以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における減衰弁Vは、図1および図2に示すように、緩衝器Dのピストン部に適用されている。具体的には、減衰弁Vは、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するとともに伸側室R1と圧側室R2を連通する伸側通路3と圧側通路4とを有するバルブディスクとしてのピストン2と、ピストン2に離着座して伸側通路3を開閉可能な伸側弁体としての伸側リーフバルブ5と、ピストン2に離着座して圧側通路4を開閉可能な圧側弁体としての圧側リーフバルブ9と、伸側リーフバルブ5を附勢する伸側ばね32と、圧側リーフバルブ9を附勢する圧側ばね35と、伸側ばね32と圧側ばね35の附勢力を変更可能な減衰力調整部11とを備えて構成されている。
また、本実施の形態の減衰弁Vが適用される緩衝器Dは、本例では、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1に移動自在に挿入されてシリンダ1内を図中上方の伸側室R1と図中下方の圧側室R2と区画するピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド12と、シリンダ1内にリザーバRを区画する仕切部材13と、仕切部材13に設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう流体の流れのみを許容しこの流れに抵抗を与えるベースバルブ14を有する排出通路15と、仕切部材13に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁16を有する吸込通路17とを備えて構成されている。また、伸側室R1、圧側室R2およびリザーバR内には流体として作動油が充填されるとともにリザーバRには作動油の他に気体が充填されている。なお、流体には、作動油以外にも、減衰弁Vにて減衰力を発揮可能な流体を使用可能である。本例では、緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ10の下端に図外の二輪車の車軸を支持するアクスルブラケットABを介して連結されてシリンダ1の外周に設けられるインナーチューブITと、ピストンロッド12の上端が連結されてインナーチューブITが摺動自在に挿入されるアウターチューブOTとを備えた二輪車用のフロントフォークFに内蔵されている。なお、図2では、アウターチューブOTの記載を省略している。
前述のように構成された緩衝器Dは、収縮作動する際には、ピストン2が図1中下方へ移動して圧側室R2が圧縮され、圧側室R2内の作動油が圧側通路4を介して伸側室R1へ移動する。また、緩衝器Dの収縮動時には、ピストンロッド12がシリンダ1内に侵入するためシリンダ1内でピストンロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ1から押し出されて排出通路15を介してリザーバRへ排出される。緩衝器D1は、シリンダ1内からリザーバRへ移動する作動油の流れにベースバルブ14で抵抗を与え、圧側室R2内の圧力を上昇させるとともに、圧側リーフバルブ9により圧側室R2から伸側室R1へ向かう流体の流れに抵抗を与えて圧側室R2と伸側室R1の圧力に差を生じせしめて圧側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝器Dが伸長作動する際には、ピストン2が図1中上方へ移動して伸側室R1が圧縮され、伸側室R1内の作動油が伸側通路3を介して圧側室R2へ移動する。この伸長作動時には、ピストン2が上方へ移動してピストンロッド12がシリンダ1内から退出してシリンダ1内でピストンロッド退出体積分の作動油が不足するため、この不足分の作動油は吸込通路17を介してリザーバRから供給される。そして、緩衝器Dは、伸側室R1から圧側室R2へ移動する作動油の流れに伸側リーフバルブ5で抵抗を与え、伸側室R1内の圧力を上昇させて伸側室R1と圧側室R2の圧力に差を生じせしめて伸側減衰力を発揮する。
