JP4245359B2 - 筆記具用水性インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペン、マーキングペン等の筆記具用に好適な水性インキ組成物に関し、更に詳しくは、長期間にわたり気泡の発生抑制効果を持った筆記具用水性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、水性インキを搭載した記録体、例えば、ボールペンやマーカーなどの筆記具やインキジェットプリンター用カートリッジは、経時的に記録体内で発生した気泡によって、インキ流出量の不安定化や、吐出部からのインキ噴き出し、または、全く逆にインキ吐出不能などの様々な不具合を生じることがある。
【0003】
このインキ中の気泡の除去に関しては、減圧処理など機械的な手法が用いられている場合があるが、完全な除去は困難な場合が多く、たとえ肉眼で観察できるレベルの気泡除去が行われてとしても、インキ中に溶存した空気が、温度変化等によって析出するなど、その効果に関しては未だ完全とは言えないものである。
【0004】
そのため、インキ中で発生する気泡の除去を行うために、インキ中に特定の物質を添加する手法が幾つか提案等されている。例えば、アスコルビン酸とエノール性ケトン基を有した化合物の併用(特許文献1参照)、カテキン類の添加(特許文献2参照)、α−トコフェロールの添加(特許文献3参照)、合成ポリフェノール類等の添加(特許文献4参照)、コウジ酸類などの添加(特許文献5参照)が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2946747号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
特開平10−298483号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】
特開平10−330672号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】
特開2001−81839号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】
特開2002−97399号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、4及び5に記載されるアスコルビン酸や合成ポリフェノール、コウジ酸類等を添加したインキは、その機構は定かではないが、経時的にインキの変色が発生したり、色剤として顔料を使用した場合に顔料の凝集が発生しインキが吐出しなくなるなどといった課題が生じることがある。また、上記特許文献2に記載されるカテキン類は、気泡抑制効果が小さいために多くの添加量が必要となり、その効果の発現期間も短いという課題を有し、更に、上記特許文献3に記載されるα−トコフェロールは、水溶性でないために長期的な安定性に問題が生じるなど、それぞれにおいて未だその効果は不完全であると言わざるを得ないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、長期間にわたって気泡の発生を抑制し、かつ経時安定性に優れた筆記具用水性インキ組成物等を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、特定の官能基を有するアミノ酸類等を所定量含有することにより、筆記具用水性インキ組成物の本来のインキ特性を損なうことなく、上記目的の筆記具用水性インキ組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)に存する。
(1) 少なくとも、着色剤及び水を含有し、かつ、下記A群及びB群から選ばれる少なくとも1種をインキ組成物全量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とする筆記具用水性インキ組成物。
A群:(L−)システイン、N−アセチル−L−システイン、(L−)システイン塩酸塩、(L−)システインエチルエステル塩酸塩、(L−)システインメチルエステル塩酸塩
B群:グルタチオン、酸化型グルタチオン、γ−L−グルタミル−L−システイン
(2) 筆記具用水性インキ組成物のpHが5〜10である上記(1)に記載の筆記具用水性インキ組成物。
(3) 筆記具用水性インキ組成物の25℃条件下における粘度が、EMD型粘度計で測定した場合に1rpmで20mPa・s〜3000mPa・sの範囲である上記(1)又は(2)に記載の筆記具用水性インキ組成物。
(4) 筆記具用水性インキ組成物の25℃条件下における粘度が、EMD型粘度計で測定した場合に100rpmで5mPa・s〜200mPa・sである上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物。
(5) 筆記具用水性インキ組成物の25℃条件下における粘度が、ELD型粘度計で測定した場合に50rpmで1mPa・s〜20mPa・sである上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物。
(6) 筆記具用水性インキ組成物が、ボールペン又はマーキングペンに搭載される上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物。
