JP6309633B2 - ホスフィンスルフィドおよびジホスフィンスルフィドを含む水素化ニトリルゴム - Google Patents

ホスフィンスルフィドおよびジホスフィンスルフィドを含む水素化ニトリルゴム Download PDF

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Description

本発明は、ホスフィンまたはジホスフィンの含量がゼロであるか、またはその含量が非常に低いかのいずれかであり、ホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドをさらに含む水素化ニトリルゴム、それらを製造するための方法、それらの水素化ニトリルゴムをベースとする加硫可能な混合物、ならびにその方法で得られる加硫物に関する。
ニトリルゴムは、少なくとも1種の不飽和ニトリルモノマー、少なくとも1種の共役ジエン、および任意選択的に1種または複数の共重合性モノマーのコポリマーおよびターポリマーである。ニトリルゴムを製造するためのプロセス、および適切な有機溶媒中でニトリルゴムを水素化するプロセスは、文献からも公知である(たとえば、(非特許文献1))。
水素化ニトリルゴムは、略して「HNBR」とも呼ばれており、ニトリルゴム(これも略して「NBR」と呼ばれる)から水素化によって得られるゴムを意味していると理解されたい。したがって、HNBRにおいては、共重合されたジエン単位のC=C二重結合は、完全にもしくは部分的に水素化されている。共重合されたジエン単位の水素化のレベルは、典型的には、50〜100%の範囲内である。当業者の間では、残存二重結合含量(「RDB」)が約0.9%以下であれば、「完全水素化タイプ」と呼んでいる。市場において商業的に入手可能なHNBRは、典型的には、10〜120ムーニー単位の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。
水素化ニトリルゴムは特殊ゴムであり、極めて良好な耐熱性、極めて良好な耐オゾン性および耐薬品性、ならびに優れた耐油性を有している。上述のHNBRの物理的および化学的性質が、極めて良好な機械的性質、特に高い耐摩耗性と組み合わさっている。
この性能プロファイルが理由で、HNBRは、広く各種の用途分野において、各種の使用法が見出されてきた。HNBRは、たとえば以下の分野において使用されている:自動車分野におけるシール、ホース、伝動ベルト、ケーブルシース、ローラーカバーおよび制震要素、ならびに採油分野におけるステーター、ウェルシールおよびバルブシール、航空産業、電気産業、機械工学および造船における各種の部品。
大きな役割を果たしているのは、特に高温で長期間保存した後で高い弾性率レベル(各種の伸びでの応力値として測定)および低い圧縮永久歪みを有する、水素化ニトリルゴムの加硫物である。この性能の組合せが、長期間、おそらくは高温を受けた後も含めて、そのゴム物品が動的応力下および静的応力下のいずれにおいても機能する、高い弾性力を要求される使用分野において重要である。このことは、たとえば、以下の各種のシールに特にあてはまる:O−リング、フランジシール、シャフトシールリング、ローター/ステーターポンプにおけるステーター、バルブシャフトシール、ガスケットスリーブ、たとえば軸ブーツ、ホースシール、エンジンベアリング、ブリッジベアリング、およびウェルシール(ブローアウトプリベンター)。さらに、高い弾性率を有する加硫物は、たとえば以下のものにおいて重要である:動的応力を受ける物品、特に伝動ベルトおよび制御ベルト、たとえば歯付きベルトなどのベルト、さらにはローラーカバー。
HNBRベースの加硫物の特に弾性率レベルおよび圧縮永久歪みに関連した機械的性質において、現在のところ得られるレベルは依然として不十分である。
均質に溶解するロジウムおよび/またはルテニウムの水素化触媒を用いてニトリルゴムを水素化する場合には、助触媒としてホスフィンまたはジホスフィンを添加することが有用であることは見出されている。トリフェニルホスフィン(「TPP」)を使用するのが好ましい。このような助触媒の使用は、多くのプラスの効果を有しており、水素化に必要な圧力を下げることが可能となり、さらには、水素化速度(空間/時間収率)が増大し、水素化に必要な水素化触媒の量の削減を達成することができる。しかしながら、水素化ニトリルゴム中に残るホスフィンまたはジホスフィンの残存量が、加硫物の物性、特に弾性率レベルおよび圧縮永久歪みに悪影響を与える。
(特許文献1)には、アクリロニトリル/ブタジエンのランダムコポリマーを水素化するためのプロセスが記載されている。その水素化のためには、一価もしくは三価のロジウム(I)ハライドの錯体を、5〜25重量%のトリフェニルホスフィンと組み合わせて使用し、それぞれの実施例においては10phrのトリフェニルホスフィンを使用している。(特許文献1)では、トリフェニルホスフィンの量を変化させていない。それらの水素化ニトリルゴムをベースとして製造された加硫物、あるいは、物性に関して特性測定された加硫物も何ら提示されていない。(特許文献1)では、水素化後に仕上げ作業をした水素化ニトリルゴム中に残存しているトリフェニルホスフィンの含量についても何らの数値も与えていない。さらには、TPPが、それから製造された加硫物の物性、特に弾性率レベルおよび圧縮永久歪みに影響があるかどうか、あるとすればどのような影響なのかについて何らの実験もされていない。さらに、水素化において使用されたTPPの除去に関しての記載も一切ない。
(特許文献2)では、ペルオキシド加硫によるかまたは硫黄加硫によって得られたHNBRベースの加硫物の圧縮永久歪みが、そのニトリルゴムを、重合後または水素化後に、アルカリ水溶液またはアミンの水溶液と接触させることによって改良される。実施例1においては、溶媒を除去した後に得られるゴムクラムを、各種の濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いた別々の分離プロセス工程で洗浄している。100mLのTHF中に3gのゴムを溶解させ、撹拌しながら1mLの水を添加して得られるTHF水溶液のpHを、アルカリ含量の目安として使用する。そのpHは、ガラス電極により20℃で測定する。低い圧縮永久歪みを有する水素化ニトリルゴムの加硫物を製造するためには、THF水溶液のpHを、5よりも高く、好ましくは5.5よりも高く、より好ましくは6よりも高くするべきである。(特許文献2)においては、水素化において使用されたTPPの量への圧縮永久歪みの依存性について何らの指針も存在せず、水素化後にTPPを除去することによる圧縮永久歪みの改良についての教示もない。
(特許文献3)には、(H)Rh(L)または(H)Rh(L)タイプのロジウム触媒を使用してニトリルゴムを水素化するためのプロセスが記載されている。Lは、ホスフィンまたはアルシンの配位子を表している。水素化のためには、助触媒として配位子の添加が必要でないというのがその水素化プロセスの特徴であり、その水素化は、比較的大量の触媒(2.5〜40重量%)を用いて実施されている。クロロベンゼン溶液から水素化ニトリルゴムを単離するためには、その水素化溶液を冷却し、イソプロパノールを添加することによってゴムを凝集させる。(特許文献3)は、このプロセスの結果として得られる水素化ニトリルゴムの加硫物の物性について何らの情報も与えていない。この理由から、(特許文献3)は、高い弾性率レベルおよび低い圧縮永久歪みを有する加硫物が得られる水素化ニトリルゴムの製造について何らの教示も与えていない。
(特許文献4)には、ペルオキシド架橋後に低い圧縮永久歪みを有する加硫物を与える水素化ニトリルゴムの製造が記載されている。この目的のためには、広く各種の化学構成要素を有するルテニウム触媒が水素化において使用され、C〜Cケトンと二級もしくは三級C〜Cアルコールとの溶媒混合物が水素化において使用されている。その溶媒混合物中の二級もしくは三級アルコールの比率は、2〜60重量%であると述べられている。(特許文献4)によれば、水素化の途中または水素化溶液の冷却の過程で、2相が形成される可能性がある。その結果、所望の水素化レベルが達成されないか、および/または水素化の間に水素化ニトリルゴムがゲル化する。(特許文献4)に記載されているプロセスは、水素化の過程で起きる相分離およびゲル化が、各種のパラメーターに予測不能な状態で依存するために、広く応用することは不可能である。それらのパラメーターには、以下のものが含まれる:アクリロニトリル含量およびニトリルゴム供給原料のモル質量、溶媒混合物の組成、水素化におけるポリマー溶液の固形分含量、水素化レベル、ならびに水素化の際の温度。水素化後のポリマー溶液の冷却の過程、またはポリマー溶液を保存している過程においても、予想外の相分離と、対応するプラント機器および容器の汚染とが起こりうる。
(特許文献5)には、TPPを分子分散体の形態で含む水素化されたカルボキシル化ニトリル/ブタジエンゴムが、エラストマーまたはプラスチックのための架橋剤として、および接着剤として有利に使用できることが示されている。その中でTPPの存在が明白に指摘されている(特許文献5)に基づいても、加硫物の圧縮永久歪みおよび弾性率の改良については、何らの教示も得られない。
(特許文献6)には、NBRをメタセシス分解させるためのプロセスが記載されており、その中では、TPPを添加することによってメタセシス触媒の活性が増大するとされている。メタセシス触媒を基準にして、0.01〜1当量のホスフィン、たとえばTPPが使用されている。この方法で調製した分子量を下げたニトリルゴムは、(特許文献6)によれば、従来技術で公知の方法を使用して水素化させることができる。使用される触媒は、たとえば、TPPなどの助触媒を共存させたウィルキンソン触媒であってもよい。その水素化で得られた水素化ニトリルゴムの、特に弾性率のレベルおよび圧縮永久歪みに関する加硫物の物性およびその最適化については、何らの情報もない。
さらに(特許文献7)においても、ローラーカバーを製造するために使用される加硫物における圧縮永久歪みを低下させるための手段については、何らの記載もない。その目的は、ゴム混合物の製造において多価アルコールのメタクリレート、たとえば、トリメチロールプロパントリメタクリレートを使用することにより達成されている。(特許文献7)は、トリフェニルホスフィンによって生じる悪影響を除去することによって、圧縮永久歪みまたは弾性率が改良されることについて何らの指針も与えていない。
(特許文献8)には、ゴムから低分子量を除去するための限外濾過プロセスが記載されている。この目的のためには、ゴムを有機溶媒中に溶解させ、限外濾過プロセスにかける。このプロセスは、ニトリルゴムから乳化剤の残渣を除去すること、および水素化ニトリルゴムから触媒残渣を除去することの両方に適している。(特許文献8)の実施例2によれば、この方法を利用することによって、水素化ニトリルゴムのリン含量を、1300mg/kgから120mg/kgにまで下げることが可能である。(特許文献8)は、(経済的な点でも高コストでもある)このプロセスが、水素化ニトリルゴムの加硫物の弾性率レベルおよび圧縮永久歪みを可能とするかどうかについて何らの情報も与えていない。
(特許文献9)には、触媒として、ゴム固形分を基準にして0.05〜0.6重量%のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ハライドを用いたNBRを水素化するためのプロセスが記載されており、その中に、やはりゴム固形分を基準にして2重量%以下のトリフェニルホスフィンが添加されている。表3)にある実施例では、トリフェニルホスフィンの量を5重量%にまで上げると、ペルオキシド加硫させた水素化ニトリルゴムの重要な物性において劣化がもたらされることが示されている。たとえば、100%、200%および300%伸びにおける弾性率値、ならびに23℃における硬度が低下している。23℃で70時間、125℃で70時間、および150℃で70時間保存した後での破断時伸びおよび圧縮永久歪みの値が大きくなっている。(特許文献9)の教示に従えば、トリフェニルホスフィンの有害な影響を限定する目的で、水素化において使用されるTPPの量を限定している。不利なことには、その場合、同等の水素化時間を達成するためには、この水素化においてより大量の触媒、したがって高価なロジウム金属を使用することが必要となる。(特許文献9)には、水素化後のTPPの除去について何らの教示もない。
(特許文献10)においては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドロジウムを使用し、モル的にかなり過剰なTPPの存在下でニトリルゴムを水素化している。加硫ゴムの物性に対してTPPが悪影響をおよぼすと予想されるため(第1ページ、第26〜28行:「さらに、ホスフィンがポリマーの加硫で問題を起こすといういくつかの情報が存在する」)、ゴム溶液の水素化後にTPPを除去している。この目的のためには、トリフェニルホスホニウム塩を形成させるのに適した有機ハロゲン化合物、特に臭化メチル、臭化エチル、塩化ベンジル、または臭化ベンジルの等モル量を、温度70℃〜120℃で、4〜8時間かけて添加して、TPPを対応するホスホニウム塩に転化させる。ポリマー溶液を20℃〜40℃にまで冷却させる過程で、ホスホニウム塩を沈殿、析出させ、次いで、濾過法または沈降法によって、そのポリマー溶液から機械的に分離する。トリフェニルホスフィンオキシドが、その発明において製造された水素化ニトリルゴム中と、有機ハロゲン化合物を添加せずに製造した対応する比較例との両方に存在していることが示されている。(特許文献10)に記載されているプロセスは、経済的な見地から不利であり、その理由は、TPPをトリフェニルホスホニウム塩に転化させるためには、タンクを長時間にわたって占有しなければならないからである。さらに、高粘度のポリマー溶液から沈降法または濾過法によってホスホニウム塩を分離するのは、プロセス技術の観点からも複雑である。第二には、生成したトリフェニルホスホニウム塩を分離するためには、混合物を冷却し、さらに希釈しなければならないことも不利である。トリフェニルホスホニウムハライドはさらに、再生不能な方法で結晶化する。多くの場合、それは極めて微細に分散した形態で得られ、そのために溶液からの除去が困難となって、ポリマー溶液からの除去が不完全なものとなり、そのため、必然的に比較的大量の残存トリフェニルホスホニウムハライドが水素化ニトリルゴム中に残ることとなる。このことは、(特許文献10)の実施例2、実験例1)および2)(表1)からも明らかである。実施例2においては、実験例1)および2)のそれぞれにおいて、100gのゴムあたり5.5g(20.87mmol)のTPPが使用されており、実施例2に記載されているTPPの同様のさらなる添加は、定量性の面で理解不能であり、定量的な評価として配慮することはできない。実施例2、実験例1)においては、20.87mmolのTPPが、4mLの臭化メチルと反応されている。密度が3.97g/cmであるとすると、これは、15.88gすなわち167.3mmolの臭化メチル(臭化メチルのモル質量:94.94g/mol)に対応する。換言すれば、実験例1においては、TPPを基準にして8倍モルも過剰の臭化メチルが使用されている。TPPから臭化トリフェニルメチルホスホニウム(モル質量:356.8g/mol)へ定量的に転化されたとすると、その結果、理論的には7.5gの臭化トリフェニルメチルホスホニウムが生成することになる。実験例1)では、わずか3.2gの臭化トリフェニルメチルホスホニウムが単離されているため、これは43%の収率に対応する。さらなるTPPの添加も考慮に入れると、これらは過剰の臭化メチルと反応するため、実施例2、実験例1)において単離される臭化トリフェニルホスホニウムの全体の収率は、40%よりもはるかに低い。実施例2、実験例2においては、5.5g(20.87mmol)のTPPを基準にして、3mLの臭化エチル(密度:1.46g/cm)(4.38g(40.2mmol)に対応する)が使用されている。同様に、定量化することが困難なさらなるTPPの添加を考慮に入れないとすると、7.8gの臭化トリフェニルエチルホスホニウム(モル質量:371.3g/mol)が、5.5gのTPPから理論的には得られている。実施例2、実験例2)に記載されている収量の3.7gは、したがって、最大で47.4%の理論収率に対応する。(特許文献10)に記載されたTPPを除去するための方法においては、実施例2の2つの実験における臭化トリフェニルホスホニウムの分離効率が低いため、かなりの量のトリフェニルホスホニウムハライドが水素化ニトリルゴム中に残り、そのために、加硫物の物性、特にそれらから製造したシールの耐食性に劣化が起きる。(特許文献10)では、加硫物の物性におよぼすTPP除去のプラスの影響は見出されていない。
(特許文献10)の実施例3、表2において、水素化ニトリルゴム中のトリフェニルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンオキシド(「TPP=O」)の含量についての数値が与えられており、それらを次の表にまとめた。
(特許文献10)においては、トリフェニルホスホニウム塩の除去または除去可能性がトリフェニルホスフィンオキシドの生成と関連しているかどうか、トリフェニルホスフィンオキシドがどのようにして生成するのか、およびこれが影響を受けうるかどうかが不明確なままである。さらに、TPP、トリフェニルホスフィンオキシド、ホスホニウムハライド、ならびに除去のために使用された有機ハロゲン化合物残存量が、水素化ニトリルゴムの加硫物の物性にどのような影響を与えるかも不明確なままである。まとめると、(特許文献10)の教示からは、高い弾性率値を有し、低い圧縮永久歪みを有する水素化ニトリルゴムの加硫物がどのようにして製造されるべきかについて推論することは不可能である。
水素化ニトリルゴムの製造に関する膨大な文献が存在しているにも関わらず、第一に、良好な弾性率レベルおよび良好な圧縮永久歪み値を有する加硫物を与え、それにも関わらずそれと同時に、ホスフィンまたはジホスフィンベースの助触媒を少量の触媒と共に使用して、短い反応時間の水素化プロセスによって製造することが可能な水素化ニトリルゴムは、今日にいたるまで存在していない。それぞれの加硫物の物性、特に高温で保存した後での弾性率レベルおよび圧縮永久歪み値に対する、水素化で使用されたホスフィンまたはジホスフィン助触媒の悪影響を回避することが可能である水素化ニトリルゴムは、今日までのところ知られていない。
独国特許出願公開第25 39 132A号明細書 米国特許第A4,965,323号明細書 米国特許第A4,503,196号明細書 独国特許出願公開第A3 921 264号明細書 国際公開第A2004/101671号パンフレット 欧州特許出願公開第A1 894 946号明細書 欧州特許出願公開第A1 083 197号明細書 欧州特許出願公開第A1 524 277号明細書 欧州特許出願公開第A0 134 023号明細書 米国特許第A5,244,965号明細書
Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft(Weinheim),1993,p.255−261およびp.320−324
したがって、本発明が対象としている問題は、極めて良好な弾性率および圧縮永久歪み値(特に後者では、高温で保存した後に)を有する加硫物を与える水素化ニトリルゴムを提供するという問題であった。本発明が対象としている問題はさらに、水素化においてホスフィンまたはジホスフィンを助触媒として使用し、大量のハロゲン化物を除去する必要がないか、またはそれらが水素化ニトリルゴム中に同伴されないように、適切な方法でそれらを無害化することができるようにして、経済的な製造方法によってこれらの水素化ニトリルゴムを提供するという問題であった。
驚くべきことには、水素化ニトリルゴムが、ゼロもしくは低いホスフィンまたはジホスフィン含量および特定のホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィド含量を有するとき、水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物が、特に比較的高温で保存した後において、極めて良好な弾性率値および改良された圧縮永久歪み値の形態での改良された物性を達成できることが見出された。それらの水素化ニトリルゴムは、水素化後に、特定の硫黄供与体との反応によって、水素化において使用されたホスフィンまたはジホスフィンをホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドに転化させることによって、経済的な方法で得ることが可能である。驚くべきことには、そのホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドの含量は、加硫物の物性に悪影響を与えることなく、実際に極めて良好な弾性率および圧縮永久歪み値を有する加硫物を与える。
本発明は、水素化ニトリルゴムであって、
i)水素化ニトリルゴムを基準にして、0〜1.0重量%、好ましくは0〜0.8重量%、より好ましくは0〜0.6重量%、さらにより好ましくは0〜0.5重量%、特には0〜0.4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンの含量、および
ii)水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075〜10重量%、好ましくは0.1〜9重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらにより好ましくは0.3〜6重量%、特には0.4〜5重量%の範囲のホスフィンスルフィド、ジホスフィンスルフィド、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンスルフィドの含量
を含む、水素化ニトリルゴムを提供する。
本発明はさらに、これらの水素化ニトリルゴムの加硫可能な混合物、およびそれらをベースとする加硫物を製造するためのプロセス、さらにはそれらを用いて得ることが可能である、特に成形体の形態の加硫物も提供する。
本発明はさらに、本発明の水素化ニトリルゴムであって、
i)水素化ニトリルゴムを基準にして、0〜1.0重量%、好ましくは0〜0.8重量%、より好ましくは0〜0.6重量%、さらにより好ましくは0〜0.5重量%、特には0〜0.4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンの含量、および
ii)水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075〜10重量%、好ましくは0.1〜9重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらにより好ましくは0.3〜6重量%、特には0.4〜5重量%の範囲のホスフィンスルフィド、ジホスフィンスルフィド、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンスルフィドの含量
を含む、本発明の水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセスであって、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.15〜5重量%の範囲内、好ましくは0.25〜4.75重量%の範囲内、より好ましくは0.3〜4.5重量%の範囲内、さらにより好ましくは0.4〜4.25重量%の範囲内、特には0.5〜4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィンまたはそれらの混合物の含量を有する水素化ニトリルゴムが、相互に直接共有結合された少なくとも2個の硫黄原子を有する少なくとも1種の硫黄供与体と反応させされることによる、プロセスを提供する。
本出願に関連して「置換された(substituted)」という用語が使用された場合、それは、所定の基または原子の上の水素原子が、それぞれの場合において特定される基の1つによって置換されていることを意味しているが、ただし、所定の原子の原子価が過剰にならず、またその置換が安定な化合物を与える場合に限られる。
数多くの化学式が使用されるため、各種の式中に同一の名前または略号を与えられた基が存在し、それぞれの式において、その式に関連してそれぞれの場合で言及される、単に一般的、好ましい、より好ましい、または特に好ましい意味を有している。上述の原則からの例外が適用される場合、そのことは明示的に言及される。異なった化学式中で同一の略号が与えられている基の議論とは別に、本出願および本発明に関連して、パラメーター、定義、または説明のための、一般的な項目として、または好ましい領域として与えられた定義を、相互に各種所望の方法で、すなわち、それぞれの領域および好ましい領域を含めて組み合わせることが可能であり、それらは、本発明の範囲内で開示されていると考えるべきである。
本発明の水素化ニトリルゴム:
本発明の水素化ニトリルゴムは、以下の含量を有している:
i)水素化ニトリルゴムを基準にして、0〜1.0重量%、好ましくは0〜0.8重量%、より好ましくは0〜0.6重量%、さらにより好ましくは0〜0.5重量%、特には0〜0.4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンの含量、および
ii)水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075〜10重量%、好ましくは0.1〜9重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらにより好ましくは0.3〜6重量%、特には0.4〜5重量%の範囲のホスフィンスルフィド、ジホスフィンスルフィド、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンスルフィドの含量。
