JP2017506885A - アデノ随伴ウイルスベクターの高力価産生 - Google Patents
アデノ随伴ウイルスベクターの高力価産生 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017506885A JP2017506885A JP2016547187A JP2016547187A JP2017506885A JP 2017506885 A JP2017506885 A JP 2017506885A JP 2016547187 A JP2016547187 A JP 2016547187A JP 2016547187 A JP2016547187 A JP 2016547187A JP 2017506885 A JP2017506885 A JP 2017506885A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- expression
- aav
- ncl
- cell line
- npm1
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N7/00—Viruses; Bacteriophages; Compositions thereof; Preparation or purification thereof
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/85—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
- C12N15/86—Viral vectors
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N2750/00—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssDNA viruses
- C12N2750/00011—Details
- C12N2750/14011—Parvoviridae
- C12N2750/14111—Dependovirus, e.g. adenoassociated viruses
- C12N2750/14141—Use of virus, viral particle or viral elements as a vector
- C12N2750/14143—Use of virus, viral particle or viral elements as a vector viral genome or elements thereof as genetic vector
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N2750/00—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssDNA viruses
- C12N2750/00011—Details
- C12N2750/14011—Parvoviridae
- C12N2750/14111—Dependovirus, e.g. adenoassociated viruses
- C12N2750/14151—Methods of production or purification of viral material
- C12N2750/14152—Methods of production or purification of viral material relating to complementing cells and packaging systems for producing virus or viral particles
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Zoology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Virology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Plant Pathology (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Immunology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
Abstract
本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、AAVベクターの産生のための産生細胞株、及びそのようなベクターを産生する方法に関する。より詳細には、本発明は、前記ベクターの力価を増加するよう適合された産生細胞株、及び前記産生細胞株を用いてAAVベクターを産生する方法に関する。
Description
本発明は、アデノ随伴ウイルス(AVV,adeno-associated viral)ベクター、AAVベクターの産生のための産生細胞株、及びそのようなベクターを産生する方法に関する。より詳細には、本発明は、前記ベクターの力価を増加するように適合された産生細胞株、及び前記産生細胞株を用いてAAVベクターを産生する方法に関する。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、野生型AAVがいかなるヒト疾患にも関連したことがないため、優れた安全性プロフィールを有する。したがって、AAVは、遺伝子治療にとってポピュラーで、かつ成果を挙げたベクターである。AAVベクターは、血友病B、心臓疾患、及び先天性盲を含む多くの種々の状態についての臨床試験において幅広く研究されている。加えて、最初のEU認可された遺伝子治療薬である、Glyberaは、家族性リポタンパク質リパーゼ欠損症(LPLD,familial lipoprotein lipase deficiency)の処置のためのAAVベクターに基づいており、遺伝子治療におけるAAVベクターの潜在能力を例示している。
AAVベクター設計において多くの進歩があったが、既存の免疫応答などの障壁により、臨床効果を達成するために、高力価AAVの投与、及び、多くの場合、免疫抑制の併用投与が必要とされている。これは、AAV産生においてかなりの難題を提示し、かつAAVベクターの臨床的使用における考慮すべき安全性の意味合いを含む。
AAVベクターは、最も一般的には、AAVプラスミド、及びアデノウイルスなどの別のウイルスに由来したヘルパープラスミドの一過性同時トランスフェクションにより産生される。臨床開発を支援するためにAAVのラージスケール生産及び頑強な精製において最近、かなりの進展があった。しかしながら、高力価AAVの産生はまだかなりの難題であり、所望の用量を達成するのに患者がベクターの反復投与を受けることを必要とする。例えば、Glyberaについて、ベクターを3×1012vg/kgの用量で、40回又は60回の複数回の注射を通して投与することが必要とされる。
さらに、現在の精製方法の結果として、AAV産物は、典型的には、高レベルのタンパク質凝集物、又はベクターDNAを欠く不完全にパッケージングされた空カプシドを含有する。最終産物における空カプシドは、しばしば、完全粒子のレベルの40倍ほどもあり得る。これらの不純物は、患者において望ましくない免疫応答を引き起こし得る。例えば、最近の研究により、高用量のベクター投与後、インビボで、マウス及びヒトにおける細胞性免疫応答がAAV2カプシド内のエピトープに対して向けられ、かつ空カプシドの存在が肝細胞形質導入を阻害することが示されている。空カプシドの望ましくない免疫原性の潜在的な有害作用は、製造物の安全性及び効力を損なう。
治療機能をもたない空カプシドの既知方法による除去は、ベクターDNAを含有する完全粒子とのそれらの粒子サイズ、親和性、及びタンパク質組成の生来の類似性により困難である。完全粒子を含有するゲノムから空AAVカプシドを分離するために継続的な努力がなされてきた。空粒子を含まないAAV2が、示差的CHCl3により達成されている。しかしながら、スケールアップ生産及びGMP製造においてこの方法を用いることは問題があり得る。イオン交換クロマトグラフィーもまた、AAV2、4、5、及び8における空カプシドの分離について報告されている。しかしながら、20%から最高30倍までの空カプシドが、最終産物に残っていた。
したがって、最終産物において空カプシドの存在を減少させ、又は排除するAAVベクター産生の新しい方法を開発する必要性がある。これは、AAV産物の安全性及び効力を向上させるだろう。空粒子の低減はまた、高力価産生におけるハードルを乗り越えさせるだろう。
AAVベクター産生における2つの型の粒子の形成に寄与する細胞の因子及びウイルスの因子はまだほとんど知られていない。一般的に、ウイルスは、それらのゲノムをタンパク質カプシド内へ、構造タンパク質のウイルスゲノムとの会合によるか、又はウイルスゲノムの、あらかじめ構築されたカプシド内への挿入によるかのいずれかでパッケージングする。AAVは、あらかじめ構築されたカプシド内へそれらのゲノムをパッケージングすることが知られている。ウイルスDNAの効率的な挿入に特定のアミノ酸相互作用が必要とされることが報告されており、AAVカプシドタンパク質の単一アミノ酸変異及び全体の立体構造変化が、結果として、AAVゲノムのパッケージングの欠損を生じることが示されている。産生細胞タンパク質全体とDNAヘリカーゼがAAV構築に必要とされることを示す、AAV構築における細胞タンパク質の関与に関する研究もまた非常に限定されている。しかしながら、AAV DNAがカプシド内へ挿入される実際の機構は知られていない。
AAV構築における細胞タンパク質の役割をより良く理解し、最終的には、AAV産物の安全性及び品質を向上させるために、本発明者らは、AAVベクターにおいて同時産生され、かつ同時精製される宿主細胞タンパク質を分析している。特に、本発明者らは、3つのAAV血清型:AAV2、AAV5、及びAAV8において、空カプシドと完全ベクターとの間でのタンパク質組成の最初の系統的分析及び比較を行っている。本発明者らは、異なる血清型間にいくつかの著しい違いがあるが、3つのAAV血清型の間に内因性類似性を実証している。重要なことには、本発明者らは、空カプシドと完全ベクターとの間に有意な違いがあることを初めて実証した。最後に、本発明者らは、AAV産物に本質的に会合しているいくつかの宿主細胞タンパク質を同定している。特に、本発明者らは、宿主細胞タンパク質YB1、NPM1、及びNCLがAAV産物中に見出されること、並びにこれらの宿主細胞タンパク質の発現の調節がAAVベクター粒子の産生に影響することを実証している。
したがって、本発明は、YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つの発現が、対照産生細胞株と比較して調節されているトランスジェニック産生細胞株を提供する。典型的には、(i)NPM1及びNCL、(ii)YB1及びNPM1、(iii)YB1及びNCL、又は(iv)YB1、NPM1、及びNCLの発現が、対照産生細胞株と比較して本発明の産生細胞株において調節されている。
好ましい実施形態において、YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つの発現が、対照産生細胞株と比較して低下しており、YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、CRISPRゲノム編集、二本鎖RNA(dsRNA,double stranded RNA)、低分子干渉RNA(siRNA,small interfering RNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA,small hairpin RNA)、ミクロRNA、又はアンチセンスRNAを用いて低下し得る。典型的には、YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現は、shRNAを用いて低下しており、好ましくは、YB1発現が、配列番号14〜18のヌクレオチド配列を含むshRNA(Y1〜Y5)を用いて低下しており、NPM1発現が、配列番号4〜8のヌクレオチド配列を含むshRNA(NPM−N6〜NPM−N10)を用いて低下しており、及び/又はNCL発現が、配列番号9〜13のヌクレオチド配列を含むshRNA(NCL−N1〜NCL−N5)を用いて低下している。YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現は、CRISPRゲノム編集を用いて低下し得る。一実施形態において、YB1の発現は、配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、及び/又は配列番号39と40から選択されるgRNAペアを用いて低下している。
本明細書における表2に列挙された1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質の発現もまた、対照産生細胞株と比較して、本発明の産生細胞株において調節され得る。
好ましい実施形態において、本発明のトランスジェニック産生細胞株は、ヒト胎児由来腎臓293T細胞株である。
本発明はまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを産生するための方法であって、YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つの発現が調節されている産生細胞株においてアデノ随伴ウイルスを培養するステップを含む、方法を提供する。
典型的には、産生細胞株における(i)NPM1及びNCL、(ii)YB1及びNPM1、(iii)YB1及びNCL、又は(iv)YB1、NPM1、及びNCLの発現が、本発明の方法により調節されている。好ましくは、YB1、NPM1、及び/又はNCL発現の調節は、YB1、NPM1、及び/又はNCL発現の低下であり、YB1、NPM1、及び/又はNCL発現が、CRISPRゲノム編集、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、ミクロRNA、又はアンチセンスRNAを用いて低下している。典型的には、YB1、NPM1、及び/又はNCL発現は、shRNAを用いて低下しており、好ましくは、YB1発現が、配列番号14〜18のヌクレオチド配列を含むshRNA(Y1〜Y5)を用いて低下しており、NPM1発現が、配列番号4〜8のヌクレオチド配列を含むshRNA(NPM−N6〜NPM−N10)を用いて低下しており、及び/又はNCL発現が、配列番号9〜13のヌクレオチド配列を含むshRNA(NCL−N1〜NCL−N5)を用いて低下している。YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現は、CRISPRゲノム編集を用いて低下し得る。一実施形態において、YB1の発現は、配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、及び/又は配列番号39と40から選択されるgRNAペアを用いて低下している。
表2に列挙された1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質の発現もまた、本発明の方法に用いられる産生細胞株において調節され得る。
本発明の方法は、対照方法により産生されるAAVベクターの力価と比較して少なくとも2倍、AAVベクターの力価を増加し得、及び/又は本発明の方法は、対照方法により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比と比較して、少なくとも20%、完全AAVベクター:空AAVベクターの比を増加させ得る。
好ましい実施形態において、本発明の方法に用いられるトランスジェニック産生細胞株は、ヒト胎児由来腎臓293T細胞株である。
好ましくは、本発明の方法は、AAV2、AAV5、及び/又はAAV8血清型AAVベクターを産生する。
本発明はさらに、本発明の産生細胞株及び/又は本発明の方法から得られるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの集団を提供する。好ましくは、本発明の集団における完全AAVベクター:空AAVベクターの比は、対照方法により産生される集団における完全AAVベクター:空AAVベクターの比と比較して、少なくとも20%増加している。好ましくは、本発明のAAVベクター集団は、AAV2、AAV5、及び/又はAAV8血清型ベクターを含む。
アデノ随伴ウイルスベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト及びいくつかの他の霊長類種に感染する小型ウイルスのファミリーである。AAVは、パルボウイルス(Parvoviridae)科のディペンドウイルス(Dependovirus)属に属する。AAVは小型(およそ20nm)で、無エンベロープの、複製欠損性ウイルスである。AAVは、プラスセンス又はマイナスセンスのいずれでもあり得る、長さがおよそ4.7キロベース(kb,kilobase)の一本鎖線状DNAゲノムを有する。
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト及びいくつかの他の霊長類種に感染する小型ウイルスのファミリーである。AAVは、パルボウイルス(Parvoviridae)科のディペンドウイルス(Dependovirus)属に属する。AAVは小型(およそ20nm)で、無エンベロープの、複製欠損性ウイルスである。AAVは、プラスセンス又はマイナスセンスのいずれでもあり得る、長さがおよそ4.7キロベース(kb,kilobase)の一本鎖線状DNAゲノムを有する。
AAVゲノムは、DNA鎖の両端に逆位末端配列(ITR,inverted terminal repeat)、並びに2つのオープンリーディングフレーム(ORF,open reading frame):rep及びcapを含む。前者は、AAV生活環に必要とされるRepタンパク質をコードする4つの重複遺伝子で構成され、後者は、カプシドタンパク質:VP1、VP2、及びVP3の重複ヌクレオチド配列を含有し、それらのカプシドタンパク質は共に相互作用して、正二十面体対称のカプシドを形成する。
VP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質の遺伝子は、一般的に、p40と名付けられた単一のプロモーターによって制御され、3つ全ては、単一のmRNAから翻訳される。VP1、VP2、及びVP3の分子量は、典型的には、それぞれ、約87、72、及び62キロダルトン(kDa,kiloDalton)である。AAVカプシドタンパク質は、典型的には、AAV DNAゲノムにコードされている。
ヒト集団におけるAAVの高い血清有病率(ヒトのおよそ80%がAAV2について血清陽性である)にも関わらず、そのウイルスは、いかなるヒト病気にも結びつけられたことがない。AAVベクターは、分裂細胞と静止細胞の両方に感染することができる。そのウイルスは、宿主細胞のゲノムへ組み込まれることなく、染色体外状態で持続され得る。あるいは、そのウイルスは、ヒト19番染色体の特定の部位(AAVS1)で宿主細胞ゲノムへ安定的に組み込まれ得る。アデノウイルスとは対照的に、AAVは、通常、それに感染した細胞に免疫応答を引き起こさず、したがって、筋肉及び眼の疾患についての遺伝子治療の関連において脳を含む関心対象となる部位へ遺伝子を送達することができる。これらの特徴により、AAVは、遺伝子治療のため、及び疾患モデルを開発するためのウイルスベクターの作製の非常に魅力的な候補となっている。
AAV構築及び産生の過程の間、AAVベクターは、本質的かつ服従的に、様々な細胞タンパク質を必要とするが、これらのタンパク質のアイデンティティは、以前には、あまり特徴づけられていなかった。本発明者らは、遺伝子治療のためのAAVベクターの産生を向上させることを目的として、AAVベクターと本質的に会合した宿主タンパク質を初めて、同定し、かつ特徴づけている。特に、本発明者らは、3つの血清型の組換えAAV、すなわち、AAV2、AAV5、及びAAV8を調べ、AAVベクター産生においてNPM1、NCL、及びYB1についての重要な役割を実証している。液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC/MS/MS,liquid chromatography-mass spectrometry)を用いて、本発明者らは、NPM1、NCL、及びYB1を含む66のAAV会合性ヒト細胞タンパク質を同定している。NPM1、NCL、及び/又はYB1についてのshRNA配列を導入することにより、それぞれの遺伝子を標的として、下方制御し、AAV力価を増加させる。
本明細書で記載されているように、本発明は、産生されるウイルス力価を増加させる、AAVベクターの産生のための新しい産生系を提供する。本発明の産生系はまた、産生される完全ウイルスベクター粒子:空ウイルスベクター粒子の比を増加させ得る。本発明の産生系は、AAVベクターの産生に適する産生細胞株、及び前記産生細胞株を用いてAAVベクターを産生する方法を含む。
本発明はまた、前記産生系、産生細胞株、及び方法により産生されるAAVベクターを提供する。典型的には、本発明のAAVベクターは、当技術分野において知られた標準方法により産生されるAAVベクターとは異なり、本発明のAAVベクターが、より高い力価を生じ、完全AAVベクター:空AAVベクターの比が向上し、及び/又はAAVベクターにおける細胞タンパク質、特に産生細胞株由来のタンパク質のレベルが調節されているということからである。
本発明によれば、完全ウイルスベクター粒子は、個体への送達用のペイロードを含むウイルスベクター粒子である。典型的には、ペイロードは、本明細書に記載されているようなヌクレオチド配列である。本発明によれば、空ウイルスベクター粒子は、前記ペイロードを欠くウイルスベクター粒子である。典型的には、本発明の空ウイルスベクター粒子は、空のAAVカプシド又はタンパク質コートである。
本発明のAAVベクターは、多くの学問分野において、遺伝子治療並びに遺伝子操作及び改変の方法に有用であり得る。ベクターは、一本鎖DNA(ssDNA,single stranded DNA)又は自己相補性DNAを含む任意の適切な形をとり得る、1又は2以上の治療用ヌクレオチド配列を含み得る。例えば、本発明のAAVベクターは、疾患又は障害の治療又は予防に有用な治療用DNA配列を含み得る。本発明のAAVベクターはまた、その他にも、例えば、薬物開発及び研究において有用であり得る。そのような非治療的適用には、例えば、誘導多能性幹細胞(IPS,induced pluripotent stem)を作製するためにshRNA、がん遺伝子などを送達するための、遺伝子操作及び送達用が挙げられる。
AAVベクターは、任意のAAV血清型であり得る。例えば、本発明のAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、又はAAV11のいずれか1つであり得る。好ましい実施形態において、AAVベクターは、AAV2、AAV5、又はAAV8から選択される。任意の2つ又は3つ以上のAAV血清型の組み合わせもまた、本発明によって提供される。AAV血清型の組み合わせには、AAV2とAAV5、AAV5とAAV8、AAV2とAAV8、又はAAV2とAAV5とAAV8が挙げられ得る。
本発明はまた、本発明のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの集団を提供する。特に、本発明は、本明細書に開示されているような本発明の方法により得られるAAVベクターの集団を提供する。本発明によれば、AAVベクターの集団は、本発明のAAVの複数のコピーとして定義され得る。例えば、本発明のAAVベクターの集団は、少なくとも109vg/ml、少なくとも109vg/ml、少なくとも209vg/ml、少なくとも309vg/ml、少なくとも409vg/ml、少なくとも509vg/ml、少なくとも1010vg/ml、又はそれ以上のAAVベクター粒子を含み得る。本発明のAAV集団は、本発明の単一の型のAAVベクターで構成され得る。例えば、本発明のAAV集団は、単一の血清型のAAVベクターを含み得、単一のペイロード(例えば、1つの薬剤)を含み得る。AAV集団は、1つ若しくは2つ以上のバッチ、又は1回若しくは2回以上の産生サイクルで、産生され得る。
