JP2020015875A - 筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明によれば、インキ貯蔵体内のインキ移動性に優れながらも、インキの漏れ出し現象をも十分に抑制することができ、かつ、良好な筆跡をもたらす筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供する。【解決手段】水と、着色剤と、界面活性剤と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性が50mm以上であり、かつ、消泡率が50%以上である筆記具用水性インキ組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具に関するものである。
筆記具には、インキ流量を調節する適宜のインキ流量調節体を介してペン先が軸筒端部に取り付けられ、前記軸筒内にインキ組成物を収容するインキ貯蔵体が備えられた構造のものがある。この種の筆記具は、筆記するために、ペン先上向き状態や横置き状態から、ペン先下向き状態にした場合に、インキ貯蔵体に収容されたインキ組成物がインキ貯蔵体の内壁を伝ってペン先方向へ流下することで、筆記が可能となる。(このインキ組成物の流下をインキ移動性と称する。)
しかしながら、ペン先下向き状態にしても、インキ組成物のインキ貯蔵体に対する濡れ性が不足し、インキ組成物が流下せず元の位置に留まってしまったり、インキ貯蔵体内のインキが泡立ち、その泡により、インキがペン先方向へ円滑に流下されなかったりするなど、ペン先にまでインキ組成物が十分に供給されず、筆跡がかすれたり、最悪、筆記することができなくなってしまう課題を有している。
上記課題を解決するため、インキ組成物の表面張力を下げ、インキ貯蔵体に対する濡れ性を改善することが一般的に考えられる。
そこで、界面活性剤などの添加剤を添加することが考えられるが、適正な添加剤を選択しないと、インキはさらに泡立ちやすくなり、上述のように、泡によりインキ移動性が阻害されてしまい、解決に至らないことがある。
また、表面張力は、重力、大気圧、衝撃によるインキ組成物の移動に対する抗力として重要な役割を果たしていることから、インキ組成物の表面張力を下げてインキ貯蔵体内のインキ移動性の向上を試みた場合には、上記抗力が不足してしまい、非筆記時でも、ペン先下向き状態にした場合に、インキが垂れ落ちてしまったり、また、温度変化やキャップの着脱による筆記具内の圧力変化によって、インキが溢れ出してしまったりするなど、インキの漏れ出しという新たな課題が発生してしまうことがあった。
そこで、マルトシルサイクロデキストリン等の添加剤を添加し、表面張力を下げることなく、インキ貯蔵体内のインキ移動性を向上させた水性インキ組成物が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、前記マルトシルサイクロデキストリン等は、良好なインキ移動性が得られる程度にインキ組成物中に添加すると、インキ粘度が上昇してしまい、インキ追従性が低下し良好な筆跡が得られ難く、また、水への溶解性が低いためにペン先の耐ドライアップ性能に影響を及ぼすなどの課題を有する。
このように、従来のインキ組成物では、インキ貯蔵体内のインキ移動性を向上させるため、表面張力を下げてインキ貯蔵体への濡れ性を向上させると、抗力が不足してインキが保持できずインキの漏れ出しが発生してしまう。一方、インキの漏れ出しを抑制するため、インキ組成物の表面張力をある程度あげていくと、インキ貯蔵体内のインキ移動性が十分に得られなくなってしまう。また、インキ組成物の表面張力の調整によらず、上記課題解決を試みた場合には、筆跡がかすれたり、初筆より良好に筆記できないなど、筆記性や得られる筆跡に課題が生じ、インキ組成物としての性能を十分に満足するものではなかった。
よって、インキ貯蔵体内のインキ移動性の改善と、インキの漏れ出し抑制という二つの課題を同時に解決し、さらに滲みや裏抜け、かすれなどの少ない良好な筆跡が得られる水性インキ組成物が求められている。特に、インキ流量を調節する適宜のインキ流量調節体を介してペン先が軸筒端部に取り付けられ、前記軸筒内にインキ組成物を収容するインキ貯蔵体が備えられた構造である筆記具に好適に用いられるような低粘度のインキ組成物では、上記課題を解決することはさらに難しく、大きな課題となっていた。
特開平5−140498号公報
本発明は、優れた耐漏れ出し性能と、優れたインキ貯蔵体内におけるインキ移動性能を有する、筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供するものである。
本発明による筆記具用水性インキ組成物は、水と、着色剤と、界面活性剤と、を含んでなるインキ組成物であって、前記インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性が50mm以上であり、かつ、消泡率が50%以上であることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物である。
また、本発明による筆記具は、前記筆記具用水性インキ組成物を収容してなることを特徴とするものである。
本発明によれば、ペン先からのインキ漏れ出し現象を十分に抑制しながらも、インキ貯蔵体内でのインキの移動性に優れ、さらには、良好な筆跡をもたらすことができる筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有率とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
<筆記具用水性インキ組成物>
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により、インキ組成物と表す。)は、水と、着色剤と、界面活性剤と、を含んでなるものであって、前記インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性が50mm以上であり、かつ、消泡率が50%以上であることを特徴とするものである。
よって、本発明のインキ組成物は、一定以上の泡立ち性と、優れた消泡性を有するものである。
このため、本発明のインキ組成物は、インキ中に泡が発生するものの、泡は素早く消える傾向にあることから、インキ中の残泡による不具合を抑制することができる。
よって、本発明のインキ組成物を用いた筆記具では、インキ貯蔵体内のインキが泡立ったとしても、泡消えに優れているため、筆記するためにペン先上向き状態や横置き状態から下向き状態にした際、発生した泡により、インキが元の位置に留まることなく、円滑に壁面を伝ってペン先方向へ流下できる。
また、インキ中に泡が残り難いため、インキ流量調節体がインキ中の残泡に阻害されず、その機能を十分に働かせることができる。このため、ペン先よりインキが漏れ出すことなく、ペン先からのインキ吐出性を良好に維持することができ、良好な筆跡を残すことができる。
特に、本発明のインキ組成物を、後述するようなくし歯状のインキ保留部材をインキ流量調節体として有した筆記具に用いた場合には、残泡により、インキ保留部材へのインキの流入が阻害されることなく、円滑に流入するため、インキ流量調節体の機能を十分に働かせることができ、ペン先からのインキの漏れ出しを効果的に抑制することができる。
