本発明は、硬化性組成物を提供する。硬化性組成物は、後述のように、硬化性組成物を硬化することによって硬化物を形成するために使用されてもよい。硬化物は卓越した物理的特性を有し、多数の異なる最終用途及び応用に好適である。
硬化性組成物は、(A)多官能アクリレートを含む。「多官能」は、多官能アクリレート(A)を指す場合、多官能アクリレート(A)が2個以上のアクリレート官能基を有することを意味する。特定の実施例において、特定の実施形態において、多官能アクリレート(A)は、少なくとも3個、あるいは少なくとも4個、あるいは少なくとも5個、あるいは少なくとも6個、あるいは少なくとも7個、あるいは少なくとも8個、あるいは少なくとも9個、あるいは少なくとも10個のアクリレート官能基を有する。更に大きい数のアクリレート官能基、例えば20官能性アクリレートも好適となり得る。多官能アクリレート(A)は、実際はモノマー、オリゴマー、又はポリマーであってもよく、これらの組み合わせを含んでもよい。例えば、多官能アクリレート(A)は、モノマー多官能アクリレート及びオリゴマー多官能アクリレートを含んでもよい。多官能アクリレート(A)は、線状、分枝状、又は線状と分枝状との組み合わせの多官能アクリレートであってもよい。
多官能アクリレート(A)は、有機又はシリコーンベースであってもよい。多官能アクリレート(A)が有機物である場合、多官能アクリレート(A)は、炭素ベースの主鎖又は鎖を含み、その中に任意追加的にO等のヘテロ原子を有する。あるいは、多官能アクリレート(A)がシリコーンベースであるとき、多官能アクリレート(A)はシロキサンベースの主鎖又はケイ素−酸素結合を含む鎖を含む。多官能アクリレート(A)は、炭素ベースの結合及びケイ素−酸素結合の両方を含んでもよく、例えば、多官能アクリレート(A)がヒドロシリル化によって生成する場合、多官能アクリレート(A)は、ケイ素−酸素結合がその中に存在することから、なおもシリコーンベースと呼ばれる。特定の実施形態において、多官能アクリレート(A)が有機物である場合、多官能アクリレート(A)は、いかなるケイ素−酸素結合も含まず、あるいはいかなるケイ素原子も含まない。典型的には、多官能アクリレート(A)は有機物である。
(A)の目的に適した多官能アクリレートの具体例としては、2官能アクリレートモノマー、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジメタクリレート;3官能アクリレートモノマー、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート;4官能アクリレートモノマー、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;5官能以上の多官能モノマー、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート;ビスフェノールAエポキシジアクリレート;6官能芳香族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、及び4官能ポリエステルアクリレートのアクリレートオリゴマーが挙げられる。
多官能アクリレート(A)は、単一の多官能アクリレートを含んでも、2つ以上の多官能アクリレートの任意の組み合わせを含んでもよい。特定の実施形態において、多官能アクリレート(A)は、5官能以上の多官能アクリレート、例えば、5官能アクリレートから20官能アクリレートまでの任意の多官能アクリレートを含み、これは硬化性組成物の硬化を改善し得る。例えば、特定の実施形態において、多官能アクリレート(A)は、5官能以上の多官能アクリレートを、(A)の総重量を基準にして少なくとも30重量%、あるいは少なくとも50重量%、あるいは少なくとも75重量%、あるいは少なくとも80重量%の量で含む。典型的には、多官能アクリレート(A)は、フッ素置換基中のフッ素原子等、いかなるフッ素原子も含まない。
硬化性組成物は、(B)脂肪族不飽和結合を有するフッ素置換化合物を更に含む。(A)と同様に、フッ素置換化合物(B)は、上記のように、有機又はシリコーンベースであってもよい。脂肪族不飽和結合は典型的には二重結合であるが、脂肪族不飽和結合は炭素−炭素二重結合(C=C)又は炭素−炭素三重結合(C≡C)であってもよい。フッ素置換化合物(B)は、1つの脂肪族不飽和結合又は2つ以上の脂肪族不飽和結合を有してもよい。脂肪族不飽和結合は、フッ素置換化合物(B)内のいずれの位置に配置されてもよく、例えば、脂肪族不飽和結合は、フッ素置換化合物(B)の末端、側鎖、又は主鎖の一部であってもよい。フッ素置換化合物(B)が2つ以上の脂肪族不飽和結合を含む場合、各脂肪族不飽和結合はフッ素置換化合物(B)内で独立に配置されてもよく、すなわち、フッ素置換化合物(B)は、側鎖及び末端脂肪族不飽和結合、又はその他の結合位置の組み合わせを含んでもよい。
特定の実施形態において、フッ素置換化合物(B)は、(i)部分的にフッ素化されている、(ii)ペルフルオロポリエーテルセグメントを含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である。部分的にフッ素化されているとは、フッ素置換化合物(B)がペルフルオロ化されていないことを意味する。例えば、部分的にフッ素化されているとは、一置換(1個のフッ素置換基が存在する場合)、及びポリフッ素化(2個以上のフッ素置換基が存在する場合)を包含する。フッ素置換化合物(B)が(i)及び(ii)の両方である場合、フッ素置換化合物(B)はペルフルオロ化されていない置換基、部分、又は基を含み、その結果、フッ素置換化合物(B)はペルフルオロ化セグメントを含むが、分子としてのフッ素置換化合物(B)はペルフルオロ化ではなく、ポリフルオロ化されている。
フッ素置換化合物(B)がペルフルオロポリエーテルセグメントを含む場合、ペルフルオロポリエーテルセグメント中に存在し得る部分の具体例としては、−(CF2)−、−(CF(CF3)CF2O)−、−(CF2CF(CF3)O)−、−(CF(CF3)O)−、−(CF(CF3)−CF2)−、−(CF2−CF(CF3))−、及び−(CF(CF3))−が挙げられる。このような部分は、ペルフルオロポリエーテルセグメント内に任意の順序で存在してもよく、ランダム又はブロック形態でもよい。各部分は、独立して、ペルフルオロポリエーテルセグメント内に2回以上存在してもよい。一般的に、ペルフルオロポリエーテルセグメントは、酸素−酸素結合を含まず、酸素は一般的に、エーテル結合を形成するように、隣接する炭素原子間にヘテロ原子として存在する。ペルフルオロポリエーテルセグメントは、典型的には末端であり、その場合、ペルフルオロポリエーテルセグメントはCF3基で終端してもよい。
1つの特定の実施形態において、フッ素置換化合物(B)がペルフルオロポリエーテルセグメントを含む場合、ペルフルオロポリエーテルセグメントは、一般式(1)を有する部分を含み:
−(C3F6O)x−(C2F4O)y−(CF2)z−(1);
式中、下付き文字x、y、及びzは、x、y、及びzの3つ全てが同時に0ではないという条件で、それぞれ独立して0及び1〜40の整数から選択される。x及びyがいずれも0の場合、zは1〜40の整数であり、ペルフルオロポリエーテルセグメント中に少なくとも1つの他のペルフルオロエーテル部分が存在する。下付き文字y及びzは0であってもよく、xは、1〜40の整数から選択され、あるいは下付き文字x及びyは0であり、zは1〜40の整数から選択される;あるいは、下付き文字x及びzは0であり、yは1〜40の整数から選択される。下付き文字zは0であってもよく、x及びyはそれぞれ独立して1〜40の整数から選択され、あるいは下付き文字yは0であり、x及びzはそれぞれ独立して1〜40の整数から選択され;あるいは、下付き文字xは0であり、y及びzはそれぞれ独立して1〜40の整数から選択される。典型的には、x、y、及びzはそれぞれ独立して1〜40の整数から選択される。下付き文字x及びyによって示される部分は、独立して分枝状又は線状であってもよい。例えば、(C3F6O)は独立して、CF2CF2CF2O、CF(CF3)CF2O又はCF2CF(CF3)Oによって表されてもよい。
特定の実施形態において、フッ素置換化合物(B)は、(a)トリイソシアネートと、(b)(b−1)活性水素原子を有するペルフルオロポリエーテル化合物と(b−2)活性水素原子及び活性水素原子以外の官能基を有するモノマー化合物との混合物と、の反応生成物を含む。
トリイソシアネート(a)は、例えば、ジイソシアネートを三量化することによって生成されてもよい。好適なジイソシアネートの例としては、脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するもの、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;並びに、芳香族的に結合したイソシアネート基を有するもの、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
トリイソシアネート(a)の具体例としては、以下が挙げられる:
ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)及びモノマー化合物(b−2)は、それぞれ独立して選択された活性水素原子を有する。成分(b−1)及び(b−2)は、独立して2個以上の活性水素原子を有する。活性水素原子を有するヘテロ原子は、トリイソシアネート(a)のイソシアナト官能基と反応することができる。当業者は、このような活性水素原子及びイソシアネート官能基と反応性であるこれらの活性水素原子を含有する対応する官能基を容易に理解する。種々の実施形態において、成分(b−1)及び/又は(b−2)の活性水素原子は、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)又は硫黄(S)と(又は、これらに)共有結合する。これらの実施形態において、成分(b−2)の活性水素原子は反応基の一部である。活性水素を含有するこれらの反応基の例としては、ヒドロキシル官能性(−OH)、アミノ官能性(−NH2)、メルカプト官能性(−SH)、−NH−及びリン−水素結合(−PH−)が挙げられる。このような反応基は、成分(b−1)及び/又は(b−2)の置換基であってもよく、又は下記のように、置換基若しくは官能基の部分若しくは一部であってもよい。
