以下、図面を参照しながら発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
(第1実施形態)
図1に示す燃焼システムは車両に搭載されたものであり、当該車両は、内燃機関10の出力を駆動源として走行する。内燃機関10は、圧縮自着火式のディーゼルエンジンであり、燃焼に用いる燃料には、炭化水素化合物である軽油を用いている。図示しない燃料タンク内の液体燃料は、燃料ポンプ11により高圧化され、コモンレール12を介して複数の燃料噴射弁13へ分配される。燃料噴射弁13から噴射された燃料は内燃機関10の燃焼に用いられる。内燃機関10は、基本的にはリーン状態で燃焼させるように作動する。つまり、燃焼室に噴射された燃料と燃焼室に吸入される空気との比率である空燃比が、空気過剰に設定された状態で燃焼(つまり、リーン燃焼)させている。
さらに上記車両には、内燃機関10の排気に含まれるNOxを還元して浄化させるNOx浄化システムが搭載されている。NOx浄化システムは、NOxを還元させる還元装置20と、炭化水素化合物を還元剤として還元装置へ供給する供給装置30と、還元装置20へ供給される還元剤を改質する改質装置40と、を備える。これら還元装置20、供給装置30および改質装置40は、内燃機関10の排気通路を形成する排気管10exに取り付けられている。
還元装置20は、排気管10exに取り付けられたケース21と、ケース21内に収容された基材と、基材にコーティングされた触媒担体22と、触媒担体22に担持された還元触媒22aと、を有する。ケース21内には、改質装置40により改質された還元剤が排気とともに流入する。還元触媒22aは、流入してきた排気中のNOxと還元剤との還元反応を促進させるものである。
基材は、例えばコージェライト等でハニカム状に形成されている。触媒担体22の材質には酸化アルミニウム(AL2O3、以下、アルミナ)が用いられている。触媒担体22の他の材質例としては、上記アルミナに加え、ゼオライト、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア等が挙げられ、また、これらを複数用いることも可能である。還元触媒22aの材質には銀(Ag)が用いられている。還元触媒22aの他の材質例としては、上記銀に加え、銅(Cu)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)、ラジウム(Rh)等を用いることが可能である。さらに、コバルト(Co)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、テクネチウム(Te)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)等が触媒金属33に用いられてもよい。加えて上記の金属は、酸化物の状態で触媒担体22に担持されていてもよい。また、複数種類の上記金属が単体又は酸化物として、触媒担体22に担持されていてもよい。
供給装置30は、排気管10exのうち還元装置20の上流側に取り付けられた還元剤噴射弁31と、還元剤噴射弁31へ供給される還元剤の圧力を調整する調圧バルブ32と、を有する。供給装置30へ供給される還元剤には、先述した燃料タンク内の燃料が用いられている。具体的には、コモンレール12内の高圧燃料が、調圧バルブ32により調圧されて還元剤噴射弁31へ分配される。還元剤噴射弁31を開弁作動させると、還元剤噴射弁31の噴孔から排気通路へ、調圧された液体の還元剤が噴射される。噴射された還元剤は排気とともに改質装置40へ流入する。
改質装置40は、排気管10exのうち還元装置20の上流側かつ還元剤噴射弁31の下流側に取り付けられたケース41と、ケース41内に収容された基材と、基材にコーティングされた触媒担体42と、触媒担体42に担持された改質触媒42aと、を有する。ケース41内には、還元剤噴射弁31から噴射された還元剤が排気とともに流入する。改質触媒42aは、流入してきた還元剤を排気中のO2と反応させて酸化させる。この酸化では、炭化水素化合物である還元剤が完全に酸化して消失することのないよう、炭化水素化合物を部分的に酸化させるように炭化水素化合物の分子構造を変化させている。部分的な酸化の具体例としては、炭化水素化合物が有する置換基を変化させる等が挙げられる。このように還元剤を部分酸化させることで、還元力が向上するように還元剤は改質される。
さらに改質装置40は、触媒担体42の温度を調整する温度調整部43を有する。温度調整部43は、触媒担体42を加熱または冷却するものであり、ペルチェ素子や電気ヒータ等が具体例として挙げられる。さて、本実施形態に反して温度調整部43を廃止した場合には、改質触媒42aの温度(改質触媒温度Ta)は、排気による加熱量および外気温度で決まる。そうすると、内燃機関10始動直後や外気温度が低いことに起因して改質触媒温度Taが過剰に低くなる場合がある。この場合には、改質触媒42aが十分に活性化しておらず酸化力が弱いので、還元剤が十分に改質されなくなることが懸念される。一方、内燃機関10を高負荷状態で長時間運転させる等に起因して、改質触媒温度Taが過剰に高くなる場合がある。この場合には、還元剤が部分酸化せずに完全に酸化して消失してしまい、還元装置20へ供給される還元剤の量が少なくなることが懸念される。これらの懸念に対し、本実施形態では温度調整部43を有するので、触媒担体42を加熱または冷却することで、上記懸念を抑制できる。
電子制御装置(ECU80)は、所定のプログラムが記憶されたメモリと、そのプログラムにしたがって演算処理するプロセッサと、入力処理回路と、出力処理回路と、を有する。入力処理回路には、NOxセンサ81、O2センサ82、改質温度センサ83、還元温度センサ86および下流NOxセンサ84の各々で検出された信号が入力される。
NOxセンサ81は、内燃機関10から排出される排気中のNOx濃度を検出する。O2センサ82は、内燃機関10から排出される排気中のO2濃度を検出する。下流NOxセンサ84は、還元装置20から流出した排気中のNOx濃度を検出する。