これは、くし歯状のインキ保留部材をインキ流量調節体として備えた筆記具は、基本的には毛細管現象を利用してインキの吐出を行うため、インキ貯蔵体の内圧が上昇すると、余剰なインキがペン先より吹き出してしまうことが考えられるが、くし歯状のインキ保留部材が正常に機能していると、この余剰なインキは、くし歯状の構造体中に取り込まれ、保持され、インキの漏れ出しを抑制することができる。しかしながら、インキの消泡性が悪いと泡により、インキがインキ保留部材へ流入できず、インキ流量調節体の機能を十分に働かすことができず、ペン先からインキが漏れ出してしまうことがあった。本発明のインキ組成物は、前述の通り、消泡性に優れているため、上記のように、インキ中の残泡によりインキ流量調整体の働きが阻害されることを抑制できる。このため、優れた耐漏れ出し性能を得ることができるのである。
さらに、本発明者は、一定以上の泡立ち性を有する本発明のインキ組成物が、インキに動きが生じた際にも、筆記具部材に対し良好な濡れ性を発現することがわかった。これは、理由は定かではないが、通常、界面活性剤を含むインキ組成物は、インキに動きが生じると、インキの気液界面に存在する界面活性剤の配列が崩れ、インキの表面張力が大きく上昇し、筆記具部材に対する濡れ性が低下してしまう傾向にあるが、一定以上の泡立ち性を有するインキ組成物では、この表面張力の上昇を効果的に抑えられるためと推測する。
よって、本発明のインキ組成物を用いた筆記具は、筆記するために、ペン先上向き状態や横置き状態からペン先下向き状態にして、インキ貯蔵体内のインキに動きが生じた場合でも、インキの表面張力は大きく上昇することなく、インキ貯蔵体に対し良好な濡れ性を示す。このため、インキ貯蔵体内のインキ組成物は、即時に壁面を伝って流下することができ、優れたインキ移動性能を示すことができるのである。
以上より、本発明のインキ組成物は、一定以上の泡立ち性と優れた消泡性を有することから、インキ中の残泡抑制と、インキに動きが生じた際の筆記具部品に対する濡れ性の低下抑制という二つのアプローチにより、優れたインキ移動性能と優れた耐漏れ出し性能という相反する性能を得ることができるのである。
本発明における、振とう法により測定されるインキ組成物の泡立ち性と消泡率とは、100ml有栓形メスシリンダー中にインキ組成物を50ml入れ、室温中(25℃)で該メスシリンダーを30秒間に100回、30cm幅で垂直方向に振とうした後、静置し、5秒後の泡の高さと6分後の泡の高さを測定した測定値および、測定値を用いて算出した値である。5秒後の泡の高さがXmm、6分後の泡の高さがYmmである場合、5秒後の泡の高さ(Xmm)が泡立ち性を示し、また、下記式(1)を用いて算出される値が消泡率を示す。また、本発明において、6分後の泡の高さ(Ymm)は、泡安定性を示す。
Figure 2020015875
本発明において、インキ組成物の泡立ち性は、60mm以上であることが好ましく、90mm以上であることがより好ましく、インキ組成物のインキ移動性能を向上させることができる。
これは、上記のような一定値以上の泡立ち性を有するインキ組成物は、インキに動きが生じても、界面活性剤の配列が崩れてインキの表面張力が大きく上昇することをさらに抑制しやすく、筆記具部材に対し優れた濡れ性を示しやすいためと考える。
特に、樹脂材を用いたインキ貯蔵体を有する筆記具では、インキは、インキ貯蔵体に対する濡れ性が不足してしまう傾向にあり、インキ移動性能を特に考慮する必要がある。よって、この場合、インキ組成物の泡立ち性が上記のような一定値以上とすることで、優れたインキ移動性を示すことができるため、効果的である。
さらに、上記効果の向上を考慮すると、インキ組成物の泡立ち性は、100mm以上であることがさらに好ましく、110mm以上であることが特に好ましい。
一方、製造時のインキの泡立ちによる生産性の低下抑制、また、後述するようなインキ貯蔵体へのインキの吸入性の向上を考慮すると、インキ組成物の泡立ち性は、200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがより好ましい。
また、本発明のインキ組成物の消泡率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。消泡率が上記のような一定値以上であれば、インキ組成物中の残泡が抑制され、インキ組成物の耐漏れ出し性能とインキ貯蔵体内のインキ移動性を向上させることができる。
さらに、本発明のインキ組成物の泡安定性は、80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることがさらに好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
インキ組成物の泡安定性が上記のような一定値以下であると、インキ中に泡が残りにくく、インキ組成物中の残泡によって生じる不具合を抑制しやすい傾向にあり、耐漏れ出し性能と、インキ貯蔵体内のインキ移動性能を向上させることができる。また、インキの製造時の泡による生産性の低下を防止するという点からも、インキ組成物の泡安定性は上記のような一定値以下であることが好ましい。
また、本発明のインキ組成物の20℃における表面張力は、30〜70mN/mであることが好ましい。インキ組成物の表面張力が上記数値範囲内であれば、非筆記時のペン先からのインキの漏れ出しが抑制されやすく、さらには、インキ流量調節体に対する濡れ性も適正に保たれるため、ペン先からのインキ吐出性に優れ、良好な筆跡をもたらすことができる。また、インキ貯蔵体に対し良好な濡れ性が付与されやすいことから、優れたインキ移動性能が得られやすい。さらに、上記効果の向上を考慮すると、35〜60mN/mであることがより好ましく、35〜55mN/mであることが特に好ましい。
また、本発明のインキ組成物を、インキ流量調節体としてくし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具に用いた場合には、35〜60mN/mであることが好ましく、35〜55mN/mであることがより好ましく、40〜55mN/mであることが特に好ましい。これは、優れたインキ移動性能と耐漏れ出し性能を得て、また、滲みや裏抜けの少ない良好な筆跡が得られやすいためである。
なお、表面張力は、20℃環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器(DY−200)を用い、白金プレートを用いて、垂直平板法によって測定して求められる。
また、本発明によるインキ組成物は、B型回転粘度計を用いて、回転数60rpm、20℃で測定したインキ粘度が、50mPa・s以下であることが好ましく、さらには、10mPa・s以下であることが好ましい。インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、ペン先からのインキ吐出性、インキ貯蔵体内のインキ移動性を向上させることができ、良好な筆跡を得ることができる。
本発明のインキ組成物は、前述の通り、インキ流量調節体としてくし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具に用いた場合、くし歯状のインキ保留部材の機能を十分に働かせることができるため、上記筆記具に好適に用いることができるが、この場合、優れた耐漏れ出し性能とペン先からの良好なインキ吐出性が得られることを考慮すると、インキ粘度は、3mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定はB型回転粘度計(機種:BLII、ローター:BLアダプタ、東機産業株式会社製)を用いて行うことができる。
