(第1実施形態)
図1に示す燃焼システムは、以下に詳述する内燃機関10、過給機11、微粒子捕集装置(DPF14)、DPF再生装置(再生用DOC14a)、NOx浄化装置15、還元剤浄化装置(浄化用DOC16)および還元剤添加装置を備える。燃焼システムは車両に搭載されたものであり、当該車両は、内燃機関10の出力を駆動源として走行する。内燃機関10は、圧縮自着火式のディーゼルエンジンであり、燃焼に用いる燃料には、炭化水素化合物である軽油を用いている。内燃機関10は、基本的にはリーン状態で燃焼させるように作動する。つまり、燃焼室に噴射された燃料と燃焼室に吸入される空気との比率である空燃比が、空気過剰に設定された状態で燃焼(リーン燃焼)させている。
過給機11は、タービン11a、回転軸11bおよびコンプレッサ11cを備える。タービン11aは、内燃機関10の排気通路10exに配置され、排気の運動エネルギにより回転する。回転軸11bは、タービン11aおよびコンプレッサ11cの各インペラを結合することで、タービン11aの回転力をコンプレッサ11cに伝達する。コンプレッサ11cは、内燃機関10の吸気通路10inに配置され、吸気を圧縮して内燃機関10へ過給する。
吸気通路10inのうちコンプレッサ11cの下流側には、コンプレッサ11cで圧縮された吸気を冷却する冷却器12が配置されている。冷却器12により冷却された圧縮吸気は、スロットルバルブ13により流量調整された後、吸気マニホールドにより内燃機関10の複数の燃焼室へ分配される。
排気通路10exのうちタービン11aの下流側には、再生用DOC14a(Diesel Oxidation Catalyst)、DPF14(Diesel Particulate Filter)、NOx浄化装置15、浄化用DOC16が順に配置されている。DPF14は、排気に含まれている微粒子を捕集する。再生用DOC14aは、排気中の未燃燃料を酸化させて燃焼させる触媒を有する。この燃焼により、DPF14で捕集された微粒子を燃焼させて、DPF14を再生させて捕集能力を維持させる。なお、再生用DOC14aへの未燃燃料供給による燃焼は、常時実施されるものではなく、再生が必要な時期に一時的に実施される。
排気通路10exのうちDPF14の下流側かつNOx浄化装置15の上流側には、還元剤添加装置の供給管26が接続されている。この供給管26から排気通路10exへ、還元剤添加装置により生成された改質燃料が還元剤として添加される。改質燃料とは、還元剤として用いる炭化水素化合物(燃料)を部分的に酸化して、アルデヒド等の部分酸化炭化水素に改質したものであり、図3を用いて後に詳述する。
NOx浄化装置15は、還元触媒を担持するハニカム状の担体15bと、担体15bを内部に収容するハウジング15aとを備える。NOx浄化装置15は、排気中のNOxを還元触媒上で改質燃料と反応させてN2に還元することで、排気に含まれているNOxを浄化する。なお、排気中にはNOxの他にO2(酸素)も含まれているが、改質燃料はO2存在下においてNOxと選択的に反応する。
還元触媒には、NOxを吸着する機能を有したものが用いられている。詳細には、還元反応が可能となる活性化温度よりも触媒温度が低い場合に、還元触媒は排気中のNOxを吸着する機能を発揮する。例えば、担体15bに担持された銀アルミナによる還元触媒により、NOx吸着機能を有したNOx浄化装置15が提供される。詳細には、担体15bにアルミナをコーティングし、そのアルミナに還元触媒としての銀を担持させた構造である。
吸着されていたNOxは、触媒温度が活性化温度以上の場合には、還元触媒から脱離する。そして、脱離した改質燃料により還元されて浄化される。なお、低温時に吸着されたNOxは、還元触媒が温度上昇して脱離開始温度Tb(図8参照)に達すると、還元触媒から脱離するようになる。この脱離開始温度Tb(例えば100〜120℃)は活性化温度(例えば200〜250℃)より低い。
浄化用DOC16は、酸化触媒を担持する担体をハウジング内に収容して構成されている。浄化用DOC16は、還元触媒上にてNOx還元に用いられずにNOx浄化装置15から流出した還元剤を、酸化触媒上で酸化する。これにより、排気通路10exの出口から還元剤が大気に放出されることを防止する。なお、酸化触媒の活性化温度は、還元触媒の活性化温度よりも低い。
次に、改質燃料を生成して供給管26から排気通路10exへ添加する還元剤添加装置について説明する。還元剤添加装置は、以下に詳述する放電リアクタ20、エアポンプ20p、空気管23、反応容器25、ヒータ30および噴射弁40等を備える。特に、放電リアクタ20およびヒータ30は、還元剤を部分的に酸化させて改質する「改質手段」を提供する。また、改質手段に含まれる放電リアクタ20は、オゾンを生成する「オゾン生成装置」を提供し、改質手段に含まれるヒータ30は、還元剤を加熱する「加熱手段」を提供する。
放電リアクタ20は、内部に流通路22aを形成するハウジング22を備え、流通路22aには複数の電極21が配置されている。これらの電極21は、互いに平行に対向するように配置された平板形状であり、高電圧が印加される電極と接地電圧の電極とが交互に配置されている。電極21への電圧印加は、電子制御装置(ECU80)が備えるマイクロコンピュータ(マイコン81)により制御される。
放電リアクタ20のハウジング22には、エアポンプ20pにより送風された空気が流入する。エアポンプ20pは電動モータにより駆動され、その電動モータはマイコン81により制御される。エアポンプ20pにより送風された空気は、ハウジング22内の流通路22aに流入し、電極21間の通路である電極間通路21aを流通する。
放電リアクタ20の下流側部分には、空気通路23bを内部に形成する空気管23が接続され、電極間通路21aを流通した空気は空気通路23bを流通する。空気管23の下流側部分には供給管26が接続されている。空気管23には、逆止弁24が取り付けられている。逆止弁24は、エアポンプ20pを駆動させるとスプリング(図示せず)の弾性力に抗して開弁作動し、エアポンプ20pを停止させている時には閉弁作動して、供給管26の側から放電リアクタ20の側へ改質燃料が逆流することを防止する。
空気管23のうち逆止弁24の下流側部分には、内部に気化室25aを形成する反応容器25が接続されている。気化室25aは、空気通路23bから分岐して連通する袋小路の形状であり、空気管23に形成された流入口23cを通じて空気通路23bと連通する。
反応容器25には、ヒータ30および噴射弁40が取り付けられている。ヒータ30は、通電により発熱する発熱部31を有し、発熱部31への通電はマイコン81により制御される。具体的には、発熱部31への電力供給量をマイコン81がデューティ制御することにより、発熱量が制御される。発熱部31は気化室25aに配置され、噴射弁40から気化室25aへ噴射された燃料を加熱する。気化室25aの温度は温度センサ27により検出される。温度センサ27は、検出した温度の情報(検出温度)をECU80へ出力する。
噴射弁40は、噴孔が形成されたボデー、電気アクチュエータおよび弁体を有する。電気アクチュエータを通電オンさせると、弁体が開弁作動して噴孔から気化室25aへ燃料が噴射され、通電オフさせると弁体が閉弁作動して燃料噴射が停止される。マイコン81は、電気アクチュエータへの通電を制御することで、気化室25aへの単位時間当たりの燃料噴射量を制御する。燃料タンク70t内の液体燃料は、ポンプ70pにより噴射弁40へ供給される。燃料タンク70t内の燃料は、先述した燃焼用の燃料としても用いられており、内燃機関10の燃焼に用いる燃料と、還元剤として用いる燃料は共用される。
噴射弁40から気化室25aへ噴射された燃料は、発熱部31に衝突し、加熱されて気化する。気化した燃料は、空気通路23bに流入して空気と混合される。その結果、空気中の酸素により気体燃料が部分的に酸化され、アルデヒド等の部分酸化炭化水素に改質される。このように改質された気体燃料(改質燃料)は、供給管26を通じて排気通路10exに流入する。