ヒドロキシル官能性を含有する反応基の具体例としては、1価〜4価のアルコール基、例えば、C1〜C20ヒドロカルビル基を含むものが挙げられる。C1〜C20ヒドロカルビル基は、脂肪族(分枝状又は線状)、芳香族、環式、脂環式等であってもよい。C1〜C20ヒドロカルビル基は、置換でも非置換でもよい。「置換」とは、ヒドロカルビル基の1個以上の水素原子が水素以外の原子(例えば、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素等のハロゲン原子)、あるいは酸素、硫黄、又は窒素によって形式的に置き換えられてもよいことを意味する。あるいは、ヒドロキシル官能性は、このようなヒドロカルビル基の不在下で成分(b−1)及び/又は(b−2)に結合してもよい。例えば、ヒドロキシル官能性は、シラノール基(SiOH)の形で存在してもよい。
アミノ官能性(−NH2)を含有する反応基の具体例としては、一級アミン基(−RNH2)が挙げられ、式中、Rは、すぐ上に記載のように、C1〜C20ヒドロカルビル基である。
メルカプト基を含有する反応基の具体例としては、上記のC1〜C20ヒドロカルビル基を含む基のような、1〜4個のSH基が挙げられる。
−NH−を含有する反応基の具体例としては、二級アミン基に加えて、その他の−NH−含有分子、例えば、ピペラジニル基及びピペリジニル基等の含窒素6員環構造;ピロリジニル基(1−ピロリジニル基を除く)、ピロリル基(1−ピロリル基を除く)、ピロリニル基(1−ピロリニル基を除く)、イミダゾリル基(1−イミダゾリル基を除く)及びピラゾリル基(1−ピラゾリル基を除く)等の含窒素5員環構造;並びに、インドリル基(1−インドリル基を除く)、インダゾリル基(1−インダゾリル基を除く)、プリニル基(7−プリニル基を除く)、ペリミジニル基(1−ペリミジニル基を除く)、カルバゾリル基(9−カルバゾリル基を除く)等の含窒素縮合多環構造が挙げられる。
リン−水素結合(−PH−)を含有する反応基の具体例としては、ホスフィンドリル基(1−ホスフィンドリル基を除く)等の含リン環状構造が挙げられる。
ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)は、一般的に、ペルフルオロポリエーテルセグメントを含む。ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)のペルフルオロポリエーテルセグメントは、典型的には、下記のように、ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)から部分的に形成されるフッ素置換化合物(B)のペルフルオロポリエーテルセグメント(存在する場合)になる。ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)は、典型的には線状である。特定の実施形態において、ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)は少なくとも1個の末端ヒドロキシ基、あるいは2個以上の末端ヒドロキシル基を有する。ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)が2個以上の末端ヒドロキシル基を含有する場合、ヒドロキシル基は、ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)の同じ側又は反対側の末端に位置してもよい。上記のように、末端ヒドロキシル基は、ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)の活性水素を構成し得る。
ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)は、典型的には、200〜500,000、あるいは500〜10,000,000の分子量を有する。
1つの特定の実施形態において、ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)は、次の一般式を有し:
式中、Xは、F又は−CH2OH基であり、Y及びZは、それぞれ独立して、F及び−CF3から選択され、aは、1〜16の整数であり、cは、0又は1〜5の整数であり、b、d、e、f及びgは、それぞれ独立して0又は1〜200の整数であり、hは、0又は1〜16の整数である。上の一般式において、種々の下付き文字によって表される部分又は単位は、どのような順序で表されてもよく、ランダム又はブロック形態であってもよい。
ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)の具体例としては、米国特許第6,906,115B2号に開示されているものが挙げられ、この開示の全体を参照により本明細書に援用する。特定の実施形態において、ペルフルオロポリエーテル化合物(b−1)はペルフルオロポリエーテルセグメントを含み、その数平均分子量は1,000〜100,000、あるいは1,500〜10,000グラム毎モル(g/mol)である。
上記のように、モノマー化合物(b−2)は、活性水素原子以外の1つの官能基を、活性水素原子に加えて有する。典型的には、モノマー化合物(b−2)の官能基は自己架橋性官能基である。自己架橋性官能基とは、自己架橋性官能基が同じであっても、互いに架橋反応を起こすことができる官能基である。自己架橋性官能基の具体例としては、ラジカル重合反応性官能基、カチオン重合反応性官能基及び光架橋のみが可能な官能基が挙げられる。自己架橋性であるラジカル重合反応性官能基の例としては、エチレン性不飽和(例えば、二重結合(C=C))を含有する官能基が挙げられる。自己架橋性であるカチオン重合反応性官能基の例としては、カチオン重合反応性のエチレン性不飽和、エポキシ基、オキセタニル基、及びアルコキシシリル基又はシラノール基を含有するケイ素化合物が挙げられる。光架橋のみが可能な官能基の例としては、ビニルケイ皮酸の光二量化性官能基が挙げられる。
特定の実施形態において、モノマー化合物(b−2)は、(メタ)アクリル酸エステル又はビニルモノマーを含む。これらの実施形態において、モノマー化合物(b−2)は、2〜30個、あるいは3〜20個の炭素原子を有してもよい。
モノマー化合物(b−2)の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、HO(CH2CH2O)i−COC(R1)C=CH2(式中、R1はH及びCH3から選択され、iは、2〜10の整数である)、ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、HO(CH2)jCH=CH2(式中、jは2〜20の整数である)、(CH3)3SiCH(OH)CH=CH2、スチリルフェノール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
特定の実施形態において、フッ素置換化合物(B)は、(a)と(b−1)とを反応させて反応中間体を生成し、次いでこの反応中間体と(b−2)とを反応させてフッ素置換化合物(B)を生成することによって生成される。
この特定のフッ素置換化合物(B)のその他の態様は、その調製方法を含めて、米国特許第8,609,742(B2)号に開示されており、この開示の全体を参照により本明細書に援用する。
硬化性組成物は、更に、(C)少なくとも1個のアクリレート基を有するオルガノポリシロキサンを含む。オルガノポリシロキサン(C)は、2個以上のアクリレート基、例えば、2〜20個、あるいは2〜10個のアクリレート基を有してもよい。アクリレート基は、オルガノポリシロキサン(C)において独立して末端及び/又は側鎖であってもよい。オルガノポリシロキサン(C)は、線状、分枝状、環状、脂環式等であってもよく、ケイ素−酸素及び少なくとも1個のアクリレート基を含む任意の構造を有してもよい。アクリレート基は、オルガノポリシロキサン(C)のケイ素原子に直接結合する、二価結合基を介してオルガノポリシロキサンのケイ素原子と連結する、オルガノポリシロキサンのケイ素以外の原子(例えば、炭素)に結合する等であってもよい。
オルガノポリシロキサン(C)は、典型的には、アミノ置換を含むもの以外のケイ素結合基を含む。このようなケイ素結合基は、一般的に一価であり、例としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基が挙げられる。オルガノポリシロキサン(C)は、典型的には、2〜1000、あるいは2〜500、あるいは2〜300の重合度を有する。
特定の実施形態において、オルガノポリシロキサン(C)は、アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとのマイケル付加反応の反応生成物を含む。アミノ置換オルガノポリシロキサンのアミノ置換は、少なくとも1個、例えば、2〜10個のアミン含有基を含む。アミン含有基は、独立して一級でも二級でもよいが、一般的には、多官能アクリレートとのマイケル付加反応のための少なくとも1個のNH結合を含む。マイケル付加反応は、当該技術分野において既知であり、求核付加を伴う。より具体的には、アミノ置換オルガノポリシロキサンが、マイケル付加反応によって多官能アクリレートのアクリレート官能基と反応して、上記の実施形態のオルガノポリシロキサン(C)を生成する。
マイケル付加反応によるアミノ置換オルガノポリシロキサンとの反応に好適な多官能アクリレートの具体例としては、成分(A)に関して上に記載したものが挙げられる。多官能アクリレートは、多官能アクリレート(A)と同じでも異なっていてもよい。多官能アクリレート(A)は、多官能アクリレート(A)の一部とアミノ置換オルガノポリシロキサンからその場でオルガノポリシロキサン(C)が生成するように、硬化性組成物中で過剰に使用されてもよい。あるいは、オルガノポリシロキサン(C)は別個に生成されて、多官能アクリレート(A)及び硬化性組成物のその他の成分と組み合わされてもよい。
