JP2017501118A - 多価不飽和ケトン化合物の製造方法 - Google Patents

多価不飽和ケトン化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】【解決手段】本発明は、少なくとも一つの抗酸化剤の存在下に光延反応の特定の適用を使用する、特定の多価不飽和化合物の製造方法に関する。有利なケトン化合物に最終的に変換可能な、医薬的に許容される多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステル化合物を直接製造する方法を見出した。この方法では、特定の光延化学を用い、望ましくない酸化とシス/トランス異性化が実質的に減らされるか、または、除去される。【選択図】なし

Description

<発明の分野>
本発明は、概して、多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステル化合物を製造する方法に関する。本発明は、チオエステルの、その対応するチオールへの変換、およびそのチオールの多価不飽和ケトンへの変換にさらに関する。より詳細には、本発明は、望まれていない酸化と、シス/トランス異性反応を、製造過程において、実質的に減らすか、 または除去する、多価不飽和チオエステル、ゆえに、それに続くチオールと多価不飽和ケトン化合物の製造方法に関する。
<背景>
多くの生物学的に活性な多価不飽和脂肪酸は、1以上のシス配置の炭素−炭素二重結合を有している。 フリーラジカルが、これらの結合の好ましさに劣るトランス配置への異性化をサポートすると報告されている。シス/トランス異性化は、例えば、生物学的活性を低下させ、かつ/または、合成を複雑にすることにより、医薬的用途を意図する多価不飽和化合物に不利に作用し得る。参考として、C. Ferreriら (2007) Mol. Biotech. 37:19; Chatgilialoglu, Cら (2002) Free Rrad. Biology & Medicine, 33: 1681; and WO 2002/100991。
いくつか、しかし全てではない、フリーラジカルは、特定の多価不飽和化合物のシス/トランス異性をサポートすると報告されている。ラジカル仲介酸化の動力学は、製造される前記不飽和化合物の化学的性質、温度、pH、光の存在または不在、酸素等の幾つかのパラメータに依ると考えられている。フリーラジカルは、環境において自然に、または、特定の化学反応から製造された望ましくない副生成物として、発生すると報告されている。
例えば、Mengele, E.Aら. (2010) Mos. Univ. Chemistry Bull 65: 210参照。
酸化を減らし、かつ炭素−炭素二重結合びシス/トランス異性を減らす試みがなされている。一つの試みにおいて、例えば没食子酸オクチル、アスコルビン酸、ポリフェノール、メルカプトエタノール、ベータ-カロチンまたは2,6,-ジ-tert-ブチル-4-メルカプトフェノール(BHT)のような抗酸化剤を望ましくない酸化反応に添加する。Mengele, E.A, ibid; Klein, E and N. Weber (2001) J. Agric. Food Chem. 49: 1224; and Hung, W-L, et al. (2011) J. Agric. Food Chem. 1968参照。
特定の多価不飽和トリフルオロメチルケトン化合物が、有用な生物学的活性を有するという報告がある。例えば、米国特許第7,687,543号; Huwiler, Aら(2012) Br. J. Pharm. 167: 1691参照。
特定の多価不飽和ケトンを製造する方法が、開示されている。特定の多価不飽和トリフルオロメチルケトンの合成を開示する1つの方法において、光延(Mitsunobu)型反応を用いて、アルコールを対応するチオエステルへ変換していた。さらなる化学反応は、前記多価不飽和トリフルオロメチルケトン(ここには化合物18)が71% y収率で製造された、と記載されている。Holmeide, A およびL. Skattebol (2000) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1: 2271参照。
医薬的使用を意図する化合物は、高い収率、例えば70%以上で製造されるべきであるという一般的認識がある。満足いく収率より低いと、望ましくない副生成物が関係しうる。これらは、主な生成物(API)から除去するのはコストがかかったり、困難だったりするため、さらなる医薬的開発を困難にする。さらに、管理庁は、医薬的使用を意図する化合物における副生成物の詳細な分析を要求とする。この要求は、スケールアップのコストを法外に高くする可能性がある。
光延反応は、他の試薬の中で、ホスフィンとアゾジカルボキシラート(azodicarboxylate)を用い、新しい官能基、しばしば、エステルの1級または2級アルコールへの添加を含むと報告されている。反応のメカニズムは、複雑であると報告され、反応中間体の同定に関しては、議論がある。例えば、But, Tおよび P. Toy (2007) Chem. Asian J. 2: 1340;ならびにSwamy, K.Cら. (2009) Chem. Rev. 109: 2551参照。これにより、特定の光延反応の結果は予想困難となっている。
国際公開第2002/100991号パンフレット 米国特許第7,687,543号明細書
C. Ferreriら (2007) Mol. Biotech. 37:19; Chatgilialoglu, Cら (2002) Free Rrad. Biology & Medicine, 33: 1681. Mengele, E.Aら. (2010) Mos. Univ. Chemistry Bull 65: 210. Mengele, E.A, ibid; Klein, E and N. Weber (2001) J. Agric. Food Chem. 49: 1224. Hung, W-L, et al. (2011) J. Agric. Food Chem. 1968. Huwiler, Aら(2012) Br. J. Pharm. 167: 1691. Holmeide, A およびL. Skattebol (2000) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1: 2271. But, Tおよび P. Toy (2007) Chem. Asian J. 2: 1340 Swamy, K.Cら. (2009) Chem. Rev. 109: 2551
多くの場合、光延反応は、アルコール、カルボン酸反応物およびホスフィンを、溶媒中で低温で一緒に混合して行われる。次いで、アゾジカルボキシラートを通常添加し、数時間反応を攪拌して、前記カルボン酸を前記アルコールと反応させ、エステルを形成させる。本発明者らは、この方法は、本発明の多価不飽和化合物の状況では、不純物を生じることを見出した。例えば、この反応順序により、しばしば、望ましくない反応、および/または シス/トランス異性を引き起こし、HPLC上に明らかな不純物ピークを生じる。
本発明者らは、多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステルの製造方法と、最終的には、精製後に、酸化およびシス/トランス異性化不純物が最小限の、医薬品グレードの化合物を生じる、対応する多価不飽和ケトンを製造する方法を探究している。
<発明の要約>
本発明者らは、光延(Mitsonobu)反応の使用は、医薬的使用に十分な純度と収率を有する多価不飽和ケトンを通常、生じないことを見出した。しかし、本発明者らは、光延の化学は、特定の反応の順番を用い、かつ、少なくとも一つの抗酸化剤の存在下に反応を行えば、医薬的使用に適するとここに開示する特定の化合物を製造するのに用いうることを驚くべきことに見出した。より詳細には、望ましくない酸化とシス/トランス異性化が実質的に減らされるか、除去される、医薬的に許容される多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステル化合物を直接的に製造し、ここに説明する有利なケトン化合物に最終的に変換しうる方法を見出した。本発明の方法のプラクティスは、ここに記載するものを含む医薬的使用に適した種類豊富な多価不飽和ケトン化合物を製造することに用いることができる。
図1は、実験2の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%無し)である。 図2は、実験2の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%あり)である。 図3は、実験3の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%無し)である。 図4は、実験3の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%あり)である。 図5は、実験4の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%無し)である。 図6は、実験4の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%あり)である。 図7は、実験5の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%無し)である。 図8は、実験5の結果を示すHPLCクロマトグラム(面積%あり)である。