本発明のAAVベクターのカプシドは、本明細書における表2に列挙されたタンパク質の任意の組み合わせを含み得る。典型的には、本発明のAAVベクターのカプシドは、本明細書に開示されているようなYB1、NPM1、及びNCLの任意の組み合わせを含む。前記カプシドはまた、調べられたAAV血清型のうちの4つ又は5つ以上により共有される、表2に列挙された1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質を含み得る。1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、AAVにおいて機能することがすでに知られている場合もあるし、本明細書で初めて、AAVと関連づけられた場合もある。典型的には、YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つに加えて、調節される1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質K(hnRNPK,heterogeneous nuclear ribonucleoprotein K)、一本鎖DNA結合タンパク質1、新生ポリペプチド結合複合体αサブユニット(CypA)、ペプチジルプロリルシス−トランスイソメラーゼ、α−エノラーゼ、アネキシンA5、RuVB like 1及びlike 2から選択される。
本発明のAAVベクターに関しての本明細書における開示のいずれも、本発明のAAVベクター集団にも適用され得る。例えば、本発明の一実施形態において、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター集団における完全AAVベクター:空AAVベクターの比を、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上、増加させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、本発明のAAVベクター集団における完全AAVベクター粒子:空AAVベクター粒子の比を少なくとも50%増加させる。1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節に起因するウイルス力価の任意の増加は、本明細書に記載されているように、対照方法から得られたウイルス力価と比較され得る。対照方法は、AAVベクターを産生するための、当技術分野において知られた任意の標準方法であり得る。例えば、対照方法は、本発明に従って適合されていない産生細胞株を用い得る。そのような対照/標準方法により産生されたAAVベクター及びAAVベクター集団は、本明細書に記載されているように、対照ベクター及び対照集団として用いられ得る。
当技術分野において知られた標準方法は、産生されるAAVベクターの最高100%が空であり、又は完全AAVベクターより100倍多い空AAVベクターを有する、AAVベクター集団を産生し得る。さらに処理したとしても、標準方法は、AAVベクターの少なくとも20%が空であるAAVベクター集団を産生する。本発明の方法は、AAVベクターの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、最高100%までが完全である(すなわち、産生されたAAVベクターの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、最低0%が空である)、AAVベクター集団を産生し得る。本発明の方法は、完全AAVベクターの数と比較して、50倍未満、40倍未満、30倍未満、20倍未満、10倍未満、又はそれ未満の空AAVベクターがある、AAVベクター集団を産生し得る。
本発明のAAVベクター集団におけるAAVベクター粒子の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、全部を含むそれ以下が、表2に列挙されたタンパク質の少なくとも1つを含むカプシドを有し得る。典型的には、本発明のAAVベクター集団において、AAVベクター粒子の少なくとも50%が、表2に列挙されたタンパク質の少なくとも1つを含むカプシドを有する。好ましくは、その少なくとも1つのタンパク質は、本明細書に記載されているようなYB1、NPM1、及び/又はNCLのうちの1又は2以上のタンパク質であり、より好ましくは、AAVベクター粒子の少なくとも50%が、YB1を含むカプシドを有し、さらにより好ましくは、AAVベクター粒子の少なくとも50%が、YB1、NPM1、及びNCLを含むカプシドを有する。
本発明のAAVベクター又はAAVベクター集団におけるAAVベクターのカプシド中の、表2に列挙されたタンパク質の少なくとも1つの量が、対照AAVベクターのカプシド中、又は対照AAVベクター集団におけるAAVベクターのカプシド中の前記少なくとも1つのタンパク質の量と比較して、改変され得る。例えば、その少なくとも1つのタンパク質の量は、対照AAVベクターのカプシド中、又は対照AAVベクター集団におけるAAVベクターのカプシド中の前記少なくとも1つのタンパク質の量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上、異なり得る。この改変は、その少なくとも1つのタンパク質における増加又は減少であり得る。複数のタンパク質が対照に対して改変されている場合、対照に対して、全部が減少していてもよいし、減少しているものもあれば増加しているものもあってもよいし、又は全部が増加していてもよい。
本発明のAAVベクター集団におけるAAVベクターのカプシド中の、表2に列挙されたタンパク質のいずれかの存在及び/又は量は、任意の標準技術を用いて、決定及び/又は定量化され得る。本発明による産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節に起因する、表2に列挙されたタンパク質のいずれかの存在及び/又は量の任意の増加は、本明細書に記載されているような対照方法から得られたAAVベクター集団におけるAAVベクターのカプシド中の、表2に列挙されたタンパク質のいずれかの存在及び/又は量と比較され得る。
本発明のAAVベクター又はAAVベクター集団は、対照AAVベクター又はAAVベクター集団と比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、又はそれ以上、増加している力価を有し得る。好ましくは、AAVベクター又はAAVベクター集団の力価は、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、増加している。AAVベクター又はAAVベクター集団力価は、対照AAVベクター若しくはAAVベクター集団の力価と、又は本明細書に記載されているような対照方法から得られたウイルス力価と比較され得る。
アデノ随伴ウイルスベクターを産生するための方法
本発明者らは、AAVベクターを産生するために用いられる産生細胞株におけるある特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を調節することが、前記産生細胞株から産生されるウイルスベクターの力価に効果を生じ得ることを初めて示している。AAVベクターを産生するために用いられる産生細胞株におけるある特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現の調節はまた、前記産生細胞株から産生される完全ウイルスベクター粒子:空ウイルスベクター粒子の比を増加させ得る。AAVベクターを産生するために用いられる産生細胞株におけるある特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現の調節はまた、AAVベクターカプシド中のタンパク質、特に、産生細胞株に由来したタンパク質の存在及び/又は量を改変し得る。
本発明者らは、AAVベクターを産生するために用いられる産生細胞株におけるある特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を調節することが、前記産生細胞株から産生されるウイルスベクターの力価に効果を生じ得ることを初めて示している。AAVベクターを産生するために用いられる産生細胞株におけるある特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現の調節はまた、前記産生細胞株から産生される完全ウイルスベクター粒子:空ウイルスベクター粒子の比を増加させ得る。AAVベクターを産生するために用いられる産生細胞株におけるある特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現の調節はまた、AAVベクターカプシド中のタンパク質、特に、産生細胞株に由来したタンパク質の存在及び/又は量を改変し得る。
1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節
本明細書に記載されているように、本発明は、産生されるウイルス力価を増加させる、AAVベクターの産生のための新しい産生系を提供する。本発明の産生系はまた、産生される完全ウイルスベクター粒子:空ウイルスベクター粒子の比を増加させ得る。本発明の産生系はまた、AAVベクターカプシド中のタンパク質、特に、産生細胞株に由来したタンパク質の存在及び/又は量を改変し得る。本発明の産生系は、AAVベクターの産生に適する産生細胞株、及び前記産生細胞株を用いてAAVベクターを産生する方法を含む。本発明はまた、前記の産生系、産生細胞株、及び方法により産生されるAAVベクターを提供する。
本明細書に記載されているように、本発明は、産生されるウイルス力価を増加させる、AAVベクターの産生のための新しい産生系を提供する。本発明の産生系はまた、産生される完全ウイルスベクター粒子:空ウイルスベクター粒子の比を増加させ得る。本発明の産生系はまた、AAVベクターカプシド中のタンパク質、特に、産生細胞株に由来したタンパク質の存在及び/又は量を改変し得る。本発明の産生系は、AAVベクターの産生に適する産生細胞株、及び前記産生細胞株を用いてAAVベクターを産生する方法を含む。本発明はまた、前記の産生系、産生細胞株、及び方法により産生されるAAVベクターを提供する。
したがって、本発明は、産生細胞株において1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を調節するステップを含む、AAVベクターを産生する方法を提供する。
調節は、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増加させること、又は低下させる(減少させる)ことであり得る。複数の遺伝子及び/又はタンパク質が調節される場合、その遺伝子/タンパク質の全てが増加する場合もあるし、又はその遺伝子/タンパク質の全てが減少する場合もあるし、又は1若しくは2以上の遺伝子/タンパク質が増加し、かつその他の遺伝子/タンパク質が減少する場合もある。好ましい実施形態において、調節は、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を減少させることである。
調節は、産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現の増加であろうと低下であろうと、対照に対して測定され得る。したがって、本発明の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現は、対照における前記1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現と比較され得る。本発明及び対照の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の質量、モル量、濃度又はモル濃度などの1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の実際の量が、評価され、対照からの対応する値と比較され得る。あるいは、本発明の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現は、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の質量、モル量、濃度又はモル濃度を定量化することなく、対照の発現と比較されてもよい。
典型的には、対照は、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節がもたらされていない等価の産生細胞株である。例えば、本発明の産生細胞株が、YB1発現が低下しているトランスジェニック細胞株である場合、適切な対照は、YB1発現が変化していない同じ細胞株である。そのような対照細胞株は、野生型細胞株であり得る。本発明による対照方法は、典型的には、本明細書に記載されているような対照産生細胞株を用いる。既知の方法を含むAVVの産生のための通常の方法は、本発明による対照方法とみなされ得る。
本発明の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現は、対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上、異なり得る。
例えば、本発明の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現が対照と比較して低下している場合には、その発現は、対照と比較して部分的に、又は全体的に、低下し得る。典型的には、その発現は、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、完全な除去(ノックアウト)まで、低下する。
本発明の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、対照と比較して増加している場合には、その発現は、対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%増加し得る。
本発明の産生細胞株における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現は、定量的及び/又は定性的分析により決定され得る。典型的には、遺伝子発現は、mRNAレベルによって表され得る。
本発明の産生細胞株における1/又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現レベルは、その1/又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の質量、その1/又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質のモル量、その1/又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の濃度、並びにその1/又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質のモル濃度を包含する。この発現レベルは、任意の適切な単位で示され得る。例えば、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の濃度は、pg/ml、ng/ml、又はμg/mlで示され得る。
本発明の産生細胞株における1/又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現レベルは、直接的に、又は間接的に測定され得る。
対照に対する、本発明の産生細胞株における1又は2以上の調節された遺伝子及び/又はタンパク質の相対的発現は、任意の適切な技術を用いて決定され得る。適切な標準技術は当技術分野において知られており、例えば、ウエスタンブロッティング及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA,enzyme-linked immunosorbent assay)である。
調節され得る1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現レベルは、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも144時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも13週間、少なくとも14週間、少なくとも15週間、又はそれ以上の間、対照と比較して変化し得る。
調節され得る1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現レベルは、培養下の産生細胞株の少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、又はそれ以上の継代の間、対照と比較して変化し得る。調節され得る1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現レベルは、無制限に変化し得る。
調節される遺伝子及び/又はタンパク質
本発明者らは、AAVのカプシドに含有される非ウイルス性タンパク質の初めての系統的分析を実行し、AAV血清型2、5、8の1つ又は2つ以上のカプシド中に見出される66のタンパク質を同定している。これらのタンパク質は本明細書の表2で同定されている。典型的には、これらの非ウイルス性タンパク質は、AAVベクター粒子が生成される産生細胞株に由来している。
本発明者らは、AAVのカプシドに含有される非ウイルス性タンパク質の初めての系統的分析を実行し、AAV血清型2、5、8の1つ又は2つ以上のカプシド中に見出される66のタンパク質を同定している。これらのタンパク質は本明細書の表2で同定されている。典型的には、これらの非ウイルス性タンパク質は、AAVベクター粒子が生成される産生細胞株に由来している。
産生細胞株においてこれらの66のタンパク質の1又は2以上の発現を調節することは、前記産生細胞株から産生されるAAVベクターの力価を増加させるのに有用であり得る。したがって、本発明は、AAVベクターを産生するための方法であって、表2に列挙されたタンパク質の少なくとも1つの発現を調節するステップを含む、方法を提供する。
本発明の方法は、DNA結合タンパク質である、表2に列挙されたタンパク質の少なくとも1つの発現を調節するステップを含み得る。代替として、又は追加として、本発明の方法は、DNA結合タンパク質ではない、表2に列挙されたタンパク質の少なくとも1つの発現を調節するステップを含み得る。
本発明の方法は、表2に列挙された遺伝子及び/又はタンパク質の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、全部までの発現を調節するステップを含み得る。
表2に列挙されたタンパク質のうち、複数はDNAと結合することが知られている。例えば、NPM1(別名、ヌクレオフォスミン、核小体リン酸化タンパク質B23、及びヌマトリン)、NCL、及びYB1は全て、DNA及び/又はRNAと結合する。
NPM1は、核小体リボヌクレオタンパク質構造に関連しており、一本鎖DNAと二本鎖DNAの両方と結合する。ヒトNPM1遺伝子のゲノムDNA配列は、配列番号1(Genbank受託番号BC016768、バージョンBC016768.1 GI:16876991)に示されている。NPM1は一般的に、核小体に位置するが、状況次第で、核細胞質へ転位置され得る。
NCL遺伝子は、核小体リン酸化タンパク質ヌクレオリンをコードする。ヌクレオリンは、リボソームの合成及び成熟に関与するDNA結合タンパク質である。NCLタンパク質への本明細書におけるいかなる言及も、ヌクレオリンへの言及として理解され得る。ヒトNCL遺伝子のゲノムDNA配列は、配列番号2(Genbank受託番号M60858、バージョンM60858.1 GI:189305)に示されている。
YB1遺伝子は、Yボックス結合タンパク質1(別名、Yボックス転写因子及びヌクレアーゼ感受性配列結合タンパク質1(nuclease sensitive element binding protein 1))をコードする。ヒトYB1遺伝子のゲノムDNA配列は、配列番号3(Genbank受託番号NM_004559.3、バージョンNM_004559.3 GI:109134359)に示されている。YB1タンパク質への本明細書におけるいかなる言及も、Yボックス結合タンパク質1への言及として理解され得る。YB1は、多くのDNA及びmRNA依存性過程に関与するDNA及びRNA結合タンパク質である。YB1はmRNAをパックして、安定させ、異なるレベルでの遺伝子制御に関与している。
アデノプロテイン(Adenoprotein)E1Bは、YB1と相互作用することが知られており、結果として、YB1の細胞核内での蓄積、及びアデノウイルス遺伝子E2Aの活性化を生じることが示されている。YB1の過剰発現が、アデノウイルスE2プロモーターをE1非依存性様式で制御し、アデノウイルスDNA複製を増加させること、及びE1欠損アデノウイルスベクターからの感染性ウイルス粒子の産生を増加させることが示されている。結果として、YB1の過剰発現は、アデノウイルスに基づいたベクターの開発及びウイルス療法に利用されている。
しかしながら、本明細書の実施例に実証されているように、本発明者らは、YB1のノックダウンが、AAVベクター力価の増加を生じることを見出している。さらに、本発明者らは、産生細胞におけるYB1発現の下方制御が、結果として、AAV rep発現の増加、AAVベクターDNA産生の増加、及びAAV cap発現の減少を生じることを実証した。理論に縛られることを望まないが、産生細胞株由来のYB1、NPM1、及びNCLなどのDNA結合タンパク質が、DNA、特に一本鎖DNA(ssDNA)との結合についてアデノウイルス構成要素と競合すると考えられる。そのようなアデノウイルス構成要素には、ウイルス複製に必要とされる早期機能タンパク質であるアデノプロテインE2及びE4、翻訳されない低分子RNA分子をコードするアデノウイルスゲノムの領域であり、そのことによりDNAとの結合についてのウイルスmRNAの翻訳を制御する、VAが挙げられる。E4領域のオープンリーディングフレーム6は、一本鎖AAVゲノムの二本鎖型(DNA複製における次のステップのための基質)への変換に重要である。プロテインE2Aは、AAVウイルスDNAとの結合、DNA伸長の促進、及び伸長した鎖のそれの鋳型からの移動により、ウイルスDNA複製において鍵となる役割を果たす。
E2a、E4、及びVAなどのアデノウイルス構成要素は、AAVベクター粒子産生に必要とされ、DNAとの結合についてこれらのアデノウイルス構成要素と競合することにより、産生細胞株DNA結合タンパク質は、AAVベクター粒子産生を減少させることができる。したがって、理論に縛られるつもりはないが、NPM1、NCL、及びYB1などの産生細胞株DNA結合タンパク質の発現の減少は、これらの産生細胞株DNA結合タンパク質の、E2AのAAV DNAとの結合に関する競合を低下させ、その結果として、E2A−AAV DNA相互作用の増強、AAV DNA複製の効率、及び最終的に、AAVベクターゲノム力価の増加を生じる。
プロモーターのssDNA領域とのYB1の結合は、ssDNAの安定化を生じることが示されており、そのことがまた、遺伝子転写及び翻訳を抑制した。したがって、(本発明者らによって観察されているように)YB1(又は、NPM1若しくはNCLなどの別の産生細胞DNA結合タンパク質)の下方制御が、AAV2及びAAV8力価の増加に相乗的に寄与する、E2AのAAV2p5プロモーターへの結合を促進することが考えられる。
したがって、典型的には、本発明の方法は、NPM1、NCL、及びYB1の少なくとも1つの発現を調節するステップを含む。典型的には、本発明の方法は、YB1の発現を調節するステップを含む。NPM1、NCL、及びYB1の組み合わせが調節される方法もまた包含される。例えば、本発明の方法は、(i)NPM1及びNCL、(ii)NPM1及びYB1、(iii)NCL及びYB1、又は(iv)NPM1、NCL、及びYB1の発現を調節するステップを含み得る。好ましい実施形態において、本発明の方法は、YB1、NPM1、及びNCLの発現を調節するステップを含む。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、NPM1、NCL、及びYB1の少なくとも1つの発現を低下させるステップを含む。典型的には、本発明の方法は、YB1の発現を低下させるステップを含む。NPM1、NCL、及びYB1の組み合わせが低下する方法もまた包含される。例えば、本発明の方法は、(i)NPM1及びNCL、(ii)NPM1及びYB1、(iii)NCL及びYB1、又は(iv)NPM1、NCL、及びYB1の発現を低下させるステップを含み得る。好ましい実施形態において、本発明の方法は、YB1、NPM1、及びNCLの発現を低下させるステップを含む。
