以下に、本発明の実施形態である駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置について説明する。
<第1実施形態>
[画像形成装置]
まず、図17を参照して画像形成装置100の概略構成と一連の画像形成動作について説明する。
図17は、4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBk)の画像を形成する画像形成部を各々備えたカラー画像形成装置100の全体構成を示す概略断面図である。画像形成装置100は、画像形成するための主要な部材として、感光ドラム21、帯電ローラ17、現像ロータリ23、ベルト2、定着器25を有する。なお、感光ドラム21、帯電ローラ17、現像ロータリ23は、ベルト2へトナー像を形成するトナー像形成手段である。
現像ロータリ23はイエロー現像器20Y、マゼンタ現像器20M、シアン現像器20C、ブラック現像器20Bkを回転可能に支持する。イエロー現像器20Y、マゼンタ現像器20M、シアン現像器20C、ブラック現像器20Bkには、それぞれ現像ローラ20YS、20MS、20CS、20BkSが設けられ、それぞれ対応する色のトナーが収容されている。ベルト2は無端ベルト状で駆動ローラ6と従動ローラ24に掛け回されている。ベルト2は、その表面にトナー像を担持可能な中間転写体としての像担持体である。駆動ローラ6は不図示のモータから駆動力により回転し、ベルト2を回転駆動し、ベルト2の表面を移動させる。
記録材Sへの画像形成動作について説明する。画像形成装置100は、給紙ローラ29を回転させてカセット28内の記録材Sを1枚給紙し、レジストレーションローラ30へ搬送する。記録材Sは、レジストレーションローラ30の位置で回転可能な中間転写体としての無端状の搬送ベルトであるベルト2上に画像が形成されるまで待機する。
一方、トナー像を担持する像担持体である感光ドラム21は、回転しながら帯電ローラ17により表面を均一に帯電され、画像信号に応じた光を照射するレーザスキャナ18により露光され、イエロー画像用の静電潜像が形成される。イエロー現像器20Yは、イエローのトナーを収容し、現像ローラ20YSを備える。静電潜像が形成された感光ドラム21と対向した現像ローラ20YSに現像電圧を印加することにより、感光ドラム21上に形成された静電潜像がイエローのトナーにより現像される。感光ドラム21上に形成されたトナー像に逆極性の電圧を一次転写ローラ22に印加して、感光ドラム21のトナー像をベルト2上に一次転写する。
イエローのトナー像がベルト2へ一次転写されると、現像ロータリ23が回転し、次に画像形成を行うマゼンタ現像器20Mが回転移動し、感光ドラム21に画像形成を行うための現像位置に停止する。そして、イエローと同様に、感光ドラム21を帯電、露光して、現像ローラ20MSによりマゼンタのトナーで現像を行ってトナー像を形成し、ベルト2に一次転写する。この一次転写の際、マゼンタのトナー像は、既にベルト2上に担持されているイエローのトナー像に重なる位置に転写される(以下、「多重転写」という)。
次に、上記と同様にして、シアン現像器20C、ブラック現像器20Bkを用いてシアン、ブラックのトナー像をそれぞれ感光ドラム21上に形成して、ベルト2上へ多重転写する。これにより、ベルト2上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が多重転写によって重畳されたカラーのトナー像が形成される。
ベルト2にカラー画像が形成された後、レジストレーションローラ30で待機させておいた記録材Sは二次転写部Aへ搬送される。二次転写部Aは、ベルト2の表面に当接離間可能な二次転写ローラ1と、駆動ローラ6(以下、「対向ローラ6」という)を備える。ベルト2を回転させながらベルト2上に各色のトナー像を多重転写している間は、既にベルト2上に形成されたトナー像が二次転写部Aを通過する際に乱さぬよう、二次転写ローラ1はベルト2から隙間Gだけ離間した位置(図17の実線で示した位置)にある。二次転写ローラ1は、ベルト2上に各色のトナー像を転写し終わった後で記録材Sが二次転写ローラ1とベルト2との間に搬送されてくる前に、移動してベルト2に当接する(図17の破線で示す位置)。その後、二次転写ローラ1にトナーと逆極性の電圧を印加することにより、二次転写ローラ1とベルト2の間で挟持搬送される被転写部材としての記録材S上にベルト2上のトナー像が転写される。
ベルト2上からトナー像が転写された記録材Sは、その後定着器25へ搬送され、加圧ローラ27と定着ローラ26間の定着ニップ部Nを通過し、その際トナー像が、加熱、及び、加圧されて記録材Sに定着する。そして、記録材Sは、排紙ローラ36を介して本体上部の排紙トレイ37上へ画像面を下向きにして排出され、画像形成動作が終了する。
[二次転写ローラ離間機構]
上述したように、二次転写ローラ1は、所定のタイミングで移動してベルト2に対して当接、離間するため、画像形成装置100は二次転写ローラ1の当接離間機構を有している。次にこの当接離間機構について説明する。
図1は二次転写部Aの斜視図であり、(a)は二次転写ローラ1がベルト2に当接している状態、(b)は二次転写ローラ1がベルト2から離間している状態を示す。二次転写ローラ1は回転自在にホルダ3に保持されている。なお、図1では、二次転写ローラ1長手方向の一端部側を記載しているが、他端側も同様に構成されている。
画像形成装置100内の不図示のフレームに支持された回転軸6aは対向ローラ6、及び、切換カム4を、回転軸6a回りに回転可能に支持している。切換カム4はギア部4aを一体的に備え、回転軸5aに回転可能に支持された切換ギア5と噛合う。ギア部4aの歯数と切換ギア5の歯数の比率は、2:1である。クラッチ装置B1を介したモータMからの駆動力により切換ギア5を回転させることで、ギア部4aと切換カム4が一体的に回転する。
また、ホルダ3はコロ3bを備える。ホルダ3は、バネ3aによって二次転写ローラ1が対向ローラ6に向かう方向に付勢(押圧)されている。切換カム4は、クラッチ装置B1により所定のタイミングで1/2回転(180°)枚に回転し、停止する。