従って、本発明の目的は、ここに説明した有利なケトン化合物へ最終的に変換でき、望ましくない酸化と、シス/トランス異性化を実質的に減らすかまたは除去した、医薬的に許容される多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステル化合物を製造することである。本発明の方法には、抗酸化剤の存在下に特定の光延の化学を用いて、アルコールからエステル、より好ましくはチオエステルへの変換を含む。
また、本発明の目的は、(例えば、管理庁によりしばしば要求されるような)高純度で標的化合物を提供することである。前記多価不飽和アルコールの添加前に、反応中に本質的に全てのチオ酸または酸求核剤を脱プロトン化することにより、光延反応の状況において、これは達成することができると提案する。また、前記有利な効果は、前記アルコールを前記求核剤に添加する前に、前記多価不飽和アルコールを少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤と合せることにより、 しばしば、拡大することができるとも考えられている。驚くべきことに、前記抗酸化剤の存在は、光延化学の成功には影響しない。
好ましくは、前記多価不飽和ケトンの形成に向う次の工程は、同一または異なる医薬的に許容される抗酸化剤の存在下にも行われ、その結果、次の反応における酸化またはシス/トランス異性化の可能性を最小限にすることができる。
また、用いられた前記多価不飽和アルコールが、前記多価不飽和アルコールを製造するのに十分な条件下で、多価不飽和アルデヒドの適切な求電子性還元剤との接触を経て製造された場合も、本発明の範囲内である。また、緩和な求電子性還元剤の使用が、二重結合の望ましくない還元を減らし、それにより、合成全体のよりよい純度を達成するのに役立つとも考えられている。
従って、一つの観点から、本発明は、多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステルの製造方法を提供する。前記方法は、
(1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、カルボン酸またはチオ酸を、容器内全ての前記カルボン酸または前記チオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
(2)第2容器中に、多価不飽和アルコールと少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤とを混ぜ合わせる工程、および
(3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、前記多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステルを得る工程
を含む。
別の観点から、本発明は、多価不飽和チオールの製造方法を提供する。前記方法は、
(1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、多価不飽和チオ酸を、容器内すべての前記チオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
(2)第2容器中に、多価不飽和アルコールと少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤とを混ぜ合わせる工程、
(3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、前記多価不飽和チオエステルを得る工程、
(4)少なくとも一つの医薬的に許容され、工程(2)において用いられる抗酸化剤と同一または異なる抗酸化剤を工程(3)の前記多価不飽和チオエステルに添加し、多価不飽和チオールを得るのに十分な条件下で工程(3)の前記チオエステルを還元する工程
を含む。
別の観点から、本発明は、多価不飽和ケトン化合物の製造方法を提供する。前記方法は、
(1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、多価不飽和チオ酸を、容器内すべての前記チオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
(2)第2容器中に、多価不飽和アルコールと、少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤とを混ぜ合わせる工程、
(3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、前記多価不飽和チオエステルを得る工程、
(4)少なくとも一つの医薬的に許容され、工程(2)において用いられる抗酸化剤と同一または異なる抗酸化剤を工程(3)の前記多価不飽和チオエステルに添加し、多価不飽和チオールを得るのに十分な条件下で工程(3)の前記チオエステルを還元する工程、
(5)前記多価不飽和チオールを、化合物(LG)R3COX(式中、Xは電子求引基であり、R3は脱離基(LG)を運ぶアルキレン基である)
(例えば、LG−CH2−形成
Figure 2017501118
[式中、Xは電子求引基であり、LGは脱離基である])
と、任意にさらに添加した抗酸化剤の存在下、反応させ、ここに定義した観念的に式(II)の、多価不飽和ケトン化合物を得る工程を含む。
別の観点から、本発明は、ここに定義した方法の生成物を提供する。
別の観点から、本発明は、医薬的に許容される1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン(pentaein)−1−イル)チオ)プロパン−2−オンの製造方法を提供する。前記方法は、
A)第1容器中に、トリフェニルホスフィン、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)およびチオ酢酸を溶媒中で混ぜ合わせ、混合物を形成し、(好ましくは0〜5℃で約10〜60分間)その混合物を反応させ、完全な脱プロトン化が起こるようにさせる工程、
B)第2容器中に、(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン(pentaen)−1−オールと(+/−)−α−トコフェロールを混ぜ合せる工程;
C)前記第1容器と前記第2容器の内容物を(好ましくは10分から1時間)混合し、S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを製造する工程、
D)工程Cで製造した前記エステルを、前記エステルをHPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%になるまで精製する条件下で乾式フラッシュクロマトグラフィに付す工程、
E)工程Dで製造され、精製された前記エステルを、前記エステル基を還元する条件下で炭酸カリウムと(+/−)−α−トコフェロールと接触させ、対応するチオール(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,912,15−ペンタエン−1−チオール)を製造する工程、
F)工程Eで製造された前記チオールと、3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトンとを前記ケトン
Figure 2017501118
(式中、XはCF3である)を製造する条件下で接触させる工程、
G)工程Fで製造された前記粗ケトンを、前記ケトンをHPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%になるまで精製する条件下で乾式フラッシュクロマトグラフィにより精製する工程を含む。
別の観点から、本発明は、医薬的に許容される1,1,1−トリフルオロ−3−(((3Z,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−3,6,9,12,15−ペンタエン(pentaen)−1−イル)チオ)プロパン−2−オンの製造方法を提供する。前記方法は、以下の工程を含む:
A)第1容器中に、トリフェニルホスフィン、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)およびチオ酢酸を溶媒中で混ぜ合わせ、混合物を形成し、前記混合物を、好ましくは0〜5℃で約10〜60分間、反応させ、完全な脱プロトン化を生じさせる工程、
B)第2容器中に、(3Z,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−3,6,9,12,15−ペンタエン−1−オールおよび(+/−)−α−トコフェロールを混ぜ合わせる工程、
C)前記第1容器と前記第2容器の内容物を、好ましくは10分から1時間の間、混合し、S−((3Z,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−3,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを製造する工程、
D)工程Cで製造された前記エステルを、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%になるまで前記エステルを精製する条件下で、乾式フラッシュクロマトグラフィに付す工程、
