JP2017226871A - 希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】希土類酸化物粉末と鉄粉末の混合物を出発原料として使用し還元拡散法で母合金を作製し、その後窒化することにより、安価で優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法を提供する。【解決手段】希土類酸化物粉末と鉄粉末との混合物を出発原料として調製し、混合物に金属カルシウムを所定量加え不活性ガス中にて還元拡散処理し母合金を作製し、水素ガスと不活性ガスとの混合ガス又は水素ガスと窒素ガスとの混合ガスを供給し、該混合ガスの水素分圧が0.10以上0.80以下である混合ガスを供給しながら窒化温度の400℃以上500℃以下に達するまで昇温した後に、アンモニアガスにより窒化して、希土類−鉄−窒素系合金粉末を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法に関し、さらに詳しくは、窒化処理工程の昇温時の窒化ガス中の水素分圧を特定の条件とすることでで、安定した磁気特性で安価な希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法に関する。
近年、サマリウム−鉄−窒素磁石で代表される希土類−鉄−窒素系磁石は、高性能かつ安価な磁石として知られている。この磁石用原料粉末となるSm−Fe−N磁石粉末は、Sm2Fe17Nxであればx=3の組成で構成されることによって最大の飽和磁化を示すとされている(非特許文献1参照)。
この希土類−鉄−窒素系磁石は、従来、FeとSm金属を用いて高周波炉、アーク炉などにより希土類−鉄合金を作製する溶解法や、FeあるいはFe23、Sm23等とCaを混合加熱処理により希土類−鉄合金を作製する還元拡散法によって得られた母合金を窒化することで得られている。このようにして得られた粉末状の希土類−鉄−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、次の工程において平均粒子径が数μmから5μm程度になるまで微粉砕処理され磁石粉として使用される。
溶解法は、原料粉末の1500℃以上の高温での溶解、粉砕、組成均一化のための熱処理が必要であり(特許文献3参照)、工程が極めて煩雑であるとともに、各工程間において一旦大気中に曝されるために酸化により不純物が生成し、湿式処理後に窒化を行うが湿式処理時に表面が酸化しているため窒化が均一に進行できなくなり、磁気特性のうち飽和磁化、保磁力、角形性が低下し、結果として最大エネルギー積が低くなってしまうという問題がある。また、原料として必要とされる希土類金属が高価であるという理由から、希土類−鉄−窒素系磁石の製造方法としては、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法に比べて溶解法はコスト高である。
また、還元拡散法では、通常出発原料に数十μmの鉄粉末を用い、希土類金属もしくは希土類酸化物とアルカリ土類金属を混合した後、還元熱処理を行うことで母合金を作製するが、この方法の場合、最終的な窒化処理の後、粒径を数十から数μmになるように強力に機械粉砕するため、逆軸の核となり得る破断面の突起や結晶歪みが発生し、磁気特性を低下させる。これに対し、出発原料として用いる粉末の粒子径を小さくして、母合金を粉砕せずに磁石粉末を得る方法(特許文献1、2、3参照)であるため、高い磁気特性を維持することが可能である。
このとき窒化時のガスに関しては、いずれも窒素ガスもしくはアンモニア−水素混合ガスで行っており、その時の流量について特に規定はないが、細かい粉末を窒化する上記方法では、窒素ガスの場合は反応が非常に遅く、利用する総流量が多くなりすぎて製造コストが高くなる問題がある。またアンモニア−水素の場合は短時間で反応が終わる特徴をもつが、粉の非表面積が大きいことから急激にガスを消費・反応するため、特に昇温中に水素を急激に吸収し炉内圧が負圧にまで達することがあり、排気側からの空気が逆流し、空気中の酸素による酸化が起きるという問題があった。この問題を解決するために、内圧をプラスに維持する方法として、窒化ガス流量を大量にする方法が考えられるがコスト高となり、また排気側バルブを絞り内圧上昇させる手法も考えられるが、反応の進行度合いに応じて水素ガスの消費量が変わるため内圧変化が生じて粒子内への水素拡散状態にバラツキが生じてしまい、その後のアンモニアガスによる窒化反応においての均一な窒素濃度にならない問題がある。
以上のように、粉末の粒子径を小さい出発原料を用いて還元拡散法により得られる母合金を窒化処理する場合では、希土類−鉄−窒素系合金粉末中の窒素濃度を均一にし、かつガス使用量を抑え低コスト化を実現する希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法の確立が強く望まれていた。
特開平11−310807号公報 特開2003−297660号公報 特開平11−189811号公報
