JP2018009219A - 表面被覆鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ばら積み貨物船の船倉、アンローダやコンベアのバケット、石炭車、鉱物貯蔵タンクなど石炭や鉱物の輸送および貯蔵のための設備を構成する耐久性に優れた表面被覆鋼材を提供する。
【解決手段】素地鋼材の表面に濃度を調整したCaCO3、FeCO3およびSiO2を含有する表面層を備えることによって、石炭や鉱物から滲出する腐食性のハロゲン化物イオン(F−、Cl−、Br−など)や海水などから鋼材表面を保護し、かつ、石炭や鉱物との摩耗作用を低減して、同環境における腐食反応を効果的に抑制する。
【選択図】なし
【解決手段】素地鋼材の表面に濃度を調整したCaCO3、FeCO3およびSiO2を含有する表面層を備えることによって、石炭や鉱物から滲出する腐食性のハロゲン化物イオン(F−、Cl−、Br−など)や海水などから鋼材表面を保護し、かつ、石炭や鉱物との摩耗作用を低減して、同環境における腐食反応を効果的に抑制する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ばら積み貨物船の船倉、アンローダやコンベアのバケット、石炭車、鉱物貯蔵タンクなど石炭や鉱物の輸送および貯蔵のための設備を構成する鋼材に関するものである。
石炭は埋蔵量が多く、安価であることから、発電用燃料や製鉄などに広く利用されている。また、ハロゲン化鉱物、炭酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、硫化鉱物、酸化鉱物、など様々な鉱物が利用されており、中でも資源的価値のある鉱物(鉱石)は特に広範囲で利用されている。これらの各種石炭や各種鉱物は世界的に流通しているため、輸送や保管などに係る課題は多い。
ばら積み貨物船の船倉やアンローダやコンベアのバケット、採掘場の貯蔵設備などを構成する鋼材は、石炭や鉱物と接触するため、石炭や鉱物に由来する硫黄分やフッ化物などの影響を受けて腐食する。石炭や鉱物は船舶で輸送する場合、船舶への荷上げや荷下ろしに係る設備では、石炭や鉱物による腐食作用のみでなく、海水中の塩分の腐食促進作用も受ける。また、ばら積貨物船の船倉の一部では、石炭や鉱物などの積荷を下ろしたあとに海水を入れてバラストタンクとして使用する場合があり、直接、海水とも接触する場合がある。このように、船舶や海岸近くの設備では、顕著な腐食が発生する傾向にある。
以上のような鋼材の腐食が発生すると、板厚摩耗を引き起こして構造体としての強度低下を招くことになり、鋼板に局部的な腐食集中が生じた場合には孔あきに至る場合もあるため、何らかの防食手段が要望されている。
このような石炭や鉱物と接触する鋼材の防食手段としては、防食塗装が施される場合がある。しかし、防食塗装においては、石炭や鉱物との接触により素地に達するような傷が塗膜に形成され、その傷部から鋼材腐食が発生する。よって、定期的に塗装メンテナンスを行う必要があるが、高所などの例えば足場を組まなければならないような場所ではメンテナンスの実施が困難である場合が多く、塗装により十分な防食効果が得られているとは言いがたい状況にある。
また、上述のような、積荷とバラスト水とを交互に入れるばら積貨物船の船倉では、日常的なメンテナンスが難しいため、腐食による板厚摩耗が問題となる場合が多く、より効果的な防食方法が望まれている。
また、上述のような、積荷とバラスト水とを交互に入れるばら積貨物船の船倉では、日常的なメンテナンスが難しいため、腐食による板厚摩耗が問題となる場合が多く、より効果的な防食方法が望まれている。
このような背景より、例えば、特許文献1や特許文献2などのように化学成分や介在物などの調整によって鋼材自体の耐食性を向上させる技術が提案されている。特許文献1では、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールドに用いられる鋼中のTi量及びN量を所定の範囲に制御した上で、円相当直径で50nm以下の微細なTiN粒子を存在させることにより、大入熱溶接を適用した場合であっても、溶接ボンド部およびその近傍の溶接熱影響部の靭性劣化を防止することが提案されている。また、特許文献2では、Cl−イオンが濃化した石炭腐食環境で、発錆を防止するために、鋼材に適量のCr、Alを含有させることによって、局部腐食を抑制し、錆の剥離を防止することが提案されている。これらの鋼材を適用することによって従来の防食手段よりも優れた耐食性を確保することは可能になった。
以上のような技術により、石炭鉱物の輸送および貯蔵に用いる鋼材の防食性・耐食性はある程度は確保できるが、まだ十分とはいえる状態ではなく、更なる腐食低減および寿命延長が要求されている。
本発明は、このような課題を解決せんとしてなされたもので、各種石炭や各種鉱物と接触する環境条件で用いた場合に、腐食による板厚衰耗が進展し難い鋼材を提供することを課題とするものである。
本発明の表面被覆鋼材においては、素地鋼材の表面に濃度を調整したCaCO3、FeCO3およびSiO2を含有する表面層を備えることによって、石炭や鉱物から滲出する腐食性のハロゲン化物イオン(F−、Cl−、Br−など)や海水などから鋼材表面を保護し、かつ、石炭や鉱物との摩耗作用を低減して、同環境における腐食反応を効果的に抑制する。
本発明の表面被覆鋼材は、石炭や鉱物の採掘場などでの貯蔵設備の部材、ばら積み貨物船の船倉における内底板、スツール、ホッパー板、ホールドフレームなどの構造部材、アンローダなどの荷下ろし設備の各種部材、海岸地区あるいは海岸に近い地区におけるコンベアのバケットなどの輸送設備、石炭輸送用の貨物車やトラックなどの貨物室部材、などに代表される石炭鉱物と接触する部位に用いた場合に腐食衰耗が少なく、構造物の長寿命化やメンテナンス負荷の低減を得ることができるものである。