図1(b)に示す状態では、コロ3bが切換カム4の表面に突き当たることで二次転写ローラ1の位置が規制され、二次転写ローラ1がベルト2から隙間Gで離間した状態となる。この状態から切換カム4が1/2回転することにより、図1(a)に示すように、切換カム4の表面がコロ3bから退避し、バネ3aの付勢力により二次転写ローラ1が対向ローラ6に当接する。この状態から更に切換カム4が1/2回転すると、切換カム4の表面がコロ3bに当接し、バネ3aの付勢力(弾性力)に抗してコロ3bを移動させ、図1(b)に示した、二次転写ローラ1がベルト2から隙間Gで離間した状態とする。このように、二次転写ローラ1がベルト2に当接した状態から離間させる際は、切換カム4にバネ3aの付勢力による回転負荷(回転トルク)がかかる。
[クラッチ装置B1]
次に、モータMからの切換カム4へ駆動力を伝達する駆動列の中に設けられ、間欠的に駆動力を伝達する駆動伝達装置としてのクラッチ装置B1の構成について、図2を用いて説明する。図2はクラッチ装置B1の斜視図であり、(a)はクラッチ装置B1を切換ギア5の反対側から見た図で、(b)はクラッチ装置B1を切換ギア5の側から見た図である。以降は、クラッチ装置B1の切換ギア5の反対側を「クラッチ装置B1の表側」とし、切換ギア5の側を「クラッチ装置B1の裏側」とする。
クラッチ装置B1は、常時モータMと駆動連結されて回転するギア7(駆動回転体)と、ギア7と噛合可能なギア8と、ギア8と噛合可能なギア9と、ギア8の回転を規制する手段であるソレノイド10と、ねじりバネ11(弾性部材)を有する。モータMからの駆動力は、クラッチ装置B1のギア7、ギア8、ギア9を介して切換ギア5へ伝達され、切換カム4(被駆動部材)を回転させる。
ギア8は、ソレノイド10の係止爪10aに係止される係止部8aと、ギア7と噛合可能な欠歯ギア8b(従動回転体)と、ギア9と噛合する第一すべりギア8d(第1回転体)と、ねじりバネ11が当接するカム部8fと、を一体的に備える。ギア8が回転することにより、これら係止部8a、欠歯ギア8b、ギア8d、及び、カム部8fが一体的に回転する。欠歯ギア8bには、一部にギア7と噛合しない欠歯部8cが設けられている。第1すべりギア8dは26歯相当の歯数直径であるが、一部に第一すべりギア8dの回転中心と同心であって第一すべりギア8dのピッチ円の半径と同じ半径の円弧面である凸形状のすべり部8eが設けられている。このため、第1すべりギア8dはすべり部8e以外の部分に20歯を備えている。
ギア9は、第一すべりギア8dと噛合可能な第二すべりギア9a(第2回転体)と、ねじりバネ11を保持する軸9cと、図1における切換ギア5の回転軸5aに一体的に連結された回転軸9dと、を一体的に備えている。ギア9が回転することにより、これら第二すべりギア9a、軸9c、及び、回転軸9dが一体的に回転する。第二すべりギア9aには、一部に第1すべりギアと噛合せず、すべり部8eに沿うすべり部9bが設けられている。すべり部9bは、すべり部9bがすべり部8eに対向する位置にある時に、第一すべりギア8dの回転中心と同心の凹形状の円弧面である。このすべり部9bの円弧面は、半径が第1すべりギア8dのピッチ円の半径と同じであり、すべり部8eの円弧面に沿う円弧面である。第二すべりギア9aの歯車は22歯相当の歯数直径であるが、一部にすべり部9bが設けられているので、第二すべりギア9aは、すべり部9b以外の部分に19歯を備えている。このように、第二すべりギア9aの歯数(19歯)は第一すべりギア8dの歯数(20歯)より1歯分少ない。第一すべりギア8dと第二すべりギア9aとのギア比を1:1とするために、第二すべりギア9aは、第一すべりギア8dの20個の歯によって押圧されて回転させられる部分として、19個の歯とすべり部9bの端部(1歯分に相当)を備える構成となっている。つまり、第一すべりギア8dの歯数をZ1、第二すべりギア9aの歯数をZ2とすると、ギア比1:1でZ1=Z2+1という関係を満たす。また、第一すべりギア8dと第二すべりギア9aとは必ずしもギア比1:1である必要は無く、第二すべりギア9aが一回転する間に第一すべりギア8dが整数回回転するギア比であればよい。すべり部9bは第一すべりギア8dが一回転毎にすべり部8eと対向する位置に来るよう配置する。例えば、第一すべりギア8dの構成を変えることなく、ギア比2:1(第1すべりギア8dが1回転すると、第二すべりギア9aが1/2回転する)とする場合、すべり部9bを19歯毎に設ければよい。この時、Z1=(Z2+1)/2という関係を満たす。 ギア8とギア9は、凸形状の円弧面であるすべり部8eと凹形状の円弧面であるすべり部9bとが沿うように相対的な回転位相を合わせて組み立てられている。すべり部9bに対してすべり部8eが摺動しやすいよう、すべり部8eとすべり部9bは摩擦係数が小さな材料で形成されている。また、摺動性を良くするために、必要に応じてすべり部8eとすべり部9bとの間にグリース等の潤滑剤を塗布してもよい。
ソレノイド10は、係止爪10aと、戻しバネ10bと、を備える。戻しバネ10bは係止爪10aをギア8に向かう方向に付勢しており、ソレノイド10に通電しておらず、係止部8aが係止爪10aと対向する位置にある時、係止爪10aは係止部8aを係止してギア8の回転を規制することができる。ソレノイド10に通電すると係止爪10aは戻しバネ10bの付勢力に抗してギア8から退避し、それまで係止爪10aで係止部8aを係止していた場合、係止爪10aによるギア8の係止部8aの係止を解除できる。
ねじりバネ11は、不図示の固定部に固定された固定腕11aと、ギア8のカム部8fに当接する可動腕11bと、を備え、軸9cによって保持されている。ギア8が所定の回転位相にある時、ねじりバネ11の弾性力によってカム部8fを押圧することで、ギア8が回転するよう付勢する。欠歯ギア8bの欠歯部8cがギア7と対向し、欠歯ギア8bがギア7と噛み合って十分な駆動力を得られない時でも、このねじりバネ11の押圧によりギア8を回転させることが可能となる。
[クラッチ装置B1の動作]
次に、クラッチ装置B1の駆動伝達動作について、図3〜図7を用いて説明する。
