JP2018172479A - 筆記具用インキ組成物、およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

筆記具用インキ組成物、およびそれを用いた筆記具 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、筆記性良好で、耐ドライアップ性能に優れ、良好な筆跡が得られる筆記具用インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供すること。
【解決手段】式(1)で示される化合物と、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用インキ組成物および、それを用いた筆記具。
【化1】
Figure 2018172479

(式(1)中のAは3〜6個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基を表し、nは3〜6である。xはエチレンオキシド平均付加モル数、yはプロピレンオキシド平均付加モル数、zはブチレンオキシド平均付加モル数を表し、x+y=1〜30、z=1〜5、x:y=1:4〜7:1である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用インキ組成物、およびそれを用いた筆記具に関するものである。
筆記具は、暫くペン先が大気中に晒された状態にあると、充填されているインキ中の溶媒などがペン先より蒸発し、インキが乾燥固化して、筆跡がかすれたり、筆記ができなくなったりするなど、筆記具として満足に利用できなくなることがあった。このため、筆記具用インキ組成物およびそれを用いた筆記具において、インキの乾燥を防ぎ、良好な耐ドライアップ性能を得ることは課題である。そこで上記課題を解決するため、インキ中に保湿剤として、エチレングリコール、プロピレングリコールやグリセリンなどの多価アルコール溶剤や、尿素または尿素誘導体を添加し、耐ドライアップ性能を向上させたインキ組成物が提案されている。(特許文献1など)
しかしながら、前記多価アルコール溶剤や、尿素または尿素誘導体は、耐ドライアップ性能の向上に効果はあるものの、良好な耐ドライアップ性能が得られる程度にインキ組成物中に添加すると、インキ粘度は上昇し、ボテや線割れ、トギレやカスレが発生したり、インキの追従性が悪化して書き味が悪くなったり、さらには、筆跡が長時間乾かず、筆跡がこすれて汚れてしまうなどの問題を抱えている。
そこで、更なる耐ドライアップ性能の向上を図るため、特許文献2では、HC=CH−O−CO−NH−(CH)n−CHの一般式で表される化合物を含んでなるインキ組成物が開示されている。
しかしながら、耐ドライアップ性能の向上は見られるものの、前記インキ組成物を、マーキングペンや万年筆などに用いた場合には、インキの追従性が劣り、良好な筆跡を得ることは困難であった。
特開平8−127746号公報 特開2011−178973号公報
本発明は、筆記性良好で、耐ドライアップ性能に優れ、良好な筆跡を得ることができる筆記具用インキ組成物を提供するものであり、さらに、それを用いた筆記具を提供するものである。
本発明の筆記具用インキ組成物は、着色剤と、溶媒と、式(1)で示される化合物と、を含んでなることを特徴とするものである。
Figure 2018172479
(式(1)中のAは3〜6個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基を表し、nは3〜6である。xはエチレンオキシド平均付加モル数、yはプロピレンオキシド平均付加モル数、zはブチレンオキシド平均付加モル数を表し、x+y=1〜30、z=1〜5、x:y=1:4〜7:1である。)
また、本発明の筆記具は、前記筆記具用インキ組成物を収容してなることを特徴とするものである。
本発明によれば、筆記性良好で、耐ドライアップ性能に優れ、良好な筆跡が得られる筆記具用インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供することができる。
<筆記具用インキ組成物>
本発明による筆記具用インキ組成物(以下、場合により、インキ組成物と表す。)は、式(1)で示される化合物と、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを第一の特徴とする。以下、本発明によるインキ組成物を構成する各成分について説明する。
<式(1)で示される化合物>
本発明のインキ組成物は、式(1)で示される化合物を含んでなる。前記式(1)で示される化合物は、3〜6個のヒドロキシル基を有する化合物にアルキレンオキシド基が付加された構造を有する化合物である。
Figure 2018172479
前記式(1)中のAは、3〜6個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基を表し、nは3〜6である。
例えば、前記式(1)中のAが、3個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基を表す場合、nは3である。
3個のヒドロキシル基を有する化合物としては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられ、4個のヒドロキシル基を有する化合物としては、メチルグルコシド、エチルグルコシド、ブチルグルコシド、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン等が挙げられる。また、5個のヒドロキシル基を有する化合物としては、キシリトール、6個のヒドロキシル基を有する化合物としては、ソルビトール、イノシトールが挙げられる。
