JP2017504696A - フェノール含有水素化ニトリルゴム - Google Patents

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Abstract

特定のフェノール含量を有する新規な水素化ニトリルゴム、それらを製造するためのプロセス、それらをベースとする加硫可能な混合物、およびそのようにして得られる加硫物が提供される。それらの加硫物は、特に良好な弾性率および圧縮永久歪み値、ならびに極めて良好な貯蔵安定性を特徴としている。

Description

本発明は、特定のフェノール含量を有する新規な水素化ニトリルゴム、それらを製造するためのプロセス、それらの水素化ニトリルゴムをベースとする加硫可能な混合物、およびそれらから得られる加硫物に関する。
ニトリルゴムは、少なくとも1種の不飽和ニトリルモノマー、少なくとも1種の共役ジエン、および任意選択的に1種または複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマーおよびターポリマーである。ニトリルゴムを製造するためのプロセス(非特許文献1)、および適切な有機溶媒中でニトリルゴムを水素化するためのプロセス(非特許文献2)は公知である。
水素化ニトリルゴムは、略して「HNBR」とも呼ばれ、ニトリルゴム(これも略して「NBR」と呼ばれる)を使用し、水素化によって得られるゴムを意味していると理解されたい。したがって、HNBRにおいては、共重合されたジエン単位のC=C二重結合は、全面的もしくは部分的に水素化されている。共重合されたジエン単位の水素化のレベルは、典型的には、50〜100%の範囲内である。しかしながら、当業者は、残存二重結合含量が約0.9%以下であれば「完全水素化タイプ」と呼んでいる。市場において商業的に入手可能なHNBRは、典型的には、10〜120ムーニー単位の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。
HNBRは、極めて良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐薬品性、ならびに優れた耐油性を有する特殊ゴムである。上述のHNBRの物理的および化学的性質が、極めて良好な機械的性質、特に高い耐摩耗性と組み合わさっている。
この性能プロファイルが理由で、HNBRは、広く各種の用途分野において各種の使用法が見出されてきた。HNBRは、たとえば以下の分野において使用されている:自動車分野におけるシール、ホース、伝動ベルト、ケーブルシース、ローラーカバーおよび制震要素、さらには採油分野におけるステーター、ウェルシールおよびバルブシール、さらには航空産業、電気産業、機械工学および造船における各種の部品。
特には高温における長期の保存の後でも、高い弾性率レベルおよび低い圧縮永久歪みを有するHNBRの加硫物が、大きな役割を果たしている。この性能の組合せが、特に長期間、場合により高温を受けた後であっても、そのゴム物品が動的および静的応力のいずれにおいても機能することを確実にするため、高い弾性力を要求される使用分野において重要である。このことは、たとえば以下の各種のシールには特にあてはまる:O−リング、フランジシール、シャフトシールリング、ローター/ステーターポンプにおけるステーター、バルブシャフトシール、ガスケットスリーブ、たとえば軸ブーツ、ホースシール、エンジンベアリング、ブリッジベアリング、およびウェルシール(ブローアウトプリベンター)。さらには、高い弾性率を有する加硫物は、特には伝動ベルトおよびコントロールベルト、特に歯付きベルトなどのベルト、ならびにローラーカバーのための動的応力を受ける物品には重要である。
HNBRベースの加硫物の、特に弾性率レベルおよび圧縮永久歪みに関連した機械的性質において、現在のところ得られるレベルは依然として不十分である。
(特許文献1)には、ペルオキシド架橋の後に、低い圧縮永久歪みを有する加硫物を与えるHNBRの製造が記載されている。その水素化においては、C〜Cケトンと、二級または三級のC〜Cアルコールとの溶媒混合物を用い、極めて異なる化学的構成要素のルテニウム触媒が使用されている。その溶媒混合物中の二級または三級アルコールの比率は、2〜60重量%であると述べられている。水素化の際、または水素化後に溶液を冷却している過程で、2相が形成される可能性があると記述されている。その結果、所望の水素化レベルが達成されないか、および/または水素化の間に水素化ニトリルゴムがゲル化する。(特許文献1)に記載されているプロセスは、水素化の過程で起きる相分離およびゲル化が、数多くのパラメーターに予測不能な状態で依存するために、広く応用することは不可能である。それらのパラメーターには、以下のものが含まれる:アクリロニトリル含量およびニトリルゴム供給原料のモル質量、溶媒混合物の組成、水素化におけるポリマー溶液の固形分含量、水素化レベル、ならびに水素化の際の温度。水素化後のポリマー溶液の冷却の過程、またはポリマー溶液を貯蔵している過程においても、望ましくない相分離と、対応するプラント機器および容器の汚染とが起こりうる。(特許文献1)には、ニトリルゴム供給原料において老化安定剤を使用することによって弾性率レベルおよび圧縮永久歪みが改良されること、ならびにそれらの量に関して何らの教示もない。
(特許文献2)の教示によれば、HNBRをベースとして得られた加硫物は、良好な加工性(低い混合物粘度)と共に、高い弾性率値および低い圧縮永久歪み値の両方を有し、歯付きベルトを製造するのに好適である。混合物製造の過程において、不飽和メタクリル酸の金属塩を添加することによって、この性能の組合せが達成される。(特許文献2)には、ニトリルゴム供給原料において老化安定剤を使用することによって弾性率レベルおよび圧縮永久歪みが改良されること、ならびにそれらの量に関して何らの教示もない。
(特許文献3)には、ブタジエンを他のモノマー、たとえばアクリロニトリルとエマルション状態で共重合させる場合に、分子量調節を目的として、6より大きい、好ましくは6〜12の炭素数を有する脂肪族メルカプタンを、数回に分けるかまたは連続的に添加することが記載されている。そのようにすることで、重合の際のゲルの生成を防止することができる。老化安定剤の使用については、触れられていない。HNBRの加硫物の弾性率レベルおよび圧縮永久歪みを改良するための手段は開示されていない。
(特許文献4)においてもまた、乳化重合として実施されるブタジエンとアクリロニトリルとの共重合の過程において、8〜16個の炭素原子を有するメルカプタンを、数回に分けるかまたは連続的に、重合の開始時には高モル質量を有するメルカプタンを、およびモノマーの転化率が上がると低モル質量を有するメルカプタンを計量添加している。このようにすることで、高重合転化率で得られたゴムの「可塑性」および「素練り性」、すなわちローラーおよびバンバリーミキサー上での加工性が改良される。(特許文献4)には、老化安定剤の使用は記載されていない。
(特許文献5)には、オレイン酸エステルベースの乳化剤を用いて製造したニトリルゴムおよびポリクロロプレンラテックスを凝集させるためのプロセスが開示されている。凝集させるためには、アルカリ性のラテックスにアンモニウム塩の水溶液を添加してから、加熱する。この過程で起きるpHの低下の結果として、ラテックスの凝集が始まる。その実施例の部からも明らかなように、1.5部の2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシル−5,5’−ジメチルジフェニルメタンを、そのニトリルゴムラテックスに添加してから、凝集させる。(特許文献5)に基づくと、NBR−ベースまたはHNBRベースの加硫物の性質、特に弾性率レベルおよび圧縮永久歪みに対する老化安定剤の影響について、それ以上何らの結論を引き出すことはできない。
(特許文献6)には、エマルション中でブタジエンとアクリロニトリルとをフリーラジカル共重合させるためのプロセスが開示されており、そのプロセスは、モノマーおよび分子量調節剤、たとえば、tert−ドデシルメルカプタンのための特殊な計量添加プログラムによって調節され、さらに、得られたラテックスを酸性媒体中で後処理して固形のゴムが得られる。このプロセスの顕著な利点は、乳化剤として使用された樹脂石鹸および/または脂肪酸石鹸が、凝集において酸を使用することによってゴムの内部に留まり、その結果、別のプロセスで洗い出す必要がないことであると述べられている。そこでは、そのNBRが良好な性能の利点を有しているだけでなく、特に、プロセスの経済性が改良され、洗い出した乳化剤による廃水汚染も避けられることが主張されている。10〜30重量%のアクリロニトリルを用いて得られたブタジエン−アクリロニトリルコポリマーでは、良好な弾性および低温性能、それに加えて、高い膨潤抵抗性および有利な加工性を特徴としていると記載されている。老化安定剤の使用について、またはそれらのニトリルゴムの貯蔵安定性について、またはそれらの老化安定剤が、それから製造された水素化ニトリルゴムおよびそれらの加硫物の性能に与える影響ついての詳細はない。
(特許文献7)には、メチルセルロースと、水溶性のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたは亜鉛の塩とにより、ゴムをそれらの水性分散体から沈殿させることができることが開示されている。このプロセスの利点としては、乳化剤、触媒残渣などの余分な成分からほとんど完全にフリーである凝集物が得られることが記述されており、その理由は、それらの余分な物質は、凝集物を取り出す際に水と共に除去され、残っている残分も、さらなる水を用いて完全に洗い出されるからである。(特許文献8)では、ゴムラテックスの電解質凝集において、助剤として、メチルセルロースに代えて、0.1〜10重量%(ゴム規準で)の水溶性のC〜Cアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースを、0.02〜10重量%(ゴム規準で)の水溶性のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、または亜鉛の塩、好ましくは塩化ナトリウムと組み合わせて使用している。その凝集物は、機械的に除去され、および任意選択的に水を用いて洗浄し、その水の残りは除去される。この場合もまた、凝集物の除去の際に、余分な物質は事実上完全に水と共に除去され、それでも残っている残分はすべて、さらなる水を用いて洗浄することによって完全に洗い出されると記述されている。それらのニトリルゴム中の不純物の残存量については、何らの情報も与えられていない。さらに、(特許文献7)および(特許文献8)のいずれにおいても、仕上げ工程前にニトリルゴムラテックスに添加される老化安定剤のタイプおよび量について、ならびにそれらの老化安定剤が、それから製造された水素化ニトリルゴムおよびそれらの加硫物の性能に与える影響ついて、何らの情報も与えていない。
(特許文献9)では、ゴムの水性分散体からのゴムの沈殿および単離が、0.02〜0.25重量%の水溶性のカルシウム塩を使用して少量の(ヒドロキシ)アルキルセルロースを用いて実施することができると述べている。この場合もまた、利点として、このプロセスでは、たとえば乳化剤、触媒残渣などの余分な成分を事実上全く含まない、極端に純粋な凝集物が得られると記述している。それらの余分な物質は、凝集物を除去する過程で水と共に除去され、それでもなお残っている残分はすべて水を用いて洗い出すことができる。さらに、そのようにして単離されたゴムの性質が、カルシウム塩を用いた凝集で悪影響を受けることはないとも述べている。その代わりに、加硫物特性が損なわれず、完全に満足のいくゴムが得られるとも述べられている。このことは驚くべきことであると記載されており、その理由は、カルシウムイオンまたはアルミニウムイオンなどの多価の金属イオンを用いて分散体からポリマーを沈殿させた場合には、ゴムの性質が損なわれることが観察されることが多いからである。(特許文献9)のゴムでは、たとえばスコーチ性および/または完全加硫などの抑制または劣化が全く無かった。仕上げ工程の前にニトリルゴムラテックスに添加される老化安定剤のタイプおよび量について、さらには、それから製造された水素化ニトリルゴムおよびそれらの加硫物の性能にそれが与える影響ついては、何らの情報もない。
上述の特許と同様に、(特許文献10)の目的は、ラテックスの凝集で必要とされる電解質の量を最低限のレベルにまで下げることである。この目的のためには、ラテックスの電解質凝集において、無機凝集剤と同様に、植物由来のタンパク質含有物質または多糖類、たとえばデンプン、および水溶性または水不溶性のポリアミン化合物を助剤として使用する。記載されている好ましい無機凝集剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩である。それら特殊な添加剤によって、定量的にラテックスを凝集させるために必要な塩の量を抑制することが可能となる。仕上げ工程の前にニトリルゴムラテックスに添加される老化安定剤のタイプおよび量について、さらには、それから製造された水素化ニトリルゴムおよびそれらの加硫物の性能にそれらの老化防止剤が与える影響ついては、何らの情報もない。
(特許文献11)によれば、スチレン/ブタジエンゴムのラテックスの凝集を、金属塩を使用せず、硫酸とゼラチンとの組合せ(「グルー」)を用いて実施している。硫酸の量と濃度は、その水性媒体のpHが6未満に設定されるように選択する必要がある。そのラテックスの凝集は、ばらばらで非粘着性のゴムのクラム(crumb)を形成し、それらは良好な濾過性と洗浄性を有している。そのようにして得られたスチレン/ブタジエンゴムは、ゼラチンを添加しない塩を用いて凝集させたゴムと比較して、より低い水吸収能、より低い灰分含量、およびより高い電気抵抗性を有している。ゼラチンを添加した硫酸を用いた凝集が、貯蔵安定性、加硫速度、および加硫物特性、ならびに特にはゴムの弾性率レベルに関して、(もしあるとすれば)どのような効果があるかについては、何らの開示もない。老化安定剤の使用についても同様に触れられていない。
(特許文献12)には、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウムを使用する乳化重合によるニトリルゴムの使用についての記載がある。そこで得られたラテックスは、硫酸マグネシウムと硫酸アルミニウムとの水溶液(マグネシウム/アルミニウムのモル比=(0.3/1)〜(2/1))によって凝集される。この場合においては、0.3〜4mmの範囲の粒子直径を有する粉体としてニトリルゴムが得られ、それは任意選択的に抗凝集剤としての亜鉛石鹸と混合してから、乾燥させる。(特許文献12)の実施例から、そのラテックスは、凝集させる前に、1.5重量部の「ポリアルキルフェノールのホスファイト」を添加することによって安定化されたと推測することができる。そのニトリルゴムの貯蔵安定性について、またはその目的のために必要なホスフェートベースの老化安定剤の量については何らの情報もない。
(特許文献13)には、貯蔵安定性で、急速加硫性のニトリルゴムの製造についての記載があり、そこではニトリルゴムラテックスを、凝集の前に、加水分解を受けやすい老化安定剤と加水分解を受けにくい老化安定剤との混合物と混合している。前者の老化安定剤は、アルキル化アリールホスファイト、特にはトリス(ノニルフェニル)ホスファイトである。加水分解を受けにくい老化安定剤としては以下のものが挙げられている:立体障害フェノール、特にはオクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Ultranox(登録商標)276)、および、不可解な構造を有する化合物の「チオジエチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート」。2種の老化安定剤を組み合わせることによって、ホスファイトベースの老化安定剤の加水分解速度が低下する。それらの老化安定剤の総計は、100重量部のゴムを規準にして0.25〜3重量部である。それら2種の老化安定剤を使用する場合の比率について、または3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルの単独使用で、NBRの良好な貯蔵安定性が達成可能であるかどうかについては明らかにされていない。さらには、(ホスファイトを添加することなく)立体障害フェノールのみを使用して、高い弾性率値および低い圧縮永久歪みを有する加硫物を与えるHNBRが得られる、良好な貯蔵安定性を有するニトリルゴムを製造することが可能であるかどうかについては何らの開示もない。
(特許文献14)には、NaClまたはCaClなどの無機塩を使用した従来技術によるニトリルゴムラテックスの凝集は、極めて高いナトリウムおよびカルシウム含量の原因となり、またニトリルゴム中に歴然とした量の乳化剤が残るとの開示がある。最大の純度のニトリルゴムを得る目的ためには、(特許文献14)では、ニトリルゴムラテックスの凝集において、無機塩に代えて水溶性のカチオン性ポリマーを使用している。それらは、たとえば、エピクロロヒドリンおよびジメチルアミンをベースとするものである。それらから得られた加硫物は、水と接触させたときの膨潤度が低く、電気抵抗性が高い。性能におけるこれらの改良は、純粋に定性的には、製品中に残存する最小カチオン含量に帰することができる。(特許文献14)にはさらに、凝集の前に、ラテックスに老化安定剤を添加することが記載されている。各種のタイプの老化安定剤、たとえばフェノール系老化安定剤、ならびに特に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが明瞭に記述されている。しかしながら、ニトリルゴムの貯蔵安定性の、老化安定剤のタイプおよび量に対する依存性についての情報が欠けている。さらには、(特許文献14)には、ニトリルゴムの安定化に使用された老化安定剤が、水素化後に得られる水素化ニトリルゴムの加硫物の性質の及ぼす影響に関してはなにの開示の含まれていない。
(特許文献15)の目的は、高純度のニトリルゴムを提供することであった。乳化剤としての脂肪酸の塩および/または樹脂酸の塩の存在下に乳化重合を実施し、次いで、鉱酸または有機酸を6以下のpH値で添加し、任意選択的に沈殿剤を添加することによって、ラテックスの凝集が実施される。追加の沈殿剤としては、無機酸のアルカリ金属塩を使用することも可能である。たとえば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース、カルボキシル化セルロース、ならびにカチオン性およびアニオン性の高分子電解質、またはそれらの混合物などの沈殿助剤を添加することもまた可能である。次いで、アルカリ金属水酸化物水溶液を用いて生成した脂肪酸および樹脂酸を洗い出し、ポリマーを剪断にかけて、残存湿分が20%以下になるようにする。乳化剤含量およびカチオン含量が低いニトリルゴムが得られる。特定の技術的性質を有するニトリルゴムの製造を制御するための指針が欠けている。老化安定剤が製品の性質、たとえば、貯蔵安定性に及ぼす影響についての検討がなされていない。
(特許文献16)では、ペルオキシド加硫または硫黄加硫によって得られたHNBRベースの加硫物の圧縮永久歪みが、そのニトリルゴムを、重合後または水素化後に、アルカリ水溶液またはアミンの水溶液と接触させることによって改良される。実施例1においては、溶媒を除去した後に得られるゴムクラムを、各種の濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いた別々の分離プロセス工程で洗浄している。100mLのTHF中に3gのゴムを溶解させ、撹拌しながら1mLの水を添加して得られるTHF水溶液のpHを、アルカリ含量の目安として使用する。そのpHは、ガラス電極を用いて20℃で測定する。低い圧縮永久歪みを有する水素化ニトリルゴムの加硫物を製造するためには、THF水溶液のpHを5よりも高く、好ましくは5.5よりも高く、より好ましくは6よりも高くするべきである。(特許文献16)は、NBR供給原料の老化安定剤によって、弾性率レベルおよび圧縮永久歪みを改良することが可能であるかどうかについて、何らの指標も与えていない。
(特許文献17)、(特許文献18)、および(特許文献19)にはそれぞれ、10〜60重量%の不飽和ニトリルと15〜150の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)とを有し、(特許文献17)では15〜65ムーニー単位を有する、不飽和ニトリルおよび共役ジエンをベースとするニトリルゴムが記載されており、それらはすべて、100molのモノマー単位あたり少なくとも0.03molのC12〜C16−アルキルチオ基を有し、前記アルキルチオ基は、少なくとも3個の三級炭素原子とそれらの三級炭素原子の少なくとも1個に直接結合している硫黄原子とを含んでいる。それぞれのニトリルゴムは、分子量調節剤として適切な構造のC12〜C16−アルキルチオール(「連鎖移動剤」として機能し、したがってポリマー鎖中に末端基として組み入れられる)の存在下に調製される。ラテックスの凝集に関しては、それぞれの場合において、各種所望の凝集剤を使用することができると述べられている。言及され、使用されている無機凝集剤は、塩化カルシウムおよび塩化アルミニウムである。(特許文献18)および(特許文献19)によれば、1つの好ましい実施形態は、実質的にハロゲンフリーであり、そのラテックスの凝集を、ノニオン性表面活性助剤の存在下に、ハロゲンフリーである金属塩、たとえば、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、および硫酸ナトリウムと接触させることによって得られる、ニトリルゴムからなっている。硫酸アルミニウムまたは硫酸マグネシウムを使用した凝集が、実質的にハロゲンフリーなニトリルゴムを得るには好適であるとされている。その実施例において、この方法で製造したニトリルゴムは、3ppm以下のハロゲン含量のみを有している。ニトリルゴムを製造するためには、そこで使用される分子量調節剤が、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオールおよび2,2,4,6,6,8,8−ヘプタメチルノナン−4−チオールの化合物の形態のアルキルチオールであることが必須である。慣用されるtert−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤として使用すると、貧弱な性質を有するニトリルゴムが得られることが指摘されている。
(特許文献17)、(特許文献19)、および(特許文献18)で製造されたニトリルゴムでは、有利な性能プロファイルがあると主張されており、それによって、ゴム混合物の良好な加工性が得られ、加工の際の金型の汚染が低くなる。得られる加硫物が、低温安定性と耐油性の良好な組合せを有し、良好な機械的性質を有しているとの記載がある。さらに、それらのニトリルゴムが、短いスコーチ時間を有し、特に射出成形によって加工するためのNBRタイプの場合においては、高い架橋密度および高い加硫速度を達成することが可能となるとも主張されている。
(特許文献17)、(特許文献18)、および(特許文献19)の記述には、老化安定剤の使用については何も言及されていない。それらの実施例から明らかなことは、化学構造の面からは何らの定義もされていないアルキル化フェノールが老化安定剤として使用されていることである。実施例からはさらに、2部のアルキル化フェノールが使用されていることも推測される。これが重量部を意味しているかどうかは疑わしい。参照パラメーターも、(モノマー規準かポリマー規準か)不明瞭なままである。(特許文献17)、(特許文献18)、および(特許文献19)からは、アルキル化フェノールがニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムの性質に及ぼす影響に関しては、何らの結論も引き出すことができない。
(特許文献20)には、良好な機械的性質、特に高い弾性率300レベルを有する高速加硫性のニトリルゴムの記載があり、それは、7〜26ppm×mol/gの範囲の一般式(I)のイオン指数(「II」)を有している。
Figure 2017504696
(式中、c(Ca2+)、c(Na)およびc(K)は、ニトリルゴム中のカルシウム、ナトリウムおよびカリウムイオンの濃度(単位ppm)を示す)
そのような高速加硫性のニトリルゴムを得るためには、その凝集を、一価金属の塩の存在下、任意選択的に5重量%以下の二価金属の塩の存在下に実施し、凝集およびそれに続く洗浄の過程における温度を少なくとも50℃とする。(特許文献20)の一般的な部分において、凝集の前にニトリルゴムラテックスに添加されるいくつかの老化安定剤が挙げられているが、量についての記載はない。実施例の部分からは、ゴム固形分を規準にして、一定量の1.25重量%のジ−tert−ブチル−p−クレゾールを用いて検討が行われていることが明らかである。(特許文献20)からは、NBRまたはHNBRの性質に及ぼすジ−tert−ブチル−p−クレゾールの影響については、何らの結論を導くこともできない。
(特許文献21)には、特殊な異性体のC16チオール基を含み、それぞれの場合においてニトリルゴムを規準にして、少なくとも150ppmのカルシウムイオン含量と少なくとも40ppmの塩素含量を有する、特に貯蔵安定性が高いニトリルゴムが記載されている。その発明の実施例で製造されたニトリルゴムのカルシウムイオン含量は、171〜1930ppm、マグネシウム含量は2〜265ppmである。その発明ではない比較例のカルシウムイオン含量は、2〜25ppmであり、そのマグネシウムイオン含量は225〜350ppmである。このタイプの貯蔵安定性ニトリルゴムは、ラテックスの凝集をアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムまたはリチウムをベースとする少なくとも1種の塩の存在下に実施し、凝集または洗浄をカルシウム塩の存在下、またはカルシウムイオンを含む洗浄水および塩素含有塩の存在下に実施すると得られる。その発明の実施例の塩素含量は、49〜970ppmの範囲であり、およびその発明ではない比較例のそれらは25〜39ppmの範囲である。しかしながら、25〜30ppmの比較的に低い塩素含量が得られるのは、凝集を塩素フリーな沈殿剤、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、または硫酸アルミニウムカリウムを用いて実施し、それに続けて脱イオン水で洗浄した場合に限られる。(特許文献21)の一般的な部分において、凝集の前にニトリルゴムラテックスに添加されるいくつかの老化安定剤が挙げられているが、その量については、その一般的な部分には何らの記載もない。(特許文献21)の実施例からも明らかなように、その検討で使用されたNBRラテックスは、それぞれゴム固形分を規準にして1.25重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを用いて安定化されたものであり、この量はその検討において変わっていない。したがって、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールがニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムの性質に及ぼす影響については、(特許文献21)からは何らの結論も引き出すことができない。
(特許文献22)にはさらに、0〜60、好ましくは10〜25、ppm×mol/gの範囲の、一般式(I)のイオン指数(「II」)を有する、高速加硫性のニトリルゴムが記載されている:
Figure 2017504696
(式中、c(Ca2+)、c(Mg2+)、c(Na)およびc(K)は、ニトリルゴム中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、およびカリウムイオンの濃度を示しており、マグネシウムイオン含量は、ニトリルゴムを規準にして50〜250ppmである)