図3〜図7の(a)はクラッチ装置B1を表側から見た図、であり、(b)はクラッチ装置B1を裏側から見た図である。図3は、クラッチ装置B1の待機状態を示す。図4は、クラッチ装置B1の駆動伝達開始時を示す。図5は、クラッチ装置B1の駆動伝達中を示す。図6は、クラッチ装置B1の駆動伝達終了時を示す。図7は、クラッチ装置B1のギア8がホームポジションに到達する直前を示す。また、図3〜図7におけるギア7とギア8の回転方向は、各ギアの横に記載した円弧状の矢印の示す通りである。
クラッチ装置B1の待機状態では、図3(a)に示すように、欠歯ギア8bの欠歯部8cがギア7と対向していて、欠歯ギア8bがギア7と噛み合っていない。また、ねじりバネ11の可動腕11bはギア8を時計回りに回転するようにカム部8fを押圧しているが、係止爪10aに係止部8aが突き当たっている。このため、ギア8は係止爪10aに係止され、回転せず停止している。この時、ギア8はホームポジションにある。
また、図3(b)に示すように、ギア8のすべり部8eとギア9のすべり部9bが対向しており、これによりギア9(第2すべりギア9a)は回転が規制されて停止しており、回転しない。この時、ギア9はホームポジションにある。なお、ギア9がホームポジションにある時は、ギア9の回転が規制されているので、仮に切換カム4等が外力等によって回転させられそうになってもその回転は防止される。
次に、クラッチ装置B1の駆動伝達開始について説明する。図4(a)に示すように、ソレノイド10に通電して係止爪10aによるギア8の係止部8aの係止を解除すると、ねじりバネ11の弾性力によって可動腕11bがカム部8fを押圧し、ギア8が時計回りに回転し始め、欠歯ギア8bとギア7とが噛合う。この時のカム部8fは、ねじりバネ11の可動腕11bに押圧される被押圧面として機能する。欠歯ギア8bとギア7とが噛み合うと、ギア8はギア7から駆動力を伝達されて回転する。このように、ねじりバネ11の弾性力のみによって、ギア8をホームポジションから回転開始させるのは、ギア8をホームポジションで停止させつつモータMにより回転しているギア7と噛み合わせることができないからである。
また、ギア8が回転し始めると、ギア8は、第一すべりギア8dのすべり部8eが、第二すべりギア9aのすべり部9bに対して摺動することにより、ギア9を回転させることなく回転を開始する。
ギア9aを回転させることなくギア8が所定量だけ回転すると、図4(b)に示すように、第一すべりギア8dの、ギア8の回転方向に関してすべり部8eの上流側の端部の隣にある歯が、すべり部9bの端部に係合し、ギア9の回転を開始させる。これにより、第一すべりギア8dの歯に第二すべりギア9aの歯が噛み、第二すべりギア9aと第一すべりギア8dとが噛み合ってギア9が回転する。ギア9が回転を開始したことで、切換ギア5が回転を開始し、切換カム4へ切換ギア5を介して駆動力を伝達して回転を開始させる。
なお、ギア8がねじりバネ11の弾性力のみによって回転している間は、ギア8のすべり部8eがギア9のすべり部9bに対して摺動しながら回転し、ギア9は回転しない。ギア9が回転を開始するタイミングは、欠歯ギア8bがギア7と噛むタイミングよりも後であり、ギア8が既にギア7からの駆動力を受けて回転している期間内である。従って、ギア9から切換カム4へ駆動力を伝達して回転させている時、欠歯ギア8bとギア7とが噛み合いモータMからの駆動力がギア9へ伝達されていることになる。
その後、図5(a)、(b)に示すように、ギア8がギア7から駆動力を伝達されて回転している間に、ソレノイド10への通電を止める。これにより、ソレノイド10の係止爪10aが戻しバネ10bの付勢力によって、ギア8に向かって移動され、係止部8aを係止可能な位置に配置される。
その後、図6(b)に示すように、ギア8の回転によって第一すべりギア8dと第二すべりギア9aの噛合いが終わると、すべり部8eとすべり部9bとが互いに対向する。このため、ギア9は、ギア8からの駆動力が伝達されず、回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、ギア9はギア8によって1回転させられて回転を停止する。このようなギア9の停止により、ギア9以降の駆動列へ駆動力が伝達されなくなり、切換ギア5、切換カム4も停止する。このとき、図6(a)に示すように、まだ欠歯ギア8bとギア7とが噛合っており、ギア8は回転している。
そして、ギア8の回転によって、カム部8fが、ねじりバネ11の可動腕11bを、固定腕11aに近づくよう、弾性力に抗して押圧し移動させる。つまり、カム部8fを回転させて、ねじりバネ11を縮ませて弾性力を増加(チャージ)させる。この時のカム部8fは、ねじりバネ11の可動腕11bを固定腕11aに近づくよう押圧する押圧面として機能する。
その後、ギア8が回転していくと、図7(a)に示すように、欠歯部8cがギア7に対向し、欠歯ギア8bがギア7に噛み合えず、ギア8はギア7からの駆動力を受けることができなくなる。この時、欠歯部8cが完全にギア7と対向する位置へ移動する前に止まってしまうと、回転するギア7と欠歯ギア8bの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないよう、ギア7からの駆動力に頼らずギア8を更に回転さる。具体的には、ねじりバネ11の弾性力によりカム部8fを押圧することでギア8を回転させることで、欠歯部8cを完全にギア7と対向させ、ギア8の回転方向に関して、ギア7から欠歯ギア8bの歯を十分に退避させる。この時のカム部8fは、ねじりバネ11の可動腕11bに押圧される被押圧面として機能する。ギア8は、ねじりバネ11の弾性力により、係止部8aがソレノイド10の係止爪10aに係止されるまで回転する。係止部8aが係止爪10aに係止されると、図3(a)に示すように、ギア8は停止し、ホームポジションに位置する。
図7(b)に示すように、ギア8がねじりバネ11の弾性力のみによってホームポジションまで回転させられている間、ギア8は、すべり部8eをすべり部9bに対して摺動させ、ギア9を回転させることなくホームポジションまで回転し停止する。これは、欠歯ギア8bがギア7に噛み合わなくなるタイミングよりも前に、ギア8のすべり部8eとギア9のすべり部9bとが互いに対向し、ギア8の駆動力がギア9に伝達されなくなるからである。