また、前記式(1)中のCOはエチレンオキシド基を示し、COはプロピレンオキシド基を示し、COはブチレンオキシド基を示す。
尚、プロピレンオキシド基は、イソプロピレンオキシド基も示し、ブチレンオキシド基は、イソブチレンオキシド基、テトラメチレンオキシド基なども示す。
また、前記式(1)中のx、y、zは、それぞれエチレンオキシド平均付加モル数、プロピレンオキシド平均付加モル数、ブチレンオキシド平均付加モル数を表し、x+y=1〜30であり、z=1〜5であり、x:y=1:4〜7:1である。尚、xにnを乗じたnxはエチレンオキシド付加モル数、yにnを乗じたnyはプロピレンオキシド付加モル数、zにnを乗じたnzはブチレンオキシド付加モル数を表す。
また、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基が結合する順番は任意であり、ランダム状でもブロック状に結合して付加されても構わない。
ブチレンオキシド基においては、末端にブロック状に付加されている。
尚、前述の通り、式(1)で示される化合物は3〜6個のヒドロキシル基を有する化合物にアルキレンオキシド基が付加された構造を有する化合物であるが、同一のアルキレンオキシド基が付加されたものであっても良く、異なるアルキレンオキシド基が付加されたものであっても良い。
例えば、前記式(1)中のAが、3個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基を表す場合、式(1)中において、{O-[(CO)X/(CO)]-(CO)H}は、{O-[(CO)(CO)]-(CO) 1H}と、{O-[(CO)/(CO)]-(CO)H}と、{O-[(CO)/(CO)]-(CO)H}の3つの同一のアルキレンオキシド基を表すものでも良く、{O-[(CO)/(CO)]-(CO)H}と、{O-[(CO)/(CO)]-(CO)H}と、{O-[(CO)/(CO)]-(CO)H}の3つの異なるアルキレンオキシド基を表すものでも良い。
前記式(1)で示される化合物は、吸湿性能を備えることから、保湿剤として働き、インキ中の溶媒の蒸発を抑制することができる。
よって、前記式(1)で示される化合物をインキ組成物に添加すると、その高い保湿効果により、ペン先からのインキ中の溶媒の蒸発を防ぐことができる。このため、ペン先が大気に暫く晒された状態においても、良好な筆跡を得ることが可能となり、優れた耐ドライアップ性能が得られる。
また、前記式(1)で示される化合物を、筆記具用インキ組成物として必要な保湿効果を得るために十分な量を添加しても、該インキ組成物のインキ粘度は上昇しにくい。このため、優れた耐ドライアップ性能を得ながらも、良好なインキ追従性を維持することができ、線割れやトギレやカスレが改善され、また、チップ先端の余剰インキを抑えることができ、ボテが改善され、良好な筆跡をもたらし、優れた筆記性能を得ることができる。
さらに、前記式(1)で示される化合物は、前述の通り、必要な保湿効果を得るために十分な量を添加してもインキ粘度は上昇しにくく、また、後で述べるように剪断減粘性付与剤を用いた場合には、経時的なインキ粘度の上昇をも抑えることも可能であることから、インキ組成物の紙面に対する浸透性の低下を防ぐことができ、さらにインキ組成物の表面張力をも調整しやすいため、優れた耐ドライアップ性能を維持しながらも、筆跡乾燥性を向上させる効果も併せもつ。
これは、理由は定かではないが、式(1)で示される化合物は、エチレンオキシド基および/またはプロピレンオキシド基が付加され、さらに末端にブチレンオキシド基およびヒドロキシル基が付加されていることから、分子内には親水性基と疎水性基を有するため、該化合物は、いわゆる界面活性剤と類似した界面への配向性を有するものと推定される。このため、該化合物分子は、単に溶解状態で安定しているよりも、気液界面付近に適切に配列されやすいものであり、インキ表面に分子膜を形成するような状態となって、インキ中の溶媒の蒸発を抑制することができる。更に、式(1)で示される化合物は、疎水性を示すブチレンオキシド基が末端に付加されていることから、インキ表面に形成された分子膜の表面にヒドロキシル基が存在することとなり、外気の水分をインキ中に適切に取り込みやすい状態をもたらす。以上より、前記式(1)で示される化合物を含んでなる本発明のインキ組成物は、インキの気液界面に形成される分子膜により、溶媒の蒸発が抑制され、さらに形成された分子膜により、外気の水分を吸湿してインキ中に適度に取り込むことが可能となることから、優れた耐ドライアップ性を得ることができると考える。
また、前述の通り、式(1)で示される化合物は、界面活性剤と類似した界面への配向性を有するものと推定されることから、表面張力を調整する効果も併せもつと考えられ、前記式(1)で示される化合物を含んでなる本発明のインキ組成物は、筆跡乾燥性をも向上させる傾向にあると考える。
本発明において、インキ組成物の耐ドライアップ性能の更なる向上を考慮すると、前記式(1)中のAは3〜4個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基であることが好ましく、n=3〜4であることが好ましい。
より好ましくは、前記式(1)中のAは、グリセリンのヒドロキシル基を除いた残基であること、もしくは、メチルグリコシドのヒドロキシル基を除いた残基であることが好ましい。