その発明によって製造されたニトリルゴムについての例においては、そのカルシウムイオン含量c(Ca2+)が163〜−575ppmの範囲であり、そのマグネシウムイオン含量c(Mg2+)が57〜64ppmの範囲である。その発明ではないニトリルゴムの例においては、そのカルシウムイオン含量c(Ca2+)が345〜1290ppmの範囲であり、そのマグネシウムイオン含量c(Mg2+)が2〜440ppmの範囲である。これらのニトリルゴムは、特定の尺度を観察しながらラテックスの凝集を実施し、そのラテックスを、凝集の前にマグネシウム塩を用いて45℃未満の温度に調節したときに得られる。(特許文献22)の一般的な部分において、の前にニトリルゴムラテックスに添加される多くの老化安定剤が挙げられているが、量についての記載はない。それらの実施例からは、(ゴム固形分を規準にして1.25重量%の)一定量のジ−tert−ブチル−p−クレゾールを用いて検討が行われていることが明らかである。(特許文献22)からは、ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムの性質に及ぼす影響について、それ以上何らの結論も導くことができない。
(特許文献23)には、アルカリ土類金属塩をゼラチンと組み合わせて用いてラテックスの凝集を実施することによる、高い貯蔵安定性を有するニトリルゴムの製造が記載されている。それらのニトリルゴムは、そのニトリルゴムに存在している、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムイオンの含量に関連した、例外的なイオン指数を有している。(特許文献23)の一般的な部分において、凝集の前にニトリルゴムラテックスに添加されるいくつかの老化安定剤が挙げられているが、量についての記載はない。それらの実施例から、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が使用され、その量は、ゴム固形分を規準にして0.1〜0.8重量%の範囲内で変動させたことが明らかである。ニトリルゴムの貯蔵安定性は、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の量に依存せず、最小量(0.1重量%)の2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を使用したときでさえも、十分な貯蔵安定性が得られることが示されている。このことから、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の量は、ニトリルゴムの性質に(たとえあったとしても)ごくわずかな影響のみを与えるという結論を導くことができる。2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が水素化ニトリルゴムの性質に与える影響に関しては、これ以上の結論を出すことはできない。
(特許文献24)には、高い貯蔵安定性を有するニトリルゴムの記載があり、それらは、ゼラチンと組み合わせてアルカリ金属塩を用い、ラテックスの凝集およびそれに続くクラムの洗浄における特定の条件によって、ラテックスの凝集をしている。それらのニトリルゴムは、そのニトリルゴムに残っている、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムイオンの量に関連した、例外的なイオン指数を有している。その一般的な部分において、凝集の前にニトリルゴムラテックスに添加されるいくつかの老化安定剤が挙げられているが、量についての詳しい記載はない。それらの実施例においては、一定量(ゴム固形分を規準にして1.0重量%)の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが使用されている。したがって、(特許文献24)からは、ニトリルゴム、およびそれから製造された水素化ニトリルゴム、およびそれらの加硫物の性質に及ぼすそれらの影響に関しては、それ以上何らの結論も導くことができない。
(特許文献25)には、高い貯蔵安定性を有するさらなるニトリルゴムが記載されており、それらは、ポリビニルアルコールと共にアルカリ土類金属塩を用いてラテックスの凝集をすることによって得られたものである。それらのニトリルゴムも同様に、そのニトリルゴム中に残っている、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムイオンに関連した、例外的なレベルを有している。その一般的な部分において、凝集の前にニトリルゴムラテックスに添加されるいくつかの老化安定剤が挙げられているが、量についての記載はない。それらの実施例の部分からは、(ゴム固形分を規準にして1.0重量%の)一定量の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを用いて検討が行われていることが明らかである。(特許文献25)からは、ニトリルゴム、およびそれから製造された水素化ニトリルゴム、およびそれらの加硫物の性質に及ぼす2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの影響に関しては、それ以上何らの結論も導くことができない。
(特許文献26)には、真空ハウジングで二本ロールドライヤーを使用して有機溶液からポリマーを乾式単離するためのプロセスが記載されており、その真空ハウジングによって、減圧をかけることで蒸発法によってポリマー溶液から溶媒が除去される。実施例においてさえも、ポリマーまたはゴムが詳しく特定されていない。それらの実施例では、溶媒としては、クロロベンゼンおよびアセトンが挙げられている。このことから、水素化ニトリルゴムの加硫物の弾性率および圧縮永久歪みのレベルを改良するための手段を推論するのは不可能である。
(特許文献27)には、射出成形プロセスにおける金型の汚染を抑制する傾向を有する、ニトリル含有ゴムをベースとする混合物の製造が記載されている。この問題は、0.1〜0.5重量%の範囲の脂肪酸含量を有するニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムによって解決される。0.1〜0.5重量部の量で変化させたジ−tert−ブチル−p−クレゾールも含め、各種の混合物成分が金型汚染特性に及ぼす影響が検討されている。ニトリルゴム中または水素化ニトリルゴム中に存在しているジ−tert−ブチル−p−クレゾールの含量に関して、またはそれらがHNBRの加硫物特性に及ぼす影響についての詳細はない。したがって、HNBRの加硫物における弾性率レベルおよび圧縮永久歪みを改良するためのさらなる手段を推測することは不可能である。
まとめると、ニトリルゴムに関する膨大な文献があるにも関わらず、ニトリルゴム供給原料の製造において使用される老化安定剤およびその量に基づいて、水素化および仕上げ工程の後で、加硫された状態で改良された弾性率および圧縮永久歪み歪みを有する水素化ニトリルゴムを与える水素化ニトリルゴムは、今日までのところ、存在しないと言うことができる。
独国特許出願公開第A3 921 264号明細書 欧州特許出願公開第A0 319 320号明細書 米国特許第2,281,613号明細書 米国特許第2,434,536号明細書 英国特許第888040号明細書 旧東独国特許第154 702号明細書 独国特許出願公開第A23 32 096号明細書 独国特許出願公開第A24 25 441号明細書 独国特許出願公開第A27 51 786号明細書 独国特許出願公開第A30 43 688号明細書 米国特許第A2,487,263号明細書 米国特許第A4,383,108号明細書 米国特許第A5,708,132号明細書 米国特許第A4,920,176号明細書 欧州特許出願公開第A1 369 436号明細書 米国特許第A4,965,323号明細書 欧州特許出願公開第A0 692 496号明細書 欧州特許出願公開第A0 779 301号明細書 欧州特許出願公開第A0 779 300号明細書 独国特許出願公開第102007024011A号明細書 独国特許出願公開第102007024008A号明細書 独国特許出願公開第102007024010A号明細書 欧州特許第2 238 177号明細書 欧州特許出願公開第2 238 175A号明細書 欧州特許出願公開第2 238 176A号明細書 独国特許出願公開第40 32 598A号明細書 欧州特許出願公開第1 331 074A号明細書
Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft,Weinheim,1993,p.255−261 Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft,Weinheim,1993,p.320−324
したがって、本発明が対象としている問題は、特に高温で保存した後に、極めて良好な弾性率および低い圧縮永久歪み値を有する加硫物を与える水素化ニトリルゴムを提供するという問題であった。それと同時に、その水素化ニトリルゴムは、高温で長期間保存した後でさえも、優れた貯蔵安定性を有しているべきである。したがって、課題となった問題はさらに、ニトリルゴムを適切に水素化し、その後でその溶液から単離することによる、そのような水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセスを提供することであった。
驚くべきことには、改良された加硫物特性を有する、特には改良された弾性率および圧縮永久歪み値を有する水素化ニトリルゴムは、この水素化ニトリルゴムが0.01重量%〜0.45重量%未満の範囲内で所定の置換フェノールの含量を有しているときに得られることが見出された。
このことは、本発明の水素化ニトリルゴムには特にあてはまり、それらは、典型的には94.5%超〜100%、好ましくは95〜100%、より好ましくは96〜100%、さらにより好ましくは97〜100%、特には98〜100%の高い水素化度を有している。
驚くべきことには、この本発明の水素化ニトリルゴムは、対応する置換フェノールを好ましくは0.5〜1重量%の量で含むニトリルゴムを溶液中で水素化し、次いでその溶媒を除去して本発明の水素化ニトリルゴムを単離し、当業者に知られているさらなる方法により脱水し、それと同時に、置換フェノールの含量を0.01重量%〜0.45重量%未満の範囲に調節することにより得ることが可能であることも見出された。
したがって本発明は、一般式(I)
Figure 2017504696
(式中、
、R、R、R、およびRは同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ヒドロキシル、1〜8個の炭素原子と、さらに、好ましくは酸素である1個、2個もしくは3個のヘテロ原子とを有する直鎖状、分岐状、環状、または芳香族のヒドロカルビル基であり、ここで、R、R、R、R、およびR基の少なくとも1つは水素ではない)
の少なくとも1種の置換フェノールを、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.45重量%未満の範囲、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%の範囲、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%の範囲、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量で含む、水素化ニトリルゴムを提供する。
別の実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムにおける一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールの含量が、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.3重量%未満、好ましくは0.01重量%〜0.25重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.25重量%の範囲である。
本発明はさらに、これらの水素化ニトリルゴムの加硫可能な混合物、およびそれらをベースとする加硫物を製造するためのプロセス、さらにはそれらから得ることが可能である、特に成形体の形態である加硫物も提供する。
本発明はさらに、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量で含む、これら本発明の水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセスにおいて、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含むニトリルゴムが、溶液中で水素化にかけられ、次いでその溶媒が除去され、およびその水素化ニトリルゴムが単離および脱水され、それと同時に、一般式(I)の置換フェノールの含量が、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、さらには0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量に調節されることを特徴とする、プロセスを提供する。
別の実施形態においては、本発明のプロセスが、一般式(I)の置換フェノールを、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.3重量%未満、好ましくは0.01重量%〜0.25重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.25重量%の範囲の量で含む、水素化ニトリルゴムの調製を可能とする。
本出願に関連して、「脱水(dewatering)」という用語には、加熱乾燥操作も包含される。置換フェノールの含量を上述の量にまで低減させることを可能とする、いかなるプロセスを使用してもよい。
本発明の水素化ニトリルゴム:
本発明の水素化ニトリルゴムには、一般式(I)
Figure 2017504696
(式中、
、R、R、R、およびRは同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ヒドロキシル、1〜8個の炭素原子と、さらに、好ましくは酸素である1個、2個もしくは3個のヘテロ原子とを有する直鎖状、分岐状、環状、または芳香族のヒドロカルビル基であり、ここで、R、R、R、R、およびR基の少なくとも1つは水素ではない)
の少なくとも1種の置換フェノールが、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.45重量%未満の範囲、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%の範囲、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%の範囲、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量で含まれている。
別の実施形態においては、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールの含量が、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.3重量%未満、好ましくは0.01重量%〜0.25重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.25重量%の範囲の量である。
先に定義されたような、本発明の水素化ニトリルゴムは、好ましくは94.5〜100%の範囲、より好ましくは95〜100%の範囲、さらにより好ましくは96〜100%の範囲、特には97〜100%の範囲、特に好ましくは98〜100%の範囲の水素化度を有している。
好ましくは、本発明のニトリルゴムが、一般式(I)の置換フェノールを使用して安定化され、ここで、R、R、R、R、およびRは同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、n−ブチルもしくはt−ブチル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシもしくはプロポキシ、C〜Cシクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、またはフェニル基であり、ここで、R、R、R、R、およびR基の少なくとも1つは水素ではない。
本発明の水素化ニトリルゴムは、R、R、R、R、およびR基の2つまたは3つが水素であり、かつR、R、R、R、およびR基の他の2つまたは3つが同一であるか、または異なっており、およびそれぞれヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、n−ブチルもしくはt−ブチル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシもしくはプロポキシ、C〜Cシクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、またはフェニル基である、一般式(I)の置換フェノールを使用して安定化されているのが特に好ましい。
以下の化合物:
Figure 2017504696
からなる群から選択される一般式(I)の置換フェノールを使用することができれば、最も好ましい。
本発明の水素化ニトリルゴム中に存在させる置換フェノールは、たとえば独国特許出願公開第A2150639号明細書および独国特許出願公開第3337567A1号明細書からも公知であり、市場から入手することも可能であり、または当業者に知られている方法で調製することもできる。
一般式(I)の化合物が一般的に有している1つの特徴は、それらが、適切に実施される、好ましくは流動床乾燥による乾燥操作において揮発性であり、そのためそれらの水素化ニトリルゴム中の含量を、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の値に調節することができることである。この調節は、当業者であれば公知の方法で実施可能である。本発明の水素化ニトリルゴムが一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、0.01重量%〜0.3重量%未満、好ましくは0.01重量%〜0.25重量%、より好ましくは0.1〜0.25重量%の範囲の量で含む別の実施形態にも、同じことがあてはまる。
水蒸気蒸発性(steam−volatile)である一般式(I)のフェノールに加えて、1種または複数のさらなる老化安定剤(特に水蒸気蒸発不能であるものも含む)を使用することもまた可能である。
水素化ニトリルゴムの繰り返し単位:
本発明の水素化ニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーおよび少なくとも1種の共役ジエンモノマーの繰り返し単位を有している。それらにはさらに、1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位が含まれていてもよい。
本発明の水素化ニトリルゴムには、全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムが含まれる。その水素化のレベルは、50〜100%または80〜100%の範囲内であってよい。90〜100%の範囲の水素化度を有する水素化ニトリルゴムが使用されることが多い。好ましい水素化ニトリルゴムは、好ましくは94.5%超〜100%の範囲、より好ましくは95〜100%の範囲、さらにより好ましくは96〜100%の範囲、特には97〜100%の範囲の水素化度を有し、特に好ましくは98〜100%の範囲が使用される。
当業者は、残留二重結合含量(略して「RDB」と呼ぶ)が約0.9%以下である、すなわち、水素化のレベルが99.1%以上である場合であっても、「全面的に水素化されたタイプ」と呼んでいる。1つの好ましい実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムが全面的に水素化されたニトリルゴムを表しており、それは99,1%以上の水素化度を有している。
少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位が、(C〜C)共役ジエンまたはそれらの混合物をベースとしているのが好ましい。特に好ましいのは、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、およびそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびそれらの混合物である。さらにより好ましいのは、1,3−ブタジエンである。
本発明のニトリルゴムを製造するために使用されるα,β−不飽和ニトリルは、各種公知のα,β−不飽和ニトリルであってよく、(C〜C)−α,β−不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が好ましい。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
1種または複数のさらなる共重合性モノマーを使用するのであれば、それらはたとえば以下のものであってよい:芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンおよびビニルピリジン、フッ素化ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−フルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレン、あるいはそうでなければ、共重合性の老化防止性モノマー、好ましくはN−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、およびN−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリン、ならびにさらに非共役ジエン、たとえば4−シアノシクロヘキセンおよび4−ビニルシクロヘキセン、またはそうでなければ、アルキン、たとえば1−ブチンまたは2−ブチン。
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、ヒドロキシル基を含むモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであってよい。それに対応して置換された(メタ)アクリルアミドを使用することもまた可能である。
好適なアクリル酸ヒドロキシアルキルモノマーの例としては以下のものが挙げられる:(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジ(エチレングリコール)、イタコン酸ジ(プロピレングリコール)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシプロピル)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、フマル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、マレイン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、およびヒドロキシメチルビニルケトン。
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、エポキシ基を含むモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸グリシジルであってよい。
エポキシ基を含むモノマーの好ましい例は以下のものである:イタコン酸グリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および3−ビニルシクロヘキセンオキシド。
それらに代わるものとして、さらなる共重合性モノマーは、以下のものであってよい:カルボキシル基を含む共重合性ターモノマー、たとえばα,β−不飽和モノカルボン酸、それらのエステル、α,β−不飽和ジカルボン酸、それらのモノエステルもしくはジエステル、それらに対応する酸無水物、またはそれらのアミド。
使用されるα,β−不飽和モノカルボン酸は、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸であってよい。
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくはそれらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することもまた可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC〜C18アルキルエステルが好ましく、特に好ましいのは、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、特にC〜C18アルキルエステル、特にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシルである。さらに、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルが好ましく、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸もしくはメタクリル酸のC〜C12−アルコキシアルキルエステルが特に好ましく、アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルがさらにより好ましい。アルキルエステルたとえば上に挙げたものと、アルコキシアルキルエステルたとえば上に挙げた形態のものとの混合物を使用することも可能である。シアノアルキル基中の炭素原子の数が2〜12個のアクリル酸シアノアルキルおよびメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、およびメタクリル酸シアノブチルもまた使用することもまた可能である。その中のヒドロキシアルキル基の炭素原子の数が1〜12であるアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルを使用することも可能であり、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびアクリル酸3−ヒドロキシプロピルが好ましく、さらには、フッ素置換されたベンジル基を含むアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸フルオロベンジルおよびメタクリル酸フルオロベンジルを使用することも可能である。フルオロアルキル基を含むアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチルおよびメタクリル酸テトラフルオロプロピルを使用することもまた可能である。アミノ基を含むα,β−不飽和カルボン酸エステル、たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチルおよびアクリル酸ジエチルアミノエチルを使用することもまた可能である。
使用されるさらなるモノマーは、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸であってもよい。
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸を使用することもさらに可能である。
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノまたはジエステルを使用することも可能である。