その後、再びソレノイド10に通電して係止爪10aがギア8の係止部8aの係止を解除すると、上述した間欠駆動伝達動作を実行される。
このように、ギア8がホームポジションにある時に、所定のタイミングでソレノイド10に通電することによって、クラッチ装置B1により、駆動力を伝達して切換ギア5を1回転させ、切換カム4を1/2回転させることができる。
このように本実施形態によれば、クラッチ装置B1は、ギア8がギア7から駆動力を得られず、ねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられている間、ギア8はギア9を回転させることなく回転可能な状態となっている。つまり、係止爪10aと係止部8aの係止を解除してから、欠歯ギア8bがギア7と噛み合うまでの間、及び、欠歯ギア8bとギア7との噛合いが終わってから、係止部8aが係止爪10aに係止されるまでの間、ギア8はねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられる。そして、この間、ギア8とギア9との間ではすべり部8eとすべり部9bが対向した状態となっており、ギア8はギア9及びそれ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。このため、ギア8がギア7から駆動力を得られない時にギア8を回転させるための手段である、ねじりバネ11の弾性力は、ギア8単体の回転抵抗力を上回る程度の力で良い。
特許文献1の従来構成では、従動回転体が弾性部材の弾性力によって回転する間、従動回転体から被駆動部材までの全ての部材が常に回転する。一方で、本実施形態は、従動回転体(ギア8)が弾性部材(ねじりバネ11)の弾性力によって回転する間、第1回転体(第一すべりギア8d)は第2回転体(第二すべりギア9a)を回転させることなく回転する。このため、本実施形態の構成であれば、従動回転体を回転させる弾性部材の弾性力を従来構成と比べて小さくすることができる。
その結果、弾性部材は小さく安価なものを使用でき、その分装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、従動回転体自体、従動回転体を係止する係止爪、弾性部材を支持する部分も、大きな弾性力に耐えられるだけの材質、形状にする必要がなく、その分装置の大型化、コストアップを避けることができる。
また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、弾性力が小さい分、小さくすることができる。
また、弾性部材の弾性力に抗して装置を組み立てる構成であれば、弾性力が小さい分、組み立て性や作業性が損なわれにくい。
また、駆動回転体と従動回転体とが噛み合った状態で従動回転体を回転させる際に弾性部材の押圧力が従動回転体の回転抵抗となる。しかしながら、弾性力が小さい分、弾性部材の押圧力による回転抵抗は小さくなるため、この分従動回転体を回転させる駆動源としてのモータMに必要とされる駆動力を下げることができる。従って、低出力の安価で小型な駆動源を用いることができる。
また、ギア9がホームポジションにあり、ギア8がねじりバネ11の弾性力によって回転する間、第一すべりギア8dから第二すべりギア9aへはモータMからの駆動力が伝達されない。しかし、すべり部8eとすべり部9bとが互いに沿う形状となっており、第二すべりギア9aの回転が規制されている。このため、第二すべりギア9aから切換カム4までの駆動列が外力等によって回転させられそうになっても回転することが規制される。
[別構成]
なお、本実施形態で説明した構成は、以下のように変形可能である。
ギア8のすべり部8eとギア9のすべり部9bとが対向した状態で第二すべりギア9aの回転が所定量規制されれば、すべり部8eとすべり部9bの円弧面同士の間に隙間があってもよい。
また、装置構成上、ギア9がホームポジションにある時、ギア9の回転を規制することが不要である場合は、単に、すべり部8eとすべり部9bとが対向した状態で、第一すべりギア8dが第二すべりギア9aを回転させることなく回転可能な構成であれば良い。
また、本実施形態では、欠歯ギア8bと第一すべりギア8dとが一体成型され同軸で回転する構成だったが、別々の軸で回転する構成であってもよい。つまり、第1すべりギア8dが、モータMから切換カム4までの駆動列で欠歯ギア8bよりも下流にあればよい。同様に、切換ギア5も第二すべりギア9aと同軸である必要はなく、モータMから切換カム4までの駆動列で第二すべりギア9aより下流にあればよい。
また、本実施形態では、ギア同士の噛み合いで駆動力を伝達する構成だが、回転して駆動力を伝達する構成であれば摩擦車等を使用してもよい。
また、本実施形態のクラッチ装置B1は、二次転写ローラ1の当接離間機構を駆動する為に用いられているが、これ以外の機構にも適用可能である。例えば、給紙ローラ29の間欠回転機構や、加圧ローラ27と定着ローラ26間の圧解除機構にも適用可能である。また、複数の感光ドラムを有するインラインの画像形成装置であれば、一次転写ローラの当接離間機構、現像ローラの当接離間機構にも適用可能である。更に、駆動源からの駆動力の伝達のON/OFFを切り換える機構、駆動源から感光ドラムへの駆動力の伝達のON/OFFを切り換える機構にも適用可能である。
<第2実施形態>
[クラッチ装置B2]
次に、本発明の第2実施形態の駆動伝達装置としてのクラッチ装置B2について、図8、図9、図10を用いて説明する。
図8は第二実施形態におけるクラッチ装置B2の斜視図である。図8(b)は、図1の切換ギア5と対向する側から見たクラッチ装置B2の斜視図であり、図8(a)は、図8(b) とは反対方向から見たクラッチ装置の斜視図である。図9は、クラッチ装置B2の組み立て前の斜視図である。図10は、ギア12とギア13の組み立てを説明する斜視図であり、(a)はギア13側から見た図、(b)はギア12側から見た図である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。
