実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置500の概略構成について、図1(a)、(b)を用いて説明する。
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置500は、それぞれ像担持体としての感光ドラム2を有する4つの画像形成部(カートリッジ)1Y、1M、1C、1Bkを備えた電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置500は、装置本体500Aに接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は装置本体500Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。また、画像形成部1Y、1M、1C、1Bkは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する。
なお、画像形成装置500が備える4つの画像形成部1Y、1M、1C、1Bkは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、代表して画像形成部1Yについて説明し、その他の画像形成部については説明を省略する。
画像形成部1Yには、像担持体として円筒型の感光体、即ち、感光ドラム2が配設されている。感光ドラム2は、図中矢印方向に回転駆動される。感光ドラム2の周囲には帯電手段としての帯電ローラ3、現像装置4、転写手段としての一次転写ローラ5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6が配置されている。感光ドラム2の図中下方には露光手段としての露光装置(本実施形態ではレーザースキャナ)7が配置されている。
各画像形成部の図1の上方には、中間転写装置80が配置されている。中間転写装置80は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト8が二次転写対向ローラ9とテンションローラ10に張設されて、矢印方向に周回移動(回転)するように構成されている。そして、中間転写ベルト8は、後述するように中間転写ベルト8に一次転写されたトナー像を担持して搬送する。二次転写対向ローラ9と中間転写ベルト8を挟んで対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ11が配置され、中間転写ベルト8上のトナー像を記録材に転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には定着装置20が配置される。本実施形態では、画像形成部1Y、1M、1C、1Bk、露光装置7、中間転写装置80により、記録材にトナー像を形成する画像形成ユニット510を構成している。画像形成ユニット510や定着装置20は、装置本体内に配置されている。
画像形成装置500の下部には、記録材Pが収容されたカセット13A~13Cが配置されている。カセット13A~13Cは、画像形成装置500の装置本体500Aから着脱自在に構成されている。ユーザはカセット13A~13Cを引き抜き、装置本体500Aから取り外した後、各カセット13A、13B、13Cに大小各種幅サイズの記録材Pをセットし装置本体500Aへ挿入することで記録材Pの補給が完了する。
カセット13A~13Cに収納された記録材Pのうち、選択されたカセットの最上位に位置する記録材Pには、給送ローラ14が圧接して駆動するので、記録材Pが1枚ずつ分離給送される。また手差し給送が選択されているときは、手差しトレイ17にセットされた記録材Pが給送ローラ18によって1枚ずつ分離給送される。そして、カセット13A~13Cの何れか、或いは、手差しトレイ17から搬送された記録材Pは、搬送経路15を通り、レジストローラ対16によって二次転写部T2に搬送される。
上述のように構成される画像形成装置500により、例えば4色フルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム2の表面が帯電ローラ3によって一様に帯電される。次いで、感光ドラム2は、露光装置7から発せられる画像信号に対応したレーザ光により露光される。これにより、感光ドラム2上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム2上の静電潜像は、現像装置4内に収容された現像剤としてのトナーによって顕像化され、可視像(トナー像)となる。
感光ドラム2上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト8を挟んで配置される一次転写ローラ5との間で構成される一次転写部にて、中間転写ベルト8に一次転写される。この際、一次転写ローラ5には一次転写バイアスが印加される。一次転写後に感光ドラム2表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置6によって除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、廃トナー回収容器(不図示)で回収される。
