JP2017226100A - 液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置 - Google Patents

液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置 Download PDF

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寛之 小林
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欣也 小澤
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Abstract

【課題】ノズル部から噴射される液体の帯電を抑制することが可能な液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置を提供する。【解決手段】液体が噴射されるノズル部(42)が開口したノズル形成面(43a)を有する液体噴射ヘッド(10)であって、ノズル形成面には、フッ素を含む撥液膜(47)が下地膜(48)を介して形成され、下地膜の総厚さが670〔nm〕以下であることを特徴とする。また、飛行時間型二次イオン質量分析法による撥液膜における分子量301の信号強度が、0.00005以上0.00020以下であり、好ましくは0.00005以上0.00015以下である。【選択図】図4

Description

本発明は、例えばインクジェット記録装置等に搭載される液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置に関し、特に、ノズル部が開口したノズル形成面を有する液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置に関するものである。
圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズルから液滴として噴射(吐出)させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンターという)などの画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)、液晶ディスプレイなどのカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)などの電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどがある。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
ところで、液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置では、当該液体噴射ヘッドのノズル部から増粘した液体や気泡を強制的に排出するクリーニング処理が行われることがある(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、液体噴射ヘッドのノズル部が開口したノズル形成面にキャップを当接させた状態で、このキャップ内部を吸引手段により負圧化させてノズル部から液体噴射ヘッドの内部の増粘液体や気泡等が排出される。このようなクリーニング処理では、キャップ内に一度に多くの液体が排出されるため、しぶきや跳ね返りにより液体がノズル形成面に付着しやすい。このため、クリーニング処理の後には、払拭部材(ワイピング部材)によりノズル形成面が払拭されるワイピング処理も行われる。そして、上記液体噴射ヘッドでは、ワイピング処理におけるノズル形成面に付着した液体の拭き取り性の向上等のためノズル形成面には撥液膜が形成されており、これによりノズル形成面の撥液性が高められている。
特開2012−116001号公報 特開2014−124874号公報
図9〜図12は、従来の構成におけるクリーニング処理について説明する図である。図9に示すように、クリーニング処理中においてはノズル部55から排出された液体がノズル形成面54に付着して広がっている。ノズル形成面54には上述した撥液膜56が形成されており、この撥液膜56に含まれるフッ素は帯電列においてより負極性側の順位にある。このため、フッ素を含む撥液膜56は、液体との接触・摩擦により負極性に帯電しやすい。クリーニング処理が完了して吸引手段による吸引が停止されると、液体噴射ヘッドの内部流路の負圧状態がある程度維持されるので、図10に示すように、ノズル形成面54に付着している液体がノズル部55から流路内部へと吸い込まれる(図10中の矢印で示す方向)。このとき、ノズル形成面54に付着していた液体は撥液膜56に接触しつつ流路内に吸い込まれるため、図11に示すように、撥液膜56において液体と接触した部位は、液体との摩擦帯電により負極性(−)に帯電する。このような状態でノズル部55から液体が液滴Idとして噴射される際、図12に示すように、当該液滴Idは帯電した部位による静電誘導により、当該部位の帯電極性(負極)とは逆極性である正極性(+)に帯電する。このため、液体の着弾対象が正極性に帯電している場合、当該液体の噴射に伴って発生する微小なミストが液体噴射ヘッドのノズル形成面54に付着しやすいという課題があった。特に、液体の着弾対象である記録媒体等が、噴射された液体と同電位に帯電した場合、当該記録媒体と液体とが反発し合い、これによりノズル形成面54への液体の付着がより生じやすくなる。このような課題は、噴射される液体の導電率が、水(水道水:1.0×10−2〔S/m〕)より低いほど放電し難くなるため、より顕著となる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノズル部から噴射される液体の帯電を抑制することが可能な液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体が噴射されるノズル部が開口したノズル形成面を有する液体噴射ヘッドであって、
