001g/cm3となるように設定されるのが望ましい。また、空間9の大きさは、例えば1atmで安定な体積に設定されるのが望ましい。このような空間9では、後述の分子動力学計算において、第1分子鎖モデル3の回転運動をスムーズに計算することができる。
図8は、第1分子鎖モデル3のポテンシャルを説明する概念図である。工程S21では、第1分子鎖モデル3の初期配置が決定された各高分子材料モデル10(即ち、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3がそれぞれ配置された高分子材料モデル10)において、隣接する第1分子鎖モデル3、3の粒子モデル7、7間に、相互作用ポテンシャルP1が定義される。本実施形態の相互作用ポテンシャルP1は、LJポテンシャルULJ(rij)であり、下記式(5)で定義される。
Figure 2018010525

ここで、各定数及び変数は、Lennard-Jones ポテンシャルのパラメータであり、次のとおりである。
ij:粒子モデル間の距離
c:カットオフ距離
ε:粒子モデル間に定義されるLJポテンシャルの強度
σ:粒子モデルの直径に相当
なお、距離rij及びカットオフ距離rcは、各粒子モデル7、7の中心間の距離として定義される。
相互作用ポテンシャルP1は、粒子モデル間の距離rijがσよりも小さくなるほど、粒子モデル7、7間に作用する斥力が大きくなる。また、相互作用ポテンシャルP1は、粒子モデル間の距離rijがσになるときに最小となり、粒子モデル7、7間に斥力や引力は働かない。さらに、相互作用ポテンシャルP1は、粒子モデル間の距離rijがσよりも大になるほど、粒子モデル7、7間に作用する引力が働く。このように、相互作用ポテンシャルP1は、粒子モデル間の距離rijに応じて、斥力及び引力を定義することができる。
相互作用ポテンシャルP1は、炭素粒子モデル7C、7C間に設定される第1ポテンシャルP1a、水素粒子モデル7H、7H間に設定される第2ポテンシャルP1b、及び、炭素粒子モデル7Cと水素粒子モデル7Hとの間に設定される第3ポテンシャルP1cを含んでいる。なお、上記式(2)中の各定数は、上記論文1に基づいて、適宜設定することができる。これらの第1分子鎖モデル3の初期配置が決定された高分子材料モデル10は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1緩和計算工程S2では、コンピュータ1が、初期配置された第1分子鎖モデル3の緩和状態を計算する(工程S22)。工程S22では、第1分子鎖モデル3の初期配置が決定された各高分子材料モデル10(図7に示す)について、分子動力学計算が実施される。分子動力学計算は、例えば、空間9について所定の時間、配置した全ての第1分子鎖モデル3が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻での全ての粒子モデル7の動きが追跡され、コンピュータ1に記憶される。また、分子動力学計算の条件は、例えば、系内の粒子モデル7の個数、体積及び温度は一定で行われる。このような分子動力学計算は、例えば、分子動力学計算プログラムLAMMPSを用いて行うことができる。
次に、本実施形態の第1緩和計算工程S2では、コンピュータ1が、第1分子鎖モデル3の初期配置を十分に緩和できたか否かを判断する(工程S23)。なお、初期配置の緩和の判断基準については、第1分子鎖モデル3の人為的な初期配置が十分に排除されたとみなせる基準であれば、適宜設定されうる。
工程S23において、第1分子鎖モデル3の初期配置を十分に緩和できたと判断された場合(工程S23で、「Y」)、次の工程S24が実施される。他方、第1分子鎖モデル3の初期配置を十分に緩和できていないと判断された場合(工程S23で、「N」)は、単位時間(例えば、工程S22で実施済みのシミュレーション時間程度まとめて)を進めて(工程S25)、工程S22(分子動力学計算)及び工程S23が再度実施される。これにより、第1分子鎖モデル3の初期配置を、確実に緩和することができる。
次に、本実施形態の第1緩和計算工程S2では、コンピュータ1が、全ての第1分子鎖モデル(本実施形態では、モノマー数が異なる3種類の第1分子鎖モデル)3の緩和状態が計算されたか否かを判断する(工程S24)。工程S24において、全ての第1分子鎖モデル3の緩和計算が計算されたと判断された場合(工程S24で、「Y」)、第1緩和計算工程S2の一連の処理が終了し、次の第1計算工程S3(図5に示す)が実施される。他方、全ての第1分子鎖モデル3の緩和計算が終了していないと判断された場合(工程S24で、「N」)、緩和状態が計算されていない他の第1分子鎖モデル3(即ち、図7に示した高分子材料モデル10)が選択され(工程S26)、工程S22〜工程S24が実施される。これにより、第1緩和計算工程S2では、モノマー数が異なる全ての第1分子鎖モデル3の平衡状態(緩和状態)が計算される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法は、コンピュータ1が、構造緩和後の第1分子鎖モデル3の屈曲度合を示す第1パラメータを計算する(第1計算工程S3)。本実施形態の第1パラメータは、Kuhnのセグメント数NKuhnであり、下記式(1)又は下記式(2)で計算される。
Figure 2018010525
ここで、
Kuhn:Kuhnのセグメント数
L:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの全長
g:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの慣性半径