このような動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部で順次行い、中間転写ベルト8上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングに合わせてカセット13A~13Cに収容された記録材P又は手差しトレイ17に積載された記録材Pが二次転写部T2に搬送される。そして、二次転写ローラ11に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト8上の4色のトナー像を、記録材P上に一括で二次転写する。二次転写部T2で転写しきれずに中間転写ベルト8に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーナ12により除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、廃トナー回収容器(不図示)で回収される。
次いで、記録材Pは、二次転写部T2から搬送経路19を通って定着装置20に搬送される。記録材P上のトナー像は、記録材Pが定着装置20で加熱、加圧されることで溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材Pに定着される。その後、記録材Pは、搬送経路21を通って排出ローラ対22により排出トレイ23に排出される。記録材Pの両面に画像を形成する両面画像形成時は、記録材Pが排出ローラ対22によって排出トレイ23上に送られていき、後端部が排出ローラ対22を通過する直前で排出ローラ対22の回転を逆転する。これにより、記録材Pがスイッチバックされて両面搬送経路24に導入される。そして、表裏反転状態になって再びレジストローラ対16まで搬送され、その後は前述したように二次転写部T2、定着装置20、排出ローラ対22を通って排出トレイ23に排出される。これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。
なお、本実施形態の画像形成装置500は、例えばブラック単色の画像など、所望の単色または4色のうちいくつかの色用の画像形成部を用いて、単色またはマルチカラーの画像を形成することも可能である。
[開閉扉]
画像形成装置500は、記録材Pを装置本体500Aの片側で装置の下方から上方に縦方向に搬送する。このため、装置本体500Aの片側に開閉扉25を設け、搬送経路で記録材が詰まるジャムが発生した場合には、この開閉扉25を開くことで搬送経路を開放して、ジャム処理を可能としている。図1(a)は、画像形成装置500において開閉扉25が閉じている状態の図であり、図1(b)は、画像形成装置500において開閉扉25が開いている状態の図である。
開閉扉25は、装置本体500Aの下方に設けられた回動軸26を中心に回動可能に設けられ、搬送経路15、19、21にアクセス可能な開位置と、搬送経路15、19、21にアクセス不能な閉位置との間で開閉可能である。ここで、搬送経路にアクセス可能とは、搬送経路が開放されて、例えば記録材がジャムしている場合には、記録材を抜き取ることが可能な状態である。一方、搬送経路にアクセス不能とは、外部から搬送経路内の記録材に触れることができない状態である。したがって、画像形成中の記録材Pがジャムした場合には、開閉扉25を開くことによってジャムした記録材Pに対して、ユーザが簡単にアクセスすることが可能となる。
[定着装置]
次に、定着装置20について、図2及び図3を用いて説明する。本実施形態の定着装置20は、フィルム加熱方式の定着装置である。定着装置20は、第1回転体としての定着フィルム(エンドレスベルト)204と、第2回転体としての加圧ローラ201とを備える。定着装置20は、定着フィルム204と加圧ローラ201との間で記録材を挟持搬送して、記録材にトナー像を定着させるニップ部Nを形成する。具体的には、定着フィルム204は、後述するように定着フィルムユニット202を構成する。そして、加圧ローラ201に対して定着フィルムユニット202が加圧されることによりニップ部Nを形成し、記録材をニップ部Nで挟持搬送することによりトナー像を加熱する。
定着フィルムユニット202は、加熱部材であるセラミックヒータ203と、略円筒状の定着フィルム204と、ヒータホルダ205と、定着フランジ206と、加圧ステイ207とを備える。ヒータホルダ205は、セラミックヒータ203を保持する。定着フランジ206は、定着フィルム204の回転方向と交差する長手方向(幅方向)の両端部の位置を規制すると共に、定着フィルム204の回転を案内する。加圧ステイ207は、ヒータホルダ205の強度を確保するために定着フィルム204の内面側に配置される。また、ニップ部Nは、加圧解除機構208(図3)により加圧解除可能となっている。
