JP4777912B2 - 緩衝器のバルブ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、緩衝器のバルブ構造の改良に関する。
従来、この種緩衝器のバルブ構造にあっては、たとえば、車両用の緩衝器のピストン部等に具現化され、ピストン部に設けたポートの出口端に環状のリーフバルブを積層し、このリーフバルブでポートを開閉するものが知られている。
そして、特に、リーフバルブの内周を固定支持し外周側を撓ませることによりポートをリーフバルブで開閉する上記緩衝器のバルブ構造では、ピストン速度が中高速領域における減衰力が大きくなりすぎ車両における乗り心地を損なう場合があり、これを解消するため、図3に示すように、リーフバルブLの内周側を固定的に支持せずに、リーフバルブLの内周をピストンロッドRもしくはピストンPをピストンロッドRに固定する筒状のピストンナットNの外周に摺接させ、スプリングSでメインバルブMを介してリーフバルブLの背面を附勢した緩衝器のバルブ構造が提案されるに至っており、図示したところでは、緩衝器の伸側減衰バルブに具現化されている(たとえば、特許文献1参照)。
このバルブ構造を適用した緩衝器にあっては、図示するところではピストンPが上方へ移動する際のピストン速度が低速領域にあるときにはリーフバルブLの外周側がリーフバルブLに積層したメインバルブMの当接部位を支点として撓むので、図4に示すように、内周が固定的に支持されるバルブ構造と略同様の減衰特性を発揮し、ピストン速度が中高速領域に達すると、ポートPoを通過する作動油の圧力がリーフバルブLに作用し、スプリングSの附勢力に抗してリーフバルブLがメインバルブMとともにピストンPから軸方向にリフトして後退するので、内周が固定的に支持される緩衝器のバルブ構造に比較して流路面積が大きくなり、減衰力が過大となること抑制して、車両における乗り心地を向上することができる。
特開平9−291961号公報(図1)
しかしながら、上述のような提案のバルブ構造にあっては、車両における乗り心地を向上できる点で有用な技術ではあるが、以下の不具合があると指摘される可能性がある。
というのは、たとえば、上記ピストンPが上方に移動するときのピストン速度が高速領域に達すると、従来の緩衝器のバルブ構造では、ピストン速度に応じてリーフバルブLがピストンPから軸方向に後退してリフトするのみで、減衰係数は大きくならない。
したがって、ピストン速度が高速領域に達する場合の減衰力が不足気味となり、振動抑制が充分に行われず、車両における乗り心地を悪化させてしまうことになる。
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても車両における乗り心地を向上することができる緩衝器のバルブ構造を提供することである。
上記の目的を解決するために、本発明の手段は、シリンダ内に一方室と他方室とを隔成するとともに上記一方室と他方室とを連通するポートを備えたバルブディスクと、上記バルブディスクの他方室側面に積層されて上記ポートを閉塞する環状のリーフバルブと、上記バルブディスクの軸心部から立ち上がり上記リーフバルブの内周側に挿通される軸部材とを備えた緩衝器のバルブ構造において、上記ポートの他方室側開口端と上記一方室とを連通する連通路と、上記連通路の途中に設けられた流量制御弁とを設け、上記連通路は、上記バルブディスクに形成されて上記ポートの他方室側開口端に連通するディスク側通路と、上記軸部材の内部に形成されて上記一方室に連通する内部通路と、上記軸部材に形成されて上記内部通路と上記ディスク側通路とを連通する軸ポートとで構成され、上記流量制御弁は、上記内部通路内に摺動自在に挿入されるとともに上記一方室側に向けて附勢される中空なスプールと、上記スプールの外周に形成されて当該スプール内に連通させると共に上記軸ポートに対向させた環状溝とで構成し、ピストン速度が高速領域に達したとき上記一方室内の圧力で上記スプールを附勢力に抗して後退させて上記環状溝と上記軸ポートとのラップ面積を減じることで上記連通路の流路面積を減じさせることを特徴とするものである
