定義
本発明において使用される用語の定義を以下に挙げる。
本発明によるアミノ酸は、20の天然(または「標準」アミノ酸)またはそのバリアント、例えば、D−プロリン(プロリンのD−エナンチオマー)など、またはタンパク質に天然に見出されない任意のバリアント、例えば、ノルロイシンなどのいずれかであり得る。標準アミノ酸は、それらの特性に基づきいくつかのグループに分割することができる。重要な因子は、電荷、親水性または疎水性、サイズおよび官能基である。これらの特性は、タンパク質構造およびタンパク質−タンパク質相互作用にとって重要である。一部のアミノ酸は、特別な特性を有し、例えば、システインは、他のシステイン残基への共有ジスルフィド結合(またはジスルフィド架橋)を形成し得、プロリンは、ポリペプチド骨格への周期性を形成し、グリシンは、他のアミノ酸よりもフレキシブルである。表1は、標準アミノ酸の略語および特性を示す。
用語「アミノ酸配列同一性」は、通常、割合として表現される一対のアラインされたアミノ酸配列間の同一性または類似性の程度を指す。同一性パーセントは、同一(すなわち、アラインメント中の所与の位置におけるアミノ酸残基は、同一残基である)または類似(すなわち、アラインメント中の所与の位置におけるアミノ酸置換は、以下に論じる保存的置換である)の候補配列中のアミノ酸残基と、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセント配列相同性を達成した後のペプチド中の対応するアミノ酸残基との割合である。配列相同性、例として配列同一性および類似性の割合は、当分野において周知の配列アラインメント技術を使用して、例えば、目視調査および数学的計算により決定され、またはより好ましくは、比較は、コンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することにより行われる。例示的な好ましいコンピュータプログラムは、Genetics Computer Group(GCG;Madison,Wis.)Wisconsinパッケージバージョン10.0プログラム、「GAP」(Devereux et al.(1984))である。
「保存的置換」は、あるクラスのアミノ酸の同一クラスの別のアミノ酸による置換を指す。特定の実施形態において、保存的置換は、本発明のポリペプチドの構造もしくは機能、またはその両方を変化させない。保存的置換の目的のためのアミノ酸のクラスには、疎水性(例えば、Met、Ala、Val、Leu)、中性親水性(例えば、Cys、Ser、Thr)、酸性(例えば、Asp、Glu)、塩基性(例えば、Asn、Gln、His、Lys、Arg)、立体構造破壊物質(例えば、Gly、Pro)および芳香族(例えば、Trp、Tyr、Phe)が含まれる。
本明細書において使用される用語「疾患」および「障害」は、対象における病態を指すために互換的に使用される。一部の実施形態において、病態は、ウイルス感染、特にインフルエンザウイルス感染である。具体的な実施形態において、用語「疾患」は、細胞もしくは対象におけるウイルスの存在から生じ、またはウイルスによる細胞もしくは対象の侵襲による病理的状態を指す。ある実施形態において、病態は、免疫原性組成物の投与を介して対象において免疫応答を誘導することにより重症度が減少される対象における疾患である。
治療物を対象に投与する文脈における本明細書において使用される用語「有効量」は、予防および/または治療効果を有する治療物の量を指す。ある実施形態において、治療物を対象に投与する文脈における「有効量」は、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の重症度の低減もしくは改善、例えば、限定されるものではないが、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の持続時間の低減、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の進行の予防、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の発現もしくは発症もしくは再発の予防、ある対象から別の対象へのインフルエンザウイルスの拡散の予防もしくは低減、対象の入院および/もしくは入院期間の低減、インフルエンザウイルス感染もしくはそれに伴う疾患を有する対象の生存率の増加、インフルエンザウイルス感染もしくはそれに伴う疾患の排除、インフルエンザウイルス複製の阻害もしくは低減、インフルエンザウイルス力価の低減;および/または別の治療物の予防もしくは治療効果の向上および/もしくは改善を達成するために十分な治療物の量を指す。ある実施形態において、有効量は、インフルエンザウイルス疾患からの完全な保護をもたらさないが、未治療対象と比較してより低い力価または低減数のインフルエンザウイルスをもたらす。インフルエンザウイルスの力価、数または総負荷の低減の利益には、限定されるものではないが、より軽度の感染症状、より少ない感染症状および感染に伴う疾患の期間の低減が含まれる。
本明細書において使用される用語「宿主」は、ベクター、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターが導入された生物または細胞を指すものとする。生物または細胞は、原核または真核であり得る。好ましくは、宿主は、単離宿主細胞、例えば、培養物中の宿主細胞を含む。用語「宿主細胞」は、細胞が本発明のポリペプチドの(過剰)発現のために改変されていることを単に意味するにすぎない。宿主という用語は、特定の対象生物または細胞を指すだけでなく、そのような生物または細胞の子孫も同様に指すものとすることを理解すべきである。ある改変が突然変異または環境的影響のいずれかに起因して後続世代において生じ得るため、そのような子孫は、事実上、親生物または細胞と同一であり得ないが、依然として本明細書において使用される用語「宿主」の範囲内に含まれる。
本明細書において使用される用語「含まれる」または「例として」の後には、語「限定されるものではないが」が続くものとみなされる。
本明細書において使用される用語「感染」は、細胞または対象におけるウイルスの繁殖および/または存在による侵襲を意味する。一実施形態において、感染は、「活性」感染、すなわち、ウイルスが細胞または対象において複製しているものである。このような感染は、ウイルスにより最初に感染された細胞、組織、および/または器官から他の細胞、組織、および/または器官へのウイルスの拡散を特徴とする。感染は、潜伏感染、すなわち、ウイルスが複製していないものでもあり得る。ある実施形態において、感染は、細胞もしくは対象中のウイルスの存在から生じ、またはウイルスによる細胞もしくは対象の侵襲による病理学的状態を指す。
インフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルス型:A、BおよびC属に分類される。本明細書において使用される用語「インフルエンザウイルス亜型」は、ヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)ウイルス表面タンパク質の組合せを特徴とするインフルエンザAウイルスバリアントを指す。本発明によれば、インフルエンザウイルス亜型は、それらのH番号、例えば、「H3亜型のHAを含むインフルエンザウイルス」、「H3亜型のインフルエンザウイルス」または「H3インフルエンザ」など、またはH番号およびN番号の組合せ、例えば、「インフルエンザウイルス亜型H3N2」もしくは「H3N2」などにより称することができる。用語「亜型」には、具体的には、通常、突然変異から生し、異なる病原プロファイルを示すそれぞれの亜型内の全ての個々の「株」、例として、天然分離株および人工突然変異体またはリアソータントなどが含まれる。このような株は、ウイルス亜型の種々の「分離株」と称することもできる。したがって、本明細書において使用される用語「株」および「分離株」は、互換的に使用することができる。ヒトインフルエンザウイルス株または分離株についての現在の命名法には、ウイルスの型(属)、すなわち、A、BまたはC、最初の分離の地理的場所、株番号および分離年度に通常括弧内に挙げられるHAおよびNAの抗原の記載が含まれ、例えば、A/Moscow/10/00(H3N2)である。非ヒト株には、命名法において起源の宿主も含まれる。インフルエンザAウイルス亜型は、それらの系統発生グループを参照することによりさらに分類することができる。系統分析は、ヘマグルチニンの2つの主要グループへの下位分類を実証した:とりわけ系統発生グループ1におけるH1、H2、H5およびH9亜型(「グループ1」インフルエンザウイルス)およびとりわけ系統発生グループ2におけるH3、H4、H7およびH10亜型(「グループ2」インフルエンザウイルス」)。
本明細書において使用される用語「インフルエンザウイルス疾患」は、細胞もしくは対象中のインフルエンザウイルス、例えば、インフルエンザAもしくはBウイルスの存在またはインフルエンザウイルスによる細胞もしくは対象の侵襲から生じる病理学的状態を指す。具体的な実施形態において、この用語は、インフルエンザウイルスにより引き起こされる呼吸器疾病を指す。
本明細書において使用される用語「核酸」には、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)ならびにヌクレオチドアナログを使用して生成されたDNAまたはRNAのアナログが含まれるものとする。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。核酸分子は、化学的もしくは生化学的に改変することができ、または非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含有し得、それは当業者により容易に認識される。このような改変には、例えば、標識、メチル化、アナログによる天然ヌクレオチドの1つ以上の置換、ヌクレオチド間改変、例えば、未荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホラミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、懸垂部分(例えば、ポリペプチド)、挿入剤(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレート化剤、アルキル化剤、および改変結合(例えば、アルファアノマー核酸など)が含まれる。核酸配列への言及は、特に記載のない限り、その相補物を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸分子への言及は、その相補的配列を有するその相補鎖を包含すると理解すべきである。相補鎖も、例えばアンチセンス療法、ハイブリダイゼーションプローブおよびPCRプライマーに有用である。
ある実施形態において、本明細書において使用されるHA中のアミノ酸の番号付与は、野生型インフルエンザウイルスのHA0中のアミノ酸の番号付与、例えば、H1N1インフルエンザ株A/Brisbane/59/2007(配列番号1)のアミノ酸の番号付与に基づく。したがって、本発明において使用される語「HA中の「x」位におけるアミノ酸」は、特定の野生型インフルエンザウイルス、例えば、A/Brisbane/59/2007(配列番号1;HA2ドメインのアミノ酸をイタリックで示した)のHA0中のx位におけるアミノ酸に対応するアミノ酸を意味する。他のインフルエンザウイルス株および/または亜型中の相当アミノ酸を多重配列アラインメントにより決定することができることが当業者により理解される。本出願全体にわたり使用される番号付与系において、1は、未成熟HA0タンパク質(配列番号1)のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。成熟配列は、例えば、配列番号1の18位上で開始する。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜17に対応)は一般に、例えば、ワクチンにおいて使用される最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。したがって、ある実施形態において、本発明によるポリペプチドは、リーダー配列を有さないアミノ酸配列を含み、すなわち、アミノ酸配列は、シグナル配列を有さないHA0のアミノ酸配列をベースとする。
「ポリペプチド」は、当業者により公知のアミド結合により結合しているアミノ酸の重合体を指す。本明細書において使用されるこの用語は、共有アミド結合により結合している単一ポリペプチド鎖を指し得る。この用語は、非共有相互作用、例えば、イオン接触、水素結合、ファン・デル・ワールス接触および疎水性接触により会合している複数のポリペプチド鎖も指し得る。当業者は、この用語には、例えば、翻訳後プロセシング、例えば、シグナルペプチド開裂、ジスルフィド結合形成、グリコシル化(例えば、N結合およびO結合グリコシル化)、プロテアーゼ開裂および脂質改変(例えば、S−パルミトイル化)により改変されたポリペプチドが含まれることを認識する。
「ステムドメインポリペプチド」は、天然(または野生型)ヘマグルチニン(HA)のステムドメインを構成する1つ以上のポリペプチド鎖を含むポリペプチドを指す。典型的には、ステムドメインポリペプチドは、単一ポリペプチド鎖(すなわち、ヘマグルチニンHA0ポリペプチドのステムドメインに対応)または2つのポリペプチド鎖(すなわち、ヘマグルチニンHA2ポリペプチドと会合しているヘマグルチニンHA1ポリペプチドのステムドメインに対応)である。本発明によれば、ステムドメインポリペプチドは、野生型HA分子と比較して1つ以上の突然変異を含み、特に野生型HAの1つ以上のアミノ酸残基が特定の野生型HA中の対応位置上で天然に生じない他のアミノ酸により置換されていてよい。本発明によるステムドメインポリペプチドは、下記の1つ以上の結合配列をさらに含み得る。
用語「ベクター」は、複製され、一部の場合に発現される、宿主中への導入のために第2の核酸分子を挿入することができる核酸分子を示す。換言すると、ベクターは、それが結合した核酸分子を輸送し得る。クローニングおよび発現ベクターは、本明細書において使用される用語「ベクター」により企図される。ベクターには、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)および酵母人工染色体(YAC)ならびにバクテリオファージまたは植物または動物(例として、ヒト)ウイルスに由来するベクターが含まれる。ベクターは、提示される宿主により認識される複製起源および発現ベクターの場合、宿主により認識されるプロモーターおよび他の調節領域を含む。あるベクターは、それらが導入された宿主中で自律複製し得る(例えば、細菌の複製起源を有するベクターは、細菌中で複製し得る)。他のベクターは宿主中への導入時に宿主のゲノム中に組み込むことができ、それによりベクターは宿主ゲノムに沿って複製される。
本明細書において使用される、ウイルスの文脈における用語「野生型」は、高頻度であり、天然に循環し、典型的な疾患の蔓延を発生させているインフルエンザウイルスを指す。
詳細な説明
インフルエンザウイルスは、世界規模の公衆衛生に対して顕著な影響を及ぼし、毎年数百万の重病の症例、数千人の死亡、およびかなりの経済的損失を引き起こす。現在の三価インフルエンザワクチンは、ワクチン株および密接に関連する分離株に対する強力な中和抗体応答を誘発するが、ある亜型内のより分岐した株または他の亜型に及ぶことはほとんどない。さらに、適切なワクチン株の選択は多くの困難を提示し、準最適保護を頻繁にもたらす。さらに、次の流行性ウイルスの亜型の予測は、それがいつどこで生じるかを含め、現在では不可能である。
ヘマグルチニン(HA)は、中和抗体の主要な標的であるインフルエンザAウイルスからの主要なエンベロープ糖タンパク質である。ヘマグルチニンは、流入プロセスの間の2つの主要な機能を有する。第1に、ヘマグルチニンは、シアル酸受容体との相互作用を介して標的細胞の表面へのウイルスの付着を媒介する。第2に、ウイルスのエンドサイトーシス後、ヘマグルチニンは、続いてウイルスおよびエンドソーム膜の融合を生んでそのゲノムを標的細胞の細胞質中に放出させる。HAは、宿主由来酵素により開裂されてジスルフィド結合により結合したままの2つのポリペプチドを生成する約500アミノ酸の大型エクトドメインを含む。大多数のN末端断片(HA1、320〜330アミノ酸)は、受容体結合部位およびウイルス中和抗体により認識されるほとんどの抗原決定基を含有する膜遠位球状ドメインを形成する。より小型のC末端部分(HA2、約180アミノ酸)は、球状ドメインを細胞またはウイルス膜にアンカリングするステム様構造を形成する。亜型間の配列相同性の程度は、HA1ポリペプチド(34%〜59%の亜型間相同性)がHA2ポリペプチド(51〜80%の相同性)よりも小さい。ほとんどの保存領域は、開裂部位周囲の配列、特にHA2N末端23アミノ酸であり、それは全てのインフルエンザAウイルス亜型で保存される(Lorieau et al.,2010)。この領域の一部は、HA前駆体分子(HA0)中で表面ループとして曝露されるが、HA0がHA1およびHA2に開裂された場合に接近不可能になる。
ほとんどの中和抗体は、受容体結合部位を包囲するループに結合し、受容体結合および付着を妨げる。これらのループは高度に変異性であるため、それらの領域を標的化するほとんどの抗体は、株特異的であり、なぜ現在のワクチンがそのような限定された株特異的免疫を誘発するかを説明する。しかしながら、近年、広域交差中和効力を有するインフルエンザウイルスヘマグルチニンに対する完全ヒトモノクローナル抗体が生成された。機能および構造分析は、それらの抗体が膜融合プロセスを妨げ、インフルエンザHAタンパク質のステムドメイン中の高度に保存されたエピトープに対して指向されることを明らかにした(Throsby et al.,2008;Ekiert et al.2009、国際公開第2008/028946号パンフレット、国際公開第2010/130636号パンフレット、国際公開第2013/007770号パンフレット)。
これらの抗体のエピトープを安定的に提示するステムドメインポリペプチドは、同時係属特許出願PCT/EP2012/073706号明細書に記載されている。本明細書に記載のステムドメインポリペプチドの少なくとも一部は、CR6261および/またはCR9114のエピトープを安定的に提示し、マウスにおいて免疫原性である。CR6261および/またはCR9114のエピトープを安定的に提示するさらなる免疫原性ステムドメインポリペプチドは、同時係属特許出願PCT/EP2014/060997号明細書に記載されている。
本発明によれば、これらのエピトープを提示する新たな多量体HAステムドメインポリペプチドが設計された。これらのポリペプチドを使用して広範囲のインフルエンザ株に対する保護を誘導するユニバーサルエピトープベースワクチンを作出することができる。既に記載されたステムドメインポリペプチドにおいて同様、高度に変異性の免疫優性部分、すなわち、頭部ドメインを最初に全長HA分子から除去してmini−HAとも称されるステムドメインポリペプチドを作出して免疫応答を広域中和抗体についてのエピトープが局在するステムドメインに再指向する。上記の広域中和抗体は、中和エピトープの存在を確認するために使用される。
ある実施形態において、本発明の新たなHAステムポリペプチドは、溶液中で安定な三量体を形成する一方、中和抗体のCR6261および/またはCR9114および/またはCR8020のエピトープを曝露させる。個々の単量体間の追加の相互作用はタンパク質およびエピトープをさらに安定化させ、ポリペプチドがワクチン中で使用される場合にそれらのエピトープのより良好な提示をもたらす。
本発明のステムドメインポリペプチドは、膜近位ステムドメインHA分子の保存エピトープを、膜遠位頭部ドメイン中に存在する優性エピトープの不存在下で免疫系に提示し得る。この目的のため、頭部ドメインを構成するHA0タンパク質の一次配列の一部を除去し、直接的に、または一部の実施形態において、短いフレキシブル結合配列(「リンカー」)を導入することにより再連結させてポリペプチド鎖の連続性を回復させる。得られたポリペプチド配列を、HA0分子の残留部分の天然三次元構造を安定化する規定の突然変異を導入することによりさらに改変する。
本発明は、新規多量体インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドであって、少なくとも第1および第2のインフルエンザヘマグルチニンステムドメイン単量体を含み、前記第1および第2の単量体は、それぞれ、(a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメインを含み、前記HA1C末端セグメントは、(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインに結合しており、前記HA1N末端セグメントは、HA1のアミノ酸1〜x、好ましくは、HA1のアミノ酸p〜xを含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸y〜C末端アミノ酸を含み、
(c)HA1およびHA2ドメイン間の連結部におけるプロテアーゼ開裂部位を含まず、
(d)第1の単量体は、第1の単量体の411位上のアミノ酸および第2の単量体の419位上のアミノ酸間のジスルフィド架橋により前記第2の単量体に結合しているポリペプチドを提供する。
したがって、本発明によれば、ジスルフィド架橋は、多量体中の個々の単量体間の共有結合架橋を形成する。
ある実施形態において、多量体ポリペプチドは、三量体であり、すなわち、3つのインフルエンザステムドメイン単量体を含む。本発明によれば、それぞれの単量体は、ある単量体の411位上のアミノ酸と別の単量体の419位上のアミノ酸との間のジスルフィド架橋により別の単量体に結合している。
驚くべきことに、本発明によれば、少なくとも2つの異なる単量体の411および419位(配列番号1による番号付与または他のインフルエンザウイルスのヘマグルチニン中の相当残基)アミノ酸間の新規ジスルフィド架橋の導入が、二量体、または好ましくは、三量体ポリペプチドをもたらすことが見出された。他の公開されている三量体HAステム構造とは対照的に、この単量体間ジスルフィド結合三量体は、十分に発現し、自然にフォールドする。したがって、これは記載(Lu et al 2013)されたその三次元構造を得るためのリフォールディング手順を要求しない。
ある実施形態において、HA1およびHA2ドメインは、系統発生グループ1に由来するインフルエンザAウイルス亜型に由来する。
ある実施形態において、HA1およびHA2ドメインは、H1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルス亜型に由来する。本発明のポリペプチドは、全長HA1を含まない。
ある実施形態において、HA1およびHA2ドメインは、系統発生グループ2に由来するインフルエンザAウイルス亜型に由来する。
ある実施形態において、HA1およびHA2ドメインは、H3亜型のHAを含むインフルエンザAウイルス亜型に由来する。
ある実施形態において、本発明の免疫原性ポリペプチド中のインフルエンザヘマグルチニンステムドメイン単量体は、HA0よりも実質的に小さく、好ましくは、HAの球状頭部の全てまたは実質的に全てを欠く。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、360アミノ酸長以下、好ましくは、350、340、330、320、310、305、300、295、290、285、280、275、または270アミノ酸長以下である。ある実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、約250から約350、好ましくは、約260から約340、好ましくは、約270から約330アミノ酸長である。