改質温度センサ83は、改質触媒温度Taと相関の高い温度を検出する。例えば、改質温度センサ83をケース41に取り付け、ケース41内の排気温度つまり触媒担体42の雰囲気温度を、改質触媒温度Taと相関の高い温度として検出する。或いは、改質温度センサ83を触媒担体42に取り付け、触媒担体42の温度を、改質触媒温度Taと相関の高い温度として検出する。
還元温度センサ86は、還元触媒22aの温度(還元触媒温度Tb)と相関の高い温度を検出する。例えば、還元温度センサ86をケース21に取り付け、ケース21内の排気温度つまり触媒担体22の雰囲気温度を、還元触媒温度Tbと相関の高い温度として検出する。或いは、還元温度センサ86を触媒担体22に取り付け、触媒担体22の温度を、還元触媒温度Tbと相関の高い温度として検出する。
これらのセンサにより検出された値に応じて、プロセッサは制御信号を出力し、制御信号に応じて出力処理回路から制御対象へ駆動信号が出力される。制御対象は、還元剤噴射弁31、調圧バルブ32および温度調整部43である。要するに、ECU80は、還元剤噴射弁31の作動を制御して、還元剤の噴射開始タイミングや噴射期間を制御する。さらにECU80は、調圧バルブ32の作動を制御して、還元剤噴射弁31へ供給される還元剤の圧力、つまり還元剤噴射弁31から噴射される還元剤の噴射圧力を制御する。さらにECU80は、温度調整部43の作動を制御して加熱または冷却の度合いを制御することで、改質触媒温度Taを制御する。
このように、ECU80は、供給装置30および改質装置40の作動を制御する。以下、その制御の内容について詳述する。
内燃機関10を始動させた以降において、後述するNOx浄化率向上制御が実行されていない初期状態では、温度調整部43への通電がオフに制御され、還元剤の噴射圧力は初期設定圧力となるように制御される。また、上記初期状態では、還元剤噴射弁31の開弁期間、つまり還元剤の噴射期間であって、還元剤噴射弁31の1回の開弁で噴射される量(噴射量)は、内燃機関10からのNOx排出量に応じて制御される。
具体的には、ECU80は、内燃機関10の回転速度および負荷等の運転状態に基づき、単位時間あたりに内燃機関10から排出される排気量を推定する。さらにECU80は、推定した排気量、およびNOxセンサ81により検出されたNOx濃度に基づき、単位時間あたりに内燃機関10から排出されるNOx量を算出する。例えば、排気量にNOx濃度を乗算し、さらに補正係数を乗算または加算することで、NOx量を算出する。算出したNOx量を過不足なく還元するのに要する還元剤の噴射量を、目標噴射量として設定する。そして、還元剤の噴射圧力に応じた、目標噴射量に対応する噴射期間となるように、還元剤噴射弁31の開弁期間を制御する。
さて、炭化水素化合物には、分子構造が異なる様々な成分が含まれている。そして、燃料タンクに給油される燃料(還元剤)に含まれる各成分の濃度は、予め想定されている範囲内の値に特定される。しかしながら、改質装置40により還元剤を部分酸化(改質)させた後の還元剤に含まれる各成分の濃度は、改質装置40へ流入する排気の状態や改質装置40の状態に応じて大きく異なってくる。そして、これら各々の成分濃度が異なれば、還元剤の噴射量が同じであってもNOx浄化率は異なってくる。NOx浄化率とは、還元装置20へ流入するNOx量に対する、還元装置20で還元されたNOx量の割合である。
そして、供給装置30および改質装置40を、排気の状態や改質装置40の状態に応じて適正に制御すれば、改質後における分子構造種毎の成分濃度を、NOx浄化率が向上する値に調整することができる。先述したNOx浄化率向上制御とは、このように成分濃度を調整してNOx浄化率を向上させる制御である。
以下、ECU80のプロセッサが実行するNOx浄化率向上制御の手順について詳述する。
先ずプロセッサは、目標NOx浄化率を設定する。例えば、排気流量が少ない時には目標NOx浄化率は高い値に設定される。また、短時間で多量のNOxが還元装置20へ流入している時には、目標NOx浄化率は低い値に設定される。次に、NOxセンサ81により検出された還元装置20の上流側NOx濃度と、下流NOxセンサ84により検出された還元装置20の下流側NOx濃度とに基づき、実際のNOx浄化率(実浄化率)を算出する。
次に、算出した実浄化率が目標NOx浄化率よりも小さい場合には、NOx浄化率向上制御を実行する。実浄化率が目標NOx浄化率以上である場合には、供給装置30および改質装置40に対する制御の内容を現状の内容で維持させる。したがって、例えば内燃機関10を始動させてから一度もNOx浄化率向上制御が実行されていなければ、還元剤の噴射圧力は初期設定圧力で維持され、温度調整部43への通電はオフに維持される。また、内燃機関10を始動させてからNOx浄化率向上制御が実行された経歴がある場合には、直近のNOx浄化率向上制御による制御内容が維持される。なお、実浄化率が目標NOx浄化率以上である場合に、上述の如く制御内容を現状維持させることに替えて、還元剤量を減らして改質度合いを最適化するようにしてもよい。 NOx浄化率向上制御では、先ずプロセッサは、改質後における分子構造種毎の成分濃度を取得する。これらの成分濃度は、図4に例示する成分濃度マップMaで表現される。成分濃度マップMaを取得する手順は、図3および図10を用いて後に詳述する手順と同じであり、説明を援用する。次に、供給装置30および改質装置40に対する現状の制御内容を変更することで、分子構造種毎の成分濃度を調整できる範囲について算出する。変更させる制御内容の具体例としては、調圧バルブ32による噴射圧力、温度調整部43による改質触媒温度Ta、還元剤噴射弁31による噴射量等が挙げられる。
次に、上述した調整できる範囲内においてNOx浄化率が最大となる各成分の濃度の組合せを算出し、算出された各成分の濃度を目標濃度として設定する。次に、設定された目標濃度に基づき、供給装置30および改質装置40の作動を制御する。例えば、調圧バルブ32の作動を制御することで還元剤の噴射圧力を調整して、各成分の濃度を目標濃度にする。したがって、上述したNOx浄化率向上制御を実行すれば、分子構造種毎の成分濃度を調整できる範囲において、NOx浄化率が最大となるように各成分の濃度が調整される。よって、NOx浄化率が向上する。