本発明の方法は、産生細胞株において1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を調節するステップをさらに含み得る。例えば、方法は、産生細胞株において、表2に列挙された1又は2以上の追加のタンパク質の発現を調節するステップをさらに含み得る。本発明に従って調節される追加のタンパク質は、DNA結合タンパク質であり得る。本発明に従って調節される追加のタンパク質は、DNA結合性以外の機能を有し得る。したがって、本発明の方法は、産生細胞株において異なる機能を有し、少なくとも1つがDNA結合タンパク質であり得る、2又は3以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節を含み得る。本発明の方法は、産生細胞株において、NPM1、NCL、及びYB1の少なくとも1つの発現を調節すること、並びにまた、1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質の調節を含み得、その1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質が表2に列挙されていてもよい。
本発明の方法は、本明細書に開示されているようにNPM1、NCL、及びYB1の任意の組み合わせの発現を調節するステップ、並びにまた、表2に列挙された1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を調節するステップを含み得る。好ましい実施形態において、表2における1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、調べられたAAV血清型の4つ又は5つ以上によって共有される。その1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、AAVにおいて機能することがすでに知られていてもよいし、又は本明細書で初めて、AAVと関連づけられていてもよい。典型的には、NPM1、NCL、及びYB1の少なくとも1つに加えて、調節される1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質K(hnRNPK)、一本鎖DNA結合タンパク質1、新生ポリペプチド結合複合体αサブユニット(CypA)、ペプチジルプロリルシス−トランスイソメラーゼ、α−エノラーゼ、アネキシンA5、RuVB like 1及びlike 2から選択される。
本発明に従って調節され得る1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、任意の適切な手段によって調節され得る。適切な標準技術は当技術分野において知られている。調節は、例えば、用いられるモジュレータの性質(下記参照)に依存して、任意の適切な機構、例えば、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の任意の直接的又は間接的相互作用又は調節における立体的干渉を介して起こり得る。
本発明のモジュレータは、調節され得る遺伝子又はタンパク質に特異的であり得る。特異性により、モジュレータが、YB1、NPM1、又はNCL遺伝子などの調節され得る遺伝子又はタンパク質と、任意の他の分子、特に任意の他のタンパク質との有意な交差反応なしに、結合すると理解される。例えば、NPM1に特異的であるモジュレータは、ヒト好中球エラスターゼとの有意な交差反応性を示さない。交差反応性は、任意の適切な方法によって評価され得る。調節され得る遺伝子又はタンパク質についてのモジュレータの、その遺伝子又はタンパク質以外の分子との交差反応性は、そのモジュレータが、それが、調節され得る遺伝子又はタンパク質と結合するのと少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は100%強く、その他の分子と結合する場合には、有意とみなされ得る。調節され得る遺伝子又はタンパク質に特異的であるモジュレータは、それが、調節され得る遺伝子又はタンパク質と結合する強さの90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、又は20%未満で、ヒト好中球エラスターゼなどの別の分子と結合し得る。好ましくは、モジュレータは、それが、調節され得る遺伝子又はタンパク質と結合する強さの20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満、2%未満、又は1%未満で、他の分子と結合する。
任意の適切なモジュレータ、例えば、ペプチド及びペプチド模倣体、抗体、低分子阻害剤、二本鎖RNA、アンチセンス(一本鎖)RNA、アプタマー、並びにリボザイムが、本発明に従って用いられ得る。転写及び転写後の遺伝子サイレンシングテクノロジーは、本発明の1又は2以上の遺伝子を調節するために用いられ得る。転写後の遺伝子サイレンシングは、RNA干渉(RNAi,RNA interference)としても知られている。好ましい実施形態において、調節は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR,Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)ゲノム編集により実行され、そのゲノム編集は、典型的には、本発明の1又は2以上の遺伝子の発現を減少させるために用いられる。好ましいアンタゴニストには、二本鎖RNA及びキメラのガイドRNA転写物(gRNA,guide RNA)が挙げられる。gRNAは、細菌CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化crRNA(tracrRNA,trans-activating crRNA)を組み合わせており、それらは、CRISPRゲノム編集中、エンドヌクレアーゼ(典型的には、Cas9などのCRISPR関連(Cas,CRISPR associated)ヌクレアーゼ)と共に、関心対象となる遺伝子にリクルートされる。本発明の1又は2以上の遺伝子は、同じカテゴリーのモジュレータを用いて、又は異なるモジュレータにより、調節され得る。非限定的例として、YB1、NPM1、及び/若しくはNCLが全て、CRISPRゲノム編集を用いて調節されてもよいし、又はYB1がCRISPRゲノム編集により調節され、かつNPM1及び/若しくはNCLがshRNAを用いて調節されてもよい。
二本鎖RNA
二本鎖RNA(dsRNA)分子は、産生細胞株において1又は2以上の遺伝子の発現を調節するために用いられ得る。典型的には、dsRNAは、本明細書に記載されているような1又は2以上の遺伝子の発現を低下させるために用いられる。dsRNA分子は、本発明の1又は2以上の遺伝子を調節するためにRNAiにおいて用いられ得る。
二本鎖RNA(dsRNA)分子は、産生細胞株において1又は2以上の遺伝子の発現を調節するために用いられ得る。典型的には、dsRNAは、本明細書に記載されているような1又は2以上の遺伝子の発現を低下させるために用いられる。dsRNA分子は、本発明の1又は2以上の遺伝子を調節するためにRNAiにおいて用いられ得る。
既知の技術を用い、かつ調節され得る1又は2以上の遺伝子の配列の知識に基づいて、dsRNA分子は、その1又は2以上の遺伝子を、対応するRNA配列の配列相同性に基づいたターゲティングによりアンタゴナイズするように設計することができる。そのようなdsRNAは、典型的には、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、又はミクロRNA(miRNA)である。そのようなdsRNAの配列は、調節され得る1又は2以上の遺伝子をコードするmRNAの一部の配列と対応する部分を含む。この部分は、通常、その1又は2以上の遺伝子から転写されたmRNA内の標的部分と100%相補性であるが、相補性のより低いレベル(例えば、90%若しくはそれ以上、又は95%若しくはそれ以上)もまた用いられ得る。典型的には、%相補性は、連続した核酸残基の長さに関して決定される。本発明のdsRNA分子は、例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又はそれ以上の核酸残基(最長の核酸残基の場合、dsRNA分子が、そのdsRNA分子の全長に関して、本発明の1又は2以上の遺伝子から転写されるmRNAと少なくとも80%相補性を有することになる)に関して測定された場合、1又は2以上の遺伝子から転写されるmRNA内の標的部分と少なくとも80%相補性を有し得る。
好ましい実施形態において、dsRNAはshRNAである。shRNAは、任意の適切な手段によって本発明の産生細胞株に送達され得る。適切な技術は当技術分野において知られており、それらには、shRNAを産生細胞株に送達するためのプラスミド、ウイルス、及び細菌のベクターの使用が挙げられる。典型的には、shRNAは、ウイルスベクター送達系を用いて送達される。好ましい実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
一般的に、いったんshRNAが産生細胞に送達されたならば、それは、その後、核内で転写され、プロセシングされる。生じたプレshRNAは核から搬出され、その後、ダイサーによってプロセシングされ、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC,RNA-induced silencing complex)へ負荷される。センス(パッセンジャー)鎖は分解される。アンチセンス(ガイド)鎖は、相補配列を有するmRNAへRISCを方向づける。完全な相補性の場合、RISCはmRNAを切断する。不完全な相補性の場合、RISCはmRNAの翻訳を抑圧する。これらの場合のどちらにおいても、shRNAは標的遺伝子サイレンシングをもたらす。
shRNAは、表2に列挙された遺伝子の1又は2以上の発現を調節するために用いられる。表2に列挙された遺伝子の任意の1つの発現を調節するために複数のshRNAが用いられてもよい。典型的には、shRNAは、YB1、NPM1、及び/若しくはNCLの少なくとも1つ、並びに/又はYB1の発現を調節するために用いられる。YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現を調節するために複数のshRNAが用いられてもよい。
YB1発現を調節するために用いられるshRNAは、配列番号14〜18(YB1−Y1〜YB1−Y5)又はそれらのバリアントから選択されるヌクレオチド配列を含み得る。配列番号14〜18又はそれらのバリアントから選択される複数のshRNAが、YB1発現を調節するために用いられてもよい。好ましい実施形態において、YB1発現を調節するために用いられるshRNAは、配列番号17及び/若しくは18(YB1−Y4及びY5)又はそれらのバリアントである。
NPM1発現を調節するために用いられるshRNAは、配列番号4〜8(NPM−N6〜NPM−N10)又はそれらのバリアントから選択されるヌクレオチド配列を含み得る。配列番号4〜8又はそれらのバリアントから選択される複数のshRNAが、NPM1発現を調節するために用いられてもよい。好ましい実施形態において、NPM1発現を調節するために用いられるshRNAは、配列番号4及び/若しくは7(NPM−N6及びN9)又はそれらのバリアントである。
NCL発現を調節するために用いられるshRNAは、配列番号9〜13(NCL−N1〜NCL−N5)又はそれらのバリアントから選択されるヌクレオチド配列を含み得る。配列番号9〜13又はそれらのバリアントから選択される複数のshRNAが、NCL発現を調節するために用いられてもよい。好ましい実施形態において、NCL発現を調節するために用いられるshRNAは、配列番号9及び/若しくは12(NCL−N1及びN4)又はそれらのバリアントである。
NPM−N6〜N10、NCL−N1〜N5、及びYB1−Y1〜Y5(配列番号4〜18)の配列は、下記の表1に示されている。
配列番号14〜18(YB1−Y1〜YB1−Y5)、配列番号4〜8(NPM−N6〜NPM−N10)、及び配列番号9〜13(NCL−N1〜NCL−N5)のshRNA、又はそれらのバリアントの任意の組み合わせが用いられ得る。
バリアント配列は、任意の適切な長さの配列に関して測定された場合、本発明の配列と少なくとも80%配列同一性を有し得る。典型的には、%配列同一性は、連続した核酸又はアミノ酸残基の長さに関して決定される。本発明のバリアント配列は、例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又はそれ以上の核酸又はアミノ酸残基に関して測定される、本発明の配列と少なくとも80%配列同一性を有し得る。
例えば、本発明のバリアントshRNA分子は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、又はそれ以上の核酸残基(最長の場合、バリアントshRNA分子が、そのバリアントshRNA分子の全長に関して、本発明のshRNA分子と少なくとも80%配列同一性を有することになる)に関して測定される場合、本発明のshRNA分子と少なくとも80%配列同一性を有し得る。典型的には、本発明のバリアントshRNA分子は、配列番号4〜18のshRNA分子の1又は2以上のバリアントである。
CRISPRゲノム編集
ゲノム編集についてのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システムは、典型的には、以下の2つの異なる構成要素を含む:(1)ガイドRNA、及び(2)エンドヌクレアーゼ、具体的には、Cas9などのCRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ。ガイドRNAは、単一のキメラガイドRNA(gRNA)転写物への内因性細菌crRNAとtracrRNAの組み合わせである。gRNA及びCasが、細胞において発現する場合、ゲノム標的配列は、改変され得、又は永久に破壊され得る。
ゲノム編集についてのクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システムは、典型的には、以下の2つの異なる構成要素を含む:(1)ガイドRNA、及び(2)エンドヌクレアーゼ、具体的には、Cas9などのCRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ。ガイドRNAは、単一のキメラガイドRNA(gRNA)転写物への内因性細菌crRNAとtracrRNAの組み合わせである。gRNA及びCasが、細胞において発現する場合、ゲノム標的配列は、改変され得、又は永久に破壊され得る。
gRNA/Cas複合体は、gRNA配列と、ゲノムDNAにおける本発明の1又は2以上の遺伝子内の標的配列の相補体との間での塩基対形成によって標的配列にリクルートされる。Casの結合が成功するために、ゲノム標的配列もまた、標的配列の直後に正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM,Protospacer Adjacent Motiff)配列を含有しなければならない。gRNA/Cas複合体の結合は、Casを、本発明の1又は2以上の遺伝子におけるゲノム標的配列へ局在化させ、その結果、野生型Casは、DNAの両方の鎖を切断して、二本鎖切断を引き起こすことができる。これは、以下の2つの一般的な修復経路の1つを通して修復することができる:(1)非相同性末端結合DNA修復経路、又は(2)相同組換え修復経路(homology directed repair pathway)。非相同性修復経路は、フレームシフト及び/又は中途終止コドンをもたらし得る二本鎖切断部における挿入/欠失を生じ、本発明の1又は2以上の遺伝子のオープンリーディングフレームを効果的に破壊する場合が多い。相同組換え修復経路は、二本鎖切断を修復するために用いられる修復鋳型の存在を必要とする。
任意の適切なgRNAペアは、それが、本明細書に記載されているような本発明の1又は2以上の遺伝子を調節するとの条件で、本発明によるCRISPRゲノム編集に用いられ得る。典型的には、gRNAペアは、本明細書に記載されているような本発明の1又は2以上の遺伝子の発現を低下させるために用いられる。好ましくは、任意の適切なgRNAペアは、YB1、NPM1、及び/又はNCL、より好ましくはYB1の発現を調節する(典型的には、低下させ、好ましくは、除去/ノックアウトする)ために用いられる。
gRNAペアは、既知の技術を用い、かつ調節され得る1又は2以上の遺伝子の配列の知識に基づいて、典型的には、CRISPR/Cas9プログラム(https://chopchop.rc.fas.harvard.edu/)などの適切なコンピュータプログラムを用いて、設計することができる。例えば、YB1を調節するためのgRNAが、CRISPR/Cas9プログラム(https://chopchop.rc.fas.harvard.edu/)を用いて設計され、YB1遺伝子配列を含む全ヒト1番染色体配列(受託番号NC_000001.11)を標的にし得る。ノックアウト産生細胞は、任意の適切な技術を用いて作製され得、標準技術は当技術分野において知られており、かつ適切なキットは市販されている。
gRNAペアは、任意の適切な手段により、本発明の産生細胞株に送達することができる。適切な技術は、当技術分野において知られており、それらには、gRNAペアを産生細胞株に送達するためのプラスミド、ウイルス、及び細菌のベクターの使用が挙げられる。典型的には、gRNAペアは、プラスミドDNAを用いて送達される。
gRNAペアは、表2に列挙された1又は2以上の遺伝子の発現を調節するために用いられ得る。表2に列挙された任意の1つの遺伝子の発現を調節するために複数のgRNAペアが用いられてもよい。典型的には、gRNAペアは、YB1、NPM1、及び/若しくはNCL、並びに/又はYB1の少なくとも1つの発現を調節するために用いられる。YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現を調節するために複数のgRNAペアが用いられてもよい。
YB1発現を調節するために用いられるgRNAペアは、配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、及び/若しくは配列番号39と40、又はそれらのバリアントから選択されるヌクレオチド配列ペアを含み得る。配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、及び配列番号39と40、又はそれらのバリアントから選択される複数のgRNAペアが、YB1発現を調節するために用いられてもよい。
バリアント配列は、任意の適切な長さの配列に関して測定される場合、本発明の配列と少なくとも80%配列同一性を有し得る。典型的には、%配列同一性は、連続した核酸又はアミノ酸残基の長さに関して決定される。本発明のバリアントgRNA配列は、例えば、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、又はそれ以上の核酸残基(最長の場合、バリアントgRNA分子が、そのバリアントgRNA分子の全長に関して、本発明のshRNA分子と少なくとも80%配列同一性を有することになる)に関して測定される場合、本発明の配列と少なくとも80%配列同一性を有し得る。典型的には、本発明のバリアントgRNA分子は、配列番号33〜40のgRNA分子の1又は2以上のバリアントである。本発明のgRNAペアは、本明細書に開示されたgRNA配列の1つ又は両方のバリアントを含み得る。例えば、配列番号33と34のgRNAペアのバリアントは、配列番号33のバリアント、配列番号34のバリアント、又は配列番号33及び34のバリアントを含み得る。この原則は、本明細書に開示された全てのgRNAペアに適用される。
アンチセンスRNA
一本鎖DNA(ssDNA)分子、別名アンチセンスRNAは、産生細胞株において1又は2以上の遺伝子の発現を調節するために用いられ得る。典型的には、アンチセンスRNAは、本明細書に記載されているような1又は2以上の遺伝子の発現を低下させるために用いられる。
一本鎖DNA(ssDNA)分子、別名アンチセンスRNAは、産生細胞株において1又は2以上の遺伝子の発現を調節するために用いられ得る。典型的には、アンチセンスRNAは、本明細書に記載されているような1又は2以上の遺伝子の発現を低下させるために用いられる。
既知の技術を用い、かつ調節され得る1又は2以上の遺伝子の配列の知識に基づいて、アンチセンスRNA分子は、対応するRNAの配列相同性に基づいたターゲティングによりその1又は2以上の遺伝子をアンタゴナイズするように設計することができる。そのようなアンチセンスの配列は、その1又は2以上の遺伝子から転写されたmRNAの一部の配列と一致する部分を含む。この部分は、通常、転写されたmRNA内の標的部分と100%相補性であるが、相補性のより低いレベル(例えば、90%若しくはそれ以上、又は95%若しくはそれ以上)もまた用いられ得る。
アプタマー
アプタマーは、一般的に、特定の標的分子に結合する核酸分子である。アプタマーは、完全にインビトロで操作することができ、化学合成によって容易に作製され、望ましい保存性を有し、治療的適用において免疫原性をほとんど、又は全く誘発しない。これらの特性により、それらは薬学的及び治療的実用性において特に有用である。
アプタマーは、一般的に、特定の標的分子に結合する核酸分子である。アプタマーは、完全にインビトロで操作することができ、化学合成によって容易に作製され、望ましい保存性を有し、治療的適用において免疫原性をほとんど、又は全く誘発しない。これらの特性により、それらは薬学的及び治療的実用性において特に有用である。
本明細書で用いられる場合、「アプタマー」は、一般的に、標的と特異的に結合する能力がある、一本鎖若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、又はそのようなオリゴヌクレオチドの混合物を指す。オリゴヌクレオチドアプタマーは、本明細書で論じられるが、ペプチドアプタマーなどの等価の結合特性を有する他のアプタマーもまた用いることができることを、当業者は理解しているだろう。
一般的に、アプタマーは、長さが少なくとも5、少なくとも10、又は少なくとも15のヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドを含み得る。アプタマーは、長さが40まで、60まで、若しくは100まで、又はそれ以上のヌクレオチドである配列を含み得る。例えば、アプタマーは、長さが、5から100までのヌクレオチド、10から40までのヌクレオチド、又は15から40までのヌクレオチドであり得る。可能ならば、より短い長さのアプタマーが好ましく、これらが、他の分子又は材料による干渉の減少につながる場合が多いからである。
アプタマーは、試験管内進化法(SELEX,Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment)手順などの日常的方法を用いて作製され得る。SELEXは、標的分子との高特異的な結合を有する核酸分子のインビトロ進化のための方法である。それは、例えば、米国特許第5,654,151号明細書、米国特許第5,503,978号明細書、米国特許第5,567,588号明細書、及び国際公開第96/38579号パンフレットに記載されている。
SELEX方法は、オリゴヌクレオチドのコレクションからの、所望の標的と結合する能力がある核酸アプタマー、特に一本鎖核酸の選択を含む。一本鎖核酸(例えば、DNA、RNA、又はそのバリアント)のコレクションを、標的と、結合に好都合な条件下で接触させ、混合物中の標的と結合している核酸を、結合していない核酸から分離し、核酸−標的複合体を解離させ、標的と結合していたそれらの核酸を増幅して、所望の結合活性を有する核酸に富むコレクション又はライブラリーを生じさせ、その後、関連標的に対する特異的結合親和性を有する核酸(アプタマー)のライブラリーを生じるのに必要ならば、この一連のステップを繰り返す。
バリアント核酸配列