また、本発明のインキ組成物のpHは、6〜11であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。インキ組成物のpHが上記数値範囲内であれば、インキ組成物中の各成分が安定して存在できるため好ましく、さらに、インキ組成物が接触するペン先などの筆記具の金属部分の腐食を防止することができる。本発明において、pHの値は、例えばHM−30R型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
以下、本発明のインキ組成物における構成成分について詳細に説明する。
<界面活性剤>
本発明に用いられる界面活性剤は、インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性を50mm以上、かつ、消泡率を50%以上となるよう調整したり、また、インキ組成物の表面張力を調整し、筆記具部材に対し良好な濡れ性を付与できるものであれば特に制限はなく、各種界面活性剤を用いることができる。例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤や、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。また、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを用いても構わない。
本発明においては、インキ中の他成分との相性を考慮し、界面活性剤の効果を十分に得ることを考慮すると、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
また、後述するように、インキ組成物をガラス製のインキ収容体に収容した場合には、金属イオンとの反応による析出物の発生抑制という点を考慮する必要があるが、この析出物の発生抑制という点からも、本発明においては、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
非イオン性界面活性剤は、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型などが挙げられ、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(1)エーテル型非イオン性界面活性剤
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等。
(2)エーテルエステル型非イオン性界面活性剤
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルフォスフェートジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルフォスフェートジエステル、脂肪酸アルコールポリグリコールエーテル等。
(3)エステル型非イオン性界面活性剤
ポリオキシエチレンヒマシ油等のポリオキシアルキレン植物油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシアルキレン硬化植物油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヒマシ油等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン植物油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの脂肪酸エステル等。
(4)含窒素型非イオン性界面活性剤
ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等。
さらに、本発明においては、非イオン性界面活性剤の中でも、インキ組成物を一定値以上の泡立ち性と消泡率に調整しやすい、エーテル型非イオン性界面活性剤を用いることが好ましく、中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルまたはポリオキシアルキレングリコールを用いることが好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中では、耐漏れ出し性能の向上、さらに、滲みや裏抜けが少ない良好な筆跡を得られやすいことを考慮すると、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテルを用いることが好ましい。さらには、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテルを用いることが好ましく、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルを用いることがより好ましい。
また、ポリオキシアルキレングリコールの中では、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いることが好ましい。
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの中では、式(2)で示されるようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを用いることがより好ましい。
Figure 2020015875
式(2)中、x、y、zは正数である。
中でも、本発明において、インキ移動性能と耐漏れ出し性能の向上、さらには滲みや裏抜けの少ない良好な筆跡を得ることを考慮すると、上記式(2)で示されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーにおいて、重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、1200以上であることがより好ましい。また、式(2)で示されるようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーにおいて、重量平均分子量は、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましく、3000以下であることが特に好ましい。
また、式(2)で示されるようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーにおいて、エチレンオキサイドの含有率は、5%以上、60%以下であることがより好ましい。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては具体的には、ノイゲンLFシリーズ(ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、第一工業製薬(株)製)、ノイゲンSDシリーズ(ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、第一工業製薬(株)製))、ノイゲンTDXシリーズ(ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、第一工業製薬(株)製))、ノイゲンXLシリーズ(ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、第一工業製薬(株)製))、ノイゲンTDSシリーズ(ポリオキシエチレントリデシルエーテル、第一工業製薬(株)製))などが挙げられる。
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、具体的には、エパンシリーズ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、第一工業製薬(株)製))、ユニルーブ7シリーズ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)などが挙げられる。