本発明の水素化ニトリルゴムは典型的に、一般的には80〜100%、好ましくは90〜100%、より好ましくは92〜100%、さらにより好ましくは94〜100%の範囲の高い水素化度を有している。別の好ましいものは、99.1%以上の水素化度を有する完全水素化ニトリルゴムである。
ホスフィン/ジホスフィン成分(i)、さらにはホスフィンオキシド/ジホスフィンスルフィド成分(ii)の含量は、トリフェニルホスファン(「TPP」)およびトリフェニルホスファンスルフィド(「TPPS」)の含量の測定に関して、実施例の項で説明する方法に従って、ガスクロマトグラフィーにより求める。
ホスフィン成分(i)は、典型的には、一般式(1−a)
(式中、
R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、アルケニル、アルカジエニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルカジエニル、ハロゲン、またはトリメチルシリルである)、
を有し、およびジホスフィン成分(i)は、典型的には、一般式(1−b)
(式中、
R’は、同一であるか、または異なっており、および一般式(1−a)におけるのと同じ定義を有しており、
kは、0または1であり、および
Xは、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基である)
を有している。
これら式(1−a)および(1−b)の両方におけるR’基は、非置換であっても、または一置換もしくは多置換されていてもよい。
そのような一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンは、当業者に公知の方法で調製することもでき、または市場で購入することもできる。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルキル基は、典型的には直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル基、好ましくはC〜C24−アルキル基、より好ましくはC〜C18−アルキル基を意味していると理解されたい。C〜C18−アルキルとしては、たとえば以下のものが挙げられる:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、およびn−オクタデシル。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルケニル基は、典型的にはC〜C30−アルケニル基、好ましくはC〜C20−アルケニル基を意味していると理解されたい。アルケニル基がビニル基またはアリル基であれば、より好ましい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルカジエニル基は、典型的にはC〜C30−アルカジエニル基、好ましくはC〜C20−アルカジエニル基を意味していると理解されたい。アルカジエニル基がブタジエニルまたはペンタジエニルであれば、より好ましい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアルコキシ基は、典型的にはC〜C20−アルコキシ基、好ましくはC〜C10−アルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、およびn−ヘキソキシを意味していると理解されたい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のアリール基は、典型的にはC〜C24−アリール基、好ましくはC〜C14−アリール基、より好ましくはC〜C12−アリール基を意味していると理解されたい。C〜C24−アリールの例は、フェニル、o−、p−もしくはm−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、およびフルオレニルである。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’’基中のヘテロアリール基は、アリール基について先に挙げたのと同じ定義を有するが、ただし、骨格炭素原子の1個または複数が、窒素、硫黄および酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されている。そのようなヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、オキサゾリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、およびキノリニルが挙げられる。
上述のアルキル、アルケニル、アルカジエニル、およびアルコキシ基はすべて、非置換であっても、またはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されていてもよい:C〜C24−アリール基、好ましくはフェニル(アルキル基の場合においては、その結果、たとえばアリールアルキル、好ましくはフェニルアルキル基となる)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、CN、OH、NHもしくはNR’’基(ここでR’’は、さらにC〜C30−アルキルまたはC〜C24−アリールである)。
それらのアリール基およびヘテロアリール基はいずれも、非置換であるか、またはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されている:直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル(その結果、いわゆるアルキルアリール基となる)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、スルホネート(SONa)、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、ヒドロキシル、NHもしくはN(R’’)基(ここで、R’’はさらに、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキルまたはC〜C24−アリールである)、またはさらなるC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール基(その結果、ビスアリール基、好ましくはビフェニルもしくはビナフチル、ヘテロアリールアリール基、アリールヘテロアリール基、またはビスヘテロアリール基となる)。これらのC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール置換基もまたさらに、非置換であるか、またはすべての上記の置換基によって一置換もしくは多置換されている。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルキル基は、典型的にはC〜C20−シクロアルキル基、好ましくはC〜C−シクロアルキル基、より好ましくはシクロペンチルおよびシクロヘキシルを意味していると理解されたい。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルケニル基は、同一であるか、または異なっており、および環の骨格中に1個のC=C二重結合を有しており、典型的にはC〜Cシクロアルケニル、好ましくはシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルである。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のシクロアルカジエニル基は、同一であるか、または異なっており、および環の骨格中に1個のC=C二重結合を有しており、典型的にはC〜Cシクロアルカジエニル、好ましくはシクロペンタジエニルおよびシクロヘキサジエニルである。
上述のシクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルカジエニル基もまた、非置換であるか、またはたとえば以下のものによって一置換もしくは多置換されている:直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル(その結果は、いわゆるアルキルアリール基である)、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、もしくは臭素、スルホネート(SONa)、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、ヒドロキシル、NHもしくはNR’’基(ここで、R’’はさらに、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキルもしくはC〜C24−アリールであるか、またはC〜C24−アリールもしくは−ヘテロアリール基によって置換されており、それらはさらに、非置換であるか、またはすべての上述の置換基によって一置換もしくは多置換されている)。
一般式(1−a)および(1−b)のホスフィンまたはジホスフィンのR’基中のハロゲン基は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれフッ素、塩素、または臭素である。
一般式(1−a)の特に好ましいホスフィンは、以下のものである:トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアルクアリール、トリアラルキル、ジアリールモノアルキル、ジアリールモノシクロアルキル、ジアルキルモノアリール、ジアルキルモノシクロアルキル、またはジシクロアルキルモノアリールホスフィン(ここで、上述の基はさらに、非置換であるか、または上述の置換基によって一置換もしくは多置換されている)。
特に好ましいホスフィンは、その中のR’基が同一であるか、または異なっており、およびそれぞれフェニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、フェニルスルホネート、またはシクロヘキシルスルホネートである、一般式(1−a)のものである。
使用される一般式(1−a)の最も好ましいホスフィンは、以下のものである:PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソ−Pr)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、P(CCH)(C、P(NCCHCH(C)、P[(CHC]Cl、P[(CHC](CH)、P(tert−Bu)(biph)、P(C11Cl、P(CH)(OCHCH、P(CH=CHCH、P(CO)、P(CHOH)、P(m−CHOC、P(C、P[(CHSi]、P[(CHO)(ここで、Phはフェニルであり、Tolはトリルであり、biphはビフェニルであり、Buはブチルであり、およびPrはプロピルである)。トリフェニルホスフィンが特に好ましい。
一般式(1−b)のジホスフィンにおいて、kは0または1、好ましくは1である。
一般式(1−b)のXは、以下のものである:直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C20−アルカンジイル、C〜C20−アルケンジイル、またはC〜C20−アルキンジイル基、より好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルカンジイル、C〜C−アルケンジイル、またはC〜C−アルキンジイル基。
〜C−アルカンジイルは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルカンジイル基である。特に好ましいのは、1〜6個の炭素原子、特には2〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルカンジイル基である。好ましいのは、メチレン、エチレン、プロピレン、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,4−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、および2−メチルペンタン−2,4−ジイルである。
〜C−アルケンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルケンジイル基である。好ましいのは、2〜4、より好ましくは2〜3の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルケンジイル基である。好ましい例としては以下のものが挙げられる:ビニレン、アリレン、プロペ−1−エン−1,2−ジイル、およびブテ−2−エン−1,4−ジイル。
〜C−アルキンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキンジイル基である。好ましいのは、2〜4個、より好ましくは2〜3個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキンジイル基である。好ましい例としては以下のものが挙げられる:エチンジイル、およびプロピンジイル。
一般式(1−b)の極めて特に好ましいジホスフィンは、以下のものである:ClPCHCHPCl、(C11PCHP(C11)、(CHPCHCHP(CH、(CPCCP(C、(CPCH=CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CPCH(CH)CH(CH)P(C、および(CPCH(CH)CHP(C
本発明においても同様に使用しうる具体的なジホスフィンは、Chem.Eur.J.,2008,14,9491−9494でも公表されている。例として以下のものが挙げられる。
本発明の水素化ニトリルゴム中のホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィド成分(ii)には、典型的には、上述のホスフィンまたはジホスフィンのスルフィドが含まれる。成分(i)は、好ましくはホスフィン、最も好ましくはトリフェニルホスフィンを表し、したがって、成分(ii)は好ましくはホスフィンスルフィド、最も好ましくはトリフェニルホスフィンスルフィドを表す。
水素化ニトリルゴムの繰り返し単位:
本発明の水素化ニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーおよび少なくとも1種の共役ジエンモノマーの繰り返し単位を有している。それらにはさらに、1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位が含まれていてもよい。
本発明の水素化ニトリルゴムには、完全にもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムが含まれる。その水素化レベルは、少なくとも50%〜100%、または75%〜100%の範囲内であってよい。典型的には、本発明の水素化ニトリルゴムは、通常80%〜100%、好ましくは90%〜100%、より好ましくは92〜100%、特には94〜100%の高い水素化レベルを有している。当業者は、残留C=C二重結合含量(略して「RDB」)が約0.9%以下である、すなわち、水素化のレベルが99.1%以上である場合であっても、「完全に水素化されたタイプ」と呼んでおり、それらも同様に本発明に包含されているものとする。
少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位が、(C〜C)共役ジエンまたはそれらの混合物をベースとしているのが好ましい。特に好ましいのは、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、およびそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびそれらの混合物である。さらにより好ましいのは、1,3−ブタジエンである。
本発明のニトリルゴムを製造するために使用されるα,β−不飽和ニトリルは、各種公知のα,β−不飽和ニトリルであってよく、(C〜C)−α,β−不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が好ましい。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
1種または複数のさらなる共重合性モノマーを使用するのであれば、それらはたとえば以下のものであってよい:芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンおよびビニルピリジン、フッ素化ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−フルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレン、あるいはそうでなければ、共重合性の老化防止性モノマー、好ましくはN−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、およびN−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリン、ならびにさらに非共役ジエン、たとえば4−シアノシクロヘキセンおよび4−ビニルシクロヘキセン、またはそうでなければ、アルキン、たとえば1−ブチンまたは2−ブチン。
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、ヒドロキシル基を含むモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであってよい。それに対応して置換された(メタ)アクリルアミドを使用することもまた可能である。
好適なアクリル酸ヒドロキシアルキルモノマーの例としては以下のものが挙げられる:(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジ(エチレングリコール)、イタコン酸ジ(プロピレングリコール)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシプロピル)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、フマル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、マレイン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、およびヒドロキシメチルビニルケトン。
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、エポキシ基を含むモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸グリシジルであってよい。
エポキシ基を含むモノマーの例は以下のものである:イタコン酸グリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および3−ビニルシクロヘキセンオキシド。
それらに代わるものとして、さらなる共重合性モノマーは、以下のものであってよい:カルボキシル基を含む共重合性ターモノマー、たとえばα,β−不飽和モノカルボン酸、それらのエステル、α,β−不飽和ジカルボン酸、それらのモノエステルもしくはジエステル、それらに対応する酸無水物、またはそれらのアミド。
使用されるα,β−不飽和モノカルボン酸は、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸であってよい。
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくはそれらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することもまた可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC〜C18アルキルエステルが好ましく、特に好ましいのは、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、特にC〜C18アルキルエステル、特にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシルである。さらに、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルが好ましく、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸もしくはメタクリル酸のC〜C12−アルコキシアルキルエステルが特に好ましく、アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルがさらにより好ましい。アルキルエステルたとえば上に挙げたものと、アルコキシアルキルエステルたとえば上に挙げた形態のものとの混合物を使用することも可能である。シアノアルキル基中の炭素原子の数が2〜12個のアクリル酸シアノアルキルおよびメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、およびメタクリル酸シアノブチルもまた使用することもまた可能である。その中のヒドロキシアルキル基の炭素原子の数が1〜12であるアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルを使用することも可能であり、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびアクリル酸3−ヒドロキシプロピルが好ましく、さらには、フッ素置換されたベンジル基を含むアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸フルオロベンジルおよびメタクリル酸フルオロベンジルを使用することも可能である。フルオロアルキル基を含むアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチルおよびメタクリル酸テトラフルオロプロピルを使用することもまた可能である。アミノ基を含むα,β−不飽和カルボン酸エステル、たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチルおよびアクリル酸ジエチルアミノエチルを使用することもまた可能である。
使用されるさらなるモノマーは、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸であってもよい。
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸を使用することもさらに可能である。
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノまたはジエステルを使用することも可能である。これらのα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルは、たとえば、アルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、特にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC〜C12−アルコキシアルキル、より好ましくはC〜C−アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC〜C12−ヒドロキシアルキル、より好ましくはC〜C−ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C12−シクロアルキル、より好ましくはC〜C12−シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC〜C12−アルキルシクロアルキル、より好ましくはC〜C10−アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC〜C14−アリール、のモノエステルまたはジエステルであってよく、ここでいずれのジエステルも、混合エステルであってもよい。
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸2−プロピルヘプチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。特に、アクリル酸n−ブチルが使用される。
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。特に、アクリル酸メトキシエチルが使用される。
使用されるその他のα,β−不飽和モノカルボン酸のエステルはさらに、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびウレタン(メタ)アクリレートである。
α,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルの例には、以下のものが挙げられる:
・ マレイン酸モノアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノ−n−ブチル;