さて、還元装置20へ流入する排気には、内燃機関10から排出されるHC(炭化水素化合物)や、供給装置30から供給されるHCが含まれており、流入したHCの一部は還元触媒22aに吸着する。吸着したHCの一部は還元触媒22aから脱離するが、脱離せずに蓄積されていくHCも存在する。そして、吸着しているHCはNOx浄化率の低下を招くので、還元触媒22aへのHC吸着量(HC被毒量)が多いほど、HC被毒の度合いが大きく、NOx浄化率が悪くなる。そこで、HC被毒度合いが所定以上である場合に、還元触媒22aの温度を上昇させるといった被毒回復制御を実行する。このように温度上昇させることにより、還元触媒22aに吸着していたHCの脱離が促され、HC吸着量を低減させることができ、NOx浄化率を回復させることができる。
但し、還元装置20へ流入するHCに含まれる分子構造種毎の成分濃度が異なれば、HC流入量が同じであっても、HC吸着量は異なってくる。そこで、本実施形態では、還元装置20へ流入するHCに含まれる分子構造種毎の成分濃度に応じて、還元触媒22aが被毒している度合いを表した指標である被毒度合いを算出し、その被毒度合いが所定以上である場合に被毒回復制御を実行する。
具体的には、図2に示す処理手順で被毒回復制御を実行する。なお、図2の処理は、ECU80が有するプロセッサが実行するものであり、内燃機関10の運転期間中、所定の演算周期で繰り返し実行される処理である。先ず図2のステップS10では、図3に示すサブルーチン処理を実行することで、単位時間当りに生じるHC吸着量、つまりHC被毒速度を、成分毎に算出する。続くステップS20では、図10に示すサブルーチン処理を実行することで、成分毎のHC被毒速度に基づきHC被毒度合いを算出する。続くステップS30では、図12に示すサブルーチン処理を実行することで、被毒回復制御を実行してNOx浄化率を回復させる。以下、上述した各々のサブルーチン処理について説明する。
図3は、HC被毒速度を成分毎に算出する処理であり、先ず、図3のステップS11において、内燃機関10から排出される排気の状態を表した物理量を取得する。該物理量の具体例としては、排気のO2濃度、排気のNOx濃度、排気流量、排気温度等が挙げられる。上記O2濃度およびNOx濃度は、O2センサ82およびNOxセンサ81の検出値から取得される。上記排気流量および排気温度は、内燃機関10の回転速度および負荷等の運転状態に基づき推定される。
続くステップS12では、改質装置40の状態を表した物理量を取得する。該物理量の具体例としては改質触媒温度Taが挙げられ、この改質触媒温度Taは改質温度センサ83の検出値から取得される。
続くステップS13では、ステップS11、S12で取得した物理量に基づき、改質後の還元剤に含まれている分子構造種毎の、現状の成分濃度を算出する。具体的には、上記複数の物理量の値と、分子構造種毎の成分濃度との関係を予め試験してマップ化しておき、そのマップをメモリに記憶させておく。そして、取得した物理量に基づき、上記マップを参照して分子構造種毎の成分濃度を算出する。或いは、上記マップに替えて、物理量を変数として成分濃度を算出する演算式をメモリに記憶させておき、取得した物理量を演算式に代入して分子構造種毎の成分濃度を算出する。また、還元剤の噴射圧力によっても成分濃度が異なることを考慮して、現状の噴射圧力をも考慮して分子構造種毎の成分濃度を算出してもよい。
例えば、これらの分子構造種毎の成分濃度は、図4に例示する成分濃度マップMaで表現される。分子構造種の具体例としては、直鎖パラフィン、側鎖パラフィン、ナフテン、アロマ、オレフィン、アルデヒド等が挙げられ、また、これらの構造種が同じであっても、炭素数が異なれば、異なる分子構造種として成分濃度を算出している。なお、ステップS11、S12、S13の処理を実行している時のECU80のプロセッサは、還元装置20へ流入するHCに含まれる分子構造種毎の成分濃度を取得する濃度取得部80a(図1参照)に相当する。
続くステップS14では、分子構造種毎(つまり成分毎)の被毒率を算出する。例えば、図4に示す成分濃度マップMaに対応する成分毎の被毒率を算出する。被毒率は、成分毎に異なる。例えば、分子構造が同種であっても炭素数が異なる分子であれば、被毒率は異なる。また、同じ成分であっても、炭化水素化合物が還元装置20へ流入した時の還元触媒温度Tbに応じて被毒率は異なる。そこで、分子構造、炭素数および還元触媒温度Tbに応じて、成分毎の被毒率の値を異ならせている。例えば、図5に示す被毒率マップM1、M2に基づき、成分毎の被毒率を算出する。
これらの被毒率マップM1、M2は、還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3であることを条件として用いられる。そして、所定範囲の下限値である下限温度T1未満である低温時には、全ての成分が還元触媒22aに吸着(被毒)しないとみなして、全ての成分について被毒率をゼロに設定する。また、還元触媒温度Tbが所定範囲の上限値である上限温度T3以上である高温時には、全ての成分が還元触媒22aに吸着(被毒)しないとみなして、全ての成分について被毒率をゼロに設定する。
被毒率マップM1、M2は、本発明者らが実施した試験の結果に基づき設定されており、それらの試験結果に基づき、下限温度T1は250℃に設定され、上限温度T3は350℃に設定されている。還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3である場合において、所定温度T2よりも低温である場合には第1の被毒率マップM1を用い、所定温度T2よりも高温である場合には第2の被毒率マップM2を用いて各成分の被毒率を算出する。
マップの縦軸は被毒率を示し、横軸は炭素数を示す。マップ中の実線は、直鎖パラフィンや直鎖オレフィン等の直鎖構造の成分についての被毒率を示す。この成分を、以下、直鎖パラフィン等の成分と呼ぶ。マップ中の点線は、アロマやナフテン等の環構造や側鎖構造の成分についての被毒率を示す。この成分を、以下、アロマ等の成分と呼ぶ。マップ中の一点鎖線は、アルデヒド等の極性を持つ分子構造の成分についての被毒率を示す。この成分を、以下、アルデヒド等の成分と呼ぶ。
