JP6097130B2 - 高分子材料のシミュレーション方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算しうる高分子材料のシミュレーション方法に関する。
近年、ゴム配合の開発のために、高分子材料の反応を、コンピュータを用いて評価するためのシミュレーション方法(数値計算)が種々提案されている。この種のシミュレーション方法では、例えば、高分子鎖を、複数のビーズでモデル化した粗視化モデルが、コンピュータに入力される。そして、粗視化モデルが仮想空間に配置され、コンピュータによる分子動力学計算が行われる。関連する技術としては、次のものがある。
Kurt Kremer & Gary S. Grest 著 「Dynamics of entangled linear polymer melts: A molecular-dynamics simulation」、J. Chem Phys. vol.92, No.8, 15 April 1990
ところで、粗視化モデルを用いた分子動力学計算では、現実の高分子鎖とは異なる単位系(例えば、時間や長さ)が用いられている。このため、粗視化モデルを用いたシミュレーション結果から、現実の高分子鎖での時間や長さを求めるには、高分子材料を用いた実験により、高分子鎖の緩和時間等の物理量を求めて、分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に換算していた。
しかしながら、上記のような方法では、高分子材料を用いた実験に要するコストや時間が増大するため、分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算できないという問題があった。また、従来の方法では、高分子材料を実際に準備する必要があるため、例えば、現実に存在しない高分子材料では換算できないという問題もあった。
また、全原子モデルを用いた分子動力学計算により、高分子鎖の単位系を求めることも考えられるが、全原子モデルは、複雑に屈曲して形成されるため、単位系の換算に必要となる全原子モデルの全長Lfを求めることが難しいという問題があった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算しうる高分子材料のシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、コンピュータに、高分子鎖を、複数のビーズでモデル化した粗視化モデルを入力する工程、前記コンピュータが、予め定めた仮想空間に配置された前記粗視化モデルを用いて分子動力学計算を行う工程、前記コンピュータが、前記粗視化モデルのRouseのパラメータを求める第1計算工程、前記コンピュータに、任意の高分子鎖を、複数の炭素を含む原子でモデル化した全原子モデルを入力する工程、前記コンピュータが、予め定めた仮想空間に配置された前記全原子モデルを用いて分子動力学計算を行う工程、前記コンピュータが、前記全原子モデルのRouseのパラメータを求める第2計算工程、及び、前記コンピュータが、前記粗視化モデルのRouseのパラメータと、前記全原子モデルのRouseのパラメータとに基づいて、前記粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、前記任意の高分子鎖の単位系に換算する換算工程を含み、前記第2計算工程は、前記全原子モデルの全長Lfを求める全長計算工程を含み、前記全長計算工程は、前記コンピュータが、前記全原子モデルの前記炭素原子の一端の固定する工程と、 前記コンピュータが、分子動力学計算を行いながら、前記全原子モデルの前記炭素原子の他端を、前記一端から離れる方向へ強制移動させる工程と、前記コンピュータが、前記分子動力学計算によって強制的に引き伸ばされた前記全原子モデルを分子力学法による計算を行うことにより、前記全原子モデルの構造を安定化する工程と、前記コンピュータが、前記全原子モデルの前記一端と前記他端との間の距離から前記全原子モデルの全長Lfを求める工程とを含むことを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、前記粗視化モデルのRouseのパラメータは、長さのパラメータbcと、時間のパラメータτcと、摩擦のパラメータζcとを含み、前記全原子モデルのRouseのパラメータは、長さのパラメータbfと、時間のパラメータτfと、摩擦のパラメータζfとを含み、前記換算工程は、前記粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位長さ、単位時間、又は、単位質量を、前記任意の高分子鎖の長さ、時間、又は、質量にそれぞれ換算する請求項1に記載の高分子材料のシミュレーション方法である。
また、請求項3記載の発明は、前記粗視化モデルの前記長さのパラメータbcは、下記式(1)で定義される請求項2に記載の高分子材料のシミュレーション方法である。

ここで、
<Rc 2>:粗視化モデルの末端間ベクトルの長さの2乗のアンサンブル平均
c:粗視化モデルの全長
c:ビーズ間の平衡長
c:1つの粗視化モデルあたりのRouseビーズの個数
また、請求項4記載の発明は、前記粗視化モデルの前記時間のパラメータτcは、前記粗視化モデルの末端間ベクトルの時間相関関数が、1/eに減少するのに要する時間である請求項2又は3に記載の高分子材料のシミュレーション方法である。
また、請求項5記載の発明は、前記粗視化モデルの前記摩擦のパラメータζcは、下記式(2)で定義される請求項2乃至4のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法である。

ここで、
c:粗視化モデルの長さのパラメータ
τc:粗視化モデルの時間のパラメータ
c:1つの粗視化モデルあたりのRouseビーズの個数
B:ボルツマン定数
T:絶対温度
また、請求項6記載の発明は、前記全原子モデルの前記長さのパラメータbfは、下記式(3)で定義される請求項2乃至5のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法である。