さて、放電リアクタ20への通電を実施すると、電極21から放出された電子が、電極間通路21aの空気中に含まれる酸素分子に衝突する。すると、酸素分子からオゾンが生成される。つまり、放電リアクタ20は、放電により酸素分子をプラズマ状態にして、活性酸素としてのオゾンを生成する。したがって、放電リアクタ20への通電時には、空気通路23bを流通する空気にオゾンが含まれる。
空気通路23bまたは気化室25aでは、空気中の酸素により気体燃料が部分的に酸化される冷炎反応が生じている。このように部分的に酸化された燃料(改質燃料)の具体例として、燃料(炭化水素化合物)の一部がアルデヒド基(CHO)に酸化された状態の部分酸化物(例えばアルデヒド)が挙げられる。
ここで、冷炎反応について図2および図3を用いて詳述する。
図2は、燃料(ヘキサデカン)をヒータ30に噴き付けて気化させ、気化した燃料がヒータ30近傍に滞留して改質される現象を模擬したシミュレーション結果である。具体的には、気体燃料(ヘキサデカン)を430℃に暴露した場合における、暴露開始からの経過時間に対する各種物理量の変化を示す。すなわち、図中の(a)は雰囲気温度の変化を示す。(b)は、燃料(ヘキサデカン)のモル濃度の変化を示す。(c)は、酸化で消費された酸素分子、酸化で生成された水分子および二酸化炭素分子について、各々のモル濃度の変化を示す。(d)は、冷炎反応により生成された改質燃料であるアセトアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドのモル濃度の変化を示す。燃料噴射開始時点での初期条件は、1気圧、ヘキサデカン濃度2200ppm、酸素濃度20%、二酸化炭素濃度9%、水濃度2%である。
図2に示されるように、燃料を噴射すると直ぐ、雰囲気温度が上昇するとともに燃料のモル濃度が減少し、かつ、改質燃料のモル濃度が増加している。この現象は、燃料が酸素に酸化されて発熱していることと、燃料から改質燃料が生成されていることを意味する。つまり、冷炎反応が生じていることを意味する。但し、このような温度上昇や各種モル濃度の変化は一時的なものであり、燃料噴射開始から4秒ほどの期間は、温度上昇やモル濃度の変化は現れない。
そして、約4秒経過した時点で、雰囲気温度がさらに上昇するとともに改質燃料のモル濃度が減少し、かつ、二酸化炭素および水の生成量と、酸素の消費量が増加している。この現象は、改質燃料が酸素に酸化されて発熱していることと、改質燃料が完全燃焼して二酸化炭素および水が生成されていることを意味する。つまり、熱炎反応が生じていることを意味する。なお、冷炎反応による温度上昇量は、熱炎反応による温度上昇量よりも小さい。また、冷炎反応による酸素消費量は、熱炎反応による酸素消費量よりも少ない。
2段階で酸化反応が生じる場合には、冷炎反応が為されてから熱炎反応が開始されるまでの期間に、改質燃料が中間生成物として現れる。中間生成物には、アルデヒドやケトン等、様々な炭化水素化合物が具体例として挙げられる。図3では、アルデヒドが生成される主要な反応経路の一例を示す。
先ず、図中の(1)に示すように、炭化水素(軽油)が酸素分子と反応して炭化水素ペルオキシラジカルが生成される。この炭化水素ペルオキシラジカルは、アルデヒドと炭化水素ラジカルに分解される((2)参照)。この炭化水素ラジカルと酸素分子とが反応して別の炭化水素ペルオキシラジカルが生成される((3)参照)。この炭化水素ペルオキシラジカルは、アルデヒドと炭化水素ラジカルに分解される((4)参照)。この炭化水素ラジカルと酸素分子とが反応して別の炭化水素ペルオキシラジカルが生成される((5)参照)。このように、炭素数を減らしながら繰り返し炭化水素ペルオキシラジカルが生成され、その生成の都度、アルデヒドが生成されていく。なお、熱炎反応では、燃料が完全燃焼して二酸化炭素と水が生成され、中間生成物は現れない。すなわち、冷炎反応により生成された中間生成物は、酸化されて二酸化炭素と水になる。
図2に示すシミュレーションでは、暴露温度を430℃としていた。これに対し、さらに本発明者らは、暴露温度を異ならせてシミュレーションによる解析を実施した。その結果、暴露温度が530℃の場合には冷炎反応で留まる期間が殆ど無く、1段で酸化反応が完了する。暴露温度を330℃にすると、430℃にした場合に比べて冷炎反応の開始時期が遅くなる。暴露温度を230℃以下にすると、冷炎反応および熱炎反応のいずれもが生じなくなり、酸化反応が生じない。
図2に示すシミュレーションでは、噴射した燃料と供給される空気の比率である当量比を0.23としていた。これに対し、さらに本発明者らは、当量比を異ならせてシミュレーションによる解析を実施した。なお、当量比を厳密に定義すると、「実際の混合気が含む燃料の重量」を、「完全燃焼できる燃料の重量」で除算した値である。当量比を1.0にすると、冷炎反応で留まる期間が殆ど無く、1段で酸化反応が完了する。また、当量比を0.37にすると、当量比を0.23にした場合に比べて、冷炎反応の開始時期が早くなる。また、冷炎反応速度が速くなり、冷炎反応期間が短くなる。また、冷炎反応が終了した時点での雰囲気温度が高くなる。
図4は、これらの解析結果をまとめて表したものである。つまり暴露温度(雰囲気温度)および当量比と、冷炎反応発生有無との関係を表しており、図4の横軸はヒータ温度(雰囲気温度)、縦軸は当量比を示す。図中のドットを付した領域は、2段酸化反応が生じる領域を表す。図示されるように、雰囲気温度が下限値よりも低い領域では、酸化反応が生じない無反応領域となる。雰囲気温度が下限値よりも高い場合であっても、当量比が1.0以上の領域であれば、1段で酸化反応が完了する1段酸化反応領域となる。
また、2段酸化反応領域と1段酸化反応領域との境界線は、雰囲気温度および当量比に応じて変化する。つまり、雰囲気温度が所定の温度範囲であり、かつ、当量比が所定の当量比範囲である場合に、2段酸化反応が生じる。これらの温度範囲および当量比範囲は、図4中のドットを付した領域の範囲に相当する。所定の温度範囲のうち最適温度(例えば370℃)に雰囲気温度を調整すると、上記境界線における当量比が最大値(例えば1.0)となる。したがって、冷炎反応を早期に生じさせるには、ヒータ温度を最適温度に調整し、当量比を1.0にすればよい。但し、当量比が1.0を超えると冷炎反応が生じなくなるので、1.0よりも余裕分だけ小さい値に当量比を調整することが望ましい。
図2に示すシミュレーションでは、空気中のオゾン濃度をゼロにしている。これに対し、さらに本発明者らは、空気中のオゾン濃度を異ならせたシミュレーションによる解析を実施した。このシミュレーションでの初期条件は、1気圧、ヘキサデカン濃度2200ppm、雰囲気温度330℃である。その結果、オゾン濃度が大きいほど、冷炎反応の開始時期が早くなることが確認された。このようなオゾンによる現象は以下の理由により生じる。すなわち、図3中の(1)(3)(5)では、炭化水素ラジカルと酸素分子とが反応しているが、空気中にオゾンが含まれている場合にはこの反応が促進され、アルデヒドが短時間で生成されることとなる。
ECU80が備えるマイコン81は、プログラムを記憶する記憶装置と、記憶されたプログラムにしたがって演算処理を実行する中央演算処理装置と、を備える。ECU80は、各種センサの検出値に基づき内燃機関10の作動を制御する。上記各種センサの具体例として、アクセルペダルセンサ91、機関回転速度センサ92、スロットル開度センサ93、吸気圧センサ94、吸気量センサ95、排気温度センサ96等が挙げられる。
アクセルペダルセンサ91は、ユーザのアクセルペダル踏込量を検出する。機関回転速度センサ92は、内燃機関10の出力軸10aの回転速度(エンジン回転数)を検出する。スロットル開度センサ93はスロットルバルブ13の開度を検出する。吸気圧センサ94は、吸気通路10inのうちスロットルバルブ13の下流側の圧力を検出する。吸気量センサ95は吸気の質量流量を検出する。