以下、減衰弁Vおよび緩衝器Dについて詳細に説明する。図2に示すように、ピストンロッド12は、本例では、ピストン2を保持するピストン保持部材24と、一端がピストン保持部材24に連結されてピストン保持部材24とともにソレノイドSを収容するソレノイド収容筒25と、一端がソレノイド収容筒25に連結されるとともに他端がシリンダ10の上端から外方へ突出するロッド部材26とで形成されている。
ピストン保持部材24は、外周に環状のピストン2が装着される小径部24bと小径部24bの基端側の大径部24cとを有する保持軸24aと、保持軸24aの図2中上端外周に設けたフランジ24dと、保持軸24aを上下に貫く中空部24eと、大径部24cの側方から開口して中空部24eへ通じる軸方向に沿う長孔24fとを備えて構成されている。
ソレノイド収容筒25は、有頂筒状の収容筒部25aと、収容筒部25aよりも外径が小径であって収容筒部25aの頂部から図2中上方へ伸びる筒状の連結部25bとを備えて構成されている。そして、ソレノイド収容筒25の収容筒部25aの内周にピストン保持部材24のフランジ24dを螺着して、ソレノイド収容筒25にピストン保持部材24が一体化されるようになっている。
ロッド部材26は、筒状であって、図2中下端の内周にソレノイド収容筒25の連結部25bの挿入を許容し、この連結部25bの螺着を可能とする螺子部(符示せず)を備えている。このように、ロッド部材26、ソレノイド収容筒25およびピストン保持部材24を一体化すると、ピストンロッド12が形成される。また、ロッド部材26および連結部25b内には、後述するソレノイドSへ電力供給するハーネスHが挿通されており、ハーネスHの上端について図示はしないがロッド部材26の上端から外方へ伸びており、電源に接続される。
ピストン保持部材24の小径部24bの外周には、図2に示すように、環状のピストン2とともに伸側リーフバルブ5と圧側リーフバルブ9が組み付けられ、これらが小径部24bの外周に螺着されるナット27と大径部24cの段部とで挟持されて保持軸24aに固定される。ピストン2は、伸側室R1と圧側室R2を連通する伸側通路3と圧側通路4とを備えている。伸側リーフバルブ5は、ピストン2の圧側室側に積層されて伸側通路3を閉じるようになっていて、内周がナット27と前記大径部24cの段部とで挟持されて固定され外周側が撓むと伸側通路3を開放するようになっている。圧側リーフバルブ9は、ピストン2の伸側室側に積層されて圧側通路4を閉じるようになっていて、内周がナット27と前記大径部24cの段部とで挟持されて固定され外周側が撓むと圧側通路4を開放するようになっている。
なお、小径部24bには、前述したピストン2、伸側リーフバルブ5および圧側リーフバルブ9とともに、伸側リーフバルブ5の最大撓み量を規制するバルブストッパ28と圧側リーフバルブ9の最大撓み量を規制するバルブストッパ29も装着されている。
さらに、小径部24bの先端には、伸側リーフバルブ5の外周に当接する伸側プッシャー30が摺動自在に装着されている。伸側プッシャー30は、小径部24bの先端外周に摺接する環状のガイド部30aと、ガイド部30aの図2中上端外周に設けた鍔30bと、鍔30bの図2中外周から上方に立ち上がり伸側リーフバルブ5の外周に当接する環状の当接部30cとを備えて構成される。