本発明の緩衝器のバルブ構造によれば、ピストン速度が高速領域に達すると、減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
さらに、緩衝器が最伸長するような振幅が大きく、かつ、ピストン速度が高速領域に達するような状況下にあっては、減衰係数を大きくして緩衝器の発生減衰力を大きくすることができるので、ピストン速度を速やかに低減することができ、最伸長時の衝撃を緩和することができる。
本発明の実施の一例に示す緩衝器は図1に示すように、シリンダ40内に一方室41と他方室42とを隔成するとともに上記一方室41と他方室42とを連通するポート2を備えたバルブディスク1と、上記バルブディスク1の他方室側面に積層されて上記ポート2を閉塞する環状のリーフバルブ10と、上記バルブディスク1の軸心部から立ち上がり上記リーフバルブ10の内周側に挿通される軸部材5とを備えたものである。
そして、本発明では、上記ポート2の他方室側開口端と上記一方室41とを連通する連通路17と、上記連通路17の途中に設けられた流量制御弁20とを設け、上記連通路17は、上記バルブディスク1に形成されて上記ポート2の他方室側開口端に連通するディスク側通路18と、上記軸部材5の内部に形成されて上記一方室41に連通する内部通路と、上記軸部材5に形成されて上記内部通路と上記ディスク側通路18とを連通する軸ポート5fとで構成され、上記流量制御弁20は、上記内部通路内に摺動自在に挿入されるとともに上記一方室側41に向けて附勢される中空なスプール21と、上記スプール21の外周に形成されて当該スプール21内に連通させると共に上記軸ポート5fに対向させた環状溝22bとで構成し、ピストン速度が高速領域に達したとき上記一方室41内の圧力で上記スプール21を附勢力に抗して後退させて上記環状溝22bと上記軸ポート5fとのラップ面積を減じることで上記連通路17の流路面積を減じさせることを特徴とするものである。
一実施の形態における緩衝器のバルブ構造は、図1に示すように、緩衝器のピストン部の伸側減衰バルブに具現化されており、緩衝器D内に一方室41と他方室42とを隔成するとともに上記一方室41と他方室42とを連通するポート2を備えたバルブディスクたるピストン1と、ピストン1の軸心部から立ち上がる軸部材たるピストンロッド5と、内周側に上記ピストンロッド5が挿通されるとともに上記ピストン1の他方室側面となる底部1aに積層されてポート2を閉塞する環状のリーフバルブ10と、内周側にピストンロッド5が挿通されるとともにリーフバルブ10に積層される環状のバルブ抑え部材11と、ポート2を閉塞する方向にバルブ抑え部材11を介してリーフバルブ10を附勢する附勢手段たるコイルスプリング15と、ポート2の他方室側開口端と一方室41とを連通する連通路17と、一方室41の圧力が所定圧力以上となると連通路17の流路面積を減じる流量制御弁20とを備えて構成されている。
他方、バルブ構造が具現化される緩衝器は、周知であるので詳細には図示して説明しないが、具体的にたとえば、シリンダ40と、シリンダ40の上端を封止するヘッド部材(図示せず)と、ヘッド部材(図示せず)を摺動自在に貫通するピストンロッド5と、ピストンロッド5の端部に設けた上記ピストン1と、シリンダ40内にピストン1で隔成される図1中上方側の一方室41と下方側の他方室42と、シリンダ40の下端を封止する封止部材(図示せず)と、シリンダ40から出没するピストンロッド5の体積分のシリンダ内容積変化を補償する図示しないリザーバあるいはエア室とを備えて構成され、シリンダ40内には流体、具体的には作動油が充填されている。
そして、上記バルブ構造にあっては、シリンダ40に対してピストン1が図1中上方に移動するときに、一方室41内の圧力が上昇して一方室41から他方室42へポート2および連通路17を介して作動油が移動するときに、その作動油の移動にリーフバルブ10で抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、緩衝器に所定の減衰力を発生させる減衰力発生要素として機能する。