クラッチ装置B2は第1実施形態のクラッチ装置B1同様にモータMから切換ギア5へ駆動力を伝達する。クラッチ装置B2とクラッチ装置B1との違いは、クラッチ装置B2が、クラッチ装置B1のギア8に相当するギア13に加え、ホームポジションにあるギア13がギア7と噛み合えるようにギア13を回転させる為のギア12を備えることである。
まず、クラッチ装置B2の構成について説明する。なお、ギア7、ギア9についてはクラッチ装置B1と同様のため説明は省略する。
ギア12は、ギア7と噛合するトリガギア12bと、ソレノイド10の係止爪10aが係止して回転が規制される係止部12aと、トリガバネ14が配設されるボス12dを一体的に備えている。トリガギア12bの一部にギア7と噛合しない欠歯部12cが設けられている。
ギア13は、ギア7と噛合可能な欠歯ギア13aと、ギア9と噛合する第一すべりギア13cと、と、ねじりバネ11が当接してギア13に付勢力を与え回転させるカム部13eと、トリガバネ13が配設されるボス13fと、回転軸部13gを一体的に備える。欠歯ギア13aは一部にギア7と噛合しない欠歯部13bが設けられている。第一すべりギア13cは、一部に第一すべりギア8dのピッチ円の半径と同じ半径の円弧面である凸形状のピッチ円直径からなるすべり部13dを備える。また、第一すべりギア13cの歯車は、26歯相当の歯数直径を有し、第一すべりギア13cを形成する有歯部は、20歯で構成されている。
ソレノイド10の係止爪10aは、ギア12の係止部12aを係止してギア12の回転を規制することができる。
トリガバネ14は、一端をギア12のボス12dに固定され、他端をギア13のボス13fに固定されており、ギア13に対してギア12を引き寄せる方向に付勢している。また、ソレノイド10に通電して係止爪10aがギア12の係止部12aの係止を解除すると、トリガバネ14はギア12に起回転力を与え、トリガギア12bとギア7が噛合するよう構成されている。
ねじりバネ11は、固定腕11a側が固定され、可動腕11b側がギア13のカム部13eに当接しており、ギア13の回転軸部13g中心方向へ付勢している。
次に、ギア12とギア13の配設について説明する。図10(a)、図10(b)に示すように、ギア12は、軸受け部12eと複数の溝部12fを有しており、軸受け部12eはギア13の回転軸部13gに収納される。その際、ギア13に備わる複数のキー部13hは、溝部12fに収納される。キー部13hが溝部12fに収納された状態においては、キー部13hと溝部12fの間には遊びがあるように構成されており、ギア12は、ギア13に対し回転軸部13gを中心に遊びの量だけ回転することができる。
[クラッチ装置B2の動作]
次に、第二実施形態におけるクラッチ装置の駆動伝達動作について、図11〜図16を用いて説明する。図11〜図16の(a)はクラッチ装置B2を表側(切換ギア5側)から見た図、(b)はクラッチ装置B2を表側(切換ギア5側)から見た、ギア12の溝部12fとギア13のキー部13hとの遊び量を示す断面図、(c)はクラッチ装置B1を裏側(切換ギア5側と反対側)から見た図である。図11は、クラッチ装置B2の待機状態を示す。図12は、クラッチ装置B2のギア12の回転開始時を示す。図13は、クラッチ装置B2の駆動伝達開始時を示す。図14は、クラッチ装置B2の駆動伝達中の説明図ある。図15は、クラッチ装置B2の駆動伝達終了時を示す。図16は、ギア13がホームポジションに到達する直前を示す。
クラッチ装置B2の待機状態では、図11(b)に示すように、可動腕11bはカム部13eの平面部に当接して、ギア13の回転軸部13g中心方向へ付勢している。この状態においては、ギア13はホームポジションにあり、欠歯部13bがギア7と対向するため、ギア7から駆動力はギア13に伝達されない。また、溝部12fとキー部13hの間には遊びがある状態にある。
また図11(a)に示すように、ギア12はトリガバネ14によって時計回りに回転するよう付勢されているが、係止爪10aに係止部12aを係止されて停止している。この状態においては、欠歯部12cがギア7に対向したホームポジションにあり、ギア7の駆動力はギア12に伝達されない。
また図11(c)に示すように、ギア13のすべり部13dとギア9のすべり部9bが当接している。この状態においては、ギア9は回転が規制されるため、駆動力の出力先である回転軸9dに出力先から回転トルクを受けても回転することはできない。この時、ギア9はホームポジションに位置する。
次に、クラッチ装置B2による駆動伝達を行う為には、まずギア12を回転させる。このため、図12(a)に示すように、ソレノイド10に通電し係止爪10aをギア12から退避させ、係止爪10aによる係止部12aの係止を解除する。すると、トリガバネ14の弾性力によってギア12のボス12dがギア13のボス13fに近づく方向に移動させられ、ギア12が時計回りに回転を開始する。この時ギア13は、カム部13eがねじりバネ11によって押圧されることにより回転が規制されている為、トリガバネ14の弾性力を受けも回転しない。ギア12は所定量回転すると、トリガギア12bとギア7とが噛合い、ギア12がギア7から駆動力を受けて回転する。
また、図12(b)に示すように、トリガバネによってギア12が回転する際、ギア12の回転により溝部12fとキー部13hの間の遊びが無くなるまで、ギア13はねじりバネ11の押圧力よって待機位置に保持される。従って、図12(c)に示すように、ギア13が停止している間は、図11(c)と同様に、ギア13のすべり部13dとギア9のすべり部9bが当接しており、ギア9は回転することなくホームポジションに停止している。
図13(a)に示すように、トリガギア12bとギア7とが噛合い、ギア12がギア7から駆動力を受けて回転している時に、図13(b)に示すように、溝部12fとキー部13hの間の遊びが無くなり、溝部12fの縁部分がキー部13hを押圧する。これによりギア13が回転を開始する。その後、ギア13の欠歯ギア13aとギア7とが噛合い、ギア7からギア13に駆動力が伝達される。
なお、係止部12aの係止を解除してギア12が回転した後は、図13(a)に示すようにソレノイド10への通電を止める。このため、係止爪10aは、戻しバネ10bによってギア12に近づく方向へ移動し、係止爪10aが係止部12aを係止可能な位置に待機させる。