本発明によれば、「HA1N末端セグメント」は、インフルエンザヘマグルチニン(HA)分子のHA1ドメインのアミノ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施形態において、HA1N末端ポリペプチドセグメントは、HA1ドメインの1位からx位のアミノ酸を含み、x位上のアミノ酸は、HA1内のアミノ酸残基である。用語「HA1C末端セグメント」は、インフルエンザヘマグルチニンHA1ドメインのカルボキシ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施形態において、HA1C末端ポリペプチドセグメントは、HA1ドメインのy位からC末端アミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸を含み、y位上のアミノ酸は、HA1内のアミノ酸残基である。本発明によれば、yは、xよりも大きく、したがって、HA1N末端セグメントおよびHA1C末端セグメント間、すなわち、HA1のx位上のアミノ酸およびy位上のアミノ酸間のHA1ドメインのセグメントが欠失しており、一部の実施形態において、結合配列により置き換えられている。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸1〜xを含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸y〜末端を含む。したがって、ある実施形態において、HA1セグメントの欠失は、x+1位におけるアミノ酸からy−1位におけるアミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸配列を含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、シグナル配列を含まない。したがって、ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1のアミノ酸p〜xを含み、pは、成熟HA分子の最初のアミノ酸である(例えば、配列番号1の場合、p=18)。当業者は、シグナルペプチド(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜17)を有さない本明細書に記載のポリペプチドを調製することができる。
ここでも、本明細書において使用されるアミノ酸位置の番号付与は、配列番号1を指すことが留意される。当業者は、他のヘマグルチニン配列中の相当位置を決定することができる。
ある実施形態において、ポリペプチドは、完全HA2ドメインを含み、したがって、膜貫通および細胞内配列を含む。他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含まない。したがって、ある実施形態において、ポリペプチドは、トランケートHA2ドメインを含む。ある実施形態において、細胞中での発現後に可溶性ポリペプチドが産生されるように、細胞内および膜貫通配列、例えば、HA2ドメインの514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、526、528、529、または530位(またはその相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列が除去されている。
本発明によれば、ヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、HA1およびHA2ドメイン間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性であり、すなわち、HA1およびHA2間のこの連結部におけるプロテアーゼ開裂部位を含まない。HA1およびHA2に及ぶArg(R)〜Gly(G)配列がトリプシンおよびトリプシン様プロテアーゼのための認識部位であり、典型的には、ヘマグルチニン活性化のために開裂されることは当業者に公知である。本明細書に記載のHAステムドメインポリペプチドは活性化されるべきでないため、本発明のインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、プロテアーゼ開裂に耐性である。したがって、本発明によれば、プロテアーゼ開裂部位は除去されており、またはHA1およびHA2に及ぶプロテアーゼ部位がプロテアーゼ開裂に耐性である配列に突然変異している。本発明によれば、HA1およびHA2間の開裂部位の除去は、P1位におけるR(わずかな場合においてK)からQへの突然変異により達成することができる(例えば、開裂部位(配列番号1の343位)の命名法の説明についてはSun et al,2010参照。ある実施形態において、HA1C末端ステムセグメントのC末端アミノ酸残基は、アルギニン(R)またはリジン(K)以外の任意のアミノ酸である。ある実施形態において、HA1C末端アミノ酸は、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)である。ある実施形態において、HA1C末端ステムセグメントのC末端アミノ酸残基は、グルタミン(Q)である。
ある実施形態において、ポリペプチドは、グリコシル化されている。
ある実施形態において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、H1亜型のインフルエンザウイルスのHAをベースとする。「をベースとする」は、HA1ドメインおよび/またはHA2ドメインのN末端セグメント、および/またはC末端セグメントが当業者に公知の、または後に発見されるH1亜型の任意の天然インフルエンザヘマグルチニンのHA1および/またはHA2ドメインの対応N末端および/またはC末端セグメントと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。
ある実施形態において、ポリペプチドは、H1HA、すなわち、H1亜型のインフルエンザウイルスからの、特に下記のインフルエンザウイルスA/Brisbane/59/2007(H1N1)(配列番号1)からのアミノ酸配列を含むHAをベースとする。H1亜型のHAを含む他のインフルエンザAウイルスを本発明により使用することもできることが当業者により理解される。ある実施形態において、ポリペプチドは、表2から選択されるインフルエンザAH1ウイルスのHAをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、H1HA1ドメインの1位からx位までのアミノ酸を含むHA1N末端ポリペプチドセグメントを含み、xは、46位上のアミノ酸および60位上のアミノ酸間の任意のアミノ酸、例えば、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、または59位上のアミノ酸であり、好ましくは、xは、52、53、55または59である。好ましくは、ポリペプチドは、シグナル配列を有さないHA1N末端セグメント、すなわち、HA1ドメインの18位(例えば、H1HAについて、例えば、配列番号1)、または他のインフルエンザウイルス株(例えば、表2参照)中の相当位置からx位までのアミノ酸を含むHA1N末端セグメントを含む。したがって、ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1ドメインのp位(配列番号1のH1HAについてp=18または他のH1HA上の相当位置)からx位までのアミノ酸を含む。
ある実施形態において、HA1C末端ポリペプチドセグメントは、H1HA1ドメインのy位からC末端アミノ酸(そのアミノ酸を含む)までのアミノ酸を含み、yは、H1HA1の290位上のアミノ酸および325位上のアミノ酸間の任意のアミノ酸であり、好ましくは、yは、291、303、318、または321である。
ある実施形態において、x=配列番号1の52位(または別のヘマグルチニン中の相当位置)上のアミノ酸であり、p=配列番号1の18位(または別のヘマグルチニン中の相当位置)上のアミノ酸であり、y=配列番号1の321位(または別のヘマグルチニン中の相当位置)上のアミノ酸である。したがって、ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸1〜52を含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸321〜末端(すなわち、HA1のC末端アミノ酸)を含む。したがって、ある実施形態において、HA1セグメントの欠失は、53位におけるアミノ酸から320位におけるアミノ酸(そのアミノ酸を含む)までのアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、シグナル配列を含まない。したがって、ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1のアミノ酸18〜52を含み、pは、成熟HA分子の最初のアミノ酸である(例えば、配列番号1の場合、p=18)。
したがって、ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜52、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜52を含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基321〜343を含む。ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜52、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜52からなり、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基321〜343からなる。
本発明によれば、ステムポリペプチドは、対応する野生型インフルエンザウイルスHA1および/またはHA2ドメイン、すなわち、ステムポリペプチドがベースとするインフルエンザウイルスのアミノ酸配列と比較して個々の単量体のHA1ドメインおよび/またはHA2ドメイン中の1つ以上の突然変異、すなわち、アミノ酸置換を含む。
ある実施形態において、HA2ドメインは、ヘリックスAのC末端残基をヘリックスCDのN末端残基に連結するHA2アミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む(図1)。ヘリックスAのC末端残基およびヘリックスCDのN末端残基を連結するH1HA2アミノ酸配列は、インフルエンザHAの残基402〜418を含むアミノ酸配列を含み(配列番号1による番号付与)、アミノ酸配列MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)(配列番号7)を含む。
ある実施形態において、ヘリックスAのC末端残基をヘリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列、すなわち、血清型H1のインフルエンザHAのアミノ酸残基402〜418(配列番号1による番号付与)を含む領域は、アミノ酸配列X1NTQX2TAX3GKEX4N(H/K)X5E(K/R)(配列番号8)を含む。
ある実施形態において、402、406、409、413および416位(番号付与は、配列番号1を指す)上のアミノ酸の1つ以上、すなわち、アミノ酸X1、X2、X3、X4およびX5の1つ以上は突然変異しており、すなわち、ステムポリペプチドがベースとする野生型インフルエンザウイルス中のそれらの位置において生じないアミノ酸を含む。
ある実施形態において、402位上の突然変異アミノ酸、すなわち、X1は、M、E、K、V、RおよびTからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、406位上の突然変異アミノ酸、すなわち、X2は、F、I、N、T、H、LおよびY、好ましくは、I、LまたはYからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、409位上の突然変異アミノ酸、すなわち、X3は、V、A、G、I、R、FおよびS、好ましくは、A、IまたはFからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、413位上の突然変異アミノ酸、すなわち、X4は、F、I、N、S、T、Y、E、K、M、およびV、好ましくは、I、Y、MまたはVからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、416位上の突然変異アミノ酸、すなわち、X5は、L、H、I、N、R、好ましくは、Iからなる群から選択されるアミノ酸である。
これらの1つ以上の突然変異の組合せも可能である。
ある実施形態において、X1はMであり、X2はYであり、X3はIであり、X4はYであり、X5はSである。
本発明によれば、ステムポリペプチドは、対応する野生型インフルエンザウイルスHA1および/またはHA2ドメイン、すなわち、ステムポリペプチドがベースとするインフルエンザウイルスのアミノ酸配列と比較してHA1ドメインおよび/またはHA2ドメイン中の1つ以上の追加の突然変異、すなわち、アミノ酸置換を含む。
ある実施形態において、HA0開裂部位(配列番号1の残基343)に近い1つ以上のアミノ酸残基が突然変異している。ある実施形態において、配列番号1の337、340、352、もしくは353位または他のインフルエンザウイルス中の相当位置上のアミノ酸残基の1つ以上が突然変異しており、すなわち、ステムポリペプチドがベースとする野生型インフルエンザウイルスのHAのアミノ酸配列中の対応する位置において生じないアミノ酸により置換されている。表6は、天然アミノ酸変異を示す。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1の352位上、または他のインフルエンザウイルスの相当位置上の少なくとも1つの突然変異を含む。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1の353位上、または他のインフルエンザウイルスの相当位置上の少なくとも1つの突然変異を含む。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1の337位上、または他のインフルエンザウイルスの相当位置上の少なくとも1つの突然変異を含む。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1の340位上、または他のインフルエンザウイルスの相当位置上の少なくとも1つの突然変異を含む。
ある実施形態において、337位(HA1ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、I、E、K、V、A、およびTからなる群から選択される。
ある実施形態において、340位(HA1ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、I、K、R、T、F、N、SおよびYからなる群から選択される。
ある実施形態において、352位(HA2ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、D、V、Y、A、I、N、S、およびTからなる群から選択される。
ある実施形態において、353位(HA2ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、K、R、T、E、G、およびVからなる群から選択される。
ある実施形態において、突然変異アミノ酸は、例えば、配列番号6のI340Nの場合のように配列中のコンセンサスN−グリコシル化、例えば、N−X−T/S(Xは、Pを除く任意の天然アミノ酸である)を導入する。
ある実施形態において、突然変異アミノ酸は、同一亜型の配列中で天然で生じないアミノ酸である。
ある実施形態において、337位(HA1ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、Kである。
ある実施形態において、340位(HA1ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、Kである。
ある実施形態において、352位(HA2ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、Fである。
ある実施形態において、353位(HA2ドメイン)上の突然変異アミノ酸残基は、Tである。
本出願全体にわたり、アミノ酸の番号付与はH1HA0中のアミノ酸の番号付与、特に、H1N1インフルエンザ株A/Brisbane/59/2007(配列番号1)のアミノ酸の番号付与をベースとすることがここでも留意される。当業者は、他のインフルエンザウイルスのHA中の相当アミノ酸を決定することができ、したがって、相当の突然変異を決定することができ、例えば、異なるH1インフルエンザウイルスの配列アラインメントについては表2参照。
本発明によれば、ポリペプチドは、324位上のアミノ酸および436位上のアミノ酸間の追加のジスルフィド架橋をさらに含み得る。したがって、本発明によれば、少なくとも1つの追加のジスルフィド架橋がステムドメインポリペプチド中で、好ましくは、H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)中の324および436位(またはその相当物)のアミノ酸間に導入されている。したがって、ある実施形態において、ポリペプチドは、HA1ドメイン中の突然変異R324CおよびHA2ドメイン中のT436Cをさらに含む。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
ある実施形態において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、H3亜型のインフルエンザウイルスのHAをベースとする。「をベースとする」は、HA1ドメインおよび/またはHA2ドメインのN末端セグメント、および/またはC末端セグメントが当業者に公知の、または後に発見されるH3亜型の任意の天然インフルエンザヘマグルチニンのHA1および/またはHA2ドメインの対応N末端および/またはC末端セグメントと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。
ある実施形態において、ポリペプチドは、H3HA、すなわち、下記のH3N2ウイルスA/Hong Kong/1/1968(配列番号237)のインフルエンザウイルスからのアミノ酸配列を含むHAをベースとする。H3亜型のHAを含む他のインフルエンザAウイルスを本発明により使用することもできることが当業者により理解される。
ある実施形態において、アミノ酸配列CMKQIEDKIEEIESK(配列番号193)が配列番号1の419〜433位(または異なるHA中の相当位置)において導入されており、またはアミノ酸配列RMCQIEDKIEEIESKQK(配列番号194)が配列番号1の417〜433位(または異なるHA中の相当位置)において導入されている。
ある実施形態において、ポリペプチドは、HA1およびHA2ドメインが由来するHAのアミノ酸配列と比較してHA1および/またはHA2ドメイン中の1つ以上の追加の突然変異をさらに含む。したがって、ステムポリペプチドの安定性がさらに増加する。
ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR6261および/またはCR9114に選択的に結合する。一実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR8020および/またはCR8057に結合しない。一実施形態において、CR6261は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;CR9114は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態において、CR8057は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。CR8020は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR8020に選択的に結合する。
したがって、本発明によれば、ある実施形態において、CR6261、CR9114、および/またはCR8020の特異的エピトープを模倣し、例えば、単独で、または他の予防および/もしくは治療的治療との組合せでインビボで投与される場合、交差中和抗体を誘発するための免疫原性ポリペプチドとして使用することができる多量体ポリペプチドが提供される。「交差中和抗体」は、系統発生グループ1のインフルエンザAウイルスの少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、4つ、もしくは5つの異なる亜型、および/または系統発生グループ2のインフルエンザAウイルスの少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、4つ、もしくは5つの異なる亜型、および/またはインフルエンザBウイルスの少なくとも2つの異なる亜型、特に、CR6261およびCR9114により中和される少なくとも全てのウイルス株を中和し得る抗体を意味する。
上記のとおり、ポリペプチドは、少なくとも2つのモノマーを含み、各モノマーは、HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメインをそれぞれ含む。結合配列は、天然HAにおいても野生型HAにおいても生じない。ある実施形態において、リンカーは、1つのアミノ酸残基、2つ以下のアミノ酸残基、3つ以下のアミノ酸残基、4つ以下のアミノ酸残基、5つ以下のアミノ酸残基、10以下のアミノ酸残基、15以下のアミノ酸残基、または20以下のアミノ酸残基または30以下のアミノ酸残基または40以下のアミノ酸残基または50以下のアミノ酸残基を含むペプチドである。具体的な実施形態において、結合配列は、G、GS、GGG、GSG、GSA、GSGS、GSAG、GGGG、GSAGS、GSGSG、GSAGSA、GSAGSAG、およびGSGSGSGからなる群から選択される配列である。
ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1C末端セグメントに直接結合しており、すなわち、ポリペプチドは、結合配列を含まない。
天然形態のインフルエンザHAは、細胞またはウイルス膜上で三量体として存在する。ある実施形態において、細胞内および膜貫通配列は、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に産生されるように除去されている。HAの分泌エクトドメインを発現させ、精製する方法は記載されている(例えば、Dopheide et al 2009;Ekiert et al 2009,2011;Stevens et al 2004,2006;Wilson et al 1981参照)。当業者は、これらの方法を本発明のステムドメインポリペプチドに直接適用して分泌(可溶性)ポリペプチドの発現を達成することもできることを理解する。したがって、これらのポリペプチドも本発明に包含される。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、細胞中での発現後に可溶性ポリペプチドが産生されるように、細胞内および膜貫通配列、例えば、HA2ドメインの514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、526、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列(配列番号1による番号付与)が除去されている。
ある実施形態において、519位からC末端アミノ酸のHA2ドメインのC末端部分が欠失されている。さらなる実施形態において、530位からC末端アミノ酸のHA2ドメインのC末端部分が欠失されている。
場合により、hisタグ配列(HHHHHH(配列番号15)またはHHHHHHH(配列番号16))を、精製目的のために(場合により、トランケートされた)HA2ドメインに場合によりリンカーを介して連結させて結合させることができる。場合により、リンカーは、精製後にhisタグを酵素的に除去するためのタンパク質分解開裂部位を含有し得る。
ある実施形態において、ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号3)をHA2のC末端において場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化される。したがって、ある実施形態において、HA2ドメインのC末端部分は、場合によりリンカーを介して連結しているアミノ酸配列GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号3)により置き換えられている。リンカーは、場合により、当業者に周知のプロトコルに従って後でプロセシングするための開裂部位を含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、タグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH(配列番号15)またはHHHHHH(配列番号16))またはFLAGタグ(DYKDDDDK)(配列番号22)またはそれらの組合せを場合により短いリンカーを介して連結させて付加することができる。リンカーは、場合により、当業者に周知のプロトコルに従って後でプロセシングするためのタンパク質分解開裂部位(の一部)、例えば、IEGR(配列番号24)(第X因子)またはLVPRGS(配列番号23)(トロンビン)を含有し得る。プロセシングされたタンパク質も本発明に包含される。