以下、このバルブ構造について詳しく説明すると、バルブディスクたるピストン1は、有底筒状に形成され、底部1aの軸心部に緩衝器のピストンロッド5が挿通される挿通孔1bと、ポート2と、ポート2の他方室側開口端に連通する環状の窓3と、窓3の外周側に形成されピストン1の底部1aよりリーフバルブ10側に突出する環状の弁座1cと、外周側に延設される筒部1fを備えて構成されている。
また、底部1aには、ポート2の他方室側開口端となる上記窓3と挿通孔1bとを連通するディスク側通路18が設けられている。このディスク側通路18は、本実施の形態においては、複数設けられているが、一つでもよく、また、ポート2の開口端に直接的に連通されてもよいし、ポート2の開口端に窓3を通じて連通されるようにしてもよい。
なお、このピストン1には、緩衝器が収縮するときに他方室42から一方室41へと向かう作動油の流れを許容する圧側のポート1dが底部1aの伸側のポート2より外周側に設けられている。
このピストン1の挿通孔1b内には上述のようにバルブディスクたるピストン1の軸芯部を貫通するピストンロッド5の先端5aが挿通され、ピストンロッド5の先端5aはピストン1の図1中下方側に突出させて、ピストン1の軸心部から立ち上がらせてある。なお、ピストンロッド5の先端5aの外径は、先端5aより図1中上方側の外径より小径に設定され、上方側と先端5aとの外径が異なる部分に段部5bが形成されている。
また、このピストンロッド5の先端5aは、その先端面5cから開口する縦穴5dが設けられて中空とされており、また、一方室41に面する側部から開口して上記縦穴5dに連通される横穴5eが設けられ、これらの縦穴5dと横穴5eとでピストンロッド5の内部たる内部通路を構成し、この内部通路は一方室41に連通している。さらに、上記縦穴5dは、ピストンロッド5の先端5aの側部に設けた軸ポート5fと先端5aの外周に設けた環状溝5gによってピストンロッド5の外方におけるディスク側通路18に連通されている。

上記縦穴5d内には、中空なスプール21が摺動自在に挿入され、このスプール21は、有底筒状の筒部22と、筒部22の図1中下端から伸びる軸部23とを備え、筒部22は、上端側外周が小径とされて、縦穴5eの内周との間に隙間が形成されている。
また、筒部22の小径となる上端側にスプール21の内外を連通する通孔22a,22aが設けられるとともに、筒部22の外周であって縦穴5d内周に摺接する摺接部22cには、スプール21内に連通される環状溝22bが設けられている。さらに、筒部22の底部から軸部23にかけて筒部22の内部と軸部23の外方とを連通する通孔22dが設けられ、一方室41側の圧力が筒部22の背面側、すなわち、筒部22の軸部23側の端部側にも作用するようになっている。
そして、上記スプール21は、軸部23の外周側に配置されるとともに、筒部22の下端と縦穴5dの図1中下方側に挿入される筒部材24との間に介装されるバネ25によって附勢されて、スプール21の図1中上端は、縦穴5eの底部に当接されている。なお、軸部23は、バネ25のガイドとして機能するとともに、筒部材24内に挿入されて筒部材24と協働して、スプール21の縦穴5dに対する軸ぶれを防止している。そして、スプール21には、筒部22の大径部分における断面積から軸部23の断面積を除した面積を受圧面積として一方室41の圧力が作用するようになっており、軸部23の存在により、バネ25のバネ力を小さく設定することが可能なようになっているため、その分、軸部材たるピストンロッド5の内部に設けられる流量制御弁20を小型にすることが可能となる。
スプール21の図1中上端が縦穴5eの底部に当接している状態では、上記環状溝22bは、上記したピストンロッド5の先端5aの側部に設けた軸ポート5fに対向し、環状溝22bと軸ポート5fとは連通状態とされている。これに対し、スプール21がバネ25の附勢力に抗して図1中下方へ後退すると、筒部22の摺接部22cが軸ポート5fに対向するようになり、環状溝22bと軸ポート5fのラップ面積が減少し、環状溝22bが軸ポート5fと対向し得ないようになって摺接部22cが完全に軸ポート5fに対向すると軸ポート5fは閉塞されるようになっている。