前記ノズル形成面には、フッ素を含む撥液膜が下地膜を介して形成され、
前記下地膜の総厚さが670〔nm〕以下であることを特徴とする。
本発明によれば、必要な撥液性を確保しつつも、液体との接触によるノズル形成面(撥液膜)の帯電を抑制することができる。このため、ノズル部から噴射された液体が帯電することが抑制される。これにより、当該液体が帯電することによる不具合、例えば、液体の噴射に伴って発生したミストがノズル形成面や液体噴射装置内の構成部品に付着することが抑制される。
上記構成において、飛行時間型二次イオン質量分析法による前記撥液膜における分子量301の信号強度が、0.00005以上0.00020以下である構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、飛行時間型二次イオン質量分析法による分子量301の信号強度が、0.00005以上0.00020以下となるように撥液膜におけるフッ素の含有量が規定されることにより、ノズル形成面における撥液膜がより帯電し難くなり、これにより、液体の帯電をより低減することができる。
また、上記構成において、前記信号強度が、好ましくは0.00005以上0.00015以下である。
この構成によれば、ノズル形成面における撥液膜がより一層帯電し難くなり、これにより、液体の帯電をより確実に低減することができる。
さらに、上記構成において、前記下地膜は、酸化シリコン膜、酸化タンタル膜、およびシリコン材料のプラズマ重合膜のうち少なくとも1つ以上で構成されることが望ましい。
この構成によれば、酸化シリコン膜、酸化タンタル膜、およびシリコン材料のプラズマ重合膜のうち少なくとも1つ以上で構成されることにより、ノズル形成面に対する撥液膜の密着性を向上させることが可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、上記何れかの構成の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする。
この発明によれば、液体噴射ヘッドのノズル部から噴射された液体の帯電が抑制されるので、液体の帯電による不具合を抑制することができ、その結果、液体噴射装置としての信頼性が向上する。
液体噴射装置(プリンター)の構成を説明する平面図である。 液体噴射ヘッド(記録ヘッド)の断面図である。 液体噴射ヘッドの下面図である。 ノズル部周辺の断面図である。 撥液膜における分子量301の信号強度と、インクの帯電に基づくインク電位、ノズル形成面におけるミスト付着量、および、印刷品質との関係を説明するグラフである。 インク電位を計測する構成を説明する模式図である。 下地膜の層構成および総厚さとインク電位との関係を示す表である。 下地膜の総厚さとインク電位との関係を示したグラフである。 従来構成におけるクリーニング処理について説明する模式図である。 従来構成におけるクリーニング処理について説明する模式図である。 従来構成におけるクリーニング処理について説明する模式図である。 従来構成におけるクリーニング処理について説明する模式図である。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド10を搭載するプリンター1の構成を示す平面図である。このプリンター1は、フレーム2と、このフレーム2内に配設されたプラテン3とを備えており、紙送りモーターの駆動により回転する紙送りローラー(何れも図示せず)によってプラテン3上に記録用紙、布帛、あるいは、樹脂シート等の記録媒体(液体の着弾対象物の一種)が搬送されるようになっている。また、フレーム2内には、プラテン3と平行にガイドロッド4が架設されており、このガイドロッド4には、記録ヘッド10を収容したキャリッジ5が摺動可能に支持されている。このキャリッジ5は、キャリッジ移動機構6の駆動により、ガイドロッド4に沿って記録媒体の搬送方向に直交する主走査方向に往復移動するように構成されている。このプリンター1は、プラテン3上に載置される記録媒体に対してキャリッジ5を主走査方向に相対移動させながら記録ヘッド10の後述するノズル部42からインク(本発明における液体の一種)を噴射させて、記録媒体上に当該インクを着弾させることにより文字や画像等の着弾パターンを形成(記録・印刷)する。
フレーム2の一側には、インクを貯留したインクカートリッジ7を着脱可能に搭載するカートリッジホルダー8が設けられている。本実施形態では、合計4個のインクカートリッジ7がカートリッジホルダー8に搭載されている。インクとしては、例えば、水系の染料インクもしくは顔料インクや、これらの水系のインクよりも耐候性が高められた有機溶剤系(エコソルベント系)インクや、紫外線の照射による硬化する光硬化型インク等、周知の種々の組成のものを用いることができる。本実施形態におけるインクカートリッジ7は、エアチューブ9を介してエアーポンプ13と接続されており、このエアーポンプ13からの空気が各インクカートリッジ7内に供給される。そして、この空気によるインクカートリッジ7内の加圧により、インク供給チューブ11を通じて記録ヘッド10側にインクが供給(圧送)される。インク供給チューブ11は、例えば、耐インク性を備えたエラストマー或いはフッ素等の合成樹脂で作製された可撓性を有する中空部材であり、このインク供給チューブ11の内部には、各インクカートリッジ7に対応するインク流路が形成されている。また、プリンター1本体側と記録ヘッド10側との間には、プリンター本体側の制御部(図示せず)から記録ヘッド10側に駆動信号等を伝送するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)12が配線されている。