T.Iriyama IEEE TRANSAACTIONS ON MAGNETICS,VOL.28,No.5(1992)
本発明の目的は、このような状況に鑑み、窒化処理工程の昇温時のガスの中の水素濃度を特定条件とすることにより反応容器中の圧力を安定化し、合金粉末の均一な窒化を行わせることで、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系合金粉末を得ることができる希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる従来技術の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系合金粉末を安定して得るためには、窒化処理工程の窒化時の昇温時のガスを水素ガスと不活性ガスとの混合ガス、又は水素ガスと窒素ガスとの混合ガスのいずれかとし、混合ガスの水素分圧を0.10以上0.80以下とすることで、昇温時の水素吸収による反応容器内の圧力低下を緩和して内圧を一定にして、圧力低下による酸素流入を防止し、その後の安定した窒化反応とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類酸化物粉末を出発原料とする還元拡散法による希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法であって、以下の工程1乃至工程4を含む希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
工程1.出発原料として、希土類酸化物粉末と鉄粉末との混合物、もしくは、該混合物に希土類鉄複合酸化物、酸化鉄から選ばれる少なくとも一種をさらに含む混合物を調製する工程。
工程2.前記工程1で得られた混合物に金属カルシウムを所定量加え不活性ガス中にて還元拡散処理する工程。
工程3.工程2で得られた処理物に対し、水素ガスと不活性ガス、又は水素ガスと窒素ガスのいずれかの混合ガスを供給し、該混合ガスの水素分圧が0.10以上0.80以下である混合ガスを供給しながら窒化温度の400℃以上500℃以下に達するまで昇温した後に、アンモニアガスにより窒化する工程。
工程4.前記工程3で得られた窒化処理物を水中に投入して湿式処理し崩壊させ磁石粗粉末として回収し、得られた磁石粗粉末を解砕処理し、解砕処理粉末を得る。
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、工程1の出発原料のうち、鉄粉末の平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
本発明の第3の発明によれば第1の発明において、工程2の金属カルシウムは、平均粒子径が4メッシュ以下であり、酸化物を全て還元するのに必要となる金属カルシウム量を1当量としたときに、1.5以上3.0当量以下であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、工程4で得られた解砕処理粉末の窒素濃度は3.30質量%以上3.50質量%以下であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、合金粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
本発明の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法によれば、窒化処理工程の昇温過程において、昇温途中の温度域に使用するガス中の水素分圧を0.10以上0.80以下とすることで、昇温時の水素吸収による反応容器内の圧力低下を緩和して内圧を一定にして、圧力低下による酸素流入を防止し、その後の安定した窒化反応を達成することができ、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系合金粉末を製造出来る。
以下、本発明の希土類−鉄−窒素系合金粉末とその製造方法について、より詳しく説明する。
本発明の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法は、希土類酸化物粉末と鉄粉末との混合物、もしくは、該混合物に希土類鉄複合酸化物、酸化鉄から選ばれる少なくとも一種をさらに含む混合物、を出発原料として調製する工程1、得られた混合物に金属カルシウムを所定量加え不活性ガス中にて還元拡散処理する工程2、得られた処理物に対し、水素ガスと不活性ガスとの混合ガス又は水素ガスと窒素ガスとの混合ガスを供給し、該混合ガスの水素分圧が0.10以上0.80以下である混合ガスを供給しながら窒化温度の400℃以上500℃以下に達するまで昇温した後に、アンモニアガスにより窒化する工程3、得られた窒化処理物を水中に投入して湿式処理し崩壊させ磁石粗粉末として回収し、得られた磁石粗粉末を解砕処理し、解砕処理粉末を得る工程4、とを含む製造方法である。
《1.希土類−鉄−窒素系合金粉末》
まず、本発明の製造方法を適用する希土類−鉄−窒素系合金について説明する。