前記界面活性剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.005〜0.5質量%であることがより好ましい。界面活性剤の含有率が上記数値範囲内であれば、界面活性剤の効果を十分に得、優れたインキ貯蔵体内のインキ移動性能と耐漏れ出し性能の両性能がバランス良く得られる。
さらに、インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性を50mm以上、かつ、消泡率を50%以上となるよう調整しながらも、非筆記時にペン先が下向き状態でもインキがペン先より漏れ出すことがないよう適正な表面張力に調整し、筆記具部品に対する濡れ性を良好に保ち、インキ貯蔵体内のインキ移動性能と耐漏れ出し性能を更に向上させることを考慮すると、0.01〜0.1質量%であることが好ましい。さらに、筆跡のにじみや裏抜けが少ない良好な筆跡を得ることを考慮すると、0.01〜0.05質量%であることがより好ましい。
さらに、本発明者は鋭意検討した結果、前述の界面活性剤の中でも特定の起泡力と泡の安定度の関係性を有する界面活性剤を用いることが、本発明において、効果的であることがわかった。
特定の起泡力と泡の安定度の関係性を有する界面活性剤とは、0.1質量%水溶液の25℃におけるロス−マイルス試験法により測定される起泡力(Amm)と泡の安定度(Bmm)が、A>3かつA>1.5Bが成立する界面活性剤である。
このような界面活性剤を用いることは、インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性を50mm以上、かつ、消泡率を50%以上となるよう調整しやすく、さらには、極少量の添加でも、インキ組成物に一定の泡立ち性と優れた消泡性をもたらすことができるため、インキ組成物のその他性能に大きく影響を与えることなく、優れたインキ移動性能と優れた耐漏れ出し性能をもたらしやすいためである。
また、上述のような特定の起泡力と泡の安定度の関係性を有した界面活性剤を用いることは、インキ組成物の静止時の表面張力を極端に下げることなく、筆記具部品に対し良好な濡れ性を付与できるものと考えられる。
よって、特定の起泡力と泡の安定度の関係性を有した界面活性剤を用いることで、非筆記時でも少しの衝撃や振動でペン先からインキが飛び出しにくく、ペン先からのインキの漏れ出しをさらに抑制しやすい。また、良好なインキ吐出により、良好な筆跡が得られやすく、さらには、紙面に対する浸透性も適正に保つことができるため、滲んだり、裏抜けの少ない良好な筆跡が得られやすい。
また、上述のような一定以上の起泡力を有した界面活性剤を用いることは、インキに動きが生じた場合でも、界面活性剤の配列が崩れてインキの表面張力が大きく上昇することを抑制しやすく、非筆記時の良好な濡れ性を維持しやすい傾向にある。よって、インキ移動性能をさらに向上させやすく、この点からも、上述のような界面活性剤を用いることは、本発明において効果的であると言える。
また、本発明において、上述のような特定の起泡力と泡の安定度を有した界面活性剤を用いることは、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材を有する筆記具に用いた場合、優れた耐漏れ出し性能を顕著に発現できることからも、特に効果的である。
前述の通り、くし歯状のインキ保留部材をインキ流量調節体として備えた筆記具は、インキ貯蔵体の内圧が上昇した場合、吹き出された余剰なインキが、くし歯状の構造体の中に取り込まれ、保持されることによりインキの漏れ出しを抑制することができる。しかし、このくし歯状のインキ保留部材を有効に使うためには、インキは、くし歯状のインキ保留部材に対して良好な濡れ性が必要である。
しかし、単に、インキの表面張力を下げて濡れ性を向上させた場合には、表面張力によるインキの抗力が不足してしまい、くし歯状の構造体中でインキが保持できず、インキがペン先より漏れ出してしまう。逆に、濡れ性が足りない場合には、くし歯状の構造体中にインキが円滑に流入できないため、この場合も、くし歯状のインキ保留部材を有効に使うことができず、インキが漏れ出してしまう。
しかしながら、本発明のインキ組成物において、特定の起泡力と泡の安定度の関係性を有した界面活性剤を用いることで前述の通り、静止時の表面張力が極端に低下することなく、適正な表面張力を示し、筆記具部品に対し優れた濡れ性を示すことができ、さらに、インキに動きが生じた際にも、表面張力が大きく上昇することがなく、筆記具部品に対して優れた濡れ性を保つことができる。よって、インキ貯蔵体の内圧上昇が起こり、余剰なインキが押し出されたとしても、インキ流量調節体に対し良好な濡れ性を示すため、余剰のインキはくし歯状のインキ保留部材中に流入し、さらに、漏れ出すことなく保持される。このため、くし歯状のインキ流量調節体の機能を十分に働かせることが可能となり、ペン先からのインキの漏れ出しを効果的に抑制することができるのである。
なお、本発明において、25℃におけるロス−マイルス試験による起泡力は、JIS K3362に準じて測定することができ、本JISで定める装置及び試験液としてイオン交換水を用いて調整した界面活性剤の0.1%水溶液を用いた試験により、全ての試験液が流出した直後の泡の高さを目視にて測定した値である。
また、本発明における泡の安定度とは、上記ロス−マイルス試験において、全ての試験液が流出してから5分後の泡の高さを目視にて測定した値である。
さらに、本発明において、起泡力を示すAの値が、A>10である界面活性剤を用いることが好ましく、さらには、A>50である界面活性剤を用いることがより好ましい。
起泡力を示すAの値が、上記のような一定値以上を有する界面活性剤を用いることで、インキ組成物のインキ移動性能をさらに向上させることができるため、好ましい。
これは、Aの値が上記のような一定値以上を有する界面活性剤は、起泡力に特に優れており、インキ組成物に該界面活性剤を含むことで、インキに動きが生じても、界面活性剤の配列が崩れてインキの表面張力が大きく上昇することをさらに抑制しやすく、よって、静止時の表面張力を維持し、筆記具部材に対し優れた濡れ性が得られやすい傾向にあるためと考える。
さらに、上記効果の向上を考慮すると、A>80である界面活性剤を用いることがより好ましい。
また、製造時のインキの泡立ちによる生産性の低下抑制、さらに、後述するようなインキ貯蔵体へのインキの吸入性の向上を考慮すると、起泡力を示すAの値が、A<120である界面活性剤を用いることが好ましく、A<110である界面活性剤を用いることがより好ましい。
また、泡の安定度を示すBの値が、B<100である界面活性剤を用いることが好ましく、B<80であることがより好ましく、B<60であることがさらに好ましい。
これは、泡の安定度を示すBの値が、上記のような一定値以下である界面活性剤を用いることで、インキ組成物中の残泡によって生じる不具合を抑制しやすい傾向にあり、インキ貯蔵体内のインキ移動性能と耐漏れ出し性能をさらに向上させることができるためである。また、インキの製造時の泡による生産性の低下を防止するという点からも、上記のような泡の安定度が一定値以下であるものを用いることが好ましい。
<着色剤>
本発明において用いることができる着色剤としては、任意の染料または顔料が挙げられ、特に制限されるものではない。