少なくとも80%の配列同一性には、(本明細書に提示された1つ1つの核酸配列との、及び/又は本明細書に提示された1つ1つの配列番号との)少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%配列同一性が挙げられる。
少なくとも80%の配列同一性には、(本明細書に提示された1つ1つの核酸配列との、及び/又は本明細書に提示された1つ1つの配列番号との)少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び100%配列同一性が挙げられる。
様々な配列アラインメント方法のいずれも、パーセント同一性を決定するために用いることができ、それらには、非限定的に、包括的方法、局所的方法、及び、例えば、セグメントアプローチ方法などの混成的方法が挙げられる。パーセント同一性を決定するためのプロトコールは、当業者の想定範囲内の日常的な手順である。包括的方法は、分子の始まりから終わりまで配列を整列させ、個々の残基対のスコアを合計し、かつギャップペナルティを課することにより、最良のアラインメントを決定する。非限定的方法には、例えば、CLUSTAL W(例えば、Julie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22 (22) Nucleic Acids Research 4673-4680 (1994)参照)、及び反復改良(例えば、Osamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. Mol. Biol. 823-838 (1996)参照)が挙げられる。局所的方法は、入力配列の全部により共有される1つ又は2つ以上の保存的モチーフを同定することにより配列を整列させる。非限定的方法には、例えば、マッチボックス(例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501 -509 (1992)参照)、ギブスサンプリング(例えば、C. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262 (5131) Science 208-214 (1993)参照)、アライン−M(例えば、Ivo Van Walle et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20 (9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)参照)が挙げられる。このように、パーセント配列同一性は、通常の方法によって決定される。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986 and Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-19, 1992を参照されたい。
あるいは、上記で提供された特定の配列のバリアントは、バリアント配列と、上記で提供された特定の参照配列との間で異なるヌクレオチドの数を読み上げることにより決定され得る。したがって、一実施形態において、配列は、5以内、4以内、3以内、2以内のヌクレオチド位置で、例えば、1以内のヌクレオチド位置で、上記で提供された特定の配列と異なるヌクレオチド配列を含み得る(又は、からなり得る)。保存的置換が好ましい。
本発明のバリアントshRNA分子及び/又はバリアントgRNA分子及び/又はバリアントgRNAペアなどの本発明のバリアント核酸分子は、典型的には、本発明の対応する分子の活性をまだなお保持する。したがって、例えば、本発明のバリアントshRNA分子は、本発明の1又は2以上の遺伝子の発現を調節する、対応するshRNA分子の能力を保持する。バリアントshRNA分子は、本発明のshRNA分子の調節活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%まで(100%を含む)を保持し得る。これは、本発明のgRNA分子及び/又はgRNAペアに同じように適用される。
本発明のshRNA分子、gRNA分子、及び/又はgRNAペアなどの本発明の核酸分子は、そのshRNA分子、gRNA分子、及び/又はgRNAペアを欠く産生細胞の除去を容易にするために標識(又はタグ付け)され得る。ピューロマイシンは適切なタグの例である。本発明のgRNAペアを構成する2つのgRNA分子は、同じタグで標識されてもよい。あるいは、本発明のgRNAペアを構成する2つのgRNA分子は、2つのgRNA分子が識別されることを可能にするように異なるタグで標識されてもよい。
調節の効果
本発明のモジュレータは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増加又は低下させることができる。典型的には、本明細書に開示されているように、その1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、表2に列挙されている。典型的には、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、本発明による産生細胞株によるAAVベクター産生の力価の増加を生じる。
本発明のモジュレータは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増加又は低下させることができる。典型的には、本明細書に開示されているように、その1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質は、表2に列挙されている。典型的には、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、本発明による産生細胞株によるAAVベクター産生の力価の増加を生じる。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター産生の力価を、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、少なくとも55倍、少なくとも60倍、少なくとも65倍、少なくとも70倍、又はそれ以上、増加させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター産生の力価を、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、増加させる。1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節に起因するウイルス力価の任意の増加は、本明細書に記載されているような対照方法から得られるウイルス力価と比較され得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター産生の力価を、少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも60日間、少なくとも70日間、少なくとも80日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、又はそれ以上の間、増加させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター産生の力価を少なくとも40日間、増加させる。この場合もやはり、増加したウイルス力価の持続期間は、本明細書に記載されているような対照と比較され得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター産生の力価を、培養下の産生細胞株の少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、又はそれ以上の継代の間、増加させ得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター産生の力価を無制限に増加させ得る。
1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節のウイルス力価への時間及び用量依存があり得る。典型的には、低用量及び初期時点においてさえも、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍のAAVベクター力価の有意な倍増加を達成することが可能であり得る(例えば、図6B参照)。
AAVベクター力価の増加は、任意の適切な技術を用いて測定され得る。ウイルス力価を測定するための標準技術は、当技術分野において知られており、例えば、細胞に基づいたアッセイ、例えば、プラークアッセイを用いること、及び/又は定量的PCR(qPCR)である。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、本発明による産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を増加させ得る。AAVベクター力価の増加及び/又は完全AAVベクター:空AAVベクターの比の増加は、本明細書に記載されているような対照と比較され得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上、増加させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を少なくとも50%増加させる。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、AAVベクター集団が完全AAVベクターの数と比較して50倍未満、40倍未満、30倍未満、20倍未満、10倍未満、又はそれ未満の空AAVベクターを含むように、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を増加させ得る。
1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節に起因するウイルス力価の任意の増加は、本明細書に記載されているような対照方法から得られるウイルス力価と比較され得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を、少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも60日間、少なくとも70日間、少なくとも80日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、又はそれ以上の間、増加させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を少なくとも40日間、増加させる。この場合もやはり、増加したウイルス力価の持続期間は、本明細書に記載されているような対照と比較され得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を、培養下の産生細胞株の少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、又はそれ以上の継代の間、増加させ得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比を無制限に増加させ得る。
産生細胞株により産生される完全AAVベクター:空AAVベクターの比は、任意の適切な技術を用いて測定され得る。ウイルス力価を測定するための標準技術は、当技術分野において知られている。例えば、qPCRとELISAの組み合わせが、完全AAVベクター:空AAVベクターの比を定量化するために用いられ得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、非依存的に、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させ得る。典型的には、AAV rep発現の変化、AAVベクターDNA産生の増加、及び/又はAAV cap発現の減少は、本明細書に定義されているような対照細胞株又は方法と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、少なくとも55倍、少なくとも60倍、少なくとも65倍、少なくとも70倍、又はそれ以上である。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも60日間、少なくとも70日間、少なくとも80日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、又はそれ以上の間、非依存的に、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、少なくとも40日間、非依存的に、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させる。この場合もやはり、効果の持続期間は、本明細書に記載されているような対照と比較され得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、培養下の産生細胞株の少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、又はそれ以上の継代の間、非依存的に、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させ得る。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、非依存的に、無制限に、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させ得る。
1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節の、AAV rep発現、AAVベクターDNA産生、及び/又はAAV cap発現への時間及び用量依存があり得る。典型的には、低用量及び初期時点においてさえも、AAV rep発現、AAVベクターDNA産生、及び/又はAAV cap発現への有意な倍効果を達成することが可能であり得る。
AAV rep発現の増加、AAVベクターDNA産生の増加、及び/又はAAV cap発現の減少は、任意の適切な技術を用いて測定され得る。ウイルス力価を測定するための標準技術は、当技術分野において知られている。
産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、非依存的に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させ得る。好ましくは、産生細胞株の1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、非依存的に、少なくとも50%、AAV rep発現を増加させ、AAVベクターDNA産生を増加させ、及び/又はAAV cap発現を減少させる。
AAVベクターの産生
本明細書に記載されているように、本発明は、表2に列挙された1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現が対照と比較して調節されている産生細胞株を提供する。
本明細書に記載されているように、本発明は、表2に列挙された1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の発現が対照と比較して調節されている産生細胞株を提供する。
好ましい実施形態において、1又は2以上の遺伝子及び/又はタンパク質の調節は、shRNA又はCRISPRゲノム編集により達成される。shRNAが用いられる場合には、shRNAは典型的に、shRNAを欠く産生細胞の除去を容易にするためにタグ付けされる。CRISPRゲノム編集が用いられる場合には、非切断/非gRNA編集対照細胞における単一のPCR産物/バンドと比較して、陽性ノックアウト細胞においてgDNAの切断により2つの産物(バンド)を生じることができるPCRプライマーを設計することができる。この場合もやはり、これは、本発明の1又は2以上の遺伝子が調節されていない産生細胞の除去を容易にする。
いったん本発明のそのような産生細胞株が樹立されたならば、それは、本発明によるAAVベクターを産生するために用いられ得る。本発明によるAAVベクターを作製するために任意の適切な技術が用いられ得る。標準技術は当技術分野において知られている。
本発明のAAVベクターは、標的細胞への送達及び発現のための任意の治療用ポリヌクレオチドを保有するように操作され得る。治療用ポリヌクレオチドは、当業者によく知られている技術(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. et al., eds., Wiley and Sons, New York, 1995)を用いて、AAVベクター内の様々な部位へ操作され得、その部位には、E1領域、E2領域、E3領域、及びE4領域が挙げられるが、それらに限定されない。AAVベクターへクローニングされる治療用ポリヌクレオチドは、適切なプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む完全な転写単位として操作され得る。
したがって、本発明のAAVベクターは、AAV由来末端反復のペアの間に治療用ポリヌクレオチド遺伝子及びプロモーターを含み得る。プロモーターと治療用ポリヌクレオチドの組み合わせはまた、本明細書ではカセットと呼ばれる。
プロモーター配列は、治療用ポリヌクレオチドに、その遺伝子の発現をもたらす様式で操作可能に連結される。このゆえに、プロモーター配列は、治療用ポリヌクレオチドの一方又は両方の末端にあり得る。さらに、1つより多いプロモーター及び治療用ポリヌクレオチドが、1つのAAVベクター内に存在し得、すなわち、末端反復の間に2つ又は3つ以上のカセットがあり得る。したがって、1つより多い異種性遺伝子が1つのベクターによって発現することができる。
プロモーターが、治療用ポリヌクレオチドの発現を、それらが操作可能に連結されている場合に作動させる能力があるという条件で、本発明のAAVベクターに任意のプロモーターが用いられ得る。そのようなプロモーターは当技術分野において知られており、それらには、例えば、AAV E1プロモーター又はE4プロモーター、加えて、非限定的に、CMVプロモーター及びPGKプロモーターを含む他のものが挙げられる。プロモーターは、組織又は細胞優先的又は特異的であり得、つまり、それが、関心対象となる特定の組織型か又は細胞型のいずれかにおいて治療用ポリヌクレオチドの発現を作動させることを意味する。この場合もやはり、そのようなプロモーターは当技術分野において知られている。
治療用ポリペプチドの3’末端における適切なポリアデニル化シグナルには、AAVポリアデニル化シグナルが挙げられるが、それらに限定されない。AAVゲノムのE3領域は、ベクターのクローニング能力を増加させるために欠失していてもよいし、又はそれはベクター構築物内に残っていてもよい。
本発明のAAVベクターは典型的には以下を含む:1)末端反復は、処置され得る個体の細胞ゲノムへの安定的な部位特異的組込みを媒介する;及び2)プロモーターは、治療用ポリヌクレオチドの発現を媒介し、又はプロモーターは、関心対象となるポリペプチドをコードするアンチセンスRNA又はセンスRNAの転写を媒介する。
本発明のAAVベクターは、当技術分野において知られた様々な標準方法により構築することができ、エレメントのライゲーションの順序は様々であり得る。プロモーター及び治療用ポリヌクレオチドを一緒にライゲーションして、2つのAAV逆位末端配列(ITR,inverted terminal repeat)の間に挿入することができるカセットを提供し得る。本発明のAAVベクターの構築のための標準技術は当技術分野において知られており、Sambrook et al. (1989: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.)などの参考文献、又はいろいろな場所で入手できる、組換えDNAテクノロジーに関する無数の実験マニュアルのいずれかに見出すことができる。DNAの断片をライゲーションするために様々なストラテジーが利用可能であり、その選択は、DNA断片の末端の性質に依存し、容易に決定することができる。
例えば、本発明によるAAVベクターを産生するための標準技術には、AAVカプシド及びRepタンパク質を発現するための産生細胞へのDNAプラスミドのトランスフェクション;一本鎖DNA又は自己相補的DNAの形をとり、かつレシピエント細胞又は患者において生物学的又は治療的機能を発揮し得る治療用及び/又はレポーター遺伝子に隣接する、任意のAAV血清型由来の2つのAAV逆位末端配列(ITR)を含むAAVベクターゲノムを発現するためのDNAプラスミドの同時トランスフェクション;並びに、導入するかしないか(すなわち、ヘルパーを含まない系において)は別にして、AAVヘルパーウイルス、例えば、アデノウイルス及び単純ヘルペスウイルス由来のAAVヘルパーエレメントのプラスミドDNAを介した同時トランスフェクション又はウイルス感染が挙げられる。
DNAの染色体への組込み、DNAの発現、及びベクターのクローニングを促進する他のヌクレオチド配列エレメントが、本発明のAAVベクターに含まれてもよい。例えば、プロモーターの上流のエンハンサー、又は治療用ポリヌクレオチドの下流のターミネーターの存在が発現を促進することができる。
本明細書に開示されているように、本発明のAAVベクターはまた、AAVカプシドタンパク質を含む。典型的には、これらのAAVカプシドタンパク質は、VP1、VP2、及びVP3と名付けられている。これらのAAVカプシドタンパク質は、典型的には、AAV DNAゲノム上にコードされて、構築されるAAVウイルス粒子の産生を可能にする。
産生細胞株
本発明によれば、産生細胞株は、AAVベクターを複製し、かつパッケージングする能力がある細胞株として定義され得る。任意の適切な産生細胞株が、本発明に従って、改変されて、用いられ得る。本発明の産生細胞株は真核細胞株、典型的には、哺乳類細胞株である。本発明により産生されたAAVベクターは、通常、ヒトにおける治療用である。したがって、好ましくは、本発明の産生細胞株はヒト細胞株である。本発明の産生細胞株は、NIH3T3、HT1080、A549、HeLa細胞、及びHEK 293T細胞株から選択され得る。本発明の産生細胞株は、接着又は浮遊の形をとり得る。
本発明によれば、産生細胞株は、AAVベクターを複製し、かつパッケージングする能力がある細胞株として定義され得る。任意の適切な産生細胞株が、本発明に従って、改変されて、用いられ得る。本発明の産生細胞株は真核細胞株、典型的には、哺乳類細胞株である。本発明により産生されたAAVベクターは、通常、ヒトにおける治療用である。したがって、好ましくは、本発明の産生細胞株はヒト細胞株である。本発明の産生細胞株は、NIH3T3、HT1080、A549、HeLa細胞、及びHEK 293T細胞株から選択され得る。本発明の産生細胞株は、接着又は浮遊の形をとり得る。
好ましい実施形態において、産生細胞株は、ヒト胎児由来腎臓(HEK,human embryonic kidney)293T細胞株である。HEK293T細胞株は、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列プロモーターの転写制御下でSV40初期領域を発現する。
本明細書で言及される場合、対照産生細胞株は、本発明に従って改変も適合もされていないものである。
治療的適用
本発明のAAVベクターは、遺伝子治療ベクターとして用いられ得る。遺伝子治療は、新しい遺伝情報の細胞への移入及び挿入を含む。遺伝情報は、細胞へ一過性に、又は安定的に挿入され得る。本発明のAAVベクターは、遺伝子治療にとって安全である。したがって、本発明のAAVベクターは、実質的な細胞毒なしに、哺乳類染色体へ部位特異的に組み込む能力があり得、かつ治療用ポリヌクレオチドの宿主細胞特異的発現を指示する。好ましくは、本発明のAAVベクターは、哺乳類、より好ましくはヒトにおける遺伝子治療に用いられる。
本発明のAAVベクターは、遺伝子治療ベクターとして用いられ得る。遺伝子治療は、新しい遺伝情報の細胞への移入及び挿入を含む。遺伝情報は、細胞へ一過性に、又は安定的に挿入され得る。本発明のAAVベクターは、遺伝子治療にとって安全である。したがって、本発明のAAVベクターは、実質的な細胞毒なしに、哺乳類染色体へ部位特異的に組み込む能力があり得、かつ治療用ポリヌクレオチドの宿主細胞特異的発現を指示する。好ましくは、本発明のAAVベクターは、哺乳類、より好ましくはヒトにおける遺伝子治療に用いられる。