・ マレイン酸モノシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;
・ マレイン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸モノアリール、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・ マレイン酸モノベンジル類、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・ フマル酸モノアルキル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノ−n−ブチル;
・ フマル酸モノシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・ フマル酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸モノアリール、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・ フマル酸モノベンジル類、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・ シトラコン酸モノアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノ−n−ブチル;
・ シトラコン酸モノシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・ シトラコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸モノアリール、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・ シトラコン酸モノベンジル類、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・ イタコン酸モノアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノ−n−ブチル;
・ イタコン酸モノシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・ イタコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸モノアリール、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・ イタコン酸モノベンジル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・ メサコン酸モノアルキル、好ましくはメサコン酸モノエチル。
使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジエステルも、上述のモノエステル基に基づいた類似のジエステルであってよく、ここで、それらのエステル基が化学的に異なった基であってもよい。
有用なさらなる共重合性モノマーとしては、1分子あたり少なくとも2個のオレフィン性二重結合を含むフリーラジカル重合性化合物も挙げられる。ポリ不飽和化合物の例は、ポリオールのアクリレート、メタクリレート、またはイタコネートであって、たとえば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオール1,4−ジアクリレート、プロパン−1,2−ジオールジアクリレート、ブタン−1,3−ジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリセリルのジ−およびトリ−アクリレート、ペンタエリスリチルのジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートもしくは−メタクリレート、ジペンタエリスリチルのテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−アクリレートもしくは−メタクリレートもしくは−イタコネート、ソルビチルテトラアクリレート、ソルビチルヘキサメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコールの、または末端ヒドロキシル基を有するオリゴエステルまたはオリゴウレタンのジアクリレートまたはジメタクリレートなどである。使用されるポリ不飽和モノマーはさらに、アクリルアミド、たとえばメチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、またはアクリル酸2−アクリルアミドエチルであってもよい。ポリ不飽和ビニルおよびアリル化合物の例としては以下のものが挙げられる:ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、またはリン酸トリアリル。
本発明のプロセスにおいて使用される水素化ニトリルゴムまたは本発明の水素化ニトリルゴム中での、共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルの比率は、広い範囲で変化させることができる。共役ジエンの比率、すなわち総計は、全体のポリマーを規準にして、典型的には20〜95重量%の範囲、好ましくは45〜90重量%の範囲、より好ましくは50〜85重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルの比率、すなわち総計は、全体のポリマーを規準にして、典型的には5〜80重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは15〜50重量%の範囲である。本発明において使用される水素化ニトリルゴムまたは本発明の水素化ニトリルゴム中の、共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の比率は、いずれの場合においても、合計して100重量%までである。
さらなるモノマーは、ポリマー全体を基準にして、0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜26重量%の量で存在してもよい。この場合、共役ジエンの繰り返し単位および/またはα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の対応する比率を、これらのさらなるモノマーの比率で置き換え、この場合、それぞれの場合において、全部のモノマーの繰り返し単位の比率が合計して、やはり100重量%になるようにしなければならない。
さらなるモノマーとして(メタ)アクリル酸のエステルを使用する場合には、典型的には1〜25重量%の量で実施する。さらなるモノマーとしてα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸を使用する場合、典型的には、10重量%未満の量で実施する。
好ましいのは、アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導される繰り返し単位を有する水素化された本発明のニトリルゴムである。さらに好ましいのは、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を有する本発明の水素化ニトリルゴムである。アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、1種または複数のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、またはそれらのエステルまたはアミドの繰り返し単位、特にα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルの繰り返し単位、極めて特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルまたは(メタ)アクリル酸ラウリルとの繰り返し単位を有する水素化ニトリルゴムが同様に好ましい。
好ましい実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムが充填剤を実質的に含まない。本出願に関連して、「充填剤を実質的に含まない(essentially filler−free)」という用語は、本発明の水素化ニトリルゴムが、100重量%の水素化ニトリルゴムを基準にして、5重量%未満の充填剤しか含まないことを意味している。
特に好ましい実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムには、100重量%の水素化ニトリルゴムを基準にして5重量%未満の、以下のものからなる群から選択される充填剤を含んでいる:カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は粉体形状であるのが好ましい)、シリケート、および上述のものの混合物。
本発明において使用するためのニトリルゴムまたは本発明の水素化ニトリルゴム中の窒素含量は、DIN 53 625に従いKjeldahl法によって求める。極性のコモノマーが含まれているために、そのニトリルゴムは、典型的には、20℃のメチルエチルケトン中に85重量%以上の量で溶解することができる。
本発明の水素化ニトリルゴムのガラス転移温度は、−70℃〜+10℃の範囲内、好ましくは−60℃〜0℃の範囲内である。
その水素化ニトリルゴムは、10〜150ムーニー単位(MU)、好ましくは20〜100MUのムーニー粘度ML1+4@100℃を有する。水素化ニトリルゴムのムーニー粘度は、DIN 53523/3またはASTM D1646に従って、剪断ディスク粘度計において100℃で測定する。
別の実施形態においては、本発明の水素化ニトリルゴムが、以下の含量を有している:
i)水素化ニトリルゴムを基準にして、0重量%超〜1.0重量%、好ましくは0重量%超〜0.8重量%、より好ましくは0重量%超〜0.6重量%、さらにより好ましくは0.05重量%超〜0.5重量%、特には0.1〜0.4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンの含量、および
ii)水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075〜10重量%、好ましくは0.1〜9重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらにより好ましくは0.3〜6重量%、特には0.4〜5重量%の範囲のホスフィンスルフィド、ジホスフィンスルフィド、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンスルフィドの含量。
前記の代替実施形態において、その水素化ニトリルゴムの水素化度は、80〜100%、好ましくは90〜100%、より好ましくは92〜100%、さらにより好ましくは94〜100%の範囲である。
本発明の水素化ニトリルゴムを製造するためのプロセス:
本発明の水素化ニトリルゴムであって、
i)水素化ニトリルゴムを基準にして、0〜1.0重量%、好ましくは0〜0.8重量%、より好ましくは0〜0.6重量%、さらにより好ましくは0〜0.5重量%、特には0〜0.4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンの含量、および
ii)水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075〜10重量%、好ましくは0.1〜9重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらにより好ましくは0.3〜6重量%、特には0.4〜5重量%の範囲のホスフィンスルフィド、ジホスフィンスルフィド、またはそれらの混合物、好ましくはトリフェニルホスフィンスルフィドの含量
を有する本発明の水素化ニトリルゴムは、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.15〜5重量%の範囲内、好ましくは0.25〜4.75重量%の範囲内、より好ましくは0.3〜4.5重量%の範囲内、最も好ましくは0.4〜4.25重量%の範囲内、特には0.5〜4重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィンまたはそれらの混合物の含量を有する水素化ニトリルゴムを、相互に直接共有結合された少なくとも2個の硫黄原子を有する少なくとも1種の硫黄供与体と反応させることにより、製造することができる。
このことは、先行するパラグラフに記載されたものとは、(i)ホスフィン、ジホスフィンまたはそれらの混合物の含量が、水素化ニトリルゴムを基準にして、0重量%超〜1.0重量%、好ましくは0重量%超〜0.8重量%、より好ましくは0重量%超〜0.6重量%、さらにより好ましくは0.05〜0.5重量%、特には0.1〜0.4重量%の範囲であるという点のみで異なっている、代替の本発明の水素化ニトリルゴムを調製する場合にも同様にあてはまる。
ホスフィンおよび/またはジホスフィン含有の水素化ニトリルゴムと、相互に直接共有結合している少なくとも2個の硫黄原子を有する少なくとも1種の硫黄供与体との本発明の反応は、各種の変形形態で実施することができる。
以下の方法が有用であることが見出された:
(1)最初にニトリルゴムが、有機溶液中および先に定義されたホスフィンおよび/またはジホスフィンの存在下で接触水素化にかけられ、それらのホスフィンおよび/またはジホスフィンは(a)助触媒としてのさらなるホスフィンおよび/またはジホスフィンの添加なしに水素化触媒中に配位子として存在するか、または(b)水素化触媒中に配位子として存在し、かつ助触媒としてさらに添加されか、または(c)助触媒として添加されるが、水素化触媒中にホスフィンまたはジホスフィンが配位子としては存在せず、および
(2)次いで、得られたその水素化ニトリルゴムが、単離の前、途中もしくは後に、好ましくは単離の前もしくは途中に、特には水蒸気蒸留の過程で、または別の方法として好ましくは単離の後に、独立した混合操作において、相互に直接共有結合している少なくとも2個の硫黄原子を有する少なくとも1種の硫黄供与体と接触および反応させられる。
工程1:
第一の工程において水素化により、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.15〜5重量%の範囲、好ましくは0.25〜4.75重量%の範囲、より好ましくは0.3〜4.5重量%の範囲、さらにより好ましくは0.4〜4.25重量%の範囲、特には0.5〜4重量%の範囲のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物の含量を有する水素化ニトリルゴムを製造するのが有用であることが見出された。
水素化触媒:
本発明によるプロセスの接触水素化反応においては、少なくとも1種のホスフィンまたはジホスフィンが存在している。
第一の実施形態においては、このホスフィンおよび/またはジホスフィンが、使用された水素化触媒中に配位子として存在している。ホスフィンまたはジホスフィンを別途に添加する必要はない。
第二の実施形態においては、水素化反応における、ホスフィンまたはジホスフィン配位子含有水素化触媒に加えて、ホスフィンまたはジホスフィンを、いわゆる助触媒として添加する。
第三の実施形態においては、ホスフィンまたはジホスフィンをまったく含まない各種所望の水素化触媒を使用することが可能であり、ホスフィンまたはジホスフィンを助触媒として添加する。
好ましい実施形態においては、少なくとも1種のホスフィンまたはジホスフィン配位子を有する少なくとも1種の触媒を使用して、水素化を実施する。
少なくとも1種のホスフィンまたはジホスフィン配位子を少なくとも1種の触媒を使用し、さらに助触媒としての少なくとも1種のホスフィンまたはジホスフィンの存在下で水素化を実施するのがさらに好ましい。
すべての実施形態において、その水素化触媒は、典型的には、貴金属のロジウム、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、白金またはイリジウムをベースとするものであり、好ましいのはロジウム、ルテニウム、およびオスミウムである。以下において記載される触媒は、すべての実施形態において使用することができる。
一般式(A)
Rh(X)(L) (A)
(式中、
Xは、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、SnCl、またはカルボキシレートであり、
nは、1、2または3、好ましくは1または3であり、
Lは、同一であるか、または異なっており、およびリン、ヒ素、またはアンチモンをベースとする単座もしくは二座の配位子を表し、
mは、Lが単座配位子を表す場合には2、3、または4、Lが二座座配位子を表す場合には1または1.5または2または3または4である)
のロジウム錯体触媒を使用することが可能である。
一般式(A)において、Xは、同一であるか、または異なっており、および好ましくは水素または塩素である。一般式(A)におけるLは、好ましくは、先に示した一般式(I−a)および(I−b)に対応するホスフィンまたはジホスフィンであり、そこで与えられた、一般的、好ましい、および特に好ましい定義が含まれる。
一般式(A)の特に好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ヒドリドロジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ならびにトリフェニルホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィンによって完全にまたは部分的に置き換えられた対応する化合物である。
ルテニウム錯体触媒を使用することもまた可能である。それらは、たとえば、独国特許出願公開第A39 21 264号明細書および欧州特許出願公開第A0 298 386号明細書に記載されている。それらは典型的には、一般式(B)
RuX[(L(L5−z] (B)
(式中、
Xは、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、SnCl、CO、NO、またはR−COOであり、
は、同一であるか、または異なっており、および水素、ハロゲン、R−COO、NO、CO、または下記の一般式(2):
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルもしくはフェニルであるか、あるいはR〜Rからの2つの隣接する基が架橋されて、インデニルまたはフルオレニル系が形成されていてもよい)
のシクロペンタジエニル配位子であり、
は、ホスフィン、ジホスフィン、またはアルシンであり、かつ
nは、0、1または2であり、
mは、0、1、2または3であり、
zは、0、1、2、3または4であり、および
は、1〜20個の炭素原子を有し、分岐状もしくは非分岐状、架橋または非架橋、および/または部分的に芳香族であってもよい基であり、好ましくはC〜Cアルキルである)
を有している。
一般式(2)のシクロペンタジエニル配位子タイプの、一般式(B)のL配位子の例としては、以下のものが挙げられる:シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、エチルテトラメチルシクロペンタジエニル、ペンタフェニルシクロペンタジエニル、ジメチルトリフェニルシクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル。インデニルおよびフルオレニルタイプのL配位子中のベンゼン環は、以下のもので置換されていてもよい:C〜C−アルキル基、特にはメチル、エチル、およびイソプロピル、C〜C−アルコキシ基、特にはメトキシおよびエトキシ、アリール基、特にはフェニル、ならびにハロゲン、特にはフッ素および塩素。シクロペンタジエニルタイプの好ましいL配位子は、それぞれ非置換の、シクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル基である。
(R−COO)タイプの一般式(B)におけるL配位子では、Rとしては、たとえば以下のものが挙げられる:1〜20、好ましくは1〜12、特には1〜6個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の、飽和ヒドロカルビル基、5〜12、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する、環状飽和ヒドロカルビル基、さらには6〜18、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、芳香族ヒドロカルビル基、または好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基およびC〜C18アリール基、好ましくはフェニルを有する、アリール−置換されたアルキル基。
先に説明した、一般式(B)の配位子Lにおける(R−COO)のR基は、任意選択的に以下のもので置換されていてもよい:ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ、C〜C−カルブアルコキシ、フッ素、塩素、またはジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルによってさらに置換されたシクロアルキル、アリール、およびアラルキル基;アルキル、シクロアルキルおよびアラルキル基にはケト基が含まれていてもよい。R基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、およびトリフルオロメチルが挙げられる。好ましいR基は、メチル、エチル、およびtert−ブチルである。
一般式(B)のL配位子は、好ましくは、先に示した一般式(1−a)および(1−b)に従うホスフィンまたはジホスフィン(そこで与えられた、一般的、好ましい、および特に好ましい定義が含まれる)であるか、または、一般式(3)のアルシンである。
一般式(3)の好ましい配位子Lは、トリフェニルアルシン、ジトリルフェニルアルシン、トリス(4−エトキシフェニル)アルシン、ジフェニルシクロヘキシルアルシン、ジブチルフェニルアルシン、およびジエチルフェニルアルシンである。
好ましい一般式(B)のルテニウム触媒は、以下の群から選択され、ここで「Cp」は、シクロペンタジエニル、すなわちC−を表し、「Ph」は、フェニルを表し、「Cy」は、シクロヘキシルを表し、「dppe」は、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを表している:RuCl(PPh;RuHCl(PPh;RuH(PPh;RuH(PPh;RuH(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;RuH(CCOO)(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;RuH(NO)(PPh;Ru(NO)(PPh;RuCl(Cp)(PPh;RuH(Cp)(PPh;Ru(SnCl)(Cp)(PPh;RuCl(μ−C)(PPh;RuH(μ−C)(PPh;Ru(SnCl)(μ−C)(PPh;RuCl(μ−C13)(PPh;RuH(μ−C13)(PPh;Ru(SnCl)(μ−C13)(PPh;RuCl(μ−C)(dppe);RuHCl(CO)(PCy);RuH(NO)(CO)(PCy;RuHCl(CO)(PPh;RuCl(CO)(dppe)RuHCl(CO)(PCy)、RuHCl(CO)(dppe)、RuH(CHCOO)(PPh;RuH(CHCOO)(PPh;およびRuH(CHCOO)(PPh
好適な触媒は、さらに、一般式(C)
(式中、
Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Lは、同一であるかまたは異なった配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、
Rは、同一であるか、または異なっており、および水素、アルキル、好ましくはC〜C30−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、それらの基がすべて、任意選択的にそれぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよいか、あるいは別の方法として、2つのR基が、それらが結合されている共通の炭素原子を取り込んで、架橋されて、性質上脂肪族であっても芳香族であってもよく、任意選択的に置換されていたり1個または複数のヘテロ原子を含んでいたりしてもよい、環状基を形成している)
のものである。
一般式(C)の触媒の1つの実施形態においては、1個のR基が水素であり、他のR基が、C〜C20−アルキル、C〜C10−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C30−アルキルアミノ、C〜C30−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、それらの基はすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
一般式(C)の触媒において、XおよびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子である。