いずれの被毒率マップM1、M2においても、直鎖パラフィン等の成分およびアロマ等の成分については、炭素数が多いほど被毒率を大きい値にしている。図6の試験結果は、その妥当性を確認する試験の結果であり、炭素数の異なる3種類の直鎖パラフィンについて、各々を還元装置20へ流入させた場合の浄化率を計測した試験の結果である。符号L1は炭素数8の直鎖パラフィンでの試験結果、符号L2は炭素数12の直鎖パラフィンでの試験結果、符号L3は炭素数16の直鎖パラフィンでの試験結果を示す。いずれの試験においても、時間経過とともに被毒が進行することに起因して浄化率は低下していくが、炭素数が多い成分であるほど、浄化率の低下速度が速いことが分かる。つまり、直鎖パラフィンについては、炭素数が多いほど被毒率が大きくなることを意味する。
この試験結果を本発明者らは次のように考察している。直鎖パラフィンにおいては、炭素数が多くなるほど、水素原子が引き抜かれることによるラジカル生成が容易になる。そして、ラジカルの状態では還元触媒22aへの吸着性が高いので、吸着した直鎖パラフィンが脱離しにくくなり被毒率が高くなる。よって、炭素数が多いほど被毒率が高くなる。なお、還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3であれば、高温であるほど吸着性が高くなり被毒率が高くなるが、上限温度T3を超えて高温になると脱離性が高くなるので、被毒率は殆どゼロになる。
図6の試験では、還元触媒温度Tbを375℃に維持させながら浄化率を計測しているが、図7の試験では、炭素数16の直鎖パラフィンについて、還元触媒温度Tbを異ならせて浄化率を計測した試験の結果である。符号L4は275℃での試験結果、符号L5は500℃での試験結果、符号L6は375℃での試験結果を示す。ある温度領域においては時間経過とともに浄化率が低下するが、その温度領域の上限を超えて高温の場合や下限を超えて低温の場合には、浄化率は殆ど低下しないことが分かる。つまり、所定範囲T1〜T3を超えて高温または低温の場合には、殆ど被毒しないことを意味する。この試験結果に基づき、還元触媒温度Tbが所定範囲外である場合には、全ての成分について被毒率をゼロにしている。
いずれの被毒率マップM1、M2においても、炭素数が同じであれば、アロマ等の成分の被毒率を直鎖パラフィン等の成分の被毒率よりも大きい値にしている。図8の試験結果は、炭素数が同じの直鎖パラフィンおよびアロマの2種類について、各々を還元装置20へ流入させた場合の浄化率を計測した試験の結果である。符号L7は直鎖パラフィンでの試験結果、符号L8はアロマでの試験結果を示す。いずれの試験においても、時間経過とともに被毒が進行することに起因して浄化率は低下していくが、直鎖パラフィンよりもアロマの方が、浄化率の低下速度が速いことが分かる。つまり、直鎖パラフィンよりもアロマの被毒率の方が大きいことを意味する。
この試験結果を本発明者らは次のように考察している。直鎖パラフィン等の成分に比べてアロマ等の成分は反応性が低いので、還元触媒22a上に留まり易い。よって、アロマ等の成分の被毒率の方が直鎖パラフィン等の成分の被毒率に比べて高い。
第1の被毒率マップM1では、炭素数が同じである成分のうち、アルデヒド等の成分に設定される被毒率は、直鎖パラフィンやアロマ等の成分に設定される被毒率よりも大きい値である。これに対し、第2の被毒率マップM2では、炭素数が同じである成分のうち、アルデヒド等に設定される被毒率は、直鎖パラフィン等の成分やアロマ等の成分に設定される被毒率よりも小さい値である。要するに、還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3である場合において、直鎖パラフィンやアロマ等の成分の場合には低温では吸着性が低く被毒率が低い。これに対し、アルデヒド等の成分の場合には、反応性が高いので低温であってもある程度の吸着性があり被毒率が高い。
図9の試験結果は、同じ炭素数のアルデヒドについて、還元触媒温度Tbを異ならせて浄化率を計測した試験の結果である。符号L9は375℃での試験結果、符号L10は500℃での試験結果、符号L11は225℃での試験結果を示す。このように、225℃の低温であっても、時間経過とともに被毒が進行して浄化率は低下していく。一方、図7に示す直鎖パラフィンの場合には、275℃の低温では殆ど被毒が進行しない。つまり、第1の被毒率マップM1が用いられる低温の範囲(第1範囲)では、アルデヒド等の成分の被毒率は、直鎖パラフィン等やアロマ等の被毒率よりも大きいことを意味する。一方、第2の被毒率マップM2が用いられる高温の範囲(第2範囲)では、アルデヒド等の成分の被毒率は、直鎖パラフィン等やアロマ等の被毒率よりも小さいことを意味する。
第1の被毒率マップM1では、いずれの分子構造の種類であっても、炭素数が多い成分であるほど被毒率を大きくしている。また、直鎖パラフィン等やアロマ等の成分については、第2の被毒率マップM2においても、炭素数が多い成分であるほど被毒率を大きくしている。その一方で、アルデヒド等の成分については、第1の被毒率マップM1が用いられる低温の範囲(第1範囲)では、炭素数が少ない成分であるほど被毒率を大きくしている。
図10の試験結果は、その妥当性を確認する試験の結果であり、炭素数の異なる2種類のアルデヒドについて、還元触媒温度Tbを第1範囲の低温にして浄化率を計測した試験の結果である。符号L12は炭素数の多いアルデヒドの試験結果、符号L13は炭素数の少ないアルデヒドの試験結果を示す。これらの試験結果は、アルデヒドの場合、低温時には炭素数の少ないほど被毒率が大きくなることを意味する。
図3の説明に戻り、ステップS14において、上述の如く還元触媒温度Tbに基づき成分毎の被毒率を算出した後、続くステップS15では、成分毎の被毒速度を算出する。被毒速度とは、還元触媒22aにHCが吸着するにあたり、所定時間当りに増加する吸着量(被毒量)のことである。被毒速度は、ステップS13で算出した成分毎の濃度に、ステップS14で算出した成分毎の被毒率を乗算して得られた値に基づき算出される。例えば、その乗算値をそのまま被毒速度としてもよいし、乗算値に補正係数を乗算したり補正定数を加算したりして、被毒速度を算出してもよい。