定着装置20について、詳細を以下に説明する。セラミックヒータ203は、細長薄板状のセラミック基板と、この基板面に具備させた通電発熱抵抗体層を基本構成とする。そして、発熱抵抗体層に対する通電により全体に急峻な立ち上がり特性で昇温する、低熱容量のヒータである。セラミックヒータ203は、ヒータホルダ205の下面(定着フィルム204側の面)に長手方向に沿って形成された嵌め込み溝205a内に嵌め込まれて支持される。
定着フィルム204は、記録材Pに熱を伝達する耐熱性の円筒状部材であり、ヒータホルダ205に外嵌させてある。定着フィルム204は、離形層、弾性層、基層、内面コート層の4層複合構造のフィルムである。離型層は厚さ100μm以下、好ましくは20~70μmのフッ素樹脂材料である。フッ素樹脂層としては、例えばPTFE、PFAなどが挙げられる。弾性層は、熱容量を小さくするために、厚さとしては1000μm以下、好ましくは500μm以下のゴム材料である。例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。基層は厚さとして100μm以下、好ましくは50μm以下20μm以上の耐熱性材料である。例えば、SUS、ニッケルなどの金属フィルムやポリイミドなどの樹脂材料である。内面コート層は、耐熱性を持つ樹脂層である。例えば、ポリイミド、ポリイミドアミド、PEEK、PTFE、FEP、PFAなどが挙げられる。
加圧ステイ207は、ヒータホルダ205の裏面(セラミックヒータ203が配置された側と反対側の面)に押し当てることで、ヒータホルダ205に長手方向の強度を持たせ、且つ、ヒータホルダ205を矯正させるための部材である。
ヒータホルダ205は、定着フィルム204の内側に設けられている耐熱性・断熱性の部材である。ヒータホルダ205の材料としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、LCP樹脂等の絶縁性及び耐熱性の良い材料が用いられる。また、ヒータホルダ205は、上述したように、セラミックヒータ203を支持できるように嵌め込み溝205aが設けられ、定着フィルム204を介して、加圧ローラ201と圧接することでニップ部Nを形成する。
定着フランジ206は、加圧ステイ207の長手方向両端に嵌め込まれ、定着フィルム204の回転を案内すると共に、定着フィルム204の抜け出しを阻止している。また、定着フランジ206は、定着装置20の側板209(図3)に嵌合保持される。
加圧ローラ201は、芯金と、芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂などの耐熱性・弾性材層とで構成されており、表層に離型層を設けてある。離型層は厚さ100μm以下、好ましくは20~70μmのフッ素樹脂材料である。フッ素樹脂層としては、例えばPTFE、PFAなどが挙げられる。芯金の両端部には、PEEK、PPS、LCP等の耐熱性樹脂よりなる軸受部材210を装着することで、加圧ローラ201は、側板209に軸受部材210を介して回転自由に支持されている(図3)。
また、本実施形態の場合、図3に示すように、定着フィルム204(図2)を加圧部材211によって、加圧ローラ201に加圧することで、ニップ部Nを形成している。このような加圧部材211は、加圧弾性部材としてのバネ212を張架して、バネ212の弾性力により定着フランジ206を加圧ローラ201方向に加圧する(押し付ける)ものである。
[加圧解除機構]
加圧解除機構208は、加圧部材211を移動させて、ニップ部Nを加圧状態と加圧解除状態とに切り替えるものである。このような加圧解除機構208は、回転カム301と、加圧部材211に形成され、回転カム301のカム面と接触するカム接触面211aとを備える。回転カム301は、画像形成装置500に設けられた後述する駆動源としてのモータ302により駆動切替装置303を介して駆動される(図6(a)、(b))。そして、カム面を加圧部材211のカム接触面211aに接触、又は、離間させることで、ニップ部Nの加圧と加圧解除とを行う。
図3に示すように、ニップ部Nの加圧時において、回転カム301の位相は、加圧部材211のカム接触面211aと接触しないようにしている。これにより、加圧部材211がバネ212の弾性力により定着フランジ206を加圧して、ニップ部Nが加圧される。
一方、加圧解除時は、回転カム301の位相が図3の状態から略180°回転し、回転カム301が加圧部材211のカム接触面211aと接触して、加圧部材211をバネ212の弾性力に抗して押し上げる。これにより、ニップ部Nの圧が解除される。
このように構成される定着装置20は、図4に示すように、画像形成装置500の装置本体500Aに装着され、駆動切替装置303により駆動される。駆動切替装置303は、装置本体500Aに装着された定着装置20の長手方向片側に備えられ、定着装置20の装置本体500Aへの着脱に伴い、定着装置20に設けられた各駆動部としてのギアと接続又は分離する。