ここで、
<Rf 2>:全原子モデルの末端間ベクトルの長さの2乗のアンサンブル平均
f:全原子モデルの全長
また、請求項7記載の発明は、前記時間のパラメータτfは、前記全原子モデルの末端間ベクトルの時間相関関数が、1/eに減少するのに要する時間である請求項2乃至6のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法である。
また、請求項8記載の発明は、前記摩擦のパラメータζfは、下記式(4)で定義される請求項2乃至7のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法である。

ここで、
f:全原子モデルの長さのパラメータ
τf:全原子モデルの時間のパラメータ
f:1つの全原子モデルあたりのRouseビーズの個数
f:全原子モデルの全長
B:ボルツマン定数
T:絶対温度
本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、コンピュータに、高分子鎖を、複数のビーズでモデル化した粗視化モデルを入力する工程、コンピュータが、予め定めた仮想空間に配置された粗視化モデルを用いて分子動力学計算を行う工程、及び、コンピュータが、粗視化モデルのRouseのパラメータを求める第1計算工程を含む。
また、本発明の高分子材料のシミュレーション方法では、コンピュータに、任意の高分子鎖を、複数の炭素原子でモデル化した全原子モデルを入力する工程、コンピュータが、予め定めた仮想空間に配置された全原子モデルを用いて分子動力学計算を行う工程、及び、コンピュータが、全原子モデルのRouseのパラメータを求める第2計算工程を含む。この全原子モデルのRouseのパラメータは、高分子鎖の単位系に一致する。
さらに、本発明の高分子材料のシミュレーション方法では、コンピュータが、粗視化モデルのRouseのパラメータと、全原子モデルのRouseのパラメータとに基づいて、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、任意の高分子鎖の単位系に換算する換算工程を含む。
このように、本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、例えば、高分子鎖の物理量を実験によって求めることなく、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算することができる。
また、全原子モデルは、例えば、現実に存在しない任意の高分子鎖をモデル化することができる。このため、第2計算工程では、現実に存在しない高分子鎖をモデル化した全原子モデルのRouseのパラメータを求めることができる。従って、本発明の高分子材料のシミュレーション方法では、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、現実に存在しない高分子鎖の単位系に換算することができる。
さらに、第2計算工程は、全原子モデルの全長Lfを求める全長計算工程を含んでいる。全長計算工程は、コンピュータが、全原子モデルの炭素原子の一端の固定する工程と、分子動力学計算を行いながら、全原子モデルの炭素原子の他端を、一端から離れる方向へ強制移動させる工程と、分子動力学計算によって強制的に引き伸ばされた全原子モデルを分子力学法による計算を行うことにより、全原子モデルの構造を安定化する工程と、全原子モデルの一端と他端との間の距離から全原子モデルの全長Lfを求める工程とを含んでいる。このような全長計算工程は、全原子モデルを鎖方向に伸ばしつつ、結合長、結合角、及び、二面角が安定した構造を有する全原子モデルを確実に得ることができるため、全原子モデルの全長Lfを効率よく計算することができる。従って、本発明の高分子材料のシミュレーション方法では、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算しうる。
本実施形態の高分子材料のシミュレーション方法を実行するコンピュータの斜視図である。 本実施形態のシミュレーション方法のフローチャートである。 粗視化モデルの概念図である。 本実施形態の第1シミュレーション工程のフローチャートである。 粗視化モデルのポテンシャルを説明する概念図である。 粗視化モデルが配置された仮想空間の概念斜視図である。 本実施形態の第1計算工程のフローチャートである。 粗視化モデルの末端間ベクトルの時間相関関数と、時間との関係を示すグラフである。 全原子モデルの概念図である。 本実施形態の第2シミュレーション工程のフローチャートである。 全原子モデルのポテンシャルを説明する概念図である。 全原子モデルが配置された仮想空間の概念斜視図である。 本実施形態の第2計算工程のフローチャートである。 本実施形態の全長計算工程のフローチャートである。 一端が固定された全原子モデルの概念図である。 他端が強制移動された全原子モデルの概念図である。 分子力学法による計算後の全原子モデルの概念図である。 全原子モデルの末端間ベクトルの時間相関関数と、時間との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の高分子材料のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある)は、高分子材料の反応を、コンピュータを用いて評価するためのものである。高分子材料としては、例えば、ゴム、樹脂又はエラストマー等が含まれる。
図1に示されるように、コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含む。この本体1aには、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの記憶装置及びディスクドライブ装置1a1、1a2などが設けられる。なお、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するための処理手順(プログラム)が予め記憶される。
図2には、本実施形態のシミュレーション方法の具体的な処理手順が示されている。このシミュレーション方法では、先ず、図3に示されるように、高分子鎖を複数のビーズ3でモデル化した粗視化モデル6を、コンピュータ1に入力する(工程S1)。この粗視化モデル6は、高分子材料を分子動力学で取り扱うための数値データである。これらの数値データは、コンピュータ1に入力される。
ビーズ3は、分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、ビーズ3には、質量、直径、電荷又は初期座標などのパラメータが定義される。これらの各パラメータは、数値情報としてコンピュータ1に記憶される。
また、ビーズ3、3間には、平衡長が定義された結合ポテンシャルが設定される。これにより、ビーズ3、3間には、該ビーズ3、3を拘束する結合鎖4が定義される。
ここで、「平衡長」とは、ビーズ3、3間の結合距離である。この結合距離が変化した場合は、結合鎖4によって、元の平衡長が保持される。これにより、粗視化モデル6は、直鎖状の三次元構造を維持することができる。なお、平衡長は、隣り合うビーズ3、3の中心3a、3a間の距離として定義される。また、結合鎖4の結合ポテンシャルには、例えば、上記非特許文献1に基づいて設定されるのが望ましい。
次に、コンピュータ1が、予め定めた仮想空間に配置された粗視化モデル6を用いて分子動力学計算を行う(第1シミュレーション工程S2)。図4には、本実施形態の第1シミュレーション工程S2の処理手順の一例が示されている。
本実施形態の第1シミュレーション工程S2では、先ず、図5に示されるように、隣り合う粗視化モデル6、6のビーズ3、3間に、ビーズ3、3間の距離の関数である相互ポテンシャルP1をそれぞれ定義する(工程S21)。本実施形態の相互ポテンシャルP1は、LJ(Lennard-Jones)ポテンシャルであり、下記式(5)で定義される。