また、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基は、ランダム状に付加されていることが好ましく、ブチレンオキシド基は、イソブチレンオキシド基であることが好ましい。
さらには、エチレンオキシド平均付加モル数を示すxと、プロピレンオキシド平均付加モルを示すyについては、x≧1かつy≧1であることが好ましい。
これは、xおよびyが上記数値範囲であると、式(1)で示される化合物は、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とブチレンオキシド基の3種のアルキレンオキシド基が付加されているものとなる。このため、疎水性と親水性のバランスが好適に保たれ、該化合物分子はインキの気液界面に安定的に配列されて、インキ表面に安定な分子膜を形成しやすくなるため、さらにインキ中の溶媒の蒸発を抑制しながらも、外気の水分を吸湿してインキ中に適切に取り込みやすい状態となって、高い保湿効果を与えることができると考える。
さらに、本発明においては、x+y=3〜12であることが好ましく、x:y=1:1〜5:1であることがより好ましく、x:y=3:2〜4:1であることがさらに好ましい。
また、z=1〜3であることが好ましく、z=1であることがより好ましい。
これは、x、y、zが、上記数値範囲であれば、前記式(1)で示される化合物の溶媒に対する溶解安定性を保持しながらも、疎水性と親水性のバランスがさらに好適に保たれ、耐ドライアップ性能をより向上させることができる。
特に、本発明において、前記式(1)中のAが、グリセリンのヒドロキシル基を除いた残基であり、n×(x+y)=13、z=1であり、x:y=8:5である化合物である下記式(2)で示される化合物、もしくは、Aがメチルグリコシドのヒドロキシル基を除いた残基であり、n×(x+y)=38、z=1であり、x:y=145:44である化合物である下記式(3)で示される化合物を用いることが好ましい。中でも、線割れやボテ、トギレやカスレが改善された良好な筆跡が得られると同時に、耐ドライアップ性能の向上を考慮すると、前記式(2)で示される化合物を選択して用いることが好ましい。
Figure 2018172479
(式(2)中のa、b、c、h、i、j 、p、q、rにおいて、a+b+cはエチレンオキシド付加モル数を示し、a+b+c=8であり、h+i+jはプロピレンオキシド付加モル数を示し、h+i+j=5であり、p+q+rはブチレンオキシド付加モル数を示し、p+q+r=3である。[ ]内はランダム付加を表す。)
Figure 2018172479
(式(3)中の(AO)ahは[(CO)(CO))]を表し、(AO)biは、[(CO)(CO))]を表し、(AO)cjは、[(CO)(CO)]を表し、(AO)dkは、[(CO)(CO))]を表す。a+b+c+dはエチレンオキシド付加モル数を示し、a+b+c+d=145であり、h+i+j+kはプロピレンオキシド付加モル数を示し、h+i+j+k=44であり、p+q+r+sはブチレンオキシド付加モル数を示し、p+q+r+s=4である。[ ]内はランダム付加を表す。)
尚、前記式(1)で示される化合物の市販品の一例としては、WILBRIDEシリーズ(日油(株)製)等が挙げられ、具体的には、WILBRIDE S-753やWILBRIDE MG-2070等が挙げられる。
本発明のインキ組成物における、前記式(1)で示される化合物の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜30質量%であることが好ましい。
前記式(1)で示される化合物の含有量が上記数値範囲内であれば、前記式(1)で示される化合物の保湿剤としての効果を十分に得ることができ、耐ドライアップ性能を十分に向上させることができる。さらに、インキ追従性、筆跡乾燥性の向上をも考慮すると、0.1〜20質量%であることがより好ましい。尚、前記式(1)で示される化合物は、1種類又は、2種類以上の混合物として使用することが可能である。
<着色剤>
本発明で用いる着色剤は、特に限定されないが、筆記具用インキ組成物に用いられる顔料、染料などを使用することができる。
顔料としては、溶媒に分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。その他、染料などで樹脂粒子を着色したような着色樹脂粒子や、色材を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。
尚、顔料は、予め顔料分散剤を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等を用いてもよい。該顔料分散剤としては、水溶性樹脂、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが挙げられる。
染料としては、溶媒に溶解可能であれば特に制限されるものではない。例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。
これらの顔料および染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
前記着色剤の中でも、耐水性、耐候性に優れ、良好な発色を得ることを考慮すると、顔料を用いることが好ましい。