E)工程Dで製造された精製された前記エステルを、炭酸カリウムおよび(+/−)−α−トコフェロールと接触させ、前記エステル基を還元し、対応するチオール(3Z,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−3,6,9,12,15−ペンタエン−1−チオールを製造する工程、
F)工程Eで製造された前記チオールを、粗
Figure 2017501118
[式中、XはCF3である]
を製造する条件下で、3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトンと接触させる工程、
G)工程Fで製造された前記粗ケトンを、前記ケトンをHPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%になるまで精製する条件下で、乾式フラッシュクロマトグラフィで精製する工程。
本発明のいずれの方法においても、前記多価不飽和 アルコールがDIBAHのような求電子性還元剤の存在下に、対応するアルデヒドの還元により得られた場合、さらに好ましい。
別の観点から、本発明は、ここに定義する方法の生成物と、少なくとも一つの 医薬的に許容される 賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
<定義>
用語「多価不飽和 エステルまたは多価不飽和チオエステル」は、多重の二重結合と、もちろん、エステルまたはチオエステル基を含む炭化水素鎖を含む化合物を指す。
多価不飽和アルコールは、多重の二重結合と、もちろん、アルコールを含む炭化水素鎖を含む化合物を指す。
多価不飽和ケトンは、多重の二重結合と、もちとん、ケトンを含む炭化水素鎖を含む化合物を指す。
チオは、−CO−SH基を含む化合物である。本発明の方法の工程(1)で用いられる前記カルボン酸またはチオ酸は、一般に、250g/mol以下のMwを有する低Mw化合物である。
一般に、本発明のいずれの多価不飽和ケトンも、500g/mol未満、好ましくは450g/mol以下、より好ましくは400g/mol以下のMwを有するであろう。
用語「医薬的に許容される」は、一般に非毒性であり、生物学的に望ましくないことはなく、獣医学的使用および/またはヒトの医薬的使用に適する薬剤を製造するのに有用であることを意味する。
<発明の詳細な説明>
本発明は、多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステル、最終的には多価不飽和チオールおよび多価不飽和ケトンの製造方法に関する。この方法は、高い収率と純度を提供する。特に、適切な精製の後、本発明の工程により、薬剤グレードの標的化合物を提供することが予測される。
本発明は、規制当局がしばしば要求する収率と純度で、化合物を提供する条件の下、多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステルの生成、どのようなチオエステルも還元してチオールを形成、およびそのチオールをケトンへ変換することの方法を提供する。 例えば、理論に束縛されるものではないが、上記工程(3)における望まれていない酸化生成物は、脱プロトン化により、低下し、または完全に除去され得、ゆえに、工程(2)における多価不飽和アルコールの添加前に、工程(1)において本質的に全ての前記酸/チオ酸を消費すると考えられる。したがって、混合工程(3)は、最初の工程(1)において本質的に全ての前記酸/チオ酸の反応の後、生じる。
工程(2)で用いられる本発明の出発物質は、多価不飽和アルコールである。そのアルコールは、式(I)のものが好ましい。

R-OH (I)

[式中、Rは、S、O、N、SO、SO2から選択される1以上のヘテロ原子またはヘテロ原子群により任意に割り込まれた、任意に置換されたC9-23不飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの二重結合を含む。]
いずれの基Rにおいても、二重結合は共役していないのが好ましい。基Rは、好ましくは5から9の二重結合、好ましくは5から8の二重結合、例えば、5から7の二重結合(例えば5または6つの二重結合)を含む。
また、前記二重結合が、ヒドロキシル基と共役していないのが好ましい。
基R中に存在する前記二重結合は、シスまたはトランス配置であるが、しかしながら、存在する前記二重結合の大部分(すなわち、少なくとも50%)が、シス配置であるのが好ましい。さらに有利な実施形態において、基R中の全ての二重結合がシス配置であるか、または、OH基に最も近い二重結合(これはトランス配置であってもよい)を除いた全ての二重結合が、シス配置である。
基Rは、9から23の炭素原子、好ましくは11から19の炭素原子、特に16から18の炭素原子を有していてもよい。炭素原子は、R基において、直鎖状であるのが好ましい。
前記基Rは、少なくとも一つのヘテロ原子またはヘテロ原子群により割り込まれてもよいが、これは好ましくはなく、前記基R骨格は、炭素原子のみを含むのが好ましい。
前記基Rは、任意に置換されてもよく、例えば、3つまでの置換基を有してもよく、置換基は、例えば、ハロ、Cl-6アルキル(例えば、メチル)、C1-6アルコキシから選択される。置換基が存在する場合、その置換基は、非極性で小型なもの、例えば、メチル基が好ましい。しかしながら、前記R基が置換されていない場合は、好ましい。
前記R基は、直鎖状であるのが好ましく、すなわち、前記R鎖中に枝分かれが無いのが好ましい。長鎖状脂肪酸または長鎖状エステルのような天然からの誘導体が好ましい。特に、前記R基は、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸から誘導されてもよい。
従って、本発明における前記多価不飽和アルコールの使用は、対応する脂肪酸またはアルデヒド(スキーム1中で以下に説明するように)から誘導されてもよい。さらに、我々は、前記多価不飽和アルコールが対応するアルデヒドから得られる場合、多価不飽和アルコールは、多価不飽和アルデヒドと適切な求電子性還元剤と前記多価不飽和アルコールを製造するのに十分な条件下で接触させることを含む反応中で得られることが好ましいことも見出した。理論に束縛されるものではないが、緩和な求電子性還元剤が、二重結合の望ましくない還元を減らし、その結果、合成全体が、よりよい収率と純度を達成するのを助けると考えられる。
水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)の使用が、この点で特に好ましい。本発明者らは、他のよく知られた還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)の幾つかは、生成する不純物の数を増加させるため、この還元においてうまく使用できなかったことを驚くべきことに見出した。驚くべきことに、DIBAHの使用により、異性化を低下させ、それゆえ、生成する不純物を最小限にしているようであある。
本発明の方法の第1工程には、光延化学を含む。この反応は、典型的には、前記アルコール、前記カルボン酸およびトリフェニルホスフィンの溶媒中への溶解、次いで、溶媒中に溶解したアゾジカルボン酸の添加を含む。しかしながら、そのような工程は、本件においては起こらない。
本発明の化合物の関連で、酸化および/または異性化を避けるため、反応順序に変化を提案する。我々が使用する反応順序により、著しい異性化または酸化無しに我々の標的化合物を製造する機会を我々に提供することは、驚くべきことである。従って、我々の発明以前は、我々が使用する特定の反応順序が、望ましくない酸化およびシス/トランス異性化の問題を解決しうるであろうことは、明確ではなかった。さらに、我々が使用した反応順序は、前記抗酸化剤の存在においても機能したことは、さらに驚くべきことであった。
光延反応において使用が知られているアゾジカルボキシラートおよびホスフィン化合物のいずれも、ここで用いることができる。ホスフィンは、式R’3P(R=有機誘導体、典型的には、アルキル、アリールまたはヘテロアリール基)のよく知られた有機リン化合物の一群である。アゾジカルボキシラートは、一般式R’’OOC−N=N−COO−R’’(式中、R’’は、有機誘導体、例えば、アルキル基またはアリール基である)の化合物である。
従って、好ましいホスフィンは、以下の式を含む:

PY3

[式中、Yは、C1−10アルキル、C6−10アリール、C7−12アリールアルキル、C7−12アルキルアリール、C3−10シクロアルキル、C4−10−ヘテロアリール、C6−10アリールO−、このうちいずれかが、NH2、NHRaまたはNRa 2(式中、RaはC1−6アルキルである)から選択される1以上の基で任意に選択されていてもよい。]。
適切なヘテロアリール基は、ピリジンを含む。
本発明の方法において用いるのに好ましいホスフィンは、トリアリールホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)または、アルキルアリールホスフィン(例えば、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘキシルホスフィンおよびトリ−n−オクチルホスフィンである。他の興味あるホスフィンには、4−(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィンおよびフェノキシジフェニルホスフィンが含まれる。トリアリールホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)の使用も、特に好ましい。
好ましいアゾジカルボキシラート化合物は、以下の式のものである。

ZOOC−N=N−COO−Z