概略、ECU80は、出力軸10aの回転速度および内燃機関10の負荷に応じて、図示しない燃料噴射弁から噴射される燃焼用燃料の噴射量および噴射時期を制御する。さらにECU80は、排気温度センサ96により検出された排気温度に基づき、還元剤添加装置の作動を制御する。すなわち、マイコン81は、図5に示す手順のプログラムを所定周期で繰り返し実行することで、改質燃料の生成とオゾンの生成を切り替えるように制御する。上記プログラムは、イグニッションスイッチがオン操作されたことをトリガとして始動し、イグニッションスイッチがオンになっている期間中は常時実行される。
先ず、図5のステップS10において、内燃機関10が運転中であるか否かを判定する。運転中でないと判定されれば、ステップS16において還元剤添加装置の作動を停止させる。具体的には、放電リアクタ20、エアポンプ20p、噴射弁40、およびヒータ30への通電が為されていた場合、それらの通電を停止させる。また、NOx触媒温度が脱離開始温度Tb未満であり、かつ、NOx吸着量が飽和状態になっている場合や、NOx触媒温度が還元可能範囲を超えて高温になっている場合にも、ステップS16により装置の作動を停止させる。
一方、内燃機関10が運転中であると判定されれば、以降のステップS11〜S15において、NOx浄化装置15が有する還元触媒の温度(NOx触媒温度)に応じて還元剤添加装置を以下の如く作動させる。なお、NOx触媒温度は、排気温度センサ96により検出された排気温度から推定される。
図5のステップS11では、NOx触媒温度が活性化温度より低温の低温状態、およびNOx触媒温度が活性化温度以上の高温状態のいずれであるかを判定する。この判定に用いる活性化温度は、厳密には、NOx触媒が触媒機能を発揮して浄化が可能になり始める温度よりも所定温度(例えば1〜10℃)だけ高い温度(例えば250℃)に設定されている。
ステップS11にて高温状態であると判定された場合には、続くステップS12により図6の高温浄化制御を実行することで、還元剤添加装置による作動モードを通常浄化モードに切り替える。ステップS11にて低温状態であると判定された場合には、続くステップS13において脱離過多状態であるか否かを判定する。脱離過多状態とは、還元触媒に吸着されていたNOxが脱離する量(NOx脱離量)が所定量(図8参照)以上になっている状態のことであり、図8を用いて後に詳述する。
ステップS13にて脱離過多状態でないと否定判定されている場合には、続くステップS14により図7の吸着制御を実行することで、還元剤添加装置による作動モードを吸着モードに切り替える。一方、ステップS13にて脱離過多状態であると肯定判定されている場合には、続くステップS15により図13の低温浄化制御を実行することで、還元剤添加装置による作動モードを脱離時浄化モードに切り替える。
次に、図6に示す高温浄化制御の処理手順を説明する。
先ず、図6のステップS20において、温度センサ27による検出値、つまり反応容器25内の温度(反応室温度Th)を取得する。続くステップS21では、取得した反応室温度Thが、予め設定しておいた目標温度Ttrgと一致するよう、ヒータ30をフィードバック制御する。例えば、発熱部31への電力供給量を、温度センサ27による検出値と目標温度Ttrgとの差分に応じてデューティ制御する。或いは、反応室温度Thが目標温度Ttrgよりも所定以上高くなった場合に発熱部31への電力供給量を停止させるといったオンオフ制御を実行する。目標温度Ttrgは、図4に示す2段酸化反応領域のうち、当量比が最大となる雰囲気温度(例えば370℃)に設定されている。
続くステップS22では、NOx浄化装置15へ流入したNOxの全てを還元するにあたり、過不足なくNOx浄化装置15へ供給するための還元剤添加量を、目標燃料量Ftrgとして設定する。上記目標燃料量Ftrgとは、単位時間当たりにNOx浄化装置15へ供給する燃料の質量である。
具体的には、以下に説明するNOx流入量およびNOx触媒温度に基づき、目標燃料量Ftrgを設定する。上記NOx流入量とは、単位時間当たりにNOx浄化装置15へ流入するNOxの質量である。例えば、内燃機関10の運転状態に基づき、NOx流入量を推定できる。上記NOx触媒温度とは、NOx浄化装置15が有する還元触媒の温度のことである。例えば、排気温度センサ96により検出された温度に基づき、NOx触媒温度を推定する。
そして、NOx流入量が多いほど、目標燃料量Ftrgを増大させる。また、NOx触媒温度に応じて還元触媒上でNOxが還元される量(還元力)が異なってくるので、NOx触媒温度による還元力の違いに応じて目標燃料量Ftrgを設定する。
続くステップS23では、ステップS22で設定した目標燃料量Ftrgに基づき、噴射弁40の作動を制御して燃料噴射を実施する。具体的には、目標燃料量Ftrgが多いほど噴射弁40の開弁時間を長くする。或いは、今回の噴射終了から次回の噴射開始までのインターバルを短くする。
続くステップS24では、反応室温度Thに基づき、冷炎反応を生じさせるように目標当量比φtrgを算出する。具体的には、2段酸化反応領域における当量比の最大値であって、雰囲気温度に対応する当量比の最大値、またはその最大値から所定の余裕分だけ減算した値を、目標当量比φtrgとしてマップ化してマイコン81に記憶させておく。検出された反応室温度Thに対応する目標当量比φtrgを、マップを参照して算出する。上述の如く余裕分を見込んで目標当量比φtrgを設定することにより、実際の当量比が目標当量比φtrgより大きくなったとしても、上記当量比の最大値を超えるおそれを低減でき、冷炎反応にとどまらず熱炎反応にまで至るおそれを低減できる。
続くステップS25では、ステップS24で設定した目標当量比φtrg、およびステップS22で設定した目標燃料量Ftrgに基づき、目標空気量Atrgを算出する。具体的には、φtrg=Ftrg/Atrgとなるように目標空気量Atrgを算出する。続くステップS26では、ステップS25で算出した目標空気量Atrgに基づき、エアポンプ20pの作動を制御する。具体的には、目標空気量Atrgが大きいほど、エアポンプ20pへの通電デューティ比を増大させる。
上述のごとく目標燃料量Ftrgに応じて目標空気量Atrgを設定するとともに目標温度Ttrgを設定して、エアポンプ20pおよびヒータ30を制御することにより、反応室温度Thおよび当量比は、2段酸化反応領域に調整される。よって、冷炎反応を生じさせて先述した改質燃料が生成される。反応室温度Thが調整される温度範囲の下限は、1段酸化領域および2段酸化領域と無反応領域との境界線となる260℃である。上記温度範囲の上限は、1段酸化領域と2段酸化領域の境界線のうちの最大温度である。当量比が調整される範囲の上限は、1段酸化領域と2段酸化領域の境界線のうちの最大値であって、370℃に対応する当量比である。
続くステップS27では、反応容器25内での燃料の濃度に応じて、放電リアクタ20への供給電力を制御する。詳細には、目標燃料量Ftrgに基づき目標オゾン量Otrgを算出する。具体的には、気化室25aにおけるオゾン濃度の燃料濃度に対する比率が所定値(例えば0.2)となるように、目標オゾン量Otrgを算出する。例えば、所定時間(例えば0.02秒)内に冷炎反応を完了させるよう、上記比率を設定する。また、還元触媒が低温であるほど目標オゾン量Otrgを増加させるように設定する。
そして、目標空気量Atrgおよび目標オゾン量Otrgに基づき、放電リアクタ20への目標通電量Ptrgを算出する。具体的には、目標空気量Atrgが多いほど、電極間通路21aでの空気の滞留時間が短くなるので、目標通電量Ptrgを大きくする。また、目標オゾン量Otrgが多いほど、目標通電量Ptrgを大きくする。次に、目標通電量Ptrgに基づき、放電リアクタ20への通電量を制御する。具体的には、目標通電量Ptrgが大きいほど、放電リアクタ20への通電デューティ比を増大させる。或いは、今回の通電終了から次回の通電開始までのインターバルを短くする。