前記染料としては、特に制限されるものではないが、例えば、酸性染料、塩基性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、反応性染料、含金染料、食用色素及び各種造塩タイプ染料等が挙げられる。
これらを単独で、また2種以上の染料を用いても構わない。
具体的には、酸性染料としては、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバイオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、塩基性染料としては、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、直接染料としては、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19、分散染料としては、C.I.ディスパースイエロー82、C.I.ディスパースイエロー3、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド191、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット57、食用色素としては、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2などが挙げられる。
また、本発明において用いることができる顔料は、特に制限されるものではない。例えば、無機顔料、有機顔料、加工顔料などが挙げられる。具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、染料などで樹脂粒子を着色したような着色樹脂粒子や、色材を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。
本発明においては、染料を用いることが好ましく、中でも、酸性染料、塩基性染料を用いることが好ましく、とくに酸性染料を用いることが好ましい。
さらに、前述のような特定の起泡力と泡の安定度の関係性を示す界面活性剤を用いる場合には、キサンテン系、アゾ系の染料との組み合わせにより、前記界面活性剤の効果が十分に得られやすく、インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性を50mm以上、消泡率を50%以上に調整しやすい傾向にある。このため、さらに優れたインキ貯蔵体内のインキ移動性と耐漏れ出し性能が得られる傾向にあり、好ましい。
着色剤として、上記顔料および染料を、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
本発明のインキ組成物における着色剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%が好ましい。着色剤の含有率が上記数値範囲内であれば、界面活性剤の効果を十分に得ながら、インキ吐出性の低下を防止することができるとともに、発色に優れた良好な筆跡を得ることができる。
<水>
水としては、特に制限はなく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水または蒸留水などを用いることができる。
<その他の添加剤>
本発明のインキ組成物は、必要に応じて任意の添加剤を含むことができる。用いることができる添加剤について説明すると以下の通りである。
本発明によるインキ組成物は、インキ組成物中に存在する金属を封鎖するためのキレート剤を含んでなることが好ましい。
本発明のインキ組成物は泡消えに優れていることから、該インキをインキ貯蔵体中に使用者が充填する際、発生した泡に阻害されることなく、容易に充填できる傾向にある。このため、本発明のインキ組成物は、インキ貯蔵体に使用者が繰返し補充して使用されること、さらには、該インキは、ガラス瓶などのガラス製のインキ収容体に収容されて使用されることが想定される。
ガラス瓶は成形が容易で安価に入手しやすく、その上、所望の強度が得られやすいという反面、特に廉価で汎用性の高いソーダ石灰ガラスなどを用いた場合には、インキ組成物を長期間収容していると、インキ組成物中にガラス中のアルカリ成分が溶出する可能性が高く、この溶出したアルカリ成分とインキ組成物の成分が反応して、析出物が形成される可能性がある。
このため、本発明において、キレート剤を用いることは効果的であり、ガラス製のインキ収容体に収容した場合、溶出するアルカリ成分を補足し、該アルカリ成分がインキ組成物中の成分と反応して水に不溶な析出物が発生するのを防止し、発生した析出物などによりインキ流路が塞がれて、筆跡がかすれたり、筆記不能になることを抑制することができるため、効果的である。
キレート剤としては、アミノカルボン酸などのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩などが挙げられる。
アルカリ成分を十分に補足できること、また、インキ組成物のキレート剤の配合前後の物性に大きく影響を及ぼし難い傾向にあること、また、本発明に用いる界面活性剤の相溶性などを考慮すると、前記キレート剤の中でも、アミノカルボン酸およびその塩を用いることが好ましく、中でも、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩を用いることが好ましい。
本発明のインキ組成物におけるキレート剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜1質量%が好ましい。1質量%以下であれば、インキの変色などインキ組成物の性能や物性に悪影響を与えることが少ない。また、0.01質量%以上であれば、ガラスから溶出したアルカリ成分を補足し、析出物の発生を抑制することができる。
また、本発明のインキ組成物は、アミン類を含んでなることが好ましく、アミン類としては、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環アミンなどが挙げられるが、中でもアルカノールアミンを用いることがより好ましい。
アルカノールアミンは、従来、pH調整剤として用いられているが、本発明において、特定の起泡力と泡の安定度の関係性を示す界面活性剤を用いる場合には、インキ組成物のpHを適正に調整できるだけでなく、インキ貯蔵体内のインキ移動性と、耐漏れ出し性能を向上できる傾向にある。
これは、理由は定かではないが、アルカノールアミンと特定の起泡力と泡の安定度の関係性を示す界面活性剤を併用することにより、前記界面活性剤の溶解安定性が十分に保たれ、前記界面活性剤の効果を十分に得ることができるためと考える。
アルカノールアミンは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基をもつ化合物であるが、本発明においては、下記式(3)で表されるアルカノールアミンを用いることが好ましい。
Figure 2020015875
式(3)中、R はエチレン基、トリメチレン基又はプロピレン基を示し、R及びR はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基又は −R−OH 基を示す。
このようなアルカノールアミンの具体例として、例えば、メチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