プリンター1の非記録領域であるホームポジションには、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド10のノズルプレート43のノズル形成面43a(プラテン3と対向する面。図3等参照。)を払拭するワイピング機構14が配設されている。このワイピング機構14は、ワイパーブレード15(ワイピング部材の一種)を有しており、このワイパーブレード15としては、ゴムやエラストマー等の弾性部材により構成される。このワイピング機構14は、ワイパーブレード15を、その先端部がワイピング時において記録ヘッド10のノズル形成面43aに接触可能な位置に配置する。そして、記録ヘッド10の通過に伴ってワイパーブレード15の先端部がノズル形成面43aに接触し、両者の相対移動により当該ワイパーブレード15によってノズル形成面43aが払拭される。
このワイピング機構14に隣接して、上記ホームポジション若しくはその近傍に、キャッピング機構16が配設されている。キャッピング機構16は、記録ヘッド10のノズル形成面43aに当接し得るトレイ状のキャップ17を有する。このキャッピング機構16では、キャップ17内の空間が封止空部として機能し、この封止空部内に記録ヘッド10のノズル部42を臨ませた状態でノズル形成面43aに密着可能に構成されている。また、このキャッピング機構16には、図示しないポンプユニット(吸引手段の一種)が接続されており、このポンプユニットの作動によって封止空部内を負圧化することができる。そして、ノズル形成面43aへの密着状態でポンプユニットが作動され、封止空部(密閉空間)内が負圧化されると、ノズル部42から記録ヘッド10内のインクや気泡が吸引されてキャップ17の封止空部内に排出される。封止空部内に排出されたインクは、キャップ17に接続された排液チューブを介して図示しない排液タンクに排出される。このキャッピング機構16による一連の処理が、吸引式クリーニング処理(以下、単にクリーニング処理という)である。また、本実施形態におけるプリンター1は、記録ヘッド10よりも上流側(インクカートリッジ7側)のインク供給経路を、例えばエアーポンプ13により加圧することにより、記録ヘッド10の流路内を加圧してノズル部42から増粘したインク等を排出させて、当該ノズル部42の噴射能力を回復させる加圧式のクリーニング処理を行うことも可能である。
また、ホームポジションとはプラテン3を挟んで主走査方向の他端部(図1中、左側)には、フラッシング領域としてフラッシングボックス18が設けられている。フラッシングボックス18は、記録媒体に対する印刷動作(吐出動作)とは別に記録ヘッド10のノズル部42からインクを強制的に吐出させるフラッシング動作の際に吐出されたインクを受ける。このフラッシングボックス18には、図示しない排液チューブの一端が接続されており上記の排液タンクに連通されている。また、排液チューブの途中には吸引ポンプが設けられており、この吸引ポンプを作動させることで、フラッシングボックス18内のインクが、排液チューブを通じて排液タンクに排出される。
図2は、本実施形態における記録ヘッド10の断面図、図3は、記録ヘッド10の下面図である。本実施形態における記録ヘッド10は、インク導入部材19、中継基板20、中間流路部材21、ヘッドユニット22、およびホルダー23等を積層して備えている。なお、以下においては、便宜上、各部材の積層方向を上下方向として説明する。
インク導入部材19の上面にはインク導入針24が、フィルター25を介在させた状態で複数立設されている。このインク導入針24は、インクの種類(色)毎に設けられている。インク導入部材19およびインク導入針24は、いずれも合成樹脂により作製されている。また、フィルター25は、インク導入針24から導入されたインクを濾過する部材であり、このフィルター25によってインク内の異物や気泡が捕捉される。本実施形態においては、インク導入部材19の上面側に図示しないサブタンクが装着され、当該サブタンクの内部にインク導入針24が挿入される。そしてインクカートリッジ7内のインクはインク供給チューブ11を通じて一旦サブタンクに導入され、当該サブタンクからインク導入針24の先端部に設けられた図示しない導入孔を介してインク導入針24の内部流路に導入される。インク導入針24からインクが導入されると、フィルター25を通過して供給流路26を通り、インク導入部材19の下方に配置されている中間流路部材21に流路接続部29を介して供給される。なお、本実施形態におけるインク導入部材19では、針状のインク導入針24が採用されているが、これには限られない。例えば、インク導入部材19のインク導入部分に不織布やスポンジ等の多孔質材が配設されるとともにインクカートリッジやサブタンク等のインク貯留部材のインク導出部分にも同様な多孔質材が設けられ、両者の多孔質部材同士が接触して毛細管現象によりインクの授受を行う所謂フォーム形式の構成を採用することもできる。
