JP2018002832A - 筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明によれば、インキタンク内のインキ反転性に優れながらも、インキのボタ落ち現象をも十分に抑制することができ、かつ、良好な筆記性および良好な筆跡を得ることができる筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供する。【解決手段】水と、着色剤と、HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンとを含んでなる筆記具用水性インキ組成物であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、35〜55mN/mであることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具。【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具に関するものである。
筆記具は、インキ流量を調節する適宜のインキ流量調節体を介してペン先が軸筒端部に取り付けられ、前記軸筒内に水性インキ組成物を収容するインキタンクが備えられた構造であるものがある。この種の筆記具は、横置き状態やペン先上向き状態から筆記するために、ペン先下向き状態にした場合、インキタンクに収容された水性インキ組成物が、インキタンクの内壁を伝ってペン先方向へ流下することで、筆記が可能となる。(この水性インキ組成物の移動性をインキ反転性と称する。)
しかしながら、インキタンクを含む筆記具の多くの部品は樹脂で構成されていることが多く、それらは疎水性であるため、水性インキ組成物の濡れ性が不足すると、筆記具をペン先下向き状態にしても、表面張力による抗力のため水性インキ組成物は流下せずに、元の位置に留まってしまう。この状態では、ペン先にまで水性インキ組成物が供給されず、筆跡がかすれたり、最悪、筆記することができなくなってしまうことがあった。
上記課題を解決するために、水性インキ組成物の表面張力を下げることが一般的に考えられるが、表面張力は重力、大気圧、衝撃による水性インキ組成物の移動などに対する抗力として重要な役割を果たしている。よって、水性インキ組成物の表面張力を下げて、インキタンク内のインキ反転性の向上を試みた場合、前記抗力が不足するため、ペン先を下向き状態にした場合、非筆記時でも、少しの衝撃や振動でインキが漏れ出してしまったり、また、大気圧の変化によってインキが溢れ出してしまったりするなど、インキのボタ落ちという新たな課題が発生してしまう場合があった。
そこで、マルトシルサイクロデキストリン等の添加剤を添加し、表面張力を下げることなく、インキタンク内のインキ反転性を向上させた水性インキ組成物が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、前記マルトシルサイクロデキストリン等は、良好なインキ反転性が得られる程度に水性インキ組成物中に添加すると、インキ粘度が上昇し、インキ追従性が低下したり、水への溶解性が低いためペン先の耐ドライアップ性に影響を及ぼすなどの課題を有する。
このように、従来の水性インキ組成物では、インキタンク内のインキ反転性を向上させるために、表面張力を下げて樹脂材料からなるインキタンクなどへの濡れ性を向上させると、抗力が不足してしまい、インキが保持できず、インキのボタ落ちが発生してしまう。一方、表面張力をある程度の値に上げていくと、インキタンク内のインキ反転性が十分に得られなくなってしまう。よって、インキタンク内のインキ反転性の改善とインキのボタ落ちの抑制の二つの課題を同時に解決することは困難であった。
また、表面張力の調整によらずに上記課題の解決を試みた従来のインキ組成物では、筆記具に収容して用いた場合、筆記性や得られる筆跡に課題が生じるなど、水性インキ組成物としての性能を十分に満足するものではなかった。
特に、インキ流量を調節する適宜のインキ流量調節体を介してペン先が軸筒端部に取り付けられ、前記軸筒内に水性インキ組成物を収容するインキタンクが備えられた構造である筆記具に好適に用いられるような粘性指数nの高い筆記具用水性インキ組成物や低粘度の筆記具用水性インキ組成物においては、上記課題を同時に解決することは難しく、大きな課題となっていた。
特開平5−140498号公報
本発明は、インキタンク内のインキ反転性に優れ、インキのボタ落ち現象を十分に抑制し、良好な筆記性、および良好な筆跡を得ることができる筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供するものである。
本発明による筆記具用水性インキ組成物は、水と、着色剤と、HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンと、を含んでなり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が35〜55mN/mであることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物である。
また、本発明による筆記具は、前記筆記具用水性インキ組成物を収容してなることを特徴とするものである。
本発明によれば、インキタンク内のインキ反転性に優れながらも、インキのボタ落ち現象をも十分に抑制することができ、かつ、良好な筆記性および良好な筆跡を得ることができる筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供することができる。