このようなステップS27の処理を実行することにより、オゾンが生成され、そのオゾンが反応容器25内に供給されるので、冷炎反応の開始時期の早期化と冷炎反応時間の短縮化が図られる。よって、反応容器25内での燃料の滞留時間が短くなるように反応容器25を小型化しても、上記滞留時間内に冷炎反応が完了するようにできる。よって、反応容器25の小型化を図ることができる。
このように、図6の高温浄化制御(通常浄化モード)によれば、放電リアクタ20で生成されたオゾン、空気中の酸素、およびヒータ30により気化された燃料が混合され、オゾンが存在する環境下で燃料が部分酸化される。
次に、図7に示す吸着制御の処理手順を説明する。
先ず、図7のステップS30において、ヒータ30への通電を停止させて気化室25a内の加熱を停止させ、続くステップS31にて、噴射弁40への通電を停止させて燃料噴射を停止させる。続くステップS32では、予め設定されている電力量でエアポンプ20pを作動させる、続くステップS33では、予め設定されている電力量で放電リアクタ20の電極21へ通電して放電を生じさせる。
このように、図7の吸着制御(吸着モード)によれば、放電リアクタ20でオゾンが生成され、生成されたオゾンは、空気管23および供給管26を通じて排気通路10exへ添加される。ここで、ヒータ30への通電を実施していると、オゾンは加熱されて崩壊する。また、燃料噴射を実施していると、オゾンは燃料と反応してしまう。これらの点を鑑み、吸着モードではヒータ30による加熱を停止させ、かつ、燃料噴射を停止させているので、オゾンが燃料と反応することや加熱崩壊を回避できる。よって、生成したオゾンがそのまま排気通路10exへ添加されることとなる。
次に、図5のステップS15による低温浄化制御の技術的意義について、図8および図9を用いて説明する。
NOx浄化装置15に流入するNOxは、活性化温度未満の低温時には還元触媒に吸着される。但し、活性化温度未満であっても、脱離開始温度Tb以上であれば、吸着されていたNOxの一部は還元触媒から脱離する。図8は、NOx脱離量と触媒温度との関係を試験した結果を示す。
この試験の概要を以下に説明すると、先ず、触媒温度を100℃以下の状態にしてNOx浄化装置15へNOxを流入させ、還元触媒にNOxを吸着させる。NOx吸着量が所定量に達するまでNOxの流入を継続させる。その後、還元触媒を加熱して、触媒温度を徐々に上昇させていくとともに、NOx浄化装置15から流出するNOxの量をNOxセンサで計測する。このように計測されるNOx流出量は、NOx脱離量であるとみなすことができる。また、NOx脱離量は、還元触媒温度に応じて異なることは先述した通りであるが、硫黄被毒の量、つまり還元触媒に吸着されて残存している硫黄の量(硫黄吸着量)に応じても異なってくる。そこで図8の試験では、硫黄被毒の有無の違いによるNOx脱離量についても計測した。すなわち、図8中の点線は硫黄被毒していない還元触媒による試験結果、図8中の実線は硫黄被毒した還元触媒による試験結果を示す。
この試験の結果を以下に説明すると、図8に示すように、硫黄被毒の有無に拘らず、触媒温度が上昇して100℃に達した時点でNOxの脱離が開始する。その後、温度上昇に伴い脱離量は上昇し、第1ピークに達した後、脱離量は下降に転じる。さらに温度上昇させると脱離量は再び上昇しはじめ、第2ピークに達した後、脱離量は下降してゼロになる。要するに、脱離開始温度Tbから、第2ピークへ向けて脱離量上昇を開始するまでの第1脱離温度領域と、その後の第2ピークを含む第2脱離温度領域の2段階で脱離する。
その理由について、本発明者らは次のように考察する。すなわち、還元触媒に吸着しているNOxは、厳密には、NOx浄化装置15のうちアルミナに担持された銀の部分と、アルミナの部分の両方に吸着している。そして、銀の部分に吸着されているNOxが第1脱離温度領域で脱離し、アルミナに吸着されているNOxが第2脱離温度領域で脱離する。
そして、還元触媒が硫黄被毒している場合には、硫黄被毒していない場合に比べて第1ピークの出現時期が早くなる。その理由について、本発明者らは次のように考察する。すなわち、銀に吸着しているNOxに対する吸着力は、硫黄被毒すると弱くなり、NOxが脱離しやすくなる。よって、脱離開始温度Tbからの温度上昇に伴うNOx脱離量は、硫黄被毒している方が急激に上昇し、ひいては第1ピーク出現時期が早くなる。つまり、脱離量が所定量に達する時期も早くなり、脱離量が所定量になる時の触媒温度(脱離過多温度Ta)は、硫黄被毒している方が低くなる。なお、第2ピークの出現時期については、硫黄被毒している場合であっても殆ど変わらない。
さて、図8に係る試験では、還元剤を添加することなくNOx脱離量を計測していた。これに対し図9に係る試験では、還元剤を添加しつつ図8の試験と同様の条件でNOx脱離量を計測している。図9中の実線は改質した還元剤を添加した場合の試験結果、図9中の点線は改質していない還元剤(非改質還元剤)を添加した場合の試験結果を示す。したがって、図8の試験で計測されるNOx流出量はNOx脱離量であるのに対し、図9の試験で計測されるNOx流出量は、還元剤で還元されずにNOx浄化装置15から排出されたNOx量、つまり未浄化NOx排出量とみなすことができる。なお、図9中の一点鎖線は、還元剤を添加していない場合の試験結果であり、図8中の実線と同一である。
この試験の結果を以下に説明すると、図9に示すように、未浄化NOx排出量は、非改質還元剤を添加しても、第1脱離温度領域については還元剤を添加していない場合と殆ど同じである。但し、触媒温度が十分に上昇した状態、つまり第2脱離温度領域では、非改質還元剤の添加により未浄化NOx排出量は低減される。一方、改質還元剤を添加した場合には、未浄化NOx排出量は第1脱離温度領域で低減され、第2脱離温度領域でも低減される。
その理由について、本発明者らは次のように考察する。例えば、図10中の(a)に示すように、銀触媒にNO2が吸着された状態、かつ、SO2を吸着した状態(S被毒した状態)において、改質還元剤としてアルデヒド(R−CHO)を排気通路10exへ添加した状況について説明する。
先ず、排気通路10exへ添加されたアルデヒドは銀触媒に吸着される。そして、内燃機関10のリーン燃焼時には、銀触媒に接触する排気中には酸素分子が含まれている。この酸素分子により、銀触媒に吸着されたアルデヒドは酸化され、(b)に示す如くアセテート(R−COO)に変化する。
このように銀触媒上で生成されたアセテートは、銀触媒に吸着されているNO2と結合しやすい物質である。そのため、銀触媒に吸着された状態のアセテートは、(c)に示す如く、銀触媒に吸着されているNO2と結合して、イソシアネート(R−NCO)に変化する。その後、銀触媒に吸着されたイソシアネートは、(d)に示す如く排気中の酸素分子により酸化され、その結果、N2やH2O、CO2に分解されて銀触媒から脱離する。
さて、図示されるように銀触媒が硫黄被毒していると、銀触媒とNO2との吸着力が弱くなることは先述した通りである。すると、図10(c)の如くアセテートおよび銀触媒の両方に結合した状態のNO2は、銀触媒から脱離しやすい状態になり、それ故、図8の如く第1ピークの出現時期が早くなる。換言すれば、硫黄被毒している場合には、銀触媒と結合した状態のNO2は、銀触媒との結合が切れやすい状態になっている。そのため、図10(d)の如く、イソシアネートに変化して分解する反応が生じやすくなる。
要するに、「硫黄被毒によりNOxが銀触媒から脱離しやすくなっている状況では、リーン環境下で部分酸化物を還元触媒に流入させると、その部分酸化物によりNOxが還元されて浄化される」といった現象を本発明者らは見出した。なお、NOxが銀触媒から脱離しやすくなっている状況とは、換言すれば、NOxが高活性になっている状況である。