Figure 2018010525

ここで、
Kuhn:Kuhnのセグメント数
L:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの全長
R:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの末端間ベクトルの長さ
Kuhnのセグメント数NKuhnは、高分子物理で知られている理想鎖のパラメータの一つである。上記式(1)又は上記式(2)において、Kuhnのセグメント数の値が大きいほど、第1分子鎖モデル3(図3に示す)及び第2分子鎖モデル4(図4に示す)は、コンパクトに折り畳んだ形状となる。他方、Kuhnのセグメント数の値が小さいほど、第1分子鎖モデル3及び第2分子鎖モデル4の折れ曲がりが小さくなり、直線状に連続してのびる形状となる。従って、Kuhnのセグメント数は、第1分子鎖モデル3の屈曲度合を示す第1パラメータ、又は、後述の第2分子鎖モデル4の屈曲度合を示す第2パラメータとして用いられる。第1分子鎖モデル3及び第2分子鎖モデル4は、それらの屈曲度合に応じて、第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの慣性半径Rgや全長Lが変化する。
上記式(1)では、例えば、第1分子鎖モデル3の末端間ベクトルV1(図3に示す)の長さのアンサンブル平均を用いる上記式(2)や上記特許文献1とは異なり、慣性半径Rgを用いて、Kuhnのセグメント数が求められる。これにより、上記式(1)は、第1分子鎖モデル3の末端側の粒子モデル7の高い運動性の影響を小さくできるため、Kuhnのセグメント数を精度よく求めることができる。本実施形態では、第1パラメータ及び第2パラメータが、上記式(1)を用いて求められる態様について説明する。
本実施形態の第1計算工程S3は、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3毎に、第1パラメータを計算している。図9は、第1計算工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第1計算工程S3では、先ず、コンピュータ1が、第1分子鎖モデル3の全長L(図示省略)を計算する(工程S31)。本実施形態の工程S31では、先ず、各モノマーモデル11の長さLa(図3に示す)を平均した平均モノマー長が求められる。長さLaは、隣接するモノマーモデル11の共有結合の中点12、12間の距離である。また、平均モノマー長は、第1分子鎖モデル3の末端に配置されたモノマーモデル11、11を除いたモノマーモデル11の長さLaの平均値である。そして、工程31では、平均モノマー長と、モノマー数とを乗じることにより、第1分子鎖モデル3の全長Lが求められる。このような計算方法により、例えば、第1分子鎖モデル3を主鎖方向に強制的に引き伸ばす変形計算が実施されていた上記特許文献1の計算方法に比べて、作業効率を高めつつ、計算コストを大幅に低減しうる。また、複数の第1分子鎖モデル3の全長Lを容易に求めることができるため、複数の第1分子鎖モデル3の全長Lをさらに平均することで、統計誤差を減らすこともできる。第1分子鎖モデル3の全長Lは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S3では、コンピュータ1が、第1分子鎖モデル3の慣性半径Rg(図示省略)を計算する(工程S32)。第1分子鎖モデル3の慣性半径Rgは、例えば、論文2( Kurt Kremer & Gary S. Grest 著 「Dynamics of entangled linear polymer melts: A molecular-dynamics simulation」、J. Chem Phys. vol.92, No.8, 15 April 1990 )に記載されている式2.5に基づいて、工程S22の分子動力学計算で求められた第1分子鎖モデル3の粒子モデル7の座標値から計算される。第1分子鎖モデル3の慣性半径Rgは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S3では、コンピュータ1が、第1パラメータを計算する(工程S33)。上述したように、第1パラメータ(即ち、第1分子鎖モデル3のKuhnのセグメント数)は、上記式(1)を用いて、第1分子鎖モデル3の全長L(図示省略)、及び、第1分子鎖モデル3の慣性半径Rg(図示省略)から計算される。第1パラメータは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S3では、コンピュータ1が、モノマー数が異なる全ての第1分子鎖モデル(本実施形態では、モノマー数が異なる3種類の第1分子鎖モデル)3について、第1パラメータ(即ち、Kuhnのセグメント数)が計算されたか否かを判断する(工程S34)。工程S34において、全ての第1分子鎖モデル3の第1パラメータが計算されたと判断された場合(工程S34において、「Y」)、第1計算工程S3の一連の処理が終了し、次の第2モデル設定工程S4が実施される。他方、全ての第1分子鎖モデル3の第1パラメータが計算されていないと判断された場合(工程S34において、「N」)、第1パラメータが計算されていない他の第1分子鎖モデル3が選択され(工程S35)、工程S31〜S34が実施される。これにより、第1計算工程S3では、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3毎に、第1パラメータが計算される。そして、第1計算工程S3では、第1パラメータとモノマー数との第1関係が求められる。