これらのα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルは、たとえば、アルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、特にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC〜C12−アルコキシアルキル、より好ましくはC〜C−アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC〜C12−ヒドロキシアルキル、より好ましくはC〜C−ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C12−シクロアルキル、より好ましくはC〜C12−シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC〜C12−アルキルシクロアルキル、より好ましくはC〜C10−アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC〜C14−アリール、のモノエステルまたはジエステルであってよく、ここでいずれのジエステルも、混合エステルであってもよい。
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸2−プロピルヘプチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。特に、アクリル酸n−ブチルが使用される。
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。特に、アクリル酸メトキシエチルが使用される。
使用されるその他のα,β−不飽和モノカルボン酸のエステルはさらに、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびウレタン(メタ)アクリレートである。
α,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルの例には、以下のものが挙げられる:
・ マレイン酸モノアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノ−n−ブチル;
・ マレイン酸モノシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;
・ マレイン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸モノアリール、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・ マレイン酸モノベンジル類、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・ フマル酸モノアルキル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノ−n−ブチル;
・ フマル酸モノシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・ フマル酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸モノアリール、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・ フマル酸モノベンジル類、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・ シトラコン酸モノアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノ−n−ブチル;
・ シトラコン酸モノシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・ シトラコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸モノアリール、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・ シトラコン酸モノベンジル類、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・ イタコン酸モノアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノ−n−ブチル;
・ イタコン酸モノシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・ イタコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸モノアリール、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・ イタコン酸モノベンジル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・ メサコン酸モノアルキル、好ましくはメサコン酸モノエチル。
使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジエステルも、上述のモノエステル基に基づいた類似のジエステルであってよく、ここで、それらのエステル基が化学的に異なった基であってもよい。
有用なさらなる共重合性モノマーはさらに、1分子あたり少なくとも2個のオレフィン性二重結合を含むフリーラジカル重合性化合物が挙げられる。ポリ不飽和化合物の例は、ポリオールのアクリレート、メタクリレート、またはイタコネートであって、たとえば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオール1,4−ジアクリレート、プロパン−1,2−ジオールジアクリレート、ブタン−1,3−ジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリセリルのジ−およびトリ−アクリレート、ペンタエリスリチルのジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートもしくは−メタクリレート、ジペンタエリスリチルのテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−アクリレートもしくは−メタクリレートもしくは−イタコネート、ソルビチルテトラアクリレート、ソルビチルヘキサメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコールの、または末端ヒドロキシル基を有するオリゴエステルまたはオリゴウレタンのジアクリレートまたはジメタクリレートなどである。使用されるポリ不飽和モノマーはさらに、アクリルアミド、たとえばメチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、またはアクリル酸2−アクリルアミドエチルであってもよい。ポリ不飽和ビニルおよびアリル化合物の例としては以下のものが挙げられる:ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、またはリン酸トリアリル。
本発明におけるプロセスにおいて使用するためのニトリルゴムまたは本発明の水素化ニトリルゴムにおける共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。共役ジエンの比率、すなわち総計は、全体のポリマーを規準にして、典型的には20〜95重量%の範囲、好ましくは45〜90重量%の範囲、より好ましくは50〜85重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルの比率、すなわち総計は、全体のポリマーを規準にして、典型的には5〜80重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは15〜50重量%の範囲である。本発明のニトリルゴムまたは本発明の全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムにおける共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の比率は、それぞれの場合において、合計して100重量%になる。
さらなるモノマーは、ポリマー全体を基準にして、0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜26重量%の量で存在させてもよい。この場合、共役ジエンの繰り返し単位および/またはα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の対応する比率が、これらのさらなるモノマーの比率で置き換えられ、ここで、それぞれの場合において、全部のモノマーの繰り返し単位の比率が、合計して100重量%になるようにしなければならない。
さらなるモノマーとして(メタ)アクリル酸のエステルを使用する場合には、典型的には1〜25重量%の量で実施する。さらなるモノマーとしてα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸を使用するのであれば、典型的には、10重量%未満の量で実施する。
好ましいのは、アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンの繰り返し単位を有する本発明のニトリルゴムである。さらに好ましいのは、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を有するニトリルゴムである。アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、1種または複数のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、またはそれらのエステルまたはアミドの繰り返し単位、特にα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルの繰り返し単位、極めて特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルまたは(メタ)アクリル酸ラウリルとの繰り返し単位を有するニトリルゴムが好ましい。
本発明のニトリルゴムまたは本発明の全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムは、優れた貯蔵安定性を有している。
本発明のニトリルゴムまたは本発明の全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴム中の窒素含量は、DIN 53 625に従いKjeldahl法で測定する。極性のコモノマーが含まれているために、そのニトリルゴムは、典型的には、20℃のメチルエチルケトン中に85重量%以上の量で溶解することができる。
本発明の水素化ニトリルゴムのガラス転移温度は、−70℃〜+10℃の範囲内、好ましくは−60℃〜0℃の範囲内である。
本発明の水素化ニトリルゴムは、10〜150ムーニー単位(MU)、好ましくは20〜100MUのムーニー粘度ML1+4@100℃を有する。ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムのムーニー粘度は、DIN 53523/3またはASTM D1646に従って、剪断ディスク粘度計において100℃で測定する。これには、乾燥後でエージング前の未加硫ゴムのそれぞれについての分析も含まれる。乾燥後でエージング前のニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムのムーニー粘度は、MV0と呼ばれる。
未加硫のニトリルゴムまたは未加硫の水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性を求めるためには、ムーニー粘度を測定する。ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムを100℃で48時間保存した後で測定したムーニー粘度の値は、MV1と呼ばれる。100℃で72時間保存した後で測定したムーニー粘度の値は、MV2と呼ばれる。貯蔵安定性(SS)は、100℃での貯蔵の前後におけるムーニー値の差として求めた。
SS1(48h/100℃)=MV1−MV0
SS2(72h/100℃)=MV2−MV0
100℃で72時間の貯蔵の過程で、ムーニー粘度の変化が、5ムーニー単位以下であれば、水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性(SS2)は良好である(SS2=MV2−MV0)。これは、本発明の水素化ニトリルゴムの場合である。
100℃で48時間の貯蔵の過程で、ムーニー粘度の変化が、5ムーニー単位以下であれば、ニトリルゴムの貯蔵安定性(SS1)は良好である(SS1=MV1−MV0)。本発明の水素化ニトリルゴムを製造する場合、5ムーニー単位以下の貯蔵安定性SS1を有するニトリルゴムを使用するのが有用であることが見出された。このことは必須ではないが、プロセスの幅広い適用性には寄与する。
上述の式に従って貯蔵安定性を計算する目的でムーニー粘度を測定するためには、水素化ニトリルゴムのミルドシートを作製するのが有用であることが見出された。典型的には、それらのミルドシートは、100gの所定のゴムを、慣用されるロールミル(たとえば、Schwabenthan Polymix 110)において0.8〜1.0mmの間隙幅で、室温でロール処理することによって得られる。その回転速度は、25min−1/30min−1である。そのシートから長方形の断片(40〜50g)を作製し、空気循環乾燥キャビネット中、底部をTeflonフィルムで被覆したアルミニウム皿(10cm/15cm)の上で保存する。この空気循環乾燥キャビネット内の酸素含量は、通常の空気と変わらない。
本発明の水素化ニトリルゴムを製造するために使用することが可能なニトリルゴムを製造するためのプロセス:
一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含むニトリルゴムは、ニトリルゴムを一般式(I)の置換フェノールと混合することによって調製することができる。
ニトリルゴムに添加される一般式(I)の置換フェノールの量は、当業者によって広い範囲で変化させることができる。ここでは、水素化およびそれに続く仕上げによってニトリルゴムから得られる水素化ニトリルゴム中の置換フェノールの量が、それぞれの場合において水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲内となるようにその量が選択されることにのみ注意すべきである。水素化ニトリルゴムからのフェノールの除去レベルを脱水方法、すなわち乾燥方法によって変えることが可能であるため、この場合、規格を固定する必要はない。当業者であれば条件を相応に調節する方法は知っている。一般式(I)の置換フェノールを、ニトリルゴムを規準にして0.5〜1重量%の範囲内で含むものが、有用なニトリルゴムであることが見出された。
ニトリルゴムは、典型的には、乳化重合を介してニトリルゴムラテックスを形成させ、次いでそのニトリルゴムを凝集させることによって製造される。これは、当業者には十分周知のことである。ニトリルゴムのラテックスの凝集は、欧州特許出願公開第A1 369 436号明細書の一般的な部分に記載されているプロセスによって実施するのが好ましい。典型的には、乳化重合の後に生成したニトリルゴムラテックスに対して、凝集の前に、一般式(I)のフェノールを添加する。一般式(I)の置換フェノールを水性分散体として添加するのが有用であることが見出された。この水性分散体の濃度は、典型的には2.50〜70重量%、好ましくは5〜60重量%の範囲内である。置換フェノールを、重合の終了時に、溶媒中の形かまたはモノマー(ブタジエン、アクリロニトリル、もしくはブタジエン/アクリロニトリル混合物中)に溶解させて、モノマーの除去(モノマーの脱気)より前に、モノマー含有ラテックスに添加することもまた可能である。好ましいのは、ブタジエン、アクリロニトリルまたはブタジエン/アクリロニトリル混合物中での添加であって、その場合モノマー中の置換フェノールの濃度は、0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。置換フェノールの添加は、重合停止剤と組み合わせたり、および/またはさらなる水蒸気蒸発不能な老化安定剤と組み合わせたりして実施することもまた可能である。
任意選択的に、水素化の前に、メタセシスによってニトリルゴムを分解させる。メタセシスの後に、一般式(I)の置換フェノールの量を再調節することが望ましい場合、さらなる一般式(I)の置換フェノールを、メタセシスの後、水素化の前にニトリルゴムに添加することもできる。
本発明の水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセス:
一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量で含む水素化ニトリルゴムは、以下の工程によって調製することができる:一般式(I)の少なくとも1種のフェノールを、ニトリルゴムを規準にして、好ましくは0.5〜1重量%の範囲の量で含むニトリルゴムを溶液中で水素化にかけ、次いで、好ましくは水蒸気蒸留によって溶媒を除去して、水素化ニトリルゴムを篩別によって、好ましくはクラムの形態で単離および脱水して、一般式(I)の置換フェノールの含量を、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量に調節する。
1つの実証された実施形態においては、水素化ニトリルゴムの最終的な脱水を、流動床乾燥操作で、100℃〜180℃、好ましくは110℃〜150℃の温度で実施すると、水素化のために使用されたニトリルゴム中の置換フェノールの量を規準にして、一般式(I)の置換フェノールの20〜98重量%を除去することが可能である。
1つの具体的な実施形態においては、乾燥状態にある本発明の全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムには、1.0重量%未満の揮発性画分のみを含み、この場合、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールは、0.01重量%〜0.45重量%未満の範囲内の量で存在している。
一般式(I)のフェノール、特に揮発性画分の対応する含量を測定するための分析方法はすべて、実施例の一般的な項目に開示されている。
水素化:
水素化は典型的には、典型的には貴金属のロジウム、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、白金またはイリジウム、好ましくはロジウム、ルテニウム、およびオスミウムをベースとする少なくとも1種の水素化触媒の存在下に実施される。
一般式(A)
Rh(X)(L) (A)
(式中、
Xは、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、SnCl、またはカルボキシレートであり、
nは、1、2または3、好ましくは1または3であり、
Lは、同一であるか、または異なっており、およびリン、ヒ素、またはアンチモンをベースとする単座もしくは二座の配位子を表し、
mは、Lが単座配位子を表す場合には2、3、または4、Lが二座座配位子を表す場合には1または1.5または2または3または4である)
のロジウム錯体触媒を使用することが可能である。
一般式(A)において、Xは、同一であるか、または異なっており、および好ましくは水素または塩素である。
一般式(A)におけるLは、好ましくは、先に示した一般式(I−a)および(I−b)に対応するホスフィンまたはジホスフィンであり、そこで与えられた、一般的、好ましい、および特に好ましい定義が含まれる。
一般式(A)の特に好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ヒドリドロジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ならびにトリフェニルホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィンによって全体的または部分的に置換された対応する化合物である。
ルテニウム錯体触媒を使用することもまた可能である。それらは、たとえば、独国特許出願公開第A39 21 264号明細書および欧州特許出願公開第A0 298 386号明細書に記載されている。それらは典型的には、一般式(B)
RuX[(L(L5−z] (B)
(式中、
Xは、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、SnCl、CO、NO、またはR−COOであり、
は、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、R−COO、NO、CO、または下記の一般式(2):
Figure 2017504696
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルもしくはフェニルであるか、あるいはR〜Rからの2つの隣接する基が架橋されて、インデニルまたはフルオレニル系が形成されている)
のシクロペンタジエニル配位子であり、
は、ホスフィン、ジホスフィン、またはアルシンであり、かつ
nは、0、1または2であり、
mは、0、1、2または3であり、
zは、0、1、2、3または4であり、および
は、1〜20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは非分岐状、架橋または非架橋、および/または部分的に芳香族であってもよい基であり、好ましくはC〜Cアルキルである)
を有している。
一般式(2)のシクロペンタジエニル配位子タイプの、一般式(B)のL配位子の例としては、以下のものが挙げられる:シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、エチルテトラメチルシクロペンタジエニル、ペンタフェニルシクロペンタジエニル、ジメチルトリフェニルシクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル。インデニルおよびフルオレニルタイプのL配位子中のベンゼン環は、以下のもので置換されていてもよい:C〜C−アルキル基、特にはメチル、エチル、およびイソプロピル、C〜C−アルコキシ基、特にはメトキシおよびエトキシ、アリール基、特にはフェニル、ならびにハロゲン、特にはフッ素および塩素。シクロペンタジエニルタイプの好ましいL配位子は、それぞれ非置換の、シクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル基である。
(R−COO)タイプの一般式(B)におけるL配位子では、Rとしては、たとえば以下のものが挙げられる:1〜20、好ましくは1〜12、特には1〜6個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の、飽和ヒドロカルビル基、5〜12、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する、環状飽和ヒドロカルビル基、さらには6〜18、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、芳香族ヒドロカルビル基、または好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基およびC〜C18アリール基、好ましくはフェニルを有する、アリール−置換されたアルキル基。
先に説明した、一般式(B)の配位子Lにおける(R−COO)のR基は、任意選択的に以下のもので置換されていてもよい:ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ、C〜C−カルブアルコキシ、フッ素、塩素、またはジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルによってさらに置換されたシクロアルキル、アリール、およびアラルキル基;アルキル、シクロアルキルおよびアラルキル基にはケト基が含まれていてもよい。R基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、およびトリフルオロメチルが挙げられる。好ましいR基は、メチル、エチル、およびtert−ブチルである。
一般式(B)のL配位子は、好ましくは、先に示した一般式(1−a)および(1−b)に従うホスフィンまたはジホスフィン(そこで与えられた、一般的、好ましい、および特に好ましい定義が含まれる)であるか、または、一般式(3)のアルシンである。
Figure 2017504696
一般式(3)の好ましい配位子Lは、トリフェニルアルシン、ジトリルフェニルアルシン、トリス(4−エトキシフェニル)アルシン、ジフェニルシクロヘキシルアルシン、ジブチルフェニルアルシン、およびジエチルフェニルアルシンである。
好ましい一般式(B)のルテニウム触媒は、以下の群から選択され、ここで「Cp」は、シクロペンタジエニル、すなわちC−を表し、「Ph」は、フェニルを表し、「Cy」は、シクロヘキシルを表し、「dppe」は、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを表している:RuCl(PPh;RuHCl(PPh;RuH(PPh;RuH(PPh;RuH(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;RuH(CCOO)(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;RuH(NO)(PPh;Ru(NO)(PPh;RuCl(Cp)(PPh;RuH(Cp)(PPh;Ru(SnCl)(Cp)(PPh;RuCl(μ−C)(PPh;RuH(μ−C)(PPh;Ru(SnCl)(μ−C)(PPh;RuCl(μ−C13)(PPh;RuH(μ−C13)(PPh;Ru(SnCl)(μ−C13)(PPh;RuCl(μ−C)(dppe);RuHCl(CO)(PCy);RuH(NO)(CO)(PCy;RuHCl(CO)(PPh;RuCl(CO)(dppe)RuHCl(CO)(PCy)、RuHCl(CO)(dppe)、RuH(CHCOO)(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;およびRuH(CHCOO)(PPh
好適な触媒は、さらに、一般式(C)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Lは、同一であるかまたは異なった配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、
Rは、同一であるか、または異なっており、および水素、アルキル、好ましくはC〜C30−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、それらの基がすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよいか、あるいは別の方法として、2つのR基が、それらが結合されている共通の炭素原子を取り込んで、架橋されて、性質上脂肪族であっても芳香族であってもよく、任意選択的に置換されていたり1個または複数のヘテロ原子を含んでいたりしてもよい、環状基を形成している)
のものである。
一般式(C)の触媒の1つの実施形態においては、1個のR基が水素であり、他のR基が、C〜C20−アルキル、C〜C10−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C30−アルキルアミノ、C〜C30−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、それらの基はすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