したがって、図5の処理において、例えば、触媒温度が脱離開始温度Tbよりも低温の場合には、ステップS14による吸着制御が実行され、還元触媒にNOxを吸着させることとなる。その後、触媒温度が上昇していくとNOx脱離量が増大することとなるが、硫黄被毒の度合いが大きい場合には、触媒温度が活性化温度に達する前にNOx脱離量が所定量以上になる。この場合、図5のステップS11で低温状態と判定され、かつ、ステップS13にて肯定判定されることとなる。その結果、ステップS15にて低温浄化制御が実行されることとなる。この低温浄化制御では、図13にて詳述するように、改質還元剤である部分酸化物を添加する。そのため、硫黄被毒した状態の還元触媒に吸着されていたNOxは、部分酸化物により還元されて浄化される。つまり、触媒温度が活性化温度にまで上昇していない低温状態であるにも拘らず、NOxが浄化されることとなる。
上記知見を鑑みて、ステップS13による判定は図11の如く実施される。すなわち、先ずステップS40において、還元触媒に吸着されているNOxの量(NOx吸着量)を推定する。具体的には、内燃機関10の運転状態に基づきNOx浄化装置15へのNOx流入量を推定し、そのNOx流入量の推移を取得するとともに、その時の還元触媒温度の推移を取得する。そして、取得したこれらの推移に基づき、NOx吸着量を推定する。
続くステップS41では、硫黄被毒量を推定する。具体的には、内燃機関10の運転状態に基づきNOx浄化装置15へのSOx流入量を推定し、そのSOx流入量の推移に基づき、SOx吸着量(硫黄被毒量)を推定する。
続くステップS42では、ステップS40、S41で推定したNOx吸着量および硫黄被毒量に基づき、図8を用いて先述した脱離過多温度Taを推定する。具体的には、NOx吸着量が多いほど、或いは硫黄被毒量が多いほど、脱離過多温度Taを低い温度に推定する。例えば、NOx吸着量および硫黄被毒量に対する脱離過多温度Taの値を試験等により予め設定しておき、その設定値を、図12に示すマップの如くNOx吸着量および硫黄被毒量と関連付けて記憶させておく。そして、推定したNOx吸着量および硫黄被毒量に基づき、図12のマップを参照して脱離過多温度Taの設定値を算出する。
続くステップS43では還元触媒の温度を取得する。具体的には、先述したように排気温度センサ96の検出値に基づき触媒温度を推定する。続くステップS44では、推定した触媒温度が脱離過多温度Ta以上であるか否かを判定する。これにより、吸着されていたNOxの脱離量が所定量以上になっている脱離過多状態であるか否かを判定することができる。
触媒温度が脱離過多温度Ta以上であると判定されれば、脱離過多状態であるとみなして、続くステップS45にて脱離過多フラグをオンに設定する。一方、触媒温度が脱離過多温度Ta未満であると判定されれば、脱離過多状態でないとみなして、続くステップS46にて脱離過多フラグをオフに設定する。図5のステップS13では、図11の処理で設定される脱離過多フラグに基づき、ステップS15による低温浄化制御とステップS14による吸着制御とに切り替える。
次に、図13に示す低温浄化制御の処理手順を説明する。
先ず、図13のステップS50、S51において、図6のステップS20、S21と同様にして、反応室温度Thを取得し、取得した反応室温度Thが目標温度Ttrgと一致するようにヒータ30を制御する。続くステップS52では、還元触媒に吸着していたNOxの脱離量(NOx脱離量)を推定する。具体的には、図11のステップS40、S41、S43で推定されたNOx吸着量、硫黄被毒量および触媒温度に基づき、NOx脱離量を推定する。
NOx脱離量は、図8の如く硫黄被毒量および触媒温度と相関が高い。また、NOx吸着量が多いほどNOx脱離量は多くなる。そのため、硫黄被毒量、NOx吸着量および触媒温度に対するNOx脱離量の値を試験等により予め取得しておく。この取得しておいた値を、マップ等の形態で、NOx吸着量、硫黄被毒量および触媒温度と関連付けて記憶させておく。そして、推定したNOx吸着量、硫黄被毒量および触媒温度に基づき、上記マップを参照してNOx脱離量の値を算出する。なお、ステップS52にてNOx脱離量を推定している時のマイコン81は、図1に示すNOx脱離量推定手段81aを提供する。
続くステップS53では、ステップS52で推定したNOx脱離量に基づき、目標燃料量Ftrgを設定する。具体的には、NOx脱離量が多いほど目標燃料量Ftrgを増大させるよう、NOx脱離量をパラメータとした演算式にNOx脱離量の推定値を代入して、目標燃料量Ftrgを設定する。或いはNOx脱離量に対する目標燃料量Ftrgの適合値を記憶したマップを参照して、推定したNOx脱離量に基づき目標燃料量Ftrgを設定する。
続くステップS54〜S58では、図6のステップS23〜S27と同様に制御する。すなわち、先ずステップS54では、ステップS53で設定した目標燃料量Ftrgに基づき、噴射弁40の作動を制御して燃料噴射を実施する。続くステップS55では、反応室温度Thに基づき、冷炎反応を生じさせるように目標当量比φtrgを算出する。続くステップS56では、ステップS55で設定した目標当量比φtrg、およびステップS53で設定した目標燃料量Ftrgに基づき、φtrg=Ftrg/Atrgとなるように目標空気量Atrgを算出する。続くステップS58では、気化室25aにおけるオゾン濃度の燃料濃度に対する比率が所定値(例えば0.2)となるように、反応容器25内での燃料の濃度に応じて放電リアクタ20への供給電力を制御する。
このように、図13の低温浄化制御(脱離時浄化モード)によれば、放電リアクタ20で生成されたオゾン、空気中の酸素、およびヒータ30により気化された燃料が混合され、オゾンが存在する環境下で燃料が部分酸化される。そして、このように改質された燃料がNOx浄化装置15へ供給されると、図10に示すように、脱離しようとするNOxが改質燃料により還元浄化される。また、生成されたオゾンの全てが燃料の改質に用いられる訳ではなく、オゾンの一部は改質燃料とともにNOx浄化装置15へ供給される。これにより、図10に示す反応が促進され、脱離時浄化モードにおけるNOx浄化率が向上される。
以上により、本実施形態によれば、図5のステップS12の処理を実行している時のマイコン81は、高温状態の場合に改質還元剤を添加させる高温浄化制御手段を提供する。ステップS13の処理を実行している時のマイコン81は、還元触媒温度が活性化温度未満になっている低温状態の場合に、還元触媒に吸着されていたNOxが脱離する量が所定量以上になっている脱離過多状態であるか否かを判定する判定手段を提供する。ステップS14の処理を実行している時のマイコン81は、低温状態かつ脱離過多状態でない場合に、還元剤の添加を停止させて還元触媒にNOxを吸着させる吸着制御手段を提供する。ステップS15の処理を実行している時のマイコン81は、低温状態かつ脱離過多状態である場合に、改質還元剤を添加させる低温浄化制御手段を提供する。
さて、図9を用いて先述した通り、還元触媒が活性化していない低温状態であっても、還元触媒からNOxが脱離しようとする程度に還元触媒温度が上昇していれば、改質された還元剤を添加すると、NOxが還元浄化される現象が生じる。この現象の存在に着目した本実施形態では、低温状態かつ脱離過多状態であれば改質還元剤を添加させる。そのため、従来では浄化が不可能と考えられていた低温状態時においても、NOxが浄化されるようになる。
さらに本実施形態では、高温浄化制御時に還元剤を改質して添加しており、その改質に用いる放電リアクタ20およびヒータ30(改質手段)を利用して、低温浄化制御時の還元剤の改質を実施する。そのため、低温浄化制御のための専用の改質手段を不要にでき、改質手段を有効に利用できる。