本発明に係る希土類−鉄−窒素系合金は、希土類元素がSm、Gd、Tb、Ceから選ばれる少なくとも1種類の元素、あるいはさらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる少なくとも1種類の元素である合金が挙げられるが、希土類元素がサマリウム(Sm)であるSm−Fe−N系合金やSm−Fe−Ti−N系合金が挙げられ、Sm−Fe−N系合金であることが好ましく、特に、Sm量が磁石粉末全体に対して23.2質量%以上23.6質量%以下を含むSm2Fe173の組成のものに好ましく適用することができる。
《2.希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法》
本発明の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法について、工程順に説明する。
(1)工程1:原料粉末の混合処理工程
まず、希土類−鉄−窒素系磁石原料として、希土類酸化物粉末と鉄粉末との混合物、もしくは該混合物に希土類鉄複合酸化物、酸化鉄から選ばれる少なくとも一種をさらに含む混合物を出発原料として調製する。
原料粉末の一つの鉄粉末は、後に生成される希土類−鉄母合金を小さくするため、粒子径は、平均粒子径で3μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。これは、平均粒子径が3μmを超えると後に生成される希土類―鉄母合金の粗粒が平均粒子径で20μm以上にまで成長してしまうため、保磁力が大きく低下するほか、窒化処理の際に粒子内の窒化不足が起きる要因となるためである。また、上記と同じ理由で鉄粉以外に鉄を含有する酸化鉄(Fe23のほか、FeOやFe34など)、更にサマリウムを含有するサマリウム鉄複合酸化物(SmFeO3など)についても、粒子径は平均粒子径で3μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。
もう一方の原料粉末の希土類酸化物は、Sm、Gd、Tb、Ceから選ばれる少なくとも1種類の元素、あるいはさらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる少なくとも1種類の元素が含まれるものを挙げることができる。中でもSmが含まれるものは、本発明の効果を顕著に発揮させることが可能になるので特に好ましい。Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類元素全体の60質量%以上、好ましくは90質量%以上にすることが高い保磁力を得るためには好ましい。
希土類酸化物粉末の粒子径は、固相内拡散がしやすく、不均一な拡散が起こらないという点で、平均粒子径で5μm以下、さらに鉄粉末の粒子径より小さいことが好ましい。
混合粉末を得る方法としては、各粉末を水やアルコールを溶媒としたボールミル、ビーズミル、アトライターといった湿式混合あるいは、リボンブレンダー、タンブラー、S字ブレンダー、V字ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、振動ミルといった乾式混合のほか、反応晶析による共沈法によってすでに混ざり合った状態の水酸化物あるいはオキシ水酸化物を製造し熱処理によって酸化物を得るなどその混合方法には様々あるが、これらのように直接得る方法のほか、所望の物質の比率を得るために、一度高温での熱処理をすることや、サマリウム鉄複合酸化物を製造する、あるいは水素還元によって鉄粉を製造することを工程内に含ませる方法も行う。
(2)工程2:還元拡散処理工程
次に上記工程1により得られた混合原料粉末にさらに金属カルシウムを混合して、不活性ガス雰囲気中、所定の温度で熱処理し、還元拡散法でTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄系母合金を得る。
還元拡散法は、前記したように還元剤である金属カルシウムとの混合物を反応容器に充填し、一度真空に引いてから不活性ガスを導入することで不活性ガス雰囲気に置換し、例えばアルゴンガス雰囲気中にて950℃以上1200℃以下の温度に加熱することによって、合金粉末を得る方法である。
本発明においては、還元剤としてしようする金属カルシウムは、取り扱いの安全性とコストの点で、4メッシュ以下に分級した粒状金属カルシウムが好ましい。原料の酸化物を全て還元するのに必要とする金属カルシウムの量を1当量とした際の金属カルシウムの添加量については1.5当量以上3.0当量以下が好ましく、1.5当量以上2.0当量以下がより好ましい。これは、1.5当量より少ないと熱処理時の蒸発水分や金属カルシウムの蒸発による不足するためであり、3.0当量より多いと過剰に存在する金属カルシウムが粒成長を阻害する要因となって本焼の温度を上げても大きくなりにくいほか、還元拡散後の窒化の際のガスの吸収が余剰の金属カルシウムによって阻害され窒化が不均一になりやすいという問題がある。なお、還元剤は上記原料粉末と混合するか、金属蒸気が原料粉末と接触しうるように分離しておくが、混合して還元拡散されれば反応生成物が多孔質となり、引き続き行われる窒化処理を効率的に行うことができる。