中間流路部材21は、インク導入針24から導入されたインクをヘッドユニット22側に案内する中間流路28が形成された基板である。この中間流路部材21の上面において、中間流路28の入り口側開口の周縁には、円筒状の流路接続部29が突設されている。この流路接続部29の高さ(中間流路部材21の上面からの突出長)は、インク導入部材19と中間流路部材21との間に配置される中継基板20の厚さ以上に設定されている。そして、流路接続部29は、インク導入部材19の供給流路26と連通して当該インク導入部材19側からのインクを受けて中間流路28側に導入する。中間流路28は、中間流路部材21の下面に開口して、ホルダー23の仕切板30に開設された連通流路31と連通する。また、中間流路部材21には、中間流路28から外れた位置に板厚方向を貫通する配線開口部32が開設されている。この配線開口部32は、後述する中継基板20の配線挿通口33と連通するとともに、ホルダー23の仕切板30に形成された配線貫通口27と連通し、フレキシブル基板34が挿通される空部である。
インク導入部材19と中間流路部材21との間に配置される中継基板20は、FFC12を介してプリンター本体側からの駆動信号や噴射データ(ラスターデータ)等を受け、この駆動信号を、フレキシブル基板34を通じてヘッドユニット22側の圧電素子37へ供給するための配線パターン等が形成されたプリント基板である。この中継基板20の上面(ヘッドユニット22側の下面とは反対側の面)には、フレキシブル基板34と接続される基板端子が形成されており、また、プリンター本体側からのFFC12が接続されるコネクターやその他の電子部品等が実装されている(何れも図示せず)。
中継基板20において中間流路部材21の流路接続部29に対応する位置には、この流路接続部29が挿通される逃げ穴35が開設されている。逃げ穴35は、流路接続部29の外径よりも少し大きい貫通穴である。また、中継基板20において基板端子と隣接する位置には、基板厚さ方向を貫通する配線挿通口33が当該基板端子の並設方向に沿って形成されている。この配線挿通口33は、一端が圧電素子37の素子端子と接続されたフレキシブル基板34の他端側が挿通される穴である。本実施形態における配線挿通口33の長手方向および短手方向の内寸は、フレキシブル基板34が支障なく挿通可能な程度の大きさに設定されている。
ホルダー23の内部には、ヘッドユニット22を収容可能な空間である収容空部38が複数区画されている。この収容空部38は、下面側(プリンター1において印刷動作中に記録媒体と相対する側)が開口しており、この開口から固定板36に接合されたヘッドユニット22が収容される。固定板36は、例えば、ステンレス鋼等の金属製の板材から構成されている。図3に示すように、この固定板36には、各ヘッドユニット22のノズルプレート43におけるノズル部42が形成された領域を露出させるための開口部40が開設されている。この固定板36に各ヘッドユニット22の底面が接合されることにより、これらのヘッドユニット22の高さ方向(ノズルプレート43に垂直な方向の位置)が規定され、また、開口部40にはノズルプレート43のノズル部42が露出される。
ホルダー23において収容空部38よりも上面側には、中間流路部材21および中継基板20が配置される基板載置部39が設けられている。基板載置部39と収容空部38とは仕切板30によって仕切られており、当該仕切板30の上面に中間流路部材21が載置される。この仕切板30には、連通流路31および配線貫通口27が板厚方向を貫通した状態で形成されている。ヘッドユニット22が収容空部38に位置決めされた状態で収容されると、ヘッドユニット22のノズル部42や圧力室41を含むインク流路が、連通流路31と連通する。これにより、インク導入針24を通じて導入されたインクは、フィルター25で濾過された後、供給流路26、中間流路28、および連通流路31を通じてヘッドユニット22のノズル部42に至るまでのインク流路(液体流路の一種)を満たす。
本実施形態におけるヘッドユニット22は、ノズル部42が開設されたノズルプレート43、ノズル部42に連通する圧力室41、圧力室41内のインクに圧力変動を生じさせる駆動素子としての圧電素子37等を備えている。ノズルプレート43には、複数のノズル部42が列状に開設された板材である。本実施形態では、所定のピッチでノズル部42が複数列設されてノズル列44が構成されている。圧力室41および圧電素子37は、ノズル部42毎に設けられている。圧電素子37の図示しない電極端子には、中継基板20に他端側が接続されたフレキシブル基板34の一端側の端子が接続される。中継基板20およびフレキシブル基板34を通じて駆動信号(駆動電圧)が圧電素子37に印加されると、当該圧電素子37は印加電圧の変化に応じて圧電能動部が撓み変形することにより、圧力室41の一面を区画する可撓面が、ノズル部42に近づく側またはノズル部42から遠ざかる方向に変位する。これにより、圧力室41内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動を利用してノズル部42からインクが噴射される。なお、記録ヘッド10の構成に関し、例示した構成には限られず、例えば、インクを噴射させるためのアクチュエーターとして、発熱素子や静電アクチュエーター等の他のアクチュエーターを採用したもの等、種々の構成の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を採用することができる。