なお、鍔30bには、伸側リーフバルブ5と伸側プッシャー30との間の空間内を外方へ連通する圧抜き孔30dが設けられている。よって、伸側リーフバルブ5が撓んで前記空間の容積が変化しても、空間内の圧力変動が生じないので、伸側リーフバルブ5の伸側通路3の開閉作動が円滑に行われる。また、伸側プッシャー30のガイド部30a内には、伸側ばね受31が移動自在に挿入されている。伸側ばね受31は、筒状であってガイド部30a内に移動自在に挿入される連結筒31aと、連結筒31aの図2中下端外周に設けたフランジ31bとを備えている。そして、伸側プッシャー30の鍔30bと伸側ばね受31のフランジ31bとの間には、伸側ばね32が介装されており、伸側ばね32の附勢力が伸側プッシャー30を介して伸側リーフバルブ5の外周に作用するようになっている。このように、伸側ばね受31は、伸側ばね32の反圧側弁体側である図2中下側に当接している。なお、伸側ばね32は、弾発力を発揮して圧側プッシャー33を附勢できるものであればよい。
他方、保持軸24aの大径部24cの外周には、圧側リーフバルブ9の外周に当接する圧側プッシャー33が摺動自在に装着されている。圧側プッシャー33は、大径部24cの外周に摺接する環状のガイド部33aと、ガイド部33aの図2中下端外周に設けた鍔33bと、鍔33bの図2中外周から下方に垂下されて圧側リーフバルブ9の外周に当接する環状の当接部33cとを備えて構成される。
なお、鍔33bには、圧側リーフバルブ9と圧側プッシャー33との間の空間内を外方へ連通する圧抜き孔33dが設けられている。よって、圧側リーフバルブ9が撓んで前記空間の容積が変化しても、空間内の圧力変動が生じないので、圧側リーフバルブ9の圧側通路4の開閉作動が円滑に行われる。また、大径部24cの圧側プッシャー33の装着部位よりも図2中上方の伸側室側には、圧側ばね受34が摺動自在に装着されている。圧側ばね受34は、筒状であって大径部24cの外周に摺接する摺接筒34aと、摺接筒34aの図2中上端外周に設けたフランジ34bとを備えている。そして、圧側プッシャー33の鍔33bと圧側ばね受34のフランジ34bとの間には、圧側ばね35が介装されており、圧側ばね35の附勢力が圧側プッシャー33を介して圧側リーフバルブ9の外周に作用するようになっている。このように、圧側ばね受34は、圧側ばね35の反圧側弁体側である図2中上側に当接している。なお、圧側ばね35は、弾発力を発揮して圧側プッシャー33を附勢できるものであればよい。
つづいて、ピストン保持部材24の中空部24e内には、伸側ばね受31と圧側ばね受34とを連係させる連係軸36が軸方向となる図2中上下方向に移動可能に挿入されている。
連係軸36は、先端が伸側ばね受31の連結筒31aに螺着されており、図2中上方側となる伸側室側の外径が大径とされて外周に段部36aが設けられている。そして、連係軸36の段部36aには、プレート37が積層されている。このプレート37は、環状であって連係軸36の段部36aに積層される環状部37aと、環状部37aの外周に互いに反対向きに設けられてピストン保持部材24の大径部24cに設けた長孔24fから保持軸24a外へ突出する一対の腕37bとを備えている。
腕37bは、前述のように、ピストン保持部材24の大径部24cに設けた長孔24fから突出していて、圧側ばね受34の図2中上端となる反ばね側端に当接している。
プレート37は、連係軸36の段部36aに積層されており、連係軸36に対して図2中上方側への相対移動が規制されているので、連係軸36に対して圧側ばね受34も図2中上方側への相対移動が規制される。また、連係軸36の先端は、伸側ばね受31に連結されている。さらに、伸側ばね32は、伸側プッシャー30と伸側ばね受31との間に圧縮状態で介装されており、圧側ばね35もまた、圧側プッシャー33と圧側ばね受34との間に圧縮状態で介装されている。
よって、伸側ばね受31と圧側ばね受34は、連係軸36と伸側ばね32、圧側ばね35によって位置決めされており、両者の間隔が一定に保たれている。伸側ばね受31と圧側ばね受34が連係軸36に対して相対移動しないので、連係軸36を軸方向となる図2中上下方向へさせると、伸側ばね受31および圧側ばね受34は両者の間隔を一定に保ったまま、連係軸36とともに図2中上下方向へ移動する。なお、連係軸36が伸側ばね受31と圧側ばね受34の双方に連係するとは、連係軸36が伸側ばね受31と圧側ばね受34の双方に対して軸方向に相対移動しない関係性に保たれつつ、自身の移動によって伸側ばね受31と圧側ばね受34を軸方向へ駆動可能である状態を指している。よって、連係軸36は、伸側ばね受31と圧側ばね受34の双方に直接に連結されてもよいし、何らかの部材を介して間接的に連結されてもよい。