本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
<筆記具用水性インキ組成物>
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により、水性インキ組成物と表す。)は、水と、着色剤と、HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンと、を含んでなり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が35〜55mN/mであることを特徴とする。以下、本発明による水性インキ組成物を構成する物性、各成分について説明する。
本発明の水性インキ組成物の20℃における表面張力は、35〜55mN/mである。本発明の水性インキ組成物は、筆記具が備えるインキ流量調節体内を毛細管現象により流出できるように設計されている。水性インキ組成物を収容した筆記具は、重力、大気圧、衝撃等による運動エネルギーなどの外力がかかるとインキの移動が起こりうる。水性インキ組成物の表面張力が35mN/m以上であれば、前記外力に対し十分な抗力を持つことができることから、意図せぬインキの吐出など、インキのボタ落ち現象を抑制することができる。また、水性インキ組成物の表面張力が55mN/m以下であれば、十分に毛細管現象の機能を働かすことができるため、ペン先からのインキの吐出が安定し、良好な筆記性と良好な筆跡を得ることができる。
さらに、インキのボタ落ち現象の抑制や、インキの吐出性を考慮すると、水性インキ組成物の表面張力は、40〜50mN/mであることが好ましい。
なお、表面張力は、20℃環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、白金プレートを用いて、垂直平板法によって測定して求められる。
本発明による水性インキ組成物は、B型回転粘度計を用いて、回転数60rpm、20℃で測定したインキ粘度が、1〜3mPa・sであることが好ましい。水性インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、筆記具に収容して用いた場合、ペン先からのインキ吐出性や筆記性を向上させることができるとともに、インキタンク内のインキ反転性を向上させることができる。本発明のインキ組成物は、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具に好適に用いることができるが、この場合、更にインキ吐出性を考慮すると、1〜2mPa・sであることがより好ましい。なお、粘度の測定はB型回転粘度計(機種:BLII、ローター:BLアダプタ、東機産業株式会社製)を用いて行うことができる。
本発明による水性インキ組成物の20℃における粘性指数nは、0.9〜1.2であることが好ましい。ここで、粘性指数nは、S=αDで示される粘性式中のnを指す。なお、Sは剪断応力(dyn/cm=0.1Pa)、Dは剪断速度(s−1)、αは粘性係数を示す。粘性指数nは、B型回転粘度計(機種:BLII、ローター:BLアダプタ、東機産業株式会社製)を用いてインキ粘度を測定して、算出することができる。水性インキ組成物の粘性指数nは、より好ましくは0.95〜1.15であり、さらに好ましくは1.00〜1.15である。水性インキ組成物の粘性指数nが上記数値範囲内であれば、筆記具に使用した場合のペン先からのインキ吐出性や筆記性を向上させることができるとともに、インキタンク内のインキ反転性を向上させることができる。
本発明の水性インキ組成物のpHは、6.0〜10.0であることが好ましく、7.0〜9.0であることがより好ましい。水性インキ組成物のpHが上記数値範囲内であれば、インキ組成物中の各成分が安定して存在できるため、好ましく、特に、本発明の必須成分であるHLB値が10〜20であるポリエーテルアミンが安定して存在することができ、ポリエーテルアミンの効果を十分に得ることができるため、好ましい。これは、pHが6.0以上であると、酸触媒効果によりポリエーテルアミン中の酸化エチレン部位が加水分解し、ポリエーテルアミンの効果が得られなくなることを防ぐことができるためである。また、水性インキ組成物のpHが上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物が接触するペン先などの筆記具の金属部分の腐食を防止することができる。本発明において、pHの値は、例えばIM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
<ポリエーテルアミン>
本発明の水性インキ組成物は、HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンを含んでなる。HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンは、水性インキ組成物の表面張力を適正な範囲に調整し、かつ、インキタンクおよびインキ流量調節体に対する濡れ性を適度に保つことができる。
前記ポリエーテルアミンは、インキタンクに対する濡れ性を適度に保つことができることから、筆記具を横置き状態やペン先上向き状態から、筆記するためにペン先下向き状態にした場合でも、水性インキ組成物がインキタンク内で元の位置に留まらず、ペン先方向へ円滑に流下させることができる。よって、前記ポリエーテルアミンは、水性インキ組成物のインキタンク内のインキ反転性を向上させることができる。