本発明者らは、石炭や鉱物に由来するハロゲン化物による腐食対策、特に海水の腐食作用がさらに重畳される場合の腐食損傷メカニズムを研究し、表面処理を含む材料面からその低減対策について検討した。その結果、石炭や鉱物と接触する鋼材においては、石炭や鉱物から滲出する腐食性のハロゲン化物イオン(F−、Cl−、Br−など)や海水などによる腐食作用を受け、石炭や鉱物と鋼材との摩擦作用がその腐食を大きく促進することを見出した。また、この摩擦作用のため、鋼材の防食性に寄与する表面皮膜の影響も従来とは異なっており、最適な皮膜構成を見出した。
以下に、本発明の表面被覆鋼材を構成する各々の要素について詳細に説明する。
<表面層>
本発明の表面被覆鋼材は素地鋼材の表面に、CaCO3、FeCO3、SiO2、残部は鉄錆あるいは非晶質物質を含む物質からなる表面層を形成させたものである。前記表面層を構成する物質中、CaCO3濃度が10〜70質量%、FeCO3濃度が1〜30質量%、SiO2濃度が1〜30質量%、残部は鉄錆あるいは非晶質物質である。本発明の表面層は、石炭や鉱物から滲出する腐食性のハロゲン化物イオンに対する保護皮膜となることに加えて、石炭や鉱物との摩耗作用を低減して、同環境における腐食反応を効果的に抑制することができる。
本発明の表面被覆鋼材は素地鋼材の表面に、CaCO3、FeCO3、SiO2、残部は鉄錆あるいは非晶質物質を含む物質からなる表面層を形成させたものである。前記表面層を構成する物質中、CaCO3濃度が10〜70質量%、FeCO3濃度が1〜30質量%、SiO2濃度が1〜30質量%、残部は鉄錆あるいは非晶質物質である。本発明の表面層は、石炭や鉱物から滲出する腐食性のハロゲン化物イオンに対する保護皮膜となることに加えて、石炭や鉱物との摩耗作用を低減して、同環境における腐食反応を効果的に抑制することができる。
本発明の表面層において、CaCO3濃度の下限は、好ましくは11質量%、より好ましくは12質量%、さらに好ましくは15質量%、最も好ましくは20質量%であり、CaCO3濃度の上限は、好ましくは、69質量%、より好ましくは68質量%、さらに好ましくは65質量%、最も好ましくは60質量%である。
本発明の表面層において、FeCO3濃度の下限は、好ましくは1.1質量%、より好ましくは1.2質量%、さらに好ましくは2質量%、なおさらに好ましくは3質量%、最も好ましくは5質量%であり、FeCO3濃度の上限は、好ましくは、29質量%、より好ましくは28質量%、さらに好ましくは26質量%、最も好ましくは24質量%である。
本発明の表面層において、SiO2濃度の下限は、好ましくは1.1質量%、より好ましくは1.2質量%、さらに好ましくは2質量%、なおさらに好ましくは3質量%、最も好ましくは5質量%であり、SiO2濃度の上限は、好ましくは、29質量%、より好ましくは28質量%、さらに好ましくは26質量%、最も好ましくは24質量%である。
本発明の表面層において、FeCO3濃度の下限は、好ましくは1.1質量%、より好ましくは1.2質量%、さらに好ましくは2質量%、なおさらに好ましくは3質量%、最も好ましくは5質量%であり、FeCO3濃度の上限は、好ましくは、29質量%、より好ましくは28質量%、さらに好ましくは26質量%、最も好ましくは24質量%である。
本発明の表面層において、SiO2濃度の下限は、好ましくは1.1質量%、より好ましくは1.2質量%、さらに好ましくは2質量%、なおさらに好ましくは3質量%、最も好ましくは5質量%であり、SiO2濃度の上限は、好ましくは、29質量%、より好ましくは28質量%、さらに好ましくは26質量%、最も好ましくは24質量%である。
表面層中のCaCO3はハロゲン化物イオンに対する保護性を高めるために必要な成分である。表面層の保護性を十分得るためにはCaCO3を10%以上含有させることが必要である。しかしながら、CaCO3を過剰に含有させると表面層に割れを生じやすくする。このため、表面層のCaCO3濃度は70%以下とする必要がある。表面層のCaCO3濃度の好ましい下限は11%であり、12%以上とするのがより好ましい。表面層のCaCO3濃度の好ましい上限は69%であり、68%以下とするのがより好ましい。
表面層中のFeCO3もハロゲン化物イオンに対する保護性を高めるために必要な成分である。表面層の保護性を十分得るためにはFeCO3を1%以上含有させることが必要である。しかしながら、FeCO3を過剰に含有させると表面層に割れを生じやすくする。このため、表面層のFeCO3濃度は10%以下とする必要がある。表面層のFeCO3濃度の好ましい下限は1.1%であり、1.2%以上とするのがより好ましい。表面層のFeCO3濃度の好ましい上限は9.5%であり、9%以下とするのがより好ましい。
表面層中のSiO2は石炭や鉱物との摩耗作用を低減して、腐食促進作用を抑制するために必要な成分である。このような効果を十分得るためにはSiO2を5%以上含有させることが必要である。しかしながら、SiO2を過剰に含有させると表面層に割れを生じやすくする。このため、表面層のSiO2濃度は30%以下とする必要がある。表面層のSiO2濃度の好ましい下限は5.5%であり、6%以上とするのがより好ましい。表面層のSiO2濃度の好ましい上限は29%であり、28%以下とするのがより好ましい。
また、CaCO3濃度、FeCO3濃度、SiO2濃度の合計量は、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%である。表面層のCaCO3濃度、FeCO3濃度、SiO2濃度の合計量を、上記の範囲とすることにより、石炭や鉱物に由来するハロゲン化物による腐食、特に海水の腐食作用がさらに重畳される場合の腐食環境における腐食反応をさらに抑制することができる。
前記表面層の物質中のCaCO3、FeCO3、SiO2の濃度をそれぞれ[%CaCO3]、[%FeCO3]、[%SiO2]として、[%CaCO3]+[%FeCO3]と[%SiO2]とは最適なバランスがある。A=([%CaCO3]+[%FeCO3])/[%SiO2]とした場合に、Aが1〜95である場合に上記の効果はより大きくなる。