一般的に、1分子の多官能アクリレートの1個のアクリレート官能基が、1分子のアミノ置換オルガノポリシロキサンの1個のアミン含有基と反応する。特定の実施形態において、アミノ置換オルガノポリシロキサンの1分子には、アミン含有基が1個だけ存在する。典型的には、アミン含有基は末端であり、生成するオルガノポリシロキサン(C)は線状になる。しかし、アミン含有基は、オルガノポリシロキサン(C)が分枝するように、アミノ置換オルガノポリシロキサン内で側鎖であってもよい。更に、アミノ置換オルガノポリシロキサンは、2個以上のアミン含有基を有してもよい。これらの実施形態において、アミノ置換オルガノポリシロキサンのアミン含有基のそれぞれは、多官能アクリレートのアクリレート官能基と反応し得る(更に、任意選択的に、アミノ置換オルガノポリシロキサンのアミン含有基のそれぞれは、異なる多官能アクリレート分子のアクリレート官能基と反応し得る)。
オルガノポリシロキサン(C)の生成に使用されるアミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートのモル比は変動し得る。例えば、アミノ置換オルガノポリシロキサンがアミン含有基を1個だけ含む場合、1モルのアミノ置換オルガノポリシロキサン基は、1モルの多官能アクリレートと反応し得る。ただし、多官能アクリレートは2個以上のアクリレート官能基を含むことから、2モルのアミノ置換オルガノポリシロキサンが1モルの多官能アクリレートと反応する場合がある。更に、アミノ置換オルガノポリシロキサンが2個以上のアミン含有基を含む場合、1モルのアミノ置換オルガノポリシロキサン基は、1モルを超える多官能アクリレートと反応し得る。アミノ置換オルガノポリシロキサン及び多官能アクリレートは、典型的には、アミノ置換オルガノポリシロキサンの多官能アクリレートに対するモル比が10:1〜1:10、あるいは5:1〜1:5、あるいは2:1〜1:2で反応して、オルガノポリシロキサン(C)を形成する。
アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとの間のマイケル付加反応は、任意選択的に、溶媒、ビヒクル及び/又は触媒の存在下で実施されてもよい。典型的には、反応は、溶媒又はビヒクルなしで、すなわち、未希釈で実施される。溶媒は、アミノ置換オルガノポリシロキサン及び/又は多官能アクリレートを可溶化できる、アミノ置換オルガノポリシロキサン及び多官能アクリレートと異なる任意の溶媒であってよい。ビヒクルは、アミノ置換オルガノポリシロキサン及び/又は多官能アクリレートを部分的にのみ可溶化するか、あるいは可溶化しない点で、溶媒と異なる場合がある。
一般的に、アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとの間のマイケル付加反応の開始には、触媒は必要ではない。ただし、望ましい場合には、アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとの間のマイケル付加反応を開始及び/又は加速するために、触媒を使用してもよい。好適な触媒としては、共役酸の塩基が挙げられる。典型的には、共役酸及びその対応する塩基は、有機物である。このような塩基の具体例としては、1,4−ジヒドロピリジン、メチルジフェニルホスファン、メチルジ−p−トリルホスファン、2−アリル−N−アルキルイミダゾリン、テトラ−t−ブチル水酸化アンモニウム、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)及びDBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。使用する場合、触媒は典型的には、アミノ置換オルガノポリシロキサン及び多官能アクリレートの総重量を基準にして、0を超えて2.0重量%まで、あるいは0.05〜1.0重量%、あるいは0.1〜1.0重量%の濃度で使用される。
アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとの間のマイケル付加反応は、容器内で実施される。容器は、典型的には高温、例えば、50〜150℃、あるいは75〜120℃、あるいは90〜110℃に加熱される。容器は、アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとの間のマイケル付加反応を引き起こすための時間、例えば、15〜240分、あるいは15〜120分、あるいは30〜90分の間、高温で加熱されてもよい。オルガノポリシロキサン(C)を形成するためのマイケル付加反応の進行を、分光法、例えば、赤外(IR)分光法によって監視してもよい。
マイケル付加反応によるオルガノポリシロキサン(C)の生成に好適なアミノ置換オルガノポリシロキサンとしては、
が挙げられ、式中、Meはメチル基を示す。このようなアミノ置換オルガノポリシロキサンは、単なる代表例にすぎない。例えば、アミノ置換オルガノポリシロキサンは、異なる数の繰返しジシロキシ単位、異なる置換基、異なるアミノ置換等を有してもよい。
アミノ置換オルガノポリシロキサンの特定の実施形態の追加の態様は、米国特許第8,178,613号に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。
あるいは、オルガノポリシロキサン(C)は、アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとの間のマイケル付加反応によって生成される必要はなく、すなわち、オルガノポリシロキサン(C)は、他の方法によって調製されてもよい。例えば、オルガノポリシロキサン(C)は、少なくとも1つのケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンをアルケニル官能性メタクリレート化合物と反応させることによって調製されてもよく、この場合、オルガノポリシロキサン(C)はヒドロシリル化によって生成する。オルガノポリシロキサン(C)に好適な少なくとも1個のアクリレート基を有するオルガノポリシロキサンのかかる具体例の1つは、2014年03月17日出願の米国特許出願公開第61/954,096号(DC11806;H&H 071038.01436)、発明の名称「Fluorinated Compound,Curable Composition Comprising Same,and Cured Product」に開示されており、これは本願と同時に提出されており、その全体を参照により本願に援用する。
硬化性組成物は更に、補強充填剤(D)を含む。補強充填剤(D)は、硬化性組成物から生成した硬化物に硬度及び耐引っ掻き性の増大をもたらすために使用される。補強充填剤(D)は、一般的にシリカを含む。シリカは、いかなる種類のシリカであってもよく、例えば、シリカは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ等であってもよい。典型的には、補強充填剤(D)はコロイダルシリカを含む。
コロイダルシリカは、ビヒクル中にシリカ(すなわち、シリカ粒子)の混合物又は懸濁を含む。ビヒクルは、あるいは、分散媒と呼ばれることもある。コロイダルシリカのシリカ粒子は、典型的には、非晶質かつ無孔である。
コロイダルシリカのビヒクルは、典型的には、ビヒクルを硬化性組成物(及びコロイダルシリカ)から除去するため、中程度の低沸点を有する。例えば、ビヒクルは、典型的には、大気圧(すなわち、1atm)で、摂氏30〜200度、あるいは40〜150度(℃)の沸点を有する。
コロイダルシリカに好適なビヒクルとしては、極性及び非極性ビヒクルが挙げられる。このようなビヒクルの具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノールのようなアルコール;グリセリルトリアセテート(トリアセチン)、グリセリルトリプロピオネート(トリプロピオニン)、及びグリセリルトリブチレート(トリブチリン)のようなグリセロールエステル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなポリグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及びブチルセロソルブのようなセロソルブ;ジメチルアセトアミド;トルエン及びキシレンのような芳香族;酢酸エステル、例えば、酢酸メチル;酢酸エチル;酢酸ブチル;メチルイソブチルケトンのようなケトン;酢酸;及びアセトンが挙げられる。特定の実施形態において、コロイダルシリカのビヒクルは、水及びアルコールから選択される。コロイダルシリカは、あるいは、コロイダルシリカ分散液と呼ばれることもある。2種類以上の異なるビヒクルを使用してもよいが、コロイダルシリカが均質になるように、このようなビヒクルは一般的に互いに相溶性である。コロイダルシリカのビヒクルは、典型的には、例えば、コロイダルシリカの総重量を基準にして10〜70重量%の濃度でコロイダルシリカ中に存在する。
コロイダルシリカのシリカ粒子は、典型的には、200ナノメートル(nm)未満、例えば、1〜100、あるいは1〜50ナノメートル(nm)の平均粒径を有する。
コロイダルシリカのシリカ粒子は、純粋な二酸化ケイ素であってもよく、又はAl2O3、ZnO、及び/又はカチオン、例えば、Na+、K+、Ca++、Mg++等のような不純物を公称量含んでもよい。
コロイダルシリカは、場合により、例えば充填処理剤で、表面処理されてよい。コロイダルシリカは、硬化性組成物への組み込みの前に表面処理されてもよく、又はその場で表面処理されてもよい。
コロイダルシリカを処理するために使用される充填剤処理剤の量は、コロイダルシリカが充填剤処理剤がその場で処理されるか、又は硬化性組成物に組み込まれる前に前処理されるか等の様々な要因によって変動し得る。