そして、上記スプール21には、横孔5eを介して一方室41内の圧力が作用し、この一方室41内の圧力が所定圧力以上となるとバネ25の附勢力に抗して図1中下方へ後退して環状溝22bと軸ポート5fのラップ面積を減少させるようになっている。したがって、本実施の形態においては、流量制御弁20は、上記したスプール21とバネ25とで構成されており、軸部材たるピストンロッド5の内部に設けられている。
そして、この流量制御弁20は、一方室41内の圧力が所定圧力となる場合に、スプール21がバネ25の附勢力に抗して図1中下方へ後退して上記ラップ面積を減少させるが、その所定圧力は、ピストン1がシリンダ40に対して図1中上方側に移動する場合のピストン速度が高速領域に達するときに生じる一方室41内の圧力に設定されており、具体的にはたとえば、この流量制御弁20にあっては、ピストン速度が0.6m/s以上となるときに発生する一方室41内の圧力によってラップ面積を減少させるようになっている。
つづき、上記ピストンロッド5の先端5aを圧側のリーフバルブ100、間座101、バルブストッパ102とともにピストン1の挿通孔1bに挿入するとともに、ピストン1の図1中下方からピストンナット4をピストンロッド5の先端に設けた螺子部5hに螺着することによって、ピストン1はピストンロッド5の段部とピストンナット4の上端とで挟持されてピストンロッド5に固定されている。
このように、ピストンロッド5の先端5aにピストン1を固定すると、ピストン1の底部1aに設けたディスク側通路18の挿通孔1b側の開口端は、先端5aの外周に設けた環状溝5gに対向するように設定されており、ポート2の他方室側開口端となる窓3は、ディスク側通路18、ピストンロッド5の先端5aに設けた環状溝5g、軸ポート5f、縦穴5dおよび横孔5eを通じて一方室41に連通されることになり、これらで連通路17が構成されている。したがって、上記流量制御弁20は、環状溝22bと軸ポート5fのラップ面積を変化させることで連通路17の流路面積を調節することが可能である。
また、上記したピストンナット4は、筒部4aと、筒部4aの図1中下端外周から延設される鍔4bとを備えて構成され、筒部4aの上端外周は小径とされて小径部4cが形成されている。また、上記筒部4aの下端内周はフランジ4dが設けられて、そのフランジ4dの内周径はピストンロッド5の先端5aの縦穴5dの内周径より小径とされており、このフランジ4dの図1中上端面には筒部材24の下端面が当接されて、流量制御弁20を構成するスプール21、バネ25が縦穴5dから脱落することが防止されている。
そして、ピストン1の底部1aには、上記ピストンナット4の筒部4aにおける小径部4cの外周に摺接するリーフバルブ10より小径であって環状の間座7が複数積層され、この間座7の下方から小径部4cの外周に摺接するリーフバルブ10が積層され、さらに、このリーフバルブ10の下方からリーフバルブ10より小径であって小径部4cの外周に摺接する環状の間座8が複数積層されるとともに、またさらに、この間座8の下方から同じく小径部4cの外周に摺接するバルブ抑え部材11が積層されている。
なお、リーフバルブ10は、環状に形成された板を複数枚積層して積層リーフバルブとして構成されており、この図1中上面を弁座1cに当接させて、ピストン1のポート2を閉塞することができるようになっている。なお、この実施の形態においては、リーフバルブ10は、積層リーフバルブとして構成されているが、上記環状の板の枚数は、本バルブ構造で実現する減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)によって任意とされてよく、緩衝器に発生させる減衰特性によって複数枚とされても一枚のみでも差し支えなく、また、緩衝器に発生させ減衰特性によって各リーフの外径を異なるように設定することができる。さらに、詳しくは図示しないが、弁座1cに着座するリーフバルブ10の外周に形成した切欠あるいは弁座1cに打刻されて形成される周知のオリフィスが設けられている。