(7) 上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物が、筆記具に搭載されたことを特徴とする筆記具。
(8) 筆記具がボールペン又はマーキングペンである上記(7)に記載の筆記具。
(9) 上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物がボールペン用インキ収容体に収容されると共に、該インキ収容体内に収容された筆記具用水性インキ組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インキ組成物に対して比重が小さい物質がインキ追従体として収容されていることを特徴とするボールペン。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の水性インキ組成物は、少なくとも、着色剤及び水を含有し、かつ、下記A群及びB群から選ばれる少なくとも1種をインキ組成物全量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とする水性インキ組成物。
A群:システイン及びその誘導体
B群:一つ以上のシステイン残基を含むアミノ酸の重合体
【0010】
本発明に用いる上記A群のシステイン及びその誘導体、B群のアミノ酸の重合体から選ばれる少なくとも1種は、メルカプト基(−SH基)を有するアミノ酸及びその重合体からなるものであり、これらを水性インキ組成物中に含有せしめることにより、水性インキの特性を損なうことなく、経時安定性に優れ、長期間にわたって気泡の発生の抑制を発揮することができるものとなる。
本発明に用いる上記A群のシステイン及びその誘導体としては、例えば、(L−)システイン、N−アセチル−L−システイン、(L−)システイン塩酸塩、(L−)システインエチルエステル塩酸塩、(L−)システインメチルエステル塩酸塩などが挙げられる。
【0011】
また、本発明に用いる上記B群のアミノ酸の重合体としては、一つ以上のシステイン残基〔−NH−CH(CH2SH)−CO−〕を含むアミノ酸の重合体であれば、特に限定されないが、好ましくは、その重合数が2〜10であるものが望ましく、例えば、グルタチオン(グルタミン酸・システイン・グリシンのトリペプチド)、酸化型グルタチオン、γ−L−グルタミル−L−システイン(グルタミン酸・システインのジペプチド)などが挙げられる。なお、重合数が10を越えると、インキ粘度の上昇や、システイン残基同士の分子内共有結合が発生し、気泡抑制効果が低減することとなり、好ましくない。
これらのA群のシステイン及びその誘導体、並びに、B群のアミノ酸の重合体は、夫々単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。
こられの中で特に好ましくは、食品添加物としてその安全性が認められ、入手性、使用性に優れると共に、更にインキ組成中での経時的安定性にも優れる点から、N−アセチル−L−システイン、グルタチオンの使用が望ましい。
【0012】
これらのA群及び/又はB群の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.01〜10重量%とすることが必要であり、好ましくは、0.05〜5重量%、更に好ましくは、0.1〜1重量%とすることが望ましい。
この含有量が、0.01重量%未満では、十分な気泡抑制効果が得られず、逆に10重量%を越えると、インキの安定性が損なわれるため、好ましくない。
【0013】
本発明に用いる着色剤としては、水に溶解もしくは分散する全ての染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を制限なく使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154,ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0014】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの着色剤の含有量は、インキの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、インキ組成物全量に対して、0.1〜40重量%程度とすることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる水は、インキの主溶剤として含有するものであり、例えば、イオン交換水、蒸留水、精製水、純水、海洋深層水などが好ましく用いられる。
これらの水の含有量は、インキ組成物全量に対して、30〜80重量%とすることが好ましい。
この水の含有量が30%未満であると、インキの吐出性が劣る場合があり、筆記流量の低下を招くことがある。一方、80%を越えてより多いと、耐乾燥性の低下や筆記感の低下、インキの経時安定性の低下を招くことがある。
【0016】
本発明の水性インキ組成物では、上記各成分以外に調整剤等として、以下に例示するような任意成分を組み合わせて筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用)インキ、インキジェット印刷用インキなどの水性インキの用途に応じて適宜含有することができる。