本発明において、インキ組成物の経時安定性、また、特定の起泡力と泡の安定度の関係性を示す界面活性剤との相性を考慮すると、上記アルカノールアミンの中でも、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましく、インキ組成物に動きが生じた際にも、インキ貯蔵体やインキ流量調節体に対し優れた濡れ性を示しやすく、また、インキ組成物の残泡抑制効果が顕著に得られるため、優れたインキ貯蔵体内でのインキ移動性能と優れた耐漏れ出し性能を、経時的に安定して得ることができる。
また、トリエタノールアミンは吸湿性に優れることから、インキ組成物の耐ドライアップ性能を向上させる傾向にある。このため、本発明において、トリエタノールアミンを用いることは、インキ貯蔵体内のインキ移動性、耐漏れ出し性能の向上とともに、ドライアップ時の書き出し性能も向上させる傾向にあるため、効果的である。
本発明のインキ組成物におけるアルカノールアミンの含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましい。アルカノールアミンの含有率が上記数値範囲内であれば、適正なpH値にインキ組成物を調整することが可能であり、さらに、特定の起泡力と泡の安定度の関係性を示す界面活性剤効果を効率良く、さらに長期的にインキ組成物にもたらしやすく、さらに優れた耐漏れ出し性能とインキ貯蔵体内のインキ移動性能を得ることができる。さらに、耐ドライアップ性能の向上、筆跡の発色性を考慮すると、0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明のインキ組成物は、さらにインキ物性や機能を向上させる目的で、水溶性有機溶剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、保湿剤、浸透剤、潤滑剤などの添加剤を含んでいてもよい。
水溶性有機溶剤としては、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどのグリコール類、(ii)メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコールなどのアルコール類、および(iii)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシブタノール、または3−メトキシ−3−メチルブタノールなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。
中でも、本発明に用いられる界面活性剤との相性が良く、安定して存在でき、界面活性剤の効果を十分に得ることができる、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリセリンなどを用いることが好ましい。
インキ組成物における水溶性有機溶剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましい。
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの無機塩類、塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられ、これらのpH調整剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわない。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
保湿剤としては、多価アルコール溶剤、尿素、またはソルビット、また、トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシンなどのN,N,N−トリアルキルアミノ酸などがあげられる。
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
<筆記具>
本発明のインキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップまたはボールペンチップなどを筆記先端としたマーキングペンやボールペン、金属製の筆記先端を用いた万年筆など、各種筆記具に用いることができる。
また、本発明のインキ組成物は、インキ組成物を直に充填する構成のもの、インキ組成物を充填することのできるインキ貯蔵体を備えるものなどに用いることができる。
本発明のインキ組成物は、前記インキ貯蔵体が筆記具本体に着脱自在に交換可能なインキ貯蔵体(インキカートリッジ)や、また、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキ貯蔵体内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキ貯蔵体(インキ吸入器)を備えた筆記具に好適に用いることができる。
上記のようなインキ貯蔵体は、筆記具の軸筒内に備える可能性があるため、インキ貯蔵体の内径が制約される可能性が高い。このため、インキ貯蔵体内でインキ組成物は流動しにくく、インキ貯蔵体内のインキ移動性に特に考慮が必要となる。本発明のインキ組成物は、インキに動きが生じた際のインキ貯蔵体に対する濡れ性の低下を抑制することができ、また、消泡性に優れ、インキ貯蔵体内のインキ移動性に優れていることから、上記のようなインキ貯蔵体を備える筆記具に、好適に用いることができる。
特に、前記インキ貯蔵体の素材が樹脂材により成形されている場合、インキ貯蔵体はインキ組成物との濡れ性が悪くなる傾向にあり、インキ貯蔵体内のインキ移動性を特に考慮する必要がある。本発明のインキ組成物は、樹脂材に対してもインキに動きが生じた際の濡れ性の低下を抑制することができることから、樹脂製のインキ貯蔵体を有する筆記具に好適に用いることができる。
また、インキ貯蔵体は、インキ残量がわかるような半透明性または透明性を有する材料から構成されることが望まれる。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、インキ貯蔵体は、インキ組成物を長期間保管するため、耐薬品性に優れる、結晶性樹脂を用いることが好ましく、よって、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどの結晶性オレフィン樹脂を用いることがより好ましい。
本発明のインキ組成物は、上述のような樹脂材を用いたインキ貯蔵体に対しても良好なインキ移動性能をもたらすことができ、特に、インキ組成物の表面張力を35mN/m〜60mN/mとすると、インキに動きが生じた際にも、上記樹脂に対して濡れやすく、インキ移動性能が向上しやすい。
また、上記樹脂の中でも、ポリメチルペンテンは、耐薬品性に優れながらも、特に優れた透明性を有しており、また、適度な柔軟性を有することから、上述のような筆記具本体に着脱自在に交換可能なインキ貯蔵体(インキカートリッジ)や、また、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキ貯蔵体内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキ貯蔵体(インキ吸入器)に好適に用いられる。
しかしながら、ポリメチルペンテンは、表面張力が低く、インキは、ポリメチルペンテンに対して濡れ性が不足してしまう傾向にある。このため、ポリメチルペンテンを含んでなるインキ貯蔵体を用いた筆記具では、インキ移動性について特に考慮する必要がある。しかし、本発明のインキ組成物は、ポリメチルペンテンを含んでなるインキ貯蔵体に対しても、インキに動きが生じた際にも優れた濡れ性を示すことから、優れたインキ移動性能を得ることができる。よって、本発明のインキ組成物は、ポリメチルペンを含んでなるインキ貯蔵体にも好適に用いることができる。さらに、インキ組成物の表面張力を35mN/m〜50mN/mとすると、ポリメチルペンテンに対して、良好な濡れ性が得られやすく、インキ移動性能をより向上させやすいため、効果的であり、好ましい。