充填剤処理剤は、アルコキシシランのようなシラン;アルコキシ官能性オリゴシロキサン;環状ポリオルガノシロキサン;ヒドロキシル官能性オリゴシロキサン、例えば、ジメチルシロキサン;メチルフェニルシロキサン;ステアレート;又は、脂肪酸を含んでもよい。
充填剤処理剤に好適なアルコキシシランの例としては、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
あるいは、アルコキシシランは、エチレン性不飽和基を含んでもよい。エチレン性不飽和基は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。これらの実施形態において、アルコキシシランは、一般式R2 dASi(OR3)3−dによって表されてもよい。この一般式において、R2は、脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基である。その具体例としては、アルキル基、アリール基、及びフルオロアルキル基が挙げられる。R3は、アルキル基であり、典型的には1〜10個の炭素原子を有する。Aは、脂肪族不飽和結合を有する一価の有機基である。Aの具体例としては、メタクリルオキシ基、アクリルオキシ基、3−(メタクリルオキシ)プロピル基及び3−(アクリルオキシ)プロピル基等のアクリル基含有有機基;ビニル基、ヘキセニル基及びアリル基等のアルケニル基;スチリル基及びビニルエーテル基等が挙げられる。下付き文字dは、0又は1である。
エチレン性不飽和基を有するアルコキシシランの具体例としては、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びアリルトリエトキシシランが挙げられる。
アルコキシ官能性オリゴシロキサンは、あるいは、充填剤処理剤として使用されてもよい。アルコキシ官能性オリゴシロキサン及びその調製方法は当該技術分野において既知である。例えば、好適なアルコキシ官能性オリゴシロキサンとしては、式(R4O)eSi(OSiR4 2R5)(4−e)のものが挙げられる。この式において、下付き文字eは、1、2、又は3、あるいは3である。各R4は、1〜10個の炭素原子を有する飽和及び不飽和ヒドロカルビル基から独立して選択される。各R5は、飽和又は不飽和ヒドロカルビル基である。
あるいは、シラザンを、別個に又は例えばアルコキシシランと組み合わせて、充填剤処理剤として使用してもよい。
あるいは更に、充填剤処理剤は、有機ケイ素化合物であってもよい。有機ケイ素化合物の例としては、限定するものではないが、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、及びトリメチルモノクロロシランのようなオルガノクロロシラン;ヒドロキシ末端封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、ヘキサメチルジシロキサン、及びテトラメチルジビニルジシロキサンのようなオルガノシロキサン;ヘキサメチルジシラザン及びヘキサメチルシクロトリシラザンのようなオルガノシラザン;並びに、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランのようなオルガノアルコキシシランが挙げられる。ステアレートの例としては、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。脂肪酸の例としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、タロー、ヤシ油、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
残渣量の充填剤処理剤が、例えば、コロイダルシリカから分離した別個の成分として、硬化性組成物中に存在してもよい。
あるいは、コロイダルシリカのシリカ粒子は、処理剤で表面処理する必要はない。これらの実施形態において、コロイダルシリカは、未修飾コロイダルシリカと呼ばれることもある。未修飾コロイダルシリカは、典型的には、酸性又は塩基性分散液の形態である。
所望により、追加の充填剤、例えば、コロイダルシリカ以外の充填剤が、硬化性組成物中に存在してもよい。その例としては、アルミナ、炭酸カルシウム(例えば、ヒュームド、溶解、粉砕、及び/又は沈降)、珪藻土、タルク、酸化亜鉛、チョップドKEVLAR(登録商標)のような短繊維、オニキス、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
硬化性組成物は、任意追加的に(i)(E)水、(ii)(F)水(E)以外のキャリアビヒクル、又は(iii)(E)及び(F)を含んでもよい。
使用する場合、水(E)は、補強充填剤(D)の加水分解のために、硬化性組成物中に存在する。例えば、当該技術分野において既知のように、コロイダルシリカのシリカ粒子は、シリカ粒子の表面にシラノール基を含んでもよい。水(E)は、コロイダルシリカのビヒクルとして使用されてもよく、その場合、硬化性組成物中で別個の成分としての水(E)は不要である。更に、コロイダルシリカが既に表面処理されている場合、同様に、水(E)は一般的に使用されない。
キャリアビヒクル(F)は、典型的には、アルコール含有ビヒクルである。アルコール含有ビヒクルは、アルコールを含むか、アルコールから本質的になるか、又はアルコールからなってもよい。アルコール含有ビヒクルは、硬化性組成物の成分を分散するためである。特定の実施形態において、アルコール含有ビヒクルは、硬化性組成物の成分を可溶化し、その場合、アルコール含有ビヒクルはアルコール含有溶媒と呼ばれることもある。
アルコール含有ビヒクルに好適なアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルコール含有ビヒクルがアルコールを含むか又はアルコールから本質的になる場合、アルコール含有ビヒクルは、追加の有機ビヒクルを更に含んでもよい。その具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又は類似のケトン;トルエン、キシレン、又は類似の芳香族系炭化水素;ヘキサン、オクタン、ヘプタン、又は類似の脂肪族系炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、又は類似の有機含塩素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、又は類似の脂肪酸エステルが挙げられる。アルコール含有ビヒクルが追加の有機ビヒクルを含む場合、アルコール含有ビヒクルは、典型的には、アルコール含有ビヒクルの総重量を基準にして10〜90重量%、あるいは30〜70重量%の量でアルコールを含み、アルコール含有ビヒクルの残部は追加の有機ビヒクルである。
種々の実施形態において、硬化性組成物は更に、光重合開始剤(G)を含んでもよい。光重合開始剤(G)は、最も一般的には、硬化性組成物を電磁放射線の照射により硬化させる場合に使用される。光重合開始剤(G)は、電磁放射線照射の下でラジカルを発生できる既知の化合物、例えば有機過酸化物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物及び/又はアゾ化合物から選択されてもよい。
好適な光重合開始剤(G)の具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントン、3,9−ジクロロキサントン、3−クロロ−8−ノニルキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノ−1−プロパノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
使用する場合、光重合開始剤(G)は、典型的には、多官能アクリレート(A)100重量部に対し、1〜30、あるいは1〜20重量部の量で硬化性組成物中に存在する。
所望の場合、硬化性組成物は、更にシラン化合物(H)を含んでもよい。その例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン;並びに、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン及びエチルトリイソプロポキシシラン等のアルキルアルコキシシランが挙げられる。シラン化合物は、別個の成分として、又は別の例として、硬化性組成物においてシルセスキオキサンを生成するために使用されてもよい。
硬化性組成物中に存在してもよい添加剤のその他の例としては、酸化防止剤;増粘剤;レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、分散剤、帯電防止剤、及び防曇剤等の界面活性剤;紫外線吸収剤;種々の顔料及び染料等の着色剤;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);フェノチアジン(PTZ);及びこれらの組み合わせが挙げられる。
硬化性組成物は、硬化性組成物の種々の成分の組み合わせを伴う種々の方法によって調製されてもよい。特定の実施形態において、コロイダルシリカは、硬化性組成物に組み込む前に、表面処理される。成分は、硬化性組成物の調製の前、間、又は後に、個別に又は集合的に加熱されてもよい。
硬化性組成物は、種々の最終用途及び応用に使用されてもよい。最も典型的には、硬化性組成物は、硬化物の形成に使用される。硬化物は、繊維、コーティング、層、フィルム、複合体、物品等の形態であってもよい。
本発明は、追加的に、硬化性組成物から形成された硬化物及び硬化性組成物を用いて硬化物を形成する方法を提供する。硬化物及び硬化物の形成方法を、合わせて下に記載する。
硬化物の形成方法は、硬化性組成物を基材に塗布する工程を含む。方法は、更に、硬化物を基材上に形成するように、硬化性組成物を基材上で硬化する工程を含む。例えば、硬化物を形成する方法は、硬化性組成物を基材上に塗布して、その湿潤層を基材上に形成する工程を含む。方法は、更に、湿潤層を硬化して硬化物を形成する工程を含む。