ある実施形態において、519〜565位のHA2ドメインのC末端部分が欠失されており(配列番号1による番号付与)、SGRDYKDDDDKLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHH(配列番号4)により置き換えられている。
ある実施形態において、530〜565位のHA2ドメインのC末端部分が欠失されており(配列番号1による番号付与)、SGRDYKDDDDKLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHH(配列番号4)により置き換えられている。
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する一方、ステムドメインにおいて、三量体化は三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、タンパク質安定化を増加させるための改変が必要とされる。ヘリックスCDのヘリカル傾向を強化することにより、より安定なタンパク質を作出することができる。
同時係属出願PCT/EP2014/060997号明細書に記載のポリペプチドにおいて、酵母転写アクチベータータンパク質GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号5)が419〜433位(の相当物)におけるCDヘリックス中で導入された。この配列は、ヘリカル二次構造を形成する高い傾向を有し、こうして本発明のポリペプチドの全安定性を向上させ得る。
ポリペプチドの安定性および多量体化状態が本発明のポリペプチドの一次配列中のGCN4由来配列の正確な局在および配列に依存的であることがさらに示された。
好ましい実施形態において、アミノ酸配列CMKQIEDKIEEIESK(配列番号193)が419〜433位において導入されており、または配列RMCQIEDKIEEIESKQK(配列番号194)が417〜433位において導入されている。
本発明をもたらす研究において、当業者に周知の分子生物学の技術を使用して、s74H9(配列番号65)、s127H1(配列番号66)、s71H2(配列番号71)、s86B4(配列番号67)、s115A1(配列番号70)、s2201C9(配列番号77)、s55G7(配列番号68)、s113E7(配列番号78)、s6E12(配列番号69)、s181H9(配列番号76)のポリペプチドを改変して419〜433位における配列RMKQIEDKIEEIESK(配列番号20)を含有する配列s74H9−t2(配列番号93)、s127H1−t2(配列番号91)、s71H2−t2(配列番号97)、s86B4−t2(配列番号92)、s115A1−t2(配列番号96)、s220C9−t2(配列番号99)、s55G7−t2(配列番号95)、s113E7−t2(配列番号100)、s6E12−t2(配列番号94)、s181H9−t2(配列番号98)を作出した。
類似の様式において、417〜433位における配列RMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号21)を含有するポリペプチドs74H9−t3(配列番号123)、s127H1−t3(配列番号121)、s71H2−t3(配列番号127)、s86B4−t3(配列番号122)、s115A1−t3(配列番号126)、s2201C9−t3(配列番号129)、s55G7−t3(配列番号125)、s113E7−t3(配列番号130)、s6E12−t3(配列番号124)、s181H9−t3(配列番号128)を作出した。
本発明によれば、第1の単量体の411位上のアミノ酸および第2の単量体の419位上のアミノ酸間のジスルフィド架橋が、411および419位上のアミノ酸をシステインに突然変異させることにより導入されている。したがって、ある実施形態において、アミノ酸配列CMKQIEDKIEEIESK(配列番号193)が419〜433位において導入されており、またはアミノ酸配列RMCQIEDKIEEIESKQK(配列番号194)が417〜433位において導入されている。
上記のとおり、本出願人らは、ワクチン接種個体からの一次ヒトB細胞から単離された広域中和抗体を既に同定しており、その一部はグループ1に特異的であり(例えば、国際公開第2008/028946号パンフレットに記載のCR6261)、その一部はグループ2インフルエンザウイルスに特異的であった(例えば、国際公開第2010/130636号パンフレットに記載のCR8020)。これらのモノクローナル抗体のエピトープの詳細な分析は、それらの特異的抗体の交差反応性の欠落についての理由を明らかにした。両方の場合において、異なる位置上のグループ1またはグループ2HA分子中のグリカンの存在は、抗体がグループ特異的であるという事実を少なくとも部分的に説明した。下記の多くのグループ1および2HA分子と交差反応するCR9114様抗体の同定により、ヒト免疫系がインフルエンザウイルスに対する極めて広域の中和抗体を誘発することが可能であることが明らかになった。しかしながら、毎年のワクチン摂取スキームの必要性を考慮すると、それらの抗体は、亜型H1および/またはH3の(季節性)インフルエンザウイルスによる感染後にもワクチン摂取後にも明らかに誘発されず、または極めて低い程度で誘発されるにすぎない。
本発明によれば、CR6261および/またはCR9114、および/またはCR8020の特異的エピトープを模倣し、例えば、単独で、または他の予防および/もしくは治療的治療との組合せでインビボで投与される場合、交差中和抗体を誘発するために免疫原性ポリペプチドとして使用することができる多量体ポリペプチドが提供される。「交差中和抗体」は、系統発生グループ1のインフルエンザAウイルスの少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、4つ、もしくは5つの異なる亜型、および/または系統発生グループ2のインフルエンザAウイルスの少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、4つ、もしくは5つの異なる亜型、および/またはインフルエンザBウイルスの少なくとも2つの異なる亜型、特に、CR6261および/またはCR9114、および/またはCR8020により中和される少なくとも全てのウイルス株を中和し得る抗体を意味する。
ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR6261および/またはCR9114に選択的に結合する。ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR8057に結合しない。CR6261は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;CR9114は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;CR8020は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。CR8057は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、三量体である。
ある実施形態において、ポリペプチド単量体は、アミノ酸配列:
を含み、
X
1は、E、I、K、V、A、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
2は、I、K、R、T、F、N、SおよびYからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
3は、D、F、V、Y、A、I、N、S、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
4は、I、K、R、T、E、GおよびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
5は、M、E、K、V、R、Tからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
6は、F、I、N、S、T、Y、H、およびLからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
7は、A、G、I、R、T、V、F、およびSからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
8は、F、I、N、S、T、Y、G、E、K、M,およびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
9は、H、I、L、N、R、およびSからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、ポリペプチド単量体は、アミノ酸配列:
を含み、
X
1は、E、I、K、V、A、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
2は、I、K、R、T、F、N、SおよびYからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
3は、D、F、V、Y、A、I、N、S、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
4は、I、K、R、T、E、GおよびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
5は、M、E、K、V、R、Tからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
6は、F、I、N、S、T、Y、H、およびLからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
7は、A、G、I、R、T、V、F、およびSからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
8は、F、I、N、S、T、Y、G、E、K、M、およびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
9は、H、I、L、N、R、およびSからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、ポリペプチド単量体は、アミノ酸配列:
を含み、
X
1は、E、I、K、V、A、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
2は、I、K、R、T、F、N、SおよびYからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
3は、D、F、V、Y、A、I、N、S、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
4は、I、K、R、T、E、GおよびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
5は、M、E、K、V、R、Tからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
6は、F、I、N、S、T、Y、H、およびLからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
7は、A、G、I、R、T、V、F、およびSからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
8は、F、I、N、S、T、Y、G、E、K、MおよびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
9は、H、I、L、N、R、およびSからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、ポリペプチド単量体は、アミノ酸配列:
を含み、
X
1は、E、I、K、V、A、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
2は、I、K、R、T、F、N、SおよびYからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
3は、D、F、V、Y、A、I、N、S、およびTからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
4は、I、K、R、T、E、GおよびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
5は、M、E、K、V、R、Tからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
6は、F、I、N、S、T、Y、H、およびLからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
7は、A、G、I、R、T、V、F、およびSからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
8は、F、I、N、S、T、Y、G、E、K、MおよびVからなる群から選択されるアミノ酸であり;
X
9は、H、I、L、N、R、およびSからなる群から選択されるアミノ酸である。
ある実施形態において、X1はKであり、X2はKであり、X3はFであり、X4はTであり、X5はMであり、X6はYであり、X7はIであり;X8はYであり、X9はSである。
インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、当業者に好適と考えられる任意の技術、例として、下記の技術に従って調製することができる。
したがって、本発明の免疫原性ポリペプチドは、当分野において公知の標準的方法によりDNA配列として合成し、当分野において公知の好適な制限酵素および方法を使用してクローニングし、続いてインビトロまたはインビボで発現させることができる。したがって、本発明はまた、上記のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。本発明はさらに、本発明のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターに関する。ある実施形態において、本発明による核酸分子は、ベクター、例えば、プラスミドの一部である。このようなベクターは、当業者に周知の方法により容易に操作することができ、例えば、原核および/または真核細胞中で複製し得るように設計することができる。さらに、多くのベクターは、直接的に、またはそれから単離された所望の断片の形態で真核細胞の形質転換に使用することができ、全部または一部としてそのような細胞のゲノム中に組み込まれ、所望の核酸をゲノム中に含む安定な宿主細胞をもたらす。使用されるベクターは、DNAのクローニングに好適であり、関心対象の核酸の転写に使用することができる任意のベクターであり得る。宿主細胞が使用される場合、ベクターは組込みベクターであることが好ましい。あるいは、ベクターは、エピソーム複製ベクターであり得る。
当業者は、好適な発現ベクターを選択し、本発明の核酸配列を機能的に挿入することができる。ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を得るため、発現を駆動し得る配列を、ポリペプチドをコードする核酸配列に機能的に結合させ、タンパク質またはポリペプチドを発現可能なフォーマットでコードする組換え核酸分子をもたらすことができることは当業者に周知である。一般に、プロモーター配列が、発現させるべき配列の上流に配置される。多くの発現ベクターが当分野において利用可能であり、例えば、InvitrogenのpcDNAおよびpEFベクター系、BD SciencesからのpMSCVおよびpTK−Hyg、StratageneからのpCMV−Scriptなどであり、それらを使用して好適なプロモーターおよび/または転写終結配列、ポリA配列などを得ることができる。関心対象のポリペプチドをコードする配列が、コードされるポリペプチドの転写および翻訳を支配する配列に関して適切に挿入される場合、得られる発現カセットは、関心対象のポリペプチドを産生するために有用であり、それは発現と称される。発現を駆動する配列には、プロモーター、エンハンサーなど、およびそれらの組合せが含まれ得る。これらは、宿主細胞中で機能し得、それによりそれらに機能的に結合している核酸配列の発現を駆動し得るべきである。当業者は、宿主細胞中での遺伝子の発現を得るために種々のプロモーターを使用することができることを把握する。プロモーターは、構成的または調節的であり得、種々の資源、例として、ウイルス、原核、もしくは真核資源から得ることができ、または人工的に設計することができる。関心対象の核酸の発現は、天然プロモーターもしくはその誘導体から、または完全に異種のプロモーター(Kaufman,2000)からのものであり得る。一部の周知で、真核細胞中での発現にかなり使用されるプロモーターは、ウイルス、例えば、アデノウイルスに由来するプロモーター、例えば、E1Aプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター、例えば、CMV前初期(IE)プロモーター(本発明においてCMVプロモーターと称される)(例えば、pcDNA、Invitrogenから得られる)、シミアンウイルス40(SV40)に由来するプロモーター(Das et al,1985)などを含む。好適なプロモーターは、真核細胞からも由来し得、例えば、メタロチオネイン(MT)プロモーター、伸長因子1α(EF−1α)プロモーター(Gill et al.,2001)、ユビキチンCまたはUB6プロモーター(Gill et al.,2001)、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターなどである。プロモーター機能およびプロモーターの強度についての試験は、当業者の定型事項であり、一般に、例えば、試験遺伝子、例えば、プロモーター配列後方のlacZ、ルシフェラーゼ、GFPなどのクローニング、および試験遺伝子の発現試験を包含し得る。無論、プロモーターは、その配列の欠失、付加、突然変異により変え、機能性について試験して新たな、減衰した、または改善されたプロモーター配列を見出すことができる。本発明によれば、最適な真核細胞中で高い転写レベルを付与する強力なプロモーターが好ましい。
当業者に周知の方法を使用して構築物を真核細胞(例えば、植物、真菌、酵母または動物細胞)または大腸菌(E.coli)などの好適な原核発現系中に形質移入することができる。一部の場合、好適な「タグ」配列(例えば、限定されるものではないが、his、myc、strep、またはflagタグなど)または完全タンパク質(例えば、限定されるものではないが、マルトース結合タンパク質またはグルタチオンSトランスフェラーゼなど)を本発明の配列に付加して細胞または上清からのポリペプチドの精製および/または同定を可能とすることができる。場合により、特異的タンパク質分解部位を含有する配列を含めて後でタグをタンパク質分解消化により除去することができる。
精製ポリペプチドは、当分野において公知の分光法(例えば、円偏光二色分光法、フーリエ変換赤外分光法およびNMR分光法またはX線結晶分析法)により分析してへリックスおよびベータシートなどの所望の構造の存在を調査することができる。以前に記載された広域中和抗体(CR6261、CR9114、CR8057)への本発明のポリペプチドの結合を調査するためにELISA、OctetおよびFACSなどを使用することができる。したがって、正確な立体構造を有する本発明によるポリペプチドを選択することができる。
本発明は、さらに、治療有効量の本発明のポリペプチドおよび/または核酸の少なくとも1つを含む組成物に関する。組成物は好ましくは、免疫原性組成物である。組成物は、好ましくは、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。本文脈において、用語「薬学的に許容可能な」は、担体が用いられる投与量および濃度において、それが投与される対象中で不所望な効果も有害効果も引き起こさないことを意味する。このような薬学的に許容可能な担体および賦形剤は、当分野において周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R.Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company[1990];Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins,S.Frokjaer and L.Hovgaard,Eds.,Taylor & Francis[2000];およびHandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press[2000]参照)。用語「担体」は、組成物がともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。生理食塩溶液および水性デキストローズおよびグリセロール溶液は、例えば、特に注射溶液のための液体担体として用いることができる。正確な配合は、投与の様式に適合すべきである。ポリペプチドおよび/または核酸分子は、好ましくは、滅菌溶液として配合および投与される。滅菌溶液は、滅菌濾過により、または当分野において自体公知の他の方法により調製される。次いで、溶液は、凍結乾燥または医薬投与容器中に充填することができる。溶液のpHは、一般に、pH3.0から9.5、例えば、pH5.0から7.5の範囲である。
本発明はまた、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に上記のポリペプチド、核酸分子および/または免疫原性組成物を投与することを含む方法に関する。本発明による対象は、好ましくは、感染性疾患惹起作用物質、特にインフルエンザウイルスにより感染され得、またはそうでなければ免疫応答の誘導から利益を受け得る哺乳動物であり、そのような対象は、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、フェレット、または家庭もしくは農場動物、または非ヒト霊長類、またはヒトである。好ましくは、対象は、ヒト対象である。したがって、本発明は、特にグループ1および/もしくはグループ2インフルエンザAウイルス、例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H7および/もしくはH10亜型のHAを含むインフルエンザウイルス、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に対する免疫応答を、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物を利用する対象において誘導する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物を利用して対象においてH1亜型のHAを含むインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
一部の実施形態において、誘導される免疫応答は、グループ1および/もしくはグループ2インフルエンザAウイルス亜型ならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防および/または治療するために有効である。一部の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物により誘導される免疫応答は、インフルエンザAウイルスの2、3、4、5もしくは6つの亜型および/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされるインフルエンザAおよび/またはBウイルス感染を予防および/または治療するために有効である。一部の実施形態において、誘導される免疫応答は、H1亜型のHAを含むインフルエンザウイルスにより引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防および/または治療するために有効である。