図11は、成分毎のHC被毒速度に基づきHC被毒度合いを算出する処理であり、先ず、図11のステップS21において、図3の処理で算出した成分毎の被毒速度に基づき、成分毎の被毒量を算出する。例えば、ある成分の被毒速度をΔXとし、被毒量をHCxとした場合、前回の被毒量HCxに被毒速度ΔXを加算して得られた値を、今回の被毒量HCxとする。続くステップS22では、ステップS21で算出された成分毎の被毒量を積算して、総被毒量を算出する。このように算出された総被毒量は、還元触媒22aが被毒している度合いを表した指標である被毒度合いとして用いられる。
なお、ステップS21の処理を実行している時のECU80のプロセッサは、分子構造種毎の還元触媒22aへの被毒量を算出する被毒量算出部に相当する。ステップS22の処理を実行している時のECU80のプロセッサは、濃度取得部80aにより取得された成分濃度に応じて被毒度合いを算出する被毒度合算出部80b(図1参照)に相当する。
図12は、被毒回復制御を実行してNOx浄化率を回復させる処理であり、先ず、図12のステップS31において、ステップS35により開始される被毒回復制御が実行中であるか否かを判定する。被毒回復制御とは、還元触媒温度Tbを上昇させることで、還元触媒22aを被毒させているHCを除去する制御である。
被毒回復制御では、温度調整部43により改質触媒42aの温度を所定温度以上に上昇させる。この所定温度は、部分酸化させて改質する際の上限温度よりも高い温度に設定されている。これにより、排気は温度調整部43により加熱されて温度上昇する。また、改質装置40での還元剤の酸化が促進されることにより、還元剤の酸化反応熱が上昇し、ひいては排気が加熱されて温度上昇する。このように排気温度を上昇させることで、改質装置40の下流に位置する還元装置20の温度が上昇する。つまり、還元触媒温度Tbが上昇して吸着HCの脱離が促進されて被毒回復する。なお、被毒回復制御を実行している時の供給装置30および改質装置40は、還元触媒22aを昇温させる昇温装置に相当する。
ステップS31にて被毒回復制御中と肯定判定された場合、続くステップS32において、ステップS22で算出した総被毒量(被毒度合い)が目標量未満であるか否かを判定する。目標量未満と肯定判定された場合には、続くステップS33において被毒回復制御を停止させ、目標量未満でないと否定判定された場合には、被毒回復制御を継続させる。
ステップS31にて被毒回復制御中でないと否定判定された場合、続くステップS34において、ステップS22で算出した総被毒量(被毒度合い)が目標量以上であるか否かを判定する。目標量以上と肯定判定された場合には、続くステップS35において被毒回復制御を開始させ、目標量以上でないと否定判定された場合には、被毒回復制御を実行させない状態を継続させる。
以下、本実施形態に係るECU80により提供される浄化制御装置の効果について説明する。
本実施形態に係るECU80は、被毒回復制御部80c、濃度取得部80aおよび開始タイミング決定部80dを備える。そのため、還元装置20へ流入するHCに含まれる分子構造種毎の成分濃度に応じて、被毒回復制御を開始するタイミングを決定する。そのため、分子構造種毎の成分濃度の違いに応じたHC被毒量の違いを考慮して被毒回復制御が開始されるので、昇温開始が早過ぎることによるエネルギ消費を抑制でき、かつ、昇温開始が遅過ぎることによるNOx浄化不良を抑制できる。
さらに本実施形態では、濃度取得部80aにより取得された成分濃度に応じて、還元触媒22aが被毒している度合いを表した指標である被毒度合いを算出する被毒度合算出部80bを備える。そして、開始タイミング決定部80dは、被毒度合算出部80bにより算出された被毒度合いが所定以上であることに基づき、被毒回復制御を開始するタイミングを決定する。そして、被毒度合算出部80bは、濃度取得部80aにより取得された成分濃度に、分子構造種毎に設定された被毒率を乗算した値が大きいほど、被毒度合いを大きい値に算出する。
具体的には、図11のステップS21で算出された成分毎の被毒量が多いほど、ステップS22で算出される被毒度合いは大きくなる。また、被毒度合算出部80bは、HCが還元装置20へ流入した時の還元触媒温度Tbに応じて被毒率の値を異ならせる。具体的には、図3のステップS14において、還元触媒温度Tbに応じて被毒率を異ならせる。これによれば、HC流入時の還元触媒温度Tbに応じて被毒率が異なることに合わせて、被毒度合いが算出されるので、実際のNOx浄化率の低下度合いを反映した値に被毒度合いを算出することを、高精度で実現できる。よって、昇温開始が早過ぎたり遅過ぎたりすることの抑制を促進できる。
さらに本実施形態では、被毒度合算出部80bは、還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3外である時に流入したHCについては、所定範囲内である時に流入したHCに比べて被毒率を小さい値に設定する。具体的には、図5に例示するように、所定範囲外である時に流入したHCの被毒率をゼロに設定する。これによれば、殆ど被毒が生じないような所定範囲外の時に流入したHCについては被毒率を小さく設定して被毒度合いを算出するので、実際のNOx浄化率の低下度合いを反映した値に被毒度合いを算出することを、高精度で実現できる。
さらに本実施形態では、被毒度合算出部80bは、還元触媒温度Tbが所定温度T2よりも低温である時に流入したHCと、所定温度T2よりも高温である時に流入したHCとで、被毒率を異ならせている。すなわち、低温時のHCについては、炭素数が同じである成分のうち、アルデヒド等の成分に設定される被毒率を、直鎖パラフィン等の成分に設定される被毒率よりも大きい値に設定する。高温時のHCについては、炭素数が同じである成分のうち、アルデヒド等の成分に設定される被毒率を、直鎖パラフィン等の成分に設定される被毒率よりも小さい値に設定する。これによれば、被毒率マップM1、M2に示す特性のうち「アルデヒド等の成分の被毒率は、低温域では他の成分より大きく高温域では他の成分より小さい」といった特性を考慮して、被毒度合いが算出される。よって、実際のNOx浄化率の低下度合いを反映した値に被毒度合いを算出することを、高精度で実現できる。