基材は限定されず、その上に硬化物を形成することが望ましい任意の基材であってもよい。例えば、基材は、電子物品、光学物品、家電製品及び部品、自動車の車体及び部品、高分子物品等を構成してもよい。基材は、任意の形状又は構成を有してもよい。
電子物品の例としては、典型的には、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子ディスプレイを有するものが挙げられる。これらの電子ディスプレイは、例えば、コンピューターモニター、テレビ、スマートフォン、全地球測位システム(GPS)ユニット、音楽プレイヤー、遠隔制御、携帯用ゲーム機、ポータブル・リーダー、自動車ディスプレイパネル等の様々な電子デバイスにしばしば使用される。
したがって、本発明は、硬化物及び基材を含む物品を提供し、硬化物は基材上に堆積される。物品は、電子物品、光学物品、家電製品若しくはその部品、自動車車体若しくはその部品、又は高分子物品を含んでもよい。物品は、センサを含んでもよい。
いくつかの実施形態において、物品はセンサであってもよい。本明細書で使用するとき、センサは、外部事象又は量の変化を検出し、適切なアウトプットを提供するデバイスである。例えば、センサは、温度又は温度変化を検出して、適切な電圧アウトプットを提供する熱電対であってもよい。センサは、外部環境と接触して、外部事象又は量の変化を検出するように構成された検出面を含んでもよい。検出面は、検出した外部事象又は量の変化を適切なアウトプットに変換するための信号処理装置と連通してもよい。センサのアウトプットは、電気信号及び/又は光信号の形態であってもよい。センサは、物理センサ、化学センサ、又はバイオセンサであってもよい。物理センサは、温度、圧力、光の強度若しくは波長、音の強度若しくは周波数、又は電気信号を測定するように構成されてもよい。化学センサは、水、酸素分子又はオゾン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素、又は化学兵器等の被検物質の存在を検出するか又は濃度を測定する等、化学組成を測定するように構成されてもよい。バイオセンサは、生体内で酵素活性の存在を検出するか若しくは程度を測定する、生体外で薬剤又は代謝産物の存在を検出するか若しくは濃度を測定する、又は生体内で皮膚パターン(バイオプリント)又は特徴を検出若しくは認識するように構成されてもよい。
いくつかの実施形態において、センサはバイオセンサであり、バイオセンサはバイオプリントセンサである。検出又は測定されるバイオプリントは、人体解剖学を含む動物解剖学の皮膚特徴を識別する任意のもの、例えば、指紋(母指紋を含む)、掌紋、足底紋、耳紋、動物の足跡等であってもよい。バイオプリントセンサは、光学式、超音波式、サーマルライン式、感圧式、又は静電容量式であってもよい。バイオプリントセンサは、紫外線(光学式)、高周波音波(超音波式)、溝、隆起及び隆線をはさんだ温度変化(サーマルライン式)、溝、隆起及び隆線をはさんだ圧力変化(感圧式)、又は溝、隆起及び隆線の間での皮下皮膚層導電性の差(静電容量式)を使用して皮膚パターンのデジタル画像を取得してもよい。バイオプリントセンサは、センサピクセルのセンサアレイを含んでもよく、各センサピクセルは、センサアレイ内のその位置における外部事象又は量の変化を検出し、その位置に適したアウトプットを生じるように構成される。バイオプリントセンサは、センサアレイにおける各センサピクセルからのアウトプットをマッピングし、それによってバイオプリントの視覚的又は電子的画像の形態で合成画像を作製し得る。合成画像は、バイオプリントを2次元又は3次元で描写してもよい。例えば、隆起、隆線及び溝(隆線間の谷)を含む指紋は、静電容量式の指紋センサによって撮像されてもよく、これは、指紋の隆起、隆線、又は溝上の異なる位置上に配置された静電容量センサピクセルのセンサアレイから指紋の合成画像を作製し得る。合成画像は、2次元の隆起/隆線パターンでも、3次元のトポグラフィー画像でもよい。
いくつかの実施形態において、センサは(人間の)指紋センサである。指紋センサは、光学式、超音波式、サーマルライン式、感圧式、又は静電容量式であってもよい。いくつかの実施形態において、指紋センサは、光学的指紋センサ、あるいは静電容量式指紋センサであってもよい。指紋センサは、指紋感知を必要とする電子デバイス、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、電子リーダー等の生体認証スキャナを採用したパーソナル電子デバイスの一部であってもよい。
したがって、本発明は、センサ又はセンサを含む電子デバイスを提供し、このセンサの検出面は、その上に本発明の硬化性組成物から形成された発明的硬化物のフィルムがコーティングされている。本発明は、センサの検出面上に硬化物のフィルムを形成する方法も提供し、この方法は、硬化性組成物をセンサの検出面上に塗布して、センサの検出面上に硬化性組成物のフィルムを形成する工程、及びフィルムの硬化性組成物を硬化してセンサの検出面上に硬化物のフィルムを与える工程を含む。いくつかの実施形態において、センサはバイオセンサ、あるいはバイオプリントセンサ、あるいは指紋センサ、あるいは光学的指紋センサ、あるいは静電容量式指紋センサである。
フィルムは疎油性(例えば、皮脂をはじく)かつ疎水性(すなわち、水をはじく)である。そのため、フィルムは、使用する指が濡れている(例えば、人工汗を用いた試験で示されるように)又は過度に油っぽい(例えば、皮脂を用いた試験で示されるように)場合でも、指紋センサが機能できるようにする可能性がある。センサの検出面上の本発明の硬化物のフィルムは、センサを反復使用した後でも、疎油性かつ疎水性のコーティング効果を提供するのに十分な厚さでああり得る(すなわち、フィルムは、通常使用時に容易に拭き取られるほど薄くない)。フィルムは、単層フィルムでもよく、あるいは多層フィルムでもよい。フィルムはまた、センサが外部事象又は量の変化を検出することを妨げない、特定の種類のセンサ(例えば、光学式、超音波式、サーマルライン式、感圧式、又は静電容量式)に十分な薄さであり得る。いくつかの実施例において、フィルムは、5マイクロメートル(μm)〜100μmの厚さを有する。
センサに好適なフィルムの疎油性の程度は、ある量のヘキサデカンをセンサの検出素子の表面に塗布し、次いで、後述のように、静的ヘキサデカン接触角を測定することによって決定されてもよい。センサに好適なコーティング組成物の疎水性の程度は、ある量の脱イオン水をセンサの検出素子の表面に塗布し、次いで、後述のように、水接触角を測定することによって決定されてもよい。したがって、疎油性かつ疎水性であるフィルムは、水接触角>100°及びヘキサデカン接触角>50°を有する。
図1において、図1a(左上)は、コーティングされたプラスチック板上の通常の(濡れていない)指紋の写真画像を示し、ここで、コーティングは本発明の組成物の発明的硬化物のフィルムである。図1b(右上)は、コーティングされていないプラスチック板上の通常の(濡れていない)指紋の写真画像を示す。図1c(左下)は、コーティングされたプラスチック板上の濡れた(水)指紋の写真画像を示し、ここでコーティングは図1aに使用したものである。図1d(右下)は、コーティングされていないプラスチック板上の濡れた(水)指紋の写真画像を示す。図1aを図1bと比較することでわかるように、本発明のフィルムは、その上にいかなる疎油性及び疎水性のフィルムもないプラスチック板と比較して、通常の(濡れていない、又は過度に油っぽくない)指紋の画像の隆線画定及び忠実度を増大する。図1bを図1dと比較することでわかるように、指上に水が存在すると、通常の(濡れていない、又は過度に油っぽくない)指紋の指紋画像と比較して、指紋画像の明瞭性及び忠実性が低下し、ここで指紋は、コーティングされていない、すなわち、いかなる疎油性及び疎水性のフィルムもその上にないプラスチック板から得られた。図1cを図1dと比較することでわかるように、本発明のフィルムは、その上にいかなる疎油性及び疎水性のフィルムもない、コーティングされていないプラスチック板と比較して、コーティングされたプラスチック板で得られた濡れた(水)指紋の指紋画像の隆線画定及び忠実度を増大する。
上記で紹介したように、基材はまた、家電製品及び部品のような金属物品であってもよい。代表的な物品は、食器洗浄機、ストーブ、電子レンジ、冷蔵庫、冷凍庫等であり、典型的には、例えば、ステンレス鋼、艶消しニッケル、アルミニウム等のような光沢のある金属外観を有する。
あるいは、基材は、自動車車体又は部品等の乗物本体又は部品であってもよい。例えば、硬化性組成物は、自動車車体に光沢のある外観を付与する層であって、審美的に心地良く、埃等の汚れ及び指紋からの染みを防ぐ層を形成するために、自動車車体のトップコート上に直接塗布されてもよい。
好適な光学物品の例としては、ガラス板、無機層を含むガラス板、セラミックス等の無機材料が挙げられる。好適な光学物品の更なる例には、有機材料、例えば、透明なプラスチック材料及び無機層を含む透明なプラスチック材料等が挙げられる。光学物品の特定の例には、反射防止フィルム、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡のレンズ、ビームスプリッタ、プリズム、鏡等が挙げられる。