また、ギア13が回転し始めると、ギア13は、第一すべりギア13cのすべり部13dが、第二すべりギア9aのすべり部9bに対して摺動することにより、ギア9を回転させることなく回転を開始する。
ギア9aを回転させることなくギア13が所定量だけ回転すると、図13(c)に示すように、第一すべりギア13cの、ギア13の回転方向に関してすべり部13dの上流側の端部の隣にある歯が、すべり部9bの端部に係合し、ギア9の回転を開始させる。これにより、第一すべりギア13cの歯に第二すべりギア9aの歯を噛み、第二すべりギア9aと第一すべりギア13cとが噛み合ってギア9が回転する。
ギア9が回転を開始したことで、切換ギア5が回転を開始し、切換カム4へ切換ギア5を介して駆動力を伝達して回転を開始させる。
その後、図14(a)に示すように、ギア12のトリガギア12bとギア7が噛合ってギア12は回転し、図14(b)に示すように、ギア13の欠歯ギア13aとギア7とが噛合ってギア13は回転する。また、図14(c)に示すように、ギア9の第二すべりギア9aは、ギア13の第一すべりギア13cと噛合って回転しており、これにより、切換ギア5が回転し、切換カム4が回転する。このように、ギア9から切換カム4へ駆動力を伝達して回転させている時、ギア13とギア7とが噛み合っており、モータMからの駆動力がギア9へ伝達されていることになる。
ギア12が1回転する直前に、図15(a)に示すように、トリガギア12bの欠歯部12cがギア7と対向し、トリガギア12bがギア7と噛み合わなくなるため、ギア12はギア7から駆動力を受けられなくなる。この時、図15(b)も示すように、ギア13はギア7と噛み合って回転しているので、ギア13のボス13fが自然長のトリガバネ14を介してボス12d押圧することでギア12が回転する。そして、ギア12が1回転した所で、係止部12aが係止爪10aに突き当たり係止されることで、ギア12はホームポジションで停止する。
また、図15(b)に示すように、ギア13がギア7と噛み合って回転している間にカム部13eでねじりバネ11の弾性力に抗して可動腕11bを押圧し、ねじりバネ11を縮ませて弾性力をチャージする。
なお、係止爪10aに係止されてギア12が停止した時点で、溝部12fとキー部13hの間には再び遊びがある状態であるので、ギア13はギア12が停止した状態で所定量回転可能である。
また、図15(c)に示すように、ギア13がギア7と噛み合って回転している間に、ギア13の回転によって第一すべりギア13cdと第二すべりギア9aの噛合いが終わり、すべり部13cとすべり部9bとが互いに対向する。このため、ギア9は、ギア13からの駆動力が伝達されず、回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、ギア9はギア13によって1回転させられて回転を停止する。このようなギア9の停止により、ギア9以降の駆動列へ駆動力が伝達されなくなり、切換ギア5、切換カム4も停止する。
その後、ギア13はギア7から駆動力を受けて回転していく。この時、ギア12が停止しているので、キー部13hが溝部12f内を移動する。やがて、図16(b)に示すように、欠歯部13bがギア7に対向し、欠歯ギア13aがギア7に噛み合えず、ギア13はギア7からの駆動力を受けることができなくなる。この時、欠歯部13bが完全にギア7と対向する位置へ移動する前に止まってしまうと、回転するギア7と欠歯ギア13aの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないよう、ギア7からの駆動力に頼らずギア13を更に回転さる。具体的には、ねじりバネ11の弾性力によりカム部13eを押圧することでギア13を回転させることで、欠歯部13bを完全にギア7と対向させ、ギア13の回転方向に関して、ギア7から欠歯ギア13bの歯を十分に退避させる。ギア13は、ねじりバネ11の弾性力により可動腕11bによるカム部13eの押圧でギア13が回転しなくなる位置まで回転して停止し、図11(b)に示すホームポジションに位置した状態となる。ねじりバネ11の弾性力により可動腕11bによるカム部13eの押圧でギア13が回転しなくなる位置とは、可動腕11bがカム部13eの平面部に沿って当接することで、可動腕11bの押圧力がギア13の回転モーメントとして作用しない位置である。
また、ギア12の回転が停止した状態でギア13が回転していく(キー部13hが溝部12f内を移動する)間、ギア13のボス13fがギア12のボス12dから離れていく為、トリガバネ14は伸びていき弾性力がチャージされる。従って、図12で示したように、係止爪10aによる係止部12aの係止を解除した際に、ギア12を回転させることができる。
また、図16(c)に示すように、ギア13がねじりバネ11の弾性力のみによってホームポジションまで回転させられている間、ギア13は、すべり部13dすべり部9bに対して摺動させ、ギア9を回転させることなくホームポジションまで回転し停止する。これは、欠歯ギア13aがギア7に噛み合わなくなるタイミングよりも前に、ギア13のすべり部13dとギア9のすべり部9bとが互いに対向し、ギア13の駆動力がギア9に伝達されなくなるからである。
このように本実施形態によれば、クラッチ装置B2は、ギア13がギア7から駆動力を得られず、ねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられている間、ギア13はギア9を回転させることなく回転可能な状態となっている。つまり、欠歯ギア13aとギア7との噛合いが終わってから、ギア13が停止するまでの間、ギア13はねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられる。そして、この間、ギア13とギア9との間ではすべり部13dとすべり部9bが対向した状態となっており、ギア13は、ギア9及びそれ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。