一般式(C)の触媒において、XおよびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子である。
およびXは、たとえば以下のものであってよい:水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルキルジケトネート、C〜C24−アリールジケトネート、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、C〜C20−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルフィニル、モノ−もしくはジ−アルキルアミド、モノ−もしくはジ−アルキルカルバメート、モノ−もしくはジ−アルキルチオカルバメート、モノ−もしくはジ−アルキルジチオカルバメート、または、モノ−もしくはジ−アルキルスルホンアミド基。
上述のXおよびX基が、1種または複数のさらなる基、たとえばハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、それらの基がさらに、任意選択的に次いでハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルを含む群から選択される1種または複数の置換基によって置換されていてもよい。
さらなる実施形態においては、XおよびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれハロゲン、特に、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、ベンゾエート、C〜C−カルボキシレート、C〜C−アルキル、フェノキシ、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C24−アリール、またはC〜C−アルキルスルホネートである。
さらなる実施形態においては、XおよびXが同一であって、それぞれハロゲン特に、塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(CHSO)、またはCFSO(トリフルオロメタンスルホネート)である。
一般式(C)において、Lは、同一であるかまたは異なった配位子であり、好ましくは電荷を有さない電子供与体である。
2個のL配位子は、たとえば、それぞれ独立して、ホスフィン、スルホネート化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、イミダゾリン、またはイミダゾリジン配位子とすることができる。
それら2個のL配位子は、好ましくはそれぞれ独立して、C〜C24−アリール−、C〜C10−アルキル−もしくはC〜C20−シクロアルキルホスフィン配位子、スルホネート化C〜C24−アリール−もしくはスルホネート化C〜C10−アルキルホスフィン配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスフィナイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスホナイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスファイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアルシン配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアミン配位子、ピリジン配位子、C〜C24−アリールもしくはC〜C10−アルキル−スルホキシド配位子、C〜C24−アリールもしくはC〜C10−アルキルエーテル配位子もしくはC〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアミド配位子であり、それらはすべてさらに、未置換であるか、または1個または複数のハロゲン、C〜C−アルキルもしくはC〜C−アルコキシ基によって置換されているフェニル基によって置換されていてもよい。
「ホスフィン」という用語には、たとえば、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、およびP(ネオフェニル)が含まれ、ここで「Ph」はフェニルを表し、「Tol」はトリルを表している。
「ホスフィナイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスフィナイト、トリシクロヘキシルホスフィナイト、トリイソプロピルホスフィナイト、およびメチルジフェニルホスフィナイトが含まれる。
「ホスファイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ−tert−ブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、およびメチルジフェニルホスファイトが含まれる。
「スチビン」という用語には、たとえば、トリフェニルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、およびトリメチルスチビンが含まれる。
「スルホネート」という用語には、たとえば、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、およびメシレートが含まれる。
「スルホキシド」という用語には、たとえば、(CHS(=O)および(CS=Oが含まれる。
「チオエーテル」という用語には、たとえば、CHSCH、CSCH、CHOCHCHSCH、およびテトラヒドロチオフェンが含まれる。
「ピリジン」という用語は、本明細書に関連して、たとえば、国際公開第A03/011455号パンフレットにおいてGrubbsによって規定されているすべてのピリジンベースの配位子についての包括用語(umbrella term)として理解されるべきである。これらに含まれるのは、ピリジン、ならびに1置換基または多置換基を有する、以下の形態のピリジンである:ピコリン(α−、β−、およびγ−ピコリン)、ルチジン(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ルチジン)、コリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)、トリフルオロメチルピリジン、フェニルピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、クロロピリジン、ブロモピリジン、ニトロピリジン、キノリン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、およびフェニルイミダゾール。
式(C)のL配位子の一方または両方が、イミダゾリンおよび/またはイミダゾリジン基(以後においては、まとめて、「Im」配位子と呼ぶ)である場合には、後者は、典型的には、一般式(4a)または(4b)
Figure 2017504696
(式中、
、R、R10、R11は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C20−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C20−アリールスルホネート、またはC〜C20−アルキルスルフィニルである)
の構造を有している。
任意選択的に、R、R、R10、R11基の1個または複数が、それぞれ独立して、1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、ここで上述のそれらの置換基が、好ましくはハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルの群から選択される1個または複数の基によってさらに置換されていてもよい。
単に明確にするために、本出願に関連して、一般式(4a)および(4b)に示されている構造は、この基についての文献で見かけることが多く、この基のカルベン的性質を強調している、構造(4a’)および(4b’)と均等であることを付け加えておく。このことは、後に示す関連する好ましい構造(5a)〜(5f)に対しても同様にあてはまる。それらの基はすべて、以下においては、まとめて「Im」基と呼ぶことにする。
Figure 2017504696
一般式(C)の触媒の好ましい実施形態においては、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはプロピルまたはブチルであるか、または、それらが結合している炭素原子を取り込んで、シクロアルキルまたはアリール基を形成し、ここで上述の基は、任意選択的に直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンの官能基によって、さらに置換されていてもよい。
一般式(C)の触媒の好ましい実施形態においては、R10およびR11基は、さらに同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはメチル、イソプロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、より好ましくはメタンスルホネート、C〜C10−アリールスルホネート、より好ましくはp−トルエンスルホネートである。
任意選択的に、上述のR10およびR11で定義したような基が、直鎖状または分岐状のC〜C−アルキル、特にメチル、C〜C−アルコキシ、アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲン、特にフッ素、塩素、および臭素から選択される官能基によって置換されている。
さらに詳しくは、R10およびR11基は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれイソプロピル、ネオペンチル、アダマンチル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、2,6−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、または2,6−ジイソプロピルフェニルである。
特に好ましいIm基は、下記の(5a)〜(5f)
Figure 2017504696
の構造を有しており、ここでそれぞれ、Phはフェニル基であり、Buはブチル基であり、Mesはそれぞれ2,4,6−トリメチルフェニル基、別の場合では、Mesがすべての場合において、2,6−ジイソプロピルフェニルである。
式(C)の触媒の広く各種の異なった代表的化合物は、たとえば国際公開第A96/04289号パンフレットおよび国際公開第A97/06185号パンフレットから、基本的には公知である。
それらの好適なIm基に代わるものとして、一般式(C)のL配位子の一方または両方が、この場合も好ましくは同一であるかまたは異なったトリアルキルホスフィン配位子であって、その中のアルキル基の少なくとも1個が、二級アルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
さらに好ましくは、一般式(C)においては、1個または両方のL配位子が、その中で少なくとも1個のアルキル基が、二級アルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである、トリアルキルホスフィン配位子である。
特に好ましいのは、一般式(C)によって包含され、構造(6)(Grubbs(I)触媒)および(7)(Grubbs(II)触媒)
Figure 2017504696
(式中、Cyはシクロヘキシルである)
を有する触媒である。
好適な触媒は、さらに好ましくは、一般式(C)
Figure 2017504696
(式中、
、XおよびLは、一般式(C)におけるのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよく、
nは、0、1または2であり、
mは、0、1、2、3または4であり、および
R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい)
のものである。
使用することが可能な一般式(C1)によって包含される好ましい触媒の例は、下記の式(8a)および(8b)
Figure 2017504696
であり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルであり、Phはフェニルである。
これらの触媒は、たとえば国際公開第A2004/112951号パンフレットからも公知である。触媒(8a)は、Nolan触媒とも呼ばれている。
好適な触媒は、さらに好ましくは、一般式(D)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Yは、酸素(O)、硫黄(S)、N−R基もしくはP−R基(ここで、Rは以下に定義されるもの)であり、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素または有機もしくは無機の基であり、
は、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基であり、および
Lは、式(C)について定義された配位子である)
のものである。
一般式(D)の触媒は、原理的には公知であって、たとえば以下の文献に記載されている:Hoveydaらの米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2003.42,4592、ならびにGrelaによる国際公開第A2004/035596号パンフレット、Eur.J.Org.Chem.,2003,963−966、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,4038、さらにはJ.Org.Chem.,2004,69,6894−96、およびChem.Eur.J.,2004,10,777−784、さらには米国特許出願公開第2007/043180号明細書。それらの触媒は市場で入手可能であるか、または引用文献に従って調製することができる。
一般式(D)の触媒においては、Lは、典型的には、電子供与体機能を有する配位子であって、一般式(C)におけるLと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していると考えてよい。さらに、一般式(D)におけるLは、P(R基であるのが好ましく、ここでRは独立して、C〜Cアルキル、C〜C−シクロアルキルまたはアリールであるか、そうでなければ、任意選択的に置換されたイミダゾリンまたはイミダゾリジン基(「Im」)である。
〜C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびn−ヘキシルである。
〜C−シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基、好ましくは6〜10個の骨格炭素原子を有する単環、二環もしくは三環式の炭素環芳香族基、特にはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが含まれる。
イミダゾリンまたはイミダゾリジン基(Im)は、一般式(C)の触媒と同様の、一般的、好ましい、および特に好ましい構造を有している。
一般式(D)として特に好適な触媒は、R10およびR11基は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはイソプロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、より好ましくはメタンスルホネート、C〜C10−アリールスルホネート、より好ましくはp−トルエンスルホネートであるものである。
任意選択的に、上述のR10およびR11で定義したような基が、直鎖状または分岐状のC〜C−アルキル、特にメチル、C〜C−アルコキシ、アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンの群から選択される官能基によって置換されている。
さらに詳しくは、R10およびR11基は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれイソプロピル、ネオペンチル、アダマンチル、またはメシチルである。
特に好ましいイミダゾリンまたはイミダゾリジン基(Im)は、すでに先に特定された構造(5a〜5f)を有しており、ここでMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
一般式(D)の触媒においては、XおよびXが、一般式(C)の触媒と同様の、一般的、好ましい、および特に好ましい定義を有している。
一般式(D)においては、R基が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって、任意選択的に置換されていてもよい。
典型的にはR基は、C〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルアミノ、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
が、C〜C20−シクロアルキル基、C〜C24−アリール基、または直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル基であるのが好ましく、ここで後者は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合、またはそうでなければ1個もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。Rが、直鎖状または分岐状のC〜C12−アルキル基であるのがより好ましい。
〜C20−シクロアルキル基には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
〜C12−アルキル基は、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、またはn−ドデシルであってよい。Rがメチルまたはイソプロピルであるのがより好ましい。
〜C24−アリール基は、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基である。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(D)において、R、R、R、およびR基は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ水素、または有機もしくは無機の基であってよい。
好適な実施形態においては、R、R、R、Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ニトロ、CF、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、アリールまたはヘテロアリール基により置換されていてもよい。
典型的には、R、R、R、Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、ニトロ、CF、C〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルアミノ、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニル基であり、それらのすべてがそれぞれ、任意選択的に1個または複数のC〜C30−アルキル、C〜C20−アルコキシ、ハロゲン、C〜C24−アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
特に実証された実施形態においては、R、R、R、Rが同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれニトロ、直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、直鎖状または分岐状のC〜C20−アルコキシ基またはC〜C24−アリール基、好ましくはフェニルもしくはナフチルである。それらのC〜C30−アルキル基およびC〜C20−アルコキシ基は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合、またはそうでなければ、1個もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。
さらに、R、R、RまたはR基の2種以上が、脂肪族または芳香族を介して架橋されていてもよい。たとえばそれらが式(D)のフェニル環中に結合されている炭素原子も含めて、RおよびRが縮合フェニル環を形成して、全体としてナフチル構造となっていてもよい。
一般式(D)においては、そのR基は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基、好ましくは水素、C〜C30−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、またはC〜C24−アリール基である。Rが水素であれば、より好ましい。
他の好適な触媒は、一般式(D1)
Figure 2017504696
(式中、M、L、X、X、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義と同じ定義を有していてよい)
の触媒である。
一般式(D1)の触媒は基本的には、たとえば米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書(Hoveydaら)からも公知であり、そこに規定された調製プロセスにより得ることができる。
特に好適な触媒は、一般式(D1)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に共に塩素であり、
が、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル基であり、
、R、R、Rはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有しており、および
Lが、一般式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有している。
特に好適な触媒は、一般式(D1)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
が、イソプロピル基であり、
、R、R、Rが、すべて水素であり、および
Lが、式(4a)または(4b)の、任意選択的に置換されたイミダゾリジン基である。
Figure 2017504696
(式中、
、R、R10、R11は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、上述の基は、それぞれ1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、またそれらの上述の置換基もまた、1個または複数の基、好ましくはハロゲン特に塩素もしくは臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルの群から選択される基によって置換されていてもよい。)
極めて特に好適な触媒は、一般構造式(D1)で包含され、式(9)
Figure 2017504696
を有しているものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
この触媒(9)は、文献において、「Hoveyda触媒」と呼ばれることもある。
さらに好適な触媒は、一般構造式(D1)で包含され、以下の式(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)および(17)
Figure 2017504696
Figure 2017504696
の1つを有しているものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
さらに好適な触媒は、一般式(D2)
Figure 2017504696
(式中、
M、L、X、X、R、およびRは、それぞれ式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有し、
12は、同一であるか、または異なっており、および式(D)においてR、R、R、およびR基に与えられた一般的な定義および好ましい定義を有するが、ただし水素は除き、および
nは、0、1、2または3である)
の触媒である。
一般式(D2)の触媒は原理的には、たとえば、国際公開第2004/035596号パンフレット(Grela)からも公知であり、そこに規定された調製プロセスにより得ることができる。
特に好適な触媒は、一般式(D2)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に共に塩素であり、
が、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル基であり、
12が、一般式(D2)において定義されたものであり、
nが、0、1、2または3であり、
が、水素であり、および
Lが、一般式(D)において定義されたものである。
特に好適な触媒は、一般式(D2)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
が、イソプロピル基であり、
nが、0であり、および
Lが、式(4a)または(4b)の、任意選択的に置換されたイミダゾリジン基であり、ここで、R、R、R10、R11は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ一般式(D1)の特に好ましい触媒について定義されたものである。
特に好適な触媒は、下記の構造(18)(「Grela触媒」)および(19)
Figure 2017504696
のものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
その他の好適な触媒は、一般式(D3)
Figure 2017504696
(式中、X、X、XおよびXはそれぞれ、右側に示されているメチレン基を介して、式(D3)のケイ素に結合された一般式(20)
Figure 2017504696
(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的定義および好ましい定義と同じ定義を有していてよい)
の構造を有している)
のデンドリマー(dendritic)触媒である。
その一般式(D3)の触媒は、米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書からも公知であり、その中で与えられた詳細に基づいて調製することができる。
その他の好適な触媒は、一般式(D4)
Figure 2017504696
(式中、●の記号は担体を表している)
の触媒である。
担体は、好ましくはポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマー(PS−DVB)である。式(D4)に従う触媒は、基本的には、Chem.Eur.J.,2004,10,777−784から公知であり、その中に記載された調製法によって得ることができる。