原料粉末や還元剤とともに、窒化処理後の湿式処理工程において反応生成物の崩壊を促進させる添加物を混合することも効果的である。崩壊促進剤としては、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩や酸化物を用いることができ、原料粉末などと同時に均一に混合する。ここで不活性ガスは、アルゴン、ヘリウムから選ばれた1種類以上が用いられる。
本発明においては、原料粉末の粒度をミクロンオーダーの小さな粒度に調製した出発原料を使用するため、還元拡散処理の熱処理温度において、還元温度は900℃以上1200℃以下の範囲とすることが好ましい。900℃未満であると粒成長が非常に遅く、残された微粉末が成形品を製造する際の加熱に弱く保磁力が急激に低下したり、また樹脂との混練時に流動性が悪くなって成形自体が出来なくなるおそれがある。また、1200℃を超えると、粒成長が激しくなり、5μmを超える粗粉末が非常に多くなり保磁力の大幅な低下を引き起こすほか、Smの蒸発量も非常に多くなり、所望の組成の磁石粗粉末が得られなくなる恐れがあり、また過剰な量が必要となり高コストにも繋がる。
また還元時の保持時間については、2時間〜20時間が好ましく、4時間〜20時間がより好ましい。これは、鉄系原料の粒径が3μm以下と小さい場合、比表面積が高いため金属カルシウムの融体が全体に広がるのに多くの時間を必要とし、2時間より短いと金属カルシウムが全体に行き渡っていないうちに還元時間が終了してしまい、金属カルシウムによって広がり固相内拡散していくサマリウムが粒子毎に不均一になる。逆に20時間よりも長い場合は、これ以上長くしても既に金属カルシウムが全体に行き渡っており、これ以上の時間保持しても、特に効果が見込まれず、コスト高になる。
本発明では、工程2の還元拡散処理工程の最後に冷却を行う。還元拡散反応後の反応生成物に対して、雰囲気ガスを不活性ガスとしたまま変えずに、引き続き、300℃以下、好ましくは50℃以上280℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下に冷却する。冷却後の温度が300°Cを越えていると、後の工程の窒化の際に反応生成物との窒化反応が急激に進んでしまい、α−Fe相を増加させてしまうことがあるので、300°Cよりも低い温度まで冷却するのが望ましい。これは、300°Cを越える温度では、反応生成物が活性であるために合金が急激に窒化されて、Th2Zn17型結晶構造を有する金属間化合物がFeリッチ相とSmNとに分解するものと推測されるからである。
冷却後に、多孔質の塊状混合物である反応生成物を湿式処理せずに、次の窒化工程に移る。窒化工程前に反応生成物が大気中に曝されると、反応生成物中の活性な希土類−鉄母合金粉末が酸化されて反応性が失活し、結果として窒化の度合いをばらつかせるので、出来る限り大気(酸素)に曝されることのないように窒化工程に持ち込むことが有効である。
(3)工程3:窒化処理工程
窒化処理工程では、まず雰囲気ガスの不活性ガスを排出してから昇温を開始する。本発明において、最も重要な工程の条件として、昇温時の雰囲気ガスについては、水素ガスと不活性ガスとの混合ガス又は水素ガスと窒素ガスとの混合ガスを雰囲気ガスとして供給し、この雰囲気ガス中の水素分圧が0.10以上0.80以下とした混合ガスを供給しながら窒化温度の400℃以上500℃以下に達するまで昇温する。混合ガス中の水素分圧は0.10以上0.80以下の範囲とすることが好ましく、0.30以上0.60以下の範囲がより望ましい。窒化処理工程の初期の昇温時の雰囲気ガス中の水素分圧を上記範囲とすることにより、水素吸収による反応容器内の圧力低下を緩和して内圧を一定にさせることで、圧力低下による酸素流入を防止し、その後の安定した窒化反応とすることができる。水素分圧が0.10未満であると水素吸収がきわめて遅く、昇温速度が小さいため、昇温時間がきわめて長くなり、ガスの使用量は非常に多くコストが嵩むこととなる。また、水素分圧が0.80を超えると水素が過剰に存在するため、吸収反応が一気に進行して反応容器内の圧力低下が起こるほか、粒子内への水素拡散にバラツキが生じてしまい、その後のアンモニアガスによる窒化反応において、粒子内の窒素濃度が均一にならなくなり、合金粉末中の窒素量が3.30質量%以上3.50質量%以下の範囲にならず、磁石特性の飽和磁化と保磁力が低下する。
次に、窒化処理の条件としては、窒化温度である400℃以上500℃以下、好ましくは420℃以上480℃以下に達した後に、雰囲気ガスをアンモニアを含有する窒化ガスに切り替えて供給して、母合金を窒化熱処理する。窒化温度が400℃未満であると、反応生成物中の希土類−鉄母合金に3.30質量%以上3.50質量%以下の窒素を導入するのに長時間を要するので工業的優位性がなくなる。一方、500℃を超えると、主相であるSm2Fe17相が分解してα−Feが生成するので、最終的に得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が低下するので好ましくない。なお、冷却温度から窒化温度までは、毎分4℃以上10℃以下の速度で比較的急速に昇温することが生産効率を高める上で望ましい。また、冷却温度での保持時間は、特に必要はない。保持しても窒化に対する効果はないからである。