定着装置20は、図5の定着装置20の駆動切替装置303側の側面図に示すように、各駆動部としての加圧ローラギア304、カムギア305を備えている。回転体ギアとしての加圧ローラギア304は、ニップ部Nで記録材を搬送する部材としての加圧ローラ201に駆動を伝達する搬送駆動部である。具体的には、加圧ローラギア304は、加圧ローラ201の芯金に固定され、加圧ローラ201と共に回転する。
また、カムギア305は、加圧解除機構208の回転カム301に駆動を伝達する加圧解除駆動部である。具体的には、カムギア305は、回転カム301の回転軸に固定され、回転カム301と共に回転する。これら各ギア304、305は、次述する駆動切替装置303の各駆動経路によって、それぞれ駆動伝達可能に接続され、駆動切替装置303の動作に応じてそれぞれ駆動が伝達される。
[駆動切替装置]
次に、駆動切替装置303について、図6(a)、(b)を用いて説明する。図6(a)は、駆動切替装置303全体の斜視図である。図6(b)は、駆動切替装置303の駆動列が分かりやすいように駆動カバー306を省略し、定着装置20の加圧ローラギア304、及び、カムギア305とともに表している斜視図である。
駆動切替装置303は、駆動源としてのモータ302の駆動を加圧ローラ201(図2)に駆動伝達する駆動伝達機構としての第1駆動伝達部300Aと、モータ302の駆動を回転カム301(図3)に駆動伝達する第2駆動伝達部300Bとを備える。
モータ302は、正逆回転可能なDCブラシレスモータであり、駆動支持フレーム307の背面側に対して位置決め固定されている。モータ302は、不図示の電源から給電されることで回転駆動する。なお、モータ302は、DCブラシレスモータに限らず、正逆回転できるものであれば、例えばステッピングモータなど他のモータであっても良い。
第1駆動伝達部300Aは、モータギア302a、加圧ローラギア304、揺動ギア310を含む揺動ユニット308、揺動ギア加圧バネ325、一方向クラッチユニット100を備える。第2駆動伝達部300Bは、一方向クラッチユニット100の入力ギア101、アイドラギア311、カムギア305、振り子ギア312、アイドラギア313、314、315を備える。
まず、第1駆動伝達部300Aの各構成について説明する。駆動ギアとしてのモータギア302aは、モータ302により駆動されるギアである。回転体ギアとしての加圧ローラギア304は、上述したように加圧ローラ201と共に回転するギアである。揺動ユニット308は、揺動ギア310が加圧ローラギア304と噛み合う第1位置と、揺動ギア310と加圧ローラギア304との噛み合いが解除される第2位置との間で、揺動軸326を中心に揺動可能に配置されている。付勢手段としての揺動ギア加圧バネ325は、揺動ユニット308を第1位置に向けて付勢する。一方向クラッチユニット100は、モータギア302aと揺動ギア310との間の駆動伝達経路に設けられている。
モータ302及びモータギア302aは、駆動支持フレーム307に取り付けられ、一方向クラッチユニット100の入力ギア101に駆動が伝達されている。一方向クラッチユニット100から加圧ローラギア304への駆動伝達経路として、揺動ユニット308内に揺動中心ギア309と揺動ギア310を備える。具体的には、モータ302が正回転した場合には、モータギア302aと噛み合う入力ギア101が回転し、後述するように、入力ギア101の駆動が一方向クラッチユニット100を構成する出力ギア103に伝達される。出力ギア103は揺動中心ギア309と噛み合っており、揺動中心ギア309は揺動ギア310と噛み合っている。このため、出力ギア103の駆動は、揺動中心ギア309を介して揺動ギア310に伝達される。第1位置では揺動ギア310が加圧ローラギア304と噛み合っているので、加圧ローラギア304に駆動が伝達される。揺動ユニット308及び一方向クラッチユニット100の詳しい構成については後述する。
次に、第2駆動伝達部300Bの各構成について説明する。カムギア305は、上述したように回転カム301(図3)と共に回転するギアである。駆動伝達ユニットとしての振り子ギア312は、モータギア302aとカムギア305との間の駆動伝達経路に設けられている。振り子ギア312は、詳しくは後述するが、モータ302の正回転時にモータギア302aとカムギア305との間の駆動伝達を解除し、モータ302の逆回転時にモータギア302aの駆動をカムギア305に伝達する。アイドラギア311は、一方向クラッチユニット100の入力ギア101と振り子ギア312との間に配置され、入力ギア101の駆動を振り子ギア312に伝達する。
アイドラギア313、314、315は、振り子ギア312とカムギア305との間に配置され、振り子ギア312からカムギア305まで駆動を伝達する。一方向クラッチユニット100からカムギア305への駆動伝達経路には、順にアイドラギア311、振り子ギア312、アイドラギア313、314、315が配置される。上述の第1駆動伝達部300A及び第2駆動伝達部300Bを構成する各ギアは、駆動支持フレーム307と駆動カバー306により軸方向の両側が支持されている。