また、前記ポリエーテルアミンは、インキタンクだけでなく、インキ流量調節体に対する濡れ性も適度に保つことができる。このため、インキ流量調節体の機能を十分に得ることができ、ペン先からのインキ吐出性を良好に維持することが可能となり、また、後にも記載するが、くし歯状のインキ保留部材に余剰なインキがスムーズに流入することができるため、インキのボタ落ち現象を抑制することができる。
また、前記ポリエーテルアミンは、水性インキ組成物の表面張力を極端に低下させることなく、適正な範囲に調整することができるため、本発明の水性インキ組成物を筆記具に収容して筆記した場合、紙面への浸透性が高くなって筆跡が滲んでしまったり、裏抜けしてしまったりすることがなく、良好な筆跡を得ることができる。
本発明の構成成分であるポリエーテルアミンのHLB値は、10〜20であることが必須である。これは、ポリエーテルアミンのHLB値が10以上であると、溶媒である水に溶け残ることなくポリエーテルアミンの効果を十分に得ることができるためである。更には、HLB値が15〜20であるポリエーテルアミンを選択することがより好ましい。これは、HLB値が15〜20であるポリエーテルアミンは、特に水への溶解性が良好であるため、ポリエーテルアミンの効果を更に効果的に得ることができ、インキタンク内のインキ反転性を向上させることができる他、ペン先の耐ドライアップ性の低下を防ぎ、良好な書き出し性能などの筆記性を向上させることができる。
以上より、本発明では、前記ポリエーテルアミンを含んでなり、20℃における表面張力が35〜55mN/mとした筆記具用水性インキ組成物とすることで、インキタンク内のインキ反転性に優れながらも、インキのボタ落ちも十分に抑制することができ、かつ、良好な筆記性および良好な筆跡を得ることができる。
本発明において、ポリエーテルアミンは表面張力を調製する主な添加剤となる。よって、前記ポリエーテルアミンの中でも、1%水溶液にした際の表面張力が、20℃環境下において、35〜55mN/mとなるものを選択することが好ましい。これは、水性インキ組成物が、1%水溶液の表面張力が上記数値範囲内となるポリエーテルアミンを含んでなる場合、該水性インキ組成物は、重力、大気圧、衝撃等による運動エネルギーなどの外力に対し適度な抗力として働くことが可能な表面張力を得ることができ、インキのボタ落ちを効果的に抑制することが可能となるためである。更なるインキのボタ落ち現象の抑制や、筆記具に用いた場合のインキの吐出性や筆記性の向上を考慮すると、1%水溶液の表面張力が、20℃環境下において、40〜50mN/mを示すポリエーテルアミンを選択することがより好ましい。
また、前記ポリエーテルアミンは、添加により同程度の表面張力をもたらす界面活性剤と比較し、特に、インキタンクなどの樹脂材料に対する濡れ性を効果的に向上させることができる。この理由としては、以下の様なものと推定される。
ポリエーテルアミンは分子中に窒素元素を含んでおり、この窒素元素部位は水中の水素イオンと結合しやすく、その錯体は弱いプラス電荷を帯びることになる。一方、多くの樹脂材料はマイナス電荷を帯びており、ポリエーテルアミンと樹脂材料の間で電荷中和が起こる。このため、前記ポリエーテルアミンを含んでなる水性インキ組成物は樹脂材料に対し、特異的に良好な濡れ性を得ることができる。
一般的な界面活性剤では、水性インキ組成物の表面張力を適正な範囲に調整することは可能なものの、樹脂材料に対して濡れ性が足りず、樹脂製のインキタンクの場合には、インキ反転性が劣ることが見られる。しかし、前記ポリエーテルアミンを含んでなる水性インキ組成物は、該水性インキ組成物の表面張力を適正な範囲に保ちながら、かつ、樹脂材料に対する濡れ性をも向上させることができるため、インキのボタ落ち現象を防ぎつつ、かつ、樹脂製のインキタンク内のインキ反転性を向上させることができる。
また、前記ポリエーテルアミンの平均酸化エチレン付加モル数(EO数)は、10〜35であることが好ましく、13〜30であることが好ましい。前記ポリエーテルアミンの平均酸化エチレン付加モル数(EO数)が上記数値範囲内であれば、水への溶解性が高いため、ポリエーテルアミンの効果を安定して得ることができる。
また、本発明の検討過程において、ポリエーテルアミン中の酸化エチレンは水溶液の気泡安定性(破泡性)に寄与していることを確認した。前記ポリエーテルアミンの平均酸化エチレン付加モル数(EO数)が上記数値範囲内であると、水性インキ組成物中に発生した気泡の消失が早くなる。このため、発生した気泡に阻害されず、水性インキ組成物は、円滑に流動可能となり、インキタンク内のインキ反転性を向上させることができる。また、気泡に阻害されることなくペン先からのインキ吐出性も向上することができるため、筆記具に用いた場合には、良好な筆記性およびその筆跡を得ることができる。特に、本発明の水性インキ組成物のインキ粘度が、B型回転粘度計を用いて、BLアダプタ、回転数60rpm、20℃で測定し、1〜3mPa・sである場合、インキ流動性が良好なためインキタンク内で移動が頻繁に起こりやすく、気泡が発生しやすい。これらの発生した気泡はインキタンク内のインキ反転性やペン先からのインキ吐出性およびインキ残量の確認などに不具合を起こす原因となることから、気泡の消失は早いほうが望ましい。よって、平均酸化エチレン付加モル数(EO数)が上記数値範囲内である前記ポリエーテルアミンを含むと気泡の消失速度を向上でき、上記不具合を解決することができるため、特に効果的である。
尚、ポリエーテルアミン中の酸化エチレンと破泡性の関係は次のように推測する。ポリエーテルアミンは窒素原子を中心に酸化エチレンが斜めに存在する構造をしている。気泡は気液界面に界面活性剤が配位することによって安定化するが、酸化エチレンが斜めに存在するV字ないしはY字の構造のため、酸化エチレン部位同士が立体障害となり、通常の直鎖状の界面活性剤とは異なり、気泡表面の気液界面に対して十分な量を配位することができない。このため、ポリエーテルアミンは、気泡の発生が少なく、発生したとしても、気泡消えが良好な状態をもたらすと考える。