次に、ノズルプレート43の詳細について説明する。ノズルプレート43は、所定のピッチで複数のノズル部42が列状に開設された部材である。このノズルプレート43の素材としては、シリコン基板あるいはステンレス鋼等の金属板が用いられる。本実施形態においては、記録媒体の搬送方向に対応する方向に並設された複数のノズル部42からノズル列44が構成されており、各ヘッドユニット22のノズルプレート43には、それぞれ2条のノズル列44が形成されている。このため、本実施形態における記録ヘッド10には、図3に示すように、合計4条のノズル列44a〜44dが、記録ヘッド10の主走査方向に沿って並設されている。そして、このノズルプレート43のインクが噴射される側の面であって、プラテン3上の記録媒体と対向する面が、記録ヘッド10のノズル形成面に相当する。なお、ノズル部42とは、ノズルプレート43に開設された貫通孔を意味し、後述するようにノズル形成面に撥液膜47や下地膜48を有する構成では、これらの膜を貫通する孔も含めてノズル部42とする。つまり、撥液膜47や下地膜48を有するノズルプレート43に形成された貫通孔のノズル形成面43a側の開口から反対側(圧力室41側)の面の開口までの範囲をノズル部42とする。
図4は、ノズル部42の中心軸方向(インク噴射方向)に沿った断面図である。なお、図4において上側がインク噴射方向における上流側(圧力室41側)であり、下側がインク噴射方向における下流側(プラテン3側)である。本実施形態におけるノズル部42は、下流側の第1ノズル部45と上流側の第2ノズル部46とにより2段の円筒状を呈し、第1ノズル部45の流路断面積は、第2ノズル部46の流路断面積よりも小さくなっている。これらの第1ノズル部45と第2ノズル部46とは、平面視においていずれも真円状を呈している。第1ノズル部45の第2ノズル部46側とは反対側の開口からインクが噴射される。ここで、真円状とは、完全な真円のみならず、多少不完全な真円をも含む意味である。要するに、目視で概ね真円であると一般的に認識できる程度であれば真円状に含まれる。なお、第2ノズル部46の内径が、下流側(第1ノズル部45側)から上流側(圧力室41側)に向けて拡大するように内壁面が傾斜したテーパー形状のものであってもよい。
ノズルプレート43のノズル形成面43aには、下地膜48を介して撥液膜47が形成されている。この下地膜48は、ノズルプレート43と撥液膜47との間に介在して両者を結び付けるために設けられている。本実施形態における下地膜48は、ノズルプレート43の基材側の第1層48aと、中間の第2層48bと、撥液膜47側の第3層48cの3層構造となっている。第1層48aは酸化シリコン膜(SiOx:例えばSiO)、第2層48bは酸化タンタル膜(TaOx:例えばTa)、第3層48cはシリコン材料(アルキル基を含むポリオルガノシロキサン)のプラズマ重合膜(PPSi(Plasma Polymerization Silicone)膜)からそれぞれ構成されている。また、撥液膜47は、フッ素を含む撥液剤(シランカップリング剤)が塗布されることで形成されている。この撥液剤としては、フルオロアルキル基を含むシラン化合物、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシランが用いられる。また、塗布によるものではなく、例えば、蒸着あるいはスピンコート等によって撥液膜47が形成されてもよい。ここで、帯電列においてフッ素を含む撥液膜47はインクよりも負極性側に位置する。また、帯電列における撥液膜47の順位とインクの順位との差は、下地膜48の順位とインクの順位との差あるいはノズルプレート43の素材(シリコンあるいは金属)の順位とインクの順位との差よりも大きい。したがって、撥液膜47は、他の素材と比較してインクとの接触・摩擦により負極性に帯電しやすい。
本実施形態におけるノズルプレート43は、以下の手順で作製される。まず、ノズル部42が形成されたノズルプレート43の基材(本実施形態においてはシリコン基板)の表面を酸化させることにより、酸化シリコンからなる第1層48aが形成される。この第1層48aは、ノズルプレート43の基材の表面全体に形成されるので、ノズル部42の内周面にも形成される。また、第1層48aの膜厚は、数十〔nm〕から数百〔nm〕程度であり、本実施形態においては、100〔nm〕に調整されている。続いて、例えば、原子層堆積法(ALD)により酸化タンタルからなる第2層48bが成膜される。この第2層48bは、第1層48a上に重ねてノズルプレート43の基材の表面全体に形成されるのでノズル部42の内周面にも形成される。また、第2層48bの膜厚は、十数〔nm〕程度であり、本実施形態においては、12.5〔nm〕に調整されている。この第2層48bが形成されることにより、アルカリや酸に対する耐性が向上する。つまり、当該第2層48bは、ノズルプレート43の保護膜として機能する。続いて、例えばプラズマCVD法により第2層48b上にシリコーン材料をプラズマ重合することによりPPSi膜が形成され、当該PPSi膜を酸化させて第3層48cが形成される。この第3層48cの膜厚さは、数百〔nm〕程度であり、本実施形態においては、500〔nm〕に調整されている。したがって、本実施形態における下地膜48の総厚さは、670〔nm〕以下である612.5〔nm〕となっている。このように、下地膜48の総厚さを本願発明における条件である670〔nm〕以下(適宜、第1条件と称する)に調整することにより、撥液膜47の帯電を抑制することが可能となる。この点の詳細については後述する。なお、本実施形態においては、第1層48a、第2層48b、および第3層48cの3層により下地膜48が構成されたが、これには限られず、酸化シリコン膜、酸化タンタル膜、PPSi膜の少なくとも何れか一つ以上により構成されればよい。
続いて、例えばフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤を溶媒と混合してなる金属アルコキシド溶液にノズルプレート43の基材全体が浸漬され、これにより下地膜48上に金属アルコキシドの重合した分子膜が成膜される。その後、乾燥処理、アニール処理等を経て、ノズルプレート43の基材表面全体およびノズル部42の内周面に撥液膜47が形成される。撥液膜47は、主にノズル形成面43aに必要なものであるため、続いて余分な撥液膜47が除去される。具体的には、例えば、ノズルプレート43のノズル形成面43aとは反対側の面(圧力室41側となる面)からプラズマ処理が施されて、ノズル形成面43aを除く部分の撥液膜47が除去される。なお、撥液膜47は、ノズル部42の内周にも部分的に残る場合もある。