およびXは、たとえば以下のものであってよい:水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルキルジケトネート、C〜C24−アリールジケトネート、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、C〜C20−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルフィニル、モノ−もしくはジ−アルキルアミド、モノ−もしくはジ−アルキルカルバメート、モノ−もしくはジ−アルキルチオカルバメート、モノ−もしくはジ−アルキルジチオカルバメート、または、モノ−もしくはジ−アルキルスルホンアミド基。
上述のXおよびX基が、1種または複数のさらなる基、たとえばハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、それらの基がさらに、任意選択的に次いでハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルを含む群から選択される1種または複数の置換基によって置換されていてもよい。
さらなる実施形態においては、XおよびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれハロゲン、特に、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、ベンゾエート、C〜C−カルボキシレート、C〜C−アルキル、フェノキシ、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C24−アリール、またはC〜C−アルキルスルホネートである。
さらなる実施形態においては、XおよびXが同一であって、それぞれハロゲン特に、塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(CHSO)、またはCFSO(トリフルオロメタンスルホネート)である。
一般式(C)において、Lは、同一であるかまたは異なった配位子であり、好ましくは電荷を有さない電子供与体である。
2個のL配位子は、たとえば、それぞれ独立して、ホスフィン、スルホネート化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、イミダゾリン、またはイミダゾリジン配位子とすることができる。
それら2個のL配位子は、好ましくはそれぞれ独立して、C〜C24−アリール−、C〜C10−アルキル−もしくはC〜C20−シクロアルキルホスフィン配位子、スルホネート化C〜C24−アリール−もしくはスルホネート化C〜C10−アルキルホスフィン配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスフィナイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスホナイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルホスファイト配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアルシン配位子、C〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアミン配位子、ピリジン配位子、C〜C24−アリールもしくはC〜C10−アルキル−スルホキシド配位子、C〜C24−アリールもしくはC〜C10−アルキルエーテル配位子もしくはC〜C24−アリール−もしくはC〜C10−アルキルアミド配位子であり、それらはすべてさらに、未置換であるか、または1個または複数のハロゲン、C〜C−アルキルもしくはC〜C−アルコキシ基によって置換されているフェニル基によって置換されていてもよい。
「ホスフィン」という用語には、たとえば、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、およびP(ネオフェニル)が含まれ、ここで「Ph」はフェニルを表し、「Tol」はトリルを表している。
「ホスフィナイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスフィナイト、トリシクロヘキシルホスフィナイト、トリイソプロピルホスフィナイト、およびメチルジフェニルホスフィナイトが含まれる。
「ホスファイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ−tert−ブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、およびメチルジフェニルホスファイトが含まれる。
「スチビン」という用語には、トリフェニルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、およびトリメチルスチビンが含まれる。
「スルホネート」という用語には、たとえば、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、およびメシレートが含まれる。
「スルホキシド」という用語には、たとえば、(CHS(=O)および(CS=Oが含まれる。
「チオエーテル」という用語には、たとえば、CHSCH、CSCH、CHOCHCHSCH、およびテトラヒドロチオフェンが含まれる。
「ピリジン」という用語は、本明細書に関連して、たとえば、国際公開第A03/011455号パンフレットにおいてGrubbsによって規定されているすべてのピリジンベースの配位子についての包括用語(umbrella term)として理解されるべきである。これらに含まれるのは、ピリジン、ならびに1置換基または多置換基を有する、以下の形態のピリジンである:ピコリン(α−、β−、およびγ−ピコリン)、ルチジン(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ルチジン)、コリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)、トリフルオロメチルピリジン、フェニルピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、クロロピリジン、ブロモピリジン、ニトロピリジン、キノリン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、およびフェニルイミダゾール。
式(C)のL配位子の一方または両方が、イミダゾリンおよび/またはイミダゾリジン基(以後においては、まとめて、「Im」配位子と呼ぶ)である場合には、後者は、典型的には、一般式(4a)または(4b)
(式中、
、R、R10、R11は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C20−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C20−アリールスルホネート、またはC〜C20−アルキルスルフィニルである)
の構造を有している。
任意選択的に、R、R、R10、R11基の1個または複数が、それぞれ独立して、1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、ここで上述のそれらの置換基が、好ましくはハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルの群から選択される1個または複数の基によってさらに置換されていてもよい。
単に明確にするために、本出願に関連して、一般式(4a)および(4b)に示されている構造は、この基についての文献で見かけることが多く、この基のカルベン的性質を強調している、構造(4a’)および(4b’)と均等であることを付け加えておく。このことは、後に示す関連する好ましい構造(5a)〜(5f)に対しても同様にあてはまる。それらの基はすべて、以下においては、まとめて「Im」基と呼ぶことにする。
一般式(C)の触媒の好ましい実施形態においては、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはプロピルまたはブチルであるか、または、それらが結合している炭素原子と共に、シクロアルキルまたはアリール基を形成し、ここで上述の基は、任意選択的に直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンの官能基によって、さらに置換されていてもよい。
一般式(C)の触媒の好ましい実施形態においては、R10およびR11基は、さらに同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはメチル、イソプロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、より好ましくはメタンスルホネート、C〜C10−アリールスルホネート、より好ましくはp−トルエンスルホネートである。
任意選択的に、上述のR10およびR11で定義したような基が、直鎖状または分岐状のC〜C−アルキル、特にメチル、C〜C−アルコキシ、アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲン、特にフッ素、塩素、および臭素から選択される官能基によって置換されている。
さらに詳しくは、R10およびR11基は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれイソプロピル、ネオペンチル、アダマンチル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、2,6−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、または2,6−ジイソプロピルフェニルである。
特に好ましいIm基は、下記の(5a)〜(5f)
の構造を有しており、ここでそれぞれの場合にPhはフェニル基であり、Buはブチル基であり、Mesはそれぞれの場合に2,4,6−トリメチルフェニル基、別の場合では、Mesがすべての場合において、2,6−ジイソプロピルフェニルである。
式(C)の触媒の広く各種の異なった代表的化合物は、たとえば国際公開第A96/04289号パンフレットおよび国際公開第A97/06185号パンフレットから、基本的には公知である。
それらの好適なIm基に代わるものとして、一般式(C)のL配位子の一方または両方が、この場合も好ましくは同一であるかまたは異なったトリアルキルホスフィン配位子であって、その中のアルキル基の少なくとも1個が、二級アルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
さらに好ましくは、一般式(C)においては、1個または両方のL配位子が、その中で少なくとも1個のアルキル基が、二級アルキル基またはシクロアルキル基、好ましくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである、トリアルキルホスフィン配位子である。
特に好ましいのは、一般式(C)によって包含され、構造(6)(Grubbs(I)触媒)および(7)(Grubbs(II)触媒)
(式中、Cyはシクロヘキシルである)
を有する触媒である。
好適な触媒は、さらに好ましくは、一般式(C)
(式中、
、XおよびLは、一般式(C)におけるのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよく、
nは、0、1または2であり、
mは、0、1、2、3または4であり、および
R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい)
のものである。
一般式(C1)によってカバーされる好ましい触媒としては、たとえば式(8a)および(8b)
のものを使用することが可能であり、ここでそれぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルであり、Phはフェニルである。
これらの触媒は、たとえば国際公開第A2004/112951号パンフレットからも公知である。触媒(8a)は、Nolan触媒とも呼ばれている。
好適な触媒は、さらに好ましくは、一般式(D)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Yは、酸素(O)、硫黄(S)、N−R基もしくはP−R基(ここで、Rは以下に定義されるもの)であり、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素または有機もしくは無機の基であり、
は、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基であり、および
Lは、式(C)について定義された配位子である)
のものである。
一般式(D)の触媒は、原理的には公知であって、たとえば以下の文献に記載されている:Hoveydaらの米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2003.42,4592、ならびにGrelaによる国際公開第A2004/035596号パンフレット、Eur.J.Org.Chem.,2003,963−966、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,4038、さらにはJ.Org.Chem.,2004,69,6894−96、およびChem.Eur.J.,2004,10,777−784、さらには米国特許出願公開第2007/043180号明細書。それらの触媒は市場で入手可能であるか、または引用文献に従って調製することができる。
一般式(D)の触媒においては、Lは、典型的には、電子供与体機能を有する配位子であって、一般式(C)におけるLと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していると考えてよい。さらに、一般式(D)におけるLは、P(R基であるのが好ましく、ここでRは独立して、C〜Cアルキル、C〜C−シクロアルキルまたはアリールであるか、そうでなければ、任意選択的に置換されたイミダゾリンまたはイミダゾリジン基(「Im」)である。
〜C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびn−ヘキシルである。
〜C−シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基、好ましくは6〜10個の骨格炭素原子を有する単環、二環もしくは三環式の炭素環芳香族基、特にはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが含まれる。
イミダゾリンまたはイミダゾリジン基(Im)は、一般式(C)の触媒と同様の、一般的、好ましい、および特に好ましい構造を有している。
一般式(D)の特に好適な触媒は、R10およびR11基は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはイソプロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、好ましくはアダマンチル、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、より好ましくはメタンスルホネート、またはC〜C10−アリールスルホネート、より好ましくはp−トルエンスルホネートであるものである。
任意選択的に、上述のR10およびR11で定義したような基が、直鎖状または分岐状のC〜C−アルキル、特にメチル、C〜C−アルコキシ、アリールを含む群から選択される1個または複数のさらなる基、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンの群から選択される官能基によって置換されている。
さらに詳しくは、R10およびR11基は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれイソプロピル、ネオペンチル、アダマンチル、またはメシチルである。
特に好ましいイミダゾリンまたはイミダゾリジン基(Im)は、既に先に特定された構造(5a〜5f)を有しており、ここでMesはそれぞれの場合に2,4,6−トリメチルフェニルである。
一般式(D)の触媒としては、XおよびXが、一般式(C)の触媒と同じ一般的な、好ましい、および特に好ましい定義を有している。
一般式(D)においては、R基が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって、任意選択的に置換されていてもよい。
典型的にはR基は、C〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルアミノ、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、任意選択的にそれぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
が、C〜C20−シクロアルキル基、C〜C24−アリール基、または直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル基であるのが好ましく、ここで後者は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合、またはそうでなければ1個もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。Rが、直鎖状または分岐状のC〜C12−アルキル基であるのがより好ましい。
〜C20−シクロアルキル基には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
〜C12−アルキル基は、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、またはn−ドデシルであってよい。Rがメチルまたはイソプロピルであるのがより好ましい。
〜C24−アリール基は、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基である。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(D)において、R、R、R、およびR基は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ水素、または有機もしくは無機の基であってよい。
好適な実施形態においては、R、R、R、Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ニトロ、CF、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル基であり、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、アリールまたはヘテロアリール基により置換されていてもよい。
典型的には、R、R、R、Rは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、好ましくは塩素もしくは臭素、ニトロ、CF、C〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルアミノ、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニル基であり、それらのすべてがそれぞれ、任意選択的に1個または複数のC〜C30−アルキル、C〜C20−アルコキシ、ハロゲン、C〜C24−アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
特に実証された実施形態においては、R、R、R、Rが同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれニトロ、直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、直鎖状または分岐状のC〜C20−アルコキシ基またはC〜C24−アリール基、好ましくはフェニルもしくはナフチルである。それらのC〜C30−アルキル基およびC〜C20−アルコキシ基は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合、またはそうでなければ、1個もしくは複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。
さらに、R、R、RまたはR基の2種以上が、脂肪族または芳香族を介して架橋されていてもよい。たとえばそれらが式(D)のフェニル環中に結合されている炭素原子も含めて、RおよびRが縮合フェニル環を形成して、全体としてナフチル構造となっていてもよい。
一般式(D)においては、そのR基は、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアリール基である。好ましくは、Rは、水素またはC〜C30−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、もしくはC〜C24−アリール基である。Rが水素であれば、より好ましい。
他の好適な触媒は、一般式(D1)
(式中、M、L、X、X、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義と同じ定義を有していてよい)
の触媒である。
一般式(D1)の触媒は基本的には、たとえば米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書(Hoveydaら)からも公知であり、そこに規定された調製プロセスにより得ることができる。
特に好適な触媒は、一般式(D1)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に共に塩素であり、
が、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル基であり、
、R、R、Rはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有しており、および
Lが、一般式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有している。
特に好適な触媒は、一般式(D1)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
が、イソプロピル基であり、
、R、R、Rが、すべて水素であり、および
Lが、式(4a)または(4b)の、任意選択的に置換されたイミダゾリジン基である。
(式中、
、R、R10、R11は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、ここで、上述の基は、それぞれ1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状または分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、またそれらの上述の置換基もまた、1個または複数の基、好ましくはハロゲン特に塩素もしくは臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルの群から選択される基によって置換されていてもよい。)
極めて特に好適な触媒は、一般構造式(D1)で包含され、式(9)
を有しているものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
この触媒(9)は、文献において、「Hoveyda触媒」と呼ばれることもある。
さらに好適な触媒は、一般構造式(D1)で包含され、以下の式(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)および(17)
の1つを有しているものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
さらに好適な触媒は、一般式(D2)
(式中、
M、L、X、X、R、およびRは、それぞれ式(D)において与えられた一般的な定義および好ましい定義を有し、
12は、同一であるか、または異なっており、および式(D)においてR、R、R、およびRに与えられた一般的な定義および好ましい定義を有するが、ただし水素は除き、および
nは、0、1、2または3である)
の触媒である。
一般式(D2)の触媒は原理的には、たとえば、国際公開第2004/035596号パンフレット(Grela)からも公知であり、そこに規定された調製プロセスにより得ることができる。
特に好適な触媒は、一般式(D2)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に共に塩素であり、
が、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル基であり、
12が、一般式(D2)において定義されたものであり、
nが、0、1、2または3であり、
が、水素であり、および
Lが、一般式(D)において定義されたものである。
特に好適な触媒は、一般式(D2)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
が、イソプロピル基であり、
nが、0であり、および