図10は、第1分子鎖モデル3の第1パラメータ(Kuhnのセグメント数)とモノマー数との第1関係を示すグラフである。本実施形態の第1関係は、第1パラメータ(Kuhnのセグメント数)とモノマー数との比Nkuhn/NFAと、モノマー数NFAとの関係が示されている。図10の例では、モノマー数が20、30及び40の第1分子鎖モデル3の第1パラメータが示されている。
次に、本実施形態のシミュレーション方法は、第2分子鎖モデル4を、コンピュータ1に入力する(第2モデル設定工程S4)。図4に示されるように、第2分子鎖モデル4は、複数のビーズ16と、ビーズ16、16間を結合する結合鎖17とを含んで構成されている。本実施形態では、予め定められたビーズ数に基づいて、ビーズ16が連結されることにより、第2分子鎖モデル4が設定される。
ビーズ16は、分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、ビーズ16には、質量、直径、電荷又は初期座標などのパラメータが定義される。これらの各パラメータは、数値情報としてコンピュータ1に記憶される。
結合鎖17は、ビーズ16、16間に平衡長を定義した結合ポテンシャルとして構成される。ここで、「平衡長」とは、ビーズ16、16間の結合距離である。この結合距離が変化した場合は、結合鎖17によって、元の平衡長が保持される。これにより、第2分子鎖モデル4は、直鎖状の三次元構造を維持することができる。なお、平衡長は、隣り合うビーズ16、16の中心16a、16a間の距離として定義される。また、結合鎖17の結合ポテンシャルには、例えば、上記論文2に基づいて設定されるのが望ましい。
ビーズ数については、高分子材料の種類や、後述の分子動力学計算を実施するコンピュータ1の性能等に基づいて、適宜設定することができる。ビーズ数は、例えば、5〜1000から選択されるのが望ましい。なお、このようなビーズ数に限定されるわけではない。
本実施形態の第2モデル設定工程S4は、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル4が設定される。即ち、第2モデル設定工程S4は、複数のビーズ数に基づいて、ビーズ16が連結されることにより、ビーズ数が異なる複数の第2分子鎖モデル4が設定される。また、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル4の種類については、適宜設定されうる。ビーズ数が異なる複数の第2分子鎖モデル4は、例えば、5〜15種類程度が設定されるのが望ましい。本実施形態では、ビーズ数が10、13、20、27、50、80、100、200及び500に設定された9種類の第2分子鎖モデル4が設定されている。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、第1分子鎖モデル3のモノマー数(本実施形態では、20、30及び40)と、第2分子鎖モデルのビーズ数(本実施形態では、10、13、20、27、50、80、100、200及び500)とが、1対1で対応していない(即ち、モノマー数とビーズ数とが同一でない)。さらに、本実施形態の第2モデル設定工程S4は、第1分子鎖モデル3のモノマー数よりも大きいビーズ数に設定された鎖長の大きい第2分子鎖モデル4を含んでいる。これらの第2分子鎖モデル4は、高分子材料を分子動力学計算で取り扱うための数値データであり、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法は、コンピュータ1が、分子動力学計算に基づいて、第2分子鎖モデル4の緩和した構造を計算する(第2緩和計算工程S5)。図11は、第2緩和計算工程S5の処理手順の一例を示すフローチャートである。
第2緩和計算工程S5は、先ず、コンピュータ1が、ビーズ数が異なる各第2分子鎖モデル4の初期配置を決定する(工程S51)。工程S51では、予め定められた空間(セル)に、第2分子鎖モデル4が配置された高分子材料モデルが設定される。図12は、第2分子鎖モデル4が配置された高分子材料モデル18の一例を示す概念図である。
本実施形態の工程S51では、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル4が、独立して設けられた空間9にそれぞれ配置される。これにより、工程S51では、各第2分子鎖モデル4の初期配置が決定された高分子材料モデル18がそれぞれ定義される。各高分子材料モデル18には、同一のビーズ数の第2分子鎖モデル4が複数本配置されている。第2分子鎖モデル4は、モンテカルロ法に基づいて、空間9内に配置されるのが望ましい。
空間9は、解析対象の高分子材料の微小構造部分に相当し、図8に示した空間9と同様に設定される。各空間9に配置される第2分子鎖モデル4の本数については、ビーズ数や、空間9の大きさに基づいて適宜設定される。なお、第2分子鎖モデル4の本数が少ないと、第1分子鎖モデル3(図7に示す)と同様に、第2分子鎖モデル4の一端と他端とが絡まりやすくなり、計算落ちするおそれがある。さらに、第2分子鎖モデル4の慣性半径を精度良く計算するためには、平衡時において第2分子鎖モデル4同士の絡まりを可能な限り防ぐ必要がある。このため、第2分子鎖モデル4の本数としては、平衡時の周期境界長が平衡時の慣性半径の3倍以上に長くなりうる本数が選択されるのが望ましい。逆に、第2分子鎖モデル4の本数が多くても、運動方程式の質点として取り扱われるビーズ16の粒子数が増大し、多くの計算時間を要するおそれがある。このような観点より、空間9に配置される第2分子鎖モデル4の本数は、好ましくは50本以上であり、また、好ましくは2000本以下である。