式中、各Zは、独立して、C1−10アルキル、C6−10アリール、C7−12アリールアルキル、C7−12アルキルアリール、C4−10−ヘテロアリール、C4−10−複素環式またはC3−10シクロアルキルであり、このうちいずれも、ハロゲン化物から選択された1以上の基により任意に置換されてもよい。両方のZ基は、同一であるのが好ましい。適切なヘテロアリール基には、ピリジンを含む。適切な複素環には、ピペリジンまたはピペラジンを含む。
適切なアゾジカルボキシラート化合物は、任意に置換されたC1−6−アルキルエステル(例えば、ジエチルアゾジカルボキシラート(DEAD)、ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD))または任意に置換されたアリールエステル(例えば、ジ−4−クロロベンジルアゾジカルボキシラート)に典型的に基づく。興味のある他の化合物には、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジンを含む。
従って、一般に、本発明の方法において用いられる前記ホスフィンおよび前記アゾジカルボキシラート化合物の性質は、重要ではなく、文献において知られている公知のホスフィンまたはアゾジカルボキシラート剤のいずれも、用いることができる。
前記多価不飽和アルコールは、カルボン酸またはチオ酸と反応する。前記カルボン酸またはチオ酸は、通常、低分子量、例えば、250g/モル以下である。前記カルボン酸またはチオ酸は、モノ酸またはモノチオ酸であるのが好ましい。最も好ましくは、化合物R1COOHまたはR1COSH[式中、R1は、C1−6アルキル、C6−10アリール基、C7−12アルキルアリール基またはC7−12アリールアルキル基(例えば、ベンジルまたはトリル)である]である。R1がエチルまたはMe、特にMeであるのが理想的である。
従って、本発明において、ここの定義する化合物R−OHと、化合物R1COOHまたはR1COSHの反応により、化合物R−OCOR1またはRSCOR1を生じる。
本発明の方法の工程(2)には、抗酸化剤の存在、すなわち、酸化反応を抑制する化合物の存在を必要とする。前記抗酸化剤は、500 g/モル以下の小分子、例えば、250g/モル以下の小分子であるのが好ましい。前記抗酸化剤は、理想的には、FDAにより使用が承認されているべきである。
本発明の方法の工程(2)において用いられる前記抗酸化剤は、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、プロピル没食子酸、トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、チオグリセロール、チオグリコール酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、エデト酸4ナトリウムまたはEDTAが好ましい。
トコフェロール、特に(+/−)−アルファ−トコフェロールの使用は、特に好ましい。
本発明の化合物は、主に医薬用途用であり、故に、用いる抗酸化剤のいずれも、医薬的に許容されるのが好ましいと理解される。
前記多価不飽和アルコールに添加される抗酸化剤の量は、前記多価不飽和アルコールの0.01から1モル%、0.1から0.5モル%であってもよい。
典型的な光延反応は、複雑であり、反応中間体の同定および活性に関して議論があると報告されている。しかしながら、本発明者らは、上記のように、工程(3)において、多価不飽和アルコールを添加する前に、本質的に全ての前記酸/チオ酸を消費し、収率と、より重要なことは、生じる多価不飽和 エステル/チオエステルの純度を多くの薬剤適用に許容可能なレベルまで純度を実質的に上げることが可能であることを、見出した。彼らは、また、多くの光延反応において用いられる試薬や条件により、破壊されたり、またはそうでなければ、ブロックされたり不活性化されたりすることなく、医薬的に許容される抗酸化剤の存在を、本発明の方法において用いて、望ましくないシス/トランス異性化を減じるのに役立つことも、見出した。前記抗酸化剤の存在が、反応の成功に影響しないことは、驚くべきことである。光延反応が実際に機能しているメカニズムは不明であるが、抗酸化剤のような更なる試薬の存在が、反応において製造される多数の一過性な中間体種と緩衝するかどうかは、常に疑問符が存在する。
典型的には、1:1:1比の前記試薬を、光延反応において用いることができる。クレームした方法において、前記酸またはチオ酸を本質的に完全に、好ましくは完全に、脱プロトン化させるために、十分なホスフィンおよびアゾジカルボキシラートを使用を要件とする。従って、特に、過剰な酸またはチオ酸が存在すべきではない。実際、用いられる光延試薬が過剰であると、好ましい。
工程(1)の反応は、低温、好ましくは、10℃未満、例えば、0から5℃を用いることで調整できる。工程(1)の混合物は、10分から1時間(例えば、少なくとも20分または少なくとも30分)の間、放置し、前記酸またはチオ酸のその対応するカルボキシラートイオンまたはチオカルボキシラートイオンへの脱プロトン化を確実にするのが理想的である。完全な脱プロトン化を確実にするため、前記酸またはチオ酢酸に対して、過剰な光延試薬が存在すべきであると、理解される。
従って、前記酸またはチオ酸に対して、少なくとも1.1モル当量の前記ホスフィンおよび前記アゾカルボキシラートの両試薬が存在するのが理想的である。
ホスフィン、アゾジカルボキシラートおよび酸/チオ酸の混合物が、溶液、特に透明な溶液を形成するのが理想的である。反応が生じる容器の側に材料を置かないべきである。前記脱プロトン化が繰り返し起こるため、正確に攪拌すると、完全な脱プロトン化は、非常にすばやく(それ未満でなければ、数秒のうちに)、確実に10分の間以内に、起こる。
完全な脱プロトン化が起こらない場合、高いレベルの純度の観点から、最終生成物において、それ自体が、現れる。完全な脱プロトン化無しでは、最終製品において10重量%以上の不純物が確認されうる。
純度の観点から有利な効果は、前記アルコールを工程(1)の反応材料に添加する前に、工程(2)において前記多価不飽和アルコールを少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤と混ぜ合わせることにより、増強されると考えられる。これらの工程および、前記多価不飽和ケトンを製造するための続く工程は、同一または異なる医薬的に許容される抗酸化剤の存在下に行われ、反応におけるシス/トランス異性化の可能性を最小限にするのが好ましい。
本発明の方法の工程(3)における実際の反応は、10分から1時間かかってもよく、都合のよい温度、例えば、室温で行われてもよい。
典型的には、多価不飽和 アルコールのモル量は、存在する酸またはチオ酸の量に対してであると理解されるであろう。
前記チオエステルまたはエステルが一旦形成すると、通常のやり方で後処理(例えば、乾式フラッシュクロマトグラフィに付すような)されうる。前記エステルまたはチオエステルは、この時点でHPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%であるのが理想的である。より好ましくは、純度は91%以上であり、例えば、92%以上であり、理想的には93%以上であり、特に94%または、95%以上ですら、ある。
ここの方法は、高い収率、例えば70%以上の収率で、前記エステルまたはチオエステルを製造することが見出された。また、HPLCで検出可能な不純物の存在を除去しうることも、実施例において、示した。
好ましい実施形態において、本発明の方法において形成された前記チオエステルは、その後、それ自体、対応するチオールへ変換される。このことは、通常の還元方法(例えば、水素化ジイソブチルアルミニウムを用いて)のいずれを用いても、理論的には行うことができるが、副反応と不純物形成と存在する二重結合のシス/トランス異性化を避けるため、本発明者らは、この反応を抗酸化剤の存在下で行うことを提案する。前記抗酸化剤は、理論的には、前記チオエステルの形成からの残留した抗酸化剤が存在し、更なる抗酸化剤は必要ないが、この段階で添加するのが好ましい。しかしながら、典型的には、前記チオエステルの形成の間に添加された抗酸化剤のいずれも、チオエステルの精製の間に除去されるので、更なる抗酸化剤が必要である。
その抗酸化剤は、上記方法の工程(2)において添加されたものと同一または異なっていてもよい。前記抗酸化剤は、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、チオグリセロール、チオグリコール酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、エデト酸4ナトリウムまたはEDTAから選択されるのが好ましい。
トコフェロールの使用が特に好ましい。添加/存在する抗酸化剤の量は、また、存在する多価不飽和チオエステルに対して、ほぼ0.01から1モル%、好ましくは0.1から0.5モル%の程度であってもよい。
また、前記の有利な効果は、前記多価不飽和チオールを、多価不飽和チオエステルを適切な緩和な求電子性還元剤と、前記多価不飽和チオールを製造するのに十分な条件下で接触させることを含む方法において製造することにより、さらに増強することができる。理論に束縛されるものではないが、以下に説明するような緩和な求電子性還元剤の使用により、二重結合の望ましくない還元を減らし、それにより、合成全体が、より良い収率と純度を達成するのを助けると考えられる。
適切な還元剤は、炭酸カリウムのような金属炭酸塩が理想的である。メタノールのような溶媒の使用が適切である。