Lが、式(4a)または(4b)の、任意選択的に置換されたイミダゾリジン基であり、ここで、R、R、R10、R11は、同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ一般式(D1)の特に好ましい触媒について定義されたものである。
特に好適な触媒は、下記の構造(18)(「Grela触媒」)および(19)
のものであり、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
その他の好適な触媒は、一般式(D3)
(式中、X、X、XおよびXはそれぞれ、右側に示されているメチレン基を介して、式(D3)のケイ素に結合された一般式(20)
(式中、
M、L、X、X、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、一般式(D)において与えられた一般的定義および好ましい定義と同じ定義を有していてよい)
の構造を有している)
のデンドリマー(dendritic)触媒である。
その一般式(D3)の触媒は、米国特許出願公開第2002/0107138A1号明細書からも公知であり、その中で与えられた詳細に基づいて調製することができる。
その他の好適な触媒は、式(D4)
(式中、●の記号は担体を表している)
の触媒である。
担体は、好ましくはポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマー(PS−DVB)である。式(D4)に従う触媒は、基本的には、Chem.Eur.J.,2004,10,777−784から公知であり、その中に記載された調製法によって得ることができる。
(D)、(D1)、(D2)、(D3)および(D4)タイプの上述の触媒はすべて、そのままで水素化反応において使用することもでき、または固体の担体に適用して固定化させることもできる。適切な固体相または支持体は、まず、メタセシス反応混合物に対して不活性であり、次いで、触媒の活性を損なわないようなものである。触媒は、たとえば、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、有機ポリマービーズもしくはそうでなければ無機ゾル−ゲル、カーボンブラック、シリカ、ケイ酸塩、炭酸カルシウム、および硫酸バリウムを使用して固定化することができる。
他の好適な触媒は、一般式(E)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアニオン性配位子であり、
R’’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ有機基であり、
Imは、任意選択的に置換されたイミダゾリンまたはイミダゾリジン基であり、および
Anは、アニオンである)
の触媒である。
一般式(E)の触媒は原理的には公知である(たとえば、Angew.Chem.Int.Ed.,2004,43,6161−6165参照)。
一般式(E)におけるXおよびXが、式(C)および(D)におけるのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよい。
Im基は、典型的には、一般式(4a)または(4b)の構造を有しており、それは、式(C)および(D)のタイプの触媒について既に特定されており、そこで好ましいと特定された構造のいずれか、特に式(5a)〜(5f)のものであってもよい。
一般式(E)におけるR’’基は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C30−シクロアルキル、またはアリール基であり、ここで、そのC〜C30−アルキル基は、任意選択的に1個もしくは複数の二重結合もしくは三重結合またはそうでなければ1個または複数のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素によって中断されていてもよい。
アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基が含まれる。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(E)におけるR’’基は、同一であるのが好ましく、それぞれフェニル、シクロヘキシル、シクロペンチル、イソプロピル、o−トリル、o−キシリルまたはメシチルである。
他の好適な触媒は、一般式(F)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
13およびR14はそれぞれ独立して、水素、C〜C20−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、
は、アニオン性配位子であり、
は、単環式か多環式かには関係なく、電荷を有さないπ結合された配位子であり、
は、ホスフィン、スルホネート化ホスフィン、フッ素化ホスフィン、3個までのアミノアルキル、アンモニオアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、ヒドロカルボニルアルキル、ヒドロキシアルキルもしくはケトアルキル基を有する官能化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスフィンアミン、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、チオエーテル、およびピリジンの群からの配位子であり、
は、非配位アニオンであり、および
nは、0、1、2、3、4または5である)
の触媒である。
他の好適な触媒は、一般式(G)
(式中、
は、モリブデンであり、
15およびR16は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、C〜C20−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、
17およびR18は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ置換またはハロゲン−置換のC〜C20−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C30−アラルキル基、またはそれらのシリコーン含有類似体である)
の触媒である。
さらなる好適な触媒は、一般式(H)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ一般式(C)および(D)で与えられたXおよびXのすべての定義と考えてよいアニオン性配位子であり、
Lは、一般式(C)および(D)で与えられたLのすべての定義と考えてよい、同一または異なった配位子を表し、
19およびR20は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素または置換または非置換のアルキルである)
の触媒である。
さらなる好適な触媒は、一般式(K)、(N)または(Q)
(式中、
Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
Lは、配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、
およびZは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ電荷を有さない電子供与体であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニルであり、それらのそれぞれは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択される1個または複数の基によって置換されている)
の触媒である。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒は基本的には、たとえば、国際公開第2003/011455A1号パンフレット、国際公開第2003/087167A2号パンフレット、Organometallics,2001,20,5314、およびAngew.Chem.Int.Ed.,2002,41,4038からも公知である。それらの触媒は、市場で入手することも可能であり、そうでなければ、上述の引用文献に規定された調製法によって合成することもできる。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、ZおよびZは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ電荷を有さない電子供与体である。それらの配位子は典型的には、弱く配位結合されている。それらは典型的には、任意選択的に置換された複素環状基である。それらは、1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の単環式の基であるか、または2、3、4もしくは5個のそのような5員または6員の単環式の基からなる二環もしくは三環構造であってよく、ここで上述の基のそれぞれが、任意選択的に1個または複数のアルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10−アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリール基によって置換されていてもよく、それらの置換基がさらに、好ましくはハロゲン、特に塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1個または複数の基によって再度置換されていてもよい。
およびZの例には、窒素含有複素環、たとえば、ピリジン、ピリダジン、ビピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリジン、ピロリジン、ピペラジン、インダゾール、キノリン、プリン、アクリジン、ビスイミダゾール、ピコリルイミン、イミダゾリジン、およびピロールが含まれる。
およびZが互いに架橋されて、環式構造を形成していてもよい。この場合、ZおよびZは単一の二座配位の配位子である。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、Lは、一般式(C)および(D)におけるLと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有すると考えてよい。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、R21およびR22は同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれアルキル、好ましくはC〜C30−アルキル、より好ましくはC〜C20−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、より好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、より好ましくはC〜C16−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、より好ましくはC〜C16−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、またはアルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニルであり、上述の置換基は、1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよい。
一般式(K)、(N)および(Q)の触媒において、XおよびXは同一であっても異なっていてもよく、および先に一般式(C)においてXおよびXとして与えられたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてもよい。特に好適な触媒は、一般式(K)、(N)および(Q)のものであり、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲン、特に塩素であり、
およびRが、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する5員または6員の単環式の基であるか、または2、3、4もしくは5個のそのような5員または6員の単環式の基からなる二環もしくは三環構造であってよく、ここで上述の基のそれぞれが、1個または複数の、アルキル、好ましくはC〜C10−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜C10−アルコキシ、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、またはヘテロアリール、好ましくはC〜C23ヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
21およびR22は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C30−アルキルアミノ、C〜C30−アルキルチオ、C〜C24−アリールチオ、C〜C20−アルキルスルホニル、C〜C20−アルキルスルフィニルであり、および
Lが、先に、特に式(5a)〜(5f)に既に記載した一般式(4a)または(4b)の構造を有している。
極めて特に好適な触媒は、一般式(K)によって包含され、構造(21)
(式中、
23およびR24は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、ハロゲン、直鎖状または分岐状のC〜C20−アルキル、C〜C20−ヘテロアルキル、C〜C10−ハロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシル、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルシリル、ならびにトリアルコキシシリルである)
を有するものである。
上述の、C〜C20−アルキル、C〜C20−ヘテロアルキル、C〜C10−ハロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール基、好ましくはフェニル、ホルミル、ニトロ、窒素複素環、好ましくはピリジン、ピペリジンおよびピラジン、カルボキシル、アルキルカルボニル、ハロカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、チオホルミル、アミノ、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリルは、それぞれ1個または複数のハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはフェニル基によってさらに置換されていてもよい。
特に極めて好適な触媒は、R23およびR24がそれぞれ水素である触媒(「Grubbs III触媒」)である。
やはり極めて特に好ましいのは、構造(22a)または(22b)
の触媒であり、R23およびR24が、水素は除いて、式(21)と同じ定義を有するものである。
一般式(K)、(N)および(Q)で包含される好適な触媒は、下記の構造式(23)〜(34)
を有しており、ここで、それぞれのMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである。
好適なのはさらに、一般構造要素(R1)
(式中、
25〜R32は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、チオール、CF、ニトロ、ニトロソ、シアノ、チオシアノ、イソシアナト、カルボジイミド、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、アミノ、アミド、イミノ、シリル、スルホネート(−SO )、−OSO 、−PO もしくはOPO を意味し、それぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、ジアルキルアミノ、アルキルシリル、またはアルコキシシリルを意味するか、もしくはそれであり、ここで、これらの基はすべて、それぞれ、任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよいか、または別の方法として、それぞれの場合において、R25〜R32の群からの2つの直接隣接している基が、それらが結合されている環の炭素原子も含めて、架橋されて、環状の基、好ましくは芳香族系を形成しているか、または別の方法として、Rが、任意選択的にルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン錯体触媒の他の配位子と共に架橋されており、
mは、0または1であり、および
Aは、酸素、硫黄、C(R3334)、N−R35、−C(R36)=C(R37)−、−C(R36)(R38)−C(R37)(R39)−であり、ここで、R33〜R39が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれR25〜R32基と同一の定義を有していてもよい)
を有する触媒(R)であり、ここで「*」で区別した炭素原子は、1個または複数の二重結合を介して、触媒の基本骨格に結合されている。
本発明の触媒は、一般式(R1)の構造要素を有しており、ここで、「*」印で区別した炭素原子は、1個または複数の二重結合を介して触媒の基本骨格に結合されている。「*」印で区別した炭素原子が、2個または複数の二重結合を介して触媒の基本骨格に結合されている場合には、それらの二重結合が集積されるかまたは共役していてもよい。
このタイプの触媒(R)は、欧州特許出願公開第A2 027 920号明細書に記載されている。一般式(R1)の構造要素を有する触媒(R)には、たとえば、以下の一般式(R2a)および(R2b)
(式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であるか、または異なっており、および2個の配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびLは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、ここでLが、それに代えて、R基に架橋されていてもよく、
nは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2であり、
n’は、1または2、好ましくは1であり、および
25〜R32、m、およびAは、それぞれ一般式(R1)におけると同じ定義を有する)
のそれらが含まれる。
一般式(R2a)の触媒においては、一般式(R1)の構造要素が、1個の二重結合(n=0)または、2、3もしくは4個の集積二重結合(n=1、2または3の場合)を介して、錯体触媒の中心金属に結合されている。一般式(R2b)の本発明の触媒においては、一般式(R1)の構造要素が、共役二重結合を介して錯体触媒の金属に結合されている。いずれの場合においても、「*」印で区別した炭素原子の上で錯体触媒の中心金属の方向に二重結合が存在している。
したがって、一般式(R2a)および(R2b)の触媒には、次の一般的構造要素(R3)〜(R9)
が1個または複数の二重結合を介して「」印で区別した炭素原子を介して、一般式(R10a)または(R10b)
(式中、XおよびX、LおよびL、n、n’、およびR25〜R39はそれぞれ、一般式(R2a)および(R2b)で定義されたものである)
の触媒基本骨格に結合されている触媒が含まれる。
典型的には、これらのルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン触媒は、五配位である。一般式(R1)の構造要素において、
15〜R32が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、チオール、CF、ニトロ、ニトロソ、シアノ、チオシアノ、イソシアナト、カルボジイミド、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、アミノ、アミド、イミノ、シリル、スルホネート(−SO )、−OSO 、−PO もしくはOPO であるか、またはアルキル、好ましくはC〜C20−アルキル、特にはC〜C−アルキル、シクロアルキル、好ましくはC〜C20−シクロアルキル、特にはC〜C−シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC〜C20−アルケニル、アルキニル、好ましくはC〜C20−アルキニル、アリール、好ましくはC〜C24−アリール、特にはフェニル、カルボキシレート、好ましくはC〜C20−カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC〜C20−アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC〜C20−アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC〜C24−アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC〜C20−アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC〜C30−アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC〜C30−アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC〜C24−アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、好ましくはC〜C20−アルキルスルフィニル、ジアルキルアミノ、好ましくはジ(C〜C20−アルキル)アミノ、アルキルシリル、好ましくはC〜C20−アルキルシリル、もしくはアルコキシシリル、好ましくはC〜C20−アルコキシシリル基であり、ここでそれらの基は、任意選択的にそれぞれ1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されているか、またはさらに別の方法で、R25〜R32の群からの各種の2つの直接隣接している基が、それらが結合されている環の炭素原子を取り込んで、架橋されて、環状の基、好ましくは芳香族系を形成しているか、または別の方法として、Rが、任意選択的にルテニウム−もしくはオスミウム−カルベン錯体触媒の他の配位子と共に架橋されており、
mは、0または1であり、および
Aは、酸素、硫黄、C(R33)(R34)、N−R35、−C(R36)=C(R37)−、または−C(R36)(R38)−C(R37)(R39)−であり、ここで、R33〜R39が同一であっても異なっていてもよく、およびそれぞれR〜R基と同一の好ましい定義を有していてもよい。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびn−ヘキシルである。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C−シクロアルキルは、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルである。
一般式(R1)の構造要素中のC〜C24−アリールには、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基が含まれる。6〜10個の骨格炭素原子を有する好適な単環式、二環式または三環式炭素環芳香族基としては、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、またはアントラセニルが挙げられる。
一般式(R1)の構造要素中のXおよびX基は、一般式(C)の触媒において特定されたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有している。
一般式(R2a)および(R2b)、ならびに同様の(R10a)および(R10b)においては、そのLおよびL基は、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくは電荷を有さない電子供与体であり、一般式(C)の触媒において特定されたのと同じ一般的定義、好ましい定義、および特に好ましい定義を有していてよい。
一般構造単位(N1)を有する一般式(R2a)または(R2b)の触媒が好ましく、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共にハロゲンであり、
一般式(R2a)においてnが、0、1または2であるか、または
一般式(R2b)においてn’が1であり、
およびLが、同一であるか、または異なっており、および一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ一般的定義または好ましい定義を有しており、
25〜R32が、同一であるか、または異なっており、および一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ一般的定義または好ましい定義を有しており、
mが、0または1のいずれかであり、
および、m=1の場合には、
Aが、酸素、硫黄、C(C〜C10−アルキル)、−C(C〜C10−アルキル)−C(C〜C10−アルキル)−、−C(C〜C10−アルキル)=C(C〜C10−アルキル)−、または−N(C〜C10−アルキル)である。
