JP2005171037A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを用いた水性ボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 水と、着色剤と、水溶性有機溶剤と、エチレンとアクリル酸又はエチレンとメタクリル酸のコポリマーのワックスエマルジョンを含有してなるボールペン用水性インキ組成物、及び、前記ボールペン用水性インキ組成物を、ボールペンチップを直接又は中継部材を介して取り付けたインキ収容管内に直接充填し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設した水性ボールペン。
【選択図】 なし
Description
前記ボールペン用水性インキにおいては、更にキャップオフ性能が重要であり、ペン先乾燥防止剤として尿素及び/又はその誘導体の増量等が試みられてきた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、尿素及び/又は尿素誘導体は吸水性能の高さがキャップオフ性能を発現させるため、これらのキャップオフ性能付与剤を過剰に添加したインキは高湿度条件下で放置した場合、ペン先部分において局部的に水分を吸収することになる。そのため、水性ボールペンにこのようなインキを適用した場合、水分吸収によりペン先部分のインキ粘度が低下し、インキがペン先部分に溜まる「垂れ下がり」、或いは溜まったインキが落下する「ボタ落ち」現象が発生してしまう。
更には、前記ワックスエマルジョンの平均粒子径が0.1μm以下であること、前記ワックスエマルジョンをインキ組成物中0.1〜5.0重量%の範囲で含有してなること、前記着色剤が染料であること等を要件とする。
更には、前記ボールペン用水性インキ組成物を、ボールペンチップを直接又は中継部材を介して取り付けたインキ収容管内に直接充填し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設した水性ボールペンを要件とする。
なお、キャップオフ性能については、ペン先で前記ワックスが析出して被膜を形成してインキの蒸発を抑制し、筆記時の衝撃により被膜が破壊されてインキ出が回復するものと推察される。
平均粒子径が0.1μmを越えると、インキ中で分離する虞があり、所期の性能を満足させ難くなる。
なお、前記ワックスエマルジョンの平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.1μm、より好ましくは0.02〜0.05μmである。
前記ワックスはインキ組成物全量に対して0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%の範囲で配合される。0.1重量%未満では垂れ下がり防止効果が得られ難く、5.0重量%を越えるとインキの粘度が上昇して泣き出しやボテの原因になったり、追従性を妨げることがある。更には耐ドライアップ性を悪化させてしまうこともある。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6BN(C.I.43525)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
前記着色剤として染料を用いた場合、キャップを要しないノック式のボールペンに適用する系ではドライアップが顕著であり、耐ドライアップ性能は重要な要件となる。
C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black A25 、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属粉、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、金属蒸着膜の片面又は両面に透明又は着色透明フィルムを設けた金属光沢フィルム片を細かく裁断したもの、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断したものを例示できる。
なお、前記アルミニウムや真鍮等の金属粉を用いる場合、前記金属粉の表面を透明性樹脂や着色透明性樹脂で被覆したものが好適に用いられ、インキ組成物中での安定性に優れる。
前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が用いられる。
前記水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもできる。
その他、必要に応じてpH調整剤、防錆剤、防腐剤或いは防黴剤、潤滑剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、ジアルキルチオ尿素等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
前記潤滑剤としては、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
インキの剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
前記ボールペンチップに抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.3〜1.5mmのボールが有効であり、前記チップのボール抱持部の内径とボールとの径方向の可動距離は10〜50μm、ボールの軸方向の可動距離は10〜30μmの範囲であることが好ましい。
なお、前記ボールペンチップには、チップ内にボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはチップ先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することが好ましく、不使用時のインキ漏れを抑制できる。
前記弾発部材は、金属細線のスプリング、前記スプリングの一端にストレート部(ロッド部)を備えたもの、線状プラスチック加工体等を例示でき、15〜45gの弾発力により、押圧可能に構成して適用される。
又、前記インキ収容管は、2.5〜10mmの内径を有するものが好適に用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管はレフィルの形態として軸筒内に収容したり、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容管として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
前記インキ逆流防止体は、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の従来より公知の不揮発性液体或いは難揮発性液体からなる基油に、シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等の増粘剤を添加したものが適用される。
前記基油としては、ポリブテン又はシリコーン油が好適に用いられ、増粘剤としては脂肪酸アマイド又はシリカが好適に用いられる。
本発明に用いられるインキ逆流防止体は、インキ粘度がEM型回転粘度計の100rpmにおける測定粘度(20℃)が、3〜160mPa・sの範囲にあり、且つ剪断減粘性指数が、0.9〜0.99の範囲にある剪断減粘性水性インキ、B型回転粘度計の60rpmにおける測定粘度(20℃)が、1〜20mPa・sの範囲にあり、且つ剪断減粘性指数が、0.9〜0.99の範囲にある剪断減粘性水性インキ、或いは、B型回転粘度計の60rpmにおける測定粘度(20℃)が、1〜20mPa・sの範囲にある非剪断減粘性水性インキを用いる場合、粘弾性測定におけるtanδが1を越える点(ω)が20rad/s≦ω≦450rad/sの範囲にあることが好ましい。