このため、ギア13がギア7から駆動力を得られない時にギア13を回転させるねじりバネ11の弾性力は、摩擦力等のギア13単体の回転抵抗力と、トリガバネ14の弾性力に抗してギア13を所定量回転させる力との合計を上回る程度の力で良い。従って、特許文献1等に示した従来構成と比べ、ねじりバネ11の弾性力を小さくすることが可能となり、第1実施形態と同様に、装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、小さくすることができる。
また、組み立て性や作業性が損なわれにくく、駆動源(モータM)に必要とされる駆動力を下げることができるため、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
また、ギア9がホームポジションにあり、ギア13がねじりバネ11の弾性力によって回転する間、第二すべりギア9aから切換カム4までの駆動列が外力等によって回転させられそうになっても回転することが規制される。
なお、上述した本実施形態の構成は、第1実施形態で説明したものと同様の別構成に変形可能である。
<第3実施形態>
[クラッチ装置B3]
次に、本発明の第3実施形態の駆動伝達装置としてのクラッチ装置B3について、図18、図19、図20を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。図18はクラッチ装置B3の概略を説明する図である。クラッチ装置B3は、モータMから駆動力が伝達される駆動列中に設けられ、第1クラッチ部CL1と、第1クラッチ部CL1から駆動力が伝達され、切換ギア5へ駆動力を伝達する第2クラッチ部CL2と、を備える。
第2クラッチ部CL2の構成は、第1実施形態の第一すべりギア8dとギア9と同様の構成である。
第1クラッチ部CL1は、駆動伝達爪(駆動回転体)705が一体的に形成された入力ギア701、出力ギア(従動回転体)702、押圧レバー703、ソレノイドSLを有する。入力ギア701は、モータMから駆動力を伝達されて回転するギア707によりに回転されられる。また、出力ギア702から、ギア708、及び、不図示のアイドラギアを介して、第2クラッチ部CL2の第1すべりギア8dへ駆動力が伝達され、第1すべりギア8dは出力ギア702と同期して回転する。出力ギア702と第1すべりギア8dのギア比は1:1である。
入力ギア701及び出力ギア702は共に回転中心709回りに同軸で回転する。出力ギア702は、駆動伝達爪705と係合可能な駆動伝達レバー(係合部材)704を保持する。出力ギア702に保持された駆動伝達レバー704は、回転中心709とは異なる軸702a回りに揺動し、駆動伝達爪705と係合する位置と、駆動伝達爪705から退避して係合しない位置との間を移動可能である。出力ギア702の外周には、カム面706aを備えるカム部706か一体的に形成されている。バネ711により引っ張られる押圧レバー(押圧部材)703がこのカム面706aを押圧することで、出力ギア702に回転力を与える構成となっている。カム部は出力ギア702と一体的に回転可能である。
[クラッチ装置B3の動作]
次に、クラッチ装置B3の駆動伝達動作について、回転中心709の軸方向から駆動伝達装置を見た図である図19〜図20を用いて説明する。
クラッチ装置B3の待機状態では、第1クラッチ部CL1は、図19(a)に示すように、ソレノイドSLの通電が解除されており、駆動伝達レバー704を係止する係止部材としてのフラッパ207が駆動伝達レバー704を係止している。この時、駆動伝達レバー704は、駆動伝達爪705と駆動伝達レバー704との係合が解除された係合解除位置にある。このため、入力ギア701から出力ギア702へ駆動は伝達されず、出力ギア702はホームポジションで停止しており、入力ギア701及びギア707等の駆動伝達方向上流側のギアのみが回転している。なお、入力ギア701は矢印C方向に回転する。
この時、第2クラッチ部CL2は、第1すべりギア8dとギア9が、図3(b)に示したのと同様の状態で停止している。
次に、クラッチ装置B3の駆動伝達開始について説明する。第1クラッチ部CL1は、ソレノイドSLが通電され、フラッパ207が駆動伝達レバー704から退避して駆動伝達レバー704との係止を解除する。すると、出力ギア702と駆動伝達レバー704の間に設けられたバネ710が駆動伝達レバー704を押圧して矢印D1方向に回動させ、駆動伝達レバー704が係合位置へ移動し駆動伝達爪705と係合する。この係合によって、図19(b)に示すように、駆動伝達レバー704を介して入力ギア701と出力ギア702とが結合し一体的に矢印C方向に回転を開始し、出力ギア704から駆動出力ギア708へ駆動力を伝達する。なお、バネ710が駆動伝達レバー704を押圧する理由については後に説明する。
この時、第2クラッチ部CL2は、第1すべりギア8dとギア9が、図4(b)に示したのと同様の状態で停止している。
その後、第1クラッチ部CL1は、入力ギア701と出力ギア702とが結合し一体的に矢印C方向に回転する。この間に、ソレノイドSLの通電が解除され、退避していたフラッパ207が駆動伝達レバー704を係止可能な係止位置へ復帰した状態となる。
この時、第2クラッチ部CL2は、第1すべりギア8dとギア9が、図5(b)に示したのと同様の状態で互いに噛み合って回転する。
その後、出力ギア702がホームポジションから略一回転する直前に、図6(b)に示すように、第一すべりギア8dと第二すべりギア9aの噛合いが終わり、すべり部8eとすべり部9bとが互いに対向する。このため、ギア9は、第1すべりギア8dからの駆動力が伝達されず、回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、ギア9は第1すべりギア8dによって1回転させられて回転を停止する。このようなギア9の停止により、ギア9以降の駆動列へ駆動力が伝達されなくなり、切換ギア5、切換カム4も停止する。この時、第1クラッチ部CL1ではまだ出力ギア702は入力ギア701と結合して一体的に回転している。