窒化処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、100分以上300分以下、好ましくは、140分以上250分以下とする。100分未満では、窒化が不十分になり、一方、300分を超えると窒化が進みすぎるので好ましくない。
本発明においては、窒化処理に引き続いて、さらに水素ガス、または窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で合金粉末を熱処理することが望ましい。特に好ましいのは、水素ガスで熱処理した後に窒素ガスおよび/またはアルゴンガスで熱処理をすることである。これにより、磁石粉末を構成する個々の結晶セル内の窒素分布をさらに均一化することができ、角形性を向上させることができる。熱処理の保持時間は、30分以上200分以下、好ましくは60分以上250分以下が良い。
(4)工程4:解砕処理工程
工程4では、工程3により得られた窒化後の処理生成物をまず湿式処理し、そのあとで解砕して、希土類−鉄−窒素系合金粉末を得る。まず、湿式処理について説明する。窒化後の処理生成物に含まれている還元剤成分の副生成物(酸化カルシウムや窒化カルシウムなど)を希土類−鉄−窒素系合金粉末から分離除去する。窒化終了後の磁石粉末に対して湿式処理を行うのは、前述したとおり、窒化する前に、反応生成物を湿式処理すると、この湿式処理過程で母合金表面が酸化されて窒化の度合いをばらつかせるからである。
また、窒化後に処理生成物を長期間大気中に放置すると、カルシウムなどの還元剤成分の酸化物が生成し除去しにくくなったり、磁石粉末の表面の酸化によって、窒化が不均一になり主相の比率の低下とニュークリエーションの核の生成によって角形性が低下したりする。したがって、大気中に放置された窒化処理生成物は、反応器から取り出してから2週間以内に湿式処理するのがよい。
湿式処理は、まず崩壊した生成物を水中に投入し、デカンテーション−注水−デカンテーションを繰り返し行い、生成したCa(OH)2の多くを除去する。さらに必要に応じて、残留するCa(OH)2を除去するために、酢酸および/または塩酸を用いて酸洗浄する。このときの水溶液の水素イオン濃度はpH4〜7の範囲で実施するとよい。還元拡散時に過剰に投入したSmの影響で主相の周りに磁気特性の飽和磁化を低下させる非磁性相が存在している場合があり、Sm量が23.2質量%以上23.6質量%以下になるように酸洗を行うことが好ましい。
上記酸洗浄処理の終了後には、例えば水洗し、アルコールあるいはアセトン等の有機溶媒で脱水し、不活性ガス雰囲気中または真空中で乾燥することで希土類−鉄−窒素系合金粗粉末を得ることができる。希土類−鉄−窒素系合金粉末の窒素の濃度は、この時点で評価を行う。
次に、解砕処理について説明する。上記処理により得られた希土類−鉄−窒素系合金粗粉末は、粒子径が小さい多数の粒子が集って、ブドウ状に焼結し2次粒子のほか、単独の1次粒子の2種類から形成されている。このような磁石粗粉末を溶媒とともにビーズミル、媒体撹拌ミル等の粉砕機に入れ、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系合金粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕し、その後ろ過、乾燥する。
本発明で希土類−鉄−窒素系合金粉末を解砕するには、固体を取り扱う各種の化学工業において広く使用され、種々の材料を所望の程度に解砕するための粉砕装置であれば、特に限定されるわけではない。その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で優れた、媒体撹拌ミルまたはビーズミルによる湿式粉砕方式によることが好適であるが、一次粒子が壊れるほどに強い粉砕とならないように注意する。
解砕に用いる溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。また、媒体としては窒化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、ガラス、SUJ2、ステンレス等いずれの材質でも良いが、特に窒化ケイ素が望ましい。窒化ケイ素は、媒体の比重が小さいことから充填しても粉末にかかる力が小さく、摩耗が非常に少ないので好ましい。
解砕処理後、所定の目開きのフィルターを用いて、ろ過、乾燥して希土類−鉄−窒素系合金粉末を得る。以上の工程に従って本発明の希土類−鉄−窒素系合金粉末を得ることができるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、さらに添加剤を加えたり、さらに粗大粉や超微粉を分級するなどの処理を加えることができる。
以下、本発明を実施例によりより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明においては、得られた合金粉末は次の方法で測定し評価した。