本発明のAAVベクターは、疾患又は状態を処置又は予防するために用いることができる任意のポリヌクレオチドを含み得る。治療用ポリヌクレオチドはDNA又はRNAであり得る。典型的には、治療用ポリヌクレオチドはDNAである。治療用ポリヌクレオチドは、好ましくは、処置され得る個体において機能しない、及び/又は変異した遺伝子を標的にする(それに取って代わる)生物学的機能性遺伝子である。好ましい実施形態において、処置され得る個体がヒトである場合、治療用ポリヌクレオチドもまたヒトである。
治療用ポリヌクレオチドは、生物学的機能性タンパク質、すなわち、生物学的機能性タンパク質が発現する細胞の細胞機構に影響するポリペプチド又はタンパク質をコードし得る。例えば、生物学的機能性タンパク質は、細胞の正常な増殖に、又は個体の健康を維持するのに必須であるタンパク質であり得る。生物学的機能性タンパク質はまた、欠損したタンパク質を供給することによるか、個体において産生が不足しているタンパク質の量の増加を提供することによるか、又は個体に存在している可能性がある望まれない分子を阻害若しくは相殺するタンパク質を供給することによるかのいずれかで、個体の健康を向上させるタンパク質であり得る。生物学的機能性タンパク質はまた、新しい遺伝子治療を開発するための調査研究のために、又は細胞機構を研究するために有用なタンパク質であるタンパク質であり得る。
生物学的機能性タンパク質は、身体の正常な成長又は修復に必須であるタンパク質であり得る。生物学的機能性タンパク質はまた、がんなどの疾患と闘うことにおいて有用であるものであり得る。生物学的機能性タンパク質はまた、真核生物におけるネオマイシン抵抗性についての選択マーカーなどの抗生物質抵抗性についての選択マーカーであり得る。選択マーカーの他の型もまた用いられ得る。これらのタンパク質をコードする治療用ポリヌクレオチドは、日常的なクローニング手順(Sambrook et al.)、関心対象となる遺伝子を含有するベクターからの切り出し、又は公開された配列情報に基づいた化学的若しくは酵素的合成などの様々な方法のいずれかにより提供することができる。多くの場合、関心対象となるタンパク質をコードするDNAは市販されている。
生物学的機能性タンパク質は、新しい又は変化した機能を細胞に与えることにより細胞機構に影響を及ぼすことができる。例えば、治療用ポリヌクレオチドは、P−糖タンパク質をコードする多剤耐性遺伝子(mdr,multidrug resistance)であり得る。P−糖タンパク質は、細胞内薬物蓄積に影響する細胞膜糖タンパク質であり、多剤耐性の現象に関与する。
治療用ポリヌクレオチドは、非生物学的機能性タンパク質をコードし得る。例えば、様々な供給源由来の様々なドメイン及び機能を含むハイブリッド遺伝子が、組換えテクノロジー又は酵素的若しくは化学的合成により設計され、かつ作製され得る。
治療用ポリヌクレオチドは、関心対象となるmRNA又はDNAにハイブリダイズするのに十分相補的であるRNA分子、すなわち、センス又はアンチセンスRNAへ転写される能力があり得る。そのようなRNA分子は、過剰産生された、欠損した、又は別なふうに望ましくない分子の発現を防止又は制限することにおいて有用であり得る。本発明のAAVベクターは、治療用ポリヌクレオチドとして、標的配列と結合するように標的配列と十分相補的であるアンチセンスRNAをコードする配列を含み得る。例えば、標的配列は、ポリペプチドをコードするmRNAの部分であり得、その結果として、それが、そのポリペプチドをコードするmRNAと結合して、そのmRNAの翻訳を阻止する。標的配列は、転写に必須である遺伝子のセグメントであり得、その結果、アンチセンスRNAがそのセグメント(例えば、プロモーター又はコード領域)に結合し、転写を阻止又は制限する。このゆえに、アンチセンスRNAは、それの標的mRNAの翻訳、又はそれの標的DNAの転写を阻止するのに十分な長さ及び相補性をもたなければならない。アンチセンスRNAが、標的と結合し、それにより翻訳又は転写を阻害する能力があるように、標的配列との十分な相補性を有するアンチセンスRNAは、標準技術を用いて決定することができる。治療用ポリヌクレオチドは、例えば、化学的若しくは酵素的合成により、又は市販の供給源から提供することができる。
本発明のAAVベクターの機能、すなわち、治療用ポリヌクレオチドの移入及び発現を媒介する能力は、形質導入された細胞において治療用ポリヌクレオチドの発現をモニターすることにより評価することができる。例えば、細胞に本発明のAAVベクターをトランスフェクトし得、又は細胞を、前記AAVベクターを含有する様々な濃度のビリオンに感染させ得、その後、治療用ポリヌクレオチドの発現を評価し得る。
発現についてのアッセイは、治療用ポリヌクレオチドの性質に依存する。発現は、免疫学的アッセイ、組織化学的アッセイ、又は活性アッセイを含む様々な方法によってモニターすることができる。例えば、適切なDNA又はRNAプローブを用いて、転写を評価するのにノーザン分析を用いることができる。治療用ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに対する抗体が入手できる場合には、ウェスタンブロット分析、免疫組織化学法、又は他の免疫学的技術を、そのポリペプチドの産生を評価するために用いることができる。治療用ポリヌクレオチドが酵素である場合には、適切な生化学的アッセイもまた用いることができる。例えば、治療用ポリヌクレオチドが抗生物質抵抗性をコードする場合には、抗生物質抵抗性遺伝子の発現を評価するために、感染細胞のその抗生物質に対する抵抗性の決定を用いることができる。
異種性遺伝子が適切な細胞において発現していることを評価することに加えて、AAVベクターの正しいプロモーター特異性を、治療用ポリヌクレオチドの発現、又はそのプロモーターが活性であるとは予想されない細胞においては発現の欠如をモニターすることにより評価することができる。
本発明の治療用ポリヌクレオチドは、CFについてのCFTR、肺気腫についてのα1−アンチトリプシン、AIDSについての可溶性CD4、アデノシンデアミナーゼ欠損症についてのADA、及び遺伝子治療に有用である可能性があると認識された任意の他の遺伝子から選択される遺伝子であり得る。
本発明のAAVベクターは、エクスビボ及びインビトロの遺伝子治療適用に適合され得る。
本発明のAAVベクターはまた、他の治療用物質を送達するために用いられ得る。例えば、本発明のAAVベクターは、小分子、ペプチド、及び/又はタンパク質の治療用物質を送達するために用いられ得る。
本発明のAAVベクターは、他の治療剤及び/又は治療方法と併用して用いられ得る。特に、本発明のAAVベクターは、非限定的に、がんを含む疾患の処置において、標準治療剤及び/又は方法と併用して用いられ得る。AAV誘導性免疫は、抗体機能を増強することができる。したがって、本発明による治療的使用の一例は、治療用抗体を送達するための本発明のAAVベクターの使用、又は治療用抗体と併用した本発明のAAVベクターの使用である。
したがって、本発明は、治療の方法における使用のための、本明細書に記載されているようなAAVベクターを提供する。本発明はまた、遺伝子治療のための薬物の製造における、本明細書に記載されているようなAAVベクターの使用を提供する。
以下の実施例は本発明を例証する。
[実施例]
[実施例]
ベクター産生
2つの型のベクター粒子、すなわち、3つのAAV血清型、すなわち、AAV2、AAV5、及びAAV8のそれぞれ由来の完全粒子及び空(いかなる導入遺伝子配列も含まない)粒子を産生し、調べた。完全ベクター粒子は、GFPをコードするベクター配列を含有し、空ベクター粒子は、ベクター配列を含まないカプシドであった。
2つの型のベクター粒子、すなわち、3つのAAV血清型、すなわち、AAV2、AAV5、及びAAV8のそれぞれ由来の完全粒子及び空(いかなる導入遺伝子配列も含まない)粒子を産生し、調べた。完全ベクター粒子は、GFPをコードするベクター配列を含有し、空ベクター粒子は、ベクター配列を含まないカプシドであった。
完全AAV粒子は、3つのプラスミドpHelper(Stratagene社、USA)、AAV Rep−CapをコードするpAAV-RC、及びpAAV-hrGFP(Stratagene社、USA)から発現し、空AAVカプシドは、pHelper及びpAAV-RCのみから発現した。プラスミドpAAV2/2 Rep-CapをStratagene社(USA)から購入し、プラスミドpAAV-2/5-RC及びAAV-2/8-RCはJames Wilson教授(NIDCR/Pennsylvania、USA)により親切にも提供していただいた。
全てのベクターを、リン酸カルシウム−BBS方法(Chen et al., (1988) Biotechniques 6: 632-638)を用いて、ヒト胎児由来腎臓293T細胞(Stratagene社、USA)の一過性トランスフェクションにより産生させた。ベクター産生細胞を収集し、5サイクルの凍結融解に供して、ベクター粒子を遊離させ、細胞残屑を、遠心分離(2000g)により除去した。
その後、ベクター粒子を含有する上清を、0.45μmフィルター(Millipore社、UK)に通して濾過し、クロマトグラフィーの前に、20mM Bis-Trisプロパン緩衝液で希釈した。クロマトグラフィーのためにGilson HPLCシステム(Anachem社、UK)を用い、それは、UV-Detector(Gilson社、119)、ポンプ(Gilson社 306)、オートサンプラー(Gilson社 231XL)、及び画分収集装置(Gilson FC203B)を搭載し、どれも冷却再循環ウォーターバス(Grant社、SLS)(これはまた、ウォータージャケットカラムも冷却する)に接続した温度制御されたラックを取り付けられている。そのシステムは、Gilson Unipointソフトウェアを用いて制御した。XK 16/26カラム(Amersham社、UK)を、5mlの総容積のAVB Sepharose High Performance媒体(GE Healthcare社、Sweden)を含有するように充填し、製造会社のプロトコールに従って実施した。
この研究に用いられたAVB Sepharoseアフィニティークロマトグラフィーは、アデノ随伴ウイルスの精製のために設計された。図1Aは、AAV抗体を連結したAVB Sepharoseを含有する5mlカラムを用いた、典型的なタンパク質分離を示しており、大部分のタンパク質がAAV抗体に結合しておらず、したがって、溶出緩衝液(50mMグリシン、pH2.7)をアプライする前に、カラムを通過したことを示している(図1A)。空カプシドと完全ベクターのどちらも、25〜35分間の移動時間で溶出した(図1A)。その後、溶出した試料のタンパク質プロフィールを、SDS−PAGE及び銀染色を用いて可視化し(図1B)、クロマトグラフィー後のAAV試料の有意な純度が示された。予想された通り、3つの優勢なAAVカプシドタンパク質VP1(81kDa)、VP2(72kDa)、及びVP3(62kDa)が明らかであった。粗製の精製されていないAAV試料は、多数のタンパク質バンドを示した。
LC−MS/MSを用いる、AAVベクターからのタンパク質の同定
実施例1からの精製ベクター粒子をプールし、10K MWCO Slide-A-Lyzer透析カセット(Thermo scientific社、USA)中のPBSへ平衡化するよう透析し、ベクター定量化に供する前に、Ultra 5K MWCO遠心濾過装置(Millipore社、UK)を用いて最初の体積の1/20に濃縮した。
実施例1からの精製ベクター粒子をプールし、10K MWCO Slide-A-Lyzer透析カセット(Thermo scientific社、USA)中のPBSへ平衡化するよう透析し、ベクター定量化に供する前に、Ultra 5K MWCO遠心濾過装置(Millipore社、UK)を用いて最初の体積の1/20に濃縮した。
精製ベクターのベクター定量化ゲノム力価を、AAV2 ITRプライマーGGAACCCCTAGTGATGGAGTT(配列番号24)及びCGGCCTCAGTGAGCGA(配列番号25)並びにプローブCACTCCCTCTCTGCGCGCTCG(配列番号26)でのSYBR緑色色素リアルタイムqPCRを用いて決定し、プローブを5’末端に6−カルボキシフルオセイン(6−FAM)で、3’末端にカルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)で標識した。プラスミドpAAV2-hr-GFPを用いて標準曲線を作成した。総タンパク質を、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermo scientific社、USA)を用い、製造会社のプロトコールに従って測定した。カプシドタンパク質のアイデンティティ及び推定量を、SilverXpress染色キット(Invitrogen社、USA)を用い、製造会社のプロトコールに従って可視化した。
精製及び濃縮されたベクター試料を、1%Rapigest及び50mM重炭酸アンモニウム(ABC社)、pH8.5の存在下、トリプシンで、37℃で3時間、消化した。その後、試料をMS分析に供する前に、HClを加えることにより消化を終了させた。
LC−MS/MSを、溶媒脱気装置、ローディングポンプ、ナノポンプ、及び恒温オートサンプラーを含むUltimate 3000ナノ−LCシステムと連動した、ナノエレクトロスプレーイオン源及び2つの質量検出器、すなわち、リニアトラップ(LTQ)とorbitrapを搭載した質量分析システム(Thermo Fisher社、UK)を用いて、実行した。自動注入後、各消化からの抽出ペプチドを、トラッピングカートリッジ(PepMap逆相C18、5μm 100Å、300μ id×5mm長さ)(Thermo社)において脱塩し、C18逆相ナノカラム(3μm、100Å、5cm長さ)(Thermo社)において溶出し、続いて、5〜70%のアセトニトリルの直線濃度勾配及び0.1%ギ酸を用いて、0.3μL/分のカラム流速下で60分間、分離を行った。LTQにおける1回目のサーベイMSスキャン(m/z 400〜2000)後、5つの最も強いイオンを連続して単離し、30,000ppmの解像度での正確な質量測定のためにOrbi-trapに移した。その後、これらを、リニアイオントラップにおいて35%の衝突誘起エネルギーで断片化した。総サイクル時間は、およそ30ミリ秒間であった。動的排除(dynamic exclusion)を2カウントに設定したデータ依存性MS/MSモードで、データを収集した。
質量スペクトル処理及びデータベース検索を含むデータ解析を、内蔵型Sequestを有するThermo Proteome Discoverer 1.2.を用いて行った。MSによるタンパク質同定についての最初の質量許容差を10ppm(百万分率)に設定した。最高2つのトリプシン切断の欠如が認められ、メチオニン酸化を動的改変(dynamic modification)として設定した。荷電状態1、2、3について、それぞれ、X相関スコアが1.5より大きい、2より大きい、又は2.2より大きい場合、MS/MSによるペプチド配列のみが含まれた。少なくとも2つのペプチドがそのタンパク質に一致している場合、明白な同定が認められた。タンパク質FASTAデータベースをwww.uniprot.orgからダウンロードした(リリース2012−03、ヒト(Homo sapiens)(分類群識別名9606)、ウシ(Bos taurus)(9913)、緑色蛍光タンパク質(P42212)、並びにAAV2(648242)、AAV5(82300)、及びAAV8(202813)からの完全なエントリーを含む)。
6つの異なる型の精製AAVベクター試料、すなわち、AAV2−GFP、AAV2−空、AAV5−GFP、AAV5−空、AAV8−GFP、及びAAV8−空由来の等量の総タンパク質をLC−MS/MS分析に供した。データ変動を最小限にするために、各型のベクターについて、3つのバッチの試料を調製し、各バッチを、40の組織培養プレート(150mm直径)からプールした。各バッチの試料について3回のMS実行を実施した。結果により、3つのバッチの試料の少なくとも2/3回の実行において66のタンパク質が検出され、したがって、有意であるとみなされ、さらに研究され得ることが示された。これらのタンパク質は表2に列挙されている。
有意なタンパク質の中で:
・4つのタンパク質、すなわち、GapDH、熱ショック70kDaタンパク質1A/1B、ヒストンH2A型1H、及びヒストンH2Bは、血清型及び粒子の型に関わらず、全ての6つの型のAAVベクターに共通していた;
・6つのタンパク質が、5つの型のベクターに共有された;
・4つの型の試料によって共有された10のタンパク質のうち、6つのタンパク質がAAV2及びAAV5の空型と完全型の両方により共有され、AAV2ベクターとAAV5ベクターとの間での相対的類似性を示した;
・20のタンパク質が2つの型のベクターに共通しており、それらのタンパク質の大部分は、同じ血清型の空型及び完全型に共通した;
・21のタンパク質は、ベクターの個々の型に固有であった。
・4つのタンパク質、すなわち、GapDH、熱ショック70kDaタンパク質1A/1B、ヒストンH2A型1H、及びヒストンH2Bは、血清型及び粒子の型に関わらず、全ての6つの型のAAVベクターに共通していた;
・6つのタンパク質が、5つの型のベクターに共有された;
・4つの型の試料によって共有された10のタンパク質のうち、6つのタンパク質がAAV2及びAAV5の空型と完全型の両方により共有され、AAV2ベクターとAAV5ベクターとの間での相対的類似性を示した;
・20のタンパク質が2つの型のベクターに共通しており、それらのタンパク質の大部分は、同じ血清型の空型及び完全型に共通した;
・21のタンパク質は、ベクターの個々の型に固有であった。
MSデータの確証
実施例2で得られた質量分析データを確証するために、MSを用いて同定された、以下の2つのカテゴリーのタンパク質を、イムノブロッティングのために選択した:(i)AAVライフサイクルにおいて確認された役割を有するタンパク質NPM1、NCL1、及びATP5A、並びに(ii)AAVとの関連についての報告はないが、MS分析において相対的に高いスコア及び信頼度を有するタンパク質アネキシンV、RuvB、CypA、hnRNPK、及びYB1。
実施例2で得られた質量分析データを確証するために、MSを用いて同定された、以下の2つのカテゴリーのタンパク質を、イムノブロッティングのために選択した:(i)AAVライフサイクルにおいて確認された役割を有するタンパク質NPM1、NCL1、及びATP5A、並びに(ii)AAVとの関連についての報告はないが、MS分析において相対的に高いスコア及び信頼度を有するタンパク質アネキシンV、RuvB、CypA、hnRNPK、及びYB1。
10%SDSポリアクリルアミドゲルを用いて、タンパク質試料を分離し、その後、ゲルをイムノブロッティングに供した。イムノブロッティングのための試料を電気泳動し、Hybond ECL膜(Amersham社、UK)にエレクトロブロットした。以下の一次抗体を用いた;マウス抗AAV2、マウス抗アネキシンV(Abcam社、UK)、抗ヌクレオリン(Abcam社、UK)、抗ヌクレオフォスミン(Abcam社、UK)、抗EF1β2(Abcam社、UK)、抗CypA(Abnova社、UK)、抗RuBV2(Abcam社、UK)、抗hnRNP K(Abcam社、UK)、抗ATP5A(Abcam社、UK)、及び抗YB1(Abcam社、UK)。イムノブロットをさらに、ヤギ抗マウス、抗ウサギ、又はウサギ抗ヤギ西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma社、UK)とインキュベートした。免疫反応性タンパク質を、ECL化学発光試薬(Amersham社、UK)を用いて検出した。
各試料について、MS/MSのために用いた同じ試料由来の10μgの総タンパク質を、イムノブロッティングに供する前に、SDS/PAGEを用いて分離した。総タンパク質を、SD/PAGE及び銀染色を用いて可視化し(図1B)、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3の試料純度及び同等の量を確認した。
イムノブロッティングにより、RuvB2、CypA、及びアネキシンA5が、試験された全ての試料において検出されたことが示された(図2A及びB)。YB1は、AAV8空カプシドを除く全ての試料において、それらが粗製であるか、又は精製されているかに関わらず、検出された(図2C)。AAVベクターにおいて、組み入れられた細胞タンパク質と、同時精製されたが組み入れられていない細胞タンパク質とを識別するために、プロテイナーゼK(PK,proteinase K)を用いて、精製ベクターに残存し、かつベクターカプシドによって保護されなかった微量の組み入れられていない細胞タンパク質を除去した。図2Dより、PK処理の前及び後での、精製AAVベクターにおけるYB1タンパク質の同等の検出が示され、AAVベクターにおけるYB1の組み入れが示された。さらに、AAVベクターと並行して、処理され、かつHPLC精製された、精製対照293T細胞において(未精製レーン、図2D)、YB1タンパク質の検出はなく、AAVベクター精製のために採用されたAVBカラムの特異性が浮き彫りにされ、かつAAVベクターにおけるYB1タンパク質の組み入れがさらに実証された。hnRNPKは、試験された試料のいずれにおいても検出されなかった(データ未呈示)。
イムノブロッティング及びMS研究からの結果をさらに表3において、要約して、比較し、これらの2つの異なる方法の間でタンパク質検出において22.9%(11/48の試験された試料、丸印で強調されている)の差異、及び77.1%の一致が示された。
産生細胞における、AAV産生のタンパク質発現への影響
産生細胞における、ウイルスタンパク質と細胞タンパク質の両方の発現へのAAV産生の潜在的影響を調べるために、AAVカプシドタンパク質、アネキシンA5、CypA、及びYB1の発現の変化を、AAV産生の1回の完全サイクルを通して、すなわち、AAV及びヘルパープラスミドのトランスフェクション前の0時間目から、ベクター産生過程が終了し、AAVベクターを採取する時点の、トランスフェクション後4時間目、6時間目、24時間目、30時間目、48時間目、及び72時間目まで、分析した。AAVカプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)及びRepタンパク質は、AAV2産生細胞においてトランスフェクション後24時間目に検出することができた(図3A及び3B)。産生細胞におけるカプシドタンパク質のわずかな増加が、トランスフェクション後24時間目から72時間目の間に観察された。AAV産生の完全サイクルを通して、YB1及びCypA発現において有意な変化は観察されず(図3C)、ゆっくり時間をかけて、アネキシンA5発現の増加が全ての3つの血清型において観察された(図3D)。
産生細胞における、ウイルスタンパク質と細胞タンパク質の両方の発現へのAAV産生の潜在的影響を調べるために、AAVカプシドタンパク質、アネキシンA5、CypA、及びYB1の発現の変化を、AAV産生の1回の完全サイクルを通して、すなわち、AAV及びヘルパープラスミドのトランスフェクション前の0時間目から、ベクター産生過程が終了し、AAVベクターを採取する時点の、トランスフェクション後4時間目、6時間目、24時間目、30時間目、48時間目、及び72時間目まで、分析した。AAVカプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)及びRepタンパク質は、AAV2産生細胞においてトランスフェクション後24時間目に検出することができた(図3A及び3B)。産生細胞におけるカプシドタンパク質のわずかな増加が、トランスフェクション後24時間目から72時間目の間に観察された。AAV産生の完全サイクルを通して、YB1及びCypA発現において有意な変化は観察されず(図3C)、ゆっくり時間をかけて、アネキシンA5発現の増加が全ての3つの血清型において観察された(図3D)。
NPM1、NCL、及びYB1のshRNAノックダウン
標的遺伝子を特異的に認識する機能性shRNAは、結果として、その遺伝子の発現の下方制御を生じる。NCL及びNPM1を過剰発現させるように培養下で細胞を樹立することはできなかったため(データ未呈示)、このストラテジーを、AAV構築において細胞タンパク質の役割を研究するための代替方法として選択した。