さらに本実施形態によれば、図11のステップS40の処理を実行している時のマイコン81は、還元触媒へのNOx吸着量を推定するNOx吸着量推定手段を提供する。ステップS41の処理を実行している時のマイコン81は、還元触媒への硫黄吸着量を推定する硫黄吸着量推定手段を提供する。ステップS43の処理を実行している時のマイコン81は、還元触媒の温度を取得する温度取得手段を提供する。そして、脱離過多状態であるか否かを判定する判定手段は、NOx吸着量推定手段により推定されたNOx吸着量、硫黄吸着量推定手段により推定された硫黄吸着量、および温度取得手段により取得された温度に基づき、脱離過多状態であるか否かを判定する。
ここで、NOx吸着量、硫黄吸着量および還元触媒温度と、NOx脱離量とは相関性が高いことは、先述した通りである。そのため、NOx吸着量および硫黄吸着量を推定し、これらの推定値および取得した還元触媒温度に基づき、脱離過多状態であるか否かを判定する本実施形態によれば、脱離過多状態であるか否かの判定を高精度で実現できる。
さらに本実施形態では、低温浄化制御手段は、還元触媒に吸着されていたNOxが脱離する量が多いほど、改質手段により改質された還元剤の添加量を増大させる。具体的には、図13のステップS53において、NOx脱離量に基づき目標燃料量Ftrgを設定して噴射弁40からの燃料噴射量を制御する。そのため、低温浄化制御時に添加する改質還元剤の過不足を低減できる。
さらに本実施形態では、還元触媒は少なくとも銀を含む物質である。具体的には、担体15bにコーティングされたアルミナ上に銀触媒が担持されている。ここで、例えば、銀触媒に替えて白金触媒を採用した場合、白金は銀に比べてNOxに対する吸着力が高いので、白金を採用した場合には銀の場合に比べて脱離開始温度Tbが高くなることが予想される。すると、低温浄化制御によるNOx浄化を実行できる最低温度が高くなることが懸念される。これに対し、銀を採用する本実施形態によれば、白金を採用した場合に比べて低温の状態でNOx浄化が可能になる。
さらに本実施形態では、改質手段は、還元剤を加熱するヒータ30(加熱手段)を有し、加熱手段により所定温度以上に加熱された還元剤を、空気中に含まれる酸素により部分的に酸化させて改質することを特徴とする。これによれば、燃料が部分酸化することを容易に実現でき、還元剤の改質を容易に実現できる。また、ヒータ30で燃料を加熱することにより、炭素数の少ない炭化水素化合物に燃料を分解させるクラッキングが生じるようになる。そして、クラッキングにより炭素数が少なくなった炭化水素は沸点が低くなるので、気化した燃料が液体に戻ることが抑制される。
さらに本実施形態では、改質手段は、オゾンを生成する放電リアクタ20(オゾン生成装置)を有し、オゾン生成装置により生成されたオゾンを、還元剤の酸化に用いる空気に含ませる。これによれば、図10の反応が促進され、低温状態かつ脱離過多状態における低温浄化制御によるNOx浄化を促進できる。
さらに本実施形態では、放電リアクタ20を備え、冷炎反応を生じさせる時には、放電リアクタ20により生成されたオゾンを供給する。そのため、冷炎反応の開始時期の早期化と、冷炎反応時間の短縮化を図ることができる。よって、反応容器25内での燃料の滞留時間が短くなるように反応容器25を小型化しても、上記滞留時間内に冷炎反応が完了するようにできる。よって、反応容器25の小型化を図ることができる。そして、このような改質に用いる放電リアクタ20を低温浄化制御に用いるので、低温浄化制御専用のハード構成を不要にできる。
さらに本実施形態では、低温状態ではあるが脱離過多状態ではない場合には、噴射弁40による燃料噴射を停止させつつ、放電リアクタ20により生成されたオゾンを空気通路23bへ供給させることで、排気通路10exへオゾンを添加する。これによれば、NOx浄化装置15の還元触媒が活性化していないにも拘わらず、還元剤としての改質燃料を添加することを防止できる。そして、オゾンの添加により、排気中のNOをNO2に酸化させてNOx浄化触媒に吸着させるので、NOx浄化装置15へのNOx吸着量を増大できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、NOx脱離量推定手段81aを備え、NOx吸着量、硫黄被毒量および触媒温度に基づきNOx脱離量を推定している。これに対し、本実施形態では、図14に示すNOxセンサ97を備え、NOxセンサ97によりNOx脱離量を検出する。
NOxセンサ97は、排気通路10exのうちNOx浄化装置15の下流側に設けられて、排気中のNOx濃度を検出する。これにより、NOx浄化装置15から流出する単位時間当たりのNOx量(NOx脱離量)をマイコン81は取得できる。要するに、本実施形態では、図13のステップS52の処理に替えて、NOxセンサ97の検出値からNOx脱離量を取得する処理を実行する。他の処理については、上記第1実施形態と同じである。
以上により、本実施形態によれば、図13のステップS52によるNOx脱離量推定処理(NOx脱離量推定手段81a)を廃止して、マイコン81の処理負荷軽減を図ることができる。また、ステップS52による推定に比べて、NOx脱離量を高精度で取得できる。よって、低温浄化制御で用いる燃料噴射量の過不足低減の効果を促進できる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態に係るECU80は、図5のステップS11、S13にて低温状態かつ脱離過多状態であると判定された場合に、ステップS15にて低温浄化制御を実行し、改質還元剤を添加している。これに対し本実施形態では、低温状態かつ脱離過多状態であることに加え、触媒温度が所定の下限温度以上であることを条件として、低温浄化制御を実行する。つまり、低温状態かつ脱離過多状態であっても、触媒温度が下限温度未満であれば、低温浄化制御を禁止する。
この制御は、図15に示す処理をECU80が実行することで実現される。図15の処理では、ステップS13Aによる判定処理を図5の処理に追加している。この判定処理は、ステップS11にて低温状態と判定され、かつ、ステップS13にて脱離過多状態であると判定された場合に実行される。ステップS13Aでは、触媒温度が予め設定しておいた下限温度以上であるか否かを判定する。本実施形態では下限温度が150℃に設定されている。
触媒温度が150℃以上であると判定された場合には、ステップS15にて低温浄化制御を実行する。150℃未満であると判定された場合には、ステップS14にて吸着制御を実行する。
次に、図16〜図20に示す試験結果を用いて、ステップS13Aの処理を追加したことによる技術的意義を説明する。
先ず、図16〜図18に示す試験の概要を以下に説明する。これらの試験では、触媒温度を所定の試験開始温度Tsに維持させた状態で、NOx浄化装置15へNOxを流入させる。試験開始温度Tsは、還元触媒の活性化温度よりも低い値に設定されている。具体的には、図16の試験ではTs=100℃、図17の試験ではTs=125℃、図18の試験ではTs=150℃に設定されている。その後、還元触媒へのNOx吸着量が所定量に達した時点で、NOxの流入を停止させるとともに、改質還元剤の排気通路10exへの添加を開始する。また、この添加開始時点で触媒温度を試験開始温度Tsから徐々に上昇させていき、NOx浄化装置15から流出するNOxの量をNOxセンサで計測する。このように計測されるNOx流出量は、第1実施形態で説明したNOx脱離量に相当する。
図中の実線L11、L21、L31は、上述の如く計測したNOx流出量と触媒温度との関係を示す。また、図中の実線L10、L20、L30は、改質還元剤を添加せずに、触媒温度を試験開始温度Tsから上昇させていった場合における、NOx流出量と触媒温度との関係を示す。これらの実線L10、L20、L30の試験結果は、図8の試験結果と同様にして、第1脱離温度領域と第2脱離温度領域の2段階で脱離することを示している。