ここで、各定数及び変数は、次のとおりである。
ij:各ビーズ間距離
c:カットオフ距離
ε:各ビーズ間に定義される相互ポテンシャルの強度
σ:各ビーズ間に定義される相互ポテンシャルの距離に関するパラメータ(分子動力学の分野では、LJ球の直径と呼ばれる)
なお、ビーズ間の距離rij及びカットオフ距離rcは、各ビーズ3の中心3a(図3に示す)を基準として定義される。
相互ポテンシャルP1は、ビーズ3、3間距離rijが予め定められたカットオフ距離rc未満になる場合にのみ、ビーズ3、3間に引力又は斥力を生じさせる。なお、ビーズ間距離rijがカットオフ距離rc以上になった場合には、相互ポテンシャルP1がゼロになり、ビーズ3、3間に引力又は斥力が生じない。このような相互ポテンシャルP1は、分子動力学計算において、実際の高分子材料の分子運動に近似させることができる。なお、相互ポテンシャルP1の強度ε、相互ポテンシャルP1が作用する距離σ、及び、カットオフ距離rcは、例えば、論文(上記の非特許文献1)に基づいて、下記のように設定されるのが望ましい。このような相互ポテンシャルP1は、コンピュータ1に記憶される。
強度ε:1.0
距離σ:1.0
カットオフ距離rc:21/6
次に、図6に示されるように、予め定められた体積を持つ仮想空間8内に、粗視化モデル6を配置する(工程S22)。この仮想空間8は、解析対象の高分子材料の微小構造部分に相当する。
本実施形態の仮想空間8は、1辺の長さLsが、例えば非特許文献1に基づいて、系内のビーズの数密度0.85と、仮想空間8内に配置するビーズ3の個数とに基づいて定義される。また、仮想空間8には、例えば、粗視化モデル6が100〜400本程度配置される。なお、粗視化モデル6は、例えば、モンテカルロ法に基づいて、仮想空間8内に配置されるのが望ましい。そして、粗視化モデル6のビーズ3の座標等が、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、粗視化モデル6の分子動力学計算を行う(工程S23)。本実施形態の分子動力学計算では、例えば、仮想空間8について所定の時間、配置した全ての粗視化モデル6が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻での全てのビーズ3の動きが追跡され、コンピュータ1に記憶される。また、分子動力学計算の条件は、例えば、系内のビーズ3の個数、体積及び温度は一定で行われる。
次に、コンピュータ1が、粗視化モデル6の初期配置を十分に緩和できたか否かを判断する(工程S24)。この工程S24では、粗視化モデル6の初期配置を十分に緩和できたと判断された場合、次の第1計算工程S3が実施される。一方、粗視化モデル6の初期配置を十分に緩和できていないと判断された場合は、単位時間を進めて(工程S25)、工程S23及び工程S24が再度実施される。これにより、第1シミュレーション工程S2では、粗視化モデル6の平衡状態(構造が緩和した状態)を確実に計算することができる。
次に、コンピュータ1が、粗視化モデル6のRouseのパラメータを求める(第1計算工程S3)。ここで、Rouseのパラメータとは、高分子物理で知られているRouseモデルのパラメータである。本実施形態では、長さのパラメータbc(単位:σ)、時間のパラメータτc(単位:τ)、及び、摩擦のパラメータζc(単位:μ/τ)が求められ、コンピュータ1に記憶される。また、これらのパラメータbc、τc、ζcは、工程S23で実施された粗視化モデル6の分子動力学計算において、単位時間毎に記憶された数値データ等を用いて計算される。図7には、本実施形態の第1計算工程S3の処理手順の一例が示されている。
本実施形態の第1計算工程S3では、先ず、コンピュータ1が、粗視化モデル6の長さのパラメータbc(単位:σ)を求める(工程S31)。この長さのパラメータbcは、下記式(1)で定義される。