小型タンパク質および/または核酸分子は強力な免疫応答を常に有効に誘導するわけではないことが周知であるため、アジュバントを添加することによりポリペプチドおよび/または核酸分子の免疫原性を増加させることが必要であり得る。ある実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、アジュバントを含み、またはそれとの組合せで投与される。本明細書に記載の組成物との組合せ投与のためのアジュバントは、前記組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に投与することができる。好適なアジュバントの例には、アルミニウム塩、例えば、水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウム;油−エマルション組成物(または水中油型組成物)、例として、スクアレン−水エマルション、例えば、MF59(例えば、国際公開第90/14837号パンフレット参照);サポニン配合物、例えば、QS21および免疫刺激複合体(ISCOM)など(例えば、米国特許第5,057,540号明細書;国際公開第90/03184号パンフレット、国際公開第96/11711号パンフレット、国際公開第2004/004762号パンフレット、国際公開第2005/002620号パンフレット参照);細菌または微生物誘導体が含まれ、その例は、モノホスホリルリピドA(MPL)、3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)、CpG−モチーフ含有オリゴヌクレオチド、ADP−リボシル化細菌毒素またはその突然変異体、例えば、大腸菌(E.coli)熱不安定エンテロトキシンLT、コレラ毒素CT、百日咳毒素PT、または破傷風トキソイドTT、Matrix M(Isconova)である。さらに、公知の免疫強化技術、例えば、免疫応答を向上させることが当分野において公知のタンパク質(例えば、破傷風トキソイド、CRM197、rCTB、細菌性フラジェリンなど)への本発明のポリペプチドの融合またはビロソーム中へのポリペプチドの包含、またはそれらの組合せを使用することができる。使用することができる他の非限定的な例は、例えば、Coffman et al.(2010)により開示されている。
一実施形態において、本発明のインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、ウイルス様粒子(VLP)ベクター中に取り込まれる。VLPは、一般に、典型的には、ウイルスの構造タンパク質に由来するウイルスポリペプチドを含む。好ましくは、VLPは、複製し得ない。ある実施形態において、VLPは、ウイルスの全ゲノムを欠き得、またはウイルスのゲノムの一部を含み得る。一部の実施形態において、VLPは、細胞に感染し得ない。一部の実施形態において、VLPは、それらの表面上で当業者に公知のウイルス(例えば、ウイルス表面糖タンパク質)または非ウイルス(例えば、抗体またはタンパク質)標的化部分の1つ以上を発現させる。
具体的な実施形態において、本発明のポリペプチドは、ビロソーム中に取り込まれる。本発明によるポリペプチドを含有するビロソームは、当業者に公知の技術を使用して産生することができる。例えば、ビロソームは、精製ウイルスを破壊し、ゲノムを抽出し、粒子をウイルスタンパク質(例えば、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド)および脂質とリアソートさせてウイルスタンパク質を含有する脂質粒子を形成することにより産生することができる。
本発明はまた、特にワクチンとして使用される、インフルエンザHAに対する対象における免疫応答を誘導するための上記のポリペプチド、核酸、ベクターおよび/または免疫原性組成物に関する。したがって、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、またはそのような核酸を含むベクターまたは本明細書に記載のポリペプチドは、インフルエンザウイルスに対する、例えば、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのステム領域に対する中和抗体を誘発させるために使用することができる。本発明は特に、系統発生グループ1および/もしくは系統発生グループ2のインフルエンザAウイルスならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患または病態の予防および/または治療においてワクチンとして使用される上記のポリペプチド、核酸、および/または免疫原性組成物に関する。一実施形態において、ワクチンは、系統発生グループ1および/または2の2、3、4、5、6もしくはそれより多い異なる亜型ならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療において使用することができる。一実施形態において、ワクチンは、H1亜型のHAを含むインフルエンザウイルスにより引き起こされるインフルエンザ感染の予防および/または治療において使用することができる。
本発明のポリペプチドは、合成後にインビトロで、または好適な細胞発現系、例として、細菌および真核細胞中で使用することができ、またはインビボでそれが必要とされる対象中で、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を発現させることにより発現させることができる。このような核酸ワクチンは、任意の形態、例として、ネイキッドDNA、プラスミド、またはウイルスベクター、例として、アデノウイルスベクターを取り得る。
本発明によるポリペプチド、核酸分子、ベクターおよび/または免疫原性組成物の投与は、標準的な投与経路を使用して実施することができる。非限定的な例には、非経口投与、例えば、静脈内、皮内、経皮、筋肉内、皮下など、または粘膜投与、例えば、鼻腔内、経口などが含まれる。当業者は、本発明によるポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物を投与して免疫応答を誘導する種々の可能性を決定することができる。ある実施形態において、ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物(またはワクチン)は、2回以上、すなわち、いわゆる同種プライムブーストレジメンで投与される。ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物が2回以上投与されるある実施形態において、第2の用量の投与は、例えば、第1の用量の投与後1週間以上の時間間隔後、第1の用量の投与後2週間以上、第1の用量の投与後3週間以上、第1の用量の投与後1ヵ月以上、第1の用量の投与後6週間以上、第1の用量の投与後2ヵ月以上、第1の用量の投与後3ヵ月以上、第1の用量の投与後4ヵ月以上など、ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物の第1の用量の投与後数年まで実施することができる。ワクチンを第1のプライミング投与後に2回以上のブースト投与が続くように3回以上、例えば、3回、4回など投与することも可能である。他の実施形態において、本発明によるポリペプチド、核酸分子、ベクターおよび/または組成物は、1回のみ投与される。
ポリペプチド、核酸分子、ベクターおよび/または組成物は、プライムまたはブーストのいずれかとして、異種プライム−ブーストレジメンで投与することもできる。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または組成物を利用して対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防および/または治療する方法をさらに提供する。具体的な実施形態において、対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防および/または治療する方法は、それが必要とされる対象に有効量の上記のポリペプチド、核酸分子、ベクターおよび/または組成物を投与することを含む。治療有効量は、グループ1もしくは2インフルエンザAウイルス、および/またはインフルエンザBウイルスによる感染から生じる疾患または病態、特にH1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルス、および/またはH3亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスの感染により引き起こされる疾患の予防、改善および/または治療に有効な本明細書に定義のポリペプチド、核酸、および/または組成物の量を指す。予防は、インフルエンザウイルスの拡散の阻害もしくは低減またはインフルエンザウイルスによる感染に伴う症状の1つ以上の発症、発現もしくは進行の阻害もしくは低減を包含する。本明細書において使用される改善は、可視もしくは知覚疾患症状、ウイルス血症、または任意の他の計測可能なインフルエンザ感染の症候の低減を指し得る。
治療が必要とされる者には、グループ1もしくはグループ2インフルエンザAウイルス、またはインフルエンザBウイルスによる感染から生じた病態により既に苦痛を受ける者、およびインフルエンザウイルスによる感染を予防すべき者が含まれる。したがって、本発明のポリペプチド、核酸分子、ベクターおよび/または組成物は、未投薬の対象、すなわち、インフルエンザウイルス感染により引き起こされる疾患を有さない、もしくはインフルエンザウイルス感染により感染されたことがなく、現在も感染されていない対象、またはインフルエンザウイルスにより既に感染され、および/または感染されたことのある対象に投与することができる。
一実施形態において、予防および/または治療は、インフルエンザウイルス感染を受けやすい患者群において標的化することができる。このような患者群には、限定されるものではないが、例えば、高齢(例えば、≧50歳、≧60歳、好ましくは、≧65歳)、若年(例えば、≦5歳、≦1歳)、入院患者および抗ウイルス化合物により治療されたが、不適切な抗ウイルス応答を示した患者が含まれる。
別の実施形態において、ポリペプチド、核酸分子および/またはベクターは、対象に1つ以上の他の活性剤、例えば、既存または将来のインフルエンザワクチン、モノクローナル抗体および/または抗ウイルス剤、および/または抗菌剤、および/または免疫調節剤との組合せで投与することができる。1つ以上の他の活性剤は、インフルエンザウイルス疾患の治療および/または予防において有益であり得、またはインフルエンザウイルス疾患に伴う症状または病態を改善し得る。一部の実施形態において、1つ以上の他の活性剤は、鎮痛剤、抗発熱薬、または呼吸を緩和もしくは補助する治療物である。
本発明のポリペプチドおよび/または核酸分子の投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整することができる。好適な投与量範囲は、例えば、0.1〜100mg/kg体重、好ましくは、1〜50mg/kg体重、好ましくは、0.5〜15mg/kg体重であり得る。用いるべきポリペプチドおよび/または核酸分子の正確な投与量は、例えば、投与経路、および感染またはそれにより引き起こされる疾患の重症度に依存し、医師の判断および各対象の状況に従って決定すべきである。例えば、有効用量は、患者の標的部位、生理学的状態(例として、年齢、体重、健康)に応じて変動し、治療が予防的または治療的であるかを問わない。通常、患者は、ヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例として、トランスジェニック哺乳動物を治療することもできる。治療投与量は、安全性および効力を最適化するように最適に力価測定される。
本発明のポリペプチドは、潜在的な治療候補物として同定されたモノクローナル抗体の結合を確認するために使用することもできる。さらに、本発明のポリペプチドは、診断ツールとして、例えば、本発明のポリペプチドに結合し得るそのような個体の血清中の抗体が存在するか否かを確認することにより個体の免疫状態を試験するために使用することができる。したがって、本発明はまた、患者におけるインフルエンザ感染の存在を検出するインビトロ診断法であって、a)前記患者から得られた生物学的試料を本発明によるポリペプチドと接触させるステップ;およびb)抗体−抗原複合体の存在を検出するステップを含む方法に関する。
本発明のポリペプチドは、新たな結合分子を同定するため、または既存の結合分子、例えば、モノクローナル抗体および抗ウイルス剤を改善するために使用することもできる。
本発明を以下の実施例および図面においてさらに説明する。実施例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。
実施例1:PCT/EP2014/060997号明細書に開示されるステムベースポリペプチド
PCT/EP2012/073706号明細書は、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド、組成物およびワクチンならびにインフルエンザの予防および/または治療の分野におけるそれらの使用方法を開示している。PCT/EP2014/060997号明細書は、H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号2)の部位特異的突然変異により得られ、CR6261(Throsby et al,2009;Ekiert et al 2010)および/またはCR9114の広域中和エピトープをさらに安定的に提示したH1N1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)の全長HAに由来するステムドメインポリペプチドのさらなる配列を開示している。
H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号2)は、H1N1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)の全長HAから以下のステップを利用することにより導いた:
1.HA0の開裂部位を除去すること。この部位における野生型HAの開裂は、HA1およびHA2をもたらす。除去は、P1位におけるRからQへの突然変異により達成することができる(例えば、開裂部位(配列番号1の343位)の命名法の説明については、Sun et al,2010参照)。
2.配列番号1からアミノ酸53から320を欠失させることにより頭部ドメインを除去すること。配列の残りのNおよびC末端部分は、4残基フレキシブルリンカーGGGGにより結合させた。
3.H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)中の残基402から418(の相当物)により形成されるループ(AへリックスおよびCDへリックス間)の溶解度を増加させて融合前立体構造の安定性を増加させ、改変HAの融合後立体構造を脱安定化させること。H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号2)において、突然変異F406S、V409T、F413GおよびL416S(番号付与は、配列番号1を指す)を導入した。
4.H1A/Brisbane/59/2007中の324および436位におけるアミノ酸間のジスルフィド架橋を導入すること;これは、突然変異R324CおよびY436C(番号付与は、配列番号1を指す)を導入することにより達成される。
5.三量体化することが公知のGCN4由来配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号5)を419〜433位(番号付与は配列番号1を指す)において導入すること。
ある実施形態において、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に産生されるように、膜貫通および細胞内ドメインの配列は、HA2の514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(または配列アラインメントから決定してその相当物)からHA2のC末端(配列番号1による番号付与)まで欠失されている。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、foldon配列GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号3)を、場合により上記の短いリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化させた。リンカーは、場合により、当業者に周知のプロトコルに従って後でプロセシングするための開裂部位を含有し得る。可溶性形態の精製および検出を容易にするため、タグ配列、例えば、ヒスチジンタグ(HHHHHHH(配列番号20)またはHHHHHH(配列番号21)またはFLAGタグ(DYKDDDDK;配列番号22)またはそれらの組合せを場合により短いリンカーを介して連結させて場合により付加することができる。リンカーは、場合により、当業者に周知のプロトコルに従って後でプロセシングするためのタンパク質分解開裂部位(の一部)、例えば、LVPRGS(配列番号23)(トロンビン)またはIEGR(配列番号24)(第X因子)を含有し得る。プロセシングされたタンパク質も本発明に包含される。
FLAGタグ、トロンビン開裂部位、foldon、およびHis配列を組み合わせるこのようなC末端配列の一例は、配列番号4のFLAG−thrombin−foldon−Hisである。この配列をH1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号2)配列の可溶性形態と組み合わせて親配列(配列番号6)を作出し、それを使用して突然変異導入により本発明の新規ポリペプチドを作出した。この配列は、配列番号1および2のアミノ酸1〜17に対応するリーダー配列を含有しない。
したがって、ステムドメインポリペプチドは、PCT/2012/073706号明細書および上記に記載のとおり分子の頭部ドメインをコードするヘマグルチニン配列の一部を欠失させ、配列のNおよびC末端部分を欠失の両側でリンカーを介して再連結させることにより作出した。頭部ドメインの除去は、水性溶媒から既に保護された分子の一部を曝露されたままとし、本発明のポリペプチドの構造を潜在的に脱安定化させる。この理由のため、Bループ中の残基(特にアミノ酸残基406(配列番号1および2のそれぞれFおよびS)、409(VおよびT)413(FおよびG)および416(LおよびS)を、親配列の配列番号6を出発点として使用して種々の組合せにおいて突然変異させた。配列番号6は、H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号2)から、リーダー配列を除去し、残基520〜565をFlag−thrombin−foldon−−his配列(配列番号4)により置き換えることにより作出した。
同様に、融合ペプチド周辺の区域において、多数の疎水性残基が溶媒に曝露され、このことは、天然全長HAとは異なり、ポリペプチドが開裂され得ず、タンパク質内部に疎水性融合ペプチドを埋め込む関連立体構造変化を受ける事実により引き起こされる。この問題に対処するため、配列番号2の残基I337、I340、F352およびI353の一部または全部も突然変異させた。
このように、HAステムポリペプチドの可溶性形態74H9(配列番号57)、127H1(配列番号55)、71H2(配列番号61)、86B4(配列番号56)、115A1(配列番号60)、2201C9(配列番号63)、55G7(配列番号59)、113E7(配列番号64)、6E12(配列番号58)、181H9(配列番号62)をライブラリの一部として作出した。
当業者に周知のプロトコルを使用して上記ポリペプチドをコードするDNA配列をピキア・パストリス(Pichia pastoris)中に形質転換させ、またはHEK293F細胞中に形質移入した。哺乳動物細胞中の発現に使用される構築物は、HAリーダー配列(配列番号1および2の残基1〜17)を含有した一方、ピキア・パストリス(P.pastoris)中の発現に使用される構築物において、HAリーダー配列を酵母アルファ因子リーダー配列(配列番号7)により置き換えた。このように発現タンパク質を細胞培養培地に指向させ、したがって、本発明のポリペプチドのさらなる精製なしで結合および発現の決定を可能とした。全ての配列は、FLAG−foldon−HIS C末端配列(配列番号4)を含有した。
本発明のポリペプチドへのモノクローナル抗体結合(CR6261、CR9114、CR8020)は、ELISAにより決定した。この目的のため、ELISAプレートを2μg/mlのモノクローナル抗体溶液(20μl/ウェル)により4℃において一晩処理した。抗体溶液の除去後、残留表面を脱脂粉乳のPBS中4%溶液により室温において少なくとも1時間ブロッキングした。プレートを洗浄した後、20μlの細胞培養培地(無希釈または希釈)をそれぞれのウェルに添加し、室温において少なくとも1時間インキュベートした。次いで、ELISAプレートを洗浄し、20μlの抗FLAG−HRP抗体溶液(Sigma A8952、PBS−Tween中4%の脱脂粉乳中2000倍希釈)を添加した。インキュベーション(室温において1時間)後、プレートを再度1回洗浄し、20μlの発光基質(Thermoscientific C#34078)を添加してシグナルを発現させた。あるいは、比色検出法を使用してシグナルを発現させることができる。
本発明のポリペプチドの発現は、均一性時間分解蛍光アッセイ(一般的記載について、例えば、Degorce et al.,Curr.Chem.Genomics 2009 3:22−32参照)から決定することができる。この目的のため、テルル(Tb)標識抗FLAGモノクローナル抗体(ドナー)およびAlexa488標識抗Hisモノクローナル抗体(アクセプター)の混合物(HTRF溶液)は、210.5μlの抗FLAG−TB(原液26μg/ml)および1.68mlの抗HIS−488(原液50μg/ml)を培養培地および50mMのHEPES+0.1%のBSAの80mlの1対1混合物に添加することにより調製した。19μlのHTRF溶液をELISAプレートのそれぞれのウェルに添加し、1μlの培養培地を添加した。励起時および他の化合物(タンパク質、培地構成要素など)から生じる短期寿命バックグラウンドシグナルの減衰を可能にするための遅延後、520および665nmにおける蛍光発光の比を決定した。これは、試料中の総タンパク質含有率の尺度であり、異なる実験間のmAb結合シグナルを正規化するために使用する。
当業者に周知のプロトコルに従って表3および4に列記されるポリペプチドをピキア・パストリス(P.Pastoris)中で発現させた。培養培地を回収し、ステムドメインポリペプチドのCR6261結合への結合および発現を上記のとおり決定した。結合アッセイにおける応答は発現タンパク質の濃度に対応するため、それぞれの発現配列についてのHTRFアッセイにおけるシグナルに対する結合シグナルの比を比較することによりELISA結合シグナルをタンパク質発現について正規化した。全ての発現タンパク質は、配列番号6の親配列と比較して高いHTRFシグナルとCR626結合との比を示す。
さらに、CR6261結合とHTRFシグナルとの比を計算し、親配列の配列番号6について計算された比と比較した。結果を表3および4の第5列に列記し;全ての発現タンパク質は、より高い比を示し、上記ステムポリペプチドがCR6261の結合の増加を示すことを示す。
実施例2:さらなるポリペプチドの設計および特性決定
上記ポリペプチドは、CDヘリックス中で酵母転写因子アクチベータータンパク質GCN4に由来する配列RMKQIEDKIEEIESKQを含有する。この配列は、ヘリカル二次構造を形成する高い傾向を有し、こうして本発明のポリペプチドの全安定性を向上させ得る。驚くべきことに、ヘマグルチニンステムポリペプチドの安定性および凝集状態は、ポリペプチドの一次配列中のGCN4由来配列の正確な局在および配列に依存的であることが見出された。
本実施例において、本発明者らは、配列RMKQIEDKIEEIESK(配列番号20)が419〜433位(配列番号1による番号付与;例えば、配列番号81から110)において導入されており、または配列RMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号21)が417〜433位(例えば、配列番号111から140)において導入されている新規のポリペプチドのセットを記載する。