そして、実線L11、L21、L31は、改質還元剤を添加することでNOx流出量が減少することを示している。この減少の割合がNOxの浄化率であり、具体的には、実線L10、L20、L30の積算値に対する、実線L11、L21、L31の積算値の割合が浄化率に相当する。Ts=100℃の場合には浄化率18%、Ts=125℃の場合には浄化率42%、Ts=150℃の場合には浄化率91%であった。したがって、実線L11、L21、L31の試験結果は、試験開始温度Tsに応じて浄化率が大きく異なることを示す。また、Ts=175℃で上記試験を実施したところ、浄化率が81%であったことを本発明者らは確認している。そして、これらの試験結果から、Ts=200℃の場合の浄化率は70%、250℃の場合の浄化率は55%と予想される。
図19は、これらの試験結果をまとめたものであり、試験開始温度Tsつまり還元剤添加開始温度を150℃にすると、浄化率が最大になることを示す。換言すると、150℃未満で改質還元剤の添加を開始すると、浄化率が低下する。また、150℃よりもさらに温度上昇してから改質還元剤の添加を開始しても、浄化率は低下する。
したがって、図15の低温浄化制御による改質還元剤の添加を実行するにあたり、上述した試験結果を鑑みると、150℃未満では改質還元剤の添加を禁止し、温度上昇して150℃に達した時点で改質還元剤の添加を開始すれば、浄化率が最大になると言える。つまり、図15のステップS13Aの判定に用いる下限温度を、150℃に設定することが望ましいと言える。
さらに上記試験結果は、150℃よりも低温側の領域では、高温側の領域に比べて、添加開始温度の変化に対する浄化率の変化が大きいことを示す。つまり、150℃よりも50℃だけ低い温度で添加開始すると浄化率が18%にまで低下するのに対し、150℃よりも50℃だけ高い温度で添加開始しても、浄化率は18%まで低下することはなく70%に留まる。したがって、150℃を含む温度範囲であって、所定の浄化率以上となる温度範囲を設定しようとすると、その温度範囲の平均値は150℃よりも高い温度になる。例えば、浄化率80%以上を満たす温度範囲は、140℃〜180℃であり、その平均値は、150℃よりも高い160℃である。
したがって、下限温度を設定するにあたり、その設定範囲は、150℃よりも高い温度が平均値となる範囲、かつ、150℃を含む範囲、かつ、触媒の活性化温度を含まない低温領域の範囲に設定することが望ましい。例えば、140℃〜180℃の範囲に下限温度を設定することが望ましい。要するに、低温状態かつ脱離過多状態であることに伴って改質還元剤の添加を開始するにあたり、触媒温度が下限温度未満である場合には、添加を開始しても十分な浄化率を得ることができないことを、上記試験結果は示している。
このような現象が生じる理由について、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、排気中には水分が含まれており、NOx浄化装置15へ流入した排気中の気体の水分は、触媒上で凝縮して液化する。このように、凝縮水が触媒に付着した湿潤状態では、触媒に吸着されているNOxが改質還元剤と反応することが阻害される。そのため、触媒温度が水の蒸発温度つまり100℃未満である場合には、凝縮水が多く付着した湿潤状態であるため、改質還元剤を添加してもNOxは殆ど浄化されない。なお、触媒温度が100℃以上にまで上昇すると、凝縮水が気化して触媒が乾きはじめる。しかし、100℃にまで温度上昇した時点では、未だ多くの凝縮水が残っており、125℃まで温度上昇しても、未だ凝縮水が残っていると推察される。
したがって、凝縮水を気化させて触媒を乾燥状態にすることを早期化できれば、反応阻害されない状況下での改質還元剤の添加開始時期を早期化でき、十分な浄化率が得られる温度範囲を低温側へ拡大できるようになる。しかしながら、湿潤状態で改質還元剤を添加させると、改質還元剤が凝縮水の気化の妨げとなり、早期に乾燥状態にすることの妨げになる。よって、触媒温度の上昇過程において湿潤状態の場合には、改質還元剤を添加させずに乾燥状態になるのを待った方が、早期に乾燥状態にできる。要するに、改質還元剤の添加開始が早すぎると、湿潤状態の期間が長くなり、凝縮水の阻害に起因した低浄化率状態の期間が長くなる。
事実、図16中の実線L11に示すように、改質還元剤の添加開始を100℃にすると、特に160℃〜290℃の領域つまり第1脱離温度領域でNOxを殆ど浄化できていないことが分かる。その一方で、触媒温度を100℃の状態で長時間維持させて十分に乾燥させた後に、100℃の状態で改質還元剤の添加を開始してNOx量を計測すると、図16中の実線L12に示すように、極めて高い浄化率になることが分かった。要するに、実線L11と実線L12の試験条件の違いは湿潤状態と乾燥状態の違いであり、これらの試験結果は、NOxが改質還元剤と反応することを凝縮水が阻害しているといった上記推察を肯定するものである。
その一方で、改質還元剤の添加開始が遅すぎると、添加開始までの期間はNOxを浄化できないので、その期間において浄化されずにNOx浄化装置15から排出されるNOxが多くなる。したがって、図19に示すように、改質還元剤の添加開始を150℃よりも高くするほど、つまり添加開始を遅らせるほど、NOx浄化率は低下する。
図16〜図18の各試験では、改質還元剤を添加するまでの期間、異なる触媒温度でNOxを吸着させているのに対し、図20の実線L0、L1、L2、L3に示す各試験では、同一の触媒温度でNOxを吸着させている。具体的には、触媒温度を100℃に維持させた状態で、NOxを吸着させている。そして、NOx吸着量が所定量に達した時点で、NOxの流入を停止させるとともに、触媒温度を100℃から徐々に上昇させていき、NOx流出量をNOxセンサで計測する。その後、触媒温度が所定の添加開始温度に達した時点で、改質還元剤の排気通路10exへの添加を開始する。添加開始温度は、実線L1の場合は100℃、実線L2の場合は150℃、実線L3の場合は200℃である。また、実線L0は、改質還元剤を添加しない場合の試験結果を示す。
150℃で添加開始した場合、実線L2に示すように、添加開始までの期間はNOx流出量が増加するものの、添加開始と同時にNOx流出量が減少する。その結果、第1脱離温度領域におけるNOx流出量のピーク値を、実線L0の場合におけるピーク値に比べて大幅に低減できる。また、その後の第2脱離温度領域においても、NOx流出量を十分に抑えることができ、高い浄化率を得ることができている。この試験結果は、図19において150℃での浄化率が高くなっていることと一致する。
100℃で添加開始した場合、実線L1に示すように、約140℃までの温度領域ではNOx流出量を実線L0の場合に比べて抑えることができている。しかしながら、約140℃以降は、改質還元剤を添加しているにも拘らずNOx流出量が増大し、第1脱離温度領域におけるNOx流出量のピーク値は、実線L2のピーク値に比べて増大する。しかも、その後の第2脱離温度領域においても十分な浄化率が得られていない。この試験結果は、図19において100℃での浄化率が低くなっていることと一致する。
200℃で添加開始した場合、実線L3に示すように、添加開始までの期間はNOx流出量が増加するものの、添加開始と同時にNOx流出量が減少する。その後は、実線L2と同様にして、第1脱離温度領域および第2脱離温度領域の両方において、NOx流出量を十分に抑えることができる。しかしながら、添加開始時期が遅いので、添加開始までの期間でのNOx流出量が多いことに起因して、十分な浄化率が得られていない。この試験結果は、図19において200℃での浄化率が低くなっていることと一致する。
以上により、本実施形態では、低温浄化制御手段としてのマイコン81は、還元触媒の温度が所定の下限温度以上であることを条件として、改質された還元剤を排気通路10exに添加させる。その下限温度は、水の蒸発温度以上かつ触媒の活性化温度未満に設定されている。具体的には、ステップS13Aの判定に用いる下限温度は150℃に設定されている。
先述したように、還元触媒に凝縮水が付着した湿潤状態になっていると、改質還元剤とNOxとの反応が阻害されるため、浄化率の悪化を招く。この点を鑑み、活性化温度未満に設定される下限温度を、水の蒸発温度つまり100℃以上に設定すれば、湿潤度合いが低下していく状況で改質還元剤が添加されることとなるので、凝縮水による浄化率悪化を抑制できる。