従って、更なる観点によれば、本発明は、医薬的に許容される多価不飽和チオールを製造する方法を提供する。この方法は、
(1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、チオ酸を、容器内すべてのチオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
(2)第2容器中に、多価不飽和アルコールおよび少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤を混ぜ合わせる工程、
(3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を、対応する多価不飽和チオエステルを製造するのに十分な条件下で混合する工程、
(4)前記多価不飽和チオエステルを、第2の医薬的に許容される抗酸化剤を接触させ、前記多価不飽和 チオールを製造するのに十分な条件下で、前記生じた混合物を反応させる工程
を含む。
従って、好ましいチオエステルは、式R−SCOR1(式中、RとR1は先に定義したとおりである)のものである。好ましいチオールは、単なるRSHである。
前記チオールは、この時点で、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%であるのが理想的である。より好ましくは、純度は、91%以上であり、例えば92%以上、理想的には93%以上、特に94%以上、95%以上でさえある。
ここの方法は、高い収率、例えば70%以上の収率でチオールを製造することを見出した。また、実施例において示したように、HPLCで検出可能な不純物の存在を除去しうる。
もちろん、本発明の方法は、理想的には、医薬的使用に適する、様々な医薬的に許容される多価不飽和ケトンを標的とする。好ましい化合物には、電子求引基を含むケトン基と、前記ケトン基からα、β、γまたはδ位に硫黄原子を含む。電子求引基またはEWGは、反応中心から電子を遠ざけるように引き寄せる。
本発明の好ましい多価不飽和ケトン標的は、従って式(II)のものである。

2−CO−X (II)

[式中、R2は、前記ケトン基からα、β、γまたはδ位にS原子により割り込まれた、C10-24多価不飽和炭化水素基であり、
Xは、電子求引基(EWG)である。]
本発明のいずれの化合物についても適切な電子求引基Xは、CN、フェニル、CHal3、CHal2H、CHalH2(式中、Halはハロゲン、特にFを意味する)。前記EWGは、特にCHal3、例えば、CF3である。
前記S原子が前記カルボニルに対してベータである場合、最も好ましい。
いずれの基R2においても、二重結合は共役していないのが好ましい。前記基R2は、好ましくは5から9つの二重結合、好ましくは5または8つの二重結合、例えば、5から7つの二重結合、例えば、5または6つの二重結合を含む。
前記二重結合が前記ヒドロキシル基と共役していないのも、好ましい。
基R2中に存在する前記二重結合は、シスまたはトランス配置であってもよく、しかしながら、存在する二重結合の大部分(すなわち、少なくとも50%)は、シス配置であるのが好ましい。さらに有利な実施形態において、基R2中の全ての二重結合は、シス配置であるか、または、全ての二重結合は、前記S基(これはトランス配置であってもよい)に最も近い二重結合を除いて、シス配置である。
基R2は、10から24の炭素原子、好ましくは12から20の炭素原子、特に17から19の炭素原子を有してもよい。
好ましい実施形態において、本発明は、医薬的に許容される1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オンの製造方法を提供する(以下のスキーム1も参照)
Figure 2017501118
[式中、XはCF3である]または、関連する化合物
Figure 2017501118
[式中、XはCF3である]。
従って、本発明の方法の最後の工程には、式(II)の所望の化合物を形成する、適切なケトンとの前記チオールの反応を含む。前記反応性ケトン化合物は、式(LG)R3CO−X[式中、R3は、工程(2)において用いられる前記多価不飽和アルコールのR基と一緒になって、式(II)における基R2を形成する]のものが好ましい、すなわち、
Figure 2017501118
3は、C1−3−アルキレン(例えば、メチレン)が好ましい。LGは、脱離基を示す。前記脱離基は、前記チオール基により、求核的に置換される。脱離基は、異種結合開裂における一対の電子と共に離れる分子フラグメントである。もちろん、(LG)R3−COXは、化合物LG−CH2−COX[式中、LGは脱離基(たとえば、ハロゲン化物、トシル、メシル等である)]を表すのが好ましい。LGは、ハロゲン化物(例えば、Br)であるのが理想的である。Xは、上記式中で定義したような電子求引基であり、また、CF3が好ましい。(LG)R3−COXは、BrCH2−COCF3が最も好ましい。
この最終反応工程は、ここに定義したような更なる抗酸化剤の存在下に行われてもよい。また、抗酸化剤は、前記チオエステル還元工程から持ち越されたため、内在的に存在してもよく、そのシナリオにおいて、更なる抗酸化剤を添加する必要はない。しかしながら、例えば、形成された前記チオールが精製され、故に抗酸化剤が除去された場合、更なる抗酸化剤を添加するのも、本発明の範囲内である。
トコフェロールの使用は、抗酸化剤を用いた場合には、特に好ましい。添加/存在する抗酸化剤の量は、また、多価不飽和チオールの内容物に対して、ほぼ0.01から1モル%、好ましくは0.1から0.5モル%程度であってもよい。
ここに説明するいずれの反応も、酸素不在下、例えば、Ar雰囲気下で、行う必要があることが、理解されるであろう。
前記ケトンは、この時点で、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%であるのが理想的である。より好ましくは、純度は91%以上、例えば92%以上、理想的には93%以上、特に94%以上、95%以上でさえ、ある。
ここに記載の方法は、前記ケトンを高い収率、例えば70%以上の収率で製造することが、見出された。また、実施例において示したように、HPLCで検出可能な不純物の存在を、除去可能である。
最も好ましい実施形態において、本発明の方法は、少なくとも以下の工程を含む:
A)第1容器中に、ホスフィン、アゾジカルボキシラートおよびチオ酢酸を溶媒中に混ぜ合わせ、混合物を形成し、前記チオ酢酸の完全な脱プロトン化が起こるようにする工程、
B)第2容器中に、(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−オール(C18アリルアルコール)および抗酸化剤を混ぜ合わせる工程、
C)前記第1溶液および前記第2容器の内容物を混合し、S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを製造する工程。
より詳細には、本発明の方法は、以下の工程を要件とする:
A)第1容器中に、トリフェニルホスフィン、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)およびチオ酢酸を溶媒中に混ぜ合わせ、前記チオ酢酸の完全な脱プロトン化が起こるようにする工程、
B)第2容器中に、(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−オールおよびトコフェロールを混ぜ合わせる工程、
C)前記第1容器および前記第2容器の内容物を混合し、S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを製造する工程。
そして、前記S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートが、
D)前記エステルを、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%まで精製する条件下で乾式フラッシュクロマトグラフィに付される
の場合、さらに好ましい。
さらに、工程CまたはDのいずれかの後、
E) 任意に精製された工程CまたはDにおいて製造された前記S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを、金属炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)およびトコフェロールと、前記エステル基を還元し、対応するチオール(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,912,15−ペンタエン−1−チオール)を製造する条件下で接触させる場合、好ましい。
そして、F)工程Eで製造された前記チオールを、
Figure 2017501118
[式中、XはCF3である]
を製造する条件下で、3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトンと接触させる場合、好ましい。
その化合物は、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%まで乾式フラッシュクロマトグラフィにおいて精製され、医薬的に許容される化合物を製造することができる。
別の観点において、本発明は、医薬的に許容される1,1,1−トリフルオロ−3−(((3Z,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−3,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オン