この目的のため、当業者に周知の分子生物学の技術を使用して実施例1に記載のポリペプチド、すなわち、74H9(配列番号57)、127H1(配列番号55)、71H2(配列番号61)、86B4(配列番号56)、115A1(配列番号60)、2201C9(配列番号63)、55G7(配列番号59)、113E7(配列番号64)、6E12(配列番号58)、181H9(配列番号62)を改変して419〜433位における配列RMKQIEDKIEEIESK(配列番号20)を含有する配列74H9−t2(配列番号83)、127H1−t2(配列番号81)、71H2−t2(配列番号87)、86B4−t2(配列番号82)、115A1−t2(配列番号86)、220C9−t2(配列番号89)、55G7−t2(配列番号85)、113E7−t2(配列番号90)、6E12−t2(配列番号84)、181H9−t2(配列番号88)を作出した。
類似の様式において、417〜433位における配列RMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号21)を含有する配列74H9−t3(配列番号113)、127H1−t3(配列番号111)、71H2−t3(配列番号117)、86B4−t3(配列番号112)、115A1−t3(配列番号116)、2201C9−t3(配列番号119)、55G7−t3(配列番号115)、113E7−t3(配列番号120)、6E12−t3(配列番号114)、181H9−t3(配列番号118)を作出した。
ポリペプチドは、異なるウイルス株からのHA分子の配列に基づき作出することもできる。例えば、配列番号195〜201は、H1N1A/California/07/09株のHA配列をベースとするポリペプチドを記載する。
上記のとおり、可溶性ポリペプチドは、例えば、HA2ドメインの残基514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、526、528、529、または530からHA2ドメインのC末端(配列番号1による番号付与)のHAベース配列のC末端部分を除去することにより作出することができる。
ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号3)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化させることができる。リンカーは、場合により、当業者に周知のプロトコルに従って後でプロセシングするための開裂部位を含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、タグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH(配列番号15)もしくはHHHHHH(配列番号16))またはFLAGタグ(DYKDDDDK)(配列番号22)またはそれらの組合せを場合により短いリンカーを介して連結させて付加することができる。リンカーは、場合により、当業者に周知のプロトコルに従って後でプロセシングするためのタンパク質分解開裂部位(の一部)、例えば、IEGR(配列番号24)(第X因子)またはLVPRGS(配列番号23)(トロンビン)を含有し得る。
配列番号55〜64および81〜90のポリペプチドの可溶性形態は、残基519〜565(番号付与は配列番号1を指す)の相当物を、改変トロンビン開裂部位および6ヒスチジンタグ(配列番号21)の両方を含有する配列RSLVPRGSPGHHHHHHにより置き換えることにより作出し、当業者に周知のプロトコルに従ってHEK293F細胞中で発現させた。
比較のため、PCT/EP2012/073706号明細書に記載のH1−mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号52)およびH1−mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号53))の可溶性形態も実験に含めた。培養培地を回収し、CR6261、CR9114への結合は、サンドイッチELISAにより、培養培地から直接ポリペプチドを捕捉するためのコートmAbのCR6261またはCR9114および検出目的のためのC末端hisタグに対して指向されるセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗体を使用して検出した。あるいは、ビオチン化CR9114をHRPコンジュゲートストレプトアビジンとの組合せで、サンドイッチELISAにおけるCR9114により捕捉されたポリペプチドの検出に使用した。このフォーマットは、ポリペプチドの多量体形態の存在の検出を可能とする。試験された全てのポリペプチドは、ELISAにより決定されたとおり、CR9114およびCR6261に結合し得た。CR9114捕捉−ビオチン化CR9114検出サンドイッチELISAにより検出された多量体のレベルの増加が、s55G7−t2(配列番号95)、s86B4−t2(配列番号92)、s115A1−t2(配列番号96)、s127H1−t2(配列番号91)、s113E7−t2(配列番号100)、s220C9−t2(配列番号99)、s71H2−t3(配列番号127)、s127H1−t3(配列番号121)、s74H9−t3(配列番号123)について観察された。
さらなる特性決定のためにポリペプチドの高度に純粋な調製物を得るため、HEK293F細胞に、127H1−t2(配列番号81)、86B4−t2(配列番号82)および55G7−t2(配列番号85)の可溶性形態をコードする遺伝子を含有する発現ベクターpcDNA2004を形質移入した。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(配列番号1のアミノ酸1〜17に対応)が分泌最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。
ポリペプチドの生成のため、HEK293F細胞(Invitrogen)を300gにおいて5分間スピンダウンさせ、SF1000フラスコを介して300mLの予備加温Freestyle(商標)培地中で再懸濁することにより1.0*106vc/mLを播種した。この培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO2、110rpmにおいて1時間インキュベートした。1時間後、プラスミドDNAを9.9mLのOptimem培地中で300mLの培養容量中1.0μg/mLの濃度にピペッティングした。並行して、440μLの293fectin(登録商標)を9.9mLのOptimem培地中でピペッティングし、室温において5分間インキュベートした。5分後、プラスミドDNA/Optimem混合物を293fectin(登録商標)/Optimem混合物に添加し、室温において20分間インキュベートした。インキュベーション後、プラスミドDNA/293fectin(登録商標)混合物を細胞懸濁液に滴加した。形質移入培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO2および110rpmにおいてインキュベートした。7日目、細胞を培養培地から遠心分離(3000gにおいて30分間)により分離した一方、可溶性ポリペプチドを含有する上清をさらなる処理のために0.2μmボトルトップフィルター上で濾過した。
精製目的のため、1500ml(s127H1_t2)、1800ml(s86B4_t2)、および2400ml(s55G7_t2)の培養上清を、洗浄緩衝液(20mMのTRIS、500mMのNaCl、pH7.8)中で予備平衡化された24mlのNi Sepharose HPカラムにアプライした。洗浄緩衝液中10mMのイミダゾールによる洗浄ステップ後、結合したポリペプチドを、洗浄緩衝液中300mMのイミダゾールの段階的勾配により溶出させた。溶出ピークを回収し、濃縮し、さらなる精製のためにサイズ排除カラム(Superdex 200にアプライした。55G7−t2および127H1−t2について、分画を回収し、プールし、SDS−PAGE)、ELISAおよび分析サイズ排除クロマトグラフィーと多角度光散乱との組合せ(SEC−MALS)により分析して分子質量を推定した。ELISA結果は、CR6261およびCR9114へのポリペプチドの結合を裏付けたが、CR8020への結合は裏付けなかった。SEC−MALS結果を表9にまとめる。
表8は、ポリペプチドs127H1−t2が55G7−t2および86B4−t2と比較して高い収量(1lの培養上清当たり約30mgのタンパク質)を有することを示す。タンパク質の大多数は、単量体または二量体について予測されるものの間である62kDaの分子量を示す。タンパク質の凝集状態を裏付けるため、SEC−MALS実験を、CR6261、CR9114およびCR8020に由来するFab断片の存在下で繰り返した。結果を表8にまとめる。
結果は、ポリペプチドの可溶性形態s127H1−t2が、CR6261およびCR9114からのFab断片の存在下で複合体(SECクロマトグラム中のピークのシフトにより証明)を形成することを示すが、CR8020からのFab断片の存在下では示さない。これは、Fab断片の結合反応の特異性と一致する。それというのも、CR6261およびCR9114はグループ1に由来するHAに結合する一方、CR8020は結合しないためである。複合体のサイズを表sに列記し、これは、ポリペプチドs127H1−t2が1から2つのFab断片に結合することを示し、精製ポリペプチドs127H1−t2の集団の少なくとも一部が二量体形態であることを示す。
ポリペプチド127H1−t2とmAbのCR6261およびCR9114との間の結合反応をさらに分析するため、ならびにCR6261およびCR9114の立体構造エピトープの存在を裏付けるため、精製タンパク質とのそれらの抗体の複合体化をバイオレイヤー干渉法(Octet Red384,Forte Bio)により試験した。この目的のため、ビオチン化CR6261、CR9114およびCR8020をストレプトアビジンコートセンサ上に固定化し、続いてそれを最初に精製されたポリペプチドの溶液に曝露させて会合速度を計測し、次いで洗浄溶液に曝露させて解離速度を計測した。
固定化CR6261およびCR9114は、両方とも、127H1−t2の可溶性形態への曝露後の明らかな応答により証明されるとおり、認識する。まとめると、ポリペプチドs127H1−t2は多量に産生され、広域中和モノクローナル抗体CR6261およびCR9114に高い親和性で結合し得、このステムドメインポリペプチド中の対応中和エピトープの存在を裏付ける。ポリペプチドは、二量体構造を形成する傾向を有する。
実施例3:本発明のジスルフィド安定化三量体
ワクチン中の免疫原上の中和エピトープの提示を改善するための1つの手法は、単量体免疫原間の追加の相互作用を遺伝子操作して単量体と比較して増加した溶解度を有する多量体種を作出することである。この方法の欠点は、単量体免疫原を一緒にすることにより、重要なエピトープが次のプロモーターにより潜在的にカバーされ得ることである。したがって、これを回避するように留意すべきである。
本明細書に記載の本発明のポリペプチドは、インフルエンザのヘマグルチニン分子に由来する。この分子は、ウイルス膜上の天然状態の三量体である。ここで、本発明者らは、溶液中で安定な三量体を形成する一方、中和mAbのCR6261およびCR9114のエピトープを曝露させる本発明の改変ポリペプチドを記載する。
本発明の三量体ポリペプチドを生成するため、HAステムベースポリペプチドの単量体種の三量体化を促進する安定化相互作用を設計し、特に、三量体中の個々の単量体間の共有結合ジスルフィド架橋の作出にフォーカスした。この目的のため、未開裂状態のH1N1A/South Carolina/1./18(PDB 1RD8)およびH1N1A/California/04/2009(PDB:3LZG)からのFL HAの三次元構造を分析して別の単量体の近接性およびタンパク質の立体構造特徴部が単量体間ジスルフィド架橋の形成を潜在的に可能とし得る区域を同定した。残基間距離が3.5Å未満である残基の11のペアを同定した(表9)。それぞれのペアについて、残基を三量体構造中の異なるプロモーター(単量体)上で局在させることを確保するように留意した。ジスルフィド架橋の形成を介して共有結合している三量体ポリペプチドを形成する意図で、ポリペプチド127H1−t2(配列番号160から170および55G7−t2(配列番号149〜159)中のそれらの残基の相当物(配列アラインメントから決定)をシステインに突然変異させた。三量体HA分子の3回対称性を考慮して、良好な設計が、三量体中の単量体のそれぞれを2つの他の単量体に共有結合する3つのプロモーター間ジスルフィド架橋の形成をもたらす。
設計されたジスルフィド架橋ならびにCR9114およびCR6261の中和エピトープの存在を試験するため、設計されたポリペプチドの可溶性形態をHEK293F細胞中で発現させた。可溶性形態は、配列番号149から170から残基530〜565(番号付与は、配列番号1を指す)の相当物を欠失させてポリペプチド配列番号171から192を作出することにより作出した。追加の配列EGRHHHHHHH(配列番号19)をC末端において付加し、事実上、精製および/または検出を支援するために第X因子タンパク質分解開裂部位を先にして7ヒスチジン精製タグを導入した。
ポリペプチドを産生するため、HEK293F細胞(Invitrogen)を300gにおいて5分間スピンダウンし、SF250フラスコ当たり30mLの予備加温Freestyle(商標)培地中で再懸濁させることにより、1.0*106vc/mLを播種した。この培地をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO2、110rpmにおいて1時間インキュベートした。1時間後、プラスミドDNAを1mLのOptimem培地中で、30mLの培養容量で1.0μg/mLの濃度にピペッティングした。並行して、44μLの293fectin(登録商標)を1mLのOptimem培地中でピペッティングし、室温において5分間インキュベートした。5分後、プラスミドDNA/Optimemミックスを293fectin(登録商標)/Optimemミックスに添加し、室温において20分間インキュベートした。インキュベーション後、プラスミドDNA/293fectin(登録商標)ミックスを細胞懸濁液に滴加した。形質移入培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO2および110rpmにおいてインキュベートした。7日目において、細胞を遠心分離(3000gにおいて30分間)により培養培地から分離した一方、本発明の可溶性ポリペプチドを含有する上清を、さらなる処理のために0.2μmボトルトップフィルター上で濾過した。
培養培地を回収し、広域中和抗体CR9114の2つ以上のエピトープを提示するポリペプチドの多量体形態の存在についてサンドイッチELISAにおいて分析した。最初に、CR9114コートプレートを使用して培養培地から発現ポリペプチドを直接捕捉した。第2に、ビオチン化CR9114をHRPコンジュゲートストレプトアビジンとの組合せで本発明のCR9114捕捉ポリペプチドの検出に使用した。対照として、三量体および単量体形態のH1N1A/Brisbane/59/2007からの可溶性精製全長HAを、アッセイに含めた(図2A)。結果を図2に示す。
三量体全長HAは、低希釈率において明らかなシグナルを示すが、約0.0001μg/ml以下の濃度においてこのシグナルはもはや検出可能でない(図2A)。単量体全長HAについて、シグナルは低希釈率においても観察されるが、強度はかなり低く、シグナルは約0.02μg/ml以下においてもはや検出可能でない。シグナルは、精製の間に単量体から分離することができず、または経時的に単量体から形成した一部の残留三量体により引き起こされる可能性が最も高い。H1mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号52)(図2A)および127H1(配列番号55)図2Bの可溶性形態のみが、低い強度シグナルを示し、溶液中でCR9114のエピトープを示す多量体ポリペプチドの低濃度または不存在を示す。127H1−t2(配列番号81)の可溶性形態、図2Bは、このアッセイにおいて明らかな応答を示し、一部の多量体種の存在を示すが、観察されたシグナルの強度は、全長HA三量体と比較して低い。
追加の導入システインを有する55G7−t2をベースとする可溶性ポリペプチドについての結果を図2Cに示す。ほとんどのペプチドについて、シグナルが観察されず、または極めて低いシグナルが観察されるにすぎず、CR9114のエピトープを提示する多量体種が培養培地中に存在しないことを示す。明らかな例外は、ポリペプチドs55G7−t2−cl18long(配列番号175;追加のシステインを411および419位において導入;番号付与は配列番号1を指す)である。検出可能な応答を示す唯一の他のポリペプチドはs55G7−t2−cl14long(配列番号171;追加のシステインを423および424位において導入)であるが、シグナルはより低く、より低い希釈率において消失する。
127H1−t2をベースとするポリペプチドについての結果を図2Dに示す。この場合において、明らかな応答は、ポリペプチドs127H1−t2−cl14long(配列番号182;423および424位における追加のシステイン)、s127H1−t2−cl15long(配列番号183;430および431における追加のシステイン)、s127H1−t2−cl17long(配列番号185;405および429における追加のシステイン)、およびs127H1−t2−cl24long(配列番号191;344および467における追加のシステイン)について、ならびにより小程度でs127H1−t2−cl19long(配列番号187;38および390における追加のシステイン)およびs127H1−t2−cl23long(配列番号190;342および460における追加のシステイン)について観察される。低いが、検出可能な応答は、s127H1−t2−cl16long(配列番号184;404および433における追加のシステイン)について観察される。しかしながら、55G7−t2の場合と同様、最良の結果は、411および419位において導入された追加のシステインを有するバリアントs127H1−t2−cl18long(配列番号186)について得られる。
追加のシステインを有する本発明のポリペプチドをさらに特性決定するため、当分野において十分確立されたプロトコルを使用して培養上清をウエスタンブロットにより分析した。検出目的のため、H1N1(A/California/04/2009)のHAタンパク質に対して指向されるポリペプチド抗体を使用した。非還元条件下の三量体について、すなわち、ジスルフィド架橋がインタクトである場合、約90kDa以上におけるタンパク質バンド(グリコシル化の程度に依存する)が予測される一方、還元条件下では35kD(本発明のグリコシル化単量体ポリペプチドに対応する)に近いバンドが予測される。結果を図3AおよびBに示す。還元条件下の追加のシステインを含有する55G7−t2のバリアントについて、強力なシグナルが、s55G7−t2−cl18longおよびs55G7−t2−cl22long、およびより小程度でs55G7−cl14longについて観察される。非還元条件下、100kDaを超える異なるサイズのタンパク質のスメアがs55G7−t2−cl18longおよびs55G7−t2−cl22longについて観察され、共有結合架橋ステムドメインポリペプチドがそれらの試料中で存在することを示す。スメアは、s55G7−cl14longについても観察されるが、強度は、s55G7−cl18およびs55G7−cl22について観察されるものよりも低い。
還元条件下の127H1−t2に由来する追加のシステイン含有ポリペプチドのウエスタンブロットについての結果(図3C)は、s127H1−t2−cl14long、s127H1−t2−cl15long、s127H1−t2−cl16long、s127H1−t2−cl17long、およびs127H1−t2−cl18longについての強力なシグナルを示す。s127H1−t2−cl17longおよびs127H1−t2−cl18longについて、100kDaに近い規定タンパク質バンドが非還元条件下で観察され(図3D)、共有結合架橋ステムドメインポリペプチドの存在を示す。ポリペプチドs127H1−t2−cl14longおよびs127H1−t2−cl15longもウエスタンブロット上でほぼ100kDaのいくぶんの強度を示すが、シグナルはs127H1−t2−cl17long、および特にs127H1−t2−cl18longほど強力でない。この構築物中のジスルフィド架橋(cl18)は、図4に示されるとおりある単量体のBループを別の単量体のCDヘリックスの上部に連結し、55G7−t2および127H1−t2のバックグラウンドにおいて両方で最も強力な結果を与える。
Lu et al(PNAS 2013)は、複数の単量体間ジスルフィド架橋を含有するHAステムドメインポリペプチドを記載する。これらの構築物は、大腸菌(E.coli)ベース無細胞系中で産生され、本明細書に記載のタンパク質と対照的に、未フォールドタンパク質であり、リフォールドする必要がある。Lu et alによるステムベースポリペプチドは、C末端におけるfoldon三量体化ドメインを含有し、単量体は複数のジスルフィド結合を介して共有結合している。記載のジスルフィド結合は、foldon三量体化ドメイン中またはHAステムポリペプチドのHA由来部分中のいずれかに局在する。423および424位(クラスター14)ならびに430および431位(クラスター15)におけるシステインを含むポリペプチドのHA由来部分中の4つの潜在的なジスルフィド結合が記載される。記載のステムドメインポリペプチドにおいて、430および431位(クラスター15)におけるシステインで最良の結果が得られたが、423および424位(クラスター14)におけるシステインについて三量体化を観察することもできた。両方の場合において、追加のジスルフィド架橋がC末端foldonドメイン中に存在した。驚くべきことに、ここの結果は、ジスルフィド結合C末端三量体化ドメインの不存在下で、411および419位におけるシステインを介して2つの異なる単量体を共有結合する遺伝子操作されたジスルフィドが、より多量の三量体ステムドメインポリペプチドをもたらすことを示す。まとめると、本発明者らは、戦略的に配置されたジスルフィドペアの導入がHAステムベースポリペプチドの多量体化をもたらし得ることを示した。特に、411および419位(クラスター18)におけるシステインの同時導入は、ウエスタンブロットおよびサンドイッチElisa結果から証明されるとおり溶液中の多量体種の形成をもたらす。
実施例4:本発明の三量体ポリペプチドの精製および特性決定
本発明のポリペプチド127H1−t2−cl18をさらに特性決定するため、タンパク質を精製した。精製を容易にするため、タンパク質のC末端における膜貫通および細胞質ドメインを上記のとおり除去してタンパク質の可溶性形を作出することができる。産生の間のタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(配列番号1のアミノ酸1〜17に対応)が分泌最終ポリペプチド中で存在しないことが当業者により理解される。本発明の可溶性ポリペプチドの非限定的な例は、s127H−t2−cl18long(配列番号186)である。
本発明のポリペプチドの高度に純粋な調製物を得るため、当分野において十分に確立されたプロトコルに従って、HEK293F細胞に追加のC末端hisタグ配列(EGRHHHHHHH)を含有する本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18long(配列番号186)をコードする遺伝子を含有する発現ベクターpcDNA2004を形質移入し、7日間培養した。精製目的のため、300mlの培養上清を、洗浄緩衝液(20mMのTRIS、500mMのNaCl、pH7.8)中で予備平衡化された5mlのHis捕捉カラムにアプライした。洗浄緩衝液中10mMのImidazeによる洗浄ステップ後、本発明の結合ポリペプチドを洗浄緩衝液中300mMのイミダゾールの段階勾配により溶出させた。溶出ピークを回収し、緩衝液交換し、濃縮し、さらなる精製のためにサイズ排除カラム(Superdex 200)にアプライした。溶出プロファイルを図5Aに示し、図に示されるとおり分画1〜4を回収し、SDS−PAGE(図5B)、ネイティブPAGE(図5C)およびウエスタンブロット(図5D)により分析した。
非還元条件下、SDS PAGEは、本発明の共有結合三量体ポリペプチドについて予測される100および150kD間の分画2および3についての明らかなバンドを示す一方、分画4は、本発明の単量体ポリペプチドについて予測されるサイズに近いほぼ37kDに集中する拡散バンドを示す。サイズ変動は、ポリペプチドのグリコシル化の程度の変動からの結果であり、HAに由来する他のステムドメインポリペプチドについて観察された。ジスルフィド架橋の還元時、分画3中の主要バンドは、分画4について観察されたバンドに極めて類似する約37kDにシフトし、還元が単量体化をもたらすことを示す。分画2について、シフトを明確に識別することができない。分画1は、明らかな主要バンドを有さない一連のサイズのタンパク質を示す。