このように、気泡の発生を少なくし、発生したとしても、気泡消えが良好な状態をもたらす性質は酸化エチレンの立体障害に依存する。よって、ポリエーテルアミンの平均酸化エチレン付加モル数(EO数)が一定量あるものが破泡性に優れると考える。
更に、インキタンク中のインキ反転性の向上およびインキのボタ落ち現象の抑制を考慮すると、前記ポリエーテルアミンの1%水溶液の示す曇点が、50℃以上であることが好ましい。これは、前記ポリエーテルアミンの曇点が50℃以上であると、水への溶解性が安定していられるため、水との分離が起こらず、ポリエーテルアミンの効果を十分に得ることができるためである。
前記ポリエーテルアミンとしては、ポリオキシエチレン−ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(20)アルキル(C14−C18)アミン、ポリオキシエチレン−牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン−アルキル(ヤシ)アミンなどが挙げられるが、より、インキタンク内のインキ反転性の向上および、インキのボタ落ち現象の抑制、また、筆記具に用いたときの筆記性、および得られる筆跡を考慮すると、ポリオキシエチレン(20)アルキル(C14−C18)アミン、ポリオキシエチレン−アルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレン−ステアリルアミン、およびポリオキシエチレン−牛脂アルキルアミンが好ましい。
水性インキ組成物における前記ポリエーテルアミンの含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましい。前記ポリエーテルアミンの含有量が上記数値範囲内であれば、極端にインキ組成物の表面張力を低下させることなく、インキタンクとインキ流量調節体との適度な濡れ性を保持することができ、インキタンク内のインキ反転性の向上とインキのボタ落ち現象の抑制を図ることができる。
本発明の水性インキ組成物は、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具に特に、好適に用いることができる。
前記のようなインキ流量調節体を備えた筆記具は、基本的には毛細管現象を利用しインキの吐出を行うこととなる。インキタンクの内圧上昇が起こると余剰なインキがペン先より吹き出してしまうなど、インキのボタ落ち現象が起こる可能性がある。しかし、くし歯状のインキ保留部材が配置されていると、この余剰なインキはくし歯状の構造の中に取り込まれてインキのボタ落ちを抑制することができる。
ただし、このくし歯状のインキ保留部材を有効に使うためには、用いられる水性インキ組成物は、インキ保留部材に対し、ある程度の濡れ性が必要となる。単にインキ組成物の表面張力を下げた場合では、重力や運動エネルギーなどの内圧変化以外の外力に対し、表面張力によるインキの抗力が不足してしまい、インキ保留部材内でインキを保持することができなくなる。逆に、インキの表面張力が極端に高い場合には、主にインキ通路にインキが円滑に流入せず、ペン先からのインキの吐出性が悪くなる。
本発明の水性インキ組成物は、前記ポリエーテルアミンを含んでなるため、水性インキ組成物の表面張力を適正な範囲に調整するだけでなく、インキ流量調節体(くし歯状のインキ保留部材)に対する濡れ性を適度に保つことができるようになる。このため、くし歯状のインキ保留部材の機能を有効に使うことが可能となり、前記のようなインキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具に、本発明のインキ組成物を好適に用いることができ、インキのボタ落ち現象を十分に抑制し、更に、良好な筆記性と筆跡を得ることができる。
また、本発明の水性インキ組成物は、前述の通り、発生した気泡の消失を早くできる傾向にあることからも、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具に好適に用いることができる。これは、本発明の筆記具用水性インキ組成物を用いることで、水性インキ組成物中に発生した気泡がインキ保留部材のくし歯部分を塞いでしまい、インキタンクの内圧上昇に伴う余剰なインキを保持することができず、インキがボタ落ちしてしまうという問題を解決することができるからである。
筆記具が備えるインキタンクやインキ流量調節体には、収容される水性インキ組成物と反応せず、該インキ組成物自体の性能が損なわれにくい素材を用いる必要がある。このため、インキタンクやインキ流量調節体の素材に樹脂が用いられることが多い。しかし、このような樹脂の表面は疎水性であることが多く、水性インキ組成物との濡れ性が悪くなる傾向にある。このため、樹脂製のインキタンクやインキ流量調節体を用いる場合には、インキタンク内のインキ反転性や、インキのボタ落ち性能を、特に考慮する必要があった。前述の通り、前記ポリエーテルアミンを含んでなる本発明のインキ組成物は、樹脂で作られたインキタンクやインキ流量調節体においても適度な濡れ性を保つことができる。このため、本発明の水性インキ組成物は樹脂製のインキタンクやインキ流量調節体を備える筆記具にも好適に用いることができる。特に、前記ポリエーテルアミンの中でも、ポリエーテルアミン1%水溶液の表面張力が、20℃環境下において、35〜55mN/mとなるものを含んでなる水性インキ組成物を用いることはより効果的である。尚、インキタンクやインキ流量調節体の素材として用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドなどが、好適に用いられる。