ここで、上述したように、帯電列においてフッ素を含む撥液膜47はインクよりも負極性側に位置するので、当該撥液膜47に含まれるフッ素の含有量が少ないほど、インクと接触した際に帯電し難い。ただし、フッ素の含有量が少なくなると、これに伴って撥液性も低下するため、必要な撥液性を確保しつつ、インクとの接触による帯電を抑制する観点から、撥液膜47におけるフッ素の含有量を調整することが望ましい。より具体的には、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて撥液膜47における100〔μm〕×100〔μm〕の面積を測定した際の分子量301(C11)の信号強度で、本願発明における条件である0.00005以上0.00020以下の範囲内(適宜、第2条件と称する)となるように、撥液膜47におけるフッ素の含有量(単位面積あたりのフッ素量)を調整することが望ましい。より好ましくは、当該信号強度が0.00005以上0.00015以下の範囲内(適宜、第3条件と称する)である。このように本発明では、この分子量301の信号強度により撥液膜47に含まれるフッ素の含有量が間接的に規定される。
図5は、上記の撥液膜47における分子量301の信号強度と、インクの帯電に基づくインク電位〔V〕、ノズル形成面43aに対するミストの付着量、および、印刷品質との関係を説明する表である。また、図6は、インク電位を計測する構成を説明する模式図である。図5におけるインク電位〔V〕は、上記のクリーニング処理の後、記録ヘッド10の全ノズル部42(360ノズル×ノズル列数(インク種類))からそれぞれインクをフラッシングボックス18に向けて合計10,000回噴射させたときに当該フラッシングボックス18に着弾して捕集されたインクの帯電量を表面電位計50(トレック・ジャパン社製・表面電位計)で測定したときの値の範囲を示している。また、ミスト付着量は、撥液膜47とインクの帯電に起因するノズル形成面43aへのミストの付着量であり、当該ミストによる不具合(例えば、ミストが蓄積して形成された雫の滴下により記録媒体が汚染されること、あるいは、ノズル部42から噴射されるインクの飛翔方向が曲がるなどインクの噴射が不安定になること等)のおそれが殆ど無い程度の付着量を「微小」とし、「微小」よりは多いが直ちには不具合が生じない程度の付着量を「少」とし、ミストによる不具合が直ちに生じる可能性がある程度の付着量を「多」としている。さらに、「印刷品質」は、記録媒体に画像等を印刷(記録)した場合においてノズル形成面43aに付着したミストによりインクの噴射が不安定となることによる画質への影響の程度を示すものであり、「良」はミストによる画質への影響が殆どみられないことを示し、「可」はミストによる画質への影響があるが目視では問題がない程度を示し、「不可」はミストによる画質への影響があり、画質の低下が視認できる程度を示している。なお、測定対象の記録ヘッド10に関し、下地膜48の構成や膜厚については同一であり、撥液膜47に含まれるフッ素の含有量のみが異なるものを対象としている。
図5に示すように、TOF−SIMSによる分子量301の信号強度が小さいほど、すなわち、撥液膜47に含まれるフッ素の含有量が少ないほど、インクとの摩擦による撥液膜47の帯電が抑えられる結果、ノズル部42から噴射されるインクが帯電し難くなることが判る。すなわち、分子量301の信号強度が0.00005未満であれば、クリーニング処理直後のインク電位が10〔V〕未満となり、ノズル形成面43aへのミスト付着量も「微小」となる。これにより、印刷品質も「良」となる。しかしながら、撥液膜47におけるフッ素の含有量が少なすぎる、又はフッ素が全く含まれない構成では、ノズル形成面43aにおいて必要な撥液性能が得られない場合がある。このため、分子量301の信号強度が、本発明における第2条件である0.00005以上0.00020以下の範囲内であれば、ノズル形成面43aの撥インク性を確保し、少なくともインク電位は30〔V〕以下となってミスト付着量も「少」となり、印刷品質は「可」となる。そして、信号強度が第3条件である0.00005以上0.00015以下の範囲内であれば、インク電位は10〔V〕以上20〔V〕以下となり、ミスト付着量も「微小」となり、印刷品質は「良」となるので、撥液膜47の必要な撥液性能を確保しつつ、インクのミストによる不具合を抑制する上ではより望ましい結果となる。一方、信号強度が0.00020を超えると、インク電位が30〔V〕を超える結果、ミスト付着量が「多」となり、印刷品質は「不可」となった。
図7は、下地膜48の層構成(第1層、第2層、若しくは第3層、又はこれらの組み合わせ)の異なる複数種類の記録ヘッド10について層構成および膜厚(総厚さ)とインク電位〔V〕との関係を示す表である。また、図8は、下地膜48の総厚さとクリーニング処理直後のインク電位〔V〕との関係を示したグラフである。なお、インク電位〔V〕の計測方法は上述の通りである。上記のように撥液膜47に含まれるフッ素の含有量を少なくするほどインクの帯電を抑制することができるが、さらに、下地膜48の厚さをより薄くすることで、インクの帯電をさらに抑制することができる。従来例の記録ヘッドは、第2層を有さず、第1層の膜厚が100〔nm〕、第3層の膜厚が1300〔nm〕で、下地膜の総厚さが1400〔nm〕と、図7および図8の中で最も厚く、本願発明における第1条件である670〔nm〕以下を満たさない構成となっている。また、分子量301の信号強度についても0.00023と図7の表中で最も大きくなっており、本願発明における第2条件および第3条件を満たさない構成となっている。すなわち、従来例の記録ヘッドは、本願発明における何れの条件も満たしていない。この従来例の記録ヘッドでは、インク電位が42〔V〕(図8では39〔V〕または40〔V〕)となっており、最もインクが帯電しやすくなっている。このため、ノズル形成面にミストが付着しやすく、当該ミストによる不具合が生じやすい。