CaCO3、FeCO3、SiO2以外の残部の成分としては、表面皮膜形成時に不可避的に混入する可能性があるFe(OH)2、Fe(OH)3、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、Fe3O4、FeO、Fe2O3などの鉄錆成分が例示できる。また、CaCO3の分解で生じるCaO、CaCO3と水分との反応生成物である炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2なども5〜10%程度以下であれば許容できる。さらに、MgO、MgCO3も5〜10%程度であれば許容できる。
また、表面層の厚さが小さすぎると、ハロゲン化物イオンの侵入を十分抑制できなくなるため、十分な防食効果が得られない。また、厚さが大きすぎると、使用環境における温度変化などで界面層にクラックや剥離が形成されやすくなって、十分な防食効果が得られなくなる場合がある。このような観点から、表面層の厚さは平均厚さで100〜1000μmの範囲とすることが必要である。なお、表面層のより好ましい厚さの下限は平均で110μmであり、さらに好ましくは120μm以上とするのが良い。また、表面層のより好ましい厚さの上限は平均厚さで980μmであり、さらに好ましくは950μm以下とするのが良い。
本発明の表面層の形成方法は、特に制約されるものではないが、CaCO3、FeCO3、SiO2の粉末を適宜混合し、適切な溶媒に分散させたものを塗布液として鋼材表面に塗布および乾燥させる方法が好ましい例である。この場合、用いる溶媒としてはアルキルシリケートやエタノールなどが例示できる。また、塗布方法としては、スプレー塗布やはけ塗りなど通常の塗装方法が例示できる。
CaCO3、FeCO3、SiO2の粉末の平均粒子径は、鋼材の表面粗さとの関係や、緻密な層を形成する観点から、適宜決定することができる。
また、表面層の形成前には、素地鋼材の表面を適度に洗浄することが推奨される。例えば、洗浄することで鋼材表面の付着塩分濃度を、NaCl換算で50mg/m2以下、好ましくは10mg/m2以下となるように清水などを用いて洗浄することが推奨される。
さらに、塗布後の乾燥促進および被膜強化のため、例えば、100〜600℃程度で10分から1時間程度の加熱処理を施しても良い。
<鋼材>
鋼材の化学成分を適正化することにより、さらに優れた防食効果を得ることができる。上述の表面層と鋼材の化学成分との相乗効果により、より一層優れた耐食性が得られるものである。また、ある程度の機械特性や溶接性が要求される構造材料として適用する場合にも、C、Si、Mnなど鋼材の基本的な成分を適切に調整することが好ましい。以下に本発明鋼材の成分範囲の限定理由などについて説明する。
鋼材の化学成分を適正化することにより、さらに優れた防食効果を得ることができる。上述の表面層と鋼材の化学成分との相乗効果により、より一層優れた耐食性が得られるものである。また、ある程度の機械特性や溶接性が要求される構造材料として適用する場合にも、C、Si、Mnなど鋼材の基本的な成分を適切に調整することが好ましい。以下に本発明鋼材の成分範囲の限定理由などについて説明する。
C:0.01〜0.50%
Cは、鋼材の強度確保のために必要な基本的添加元素である。鋼材として通常要求される強度特性を得るためには、少なくとも0.01%以上は含有させることが好ましい。しかし、Cを過剰に含有させると、腐食環境においてカソードサイトとして作用するセメンタイトの生成量が多くなって、腐食反応を促進して耐食性が劣化する。また、靭性も併せて劣化する。このようなCの過剰添加による悪影響を発生させないためには、Cの含有量は多くても0.30%に抑えることが好ましい。よって、Cの含有量の範囲は0.01〜0.50%とすることが好ましい。なお、Cの含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.03%以上とするのが良い。また、Cの含有量の好ましい上限は0.49%であり、より好ましくは0.48%以下とするのが良い。
Cは、鋼材の強度確保のために必要な基本的添加元素である。鋼材として通常要求される強度特性を得るためには、少なくとも0.01%以上は含有させることが好ましい。しかし、Cを過剰に含有させると、腐食環境においてカソードサイトとして作用するセメンタイトの生成量が多くなって、腐食反応を促進して耐食性が劣化する。また、靭性も併せて劣化する。このようなCの過剰添加による悪影響を発生させないためには、Cの含有量は多くても0.30%に抑えることが好ましい。よって、Cの含有量の範囲は0.01〜0.50%とすることが好ましい。なお、Cの含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.03%以上とするのが良い。また、Cの含有量の好ましい上限は0.49%であり、より好ましくは0.48%以下とするのが良い。
Si:0.05〜3.0%
Siは、0.05%以上含有させることにより、脱酸と強度向上に有効な元素である。しかし、3.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。なお、Siの含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましくは0.07%以上とするのが良い。また、Siの含有量の好ましい上限は2.95%であり、より好ましくは2.90%以下とするのが良い。
Siは、0.05%以上含有させることにより、脱酸と強度向上に有効な元素である。しかし、3.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。なお、Siの含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましくは0.07%以上とするのが良い。また、Siの含有量の好ましい上限は2.95%であり、より好ましくは2.90%以下とするのが良い。
Mn:0.05〜3.0%
MnもSiと同様に、0.05%以上含有させることにより、脱酸と強度向上に有効な元素である。しかし、3.0%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。なお、Mnの含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましくは0.07%以上とするのが良い。また、Mnの含有量の好ましい上限は2.9%であり、より好ましくは2.8%以下とするのが良い。