図13は、第2分子鎖モデル4のポテンシャルを説明する概念図である。工程S51では、各高分子材料モデル18において、隣接する第2分子鎖モデル4、4のビーズ16、16間に、相互作用ポテンシャルP2がそれぞれ定義される。本実施形態の相互作用ポテンシャルP2は、LJ(Lennard-Jones)ポテンシャルであり、上記式(2)で定義される。なお、上記式(3)において、「粒子モデル間」は、「ビーズ間」に置き換えて適用される。
相互作用ポテンシャルP2の強度ε、相互作用ポテンシャルP2が作用する距離σ、及び、カットオフ距離rcは、例えば、上記論文1に基づいて設定されるのが望ましい。これらの第2分子鎖モデル4の初期配置が決定された高分子材料モデル18は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2緩和計算工程S5は、コンピュータ1が、初期配置された第2分子鎖モデル4の緩和状態を計算する(工程S52)。工程S52では、図12に示した空間9に初期配置された第2分子鎖モデル4について、分子動力学計算が実施される。分子動力学計算では、例えば、空間9について所定の時間、配置した全ての第2分子鎖モデル4が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻での全てのビーズ16の動きが追跡され、コンピュータ1に記憶される。また、分子動力学計算の条件は、例えば、系内のビーズ16の個数、体積及び温度は一定で行われる。
次に、本実施形態の第2緩和計算工程S5では、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4の初期配置を十分に緩和できたか否かを判断する(工程S53)。なお、初期配置の緩和の判断基準については、第2分子鎖モデル4の人為的な初期配置が十分に排除されたとみなせる基準であれば、適宜設定されうる。

工程S53において、第2分子鎖モデル4の初期配置を十分に緩和できたと判断された場合(工程S53で、「Y」)、次の工程S54が実施される。他方、第2分子鎖モデル4の初期配置を十分に緩和できていないと判断された場合(工程S53で、「N」)、単位時間を(例えば、工程S52で実施済みのシミュレーション時間程度まとめて)進めて(工程S55)、工程S52(分子動力学計算)及び工程S53が再度実施される。これにより、第2分子鎖モデル4の初期配置を、確実に緩和することができる。
次に、本実施形態の第2緩和計算工程S5では、コンピュータ1が、全ての第2分子鎖モデル(本実施形態では、ビーズ数が異なる9種類の第2分子鎖モデル)4の緩和状態が計算されたか否かを判断する(工程S54)。工程S54において、全ての第2分子鎖モデル4の緩和状態が計算されたと判断された場合(工程S54で、「Y」)、第2緩和計算工程S5の一連の処理が終了し、次の第2計算工程S6が実施される。他方、全ての第2分子鎖モデル4の緩和状態が計算されていないと判断された場合(工程S54で、「N」)、緩和状態が計算されていない他の第2分子鎖モデル4(即ち、図12に示した高分子材料モデル18)が選択され(工程S56)、工程S52〜工程S54が実施される。これにより、ビーズ数が異なる全ての第2分子鎖モデル4の平衡状態(緩和状態)が計算される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法は、コンピュータ1が、構造緩和後の第2分子鎖モデル4の屈曲度合を示す第2パラメータを計算する(第2計算工程S6)。本実施形態の第2パラメータは、上記式(1)又は上記式(2)で計算されるKuhnのセグメント数NKuhnである。本実施形態の第2計算工程S6は、上記式(1)を用いて、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル4毎に、第2パラメータを計算している。図14は、第2計算工程S6の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第2計算工程S6では、先ず、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4の全長L(図示省略)を計算する(工程S61)。第2分子鎖モデル4の全長Lは、第2分子鎖モデル4内の隣接するビーズ16、16の平衡核間距離と、ビーズ数とを乗じることによって求めることができる。なお、平衡核間距離は、振動の中心となるビーズ16、16間の距離であり、上記の分子動力学計算の結果に基づいて求められる。第2分子鎖モデル4の全長Lは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S6では、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4の慣性半径Rg(図示省略)を計算する(工程S62)。第2分子鎖モデル4の慣性半径Rgは、例えば、上記論文2に記載されている式2.5に基づいて、工程S52の分子動力学計算で求められた第2分子鎖モデル4のビーズ16の座標値から計算される。第2分子鎖モデル4の慣性半径Rgは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S6では、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4の第2パラメータを計算する(工程S63)。