さらに本実施形態では、被毒度合算出部80bは、アルデヒド等の成分については、還元触媒温度Tbが第1範囲T1〜T2である時に流入した場合には炭素数が多い成分であるほど被毒率を小さい値に設定する。また、第1範囲よりも高温の第2範囲T2〜T3である時に流入した場合には炭素数が多い成分であるほど被毒率を大きい値に設定する。これによれば、被毒率マップM1、M2の特性のうち「アルデヒド等の成分の被毒率は、低温域では炭素数が多いほど小さく、高温域では炭素数が多いほど大きい」といった特性を考慮して被毒度合いが算出される。よって、実際のNOx浄化率の低下度合いを反映した値に被毒度合いを算出することを、高精度で実現できる。
さらに本実施形態では、被毒度合算出部80bは、分子構造種毎の成分のうち直鎖構造の成分については、炭素数の多い成分であるほど被毒率を大きい値に設定する。これによれば、被毒率マップM1、M2の特性のうち「直鎖パラフィン等の成分の被毒率は炭素数が多いほど大きい」といった特性を考慮して被毒度合いが算出される。よって、実際のNOx浄化率の低下度合いを反映した値に被毒度合いを算出することを、高精度で実現できる。
さらに本実施形態では、被毒度合算出部80bは、炭素数が同じである成分のうち、環構造または側鎖構造の成分に設定される被毒率を、直鎖構造の成分に設定される被毒率よりも大きい値に設定する。これによれば、被毒率マップM1、M2の特性のうち「炭素数が同じであれば、アロマ等の成分の被毒率は、直鎖パラフィン等の被毒率より大きい」といった特性を考慮して被毒度合いが算出される。よって、実際のNOx浄化率の低下度合いを反映した値に被毒度合いを算出することを、高精度で実現できる。
さらに本実施形態では、改質装置40を備えたNOx浄化システムに適用されたECU80である。そして、濃度取得部80aは、改質装置40へ流入する排気の状態、および改質装置40の状態の少なくとも一方の情報に基づき、還元装置20へ流入する還元剤に含まれる分子構造種毎の成分濃度を推定する。
ここで、濃度取得部80aが取得する情報のうち、改質装置40へ流入する排気の状態の具体例としては、排気中のO2濃度やNOx濃度、排気流量等が挙げられる。また、改質装置40の状態の具体例としては、改質触媒温度Ta等が挙げられる。そして、これら排気の状態や改質装置40の状態は、改質後の還元剤に含まれる分子構造種毎の成分濃度に大きく影響する、との知見を本発明者らは得ている。この知見を鑑み、本実施形態では、改質装置40へ流入する排気の状態および改質装置40の状態の少なくとも一方の情報に基づき分子構造種毎の成分濃度を推定するので、成分濃度を検出する専用のセンサを用いることなく、成分毎の濃度推定を実現できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態に係る被毒回復制御では、温度調整部43を所定温度以上にすることで、改質触媒温度Taを所定温度以上に上昇させて還元触媒温度Tbを昇温させる。そして、上記所定温度は、予め設定された値に固定して設定されている。これに対し、本実施形態に係る被毒回復制御では、被毒度合算出部80bの算出結果に応じて、昇温される還元触媒温度Tbの最高温度を変更させる。
具体的には、図13の手順にしたがって被毒回復制御を実行する。先ず、ステップS41において、図11のステップS21で算出した成分毎の被毒量を取得し、取得した成分毎の被毒量に基づき、還元触媒温度Tbの目標温度である目標昇温値を設定する。
具体的には、成分毎の被毒量のうち、直鎖パラフィン等の成分の被毒量を第1種被毒量とし、アロマ等の成分の被毒量を第2種被毒量とし、アルデヒド等の成分の被毒量を第3種被毒量とする。そして、第1種被毒量に対する第2種被毒量の割合が大きいほど、目標昇温値を高くする。例えば、直鎖パラフィン等の成分の場合、他の成分に比べて脱離に要する温度が高いので、直鎖パラフィン等の成分の被毒量が多いほど、目標昇温値を高く設定する。また、第1種被毒量に対する第3種被毒量の割合が大きいほど、目標昇温値を低くする。例えば、アルデヒド等の成分の場合、他の成分に比べて低い温度で脱離するので、アルデヒド等の成分の被毒量が多いほど、目標昇温値を低く設定する。
ここで、NOx浄化率が最大となるように改質後の各成分の目標濃度を設定し、その目標濃度となるように還元剤の噴射圧力等を調整するといった制御(浄化用改質制御)を実行することは、上記第1実施形態で説明した通りである。これに対し、本実施形態に係るステップS42では、浄化用改質制御により設定された上記目標濃度が以下のように変更される。つまり、改質装置40へ流入する還元剤に含まれる各成分の濃度に対して目標濃度を設定しており、還元剤の酸化反応により生じる反応熱が、浄化用改質制御を実行している時よりも高くなるような値に変更する。例えば、アルデヒド等の成分の濃度が高いほど反応熱が大きくなるので、アルデヒド等の成分の濃度が高くなるような噴射圧力に調整する。
続くステップS43では、ステップS41で設定された目標昇温値およびステップS42で設定された目標濃度となるように、供給装置30および改質装置40の作動を制御する。例えば、還元剤の噴射圧力、噴射量、温度調整部43による加熱度合い等を、目標昇温値および目標濃度となるように制御する。なお、ステップS43の処理を実行している時のプロセッサは、被毒回復制御を実行する場合には実行しない場合に比べて還元剤の反応熱が上昇するように制御する昇温用改質制御部に相当する。
続くステップS44では、排気温度を上昇させるように内燃機関10の作動を制御する。例えば、燃焼室への燃料噴射時期を遅らせることで、燃料の着火時期および燃焼期間を遅らせて、排気温度を上昇させる。このようにエンジン制御して排気温度を上昇させている時の制御装置は、還元触媒22aを昇温させる昇温装置に相当する。