MnもSiと同様に、0.05%以上含有させることにより、脱酸と強度向上に有効な元素である。しかし、3.0%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。なお、Mnの含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましくは0.07%以上とするのが良い。また、Mnの含有量の好ましい上限は2.9%であり、より好ましくは2.8%以下とするのが良い。
P :0.05%以下
Pは、過剰に含有させると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、Pの上限は0.05%とすることが好ましい。Pの含有量のより好ましい上限は0.045%であり、更に好ましくは0.04%以下とするのが良い。実質的に0%であってもよい。
Pは、過剰に含有させると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、Pの上限は0.05%とすることが好ましい。Pの含有量のより好ましい上限は0.045%であり、更に好ましくは0.04%以下とするのが良い。実質的に0%であってもよい。
S :0.05%以下
Sは含有量が多くなると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、また、耐食性も劣化させる。このような観点から、Sの上限は0.05%とすることが好ましい。Sの含有量のより好ましい上限は0.045%であり、更に好ましくは0.04%以下とするのが良い。実質的に0%であってもよい。
Sは含有量が多くなると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、また、耐食性も劣化させる。このような観点から、Sの上限は0.05%とすることが好ましい。Sの含有量のより好ましい上限は0.045%であり、更に好ましくは0.04%以下とするのが良い。実質的に0%であってもよい。
Al:0.01〜1.5%
Alは0.01%以上含有させることにより、鉱物や海水などの腐食環境において安定な酸化物を形成して耐食性向上に寄与する元素である。また、Alも前記したSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために有効な元素である。しかし、1.5%を超えて含有させると溶接性を害するため、Alは1.5%以下とすることが好ましい。なお、Alの含有量の好ましい下限は0.011%であり、より好ましくは0.012%以上とするのが良い。また、Alの含有量の好ましい上限は1.4%であり、より好ましくは1.3%以下とするのが良い。
Alは0.01%以上含有させることにより、鉱物や海水などの腐食環境において安定な酸化物を形成して耐食性向上に寄与する元素である。また、Alも前記したSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために有効な元素である。しかし、1.5%を超えて含有させると溶接性を害するため、Alは1.5%以下とすることが好ましい。なお、Alの含有量の好ましい下限は0.011%であり、より好ましくは0.012%以上とするのが良い。また、Alの含有量の好ましい上限は1.4%であり、より好ましくは1.3%以下とするのが良い。
Cu:0.05〜3.0%
Cuは鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用を有しており、0.05%以上添加することにより更なる耐食性向上が得られる元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Cuの含有量は3.0%以下とすることが好ましい。Cuの含有量の好ましい下限は0.08%であり、より好ましい下限は0.10%である。また、Cuの含有量の好ましい上限は2.95%であり、より好ましい上限は2.90%である。
Cuは鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用を有しており、0.05%以上添加することにより更なる耐食性向上が得られる元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Cuの含有量は3.0%以下とすることが好ましい。Cuの含有量の好ましい下限は0.08%であり、より好ましい下限は0.10%である。また、Cuの含有量の好ましい上限は2.95%であり、より好ましい上限は2.90%である。
Cr:0.05〜5.0%
CrはCuと同様に鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用を有しており、0.05%添加することにより耐食性の更なる向上が得られる元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Crの含有量は5.0%以下とすることが好ましい。Crの含有量の好ましい下限は0.08%であり、より好ましい下限は0.10%である。また、Crの含有量の好ましい上限は4.9%であり、より好ましい上限は4.8%である。
CrはCuと同様に鋼材表面に緻密な錆皮膜を形成する作用を有しており、0.05%添加することにより耐食性の更なる向上が得られる元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Crの含有量は5.0%以下とすることが好ましい。Crの含有量の好ましい下限は0.08%であり、より好ましい下限は0.10%である。また、Crの含有量の好ましい上限は4.9%であり、より好ましい上限は4.8%である。
N:0.001〜0.015%