また、インキ瓶のようなインキ収容体から、インキ貯蔵体内に直接インキを吸入することができる機能をもつインキ貯蔵体(インキ吸入器)を備えた筆記具では、従来のインキ組成物では、上述のようなインキ貯蔵体内のインキ移動性において課題があることに加え、吸入する際にインキが泡立ち、発生した泡によりインキ貯蔵体(インキ吸入器)内をインキで満たし難いという課題も有している。しかし、前述の通り、本発明のインキ組成物は泡立つものの消泡性に優れていることから、インキ吸入器内をインキで満たすことが容易である。よって、上記の点からも、本発明のインキ組成物は、インキ貯蔵体としてインキ吸入器を備えた筆記具にも好適に用いることができるといえる。
また、前記インキ吸入器の中には、インキ吸入器内のインキをペン先側へ移動させやすくするための錘として、あるいはインキ吸入時においてインキ瓶から吸い上げたインキを吸入器内に保持させるための栓として、当該インキ吸入器内で前後方向に移動可能な移動体を配したものがある。
この様なインキ吸入器内に移動体を配したインキ吸入器は、移動体の材質によっては、インキ吸入器内のインキ移動性を悪くしてしまう場合がある。
特に、移動体が樹脂材からなる場合、インキ組成物の移動体に対する濡れ性が乏しく、インキ移動性が抑制されてしまう傾向にある。しかし、本発明のインキ組成物は、前記樹脂材からなる移動体に対しても、優れた濡れ性を示し、インキ移動性の悪化を抑制することができる。よって、本発明のインキ組成物は、移動体、特に樹脂材からなる移動体が配置されたインキ吸入器を備えた筆記具にも好適に用いることができる。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具は、筆記先端を覆うキャップを備えたキャップ式の他、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内に筆記先端を収容可能な出没式であってもよい。特に、出没式筆記具では、ペン先からのインキ漏れ出し対策がより重要視されるため、耐漏れ出し性能に優れる本発明のインキ組成物は出没式筆記具に好適に用いることができる。
本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具のインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(機構1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節体として備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構2)くし歯状のインキ保留部材をインキ流量調節体として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構3)弁機構によるインキ流量調節体を備え、インキ組成物を筆記先端に供給する機構、および(機構4)インキ流量調節体なしに直接、ペン先に供給する機構などを挙げることができる。
中でも、本発明のインキ組成物は、(機構2)くし歯状のインキ保留部材をインキ流量調節体として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構に特に好適に用いることができる。これは前述の通り、本発明のインキ組成物は泡消えに優れており、インキ中の残泡によりインキ流量調整体の働きが阻害されることを抑制でき、特に優れた耐漏れ出し性能を得ることができるためである。
また、インキ流量調節体に樹脂材が用いられる場合、その樹脂種や、成型時に用いる金型潤滑剤等の添加剤の影響により疎水性が強くなり、インキ組成物との濡れ性を特に考慮する必要がある場合がある。この場合、表面改質剤によりインキ流量調節体の表面改質を行うことにより、インキ流量調節体の安定した性能を得ることができ、耐漏れ出し性能の向上やインキ吐出性を向上させることができる。上記表面改質剤として、樹脂や界面活性剤などが挙げられ、具体的には、酢酸ビニルおよびアクリル酸エステルを含むコポリマーや、アセチレン結合を有する界面活性剤、コハク酸系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤のような界面活性剤を用いることが好ましい。よって、本発明のインキ組成物は、このような表面改質が行われたインキ流量調節体を備える筆記具に用いることで、耐漏れ出し性能やインキ吐出性をさらに向上し、良好な筆跡をもたらすことができ、格段の効果を得ることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
下記原材料および配合量にて、着色材以外の原材料をプロペラ撹拌により混合してベース液を得た。その後、ベース液に着色剤を添加し、プロペラ撹拌により混合して、筆記具用水性インキ組成物を得た。
得られたインキ組成物の泡立ち性および消泡率を、100ml有栓形メスシリンダー(JIS R 3505規格品、柴田科学(株)製、外径φ32mm、全高250mm)を用いて測定したところ、5秒後の泡の高さ(Xmm)が113mmであり、6分後の泡の高さ(Ymm)が11mmであった。よって、泡立ち性が113mmであり、泡安定性が11mmであり、消泡率は90%であった。
また、得られたインキ組成物の粘度をB型回転粘度計(機種:BLII、ローター:BLアダプタ、東機産業株式会社製、サンプル量20ml)により測定した。具体的には、20℃、回転速度60rpmにおける粘度は1.3mPa・sであった。
また、得られたインキ組成物の表面張力を、表面張力計測器DY−200(20℃環境下、白金プレート、垂直平板法、協和界面科学株式会社製)により測定したところ、46.7mN/mであった。さらに、HM−30R型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃においてインキ組成物のpHを測定した結果、pHは9.3であった。

・界面活性剤A 0.05質量%
(起泡力(Amm)=106mm、泡の安定度(Bmm)=51mm、ポリオキシチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)
・着色剤 1.0質量%
(C.I.アシッドレッド289)
・着色剤 0.5質量%
(C.I.アシッドレッド52)
・着色剤 0.5質量%
(C.I.アシッドイエロー42)
・アミン類 1.0質量%
(トリエタノールアミン)
・キレート剤 0.05質量%
(エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム)
・水溶性有機溶剤 2.0質量%
(ジエチレングリコール)
・防腐剤 0.2質量%
(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン)
・水 残部
<実施例2〜実施例8、比較例1〜比較例5>
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表1、表2に示した通りに変更した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2〜実施例8、比較例1〜比較例5のインキ組成物を得た。