(D)、(D1)、(D2)、(D3)および(D4)タイプの上述の触媒はすべて、そのままで水素化反応において使用することもでき、または固体の担体に適用して固定化させることもできる。適切な固体相または支持体は、まず、メタセシス反応混合物に対して不活性であり、次いで、触媒の活性を損なわないようなものである。触媒は、たとえば、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、有機ポリマービーズもしくはそうでなければ無機ゾル−ゲル、カーボンブラック、シリカ、ケイ酸塩、炭酸カルシウム、および硫酸バリウムを使用して固定化することができる。
他の好適な触媒は、一般式(E)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアニオン性配位子であり、
R’’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ有機基であり、
Imは、任意選択的に置換されたイミダゾリンまたはイミダゾリジン基であり、および
Anは、アニオンである)
の触媒である。
一般式(E)の触媒は原理的には公知である(たとえば、Angew.Chem.Int.Ed.,2004,43,6161−6165参照)。一般式(E)におけるXおよびXが、式(C)および(D)におけるのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよい。
Im基は、典型的には、一般式(4a)または(4b)の構造を有しており、それは、式(C)および(D)のタイプの触媒についてすでに特定されており、そこで好ましいと特定された構造のいずれか、特に式(5a)〜(5f)のものであってもよい。
一般式(E)におけるR’’基は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C30−シクロアルキル、またはアリール基であり、ここで、そのC〜C30−アルキル基は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合またはそうでなければ1個または複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。
アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基が含まれる。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(E)におけるR’’基は、同一であるのが好ましく、それぞれフェニル、シクロヘキシル、シクロペンチル、イソプロピル、o−トリル、o−キシリルまたはメシチルである。
他の好適な触媒は、一般式(F)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
13およびR14はそれぞれ独立して、水素、C〜C20−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、
は、アニオン性配位子であり、
は、単環式か多環式かには関係なく、電荷を有さないπ結合された配位子であり、
は、ホスフィン、スルホネート化ホスフィン、フッ素化ホスフィン、3個までのアミノアルキル、アンモニオアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、ヒドロカルボニルアルキル、ヒドロキシアルキルもしくはケトアルキル基を有する官能化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスフィンアミン、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、チオエーテル、およびピリジンの群からの配位子であり、
は、非配位アニオンであり、および
nは、0、1、2、3、4または5である)
の触媒である。
他の好適な触媒は、一般式(G)
Figure 2017504696
(式中、
は、モリブデンであり、
15およびR16は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、C〜C20−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、
17およびR18は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ置換またはハロゲン−置換のC〜C20−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C30−アラルキル基、またはそれらのケイ素含有類似体である)
の触媒である。
さらなる好適な触媒は、一般式(H)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ一般式(C)および(D)で与えられたXおよびXのすべての定義と考えてよいアニオン性配位子であり、
Lは、一般式(C)および(D)で与えられたLのすべての定義と考えてよい、同一または異なった配位子であり、
19およびR20は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素または置換または非置換のアルキルである)
の触媒である。
さらなる好適な触媒は、一般式(K)、(N)または(Q)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Lは、配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、
およびZは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ電荷を有さない電子供与体であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニルであり、それらのそれぞれは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択される1個または複数の基によって置換されている)
の触媒である。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒は基本的には、たとえば、国際公開第2003/011455A1号パンフレット、国際公開第2003/087167A2号パンフレット、Organometallics,2001,20,5314、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,4038からも公知である。それらの触媒は、市場で入手することも可能であり、そうでなければ、上述の引用文献に規定された調製法によって合成することもできる。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、ZおよびZは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ電荷を有さない電子供与体である。それらの配位子は典型的には、弱く配位結合されている。それらは典型的には、任意選択的に置換された複素環状基である。それらは、1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の単環式の基であるか、または2、3、4もしくは5個のそのような5員または6員の単環式の基からなる二環もしくは三環構造であってよく、ここで上述の基のそれぞれが、任意選択的に1個または複数のアルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10−アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリール基によって置換されていてもよく、それらの置換基がさらに、好ましくはハロゲン、特に塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1個または複数の基によって再度置換されていてもよい。
およびZの例には、窒素含有複素環、たとえば、ピリジン、ピリダジン、ビピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリジン、ピロリジン、ピペラジン、インダゾール、キノリン、プリン、アクリジン、ビスイミダゾール、ピコリルイミン、イミダゾリジン、およびピロールが含まれる。
およびZが互いに架橋されて、環式構造を形成していてもよい。この場合、ZおよびZは単一の二座配位の配位子である。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、Lは、一般式(C)および(D)におけるLと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有すると考えてよい。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、R21およびR22は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれアルキル、好ましくはC〜C30−アルキル、より好ましくはC〜C20−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、より好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、より好ましくはC〜C16−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、より好ましくはC〜C16−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、上述の置換基は、1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、XおよびXは同一であっても異なっていてもよく、および先に一般式(C)においてXおよびXとして与えられたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてもよい。
特に好適な触媒は、一般式(K)、(N)および(Q)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に塩素であり、
およびRが、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の単環式の基であるか、または2、3、4もしくは5個のそのような5員または6員の単環式の基からなる二環もしくは三環構造であってよく、ここで上述の基のそれぞれが、1個または複数の、アルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10−アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
21およびR22は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C30−アルキルアミノ、C〜C30−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルフィニルであり、および
Lが、先に、特に式(5a)〜(5f)に既に記載した一般式(4a)または(4b)の構造を有している。
極めて特に好適な触媒は、一般式(K)によって包含され、構造(21)
Figure 2017504696
(式中、
23およびR24は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、ハロゲン、直鎖状または分岐状のC〜C20−アルキル、C〜C20−ヘテロアルキル、C〜C10−ハロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシル、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルシリル、ならびにトリアルコキシシリルである)
を有するものである。
上述の、C〜C20−アルキル、C〜C20−ヘテロアルキル、C〜C10−ハロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール基、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシル、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリルは、それぞれ1個または複数のハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはフェニル基によってさらに置換されていてもよい。
極めて特に好ましいのは、R23およびR24がそれぞれ水素である触媒(「Grubbs III触媒」)である。
やはり極めて特に好ましいのは、構造(22a)または(22b)
Figure 2017504696
の触媒であり、R23およびR24が、水素は除いて、式(21)と同じ定義を有するものである。
一般式(K)、(N)および(Q)で包含される好適な触媒は、下記の構造式(23)〜(34)
Figure 2017504696
Figure 2017504696
を有しており、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
好適なのはさらに、一般構造要素(R1)
Figure 2017504696
(式中、
25〜R32は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、チオール、CF、ニトロ、ニトロソ、シアノ、チオシアノ、イソシアナト、カルボジイミド、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、アミノ、アミド、イミノ、シリル、スルホネート(−SO )、−OSO 、−PO もしくはOPO であるか、またはそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、ジアルキルアミノ、アルキルシリル、またはアルコキシシリルであり、ここで、これらの基はすべて、それぞれ、任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよいか、または別の方法として、それぞれの場合において、R25〜R32の群からの2つの直接隣接している基が、それらが結合されている環の炭素原子も含めて、架橋されて、環状の基、好ましくは芳香族系を形成しているか、または別の方法として、Rが、任意選択的にルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン錯体触媒の他の配位子と共に架橋されており、
mは、0または1であり、および
Aは、酸素、硫黄、C(R3334)、N−R35、−C(R36)=C(R37)−、−C(R36)(R38)−C(R37)(R39)−であり、ここで、R33〜R39が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれR25〜R32基と同一の定義を有していてもよい)
を有する触媒(R)であり、ここで「*」で区別した炭素原子は、1個または複数の二重結合を介して、触媒の基本骨格に結合されている。
本発明の触媒は、一般式(R1)の構造要素を有しており、ここで、「*」印で区別した炭素原子は、1個または複数の二重結合を介して触媒の基本骨格に結合されている。「*」印で区別した炭素原子が、2個または複数の二重結合を介して触媒の基本骨格に結合されている場合には、それらの二重結合が集積されるかまたは共役していてもよい。
このタイプの触媒(R)は、欧州特許出願公開第A2 027 920号明細書に記載されている。一般式(R1)の構造要素を有する触媒(R)には、たとえば、以下の一般式(R2a)および(R2b)
Figure 2017504696
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびLは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、ここでLが、それに代えて、R基に架橋されていてもよく、
nは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2であり、
n’は、1または2、好ましくは1であり、および
25〜R32、m、およびAは、それぞれ一般式(R1)におけると同じ定義を有する)
のそれらが含まれる。
一般式(R2a)の触媒においては、一般式(R1)の構造要素が、1個の二重結合(n=0)または、2、3もしくは4個の集積二重結合(n=1、2または3の場合)を介して、錯体触媒の中心金属に結合されている。一般式(R2b)の本発明の触媒においては、一般式(R1)の構造要素が、共役二重結合を介して錯体触媒の金属に結合されている。いずれの場合においても、「*」印で区別した炭素原子の上で錯体触媒の中心金属の方向に二重結合が存在している。
したがって、一般式(R2a)および(R2b)の触媒には、次の一般的構造要素(R3)〜(R9)
Figure 2017504696
が1個または複数の二重結合を介して「」印で区別した炭素原子を介して、一般式(R10a)または(R10b)
Figure 2017504696
(式中、XおよびX、LおよびL、n、n’、およびR25〜R39はそれぞれ、一般式(R2a)および(R2b)で定義されたものである)
の触媒基本骨格に結合されている触媒が含まれる。
典型的には、これらのルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン触媒は、五配位である。
一般式(R1)の構造要素において、
15〜R32が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、チオール、CF、ニトロ、ニトロソ、シアノ、チオシアノ、イソシアナト、カルボジイミド、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、アミノ、アミド、イミノ、シリル、スルホネート(−SO )、−OSO 、−PO もしくはOPO であるか、またはアルキル、好ましくはC〜C20−アルキル、特にはC〜C−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、特にはC〜C−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、特にはフェニル、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニル、ジアルキルアミノ、好ましくはジ(C〜C20−アルキル)アミノ、アルキルシリル、好ましくはC〜C20−アルキルシリル、もしくはアルコキシシリル、好ましくはC〜C20−アルコキシシリル基であり、ここでそれらの基は、任意選択的にそれぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されているか、または別の方法で、R25〜R32の群からの各種の2つの直接隣接している基が、それらが結合されている環の炭素原子を取り込んで、架橋されて、環状の基、好ましくは芳香族系を形成しているか、または別の方法として、Rが、任意選択的にルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン錯体触媒の他の配位子と共に架橋されており、
mは、0または1であり、および
Aは、酸素、硫黄、C(R33)(R34)、N−R35、−C(R36)=C(R37)−、または−C(R36)(R38)−C(R37)(R39)−であり、ここで、R33〜R39が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれR〜R基と同一の好ましい定義を有していてもよい。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびn−ヘキシルである。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C−シクロアルキルは、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルである。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C24−アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基が含まれる。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(R1)の構造要素中のXおよびX基は、一般式(C)の触媒において特定されたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有している。
一般式(R2a)および(R2b)、ならびに同様の(R10a)および(R10b)においては、そのLおよびL基は、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、一般式(C)の触媒において特定されたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよい。
一般構造単位(N1)を有する一般式(R2a)または(R2b)の触媒が好ましく、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲンであり、
一般式(R2a)においてnが、0、1または2であるか、または
一般式(R2b)においてn’が1であり、
およびLが、同一であるか、または異なっており、および一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ一般的定義または好ましい定義を有しており、
25〜R32が、同一であるか、または異なっており、および一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ一般的定義または好ましい定義を有しており、
mが、0または1のいずれかであり、
および、m=1の場合には、
Aが、酸素、硫黄、C(C〜C10−アルキル)、−C(C〜C10−アルキル)−C(C〜C10−アルキル)−、−C(C〜C10−アルキル)=C(C〜C10−アルキル)−、または−N(C〜C10−アルキル)である。
一般構造単位(R1)を有する式(R2a)または(R2b)の触媒が特に好ましく、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
一般式(R2a)においてnが、0、1もしくは2であるか、または
一般式(R2b)においてn’が1であり、
が、式(5a)〜(5f)のイミダゾリジン基であり、
が、スルホネート化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン基、式(5a)〜(5f)のイミダゾリンまたはイミダゾリジン基、またはホスフィン配位子、特にPPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、およびP(ネオフェニル)であり、
25〜R32が、一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ、一般的定義または好ましい定義を有しており、
mが、0または1のいずれかであり、
および、m=1の場合には、
Aが、酸素、硫黄、C(C〜C10−アルキル)、−C(C〜C10−アルキル)−C(C〜C10−アルキル)−、−C(C〜C10−アルキル)=C(C〜C10−アルキル)−、または−N(C〜C10−アルキル)である。
25基が、式Rの触媒の他の配位子と架橋されている場合、たとえば一般式(R2a)および(R2b)の触媒の場合においては、これは、以下の一般式(R13a)および(R13b)
Figure 2017504696
(式中、
は、酸素、硫黄、N−R41基、またはP−R41であり(R41は以下において定義されるもの)、
40およびR41は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニル基であって、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
pは、0または1であり、および
は、p=1のときは、−(CH−(ここでr=1、2または3)、−C(=O)−CH−、−C(=O)−、−N=CH−、−N(H)−C(=O)−であるか、またはそうでなければ、総括的な構造単位「−Y(R40)−(Y−」が、(−N(R40)=CH−CH−)、(−N(R40,R41)=CH−CH−)、であり、
ここで、M、X、X、L、R25〜R32、A、m、およびnが、一般式(R0a)および(R0b)の場合におけるのと同じ定義を有している)
の構造を与える。
一般式(R)の触媒の例としては、以下の構造(35)〜(45)
Figure 2017504696
Figure 2017504696
が挙げられる。
一般式(R)の触媒の調製は、欧州特許出願公開第A2 027 920号明細書からも公知である。
さらに、一般式(T)
Figure 2017504696
(式中、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアニオン性配位子であるか、あるいは炭素−炭素結合および/または炭素−ヘテロ原子結合を介して相互に結合されており、
Yは、O、S、NおよびPから選択される、電荷を有さない2電子供与体であり、
Rは、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル(RCO )、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、アミノスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドであり、
およびRはそれぞれ、H、Br、I、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル、アミド、アミノ、ヘテロアリール、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドであり、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、チオカルボニル、またはアミノカルボニルであり、
EWGは、アミノスルホニル、アミドスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アリールカルボニル、アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミド、スルホンアミド、塩素、フッ素、H、またはハロアルキルからなる群から選択される電子求引性基であり、および
Lは、炭素−炭素および/または炭素−ヘテロ原子結合を介してXに結合されている、電子供与性配位子である)
に従う触媒も好適である。
一般式(T)のこれらの触媒は、米国特許出願公開第2007/0043180号明細書(Zannan)からも公知である。