また、顔料は染料とは異なり、インキ中で不溶状態で分散していることから、着色剤に顔料を用いた場合、一度、インキが乾燥固化して、インキ流路などが詰まってしまうと、後から追従されるインキにより、この詰まりを解消することは難しく、インキの残量はあるものの、再び筆記することができなくなる可能性が高い。よって、耐ドライアップ性の向上は、顔料を用いたインキにおいてはより大きな課題である。本発明に用いられる前記式(1)で示される化合物は、前述の通り、高い保湿効果をもつことから、顔料を用いた場合にも、優れた耐ドライアップ性能をもたらすことが可能であり、顔料と式(1)で示される化合物と併用することは、効果的である。
本発明のインキ組成物における着色剤の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜30質量%であることが好ましい。
<溶媒>
本発明に用いる溶媒は、従来の筆記具用水性インキ組成物や筆記具用油性インキ組成物に用いられる溶媒を使用することができる。
具体的には水が挙げられ、水としては特に制限なく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水または蒸溜水などが挙げられる。
また、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール溶剤や、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル溶剤、さらには、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール溶剤なども挙げられる。
これらを1種または2種以上を用いることが可能である。
中でも、本発明においては、水または、水と水に溶解可能な有機溶剤(水溶性有機溶剤)からなる混合溶媒を用いることが好ましく、前記式(1)で示される化合物の溶解安定性を考慮すると、本発明のインキ組成物は、筆記具用水性インキ組成物として調整することが好ましい。
さらに、耐ドライアップ性能の向上を考慮すると、前記水溶性有機溶剤の中でも、多価アルコール溶剤(前記式(1)で示される化合物を除く)を選択して用いることが好ましい。これは、前記式(1)で示される化合物と、前記多価アルコール溶剤とを併用することで、相乗的に保湿効果が向上することができることから、優れた耐ドライアップ性能が得られ、長期間、または乾燥状態が強い環境においてペン先が大気に晒された状態にあっても、良好な筆跡を得ることができるためである。
特に本発明においては、前記多価アルコール溶剤の中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンの中から1種以上を選択して用いることが好ましい。
エチレングリコールやジエチレングリコールを用いた場合には、インキ粘度の上昇をさらに抑えながら、優れた耐ドライアップ性能を得ることができることから、マーキングペンや万年筆などのようなインキ粘度の上昇抑制を特段に考慮する必要がある筆記具に好適に用いることができる。また、グリセリンを用いた場合には、グリセリンの高い吸湿性により、さらに優れた耐ドライアップ性を得ることができることから、着色剤に顔料を用いた場合や、出没式筆記具のような特段に耐ドライアップ性能を考慮する必要がある筆記具に充填して用いる場合に、好適に用いることができる。
インキ組成物における溶媒の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、10〜98質量%であることが好ましい。
尚、前記多価アルコール溶剤を用いる場合、前記式(1)で示される化合物と、前記多価アルコール溶剤の総含有量は、線割れやボテ、トギレやカスレが改善された良好な筆跡が得られることや、耐ドライアップ性能の向上および、筆跡乾燥性の向上を考慮すると、0.1〜30質量%であることが好ましい。
また、本発明のインキ組成物はデキストリンを含んでなることが好ましい。
デキストリンを用いることにより、更に耐ドライアップ性能を向上することができる。これは、デキストリンが、ペン先に被膜を形成し、その被膜により、インキ中の溶媒の蒸発を防ぐことができるためである。
尚、デキストリンは、数個のα -グルコースが、グリコシド結合によって重合した物質の総称で、食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解などにより得られる。
前記デキストリンの重量平均分子量については、5000〜120000であることが好ましい。120000以上であると、ペン先に形成される被膜が硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がカスレやすくなる傾向があり、一方、5000未満だとデキストリンの吸湿性が高くなりやすく、ペン先に生ずる被膜が柔らかくなりやすく、ペン先で安定して維持しにくく、インキ中の溶媒の蒸発が抑制しにくい傾向にあるためである。さらに、重量平均分子量が20000より小さいと、被膜は薄くなりやすい傾向にあるため、重量平均分子量が、20000〜100000であることが最も好ましい。
本発明において、前記式(1)で示される化合物と、デキストリンを併用することは、耐ドライアップ性能をさらに向上させることができるため、好ましい。
これは、前記式(1)で示される化合物が形成する分子膜と、デキストリンが形成する物理的な被膜の二つにより、インキ中の溶媒の蒸発を抑制する効果を特段に高められるためと考える。
デキストリンの含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜5質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、耐ドライアップ性能の向上効果が十分得られない傾向にあり、5質量%を越えると、インキ中で溶解しづらい傾向があるためである。よりインキ中の溶解安定性を考慮すれば、0.1〜3質量%が好ましく、より耐ドライアップ性能の向上を考慮すれば、1〜3質量%が、最も好ましい。