標的遺伝子を特異的に認識する機能性shRNAは、結果として、その遺伝子の発現の下方制御を生じる。NCL及びNPM1を過剰発現させるように培養下で細胞を樹立することはできなかったため(データ未呈示)、このストラテジーを、AAV構築において細胞タンパク質の役割を研究するための代替方法として選択した。
産生細胞におけるNPM1、NCL、アネキシンV、及び/又はYB1のshRNAノックダウンは、NPM1、NCL、アネキシンV、及び/又はYB1のAAVウイルスとの(MS/MS及びイムノブロットで同定される)会合を損ない、その後、遺伝子ノックダウン細胞においてAAV産生に影響し得るという仮定の下に、レンチウイルスベクター送達系を用いて、shRNA配列をスクリーニングした。
標的遺伝子を特異的に認識する機能性shRNAは、標的にされた遺伝子発現の下方制御を引き起こす。AAV産生におけるYB1及びアネキシンA5の役割及び重要性を同定するために、shRNAを用いて産生細胞においてYB1又はアネキシンA5をノックダウンする実験を設計し、仮説は、このノックダウンが、(研究されたMS/MS及びイムノブロッティングから同定されているような)YB1又はアネキシンA5のAAVウイルスとの会合を損ない、その後、遺伝子ノックダウン細胞においてAAV構築に影響するだろうということであった。
レンチウイルスベクター送達系を用いて、アネキシンA5及びYB1を標的にする10のshRNA配列(A1〜A5、配列番号19〜23、及びY1〜Y5、配列番号14〜18)を、アネキシンA5及びYB1を、それぞれ、調節解除するそれらの能力についてスクリーニングした。
より詳細には、レンチウイルス発現系を用いてプラスミドpLKO.1-puro(Sigma社、USA)からshRNAを発現させた。shRNA及びレンチウイルスベクターパッケージングプラスミドを、CaCl2トランスフェクション方法を用いて293T細胞へトランスフェクトした。対照細胞に、shRNA配列を含まない空カプシド(Mock)、又は非哺乳類遺伝子配列を標的にするスクランブルshRNA配列(スクランブル)をトランスフェクトした。293T細胞に、LV−shRNAベクターを形質導入し、形質導入から48時間後、ピューロマイシン選択に供した。
AAVベクターゲノム力価を、CMVプロモーター又はAAV2 ITR配列を標的にするプライマー及びプローブを用いるq−PCRにより決定した。CMVプライマー:TTC CTA CTT GGC AGT ACA TCT ACG(配列番号30)及びGTC AAT GGG GTG GAG ACT TGG(配列番号31)、並びにCMVプローブ:TGA GTC AAA CCG CTA TCC ACG CCC A (配列番号32)。AAV2 ITRプライマー:GGAACCCCTAGTGATGGAGTT(配列番号24)及びCGGCCTCAGTGAGCGA(配列番号25)並びにプローブ:CACTCCCTCTCTGCGCGCTCG(配列番号26)。この場合もやはり、5’6−FAM及び3’TAMRA標識を用いた。プラスミドDNA pAAV-hrGFP(Stratagene社、USA)を、102コピーから108コピーまでの範囲の10倍段階希釈で、参照標準として用いた。qPCRを、LightCycler480(Roche社、USA)を用いて、950Cで10分間の1サイクル、続いて、950Cで15秒間、600Cで30秒間、及び720Cで5秒間の45サイクルという条件下で実行した。遺伝子ノックダウンのレベルを、前に記載されているようなイムノブロッティング方法に従って、shRNAウイルスを形質導入された細胞由来の10ugの総タンパク質に関して評価した。
shRNAウイルスの力価を測定する通常の方法を実施するためのレポーター遺伝子がLV shRNA系において存在しないため、遺伝子ノックダウン研究は、全試料及び対照shRNAウイルスを同一の条件下で同時に産生し、その後、同数の細胞を処理するのに同体積のshRNAウイルスを用いることによる直接的比較を用いて、管理及び確証されなければならなかった。図4は、shRNA配列A2及びA5がアネキシンA5発現を有意に下方制御したことを示している(図4A)。同様に、Y3、Y4、又はY5の細胞への導入は、結果として、非哺乳類遺伝子を標的にする配列を有する対照(スクランブル)又はshRNA配列を含まない対照(293T)と比較して、YB1の有意な下方制御を生じた(図4B)。したがって、これらの4つのshRNA配列、すなわち、A2、A5、Y4、及びY5を、その後の研究に用いた。
shRNA配列、すなわち、A2、A5、Y4、Y5、又はスクランブルを保有する産生細胞を、ピューロマイシンタグ付けshRNAを含まない細胞を除去するために少なくとも10日間のピューロマイシンの存在下での培養により、AAV産生のために樹立した。最高7つの独立したノックダウン細胞株を、各shRNA配列について作製し、AAVベクターを産生するために用いた。変動を最小限にするために、AAVベクターを、5千万個を超える細胞を含有する15cm直径プレートから産生させ、かつノックダウン細胞株と対照細胞株から同時に、同一の条件下で産生させ、その後、リアルタイムPCRを用いてAAVゲノム力価について定量化した。
図5に示されているように、shRNA配列YB1_Y4の産生細胞への導入は、結果として、対照shRNAスクランブルに対して、AAV2ベクターゲノム力価の最高50倍の増加(図5A)、及びAAV8ベクターゲノム力価の10倍の増加(図5B)を生じ、しかも、その同じY4 shRNA配列はAAV5産生に有意な影響を生じなかった(データ未呈示)。これは、3つの血清型のAAVの間での内因的差異を示している。ノックダウン細胞におけるYB1発現の低下は80日間を超える間、継続したが、Y4の最大の効果は、20〜40日間培養下にあった産生細胞においてのみ得られた(図5A)。類似した時間依存性パターンはまた、AAV8産生細胞においても観察された(図5B)。
図6は、凍結保存から回復し、かつ20〜80日間培養下にあったノックダウン細胞の7バッチにおけるYB1の有意な下方制御を示しており、バッチ間での比較性、及びYB1ノックダウン細胞の持続可能性を実証している。
図7は、105個の細胞あたり5mlから100mlまでshRNAウイルスを増加させた場合、YB1調節解除のわずかな増加があったこと(図7A)、及びshRNAを含有する50mlウイルスが用いられた場合、ベクターゲノム力価への最大効果が観察されたこと(図7B)を示しており、shRNAを含有するウイルスの量を増加させた場合の、ベクター産生への飽和的及び潜在的毒性効果を示している。
レンチウイルスベクター送達系を用いてまた、NCL及びNPM1遺伝子を標的にする10のshRNA配列、すなわち、N1〜N5、及びN6〜N10を、NCL及びNPM1発現、それぞれへのそれらの効果についてスクリーニングした。
図8Aは、shRNA配列NPM−N6〜NPM−N10(配列番号4〜8)の細胞への導入が、非哺乳類遺伝子を標的にするスクランブルshRNAを含む(スクランブル)、又はいずれのshRNA配列をも含まない(293T)のいずれかである2つの対照細胞と比較しても、NPM1発現の有意な下方制御を達成したことを示した。shRNA NPM−N6及びNPM−N9(図8A、丸で囲まれている)は、試験された5つの配列の間で最も高い遺伝子ノックダウンを示し、したがって、次の調査のために選択された。NPM1−N9及びNPM1−N6ノックダウン細胞におけるNPM1発現の低下は、ピューロマイシン選択培地中での培養後80日間を超える間、持続し(図8B)、凍結保存から回復したノックダウン細胞においても持続した(図8C)。
NCL遺伝子を標的にする4つのshRNA配列、NCL−N1〜NCL−N4(配列番号9〜12)は、NCL発現の部分的低下を示し、それらの中で、NCL−N1及びNCL−N4が、より高い効果を生じ(図9A、丸で囲まれている)、したがって、さらなる研究のために選択された。NCL−N1及びNCL−N4のNCL発現へのノックダウン効果もまた、ピューロマイシン選択培地での培養後80日間を超える間、持続し(図9B)、凍結保存後、持続した(データ未呈示)。
図10は、shRNA NPM1−N9でのNPM1の下方制御が、AAV2/GFPのベクターゲノム力価の最高35倍の増加(図10A)、及びAAV8/GFPの最高30倍の増加(図10B)をもたらしたことを示し、AAV産生におけるNPM1タンパク質の重要な役割を示している。ベクターゲノム力価へのNPM1の上方制御効果は、AAV2/GFP(図10A)とAAV8/GFP(図10B)のどちらについても経時的変化を示し、約40日間の培養下でのノックダウン産生細胞において、最高30倍の増加という最大効果が観察され、遺伝子ノックダウン後最長90日間、産生細胞において持続した。
NCLの下方制御は、AAV2ベクター産生への類似した上方制御効果を示し、AAV2ゲノム力価の最高40倍の増加があった。しかしながら、産生細胞の異なるバッチの間で2倍〜40倍の範囲である有意な変動が存在した(図11A)。NCLの遺伝子ノックダウンは、AAV2と比較して、AAV5及びAAV8ゲノム力価(それぞれ、図11B及び11C)へより低い上方制御効果(最高10倍の増加)を生じた。NCLノックダウン産生細胞から有意な経時的変化は観察されなかった(データ未呈示)。
YB1のCRISPRノックダウン
shRNAの代替として、YB1発現をノックアウト又はノックダウンするためにCRISPRゲノム編集を用いた。この研究に用いられるgRNA配列を、YB1遺伝子配列を含むヒト1番染色体配列全体(受託番号NC_000001.11)を標的にするCRISPR/Cas9プログラム(https://chopchop.rc.fas.harvard.edu/)を用いて設計した。gRNA配列の4つのペア(A、B、C、及びD)(表4)を選択し、GeneArt CRISPRヌクレアーゼベクターキット(Life technology社、カタログ番号A21174)を用いて、YB1 gRNAノックアウト産生細胞を作製した。
shRNAの代替として、YB1発現をノックアウト又はノックダウンするためにCRISPRゲノム編集を用いた。この研究に用いられるgRNA配列を、YB1遺伝子配列を含むヒト1番染色体配列全体(受託番号NC_000001.11)を標的にするCRISPR/Cas9プログラム(https://chopchop.rc.fas.harvard.edu/)を用いて設計した。gRNA配列の4つのペア(A、B、C、及びD)(表4)を選択し、GeneArt CRISPRヌクレアーゼベクターキット(Life technology社、カタログ番号A21174)を用いて、YB1 gRNAノックアウト産生細胞を作製した。
4つのCRISPR gRNA配列A、B、C、又はDのそれぞれについて、CRISPR gRNAノックアウト細胞の2つのバッチ(B1及びB2)を作製した。各gRNAペアについての親B1及びB2 gRNA産生細胞から、単細胞クローン(C1〜C5)をさらに導き出した。いずれのgRNA配列も含まない親293T細胞(293T)を対照として用いた。さらに、ハウスキーピング遺伝子GAPDHを試料負荷標準化のために用いた。
YB1遺伝子ノックアウトは、合計10の単細胞クローンにおいて観察された。図12は、これらの3つのgRNAペアを用いた、YB1発現への効果を示している。293とラベルされたレーンは、293親細胞株を指す。B1及びB2は、単細胞クローニング前に作製されたバルクノックアウト細胞である。C1〜C5は、バルクノックアウト細胞から作製された単細胞クローンである。
図12から明らかであるように、gRNAペアAは、クローン細胞株C1においてYB1発現を有意に阻害し、gRNAペアBは、バルクノックアウト細胞B2及びクローン細胞株C1〜C4においてYB1発現を有意に阻害し、加えて、バルクノックアウト細胞B1においてYB1発現を観察可能なほどに阻害し、gRNAペアCは、バルクノックアウト細胞B2及びクローン細胞株C2〜C4においてYB1発現を有意に阻害し、加えて、クローン細胞株C1及びC5においてYB1発現を観察可能なほどに阻害した。
YB1ノックダウン産生細胞の分子分析
AAV産生へのYB1の影響の分子機構を理解するために、YB1ノックダウン細胞におけるAAV2タンパク質(Rep及びCap)発現及びベクターDNA産生を系統的に分析した。図13Aは、一過性トランスフェクション後24時間目及び72時間目、それぞれにおける、YB1ノックダウン細胞におけるrep遺伝子発現の、スクランブル細胞におけるそれと比較しての12倍増加及び4倍増加を示し、天然YB1のrep遺伝子発現へのマイナス効果を示している。対照的に、YB1ノックダウン細胞における総AAV2カプシドタンパク質の産生(1.29±0.2×1014カプシド/108細胞)は、スクランブル細胞におけるそれ(8.87±0.1×1014カプシド/108細胞)の約7分の1であり(図13B)、天然YB1の存在がcap遺伝子発現に有益であることを示している。さらに、採取されたベクター試料におけるカプシドタンパク質の量は、YB1ノックダウン細胞(6.27±0.3×1013カプシド/108細胞)とスクランブル(6.77±0.2×1013カプシド/108細胞)との間で同等であり(図13B)、ベクターカプシド粒子形成が、細胞において産生されるカプシドタンパク質の量に依存しない可能性があること、及び細胞において形成され得る粒子の数に制限があったことを示している。
AAV産生へのYB1の影響の分子機構を理解するために、YB1ノックダウン細胞におけるAAV2タンパク質(Rep及びCap)発現及びベクターDNA産生を系統的に分析した。図13Aは、一過性トランスフェクション後24時間目及び72時間目、それぞれにおける、YB1ノックダウン細胞におけるrep遺伝子発現の、スクランブル細胞におけるそれと比較しての12倍増加及び4倍増加を示し、天然YB1のrep遺伝子発現へのマイナス効果を示している。対照的に、YB1ノックダウン細胞における総AAV2カプシドタンパク質の産生(1.29±0.2×1014カプシド/108細胞)は、スクランブル細胞におけるそれ(8.87±0.1×1014カプシド/108細胞)の約7分の1であり(図13B)、天然YB1の存在がcap遺伝子発現に有益であることを示している。さらに、採取されたベクター試料におけるカプシドタンパク質の量は、YB1ノックダウン細胞(6.27±0.3×1013カプシド/108細胞)とスクランブル(6.77±0.2×1013カプシド/108細胞)との間で同等であり(図13B)、ベクターカプシド粒子形成が、細胞において産生されるカプシドタンパク質の量に依存しない可能性があること、及び細胞において形成され得る粒子の数に制限があったことを示している。
DNA組込みを、YB1 shRNA組込みについてU6配列を標的にするリアルタイムqPCR、AAV2パッケージングプラスミドpRep/Cap及びphrGFP組込みについて、それぞれ、rep及びCMVプロモーター配列を標的にするリアルタイムqPCRを用いて、系統的に分析した。プールされたYB1ノックダウン細胞における細胞あたり平均1コピーのYB1 shRNAと等価の、YB1ノックダウン細胞において1.3±0.17×108コピー/108細胞のYB1 shRNA配列が検出された。AAVパッケージングプラスミドpRep/Cap及びphrGFPの組込みは、スクランブル細胞とYB1ノックダウン細胞との間で同等であり、108細胞あたり、約2×107コピーのRep/Cap及び約3×107コピーのphrGFPであった。
YB1遺伝子ノックダウンのAAV2ベクターDNAの産生への影響を分析するために、AAVパッケージングプラスミドの一過性トランスフェクション後72時間目のYB1ノックダウン細胞における、(1)パッケージングされたベクターDNAとパッケージングされていないベクターDNAの両方を含有する総ベクターDNAのコピー、(2)パッケージングされていないベクターDNAのコピー、及び(3)パッケージングされたベクターDNAのコピーを、ベクター特異的CMV配列を標的にするqPCRを用いて系統的に定量化した。総ベクターDNAを、プラスミドDNAをベンゼナーゼ(benzenase)で除去し、細胞膜及び核を試料の凍結融解後に除去し、AAVカプシドをプロテイナーゼKで解体して、パッケージングされたベクターDNAをカプシドから遊離させることにより調製した。組み込まれていないベクタープラスミドDNAもまた、細胞質における総ベクターDNAコピーに寄与する可能性があるが、YB1細胞とスクランブル細胞の両方について、トランスフェクション及び産生手順が並行して実施され、かつ同一であったことを考慮すると、細胞質におけるプラスミドDNAの量は、同様に同等であるはずであり、相対的な総ベクターDNA産生の計算を有意に変化させることはないだろう。図13Cは、総ベクターDNA(+PK)のコピーが、YB1ノックダウン産生細胞において(1.93±0.08×1013コピー/108細胞)、スクランブル細胞におけるそれ(1.46±0.5×1012コピー/108細胞)の約13倍であったことを示し、YB1遺伝子ノックダウンがベクターDNA産生を促進したことを示している。
パッケージングされていないAAV2ベクターDNAを、パッケージングされたベクターDNAをAAVカプシドから遊離させるためのプロテイナーゼK処理がない(−PK)点を除いて、総DNA試料についての調製と類似した方法で調製した。パッケージングされていないベクターDNAのコピーは、YB1ノックダウン細胞において(2.02±0.5×1012コピー/108細胞)、スクランブル細胞におけるそれ(2.61±0.8×1011コピー/108細胞)の約8倍であった(パッケージングされていないDNA、図13C)。物理的なベクターゲノム力価を表す、パッケージングされたAAV2ベクターDNAは、細胞質におけるパッケージングされていないベクターDNAを除去するためのDNアーゼI処理(+DNアーゼI)の添加、続いて、パッケージングされたベクターDNAをカプシドから遊離させるためのプロテイナーゼK処理(+PK)により調製した。パッケージングされたベクターDNA(+DNアーゼI/+PK、図13C)のコピーは、YB1ノックダウン細胞(7.97±0.5×1010コピー/108細胞)において、スクランブル細胞におけるそれ(2.16±0.3×1010コピー/108細胞)の4倍であった(図13C)。この特定のセットの分子研究において、本発明者らが、YB1ノックダウン細胞におけるAAV2ベクターゲノム力価の、スクランブル細胞におけるそれと比較して、4倍の(有意な)増加を観察したことは注目されるべきである。
要約すれば、総ベクターDNA(13倍増加)、パッケージングされていないベクターDNA(8倍増加)、及びパッケージングされたベクターDNA(4倍増加)における倍変化の間で観察された有意な差は、YB1産生系におけるAAVベクターDNAパッケージングの改善の可能性を明確に示している。さらに、YB1ノックダウン細胞由来の採取されたベクター試料の同じバッチにおいて、スクランブル細胞由来と比較して、カプシドタンパク質の量が同等であるが(図13B)、パッケージングされたDNAのコピー(図13C)が4倍であったことを考慮すれば、その結果は、AAV産物における空粒子の数を低下させることにおける、YB1遺伝子ノックダウンの注目に値する優位性を明らかにした。
考察
本発明者らは、AAVベクター産生におけるYB1の重要な役割を初めて実証している。YB1遺伝子を標的にして下方制御するshRNA配列Y4をAAV産生細胞へ導入することにより、AAV2及びAAV8、それぞれのベクターゲノム力価の最高50倍及び10倍の増加が生じた。YB1ノックダウン細胞の分子特性は、スクランブル細胞と比較して、YB1ノックダウン細胞において、rep発現の約12倍の増加、ベクターDNA産生の約13倍の増加、及びcap発現の約7分の1の減少を示し、AAV生態におけるYB1遺伝子の意義深い役割を明らかにした。
本発明者らは、AAVベクター産生におけるYB1の重要な役割を初めて実証している。YB1遺伝子を標的にして下方制御するshRNA配列Y4をAAV産生細胞へ導入することにより、AAV2及びAAV8、それぞれのベクターゲノム力価の最高50倍及び10倍の増加が生じた。YB1ノックダウン細胞の分子特性は、スクランブル細胞と比較して、YB1ノックダウン細胞において、rep発現の約12倍の増加、ベクターDNA産生の約13倍の増加、及びcap発現の約7分の1の減少を示し、AAV生態におけるYB1遺伝子の意義深い役割を明らかにした。
YB1は、ほとんど全てのDNA及びmRNA依存性過程に関与するDNA及びRNA結合性タンパク質である。YB1はmRNAをパッキングして安定化させ、遺伝子制御を異なるレベルで媒介する。YB1は、二本鎖DNA(dsDNA)と一本鎖DNA(ssDNA)の両方と結合するが、ssDNAに対してはるかに高い結合親和性を有する。YB1が、プロモーターの領域におけるssDNAを安定化させることにより活性化タンパク質の結合を阻止し、又は配列特異的様式で増強することが示唆されている。特に、YB1は、ssDNAモチーフGGGG(TT)に対して最も高い結合親和性を有する。AAV2 ssDNAゲノムの分析により、そのような一本鎖GGGG(TT)モチーフが、AAV2ゲノム(NCBI配列 NC_001401.2)のヌクレオチド137〜142のAAV2 ITR領域内に提示されていることが示され、YB1タンパク質に対する可能性のあるAAV DNA結合部位を示している。ITR欠失変異誘発により、一本鎖GGGG(TT)モチーフを網羅し、かつそのすぐ後に125ヌクレオチド長のヘアピンが続く20ヌクレオチドのD配列(ヌクレオチド126〜146)が、AAV DNAゲノムのカプシド封入に必要とされることが示され、したがって、AAVについてのパッケージングシグナルとして提案されており、特に、AAVカプシドタンパク質のN末端領域が、D配列と結合し、その結果として、AAV ssDNAの、あらかじめ構築されたAAVカプシドへのカプシド封入を生じる。したがって、YB1とAAVカプシドの両方の、ITR D配列領域との結合に関する能力は、YB1とAAVカプシドの競合を余儀なくし得、AAVゲノムのカプシド封入を損ない得る。
本発明者らによるAAV血清型2(AAV2)のゲノムの分析により、このGGGG(TT)モチーフが、AAV2ゲノム(NCBI配列 NC_001401、バージョンNC_001401.2 GI:110645916)の位置137〜142の逆位末端配列(ITR)領域内に存在することが示されている。これは、YB1に関するAAV2ゲノムへの可能性のある結合部位を示す。本発明者らは、AAV2 ITRを含むAAV5及びAAV8の血清型のキメラ型(しかし、それぞれ、AAV5及びAAV8のカプシドタンパク質を含む)を作製している。したがって、GGGG(TT)モチーフがYB1に関する唯一の結合部位であるとすれば、YB1は、AAV2、並びにAAV5及びAAV8のキメラ型についてのウイルス粒子産生への類似した効果を生じるだろうことが予想される。しかしながら、本発明者らは、YB1ノックダウン細胞において産生されるAAV2、AAV5、及びAAV8ベクターの間で、スクランブル対照に対してのAAVベクター力価において有意な差があることを実証している。特に、本発明者らは、YB1ノックダウンを有する産生細胞において、AAV8力価の10倍の増加、及びAAV5力価の有意な増加なしと比較して、AAV2ベクター力価の50倍増加があることを見出した。これは、YB1ノックダウンのAAVベクター産生への効果に関するいくつかのAAVカプシドタンパク質特異性エレメント、加えてDNA配列特異的効果もまた存在する可能性があることを示唆している。
タンパク質−タンパク質相互作用に関与する3つのYB1ドメイン、すなわち、A/P、CSD、及びCTDがある。特に、YB1タンパク質は、p53、Aktキナーゼ、hnRNP K、及びTATA結合性タンパク質などの重要な制御タンパク質と相互作用することが知られている。YB1はまた、HIV TAT、ポリオーマウイルスのラージT抗原、C型肝炎ウイルス(HCV,Hepatitis C Virus)タンパク質NS3/4A、及びインフルエンザのリボヌクレオタンパク質(RNP,ribonucleoprotein)などのウイルスタンパク質と結合することによりいくつかのウイルスの複製において重要な役割を果たすことが知られている。実際、YB1のshRNAノックダウンは、最高80%のHCV力価の低下を生じることが示されている。その研究において、YB1のノックダウンは、ウイルスタンパク質の発現にも、ウイルスRNAの産生と安定性にも影響しないことが見出され、YB1のノックダウンが、ウイルス構築のためにコアタンパク質をリクルートするために必要とされるYB1−NS3/4A vRNA相互作用の形成を破壊したことを示している。