また、本例では、連係軸36は、ソレノイドSによって駆動されるようになっている。ソレノイドSは、ソレノイド収容筒25内に収容されており、コイル45を備えた筒状のステータ46と、ステータ46内に移動自在に挿入された筒状の可動鉄心47と、可動鉄心47の内周に装着されるプランジャ48とを備えている。そして、ソレノイド収容筒25の下端にピストン保持部材24を螺着すると、ソレノイドSがソレノイド収容筒25内に収容されて固定される。
そして、ソレノイドSのプランジャ48は、連係軸36の図2中上端に接しており、ソレノイドSへ通電するとプランジャ48が図2中下方へ移動して、連係軸36が下方へ押し下げられる。連係軸36が押下げられると、圧側ばね35の圧縮量が大きくなり、反対に、伸側ばね32の圧縮量が小さくなるので、圧側ばね35と伸側ばね32の附勢力の合力は連係軸36を図2中上方側に附勢する方向に発揮される。また、ソレノイドSが連係軸36を下方へ押し下げる力はソレノイドSへの電流供給量に応じて調整される。よって、連係軸36は、ソレノイドSへの通電による推力と伸側ばね32および圧側ばね35の附勢力の合力とが釣り合った位置に停止するので、ソレノイドSへの電流供給量により連係軸36の位置を制御できる。また、ソレノイドSへ通電して連係軸36を下方へ押し下げた状態からソレノイドSへの通電を停止すると、伸側ばね32および圧側ばね35の附勢力が釣り合う位置まで連係軸36が移動する。図2では、ソレノイドSへの電流供給を停止した状態を図示したもので、この状態では、連係軸36は、図2中最上方に位置決めされる。なお、プレート37の腕37bの軸方向移動範囲が長孔24fによって規制されており、連係軸36の段部36aにプレート37が積層されているので、連係軸36の移動範囲も長孔24fの図2中上下方向長さによって設定される。つまり、本例では、ピストン保持部材24が連係軸36の移動限界を規制するストッパとしても機能しているが、連係軸36が最大限にストロークしても、長孔24fにプレート37の腕37bが接触しないようになっていてもよい。
このように、連係軸36を駆動すると、伸側ばね32と圧側ばね35の圧縮量を変更できる。連係軸36が図2に示す位置にある状態、つまり、ソレノイドSへ通電しない場合、伸側ばね32と圧側ばね35が発揮する附勢力は等しくなり釣り合っている状態となる。ソレノイドSへ最大電流を供給すると、連係軸36が図2中最下方へ移動し、伸側ばね32の圧縮量が最小となり、圧側ばね35の圧縮量が最大となる。
つまり、伸側ばね32の圧縮量は、ソレノイドSへ電流供給しないと大きくなり、ソレノイドSへ電流供給すると小さくなる。つまり、ソレノイドSへ電流供給しない場合における伸側ばね32が伸側リーフバルブ5を附勢する附勢力は、ソレノイドSへ電流供給する場合における伸側ばね32が伸側リーフバルブ5を附勢する附勢力よりも大きい。また、伸側リーフバルブ5の開弁圧は、伸側ばね32の附勢力が大きくなるほど大きくなる。
対して、圧側ばね35の圧縮量は、ソレノイドSへ電流供給しないと小さくなり、ソレノイドSへ電流供給すると大きくなる。つまり、ソレノイドSへ電流供給しない場合における圧側ばね35が圧側リーフバルブ9を附勢する附勢力は、ソレノイドSへ電流供給する場合における圧側ばね35が圧側リーフバルブ9を附勢する附勢力よりも小さい。また、圧側リーフバルブ9の開弁圧は、圧側ばね35の附勢力が大きくなるほど大きくなる。