顔料の分散樹脂としては、例えば、スチレンマレイン酸のアンモニウム塩、スチレンアクリル酸のアンモニウム塩などの水溶性高分子など;粘度調整剤としては、例えば、アクリル系合成高分子、天然ガム、セルロース、多糖類等;水溶性液体媒体としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物およびトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物およびこれらの混合物など;界面活性剤(潤滑剤)としては、カリ石けん、リシノール酸カリウムなど;防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、サポニン類等;pH調整剤としては水酸化カリウム、リン酸カリウム、トリエタノールアミン等;防腐剤としてはナトリウムオマジン、1,2−ベンゾイソチアゾリン等をそれぞれ必要に応じて使用することができる。
【0017】
本発明の水性インキ組成物がチキソトロピー性インキ(例えば、ゲルインキ水性ボールペン用インキ)の場合は、25℃の条件下においてEMD型粘度計で測定した1rpmの粘度値を、好ましくは、20〜3000mPa・sの範囲、更に好ましくは、50〜2000mPa・sの範囲とすることが望ましい。
この1rpmの粘度値を、20〜3000mPa・sの範囲にすることにより、更に経時的なインキの分離が発生せず、且つ筆記感が更に良好なインキとすることができる。
また、チキソトロピー性インキ(例えば、ゲルインキ水性ボールペン用インキ)の場合、25℃の条件下においてEMD型粘度計で測定した100rpmの粘度値を、好ましくは、5〜200mPa・s、更に好ましくは、10〜150mPa・sの範囲とすることが望ましい。
この100rpmの粘度値を、5〜200mPa・sの範囲にすることにより、筆記時におけるインキ粘度が適正な範囲となり、更に良好な筆記性を実現することができる。
【0018】
更に、本発明の水性インキ組成物がニュートニアン性インキ(例えば、低粘度水性ボールペン用インキ)の場合は、25℃の条件下においてELD型粘度計で測定した50rpmの粘度値を、好ましくは、1〜20mPa・s、更に、好ましくは、2〜10mPa・sの範囲とすることが望ましい。
この50rpmの粘度値を、1〜20mPa・sの範囲にすることにより、更に安定な筆記性を示すボールペン用インキを実現することができる。
なお、上記各粘度範囲において、EMD型粘度計で測定した1rpm、100rpmの粘度範囲と、ELD型粘度計で測定した50rpmの粘度範囲とを規定したのは、各々のインキ粘度特性を示すために、適切な測定領域となるためである。
【0019】
本発明の水性インキ組成物の製造方法は、他の水性インキ組成物の製造方法と比べて特に変わるところはなく製造することができる。
すなわち、本発明の水性インキ組成物は、上述した各成分をミキサー等によって混合攪拌することによって、各種用途の水性インキ組成物、例えば、チキソトロピー性インキ(例えば、ゲルインキ水性ボールペン用インキ)、ニュートニアン性インキ(例えば、低粘度水性ボールペン用インキ)、インキジェットプリンター用インキなどを製造することができる。
また、本発明の水性インキ組成物のpHは、使用性、安全性、インキ自身の安定性、インキ収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5〜10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6〜9.5とすることが望ましい。
【0020】
本発明の水性インキ組成物は、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスクチップなどのペン先部を備えたボールペン、マーキングペンや、インキジェットプリンタ用カートリッジに搭載される。
本発明におけるボールペンとしては、上記構成の水性インキ組成物をボールペン用インキ収容体(リフィール)に収容すると共に、該インキ収容体内に収容された水性インキ組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インキ組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインキ追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペン、マーキングペンや、インキジェットプリンターの構造は、特に限定されず、例えば、筆記具用にあっては、軸筒自体をインキ収容体として該軸筒内に上記構成の水性インキ組成物を充填したコレクター構造(インキ保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
【0021】
このように構成される本発明の水性インキ組成物が、何故長期間にわたって気泡の発生を抑制する機能を発現するかは以下のように推察される。
すなわち、上記A群のシステイン及びその誘導体、並びに、上記B群の一つ以上のシステイン残基を含むアミノ酸の重合体は、他のアミノ酸、または、他のアミノ酸の重合体に上記気泡発生抑制の作用効果が見られないことから、システイン中、または、システイン残基中に含まれる−SH基(メルカプト基)がインキ中の酸素と反応して気泡発生抑制効果を発現しているものと推察される。