以上により、本実施形態によれば、濃度取得部80aにより取得された成分濃度に応じて、分子構造種毎の還元触媒22aへの被毒量を算出し、その算出結果に応じて、還元触媒22aを昇温させる際の最高温度となる目標昇温値を変更させる。これによれば、総被毒量が同じ場合であっても、成分毎の被毒量の違いに応じて目標昇温値を変更させるので、成分毎の被毒量に適した昇温を実行でき、昇温の過不足を低減できる。
さらに本実施形態では、直鎖パラフィン等の成分の被毒量(第1種被毒量)に対する、アロマ等の成分の被毒量(第2種被毒量)の割合が大きいほど、目標昇温値を高くする。つまり、被毒回復制御に係る上昇温度であって、還元触媒22aを昇温させる際の還元触媒温度Tbの最高温度を高くする。アロマ等の成分は脱離に要する温度が高いので、アロマ等の成分の被毒量の割合が大きいほど目標昇温値を高くする本実施形態によれば、昇温不足のおそれを低減できる。
さらに本実施形態では、アルデヒド等の成分の被毒量(第3種被毒量)の、第1種被毒量に対する割合が大きいほど、目標昇温値を低くする。アルデヒド等の成分は脱離に要する温度が低くて済むので、アルデヒド等の成分の被毒量の割合が大きいほど目標昇温値を低くする本実施形態によれば、昇温過剰によるエネルギ消費過剰のおそれを低減できる。
さらに本実施形態では、被毒回復制御部80cにより昇温装置を作動させて被毒回復制御を実行する場合には、被毒回復制御を実行しない場合に比べて還元剤の反応熱が上昇するように制御する昇温用改質制御部(ステップS43)を備える。これによれば、還元剤の反応熱を利用して排気温度を上昇させることで還元触媒温度Tbを上昇させるので、ステップS44によるエンジン制御で排気温度を上昇させることによる燃費悪化を抑制できる。しかも、反応熱が生じやすい成分の濃度を増大させることで反応熱を上昇させることもできるので、燃費悪化抑制を促進できる。
(第3実施形態)
本実施形態では、上記第2実施形態に係る図13の処理を、図14の処理に変更している。具体的には、図13のステップS41を図14のステップS41aに変更し、かつ、ステップS45、S46を追加している。図14のステップS41aでは、図11のステップS21で算出した成分毎の被毒量を取得し、取得した成分毎の被毒量に基づき、還元触媒温度Tbの目標温度である目標昇温値を設定する。さらに、成分毎の被毒量に基づき、被毒回復制御を継続する目標時間である目標昇温時間を設定する。
具体的には、成分毎の被毒量のうち、直鎖パラフィン等の成分の被毒量(第1種被毒量)に対するアロマ等の成分の被毒量(第2種被毒量)の割合が大きいほど、目標昇温時間を長くする。例えば、直鎖パラフィン等の成分の場合、他の成分に比べて脱離に要する温度が高いので、直鎖パラフィン等の成分の被毒量が多いほど、目標昇温時間を長く設定する。また、第1種被毒量に対するアルデヒド等の成分の被毒量(第3種被毒量)の割合が大きいほど、目標昇温時間を短くする。例えば、アルデヒド等の成分の場合、他の成分に比べて低い温度で脱離するので、アルデヒド等の成分の被毒量が多いほど、目標昇温時間を短く設定する。
続くステップS42、S43、S44では、図13と同様にして、各成分の目標濃度を昇温用の値に変更し、変更した目標濃度と目標昇温値に基づき供給装置30および改質装置40の作動を制御し、排気温度を上昇させるようにエンジン制御する。続くステップS45では、被毒回復制御を開始してから目標昇温時間が経過したか否かを判定する。経過していると肯定判定された場合には、続くステップS46にて被毒回復制御を停止させ、経過していないと否定判定された場合には、被毒回復制御を継続させる。
以上により、本実施形態によれば、濃度取得部80aにより取得された成分濃度に応じて、分子構造種毎の還元触媒22aへの被毒量を算出し、その算出結果に応じて、被毒回復制御により還元触媒22aを昇温させる目標昇温時間を変更させる。これによれば、総被毒量が同じ場合であっても、成分毎の被毒量の違いに応じて昇温時間を変更させるので、成分毎の被毒量に適した昇温継続時間にでき、昇温継続時間の過不足を低減できる。
さらに本実施形態では、直鎖パラフィン等の成分の被毒量(第1種被毒量)に対する、アロマ等の成分の被毒量(第2種被毒量)の割合が大きいほど、昇温時間を長くする。アロマ等の成分は十分に脱離させるのに要する時間が長いので、アロマ等の成分の被毒量の割合が大きいほど昇温時間を長くする本実施形態によれば、昇温不足のおそれを低減できる。
さらに本実施形態では、アルデヒド等の成分の被毒量(第3種被毒量)の、第1種被毒量に対する割合が大きいほど、昇温時間を短くする。アルデヒド等の成分は十分に脱離させるのに要する時間が短くて済むので、アルデヒド等の成分の被毒量の割合が大きいほど昇温時間を短くする本実施形態によれば、昇温過剰によるエネルギ消費過剰のおそれを低減できる。
(第4実施形態)
上記第1実施形態に係る改質装置40には改質触媒42aが用いられており、改質触媒42aで還元剤を部分酸化させることで改質させている。これに対し本実施形態では、図15に示すように、オゾンを生成して供給する装置が改質装置50として用いられている。具体的には、改質装置50は、エアポンプ51、オゾナイザ52、仕切り部材53、および流量調整部54を有する。
エアポンプ51は、電動でファンを回転させて空気(外気)をオゾナイザ52へ送風する。オゾナイザ52は、一対の電極間で放電させることで、電極間に送風された空気中の酸素がオゾンに変化する。したがって、電極への供給電力を制御することで、オゾン生成量を制御することができる。
仕切り部材53は、排気管10exの内部に配置され、排気通路を改質流路53aとバイパス通路53bとに仕切る。改質流路53aには還元剤が噴射される。また、オゾナイザ52で生成されたオゾンは、エアポンプ51により改質流路53aへ送風される。したがって、改質流路53aでは還元剤がオゾンと反応して部分酸化される。流量調整部54は、排気通路から改質流路53aへ流入する排気の流入量を調整する。例えば、改質流路53aの流入口の開度を調整する板ドアを流量調整部54として採用し、板ドアによる開度を調整することで排気流入量を制御する。