ネイティブPAGE(非還元条件)は、分画3および4中のタンパク質間の明らかなサイズ差を示し、主要バンドはそれぞれ146〜240kDおよび66kD未満である。分画2について、146および240kD間の弱いシグナルが観察される一方、分画1について、おそらく大きな凝集物の形成に起因してタンパク質を検出することができない。
検出のためのポリクローナル抗Hisを使用するウエスタンブロットデータ(非還元条件)は、分画3中の主要バンドがヒスチジンタグ化材料であることを裏付ける。それというのも、明らかなバンドが100および150kD間に観察されるためである。分画2について、弱いシグナルが三量体のほぼ予測サイズで観察されるが、より高次のオリゴマーも検出される一方、分画4について、弱く拡散したシグナルがほぼ37kDで観察される。これらのデータは、分画2、3および4中の主要バンドがH1HAに由来することを裏付ける。分画1中のタンパク質については、シグナルが観察されなかった。
ELISAにより、抗Hisタグモノクローナル抗体のコーティングを使用して本発明のhisタグ化ポリペプチドを捕捉してCR6261、CR9114およびCR8020の中和エピトープの存在を決定した。試験下のmAbの結合後、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしている二次抗体を検出に使用した。対照として、単量体および三量体全長H1HA(抗原)ならびにH1HAに対して指向されるポリクローナル血清(検出用)を含めた。結果を図6に示す。mAbのCR6261およびCR9114への結合は、分画2、3および4について、ならびに単量体および三量体FL HAについて明らかに観察される。分画1について、弱いシグナルのみがCR9114結合について検出され、CR6261への結合についてはほとんどシグナルが検出されない。どの分画においても、CR8020(グループ2からのHAに特異的なmAb)への結合は観察されない。単量体FL HAはポリクローナル抗H1HAにより認識されるが、三量体FL HAへの応答はかなり少なく、おそらく単量体に対する三量体中のエピトープの一部の閉塞に起因する。類似のパターンが分画3(SDS−PAGE上の三量体)および分画4(SDS−PAGE上の単量体)の結果間で観察され、溶液中の本発明のポリペプチドの十分にフォールドされた三量体形態の分画3中の存在と一致する。
分画1〜4をCR9114サンドイッチELISAにおいても試験して上記の本発明の多量体ポリペプチドを検出した(図7参照)。比較のため、単量体および三量体FL HAをここでもこの実験に含めた。分画3は、三量体FL HAと極めて類似する応答を示し、本発明のポリペプチドの三量体形態と一致する一方、分画2および4についての応答は単量体および三量体FL HA間の中間である。
CR6261、CR9114およびCR8020のFab断片とs127H1−t2−cl18longとの間の複合体形成を、分析サイズ排除クロマトグラフィーと多角度光散乱との組合せにより試験して分画3中のタンパク質についての分子質量(SEC−MALS)を推定した(図8)。結果は、分画3中に存在するポリペプチドが約110kDの分子量を有することを示し、三量体の形成と一致する(グリコシル化を除くアミノ酸配列に基づき計算された単量体分子量は、29.2kDである)。本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18longは、CR6261およびCR9114からのFab断片の存在下で複合体を形成するが(SECクロマトグラム中のピークのシフトにより証明されるとおり)、CR8020からのFab断片の存在下では形成しない。これは、Fab断片の結合反応の特異性と一致する。それというのも、CR6261およびCR9114はグループ1に由来するHAに結合する一方、CR8020は結合しないためである。形成された複合体のサイズは、CR6261およびCR9114のFab断片でそれぞれ約215および248kDであり、ポリペプチド127H1−t2−cl18が3つのFab断片に結合し得ることを示す(3つのFab断片との複合体中の三量体について予測される分子量は約250kDであり;SEC−MALS実験から導かれた分子質量を表10にまとめる)。
実施例5:本発明のポリペプチドの特性決定
本発明のポリペプチド127H1−t2−cl18と、mAbのCR6261およびCR9114との間の結合反応をさらに分析するため、ならびにCR6261およびCR9114の立体構造エピトープの存在を再確認するため、それらの抗体と精製タンパク質との複合体化をバイオレイヤー干渉法(Octet Red384、Forte Bio)により試験した。この目的のため、ビオチン化CR6261、CR9114およびCR8020をストレプトアビジンコートセンサ上で固定化し、続いてそれを最初に本発明の精製ポリペプチド127H1−t2−cl18の溶液に曝露させて会合の速度を計測し、次いで洗浄溶液に曝露させて解離の速度を計測した。結果を図9に示す。
固定化CR6261およびCR9114は、両方とも、127H1−t2−cl18の可溶性形態への曝露後の明らかな応答により証明されるとおり本発明のポリペプチドを認識する(図9AおよびB)。結合相互作用についての解離定数を推定するため、2倍希釈系列を使用して力価測定を実施した。固定化CR6261またはCR9114を含有するセンサを、それぞれ10、5、2.5、1.3および0.63、0.31および0.16nMにおける可溶性s127H1−t2−cl18long溶液に曝露させ、6600秒後の最終応答を記録した。応答をステムドメインポリペプチド濃度の関数としてプロットし、定常状態結合モデルへのフィットを実施し、CR6261/ステムドメインポリペプチド複合体について0.7nM、CR9114複合体について0.5nMの解離定数Kdを生じさせた(図9CおよびD)。
まとめると、本発明のポリペプチド127H1−t2−cl18は、広域中和モノクローナル抗体CR6261およびCR9114に高いアビディティーで結合し得る共有結合三量体を形成し、このステムドメインポリペプチド中の対応する中和エピトープの存在を裏付ける。溶液中の結合反応の化学量論は1:3であり、中和エピトープが三量体のそれぞれの個々の単量体中で存在することを示す。
実施例6:致死インフルエンザチャレンジモデルにおける本発明のポリペプチドの保護効力の評価
致死インフルエンザチャレンジモデルにおける本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18long(配列番号186)の保護効力をさらに評価するため、8〜14匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの精製s127H1−t2−cl18longにより3週間の間隔において1、2および3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、広域中和抗体モノクローナル抗体CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に静脈内投与した一方、PBSによる免疫化が陰性対照として機能した。最後の免疫化から4週間後、マウスを25×LD50の異種チャレンジウイルス(H1N1A/Puerto Rico/8/34)によりチャレンジし、3週間毎日モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。最後の免疫化から4週間後に得られたプレチャレンジ血清を、免疫化に使用された本発明のポリペプチドs127H1−t2−c118longへの結合(正確な免疫化を確認するため)、可溶性H1N1A/Brisbane/59/07全長HAへの結合(全長HAの認識を確認するため)および全長HAへの結合についての広域中和モノクローナル抗体CR9114との競合(誘導された抗体が広域中和抗体CR9114エピトープに近接して結合するか否かを決定するため)についてELISAアッセイにおいて試験した。結果を図10〜15に示す。
結果は、実験が有効であることを示す。それというのも、PBS対照群中の全てのマウスはチャレンジ後7日目において感染により死亡する一方、陽性対照群(15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護されるためである(図10A)。s127H1−t2−cl18long(配列番号186)により1回免疫化された10匹のマウスのうち9匹は致死チャレンジを生存し、全てのマウスは2または3回の免疫化後に生存した(図11)。さらに、体重損失は、2または3回免疫化された動物について無視可能であり(図12)、臨床徴候が観察されず(2または3回)、または最小(1回)の臨床徴候が観察された(図13)。PBS対照群と比較して、統計的に有意な生存比率の増加、生存時間の増加、体重損失の減少および臨床スコアの低減が、本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18longにより免疫化された全ての群について観察された。
s127H1−t2−c118long(図14A)または可溶性全長HA(図14B)を抗原として使用する最後の免疫化から4週間後のプレチャレンジ時点からのELISAデータは、本発明のポリペプチドs127H1−t2−c118longが免疫原性であり、1回の免疫化後でさえ全長HAを認識し得る抗体を誘導することを示すが、レベルは、2および3回の免疫化後に実質的に高い。
免疫化に対する免疫学的応答をさらに理解するため、競合結合ELISAを実施した。この目的のため、プレート結合全長HAを段階希釈血清試料とインキュベートし、その後に所定の力価測定濃度におけるCR9114−ビオチンを添加した。さらなるインキュベーション後、当分野において周知のプロトコルに従ってストレプトアビジンコンジュゲートセイヨウワサビペルオキシダーゼを使用して結合CR9114−ビオチンの量を定量した。「傾きOD」(ΔOD/10倍希釈率)として表現される対数希釈率に対するODのロバスト線形回帰を使用してデータを分析した。データは、広域中和抗体CR9114と結合について競合し得る抗体レベルが、本発明のアジュバント添加ポリペプチドによる免疫化により誘導されることを示す。2回の免疫化後、レベルは明らかにバックグラウンドを超え、それらは3回目の免疫化後に上昇し続ける(図15、上段)。比較として、非標識CR9114(すなわち、自己競合)および非結合モノクローナル抗体CR8020(両方とも5μg/mlの出発濃度から段階希釈)により誘導されるレベルを、別個のグラフに示す(図15、下段)。
まとめると、本発明者らは、本発明のポリペプチドs127H1−t2118long(配列番号186)による免疫化が、たとえ単一の免疫化ラウンド後でも、インフルエンザによる致死感染に対してマウスを保護し得ることを示した。ポリペプチドは、免疫原性であり、全長HAに結合し得る抗体を誘導する。誘導される抗体の少なくとも一部が、モノクローナル抗体CR9114の広域中和エピトープのエピトープに結合し、またはその近くで結合する。
実施例7:致死異種亜型H5N1インフルエンザチャレンジモデルにおける本発明のポリペプチドの保護効力の評価
致死H5N1インフルエンザチャレンジモデルにおける本発明のポリペプチドs127H1−t2−c118long(配列番号186)の保護効力をさらに評価するため、8〜12匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの精製s127H1−t2−c118longにより3週間の間隔において3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、広域中和抗体モノクローナル抗体CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に静脈内投与した一方、PBSによる免疫化が陰性対照として機能した。最後の免疫化から4週間後、マウスを12.5×LD50の異種亜型チャレンジウイルス(H5N1A/Hong Kong/156/97)によりチャレンジし、3週間毎日モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。結果を図16に示す。
結果は、実験が有効であることを示す。それというのも、PBS対照群中の全てのマウスはチャレンジ後8〜10日目の間において感染により死亡する一方、陽性対照群(15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護されるためである(図16A)。s127H1−t2−cl18long(配列番号186)により免疫化された10匹のマウスのうち10匹は致死チャレンジを生存する(図16B)。さらに、体重損失はそれらの動物について無視可能であり(図16C)、フォローアップ期間の間に臨床徴候は観察されなかった(図16D)。PBS対照群と比較して、統計的に有意な生存比率の増加、生存時間の増加、体重損失の減少および臨床スコアの低減が、本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18longにより免疫化された群について観察される。
まとめると、本発明者らは、本発明のポリペプチドs127H1−t2l18long(配列番号186)による免疫化が、異種亜型H5N1インフルエンザ株による致死感染に対してマウスを保護し得ることを示した。
実施例8:本発明のポリペプチドによる免疫化を介して誘発された血清の結合域の評価
実施例6に記載の結果は、本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18long(配列番号186)が免疫原性であり、本発明のポリペプチドの設計のための基礎として使用される株からのFL HAを認識し得る抗体を誘発し得ることを示す。実施例7に記載の3回免疫化されたマウスからの血清を、いくつかの他のグループ1(H1、H5およびH9)およびグループII(H3およびH7)インフルエンザ株からの全長HAに対する結合についてもELISAにより当分野において周知のプロトコルに従って試験した(図17)。結果は、本発明のポリペプチドs127H1−t2−cl18long(配列番号186)により誘導された抗体がFL HAの天然配列中に存在するエピトープを効率的に認識すること、ならびに抗体が結合するエピトープが異なるグループ1(特に、H1、H5およびH9)およびさらには一部のグループ2インフルエンザ株(例えば、H7)間で保存されることを実証する。
実施例9:致死H1N1A/Brisbane/59/2007インフルエンザチャレンジモデルにおける本発明のポリペプチドの保護効力の評価
致死H1N1インフルエンザチャレンジモデルにおける本発明のポリペプチドs127H1−t2−c118long(配列番号186)の保護効力をさらに評価するため、8〜18匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの精製s127H1−t2−c118longにより3週間の間隔において3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、広域中和抗体モノクローナル抗体CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に静脈内投与した一方、PBSによる免疫化が陰性対照として機能した。最後の免疫化から4週間後、マウスを12.5×LD50のチャレンジウイルス(H1N1A/Brisbane/59/2007)によりチャレンジし、3週間毎日モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。
結果は、実験が有効であることを示す。それというのも、PBS対照群における全てのマウスはチャレンジ後7〜10日目の間に感染により死亡する一方、陽性対照群(15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護されるためである(図18A)。s127H1−t2−c118long(配列番号186)により免疫化された10匹のうち10匹のマウスが、致死チャレンジを生存する(図18B)。さらに、体重損失は平均して感染後4日で約10%であるが(図18C)、動物は10日以内に完全に回復する。臨床徴候も感染後4日でピークであるが、感染後9日目以降は不存在である(図18D)。PBS対照群と比較して、統計的有意な生存比率の増加、生存時間の増加、体重損失の減少および臨床スコアの低減が、本発明のポリペプチドs127H1−t2−c118longにより免疫化された群について観察される。
まとめると、本発明者らは、本発明のポリペプチドs127H1−t2118long(配列番号186)による免疫化が、H1N1A/Brisbane/59/2007による致死感染に対してマウスを保護し得ることを示した。
実施例10:本発明のポリペプチドにより免疫化されたマウスの血清中のインフルエンザ中和抗体の存在の評価
インフルエンザに対する保護における役割を担う抗体媒介エフェクター機序をさらに調査するため、プレチャレンジ血清を、下記のH5N1A/Vietnam/1194/04に由来する偽粒子を使用する偽粒子中和アッセイ(Alberini et al 2009)において試験した。
偽粒子中和アッセイ
FL HAを発現する偽粒子を既に記載のとおり生成した(Temperton et al.,2007)。既に記載のとおり(Alberini et al 2009)(わずかに改変)、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするH5A/Vietnam/1194/04偽粒子によるHEK293細胞の単一形質導入ラウンドを使用して中和抗体を決定した。手短に述べると、熱不活性化(56℃において30分間)プレチャレンジ血清試料を成長培地(2mMのL−グルタミン(Lonza)、1%の非必須アミノ酸溶液(Lonza)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza)および10%のFBS(Euroclone,Pero,Italy)が補給されたEBSSを有するMEM Eagle(Lonza,Basel,Switserland))中で、96ウェル平底培養プレート中で3つ組で3倍段階希釈し、力価測定数のH5A/Vietnam/1194/04偽粒子(感染後に106の相対発光単位(RLU)を生じさせる)を添加した。37℃、5%のCO2における1時間のインキュベーション後、ウェル当たり104個のHEK293細胞を添加した。37℃、5%のCO2における48時間のインキュベーション後、ルシフェラーゼ基質(Britelie Plus,Perkin Elmer,Waltham,MA)を添加し、ルミノメーター(Mithras LB 940,Berthold Technologies,Germany)を製造業者の説明書に従って使用して発光を計測した。
実施例6、7、および8に記載の本発明のポリペプチドs127H1−t2118long(配列番号186)により免疫化された動物から得られたプレチャレンジ血清は、偽粒子中和アッセイを使用して高い血清濃度において検出可能な中和を示した(図19)。これは、免疫原として使用される場合に広域中和抗体を誘発する本発明のポリペプチドの能力を実証する。
直接ウイルス中和の他、Fc媒介エフェクター機序、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP)が、インフルエンザに対する保護に実質的に寄与し、ステム指向bnAbはそれらの機序において特に有効である(DiLillo et al.,2014)。本発明のポリペプチドs127H1−t2l18long(配列番号186)による免疫化後に誘発された抗体がADCCを誘導し得るか否かを試験するため、本発明者らは、下記のとおりマウスについて適合させたADCC代理アッセイ(Parekh et al.,2012;Schneuriger et al.,2012;Cheng et al.,2014)を使用してプレチャレンジ血清を試験した。
抗体依存性細胞傷害(ADCC)代理アッセイ
ヒト肺癌由来A549上皮細胞(ATCC CCL−185)を、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清が補給されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)培地中で37℃、10%のCO2において維持した。実験2日前、Opti−MEM(Invitrogen)中でLipofectamine 2000(Invitrogen)を使用してA549細胞にH5A/Hong Kong/156/97 HAまたはH1A/Brisbane/59/2007 HAをコードするプラスミドDNAを形質移入した。アッセイ1日前、形質移入細胞をハーベストし、ADCCのために白色96ウェルプレート(Costar)中で、およびイメージングのために黒色透明底96ウェルプレート(BD Falcon)中で播種した。24時間後、試料をアッセイ緩衝液(RPMI1640(Gibco)中4%の超微量IgG FBS(Gibco))中で希釈し、56℃において30分間熱不活性化し、次いでアッセイ緩衝液中で段階希釈した。ADCCバイオアッセイのため、A549細胞に新たなアッセイ緩衝液を補充し、抗体希釈物およびマウスFcガンマ受容体IVを発現するADCC Bioassay Jurkatエフェクター細胞(FcγRIV;Promega)を細胞に添加し、1:4.5の標的−エフェクター比において37℃において6時間インキュベートした。細胞を室温に15分間平衡化してからBio−Glo Luciferase System基質(Promega)を添加した。発光をSynergy Neo(Biotek)上で10分後にリードアウトした。データを血清の不存在下のシグナルの誘導倍率として表現する。
このアッセイを使用して、実施例6、7および8に記載の本発明のポリペプチドs127H1−t2118long(配列番号186)により免疫化された動物から得られたプレチャレンジ血清を、抗原の資源としてのH5N1A/Hong Kong/156/97またはH1N1A/Brisbane/59/07からのFL HAが形質移入された標的細胞を使用してFcγRIVシグナリング活性について試験した(図20)。両方の場合において、試験された最大血清濃度において30〜40倍の誘導が観察され、マウスにおいてADCC/ADCPエフェクター機能を示すFcγRIVシグナリングを活性化させる抗体を誘発する本発明のポリペプチドの能力を実証する。
実施例6〜9において示されるこれらの結果は、本発明のポリペプチドs127H1−t2118long(配列番号186)の能力がステム標的化、中和およびADCC媒介抗体を誘発し、同種、異種および異種亜型グループIインフルエンザ株による致死チャレンジに対してマウスを保護し得ることを示す。
実施例11:H1N1A/California/07/09からのHAをベースとする本発明のポリペプチドの設計
実施例1から10は、H1N1A/Brisbane/59/2007からのHAをベースとする本発明のポリペプチドを記載する。類似のポリペプチドを、他のインフルエンザ株、例えば、H1N1A/California/07/09からの他のHAをベースとして設計することもできる。したがって、上記概略された手順に従って、配列番号202および203に記載の本発明のポリペプチドを作出した。
実施例12:H1株からのHAをベースとする本発明のさらなるポリペプチドの設計
実施例1から11は、H1N1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)およびH1N1A/California/07/09(配列番号252)からのHAをベースとする本発明のポリペプチドを記載する。類似のポリペプチドを、他のH1インフルエンザ株からのHAをベースとして設計することもでき、それらも本発明に含まれる。非限定的な例は、H1N1A/Texas/UR06−0526/07(配列番号205)、H1N1A/New York/629/95(配列番号206)およびH1N1A/AA_Marton/43(配列番号204)のHAである。したがって、上記概略された手順に従って、配列番号207から216に記載の411および419位(クラスター18)におけるシステイン間の遺伝子操作されたジスルフィド架橋を含有する本発明のステムドメインポリペプチドを作出した。配列番号202、203、213および214は、配列番号8によるBループ配列を作出するための415位(番号付与は、配列番号1を指す)において導入された追加のリジン突然変異を含有し;それらの配列も本発明に含まれる。