また、実施例1〜8、比較例1〜4に用いた界面活性剤の1%水溶液を調整し、これらの水溶液の状態を目視で確認した。実施例1〜8、比較例1、2に用いた界面活性剤の1%水溶液は透明性を有しているのに対し、比較例3、4に用いた界面活性剤の1%水溶液は白濁しており、比較例3、4に用いた界面活性剤が水に十分に溶解できていない様子が確認された。このことから、比較例3、4で用いた界面活性剤は、その他の界面活性剤に比べ水への溶解性が低く、比較例3、4のインキ組成物は、他のインキ組成物に比べ、界面活性剤の効果を十分に得られ難く、また、経時安定性に懸念が残るものであり、筆記具用水性インキ組成物として好適でないと判断した。
この結果を受け、比較例3および比較例4のインキ組成物は、以下の試験用筆記具の作製および性能試験は行わなかった。
<試験用筆記具の作製>
実施例1〜実施例8、比較例1、2、5のインキ組成物を、ポリメチルペンテン製のインキ吸入器(インキ吸入器内に前後方向に移動可能な樹脂製の移動体を配したもの)に、インキ吸入器開口部上向きの状態で注入し、移動体がインキ組成物中に完全に浸漬された状態にした。このインキ吸入器を、くし歯状のインキ保留部材(酢酸ビニルおよびアクリル酸エステルを含むコポリマーによって表面改質したもの)をインキ流量調節体として配置された、万年筆形態のペン先を有するノック式の出没式筆記具(パイロットコーポレーション社製、万年筆、FCN−1MR−BM)に、ペン先が上向きのまま装着した。この筆記具を試験用筆記具とする。
<インキ貯蔵体内のインキ移動性能試験>
各インキ組成物が充填された試験用筆記具をそれぞれ10本用意し、ペン先上向き状態にある試験用筆記具を、ペン先を静かに下向き状態にした際、10秒以内にインキ組成物が、インキ貯蔵体内でペン先側にすべて流下した本数を数え、下記基準に従ってインキ貯蔵体内のインキ移動性能を評価した。得られた評価結果を表1、表2にまとめた。
A:10本
B:8〜9本
C:6〜7本
D:5本以下
<耐漏れ出し性能試験>
インキ貯蔵体内のインキ移動性能試験で使用した試験用筆記具を暫くペン先下向き状態にし、充填されたインキ組成物をペン先まで流入させ、筆記可能な状態にした後、試験用筆記具をペン先下向き状態のまま、減圧デシケーター中に静置させた。この状態で、5分間でデシケーター内を70mmHgまで減圧させ、その後、70mmHgの減圧状態を保ったまま、更に5分間、デシケーター中に試験用筆記具を放置させた。この時の試験用筆記具のペン先の様子と、インキの漏れ出しの有無を確認し、下記基準に従って、耐漏れ出し性能を評価した。得られた評価結果を表1、表2にまとめた。
A:インキの漏れ出しは発生しなかった。
B:デシケーター内を5分間で70mmHgまで減圧した際には、インキの漏れ出しは発生しなかったが、70mmHgの減圧状態を維持した5分の間に、ペン先からインキ組成物が少量吹き出し、インキの漏れ出しが若干発生した。しかしながら、実用上問題のないレベルであった。
C:デシケーター内を5分間で70mmHgまでの減圧した際、インキの漏れ出しが発生した。
<筆記性能試験>
耐漏れ出し性能試験で使用した試験用筆記具を用い、筆記試験用紙の紙面上に「V」という文字を連続筆記し、その筆跡を確認した。得られた筆跡を下記基準に従って評価した。評価結果を表1、表2にまとめた。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用いて評価を行った。
A:にじみや裏抜けのない、良好な筆跡が得られた。
B:筆跡ににじみや裏抜けが確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
C:筆跡ににじみや裏抜けが確認された。
Figure 2020015875
Figure 2020015875
表1に示した通り、実施例1〜実施例8のインキ組成物は、インキ貯蔵体内のインキ移動性能、耐漏れ出し性能すべてにおいて、良好レベルのものであった。また、筆記性能試験より、実施例1〜実施例8のインキ組成物は良好な筆跡が得られることがわかった。
一方、表2に示した通り、比較例1、2、5のインキ組成物は、振とう法により測定される泡立ち性が50mm以上、かつ、消泡率が50%以上でないことから、インキ貯蔵体内のインキ移動性能、耐漏れ出し性能において、すべてを満足するインキ組成物ではなかった。
また、ポリメチルペンテン製のインキ吸入器(インキ吸入器内に前後方向に移動可能な樹脂製の移動体を配したもの)を、インキ流量調節体としてくし歯状のインキ保留部材(酢酸ビニルおよびアクリル酸エステルを含むコポリマーによって表面改質したもの)が配置されている、万年筆形態のペン先を有するノック式の出没式筆記具(パイロットコーポレーション社製、万年筆、FCN−1MR−BM)に装着し、試験用筆記具を得た。この試験用筆記具のペン先を、実施例1〜実施例8および、比較例1〜比較例5のインキ組成物が収容されたガラス製のインキ瓶に浸漬させ、インキ組成物をインキ吸入器内へと吸入させたところ、実施例1〜実施例8、比較例4、5のインキ組成物は、比較例1〜3のインキ組成物に比べて、泡消えが良く、インキ吸入器内をインキ組成物で満たすことが容易であった。
以上より、水と、着色剤と、界面活性剤と、を含んでなるインキ組成物であって、前記インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性が50mm以上であり、かつ、消泡率が50%以上である筆記具用水性インキ組成物は、インキ貯蔵体内のインキ移動性能に優れ、ペン先へ安定してインキが供給され、ペン先からのインキ吐出性に優れ、にじみや裏抜け、かすれなどが少ない良好な筆跡をもたらし、また、急激な圧力変化においてもインキの漏れ出しが見られないなど、良好な耐漏れ出し性能を有することがわかった。
よって、本発明の筆記具用水性インキ組成物は、インキ貯蔵体内のインキ移動性能、耐漏れ出し性能に優れながらも、良好な筆跡を残すことができること、さらに、本発明のインキ組成物を用いた筆記具は、筆記具として優れたものとなることがわかった。
本発明のインキ組成物は、万年筆、ボールペン、筆ペン、カリグラフィー用のペン、マーキングペンなどの各種筆記具用水性インキ組成物として用いることができる。特に、インキ貯蔵体内のインキ移動性能や耐漏れ出し性能の向上が図られていることから、インキ貯蔵体を備え、インキ供給機構にインキ流量調節体を備える筆記具に好適に用いることができる。更には、インキ流量調節体として、くし歯状のインキ保留部材が配置された筆記具、特には万年筆において効果的に用いることができる。





Claims (4)

  1. 水と、着色剤と、界面活性剤と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記インキ組成物の振とう法により測定される泡立ち性が50mm以上であり、かつ、消泡率が50%以上であることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物。
  2. 前記筆記具用インキ組成物の表面張力が30mN/m〜70mN/mである、請求項1に記載のインキ組成物。
  3. 前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1または2に記載のインキ組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のインキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
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