[評価]
(1)磁気特性(飽和磁化、保磁力、角形性)
合金粉末の磁気特性は、日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、1600A/mの配向磁界をかけてステアリン酸中で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を配向させ試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁して測定した。磁石合金粉末の比重を7.67g/cm3とし、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化(4πIm、単位T)、保磁力(iHc、単位kA/m)、角形性(Hk、単位kA/m)を測定した。なお、Hkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが残留磁化4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
(2)粒子形状
解砕前の希土類−鉄−窒素系合金粉末の粒子表面、形状を走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立製作所製、S−800)で観察した。
(3)化合物存在比率計算
XRDによる粉末X線回折装置(XRD:マックサイエンス社製、型式:M03XHF)を用いて、測定したデータをもとに化合物の同定を行い、それら化合物の存在比率についてリートベルト解析を使用し、半定量値を算出することで、各化合物の割合を求めた。
(実施例1)
出発原料粉末として、反応晶析法で製造された、平均粒子径が0.7μmの酸化鉄Fe23粉末(純度99%)100.0gと、平均粒子径が2.8μmの酸化サマリウムSm23粉末(純度99.5%)31.8gを秤量し、次に500mlのポリ容器中にて秤量した酸化鉄を純水130gに分散させスラリー化し、さらに酸化サマリウムを投入し、これにSUJ2製の直径5/32インチの金属ボールを追加して20時間ボールミル混合を行った。その後、ポリ容器からスラリーを排出し、金属ボールと分離した後、定置式真空凍結乾燥器にて40℃設定で20時間乾燥して混合粉末を得た。
次に得られた混合粉末100.0gを箱型雰囲気炉にて水素ガスを25ml/分・g流し、昇温速度5℃/分で700℃まで加熱して4時間保持した後、室温まで冷却し、内部を空気に置換して水素還元物を回収した。このときの水素還元物の一部をXRDにて同定を行い、リートベルト解析でその存在比率を半定量値として算出した。このときの存在比率は、α―Fe:Sm23:SmFeO3=65.9:25.0:9.1(質量%)であった。
この水素還元物16gに粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(純度99%)3.6gを、コンデショニングミキサー(MX−201:シンキー製)で30秒間混合した。これをステンレススチール反応容器に挿入し、容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながら850℃まで昇温し10時間保持後、さらに1050℃まで昇温し1時間保持し還元熱処理した後250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。
次に、Arガスを水素分圧が0.50のAr−水素混合ガスに切り替えて昇温し、窒化温度の420℃に達したところで、窒化ガスのアンモニアガスに切り替えて、200分保持し窒化し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて30分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持し、その後冷却した。このときの昇温時の反応容器の内圧変化について、モニタリングし圧力変化を調べると窒化処理温度の420℃に達するまで、反応容器内の圧力が低下し負圧になるような圧力変動は認められなかった。
反応容器から取り出した多孔質塊状の反応生成物を直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。このスラリーから、Ca(OH)2懸濁物をデカンテーションによって分離し、純水を注水後に1分間攪拌し、次いでデカンテーションを行う操作を5回繰り返し、Sm−Fe−N合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを攪拌しながら希酢酸を滴下し、pH5.0に7分間保持した。その後純水で6回掛水洗浄し、さらにイソプロピルアルコールで溶媒置換した後合金粉末をろ過し、150℃で真空乾燥することによって、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子からなるSm−Fe−N合金粉末を得た。
得られた合金粉末組成は、Smが23.4質量%であり、窒素については10点測定した結果、窒素濃度は、3.36質量%(最小値)から3.42質量%(最大値)であった。