有機材料及び/又は高分子物品の具体例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリシクロオレフィン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン66等)、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル(例えば、ポリメチルメタクリレート)、セルロース(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等)、又はこのような有機ポリマーのコポリマーが挙げられる。これらの材料が眼科用素子において利用され得ることも評価されることになる。眼科用素子の非限定例としては、二焦点、三焦点及び多重焦点レンズのようなシングルビジョン、又はマルチビジョンレンズ(セグメント化されていてもいなくてもよい)を含む、補正又は非補正レンズが挙げられ、並びに、限定するものではないが、例えば、コンタクトレンズ、眼球内レンズ、拡大レンズ及び保護レンズ又はバイザーを含む、視覚の補正、保護又は改善のために使用される他の素子が挙げられる。眼科用素子に好ましい材料は、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリカーボネートコポリマー、ポリオレフィン(特にポリノルボルネン、CR39として知られているジエチレングリコール−ビス(アリルカーボネート)ポリマー、及びコポリマー)、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー(特にビスフェノールAから誘導される(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー)、チオ(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、ウレタン及びチオウレタンポリマー及びコポリマー、エポキシポリマー及びコポリマー、並びに、エピスルフィドポリマー及びコポリマーから選択される1つ以上のポリマーを含む。
基材は、本発明で列挙する特定の物品と異なるが、上記の材料のいずれかを含んでもよい。例えば、基材は、家電製品又は乗物本体の一部ではない金属又はアロイを含んでもよい。
上記物品/基材に加えて、硬化性組成物は、自動車又は飛行機用の窓部材等の他の基材上に塗布されてもよく、これにより、機能性の向上をもたらす。
あるいはまた、基材は、セメント、石、紙、ボール紙、セラミック等を含んでもよい。
あるいは、又は加えて、基材は、反射防止コーティングを含んでもよい。これらの実施形態において、反射防止コーティングは、その下の基材上に配置された材料の1つ以上の層を含んでもよい。反射防止コーティングは、一般的に、その下の基材よりも低い屈折率を有する。反射防止コーティングは、多層でもよい。多層反射防止コーティングは、その下の基材上に誘電体材料の層を2つ以上含み、少なくとも1つの層は、その下の基材の屈折率よりも高い屈折率を有する。かかる多層反射防止コーティングは、しばしば、反射防止積層フィルムと呼ばれる。
反射防止コーティングは、種々の材料から形成されてもよい。特定の実施形態において、反射防止コーティングは、金属酸化物薄膜、例えば、スパッタコーティングされた金属酸化物薄膜を含む。あるいは、金属酸化物薄膜は、熱蒸発によって形成されてもよい。「金属酸化物」は、本明細書で使用するとき、単一金属(半金属を含む)の酸化物並びに金属アロイの酸化物を包含する。金属酸化物の一例は、酸化ケイ素であり、これは、酸素を消耗する場合がある(すなわち、酸化物中の酸素の量が化学量論量よりも少ない)。その他の好適な金属酸化物としては、スズ、チタン、ニオブ、亜鉛、ジルコニウム、タンタル、イットリウム、アルミニウム、セリウム、タングステン、ビスマス、インジウム、及びこれらの混合物の酸化物が挙げられる。具体例としては、SiO2、SnO2、TiO2、Nb2O5、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Y2O3、Al2O3、CeO2、WO3、Bi2O、In2O3、及びITO(インジウムスズ酸化物)、並びにこれらの組み合わせ及び交互層が挙げられる。
所望により、下にある基材は、反射防止コーティングを堆積する前に表面をプライマー処理されてもよい。例えば、プライマー処理された表面は、アクリル層のような化学的プライマー層の塗布によって、又は化学エッチング、電子線照射、コロナ処理、プラズマエッチング、若しくは接着促進層の共押出から、形成されてもよい。このようなプライマー処理された基材は市販されている。
硬化性組成物を基材に塗布する方法は様々であってもよい。例えば、特定の実施形態において、硬化性組成物を基材に塗布する工程は、ウェットコーティング塗布方法を使用する。この方法に好適なウェットコーティング塗布方法の具体例としては、ディップコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スパッタリング、スロットコーティング、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルコール含有ビヒクルは、硬化性組成物及び湿潤層に存在する任意の他のビヒクル又は溶媒と共に、加熱又はその他の既知の方法によって、湿潤層から除去されてもよい。
硬化性組成物は、所望のレベルの撥水性、撥油性、染み防止性及び汚れ防止性をもたらすための任意の厚さで基材に塗布されてもよい。硬化物は、層又はフィルムに関連するもの以外の任意の形状又は形態を有してもよいが、特定の実施形態において、硬化物は、別の方法として層又はフィルムと呼ばれる場合がある。これらの実施形態において、硬化物は、0を超え20マイクロメートル(μm)まで、あるいは0を超え10μmまで、あるいは0を超え5μmまでの厚さを有する。特定の実施形態において、硬化物は、少なくとも15、あるいは少なくとも20、あるいは少なくとも30オングストロームの厚さを有し、かかる実施形態における上限は20μmである。
硬化性組成物、並びに該組成物から形成された湿潤層は、活性エネルギー線(すなわち、高エネルギー線)を照射することによって急速に硬化できる。活性エネルギー線は紫外線、電子ビーム、又はその他の電磁波若しくは放射線を含んでもよい。紫外線の使用は、低コスト及び高い安定性の観点から、好ましい。紫外線源は、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、キセノン−水銀ランプ、又は深紫外線ランプを含んでもよい。
湿潤層を硬化する工程は、一般的に、湿潤層の少なくとも一部、あるいは全体を硬化するのに十分な線量の放射線に湿潤層を曝露する工程を含む。湿潤層を硬化するための放射線量は、典型的には10〜8000ミリジュール毎平方センチメートル(mJ/cm2)である。特定の実施形態において、湿潤層を硬化するために、照射と共に加熱が使用される。例えば、湿潤層は、湿潤層に活性エネルギー線を照射する前、間、及び/又は後に加熱されてもよい。活性エネルギー線は一般的に硬化性組成物の硬化を開始するが、残渣量のアルコール含有ビヒクル若しくは任意の他のビヒクル及び/又は溶媒が湿潤層に存在してもよく、これは、加熱によって揮発及び除去されてもよい。典型的な加熱温度は、50〜200℃の範囲である。湿潤層の硬化は、硬化物をもたらす。
硬化物は、ホストマトリックスを含み、そのホストマトリックスに補強充填剤(D)が分散されている。ホストマトリックスは、多官能アクリレート(A)、脂肪族不飽和結合を有するフッ素置換化合物(B)、及び少なくとも1個のアクリレート基を有するオルガノポリシロキサン(C)の反応から生成する。補強充填剤(D)は、一般的に硬化物のホストマトリックス中に均質に分散されるが、補強充填剤(D)は、ホストマトリックス中に不均質に分散されてもよく、又は他の方法で硬化物の任意の次元にわたって様々な濃度であってもよい。
硬化物は卓越した物理的特性を有し、種々の基材上の保護コーティングとしての使用に好適である。例えば、硬化物は、卓越した(すなわち、高い)硬度、耐久性、基材への接着性、並びに染み、汚れ、及び引っ掻きへの抵抗性を有する。特定の実施形態において、硬化物は、少なくとも90度(°)、あるいは少なくとも100°、あるいは少なくとも105°、あるいは少なくとも108°、あるいは少なくとも110°の水接触角を有する。これらの実施形態において、上限は典型的には120°である。硬化物の水接触角は、典型的には、硬化物を摩耗試験に供した後でもこの範囲であり、これは、硬化物の卓越した耐久性を例証する。例えば、耐久性に劣る硬化物では、摩耗後に水接触角が低下し、これは通常、硬化物が少なくとも部分的に劣化したことを示す。
これらの実施形態において、硬化物はまた、典型的には、0を超え0.2未満、あるいは0を超え0.15未満、あるいは0を超え0.125未満、あるいは0を超え0.10未満のすべり(動)摩擦係数(μ)を有する。摩擦係数は無単位であるが、しばしば(μ)によって表される。
例えば、すべり(動)摩擦係数は、物体と硬化物との間で選択材料(例えば、法的文書の標準片)を用いて、表面積及び質量が測定済みの物体を硬化物上に配置することにより、測定され得る。次に、力を重力に対して垂直に加え、物体を、硬化物を横切るように所定の距離をすべらせることで、硬化物のすべり摩擦係数を計算する。
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記述された明白で特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、化合物、組成物、又は方法は、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態間で異なってもよい。様々な実施形態の具体的な特徴及び態様を説明するために本明細書において依拠されている任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果は、全ての他のマーカッシュ群の構成員から独立して、各マーカッシュ群のそれぞれの構成員から得られるものとする。マーカッシュ群の各要素は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別に及び/又は組み合わせて依拠することがあり、適切な根拠を提供する。