実施例13:本発明のポリペプチドの発現および特性決定
設計ジスルフィド架橋ならびにCR9114およびCR6261の中和エピトープの存在について試験するため、設計ポリペプチドの可溶性形態をHEK293F細胞中で発現させた。可溶性形態は、配列番号202、207、209、213からアミノ酸残基530〜565(番号付与は配列番号1を指す)の相当物を欠失させてそれぞれ本発明のポリペプチド配列番号203、208、210および214を作出することにより作出した。これらの配列はポリペプチドのプロセシング形態、すなわち、リーダー配列の除去後の形態を記載することが留意される。追加の配列EGRHHHHHHH(配列番号19)または配列番号208においてEGRHHHHHHをC末端において付加し、事実上、精製および/または検出を支援するために第X因子タンパク質分解開裂部位を先にして7または6ヒスチジン精製タグを導入した。
ポリペプチドを産生するため、HEK293F細胞(Invitrogen)を300gにおいて5分間スピンダウンし、SF250フラスコ当たり30mLの予備加温Freestyle(商標)培地中で再懸濁させることにより、1.0*106vc/mLを播種した。この培地をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO2、110rpmにおいて1時間インキュベートした。1時間後、プラスミドDNAを1mLのOptimem培地中で、30mLの培養容量で1.0μg/mLの濃度にピペッティングした。並行して、44μLの293fectin(登録商標)を1mLのOptimem培地中でピペッティングし、室温において5分間インキュベートした。5分後、プラスミドDNA/Optimemミックスを293fectin(登録商標)/Optimemミックスに添加し、室温において20分間インキュベートした。インキュベーション後、プラスミドDNA/293fectin(登録商標)ミックスを細胞懸濁液に滴加した。形質移入培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO2および110rpmにおいてインキュベートした。7日目において、細胞を遠心分離(3000gにおいて30分間)により培養培地から分離した一方、本発明の可溶性ポリペプチドを含有する上清を、さらなる処理のために0.2μmボトルトップフィルター上で濾過した。
培養培地を回収し、広域中和抗体CR9114の2つ以上のエピトープを提示するポリペプチドの多量体形態の存在についてサンドイッチELISAにおいて分析した。最初に、CR9114コートプレートを使用して培養培地から発現ポリペプチドを直接捕捉した。第2に、ビオチン化CR9114をHRPコンジュゲートストレプトアビジンとの組合せで本発明のCR9114捕捉ポリペプチドの検出に使用した。比較のため、三量体および単量体形態のH1N1A/Brisbane/59/2007からの可溶性精製全長HAならびに精製三量体s127H1−t2−cl18long(配列番号186)を、アッセイに含めた(出発濃度5μg/ml)。結果を図21Aに示す。
三量体全長HAは、低希釈率において明らかなシグナルを示すが、1対6561以上の希釈率(すなわち、より低濃度)においてこのシグナルはもはや検出可能でない(図21A)。単量体全長HAについて、シグナルは低希釈率においても観察されるが、強度はかなり低く、シグナルは1対729の希釈率においてもはや検出可能でない。シグナルは、精製の間に単量体から分離することができず、または経時的に単量体から形成した一部の残留三量体により引き起こされる可能性が最も高い。追加のC末端hisタグ配列(EGRHHHHHHH)を含有する精製三量体s127H1−t2−cl18long(配列番号186)(出発濃度5μg/ml)も、1対19683の濃度において検出不能になるこのアッセイにおける明らかなシグナルをもたらす。本発明のポリペプチド配列番号203、208、210および214を含有する培養培地も、このアッセイにおいて明らかなシグナルを示し、本発明の多量体ポリペプチドの存在を示す。最も強力な応答は、A/California/07/09に由来するポリペプチド(配列番号203)について観察される。H1N1A/AA_Marton/1943に由来する本発明のポリペプチド(配列番号214)について観察されたアッセイにおけるより弱い応答は、下記の培養培地のウエスタンブロットからの結果から証明されるとおりこの特定の本発明のポリペプチドのより低い発現からの結果である。
追加のシステインを含有する本発明のポリペプチドをさらに特性決定するため、当分野において十分確立されたプロトコルを使用して培養上清をウエスタンブロットにより分析した。検出目的のため、H1N1(A/California/04/2009)のHAタンパク質に対して指向されるポリクローナル抗体を使用した。非還元条件下のジスルフィド結合三量体について、すなわち、ジスルフィド架橋がインタクトである場合、約90kDa以上におけるタンパク質バンド(グリコシル化の程度に依存する)が予測される一方、還元条件下では35kD(本発明のグリコシル化単量体ポリペプチドに対応する)に近いバンドが予測される。図22は、株H1N1A/Texas/(配列番号208)、H1N1A/New York/629/95(配列番号210)、H1N1A/California/07/09(配列番号203)およびH1N1A/AA_Marton/1943(配列番号214)からのHAに由来する本発明のポリペプチドについての結果を示す。還元条件下のウエスタンブロットは、異なるレベルではあるが本発明の4つ全てのポリペプチドが発現することを示し、最大発現は本発明のH1N1A/California/07/09由来ポリペプチド(配列番号203)について観察され、最小発現はH1N1A/AA_Marton/1943由来ポリペプチド(配列番号214)について観察される。これらの条件下、ポリペプチドは、追加のC末端hisタグ配列(EGRHHHHHHH)を含有する精製三量体s127H1−t2−cl18long(配列番号186)と同様に単量体としてゲル中でランする。非還元条件下、本発明の三量体ポリペプチドの存在を示す100および150kD間のバンドが、本発明の全てのポリペプチド(s127H1−t2−cl18long(配列番号186)を含む)について観察される。H1N1A/AA_Marton/1943に由来するポリペプチド(配列番号214)について、単量体バンドはもはや可視的でなく、三量体について予測される高さにおけるバンドが、このポリペプチドのより低い発現に起因する低い強度ではあるが出現する。さらに、約75kDにおいてランする二量体形態を観察することもできる。本発明のポリペプチドは、本発明の個々のポリペプチドのグリコシル化の程度の変動に起因していくぶんサイズが不均一である。
CR6261およびCR9114の中和エピトープの存在をさらに確認するため、培養上清をELISAにより分析した。第一に、本発明の可溶性ポリペプチド上のhisタグに指向される抗体によりコートされたプレートを使用して培養培地から発現ポリペプチドを直接捕捉した。第二に、CR9114またはCR6261を添加し、HRPコンジュゲートヤギ抗ヒト抗体を、本発明のポリペプチドへのCR9114またはCR6261結合の検出に使用した。陽性対照として、三量体および単量体形態のH1N1A/Brisbane/59/2007からの可溶性精製全長HAをアッセイに含めた(図21B、C)。陰性対照として、グループ2からのHAに特異的なmAbのCR8020を使用するELISAも実施した。結果を図21Dに示す。本発明のポリペプチドは、CR9114およびCR6261を用いるELISAにおける明らかな応答を示し、最大応答はA/California/07/09に由来するポリペプチド(配列番号203)について観察される。精製可溶性全長HA(単量体および三量体の両方)も、強力な応答を示す。予測されるとおり、CR8020を用いるELISAにおいて応答は観察されず、本発明のポリペプチドへのCR6261およびCR9114の結合の特異性を裏付けた。
まとめると、上記結果は、上記のH1HA配列に由来する本発明のポリペプチドが三量体種を形成し、CR6261およびCR9114の中和エピトープを含有し得ることを示す。
実施例14:インフルエンザグループ1株からのHAをベースとする本発明のさらなるポリペプチドの設計
実施例1から13は、H1N1からのHAをベースとする本発明のポリペプチドを記載する。類似のポリペプチドを、他のグループ1インフルエンザ株、例えば、H2、H5およびH9HAを含有するものからのHAをベースとして設計することもできる。これらのポリペプチドも本発明に含まれる。このような株の非限定的な例は、例えば、H2N2A/Adachi/2/1957、H2N2A/Singapore/1/1957、H5N1A/Vietnam/1203/2004およびH9N2A/Hong Kong/69955/2008である。したがって、上記概略の手順に従って、配列番号218から221、配列番号223から226、配列番号228から231、および配列番号233から236に記載の411および419位(クラスター18)におけるシステイン間の遺伝子操作されたジスルフィド架橋を含有する本発明のポリペプチドを作出した。
H5N1A/Vietnam/1203/2004からの全長HA(配列番号227)が、多塩基開裂部位、すなわち、融合ペプチド配列に直接先行する配列番号227の341〜346位における配列RRRKTRを含有することに留意すべきである。本発明のポリペプチド228〜231において、多塩基性開裂部位を除去し、単一グルタミン(Q)残基により置き換えて完全開裂部位を除去した。これらの配列も本発明に包含される。
配列番号219、221、224および226は、システインである残基418を除く配列番号8によるBループ配列を作出するための407および414〜416位(配列番号1による番号付与;H2配列において、配列番号1と比較して9、10および139位における残基が欠失していることに留意されたい)におけるさらなる突然変異を含有する。
配列番号230および231は、407位(E407T)および415位(N415S)(配列番号1による番号付与)における追加の突然変異を含有する。これらの突然変異は、システインである残基418を除く配列番号8によるBループを作出する。配列番号236および236は、配列MNTQYTAIGCEYNKSE(すなわち、システインである残基418を除く配列番号8による配列)を含有するようにさらに改変されている。
実施例15:インフルエンザグループ2株からのHAをベースとする本発明のジスルフィド安定化三量体の設計
実施例1から14は、グループ1株からのHAをベースとする本発明のポリペプチドを記載する。ジスルフィド架橋ポリペプチドは、グループ2からのHA配列、例えば、H3およびH7などに基づき設計することもできる。これらのポリペプチドも本発明に含まれる。このような株の非限定的な例は、例えば、H3N2A/Hong Kong/1/1968およびH7である。
ワクチン中の免疫原上の中和エピトープの提示を改善するための1つの手法は、単量体免疫原間の追加の相互作用を遺伝子操作して単量体と比較して増加した溶解度を有する多量体種を作出することである。この方法の欠点は、単量体免疫原を一緒にすることにより、重要なエピトープが次のプロモーターにより潜在的にカバーされ得ることである。したがって、これを回避するように留意すべきである。
本明細書において、本発明者らは、溶液中で安定な三量体を形成する一方、中和mAbのCR8020およびCR8043のエピトープを曝露させる本発明の改変ポリペプチドを記載する。
本発明の三量体ポリペプチドを生成するため、HAステムベースポリペプチドの単量体種の三量体化を促進する安定化相互作用を設計し、特に、三量体中の個々の単量体間の共有結合ジスルフィド架橋の作出にフォーカスした。この目的のため、H3N2A/Hong Kong//1/1968からのFL HAの三次元構造(PDB:3SDY)を分析して別の単量体の近接性およびタンパク質の立体構造特徴部が単量体間ジスルフィド架橋の形成を潜在的に可能とし得る区域を同定した。残基の6つのペアを同定した(表11)。それぞれのペアについて、残基を三量体構造中の異なるプロモーター(単量体)上で局在させることを確保することを留意した。次いで、ジスルフィド架橋の形成を介して共有結合しているポリペプチドを形成することができるように、グループ2をベースとするステムドメインポリペプチド中のそれらの残基の相当物(配列アラインメントから決定)をシステインに突然変異させて本発明のポリペプチドを作出する。三量体HA分子の3回対称性を考慮して、良好な設計が、三量体中の単量体のそれぞれを2つの他の単量体に共有結合する3つのプロモーター間ジスルフィド架橋の形成をもたらす。
国際公開第2013/079473号パンフレットは、広域中和抗体CR8020、CR8043に結合し得るグループ2株からのHAをベースとするステムドメインポリペプチドを記載する。表11からのジスルフィドペアをH3N2A/Hong Kong/1/1968のHA(配列番号237)に由来するポリペプチドH3HKmini2a−linker+cl9+10+11+12+GCN4T(本明細書では配列番号238;国際公開第2013/079473号パンフレットの配列番号130)およびH3HKmini2a−linker+cl9+10+11+12+GCN4T−CG7−1(本明細書では配列番号239;国際公開第2013/079473号パンフレットの配列番号174)中で導入して本発明のポリペプチド240から251を得た。
配列番号240から251の配列は、HAリーダー配列を含有する。当業者は、成熟タンパク質において、リーダー配列が開裂されており、もはや存在しないことを理解する。プロセシングされた配列も本発明に含まれる。
本発明のポリペプチドの可溶性形態は、C末端膜貫通領域および細胞質ドメインの欠失により作出することができる。例えば、欠失は、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536または537からC末端の残基を含み得る。これらのポリペプチドも本発明に含まれる。一部の場合において、場合により、短いリンカーを介して結合しており、場合により、タンパク質分解開裂部位を含有するC末端三量体化配列を付加することができる。三量体ドメイン化の一例は、配列番号3のfoldon配列である。プロセシングされた配列も本発明に含まれる。
実施例16:インフルエンザワクチン保護効力評価における使用のためのNHPpH1N1チャレンジモデルのバリデーション、ならびにNHPにおけるH1mini−HA#4900の免疫原性および保護効力
代替モデルにおけるUFVワクチン候補を免疫原性および保護効力を試験することができるように、流行性H1N1株(A/Mexico/InDRE4487/2009)を使用するカニクイザル(Macaca fasicularis)における非ヒト霊長類(NHP)チャレンジモデルが、BPRC(Rijswijk,The Netherlands)において既に確立されている。このモデルは、Safronetz et al(2011)J Virol.85:1214による文献に公開されたモデルをベースとする。しかしながら、このモデルをインフルエンザワクチンの保護効力の評価に使用することができるか否かを確立する必要がある。
この試験の主目的は、以下であった。
a)使用チャレンジ株と同種のH1N1株の15μgのFL HAを含有する季節性ワクチン(Inflexal(登録商標)V、季節2013/2014;Inflexal13/14)を使用して、既に確立されたカニクイザルにおけるpH1N1チャレンジモデルを使用してワクチン媒介保護効力を計測することができるか否かを評価すること。
b)非ヒト霊長類におけるs127H1−t2−cl18long(配列番号186)の免疫原性を評価すること。
二次的な目的は、このpH1N1NHPチャレンジモデルにおけるs127H1−t2−cl18long(配列番号186)の保護効力を評価することであった。
雄カニクイザルのコホートを、アルファヘルペスウイルス、STLV、SIV、SRVおよびインフルエンザA NPに対する血清抗体の存在、チャレンジウイルスに対するHAI力価(1/10の最大力価を許容)に対してプレスクリーニングし、Mantouxおよび血液試験により結核について試験した。スクリーニングされた一部の動物は、予備CR8020PK試験の一部であった。スクリーニング後、好適な動物を、週齢、体重、HAI力価およびPK試験の包含を考慮する乱塊法計画をそれぞれ使用する6つの動物の3つの群にランダムに割り当てた。15分間隔で体温を計測するデータロガーを腹部移植し、次いで1ヵ月の回復期間を設け、その後に免疫化レジメンを開始した。1つの群は、保険医療当局(CDC,RIVM)により提唱されるワクチン未接種小児についての公式ガイドライン免疫化レジメンであるH1N1A/California/07/09の15μgのFL HAを含有するヒト用量(0.5mL)のInflexal V 13/14による2回の筋肉内(i.m.)免疫化を受けた。第2の群は、0.5mL容量の50μgのMatrix−Mがアジュバント添加された150μgのs127H1−t2−cl18long(配列番号186;追加のHisタグを含有)タンパク質による3回の筋肉内免疫化を受けた。第3の群は、0.5mLのPBSが3回筋肉内投与された陰性対照群であった。全ての免疫化は、4週間の免疫化間隔で実施した。最後の免疫化から4週間後、動物をモデルのセットアップの間に確立された用量である4×106TCID50のH1N1A/Mexico/InDRE4487/2009により気管支内チャレンジした。21日間のフォローアップ期間の間、臨床徴候を毎日記録した。動物を1、2、4、6、8、10、14および21日目に麻酔し、その間に体重を計測し、気管スワブを採取してqPCRによりウイルス負荷を決定した。試験終了時、データロガーを取り出し、データを分析した。
投与されたワクチンの免疫原性を確認するため、血清を免疫化日、およびチャレンジ5日前に単離した。両方のワクチン摂取処理について、インフルエンザAグループ1および2FL HAのパネルへの結合域、CR9114エピトープに近接して結合する抗体を誘導するワクチンの能力(応答を%競合として表現するCR9114競合ELISAを使用)、ワクチン誘導抗体の代理ADCC活性(下記参照)ならびにワクチン誘導抗体の中和活性(異種亜型H5N1A/HK/156/97に対するマイクロ中和アッセイおよびH1N1A/California/07/09を使用してFL HA頭部エピトープにより媒介されるウイルス中和を検出するHAIアッセイの両方を使用する)についてプレチャレンジ血清応答を分析した。最後の株は、ワクチンおよびチャレンジ株と同種である。
代理ADCC活性は、ADCC Bioassayエフェクター細胞(ヒトFcガンマ受容体IIIA(FcγRIIIA)、ヒトCD3γ、およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を調節するNFAT応答エレメントを発現する安定なJurkat細胞(Promega)、およびH1N1およびH5N1株のFL HAをコードするDNAが一過的に形質移入されたA549標的細胞を使用して決定した。
結果
− 気管ウイルス負荷AUCにおける処理群間の有意差は見られなかった(図示せず)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186およびPBS群間で、0〜3日目(p=0.010)および0〜8日目(p=0.047)の間隔の間のチャレンジ後の体温増加(発熱)において有意差が見られた(図27)。
− Inflexal13/14群およびPBS群で、0〜3日目(p=0.033)の間隔の間のチャレンジ後の体温増加において有意差が見られた(図27)。
− 主として反復麻酔により決定される可能性が高い軽度症状に起因して体重および臨床徴候は有益でなく、したがって図示しない。
− 動物Ji0403061(Inflexal13/14群)は、チャレンジ後8日目に死亡した。獣医病理学者による解剖は死因としてウイルス肺炎を究明し、死亡時間までの高い気管ウイルス負荷と一致した。
− 3×150μgの本発明のポリペプチド配列番号186+50μgのMatrix−Mの免疫化レジメンは、免疫原性であった:
・グループ1HA結合抗体の誘導(図23)
・3つの異なるグループ1HAタンパク質に対するCR9114競合抗体の誘導(図24)
・マイクロ中和アッセイを使用する異種亜型H5N1株を中和する抗体の誘導(図26)
・3つの異なるグループ1HAタンパク質を標的HAとして使用するADCCエフェクターとして機能し得る抗体の誘導(図25)。
結論:カニクイザルにおけるH1N1インフルエンザチャレンジモデルにおける疾患のワクチン媒介介入の実証は、部分的に良好であるにすぎなかった。それというのも、チャレンジ後の最初の3日間において発熱のみが有意に低減したためであった。3×150μgのH1mini−HA#4900+50μgのMatrix−Mによる3回の免疫化は、非ヒト霊長類において免疫原性である。誘導抗体は、HAに結合し得、試験された全てのグループ1全長HAについてADCCエフェクターとして機能し得、異種亜型H5株も中和する。
実施例17:本発明のポリペプチドにより免疫化されたマウスからの血清の受身伝達によるH5N1A/Hong Kong/156/97による致死チャレンジからの保護
観察された保護に対する本発明のポリペプチドにより誘導された抗体の寄与を決定するため、血清移植試験を実施した。
この試験の目的は、Matrix−Mの存在下でs127H1−t2−c118long(配列番号186)により3回免疫化されたマウスからの血清の受身伝達(複数回投与)が、H5N1インフルエンザA/Hong Kong/156/97による致死チャレンジに対する保護を付与するか否かを評価することであった。
雌BALB/cドナーマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加されたC末端Hisタグを含有する30μgのs127H1−t2−c118long(配列番号186)、またはPBSにより3週間の間隔において3回免疫化した。最後の免疫化から4週間後(70日目)、血清を単離し、群ごとにプールし、レシピエントマウス(雌BALB/c、6−8週齢、1群当たりn=10)中に移植した。それぞれのマウスは、400μlの血清を、チャレンジ前に3日間連続(−3、−2および−1日目)で腹腔内で受けた。チャレンジモデルのための陽性対照として、CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に投与した一方(n=8)、PBSによる注射が陰性対照として機能した(n=8)。0日目において、マウスを12.5×LD50H5N1 A/Hong Kong/156/97によりチャレンジし、3週間モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。
ドナーマウスにおけるH1mini−HAバリアントの免疫原性を確認し、レシピエントマウス中への血清の移植後にHA特異的抗体レベルを評価するため、ドナーマウスの末梢血のプール血清試料(70日目)、血清移入前のナイーブレシピエントマウスのプール血清試料(−4日目)およびチャレンジ直前の3回血清移入後のレシピエントマウスの個々の血清試料(0日目)を、H1N1A/Brisbane/59/07からのFL HAへの結合についてELISAにおいて試験した。
結果
− 実験群についての生存割合を表12に報告する。
− 実験は有効であった;PBS対照群における全てのマウスはチャレンジ後13日目以前(中央値9.5日)に感染により死亡する一方、陽性対照群(15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護される(p<0.001)。
− Matrix−Mアジュバント添加のs127H1−t2−cl18long(配列番号186)により免疫化されたマウスからの血清の、ナイーブレシピエントマウス中への3回の血清移入は、PBS血清移入対照群と比較して有意な生存比率の増加(p<0.001)(図28A)、生存時間の増加(p<0.001)(図28A)、体重損失の減少(p<0.001)(図28B)および臨床スコアの低減(p<0.001)(図示せず)をもたらす。
− 3回の血清移入後のFL HA A/Brisbane/59/07特異的抗体力価は、活性免疫化後に得られたレベルと類似する(図29)。