本発明の筆記具用水性インキ組成物が用いられる筆記具のインキタンクは、筆記具本体に着脱自在に交換可能なインキタンク(インキカートリッジ)や、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキタンク内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキタンク(コンバーター)などが挙げられる。
筆記具本体に着脱自在に交換可能なインキタンク(インキカートリッジ)を備えた筆記具については、前記インキカートリッジは、収容される水性インキ組成物を使用した後には廃棄することから、経済性などを考慮して樹脂が用いられることが多く、上述と同様、水性インキ組成との濡れ性が悪くなる傾向にある。また、前記インキカートリッジは、筆記具の軸筒内に備えられ、軸筒の径との関係から内径の大きさに制約される可能性があるため、インキカートリッジ内のインキの流動性は悪くなる傾向にある。このため、インキカートリッジを備えた筆記具では、インキカートリッジ内のインキ反転性を特に考慮する必要がある。本発明のインキ組成物は、樹脂製のインキタンクの濡れ性においても適度に保つことができ、インキタンク内のインキ反転性に優れていることから、前述のようなインキカートリッジを備えた筆記具にも好適に用いることができる。
また、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキタンク内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキタンク(コンバーター)を備えた筆記具においては、上記インキカートリッジと同様にインキタンク内のインキ反転性において課題があることに加え、従来の水性インキ組成物では、吸入する際にインキが泡立ってしまい、前記コンバーター内すべてを水性インキ組成物で満たすことは難しかった。しかし、前述の通り、前記ポリエーテルアミンを含んでなる水性インキ組成物は、破泡性に優れることから、コンバーター内に最後までインキを吸入することができるようになる。よって、本発明の水性インキ組成物は、コンバーターを備えた筆記具にも好適に用いることができる。
以上より、前記ポリエーテルアミンを含んでなる本発明のインキ組成物は、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具や、インキタンク(カートリッジやコンバーター)を備えた筆記具に好適に用いることができる。
<着色剤>
本発明において用いることができる着色剤としては、通常、筆記具用水性インキ組成物に用いる染料、顔料などが挙げられる。
本発明において用いることができる染料としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料および食用色素など各種染料が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
具体的には、酸性染料としては、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバイオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、塩基性染料としては、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、直接染料としては、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19、食用色素としては、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2などが挙げられる。
また、本発明において用いることができる顔料としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。
また、着色剤として、上記顔料および染料を、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。水性インキ組成物における着色剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜8.0質量%が好ましい。着色剤の含有量が上記数値範囲内であれば、水性インキの吐出性の低下を防止することができるとともに、水性インキ組成物を用いた場合、良好な筆跡を得ることができる。
<水>
水としては、特に制限はなく、例えば、イオン交換水、限外ろ過水または蒸留水などを用いることができる。
<その他>
本発明による水性インキ組成物は、インキ物性や機能を向上させる目的で、水溶性有機溶剤、pH調整剤、保湿剤、防錆剤、防腐剤、キレート剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
水溶性有機溶剤としては、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどのグリコール類、(ii)メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコールなどのアルコール類、および(iii)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシブタノール、または3−メトキシ−3−メチルブタノールなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。