さらに本実施形態では、下限温度を150℃に設定している。これにより、図19に示すように浄化率を最大にできる。但し、水の蒸発温度以上かつ触媒の活性化温度未満であれば、下限温度は150℃以外の値であってもよい。例えば、下限温度を125℃以上に設定すれば、図19に示すように浄化率を急激に増大させることができるので、浄化率向上を促進できる。また、活性化温度未満に設定される下限温度を、140℃以上180℃未満に設定すれば、図19に示すように浄化率を80%以上にでき、好適である。
(第4実施形態)
上記第3実施形態に係るECU80は、図15のステップS13Aで触媒温度が下限温度以上と判定されたことを条件として、低温浄化制御を実行している。これに対し本実施形態では、還元触媒への水分付着量Qwを推定し、その推定値が閾値Qth以上であることを条件として、低温浄化制御を実行している。
この制御は、図21に示す処理をECU80が実行することで実現される。図21の処理では、図15に示すステップS13Aの処理を、図21に示すステップS13B、13Cの処理に変更させている。ステップS13Bの処理は、ステップS11にて低温状態と判定され、かつ、ステップS13にて脱離過多状態であると判定された場合に実行される。
このステップS13Bでは、還元触媒への水分付着量Qwを推定する。具体的には、その時点における触媒温度、およびその時点までの触媒温度の変化の履歴に基づいて推定される。また、その時点での排気中に含まれている水分量、およびその時点までの水分量の変化の履歴の少なくとも1つに基づいて推定値を補正する。
例えば、触媒温度が高いほど、水分付着量Qwが多い値となるように推定する。その時点までの触媒温度の変化の履歴に基づき算出される温度の積算値が低いほど、水分付着量Qwが多い値となるように推定する。その時点での排気中に含まれている水分量が多いほど、水分付着量Qwが多い値となるように推定する。その時点までの水分量の変化の履歴に基づき算出される水分量の積算値が高いほど、水分付着量Qwが多い値となるように推定する。
続くステップS13Cでは、ステップS13Bで推定した値が所定の閾値Qth未満であるか否かを判定する。この閾値Qthは、予め実施した試験等にしたがって設定された値である。
水分付着量Qwの推定値が閾値Qth未満であると判定された場合には、ステップS15にて低温浄化制御を実行する。閾値Qth以上であると判定された場合には、ステップS14にて吸着制御を実行する。
以上により、本実施形態によれば、低温浄化制御手段としてのマイコン81は、還元触媒への水分付着量Qwを推定し、その推定値が所定の閾値Qth未満であることを条件として、改質された還元剤を排気通路10exに添加させる。そのため、湿潤度合いが低い状況で改質還元剤を添加させることとなるので、凝縮水による浄化率悪化を抑制できる。
(他の実施形態)
以上、発明の好ましい実施形態について説明したが、発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、以下に例示するように種々変形して実施することが可能である。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
上記第1実施形態では、NOx脱離量が所定量以上になっている状態を脱離過多状態であると判定しているが、この判定に用いる所定量をゼロに設定してもよい。つまり、触媒温度が上昇して脱離開始温度Tbに達した時点で、改質還元剤を添加してもいい。
上記第1実施形態に係る低温浄化制御では、NOx脱離量が多いほど改質還元剤の添加量を増大させている。これに対し、低温浄化制御に係る改質還元剤の添加量を、NOx脱離量に拘らず一定の量にしてもよい。
上記第1実施形態では、放電リアクタ20およびヒータ30により、還元剤を改質する改質手段を提供している。これに対し、放電リアクタ20を廃止して、ヒータ30により改質手段を提供してもよい。つまり、オゾン無しでもヒータ30により燃料を加熱して酸素と反応させれば、燃料の部分酸化は可能である。但し、オゾンを用いて改質した方が、低温浄化制御によるNOx浄化の反応(図10に示す反応)を促進できる。
上記第1実施形態では、触媒温度が活性化温度以上(高温状態)であれば高温浄化制御を実施し、この高温浄化制御では、ヒータ30により加熱された燃料に、酸素およびオゾンを供給して部分酸化させている。これに対し、触媒温度が活性化温度以上の場合において、触媒温度が活性化温度よりも高温の第1温度(例えば350℃)以上であれば、オゾン供給を停止させて酸素供給した状態で、加熱された燃料を部分酸化させるようにしてもよい。第1温度以上の高温であれば、オゾンを供給しなくても十分に燃料は部分酸化するので、上述の如くオゾン供給を停止させれば、放電リアクタ20における電力消費を低減できる。
ここで、触媒温度が第1温度よりも高温の第2温度(例えば400℃)より高温側の領域では、部分酸化された改質燃料の一部が、NOxを還元する前に完全に酸化して二酸化炭素および水に変化(酸化変質)し、NOx還元能力を失う。そのため、部分酸化による改質を行わない方が却って浄化率が高くなる。この点を鑑み、触媒温度が第2温度以上であれば、放電リアクタ20を停止させるとともにエアポンプ20pの作動も停止させて、オゾンおよび空気(酸素)の両方の供給を停止させ、改質を行わないようにしてもよい。
上記第1実施形態に係る改質では、還元剤に含まれるアルデヒドの割合が所定割合(例えば10%)となるように改質している。これに対し、NOx離脱量に応じてアルデヒドの割合を可変設定させてもよい。また、本発明に係る改質還元剤は、アルデヒドを含むことに限定されるものではない。但し、アルデヒドを所定割合以上含ませれば、図10に示す低温浄化の作用が顕著に発揮されることを、本発明者らは試験確認している。
上記実施形態では、銀を含んだ触媒を還元触媒として用いているが、本発明はこのような銀触媒に限定されるものではなく、例えば銅または鉄を含んだ触媒を還元触媒として用いてもよい。
図1に示す実施形態では、エアポンプ20pにより放電リアクタ20へ空気を供給している。これに対し、内燃機関10の吸気の一部を分岐させて放電リアクタ20へ流入させてもよい。具体的には、冷却器12により冷却される前の高温吸気を放電リアクタ20へ分岐させてもよいし、冷却器12により冷却された後の低温吸気を放電リアクタ20へ分岐させてもよい。
図1に示す上記実施形態では、NOxを物理的に捕捉(つまり吸着)する還元触媒が採用されているが、NOxを化学的結合により捕捉(つまり吸蔵)する還元触媒が採用された燃焼システムに、還元剤添加装置を適用させてもよい。
内燃機関10が理論空燃比よりもリーンな状態で燃焼させている時に、NOx浄化装置15がNOxを吸着し、リーン燃焼以外の時にNOxを還元させる燃焼システムに、還元剤添加装置を適用させてもよい。この場合、リーン燃焼時にはオゾンを生成し、リーン燃焼以外の時に改質燃料を生成させればよい。このようにリーン燃焼時にNOxを捕捉する触媒の具体例としては、担体に担持された白金とバリウムによる吸蔵還元触媒が挙げられる。
図1に示す実施形態では、車両に搭載された燃焼システムに還元剤添加装置を適用させている。これに対し、定置式の燃焼システムに還元剤添加装置を適用させてもよい。図1に示す実施形態では、圧縮自着火式のディーゼルエンジンに還元剤添加装置を適用させており、燃焼用の燃料として用いる軽油を還元剤として用いている。これに対し、点火着火式のガソリンエンジンに還元剤添加装置を適用させて、燃焼用の燃料として用いるガソリンを還元剤として用いてもよい。
図15に示す実施形態では、排気中に含まれている水分量やその水分量の変化の履歴に拘らず、下限温度である150℃にまで触媒温度が上昇したタイミングで、改質還元剤の添加を開始させている。これに対し、上記水分量の履歴に応じて下限温度の値を変更させてもよい。