一般構造単位(R1)を有する式(R2a)または(R2b)の触媒が極めて特に好ましく、式中、
Mが、ルテニウムであり、
およびXが、共に塩素であり、
一般式(R2a)においてnが、0、1もしくは2であるか、または
一般式(R2b)においてn’が1であり、
が、式(5a)〜(5f)のイミダゾリジン基であり、
が、スルホネート化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、もしくはピリジン基、式(5a)〜(5f)のイミダゾリンまたはイミダゾリジン基、またはホスフィン配位子、特にPPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、およびP(ネオフェニル)であり、
25〜R32が、一般式(R2a)および(R2b)において特定されたのと同じ、一般的定義または好ましい定義を有しており、
mが、0または1のいずれかであり、
および、m=1の場合には、
Aが、酸素、硫黄、C(C〜C10−アルキル)、−C(C〜C10−アルキル)−C(C〜C10−アルキル)−、−C(C〜C10−アルキル)=C(C〜C10−アルキル)−、または−N(C〜C10−アルキル)である。
25基が、式Rの触媒の他の配位子と架橋されている場合、たとえば一般式(R2a)および(R2b)の触媒の場合においては、これは、以下の一般式(R13a)および(R13b)
(式中、
は、酸素、硫黄、N−R41基、またはP−R41であり(R41は以下において定義されるもの)、
40およびR41は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニルまたはアルキルスルフィニル基であって、それらはすべて、それぞれ任意選択的に1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されていてもよく、
pは、0または1であり、および
は、p=1のときは、−(CH−(ここでr=1、2または3)、−C(=O)−CH−、−C(=O)−、−N=CH−、−N(H)−C(=O)−であるか、またはそうでなければ、総括的な構造単位「−Y(R40)−(Y−」が、(−N(R40)=CH−CH−)、(−N(R40,R41)=CH−CH−)、であり、
ここで、M、X、X、L、R25〜R32、A、m、およびnが、一般式(R0a)および(R0b)の場合におけるのと同じ定義を有している)
の構造を与える。
一般式(R)の触媒の例としては、以下の構造(35)〜(45)
が挙げられる。
一般式(R)の触媒の調製は、欧州特許出願公開第A2 027 920号明細書からも公知である。
さらに、一般式(T)
(式中、
およびXは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアニオン性配位子であるか、あるいは炭素−炭素結合および/または炭素−ヘテロ原子結合を介して相互に結合されており、
Yは、O、S、NおよびPから選択される、電荷を有さない2電子供与体であり、
Rは、H、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル(RCO )、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、アミノスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドであり、
およびRはそれぞれ、H、Br、I、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル、アミド、アミノ、ヘテロアリール、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドであり、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、チオカルボニル、またはアミノカルボニルであり、
EWGは、アミノスルホニル、アミドスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アリールカルボニル、アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミド、スルホンアミド、塩素、フッ素、H、またはハロアルキルからなる群から選択される電子求引性基であり、および
Lは、炭素−炭素および/または炭素−ヘテロ原子結合を介してXに結合されていることができる電子供与性配位子である)
に従う触媒も好適である。
一般式(T)のこれらの触媒は、米国特許出願公開第2007/0043180号明細書からも公知である。
好ましいのは、XおよびXが、ハライド、カルボキシレート、およびアリールオキシドの形態である、イオン性配位子から選択されている、一般式(T)の触媒である。XおよびXが共にハライド、特には共にクロリドであるのがより好ましい。一般式(T)において、Yが酸素であるのが好ましい。Rは、好ましくは、H、ハロゲン、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル、アミド、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミドである。さらに詳しくは、Rは、H、Cl、F、またはC1〜8アルコキシカルボニル基である。RおよびRは、同一であるか、または異なっており、および好ましくはそれぞれH、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルチオ、アリールチオ、またはスルホンアミド基である。さらに詳しくは、RがHまたはアルコキシ基であり、およびRが水素である。一般式(T)において、Rは、好ましくはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、またはアリールカルボニル基である。より好ましくは、Rが、イソプロピル、sec−ブチル、およびメトキシエチルである。一般式(T)において、EWGは、好ましくは、アミノスルホニル、アミドスルホニル、N−ヘテロアリールスルホニル、アリールスルホニル、アミノカルボニル、アリールスルホニル、アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロゲン、またはハロアルキル基である。より好ましくは、EWGが、C1〜12N−アルキルアミノスルホニル、C2〜12N−ヘテロアリールスルホニル、C1〜12アミノカルボニル、C6〜12アリールスルホニル、C1〜12アルキルカルボニル、C6〜12アリールカルボニル、C6〜12アリールオキシカルボニル、Cl、F、またはトリフルオロメチル基である。一般式(T)において、Lは、ホスフィン、アミノ、アリールオキシド、カルボキシレート、および複素環式カルベン基(このものは、炭素−炭素および/または炭素−ヘテロ原子結合を介してXに結合されていてもよい)から選択される電子供与性配位子である。
特に好適な触媒は、その中のLが、複素環式カルベン配位子または、次の構造:
(式中、
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC6〜12アリールであり、および
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリール、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、またはスルホンアミドであり、および
およびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC1〜8アルキルまたはC6〜12アリールである)
を有するホスフィン(P(R(R)である、一般式(T)のものである
好適なのはさらに、一般式(U)
(L (U)
(式中、
は、ロジウム(Rh)またはルテニウム(Ru)であり、
は、ルテニウム(Ru)またはランタニドであり、
ここで、Mがロジウム(Rh)である場合には、Mがルテニウム(Ru)またはランタニドであり、およびMがルテニウム(Ru)である場合には、Mがランタニドであり、
Xは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれH、Cl、またはBrであり、
は、オルガノホスフィン(PR)、ジホスフィン(RP(CHPR)、オルガノアルシン(AsR)、またはその他の窒素、硫黄、酸素原子を含む有機化合物、またはそれらの混合物であり、ここで、R、R、RおよびRは、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれC〜Cアルキル、C〜C12シクロアルキル、アリール、C〜C12アラルキル、またはアリールオキシ基であり、
1≦a≦4、
1≦b≦2、
3≦m≦6、および
6≦n≦15である)
の二金属錯体である。
一般式(U)のこれらの触媒は、原理的には、米国特許第A6,084,033号明細書からも公知である。
特に好適な触媒は、その中でMがロジウムであり、およびMがルテニウムである、一般式(U)のそれである。他の特に好適な触媒は、その中でMがランタニド、特にはCeまたはLaである、一般式(U)のものである。一般式(U)の特に好適な触媒においては、Xが、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれHまたはClである。一般式(U)の特に好適な触媒は、その中でLが、以下のものから選択されているものである:トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、1,4−ジ(ジフェニルホスファノ)ブタン、1,2−ジ(ジフェニルホスファノ)エタン、トリフェニルアルシン、ジブチルフェニルアルシン、ジフェニルエチルアルシン、トリフェニルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、アセチルアセトン、ジフェニルケトン、およびそれらの混合物。
使用することが可能なさらなる触媒が、米国特許第A37 00 637号明細書、独国特許出願公開第A25 39 132号明細書、欧州特許出願公開第A134 023号明細書、独国特許出願公開第A35 41 689号明細書、独国特許第3540918号明細書、欧州特許出願公開第A0 298 386号明細書、独国特許出願公開第A3529252号明細書、独国特許出願公開第A3433 392号明細書、米国特許第A4,464,515号明細書、米国特許第4,503,196号明細書、および欧州特許出願公開第A1 720 920号明細書に記載されている。
水素化触媒の量:
ニトリルゴムを水素化する場合、水素化触媒は、広い範囲の量で使用することができる。触媒は、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、特には0.05〜0.3重量%の量で使用される。
その他の水素化条件:
水素化の実際的な実施は、特に、たとえば米国特許第6,683,136A号明細書に見られるように、当業者には知られていることである。
溶媒:
水素化は、典型的には、溶媒、好ましくは有機溶媒中で実施される。好適な有機溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、およびジクロロベンゼン。モノクロロベンゼンが特に有用であることが見出され、その理由は、それが、各種のニトリル含量を有するニトリルゴムと、それに対応する製品の水素化ニトリルゴムとの両方に対する良好な溶媒であるからである。
ニトリルゴムの濃度:
水素化のためには、ニトリルゴムは、典型的には、少なくとも1種の溶媒中に溶解される。水素化におけるニトリルゴムの濃度は、一般的には1〜30重量%の範囲、好ましくは5〜25重量%の範囲、より好ましくは7〜20重量%の範囲である。
水素化における圧力は、典型的には0.1bar〜250bar、好ましくは5bar〜200bar、より好ましくは50bar〜150barの範囲内である。その温度は、典型的には0℃〜180℃、好ましくは20℃〜160℃、より好ましくは50℃〜150℃の範囲内である。その反応時間は、一般的には2〜10時間である。
水素化の過程において、使用されたニトリルゴム中に存在していた二重結合が所望の程度にまで水素化され、それは本出願の先行する部分で既に開示されている。
水素化は、水素吸収をオンラインで測定するか、またはラマン分光光度法(欧州特許出願公開第A0 897 933号明細書)もしくはIR分光光度法(米国特許第A6,522,408号明細書)によりモニターした。水素化レベルをオフラインで測定するのに好適なIR法についてはさらに、D.Brueckによる記述がある:Kautschuke+Gummi,Kunststoffe,Vol.42、(1989),No.2,p.107−110(part 1)およびKautschuke+Gummi,Kunststoffe,Vol.42、(1989),No.3,p.194−197。
所望の水素化レベルに達したら、反応器を減圧する。残存量の水素は、典型的には、窒素パージで除去する。
水素化ニトリルゴムを有機相から単離する前に、水素化触媒を回収することもできる。ロジウム回収のための好ましいプロセスは、たとえば、米国特許第A4,985,540号明細書に記載されている。
本発明におけるプロセスにおける水素化を、ホスフィンまたはジホスフィンを添加して実施する場合、それらは、水素化されるニトリルゴムを規準にして、典型的には0.1〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらにより好ましくは0.75〜3.5重量%、特には1〜3重量%の量で使用される。
試行され、検証された方法では、ホスフィンまたはジホスフィンは、水素化触媒の1当量を規準にして、0.1〜10当量の範囲、好ましくは0.2〜5当量の範囲、より好ましくは0.3〜3当量の範囲の量で使用される。
添加されるホスフィンまたはジホスフィンの、水素化触媒に対する重量比は、典型的には(1〜100):1、好ましくは(3〜30):1、特には(5〜15):1である。
水素化が完了すると、ASTM標準D 1646で測定して、1〜50の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有する水素化ニトリルゴムが得られる。これは、重量平均分子量Mが2000〜400000g/molの範囲にあることにほぼ対応する。ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜30の範囲にあれば好ましい。これは、重量平均分子量Mが約20000〜200000の範囲にあることにほぼ対応する。さらに、そのようにして得られた水素化ニトリルゴムは、1〜5の範囲、好ましくは1.5〜3の範囲の多分散性PDI=M/M(ここでMは重量平均分子量、Mは数平均分子量である)を有している。
水素化の前に、ニトリルゴムの分子量を低下させる目的で、ニトリルゴムをメタセシス反応にかけておくこともまた可能である。ニトリルゴムのメタセシスは、当業者には十分に知られていることである。メタセシスを実施する場合には、それに続く水素化反応をインサイチューで、すなわち、前もってメタセシス分解を実施したのと同一の反応混合物中で、分子量を低下させたニトリルゴムを単離する必要もなく、実施することも可能である。その水素化触媒は、反応容器中に単に添加する。
工程2:
ホスフィン含有またはジホスフィン含有の水素化ニトリルゴムを、相互に直接共有結合された少なくとも2個の硫黄原子を有する硫黄供与体と接触させる。その結果、それらのホスフィンまたはジホスフィンからホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドが生成し、そのため、減少が進めば、ホスフィンまたはジホスフィンの量が完全になくなる。
硫黄供与体との接触においては、ホスフィン含有もしくはジホスフィン含有の水素化ニトリルゴムは、溶解された形態、固体の形態のいずれであってもよい。
たとえば、以下の2つの代替実施形態が、有用であることが見出された。
第一の実施形態においては、水素化が終了した後で、かつその水素化反応混合物から水素化ニトリルゴムを単離する前または、単離の途中に、硫黄供与体を添加することができる。有機溶液からの水素化ニトリルゴムを単離するための好適な方法は、加熱の作用によるか、減圧によるか、または水蒸気蒸留による有機溶媒の蒸発である。水蒸気蒸留を実施するのが好ましい。この場合、それに続く水性分散体からのゴムクラムの除去は、篩別法によって実施され、最終的には、機械的乾燥および/または加熱乾燥される。好ましいのは、水蒸気蒸留である。採用される圧力に応じて、後者は、典型的には80〜120℃、好ましくは約100℃の反応温度で実施される。
水素化ニトリルゴムの単離の前または途中の有機溶液または水溶液中に、硫黄供与体を添加するのが有用であることが見出された。
その硫黄供与体が油溶性である場合、水素化反応混合物にその硫黄供与体を溶解させた形態で添加し、この場合、硫黄供与体を溶解させるための溶媒は、その中にホスフィン含有もしくはジホスフィン含有の水素化ニトリルゴムが存在している溶媒と同じとするのが好ましい。
その硫黄供与体が水溶性である場合、水素化反応混合物にその硫黄供与体を、水溶液として添加し、それと十分に混合する。
任意選択的に、触媒を回収する前に、硫黄供与体を添加してもよい。
第二の実施形態においては、ホスフィン含有もしくはジホスフィン含有の水素化ニトリルゴムを、先に定義された少なくとも1種の硫黄供与体に固体状態で添加し、変換反応をさせてもよい。この形態の場合においては、水素化反応混合物からは、単離によってそれを得ることができる。その場合、ホスフィン含有もしくはジホスフィン含有の水素化ニトリルゴムは、実質的に溶媒を含まない状態にある。この実施形態に有用な装置は、ロールミル、インターナルミキサー、またはエクストルーダーであることが見出された。ロールミルまたはインターナルミキサーを使用するのが好ましい。市販されている典型的なロールミルは、サーモスタット付きで、逆回転の2本のロールを有している。硫黄供与体を組み入れるには、適切なロール温度、たとえば10〜30℃の範囲、好ましくは20℃±3℃、適切な回転速度、好ましくは25〜30min−1の範囲、適切なロール間隙、たとえば数ミリメートルの範囲、および適切なロールがけ時間、通常数分を選択する。そのようにして得られたゴムのミルドシートを、典型的には次いで切断し、重ね合わせて、任意選択的に、再度ロールにかける。
この実施形態においては、典型的には、硫黄供与体は固体の形態でも使用される。
ホスフィンまたはジホスフィンと硫黄供与体とからのホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドを得る反応は、使用する硫黄供与体の反応性に応じて適切な温度で実施する。その反応温度は、好ましくは10℃〜150℃の範囲内、より好ましくは80℃〜120℃の範囲内、特には90℃〜110℃の範囲内である。その反応のための反応時間は、典型的には、1分〜5時間の範囲内であり、当業者であれば選択した温度に応じて決めることができる。
硫黄供与体:
本発明による方法において使用するための硫黄供与体には、相互に直接共有結合された少なくとも2個の硫黄原子が含まれる。
好適な硫黄供与体は、たとえば次の一般式(5a)〜(5e)
(式中、
y+は、yが1、2、3または4である、y価の電荷を有するカチオン、好ましくはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、NH またはN(R (ここで、Rは、同一であるか、または異なっており、および直鎖状、分岐状、脂肪族、架橋、脂環式、または全体がもしくは部分的に芳香族の基である)であり、
nは、1〜1000の範囲の数であり、
mは、0〜998の範囲の数であり、
は、水素、または1〜20個の炭素原子を有する基であり、ここで、その基は、N、P、S、O、およびSiからなる群から選択される5個までのヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ直鎖状、分岐状、脂肪族、架橋、脂環式および/または全体がもしくは部分的に芳香族であってよく、
は、1〜20個の炭素原子を有し、ならびにN、P、S、およびOからなる群から選択される5個までのヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ直鎖状、分岐状、脂肪族、架橋、脂環式および/または全体がもしくは部分的に芳香族であってもよい、二価の基である)
を有している。
好ましい実施形態においては、一般式(5a)〜(5e)
(式中、
y+は、y=1であるリチウム、ナトリウムまたはカリウムカチオン、y=2であるマグネシウム、カルシウムまたはバリウムカチオン、NH もしくはN(R (ここでRは、同一であるか、または異なっており、および直鎖状または分岐状のC〜C18−アルキル基である)であり、
nは、1〜100の範囲の数であり、
mは、0〜98の範囲の数であり、
は、C〜C18−アルキル、特にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert.−ブチル、n−ヘキシル、フェニル、ナフチル、n−ドデシル、tertドデシル、またはステアリル、−(C=S)−NR;−(C=O)−NR;−(C=O)−OR;(C=S)−OR;−(P=S)(OR);−(P=S)(SR);−(C=NH)−NR;−(C=NR)−OR;−(C=NR)−SR、またはSO−(式中、それぞれのRは、同一であるか、または異なっており、およびC〜C14−アルキルまたはC〜C14−アリールであり、かつ非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)であり、
は、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基、より好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C20−アルカンジイル、C〜C20−アルケンジイル、またはC〜C20−アルキンジイル基、特に好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルカンジイル、C〜C−アルケンジイル、またはC〜C−アルキンジイル基である)
の化合物から選択される、少なくとも1種の硫黄供与体が使用される。
〜C−アルカンジイルは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルカンジイル基である。特に好ましいのは、1〜6個の炭素原子、特には2〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルカンジイル基である。好ましいのは、メチレン、エチレン、プロピレン、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,4−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、および2−メチルペンタン−2,4−ジイルである。
〜C−アルケンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルケンジイル基である。好ましいのは、2〜4個、より好ましくは2〜3個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルケンジイル基である。好ましいものとしては以下のものが挙げられる:ビニレン、アリレン、プロペ−1−エン−1,2−ジイル、およびブテ−2−エン−1,4−ジイル。
〜C−アルキンジイルは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキンジイル基である。好ましいのは、2〜4個、より好ましくは2〜3個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキンジイル基である。好ましいのは、エチレンジイルおよびプロピンジイルである。
1つの実施形態においては、一般的サブ構造(5a−1)
(式中、
nは、1〜100、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の範囲の数であり、
tは、同一であるか、または異なっており、および1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8の範囲の整数であり、かつ
は、同一であるか、または異なっており、好ましくは同一であり、およびそれぞれ直鎖状または分岐状のC〜C18−、好ましくはC〜C10−、より好ましくはC〜C−アルキル基である)
を有する、一般式(5a)の少なくとも1種の硫黄供与体を使用するのが有用であることが見出された。
本発明において使用可能な、好ましい硫黄供与体は、以下のものからなる群から選択される:S環の形態、または結晶質、半晶質、もしくは非晶質の形態であってよいポリマー性硫黄の形態の元素状硫黄、ジフェニルジスルフィド、ジ(n−ドデシル)ジスルフィド、ジ(tert−ドデシル)ジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ−n−ブチルキサントゲンジスルフィド、アンモニウムポリスルフィド、ナトリウムポリスルフィド、カリウムポリスルフィド、ビス[(5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メチル]キサントゲンジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール、硫黄の鎖長が2〜4の範囲であるビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、およびビス(シラトラニルアルキル)ポリスルフィド(たとえば国際公開第A2008/084885号パンフレット参照)。