最後に、この合金粉末をエタノール中で振動式ミル(マルチミル:ナルミ技研製)を用い、SUJ2ボール5/32インチ、振動数 30Hz、30分間イソプロピルアルコール中で解砕し、常温真空乾燥して、Sm−Fe−系合金粉末を得た。
得られた磁石粉末の磁気特性を、合金粉末の磁気特性は、日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、1600A/mの配向磁界をかけてステアリン酸中で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を配向させ試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁して測定した。磁石合金粉末の比重を7.67g/cm3とし、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化(4πIm、単位T)、保磁力(iHc、単位kA/m)、角形性(Hk、単位kA/m)を測定した。
分析組成とTh2Zn17型結晶構造の格子定数から算出された粉末のX線密度は7.67g/cm3で、この値で飽和磁束密度4πImを換算した。iHcは保磁力である。またHkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。その結果、残留磁束密度(Br)は1.31T、保磁力(iHc)は933kA/m、角形性(Hk)は445kA/mであり高特性が得られた。
(実施例2)
実施例1の条件の還元熱処理しArガスを流通しながら冷却した後、Arガスを水素分圧が0.50の窒素−水素混合ガスに切り替えて昇温した以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−N合金粉末を得た。得られた合金粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。得られた合金粉末の組成は、Smが23.2質量%であり、窒素については10点測定した結果、窒素濃度は、3.38質量%(最小値)から3.43質量%(最大値)であった。窒化工程における昇温時の反応容器の内圧変化についても負圧になるほどの圧力変動は認められなかった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。その結果、残留磁束密度(Br)は1.29T、保磁力(iHc)は940kA/m、角形性(Hk)は440kA/mであり高特性が得られた。
(実施例3)
実施例1の条件の還元熱処理しArガスを流通しながら冷却した後、Arガスを水素分圧が0.15のAr−水素混合ガスに切り替えて昇温した以外は、実施例1と同様にして行うことでSm−Fe−N合金粉末を得た。得られた合金粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。得られた合金粉末の組成は、Smが23.3質量%であり、窒素については10点測定した結果、窒素濃度は、3.33質量%(最小値)から3.38質量%(最大値)であった。窒化工程における昇温時の反応容器の内圧変化についても負圧になるほどの圧力変動は認められなかった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。その結果、残留磁束密度(Br)は1.33T、保磁力(iHc)は950kA/m、角形性(Hk)は449kA/mであり高特性が得られた。
(実施例4)
実施例1の条件の還元熱処理しArガスを流通しながら冷却した後、Arガスを水素分圧が0.77のAr−水素混合ガスに切り替えて昇温した以外は、実施例1と同様にして行うことでSm−Fe−N合金粉末を得た。得られた合金粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。得られた合金粉末の組成は、Smが23.2質量%であり、窒素については10点測定した結果、窒素濃度は、3.35質量%(最小値)から3.48質量%(最大値)であった。窒化工程における昇温時の反応容器の内圧変化についても負圧になるほどの圧力変動は認められなかった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。その結果、残留磁束密度(Br)は1.26T、保磁力(iHc)は918kA/m、角形性(Hk)は434kA/mであり高特性が得られた。
(比較例1)
実施例1の条件の還元熱処理しArガスを流通しながら冷却した後、Arガスを水素分圧が0.05のAr−水素混合ガスに切り替えて昇温した以外は、実施例1と同様にして行うことでSm−Fe−N合金粉末を得た。得られた合金粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。得られた合金粉末の組成は、Smが23.2質量%であり、窒素については10点測定した結果、窒素濃度は、3.32質量%(最小値)ら3.36質量%(最大値)であった。窒化工程における昇温時の反応容器の内圧変化については負圧になるほどの圧力変動は認められず、実施例1と同様に良好な特性であったが、実施例1と比べて窒化処理工程で供給したガスが総流量で2.1倍も必要としたためコスト高になる結果であった。