やがて、第1クラッチ部CL1において、図20(a)に示すように、出力ギア702と一体的に回転する駆動伝達レバー704が、フラッパ207と当接する位置に戻ってくると、フラッパ207により駆動伝達レバー704の一端部704aが係止される。駆動伝達レバー704は一端部704aがフラッパ207と当接した瞬間は、他端部704bが駆動伝達爪705に係合しているので、駆動伝達爪705に引っ張られる。このため、駆動伝達レバー704はフラッパ207と当接する一端部704aを支点として、他端部704bと駆動伝達爪705との係合が外れるまでD2方向に回動する。係合が外れると駆動伝達爪705から出力ギア702へ駆動力は伝達されなくなる。この時出力ギア702が停止すると、駆動伝達レバー704は駆動伝達爪705からそれ以上退避できず、出力ギア702が停止した時点で駆動伝達レバー704が駆動伝達爪705から十分距離を取って退避できていない状態となる虞がある。こうなると、回転し続ける駆動伝達爪705の先端に駆動伝達レバー704の他端部704bが衝突して音が発生し、騒音発生の原因となる。
そこで、本実施形態では、図20(b)に示すように、バネ711により付勢される押圧レバー703でカム部706のカム面706aを押圧して出力ギア702に回転力を付与して回転させる。そして、この出力ギア702の回転により、駆動伝達レバー704を駆動伝達爪705から十分距離を取って退避させる。なお、押圧レバー703は軸703aを中心に回動可能となっている。
詳しく説明すると、駆動伝達レバー704は一端部704aがフラッパ207と当接し、他端部704bが駆動伝達爪705に係合した状態で、押圧レバー703の先端がカム面706aの傾斜部Lを矢印E方向に押圧する。このようにカム面706aの傾斜部Lを押圧することで、出力ギア702に回転力を付与し、C方向に回転させる。出力ギア702の回転に伴い、軸702aも回転中心709回りにC方向に回転する。この回転力によって駆動伝達レバー704は一端部704aを支点としてD2方向に回動させられ、他端部704bと駆動伝達爪705との係合が外れた後も更にD2方向に回動させられる。この為、駆動伝達レバー704の他端部704bを駆動伝達爪705から十分な距離をとって退避させることができる。
なお、駆動伝達レバー704の他端部704bを駆動伝達爪705から十分な距離をとった適度な位置であるホームポジションで出力ギア702の回転が止まるようカム面706aの傾斜部Lの長さや傾きが設定されている。
このようにして、駆動伝達レバー704が駆動伝達爪705から退避するが、この駆動伝達レバー704の退避動作を出力ギア702から見ると、駆動伝達レバー704は他端部704bが駆動伝達爪705から離れるよう軸702a回りに回転している。この時、駆動伝達レバー704は回動しながらバネ710を押し縮める。従って、出力ギア702が停止する際に、バネ710は押し縮められた状態となり、フラッパ207が駆動伝達レバー704の係止を解除すると、上述したようにバネ710が開放され駆動伝達レバー704を押圧して回動させる。
このように、第1クラッチ部CL1において、バネ711の弾性力により押圧レバー703でカム部706を押圧することにより、出力ギア702をホームポジションまで回転させている間、第2クラッチ部CL2は、図7(b)に示したのと同様の状態である。即ち、第1すべりギア8dがギア9を回転させることなく回転する。これは、駆動伝達レバー704が駆動伝達爪705から退避するタイミングよりも前に、第1すべりギア8dのすべり部8eとギア9のすべり部9bとが互いに対向し、第1すべりギア8dの駆動力がギア9に伝達されなくなるからである。
このように本実施形態では、第1クラッチ部CL1で、出力ギア702が、駆動伝達爪705から駆動力を得られず、バネ711の弾性力により押圧レバー703でカム部706を押圧することにより回転させられている間、第2クラッチ部CL2では、第1すべりギア8dはギア9を回転させることなく回転可能である。つまり、出力ギア702の駆動伝達レバー704と駆動伝達爪705との係合が解除されてから、出力ギア702が停止するまでの間、出力ギア702はバネ711の弾性力のみによって回転させられる。そして、この間、第1すべりギア8dとギア9との間ではすべり部8eとすべり部9bが対向した状態となっており、第1すべりギア8dは、ギア9及びそれ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。
このため、出力ギア702が駆動伝達爪705から駆動力を得られない時に出力ギア702を回転させるバネ711の弾性力は、摩擦力等の出力ギア702から第1すべりギア8dまでの駆動列の回転抵抗力を上回る程度の力で良い。従って、バネ711の弾性力を小さくすることが可能となり、第1実施形態と同様に、装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、小さくすることができる。
また、組み立て性や作業性が損なわれにくく、駆動源(モータM)に必要とされる駆動力を下げることができるため、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
また、ギア9がホームポジションにあり、出力ギア702がバネ711の弾性力によって回転する間、第二すべりギア9aから切換カム4までの駆動列が外力等によって回転させられそうになっても回転することが規制される。
なお、上述した本実施形態の構成は、第1実施形態で説明したものと同様の別構成に変形可能である。
そこで、本発明は、駆動回転体と、前記駆動回転体に係合することにより回転する従動回転体と、前記従動回転体の回転によって回転する被駆動部材と、前記従動回転体が前記駆動回転体に係合していない時に前記従動回転体を弾性力で回転させる弾性部材と、を有する駆動伝達装置において、前記駆動回転体から前記被駆動部材へ駆動力を伝達する駆動列の前記従動回転体よりも下流に、前記従動回転体と同期して回転する第1回転体と、前記第1回転体によって回転させられて前記被駆動部材を回転させる第2回転体と、を有し、
前記従動回転体が前記弾性部材の弾性力によって回転する時、前記第1回転体は前記第2回転体を回転させることなく回転すると共に、前記第2回転体の、前記第1回転体が前記第2回転体を回転させない位相にある時に前記第1回転体と対向する部分には、前記第1回転体に対してすべるすべり部が設けられていることを特徴とする。