Figure 2017501118
[式中、XはCF3である]を製造する方法、次いで、前記出発物質のアルコールを(3Z,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−3,6,9,12,15−ペンタエン−1−オールへ適切に置換する上記プロトコールを提供する。
本発明の方法において製造された前記化合物は、多種の適用、例えば慢性炎症疾患の治療を有すると理解される。これらは、公知の技術を用いて、医薬組成物として製剤化される。そのような技術の更なる説明は、ここには必要ない。
本発明は、以下の実施例および図を参照して説明するが、これに限定されない。
図1から8は、以下の実施例の製造物を示すHPLCクロマトグラムである。
<実施例>
実施例1:1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オン合成の概要
以下の情報は、前記多価不飽和ケトンの合成の一般的な概要を示す。スキーム1を参照して、工程Aおよび工程Bは、以下の実施例6においてより詳細に言及する。
前記C18アリルアルコールを製造する全ての工程(スキーム1、以下)は、アルデヒドからアルコールへの還元において、水素化ホウ素ナトリウムの代わりに水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)を用いて、前記トラン二重結合の過剰還元を減らすのに用いた以外は、本質的にJ. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2000, 2271−2276 (SkattebolおよびHolmeide)中に記載されたように行う。最後の3つの工程の間(スキーム1、以下)、以下の対策/変更を行った:
全ての反応を、アルゴン雰囲気したで行った。ガス・フード内のライトは消した。光保護に関する他の対策は必要なかった。さらに、最後の3つの工程(それぞれ、A、BおよびCと呼ぶ)は、アルファ−トコフェロールの存在下に行う。光延反応における試薬添加の順番は、異性化を避けるのに、重要と考えられる。前記チオ酢酸の全てが、C18アリルアルコールの導入前に、完全に反応することが、非常に重要と理解される。さらに、工程(A)の粗生成物および精製生成物の両方を、セプタムでキャップをしてアルゴンをフラッシュし、保管時に冷凍庫内に置いた。工程(B)は、精製無しで行うが、素生成物は、また、保管が必要な場合、アルゴン雰囲気下で、−18℃で保管する。最後の工程の間、粗生成物と精製した材料の両方をアルゴン下に保つことを確実にするよう、最大限の注意が必要である。
Figure 2017501118
スキーム 1:1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オンの合成の概要

比較例2:多価不飽和チオエステルの製造により、主な生成物ピークの近くに移動する汚染物質を製造する。
Figure 2017501118
ガス・フード内のライトは消した。光保護に関するほかの対策は、必要と考えられていない。アルゴン下、以下の溶液をガラス製栓のある200mlのメスフラスコ中で調製した。
(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−オール((1),15.0g,57.6mmol)、チオ酢酸(5.00ml,70.0mmol)およびアルファ−トコフェロール(30.4mg)を、無水THF(150ml)中で混ぜ合わせた。その溶液を0℃まで冷却した。
1リットル丸底フラスコ中に、トリフェニルホスフィン(18.1g,69.1mmol)、次いで無水THF(300ml)を入れた。そのフラスコに攪拌子を入れ、アルゴンでフラッシュし、セプタムを付けた氷浴中に浸漬させ、0℃で10分間攪拌した。ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(13.6ml,57.6mmol)を、セプタムを通してシリンジを用いて一度に添加し、反応混合物を0℃で30分間攪拌した。(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−オール、チオ酢酸およびアルファ−トコフェロールの無水THF中の予め冷却した溶液を、一度に添加した。前記冷却槽を取り除き、反応混合物を1時間攪拌した。透明な黄色溶液を減圧下で蒸発させ(ロータリーエバポレータ)、THFを除去した。残渣に、ジエチルエーテル(120ml)を添加し、そのフラスコを10分間室温でロータリーエバポレータ上で回転させた。その混合物を焼結ガラス(タイプ3)を用いて濾過し、残渣をエーテル(2x50ml)ですすいだ。合せた炉液を減圧下に蒸発させた(ロータリーエバポレータ)。残渣にヘプタン(100ml)を添加し、そのフラスコを室温で10分間回転させた。前記焼結ガラスを通して濾過し、ヘプタン(2x25ml)ですすいで、濃縮して、24.8gの粗生成物を黄色油として得た。乾式フラッシュクロマトグラフィおよびフラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc勾配)により精製し、12.5グラム(68%)のS−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを無色油として得た。
図1および2は、合成における生成物のクロマトグラムを示す。前記副生成物は、図1と2における主な生成物ピークのすぐ右に肩として確認できる。
実施例3:前記多価不飽和アルコールの添加前にチオ酢酸を予め反応させ、汚染物質の存在を減らす。
Figure 2017501118
ガス・フードにおけるライトは消した。光保護に関するほかの対策は、必要ないと考えられる。
トリフェニルホスフィン(6.06g,23.1mmol)を計量し、磁石式攪拌子を備えた1リットルの丸底フラスコへ移し、無水THF(300ml)中に溶解させ、アルゴンでフラッシュし、セプタムで栓をし、氷/水浴中に浸漬させる。その溶液を3.5℃で11分間攪拌する。
ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)(4.50ml,20.8mmol)を前記反応混合物に一度に加え、混合物を0.5℃で32分間攪拌する。
チオ酢酸(1.50ml,21mmol)を前記反応混合物に一度で添加し、その混合物を3.5℃で15分間攪拌する。
アルファ−トコフェロール(9.8mg)およびオクタデカ−2(E),6(Z),9(Z),12(Z),15(Z)−ペンタエン−1−オール(5.00g,19.2mmol)を計量し、三角フラスコに移し、無水THF(50mL)中に溶解させ、一度に前記反応混合物へ添加した。添加後、前記冷却槽を取り除き、前記混合物を47分間攪拌した。
前記反応混合物を減圧下に濃縮させた。残渣に、ジエチルエーテル(40ml)を添加し、そのフラスコをロータリーエバポレータ上で10分間室温で回転させた。前記混合物を焼結ガラス(タイプ3)を通して濾過し、残渣をエーテル(2x15ml)でゆすいた。合せたろ液を減圧下に蒸発させた(ロータリーエバポレータ)。残渣に、ヘプタン(35ml)を添加し、そのフラスコを室温で10分間室温で回転させた。前記焼結ガラスを通して濾過し、ヘプタン(2x10ml)ですすぎ、濃縮することにより、黄色油の粗生成物を得た。乾式フラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc勾配)により精製し、4.52グラム(74%)のS−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを無色油として得た。
図3と4は、実施例2から不純物が存在しないことを示す。
比較例4:抗酸化剤無しの多価不飽和トリフルオロケトンの製造により、主な生成物ピークの近くに移動する汚染物質を製造
Figure 2017501118
(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−チオール(52.36g,189.4mmol)のエタノール(1200ml)と水(805ml)中の溶液に、炭酸水素ナトリウム(33.48g,397.7mmol)を添加し、反応混合物を室温で窒素下で15分間攪拌した。3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトン(23.6ml,227.3mmol)を一度に添加した。反応混合物を40分間室温で窒素下で攪拌し、分液漏斗に移し、ヘプタン(2x1リットル)で水相を抽出した。有機層をブライン(250ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して、濃縮した。乾式フラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc勾配)により、43.19g(59%)の1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オンを薄黄色油で得た。
以下の図は、抗酸化剤(アルファ−トコフェロール)の不在下でAVX001の合成における生成物のクロマトグラムを示す。図5および6において、主な生成物ピークの近くに移動した肩として、汚染物質が確認できる。
実施例5:抗酸化剤を用いる多価不飽和トリフルオロケトンの製造により、汚染物質の存在を除去する。
Figure 2017501118