上述したように、第2パラメータ(即ち、第2分子鎖モデル4のKuhnのセグメント数)は、上記式(1)を用いて、第2分子鎖モデル4の全長L(図示省略)、及び、第2分子鎖モデル4の慣性半径Rg(図示省略)から計算される。第2パラメータは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S6では、コンピュータ1が、ビーズ数が異なる全ての第2分子鎖モデル(本実施形態では、ビーズ数が異なる9種類の第2分子鎖モデル)4について、第2パラメータが計算されたか否かを判断する(工程S64)。工程S64において、全ての第2分子鎖モデル4の第2パラメータが計算されたと判断された場合(工程S64において、「Y」)、第2計算工程S6の一連の処理が終了し、次の第3計算工程S7が実施される。他方、全ての第2分子鎖モデル4の第2パラメータが計算されていないと判断された場合(工程S64において、「N」)、第2パラメータが計算されていない他の第2分子鎖モデル4が選択され(工程S65)、工程S61〜S64が実施される。これにより、第2計算工程S6では、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル4毎に、第2パラメータが計算される。そして、第2計算工程S6では、第2パラメータとビーズ数との第2関係が求められる。
図15は、第2分子鎖モデル4の第2パラメータ(Kuhnのセグメント数)とビーズ数との第2関係を示すグラフである。本実施形態の第2関係は、第2パラメータ(Kuhnのセグメント数)とビーズ数との比Nkuhn/NCGと、ビーズ数NCGとの関係が示されている。図15の例では、ビーズ数(鎖長)が10、13、20、27、50、80、100、200及び500の第2分子鎖モデル4のKuhnのセグメント数が示されている。
次に、本実施形態のシミュレーション方法は、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4(図2に示す)のビーズ数と、高分子鎖2(図2に示す)のモノマー数との比を計算する(第3計算工程S7)。第3計算工程S7では、第1分子鎖モデル3(図3に示す)の第1パラメータと、第2分子鎖モデル4(図4に示す)の第2パラメータとに基づいて、第2分子鎖モデル4の1個のビーズ16あたりの高分子鎖2のモノマー数を求めている。
第3計算工程S7では、先ず、統計誤差を考慮した非線形最小二乗法に基づいて、図10に示した第1分子鎖モデル3の第1パラメータとモノマー数との第1関係と、図15に示した第2分子鎖モデル4の第2パラメータとビーズ数との第2関係とがフィッティングされる。図16は、第1分子鎖モデル3の第1パラメータと、第2分子鎖モデル4の第2パラメータとをフィッティングしたグラフである。
第3計算工程S7では、第2分子鎖モデル4の第2パラメータとビーズ数との第2関係が、図16に示した滑らかな曲線20(破線で示している)でフィッティングされる。曲線は、下記式(3)で定義される。このような曲線20は、3つのフィッティングパラメータa、b、cが用いられるため、末端の運動性が高い影響を考慮して、第2関係に精度よくフィッティングすることができる。
Figure 2018010525

ここで、
kuhn:Kuhnのセグメント数
CG:第2分子鎖モデルのビーズ数
a、b、c:フィッティングパラメータ
次に、第3計算工程S7では、下記式(4)に基づいて、第1パラメータとモノマー数との第1関係が、曲線20にフィッティングされる。下記式(4)では、単独のフィッティングパラメータdが用いられるため、第2分子鎖モデル4に比べて統計誤差の大きい第1分子鎖モデル3の第1関係を、曲線20に精度よくフィッティングすることができる。
Figure 2018010525

ここで、
FA:第1分子鎖モデルのモノマー数
CG:第2分子鎖モデルのビーズ数
d:フィッティングパラメータ
フィッティングの計算方法としては、例えば、論文3(K. Levenberg, Quarterly of Applied Mathematics 2, 164-168 (1944), D. Marquardt, SIAM Journal on Applied Mathematics 11(2), 431-441 (1963))に記載のレーベンバーグ・マーカート法(Levenberg-Marquardt Method)を用いることができる。このレーベンバーグ・マーカート法を用いたフィッティングは、例えば、グラフ作成ソフトウェア(例えば、gnuplot)により、容易に行うことができる。
フィッティングに用いる統計誤差としては、第1分子鎖モデル3の慣性半径の統計誤差、及び、第2分子鎖モデル4の慣性半径の統計誤差が計算される。第1分子鎖モデル3の慣性半径の統計誤差は、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル3毎に、分子鎖毎の慣性半径の時間平均についての分散を、空間9に配置された第1分子鎖モデル3の本数で除した値を求め、その値の平方根から求めることができる。また、第2分子鎖モデル4の慣性半径の統計誤差は、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル4毎に、分子鎖毎の慣性半径の時間平均についての分散を、空間9に配置された第2分子鎖モデル4の本数で除した値を求め、その値の平方根から求めることができる。