[一方向クラッチユニット]
一方向クラッチユニット100について、図7(a)ないし図8を用いて説明する。図7(a)、(b)に示すように、一方向クラッチユニット100は、入力ギア101、駆動伝達部材としての駆動伝達カム102、出力ギア103を有する。入力ギア101と出力ギア103は、軸104に嵌合されており、駆動伝達カム102は軸104にクリアランスを持って挿通されている。これら入力ギア101、出力ギア103及び駆動伝達カム102は、軸104に対してそれぞれ相対回転自在に支持されている。これにより、入力ギア101、出力ギア103及び駆動伝達カム102がそれぞれ互いに相対回転可能である。特に、駆動伝達カム102は、軸104に対して軸方向に移動可能なようにクリアランスを持って挿通されている。
入力ギア101は、環状リブにより凹形状に形成されており、環状リブの外周にはモータギア302a(図6(b))と噛み合うギア歯101bが形成されている。即ち、入力ギア101は、モータギア302aから駆動が入力されるギアである。なお、モータギア302aと入力ギア101との間にアイドラギアを配置し、アイドラギアを介して入力ギア101に駆動が入力されていても良い。
入力ギア101には、ギア歯101bと軸方向に隣接してアイドラギア311(図6(b))と噛み合うギア歯101cも形成されている。即ち、入力ギア101の回転は、アイドラギア311にも伝達される。
また、入力ギア101の環状リブに囲まれた空間SPには、入力側係合部として複数(図示の例では3つ)の係合リブ101aが設けられており、後述する駆動伝達カム102の入力側正転時係合部102bとの係合面となる。
出力ギア103は、環状リブにより凹形状に形成されており、環状リブの外周には揺動中心ギア309(図6(b))と噛み合うギア歯103cが形成されている。即ち、出力ギア103は、揺動中心ギア309を介して揺動ギア310に駆動を出力するギアである。なお、出力ギア103と揺動中心ギア309との間にアイドラギアを配置し、アイドラギアを介して揺動中心ギア309に駆動が出力されても良い。
前記出力ギア103は、一部に形成された円筒部としての環状リブの内周面103aを、後述する駆動伝達カム102に配置された弾性当接部102aが弾性的に当接する面としている。詳しくは後述するが、駆動伝達カム102は、弾性当接部102aの付勢力により、入力ギア101の回転方向の切り替えによる、駆動伝達カム102の移動方向の切り替えを可能にしている。
また、出力ギア103の環状リブの内周には、駆動伝達カム102の出力側正転時係合部102cと係合する、出力側係合部としてのカム部103bが設けられている。カム部103bは、周方向一方の面(端面)を軸方向に沿った平面部と、この平面部の軸方向頂点から周方向他方に軸方向の突出量が少なくなるように傾斜した傾斜面とからなるカム形状を周方向に複数配置することで形成されている。
駆動伝達カム102は、入力ギア101と出力ギア103との間に移動可能に配置されている。図8(a)に示すように、駆動伝達カム102の入力ギア101に対向する面には、入力ギア101側に突出する複数(図示の例では3つ)の突出部102gが設けられている。そして、突出部102gの周方向片側の端面を第1係合部としての入力側正転時係合部102b、突出部102gの周方向他側の端面を入力側逆転時係合部102eとしている。また、隣り合う突出部102gの間には、入力側正転時係合部102bに向かう程、入力ギア101側に傾斜した第3係合部としての入力側傾斜面102dを設けている。入力側傾斜面102dは、入力側正転時係合部102bと滑らかに接続している。
入力側正転時係合部102bは、モータ302(図6(a)、(b))の正回転時に入力ギア101の係合リブ101aに係合する。これにより、駆動伝達カム102は、モータ302の正回転時に入力ギア101の駆動が伝達される。また、入力側逆転時係合部102eは、モータ302の逆回転時に入力ギア101の係合リブ101aに係合する。これにより、駆動伝達カム102は、モータ302の逆回転時にも入力ギア101の駆動が伝達される。更に、入力側傾斜面102dは、係合リブ101aと係合可能である。入力側傾斜面102dは、後述するように、モータ302の回転が逆回転から正回転に切り替わった時に入力側傾斜面102dと係合リブ101aとの係合により駆動伝達カム102が出力ギア103に向かう方向(所定方向)に移動する。
図8(b)に示すように、駆動伝達カム102の出力ギア103に対向する面には、第2係合部としての出力側正転時係合部102cと、第4係合部としての出力側傾斜面102fとが設けられている。即ち、駆動伝達カム102の出力ギア103に対向する面には、出力ギア103のカム部103bと同様のカム形状を周方向に複数形成している。カム形状の数もカム部103bと同じとしている。但し、駆動伝達カム102と出力ギア103とが対向して配置された状態で、カム形状の向きが反対となるように形成されており、カム形状同士が互いに噛み合い可能となっている。