例1の記録ヘッド10の構成については、下地膜48が第1層48a(340〔nm〕)、第2層48b(12.5〔nm〕)、および第3層48c(650〔nm〕)から構成され、当該下地膜48の総厚さが1002.5〔nm〕であって、従来例よりは薄いものの、本願発明における第1条件(670〔nm〕以下)を満たしていない。一方、分子量301の信号強度は0.00012であり、本願発明における第2条件である0.00005以上0.00020以下の範囲内であって、第3条件である0.00005以上0.00015以下の範囲内となっている。この例1の構成では、インク電位が27〔V〕(図8では27〔V〕または28〔V〕)であり、撥液膜47に含まれるフッ素の含有量が従来例よりも少なく、図5について上述したように第2条件および第3条件を満たすことによって、インクの帯電が抑えられている。また、例2の記録ヘッド10の構成については、下地膜48が第2層48b(12.5〔nm〕)および第3層48c(650〔nm〕)から構成され、当該下地膜48の総厚さが662.5〔nm〕であって、本願発明における第1条件を満たしている。一方、分子量301の信号強度は従来例と同じ0.00023であり、本願発明における第2条件および第3条件を満たしていない。この例2の構成では、インク電位が19〔V〕であり、第2条件・第3条件を満たさない場合であっても、第1条件を満たすことにより、インクの帯電が効果的に抑制されていることが判る。すなわち、この例2の構成は、撥液膜47に含まれるフッ素の含有量は従来例と同じで十分な撥液性能を確保しつつ、ノズル部42から噴射されるインクの帯電を抑制することが可能となっている。
また、例3の記録ヘッド10の構成および例4の記録ヘッド10の構成は、いずれも本願発明の第1条件、第2条件、および第3条件の全てを満たしている。すなわち、例3の構成においては、分子量301の信号強度は0.00012であり、本願発明における第2条件である0.00005以上0.00020以下の範囲内であって、第3条件である0.00005以上0.00015以下の範囲内となっている。また、下地膜48が第2層48b(12.5〔nm〕)および第3層48c(650〔nm〕)から構成され、当該下地膜48の総厚さが662.5〔nm〕となっており、本発明における第1条件を満たしている。この例3の構成では、インク電位が例2の場合よりも低い13〔V〕である。また、例4の構成においては、分子量301の信号強度が0.00012であって本願発明における第2条件および第3条件を満たし、下地膜48が第3層48c(650〔nm〕)のみから構成され、当該下地膜48の総厚さが650〔nm〕と、例示した記録ヘッドの中で最も薄くなっており、第1条件を満たしている。この例4の構成では、インク電位が10〔V〕以下と最も低い値となっている。すなわち、例3および例4の構成は、インクの帯電の抑制をより重視する場合に好適である。
図8に示すように、下地膜48の層構成に拘わらず、下地膜48の総厚さとインク電位〔V〕とには相関があり、下地膜48の総厚さが薄いほど、インクの帯電が抑えられることが判る。すなわち、下地膜48の厚さが薄くなることで、撥液膜47がシリコン製あるいは金属製のノズルプレート43の基材表面により近づくことになる。これにより、撥液膜47が帯電したとしても、ノズルプレート43の基材側に電荷が逃げやすくなるため、撥液膜47が帯電し難くなり、その結果、ノズル部42から噴射されるインクの帯電を抑制することが可能となる。したがって、下地膜48の総厚さをより薄くすることで、インクの帯電を抑制しつつ、払拭部材によるインクの拭き取り性等の観点から必要な撥液性をノズル形成面43aに持たせることが可能となる。図8のグラフに示されるように、第1条件である670〔nm〕以下を満たせば、クリーニング処理直後におけるインク電位を20〔V〕未満に抑えることができる。ただし、下地膜48としては、酸化シリコン膜、酸化タンタル膜、PPSi膜の少なくとも何れか一つ以上により構成されることが前提となる。このため、下地膜48の総厚さの下限値は、少なくとも0よりは大きいということになる。
このように、フッ素の含有量(TOF−SIMSによる測定の際の分子量301の信号強度)および下地膜48の総厚さを規定することで、必要な撥液性を確保しつつも、インクとの接触によるノズル形成面43aの帯電を抑制することができる。これにより、ノズル部42からインクを噴射する際に、静電誘導によりインクが正極性に帯電することが抑制される。このため、例えば、正極性に帯電した記録媒体に対して印刷・記録(インクの噴射動作)を行う場合においても当該記録媒体とインクとが反発しあって当該インクのミストがノズル形成面43aに付着したり、プリンター1内の他の構成部品に付着したりすることが低減される。その結果、プリンター1の信頼性が向上する。特に、導電率が1.0×10−3〔S/m〕以下のインク(すなわち、帯電した際に放電し難いインク)を噴射する構成により効果的である。このようなインクとしては、例えば、水系のインクよりも耐候性が高められた有機溶剤系(エコソルベント系)インクや、紫外線の照射による硬化する光硬化型インク等が挙げられる。