前述したところを整理すると、ソレノイドSへ電流供給しない状態では、伸側リーフバルブ5の開弁圧は大きくなるとともに圧側リーフバルブ9の開弁圧は小さくなり、ソレノイドSへ電流供給する状態では、伸側リーフバルブ5の開弁圧は小さくなるとともに圧側リーフバルブ9の開弁圧は大きくなる。
このように、減衰力調整部11は、伸側ばね32の反伸側弁体側に当接する伸側ばね受31と、圧側ばね35の反圧側弁体側に当接する圧側ばね受34と、伸側ばね受31と圧側ばね受34とを連係させる連係軸36と、連係軸36を介して伸側ばね受31と圧側ばね受34とを駆動するソレノイドSとを備えて構成されている。
減衰弁Vおよび緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下に作動を説明する。前述のとおり、ソレノイドSへ電流供給しない場合、伸側リーフバルブ5の開弁圧は大きく、圧側リーフバルブ9の開弁圧は小さい。
この状態では、緩衝器Dが伸長する場合、圧縮される伸側室R1の作動油は伸側リーフバルブ5を押し開いて伸側通路3を介して拡大される圧側室R2へ移動するが、伸側リーフバルブ5の開弁圧が大きく、伸側リーフバルブ5が作動油の流れ与える抵抗は大きい。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、緩衝器Dが伸長する際に発生される伸側減衰力は高くなり、伸側減衰力はハードとなる。反対に、緩衝器Dが収縮する場合、圧縮される圧側室R2の作動油は圧側リーフバルブ9を押し開いて圧側通路4を介して拡大される伸側室R1へ移動するが、圧側リーフバルブ9の開弁圧が小さく、圧側リーフバルブ9が作動油の流れ与える抵抗は小さい。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、緩衝器Dが収縮する際に発生される圧側減衰力は低くなり、圧側減衰力はソフトとなる。
対して、ソレノイドSに最大電流量を供給する場合、伸側リーフバルブ5の開弁圧は小さく、圧側リーフバルブ9の開弁圧は大きい。この状態では、緩衝器Dが伸長する場合、圧縮される伸側室R1の作動油は伸側リーフバルブ5を押し開いて伸側通路3を介して拡大される圧側室R2へ移動するが、伸側リーフバルブ5の開弁圧が小さく、伸側リーフバルブ5が作動油の流れ与える抵抗は小さい。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、緩衝器Dが伸長する際に発生される伸側減衰力は低くなり、伸側減衰力はソフトとなる。反対に、緩衝器Dが収縮する場合、圧縮される圧側室R2の作動油は圧側リーフバルブ9を押し開いて圧側通路4を介して拡大される伸側室R1へ移動するが、圧側リーフバルブ9の開弁圧が大きく、圧側リーフバルブ9が作動油の流れ与える抵抗は大きい。よって、ソレノイドSへ電流供給しない場合、緩衝器Dが収縮する際に発生される圧側減衰力は低くなり、圧側減衰力はハードとなる。
つづいて、ソレノイドSに最大の二分の一の電流量を供給する場合、伸側リーフバルブ5の開弁圧も圧側リーフバルブ9の開弁圧も最大と最小の中間となる。この状態では、緩衝器Dが伸長しても収縮しても、緩衝器Dが発生する伸側減衰力および圧側減衰力は最小と最大の中間程度となり、伸圧両側で減衰力はミディアムとなる。
前述したとおり、二輪車では、車体が軽量で振動周波数が四輪自動車に比較すると高く、伸圧とも減衰力調整が同じに設定されると、伸縮の切換わりで減衰力の大きさを変更しようとしてもシステムの応答に時間がかかって減衰力調整が間に合わず却って車両における乗り心地を損なうと経験的に分かっている。これに対して、伸側減衰力をハードにした場合には圧側減衰力をソフトにし、伸側減衰力をソフトにした場合には圧側減衰力をハードにし、伸側減衰力をミディアムにした場合には圧側減衰力もミディアムにした場合、二輪車における車体振動を効果的に抑制できると発明者は知見するに至った。