結論:Matrix−Mアジュバント添加のH1mini−HA#4900による3回の免疫化により誘導された血清構成要素(抗体である可能性が最も高い)は、異種亜型H5N1A/Hong Kong/156/97による致死チャレンジに対してマウスを保護するために十分である。
実施例18:致死H1N1A/Brisbane/59/07マウスモデルにおける保護効力の評価
ワクチンとしての本発明のポリペプチドの使用のためのさらなる証拠を提供するため、インフルエンザによる致死チャレンジに対する3つの追加のポリペプチドの保護効力を評価した。この目的のため、本発明のポリペプチド配列番号203および254(両方とも、C末端hisタグを含有)をHEK293F細胞中で一過的に発現させ、上記のとおり精製した。さらに、本発明のポリペプチド配列番号186(同様に追加のC末端hisタグを含有)を、当業者に周知の手順(例えば、M.Cox,Development of an influenza virus vaccine using the baculovirus−insect cell expression system、博士論文、Wageningen University Dec 2009参照)に従ってSF9昆虫細胞中で発現させ、上記のとおり精製した。
この試験の目的は、PBS対照群と比較した、H1N1A/Brisbane/59/07チャレンジモデルにおけるMatrix−Mを有する本発明のポリペプチドの保護効力を決定することであった。
10匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの本発明のポリペプチドにより3週間の間隔において3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に投与した一方(n=8)、PBSによる注射が陰性対照として機能した(n=16)。最後の免疫化から4週間後、マウスを12.5×LD50のチャレンジウイルスによりチャレンジし、3週間モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。
本発明のポリペプチドの免疫原性を確認するため、プレチャレンジ血清(−1日目)をH1N1A/Brisbane/59/07からのFL HAへの結合についてELISAアッセイにおいて試験した。本発明のポリペプチドにより誘導された抗体がCR9114エピトープに近接して結合するか否かを決定するため、CR9114競合ELISAを実施した。競合データを「%競合」として可視化し、(A−P)/A×100)として定義し、式中、Aは、血清が存在しない場合のFL HAへのCR9114結合の最大ODシグナルであり、Pは、所与の希釈における血清存在下のFL HAへのCR9114結合のODシグナルであり、または応答を定量し得る傾きOD計量値を使用して表現した。
結果
− 実験群についての生存割合を表12に報告する。
− 結果は、実験が有効であることを示す;PBS対照群(n=16)中の全てのマウスはチャレンジ後10日目以前(中央値8日)において感染により死亡する一方、陽性対照群(n=8、15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護される(p<0.001)。
− Matrix−Mがアジュバント添加された本発明のポリペプチド配列番号186、203および254による3回の免疫化は、PBS対照群と比較して有意な生存比率の増加(p<0.001)(図30A)、生存時間の増加(p<0.001)(図30A)、体重損失の減少(p<0.001)(図30B)および臨床スコアの低減(p<0.001)(図示せず)をもたらす。
− 本発明のポリペプチドにより誘導されたH1N1A/Brisbane/59/07FL HAに対するプレチャレンジIgG抗体力価は、試験された全ての本発明のポリペプチドについてPBSと比較して有意に高い(p≦0.001)(図31A)。
− H1N1A/Brisbane/59/07FL HAに対するIgG抗体力価は、試験された全ての本発明のポリペプチドについて2回の免疫化後にプラトーである(図示せず)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、PBSと比較して有意に高いCR9114競合力価を誘導する(p<0.001)(図31B)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号203(バックグラウンドH1N1A/California/07/2009)は、H1N1A/Brisbane/59/07FL HAを標的抗原として使用した場合、試験された他の本発明のポリペプチドと比較して有意に低いCR9114競合抗体を誘導する(p≦0.013)(図31B)。
結論:本発明のMatrix−Mアジュバント添加された追加のポリペプチド配列番号186、203および254は、H1N1A/Brisbane/59/07による致死チャレンジに対する保護を付与する。
実施例19:致死H1N1A/NL/602/09マウスモデルにおける保護効力の評価
ワクチンとしての本発明のポリペプチドの使用のためのさらなる証拠を提供するため、インフルエンザによる致死チャレンジに対する3つの追加のポリペプチドの保護効力を評価した。この目的のため、本発明のポリペプチド配列番号203および254(両方とも、C末端hisタグを含有)をHEK293F細胞中で一過的に発現させ、上記のとおり精製した。さらに、本発明のポリペプチド配列番号186(同様に追加のC末端hisタグを含有)を当業者に周知の手順(前掲)に従ってSF9昆虫細胞中で発現させ、上記のとおり精製した。
この試験の目的は、PBS対照群と比較した、H1N1A/NL/602/09チャレンジモデルにおけるMatrix−Mがアジュバント添加された追加の三量体H1mini−HAバリアントの保護効力を決定することであった。
10匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの本発明のポリペプチドにより3週間の間隔において3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に投与した一方(n=8)、PBSによる注射が陰性対照として機能した(n=16)。最後の免疫化から4週間後、マウスを12.5×LD50のチャレンジウイルスによりチャレンジし、3週間モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。
本発明のポリペプチドの免疫原性を確認するため、プレチャレンジ血清(−1日目)をH1N1 A/Brisbane/59/07からのFL HAへの結合についてELISAアッセイにおいて試験する。mini−HAにより誘導される抗体がCR9114エピトープに近接して結合するか否かを決定するため、CR9114競合ELISAを実施した。競合データを「%競合」として可視化し、(A−P)/A×100)として定義し、式中、Aは、血清が存在しない場合のFL HAへのCR9114結合の最大ODシグナルであり、Pは、所与の希釈における血清存在下のFL HAへのCR9114結合のODシグナルであり、または応答を定量し得る傾きOD計量値を使用して表現し;参照のためにCR9114およびCR8020(出発濃度5mg/ml)溶液を含めた。
結果
− 実験群についての生存割合を表12に報告する。
− 実験は有効であった;PBS対照群(n=16)における全てのマウスはチャレンジ後8日目以前(中央値6日)に感染により死亡する一方、陽性対照群(n=8、15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護される(p<0.001)。
− Matrix−Mがアジュバント添加された本発明のポリペプチド配列番号186、203および254による3回の免疫化は、PBS対照群と比較して有意な生存比率の増加(p≦0.004)(図32A)、生存時間の増加(p≦0.001)(図32A)および臨床スコアの低減(p<0.001)(図示せず)をもたらす。本発明のポリペプチド配列番号203について、有意な体重AUCの低減も観察される(p<0.001)(図32B)。
− 本発明のポリペプチド配列番号186、203および254により誘導されたH1N1A/Brisbane/59/07FL HAに対するプレチャレンジIgG抗体力価は、PBSと比較して有意に高い(p≦0.001)(図33A)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、PBSと比較して有意に高いCR9114競合力価を誘導する(p<0.001)(図33B)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加三量体ポリペプチド配列番号203(バックグラウンドH1N1A/California/07/2009)は、H1N1A/Brisbane/59/07FL HAを標的抗原として使用した場合、H1N1A/Brisbane/59/2007に由来するバリアントと比較して有意に低いCR9114競合抗体を誘導する(p≦0.002)(図33B)。
結論:本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、H1N1 A/NL/602/09による致死チャレンジに対する保護を付与する。
実施例20:H5N1A/Hong Kong/156/97マウスモデルにおけるH1 mHA三量体候補評価II
ワクチンとしての本発明のポリペプチドの使用のためのさらなる証拠を提供するため、インフルエンザによる致死チャレンジに対する3つの追加のポリペプチドの保護効力を評価した。この目的のため、本発明のポリペプチド203および254(両方とも、C末端hisタグを含有)をHEK293F細胞中で一過的に発現させ、上記のとおり精製した。さらに、本発明のポリペプチド配列番号186(同様に追加のC末端hisタグを含有)を当業者に周知の手順に従ってSF9昆虫細胞中で発現させ、上記のとおり精製した。
この試験の目的は、PBS対照群と比較した、H5N1A/Hong Kong/156/97チャレンジモデルにおけるMatrix−Mがアジュバント添加された本発明のポリペプチド配列番号186、203および254の保護効力を決定することであった。
10匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの本発明のポリペプチドにより3週間の間隔において3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に投与した一方(n=8)、PBSによる注射が陰性対照として機能した(n=16)。最後の免疫化から4週間後、マウスを12.5×LD50のチャレンジウイルスによりチャレンジし、3週間モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。
本発明のポリペプチド配列番号186、203および254の免疫原性を確認するため、プレチャレンジ血清(−1日目)を、H1N1A/Brisbane/59/07からのFL HAへの結合についてELISAアッセイにおいて試験した。mini−HA誘導抗体がCR9114エピトープに近接して結合するか否かを決定するため、CR9114競合ELISAを実施した。競合データを「%競合」として可視化し、(A−P)/A×100)として定義し、式中、Aは、血清が存在しない場合のFL HAへのCR9114結合の最大ODシグナルであり、Pは、所与の希釈における血清存在下のFL HAへのCR9114結合のODシグナルであり、または応答を定量し得る傾きOD計量値を使用して表現し;参照のためにCR9114およびCR8020(出発濃度5μg/ml)溶液を含めた。
結果:
− 実験群についての生存割合を表12に報告する。
− 実験は有効であった;PBS対照群における16匹のうち15匹のマウスはチャレンジ後9日目以前(中央値9日)に感染により死亡する一方、陽性対照群(n=8、15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護される(p<0.001)。
− Matrix−Mがアジュバント添加された本発明のポリペプチド配列番号186、203および254による3回の免疫化は、PBS対照群と比較して有意な生存比率の増加(p<0.001)(図34A)、生存時間の増加(p<0.001)(図34A)、体重損失の減少(p<0.001)(図34B)および臨床スコアの低減(p<0.001)(図示せず)をもたらす。
− 本発明のポリペプチド配列番号186、203および254により誘導されたH1N1A/Brisbane/59/07FL HAに対するプレチャレンジIgG抗体力価は、PBSと比較して有意に高い(p≦0.001)(図35A)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、PBSと比較して有意に高いCR9114競合力価を誘導する(p<0.001)(図35B)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号203(バックグラウンドH1N1A/California/07/2009)は、H1N1A/Brisbane/59/07FL HAを標的抗原として使用した場合、本発明のポリペプチド配列番号186および254(バックグラウンドH1N1A/Brisbane/59/2007)と比較して有意に低いCR9114競合抗体を誘導する(p<0.001)(図35B)。
結論:本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、異種亜型H5N1A/Hong Kong/156/97による致死チャレンジに対する保護を付与する。
実施例21:H1N1A/Puerto Rico/8/34マウスモデルにおけるH1mHA三量体候補評価II
ワクチンとしての本発明のポリペプチドの使用のためのさらなる証拠を提供するため、インフルエンザによる致死チャレンジに対する3つの追加のポリペプチドの保護効力を評価した。この目的のため、本発明のポリペプチド203および254(両方とも、C末端hisタグを含有)をHEK293F細胞中で一過的に発現させ、上記のとおり精製した。さらに、本発明のポリペプチド配列番号186(同様に追加のC末端hisタグを含有)を当業者に周知の手順に従ってSF9昆虫細胞中で発現させ、上記のとおり精製した。
この試験の目的は、PBS対照群と比較した、H1N1A/Puerto Rico/8/1934チャレンジモデルにおけるMatrix−Mがアジュバント添加された本発明のポリペプチド配列番号186、203および254の保護効力を決定することであった。
10匹の雌BALB/cマウス(6〜8週齢)の群を、10μgのMatrix−Mがアジュバント添加された30μgの本発明のポリペプチド配列番号186、203および254により3週間の間隔において3回免疫化した。チャレンジモデルのための陽性対照として、CR6261(15mg/kg)をチャレンジ1日前に投与した一方(n=8)、PBSによる3回の免疫化が陰性対照として機能した(n=16)。最後の免疫化から4週間後、マウスを25×LD50のチャレンジウイルスによりチャレンジし、3週間モニタリングした(生存率、体重、臨床スコア)。
本発明のポリペプチドの免疫原性を確認するため、プレチャレンジ血清(−1日目)をH1N1A/Brisbane/59/07からのFL HAへの結合についてELISAアッセイにおいて試験した。mini−HA誘導抗体がCR9114エピトープに近接して結合するか否かを決定するため、CR9114競合ELISAを実施した。競合データを「%競合」として可視化し、(A−P)/A×100)として定義し、式中、Aは、血清が存在しない場合のFL HAへのCR9114結合の最大ODシグナルであり、Pは、所与の希釈における血清存在下のFL HAへのCR9114結合のODシグナルであり、または応答を定量し得る傾きOD計量値を使用して表現し;参照のためにCR9114およびCR8020(出発濃度5μg/ml)溶液を含めた。
結果
− 実験群についての生存割合を表12に報告する。
− 実験は有効である;PBS対照群(n=16)における全てのマウスはチャレンジ後9日目以前(中央値8日)に感染により死亡する一方、陽性対照群(n=8、15mg/kgのCR6261、チャレンジ1日前)は完全に保護される(p<0.001)。
− Matrix−Mが添加された本発明のポリペプチド配列番号186、203および254による3回の免疫化は、PBS対照群と比較して有意な生存比率の増加(p<0.001)(図36A)、生存時間の増加(p<0.001)(図36A)、体重損失の減少(p<0.001)(図37B)および臨床スコアの低減(p<0.001)(図示せず)をもたらす。
− H1mini−HAバリアントにより誘導されたH1N1A/Brisbane/59/07FL HAに対するプレチャレンジIgG抗体力価は、本発明のポリペプチド配列番号186、203および254についてPBSと比較して有意に高い(p<0.001)(図37A)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、PBSと比較して有意に高いCR9114競合力価を誘導する(p<0.001)(図37B)。
− 本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号203(バックグラウンドH1N1A/California/07/2009)は、H1N1A/Brisbane/59/07FL HAを標的抗原として使用した場合、H1N1A/Brisbane/59/2007をベースとするバリアントと比較して有意に低いCR9114競合抗体を誘導する(p≦0.001)(図37B)。
結論:本発明のMatrix−Mアジュバント添加ポリペプチド配列番号186、203および254は、H1N1A/Puerto Rico/8/34による致死チャレンジに対する保護を付与する。
実施例22:異なるH1配列バックグラウンドにおける本発明のポリペプチド
s127H1−t2−cl18long(配列番号181)に次いで、同一設計特徴を共有するが、株H1N1A/Texas/UR06−0526/07(配列番号205)およびA/New York/629/95(配列番号206)から生じるHAをベースとする2つのバリアントTex_s127H1−t2−cl18longおよびNY_s127H1−t2−cl18longを産生させた(配列番号208および210)。この実験において、C末端第第X因子開裂部位および6ヒスチジンタグが、両方のタンパク質中に存在する。発現および精製については、実施例2に記載のものと同様のプロトコルを使用し、例外としてこの手順は0.6lの培養上清から出発した。
精製ポリペプチドを、広域中和抗体CR9114の2つ以上のエピトープを提示するポリペプチドの多量体形態の存在についてサンドイッチELISA(実施例3に記載)においてさらに分析した。手短に述べると、コートmAbのCR9114を使用して精製タンパク質を捕捉し、続いてそれをビオチン化CR914またはCR6261とインキュベートし、結合をHRPコンジュゲートストレプトアビジンにより評価した。産生収量および多量体サンドイッチELISA結果を表13に示す。
表13に示される結果は、全てのバリアントが所望の結合特徴を有する多量体タンパク質をもたらすことを示す。ポリペプチドTex_s127H1−t2−cl18(配列番号208)はs127H1−t2−cl18longと比較して類似の収量を有する一方、ポリペプチドNY_s127H1−t2−cl18(配列番号210)は、s127H1−t2−cl18long(配列番号181)と比較して約4倍低い収量を有する。試験された全てのポリペプチドは、多量体化の存在を示すELISAにより決定されたとおり、s127H1−t2−cl18longと同様にCR9114およびCR6261に結合し得た。まとめると、ここに示される結果は、異なる系統発生起源のH1配列を使用するHAステムベースポリペプチドの良好な生成を実証する。
実施例23:追加のc末端三量体化ドメインを有する本発明のポリペプチド
種々のc末端を有する本発明のポリペプチドを発現させることができる。異なる長さ(HAの膜貫通ドメインの択一的トランケーションから生じる)の他、検出および精製のためのタグならびに機能ドメインも、抗原構造に影響を与えずに付加することができる。以下の構築物は、H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)またはH1A/California/07/2009(配列番号252)からのFL HAに由来する本発明のポリペプチドの短鎖(残基520からC末端まで欠失;配列番号1による番号付与)または長鎖(残基520からC末端まで欠失)形へのfoldon三量体化ドメインの付加(FlagおよびHisタグによりフランキング)を実証する。
構築物をHEK293F細胞中で一過的に発現させ(実施例2に記載)、濾過された培養上清中に存在する本発明のポリペプチドを調査した。最初に発現および三量体化のレベルをSDS−PAGEおよびウエスタンブロット(実施例2に記載、図38参照)により評価した。培養培地を、広域中和抗体CR9114の2つ以上のエピトープを提示するポリペプチドの多量体形態の存在についてサンドイッチELISA(実施例3に記載)においてさらに分析した。手短に述べると、コートmAbのCR9114を使用して精製タンパク質を捕捉し、続いてそれをビオチン化CR914とインキュベートし、結合をHRPコンジュゲートストレプトアビジンにより評価した(表14参照)。最後に、ホモジニアス結合試験を実施して本発明のポリペプチドの発現レベルを確認し、HAのステム上の公知のエピトープを有する十分に特性決定されたモノクローナル抗体(IgG)へのそれらの結合強度を決定した。ここで、c末端FlagおよびHisタグならびにヒトモノクローナルIgGのCR9114およびCR6261に依存するAlphaLISAセットアップ(Perkin Elmer)を確立した。PBS、0.05%のTween−20、および0.5mg/mlのBSAを含有する緩衝液中で全ての試薬を希釈した。
AlphaLISAセットアップを使用して発現レベルを決定するため、本発明のポリペプチドを含有する濾過された細胞培養上清を、(25μLの最終容量中10μg/mLにおける両方ともPerkin Elmer製の抗Hisドナービーズおよび抗Flagアクセプタービーズの存在下で、40倍希釈した。ホモジニアス混合物を室温において1時間インキュベートした。励起されたドナービーズ(680nm)およびアクセプタービーズが両方ともそれぞれのc末端タグに結合し、近接(約100nm)する場合、エネルギー移動(一重項酸素)をアクセプタービーズ(615nm)の発光シグナルとして計測することができる。このホモジニアスアッセイフォーマットにおけるシグナル強度は、溶液中のタンパク質の量に正比例する。発現された本発明のポリペプチドについてのAlphaLISAシグナル強度の平均を表14に示す。
本発明のポリペプチドおよびIgG間の相互作用は、室温におけるCR9114またはCR6261(それぞれ、25μL中1または2nMの最終濃度)のいずれかとの1時間のインキュベーション後に検出し、2つのビーズ、HAを認識する抗Hisドナービーズ(10μg/mL)およびIgGを認識する抗Fcアクセプタービーズ(10μg/mL)を使用した。1時間の追加のインキュベーション後、アクセプタービーズのAlphaLISAシグナルを計測した。このホモジニアスアッセイフォーマットにおけるシグナル強度は、両方の結合パートナー間の結合強度(親和性/アビディチィー)に正比例し、それによりmini−HAエピトープの完全性および質についての尺度となる。CR9114およびCR6261の結合についてのAlphaLISAシグナル強度の平均を表14に示す。
親構築物配列番号164(H1A/Brisbane/59/2007バックグラウンド)および配列番号211(H1A/California/07/2009バックグラウンド)は、C−ヘリックス中に埋め込まれたGCN4三量体化ドメインを既に含有する。これらのポリペプチドの可溶性形(これも本発明に含まれる)のc末端における追加のfoldon三量体化ドメインの挿入が考えられ、類似またはより良好な発現レベルをもたらす。追加の三量体化ドメインは、ウエスタンブロットおよび多量体ELISA結果により証明されるとおり三量体化のレベルに関して本発明のポリペプチドをさらに改善し得る。広域中和IgGのCR9114およびCR6261の結合は、1つのみの三量体化ドメインを有する本発明のポリペプチドと比較して同等またはより良好である。
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配列表
配列番号3:foldon
GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL
配列番号5:
MKQIEDKIEEIESKQ