したがって、駆動伝達カム102のカム形状の周方向他方の面(端面)を軸方向に沿った平面部とし、この平面部を出力側正転時係合部102cとしている。また、この平面部の軸方向頂点から周方向一方に軸方向の突出量が少なくなるように傾斜した傾斜面を出力側傾斜面102fとしている。
このように出力側正転時係合部102cは、周方向に複数形成されており、それぞれ出力ギア103のカム部103bの平面部と係合可能である。また、出力側傾斜面102fは、複数の出力側正転時係合部102cの間に周方向一方から他方に向かって出力ギア103に向かう方向に傾斜した面であり、それぞれ出力ギア103のカム部103bの傾斜面と係合可能である。
出力側正転時係合部102cは、モータ302の正回転時に出力ギア103のカム部103bの平面部と係合する。これにより、駆動伝達カム102は、モータ302の正回転時に出力ギア103に駆動を伝達する。また、出力側傾斜面102fは、カム部103bの傾斜面と係合可能である。出力側傾斜面102fは、後述するように、モータ302の回転が正回転から逆回転に切り替わった時に出力側傾斜面102fとカム部103bとの係合により駆動伝達カム102が入力ギア101に向かう方向(所定方向と逆方向)に移動する。
また、駆動伝達カム102の外周には、周方向に等間隔に設けられた複数(図示の例では3つ)の弾性当接部102aが設けられている。複数の弾性当接部102aは、それぞれ先端部が駆動伝達カム102の径方向外方に突出している。そして、駆動伝達カム102を入力ギア101と出力ギア103との間に配置した状態で、複数の弾性当接部102aが出力ギア103の環状リブの内周面103aに弾性的に当接する。
駆動伝達カム102は、複数の弾性当接部102aが出力ギア103の内周面103aに弾性的に当接していることで、モータ302の回転が逆回転から正回転に切り替わった時に出力ギア103側に移動可能となる。仮に、弾性当接部102aがない場合、モータ302の回転が逆回転から正回転に切り替わった時に、駆動伝達カム102は、入力ギア101に連れ回って回転してしまい、係合リブ101aが入力側傾斜面102dと係合しない。係合リブ101aが入力側傾斜面102dと係合しなければ、駆動伝達カム102が出力ギア103に向かって移動する力が発生しない。駆動伝達カム102が出力ギア103に向かって移動しなければ、駆動伝達カム102と出力ギア103との間で動力が伝達されない。
一方、弾性当接部102aを備える構成では、モータ302の回転が逆回転から正回転に切り替わった時に弾性当接部102aと出力ギア103の内周面103aとの摩擦力により駆動伝達カム102が入力ギア101の回転に対してその場に留まろうとする。これにより、駆動伝達カム102と入力ギア101とが相対回転して、係合リブ101aが入力側傾斜面102dと係合し、駆動伝達カム102が出力ギア103に向かう力が発生する。そして、駆動伝達カム102と出力ギア103との間で動力伝達が可能となる。
[正逆回転時の一方向クラッチユニットの動作]
次に、正逆回転時の一方向クラッチユニット100の動作について、図9及び図10を用いて説明する。図9(a)、(b)は、モータ302の回転が逆回転から正回転に切り替わって、一方向クラッチユニット100が連結解除から連結になる過程を説明する図である。即ち、入力ギア101と出力ギア103との駆動伝達が解除された状態から駆動伝達される状態を示す図である。
連結解除状態においてモータ302が正回転して入力ギア101が図9(a)の矢印C方向に回転すると、入力ギア101に設けられた係合リブ101aが、駆動伝達カム102の入力側傾斜面102dを押す。そして、駆動伝達カム102が出力ギア103の方向(図9(b)の矢印方向)に付勢される。これにより、図9(b)に示すように入力ギア101の係合リブ101aと駆動伝達カム102の入力側正転時係合部102b(図7(a))が係合すると共に、出力ギア103のカム部103bと駆動伝達カム102の出力側正転時係合部102cが係合する。この結果、入力ギア101と出力ギア103との駆動連結が完了する。
次に、駆動連結解除に関して説明する。図10(a)、(b)は、モータ302の回転が正回転から逆回転に切り替わって、連結状態から連結解除になる過程を説明する図である。即ち、入力ギア101と出力ギア103との駆動伝達状態から駆動伝達が解除される状態を示す図である。
連結状態においてモータ302が逆回転して入力ギア101が図10(a)の矢印D方向に回転すると、入力ギア101に設けられた係合リブ101aが、駆動伝達カム102の入力側逆転時係合部102e(図7(a))を押す。そして、駆動伝達カム102を同方向(矢印D方向)に回転させる。矢印D方向に回転した駆動伝達カム102は、出力ギア103のカム部103bの傾斜面と駆動伝達カム102の出力側傾斜面102f(図8(b))との係合により、入力ギア101の方向(図10(b)の矢印方向)に移動する。この結果、駆動伝達カム102の出力側正転時係合部102cと出力ギア103のカム部103bとの係合がずれ、入力ギア101と出力ギア103との駆動連結解除の動作が完了する。