ここで、
<Rc 2>:粗視化モデルの末端間ベクトルの長さの2乗のアンサンブル平均
c:粗視化モデルの全長
c:ビーズ間の平衡長
c:1つの粗視化モデルあたりのRouseビーズの個数
長さRcは、図3に示すように、粗視化モデル6の末端6e、6e間を結ぶ末端間ベクトルV1の長さである。この長さRcも、ビーズ3の中心3aを基準に定義される。また、<Rc 2>の計算方法としては、先ず、各粗視化モデル6において、単位時間毎の長さRcの二乗について、分子動力学計算の全時間の平均をとる(時間平均)。そして、各粗視化モデル6の長さRcの二乗の時間平均を、全ての粗視化モデル6について平均(アンサンブル平均)をとることにより、<Rc 2>を求めることができる。
また、全長Lcは、1つの粗視化モデル6を構成する全ての結合鎖4の合計長さである。このような全長Lcは、ビーズ3、3間の平衡長Acに、結合鎖4(図3に示す)の個数(Nc−1)を乗じることにより求めることができる。なお、平衡長Acは、結合鎖4に定義される結合ポテンシャルの極小値が設定される。そして、上記式(1)で求められた粗視化モデル6の長さのパラメータbcが、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、粗視化モデル6の時間のパラメータτc(単位:τ)を求める(工程S32)。図8は、粗視化モデル6の末端間ベクトルV1の長さRcの時間相関関数Ccと、時間tとの関係を示すグラフである。時間のパラメータτcは、末端間ベクトルV1の相関が無くなる時間、即ち、時間相関関数Ccが1/eに減少するのに要する時間(時定数)で定義することができる。これは、原子論の崩壊に基づくものである。なお、時間のパラメータτcは、時間相関関数Ccを、下記式(6)に近似させることにより、容易に求めることができる。そして、粗視化モデル6の時間のパラメータτcが、コンピュータ1に記憶される。
c=A×exp(−t/τc)…(6)
ここで、
c:粗視化モデルの末端間ベクトルの時間相関関数
A:フィッティングパラメータ
t:時間
τc:粗視化モデルの時間のパラメータ
次に、コンピュータ1が、粗視化モデル6の摩擦のパラメータζc(単位:μ/τ)を求める(工程S33)。この摩擦のパラメータζcは、下記式(2)で定義される。