第3計算工程S7では、図16に示したグラフに基づいて、第2分子鎖モデル4(図4に示す)のビーズ数と、高分子鎖2(図2に示す)のモノマー数との比が計算される。なお、図16に示したグラフの例において、第2分子鎖モデル4のビーズ数と、高分子鎖2のモノマー数との比(即ち、1個のビーズ16あたりのモノマー数)は、1.5である。このような第2分子鎖モデル4のビーズ数と、高分子鎖2のモノマー数との比は、コンピュータ1に入力される。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、第1分子鎖モデル3(図3に示す)の第1パラメータ(Kuhnのセグメント数)と、第2分子鎖モデル4の第2パラメータ(Kuhnのセグメント数)とをフィッティングさせることにより、屈曲度合の鎖長依存性を考慮して、同一鎖長で空間的な広がりが同じとなるような、第2分子鎖モデル4のビーズ数と、高分子鎖2のモノマー数との比を精度よく計算することができる。
また、本実施形態では、第1分子鎖モデル3の第1パラメータ、及び、第2分子鎖モデル4の第2パラメータがそれぞれ複数求められているため、精度良くフィッティングすることができる。なお、第1分子鎖モデル3の第1パラメータ、及び、第2分子鎖モデル4の第2パラメータを確実にフィッティングさせるために、第1分子鎖モデル3のモノマー数が設定される範囲と、第2分子鎖モデル4のビーズ数が設定される範囲とが重複しているのが望ましい。
本実施形態では、上記フィッティングにより、第1分子鎖モデル3のモノマー数(本実施形態では、20、30及び40)と、第2分子鎖モデル4のビーズ数(本実施形態では、10、13、20、27、50、80、100、200及び500)とが1対1で対応していなくても、鎖長依存性を考慮したフィッティング(内挿及び外挿)により、屈曲度合の鎖長依存性を考慮して、第1分子鎖モデル3と第2分子鎖モデル4とを対応付けることができる。これにより、第2分子鎖モデル4のビーズ数に比べて、モノマー数が小さい(即ち、鎖長の短い)第1分子鎖モデルを用いて内挿及び外挿することができるため、換算に要する時間を短縮することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4のビーズ数と高分子鎖2のモノマー数との比に基づいて、第2分子鎖モデル4の長さの単位を、高分子鎖2の長さの単位に換算する(工程S8)。第2分子鎖モデル4の長さの単位は、σ(シグマ)である。高分子鎖2の長さの単位は、m(メートル)である。
上述したように、本実施形態において、第2分子鎖モデル4のビーズ数と高分子鎖2のモノマー数との比は、1個のビーズ16あたりのモノマー数である。従って、工程S8では、第2分子鎖モデル4のビーズ数と高分子鎖2のモノマー数との比(1つのビーズ16あたりのモノマー数)に、高分子鎖2のモノマー1つあたりの長さ(即ち、第1分子鎖モデル3の全長L/モノマー数)を乗じ、さらに、第2分子鎖モデル4のビーズ1つあたりの長さ(第2分子鎖モデル4の全長L/ビーズ数)で除することで、第2分子鎖モデル4の長さの単位を、高分子鎖2の長さの単位に換算できる。
本実施形態において、第2分子鎖モデル4のビーズ数と、高分子鎖2のモノマー数との比(即ち、1個のビーズ16あたりのモノマー数)が、例えば1.5であるとする。第2分子鎖モデル4のビーズ1つあたりの長さが0.96σであり、高分子鎖2(第1分子鎖モデル3)のモノマー1つあたりの長さが4.1×10−10mであるとする。この場合、第2分子鎖モデル4のビーズ数と高分子鎖2のモノマー数との比(1.5)に、高分子鎖2のモノマー1つあたりの長さ(4.1×10−10m)を乗じ、さらに、第2分子鎖モデル4のビーズ1つあたりの長さ(0.96σ)で除する。これにより、第2分子鎖モデル4の長さ(1σ)を、高分子鎖2の長さ6.4×10−10mに換算することができる。
本実施形態では、第2分子鎖モデル4のビーズ数と、高分子鎖2のモノマー数との比を用いることにより、ユナイテッドアトムモデルよりも粗視化されたKremer Grestモデル等のバネビーズモデルの長さの単位を、高分子鎖2(全原子モデル)の長さの単位に精度よく換算できる。これにより、第2分子鎖モデル4を用いたシミュレーション結果を、高分子鎖2の実空間に対応付けることができるため、第1分子鎖モデル3を用いたシミュレーションに比べて、よりマクロな物性の定量的予測が可能となる。
次に、図5に示されるように、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、第2分子鎖モデル4を用いた様々な条件のシミュレーションを実施する(工程S9)。工程S9のシミュレーションの一例としては、例えば、緩和状態の高分子材料モデル(図示省略)を用いた変形計算等を含んでいる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、高分子材料モデル(図示省略)を用いたシミュレーション結果が良好である(即ち、所望の性能を有する)か否かを判断する(工程S10)。工程S10では、工程S8での換算結果に基づいて、工程S9のシミュレーション結果から高分子鎖の物性等が評価される。