[振り子ギア]
次に、モータ302の駆動を回転カム301(図3)に駆動伝達する第2駆動伝達部300B(図6(b))が有する振り子ギア312の構成及び動作について、図11(a)ないし図13(b)を用いて説明する。なお、図12(a)、図13(a)は、主に振り子ギア312の位置について示している。図12(b)、図13(b)では突起部319cと駆動カバー306に設けられた規制溝317との位置関係を示している。
振り子ギア312は、図11(a)に示すように、ギア部材318と、ホルダ部材319と、弾性部材320で構成されている。ギア部材318は、円筒状に形成され、外周面にギア歯が形成されており、図12(a)に示すように、アイドラギア311、313と噛み合う。ホルダ部材319は、複数の円形のリブ319aがギア部材318の内周面318aに挿入されることで内嵌され、ギア部材318を回転自在に支持する。
弾性部材320は、板バネにより構成され、図11(b)に示すように、ホルダ部材319に固定すると共に、ギア部材318の大径部の内周面318bに矢印F方向に弾性的に当接している。そして、ギア部材318を揺動させる際にギア部材318に回転負荷を与えることで、振り子ギア312に揺動力を発生させる。
また、ホルダ部材319には、ギア部材318の軸方向に貫通し、この軸方向に直交する方向に長い長孔部319bが形成されている。そして、図6(b)、図12(a)、図13(a)に示すように、長孔部319bに駆動支持フレーム307に突設された軸321を通すことで、ホルダ部材319が駆動支持フレーム307に対して移動可能に保持される。したがって、振り子ギア312は、軸321が長孔部319b内で移動可能な範囲で揺動可能である。
モータ302が逆回転し、モータギア302aから入力ギア101(図6(b))を介してアイドラギア311が、図12(a)の矢印G方向に回転すると、このアイドラギア311と噛み合う振り子ギア312内のギア部材318に回転駆動力が伝達される。振り子ギア312は、弾性部材320による回転負荷とギア部材318がアイドラギア311から受ける駆動力により、図13(a)の位置に振り子ギア312があっても、図12(a)の位置に移動する。そして、ギア部材318とアイドラギア313とが噛み合い、アイドラギア311からの駆動が振り子ギア312を介してアイドラギア313に伝達される。この結果、アイドラギア313の駆動が、図6(b)に示したように、アイドラギア314、315を介してカムギア305に伝達され、回転カム301が回転する。
また、ホルダ部材319には、突起部319cが備えられていて、図12(b)に示すように、駆動カバー306に形成された規制溝317に突起部319cが侵入するようにしている。この規制溝317は、突起部319cとの係合により振り子ギア312の揺動範囲を規制するものである。振り子ギア312は、突起部319cが規制溝317の一部に突き当たることで、それ以上揺動しなくなる。その後は、ギア部材318は、その位置で、弾性部材320の回転負荷に拘らず、ホルダ部材319に設けられたリブ319aを回転軸として回転する。
一方、モータ302が正回転し、モータギア302aから入力ギア101(図6(b))を介してアイドラギア311が、図13(a)の矢印H方向に回転すると、振り子ギア312は図12(a)に示す位置から図13(a)に示す位置に移動する。これにより、振り子ギア312にギア部材318とアイドラギア313との噛み合いが外れ、振り子ギア312からアイドラギア313への駆動伝達が解除される。その時の突起部319cと規制溝317の位置関係は、図13(b)に示すようになり、この位置で振り子ギア312の移動が規制されている。
以上のように、本実施形態では、一方向クラッチユニット100と、振り子ギア312により、モータ302の正逆回転によって加圧ローラ201の駆動と加圧解除機構208の駆動を切り替えている。
[揺動ユニット]
次に、モータ302の正回転の駆動を一方向クラッチユニット100から加圧ローラギア304(図6(b))まで伝達する揺動ユニット308について説明する。まず、揺動ユニット308がなく、ジャム処理時に加圧ローラ201の加圧ローラギア304と一方向クラッチユニット100とが接続されている場合について説明する。
定着装置20のニップ部N(図2)に記録材がジャムしてしまった場合、例えば、加圧解除機構208(図3)によりニップ部Nの加圧を解除してニップ部Nから記録材を引き抜くジャム処理を行う。但し、このようにニップ部Nの加圧を解除している状態であっても、ジャム処理のために記録材を引っ張ることで、記録材が加圧ローラ201を回転させてしまうことがある。