ここで、
c:粗視化モデルの長さのパラメータ
τc:粗視化モデルの時間のパラメータ
c:1つの粗視化モデルあたりのRouseビーズの個数
B:ボルツマン定数
T:絶対温度
長さのパラメータbc及び時間のパラメータτcは、工程S31、及び、工程S32で求められた数値である。ビーズの個数Ncは、粗視化モデル6のビーズ3の個数である。ただし、ビーズの個数Ncは、上記式(1)で求められる全長Lcを、長さのパラメータbcで除することにより求めることができる。そして、上記式(2)で求められた粗視化モデル6の摩擦のパラメータζcが、コンピュータ1に記憶される。
このように、第1計算工程S3では、粗視化モデル6のRouseのパラメータ(長さのパラメータbc、時間のパラメータτc、及び、摩擦のパラメータζc)を確実に求めることができる。
次に、コンピュータ1に、任意の高分子鎖をモデル化した全原子モデルを入力する(工程S4)。本実施形態の高分子鎖としては、例えば、cis-1,4ポリブタジエン(以下、単に「ポリブタジエン」ということがある)が例示される。図9に示されるように、本実施形態の全原子モデル11は、炭素原子12c又は水素原子12hを含む複数の粒子モデル12でモデル化される。
粒子モデル12は、分子動力学計算に基づいたシミュレーションにおいて、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、粒子モデル12は、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。これらのパラメータは、コンピュータ1上で取り扱い可能な数値情報として、コンピュータ1に記憶される。
また、粒子モデル12、12間には、結合鎖14が定義される。この結合鎖14は、粒子モデル12、12間を拘束するものである。本実施形態の結合鎖14は、炭素原子12c、12cを連結する主鎖14a、及び、炭素原子12cと水素原子12hとの間を連結する側鎖14bとを含んでいる。これらの主鎖14a及び側鎖14bは、例えば、平衡長とバネ定数とが定義されたバネとして取り扱われる。これらの情報もコンピュータ1に記憶される。
全原子モデル11は、各粒子モデル12、12間の結合長さである結合長、結合鎖14を介して連続する3つの粒子モデル12がなす角度である結合角、及び、結合鎖14を介して連続する4つの粒子モデル12において、隣り合う3つの粒子モデル12が作る二面角などが定義される。これにより、全原子モデル11は、3次元構造を有する。
また、全原子モデル11は、慣例に従い、外力又は内力を受けることによって、結合長、結合角及び二面角が変化する。これにより、全原子モデル11は、その三次元構造を変化させることができる。以上のようなモデル化は、例えば(株)JSOL社製のJ−OCTAというソフトウエアを用いて処理することができる。
コンピュータ1が、予め定めた仮想空間に配置された全原子モデル11を用いて分子動力学計算を行う(第2シミュレーション工程S5)。図10には、本実施形態の第2シミュレーション工程S5の処理手順の一例が示されている。
本実施形態の第2シミュレーション工程S5では、先ず、図11に示されるように、全原子モデル11の各粒子モデル12、12間に相互ポテンシャルP2が定義される(工程S51)。相互ポテンシャルP2は、LJ(Lennard-Jones)ポテンシャルであり、上記式(5)で定義される。このような相互ポテンシャルP2は、コンピュータ1に入力される。
相互ポテンシャルP2は、炭素原子12c、12c間に設定される第1相互ポテンシャルP2a、水素原子12h、12h間に設定される第2相互ポテンシャルP2b、及び、炭素原子12cと水素原子12hと間に設定される第3相互ポテンシャルP2cが含まれる。これらのポテンシャルP2a〜P2cにおいて、上記式(5)の距離σ、及び、カットオフ距離rcは、適宜設定することができる。
次に、図12に示されるように、予め定められた体積を持つ仮想空間16内に、全原子モデル11が配置される(工程S52)。この仮想空間16は、解析対象の高分子材料の微小構造部分に相当し、図6に示した仮想空間8と同様に設定される。また、仮想空間16には、例えば、全原子モデル11が10〜100本程度配置される。なお、全原子モデル11は、モンテカルロ法に基づいて、仮想空間16内に配置されるのが望ましい。そして、全原子モデル11の粒子モデル12の座標等が、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の分子動力学計算を行う(工程S53)。本実施形態の分子動力学計算では、粗視化モデル6の分子動力学計算と同様に、例えば、仮想空間16について所定の時間、配置した全ての全原子モデル11が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻での全ての粒子モデル12(図9に示す)の動きが追跡される。また、分子動力学計算の計算条件は、例えば系内の粒子、体積及び温度は一定で行われる。
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の初期配置を十分に緩和できたか否かを判断する(工程S54)。この工程S54では、全原子モデル11の初期配置を十分に緩和できたと判断された場合、次の第2計算工程S6が実施される。一方、全原子モデル11の初期配置を十分に緩和できていないと判断された場合は、単位時間を進めて(工程S55)、工程S53(分子動力学計算)及び工程S54が再度実施される。これにより、第2シミュレーション工程S5では、全原子モデル11の平衡状態(構造が緩和した状態)を確実に計算することができる。
次に、コンピュータ1が、全原子モデルのRouseのパラメータを求める(第2計算工程S6)。本実施形態では、Rouseのパラメータのうち、長さのパラメータbf(単位:m)、時間のパラメータτf(単位:s)、及び、摩擦のパラメータζf(単位:kg/s)が求められる。これらのパラメータbf、τf、ζfは、第2シミュレーション工程S5で実施された全原子モデル11の分子動力学計算において、単位時間毎に記憶された数値データ等を用いて計算される。図13には、本実施形態の第2計算工程S6の処理手順の一例が示されている。
本実施形態の第2計算工程S6では、先ず、コンピュータ1が、全原子モデル11の全長Lfを求める(全長計算工程S61)。図14には、全長計算工程S61の処理手順の一例が示されている。
本実施形態の全長計算工程S61では、先ず、図15に示されるように、1つの全原子モデル11を、予め定められた体積を持つ仮想空間18に配置する(工程S611)。この仮想空間18としては、図12に示した仮想空間16と同一構成のものが用いられる。そして、全原子モデル11の粒子モデル12の座標等が、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の炭素原子12cの一端の固定する(工程S612)。この工程S612では、全原子モデル11の末端11a、11bを構成する炭素原子12cのうち、一端11aの炭素原子12cの座標値が、変動不能に固定される。これにより、全原子モデル11の炭素原子12cの一端11aを、仮想空間18において固定することができる。このような一端11aの炭素原子12cの座標値は、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、分子動力学計算を行いながら、全原子モデル11の他端11bを、一端11aから離れる方向へ強制移動させる(工程613)。本実施形態の工程S613では、先ず、全原子モデル11の末端11a、11bを構成する炭素原子12cのうち、他端11bの炭素原子12cに、一端11aの炭素原子12cから離れる方向へ移動する等速度運動Mが定義される。この等速度運動Mの速度としては、例えば、500〜3500m/sが設定される。次に、全原子モデル11の結合鎖14に定義されるポテンシャル(図示省略)に基づいて、分子動力学計算を開始する。そして、全原子モデル11の他端11bに定義された等速度運動Mに基づいて、他端11bの移動計算が実施される。
これにより、図16に示されるように、全原子モデル11は、各炭素原子12cが略直線上に配置され、主鎖方向に強制的に引き伸ばされた構造が設定される。このように、本実施形態の工程S613では、分子動力学計算を行いながら、炭素原子12cの移動計算が実施されるため、各炭素原子12cの移動を円滑に計算することができる。なお、分子動力学計算のステップ数は、適宜設定することができるが、例えば、単位時間が1fs(フェムト秒)とすると、2500〜7500ステップが望ましい。
次に、コンピュータ1が、強制的に引き伸ばされた全原子モデル11に対して、分子力学法による計算を行う(工程S614)。分子力学法(MM法)は、原子間に働く相互作用のポテンシャルエネルギーに基づいて、分子構造を最適化する方法である。このような分子力学法による計算は、例えば(株)JSOL社製のJ−OCTAに含まれるCOGNACを用いて処理することができる。
これにより、図17に示されるように、工程S614では、主鎖方向に伸ばしつつ、結合長、結合角、及び、二面角が安定した全原子モデル11を得ることができる。なお、分子力学法による計算は、結合鎖14の主鎖14aに定義されるポテンシャルが、例えば、6×10−11〜8×10−11Nに収束するまで行われるのが望ましい。これにより、上記のような全原子モデル11を確実に得ることができる。
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の一端11aと他端11bとの間の距離を求める(工程S615)。これにより、全原子モデル11の全長Lfを求めることができる。このように、本実施形態の全長計算工程S61では、全原子モデル11を主鎖方向に伸ばしつつ、結合長、結合角、及び、二面角が安定した構造を有する全原子モデル11を確実に得ることができるため、全原子モデル11の全長Lfを効率よく確実に計算することができる。そして、全原子モデル11の全長Lfが、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の長さのパラメータbfを求める(工程S62)。この長さのパラメータbfは、下記式(3)で定義される。