好ましいのは、XおよびXが、ハライド、カルボキシレート、およびアリールオキシドの形態である、イオン性配位子から選択されている、一般式(T)の触媒である。XおよびXが共にハライド、特には共にクロリドであるのがより好ましい。一般式(T)において、Yが酸素であるのが好ましい。Rは、好ましくは、H、ハロゲン、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル、アミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドである。さらに詳しくは、Rは、H、Cl、F、またはC1〜8アルコキシカルボニル基である。RおよびRは、同一であるか、または異なっており、および好ましくはそれぞれH、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミド基である。さらに詳しくは、RがHまたはアルコキシ基であり、およびRが水素である。一般式(T)において、Rは、好ましくはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、またはアリールカルボニル基である。より好ましくは、Rが、イソプロピル、sec−ブチル、およびメトキシエチルである。一般式(T)において、EWGは、好ましくは、アミノスルホニル、アミドスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アリールスルホニル、アミノカルボニル、アリールスルホニル、アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロゲン、またはハロアルキル基である。より好ましくは、EWGが、C1〜12N−アルキルアミノスルホニル、C2〜12N−ヘテロアリールスルホニル、C1〜12アミノカルボニル、C6〜12アリールスルホニル、C1〜12アルキルカルボニル、C6〜12アリールカルボニル、C6〜12アリールオキシカルボニル、Cl、F、またはトリフルオロメチル基である。一般式(T)において、Lは、ホスフィン、アミノ、アリールオキシド、カルボキシレート、および複素環式カルベン基(このものは、炭素−炭素および/または炭素−ヘテロ原子結合を介してXに結合されていてもよい)から選択される電子供与性配位子である。
特に好適な触媒は、その中のLが、複素環式カルベン配位子または、次の構造:
Figure 2017504696
(式中、
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC6〜12アリールであり、および
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、またはスルホンアミドであり、および
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC1〜8アルキルまたはC6〜12アリールである)
を有するホスフィン(P(R(R)である、一般式(T)のものである
好適なのはさらに、一般式(U)
(L (U)
(式中、
は、ロジウム(Rh)またはルテニウム(Ru)であり、
は、ルテニウム(Ru)またはランタニドであり、
ここで、Mがロジウム(Rh)である場合には、Mがルテニウム(Ru)またはランタニドであり、およびMがルテニウム(Ru)である場合には、Mがランタニドであり、
Xは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、Cl、またはBrであり、
は、オルガノホスフィン(PR)、ジホスフィン(RP(CHPR)、オルガノアルシン(AsR)、またはその他の窒素、硫黄、酸素原子を含む有機化合物、またはそれらの混合物であり、ここで、R、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC〜Cアルキル、C〜C12シクロアルキル、アリール、C〜C12アラルキル、またはアリールオキシ基であり、
1≦a≦4、
1≦b≦2、
3≦m≦6、および
6≦n≦15である)
の二金属錯体である。
一般式(U)のこれらの触媒は、原理的には、米国特許第A6,084,033号明細書からも公知である。
特に好適な触媒は、その中でMがロジウムであり、およびMがルテニウムである、一般式(U)のそれである。他の特に好適な触媒は、その中でMがランタニド、特にはCeまたはLaである、一般式(U)のものである。一般式(U)の特に好適な触媒においては、Xが、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれHまたはClである。一般式(U)の特に好適な触媒は、その中でLが、以下のものから選択されているものである:トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、1,4−ジ(ジフェニルホスファノ)ブタン、1,2−ジ(ジフェニルホスファノ)エタン、トリフェニルアルシン、ジブチルフェニルアルシン、ジフェニルエチルアルシン、トリフェニルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、アセチルアセトン、ジフェニルケトン、およびそれらの混合物。
使用することが可能なさらなる触媒が、以下の文献に記載されている:米国特許第A37 00 637号明細書、独国特許出願公開第A25 39 132号明細書、欧州特許出願公開第A134 023号明細書、独国特許出願公開第A35 41 689号明細書、独国特許第3540918号明細書、欧州特許出願公開第A0 298 386号明細書、独国特許出願公開第A3529252号明細書、独国特許出願公開第A3433 392号明細書、米国特許第A4,464,515号明細書、米国特許第4,503,196号明細書、および欧州特許出願公開第A1 720 920号明細書。
水素化触媒の量:
ニトリルゴムを水素化する場合、水素化触媒は、広い範囲の量で使用することができる。触媒は、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、特には0.05〜0.3重量%の量で使用される。
その他の水素化条件:
水素化の実施は、たとえば米国特許第6,683,136A号明細書に見られるように、当業者には十分に知られていることである。
溶媒:
水素化は、典型的には、溶媒、好ましくは有機溶媒中で実施される。好適な有機溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、およびジクロロベンゼン。モノクロロベンゼンが特に有用であることが見出され、その理由は、それが、各種のニトリル含量を有するニトリルゴムと、それに対応する製品の水素化ニトリルゴムとの両方に対する良好な溶媒であるからである。
ニトリルゴムの濃度:
水素化のためには、ニトリルゴムは、典型的には、少なくとも1種の溶媒中に溶解される。水素化におけるニトリルゴムの濃度は、一般的には1〜30重量%の範囲、好ましくは5〜25重量%の範囲、より好ましくは7〜20重量%の範囲である。
水素化における圧力は、典型的には0.1bar〜250bar、好ましくは5bar〜200bar、より好ましくは50bar〜150barの範囲内である。その温度は、典型的には0℃〜180℃、好ましくは20℃〜160℃、より好ましくは50℃〜150℃の範囲内である。その反応時間は、一般的には2〜10時間である。
水素化の過程において、使用されたニトリルゴム中に存在していた二重結合は、好ましくは94.5%超〜100%、より好ましくは95〜100%、さらにより好ましくは96〜100%、特には97〜100%、特に好ましくは98〜100%の程度にまで水素化される。0〜0.9%の範囲の残存二重結合含量(「RDB」)を有する水素化ニトリルゴムを得ることもまた可能である。水素化は、水素吸収をオンラインで測定するか、またはラマン分光光度法(欧州特許出願公開第A0 897 933号明細書)もしくはIR分光光度法(米国特許第A6,522,408号明細書)によりモニターする。水素化レベルをオフラインで測定するのに好適なIR法についてはさらに、D.Brueckによる記述がある:Kautschuke+Gummi,Kunststoffe,Vol.42、(1989),No.2,p.107−110(part 1)およびKautschuke+Gummi,Kunststoffe,Vol.42、(1989),No.3,p.194−197。
水素化レベルに達したら、反応器を減圧する。残存量の水素は、典型的には、窒素パージで除去する。
溶媒の除去と有機相からの水素化ニトリルゴムの単離を行う前に、水素化触媒を除去することもできるが、必須ではない。ロジウム回収のための好ましいプロセスは、たとえば、米国特許第A4,985,540号明細書に記載されている。
助触媒:
水素化は、助触媒としてのホスフィンまたはジホスフィンを添加して実施することも可能である。後者は、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.1〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらにより好ましくは0.75〜3.5重量%、特には1〜3重量%の量で使用される。
好適なホスフィン助触媒は、一般式(1−a)
Figure 2017504696
(式中、
R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、アルケニル、アルカジエニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルカジエニル、ハロゲン、またはトリメチルシリルである)
のものであり、および好適なジホスフィン助触媒は、一般式(1−b)
Figure 2017504696
(式中、
R’は、同一であるか、または異なっており、および一般式(1−a)におけるのと同じ定義を有しており、
kは、0または1であり、および
Xは、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基である)
のものである。
これら式(1−a)および(1−b)両方におけるR’基は、非置換であっても、あるいは一置換もしくは多置換されていてもよい。
そのような一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンは、当業者に公知の方法で調製することもでき、または市場で購入することもできる。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルキル基は、典型的には直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル基、好ましくはC〜C24−アルキル基、より好ましくはC〜C18−アルキル基を意味していると理解されたい。C〜C18−アルキルとしては、たとえば以下のものが挙げられる:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、およびn−オクタデシル。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルケニル基は、典型的にはC〜C30−アルケニル基、好ましくはC〜C20−アルケニル基を意味していると理解されたい。アルケニル基がビニル基またはアリル基であれば、より好ましい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルカジエニル基は、典型的にはC〜C30−アルカジエニル基、好ましくはC〜C20−アルカジエニル基を意味していると理解されたい。アルカジエニル基が、ブタジエニルまたはペンタジエニルであれば、より好ましい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルコキシ基は、典型的にはC〜C20−アルコキシ基、好ましくはC〜C10−アルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、およびn−ヘキソキシを意味していると理解されたい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアリール基は、典型的にはC〜C24−アリール基、好ましくはC〜C14−アリール基、より好ましくはC〜C12−アリール基を意味していると理解されたい。C〜C24−アリールの例は、フェニル、o−、p−もしくはm−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、およびフルオレニルである。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’’基中のヘテロアリール基は、アリール基について先に挙げたのと同じ定義を有するが、ただし、骨格炭素原子の1個または複数が、窒素、硫黄および酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されている。そのようなヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、オキサゾリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、およびキノリニルが挙げられる。
上述のアルキル、アルケニル、アルカジエニル、およびアルコキシ基はすべて、非置換であっても、あるいはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されていてもよい:C〜C24−アリール基、好ましくはフェニル(アルキル基の場合においては、その結果、たとえばアリールアルキル、好ましくはフェニルアルキル基となる)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、CN、OH、NHもしくはNR’’基(ここでR’’は、さらにC〜C30−アルキルまたはC〜C24−アリールである)。
それらのアリール基およびヘテロアリール基はいずれも、非置換であるか、あるいはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されている:直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル(その結果、いわゆるアルキルアリール基となる)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、スルホネート(SONa)、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、ヒドロキシル、NHもしくはN(R’’)基(ここで、R’’はさらに、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキルまたはC〜C24−アリールである)、またはさらなるC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール基(その結果、ビスアリール基、好ましくはビフェニルもしくはビナフチル、ヘテロアリールアリール基、アリールヘテロアリール基、またはビスヘテロアリール基となる)。これらのC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール置換基もまた、非置換であるか、あるいはすべての上記の置換基によって一置換もしくは多置換されている。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルキル基は、典型的にはC〜C20−シクロアルキル基、好ましくはC〜C−シクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルおよびシクロヘキシルを意味していると理解されたい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルケニル基は、同一であるかまたは異なっており、および環の骨格に1個のC=C二重結合を有しており、典型的にはC〜Cシクロアルケニル、好ましくはシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルである。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルカジエニル基は、同一であるかまたは異なっており、および環の骨格に2個のC=C二重結合を有しており、典型的にはC〜Cシクロアルカジエニル、好ましくはシクロペンタジエニルおよびシクロヘキサジエニルである。
上述のシクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルカジエニル基もまた、非置換であるか、あるいはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されている:直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル(その結果は、いわゆるアルキルアリール基である)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、もしくは臭素、スルホネート(SONa)、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、ヒドロキシル、NHもしくはNR’’基(ここで、R’’はさらに、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキルもしくはC〜C24−アリールであるか、またはC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール基によって置換されており、それらはさらに、非置換であるか、またはすべての上述の置換基によって一置換もしくは多置換されている)。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のハロゲン基は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれフッ素、塩素、または臭素である。
一般式(1−a)の特に好ましいホスフィンは、以下のものである:トリアルキル−、トリシクロアルキル−、トリアリール−、トリアルクアリール−、トリアラルキル−、ジアリールモノアルキル−、ジアリールモノシクロアルキル−、ジアルキルモノアリール−、ジアルキルモノシクロアルキル−、またはジシクロアルキルモノアリールホスフィン(ここで、上述の基はさらに、非置換であるか、または上述の置換基によって一置換もしくは多置換されている)。
特に好ましいホスフィンは、その中のR’基が同一であるか、または異なっており、およびそれぞれフェニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、フェニルスルホネート、またはシクロヘキシルスルホネートである、一般式(1−a)のものである。
使用される一般式(1−a)の最も好ましいホスフィンは、以下のものである:PPh3、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(iso−Pr)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、P(CCH)(C、P(NCCHCH(C)、P[(CHC]Cl、P[(CHC](CH)、P(tert−Bu)(biph)、P(C11Cl、P(CH)(OCHCH、P(CH=CHCH、P(CO)、P(CHOH)、P(m−CHOC、P(C、P[(CHSi]、P[(CHO)(ここで、Phはフェニルであり、Tolはトリルであり、biphはビフェニルであり、Buはブチルであり、およびPrはプロピルである)。トリフェニルホスフィンが特に好ましい。一般式(1−b)のジホスフィンにおいて、kは0または1、好ましくは1である。
一般式(1−b)のXは、以下のものである:直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C20−アルカンジイル、C〜C20−アルケンジイル、またはC〜C20−アルキンジイル基、より好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルカンジイル、C〜C−アルケンジイル、またはC〜C−アルキンジイル基。
〜C−アルカンジイルは、1〜8個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル基である。特に好ましいのは、1〜6個の炭素原子、特には2〜4個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル基である。好ましいのは、メチレン、エチレン、プロピレン、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,4−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、および2−メチルペンタン−2,4−ジイルである。
〜C−アルケンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルケンジイル基である。好ましいのは、2〜4、より好ましくは2または3の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルケンジイル基である。好ましい例としては以下のものが挙げられる:ビニレン、アリレン、プロペ−1−エン−1,2−ジイル、およびブテ−2−エン−1,4−ジイル。
〜C−アルキンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキンジイル基である。好ましいのは、2〜4、より好ましくは2または3の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状のアルキンジイル基である。好ましい例としては以下のものが挙げられる:エチンジイル、およびプロピンジイル。
一般式(1−b)の特に好ましいジホスフィンは、以下のものである:ClPCHCHPCl、(C11PCHP(C11)、(CHPCHCHP(CH、(CPCCP(C、(CPCH=CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CPCH(CH)CH(CH)P(C、および(CPCH(CH)CHP(C
本発明においても同様に使用しうる具体的なジホスフィンは、Chem.Eur.J.,2008,14,9491−9494でも公表されている。例として以下のものが挙げられる。
Figure 2017504696
本発明におけるプロセスにおける水素化を、ホスフィンまたはジホスフィンを添加して実施する場合、それらは、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.1〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらにより好ましくは0.75〜3.5重量%、特には1〜3重量%の量で使用される。
試行され、信頼される方法では、ホスフィンまたはジホスフィンは、水素化触媒の1当量を規準にして、0.1〜10当量の範囲、好ましくは0.2〜5当量の範囲、より好ましくは0.3〜3当量の範囲の量で使用される。
添加されるホスフィンまたはジホスフィンの、水素化触媒に対する重量比は、典型的には(1〜100):1、好ましくは(3〜30):、特には(5〜15):1である。
水素化の前に、ニトリルゴムの分子量を低下させる目的で、ニトリルゴムをメタセシス反応にかけておくこともまた可能である。ニトリルゴムのメタセシスは、当業者には十分に知られていることである。メタセシスを実施する場合には、それに続く水素化反応をインサイチューで、すなわち、前もってメタセシス分解を実施したのと同一の反応混合物中で、分子量を低下させたニトリルゴムを単離する必要もなく、実施することも可能である。その水素化触媒は、反応容器中に単に添加する。
水素化後、好ましくはローラー乾燥プロセスもしくはスクリュープロセスによる乾式仕上げか、あるいは好ましくは水蒸気蒸留、より好ましくは水蒸気蒸留とそれに続いての、流動床ドライヤーによるか、またはエクスペラー−エキスパンダードライヤーでの単離されたゴムクラムの乾燥とによる湿式仕上げかのいずれかにより、溶媒が除去される。
乾式仕上げプロセスとしては、たとえば、独国特許出願公開第A4032598号明細書に記載されているローラー乾燥プロセス、および国際公開第A2011/023763号パンフレットおよび欧州特許出願公開第A2368917号明細書に記載されているスクリュープロセスがある。
水蒸気蒸留による湿式仕上げもまた、水素化において使用された溶媒を除去するのに好適であり、この場合、次いでその単離された水分を含んだゴムクラムの乾燥を、流動床ドライヤー中、またはエクスペラー−エキスパンダードライヤー中で実施する。このタイプの乾燥方法は、当業者には十分に知られていることである。
これらの仕上げプロセスはいずれも、実施すると、水素化ニトリルゴム中に存在している一般式(I)の置換フェノールを、試行され、信頼される方法では、水素化のために使用されたニトリルゴムからの一般式(I)の置換フェノールの量を規準にして、20〜98重量%の程度まで除去される。
流動床乾燥が特に好適であり、流動床乾燥を連続法で実施するのが好ましい。これは、5〜50重量%の水分含量を有する水素化ニトリルゴムのクラムを通過する、100〜180℃、特には110℃〜150℃の温度を有する空気流により実施される。その滞留時間は1〜15分であり、その流動床乾燥操作において、温度プロファイルを有するようにして作業することもまた可能である。
これにより、ASTM標準D1646で測定して、1〜50の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有する水素化ニトリルゴムが得られる。これは、重量平均分子量Mが2000〜400000g/molの範囲にあることにほぼ対応する。ムーニー粘度(ML1+4@100℃)が5〜30の範囲にあれば好ましい。これは、重量平均分子量Mが約20000〜200000の範囲にあることにほぼ対応する。さらに、そのようにして得られた水素化ニトリルゴムは、1〜5の範囲、好ましくは1.5〜3の範囲の多分散性PDI=M/M(ここでMは重量平均分子量、Mは数平均分子量である)を有している。
加硫可能な混合物:
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の水素化ニトリルゴムおよび少なくとも1種の架橋系を含む、加硫可能な混合物も提供する。これらの加硫可能な混合物は、好ましくは、1種または複数のさらなる典型的なゴム添加剤をさらに含んでいてもよい。
これらの加硫可能な混合物は、少なくとも1種の本発明の水素化ニトリルゴム(i)を、少なくとも1種の架橋系(ii)および任意選択的に1種または複数のさらなる添加剤と混合することによって製造する。
その架橋系には、少なくとも1種の架橋剤と、任意選択的に1種または複数の架橋促進剤とが含まれる。
典型的には、本発明の水素化ニトリルゴムを、全部の選択された添加剤と最初に混合し、少なくとも1種の架橋剤および任意選択的に架橋促進剤からなる架橋系は、最後に混ぜ込む。
有用な架橋剤としては、たとえば、以下のものが挙げられる:ペルオキシド系架橋剤たとえば、ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
それらのペルオキシド系架橋剤と同様にして、架橋収率を向上させるのに役立つ可能性がある、さらなる添加物を使用するのも有利となりうる。それらの好適な例としては、以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
その架橋剤の全量は、未水素化であるかまたは全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムを基準にして、典型的には1〜20phrの範囲、好ましくは1.5〜15phrの範囲、より好ましくは2〜10phrの範囲である。
使用される架橋剤はさらに、元素状の可用性もしくは不溶性の形態である硫黄か、または硫黄供与体であってもよい。
有用な硫黄供与体としては、たとえば以下のものを挙げることができる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
本発明の、水素化されていないかまたは全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムの硫黄加硫における架橋収率の向上に役立つ可能性があるさらなる添加物を使用することもまた可能である。原理的には、その架橋は、硫黄または硫黄供与体を単独で用いて実施することも可能である。それとは逆に、本発明の、水素化されていないかまたは全面的もしくは部分的に水素化されたニトリルゴムの架橋を、上述の添加物を存在させるだけで、すなわち元素状の硫黄または硫黄供与体を添加せずに、実施することもまた可能である。