アデノウイルス複製におけるYB1の役割は、YB1の下方制御が、AAV産生を多くも50倍、有意に向上させたという本発明者らの所見の理解に特に関係している。アデノウイルス感染細胞におけるアデノウイルスタンパク質E1BのYB1との相互作用は、結果として、核におけるYB1の蓄積、YB1のE2A遺伝子の活性化、及びその後、アデノウイルスDNA複製の開始を生じることが示されている。E1非依存性様式でのYB1制御性アデノウイルスE2プロモーターの過剰発現は、アデノウイルスDNA複製だけでなく、E1欠失アデノウイルスベクター由来の感染性粒子の産生の2〜3log増加もまた、もたらした。結果として、YB1の過剰発現は、アデノウイルスに基づいたベクター開発及びウイルス療法にさらに利用されている。
これまで、AAVウイルスに関してYB1の直接的関連は報告されていない。しかしながら、AAV生活環におけるアデノウイルスの役割は十分、立証されており、これは、YB1ノックダウンのAAVベクター産生への増強の背後の機構を理解するのを促す可能性がある。本実施例に用いられたAAV産生系は、産生細胞において安定的に、又はAAVのためのヘルパー機能を有するプラスミドから一過性にのいずれかで発現した4つのアデノウイルスエレメント、すなわち、E1、E2A、E4、及びVA遺伝子を提供する。E4領域のオープンリーディングフレーム6は、一本鎖AAVゲノムの、DNA複製における次のステップについての基質である二本鎖型への変換にとって重要である。タンパク質E2Aは、ウイルスDNA複製において、AAVウイルスDNAと結合し、DNA伸長を促進し、伸長した鎖をそれの鋳型から移動させることにより、鍵となる役割を果たす。YB1とE2Aのどちらも、DNA結合タンパク質(DBP,DNA binding protein)であるが、それぞれ、細胞起源及びウイルス起源という点で、お互いに異なる。YB1及びE2Aは、一本鎖DNAに対する同等の結合優先を共有する。アデノウイルスE2Aは、AAV生活環において細胞性DBPを超える最高の制御性を有し、したがって、YB1の下方制御は、YB1のAAV DNAへの結合の競合を低下させ、その結果として、E2A−AAV DNA相互作用の増強、AAV DNA複製の効率、及び最終的には、AAVベクターゲノム力価の増加を生じることが考えられる。この推測は、E2Aを含むAAVヘルパー構成要素を欠く細胞が、まだなお少量のAAV粒子を産生することができ、AAV生活環における、豊富であるがあまり効率的ではない細胞性DBP、例えば、YB1からの低レベルの細胞性ヘルパー機能を示している観察によって、裏付けられ得る。
他方、アデノウイルスタンパク質E1A−E1B及びE2Aは、AAV2 p5プロモーターを活性化させ、その結果AAV2 rep遺伝子の転写及び発現を生じることにおいて重要な役割を果たす。YB1の血管内皮増殖因子プロモーターとの結合が、他の転写因子の結合を阻止し、転写及び翻訳の阻害を生じたことが、以前に実証されている。プロモーターのssDNA領域とのYB1の結合が、ssDNAの安定化を生じ、それがまた、遺伝子転写及び翻訳を阻害したことも示されている。したがって、YB1の下方制御は、E2AのAAV2p5プロモーターとの結合を促進し、そのことが、本明細書に報告されているこの実験において観察された、AAV Rep遺伝子発現及びベクター力価の有意な増加に相乗的に寄与したことは考えられる。
本実施例は、AAV産生におけるYB1の血清型特異的役割を示し、特に、YB1のノックダウンが、AAV2及びAAV8産生をそれぞれ、50倍及び10倍、向上させたが、AAV5産生に有意な効果を生じなかった。調べられた3つの血清型のAAVベクター、すなわち、AAV2、AAV5、及びAAV8は、可能性のあるYB1結合性モチーフGGGG(TT)を共有する同一のITR配列を有し、かつアデノウイルス由来の同じヘルパーエレメントの存在下で産生された。AAV2及びキメラAAV8ベクターはさらに、Rep/Capパッケージングプラスミド内に同じAAV2 rep遺伝子配列を共有する。AAV2、AAV5、及びAAV8ベクターの3つの血清型の間での差異に関して、血清型特異的cap遺伝子配列は、それらの中の1つに寄与する。AAV2及びAAV8カプシドタンパク質は、それらの一次配列において82%より高い相同性、及びカプシドタンパク質の構造において非常に類似した全体的位相幾何学を共有する。AAV2カプシドタンパク質とAAV8カプシドタンパク質との間での顕著な構造的差異は、カプシド表面に位置し、カプシド構築及びゲノムパッケージングに関与するというよりむしろ、AAV2及びAAV8の標的細胞との結合性に関連していることが知られており、さらに、カプシド構築に関してAAV2とAAV8との間での類似性が実証されている。対照的に、AAV5は、最も多岐にわたるAAV血清型の1つであり、AAV2及びAAV8を含む他の血清型とたった約55%の配列相同性を共有するのみである。小さい方のHI及びVR−IVループ、並びに大きい方のVR−VIIを含むAAV5カプシドタンパク質の独特な構造的特徴は、カプシド構築、ゲノムパッケージング、及び抗原決定基の特異性を支配するVP領域に位置し、AAV2及びAAV8ベクター産生において観察された差異を説明し得る。本明細書で開示された結果はまた、YB1遺伝子ノックダウンが、結果として、YB1のAAVベクター産生への影響の分子機構の根底にある、rep遺伝子発現及びベクターDNA産生の、それぞれ、最高12倍及び13倍の増加、並びに、cap遺伝子発現の約7分の1の減少を生じたことを示している。
別の著しい違いは、rep遺伝子を有するAAV5が、AAV2及びAAV8ベクターにおけるAAV2 rep遺伝子とたった58%の相同性を共有するのみであることである。さらなる配列分析により、AAV2とAAV5は、異なるプロモーター、すなわち、AAV2及びAAV5のrep転写及び翻訳について、それぞれ、p5及びp7を用いることが示された。rep遺伝子発現におけるp7の効率のために、AAV5 p7プロモーターは、AAV2 p5と比較して、293細胞においてAd5エレメントへの依存性が低いことが示された。他方、アデノウイルスタンパク質E1A−E1B及びE2Aは、AAV2 rep遺伝子の転写及び発現を生じるAAV2 p5プロモーターを活性化することにおいて重要な役割を果たす。YB1の細胞プロモーター及びウイルスプロモーターへの制御の機構に関してかなりの数の報告がある。例えば、YB1のVEGFプロモーターとの結合は、他の転写因子の結合を阻止し、その結果として、転写及び翻訳の阻害を生じる。プロモーターのssDNA領域とのYB1の結合が、結果として、ssDNAの安定化を生じ、そのことがまた遺伝子転写及び翻訳を阻害したことも示されている。したがって、YB1の下方制御が、E2AのAAV2p5プロモーターとの結合を促進し、そのことが、本発明者らが観察したAAV2及びAAV8力価の有意な増加に相乗的に寄与したことが考えられる。
DNA複製、AAV転写及び翻訳におけるYB1の可能性のある役割を考慮すれば、YB1の調節解除が、結果として、AAV2 ssDNA、例えば、ITR配列についてのYB1のE2Aとの競合を低下させることによるAAV DNA複製の増加だけでなく、AAV2p5プロモーターの制御下のRep及びCap発現の増加も生じたことは考えられる。加えて、AAV2/2ベクターにおける天然AAV2p5プロモーターが、Rep及びCapタンパク質の発現において、キメラAAV2/8 Rep/Capと比較して、より効果的に実施し得、AAV2産生及びAAV8産生において、それぞれ、観察された50倍の増加、及び10倍の増加の原因となり得る。AAV5ベクターの場合、ベクターDNA複製は、AAV2及びAAV8についてと類似した競合に基づいた機構によって、同様に増加する可能性がある。しかしながら、YB1とアデノウイルスヘルパー機能の組み合わせにあまり依存しないAAV5p7プロモーターの制御下での低レベルのAAV5 Rep/Cap発現は、過剰なAAVベクターゲノムが完全AAV5ベクターへとパッケージングされることを制限している可能性があり、その結果として、産生細胞におけるAAVベクター DNAの蓄積を生じ得る。
要約すれば、本発明者らは、YB1のAAVベクターとの会合を、LC−MS/MSを用いて同定し、イムノブロッティングを用いて確証しており、YB1遺伝子ノックダウンのAAVベクター産生への有意な増強を初めて、明らかにした。AAV2ベクター力価の有意な増加は、スクランブル細胞と比較して、YB1ノックダウン細胞におけるrep遺伝子発現及びベクターDNA産生の有意な増加により得る。AAV生活環におけるYB1の直接的関与は報告されていないが、YB1が、AAVベクターDNA複製の妨害を含む、AAV産生にマイナス効果を発揮することが推測される。これは、ITR配列及びAAV2p5プロモーターとの結合についてE2Aとの競合により媒介され得、AAV2p5プロモーターとの結合により、及び活性化タンパク質、例えば、E2Aの結合を阻止することにより、(AAV repタンパク質などの)AAVウイルスタンパク質の転写及び発現を阻害する。YB1のAAVへの効果は、アデノウイルスのヘルパーウイルス依存性であることが考えられる。
Claims (24)
- YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つの発現が、対照産生細胞株と比較して調節されている、トランスジェニック産生細胞株。
- (i)NPM1及びNCL、(ii)YB1及びNPM1、(iii)YB1及びNCL、又は(iv)YB1、NPM1、及びNCLの発現が、対照産生細胞株と比較して調節されている、請求項1に記載のトランスジェニック産生細胞株。
- YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つの発現が、対照産生細胞株と比較して低下している、請求項1又は2に記載のトランスジェニック産生細胞株。
- YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、CRISPRゲノム編集、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、ミクロRNA、又はアンチセンスRNAを用いて低下している、請求項3に記載のトランスジェニック産生細胞株。
- YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、shRNAを用いて低下しており、好ましくは、
(a)YB1発現が、配列番号14〜18のヌクレオチド配列を含むshRNA(Y1〜Y5)を用いて低下しており;
(b)NPM1発現が、配列番号4〜8のヌクレオチド配列を含むshRNA(NPM−N6〜NPM−N10)を用いて低下しており;及び/又は
(c)NCL発現が、配列番号9〜13のヌクレオチド配列を含むshRNA(NCL−N1〜NCL−N5)を用いて低下している、
請求項4に記載のトランスジェニック産生細胞株。 - YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、CRISPRゲノム編集を用いて低下している、請求項4に記載のトランスジェニック産生細胞株。
- YB1の発現が、配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、及び/又は配列番号39と40から選択されるgRNAペアを用いて低下している、請求項6に記載のトランスジェニック産生細胞株。
- 表2に列挙された1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、対照産生細胞株と比較して調節されている、請求項1〜7のいずれかに記載のトランスジェニック産生細胞株。
- ヒト胎児腎臓293T細胞株である、請求項1〜8のいずれかに記載のトランスジェニック産生細胞株。
- アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを産生するための方法であって、YB1、NPM1、及びNCLの少なくとも1つの発現が調節されている産生細胞株においてアデノ随伴ウイルスを培養するステップを含む、前記方法。
- 産生細胞株における(i)NPM1及びNCL、(ii)YB1及びNPM1、(iii)YB1及びNCL、又は(iv)YB1、NPM1、及びNCLの発現が調節されている、請求項10に記載の方法。
- YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現の調節が、YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現の低下である、請求項10又は11に記載の方法。
- YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、CRISPRゲノム編集、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、ミクロRNA、又はアンチセンスRNAを用いて低下している、請求項12に記載の方法。
- YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、shRNAを用いて低下しており、好ましくは、
(a)YB1発現が、配列番号14〜18のヌクレオチド配列を含むshRNA(Y1〜Y5)を用いて低下しており;
(b)NPM1発現が、配列番号4〜8のヌクレオチド配列を含むshRNA(NPM−N6〜NPM−N10)を用いて低下しており;及び/又は
(c)NCL発現が、配列番号9〜13のヌクレオチド配列を含むshRNA(NCL−N1〜NCL−N5)を用いて低下している、
請求項13に記載の方法。 - YB1、NPM1、及び/又はNCLの発現が、CRISPRゲノム編集を用いて低下している、請求項13に記載の方法。
- YB1の発現が、配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、及び/又は配列番号39と40から選択されるgRNAペアを用いて低下している、請求項15に記載の方法。
- 表2に列挙された1又は2以上の追加の遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、産生細胞株において調節されている、請求項10〜16のいずれかに記載の方法。
- AAVベクターの力価が、対照方法によって産生されたAAVベクターの力価と比較して、少なくとも2倍増加している、請求項10〜17のいずれかに記載の方法。
- 完全AAVベクター:空AAVベクターの比が、対照方法によって産生された完全AAVベクター:空AAVベクターの比と比較して、少なくとも20%増加している、請求項10〜18のいずれかに記載の方法。
- 産生細胞株がヒト胎児腎臓293T細胞株である、請求項10〜19のいずれかに記載の方法。
- AAVベクターの血清型が、AAV2、AAV5、又はAAV8である、請求項10〜20のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の産生細胞株から得られる、又は請求項10〜21のいずれかに記載の方法によって得られる、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの集団。
- 集団における完全AAVベクター:空AAVベクターの比が、対照方法により産生された集団における完全AAVベクター:空AAVベクターの比と比較して、少なくとも20%増加している、請求項22に記載の集団。
- AAVベクターが、AAV2、AAV5、又はAAV8血清型ベクターである、請求項22又は23に記載の集団。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
GB1401707.3 | 2014-01-31 | ||
GB201401707A GB201401707D0 (en) | 2014-01-31 | 2014-01-31 | Adeno-associated viral vectors |
PCT/GB2015/050240 WO2015114365A1 (en) | 2014-01-31 | 2015-01-30 | High titer production of adeno-associated viral vectors |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017506885A true JP2017506885A (ja) | 2017-03-16 |
Family
ID=50344213
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016547187A Pending JP2017506885A (ja) | 2014-01-31 | 2015-01-30 | アデノ随伴ウイルスベクターの高力価産生 |
Country Status (13)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US10035985B2 (ja) |
EP (1) | EP3099788A1 (ja) |
JP (1) | JP2017506885A (ja) |
KR (1) | KR20160137985A (ja) |
CN (1) | CN105980551A (ja) |
AU (1) | AU2015212563A1 (ja) |
BR (1) | BR112016015629A2 (ja) |
CA (1) | CA2934774A1 (ja) |
GB (1) | GB201401707D0 (ja) |
IL (1) | IL246588A0 (ja) |
MX (1) | MX2016009965A (ja) |
SG (1) | SG11201605848TA (ja) |
WO (1) | WO2015114365A1 (ja) |
Families Citing this family (67)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9217155B2 (en) | 2008-05-28 | 2015-12-22 | University Of Massachusetts | Isolation of novel AAV'S and uses thereof |
US8734809B2 (en) | 2009-05-28 | 2014-05-27 | University Of Massachusetts | AAV's and uses thereof |
DK2826860T3 (en) | 2010-04-23 | 2018-12-03 | Univ Massachusetts | CNS targeting AAV vectors and methods for their use |
WO2011133874A1 (en) | 2010-04-23 | 2011-10-27 | University Of Massachusetts | Multicistronic expression constructs |
WO2013066438A2 (en) | 2011-07-22 | 2013-05-10 | President And Fellows Of Harvard College | Evaluation and improvement of nuclease cleavage specificity |
US9163284B2 (en) | 2013-08-09 | 2015-10-20 | President And Fellows Of Harvard College | Methods for identifying a target site of a Cas9 nuclease |
US9359599B2 (en) | 2013-08-22 | 2016-06-07 | President And Fellows Of Harvard College | Engineered transcription activator-like effector (TALE) domains and uses thereof |
US9322037B2 (en) | 2013-09-06 | 2016-04-26 | President And Fellows Of Harvard College | Cas9-FokI fusion proteins and uses thereof |
US9526784B2 (en) | 2013-09-06 | 2016-12-27 | President And Fellows Of Harvard College | Delivery system for functional nucleases |
US9228207B2 (en) | 2013-09-06 | 2016-01-05 | President And Fellows Of Harvard College | Switchable gRNAs comprising aptamers |
US20150165054A1 (en) | 2013-12-12 | 2015-06-18 | President And Fellows Of Harvard College | Methods for correcting caspase-9 point mutations |
US10072251B2 (en) | 2014-02-19 | 2018-09-11 | University Of Massachusetts | Recombinant AAVS having useful transcytosis properties |
EP3750907A3 (en) | 2014-03-18 | 2021-04-28 | University of Massachusetts | Raav-based compositions and methods for treating amyotrophic lateral sclerosis |
WO2015187825A2 (en) | 2014-06-03 | 2015-12-10 | University Of Massachusetts | Compositions and methods for modulating dysferlin expression |
WO2015191508A1 (en) | 2014-06-09 | 2015-12-17 | Voyager Therapeutics, Inc. | Chimeric capsids |
US10077453B2 (en) | 2014-07-30 | 2018-09-18 | President And Fellows Of Harvard College | CAS9 proteins including ligand-dependent inteins |
WO2016054554A1 (en) | 2014-10-03 | 2016-04-07 | University Of Massachusetts | Heterologous targeting peptide grafted aavs |
CN107073051B (zh) | 2014-10-21 | 2021-08-24 | 马萨诸塞大学 | 重组aav变体及其用途 |
MX2017005834A (es) | 2014-11-05 | 2017-11-17 | Voyager Therapeutics Inc | Polinucleotidos aad para el tratamiento de la enfermedad de parkinson. |
CN112375760A (zh) | 2014-11-14 | 2021-02-19 | 沃雅戈治疗公司 | 调节性多核苷酸 |
AU2015346162B2 (en) | 2014-11-14 | 2022-02-10 | Voyager Therapeutics, Inc. | Compositions and methods of treating amyotrophic lateral sclerosis (ALS) |
WO2016094783A1 (en) | 2014-12-12 | 2016-06-16 | Voyager Therapeutics, Inc. | Compositions and methods for the production of scaav |