なお、ピストン1の底部1aに設けた挿通孔1bにおける下端開口部が拡径されて拡径部1eが設けられて段部が形成され、この段部に筒部4aにおける小径部4cの図1中上端の挿入が可能なようになっている。
ちなみに、拡径部1eを設けることによって、ピストンナット4をピストン1に対して半径方向に位置決めることができ、上記したリーフバルブ10、間座7、8、バルブ抑え部材11をピストンナット4に組み付けた後にこれら部材をピストン1とともにいっぺんにピストンロッド5の先端5aに取付けることが可能となって製造上便利であるが、拡径部1eを省略するとしても差し支えない。
また、上述のように、ピストン1を有底筒状の形状とすることによって、リーフバルブ等のバルブ構造を構成する部材をピストン1内に収納することが可能となって、ピストン1の図1中上端からピストンナット4の図1中下端までの長さを短くすることができ、ピストン部を小型化することができる。
そして、図1中一番最下方に積層されるバルブ抑え部材11は、鍔11aを備えて筒状に形成され、この鍔11aとピストンナット4の鍔4bとの間には、附勢手段たるコイルスプリング15が介装され、このコイルスプリング15で上記リーフバルブ10を弁座1c側に押し付けている。
すなわち、上記バルブ抑え部材11を介してコイルスプリング15の附勢力をリーフバルブ10の内周側に作用させて、コイルスプリング15でポート2を閉塞する方向にリーフバルブ10を附勢している。
したがって、リーフバルブ10は、ピストン1が図1中上方に移動して、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくなると、上記附勢力に抗してコイルスプリング15を圧縮してリーフバルブ10の全体がピストン1から軸方向に後退、つまり、図1中下方にリフトするようになっている。
なお、ピストン1の底部1aから弁座1cの下端までの軸方向長さよりも、間座7全体の軸方向の厚みを短く設定してあり、内周側に附勢力が作用しているリーフバルブ10に初期撓みを与えている。
この初期撓みの撓み量の設定によって、リーフバルブ10が弁座1cから離れてポート2を開放する時の開弁圧を調節することができ、この初期撓みの撓み量は、間座7の全体の厚みで変更可能であるとともに、緩衝器が適用される車両に最適となるように設定されている。なお、ピストン1の底部1aから弁座1cの下端までの軸方向長さによっては、間座7を省略することも可能である。
さらに、上記したところでは、附勢手段をコイルスプリング15としているが、リーフバルブ10に所定の附勢力を作用させればよいので、これを例えば、皿バネやリーフスプリングとしたり、ゴム等の弾性体としたりしてもよい。
つづいて、バルブ構造の作用について説明すると、上述したように、ピストン1がシリンダ40に対して図1中上方側に移動すると、一方室41内の圧力が高まり、一方室41内の作動油はポート2を通過して他方室42内に移動しようとする。
そして、緩衝器の伸縮速度となるピストン速度が低速領域にある場合、作動油は、ピストン速度が極低速のうちは、上述の弁座1cに着座するリーフバルブ10の外周に設けた切欠あるいは弁座1cに打刻によって形成されるオリフィスを通過し、その後の速度の上昇に伴って、リーフバルブ10の外周を撓ませて、リーフバルブ10と弁座1cと間の隙間を通過するが、リーフバルブ10をコイルスプリング15の附勢力に抗してピストン1から後退させてリフトさせることができず、リーフバルブ10はコイルスプリング15によって附勢されてポート2を閉塞するように押し付けられて間座8の外周縁を支点として撓むのみとなり、リーフバルブ10が弁座1cから離座してできるリーフバルブ10と弁座1cと間の隙間を作動油が通過する。
なお、この場合、ピストン速度が低速領域にあり、一方室41内の圧力が連通路17の途中に設けた流量制御弁20におけるスプール21に作用しても、一方室41内の圧力は所定圧力に達しておらず、スプール21をバネ25の附勢力に抗して後退させるだけの推力をスプール21に与えることができず、スプール21は縦穴5dの底部に当接したままとなって、環状溝22bと軸ポート5fとが対向して連通路17の流路面積は減じられることがない。