また、本発明で用いる上記気泡発生抑制効果を発現する上記A群のシステイン及びその誘導体、並びに、上記B群の一つ以上のシステイン残基を含むアミノ酸の重合体は、経時的にインキの変色を生じせしめたりすることもなく、また、色剤として顔料を使用した場合にも顔料の凝集を発生させることもなく、かつ、気泡抑制効果が極めて優れているために多くの含有量が必要でなく、しかも、その効果の発現期間も長く、更に水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
【0022】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0023】
〔実施例1〜15及び比較例1〜14〕
下記表1及び表2に示す配合組成で、常法により本発明範囲となる水性インキ組成物(実施例1〜15)及び本発明の範囲外となる比較インキ(比較例1〜14)を調製した。
得られた各水性インキ組成物の各粘度、pHを下記各方法により測定した。これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0024】
また、得られた各水性インキ組成物において、実施例1〜4,8〜11及び比較例1〜4,8〜11(以上、ゲルインキ水性ボールペン用インキ)に関しては、下記構成の水性ボールペン体(三菱鉛筆社製、uni−ball Signo、ボール径φ0.7mm)のポリプロピレン製のインキ収容管(内径:4mm、長さ:110mmのリフィール)に1g充填し、水性ボールペンを作製した。なお、インキ追従体として、各水性インキに対して比重の軽いポリブテンを0.15g用いて、フィール内に充填した水性インキの後端部に接触状態で充填した。実施例5,6,12,13,14及び比較例5,6,12,13(以上、低粘度水性ボールペン用インキ)に関しては、下記構成の直液式の水性ボールペン体(三菱鉛筆社製、uni−ball UB−eye、ボール径φ0.7mm)のポリプロピレン製のインキ収容管に2g充填して直液式のインキ保持機構(コレクター構造)を有する水性ボールペンを作製した。
実施例7,15及び比較例7,14の配合組成によって得られた各インキに関しては、インキジェットプリンター用インキカートリッジに充填した。
【0025】
上記で得られた各水性ボールペンについて、下記各評価方法により、気泡による筆記描線への影響と目視による気泡の発生有無等を評価した。
また、インキジェットプリンター用インキでは、下記評価方法により、吐出の安定性の評価を行った。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0026】
(粘度の測定方法)
EMD型粘度計での測定:
VISCOMETER RE110R(東機産業社製)により、上記25℃、1rpm及び100rpmでの条件下において測定した。
ELD型粘度計での測定:
VISCOMETER TVE−20L(TOKIMEC社製)により、上記25℃、50rpmでの条件下において測定した。
【0027】
(pHの測定方法)
HORIBA pH/ION METER F−23(HORIBA社製)により、25℃条件下において測定した。
【0028】
(1) ペン先上向き保存ペン体の評価方法
実施例1〜6、8〜14及び比較例1〜6、8〜13の各配合組成によって得られた水性インキ組成物をそれぞれ上記の各ボールペン体に充填し、ペン先を上向きにして、40℃、55%RHの雰囲気下で3ヶ月保管し、左記の期間が経過した後に、ペン先を上向きのまま室温で6時間放置し、直径約2cmの円を連続して30ヶ筆記して、そのインキ流出性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:描線が良好に筆記できる。
△:長さ1cm未満の描線途切れが発生する。
×:長さ1cm以上の描線途切れが生じる。
【0029】
(2) ペン先下向き保存ペン体の評価方法
実施例1〜4、8〜11及び比較例1〜4、8〜11の各配合組成によって得られたインキをそれぞれ上記のボールペン体に充填し、ペン先を下向きにして、40℃、55%RHの雰囲気下で3ヶ月保管し、左記の期間が経過した後に、ペン先を下向きのまま室温で6時間放置し、インキとインキ追従体界面に出現する気泡を目視にて確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:インキとインキ追従体界面に気泡が全く存在しない。
△:インキとインキ追従体界面に直径1mm未満の気泡が1個以下存在する。
×:インキとインキ追従体界面に直径1mm以上の気泡が1個以上、若しくは直径1mm未満の気泡が2個以上存在する。
【0030】
(3) インキ噴き出しの評価方法
実施例5,6,12,13,14及び比較例5,6,12,13の各配合組成によって得られたインキをそれぞれ上記のボールペン体に充填し、ペン先を下向きにして、40℃、55%RHの雰囲気下で3ヶ月保管し、左記の期間が経過した後に、インキの噴き出しとペン体内のインキ保持機構(コレクター)内に浸出したインキ量を目視にて確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:インキ保持機構(コレクター)へのインキ浸出量が保持機構全長の1/3未満。
△:インキ保持機構(コレクター)へのインキ浸出量が保持機構全長の1/3以上1/2未満。