更に、本発明においては、必要に応じて剪断減粘性付与剤を添加し、インキに適当な粘性を与えて実用に供することができる。用いられる剪断減粘性付与剤は従来公知のものから適宜選択することができ、その具体例としては、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型アクリル酸、ポリビニルアセトアミド、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、会合性ウレタンエマルジョン等が挙げられ、単独或いは混合して用いられる。
本発明において、剪断減粘性付与剤と、式(1)で示される化合物を併用することは、式(1)で示される化合物が、剪断減粘性付与剤の膨潤状態を適正に調整し、経時的にインキ粘度が上昇することを抑え、インキ追従性の低下を防ぎ、筆記性能の向上やインキの経時安定性能を向上させることができるため、効果的である。
また、本発明のインキ組成物は、インキ物性や機能を向上させる目的で、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられ、インキ組成物の経時安定性を考慮すれば、塩基性有機化合物を用いることが好ましく、より考慮すれば、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。これらのpH調整剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわない。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩などが挙げられる。
保湿剤としては、前記式(1)で示される化合物や前記多価アルコール溶剤の他に、尿素、またはソルビット、N,N,N−トリアルキルアミノ酸などがあげられる。特に、本発明においては、N,N,N−トリアルキルアミノ酸を更に含んでなることが好ましい。N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、高い吸湿性能を備えるため、本発明に用いられる式(1)で示される化合物と併用することで、さらに高い保湿効果が得られ、耐ドライアップ性能を向上させることができる。また、優れた耐ドライアップ性能を維持しながら、後述するような低粘度インキ組成物として調整しやすく、さらに筆跡乾燥性をも向上しやすいため、本発明において、N,N,N−トリアルキルアミノ酸を更に含んでなることは、効果的である。
前記N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、下記式(4)で表せるものである。
Figure 2018172479
R1〜R3としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を広く用いることができる。すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が例示される。なおR1〜R3は同一であっても異なっていてもよい。
具体的には、n=1のトリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、n=2のトリメチル−β−アラニン、n=3のトリメチル−γ−アミノ酪酸等が挙げられる。
耐ドライアップ性能の向上やインキ組成物の保存安定性の向上などを考慮すると、トリメチルグリシンを選択して用いることが好ましい。
さらに、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂など含むエマルジョンを添加することができる。
さらには、各種界面活性剤を含んでも良い。ノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
中でも、筆跡乾燥性の向上を考慮すると、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。
また、その中でも、エチレンオキシド基および/またはプロピレンオキシド基が付加されたアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を選択して用いることは、さらに筆跡乾燥性を向上させることができるため、好ましい。
また、本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤を用いることが好ましい。
潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗抑制し、書き味を向上するようなものであり、本発明においては、リン酸エステル系界面活性剤や脂肪酸を用いることが好ましい。
中でも、本発明においては、リン酸基を有するリン酸エステル系界面活性剤を用いることがより好ましい。これは、リン酸基は金属に吸着しやすい性質にあることから、潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味を向上させやすいためである。
前記リン酸エステル系界面活性剤の種類としては、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系等が挙げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいことから、フェニル骨格を有さないリン酸エステル系界面活性剤を用いることが、好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