ここで、
<Rf 2>:全原子モデルの末端間ベクトルの長さの2乗のアンサンブル平均
f:全原子モデルの全長
図9に示されるように、長さRfは、全原子モデル11の末端11a、11b間を結ぶ末端間ベクトルV2の長さである。この長さRfは、炭素原子12cの中心(図示省略)を基準に定義される。
また、<Rf 2>の計算方法としては、先ず、各全原子モデル11において、単位時間毎の長さRfの二乗について、分子動力学計算の全時間の平均をとる(時間平均)。そして、各全原子モデル11のRf 2の時間平均を、全ての全原子モデル11について平均をとる(アンサンブル平均)ことにより、<Rc 2>を求めることができる。なお、全長Lfは、上述した全長計算工程S61で求められた数値である。そして、全原子モデル11の長さのパラメータbfが、コンピュータ1に記憶される。
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の時間のパラメータτfを求める(工程S63)。図18は、全原子モデル11の末端間ベクトルV2の長さRfの時間相関関数Cfと、時間tとの関係を示すグラフである。時間のパラメータτfは、粗視化モデル6の時間のパラメータτcと同様に、時間相関関数Cfが1/eに減少するのに要する時間(時定数)で定義される。なお、時間のパラメータτfは、時間相関関数Cfを、下記式(7)に近似させることにより、容易に求めることができる。そして、全原子モデル11の時間のパラメータτfが、コンピュータ1に記憶される。
f=A×exp(−t/τf)…(6)
ここで、
f:全原子モデルの末端間ベクトルの長さの時間相関関数
A:フィッティングパラメータ
t:時間
τf:粗視化モデルの時間のパラメータ
次に、コンピュータ1が、全原子モデル11の摩擦のパラメータζfを求める(工程S64)。この摩擦のパラメータζfは、下記式(4)で定義される。