硫黄供与体の量:
使用される硫黄供与体の量は、ニトリルゴムの水素化の際に存在しているホスフィンまたはジホスフィンの量に基づいて計算する。硫黄供与体のモル量(Sとして計算)が、その前の水素化の際に存在していたホスフィンまたはジホスフィンのモル量の、好ましくは5〜300%、好ましくは50〜150%、より好ましくは75〜125%である。したがって、たとえばS環の場合、与えられたモルパーセントの1/8を使用するべきである。しかしながら、上述の硫黄供与体のモル量はさらに、本発明の転化の前に水素化ニトリルゴム中に存在しているホスフィンまたはジホスフィンの量に関係させて適用する。
重量%では、硫黄供与体は、この場合もまた硫黄として計算して、水素化後に、その前の水素化の際に存在していたホスフィンまたはジホスフィンのモルの100重量%を基準にして、好ましくは5〜25重量%、好ましくは7〜20重量%、特には10〜15重量%の量で添加される。しかしながら、上述の硫黄供与体の重量パーセントはさらに、本発明の転化の前に水素化ニトリルゴム中に存在しているホスフィンまたはジホスフィンの量に関係させて適用する。
本発明による方法は、ホスフィンまたはジホスフィンを、典型的には少なくとも50mol%の程度まで、好ましくは少なくとも80mol%の程度まで、より好ましくは少なくとも95mol%の程度から100mol%まで、ホスフィンスルフィドおよびジホスフィンスルフィドに転化させる。ホスフィン/ジホスフィンの転化を、ほとんど定量的に、さらには定量的に実施することが特に可能である。
したがって、水素化ニトリルゴム中の(i)ホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドおよび(ii)ホスフィンまたはジホスフィンの総合計を基準にして、ホスフィンまたはジホスフィンの含量が、典型的には50mol%未満、好ましくは20mol%未満、より好ましくは5mol%未満から0mol%までである。より詳しくは、ホスフィンまたはジホスフィンを完全に除去することもまた可能である。
水素化ニトリルゴム中のトリフェニルホスフィン(TPP)およびトリフェニルホスフィンスルフィド(TPP=S)の含量の測定は、実施例で特定した方法で実施する。
水素化後に硫黄供与体を添加しなかった場合でさえも、それぞれの場合において微少量のホスフィンスルフィドが生成する可能性もあるが、それらは、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075重量%未満である。さらに、実施例からも明らかなように、水素化ニトリルゴムに対して硫黄供与体を調節しながら添加した場合には、ホスフィンまたはジホスフィンからホスフィンスルフィドおよびジホスフィンスルフィドへの転化による本発明の利点が得られる。
本発明はさらに、本発明の水素化ニトリルゴムと少なくとも1種の架橋系とを含む加硫可能な混合物も提供する。さらに、その加硫可能な混合物には、1種または複数のさらなる慣用されるゴム添加剤が含まれていてもよい。
それらの加硫可能な混合物は、典型的には、本発明の水素化ニトリルゴム(i)を、少なくとも1種の架橋系(ii)および任意選択的に1種または複数のさらなる添加剤と混合することによって製造される。
その架橋系には、少なくとも1種の架橋剤と、任意選択的に1種または複数の架橋促進剤とが含まれる。
典型的には、本発明の水素化ニトリルゴムを、全部の選択された添加剤と最初に混合し、少なくとも1種の架橋剤および任意選択的に架橋促進剤からなる架橋系は、最後に混ぜ込む。
有用な架橋剤としては、たとえば、以下のものが挙げられる:ペルオキシド系架橋剤たとえば、ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
これらのペルオキシド系架橋剤に加えて、架橋収率を向上させるのに役立つ可能性があるさらなる添加剤をさらに使用するのも有利となりうる。その好適な例としては、以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛アクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛メタクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
その架橋剤の全量は、全体がもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムを基準にして、典型的には1〜20phrの範囲、好ましくは1.5〜15phrの範囲、より好ましくは2〜10phrの範囲である。
使用される架橋剤はさらに、元素状の可用性もしくは不溶性の形態の硫黄か、または硫黄供与体であってもよい。有用な硫黄供与体としては、たとえば以下のものを挙げることができる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
本発明の水素化ニトリルゴムの硫黄加硫における架橋収率の向上に役立つ可能性があるさらなる添加物を使用することもまた可能である。原理的には、その架橋は、硫黄または硫黄供与体を単独で用いて実施することも可能である。
架橋収率を向上させるのに役立つ可能性がある好適な添加物としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸塩、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
使用されるジチオカルバミン酸塩は、たとえば以下のものであってよい:ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、およびジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛。
使用されるチウラムは、たとえば以下のものであってよい:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、およびテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)。
使用されるチアゾールは、たとえば以下のものであってよい:2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、および銅2−メルカプトベンゾチアゾール。
使用されるスルフェンアミド誘導体は、たとえば以下のものであってよい:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−tert−ブチルスルフェンアミド、およびオキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシエチレンスルフェンアミド。
使用されるキサントゲン酸塩は、たとえば以下のものであってよい:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛、およびジブチルキサントゲン酸亜鉛。
使用されるグアニジン誘導体は、たとえば以下のものであってよい:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、およびo−トリルビグアニジエン(OTBG)。
使用されるジチオホスフェートは、たとえば以下のものであってよい:ジ(C〜C16)アルキルジチオリン酸亜鉛、ジ(C〜C16)アルキルジチオリン酸銅、およびジチオホスフォリルポリスルフィド。
使用されるカプロラクタムは、たとえば、ジチオビスカプロラクタムであってよい。
使用されるチオ尿素誘導体は、たとえば以下のものであってよい:N,N’−ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、およびエチレンチオ尿素(ETU)。
少なくとも2個のイソシアネート基を有する架橋剤を用いて架橋させることも可能であり、それらのイソシアネートは、少なくとも2個の遊離のイソシアネート基(−NCO)の形態であってもよく、またはそうでなければ、架橋条件下でインサイチューでそれから−NCO基が放出される保護されたイソシアネート基の形態であってもよい。
同様に添加物として好適なものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:亜鉛ジアミノジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、および環状ジスルファン。
上述の添加物およびさらに架橋剤は、個別に使用しても、あるいは混合物として使用してもよい。本発明の水素化ニトリルゴムを架橋させるためには、以下の物質を使用するのが好ましい:硫黄、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジチオビスカプロラクタム。
上述の架橋剤および添加物はそれぞれ、全体がもしくは部分的に水素化されたニトリルゴムを基準にして、(それぞれの場合において、活性物質を基準にした、単回使用量(single dose)で)約0.05〜10phr、好ましくは0.1〜8phr、特には0.5〜5phrの量で使用することができる。
硫黄架橋の場合においては、架橋剤と上述の添加物に加えて、たとえば以下に挙げるさらなる無機物質または有機物質を同様に使用するのが適切であろう:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、飽和もしくは不飽和の有機脂肪酸およびそれらの亜鉛塩、ポリアルコール、アミノアルコールたとえば、トリエタノールアミン、およびアミン、たとえば、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、およびポリエーテルアミン。
本発明の水素化ニトリルゴムが、カルボキシル基を含む1種または複数のターモノマーの繰り返し単位を含むものであるならば、架橋は、好ましくは架橋加硫促進剤の存在下、ポリアミン架橋剤を使用することにより、実施することも可能である。ポリアミン架橋剤には限定はないが、ただし、それは、(1)2個以上のアミノ基を含む化合物(任意選択的に塩の形態)、または(2)架橋反応の際にインサイチューで2個以上のアミノ基を形成する化合物を形成する化学種のいずれかである。その中で少なくとも2個の水素原子がアミノ基で置換されているか、そうでなければヒドラジド構造(後者は、「−C(=O)NHNH」の構造である)で置換されている、脂肪族または芳香族炭化水素化合物を使用するのが好ましい。
そのようなポリアミン架橋剤(ii)の例は以下のものである:
・ 脂肪族ポリアミン、好ましくはヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタアミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒドアダクト、またはヘキサメチレンジアミンジベンゾエート;
・ 芳香族ポリアミン、好ましくは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、または4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン);
・ 少なくとも2つのヒドラジド構造を有する化合物、好ましくはイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、またはセバシン酸ジヒドラジド。
特に好ましいのは、ヘキサメチレンジアミン、およびヘキサメチレンジアミンカルバメートである。
加硫可能な混合物中におけるポリアミン架橋剤の量は、100重量部の水素化ニトリルゴムを基準にして、典型的には0.2〜20重量部の範囲、好ましくは1〜15重量部の範囲、より好ましくは1.5〜10重量部の範囲である。
ポリアミン架橋剤と組み合わせて使用される架橋加硫促進剤は、当業者には公知のいかなるものであってもよく、好ましくは塩基性の架橋加硫促進剤である。使用可能な例としては、たとえば以下のものが挙げられる:テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、o−トリルビグアニジン、およびジカテコールホウ酸のジ−o−トリルグアニジン塩。さらに使用可能なのは、アルデヒドアミン架橋促進剤、たとえばn−ブチルアルデヒドアニリンである。架橋促進剤として、少なくとも1種の二環状もしくは多環状の、アミン性の塩基を使用するのがより好ましい。それらは当業者には公知である。次のものが特に好適である:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)。
この場合における架橋性加硫促進剤の量は、100重量部の水素化ニトリルゴムを基準にして、典型的には0.5〜10重量部、好ましくは1〜7.5重量部、特には2〜5重量部の範囲内である。
本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする加硫可能な混合物は、原理的には、スコーチ抑制剤が含まれていてもよく、それらは、硫黄を用いた加硫の場合とペルオキシドを用いた加硫の場合とでは異なる。
硫黄を用いた加硫の場合には、次のものが使用される:シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)、およびジフェニルニトロソアミン。好ましいのは、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)である。
ペルオキシドを用いた加硫の場合には、国際公開第A97/01597号パンフレットおよび米国特許第A4,857,571号明細書に記載されている化合物を使用して、スコーチを抑制する。立体障害p−ジアルキルアミノフェノール、特には、Ethanox 703(Sartomer製)が好ましい。
慣用されるさらなるゴム添加剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:当業者には公知の典型的な物質、たとえば充填剤、充填剤活性化剤、スコーチ抑制剤、オゾン劣化防止剤、老化安定剤、抗酸化剤、加工助剤、エキステンダーオイル、可塑剤、補強材、および離型剤。
使用される充填剤は、たとえば以下のものであってよい:カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は粉体の形状にあるのが好ましい)、またはケイ酸塩。充填剤は、100重量部の水素化ニトリルゴムを規準にして、典型的には5〜350重量部、好ましくは5〜300重量部の範囲の量で使用される。
有用な充填剤活性化剤としては、特に、たとえば以下のものが挙げられる:ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、または(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。さらなる充填剤活性化剤としては、たとえば、トリエタノールアミンおよび74〜10000g/molの分子量を有するエチレングリコールなどの界面活性物質が挙げられる。充填剤活性化剤の量は、典型的には、本発明の水素化ニトリルゴムの100phrを基準にして、0〜10phrである。
それらの加硫可能な混合物に添加される老化安定剤は、たとえば、以下のものであってよい:重合させた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、または亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)。
別のものとして、多少は劣るが、以下の老化安定剤を使用することもまた可能である:アミン系老化安定剤、たとえば、ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、および/またはフェニル−β−ナフチルアミン(PBN)の混合物の形態のもの。フェニレンジアミンをベースとするものを使用するのが好ましい。フェニレンジアミンの例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、およびN,N’−ビス−1,4−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(7PPD)などが挙げられる。
それらの老化安定剤は、水素化ニトリルゴムの100重量部を基準にして、典型的には10重量部まで、好ましくは5重量部まで、より好ましくは0.25〜3重量部、特には0.4〜1.5重量部の量で使用される。
有用な離型剤の例としては以下のものが挙げられる:飽和または部分不飽和の脂肪酸およびオレイン酸、ならびにそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド)(それらは、混合物成分として使用するのが好ましい)、およびさらには、低分子量シリコーン化合物をベースとする金型表面に適用することが可能な製品、フルオロポリマーをベースとする製品、およびフェノール樹脂をベースとする製品。
それらの離型剤は、本発明の水素化ニトリルゴム100重量部を基準にして、典型的には約0〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の量で使用される。
その他の可能性としては、米国特許第A−4,826,721号明細書の教示に従った、ガラス製の強化材(繊維)を用いた補強が挙げられ、またそれとは別に、脂肪族および芳香族ポリアミド(Nylon(登録商標)、Aramid(登録商標))、ポリエステル、および天然繊維製品から製造したコード、織布、繊維による補強も挙げられる。
加硫可能な混合物の製造を目的とした成分の混合は、典型的には、インターナルミキサー中、またはロール上で実施される。使用されるインターナルミキサーは、典型的には、「かみ合い方式(intermeshing)」のローター形状と呼ばれているものを備えたものである。開始時点で、本発明の水素化ニトリルゴムをインターナルミキサーに仕込む。このものは、典型的にはベールの形態であって、この場合、最初に微粉砕される。(当業者であれば容易に決めることができる)適切な時間の後、添加剤の添加と、典型的には最後に、架橋系の添加とを実施する。その混合は温度制御下で実施するが、ただし、混合物が、100〜150℃の範囲の温度に適切な時間滞留するようにする。適切な混合時間の後に、インターナルミキサーのガス抜きをし、シャフトをきれいにする。さらなる時間の後に、インターナルミキサーを空にして、加硫可能な混合物を得る。上述の時間はすべて、典型的には数分の範囲であり、当業者であれば製造する混合物に合わせて問題なく決めることができる。混合ユニットとしてロールを使用する場合、同様の方法および順序で、計量仕込みを進行させることが可能である。
本発明はさらに、本発明の水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物を製造するためのプロセスも提供し、それが特徴としているのは、本発明の水素化ニトリルゴムを含む加硫可能な混合物を加硫にかけることである。加硫は、典型的には100℃〜200℃の範囲の温度、好ましくは120℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃の温度で実施する。
成形プロセスの際に加硫を行わせるのが好ましい。
この目的のためには、エクストルーダー、射出成形系、ローラーまたはカレンダーによって加硫可能な混合物をさらに加工する。次いで、そのようにして得ることが可能な予備成形した物質を、典型的には、プレス、オートクレーブ、加熱空気系、または自動マット加硫系(automatic mat vulcanization system)と呼ばれる系内で完全に加硫させ、そこでの有用な温度は、100℃〜200℃、好ましくは140℃〜190℃の範囲であることが見いだされた。その加硫時間は、典型的には1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。加硫物の形状およびサイズによっては、完全な加硫を得るために、再加熱による第二の加硫が必要になることもある。
したがって、本発明は、好ましくは成形物の形態である、加硫物も同様に提供し、それは、前述の加硫プロセスによって得ることができる。それらの加硫物は、低い圧縮永久歪みと高い弾性率を特徴としている。
それらの加硫物は、伝動ベルト、ローラーカバー、シール、キャップ、ストッパー、ホース、床仕上材、シーリングマット、またはシート、形材もしくは膜の形状をとることができる。さらに詳しくは、それらの加硫物は、以下のものであってよい:O−リングシール、フラットシール、シャフトシーリングリング、ガスケットスリーブ、シーリングキャップ、ダスト保護キャップ、コネクターシール、断熱ホース(添加PVCの存在下または非存在下)、オイルクーラーホース、空気吸込ホース、パワーステアリングホース、靴底もしくはその部品、またはポンプの膜。
驚くべきことには、本発明によるプロセスにおいて、ホスフィンまたはジホスフィンを特定の硫黄供与体と反応させることにより水素化ニトリルゴム中に生成させたホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドは、その加硫特性を妨害することもなく、また水素化ニトリルゴムの加硫物の物性に悪影響を与えることもない。この点に関連して、本発明によって、少なくとも1種のホスフィンまたはジホスフィン配位子を有する水素化触媒、および/または助触媒としてのホスフィン/ジホスフィンを用いて、高い反応速度と同時に、少量の触媒、および低い圧力でニトリルゴムの接触水素化を実施するが、それにも関わらず、水素化ニトリルゴム、さらには、好ましい物性プロファイルを有する加硫物が得られるようになった。
1.分析
トリフェニルホスフィン(「TPP」)含量およびトリフェニルホスフィンスルフィド(「TPP=S」または「TPPS」)含量の測定
水素化ニトリルゴム中のトリフェニルホスフィン含量およびトリフェニルホスフィンスルフィド含量は、不活性な標準を使用したガスクロマトグラフィーにより求めた。その測定のためには、それぞれの場合において、2〜3g±0.01gのHNBRを小型の試験管内に秤込み、25mLのアセトンを用いて溶解させ、既知量の内部標準(ドコサン、Sigma−Aldrich製;CA:629−97−0)を添加し、完全に混合してから、50mLのメタノールを添加することにより希釈して、沈殿させた。キャピラリーカラム(たとえば:HP−5、0.25μm膜、30m×0.32mmID)を使用したガスクロマトグラフィーにより、その沈殿の上澄みを分離させた。
注入量:1μL
注入温度:300℃
オーブン温度プログラム:150℃に調節し、次いで10分以内に300℃にまで加熱し、その温度で5分間保持。
検出器温度:300℃
検出には、フレームイオン化検出器(FID)を使用した。
与えられた条件下では、TPP、TPP=S、および内部標準は、以下の保持時間を有している。
TPP:8.47分
ドコサン:8.65分
TPP=S:12.13分
HNBR中に存在しているTPPおよびTPP=Sの定量的な測定をするためには、TPP/n−ドコサンおよびTPP=S/ドコサンの応答関数を使用し、これは、直線的な較正領域で独立した測定で予め求めておいたものである。
以下の表において、TPP含量として、「<0.01重量%」と表示されている場合、これは、TPP含量が、(存在するとしても)分析の検出限界未満であることを意味している。
水素化レベルの測定:
ニトリルゴムの水素化が終了した後で、以下の文献に記載の方法で正確な水素化レベルを求めた:Kautschuk+Gummi.Kunststoffe,vol.42(1989),no.2,107−110、およびKautschuk+Gummi.Kunststoffe,vol.42(1989),no.3,194−197。
2.反応
使用したニトリルゴム:
以後において記述する水素化のすべてにおいて、使用したニトリルゴムは、欧州特許出願公開第A1 369 436号明細書、実施例2に従って製造したものである。それは、以下の特性パラメーターを有していた。
アクリロニトリル含量:34.5重量%
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):30MU
実験シリーズ1、2、3、および6
実験シリーズ1、2、3、および6で使用した水素化ニトリルゴムは、17.5重量%溶液中、水素圧190bar、温度120℃〜130℃で、以下の表に示した量のTPPを用いて、水素化することにより得たものである。それぞれの水素化において、40Lのオートクレーブ中で、5.25kgの上述のニトリルゴムを、24.25kgのクロロベンゼン中に溶解させた。水素化の前に、それぞれのポリマー溶液を、撹拌しながら(170rpm)、連続的に窒素(20bar)を用いて1回、および水素(20bar)を用いて2回接触させてから、減圧した。水素を注入して190barとしてから、表に示した量のTPP(Merck Schuchardt OHG;cat.No.8.08270)をそれぞれ、250gのクロロベンゼン中の溶液として、計量仕込みした。触媒として、0.1重量%(ニトリルゴム基準)のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(Evonik Industries AG)を250gのクロロベンゼン中の溶液として添加することにより、水素化を開始させた。水素の吸収を測定することによって、水素化の過程をオンラインで観察した。水素化レベルが99.5±0.3%に達したところで、その反応混合物を冷却することによって、それぞれの水素化を停止させた。次いで、その混合物を減圧した。残存量の水素は、窒素を通気させる手段によって除去した。