(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−チオール(5.06g,18.3mmol)のエタノール(120ml)および水(80ml)中溶液に、炭酸水素ナトリウム(3.23g,38.43mmol)を添加し、反応混合物を室温で窒素下に15分間攪拌した。3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトン(2.3ml,22.0mmol)を一度に添加した。反応混合物を35分間室温で窒素下に攪拌し、分液漏斗に移して、水相をヘプタン(2x100ml)で抽出した。有機層をブライン(30ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc勾配)により、5.51g(78%)の1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オンを無色油として得た。図7および8は、抗酸化剤(アルファ−トコフェロール)の存在によりトリフルオロケトンの合成における生成物のクロマトグラムを示す。ガス・フードにおけるライトを消した。光保護に関するほかの対策は、必要と考えられない。
実施例6:1,1,1−トリフルオロ−3−(((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)チオ)プロパン−2−オン(4)の合成
以下に、前記多価不飽和 トリフルオロケトンを製造する方法を示す。望ましくない汚染物質の存在を取り除くか、または減らすために、前記多価不飽和アルコールを添加する前に、チオ酸を別の反応において消費した。また、望ましくない酸化を減らすか除去するために、アルファ−トコフェロールを別の反応容器において前記アルコールと混合した。以下に示す、これらの工程と他は、化合物の収率と純度を93%以上(面積%)に増加させることを見出した。
A.工程A(上記スキーム1参照)
トリフェニルホスフィンを計量し(6.05g±0.10g)、磁石式攪拌子を備えた1リットルの丸底フラスコへ移し、無水THF(310mL±15mL)中に溶解させ、アルゴンでフラッシュし、セプタムで蓋をし、氷/水浴中に浸漬された。その溶液を0〜5℃で10〜20分間攪拌した。ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)(4.55mL±0.09mL)を一度に反応混合物に添加した。その混合物を0−5℃で30〜40分間攪拌した。チオ酢酸(1.50mL±0.03mL)(A)を反応混合物に一度で添加した。その混合物を0〜5℃で15〜20分間攪拌した。
アルファ−トコフェロール(10mg±0.2mg)およびオクタデカ−2(E),6(Z),9(Z),12(Z),15(Z)−ペンタエン−1−オール(C−18アルコール)(A)を、系量し(5.00g±0.10g)、三角フラスコに移して、無水THF(50mL±2.5mL)中に溶解させ、そして、一度に反応混合物に添加した。
添加の後、冷却槽を取り外して、混合物を45〜55分間攪拌した。反応混合物を減圧下に濃縮した。水浴中の温度は30℃以下であった。生じた粗生成物は、HPLCで分析した(下記参照)。残渣をアルゴンでフラッシュし、セプタムで栓をし、冷凍庫に置いた。
この合成を3回行い、バッチを合わせて、クロマトグラフィーによる精製に付した。
[精製]承認基準を通過した粗生成物のみを、合せた。残渣に、ヘプタン(50mL±2.5mL)を添加し、フラスコをローターベーパーで5〜15分間室温で回転させた。その混合物を焼結ガラス漏斗(グレード3)を通して濾過した。ヘプタン(25ml±1mL)を反応フラスコに添加し、渦を任せて、焼結ガラス漏斗を通して濾過した。沈殿物をヘプタン(25ml±1mL)で洗浄した。ろ液と洗浄液とを減圧下に濃縮し、水浴中の温度は、30℃以下であった。残渣をアルゴンでフラッシュし、セプタムで栓をし、冷凍庫内において、保管した。
[乾式フラッシュクロマトグラフィ]シリカゲル(500g±25g)を1000mL焼結ガラス漏斗(グレード3)へ移し、ヘプタン500mLで予め溶出させた。ヘプタン20〜40mLを粗生成物に添加し、その混合物をカラム上に載せた。そのカラムを250mL±25mLフラクションで溶出させた。段階的三角フラスコ250mLは、この目的に対して十分な精度があった。ヘプタン:EtOAc(100:1)溶離液を調製する際、25mLのEtOAcを予め密封したままの2500mLヘプタンフラスコへ添加することは、十分に正確である。フラクションを、TLC(溶離液はヘプタン:EtOAc 95:5)で分析した。Rfが約0.4の生成物は、PMA浸液またはモリブデン酸アンモニウム/硫酸セリウム浸液で染色した。生成物全体がカラムから出るまで、溶出を続けた。生成物が純度が93%以上(面積%)で存在し、RRT=1.03のピークが4%以下(面積%)であり、RRT=0.59のピークが1%以下(面積%)であるフラクションを集めた。物質を1リットルの丸底フラスコに移し、減圧下、温度≦35℃に蒸発させ、無色油状の生成物13.5(73.8%)を得た。生成物は、アルゴン雰囲気下で約−18℃で保管した。
B.合成工程B−前記スキーム1参照
[溶液の調製]濃HCl(12.3±0.25mL)を幾らかの水道水を含む250mL目盛付シリンダーに添加し、更なる水道水で印(150mL)まで満たして、混合した。NaCl(≧40g)を三角フラスコ中で水道水(110mL±10mL)と混合した。ガス・フード内のライトは消した。光保護に関するほかの対策は、必要と考えなかった。アルファ−トコフェロール(27.2mg)を計量し、MeOH(130ml)を計量し、溶解させて、チオ酢酸S−オクタデカ−2(E),6(Z),9(Z),12(Z),15(Z)−ペンタエニルエステル(13.5g)を含む、磁石式攪拌子と100ml滴下漏斗を備えた1リットル丸底フラスコへ移した。K2CO3(6.45g)を反応混合物へ一度に加えた。アルゴンでフラッシュし、セプタムで栓をした。室温で30分から40分間攪拌した。反応フラスコを、氷/水浴中に浸漬させ、1MのHCl(150mL)を、滴下漏斗を使って注意深く添加し、その後、分液漏斗に移し、ヘプタン[2x200mL]で抽出した。合せた有機相をブライン(100mL)で洗浄し、磁石式攪拌子を備えた三角フラスコへ移し、Na2SO4(70.4g)を添加した。必要であれば、更なるNa2SO4を添加した。その懸濁液を10〜20分間攪拌した。その懸濁液を濾過し、その濾過ケーキをヘプタン(≧25mL)でゆすぎ、1Lの丸底フラスコに移し、減圧下に温度≦35℃で蒸発させた。この粗生成物(12.0g,定量的収率)を更なる精製無しに次の工程で用いた。この生成物をアルゴン雰囲気下で−18℃以下で保管した。
C.多価不飽和トリフルオロケトンの製造(スキーム1参照)
[溶液の調製]
NaCl(≧40g)を水道水(I)(110mL)と混合した。ガス・フード内のライトを消した。光保護に関するほかの対策は、必要と考えなかった。NaHCO3(7.68g)を計量し、EtOH(290mL)と水道水(192mL)を測定し、オクタデカ−2(E),6(Z),9(Z),12(Z),15(Z)−ペンタエン−1−チオール(12.0g)を含む1リットルのフラスコへ移して、アルゴンでフラッシュした。室温で15〜20分間、勢いよく攪拌した。3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトン(5.4mL)を一度に添加し、35〜45分間、勢いよく攪拌した。材料を分液漏斗に移し、ヘプタン(I)(2x200mL)で抽出した。合せた有機相をブライン(100mL)で洗浄し、磁石式攪拌子を備えた三角フラスコへ移し、Na2SO4(I)(60g)を添加した。必要であれば、更なるNa2SO4を添加してもよい。懸濁液を10〜20分間攪拌した。
懸濁液を濾過し、濾過ケーキをヘプタン(≧25mL)ですすぎ、1Lの丸底フラスコへ移して、減圧下、温度(≦35℃)で蒸発させた。
[乾式フラッシュクロマトグラフィ] シリカ(500g±25g)を1000mLの焼結ガラス漏斗(グレード3)へ移した。ヘプタン500±25mLで予め溶出させた。ヘプタン20〜25mLを粗生成物に添加し、その混合物をカラム上に載せた。そのカラムを350mL±20mLフラクションで溶出させた。段階的500mL三角フラスコは、この測定に対して十分な精度があった。ヘプタン:EtOAc(100:x)溶離液を調製する際、25xmLのEtOAcを予め密封したままの2500mLヘプタンフラスコへ添加することは、十分に正確であった。フラクションを、TLC(溶離液はヘプタン:EtOAc 80:20)で分析した。Rfが約0.26の生成物は、PMA浸液またはモリブデン酸アンモニウム/硫酸セリウム浸液で染色した。生成物全体がカラムから出るまで、溶出を続けた。ヘプタン−ヘプタン:EtOAc(100:1)−(100:2)−(100:3)−(100:10)で溶出した。フラクション#21の後で生成物の前に不純物がカラムから出る場合、(100:10)をフラクション#22から用いてもよく、または、(100:2)または(100:3)で続けてもよい。生成物の前の不純物が、カラムから出た場合、(100:10)を用いてもよい。
TLCにより純粋か、またはほんの少量の不純物を有するフラクションを、HPLCで分析する。HPLCスペクトラム内で(面積%)純度を有する生成物を含むフラクションを集める。材料を1リットル丸底フラスコへ移し、減圧下、温度≦35℃で蒸発させた。圧力が平衡化した際、ロータベーバをアルゴンで満たした。ヘプタンを用いて、折りたたみろ紙を通して、250mL丸底フラスコへ移し減圧下、温度(≦35℃)で蒸発させた。最初の蒸発が完了した際、高真空ポンプをロータベーバに接続し、1〜2時間蒸発させて、10.29g(61%)の生成物を無色油として得た。生成物はアルゴン雰囲気下に−18℃以下で保管した。