したがって、作動油は、ポート2のみならず連通路17をも介して一方室41から他方室42へ移動することになる。
そして、このときの減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)は、リーフバルブ10がピストン1から図1中下方に後退しないので、図2に示すが如くとなり、この低速領域では、減衰係数は比較的大きいものとなる。
他方、ピストン1の速度が中速領域に達して、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくとなると、ポート2を通過する作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力が大きくなる。
そして、ポート2および連通路17を通過する作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力がコイルスプリング15の附勢力に打ち勝って、リーフバルブ10の全体をピストン1から軸方向に後退させるようになって、リーフバルブ10を図1中下方へ移動させることになる。
すなわち、リーフバルブ10の全体がピストン1の底部1aから離れ、弁座1cとリーフバルブ10との間の隙間は、ピストン速度が低速領域にあるときよりも大きくなるとともに、また、ピストン速度が中速領域ある場合には、一方室41内の圧力は所定圧力まで上昇しておらず、流量制御弁20は連通路17の流路面積を減少させない。したがって、ピストン速度が中速領域にあるときの緩衝器Dの発生減衰力は、低速領域にある場合に比較して、リーフバルブ10の全体がピストン1から後退して弁座1cとリーフバルブ10との間の隙間が大きくなる分、ピストン速度の増加に対して比例はするものの減衰係数は低くなって、その減衰特性は、図2に示すが如く、減衰特性の傾きが小さくなる。
そして、ピストン速度が高速領域に達すると、作動油のリーフバルブ10を図1中下方へ押し下げる力はさらに大きくなって、リーフバルブ10のピストン1から図1中下方へ後退する後退量は大きくなり、リーフバルブ10と弁座1cとの間の隙間はピストン速度が中速領域にあるときよりも大きくなる。
これに対し、一方室41内の圧力も大きくなって、所定圧力に達し、流量制御弁20のスプール21はバネ25の附勢力に打ち勝つようになって図1中下方へ後退し、一方室41内の圧力上昇に比例して環状溝22bと軸ポート5fのラップ面積を減少させて連通路17の流路面積を減少させるようになる。
したがって、ピストン速度が高速領域にある場合、リーフバルブ10の後退量は増加するが、連通路17の流路面積が減少することになり、作動油がポート2および連通路17を通過する時の圧力損失が増大することになる。
つまり、ピストン速度が高速領域にあるときは、ピストン速度が高くなるにつれて弁座1cとリーフバルブ10との間の隙間が大きくなるが、ピストン速度が高くなるにつれて連通路17の流路面積が流量制御弁20によって減少させられることになり、ピストン速度が高速領域にあるときの減衰特性は、図2に示すように、中速領域より減衰係数は大きくなるので、減衰係数の傾きが大きくなる。
そして、ピストン速度が大きくなるにつれて、ピストン速度の上昇度合いに対する連通路17の流路面積が流量制御弁20によって減少度合いは大きくなるので、作動油が一方室41から他方室42へ移動する時に生じる圧力損失も大きくなって、上記減衰係数の傾きはピストン速度の上昇に対して大きくなる傾向を示す。
したがって、本実施の形態における緩衝器のバルブ構造にあっては、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰係数を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