中でも、ポリエーテルアミンとの相性が良く、安定して存在できることから、ポリエーテルアミンの効果を効率的に得ることができる、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリセリンなどを用いることが良好である。
水性インキ組成物における水溶性有機溶剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましい。
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどの有機塩基性化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられ、前記ポリエーテルアミンとの安定性を考慮すれば、アルカノールアミンを用いることが好ましく、より考慮すれば、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。これらの中和剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわない。pH調整剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
保湿剤としては、前記水溶性有機溶剤の他に尿素、またはソルビットなどが挙げられる。保湿剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。また、水溶性樹脂として、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを用いることができる。さらに、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂など含むエマルジョンを添加することができる。
さらに、ポリエーテルアミン以外の界面活性剤を含んでも良い。具体的には、フッ素系界面活性剤や、ノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが上げられる。
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
<筆記具>
本発明の水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップまたはボールペンチップなどを筆記先端としたマーキングペンやボールペン、金属製の筆記先端を用いた万年筆などの筆記具に用いることができる。
また、本発明の水性インキ組成物が用いることができる筆記具としては、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできる、インキタンクを備えるものであってもよい。
中でも、本発明の筆記具用水性インキ組成物は、インキタンクを備える筆記具に好適に用いることができる。特には、前記インキタンクが筆記具本体に着脱自在に交換可能なインキタンク(インキカートリッジ)や、また、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキタンク内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキタンク(コンバーター)を備えた筆記具に好適に用いることができる。上記のようなインキタンクは、筆記具の軸筒内に備える可能性があるため、インキタンクの内径が制約される可能性が高い。よって、インキタンク内で水性インキ組成物は流動しにくく、インキタンク内のインキ反転性に特に考慮が必要となる。本発明の水性インキ組成物は、インキタンク内のインキ反転性に優れていることから、上記のようなインキタンクを備える筆記具に、好適に用いることができ、良好な筆記性と筆跡を得ることができる。
また、前記インキタンクの素材が樹脂である場合には、インキタンクは水性インキ組成物との濡れ性が悪い傾向にあるため、更にインキタンク内のインキ反転性を考慮する必要がある。本発明のインキ組成物は、このような場合においても、インキタンクにおける濡れ性を適度に保つことができ、インキタンク内のインキ反転性に優れる。よって、インキタンクの素材が樹脂である場合においても、本発明のインキ組成物を好適に用いることができ、良好な筆記性と筆跡を得ることができる。
本発明の水性インキ組成物が用いることができる筆記具は、筆記先端を覆うキャップを備えたキャップ式や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内に筆記先端を収容可能な出没式であってもよい。特に、出没式筆記具では、インキのボタ落ち現象によるインキ漏れ対策がより重要視されているため、本発明の水性インキ組成物を、好適に用いることが可能である。
また、本発明の水性インキ組成物が用いることができる筆記具のインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(1)インキ流量調節体として、繊維束などからなるインキ誘導芯を備え、水性インキ組成物を筆記先端に供給する機構、(2)インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置され、水性インキ組成物を筆記先端に供給する機構、(3)弁機構によるインキ流量調節体を備え、水性インキ組成物を筆記先端筆記先端に供給する機構、および(4)インキ流量調節体なしに直接、筆記先端に供給する機構などを挙げることができる。