本発明において、式(1)で示される化合物と、前記リン酸エステル系界面活性剤とを併用することは、耐ドライアップ性と、筆記性と、潤滑性を向上させることができるため、良好な書き味と、さらに良好な筆跡を得ることができるため、より効果的である。
特に、式(1)で示される化合物においてy≧1であるようなプロピレンオキシド基が付加された化合物は、潤滑油として働き、潤滑性を向上させる傾向にある。よって、本発明において、式(1)で示される化合物においてy≧1であるような化合物と、前記リン酸エステル系界面活性剤と併用することは、さらに効果的である。
前記リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株))の中から、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A215C、同A219B、同A208N等が挙げられる。
また、前記脂肪酸の具体例としては、OSソープ、NSソープ、FR−14、FR−25(花王(株))等が挙げられる。
これらのリン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
<筆記具>
本発明の筆記具用インキ組成物を充填する筆記具自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用のものが適用でき、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップまたはボールペンチップなどをペン先としたマーキングペンやボールペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの各種筆記具に用いることができる。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具としては、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできる、インキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。また、前記インキ収容体またはインキ吸蔵体が、筆記具本体に着脱自在に交換可能な構造をもつインキカートリッジ式筆記具であってもよい。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具は、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内にペン先を収容可能な出没式筆記具が挙げられる。
前記式(1)で示される化合物を含んでなる本発明のインキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れることから、常にペン先が大気に晒されているような状況となるペン先を収容可能な出没式筆記具に、好適に用いることができる。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具の供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(機構1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構2)くし溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、および(機構4)インキ流量調節部材なしに直接、インキ組成物をペン先に供給する機構などを挙げることができる。
前記式(1)で示される化合物を含んでなる本発明のインキ組成物は、優れた耐ドライアップ性能を維持しながら、インキ粘度を、剪断速度380sec−1において50mPa・s以下であるような低粘度インキ組成物に調整することが可能なため、供給機構の特性から、インキ粘度が前記範囲内であるインキ組成物を主に充填して用いるような前記(機構1)、(機構2)、(機構3)の供給機構を備える筆記具に好適に用いることができる。また、本発明のインキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れながらも、経時的なインキ粘度の上昇を抑えることができるため、剪断減粘性付与剤を含んでなる場合、前記(機構4)の供給機構を備える筆記具にも、好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
下記の配合組成および方法により筆記具用インキ組成物を得た。
・式(1)で示される化合物 10.0質量%
(式(2)で示される化合物、式(1)中のAがグリセリンのヒドロキシル基を除いた残基、n×(x+y)=13、z=1、x:y=8:5)
・着色剤 35.0質量%
(着色樹脂粒子、固形分50%)
・剪断減粘度付与剤 0.3質量%
(サクシノグリカン)
・潤滑剤 1.0質量%
(リン酸エステル系界面活性剤(直鎖アルコール系))
・pH調整剤 2.0質量%
(トリエタノールアミン)
・キレート剤 0.5質量%
(エチレンジアミン四酢酸)
・防錆剤 0.5質量%
(ベンゾトリアゾール)
・水 残部
式(1)で示される化合物、着色剤、潤滑剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、水をマグネットホットスターラーで加温撹拌などして、ベースインキを作製した。