さらに、緩衝器が最伸長するような振幅が大きく、かつ、ピストン速度が高速領域に達するような状況下にあっては、減衰係数を大きくして緩衝器の発生減衰力を大きくすることができるので、ピストン速度を速やかに低減することができ、最伸長時の衝撃を緩和することができる。なお、ピストン速度が非常に高くなって一方室41内の圧力が非常に大きくなる場合、流量制御弁20が連通路17を閉塞する、本実施の形態の場合には、スプール21の摺接部22cを軸ポート5fに対向させるようにしておけば、緩衝器に大きな減衰力を発生させて最伸長時の衝撃を緩和することを確実なものとすることができる。
なお、具体的にはたとえば、減衰係数が大きくなるピストン速度の中速領域と高速領域との境を0.6m/s程度となるように設定するとよく、そのためには、上述したように、流量制御弁20が連通路17の流路面積を減少させはじめる所定圧力は、ピストン速度が上記0.6m/s程度となるときの一方室41内の圧力に設定しておけばよい。そうすることで、ピストン速度が中速領域にあるときには、連通路17における流路面積は最大とされて圧力損失が大きくならないので、減衰係数を比較的小さく保っておくことができるので、減衰力が大きくなり過ぎることがなく、車両における乗り心地を確保することができる。
さらに、上述のように本実施の形態におけるバルブ構造にあっては、従来のバルブ構造に対して、軸部材たるピストンロッド5とバルブディスクたるピストン1に連通路17を設けるとともに、ピストンロッド5内に流量制御弁10を設ける構成としているので、その他の構成は、従来緩衝器におけるバルブ構造の各部と略同様の構成としておけばよいことになり、部品の互換性も高くなるという製造上の利点がある。
さらに、連通路17は、ポート2の出口端となる他方室側開口端に連通されるようにしたので、作動油は、必ずリーフバルブ10と弁座1cとの間の隙間を介して一方室41から他方室42へ移動するので、作動油を連通路17で直接的に他方室42に連通させてリーフバルブ10を迂回させるような構成のバルブ構造に比較して、減衰特性の調節が簡単となると同時に、流量制御弁20は、連通路17の流路面性を一方室41内の圧力の上昇によって減少させる機能のみを発揮すればよいことになり、流量制御弁20の構造を簡単にすることが可能となる。すなわち、リーフバルブ10を連通路17が迂回する場合には、本実施の形態と同様の減衰特性を得ようとすると、流量制御弁は、ピストン速度が低速領域にある場合には流路面積を小さくし、ピストン速度が中速領域にある場合には流路面積を大きくし、さらに、ピストン速度が高速領域にある場合には再び流路面積を小さくするような動作をしなければならず、構造が複雑となってしまうのである。
なお、本実施の形態においては、リーフバルブ10やバルブ抑え部材11をガイドする役割をバルブディスクたるピストン1を軸部材たるピストンロッド5に固定するピストンナット4に果たさせるようにしているが、ピストンロッド5の外周にリーフバルブ10やバルブ抑え部材11を摺接させるようにしてもよく、また、また、本実施の形態においては、ピストン1に挿入孔1bを設けてピストンロッド5の先端5aを軸部材としてこれを挿入するようにして、ピストンロッド5を突出させているが、バルブボディたるピストン1と一体な軸部材をピストン1の軸心部に設けるようにしてもよい。
また、本発明のバルブ構造は、リーフバルブ10が附勢手段たるコイルスプリング15によって附勢されると共にバルブディスクたるピストン1に遠近可能に積層されており、ピストン速度が中速領域において、リーフバルブ10をピストン1からリフトさせて減衰力を低く抑えて車両における乗心地を向上する事が可能なバルブに適用されているが、附勢手段によって附勢されるか否かに限らずリーフバルブ10の内周がピストンロッド5の先端5aに固定されて外周側が撓んで弁座1cから離座してポート2を開放するバルブに適用されてもよく、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰力を大きくすることができ、本発明の効果は失われない。