実験シリーズ4(aおよびb):
実験シリーズ4aおよび4bでは、上述のニトリルゴムを同様に使用した。水素化は、以下の境界条件下で、実験シリーズ1、2、3、および6と同様にして実施した。
NBR濃度(クロロベンゼン中):12重量%
水素圧:80bar
撹拌速度:600min−1
反応温度:138℃
トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド:0.08phr
トリフェニルホスフィン:1phr
94.5%の水素化レベルのところで、その反応混合物を冷却することによって、水素化を停止させた。次いで、その混合物を減圧した。窒素を通過させることによって、残存している量の水素は除去した。
実験シリーズ5:
実験シリーズ5では、上述のニトリルゴムを同様に使用した。水素化の前に、ニトリルゴムのメタセシス分解を、国際公開第A02/100905号パンフレットに従い、0.05phrのGrubbs−II触媒(Materia(Pasadena)から購入)および2.0phrの1−ヘキセン(クロロベンゼン溶液中)を使用し、80℃で実施した。次いで水素化を、以下の境界条件下で、実験シリーズ1、2、3、および6と同様にして実施した。
NBR濃度(クロロベンゼン中):12重量%
水素圧:80bar
撹拌速度:600min−1
反応温度:138℃
トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド:0.08phr
トリフェニルホスフィン:3phr
96%の水素化レベルのところで、その反応混合物を冷却することによって、水素化を停止させた。次いで、その混合物を減圧した。窒素を通過させることによって、残存している量の水素は除去した。
触媒の回収:
実験シリーズ1、2、3、4aおよび6においては、水素化で使用したロジウムの除去はしなかった。実験シリーズ4bおよび5においては、水素化後に、米国特許第A4,985,540号明細書の実施例5の記載にならって、この実施例5からチオ尿素含有イオン交換樹脂を使用して、触媒を除去した。ロジウムを除去するためには、固形分濃度5重量%にまでポリマー溶液を希釈した。
硫黄供与体:
使用した硫黄供与体は、表Iに記載の化合物A〜Gであった。
実験シリーズ2、3、4aおよび4bにおいては、水蒸気蒸留の実施より前に硫黄供与体を添加し、硫黄供与体A、C、D、E、FおよびGを、水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン溶液に直接加えた。水溶性の硫黄供与体Bは、蒸留水(水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン溶液の全量の1/10)中に溶解させ、水素化ニトリルゴムの溶液に撹拌しながら添加した。
クロロベンゼン溶液からの水素化ニトリルゴムの単離:
クロロベンゼンの除去は、水蒸気蒸留により、バッチ式で実施した。水蒸気は、ストリッピング容器の底部のリングノズルを通して、標準圧力で導入した。この過程で、クロロベンゼンおよび水蒸気からなる蒸気が、102℃の塔頂温度で留出した。その蒸気を凝縮させ、クロロベンゼン相と水相とに分離させた。蒸気からクロロベンゼンが分離されなくなったら直ちに水蒸気蒸留を停止した(約3時間後)。比較的粗い塊状物の形状になっている水素化ニトリルゴムを単離し、70℃の真空乾燥キャビネット中、穏やかな空気気流の下で、恒量になるまで乾燥させた。
実験シリーズ5aおよび5b、ならびに実験シリーズ6aおよび6bにおいては、硫黄供与体またはトリフェニルホスフィンスルフィドを、ロール上で、固体の形態で混ぜ込んだ。その手順の詳細は、それぞれの実験シリーズの箇所で説明する。
ゴム混合物および加硫:
加工特性を評価し、加硫速度および加硫物の物性を測定するために、実験シリーズで得られた水素化ニトリルゴムを、表IIに記載の構成成分と混合した。
混合物は、かみ合い式混練要素(PS5A−パドル形状)付きの、容量1.5Lの実験室用ニーダー(GK1,5E、Werner&Pfleiderer(Stutgart)製)で製造し、そのニーダーは50℃に予熱しておいた。混合物構成成分を、表IIに記載の順序で添加した。
未加硫ゴム混合物の物性:
未加硫ゴム混合物の加工特性を評価するために、ASTM D1646に従って、100℃で1分の加熱時間の後4分間の測定時間のムーニー粘度(ML1+4@100℃)、および120℃でのムーニー粘度(ML1+4@120℃)を測定した。混合物粘度とムーニー緩和との両方が低い値なら、そのゴム混合物が良好な加工性を有していることを示している。
混合物の加硫特性は、ASTM D5289−95に従い、180℃で測定した。この目的のためには、Bayer−Frank加硫計(Agfa製)およびムービングダイレオメーター(MDR2000、Alpha Technology製)の両方を使用した(実験シリーズ参照)。加硫計の特性値たとえば、Fmin、Fmax、Fmax.−Fmin.は、Bayer−Frank加硫計の場合においてはcNの次元で、およびムービングダイレオメーターの場合においてはdNmの次元で得られる。特性時間たとえば、t10、t50、t90およびt95は、試験方法には関係なく、分(min)または秒(sec)の単位で測定される。
DIN 53 529、Part 3においては、下記の特性値は、下記の意味を有している。
min.:架橋等温線が最小のときの加硫計の値
max.:架橋等温線が最大のときの加硫計の値
max−Fmin:加硫計の読みにおける最大値と最小値との差
10:最終転化率の10%に到達した時間
50:最終転化率の50%に到達した時間
90:最終転化率の90%に到達した時間
95:最終転化率の95%に到達した時間
加硫物の特性測定のために使用される試験片は、プレス中で、120barの油圧で作成した。加硫時間および温度は実験シリーズ内に示す。いくつかの実験シリーズの加硫物は、150℃×6時間の熱処理にかけてから、特性測定をした(実験シリーズ参照)。
それらの加硫物を使用して、以下の物性を、それぞれの場合に明記されている標準に従って測定した。
DIN 53505:23℃および70℃でのショアーA硬度(「ショアーA/23℃」および「ショアーA/70℃」)
DIN 53512:レジリエンス(23℃および70℃)
DIN 53504:10%、25%、50%、100%、200%および300%歪みにおける応力値(σ10、σ25、σ50、σ100、σ200およびσ300)、引張強度、および破断時伸び(ε
DIN 53516:摩耗
Goodrichフレクソメーターにおいては、DIN 53533に従い、動応力をかけた後の温度の上昇を測定した。その測定は、以下の条件で実施した:100℃、プレストレス1.0MPa、ストローク4.00mm、およびストレス時間25分。温度上昇(熱の蓄積)が低いほど、その加硫物の品質は良好である。
圧縮永久歪み(CS)は、DIN 53517に従い、円筒状の試験片を25%圧縮し、その圧縮したままの状態で、表に示した時間および温度(たとえば、70時間/23℃、または70時間/150℃)で保存することにより測定した。サンプルを緩和させた後、そのサンプルの永続的変形(圧縮永久歪み)を測定した。測定のためには、以下の寸法を有する円筒状の試験片を使用した:高さ:6.3;直径:13mm(試験片1)。永続的変形が小さいほど、サンプルの圧縮永久歪みが良好である。換言すれば、0%の永続的変形は極めて良好であり、100%は極めて不良である。
実験シリーズ1(比較例):
実験シリーズ1aにおいては、水素化において使用されるTPPの量を変化させた。クロロベンゼン溶液から水素化ニトリルゴムを単離させた後に測定した水素化ニトリルゴムの物性(TTP、TTT=Sの含量およびムーニー値)を表1aにまとめた。
TPPを(ニトリルゴムを基準にして、3.0重量%まで)添加することによって、水素化時間が短縮されているのは明らかである。水素化ニトリルゴム中に残存しているTPPの量が増えると、加硫物の弾性率の値、すなわち特定の伸びにおける応力値、および圧縮永久歪みの値において劣化が起きる。実験シリーズ1aの、本発明ではない水素化ニトリルゴムは、2.6重量%までのTPP含量と0.021重量%までのTPP=S含量とを有していた。
実験シリーズ1aの水素化ニトリルゴムを使用して、表IIに示した組成を有するゴム混合物を製造し、加硫させた。その加硫物を使用すると、表1bに示した値が測定された。
実験シリーズ2(本発明実施例、実施例2.1を除く)
実験シリーズ2においては、実験シリーズ1aで得られた水素化ニトリルゴムの各種のクロロベンゼン溶液のアリコートを、各種の量の元素状硫黄(TPP/硫黄のモル比は一定)と混合し、仕上げ作業をした(実験シリーズ2a)。実験2.2では、実験1.3からのクロロベンゼン溶液を使用し、実験2.3では、実験1.4からのクロロベンゼン溶液を使用し、および実験2.4では、実験1.6からのクロロベンゼン溶液を使用した。これによって、表2aにまとめた物性(TPP、TPP=Sの含量、およびムーニー粘度)を有する水素化ニトリルゴムが得られた。
実験シリーズ2aの水素化ニトリルゴムに基づいて、表IIに示した組成を有するゴム混合物を製造し、加硫させた。その加硫物を使用すると、表2bに示した値が測定された。
驚くべきことには、元素状硫黄を添加することによって(TPP/硫黄のモル比=1/1)、TPPの含量が上がることによる加硫物の物性への有害な影響を打ち消すことが可能であることを見出しうる。実験シリーズ2の本発明の水素化ニトリルゴム中のTPP=Sの含量は、0.95〜3.25重量%の範囲であった。
実験シリーズ3(本発明実施例、実験3.1を除く)
実験シリーズ3aにおいては、実験1.3で得られたHNBR溶液を、アリコートに分割し、各種の量の硫黄と混合した。クロロベンゼン溶液から水素化ニトリルゴムを単離した後に測定したTPPおよびTPP=Sの分析による含量を表3aにまとめた。
実験シリーズ3aで得られた水素化ニトリルゴムに基づいて、表IIに示した組成を有するゴム混合物を製造し、加硫させた。それらの加硫物を使用して得られた値を、表3bにまとめた。
その調製において1.0phrのTPPを使用した場合、硫黄を各種の量(TPP/硫黄のモル比0.4/1〜1.23/1)で添加することによって、水素化ニトリルゴム中のTPPの含量が低下し、加硫させた水素化ニトリルゴムの弾性率および圧縮永久歪みのレベルが改良されることが分かった。実験シリーズ3の本発明実施例においては、TPP=Sの含量は、0.4〜1.05重量%の範囲である。
実験シリーズ4(本発明実施例)
実験シリーズ4aにおいて、水素化ニトリルゴムのクロロベンゼン溶液を、各種のタイプおよび量の硫黄供与体と反応させ、反応時間も変化させた。実験シリーズ4で実施した実施例のベースとしたのは、実験シリーズ1で採用した境界条件下で1.2phrのトリフェニルホスフィン添加を用いて水素化をして得られた、完全水素化ニトリルゴム(実験4.0)であった。クロロベンゼン溶液から水素化ニトリルゴムを単離した後の測定では、表4aおよび4bにまとめたTPPおよびTPP=Sの含量が得られた。実験シリーズ4aにおいては、溶液中に存在しているロジウムはその溶液中に残し、それとは対照的に実験シリーズ4bにおいては、それを除去してから硫黄供与体を添加した。
HNBRのクロロベンゼン溶液に各種の硫黄供与体を添加すると、TPP含量の低下とTPP=S含量の上昇が達成されることが分かった。
実験シリーズ4a(4.1〜4.16)および4b(4.17〜4.21)の本発明の水素化ニトリルゴムは、0.52重量%までの範囲のTPP含量と1.18重量%までの範囲のTPP=S含量とを有している。
実験シリーズ5(本発明実施例)
部分水素化ニトリルゴムを使用し、その分子量を、メタセシスによってあらかじめ低下させておき、その後で3重量%のTPPの存在下で水素化を実施した。実験シリーズ5においては、使用した硫黄供与体が元素状硫黄またはDPTTであり、溶媒を使用することなく、それらを水素化ニトリルゴムに添加した。この目的のためには、2本の逆回転ロールを備えた温度調節可能なロールミル(Schwabenthan製;モデル:Polymix 110;ロール直径:110mm)を使用した。それぞれの実験設定を、その都度450gの水素化ニトリルゴムを用いて2回実施した。元素状硫黄またはDPTTを添加する前に、水素化ニトリルゴムを、第一の工程において、回転速度25および30min−1、ロール間隙3mmでロールがけして、ミルドシートとした。表5aに記載の条件下で、ミルドシートの切り込みおよび重ね合わせを繰り返して、元素状硫黄またはDPTTを組み入れた。硫黄またはDPTTの組み入れが済んだら、それぞれ同一の実験設定を有する2枚のミルドシートをロール上で混合して、それぞれの実験設定で合計して900gのものを得た。これらのサンプルを使用して、トリフェニルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンスルフィドの含量を測定した(実験シリーズ5a)。
その後で、50℃に予熱しておいた、かみ合い式混練要素(PS5A−パドル形状)付きの、容量1.5Lの実験室用ニーダー(GK1,5E、Werner&Pfleiderer(Stutgart)製)において、表IIに記載した混合成分を、そこに記載された順序で、添加し混ぜ込んだ。
このようにして得られたゴム混合物に基づいて、未加硫および加硫した状態での物性を測定した。それらの結果を表5bにまとめた。
有機溶液から水素化ニトリルゴムを単離させた後であっても、TPPをTPP=Sに転化させることが可能であることが分かった。本発明実施例5.2、5.3、5.4、5.5、および5.6における硫黄供与体の添加は、弾性率および圧縮永久歪みのレベルにおける改良をもたらした。さらには、Goodrichフレクソメーター試験では、熱の蓄積の低下も測定された。
実験シリーズ5の本発明の水素化ニトリルゴムには、0.13重量%までの範囲のTPPと、2.86〜3.04重量%の範囲のTPP=Sとが含まれていた。
実験シリーズ6:(本発明実施例)
実験シリーズ6aおよび6bにおいては、加硫物の物性におよぼすTPP=Sの影響を調べた。この目的のためには、表IIに記載の混合物の調製において、各種の量のTPP=S(実験シリーズ6a参照)を、逆回転の2本のロールを有している温度調節可能なロールミル(Schwabenthan製;モデル:Polymix 110;ロール直径:110mm)の上で、実験シリーズ1.1からの水素化ニトリルゴム(=6.1)に添加した。それぞれの実験設定を、その都度450gのゴムを使用して2回実施した。TPP=Sの組み入れは、ロール間隙3mm(回転速度、25および30min−1)、ロール温度20℃、およびミルドシート温度40℃で、ミルドシート中への切り込みと折り重ねとを繰り返し、5分以内で実施した。TPP=Sを組み入れた後、それぞれ同一の実験設定を有する2枚のミルドシートをロール上で混合して、それぞれの実験設定について、全量で900gが得られるようにした。それらのサンプルを使用して、TPPおよびTPP=Sの含量を測定した(表6a)。
その後で、50℃に予熱しておいた、かみ合い式混練要素(PS5A−パドル形状)付きの、容量1.5Lの実験室用ニーダー(GK1,5E、Werner&Pfleiderer(Stutgart)製)において、表II)に記載した混合成分を混ぜ込んだ。混合物構成成分を、表II)に記載の順序で添加した。
このようにして得られたゴム混合物に基づいて、未加硫および加硫した状態での物性を測定した。それらの結果を表6bにまとめた。
TPP=Sを添加することによって、HNBRの加硫物の弾性率レベルおよび圧縮永久歪みには悪影響がないことが分かった。
本発明の水素化ニトリルゴムにおいては、TPPは分析的にはもはや検出できず、TPP=S含量は、0.99〜2.97重量%の範囲であった。
それら実験シリーズの結果すべてを、以下の表にまとめた。本発明実施例はそれぞれ、「」印を付けて表示した。
これらの実験シリーズから、ニトリルゴムの水素化において助触媒として使用されたトリフェニルホスフィンが、加硫された水素化ニトリルゴムの弾性率および圧縮永久歪みの値におよぼす有害な影響が、硫黄供与体を添加することによって、打ち消されることが分かる。硫黄供与体は、水蒸気蒸留による単離の前に水素化ニトリルゴムの有機溶液に対して添加しても、単離した後の固体の水素化ニトリルゴムに対して添加してもよく、各種のモル比でそれらの有効な効果を示す。

Claims (17)

  1. 水素化ニトリルゴムであって、
    i)前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0〜1.0重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィン、またはそれらの混合物の含量
    i)前記水素化ニトリルゴムを基準にして、0.075〜10重量%の範囲のホスフィンスルフィド、ジホスフィンスルフィド、またはそれらの混合物の含量、及び
    iii)前記水素化ニトリルゴムを基準にして、5重量%未満の充填剤
    を含む、水素化ニトリルゴム。
  2. 成分(i)として、一般式(1−a)
    (式中、
    R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、アルケニル、アルカジエニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルカジエニル、ハロゲン、またはトリメチルシリルである)、
    のホスフィン、および/または一般式(1−b)
    (式中、
    R’は、同一であるか、または異なっており、およびそれぞれアルキル、アルケニル、アルカジエニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルカジエニル、ハロゲン、またはトリメチルシリルであり、
    kは、0または1であり、および
    Xは、直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル、アルケンジイル、またはアルキンジイル基である)
    のジホスフィンを含む、請求項1に記載の水素化ニトリルゴム。
  3. 存在している前記一般式(1−a)の前記ホスフィンが、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソ−Pr)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、P(CCH)(C、P(NCCHCH(C)、P[(CHC]Cl、P[(CHC](CH)、P(tert−Bu)(biph)、P(C11Cl、P(CH)(OCHCH、P(CH=CHCH、P(CO)、P(CHOH)、P(m−CHOC、P(C、もしくはP[(CHSi]、P[(CHO)であり、および/または存在している前記一般式(1−b)の前記ジホスフィンが、ClPCHCHPCl、(C11PCHP(C11)、(CHPCHCHP(CH、(CPCCP(C、(CPCH=CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CP(CHP(C、(CPCH(CH)CH(CH)P(C、もしくは(CPCH(CH)CHP(Cであり、ここで、Phはフェニルであり、Tolはトリルであり、biphはビフェニルであり、Buはブチルであり、およびPrはプロピルであることを特徴とする、請求項2に記載の水素化ニトリルゴム。
  4. 存在している前記ホスフィン成分(i)が、トリフェニルホスフィンであることを特徴とする、請求項1に記載の水素化ニトリルゴム。
  5. 前記ホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィド成分(ii)が、ホスフィンまたはジホスフィンのスルフィドを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  6. 存在している前記ホスフィンスルフィド成分(ii)が、トリフェニルホスフィンスルフィドであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  7. 少なくともアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴム。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素化ニトリルゴムを製造するための方法であって、水素化ニトリルゴムを基準にして、0.15〜5重量%の範囲内のホスフィン、ジホスフィンまたはそれらの混合物の含量を有する水素化ニトリルゴムが、相互に直接共有結合された少なくとも2個の硫黄原子を有する少なくとも1種の硫黄供与体と反応させられることを特徴とする、方法。
  9. 一般式(5a)〜(5e)
    (式中、
    y+は、yが1、2、3または4である、y価の電荷を有するカチオンであり、
    nは、1〜1000の範囲の数であり、
    mは、0〜998の範囲の数であり、
    は、水素、または1〜20個の炭素原子を有する基であり、ここで、前記基は、N、P、S、O、およびSiからなる群から選択される5個までのヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ直鎖状、分岐状、脂肪族、架橋、脂環式および/または全体がもしくは部分的に芳香族であってよく、
    は、1〜20個の炭素原子を有し、ならびにN、P、S、およびOからなる群から選択される5個までのヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ直鎖状、分岐状、脂肪族、架橋、脂環式および/または全体がもしくは部分的に芳香族であってもよい、二価の基である)
    の硫黄供与体の少なくとも1種が使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 少なくとも1種の硫黄供与体が、S環の形態または結晶質、半晶質、もしくは非晶質の形態であってよいポリマー性硫黄の形態の元素状硫黄、ジフェニルジスルフィド、ジ(n−ドデシル)ジスルフィド、ジ−(tert−ドデシル)ジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ−n−ブチルキサントゲンジスルフィド、アンモニウムポリスルフィド、ナトリウムポリスルフィド、カリウムポリスルフィド、ビス[(5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メチル]キサントゲンジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール、硫黄の鎖長が2〜4の範囲であるビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、およびビス(シラトラニルアルキル)ポリスルフィドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
  11. 硫黄供与体のモル量(Sとして計算)が、前記ホスフィンまたはジホスフィンのモル量の、5〜300%であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記ホスフィンまたはジホスフィンが、少なくとも50mol%の程度までホスフィンスルフィドまたはジホスフィンスルフィドに転化されていることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. (1)最初にニトリルゴムが、有機溶液中およびホスフィンまたはジホスフィンの存在下で接触水素化にかけられ、前記ホスフィンまたはジホスフィンが(a)助触媒としてのさらなるホスフィンまたはジホスフィンの添加なしに水素化触媒中に配位子として存在するか、または(b)前記水素化触媒中に配位子として存在し、かつ助触媒としてさらに添加されるか、または(c)助触媒として添加されるが、前記水素化触媒中にホスフィンまたはジホスフィンが配位子としては存在せず、および
    (2)次いで、得られた前記水素化ニトリルゴムが、単離の前、途中もしくは後に、独立した混合操作において、相互に直接共有結合している少なくとも2個の硫黄原子を有する前記少なくとも1種の硫黄供与体と接触および反応させられることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 水素化触媒として、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ヒドリドロジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、またはトリフェニルホスフィンが完全にまたは部分的にトリシクロヘキシルホスフィンで置き換えられた対応する化合物が使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水素化ニトリルゴム、および少なくとも1種の架橋剤と任意選択的に1種または複数の架橋促進剤とを含む少なくとも1種の架橋系を含む、加硫可能な混合物。
  16. 求項1に記載の加硫可能な混合物が、100℃〜200℃で加硫されることを特徴とする、加硫物を製造するための方法
  17. 求項1に記載の方法によって得られた加硫物。
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