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合撹拌した後、濾紙を用いて濾過を行い、実施例1の筆記具用インキ組成物を得た。
<実施例2〜実施例14>
実施例2〜実施例14は、インキ組成物に含まれる成分の種類や配合量を表1、表2において表される組成に変更した以外は、実施例1と同じ方法で筆記具用インキ組成物を得た。
<比較例1〜比較例4>
比較例1〜比較例4は、インキ組成物に含まれる成分の種類や配合量を表3において表される組成に変更した以外は、実施例1と同じ方法で筆記具用インキ組成物を得た。
<試験用筆記具(ボールペン)の作製>
実施例1〜実施例14及び、比較例1〜比較例4の筆記具用インキ組成物を、インキ収容体の先端にボール(ボール径:0.7mm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):1nm)を回転自在に抱持したボールペンチップをチップホルダーに介して具備したインキ収容体内(ポリプロピレン製)に充填したレフィル(1.0g)を(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G−2)に装着し、ボールペンを得た。
得られたボールペンを試験用筆記具(ボールペン)とし、以下の試験および評価を行った。試験用筆記具(ボールペン)のボールペンチップのボールの縦軸方向への移動量(クリアランス)30μmである。
尚、耐ドライアップ性能試験、筆記性能試験は、試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用いた。
<耐ドライアップ性能試験>
試験用筆記具(ボールペン)のペン先を大気に晒した状態で、50℃、全乾の条件下で1日放置した後、試験用紙に「永」という文字(文字の大きさは、縦横約8mm)を連続筆記し、筆跡が認識できる程度に復帰したまでの文字数を数え、下記評価基準に従って、評価した。得られた評価結果を表1、表2にまとめた。
◎◎:初めからカスレなく、良好な筆跡が得られた。
◎:初め僅かにカスレがあるが、1文字以内に復帰した。
○:復帰までの文字数が、2〜3文字で復帰した。
×:復帰までの文字数が、4〜5文字で復帰した。
××:復帰せず、筆跡が得られなかった。
<筆記性能試験>
耐ドライアップ性能試験で使用した試験用筆記具(ボールペン)を用いて、試験用紙に手書きで螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡のボテと線割れの状態を目視により観察し、下記基準に従って、評価した。得られた評価結果を表1、表2にまとめた。
(ボテ)
◎ボテのない良好な筆跡が得られた。
○僅かにボテが確認されたが、実用上問題がないレベルであった。
△ボテが確認され、実用上懸念があるレベルであった。
×ボテが多数確認され、良好な筆跡が得られなかった。
(線割れ)
◎線割れのない均一な良好な筆跡が得られた。
○一部、線割れが見られたが、実用上問題のないレベルであった。
△線割れが確認され、実用上懸念があるレベルであった。
×線割れが多数確認され、良好な筆跡が得られなかった。
Figure 2018172479
Figure 2018172479
Figure 2018172479
表1、表2により、実施例1〜実施例14の筆記具用インキ組成物は、耐ドライアップ性能試験、筆記性能試験の結果から、耐ドライアップ性能、筆記性能ともに、良好であった。
一方、表3より、比較例1〜比較例4の筆記具用インキ組成物は、式(1)で示される化合物を用いていないため、耐ドライアップ性能試験、筆記性能試験において、すべてを満足するものではなかった。
<実施例15>
下記の配合組成および方法により、筆記具用インキ組成物を得た。
・式(1)で示される化合物 10.0質量%
(式(2)で示される化合物、式(1)中のAがグリセリンのヒドロキシル基を除いた残基、n×(x+y)=13、z=1、x:y=8:5)
・着色剤 2.0質量%
(染料、C.I.アシッドレッド289)
・pH調整剤 2.0質量%
(トリエタノールアミン)
・防腐剤(ナトリウムオマジン) 0.05質量%
・防腐剤(2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン)0.0005質量%
・防腐剤(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン) 0.008質量%
・防腐剤(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン) 0.003質量%
・水 残部
前記式(1)で示される化合物、pH調整剤、防腐剤、水をプロペラ撹拌により、混合してベース液を得た。その後、該ベース液に着色剤を添加し、プロペラ撹拌により混合して、筆記具用インキ組成物を得た。
<実施例16>
下記の配合組成および方法により、筆記具用インキ組成物を得た。
・式(1)で示される化合物 10.0質量%
(式(2)で示される化合物、式(1)中のAがグリセリンのヒドロキシル基を除いた残基、n×(x+y)=13、z=1、x:y=8:5)
・着色剤 2.0質量%
(染料、C.I.アシッドレッド289)
・pH調整剤 2.0質量%
(トリエタノールアミン)
・N,N,N−トリアルキルアミノ酸 2.0質量%
(トリメチルグリシン)
・防腐剤(ナトリウムオマジン) 0.05質量%