以下の材料および方法を、この実施例6で必要に応じて用いた。
1.TLC:少量の生成物を、ヘプタン:EtOAc(80:20)を溶離液としてTLCを必要として分析した。生成物Rfは、約0.26、PMA浸液またはモリブデン酸アンモニウム/硫酸セリウム浸液で染色。ほんの少量の不純物が許容された。
2−HPLC
HPLC/UV条件
分析カラム:EC−C18、150x4.6mm、2.7μm粒径
流量:1.5ml/分
停止時間:22分
温度:15℃
検出器:UV 210:8 ref 360:100 PW >0.05分
移動相: A: ACN/水 70:30 w/0.02 % v/vギ酸
B: ACN w/0.02 % v/v ギ酸
移動相勾配プログラム:
Figure 2017501118

Claims (21)

  1. 多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステルの製造方法であって、前記方法は、
    (1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、カルボン酸またはチオ酸を、容器内全ての前記カルボン酸または前記チオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
    (2) 第2容器中に、多価不飽和アルコールと少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤とを混ぜ合わせる工程、
    (3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、前記多価不飽和エステルまたは多価不飽和チオエステルを得る工程を含む方法。
  2. 多価不飽和チオールの製造方法であって、前記方法は、
    (1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、多価不飽和チオ酸を、容器内すべての前記チオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
    (2)第2容器中に、多価不飽和アルコールと少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤とを混ぜ合わせる工程;
    (3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、多価不飽和チオエステルを得る工程、
    (4)少なくとも一つの医薬的に許容され、工程(2)において用いられる抗酸化剤と同一または異なる抗酸化剤を工程(3)の前記多価不飽和チオエステルに添加し、前記多価不飽和チオールを得るのに十分な条件下で工程(3)の前記チオエステルを還元する工程を含む方法。
  3. 多価不飽和ケトン化合物の製造方法であって、前記方法は、
    (1)第1容器中に、ホスフィン化合物とアゾジカルボキシラート化合物の存在下、多価不飽和チオ酸を、容器内すべてのチオ酸が本質的に脱プロトン化する条件下で混ぜ合わせる工程、
    (2)第2容器中に、式ROHの多価不飽和アルコール(式中、RはC9−23−多価不飽和炭化水素である)と、少なくとも一つの医薬的に許容される抗酸化剤とを混ぜ合わせる工程、
    (3)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、多価不飽和チオエステルを得る工程、
    (4)少なくとも一つの医薬的に許容され、工程(2)において用いられる抗酸化剤と同一または異なる抗酸化剤を工程(3)の前記多価不飽和チオエステルに添加し、多価不飽和チオールRSHを得るのに十分な条件下で工程(3)の前記チオエステルを還元する工程、
    (5)前記多価不飽和チオールを、化合物(LG)R3COX(式中、Xは電子求引基であり、R3は脱離基LGを運ぶC1-3アルキレン基である)と、任意にさらに添加した抗酸化剤の存在下、反応させ、観念的に式(II)の多価不飽和ケトン化合物を得る工程を含む方法。
    2−CO−X (II)
    [前記式中、R2は、ケトン基からβ、γまたはδ位がS原子により割り込まれたC10-24多価不飽和炭化水素基であり、
    Xは、電子求引基である。]
  4. 前記医薬的に許容される抗酸化剤は、トコフェロールである請求項1〜3に記載の方法。
  5. 前記多価不飽和チオエステルは、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%である請求項1〜4に記載の方法。
  6. 前記多価不飽和チオエステルは、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも91%、92%、93%、94%または少なくとも95%である請求項5に記載の方法。
  7. 前記多価不飽和ケトンは、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%である請求項3に記載の方法。
  8. 前記多価不飽和ケトンは、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも91%、92%、93%、94%または少なくとも95%である請求項7に記載の方法。
  9. 前記ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである請求項1〜8に記載の方法。
  10. 前記アゾジカルボキシラートは、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)である請求項1〜9に記載の方法。
  11. 工程(1)において、チオ酸または酸に対し、ホスフィンおよびアゾジカルボキシラートがモル的に過剰である先行する請求項に記載の方法。
  12. 前記多価不飽和アルコールは、式(I)のアルコールである請求項1〜11に記載の方法。
    R−OH (I)
    [式中、Rは、S、O、N、SO、SO2から選択される1以上のヘテロ原子またはヘテロ原子群により任意に割り込まれた、任意に置換されたC9-23不飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの二重結合を含む。]
  13. 前記多価不飽和アルコールは、5つの二重結合を含むC18アルコールである請求項1〜12に記載の方法。
  14. 前記多価不飽和アルコールは、(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−オールである請求項13に記載の方法。
  15. 前記多価不飽和チオエステルは、5つの二重結合を含むC18多価不飽和チオ酢酸エステルである請求項1〜14に記載の方法。
  16. 前記多価不飽和チオ酢酸エステルは、S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートである請求項15に記載の方法。
  17. A)第1容器中に、ホスフィン、アゾジカルボキシラートおよびチオ酢酸を溶媒中で混ぜ合わせ、混合物を形成し、前記チオ酢酸の完全な脱プロトン化が起こるようにさせる工程、
    B)第2容器中に、(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−オール(C18アリルアルコール)および抗酸化剤を混ぜ合わせる工程、
    C)前記第1容器と前記第2容器の内容物を混合し、S−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを製造する工程を含む請求項1に記載の方法。
  18. D)工程Cにおいて製造された前記エステルを、HPLC(面積%)により決定された純度が少なくとも90%まで前記エステルを精製する条件下で、乾式フラッシュクロマトグラフィに付す工程、
    E)工程Cまたは工程Dで製造され、前記任意に精製されたS−((2E,6Z,9Z,12Z,15Z,)−オクタデカ−2,6,9,12,15−ペンタエン−1−イル)エタンチオアートを、前記エステル基を還元し、対応するチオール(2E,6Z,9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−2,6,912,15−ペンタエン−1−チオール)を製造する条件下で、金属炭酸塩(例えば炭酸カリウム)およびトコフェロールと接触させる工程
    を任意に更に含む請求項17に記載の方法。
  19. F)工程Eにおいて製造された前記チオールを、3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロアセトンと、以下を製造する条件下で接触させる工程
    をさらに含む請求項18に記載の方法。
    Figure 2017501118
    [式中、Xは、CF3である。]
  20. 前記ケトンが、以下である請求項3に記載の方法。
    Figure 2017501118
    [式中、Xは、CF3である。]
  21. 前記多価不飽和アルコールは、求電子性還元剤(例えばDIBAH)の存在下に、対応するアルデヒドの還元により得られる、先行する請求項に記載の方法。
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