架橋収率を向上させるのに役立つ可能性がある好適な添加物としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸塩、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
使用されるジチオカルバミン酸塩は、たとえば以下のものであってよい:ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、およびジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛。
使用されるチウラムは、たとえば以下のものであってよい:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、またはテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)。
使用されるチアゾールは、たとえば以下のものであってよい:2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、および銅2−メルカプトベンゾチアゾール。
使用されるスルフェンアミド誘導体は、たとえば以下のものであってよい:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−tert−ブチルスルフェンアミド、またはオキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシエチレンスルフェンアミド。
使用されるキサントゲン酸塩は、たとえば以下のものであってよい:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛、またはジブチルキサントゲン酸亜鉛。
使用されるグアニジン誘導体は、たとえば以下のものであってよい:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、またはo−トリルビグアニジエン(OTBG)。
使用されるジチオホスフェートは、たとえば以下のものであってよい:ジ(C〜C16)アルキルジチオリン酸亜鉛、ジ(C〜C16)アルキルジチオリン酸銅、およびジチオホスフォリルポリスルフィド。
使用されるカプロラクタムは、たとえば、ジチオビスカプロラクタムであってよい。
使用されるチオ尿素誘導体は、たとえば以下のものであってよい:N,N’−ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、およびエチレンチオ尿素(ETU)。同様に添加物として好適なものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:亜鉛ジアミノジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、および環状ジスルファン。
上述の添加物および架橋剤は、個別に使用しても、あるいは混合物として使用してもよい。ニトリルゴムを架橋させるためには、以下の物質を使用するのが好ましい:硫黄、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジチオビスカプロラクタム。
架橋剤および上述の添加物はそれぞれ約0.05〜10phr、好ましくは0.1〜8phr、特には0.5〜5phrの量で使用することができる(単一使用量、それぞれの場合において、活性物質基準)。
硫黄架橋の場合においては、架橋剤と上述の添加物に加えて、たとえば以下に挙げるさらなる無機物質または有機物質を使用することも同様に可能である:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、飽和もしくは不飽和の有機脂肪酸およびそれらの亜鉛塩、ポリアルコール、アミノアルコールたとえば、トリエタノールアミン、およびアミン、たとえば、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、およびポリエーテルアミン。
本発明の水素化ニトリルゴムが、カルボキシル基を含む1種または複数のターモノマーの繰り返し単位を含むものであるならば、架橋は、好ましくは架橋加硫促進剤の存在下、ポリアミン架橋剤を使用することにより、実施することも可能である。ポリアミン架橋剤には限定はないが、ただし、それは、(1)2個以上のアミノ基を含む化合物(任意選択的に塩の形態)、または(2)架橋反応の際にインサイチューで2個以上のアミノ基を含む化合物を形成する化学種のいずれかである。その中で少なくとも2個の水素原子がアミノ基で置換されているか、そうでなければヒドラジド構造(後者は、「−C(=O)NHNH」の構造である)で置換されている、脂肪族または芳香族炭化水素化合物を使用するのが好ましい。
そのようなポリアミン架橋剤(ii)は以下のものである:
・ 脂肪族ポリアミン、好ましくはヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタアミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒドアダクト、またはヘキサメチレンジアミンジベンゾエート;
・ 芳香族ポリアミン、好ましくは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、または4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン);
・ 少なくとも2つのヒドラジド構造を有する化合物、好ましくはイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、またはセバシン酸ジヒドラジド。
特に好ましいのは、ヘキサメチレンジアミン、およびヘキサメチレンジアミンカルバメートである。
加硫可能な混合物中におけるポリアミン架橋剤の量は、100重量部の水素化ニトリルゴムを基準にして、典型的には0.2〜20重量部の範囲、好ましくは1〜15重量部の範囲、より好ましくは1.5〜10重量部の範囲である。
ポリアミン架橋剤と組み合わせて使用される架橋加硫促進剤は、当業者には公知のいかなるものであってもよく、好ましくは塩基性の架橋加硫促進剤である。使用可能な例としては、以下のものが挙げられる:テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、o−トリルビグアニジン、およびジカテコールホウ酸のジ−o−トリルグアニジン塩。さらに使用可能なのは、アルデヒドアミン架橋促進剤、たとえばn−ブチルアルデヒドアニリンである。使用される架橋促進剤はいずれも、少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン性塩基であるのがより好ましい。それらは、当業者には公知である。次のものが特に好適である:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)。
この場合における架橋性加硫促進剤の量は、100重量部の水素化ニトリルゴムを基準にして、典型的には0.5〜10重量部、好ましくは1〜7.5重量部、特には2〜5重量部の範囲内である。
本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする加硫可能な混合物は、原理的には、スコーチ抑制剤が含まれていてもよく、それらは、硫黄を用いた加硫の場合とペルオキシドを用いた加硫の場合とでは異なる。
硫黄を用いた加硫の場合には、次のものが使用される:シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)、およびジフェニルニトロソアミン。好ましいのは、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)である。
ペルオキシドを用いた加硫の場合には、国際公開第A97/01597号パンフレットおよび米国特許第A4,857,571号明細書に記載されている化合物を使用して、スコーチを抑制する。立体障害p−ジアルキルアミノフェノール、特には、Ethanox 703(Sartomer製)が好ましい。
慣用されるさらなるゴム添加剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:当業者には公知の典型的な物質、たとえば充填剤、充填剤活性化剤、オゾン劣化防止剤、老化安定剤、抗酸化剤、加工助剤、エキステンダーオイル、可塑剤、補強材、および離型剤。
使用される充填剤は、たとえば以下のものであってよい:カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は粉体の形状にあるのが好ましい)、またはケイ酸塩。充填剤は、100重量部の水素化ニトリルゴムを規準にして、典型的には5〜350重量部、好ましくは5〜300重量部の範囲の量で使用される。
有用な充填剤活性化剤としては、特に、たとえば以下のものが挙げられる:ビス(トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド)、ビス(トリエトキシシリルプロピルジスルフィド)、ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、または(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。さらなる充填剤活性化剤としては、たとえば、トリエタノールアミンおよび74〜10000g/molの分子量を有するエチレングリコールなどの界面活性物質が挙げられる。充填剤活性化剤の量は、典型的には、100phrのニトリルゴムを基準にして、0〜10phrの範囲である。
有用な離型剤の例としては以下のものが挙げられる:飽和または部分不飽和の脂肪酸およびオレイン酸、ならびにそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド)(それらは、混合物成分として使用するのが好ましい)、およびさらには、金型表面に適用することが可能な製品、たとえば低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フルオロポリマーをベースとする製品、およびフェノール樹脂をベースとする製品。離型剤の量は、100phrのニトリルゴムを規準にして、典型的には0〜10phr、好ましくは0.5〜5phrの範囲である。
その他の可能性としては、米国特許第A−4,826,721号明細書の教示に従った、ガラス製の強化材(繊維)を用いた補強が挙げられ、またそれとは別に、脂肪族および芳香族ポリアミド(Nylon(登録商標)、Aramid(登録商標))、ポリエステル、および天然繊維製品から製造したコード、織布、繊維による補強も挙げられる。
加硫可能な混合物の製造を目的とした成分の混合は、典型的には、インターナルミキサー中、またはローラー上で実施される。使用されるインターナルミキサーは、典型的には、「かみ合い方式(intermeshing)」のローター形状と呼ばれているものを備えたものである。開始時点で、本発明のニトリルゴムをインターナルミキサーに仕込む。このものは、典型的にはベールの形態であり、この場合、最初に微粉砕される。適切な時間(これは、当業者が容易に決めることができる)の後、添加剤を添加し、典型的には最後に架橋系を添加する。その混合は温度制御下で実施するが、ただし、混合物が、100〜150℃の範囲の温度に適切な時間滞留するようにする。適切な混合時間の後に、インターナルミキサーのガス抜きをし、シャフトをきれいにする。さらなる時間の後に、インターナルミキサーを空にして、加硫可能な混合物を得る。上述の時間はすべて、典型的には数分の範囲であり、当業者であれ製造する混合物に合わせて問題なく決めることができる。混合ユニットとしてローラーを使用するのであれば、同様の方法および順序で、計量仕込みを進行させることが可能である。本発明はさらに、本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物を製造するためのプロセスも提供し、それが特徴としているのは、本発明の水素化ニトリルゴムを含む加硫可能な混合物を加硫にかけることである。加硫は、典型的には100℃〜200℃の範囲の温度、好ましくは120℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃の温度で実施する。
成形プロセスの際に加硫を行わせるのが好ましい。
この目的のためには、押出機、射出成形系、ローラーまたはカレンダーによって、加硫可能な混合物をさらに加工する。次いで、そのようにして得ることが可能な予備成形した物質を、典型的には、プレス、オートクレーブ、加熱空気系、または自動マット加硫系(automatic mat vulcanization system)と呼ばれる系の中で完全に加硫させ、そこでの有用な温度は、120℃〜200℃、好ましくは140℃〜190℃の範囲であることが見いだされた。その加硫時間は、典型的には1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。加硫物の形状およびサイズによっては、完全な加硫を得るために、再加熱による第二の加硫が必要になることもある。
したがって、本発明は、本発明の水素化ニトリルゴムをベースとし、好ましくは成形の形態で、そのようにして得ることが可能な加硫物も提供する。それらの加硫物は、伝動ベルト、ローラーカバー、シール、キャップ、ストッパー、ホース、床仕上材、シーリングマット、またはシート、形材もしくは膜の形状をとることができる。さらに詳しくは、それらの加硫物は、以下のものであってよい:O−リングシール、フラットシール、シャフトシーリングリング、ガスケットスリーブ、シーリングキャップ、ダスト保護キャップ、コネクターシール、断熱ホース(添加PVCの存在下または非存在下)、オイルクーラーホース、空気吸込ホース、パワーステアリングホース、靴底もしくはその部品、またはポンプの膜。
驚くべきことには、本発明によって、所望の性能プロファイルを有する加硫物を得ることが可能となった。
I.分析法
以後において記載する方法は、本出願に具体的に含まれている実施例の場合に採用されたものであるが、本明細書の一般的な記述にも適した方法を開示したのと同じであることは明らかである。
ニトリルゴム中または水素化ニトリルゴム中の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(Vulkanox(登録商標)KB)の定量的な測定は、内部標準(ナフタレン)を使用したガスクロマトグラフィーにより実施する。測定のためには、3〜5gのポリマー(測定精度、0.01g)を、密閉可能なErlenmeyerフラスコ内で40mLのトルエン/THF混合物(容積比、1:1)中に撹拌しながら溶解させる。(5mLのトルエンに溶解させた)20.0mgの内部標準としてのナフタレンを、その溶液に添加し、撹拌によって均質に分散させる。80mLのメタノールを添加することにより、ポリマーを沈殿させる。そのセラムをガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies(Waldbronn,Germany)、機器:6890)により分析し、機器の設定条件は次の通りである:
キャピラリーカラム:HP−5、長さ:30m;内径0.32mm;膜厚:0.25μm
注入量:1μL
注入温度:320℃
オーブン温度プログラム:100℃、加熱速度:10℃/分、300℃まで
検出器温度:300℃。
これらの条件下では、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールでは3.4分の保持時間、ナフタレンでは6.44分の保持時間であることが見出された。
同じ条件下での独立した測定において、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの含量を計算するための基準として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールのナフタレンに対する相対的な応答比を測定する。
ニトリルゴム中の2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(Vulkanox(登録商標)BKF)の定量的な測定は、内部標準(n−ドコサン)を使用したガスクロマトグラフィーで実施する。測定のためには、3〜5gのポリマー(測定精度、0.01g)を、密閉可能なErlenmeyerフラスコ内で40mLのトルエン/THF混合物(容積比、1:1)中に撹拌しながら溶解させる。(5mLのトルエンに溶解させた)50.0mgの内部標準としてのn−ドコサンを、その溶液に添加し、撹拌によって均質に分散させる。80mLのメタノールを添加することにより、ポリマーを沈殿させる。そのセラムをガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies(Waldbronn,Germany)、機器:6890)により分析し、機器の設定条件は次の通りである:
キャピラリーカラム:HP−5、長さ:30m;内径0.32mm;膜厚:0.25μm
注入量:1μL
注入温度:320℃
オーブン温度プログラム:240℃、10分、加熱速度:20℃/分、300℃まで
検出器温度:300℃。
これらの条件下では、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)では5.96分の保持時間、n−ドコサンでは3.70分の保持時間であることが見出された。
同じ条件下での独立した測定において、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の含量を計算するための基準として、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)のn−ドコサンに対する相対的な応答比を測定する。
揮発性画分は、ISO 248,4th editon,version 15.06.2005に従って求めた。水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン含量は、以下のようにして測定した:乾燥させた後に、2.5gの水素化ニトリルゴムを切断してトウモロコシの粒のサイズの小片とし、それらを±1mgの精度で秤量し、密閉可能な100mLのガラス容器に入れた。その水素化ニトリルゴムを、25mLのアセトンに撹拌(約2〜3時間)しながら完全に溶解させる。内部標準としての1,2−ジクロロベンゼン(2mLのアセトン中に0.25mg溶解させた)の所定量を、この溶液に添加し、混合する。40mLのメタノールを添加することにより、ポリマーを凝集させる。その後で、メタノールを用いて、その容器内容物を100mLとする。
クロロベンゼンは、ガスクロマトグラフィー(HP 5890 II)で、石英キャピラリーカラムおよびフレームイオン化検出器により測定する。その石英キャピラリーカラムは、以下の特性を有している:長さ:25m;直径:0.32mm、表面被覆:ポリジメチルシロキサン、層厚み:1.05マイクロメートル。測定のためには、5mLのポリマーを含まない溶液を、ガスクロマトフラフ(注入器温度:270℃)に注入する。使用するキャリヤーガスは、流速2mL/分の水素である。カラム温度は、開始温度60℃から、10℃/分で110℃にまで、次いで25℃/分で310℃にまで昇温させる。カラムは、310℃で8分間保持する。これらの条件下では、クロロベンゼンおよび1,2−ジクロロベンゼンについては、それぞれ2.364分および5.294分の保持時間であることが見出される。クロロベンゼン含量を計算するために、クロロベンゼンと1,2−ジクロロベンゼンの所定の量の面積比を、それぞれ独立の測定で求める。
ゲル含量を測定するためには、250mgの水素化ニトリルゴムを、25mLのメチルエチルケトンに撹拌しながら25℃で24時間かけて溶解させた。20000rpm、25℃での超遠心法によって不溶性画分を除去し、乾燥させ、重量測定した。ゲル含量は、出発重量を規準にした重量%で報告する。本発明により製造された製品では、それは2.5重量%未満である。
カルシウム含量を測定するためには、0.5gのニトリルゴムを、白金るつぼ中550℃で乾式灰化により加熱分解させ、次いでその灰分を塩酸中に溶解させた。脱イオン水を用いてその加熱分解物の溶液を適切に希釈してから、その酸マトリックスを用いて調節した較正溶液に対して、ICP−OES(誘導結合プラズマ−発光分析)により317.933nmの波長でカルシウム含量を測定した。加熱分解物の溶液中の元素の濃度、および/または使用した測定機器の感度に応じて、使用したそれぞれの波長についてのサンプル溶液の濃度を、較正の直線域にあてはめた(B.Welz,“Atomic Absorption Spectrometry”,2nd Ed.,Verlag Chemie(Weinheim),1985)。
本発明のニトリルゴムの塩素含量は、DIN EN 14582、Method Aに基づき、次のようにして測定する:ニトリルゴムのサンプルを、Parr圧力容器内においてナトリウムペルオキシドおよび硝酸カリウムの溶融物中で、加熱分解させる。そのようにして得られた溶融物を、硫酸を用いて酸性化して、亜硫酸塩溶液を添加する。そのようにして得られた溶液中で、生成した塩化物を、硝酸銀溶液を用いた電位差滴定で測定し、塩素として計算する。
未加硫のニトリルゴムまたは未加硫の水素化ニトリルゴムのムーニー粘度は、DIN 53523/3またはASTM D1646に従って、剪断ディスク粘度計中100℃で測定した。乾燥させた未老化のニトリルゴム、または未老化の水素化ニトリルゴムのムーニー粘度を、以後においては、MV0と呼ぶ。
未加硫のニトリルゴムまたは未加硫の水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性を測定するために、ミルドシートを、空気循環乾燥キャビネット(この空気循環乾燥キャビネット内では標準空気と比較して変わらない酸素含量である)内に保存し、次いでムーニー粘度を測定する。未加硫のニトリルゴムまたは未加硫の水素化ニトリルゴムのミルドシートは、100gの対応するゴムを、ロールミル(Schwabenthan Polymix 110、間隙幅:0.8〜1.0mm、回転速度:25min−1/30min−1)上で、室温でロールがけすることによって得たものである。そのシートから長方形の断片(40〜50g)を切り出し、空気循環乾燥キャビネット中、底部をTeflonフィルムで被覆したアルミニウム皿(10cm/15cm)の上で保存する。100℃で48時間保存した後で測定したムーニー値は、MV1と呼ばれる。100℃で72時間保存した後で測定したムーニー値は、MV2と呼ばれる。貯蔵安定性(SS)は、加熱空気貯蔵の前後におけるムーニー値の差として求めた。
SS1(48h/100℃)=MV1−MV0
SS2(72h/100℃)=MV2−MV0
100℃で48時間の貯蔵の過程で、ムーニー粘度の変化が、5ムーニー単位以下であれば、そのニトリルゴムの貯蔵安定性(SS1)は、典型的に十分である(SS1=MV1−MV0)。
100℃で72時間の貯蔵の過程で、ムーニー粘度の変化が、5ムーニー単位以下であれば、水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性(SS2)は、典型的に十分である(SS2=MV2−MV0)。
II.一連の実施例
実施した例の一覧表を、表1に示す。ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムの加熱乾燥は、真空乾燥キャビネット(以後においては、「VDC」と略す)内、および/または流動床乾燥(以後においては、「FB」と略す)によって実施した。表1においては、本発明の水素化ニトリルゴムに関わる実験には、「*」印を付けている。「分子量調節剤」の列において、「LXS」は、Lanxess Deutschland GmbH製のtert−ドデシルメルカプタン(「TDM」)を、「CP」は、Chevron Phillips製のtert−ドデシルメルカプタンを表している。
表1の読み取り方については、1つのケースを用いて以後において説明する。
実施例1.6(表4参照)において乳化重合させ、所定の老化安定剤を加えることによって製造されたニトリルゴムを実施例2.6において最初に使用し、その置換フェノール含有NBRを真空乾燥キャビネット中で乾燥させ(表5参照)、次いで得られた置換フェノール含有NBRを水素化し、実施例4.5に従って、それを真空乾燥キャビネット中で乾燥させるか、あるいは、実施例5.6に従って、流動床乾燥によって乾燥させた(表8参照)。
Figure 2017504696
II.1.NBRラテックスAおよびBの製造
以下の表2に記載された配合に基づいて、2種のNBRラテックス(AおよびB)を乳化重合により製造した。その2種の製造配合は、使用したtert−ドデシルメルカプタンが違っているだけである(Lanxess Deutschland GmbHまたはChevron Phillips)。すべての供給原料は、100重量部のモノマー混合物を基準にした重量部で表されている。
Figure 2017504696
表2では、tert−ドデシルメルカプタンに2つの値を与えている。これは、tert−ドデシルメルカプタンの全量を、2つに分けて添加したことを意味している。tert−ドデシルメルカプタンの第一の部分は、最初に、重合を開始させる前に仕込んだものであり、それに対して残りの量は、重合転化率15%のところで計量仕込みした。
NBRラテックスAおよびBはそれぞれ2mの撹拌オートクレーブ中、バッチ式で製造した。バッチのそれぞれにおいては、350kgのモノマー混合物と、全量で700kgの水とを使用した。オートクレーブには、最初に、600kgの量の水中の乳化剤のErkantol(登録商標)BXG(9.8kg)、Baykanol(登録商標)PQ(2.94kg)およびココヤシ脂肪酸のカリウム塩(1.96kg)を180gの水酸化カリウムと共に仕込み、窒素気流を用いてパージした。窒素パージが終了した後、安定剤を除去したモノマー(196kgのブタジエンおよび154kgのアクリロニトリル)およびtert−ドデシルメルカプタンの一部(バッチAでは1.54kg、バッチBでは1.16kg)を反応器に添加した。その後で、反応器を閉じた。残りの量の水(100kg)を使用して、トリス(α−ヒドロキシエチル)アミン、ペルオキソ二硫酸カリウムの水溶液、および重合停止剤溶液を製造した。950gのペルオキソ二硫酸カリウム(表1によれば0.27重量部に相当する)および530gのトリス(α−ヒドロキシエチル)アミン(表1によれば0.15重量部に相当する)の水溶液を添加することによって、重合が20℃で開始され、全重合時間の間、この温度を維持した。転化率を重量分析することにより、それぞれの場合での重合の進行をモニターした。重合転化率15%のところで、表1に記載されているように、さらなる1.54kgのLanxess製tert−ドデシルメルカプタン(バッチA)、またはさらなる1.16kgのChevron Phillips製tert−ドデシルメルカプタン(バッチB)(それぞれ0.44重量部および0.33重量部に相当する)を計量添加した。7時間の重合時間の後、亜ジチオン酸ナトリウム/N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)および水酸化カリウムの水溶液を添加することによって、重合を停止させた。重合転化率は、75%(ラテックスA)および76%(ラテックスB)であった。水蒸気蒸留によって、未転化モノマーおよびその他の揮発性成分を除去した。
このようにして得られたラテックスの特性データを以下の表3にまとめた。
Figure 2017504696