ここで、
f:全原子モデルの長さのパラメータ
τf:全原子モデルの時間のパラメータ
f:1つの全原子モデルあたりのRouseビーズの個数
f:全原子モデルの全長
B:ボルツマン定数
T:絶対温度
長さのパラメータbf及び時間のパラメータτfは、上記の方法で求められた数値である。また、炭素原子の個数Nfには、全原子モデル11の炭素原子12cの個数が代入されるが、例えば、全長計算工程S61で求められた全長Lfを、長さのパラメータbfで除することにより求めることができる。そして、全原子モデル11の摩擦のパラメータζfが、コンピュータ1に記憶される。
このように、第2計算工程S6では、全原子モデル11のRouseのパラメータ(長さのパラメータbf、時間のパラメータτf、及び、摩擦のパラメータζf)を確実に求めることができる。
次に、コンピュータ1が、粗視化モデル6を用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に換算する(換算工程S7)。
粗視化モデル6の分子動力学計算での単位系としては、σ(長さ)、τ(時間)、及び、μ(質量)が含まれる。一方、高分子鎖の単位系としては、m(長さ)、s(時間)、及び、kg(質量)が含まれる。本実施形態では、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位長さ(1σ)、単位時間(1τ)、及び、単位質量(1μ)を、高分子鎖の長さ(m)、時間(m)、又は、質量(kg)にそれぞれ換算する。
換算工程S7では、粗視化モデル6のRouseのパラメータと、全原子モデル11のRouseのパラメータとが同一であると仮定して、粗視化モデル6を用いた分子動力学計算での単位系を、任意の高分子鎖の単位系に換算する。
例えば、粗視化モデル6の長さのパラメータbcが1σであり、かつ、全原子モデル11の長さのパラメータbfが1×10−9mであったとする。本実施形態では、各長さのパラメータbc、bfが同一であると仮定するため、分子動力学計算での単位長さ1σを、高分子鎖の長さ1×10−9mに換算することができる。
また、粗視化モデル6の時間のパラメータτcが5τであり、かつ、全原子モデル11の時間のパラメータτfが5×10−11sであったとする。本実施形態では、各時間のパラメータτc、τfが同一であると仮定するため、分子動力学計算での単位時間1τを、高分子鎖での時間1×10−11sに換算することができる。
さらに、粗視化モデル6の摩擦のパラメータζcが50μ/τであり、かつ、全原子モデル11の摩擦のパラメータζfが1×10−11kg/sであったとする。この場合には、分子動力学計算での単位質量1μを、高分子鎖での質量2.0×10−24kgに換算することができる。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、例えば、従来のように高分子鎖の物理量を実験によって求めることなく、粗視化モデル6を用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に換算することができる。従って、シミュレーション方法では、実験によって増大しがちなコストや時間を抑制でき、粗視化モデル6の単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算することができる。また、全長計算工程S61では、全原子モデル11の全長Lfを効率よく確実に計算することができるため、高分子鎖の単位系にさらに容易に換算することができる。
また、本実施形態では、ポリブタジエンをモデル化した全原子モデル11のRouseのパラメータを求めるものが例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、ポリブタジエン以外の任意の高分子鎖をモデル化した全原子モデル11に基づいて、Rouseのパラメータを求めてもよい。
換算工程S7では、このような全原子モデル11においても、粗視化モデル6のRouseのパラメータと、全原子モデル11のRouseのパラメータとが同一であると仮定される。これにより、本発明のシミュレーション方法では、粗視化モデル6を用いた分子動力学計算を別途行うことなく、粗視化モデル6(図3に示す)の単位系を、ポリブタジエンの単位系に限定されることなく、任意の高分子鎖の単位系に換算することができる。
さらに、全原子モデル11は、例えば、現実に存在しない任意の高分子材料をモデル化することができる。このため、第2計算工程S6では、現実に存在しない高分子鎖をモデル化した全原子モデル11のRouseのパラメータを求めることができる。これにより、本発明のシミュレーション方法では、上記の手順に従うことによって、粗視化モデル6を用いた分子動力学計算での単位系を、現実に存在しない高分子鎖の単位系に換算することができる。従って、本発明のシミュレーション方法では、未知の高分子材料の開発に役立つ。
次に、平衡状態の粗視化モデル6を含む仮想空間8(図6に示す)を用いて、高分子材料の変形シミュレーションを行う(工程S8)。この工程S8では、例えば、変形速度0.05σ/τとして、変形量が1.0σになるまで変形計算する。そして、仮想空間8の変形による物理量(応力等)が計算される。
次に、変形シミュレーションによる物理量を、高分子鎖の単位系に換算する(工程S9)。この工程S9では、高分子鎖の長さ、時間、又は、質量に換算された粗視化モデル6の単位長さ、単位時間、又は、単位質量に基づいて、仮想空間8の変形による物理量(応力等)を、高分子鎖の単位系に換算する。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、例えば、全原子モデル11を含む仮想空間16(図12に示す)を用いたり、高分子材料を用いた実験を行ったりすることなく、高分子鎖の単位系で表された物理量を容易に求めることができるため、計算時間を大幅に短縮しうる。
また、本実施形態のシミュレーション方法では、換算工程S7において、粗視化モデル6の単位系を、複数の高分子鎖の単位系に換算しておくことにより、粗視化モデル6を含む仮想空間8を用いた変形シミュレーションを1回行うだけで、複数の高分子鎖の単位系で表された物理量を同時に求めることができる。このため、本実施形態のシミュレーション方法では、変形シミュレーションの計算時間を大幅に短縮することができる。
次に、変形シミュレーションによる物理量が、許容範囲内であるかが判断される(工程S10)。この工程S10では、物理量が許容範囲内であると判断された場合、粗視化モデル6を含む仮想空間8の条件、及び、物理量が換算された高分子鎖の構造に基づいて、高分子材料が製造される(工程S11)。一方、物理量が許容範囲内ではないと判断された場合には、粗視化モデル6を含む仮想空間8の諸条件を変更して(工程S12)、工程S8〜S11が再度行われる。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、変形シミュレーションによる物理量が許容範囲内になるまで、粗視化モデル6を含む仮想空間8の条件が変更されるため、所望の性能を有する高分子材料を、効率よく設計することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図2に示される手順に従って、粗視化モデルのRouseのパラメータ、及び、下記高分子鎖をモデル化した全原子モデルのRouseのパラメータが求められ、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系が、任意の高分子鎖の単位系に換算された(実施例)。この実施例では、全長計算工程により、全原子モデル11の全長Lfが求められた。
また、比較のために、高分子材料を用いた実験により、下記高分子鎖の緩和時間等の物理量が求められ、分子動力学計算での単位系が、高分子鎖の単位系に換算された(比較例)。
そして、実施例及び比較例において、換算に要するコスト、及び時間が測定された。なお、各ポテンシャルのパラメータ等は、明細書中の記載通りであり、共通仕様は次のとおりである。
高分子鎖:
構造:cis-1,4ポリブタジエン
重合度:2070
仮想空間:
1辺の長さLs:18σ
テストの結果、比較例の換算に要するコストは、実施例の換算に要するコストを100とする指数(小さいほど良い)で表すと、10000であった。さらに、比較例の換算に要する時間は、実施例の換算に要する時間を100とする指数(小さいほど良い)で表すと、5000であった。このように、実施例は、比較例に比べて、換算に要するコスト及び時間を大幅に低減でき、粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、高分子鎖の単位系に容易に換算しうることを確認できた。
1 コンピュータ
6 粗視化モデル
11 全原子モデル