△△:インキ保持機構(コレクター)へのインキ浸出量が保持機構全長の1/2以上だが、ペン先からのインキ噴き出しは、観察されない。
×:インキ保持機構の能力を超えて、ペン先からインキが吹き出している。
【0031】
(4) インキジェットプリンター用インキとしての安定性評価方法
実施例7,15及び比較例7,14の配合組成によって得られたインキをインキカートリッジに充填し、インキジェットプリンター(商品名「MJ−930C」、セイコーエプソン社製)を用いて、10分間噴射印刷後、常温状態で1ヶ月放置した後に再噴射を行い、その吐出安定性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:最後まで安定した印刷ができる。
△:印刷初期及び途中で、短いインキ途切れがある。
△△:印刷初期及び途中で、断続的なインキ途切れがある。
×:印刷不能
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
上記表1及び表2中の*1〜*9は、下記のとおりである。
*1:プリンテックス25(黒色顔料、テグサ社製)
*2:Chromofine Blue 4965(青色顔料、大日精化工業(株)製)
*3:WATER BLACK R455(黒色染料、オリエント化学工業(株)製)
*4:WATER RED 1(赤色染料、オリエント化学工業(株)製)
*5:WATER GREEN 8(緑色染料、オリエント化学工業(株)製)
*6:ジョンクリルJ62(ジョンソンポリマー(株)製)
*7:ジョンクリル7001(ジョンソンポリマー(株)製)
*8:ケルザンRD(三晶社製)
*9:ハイビスワコー#105(和光純薬工業社製)
【0035】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜15の各水性インキ組成物(ゲルインキ水性ボールペン用インキ、低粘度水性ボールペン用インキ、インキジェットプリンター用インキ)は、本発明の範囲外となる比較例1〜14に較べて、経時的な気泡の抑制に優れていることが判明した。
これに対して、比較例1〜14は、実施例1〜15に対してシステイン誘導体を含有しないインキの配合組成、並びに、システイン残基を有するアミノ酸の重合体を含有しないインキの配合組成であり、これらの場合は経時的な気泡の発生が抑制できないことが判った。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、長期的に気泡の発生を抑制することができると共に経時的にも安定性に優れた筆記具用水性インキ組成物、並びに、この筆記具用水性インキ組成物が搭載されたボールペン、マーキングペンなどの筆記具が提供される。
Claims (9)
- 少なくとも、着色剤及び水を含有し、かつ、下記A群及びB群から選ばれる少なくとも1種をインキ組成物全量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とする筆記具用水性インキ組成物。
A群:(L−)システイン、N−アセチル−L−システイン、(L−)システイン塩酸塩、(L−)システインエチルエステル塩酸塩、(L−)システインメチルエステル塩酸塩
B群:グルタチオン、酸化型グルタチオン、γ−L−グルタミル−L−システイン - 筆記具用水性インキ組成物のpHが5〜10である請求項1に記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 筆記具用水性インキ組成物の25℃条件下における粘度が、EMD型粘度計で測定した場合に1rpmで20mPa・s〜3000mPa・sの範囲である請求項1又は2に記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 筆記具用水性インキ組成物の25℃条件下における粘度が、EMD型粘度計で測定した場合に100rpmで5mPa・s〜200mPa・sである請求項1〜3の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 筆記具用水性インキ組成物の25℃条件下における粘度が、ELD型粘度計で測定した場合に50rpmで1mPa・s〜20mPa・sである請求項1〜4の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 筆記具用水性インキ組成物が、ボールペン又はマーキングペンに搭載される請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物が、筆記具に搭載されたことを特徴とする筆記具。
- 筆記具がボールペン又はマーキングペンである請求項7に記載の筆記具。
- 請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具用水性インキ組成物がボールペン用インキ収容体に収容されると共に、該インキ収容体内に収容された筆記具用水性インキ組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インキ組成物に対して比重が小さい物質がインキ追従体として収容されていることを特徴とするボールペン。
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