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は独立して及び総じて、添付の請求の範囲内に入り、たとえ、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到する。計数範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施態様を十分に記述しかつ可能にし、かかる範囲及び部分範囲が、更に、関連する2分の1、3分の1、4分の1、5分の1等に詳述されてよいことを当業者は容易に理解する。ほんの一例として、範囲「0.1〜0.9」は、下の方の3分の1、即ち、0.1〜0.3、中間の3分の1、即ち、0.4〜0.6、及び上の方の3分の1、即ち、0.7〜0.9に更に詳述でき、これらは、個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供し得る。更に、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」等の範囲を定義又は修飾する用語に関して、かかる用語は部分範囲及び/又は上限又は下限を含む。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、本質的に、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲等を含み、各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供する。最終的には、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。例えば、範囲「1〜9」は、様々な個々の整数、例えば、3、並びに小数点(又は分数)を含む個別の数、例えば、4.1を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、以下の態様のいずれか1つである。
態様1 硬化性組成物であって、(A)多官能アクリレート、(B)脂肪族不飽和結合を有するフッ素置換化合物、(C)少なくとも1個のアクリレート基を有するオルガノポリシロキサン、及び(D)補強充填剤を含む、硬化性組成物。
態様2 (B)が、(i)部分的にフッ素化されている、(ii)ペルフルオロポリエーテルセグメントを含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、態様1に記載の硬化性組成物。
態様3 (B)が、上記ペルフルオロポリエーテルセグメントを含み、上記ペルフルオロポリエーテルセグメントが一般式(1):−(C3F6O)x−(C2F4O)y−(CF2)z−(1)の部分を含み;式中、下付き文字x、y、及びzは、x、y、及びzが同時に0ではないという条件で、それぞれ独立して0及び1〜40の整数から選択される、態様2に記載の硬化性組成物。
態様4 (B)が、(a)トリイソシアネートと、(b)(b−1)少なくとも1つの活性水素原子を有するペルフルオロポリエーテル化合物と、(b−2)活性水素原子及び上記活性水素原子以外の官能基を有するモノマー化合物との混合物と、の反応の反応生成物を含む、態様1〜3のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
態様5 (b−1)が少なくとも1個の末端ヒドロキシ基を有する、態様4に記載の硬化性組成物。
態様6 (B)は、(a)と(b−1)とを反応させて反応中間体を生成し、次いでこの反応中間体と(b−2)とを反応させて(B)を生成することによって生成される、態様4又は5のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
態様7 (C)は、アミノ置換オルガノポリシロキサンと多官能アクリレートとのマイケル付加反応の反応生成物を含む、態様1〜6のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
態様8 (i)(E)水、(ii)(F)水以外のキャリアビヒクル、又は(iii)(E)及び(F)を更に含む、態様1〜7のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
態様9 (D)がコロイダルシリカを含む、態様1〜8のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
態様10 (D)が、脂肪族不飽和結合を有するオルガノアルコキシシランで表面処理されている、態様1〜9のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
態様11 (A)多官能アクリレート、(B)脂肪族不飽和結合を有するフッ素含有化合物、(C)少なくとも1個のアクリレート基を有するオルガノポリシロキサン、及び(D)補強充填剤を含む、硬化性組成物を硬化することによって生成する硬化物であって、(D)は、上記硬化物及び上記硬化性組成物中に分散されている、硬化物。
態様12 0を超え20マイクロメートル(μm)の厚さを有するフィルムを含む、態様11に記載の硬化物。
態様13 基材上に配置された、態様11又は12のいずれか1つに記載の硬化物。
態様14 少なくとも100°の水接触角を有する、態様10〜13のいずれか1つに記載の硬化物。
態様15 硬化物を形成する方法であって、態様1の硬化性組成物を基材に塗布する工程;及び、硬化物が基材上に形成するように、硬化性組成物を基材上で硬化する工程を含む、方法。
態様16 態様11〜14のいずれか1つに記載の硬化物と基材とを含む物品であって、上記硬化物が基材上に配置されている、物品。
態様17 電子物品、光学物品、家電製品若しくはその部品、自動車車体若しくはその部品、又は高分子物品を含む、態様16に記載の物品。
態様18 センサを含む、態様17に記載の物品。
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
実施例
実施例1及び比較例1〜3:
下の表1は、実施例1及び比較例1〜3について、硬化性組成物の調製に使用した成分を、そのそれぞれの量と共に示す。表1の値は、グラム単位である。
多官能アクリレート(A)はKayarad dPHAの商標名で、Nippon Kayaku Co.,Ltd.(日本、東京)から市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとのブレンド(モル比1:1)を含む。
フッ素置換化合物(B)は、Optool(商標)Dac HPの商標名でDaikin Industries,Ltd.(日本、大阪)から市販されている脂肪族不飽和結合を有するフッ素置換化合物を含む。
オルガノポリシロキサン((C)生成用)は、DMS−A12の名前でGelest Inc.(Morrisville,PA)から市販されている、25℃で20〜30mm2/s(20〜30センチストークス(cSt))の粘度を有するアミノプロピル末端ポリ(ジメチル)シロキサンを含む。
補強充填剤(D)は、ORGANOSILICASOL(商標)IPA−STの商標名で、Nissan Chemical America Corporation(Houston,TX)から市販されている、イソプロパノールに単分散したコロイダルシリカ(30重量%SiO2)を含む。
水(E)は、脱イオン水を含む。
キャリアビヒクル(F)は、トルエンを含む。
キャリアビヒクル(F’)は、2−プロパノールを含む。
光重合開始剤(G)は、Irgacure(登録商標)184の商標名でBASF Corporation(Florham Park,NJ)から市販されている1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含む。
充填剤処理剤は、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含む。
実施例1:
キャリアビヒクル(F)、キャリアビヒクル(F’)、多官能アクリレート(A)、及びオルガノポリシロキサン((C)生成用)を、乾燥した三つ口フラスコに入れ、50℃で1時間撹拌した。オルガノポリシロキサン((C)生成用)は、多官能アクリレート(A)の一部とマイケル付加反応によって反応し、少なくとも1個のアクリレート官能基(C)を有するオルガノポリシロキサンを生成する。このように、オルガノポリシロキサン((C)生成用)は、オルガノポリシロキサン(C)の前駆体であり、(C)は、オルガノポリシロキサン((C)生成用)と多官能アクリレート(A)の一部との間のマイケル付加反応によって、その場で生成する。充填剤処理剤、補強充填剤(D)、及び水(E)を、上記フラスコに入れ、フラスコの内容物を、撹拌しながら50℃で更に1時間加熱する。充填剤処理剤は、その場で反応して、補強充填剤(D)を表面処理する。フラスコの内容物を室温まで冷却する。光重合開始剤(G)及びフッ素置換化合物(B)を、フラスコに入れて、硬化性組成物を得る。実施例1の硬化性組成物は、無色透明な溶液である。
比較例1:
キャリアビヒクル(F)、キャリアビヒクル(F’)、多官能アクリレート(A)、充填剤処理剤、補強充填剤(D)、及び水(E)を、乾燥した三つ口フラスコに入れ、撹拌しながら50℃で1時間加熱する。充填剤処理剤は、その場で反応して、補強充填剤(D)を表面処理する。フラスコの内容物を室温まで冷却する。光重合開始剤(G)をフラスコに入れて、硬化性組成物を得る。比較例1の硬化性組成物も、無色透明な溶液である。比較例1の硬化性組成物はフッ素置換化合物(B)又はオルガノポリシロキサン((C)生成用)(又は実施例1でその場で生成される、アクリレート官能基を有するオルガノポリシロキサン(C))を含まないことから、比較例1の硬化性組成物は、実施例1の硬化性組成物と異なる。
比較例2:
キャリアビヒクル(F)、キャリアビヒクル(F’)、多官能アクリレート(A)、充填剤処理剤、補強充填剤(D)、及び水(E)を、乾燥した三つ口フラスコに入れ、撹拌しながら50℃で1時間加熱する。充填剤処理剤は、その場で反応して、補強充填剤(D)を表面処理する。フラスコの内容物を室温まで冷却する。光重合開始剤(G)及びフッ素置換化合物(B)を、上記フラスコに入れて、硬化性組成物を得る。比較例2の硬化性組成物も、無色透明な溶液である。比較例2の硬化性組成物はオルガノポリシロキサン((C)生成用)(又は実施例1でその場で生成される、アクリレート官能基を有するオルガノポリシロキサン(C))を含まないことから、比較例2の硬化性組成物は、実施例1の硬化性組成物と異なる。