EP3256170B1 (en) | 2015-02-13 | 2020-09-23 | University of Massachusetts | Compositions and methods for transient delivery of nucleases |
US11046955B2 (en) | 2015-04-24 | 2021-06-29 | University Of Massachusetts | Modified AAV constructs and uses thereof |
DK3364997T3 (da) | 2015-10-22 | 2024-04-22 | Univ Massachusetts | Aspartoacylase genterapi til behandling af canavans sygdom |
CA3002980A1 (en) | 2015-10-22 | 2017-04-27 | University Of Massachusetts | Prostate-targeting adeno-associated virus serotype vectors |
EP3365357B1 (en) | 2015-10-23 | 2024-02-14 | President and Fellows of Harvard College | Evolved cas9 proteins for gene editing |
EP4066862A1 (en) * | 2015-11-05 | 2022-10-05 | The General Hospital Corporation | Intrathecal delivery of nucleic acid sequences encoding abcd1 for treatment of adrenomyeloneuropathy |
US11826433B2 (en) | 2016-02-02 | 2023-11-28 | University Of Massachusetts | Method to enhance the efficiency of systemic AAV gene delivery to the central nervous system |
CA3012344A1 (en) | 2016-02-12 | 2017-08-17 | University Of Massachusetts | Anti-angiogenic mirna therapeutics for inhibiting corneal neovascularization |
WO2017176929A1 (en) | 2016-04-05 | 2017-10-12 | University Of Massachusetts | Compositions and methods for selective inhibition of grainyhead-like protein expression |
US11413356B2 (en) | 2016-04-15 | 2022-08-16 | University Of Massachusetts | Methods and compositions for treating metabolic imbalance |
EP3448987A4 (en) | 2016-04-29 | 2020-05-27 | Voyager Therapeutics, Inc. | COMPOSITIONS FOR THE TREATMENT OF DISEASES |
SG11201809699XA (en) | 2016-05-18 | 2018-12-28 | Voyager Therapeutics Inc | Modulatory polynucleotides |
RU2764587C2 (ru) | 2016-05-18 | 2022-01-18 | Вояджер Терапьютикс, Инк. | Способы и композиции для лечения хореи гентингтона |
US11882815B2 (en) | 2016-06-15 | 2024-01-30 | University Of Massachusetts | Recombinant adeno-associated viruses for delivering gene editing molecules to embryonic cells |
AU2017306676B2 (en) | 2016-08-03 | 2024-02-22 | President And Fellows Of Harvard College | Adenosine nucleobase editors and uses thereof |
AU2017308889B2 (en) | 2016-08-09 | 2023-11-09 | President And Fellows Of Harvard College | Programmable Cas9-recombinase fusion proteins and uses thereof |
TN2019000047A1 (en) | 2016-08-15 | 2020-07-15 | Genzyme Corp | Methods for detecting aav |
US11542509B2 (en) | 2016-08-24 | 2023-01-03 | President And Fellows Of Harvard College | Incorporation of unnatural amino acids into proteins using base editing |
US10457940B2 (en) | 2016-09-22 | 2019-10-29 | University Of Massachusetts | AAV treatment of Huntington's disease |
US11578340B2 (en) | 2016-10-13 | 2023-02-14 | University Of Massachusetts | AAV capsid designs |
SG11201903089RA (en) | 2016-10-14 | 2019-05-30 | Harvard College | Aav delivery of nucleobase editors |
WO2018119359A1 (en) | 2016-12-23 | 2018-06-28 | President And Fellows Of Harvard College | Editing of ccr5 receptor gene to protect against hiv infection |
WO2018165504A1 (en) | 2017-03-09 | 2018-09-13 | President And Fellows Of Harvard College | Suppression of pain by gene editing |
US11542496B2 (en) | 2017-03-10 | 2023-01-03 | President And Fellows Of Harvard College | Cytosine to guanine base editor |
IL306092A (en) | 2017-03-23 | 2023-11-01 | Harvard College | Nucleic base editors that include nucleic acid programmable DNA binding proteins |
SG11201909868YA (en) | 2017-05-05 | 2019-11-28 | Voyager Therapeutics Inc | Compositions and methods of treating huntington's disease |
JP2020518258A (ja) | 2017-05-05 | 2020-06-25 | ボイジャー セラピューティクス インコーポレイテッドVoyager Therapeutics,Inc. | 筋萎縮性側索硬化症(als)治療組成物および方法 |
WO2018208972A1 (en) | 2017-05-09 | 2018-11-15 | University Of Massachusetts | Methods of treating amyotrophic lateral sclerosis (als) |
WO2018209320A1 (en) | 2017-05-12 | 2018-11-15 | President And Fellows Of Harvard College | Aptazyme-embedded guide rnas for use with crispr-cas9 in genome editing and transcriptional activation |
JOP20190269A1 (ar) | 2017-06-15 | 2019-11-20 | Voyager Therapeutics Inc | بولي نوكليوتيدات aadc لعلاج مرض باركنسون |
CN111132626B (zh) | 2017-07-17 | 2024-01-30 | 沃雅戈治疗公司 | 轨迹阵列引导系统 |
JP2020534795A (ja) | 2017-07-28 | 2020-12-03 | プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ | ファージによって支援される連続的進化(pace)を用いて塩基編集因子を進化させるための方法および組成物 |
KR20200044793A (ko) | 2017-08-03 | 2020-04-29 | 보이저 테라퓨틱스, 인크. | Aav의 전달을 위한 조성물 및 방법 |
WO2019139645A2 (en) | 2017-08-30 | 2019-07-18 | President And Fellows Of Harvard College | High efficiency base editors comprising gam |
WO2019060686A1 (en) | 2017-09-22 | 2019-03-28 | University Of Massachusetts | NEW DUAL EXPRESSION VECTORS OF SOD1 AND USES THEREOF |
EP3694988A4 (en) * | 2017-10-10 | 2021-07-14 | NantBio, Inc. | MODIFIED EC7 CELLS WITH LOW TOXICITY TO VIRAL PRODUCTION LOADS |
US11795443B2 (en) | 2017-10-16 | 2023-10-24 | The Broad Institute, Inc. | Uses of adenosine base editors |
JP2021502060A (ja) | 2017-10-16 | 2021-01-28 | ボイジャー セラピューティクス インコーポレイテッドVoyager Therapeutics,Inc. | 筋萎縮性側索硬化症(als)の治療 |
WO2019079242A1 (en) | 2017-10-16 | 2019-04-25 | Voyager Therapeutics, Inc. | TREATMENT OF AMYOTROPHIC LATERAL SCLEROSIS (ALS) |
JP2022526908A (ja) | 2019-03-19 | 2022-05-27 | ザ ブロード インスティテュート,インコーポレーテッド | 編集ヌクレオチド配列を編集するための方法および組成物 |
SG11202110904PA (en) * | 2019-04-12 | 2021-10-28 | Ultragenyx Pharmaceutical Inc | Engineered producer cell lines and methods of making and using the same |
US20220186193A1 (en) * | 2019-04-12 | 2022-06-16 | Massachusetts Eye & Ear Infirmary | METHODS AND COMPOSITIONS FOR IMPROVING THE ASSEMBLY OF ADENO-ASSOCIATED VIRUSES (AAVs) |
US20220228129A1 (en) * | 2019-04-26 | 2022-07-21 | The Regents Of The University Of California | Cells for enhanced production of adeno-associated virus |
CN110184297A (zh) * | 2019-05-27 | 2019-08-30 | 广州派真生物技术有限公司 | 一种表达shRNA的AAV辅助包装载体、构建筛选方法和应用 |
AU2021267940A1 (en) | 2020-05-08 | 2022-12-08 | President And Fellows Of Harvard College | Methods and compositions for simultaneous editing of both strands of a target double-stranded nucleotide sequence |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013033597A1 (en) * | 2011-09-02 | 2013-03-07 | Temple University - Of The Commonwealth System Of Higher Education | Ssat mrna translation repression and activation |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003046142A2 (en) | 2001-11-26 | 2003-06-05 | Avigen, Inc. | Methods for producing stocks of recombinant aav virions |
PT1625210E (pt) * | 2003-05-21 | 2011-03-15 | Genzyme Corp | Métodos para produzir preparações de vírions de aav recombinantes substancialmente livres de capsídeos vazios |
WO2008026946A2 (en) | 2006-08-30 | 2008-03-06 | Genesis Research And Development Corporation Limited | Compositions and methods for the treatment and prevention of neoplastic disorders |
CN105838737A (zh) | 2010-01-28 | 2016-08-10 | 费城儿童医院 | 用于病毒载体纯化的可扩缩生产平台和用于基因治疗中的如此纯化的病毒载体 |
US8697359B1 (en) * | 2012-12-12 | 2014-04-15 | The Broad Institute, Inc. | CRISPR-Cas systems and methods for altering expression of gene products |
-
2014
- 2014-01-31 GB GB201401707A patent/GB201401707D0/en not_active Ceased
-
2015
- 2015-01-30 CA CA2934774A patent/CA2934774A1/en not_active Abandoned
- 2015-01-30 SG SG11201605848TA patent/SG11201605848TA/en unknown
- 2015-01-30 BR BR112016015629A patent/BR112016015629A2/pt not_active IP Right Cessation
- 2015-01-30 WO PCT/GB2015/050240 patent/WO2015114365A1/en active Application Filing
- 2015-01-30 JP JP2016547187A patent/JP2017506885A/ja active Pending
- 2015-01-30 EP EP15702840.8A patent/EP3099788A1/en not_active Withdrawn
- 2015-01-30 AU AU2015212563A patent/AU2015212563A1/en not_active Abandoned
- 2015-01-30 KR KR1020167024086A patent/KR20160137985A/ko not_active Application Discontinuation
- 2015-01-30 US US15/113,270 patent/US10035985B2/en not_active Expired - Fee Related
- 2015-01-30 CN CN201580006117.3A patent/CN105980551A/zh active Pending
- 2015-01-30 MX MX2016009965A patent/MX2016009965A/es unknown
-
2016
- 2016-07-04 IL IL246588A patent/IL246588A0/en unknown
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013033597A1 (en) * | 2011-09-02 | 2013-03-07 | Temple University - Of The Commonwealth System Of Higher Education | Ssat mrna translation repression and activation |
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
J. VIROL., 2009, VOL.83, NO.6, P.2632-2644, JPN6019006066, ISSN: 0003981647 * |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
AU2015212563A1 (en) | 2016-07-14 |
SG11201605848TA (en) | 2016-08-30 |
IL246588A0 (en) | 2016-08-31 |
US20170029785A1 (en) | 2017-02-02 |
BR112016015629A2 (pt) | 2017-10-24 |
EP3099788A1 (en) | 2016-12-07 |
US10035985B2 (en) | 2018-07-31 |
MX2016009965A (es) | 2017-06-14 |
CA2934774A1 (en) | 2015-08-06 |
CN105980551A (zh) | 2016-09-28 |
WO2015114365A1 (en) | 2015-08-06 |
KR20160137985A (ko) | 2016-12-02 |
GB201401707D0 (en) | 2014-03-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10035985B2 (en) | High titer production of adeno-associated viral vectors | |
JP6611381B2 (ja) | 薬剤送達粒子及びその製造方法 | |
JP7157052B2 (ja) | 筋緊張性ジストロフィーの治療のための組成物および方法 | |
JP7211940B2 (ja) | 筋緊張性ジストロフィーの治療のための組成物および方法 | |
US20200407750A1 (en) | Novel adeno-associated virus (aav) vectors, aav vectors having reduced capsid deamidation and uses therefor | |
US11155817B2 (en) | Therapeutic for treatment of diseases including the central nervous system | |
CA3091795A1 (en) | Novel adeno-associated virus (aav) vectors, aav vectors having reduced capsid deamidation and uses therefor | |
US20230220382A1 (en) | Regulation of gene expression via aptamer-mediated control of self-cleaving ribozymes | |
US20220127625A1 (en) | Modulation of rep protein activity in closed-ended dna (cedna) production | |
JP7184649B2 (ja) | アプタマーによるポリアデニル化の調節を通じての遺伝子発現制御 | |
Satkunanathan et al. | Establishment of a novel cell line for the enhanced production of recombinant adeno-associated virus vectors for gene therapy | |
JP2021533795A (ja) | アデノ随伴ウイルスの形質導入効率を調節するための組成物および方法 | |
JP2023532864A (ja) | 導入遺伝子発現系 | |
WO2023074877A1 (ja) | 細胞添加用組成物 | |
JP2024506040A (ja) | Aqp1 RNAを標的とするsgRNA及びそのベクターと使用 | |
Massengill et al. | Co-delivery of a short-hairpin RNA and a shRNA-resistant replacement gene with adeno-associated virus: an allele-independent strategy for autosomal-dominant retinal disorders | |
JP2022528203A (ja) | 腫瘍抑制因子融合物の組成物およびその製造方法 | |
KR20210138030A (ko) | 안구인두 근이영양증 (opmd) 치료용 조성물 및 방법 | |
RU2742435C2 (ru) | Композиции промоторов | |
US20240141383A1 (en) | Viral vector constructs incorporating dna for inhibiting toll like receptors and methods of using the same | |
WO2024056902A2 (en) | Compositions and methods for treating neurological diseases | |
JP2024519175A (ja) | 新規なデュアルヘルパープラスミド |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20180129 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190225 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20191002 |