上記の中でも、インキ供給機構にインキ流量調節体を備える筆記具は、その供給機構の特徴から、粘性指数nが高く、かつ低粘度である水性インキ組成物を用いることが多い。この場合、ペン先からの良好なインキ吐出性と筆記性を得るためには、水性インキ組成物の表面張力を適正な範囲に保つ必要がある。
このため、水性インキ組成物に濡れ性付与剤を添加することが一般的であるが、濡れ性付与剤が添加されると、紙面への浸透性が極端にあがり、筆跡が滲んでしまったり、裏抜けが発生してしまうなどの課題が生じる。本発明の水性インキ組成物は、表面張力を極端に低下させることなく、ペン先からのインキ吐出性と筆記性を向上させ、紙面に対する筆跡滲みや裏抜けも抑えることができるため、本発明のインキ組成物を、前述のようなインキ供給機構にインキ流量調節体を備える筆記具に好適に用いることができる。中でも、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置され、水性インキ組成物を筆記先端に供給する機構を備える筆記具においては、上記のような課題が生じる傾向が高いため、本発明のインキ組成物を用いることは、更に効果的である。
また、インキ流量調節体の素材に樹脂が用いられた場合には、樹脂の種類や成型時に用いる金型潤滑剤等の添加剤に影響により疎水性が強くなりすぎ、水性インキ組成物との濡れ性が不足する場合がある。そこで、表面改質剤によりインキ流量調節体の表面改質を行うことで、インキ流量調節体の安定した性能を得ることができるため、より好ましい。上記表面改質剤として、樹脂や界面活性剤などが挙げられ、具体的には、酢酸ビニルおよびアクリル酸エステルを含むようなコポリマーや、アセチレン結合を有する界面活性剤、コハク酸系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤のような界面活性剤を用いることが好ましい。これらのような表面改質剤により表面改質されたインキ流量調節体は、水、すなわち水性インキ組成物に対して良好な濡れ性を発揮することができる。よって、本発明の水性インキ組成物は、このような表面改質が行われたインキ流量調節体を備える筆記具に用いることで格段の効果を得ることができる。
万年筆においては、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置され、水性インキ組成物を筆記先端に供給する機構を備える。よって、ペン先からの良好なインキ吐出性と筆記性、および筆跡を得るためには、水性インキ組成物の表面張力、粘度および粘性指数nを適正な範囲に保つ必要がある。
更に、万年筆が備えるインキタンクには、筆記具本体に着脱自在に交換可能なインキタンク(インキカートリッジ)や、また、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキタンク内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキタンク(コンバーター)が用いられ、かつ、該インキタンクの素材が樹脂である可能性が高い。
以上より、水性インキ組成物の表面張力を適正に調整し、インキタンクおよびインキ流量調節体への濡れ性を適度に保ち、インキタンク内のインキ反転性および、インキのボタ落ち現象を抑制し、更に筆記性に優れ、滲みや裏抜けなどない良好な筆跡を得ることができる本発明のインキ組成物は、万年筆用の水性インキ組成物として好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
下記原材料および配合量にて、着色材以外の原材料をプロペラ撹拌により、混合してベース液を得た。その後、ベース液に着色剤を添加し、プロペラ撹拌により混合して、筆記具用水性インキ組成物を得た。得られた水性インキ組成物の粘度をB型回転粘度計(機種:BLII、ローター:BLアダプタ、東機産業株式会社製、サンプル量20ml)により測定し、その粘度を元に粘性指数nを算出した。具体的には、20℃、回転速度12rpmにおける粘度は、1.20mPa・sであり、20℃、回転速度60rpmにおける粘度は1.51mPa・sであった。これらの粘度から粘性指数nは1.14と算出された。また、得られた水性インキ組成物の表面張力を、表面張力計測器(20℃環境下、白金プレート、垂直平板法、協和界面科学株式会社製)により測定したところ、43.3mN/mであった。さらに、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃において水性インキ組成物のpHを測定した結果、pHは9.12であった。
・着色剤 3.5質量%
(Bayscript Black SP、固形分:30%)
・ポリエーテルアミン 1.0質量%
(ポリオキシエチレン−ステアリルアミン、商品名:ナイミーンS−220、HLB値15.4)
・pH調整剤 1.0質量%
(トリエタノールアミン)
・水溶性有機溶剤 3.0質量%
(ジエチレングリコール)
・水 91.5質量%
<実施例2〜実施例9、比較例1〜比較例6>
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表1、表2に示した通りに変更して、実施例2〜実施例9、比較例1〜比較例6の水性インキ組成物を得た。
<試験用ペンの作製>
実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例6で得られた水性インキ組成物を樹脂製のコンバーター(パイロットコーポレーション社製、CON−70、インキ容量1.1ml)に、コンバーター開口部上向きの状態で0.5ml注入した。このコンバーターを、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材(表面改質したもの)が配置された、万年筆形態のペン先を有する筆記具(パイロットコーポレーション社製、万年筆、カクノ)に、ペン先が上向きのまま装着した。この筆記具を試験用ペンとする。