・防腐剤(2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン)0.0005質量%
・防腐剤(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン) 0.008質量%
・防腐剤(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン) 0.003質量%
・水 残部
前記式(1)で示される化合物、pH調整剤、防腐剤、N,N,N−トリアルキルアミノ酸、水をプロペラ撹拌により、混合してベース液を得た。その後、該ベース液に着色剤を添加し、プロペラ撹拌により混合して、筆記具用インキ組成物を得た。
<比較例5>
比較例5は、実施例15の配合組成のうち、式(1)で示される化合物をグリセリンに変更した以外は、実施例15と同じ方法で筆記具用インキ組成物を得た。
<試験用筆記具(万年筆)の作製>
実施例15、実施例16、比較例5の筆記具用インキ組成物を、ポリエチレン製のインキカートリッジに注入し、くし溝状のインキ流量調節部材を備えた万年筆形態のペン先を有する出没式筆記具(株式会社パイロットコーポレーション製万年筆、FCN−1MR−M)に装着し、万年筆を得た。
得られた万年筆を試験用筆記具(万年筆)とし、該試験用筆記具(万年筆)をノックしてペン先を繰り出し、20℃、65%RHの条件下で7日間放置した後、試験用紙(日本製紙株式会社製の上質紙(しらおい4/6T)に、「V」という文字(文字の大きさは、縦横約8mm)を連続筆記し、筆跡が認識できる程度に復帰したまでの文字数を数えたところ、式(1)で示される化合物を含んでない比較例5のインキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)よりも、式(1)で示される化合物を含んでなる実施例15、実施例16のインキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)の方が、復帰したまでの文字数は少なく、実施例15、実施例16の筆記具用インキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れていることがわかった。
その後、試験用筆記具(万年筆)を、筆記角度60°、筆記荷重0.49N、筆記速度10m/分の条件下で試験用紙(富士ゼロックス株式会社製のEエンジニアリング用紙(上質系普通紙:E[カット])に直線を連続筆記し、得られた筆跡を目視にて確認したところ、実施例15、実施例16の筆記具用インキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)はインキ追従性に優れ、得られた筆跡は、トギレやカスレのない良好な筆跡であった。一方、比較例5の筆記具用インキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)では、インキ追従性能に劣り、得られた筆跡は、トギレやカスレが確認され、良好な筆跡が得られなかった。よって、実施例15、実施例16の筆記具用インキ組成物は、インキ追従性に優れ、筆記性能に優れていることがわかった。
以上より、式(1)で示される化合物と、着色剤と、溶媒と、を含んでなる筆記具用インキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れており、ペン先が暫く大気に晒された状態においても良好な筆跡をもたらし、さらに、ボールペンに用いた場合には線割れやボテが改善され、万年筆に用いた場合にはトギレやカスレが改善された良好な筆跡をもたらすなど、筆記性能に優れたものであり、前記筆記具用インキ組成物を用いた筆記具は、筆記具として優れたものであることがわかった。
本発明のインキ組成物は、ボールペン、マーキングペン、万年筆、筆ペン、カリグラフィー用のペンなどの各種筆記具に用いることができ、該インキ組成物が収容されてなる筆記具は、筆記性良好で、耐ドライアップ性能に優れ、良好な筆跡をもたらすことができる。


Claims (5)

  1. 式(1)で示される化合物と、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用インキ組成物。
    Figure 2018172479
    (式(1)中のAは3〜6個のヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基を除いた残基を表し、nは3〜6である。xはエチレンオキシド平均付加モル数、yはプロピレンオキシド平均付加モル数、zはブチレンオキシド平均付加モル数を表し、x+y=1〜30、z=1〜5、x:y=1:4〜7:1である。)
  2. 請求項1に記載の前記式(1)で示される化合物の含有量が、前記筆記具用インキ組成物の総質量を基準として0.01質量%〜30質量%である、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
  3. 前記溶媒が、水溶性有機溶剤を含んでなる、請求項1または2に記載の筆記具用インキ組成物。
  4. N,N,N−トリアルキルアミノ酸を更に含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の筆記具用インキ組成物。
  5. 請求項1〜4に記載の筆記具用インキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。


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