Nは鋼中において窒化物の微細分散粒子を形成するため、鋼材の強度確保に有効な元素である。Nのこのような効果を得るためには、0.001%以上添加すればよい。しかし、過剰に添加すると、鋼材の靭性に悪影響を及ぼすことに加えて、溶接性も害する。よってNの上限は0.015%とすることが好ましい。なお、Nのより好ましい下限は0.0015%以上添加することが、0.002%以上がさらに好ましい。またN添加量はより好ましくは0.014%以下であり、0.013%以下がさらに好ましい。
Nは鋼中において窒化物の微細分散粒子を形成するため、鋼材の強度確保に有効な元素である。Nのこのような効果を得るためには、0.001%以上添加すればよい。しかし、過剰に添加すると、鋼材の靭性に悪影響を及ぼすことに加えて、溶接性も害する。よってNの上限は0.015%とすることが好ましい。なお、Nのより好ましい下限は0.0015%以上添加することが、0.002%以上がさらに好ましい。またN添加量はより好ましくは0.014%以下であり、0.013%以下がさらに好ましい。
Ni:0.01〜5.0%、Co:0.01〜5.0%、Mo:0.01〜2.5%、W:0.01〜2.5%、の少なくとも1種
Ni、Co、MoおよびWは鉄の溶解反応の活性度を低下させる作用を有しており、必要に応じて添加することにより耐食性の向上効果が得られる元素である。また、適量のNi、Co、Mo、Wは、鋼材の強度特性を向上させるにも有効である。こうした効果を発揮させるためには、夫々0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Ni、Coを含有させる場合はそれぞれ5.0%以下とし、Mo、Wを含有させる場合はそれぞれ2.5%以下とすることが好ましい。Ni、Co、Mo、Wを含有させるときのより好ましい下限はそれぞれ0.02%であり、0.03%以上とすることが更に好ましい。Ni、Coを含有させるときのより好ましい上限はそれぞれ4.9%であり、4.8%以下とすることが更に好ましい。MoとWについては、より好ましい上限は2.4%であり、2.3%以下とすることが更に好ましい。
Ni、Co、MoおよびWは鉄の溶解反応の活性度を低下させる作用を有しており、必要に応じて添加することにより耐食性の向上効果が得られる元素である。また、適量のNi、Co、Mo、Wは、鋼材の強度特性を向上させるにも有効である。こうした効果を発揮させるためには、夫々0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、Ni、Coを含有させる場合はそれぞれ5.0%以下とし、Mo、Wを含有させる場合はそれぞれ2.5%以下とすることが好ましい。Ni、Co、Mo、Wを含有させるときのより好ましい下限はそれぞれ0.02%であり、0.03%以上とすることが更に好ましい。Ni、Coを含有させるときのより好ましい上限はそれぞれ4.9%であり、4.8%以下とすることが更に好ましい。MoとWについては、より好ましい上限は2.4%であり、2.3%以下とすることが更に好ましい。
Mg:0.0005〜0.01%、Ca:0.0005〜0.01%、の少なくとも1種
Mg、Caは、使用環境において鋼材の表面近傍のpH低下を抑制する作用を有しており、必要に応じて添加することにより耐食性の向上効果が得られる元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、夫々0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、これら元素を含有させる場合は0.01%以下とすることが好ましい。Mg、Caを含有させるときのより好ましい下限は夫々0.0006%であり、更に好ましい下限は夫々0.0007%である。一方、Mg、Caを含有させるときのより好ましい上限は夫々0.0095%であり、更に好ましい上限は夫々0.009%である。
Mg、Caは、使用環境において鋼材の表面近傍のpH低下を抑制する作用を有しており、必要に応じて添加することにより耐食性の向上効果が得られる元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、夫々0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、これら元素を含有させる場合は0.01%以下とすることが好ましい。Mg、Caを含有させるときのより好ましい下限は夫々0.0006%であり、更に好ましい下限は夫々0.0007%である。一方、Mg、Caを含有させるときのより好ましい上限は夫々0.0095%であり、更に好ましい上限は夫々0.009%である。
Sn:0.0005〜0.1%、Sb:0.0005〜0.1%、Se:0.0005〜0.1%、Ga:0.0005〜0.1質量%、の少なくとも1種
Sn、Sb、Se、Gaは、鋼材表面の水素過電圧を増加させてカソード反応を抑制する作用を有しており、必要に応じて添加することにより耐食性の向上効果が得られる元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、Sn、Sb、Se、Gaを夫々0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、これら元素を含有させる場合は0.1%以下とすることが好ましい。Sn、Sb、Se、Gaを含有させるときのより好ましい下限は夫々0.0008%であり、更に好ましい下限は夫々0.0010%である。一方、Sn、Sb、Se、Gaを含有させるときのより好ましい上限は夫々0.09%であり、更に好ましい上限は夫々0.08%である。
Sn、Sb、Se、Gaは、鋼材表面の水素過電圧を増加させてカソード反応を抑制する作用を有しており、必要に応じて添加することにより耐食性の向上効果が得られる元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、Sn、Sb、Se、Gaを夫々0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これら元素の含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性を劣化させるので、これら元素を含有させる場合は0.1%以下とすることが好ましい。Sn、Sb、Se、Gaを含有させるときのより好ましい下限は夫々0.0008%であり、更に好ましい下限は夫々0.0010%である。一方、Sn、Sb、Se、Gaを含有させるときのより好ましい上限は夫々0.09%であり、更に好ましい上限は夫々0.08%である。