<試験1=インキタンク内インキ反転性試験>
試験用ペンをペン先上向き状態にして、充填された水性インキ組成物をインキタンク内のペン先反対側にすべて落とした。この後、ペン先を静かに下向き状態にした際、インキタンク内で水性インキ組成物がペン先側に流下する様子を目視にて確認し、下記基準に従ってインキタンク内のインキ反転性能を評価した。得られた評価結果を表1および表2にまとめた。
○:1秒以内に水性インキ組成物が、インキタンクのペン先側にすべて流下した。
△:1秒以内に水性インキ組成物は、インキタンクのペン先側に大部分が流下したが、一部流下せず、インキタンク内の壁面などに残っていた。
×:1秒経過しても水性インキ組成物が、インキタンクのペン先側にすべて流下しなかった。
<試験2=筆記試験>
試験1で使用した試験用ペンを暫くペン先下向き状態にし、充填された水性インキ組成物をペン先まで流入させ、筆記可能な状態にした。その状態で任意の紙面上に連丸を10個筆記し、その筆跡を確認し、下記基準に従って、筆記性能を評価した。得られた評価結果を表1および表2にまとめた。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用いて、評価を行った。
○:にじみやかすれ、裏抜けなどない、良好な筆跡が得られた。
×:筆跡ににじみやかすれ、裏抜けなどが確認された。
<試験3=耐圧力変化試験(インキのボタ落ち性試験)>
試験2で使用した試験用ペンをペン先下向き状態にし、減圧デシケーター中に静置させた。この状態で、5分間でデシケーター内を70mmHgまで減圧させ、その後、70mmHgの減圧状態を保ったまま、更に5分間、デシケーター中に試験用ペンを放置させた。この時の試験用ペンのペン先から水性インキ組成物の吹き出しがないか、インキのボタ落ちの有無を確認し、下記基準に従って、インキのボタ落ち性能を評価した。
○:ペン先からの水性インキ組成物の吹き出しはなく、インキのボタ落ちは発生しなかった。
△:デシケーター内を5分間で70mmHgまで減圧した際には、ペン先からの水性インキ組成物の吹き出しは見られずインキのボタ落ちは発生しなかったが、70mmHgの減圧状態を維持した5分の間に、ペン先から水性インキ組成物が少量吹き出し、インキのボタ落ちが若干発生した。しかしながら、実用上問題のないレベルであった。
×:デシケーター内を5分間で70mmHgまでの減圧した際、ペン先からの水性インキ組成物の吹き出しがあり、インキのボタ落ちが発生した。
Figure 2018002832
Figure 2018002832
表1、表2に示した通り、実施例1〜実施例9の水性インキ組成物は、<インキタンク内インキ反転性試験>の結果から、良好なインキタンク内のインキ反転性を有すること、<筆記試験>の結果から、良好な筆跡を得ることができる優れた筆記性能を有すること、<耐圧力変化試験(インキのボタ落ち性試験)>の結果から、急激な圧力変化においてもインキのボタ落ちが見られず良好なインキのボタ落ち性能を有することが確認できた。
以上より、水と、着色剤と、HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンと、を含んでなり、20℃における表面張力が35〜55mN/mである実施例1〜実施例9の水性インキ組成物は、<インキタンク内インキ反転性試験>、<筆記試験>、<耐圧力変化試験(インキのボタ落ち性試験)>のいずれにおいても良好な結果が得られ、筆記具用水性インキ組成物として優れたものであることがわかった。さらに、実施例1〜実施例9の水性インキ組成物が収容してなる筆記具は、良好な筆記性と筆跡が得られることがわかった。
本発明のインキ組成物は、万年筆、ボールペン、筆ペン、カリグラフィー用のペン、マーキングペンなどの各種筆記具用水性インキ組成物として用いることができる。特に、インキタンク内のインキ反転性やインキのボタ落ち性能の向上が図られていることから、インキタンクを備え、インキ供給機構にインキ流量調節体を備える筆記具に好適に用いることができる。更には、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具において効果的に用いることができる。

Claims (5)

  1. 水と、着色剤と、HLB値が10〜20であるポリエーテルアミンとを含んでなる筆記具用水性インキ組成物であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、35〜55mN/mであることを特徴とする筆記具用水性インキ組成物。
  2. B型回転粘度計を用いて、回転数60rpm、20℃で測定したインキ粘度が、1〜3mPa・sである、請求項1に記載の水性インキ組成物。
  3. 20℃における粘性指数nが、0.9〜1.2である、請求項1または2に記載の水性インキ組成物。
  4. 前記ポリエーテルアミンの平均酸化エチレン付加モル数(EO数)が、10〜35である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性インキ組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性インキ組成物が収容されてなることを特徴とする、筆記具。

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