(比較例2)
実施例1の条件の還元熱処理しArガスを流通しながら冷却した後、Arガスを水素分圧が0.85のAr−水素混合ガスに切り替えて昇温した以外は、実施例1と同様にして行うことでSm−Fe−N合金粉末を得た。得られた合金粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。得られた合金粉末組成は、Smが23.4質量%であり、窒素濃度は10点測定した結果、3.28質量%(最小値)から3.67質量%(最大値)となり、ばらつきが大きかった。窒化工程における昇温時の反応容器の内圧変化については負圧になるほどの急激な圧力低下が見られ、排気側から大気が混入したことが分かった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。その結果、残留磁束密度(Br)は1.08T、保磁力(iHc)は716kA/m、角形性(Hk)は378kA/mと、大気混入による大幅な特性低下が認められた。
(比較例3)
実施例1の条件の還元熱処理しArガスを流通しながら冷却した後、Arガスを水素分圧が0.50のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて昇温した以外は、実施例1と同様にして行うことでSm−Fe−N合金粉末を得た。得られた合金粉末は、実施例1同様に1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。得られた合金粉末組成は、Smが23.1質量%であり、窒素濃度は10点測定した結果、3.34質量%(最小値)から3.53質量%(最大値)となり、ばらつきが大きかった。窒化工程における昇温時の反応容器の内圧変化については負圧になるほどの急激な圧力低下が見られ、排気側から大気が混入したことが分かった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。その結果、残留磁束密度(Br)は、1.11T、保磁力(Hc)は807kA/m、角形性(Hk)は402kA/mと、大気混入による大幅な特性低下が認められた。
以上のように、実施例1から実施例4では、窒化工程における昇温時の雰囲気ガスについて水素分圧を0.10〜0.80とすることで窒化昇温時の水素吸収反応を適度に進行させ、反応容器内の圧力変動を緩和し、安定した窒化反応を達成し、水素吸収量の各粒子におけるバラツキの抑制が可能となり、窒素濃度の均一化を実現したことで主相単相粒子比率を向上させ、最終的に得られたSm−Fe−N合金粉末の磁気特性を良好にしたことがわかる。


Claims (5)

  1. 希土類酸化物粉末を出発原料とする還元拡散法による希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法であって、
    以下の工程1乃至工程4を含むことを特徴とする希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法。
    工程1.出発原料として、希土類酸化物粉末と鉄粉末との混合物、もしくは、該混合物に希土類鉄 複合酸化物、酸化鉄から選ばれる少なくとも一種をさらに含む混合物を調製する工程。
    工程2.前記工程1で得られた混合物に金属カルシウムを所定量加え不活性ガス中にて還元拡散処 理する工程。
    工程3.工程2で得られた処理物に対し、水素ガスと不活性ガス、又は水素ガスと窒素ガスのいず れかの混合ガスを供給し、該混合ガスの水素分圧が0.10以上0.80以下である混合ガスを供給しながら窒化温度の400℃以上500℃以下に達するまで昇温した後に、アンモニアガスにより窒化する工程。
    工程4.前記工程3で得られた窒化処理物を水中に投入して湿式処理し崩壊させ磁石粗粉末として 回収し、得られた磁石粗粉末を解砕処理し、解砕処理粉末を得る。
  2. 前記工程の1の出発原料の鉄粉末は、平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法。
  3. 前記工程2の金属カルシウムは、平均粒子径が4メッシュ以下であり、酸化物を全て還元するのに必要となる金属カルシウム量を1当量としたときに、1.5〜3.0当量使用することを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法。
  4. 前記工程4の解砕処理粉末の窒素濃度は3.30質量%以上3.50質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法。
  5. 前記合金粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法。

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