これを詳しく説明すると、前記インキは静置状態での粘度が低く、剪断減粘指数を0.1〜0.6程度に調整した従来の剪断減粘性水性インキと比べて耐衝撃性に劣る。よって、インキ収容管後部からインキの漏れ出しを生じ易く、筆記不能になったり、商品価値を損なう虞がある。
よって、インキの後端に配置されるインキ逆流防止体に耐衝撃性を付与して前述した不具合を解消する必要がある。
前記粘弾性測定におけるtanδが1を越える点(ω)が20rad/s≦ω≦450rad/sの範囲にあるインキ逆流防止体は粘弾性を示し、弾性応答と粘性応答の中間的な性質を示す。
粘弾性測定は、レオメーターの振動法により測定し、tanδとは損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割ったものであり、この値が低い(tanδ<1)と、弾性特性が高く、且つ、粘性特性が低くなる。一方、この値が高い(tanδ>1)と、弾性特性が低く、且つ、粘性特性が高くなる。
前述の粘弾性測定において、角周波数(rad/s)が20以上の領域は筆記具に落下等の衝撃を加えた状態に近い領域となる。
従って、20rad/sでtanδが1を越える粘弾性を示すインキ逆流防止体は、粘性応答の強さに依存して耐衝撃性を満足させることができる。
前記tanδが1を越える点は20rad/s以上であるが、450rad/sを越えると弾性応答が強くなってインキ追従性を損ないがちであり、インキ出に乏しくなる。
よって、インキ逆流防止体のtanδが1を越える点(ω)を20rad/s≦ω≦450rad/sの範囲に調整することにより、耐衝撃性と筆記性能を共に満足させることができる。
なお、インキ逆流防止体には、樹脂成形による固体栓を併用することもできる。
なお,表中の組成の数値は重量部を示す。
実施例1〜4、比較例1〜4、6〜9のインキ粘度は20℃でB型回転粘度計〔東京計器(株)製、BLアダプター使用〕を用いて、60rpmにて測定した。
実施例5、及び、比較例5のインキ粘度は20℃でEMD型回転粘度計〔東機産業(株)製、RE−80R、標準ロータ使用〕を用いて、60rpmにて測定した。
前記実施例2、4、及び、比較例2、4、9のインキの剪断減粘指数は0.97であり、実施例5、及び、比較例5のインキの剪断減粘指数は0.3であった。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:フィスコブラック886、有効成分15%
(2)アイゼン保土谷(株)製、C.I.45410、商品名:フロキシン
(3)住友化学工業(株)製、C.I.42655、商品名:アシッドブルーPG
(4)BASF社製、商品名:poligen WE3、エチレンアクリル酸コポリマーワックスエマルジョン、平均粒子径0.1μm以下、固形分25%
(5)BASF社製、商品名:poligen WE4、エチレンアクリル酸コポリマーワックスエマルジョン、平均粒子径0.1μm以下、固形分21%
(6)三井化学(株)製、商品名:ケミパールS−100、平均粒子径0.1μm以下、固形分27%
(7)三晶(株)製、商品名:レオザン
(8)1,2−ベンズチアゾリン−3−オン、アビシア(株)製、商品名:プロキセルXL−2
(9)リン酸エステル系界面活性剤、第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(10)エレメンティスジャパン社製、商品名:SLIP−AID 635E、カルナバワックスエマルジョン、粒子径0.1〜1μm、固形分35%
(11)ジョンソンポリマー社製、商品名:ジョンクリル780、平均粒子径0.1μm、固形分48%、最低造膜温度50℃以上
(12)クラリアントジャパン社製、商品名:モビニール972、平均粒子径0.1μm以上、固形分50%、最低造膜温度220℃
(13)日本エヌエスシー(株)製、商品名:カネビノールKD5、平均粒子径0.02μm、固形分35%、最低造膜温度65℃以上
基油としてポリブテン85部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド15部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
なお、前記インキ逆流防止体は、20℃でレオメーター〔Paar Physica社製、DSR4000、2°のコーンプレート(直径25mm)使用〕を用いて測定した結果、100rad/sでtanδが1を越えるものであった。
前記各インキ組成物を直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプ(内径3.8mm)の一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、水性ボールペンを作製した。
垂れ下がり試験
キャップを外した水性ボールペンを、ペン先(ボールペンチップ)非接触状態で下向き(倒立)に保持し、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下に20時間放置した後、ペン先の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
キャップオフ試験
組み立て後、筆記可能であることを確認した水性ボールペンを、ペン先を露出した状態で室温(20℃)、湿度55〜75%RHの条件下に横置き、10日間放置後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで丸を一行に12個連続筆記し、何行目から正常に筆記できるかを調べ、以下の基準で評価した。
インキ安定性試験
各インキ組成物を室温(20℃)及び50℃で7日間放置した後、インキの状態を目視により観察した。
垂れ下がり試験
○:インキの漏れだし(垂れ下がり)が認められない。
△:チップ先端にインキの小滴が認められる。
×:チップ先端に、大きいインキ滴が認められる、或いはチップ先端から漏れたインキが落下している。
キャップオフ試験
○:即筆記可能
×:即筆記不可能(1行以内で筆記可能)
インキ安定性試験
○:異常なし。
×:エマルジョンが浮いたり、沈降している。
Claims (5)
- 少なくとも水と、着色剤と、水溶性有機溶剤とからなるボールペン用水性インキ組成物において、エチレンとアクリル酸又はエチレンとメタクリル酸のコポリマーのワックスエマルジョンを含有してなるボールペン用水性インキ組成物。
- 前記ワックスエマルジョンの平均粒子径が0.1μm以下である請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記ワックスエマルジョンをインキ組成物中0.1〜5.0重量%の範囲で含有してなる請求項1又は2記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記着色剤が染料である請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を、ボールペンチップを直接又は中継部材を介して取り付けたインキ収容管内に直接充填し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設した水性ボールペン。
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