なお、Ti、Nb、Zr、VおよびBなどの強度向上に有効な元素も必要に応じて添加することができる。例えば、Ti、Nb、Zr、Vはそれぞれ0.001%以上、Bは0.0001%以上含有させることにより強度向上効果が発現される。しかし、これら元素を過剰に含有させると母材靭性や溶接性が劣化するため、これら元素を含有させる場合は、添加量には制限がある。Ti、Nb、Zr、Vを含有させるときはそれぞれ0.2%以下、Bを含有させるときは0.01%以下、とする。また、Ti、Nb、Zr、また、V、Zr,Znを含有させるときのより好ましい上限は0.19%であり、更に好ましい上限は0.18%である。Bを含有させるときのより好ましい上限は0.0095%であり、更に好ましい上限は0.009%である。
以上が、本発明の鋼材の好ましい添加元素の成分範囲の限定理由であり、残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、O、H等を挙げることができ、これらの元素は鋼材の諸特性を害さない程度で含有していても構わない。但し、これら不可避的不純物の合計含有量は、0.1%以下、好ましくは0.09%以下に抑えることによって、本発明による耐食性発現効果を極大化することができる。
<鋼材の製造方法>
本発明に用いる鋼材は、転炉製鋼法や電気炉製鋼法などに代表される通常の製造方法で製造した鋼材を用いることが可能である。例えば、以下に説明する方法により製造することが可能である。まず、転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、本発明で規定する成分組成に調整すると共に、温度調整をすることで二次精錬を行う。その後、連続鋳造法、造塊法等の通常の鋳造方法で鋼塊とすれば良い。なお、構造用部材として鋼材に必要な基本特性(機械的特性や溶接性)を確保するために、脱酸形式としてはキルド鋼を用いることが好ましく、より好ましくはAlキルド鋼を用いることが推奨される。その後、圧延や鍛造などの方法により、鋼板、鋼管、棒鋼、線材、形鋼等の形状に加工することが挙げられる。
本発明に用いる鋼材は、転炉製鋼法や電気炉製鋼法などに代表される通常の製造方法で製造した鋼材を用いることが可能である。例えば、以下に説明する方法により製造することが可能である。まず、転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、本発明で規定する成分組成に調整すると共に、温度調整をすることで二次精錬を行う。その後、連続鋳造法、造塊法等の通常の鋳造方法で鋼塊とすれば良い。なお、構造用部材として鋼材に必要な基本特性(機械的特性や溶接性)を確保するために、脱酸形式としてはキルド鋼を用いることが好ましく、より好ましくはAlキルド鋼を用いることが推奨される。その後、圧延や鍛造などの方法により、鋼板、鋼管、棒鋼、線材、形鋼等の形状に加工することが挙げられる。
<素地鋼材の表面処理>
本発明の防食効果を得るためには、表面層の素地鋼材表面に対する付着強度を十分確保する必要があり、表面層の形成前には鋼材表面を、ショットブラスト処理やグリッドブラスト処理などを適用して、鋼材のミルスケールや錆などを除去することが好ましい。上述のショットブラスト処理やグリッドブラスト処理では、用いる研削材の種類やサイズ分布などを適宜変更することにより、鋼材の表面粗さを調整することができる。鋼材の表面粗さとしては、JIS B 0601:2001に規定される十点平均粗さRzjisで、5μmから100μmとなるようにすることが例示できる。
本発明の防食効果を得るためには、表面層の素地鋼材表面に対する付着強度を十分確保する必要があり、表面層の形成前には鋼材表面を、ショットブラスト処理やグリッドブラスト処理などを適用して、鋼材のミルスケールや錆などを除去することが好ましい。上述のショットブラスト処理やグリッドブラスト処理では、用いる研削材の種類やサイズ分布などを適宜変更することにより、鋼材の表面粗さを調整することができる。鋼材の表面粗さとしては、JIS B 0601:2001に規定される十点平均粗さRzjisで、5μmから100μmとなるようにすることが例示できる。
<その他>
本発明の石炭鉱物の輸送および貯蔵用鋼材は、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、塩化ゴム系、アクリル樹脂系、フッ素樹脂系およびウレタン樹脂系などの塗料を用いて塗装を施して用いることももちろん可能である。塗装する場合には、塗膜の厚さが小さすぎすると十分な防食効果が得られず、塗膜の厚さが大きすぎると塗膜にクラックや剥離が形成されやすくなって、十分な防食効果が得られなくなる場合がある。このような観点から、塗料の種類によっても異なるが、塗膜の厚さは平均厚さで100〜600μmの範囲とすればよい。
本発明の石炭鉱物の輸送および貯蔵用鋼材は、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、塩化ゴム系、アクリル樹脂系、フッ素樹脂系およびウレタン樹脂系などの塗料を用いて塗装を施して用いることももちろん可能である。塗装する場合には、塗膜の厚さが小さすぎすると十分な防食効果が得られず、塗膜の厚さが大きすぎると塗膜にクラックや剥離が形成されやすくなって、十分な防食効果が得られなくなる場合がある。このような観点から、塗料の種類によっても異なるが、塗膜の厚さは平均厚さで100〜600μmの範囲とすればよい。
塗装する場合の塗装方法は、所望の塗料をスプレー塗布やはけ塗りなど通常の方法で塗装することにより形成することが可能である。塗装前には被塗装材となる素地鋼材表面を適度に洗浄することが推奨され、例えば、洗浄することで鋼材表面の付着塩分濃度を、NaCl換算で50mg/m2以下、好ましくは10mg/m2以下とすることが推奨される。また、塗膜の厚さを約200〜300μm以下として適用する場合には、塗装は1回塗りでもよい。しかし、塗膜の厚さが約200〜300μmを超える場合には2回塗りが推奨され、厚さが400〜500μmを超える場合は3回塗りが推奨される。