比較例3:
キャリアビヒクル(F)、キャリアビヒクル(F’)、多官能アクリレート(A)、及びオルガノポリシロキサン((C)生成用)を、乾燥した三つ口フラスコに入れ、50℃で1時間撹拌した。オルガノポリシロキサン((C)生成用)は、多官能アクリレート(A)の一部とマイケル付加反応によって反応し、少なくとも1個のアクリレート官能基(C)を有するオルガノポリシロキサンを生成する。このように、オルガノポリシロキサン((C)生成用)は、オルガノポリシロキサン(C)の前駆体であり、(C)は、オルガノポリシロキサン((C)生成用)と多官能アクリレート(A)の一部との間のマイケル付加反応によって、その場で生成する。充填剤処理剤、補強充填剤(D)、及び水(E)を、上記フラスコに入れ、フラスコの内容物を、撹拌しながら50℃で更に1時間加熱する。充填剤処理剤は、その場で反応して、補強充填剤(D)を表面処理する。フラスコの内容物を室温まで冷却する。光重合開始剤(G)をフラスコに入れて、硬化性組成物を得る。比較例3の硬化性組成物も、無色透明な溶液である。比較例3の硬化性組成物はフッ素置換化合物(B)を含まないことから、比較例3の硬化性組成物は、実施例1の硬化性組成物とは異なる。
硬化物:
実施例1及び比較例1〜3の硬化性組成物を、シリンジフィルタ(ガラスマイクロファイバー入りポリテトラフルオロエチレン;直径30ミリメートル(mm);孔径0.45マイクロメートル(μm);Whatman(登録商標)の商標名で、GE Healthcare(Little Chalfront,U.K.)より市販)で濾過する。実施例1及び比較例1〜3の硬化性組成物の試料を、異なる基材(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び仕上げ研磨アルミニウム)に塗布する。具体的には、硬化性組成物の試料を、スピンコータ(SUSS MicroTec(Sunnvale,CA)から市販)を用いて、毎分200回転(rpm)で20秒間、次いで1,000rpmで30秒間のスピンコーティングによって異なる基材に塗布し、異なる基材上に湿潤フィルムを得る。湿潤フィルムを70℃で10分間乾燥し、湿潤フィルムを硬化して硬化物をもたらすのに十分な時間にわたり、2J/cm2の線量でUV照射することによって硬化する。硬化物は、異なる基材上に配置された薄膜の形態である。
実施例1及び比較例1〜3の硬化性組成物から生成した硬化物の物理的特性を、下記のように測定する。
接触角:
硬化物のそれぞれに関して、水及びヘキサデカンの静的接触角を評価する。具体的には、水及びヘキサデカンの静的接触角は、AST Products,Inc.(Billerica,MA)から市販されているVCA Optima XEゴニオメータにより測定する。測定される水接触角は、硬化物のそれぞれに関して2μLの液滴を基準にした静的接触角である。水の接触角をWCA(水接触角)と呼び、ヘキサデカンの接触角をHCA(ヘキサデカン接触角)と呼ぶ。WCA及びHCAの値は、度(°)である。
鉛筆硬度:
硬化物のそれぞれの鉛筆硬度は、「Standard Test Method for Film Hardness by Pencil Test」と題されたASTM D3363−04(2011)32に従って測定する。鉛筆硬度の値は、一般的に、黒鉛評価尺度に基づき、9H(最も硬い値)〜9B(最も軟らかい値)の範囲である。
クロスハッチ接着試験:
クロスハッチ接着試験は、「Evaluation of Coatings Applied to Plastics」と題されたASTM D 3002に従って実施され、「Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test」と題されたASTM D3359−09e2は、硬化物に下の基材まで直角の切り込み(これがクロスハッチ状である)を使用する。切断端の割れ及び接着の損失を、以下のASTM規格に基づいて検査した:
ASTMクラス5B:切断端は完全に平滑であり、クロスハッチ試験により形成される格子の正方形に、その下の基材から剥離したものがない;
ASTMクラス4B:切り込みの交差において、硬化物の小さな断片の剥離;面積で5%を有意に超えないクロスカット面積が影響を受けている;
ASTMクラス3B:硬化物が、切断端に沿って、及び切り込みの交差において剥がれている;面積で5%を有意に超えるが15%を有意に超えないクロスカット面積が影響を受けている;
ASTMクラス2B:硬化物が、切断端に沿って部分的又は全体的に大きな帯状に剥がれている、及び/又はクロスハッチ試験で形成された格子の異なる正方形で、部分的又は全体的に剥がれている;面積で15%を有意に超えるが35%を有意に超えないクロスカット面積が影響を受けている;
ASTMクラス1B:硬化物が、切断端に沿って大きな帯状に剥がれ、及び/又はクロスハッチ試験で形成された格子のいくつかの正方形で、その下の基材から部分的又は全体的に剥がれている;面積で35%を有意に超えるが65%を有意に超えないクロスカット面積が影響を受けている;
ASTMクラス0B:ASTMクラス1B〜5Bに分類できない任意の程度の剥離。
耐摩耗性試験:
耐磨耗性試験は、往復式摩耗試験機モデル5900(Taber Industries(North Tonawanda,New York)から市販)を利用する。使用する研磨材は、Taber IndustriesからのCS−17 Wearaser(登録商標)である。研磨材は、6.5mm×12.2mmの寸法を有する。往復式摩耗試験機を、毎分25サイクルの速度、2.5センチメートル(1インチ)のストローク長、10.0Nの荷重で、10、25、及び100サイクル運転する。毎サイクル後に、硬化物の表面を目視検査して、摩耗を判定する。以下の等級を、この光学的検査に基づいて、割り当てる:
等級1:硬化物への損傷なし;
等級2:硬化物に微小な引っ掻き傷;
等級3:硬化物に中程度の引っ掻き傷;
等級4:基材が硬化物を通して部分的に見える;及び
等級5:基材が硬化物を通して完全に見える。
汚れマーカー試験:
汚れマーカー試験は、硬化物が汚れ抵抗性を示す能力を光学的に測定する。具体的には、汚れマーカー試験において、硬化物のそれぞれに、Super Sharpie(登録商標)油性マジック(Newell Rubbermaid Office Products(Oak Brook,IL)より市販)で線を描く。この線を光学的に検査して、線が硬化物上で玉状になるか否かを判定する。ランク「1」は、線が液滴に完全に玉状になって小さな液滴となることを示すのに対し、ランク「5」は、線が全く玉状にならないことを示す。硬化物上にそれぞれの線を引いてから30秒後に、線を1枚の紙(Kimtech Science(商標)Kimwipes(商標)、Kimberly−Clark Worldwide,Inc.(Irving,TX)から市販)で5回連続で拭き取る。ランク「1」は、線(又はその玉状部分)完全に基材から除去されることを示すのに対し、ランク「5」は、線が全く除去されないことを示す。
接触角耐久性試験:
硬化物の耐久性を、摩耗後の硬化物のWCA及びHCAを測定する接触角耐久性試験によって測定する。一般的に、摩耗後のWCA又はHCAが大きいほど、硬化物は耐久性が高い。WCA及びHCAは、硬化物の摩耗後に、上記のように測定する。硬化物の摩耗は、往復式摩耗試験機モデル5900(Taber Industries(North Tonawanda,New York)から市販)によって実施される。使用する研磨材は、2×2センチメートル(cm)の面積を有するマイクロファイバークロス(Wypall(商標)、Kimberly−Clark Worldwide,Inc.(Irving,TX)から市販))である。往復式摩耗試験機は、250グラムの荷重で、毎分60サイクルの速度にて10,000サイクル運転する。
摩擦係数(COF)試験:
COFは、Texture Technologies(Scarsdale,NY)から市販されているTA−XT2テクスチャーアナライザーによって測定する。COFは、約156グラムの荷重を有するスレッドを、各硬化物とスレッドとの間に配置された一片の標準紙を用いて、各硬化物上に配置することにより、測定される。スレッドは、25mm×25mmの面積を有する。力を重力に対し垂直な方向に加え、約2.5mm/秒の速度にて約42mmの距離にわたって各層に沿ってスレッドを動かし、COFを測定する。COFは無単位であるが、しばしば(μ)によって表される。COFの標準偏差も以下に含める。
下の表2及び3は、上記の試験に基づく、硬化物のそれぞれ(及び特定の基材上での)物理的特性を例証する。表2及び3において、「PC」はポリカーボネート基材を意味し;「PMMA」は、ポリメチルメタクリレート基材を意味し;「Al」は、仕上げ研磨アルミニウムを意味し;「Ex.」は例を意味し;「C.E.」は比較例を意味する。
上の表2及び3に明白に例証されるように、実施例1の本発明の硬化性組成物によって形成された硬化物の物理的特性は、比較例1〜3の硬化性組成物から形成された硬化物の物理的特性よりも優れる。具体的には、実施例1の本発明の硬化性組成物によって形成された硬化物は、比較例1〜3の硬化性組成物から形成された硬化物と比較して、有意に増大した耐久性(摩耗後のWCA及びHCAに基づく)を有する。事実、実施例1の硬化性組成物から形成された硬化物の摩耗後のWCA及びHCAは、比較例1及び3の硬化性組成物から形成された硬化物のWCA及びHCAの2倍近く大きい。上記のように、条件及び成分の相対量はその他では同一であることから、実施例1と比較例1〜3の硬化性組成物の唯一の違いは、特許請求される成分(B)及び(C)の有無に関するものである。
本発明は、例示的な方法にて記述されており、使用された用語は限定よりもむしろ説明的な言葉の性質を持つことを意図している。明らかに本発明の多くの修正及び変更が上記教示から可能である。本発明は、具体的に記載した方法の通り以外の方法でも実施され得る。