ここで、記録ヘッド10が扱う複数のインクに関し、導電率が異なる場合の構成について説明する。上記のように、水系の染料インクもしくは水系の顔料インクの導電率と比べて、有機溶剤系インクや光硬化型インクの導電率は低く、このため、後者のインクはより帯電しやすくなっている。本実施形態における記録ヘッド10においては、図4に示すように主走査方向に沿って並設されたノズル列44a〜ノズル列44dのうち、主走査方向における端部に位置する第1ノズル列44aおよび第4ノズル列44dに、導電率がより低いインクが割り当てられ、主走査方向において中央部側に位置する第2ノズル列44bおよび第3ノズル列44cに、導電率がより高いインクが割り当てられる。このように、記録媒体と記録ヘッド10とが相対移動しつつノズル部42からインクを噴射させる所謂シリアル型のプリンター1において、相対移動方向である主走査方向に並ぶノズル列44のうち主走査方向のより端部側に位置するノズル列44ほどより導電率の低くより帯電しやすいインクが割り当てられることで、当該インクが噴射された際に帯電したとしても、これに伴って生じたミストがノズル形成面43aに付着しにくくなる。
なお、上記実施形態においては、記録媒体の幅方向に対して記録ヘッド10を相対的に移動させつつインクの噴射を行う所謂シリアル型のプリンター1を例示したが、これには限られない。例えば、ノズル列の全長がプリンターにおいて印刷可能な最大サイズの記録媒体の幅に対応可能な長さに設定され、記録ヘッドの移動(走査)を行わずに記録媒体の搬送を行いつつ記録動作が行われる所謂ライン型のプリンターにも本発明を適用することが可能である。この構成においては、記録媒体の搬送方向における上流側に位置するノズル部(ノズル列)ほど導電率がより高いインクが割り当てられ、搬送方向における下流側に位置するノズル部(ノズル列)ほど導電率が低いインクが割り当てられる構成を採用することが望ましい。これにより、より上流側に位置するノズル部(ノズル列)から噴射されたインクにより記録媒体が帯電し難くなり、これよりも下流側に位置するノズル部(ノズル列)から噴射されたインクが記録媒体に反発して当該インク(ミスト)が記録ヘッドのノズル形成面等に付着することが低減される。また、記録媒体や媒体支持体が帯電し難くなるので、記録ヘッドから噴射されたインクが記録媒体上の目標とする位置により精度よく着弾する。これにより、記録画像等の画質の低下を抑制することが可能となる。
そして、上記実施形態においては、液体噴射ヘッドとしてインクジェット式記録ヘッド10を例に挙げて説明したが、本発明は、ノズル部から液体を噴射させる他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドでは液体の一種としてR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液体の一種として液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは液体の一種として生体有機物の溶液を噴射する。
1...プリンター,2...フレーム,3...プラテン,4...ガイドロッド,5...キャリッジ,6...キャリッジ移動機構,7...インクカートリッジ,8...カートリッジホルダー,9...エアチューブ,10...記録ヘッド,11...インク供給チューブ,12...FFC,13...エアーポンプ,14...ワイピング機構,15...ワイパーブレード,16...キャッピング機構,17...キャップ,18...フラッシングボックス,19...インク導入部材,20...中継基板,21...中間流路部材,22...ヘッドユニット,23...ホルダー,24...インク導入針,25...フィルター,26...供給流路,27...配線貫通口,28...中間流路,29...流路接続部,30...仕切版,31...連通流路,32...配線開口部,33...配線挿通口,34...フレキシブル基板,35...逃げ穴,36...固定板,37...圧電素子,38...収容空部,39...基板載置部,40...開口部,41...圧力室,42...ノズル部,43...ノズルプレート,43a...ノズル形成面,44...ノズル列,45...第1ノズル部,46...第2ノズル部,47...撥液膜,48...下地膜,48a...第1層,48b...第2層,48c...第3層,50...表面電位計

Claims (5)

  1. 液体が噴射されるノズル部が開口したノズル形成面を有する液体噴射ヘッドであって、
    前記ノズル形成面には、フッ素を含む撥液膜が下地膜を介して形成され、
    前記下地膜の総厚さが670〔nm〕以下であることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 飛行時間型二次イオン質量分析法による前記撥液膜における分子量301の信号強度が、0.00005以上0.00020以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記信号強度が、好ましくは0.00005以上0.00015以下であることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記下地膜は、酸化シリコン膜、酸化タンタル膜、およびシリコン材料のプラズマ重合膜のうち少なくとも1つ以上で構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。
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