II.2.NBRラテックスAおよびBの仕上げ
凝集の前に、表3の記載に従って、NBRラテックスAおよびBを、各種の量の4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノール(Vulkanox(登録商標)KB、Lanxess Deutschland GmbH製;本発明の構造)、または2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(Vulkanox(登録商標)BKF、Lanxess Deutschland GmbH製、本発明ではないフェノール系老化安定剤)と混合した。この目的のためには、Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKFの水中50%分散体を使用した。
Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKFの水性分散体は、以下の配合に基づき、Ultraturraxを利用して95〜98℃で調製した:
360g:脱イオン水(DW水)
40g:アルキルフェノールポリグリコールエーテル(NP(登録商標)10乳化剤、Lanxess Deutschland GmbH製)
400g:Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKF、Lanxess Deutschland GmbH製。
Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKFの添加は、ラテックス中に存在させる固形分をベースとしたものであって、重量%で記載されている。
Vulkanox(登録商標)KBまたはVulkanox(登録商標)BKFを含むラテックスを凝集させる前に、それぞれの場合において適当量の水を加えることによって、ラテックスの固形分含量を、20重量%に調節した。
NBRラテックスを凝集させるためには、塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウムの水溶液を使用した。塩化ナトリウム水溶液は20%溶液であり、その製造には通常の水道水(脱イオン化されていないため、カルシウムイオンを含んでいる)を使用した。塩化マグネシウム水溶液は26%溶液であり、その製造には通常の水道水(脱イオン化されていないため、カルシウムイオンを含んでいる)を使用した。
沈殿のために使用した、塩溶液の濃度および塩の量は、それぞれ結晶水を除いて計算し、ラテックス中に存在する固形分を基準にしたものである。
ニトリルゴムを安定化させるために使用された老化安定剤およびそれらの量、ラテックスの凝集のために使用した塩、その塩の溶液の濃度、NBRゴムに基づいて使用した塩の量、凝集温度、洗浄温度および洗浄時間を、表形式でまとめて表4に示した。
Figure 2017504696
NBRラテックスの仕上げは、入口と出口を備えた、容量200Lの撹拌可能な解放容器内でバッチ式で実施した。その出口は、2本の平行したレールを使用した篩網(メッシュサイズ、2mm)によって閉じて、洗浄操作の際にラテックスの凝集で得られたゴムのクラムが洗い出されないようにした。
凝集の場合、それぞれの場合において100%の収率のときに25kgの固形分が得られるように計算した量のラテックスを使用した。最初にラテックスを凝集容器に仕込み、加熱して60℃とし、撹拌しながら塩の水溶液を少しずつ添加することによって凝集させた。ラテックスの凝集が完了したら、ゴムのクラムを、セラムをあらかじめ除去することなく、希釈洗浄法によって洗浄した。クラムを洗浄するためには、60℃に加熱した通常のカルシウムイオン含有の水道水(「SW」)を使用し、洗浄水の流出を一定(200L/h)とした。
洗浄が終了してから、ゴムのクラムを篩網と共に抜き出し、ウェルディングスクリュー(welding screw)で予備脱水にかけて、残存湿分を15〜25重量%とした。表5にまとめた、それに続くニトリルゴムの加熱乾燥を、真空乾燥キャビネット中70℃でバッチ式で実施すると、残存湿分が1.0重量%未満となった。
このようにして得られたニトリルゴムを、4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、カルシウム、および塩素の含量、ならびにそれらの貯蔵安定性(SS1)の測定を行って、分析的な特性解析をした(表5)。
表5では、ラテックスに添加された4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノールおよび2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の量は、真空乾燥キャビネット内での乾燥の場合、仕上げ作業と乾燥をさせたニトリルゴム中には、92〜103%の回収率で回収されていることを示しており、従って、選択された乾燥条件下では、使用された4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノールおよび2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の量の10%未満のみが失われている。
Figure 2017504696
表5において、ニトリルゴム中の分析的に検出可能な4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノール含量が、0.5〜1.49重量%の範囲であれば、そのニトリルゴムは、十分な貯蔵安定SS1(100℃で48時間保存後のムーニー粘度の上昇が5ムーニー単位未満である)を有していることも示されている。
さらなる実験シリーズにおいては、選択されたニトリルゴムを、機械的脱水および粉砕の後で、流動床乾燥により熱的に乾燥させて、1重量%未満の残存湿分とした。この目的のためには、Kurt Retsch(Haan/Duesseldorf)製の、容量6Lの乾燥ベッセルを備えた流動床ドライヤー(TG 200高速ドライヤー)を使用した。乾燥操作では、それぞれの場合において、0.5kgの湿ったニトリルゴムを使用した。すべての実験において、加熱空気の流速は、100m/h一定に保った。流動床乾燥の温度および滞留時間は変化させた(表6)。
Figure 2017504696
表6からは、流動床上の乾燥によって、本発明のフェノール系老化安定剤として4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノールを使用した場合には、42〜53%にまでの低下をもたらすことが分かり、このことは、流動床乾燥を選択された条件下で採用したときに、使用された4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノールの量の47〜58%が失われていることを意味している。同一の仕上げおよび乾燥条件下では、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の損失は、わずかに約1重量%である。
II.3.水素化ニトリルゴムの製造
II.3.1.水素化
水素化のために使用したニトリルゴムについての製造条件、および水素化後に得られた非本発明および本発明の水素化ニトリルゴムの呼称の概要が、表1に与えられている。水素化のためには、真空乾燥キャビネット中で熱的に乾燥されたニトリルゴムをもっぱら使用した。すべての水素化において、190barの水素圧、120℃〜130℃の温度、17.5重量%の固形物含量で実施し、100gのニトリルゴムを基準にして(phr)、触媒として0.15重量%のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(Evonik−Degussa)、および助触媒として0.2phrのトリフェニルホスフィン(Merck Schuchardt OHG;カタログNo.8.08270)を使用して、水素化を実施した。
それぞれの水素化において、40Lのオートクレーブ中で、5.25kgのニトリルゴムを、24.25kgのクロロベンゼンに溶解させた。水素化の前に、ポリマー溶液を、撹拌しながら、連続的に窒素(20bar)を用いて1回、および水素(20bar)を用いて2回接触させてから、減圧した。その反応混合物を加熱して120℃とし、190barの水素と接触させた。次の工程において、10.5gのトリフェニルホスフィン助触媒を、250gのクロロベンゼン中の溶液として、計量注入した。250gのクロロベンゼンに溶解させた7.875gのトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリドを添加することによって、水素化を開始させた。反応の減退を伴いながら、内部温度は徐々に上昇して130℃となった。水素の吸収を測定することによって、水素化の過程をオンラインで実施した。99.4±0.2%の水素化レベルになったところで、その反応混合物を冷却することによって、水素化を停止させた。次いで、そのバッチを減圧した。窒素を通過させることによって、残存している量の水素は除去した。水素化が終了した後で、以下の文献記載の方法で正確な水素化レベルを求めた:Kautschuk+Gummi.Kunststoffe,vol.42(1989),no.2,107−110、およびKautschuk+Gummi.Kunststoffe,vol.42(1989),no.3,194−197。
実施例6.12および6.16においては、米国特許第A4,985,540号明細書に従って、ロジウムの除去を実施した。この目的のためには、固形分濃度が5.0%になるまでポリマー溶液を希釈してから、ロジウムを除去した。
II.3.2.水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン溶液からの単離
クロロベンゼン溶液からの水素化ニトリルゴムの単離は、バッチ式で、大気圧下の水蒸気蒸留により実施した。この目的のためには、撹拌可能な、ジャケット加熱つきの20Lガラスフランジ容器を使用した。スチームは、底部のバルブからフィードした。さらに、その20Lのフランジ容器には、HNBRのクロロベンゼン中溶液に、カルボキシル基を含む水溶性ポリマー(Orotan(登録商標)、Rohm and Haas製)の2%水溶液、2%塩化カルシウム水溶液、および希水酸化ナトリウム溶液(0.5%)を連続的に計量添加するための器具が備わっていた。
ロジウムの除去を実施しない実施例においては、水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン溶液を希釈して、固形分濃度10重量%とした。製品6.12および6.16(ロジウム除去)のクロロベンゼン溶液の濃度は、5重量%であった。すべての実施例において、クロロベンゼン溶液は、95〜100℃に加熱した後に、20Lのフランジ容器にフィードした。水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、水相のpHは、蒸留プロセス全体にわたって、7.7〜8.3のpH範囲内に維持された。
20Lのフランジ容器には、8Lの脱イオン水を最初に仕込んで、ジャケット加熱によって98〜100℃にまで加熱した後で、スチームを導入した。次いで、2000rpmの撹拌速度で、水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン溶液(0.5kgHNBR固形分/h)、ならびにOrotan(登録商標)および塩化カルシウムの水溶液の計量添加を開始した。Orotan(登録商標)および塩化カルシウムの計量添加速度は、いずれの場合においても、そのストリッピング容器内に存在している水素化ニトリルゴム量の100重量部を基準にして、いずれの時点でも、0.3重量部のOrotan(登録商標)および0.15重量部の塩化カルシウムが存在しているように調節した。水蒸気蒸留は、大気圧下、98〜100℃で実施した。留出したクロロベンゼンおよびスチームの蒸気を凝縮させ、集めた。いずれの場合においても、ストリッピング容器内に1.5kgのHNBRが存在するようになったらすぐに、HNBR溶液の計量添加は終了させた。その後、水蒸気蒸留をさらに0.5時間継続した。水素化ニトリルゴムは、水性分散体中に、直径範囲3〜10mmのゴムクラムの形態で存在していた。フランジ容器を開けた後、篩網によりゴムクラムを抜き出した。残存している水は、ドリップ−乾燥およびスクイージング(sqeezing)により除去した。
水素化ニトリルゴムの本発明ではない加熱乾燥は、真空乾燥キャビネット中、70℃で、23℃の空気を導入しながら、恒量になるまで実施した。
水素化ニトリルゴムの加熱乾燥は、流動床乾燥により、表8に記載された条件下で実施した。
乾燥させたHNBRサンプルを使用して、揮発性の画分含量、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの含量、クロロベンゼン含量、ゲル含量、および貯蔵安定性を求め、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの損失を計算した。
II.3.3.未加硫の水素化ニトリルゴム(HNBR)の性質
本発明ではない未加硫の水素化ニトリルゴムの性質を表7にまとめた。
Figure 2017504696
表7において、真空乾燥キャビネット内での乾燥の場合においては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの損失が0〜6%であることが分かる。この方法で得られた本発明ではない水素化ニトリルゴムは、100℃で3日の保存の後(SS2)では、0.45〜1.15重量%の範囲の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール含量の場合には、十分な貯蔵安定性を有していた。揮発性画分の含量が0.1〜0.3重量%の範囲であり、クロロベンゼン含量が50ppm未満〜106ppmの範囲であり、およびゲル含量が0.73〜1.20重量%の範囲である。
水素化ニトリルゴムの本発明の乾燥は、Kurt Retsch(Haan/Duesseldorf)製の流動床ドライヤー(TG 200高速ドライヤー)で実施した。その容器は、6Lの容量を有しており、いずれの場合においても、0.5kgのゴムクラムを仕込んだ。すべての実験において、加熱空気の流速は、100m/h一定に保った。流動床乾燥の温度および滞留時間は変化させた(表8)。
本発明による流動床乾燥によって仕上げたゴムクラムは、表8にまとめた性質を有している。
Figure 2017504696
表8からは、水素化ニトリルゴムの流動床乾燥の場合においては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの回収率は、20〜69%の範囲であり、従って、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの損失が31〜80%であることが分かる。得られた本発明の水素化ニトリルゴムは、0.16〜0.4重量%の範囲の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール含量を有していた。揮発性画分の含量が0.1〜0.3重量%の範囲であり、クロロベンゼン含量が50ppm未満〜175ppmの範囲であり、およびゲル含量が0.78〜1.47重量%の範囲である。本発明の水素化ニトリルゴムは、100℃で3日間の保存の後(SS2)でも、貯蔵安定性がある。
II.4.水素化ニトリルゴム(HNBR)をベースとする加硫可能な混合物の製造、組成、および特性
水素化ニトリルゴムの加硫物特性を評価する目的で、表9に記載された組成を有するゴム混合物を、容量1.5Lのインターナルミキサー(GK 1,5、Werner&Pfleiderer(Stuttgart)製)で製造し、そのミキサーは、予熱して50℃としておき、かみ合い式の混練要素(PS 5Aパドル形状)を有していた。表9に記載されたシーケンスに従って、混合物の構成成分を添加した(成分8、「ペルオキシド」を除く)。ペルオキシドは、50℃未満のミルドシート温度で、冷却したローラーの上での、二次混合工程で混合した。
Figure 2017504696
ゴム混合物の加工特性を評価する目的で、100℃でのムーニー粘度(ML1+4/100℃)および120℃でのムーニー粘度(ML1+4/120℃)を、未加硫ゴム混合物についてASTM D1646に従い測定した(表10、11および12)。
加硫および加硫物特性:
加硫物の特性試験に必要な試験片は、混合物を、120barの油圧下で180℃で18分かけてプレス加硫することにより得た。特性試験をする前に、その加硫させた後の試験片を、空気の下、加熱したキャビネット中、150℃で17h保存した。
加硫物を使用して、以下の標準に基づいて、以下の性質を測定した:
DIN 53505:ショアーA硬度(23℃および70℃)
DIN 53504:応力値、50%伸び(σ50)、100%伸び(σ100)、200%伸び(σ200)および300%伸び(σ300);引張応力および破断時伸び(ε
DIN 53512:レジリエンス(23℃、70℃)
DIN 53517:圧縮永久歪み(CS);円筒状の試験片(初期寸法、高さ:6.3mm;直径:13mm)を25%圧縮して、70h/23℃または70h/150℃で保存した後、23℃で測定。
Figure 2017504696
表10からは、0.45〜1.15重量%の範囲の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール含量を有する、本発明ではない水素化ニトリルゴムの加硫物は、低いレベルの弾性率値(σ200≦17.5MPa、およびσ300≦26.1MPa)および貧弱な圧縮永久歪み値(>35%)を有していることが分かる。表10からはさらに、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール含量が高くなるにつれて弾性率レベルと圧縮永久歪みとの両方が劣化することも分かる。
Figure 2017504696
表11からは、0.16〜0.40重量%の範囲の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール含量を有する本発明の水素化ニトリルゴムをベースにすると、表10の本発明ではない実施例よりは良好な性質を有する加硫物が得られることが分かる。具体的には、以下のことが見出された:σ200>18.0MPa、およびσ300>27.0MPa、ならびにより低く、良好な圧縮永久歪み値≦34%。
下記(表12)のシリーズにおいては、Vulkanox(登録商標)KBを、本発明によって製造された水素化ニトリルゴム5.5に、加硫前に、混合物の製造の際に、0.5および1.0phrの量で添加し、それらの添加が、加硫物特性に及ぼす影響を調べた。混合物の製造、加硫、および加硫物の試験における条件は、先に記載した条件と同じであった。
表12における実験において、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加すると、水素化ニトリルゴムの加硫物特性(弾性率レベルおよび圧縮永久歪み)が悪化することが分かる。
Figure 2017504696

Claims (16)

  1. 水素化ニトリルゴムであって、一般式(I)
    Figure 2017504696
    (式中、
    、R、R、R、およびRは同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ヒドロキシル、1〜8個の炭素原子と、さらに、好ましくは酸素である1個、2個もしくは3個のヘテロ原子とを有する直鎖状、分岐状、環状、または芳香族のヒドロカルビル基であり、ここで、前記R、R、R、R、およびR基の少なくとも1つは水素ではない)
    の少なくとも1種の置換フェノールを、それぞれの場合において前記水素化ニトリルゴムを規準にして、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量で含む、水素化ニトリルゴム。
  2. 、R、R、R、およびRが同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、n−ブチルもしくはt−ブチル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシもしくはプロポキシ、C〜Cシクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、またはフェニル基であり、ここで、前記R、R、R、R、およびR基の少なくとも1つは水素ではないことを特徴とする、請求項1に記載の水素化ニトリルゴム。
  3. 前記R、R、R、R、およびR基の2つまたは3つが水素であり、かつ前記R、R、R、R、およびR基の他の2つまたは3つが同一であるか、または異なっており、およびそれぞれヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、n−ブチルもしくはt−ブチル、直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシもしくはプロポキシ、C〜Cシクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、またはフェニル基であることを特徴とする、請求項2に記載の水素化ニトリルゴム。
  4. 前記一般式(I)の前記少なくとも1種の置換フェノールが以下の化合物:
    Figure 2017504696
    からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水素化ニトリルゴム。
  5. 少なくともアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導される繰り返し単位、好ましくはもっぱらアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導されるか、あるいはアクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種もしくは複数のα,β−不飽和モノもしくはジカルボン酸、またはそれらのエステルもしくはアミドから誘導される繰り返し単位、特にはもっぱらアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導されるか、あるいはアクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数の、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルおよび(メタ)アクリル酸ラウリルからなる群から選択されるα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルから誘導される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  6. 次式
    SS2(72h/100℃)=MV2−MV0
    (式中、
    MV0は、前記水素化ニトリルゴムについてASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃であり、および
    MV2は、前記同一の水素化ニトリルゴムについて、100℃で72時間保存した後にASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃である)
    で定義される前記水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性SS2が5未満の値を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  7. 前記水素化ニトリルゴムの水素化度が、94.5%超〜100%の範囲、好ましくは95〜100%の範囲、より好ましくは96〜100%の範囲、さらにより好ましくは97〜100%の範囲、特には98〜100%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  8. 前記水素化ニトリルゴムの水素化度が、99.1%以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセスにおいて、前記一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、前記ニトリルゴムを規準にして、好ましくは0.5〜1重量%の範囲で含むニトリルゴムが、溶液中で水素化にかけられ、次いで溶媒が除去され、および前記水素化ニトリルゴムが単離および脱水され、ここで、前記一般式(I)の置換フェノールの含量が、0.01重量%〜0.45重量%未満、好ましくは0.05重量%〜0.43重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.41重量%、特には0.15重量%〜0.4重量%の範囲の量に設定されるように調節されることを特徴とする、プロセス。
  10. 水素化触媒として、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ヒドリドロジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、または対応する化合物であって、その中のトリフェニルホスフィンが全体的または部分的にトリシクロヘキシルホスフィンで置換された対応する化合物が使用されることを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
  11. 好ましくはローラー乾燥プロセスもしくはスクリュープロセスによる乾式仕上げか、あるいは好ましくは水蒸気蒸留、より好ましくは水蒸気蒸留とそれに続いての、流動床ドライヤーによるか、またはエクスペラー−エキスパンダードライヤーでの単離されたゴムクラムの乾燥とによる湿式仕上げかのいずれかにより、前記溶媒が除去されることを特徴とする、請求項9または10に記載のプロセス。
  12. 前記仕上げプロセスがそれぞれ、前記水素化ニトリルゴム中に存在している前記一般式(I)の前記置換フェノールが、前記水素化のために使用された前記ニトリルゴムからの前記一般式(I)の前記置換フェノールの量を規準にして、20〜98重量%の程度まで除去されるように実施されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
  13. 前記流動床ドライヤーが、好ましくは、5〜50重量%の水分含量を有する前記水素化ニトリルゴムのクラムを通過する、100〜180℃、特には110℃〜150℃の温度を有する空気流により、連続的に運転されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
  14. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水素化ニトリルゴムと、少なくとも1種の架橋剤および任意選択的に1種または複数の架橋促進剤を含む少なくとも1種の架橋系とを含む、加硫可能な混合物。
  15. 加硫物を製造するためのプロセスであって、請求項14に記載の加硫可能な混合物が、好ましくは成形プロセスの過程で、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜190℃、特に好ましくは130℃〜180℃の範囲の温度で加硫されることを特徴とする、プロセス。
  16. 好ましくは成形体の形態、より好ましくは伝動ベルト、ローラーカバー、シール、キャップ、ストッパー、ホース、フロアカバー、シーリングマットもしくはシート、形材、または膜の形態である、請求項15に記載のプロセスによって得ることが可能な加硫物。
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