以上で緩衝器および緩衝器のバルブ構造の一実施の形態についての説明を終えるが、本発明のバルブ構造が緩衝器のピストン部の圧側減衰バルブに具現化することも、また、ベースバルブ部に具現化することも可能であり、およそ減衰力を発生する減衰力発生要素として機能する緩衝器のバルブに適用することが可能なことは勿論である。すなわち、バルブ構造がベースバルブ部に具現化される場合には、一方室をピストン側室あるいはリザーバ室の一方とし、他方室をピストン側室あるいはリザーバ室の他方とすればよい。また、圧側減衰バルブに具現化する場合には、原理的には図1中のバルブ構造の天地を逆とするような構成とすればよい。
なお、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
一実施の形態における緩衝器のバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の一部における縦断面図である。 一実施の形態の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。 従来の緩衝器のバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の縦断面図である。 従来の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。
符号の説明
1 バルブディスクたるピストン
1a 底部
1b 挿通孔
1c 弁座
1d 圧側のポート
1e 拡径部
1f 筒部
2 ポート
3 窓
4 ピストンナット
4a 筒部
4b 鍔
4c 小径部
4d フランジ
5 軸部材たるピストンロッド
5a ピストンロッドの先端
5b ピストンロッドの段部
5c 先端面
5d 縦穴
5e 横穴
5f 軸ポート
5g 環状溝
5h 螺子部
10 リーフバルブ
11 バルブ抑え部材
11a 鍔
15 コイルスプリング
17 連通路
18 ディスク側通路
20 流量制御弁
21 スプール
22 筒部
22a,22d 通孔
22b 環状溝
22c 摺接部
23 軸部
24 筒部材
25 バネ
40 シリンダ
41 一方室
42 他方室
D 緩衝器

Claims (3)

  1. シリンダ内に一方室と他方室とを隔成するとともに上記一方室と他方室とを連通するポートを備えたバルブディスクと、上記バルブディスクの他方室側面に積層されて上記ポートを閉塞する環状のリーフバルブと、上記バルブディスクの軸心部から立ち上がり上記リーフバルブの内周側に挿通される軸部材とを備えた緩衝器のバルブ構造において、上記ポートの他方室側開口端と上記一方室とを連通する連通路と、上記連通路の途中に設けられた流量制御弁とを設け、上記連通路は、上記バルブディスクに形成されて上記ポートの他方室側開口端に連通するディスク側通路と、上記軸部材の内部に形成されて上記一方室に連通する内部通路と、上記軸部材に形成されて上記内部通路と上記ディスク側通路とを連通する軸ポートとで構成され、上記流量制御弁は、上記内部通路内に摺動自在に挿入されるとともに上記一方室側に向けて附勢される中空なスプールと、上記スプールの外周に形成されて当該スプール内に連通させると共に上記軸ポートに対向させた環状溝とで構成し、ピストン速度が高速領域に達したとき上記一方室内の圧力で上記スプールを附勢力に抗して後退させて上記環状溝と上記軸ポートとのラップ面積を減じることで上記連通路の流路面積を減じさせることを特徴とする緩衝器のバルブ構造。
  2. バルブディスクがピストンで構成され、軸部材が上記ピストンの軸芯部から立ち上がるピストンロッドで構成され、ポートを閉塞する方向にリーフバルブを附勢する附勢手段が設けられている請求項1に記載の緩衝器のバルブ構造。
  3. 軸部材に形成した内部通路は、一方室に開口する横穴と、上記横穴に連通する縦穴とで構成され、上記縦穴内にスプールが摺動自在に挿入されている請求項1又は2に記載の緩衝器のバルブ構造。
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