[テストピースの作製]
表1および2に示す種々の成分組成の鋼材を真空溶解炉により溶製し、50kgの鋼塊とした。得られた鋼塊の各々を1150℃に加熱した後、熱間圧延を行って、板厚10mmの鋼板(S1〜S41)とした。各鋼板より大きさ60×30×5(mm)の鋼片10を切り出した。すべての鋼片10の試験面1面(60mm×30mmの面)にはグリッドブラスト処理を施した。JIS B 0601:2001に規定される十点平均粗さRzjisが35μmになるように統一した。
表1および2に示す種々の成分組成の鋼材を真空溶解炉により溶製し、50kgの鋼塊とした。得られた鋼塊の各々を1150℃に加熱した後、熱間圧延を行って、板厚10mmの鋼板(S1〜S41)とした。各鋼板より大きさ60×30×5(mm)の鋼片10を切り出した。すべての鋼片10の試験面1面(60mm×30mmの面)にはグリッドブラスト処理を施した。JIS B 0601:2001に規定される十点平均粗さRzjisが35μmになるように統一した。
鋼片10を水洗およびアセトン洗浄をして乾燥させた後、表面層11を鋼片10の試験面1面に形成して、表3および4に示すNo.1〜51のテストピース1を得た。
表面層11の形成方法は以下の通りである。まず、CaCO3、FeCO3、SiO2、Fe2O3、Fe3O4、CaO、MgOなどの表面層の構成成分の試薬を適量混合し、本混合物とアルキルシリケートとを重量比で1:1で混合した。この混合液を塗布液として鋼片10に塗布し、300℃で30分間乾燥させて表面層11を得た。このとき、塗布量を変化させて表面層の厚さを調整した。なお、厚さが200μmを超えるものについては、このような塗布および乾燥を複数回繰り返して、所望の表面層厚さとした。表3および4に示した表面層の組成はX線回折法(XRD)で求めたものである。また、表面層の厚さは電磁膜厚計で測定したものである。
すべてのテストピースの試験面には、図1に示すように直径3.2mmの固定用の穴12a、12bを2個形成した。すべてのテストピースは、図2に示すように試験面以外の面をテフロンテープ13で被覆した。テストピースのN数はいずれも3個として、下記の腐食試験に供試した。
[腐食試験方法]
海浜地域において石炭と接触する部材を模擬する試験として、電動コンクリートミキサーを用いて腐食試験を実施した。まず、内径約550mmのドラム内面に上記テストピースをネジ止めし、石炭30kgおよび人工海水30kgをドラム内に挿入した。この状態で電動コンクリートミキサーを回転させることにより、石炭による摩擦・摩耗作用と人工海水による腐食作用を同時にテストピース付与した。なお、用いた石炭は粉炭であり、ドラムの回転は1日あたり7時間とし、その他の17時間は静止状態とした。ドラム回転時の回転速度は6rpmである。なお、ドラム静止状態では、テストピースに人工海水が浸漬されないような状態で停止させた。試験期間は100日間とした。
海浜地域において石炭と接触する部材を模擬する試験として、電動コンクリートミキサーを用いて腐食試験を実施した。まず、内径約550mmのドラム内面に上記テストピースをネジ止めし、石炭30kgおよび人工海水30kgをドラム内に挿入した。この状態で電動コンクリートミキサーを回転させることにより、石炭による摩擦・摩耗作用と人工海水による腐食作用を同時にテストピース付与した。なお、用いた石炭は粉炭であり、ドラムの回転は1日あたり7時間とし、その他の17時間は静止状態とした。ドラム回転時の回転速度は6rpmである。なお、ドラム静止状態では、テストピースに人工海水が浸漬されないような状態で停止させた。試験期間は100日間とした。
[腐食試験結果]
100日間の試験後、各テストピースの平均腐食量および最大腐食深さを測定した。まず、試験後にインヒビターを添加した塩酸に各テストピースを浸漬して、軽いブラッシングにより腐食生成物を除去した。その後、水洗、アセトン洗浄および温風による乾燥を行い、重量測定を行った。試験前後の重量変化を各テストピースの腐食量とし、それぞれ3個の平均値を平均腐食量とした。また、デプスゲージを用いて各テストピースの局部腐食深さを測定し、各3個のテストピースの中で深さの最大値(最大腐食深さ)を求めた。
100日間の試験後、各テストピースの平均腐食量および最大腐食深さを測定した。まず、試験後にインヒビターを添加した塩酸に各テストピースを浸漬して、軽いブラッシングにより腐食生成物を除去した。その後、水洗、アセトン洗浄および温風による乾燥を行い、重量測定を行った。試験前後の重量変化を各テストピースの腐食量とし、それぞれ3個の平均値を平均腐食量とした。また、デプスゲージを用いて各テストピースの局部腐食深さを測定し、各3個のテストピースの中で深さの最大値(最大腐食深さ)を求めた。
海浜地域において石炭と接触する部材を模擬した腐食試験で得られた平均腐食量および最大腐食深さは表3および4に示す通りである。それぞれNo.1のテストピース(通常鋼)の平均腐食量および最大腐食深さをそれぞれ100としたときの相対値で示している。
耐食性の評価においては、下記基準によってA〜Eに区分した。平均腐食量および最大腐食深さの評価基準は、それぞれ以下の通りである。
A:テストピースNo.1に対する相対値が55未満
B:テストピースNo.1に対する相対値が55以上、70未満
C:テストピースNo.1に対する相対値が70以上、85未満
D:テストピースNo.1に対する相対値が85以上、100未満
E:テストピースNo.1に対する相対値が100以上
B:テストピースNo.1に対する相対値が55以上、70未満
C:テストピースNo.1に対する相対値が70以上、85未満
D:テストピースNo.1に対する相対値が85以上、100未満
E:テストピースNo.1に対する相対値が100以上
総合評価では、以上の平均腐食量および最大腐食深さの評価から下記の基準に従ってA〜Gでランク付けを行い、E以上を合格とした。
A:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれもA
B:平均腐食量及び最大腐食深さの評価の一方がAで他方がB
C:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれもB
D:平均腐食量及び最大腐食深さの評価の一方がCで他方がB以上
E:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれもC
F:平均腐食量及び最大腐食深さの評価のいずれか一方がD、他方がD以上
G:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれか一方がE
H:平均腐食量及び最大腐食深さの評価いずれもE
A:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれもA
B:平均腐食量及び最大腐食深さの評価の一方がAで他方がB
C:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれもB
D:平均腐食量及び最大腐食深さの評価の一方がCで他方がB以上
E:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれもC
F:平均腐食量及び最大腐食深さの評価のいずれか一方がD、他方がD以上
G:平均腐食量及び最大腐食深さの評価がいずれか一方がE
H:平均腐食量及び最大腐食深さの評価いずれもE
以上の結果から、本発明の構成を満たす鋼材はいずれも平均腐食量および最大腐食深さが通常鋼を用いたテストピースNo.1に比べて小さくなっており、耐食性に優れていることが明らかである。したがって、本発明の鋼材は、海水由来の塩分を含み、石炭鉱物と接触する環境で使用した場合に腐食衰耗が進展し難い鋼材であり、長寿命およびメンテナンス負荷低減ができると判断される。
Claims (10)
- 素地鋼材と、前記素地鋼材の表面上に形成された表面層を備える表面被覆鋼材であって、
前記表面層は、CaCO3、FeCO3、SiO2を含む物質からなり、前記物質中のCaCO3濃度が10〜70質量%、FeCO3濃度が1〜30質量%、SiO2濃度が1〜30質量%であり;
前記表面層の平均厚さが100〜1000μmである
ことを特徴とする表面被覆鋼材。 - CaCO3濃度、FeCO3濃度、SiO2濃度の合計量が80%〜100%であることを特徴とする、請求項1に記載の表面被覆鋼材。
- CaCO3濃度、FeCO3濃度、SiO2濃度の合計量が90%〜100%であることを特徴とする、請求項1に記載の表面被覆鋼材
- 前記物質中のCaCO3濃度、FeCO3濃度およびSiO2濃度をそれぞれ[%CaCO3]、[%FeCO3]および[%SiO2]として、A=([%CaCO3]+[%FeCO3])/[%SiO2]とした場合に、Aが1〜95を満足する請求項1〜3いずれかに記載の表面被覆鋼材。
- 上記素地鋼材が、
C :0.01〜0.50質量%、
Si:0.05〜3.0質量%、
Mn:0.05〜3.0質量%、
P :0.05質量%以下、
S :0.05質量%以下、
Al:0.01〜1.5質量%、
Cu:0.05〜3.0質量%、
Cr:0.05〜5.0質量%、
N :0.001〜0.015質量%、および
残部:Fe及び不可避的不純物
である組成を有する請求項1〜3いずれかに記載の表面被覆鋼材。 - 上記素地鋼材が、
Ni:0.01〜5.0質量%、
Co:0.01〜5.0質量%
Mo:0.01〜2.5質量%、および
W :0.01〜2.5質量%
のうち少なくとも1種をさらに含有する請求項5に記載の表面被覆鋼材。 - 上記素地鋼材が、
Mg:0.0005〜0.01質量%、および
Ca:0.0005〜0.01質量%
のうち少なくとも1種をさらに含有する請求項5または請求項6に記載の表面被覆鋼材。 - 上記素地鋼材が、
Sn:0.0005〜0.1質量%、
Sb:0.0005〜0.1質量%、
Se:0.0005〜0.1質量%、および
Ga:0.0005〜0.1質量%
のうち少なくとも1種をさらに含有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の表面被覆鋼材。 - 上記素地鋼材が、
Ti:0.2質量%以下、
Nb:0.2質量%以下、
Zr:0.2質量%以下、
V :0.2質量%以下、および
B :0.01質量%以下
のうち少なくとも1種をさらに含有する請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の表面被覆鋼材。 - 請求項1に記載の表面被覆鋼材の製造方法であって、
CaCO3、FeCO3、SiO2を含む粉末が溶媒に分散した分散液を素地鋼材の表面に塗布および乾燥して、CaCO3、FeCO3、SiO2を含む表面層を前記鋼材の表面に形成する工程
を含み、
前記表面層は、CaCO3、FeCO3、SiO2を含む物質からなり、前記物質中のCaCO3濃度が10〜70質量%、FeCO3濃度が1〜30質量%、SiO2濃度が1〜30質量%であり;
前記表面層の平均厚さが100〜1000μmである
ことを特徴とする、表面被覆鋼材の製造方法。
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JP2020132994A (ja) * | 2019-02-26 | 2020-08-31 | 日本製鉄株式会社 | 石炭専用船又は鉱炭兼用船の船倉用耐食耐摩耗鋼 |
WO2021035898A1 (zh) * | 2019-08-24 | 2021-03-04 | 湖南长重机器股份有限公司 | 一种斗轮机料斗耐磨衬板及其制备方法 |
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- 2016-07-13 JP JP2016138613A patent/JP2018009219A/ja active Pending
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