工程S10において、シミュレーション結果が良好であると判断された場合(工程S10で、「Y」)、シミュレーションされた高分子材料モデル(図示省略)に基づいて、高分子材料が製造される(工程S11)。他方、シミュレーション結果が良好でないと判断された場合(工程S10で、「N」)、高分子鎖2(図2に示す)の構造や条件等を変更して(工程S12)、工程S1〜工程S10が再度実施される。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、所望の性能を有する未知の高分子材料を開発することができる。しかも、本実施形態のシミュレーション方法は、工程S9において、第1分子鎖モデル3(図3に示す)を用いたシミュレーションを行わなくても、第2分子鎖モデル4(図4に示す)を用いたシミュレーションにより、高い精度のシミュレーション結果を得ることができるため、高分子材料の開発コストを低減することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図5に示した処理手順に従って、高分子鎖(cis-1.4ポリブタジエン)をモデル化した第1分子鎖モデル(図3に示す)及び第2分子鎖モデル(図4に示す)が設定された。そして、第1分子鎖モデルの第1パラメータと、第2分子鎖モデルの第2パラメータとに基づいて、第2分子鎖モデルのビーズ数と、高分子鎖のモノマー数との比が計算された。そして、第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比に基づいて、第2分子鎖モデルの長さの単位が、高分子鎖の長さの単位に換算された(実施例)。
実施例において、第1パラメータは、モノマー数が異なる第1分子鎖モデル毎に計算された。図10は、第1分子鎖モデルの第1パラメータ(Kuhnのセグメント数)とモノマー数との第1関係を示すグラフである。なお、分子動力学計算において、空間の初期密度が0.001g/cm3に設定され、温度が360Kに設定され、圧力が1atmに設定された。また、各全原子モデルのモノマー数(鎖長)、及び、空間に配置された全原子モデルの本数等については、次のとおりである。
第1分子鎖モデル(1):
モノマー数:20、空間内の本数:150本、緩和時間:100ns
第1分子鎖モデル(2):
モノマー数:30、空間内の本数:75本、緩和時間:50ns
第1分子鎖モデル(3):
モノマー数:40、空間内の本数:75本、緩和時間:100ns
実施例において、第2パラメータは、ビーズ数が異なる第2分子鎖モデル毎に計算された。図15は、第2分子鎖モデルの第2パラメータ(Kuhnのセグメント数)とビーズ数との第2関係を示すグラフである。各粗視化モデルのビーズ数(鎖長)、及び、空間に配置された粗視化モデルの本数等については、次のとおりである。
第2分子鎖モデル(1):
ビーズ数:10、空間内の本数:1000本、緩和時間:15000τ
第2分子鎖モデル(2):
ビーズ数:13、空間内の本数:1000本、緩和時間:15000τ
第2分子鎖モデル(3):
ビーズ数:20、空間内の本数:1000本、緩和時間:15000τ
第2分子鎖モデル(4):
ビーズ数:27、空間内の本数:1000本、緩和時間:15000τ
第2分子鎖モデル(5):
ビーズ数:50、空間内の本数:200本、緩和時間:1500000τ
第2分子鎖モデル(6):
ビーズ数:80、空間内の本数:100本、緩和時間:3000000τ
第2分子鎖モデル(7):
ビーズ数:100、空間内の本数:100本、緩和時間:3000000τ
第2分子鎖モデル(8):
ビーズ数:200、空間内の本数:100本、緩和時間:4500000τ
第2分子鎖モデル(9):
ビーズ数:500、空間内の本数:150本、緩和時間:3000000τ
実施例において、第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比(即ち、1個のビーズあたりのモノマー数)は、図10の第1関係を示すグラフと、図15の第2関係を示すグラフとを、上記式(3)及び上記式(4)を用いてフィッティングすることによって計算された。
比較のために、上記特許文献1の方法に基づいて、第1分子鎖モデル及び第2分子鎖モデルの理想鎖のパラメータを求め、分子鎖モデルの理想鎖のパラメータと、全原子モデルの理想鎖のパラメータとが同一となるとみなして、分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に換算した(比較例)。なお、換算方法の詳細については、上記特許文献1のとおりである。また、比較例の第1分子鎖モデル及び第2分子鎖モデルについては、次のとおりである。
第1分子鎖モデル:
モノマー数:40、空間内の本数:75本、緩和時間:100ns
第2分子鎖モデル:
ビーズ数:27、空間内の本数:1000本、緩和時間:15000τ
そして、実施例の換算精度及び計算時間と、比較例の換算精度及び計算時間とがそれぞれ比較された。実施例及び比較例で使用されたコンピュータは、24コア(2ノード)である。
テストの結果、実施例の第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比(即ち、1個のビーズあたりのモノマー数)は、1.361±0.013であった。他方、比較例の第2分子鎖モデルのビーズ数と高分子鎖のモノマー数との比は、1.190±0.024であり、実施例と大きく異なった。これは、比較例が屈曲度合の鎖長依存性が考慮されていないためである。このように、実施例では、屈曲度合の鎖長依存性を考慮することができるため、精度よく換算できた。
実施例の計算時間が63日(このうち、第1分子鎖モデルを用いた計算が17日)であり、比較例の計算時間が8日(このうち、第1分子鎖モデルを用いた計算が7日)であった。また、比較例の方法で、実施例と同等の精度で換算するには、ほぼ鎖長依存性を無視できる長鎖長極限となる鎖長250モノマー程度(第2分子鎖モデルのビーズ数:170程度)での計算を実施する必要がある。この場合、モノマー数が70の第1分子鎖モデルを用いて、最長緩和時間の3倍程度の時間の緩和計算を行うと、およそ3μs程度のシミュレーション時間が必要となり、実時間では、現在の一般的な計算機(24コア)で、3年程度かかると推定される。従って、実施例は、同等の換算精度の比較において、比較例よりも短時間で換算することができた。