なお、エアポンプ51、オゾナイザ52および流量調整部54の作動は、ECU80により制御される。これにより、改質流路53aへの排気流入量およびオゾン供給量が制御される。また、改質流路53aには温度センサ85が配置されており、改質流路53aの温度(改質温度)が検出される。そして、上記第1実施形態に係る図2と同様の処理を本実施形態でも実行する。
以上により、オゾンで改質させる本実施形態の構成においても、上述した濃度取得部80a、被毒度合算出部80bおよび被毒回復制御部80cをECU80が備える。そのため、上記第1実施形態と同様にして、分子構造種毎の成分濃度の違いに応じたHC被毒量の違いを考慮した被毒回復制御を実現できる。
(他の実施形態)
以上、発明の好ましい実施形態について説明したが、発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、以下に例示するように種々変形して実施することが可能である。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
上記第1実施形態では、図1に示すように、改質装置40は排気管10exに取り付けられ、改質触媒42aは排気通路に配置されている。これに対し、図16に示すオゾン発生器のように、排気管10exの外に改質装置40を設け、エアポンプ51により新気または排気を供給することで動作するように配置してもよい。
上記第1実施形態では、濃度取得部80aにより取得された成分濃度に応じて被毒度合いを算出し、その算出した被毒度合いに基づき被毒回復制御を開始するタイミングを決定している。これに対し、被毒度合算出部80bを廃止し、被毒度合いを算出することなく成分濃度に応じて上記タイミングを決定してもよい。
上記第1実施形態では、還元触媒温度Tbが活性化温度以上である場合には、内燃機関10の燃焼状態に拘らず還元剤を常時供給してNOxを連続的に還元させるNOx浄化システムに、ECU80(浄化制御装置)を適用させている。これに対し、内燃機関10が理論空燃比よりもリーンな状態で燃焼させている時に、還元装置20がNOxを吸着し、リーン燃焼以外の時にNOxを還元させるNOx浄化システムに、浄化制御装置を適用させてもよい。また、上記第1実施形態では、排気通路へ添加する還元剤にHCを用いているが、尿素水を添加してアンモニアを還元剤として用いるNOx浄化システムに、浄化制御装置を適用させてもよい。
図5に示す実施形態では、還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3外である場合には被毒率をゼロに設定しているが、ゼロより大きい値に設定してもよい。但しその場合には、還元触媒温度Tbが所定範囲T1〜T3内である場合よりも低い被毒率に設定することを要する。
図14に示す実施形態では、目標昇温値および目標昇温時間の両方を、成分毎の被毒量に応じて設定しているが、目標昇温値および目標昇温時間のいずれか一方を、成分毎の被毒量に応じて設定してもよい。
図1に示す実施形態では、被毒回復制御を実行している時の供給装置30および改質装置40により、還元触媒22aを昇温させる昇温装置を提供している。これに対し、排ガス温度を上昇させるように内燃機関10の作動を制御(排気昇温制御)して、高温の排ガスを還元装置20へ流入させることで還元触媒22aを昇温させてもよい。この場合には、排気昇温制御を実行している時のECU80のプロセッサが、昇温装置を提供することとなる。
また、図1に示す温度調整部43を廃止したNOx浄化システムにおいて、改質触媒42aでの反応熱を増大させることにより排ガス温度を上昇させ、その高温排ガスを還元装置20へ流入させることで還元触媒22aを昇温させてもよい。この場合には、改質装置40が昇温装置を提供することとなる。また、還元触媒22aを昇温させる、上述した各種の手法を任意に組み合わせて、昇温装置を提供してもよい。例えば、改質触媒42aでの反応熱を増大させて還元触媒22aを昇温させる手法や、内燃機関10の排気昇温制御により排ガス温度を上昇させて還元触媒22aを昇温させる手法が具体例として挙げられる。上記反応熱を増大させる手法の具体例として、温度調整部43により加熱する手法や、HC量を多くする手法や、反応熱が高くなりやすいアルデヒド等の濃度を高くする手法等が挙げられる。アルデヒド等の濃度を高くする手法の具体例として、反応熱が高くなりやすい噴射圧力で還元剤を噴射する手法や、改質装置50によるオゾン供給量を増大する手法等が挙げられる。
上記各実施形態では、NOxセンサ81、84を用いてNOx浄化率を算出している。これに対し、内燃機関10の運転状態、供給装置30による還元剤供給状態、および改質装置40による改質状態に基づき、NOx浄化率を推定してもよい。上記各実施形態では、改質温度センサ83を用いて改質触媒温度Taを検出し、還元温度センサ86を用いて還元触媒温度Tbを検出している。これに対し、内燃機関10の運転状態や温度調整部43の作動状態等に基づき、改質触媒温度Taや還元触媒温度Tbを推定してもよい。
上記各実施形態では、内燃機関10の運転期間中は常時、図2の処理を実行している。これに対し、運転期間中であっても、還元触媒22aの温度が活性化温度以上である等の所定条件を満たしていなければ、図2の処理を実行停止させてもよい。
上記各実施形態では、還元剤噴射弁31から還元剤を供給している。これに対し、還元剤噴射弁31を廃止して、内燃機関10で未燃HCを発生させることで、排気中に含まれるHCを還元剤として用いるようにしてもよい。この場合、内燃機関10の燃焼を制御する装置が、炭化水素化合物(還元剤)を還元装置20へ供給する供給装置に相当する。
図1に示す実施形態では、コモンレール12から還元剤噴射弁31へ燃料を供給している。これに対し、コモンレール12の上流側部分から還元剤噴射弁31へ燃料を供給させてもよいし、燃料ポンプ11とは別に設けられたポンプで還元剤噴射弁31へ燃料を供給させてもよい。
ECU80(制御装置)が提供する手段および/または機能は、実体的な記憶媒体に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。