本発明の減衰弁Vおよび緩衝器Dによれば、伸側減衰力をハードにする場合には圧側減衰力をソフトに調整でき、伸側減衰力をソフトにする場合には圧側減衰力をハードに調整でき、さらには、伸側減衰力をミディアムにする場合には圧側減衰力もミディアムに調整できる。よって、本発明の減衰弁Vおよび減衰弁Vを適用した緩衝器Dによれば、二輪車における乗り心地を効果的に向上できるのである。
また、本例の減衰弁Vでは、減衰力調整部11が伸側ばね32の反伸側弁体側に当接する伸側ばね受31と、圧側ばね35の反圧側弁体側に当接する圧側ばね受34と、伸側ばね受31と圧側ばね受34とを駆動するソレノイドSとを有して構成されている。このように減衰弁Vが構成されると、単一のソレノイドSによって伸側減衰力と圧側減衰力の大きさを伸側と圧側とで反対となるように調整でき、コストが安価となる。
さらに、本例の減衰弁Vでは、減衰力調整部11が伸側ばね受31と圧側ばね受34とを連係させる連係軸36を有し、ソレノイドSで連係軸36を駆動して伸側ばね受31と圧側ばね受34を駆動する。このように減衰弁Vが構成されると、連係軸36で伸側ばね受31と圧側ばね受34とを連係させて駆動できるので、簡単な構造で減衰力調整部11を具体化できる。なお、連係軸36は、ピストン保持部材24の保持軸24aに設けた中空部24e内に挿通される構造を採用すると、緩衝器Dのピストン部に無理なく連係軸36を組み込めて、減衰弁Vを小型化できる。
また、本例の減衰弁Vでは、伸側弁体および圧側弁体が環状のリーフバルブ5,9とされている。このように減衰弁Vが構成されると、伸側および圧側のリーフバルブ5,9はポペット弁等といった他の形態の弁に比較して軸方向の厚みが短く、緩衝器Dのピストン部に減衰弁Vを適用した場合に、減衰弁Vの全長を短くできる。なお、伸側弁体および圧側弁体には、リーフバルブ以外の形態のポペット弁等の他の形態の弁体の利用が可能である。
なお、減衰弁Vは、本例では、緩衝器Dのピストン部に組み込まれているが、バルブディスクをシリンダ1外に設け、減衰弁Vもバルブディスクとともにシリンダ1外に設けてもよい。ピストン2をバルブディスクとする場合、シリンダ1内に減衰弁Vを収容できるので、緩衝器Dの径方向の大きさを小型できる。
さらに、本例の減衰弁Vでは、伸側プッシャー30が伸側リーフバルブ5の外周に伸側ばね32の附勢力をさせ、圧側プッシャー33が圧側リーフバルブ9の外周に圧側ばね35の附勢力をさせている。このように伸側ばね32と圧側ばね35の附勢力をリーフバルブ5,9の外周に作用させると、リーフバルブ5,9が伸側通路3或いは圧側通路4を開閉する際にリーフバルブ5,9がビビるような振動を呈するのを防止でき、安定した伸側および圧側の減衰力を発揮できる。
また、ソレノイドSは、通電時に連係軸36を図2中下方へ押し下げるプッシュ型のソレノイドとされているが、逆に、通電時に連係軸36を図2中上方へ押し上げるプル型のソレノイドとされてもよい。この場合には、ソレノイドSへの通電時には、伸側ばね32の圧縮量が大きくなるとともに圧側ばね35の圧縮量が小さくなり、非通電時には、伸側ばね32の圧縮量が小さくなるとともに圧側ばね35の圧縮量が大きくなる。このようにしても、伸側減衰力をハードにする場合には圧側減衰力をソフトに調整でき、伸側減衰力をソフトにする場合には圧側減衰力をハードに調整でき、さらには、伸側減衰力をミディアムにする場合には圧側減衰力もミディアムに調整できる。さらには、ソレノイドSをプッシュプル型のソレノイドとしてもよく、この場合も、伸側減衰力をハードにする場合には圧側減衰力をソフトに調整でき、伸側減衰力をソフトにする場合には圧側減衰力をハードに調整でき、さらには、伸側減衰力をミディアムにする場合には圧側減衰力もミディアムに調整できる。よって、ソレノイドSの形式によらず、本発明の減衰弁Vおよび減衰弁Vを適用した緩衝器Dによれば、二輪車における乗り心地を効果的に向上できるのである。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。