S3 第1パラメータを計算する工程
S6 第2パラメータを計算する工程
S7 第2分子鎖モデルのビーズ数と、高分子鎖のモノマー数との比を計算する工程
S8 第2分子鎖モデルの長さの単位を、高分子鎖の長さの単位に換算する工程

Claims (9)

  1. コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法であって、
    前記高分子鎖の全原子モデル又はユナイテッドアトムモデルからなる第1分子鎖モデルを、前記コンピュータに入力する第1モデル設定工程、
    前記コンピュータが、分子動力学計算に基づいて、前記第1分子鎖モデルの緩和した構造を計算する工程、
    前記コンピュータが、構造緩和後の前記第1分子鎖モデルの屈曲度合を示す第1パラメータを計算する第1計算工程、
    前記高分子鎖を複数のビーズで単純化した第2分子鎖モデルを、前記コンピュータに入力する第2モデル設定工程、
    前記コンピュータが、分子動力学計算に基づいて、前記第2分子鎖モデルの緩和した構造を計算する工程、
    前記コンピュータが、構造緩和後の前記第2分子鎖モデルの屈曲度合を示す第2パラメータを計算する第2計算工程、
    前記コンピュータが、前記第1パラメータと前記第2パラメータとに基づいて、前記第2分子鎖モデルのビーズ数と、前記高分子鎖のモノマー数との比を計算する第3計算工程、並びに
    前記第2分子鎖モデルの前記ビーズ数と前記高分子鎖の前記モノマー数との比に基づいて、前記第2分子鎖モデルの長さの単位を、前記高分子鎖の長さの単位に換算する工程を含むことを特徴とする高分子材料のシミュレーション方法。
  2. 前記第1モデル設定工程は、前記モノマー数が異なる前記第1分子鎖モデルを設定する工程を含み、
    前記第1計算工程は、前記モノマー数が異なる前記第1分子鎖モデル毎に、前記第1パラメータを計算する工程を含む請求項1記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  3. 前記第2モデル設定工程は、前記ビーズ数が異なる前記第2分子鎖モデルを設定する工程を含み、
    前記第2計算工程は、前記ビーズ数が異なる前記第2分子鎖モデル毎に、前記第2パラメータを計算する工程を含む請求項1又は2記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  4. 前記第1パラメータ及び前記第2パラメータは、下記式(1)で計算される請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
    Figure 2018010525

    ここで、
    Kuhn:Kuhnのセグメント数
    L:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの全長
    g:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの慣性半径
  5. 前記第1パラメータ及び前記第2パラメータは、下記式(2)で計算される請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
    Figure 2018010525

    ここで、
    Kuhn:Kuhnのセグメント数
    L:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの全長
    R:第1分子鎖モデル又は第2分子鎖モデルの末端間ベクトルの長さ
  6. 前記第1分子鎖モデルは、前記高分子鎖のモノマーをモデル化したモノマーモデルを、予め定められた前記モノマー数で連結して設定され、
    前記第1分子鎖モデルの全長Lは、前記各モノマーモデルの長さを平均した平均モノマー長と、前記モノマー数とを乗じることにより求められる請求項4又は5に記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  7. 前記第2分子鎖モデルの全長Lは、隣接する前記ビーズの平衡核間距離と、前記ビーズ数とを乗じることによって求められる請求項4乃至6のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  8. 前記第2計算工程は、前記第2パラメータと前記ビーズ数との第2関係を求める工程を含み、
    前記第3計算工程は、前記第2関係を、下記式(3)で定義される曲線にフィッティングする工程を含む請求項4乃至7のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
    Figure 2018010525

    ここで、
    kuhn:Kuhnのセグメント数
    CG:第2分子鎖モデルのビーズ数
    a、b、c:フィッティングパラメータ
  9. 前記第1計算工程は、前記第1パラメータと前記モノマー数との第1関係を求める工程を含み、
    前記第3計算工程は、下記式(4)に基づいて、前記第1関係を、前記曲線にフィッティングする工程を含む請求項8に記載の高分子材料のシミュレーション方法。
    Figure 2018010525

    ここで、
    FA:第1分子鎖モデルのモノマー数
    CG:第2分子鎖モデルのビーズ数
    d:フィッティングパラメータ
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