Claims (8)

  1. コンピュータに、高分子鎖を、複数のビーズでモデル化した粗視化モデルを入力する工程、
    前記コンピュータが、予め定めた仮想空間に配置された前記粗視化モデルを用いて分子動力学計算を行う工程、
    前記コンピュータが、前記粗視化モデルのRouseのパラメータを求める第1計算工程、
    前記コンピュータに、任意の高分子鎖を、複数の炭素を含む原子でモデル化した全原子モデルを入力する工程、
    前記コンピュータが、予め定めた仮想空間に配置された前記全原子モデルを用いて分子動力学計算を行う工程、
    前記コンピュータが、前記全原子モデルのRouseのパラメータを求める第2計算工程、及び、
    前記コンピュータが、前記粗視化モデルのRouseのパラメータと、前記全原子モデルのRouseのパラメータとに基づいて、前記粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位系を、前記任意の高分子鎖の単位系に換算する換算工程を含み、
    前記第2計算工程は、前記全原子モデルの全長Lfを求める全長計算工程を含み、
    前記全長計算工程は、前記コンピュータが、前記全原子モデルの前記炭素原子の一端の固定する工程と、
    前記コンピュータが、分子動力学計算を行いながら、前記全原子モデルの前記炭素原子の他端を、前記一端から離れる方向へ強制移動させる工程と、
    前記コンピュータが、前記分子動力学計算によって強制的に引き伸ばされた前記全原子モデルを分子力学法による計算を行うことにより、前記全原子モデルの構造を安定化する工程と、
    前記コンピュータが、前記全原子モデルの前記一端と前記他端との間の距離から前記全原子モデルの全長Lfを求める工程とを含むことを特徴とする高分子材料のシミュレーション方法。
  2. 前記粗視化モデルのRouseのパラメータは、長さのパラメータbcと、時間のパラメータτcと、摩擦のパラメータζcとを含み、
    前記全原子モデルのRouseのパラメータは、長さのパラメータbfと、時間のパラメータτfと、摩擦のパラメータζfとを含み、
    前記換算工程は、前記粗視化モデルを用いた分子動力学計算での単位長さ、単位時間、又は、単位質量を、前記任意の高分子鎖の長さ、時間、又は、質量にそれぞれ換算する請求項1に記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  3. 前記粗視化モデルの前記長さのパラメータbcは、下記式(1)で定義される請求項2に記載の高分子材料のシミュレーション方法。

    ここで、
    <Rc 2>:粗視化モデルの末端間ベクトルの長さの2乗のアンサンブル平均
    c:粗視化モデルの全長
    c:ビーズ間の平衡長
    c:1つの粗視化モデルあたりのRouseビーズの個数
  4. 前記粗視化モデルの前記時間のパラメータτcは、前記粗視化モデルの末端間ベクトルの時間相関関数が、1/eに減少するのに要する時間である請求項2又は3に記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  5. 前記粗視化モデルの前記摩擦のパラメータζcは、下記式(2)で定義される請求項2乃至4のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。

    ここで、
    c:粗視化モデルの長さのパラメータ
    τc:粗視化モデルの時間のパラメータ
    c:1つの粗視化モデルあたりのRouseビーズの個数
    B:ボルツマン定数
    T:絶対温度
  6. 前記全原子モデルの前記長さのパラメータbfは、下記式(3)で定義される請求項2乃至5のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。

    ここで、
    <Rf 2>:全原子モデルの末端間ベクトルの長さの2乗のアンサンブル平均
    f:全原子モデルの全長
  7. 前記時間のパラメータτfは、前記全原子モデルの末端間ベクトルの時間相関関数が、1/eに減少するのに要する時間である請求項2乃至6のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  8. 前記摩擦のパラメータζfは、下記式(4)で定義される請求項2乃至7のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。

    ここで、
    f:全原子モデルの長さのパラメータ
    τf:全原子モデルの時間のパラメータ
    f:1つの全原子モデルあたりのRouseビーズの個数
    f:全原子モデルの全長
    B:ボルツマン定数
    T:絶対温度
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