この際、記録材の引抜方向が搬送方向と逆の場合、加圧ローラ201から一方向クラッチユニット100(図6(b))に向けて通常の定着時の回転と逆方向の回転が伝達される。この時のモータ302からの駆動伝達経路は、加圧解除機構208のカムギア305側となっており、モータ302の正回転の駆動が入力ギア101から出力ギア103に伝達されなくなっている。但し、加圧ローラ201側から逆方向の回転が出力ギア103に入力されることで、入力ギア101が出力ギア103に対して相対的に正回転時と同じ方向に回転することになり、入力ギア101と出力ギア103との間で動力が伝達されてしまう。すると、入力ギア101は、カムギア305と駆動伝達可能な状態であるため、記録材の引き抜きによる加圧ローラ201の駆動がカムギア305まで伝達されてしまう。これにより、ジャム処理時にニップ部Nが加圧状態に戻ってジャム処理が行いにくくなる可能性がある。
また、ジャム処理時の記録材の引抜方向が搬送方向と同じであっても、加圧ローラギア304に接続されるギア列が多いと、その分、駆動負荷となるため、記録材が引き抜き難くなる。したがって、本実施形態では、ジャム処理時に開閉扉25を開けた際に、一方向クラッチユニット100から加圧ローラギア304に駆動を伝達するための揺動ギア310を加圧ローラギア304から離して、駆動経路を遮断するようにしている。
次に、揺動ユニット308の構成及び動作について、図6(a)、(b)を参照しつつ図14(a)、(b)を用いて説明する。揺動ユニット308は、揺動中心ギア309、揺動ギア310、揺動コロ322、それらを保持する揺動支持板323を備える。また、開閉扉25の開閉動作に応じて揺動ユニット308を揺動させるために、揺動ユニット308と開閉扉25との間には、スライド部材324及び揺動ギア加圧バネ325が配置されている。
揺動中心ギア309は、揺動軸326を回転軸として支持されており、出力ギア103と噛み合っている。揺動ギア310は、揺動中心ギア309と加圧ローラギア304との間に配置されている。揺動ギア310は、揺動ユニット308の揺動位置に関わらず揺動中心ギア309と噛み合っているが、加圧ローラギア304とは、上述したように第1位置で噛み合い、第2位置で噛み合いが外れるようになっている。
揺動コロ322は、揺動中心ギア309と同心に設けられており、第1位置において加圧ローラギア304と同心に設けられた円筒部304aと当接する。このように、第1位置で揺動コロ322と円筒部304aが接触することにより、揺動ギア310と加圧ローラギア304との軸間距離を一定に保つようにしている。なお、第2位置においては、揺動コロ322も円筒部304aから離間する。
スライド部材324は、図6(a)の駆動切替装置303の斜視図で示されるように駆動カバー306によってスライド移動可能に保持されている。揺動ギア加圧バネ325は、揺動支持板323とスライド部材324の間に保持されており、スライド部材324の移動に応じて揺動支持板323を加圧する。揺動ユニット308は、スライド部材先端部324aが開閉扉25の開閉動作によってスライド移動することによって、図14(a)の矢印X方向、又は、図14(b)の矢印Y方向に揺動軸326を中心に回転移動する。即ち、揺動ギア加圧バネ325は、開閉扉25が閉位置に位置する状態で揺動ユニット308を第1位置に向けて付勢し、開閉扉25が開位置に位置する状態で揺動ユニット308への付勢力を解除する。
図14(a)は、開閉扉25が開いており、スライド部材先端部324aが開閉扉25に押されていない状態を示す図である。この時、揺動ユニット308は、揺動ギア加圧バネ325の付勢力が解除された状態である。このため、揺動ユニット308は、自重w1によって生じる揺動軸326まわりのモーメントWによって、図14(a)の矢印X方向に揺動軸326を中心に回転移動し、加圧ローラギア304と揺動ギア310(図6(b))が離れる。即ち、揺動ギア310は、加圧ローラギア304との噛み合いが解除される第2位置に位置する。これにより、一方向クラッチユニット100から加圧ローラギア304への駆動伝達経路が遮断される。
一方、図14(b)は、開閉扉25が閉じており、スライド部材先端部324aが開閉扉25に押されている状態を示す図である。スライド部材先端部324aは、開閉扉25に押されることにより移動し、揺動ギア加圧バネ325を介して揺動ユニット308を加圧する。揺動ユニット308には、揺動ギア加圧バネ325によって生じる力tによって揺動軸326まわりのモーメントTが働く。モーメントTはモーメントWと反対方向となる。T>Wであるため、揺動ユニット308は、図14(b)の矢印Y方向に揺動軸326を中心に回転移動し、揺動ギア310と加圧ローラギア304が噛み合う。即ち、揺動ギア310は、揺動ギア加圧バネ325により付勢されて加圧ローラギア304と噛み合う第1位置に位置する。これにより、一方向クラッチユニット100から加圧ローラギア304への駆動伝達が可能となる。
このように揺動ユニット308の自重w1により生じる揺動軸326を中心としたモーメントをW、揺動ギア加圧バネ325の付勢力により揺動ユニット308を、揺動軸326を中心に揺動させるモーメントをTとする。この場合、モータ302の駆動がなければ、T>Wであれば、揺動ギア加圧バネ325の付勢力により揺動ギア310を加圧ローラギア304に噛み合わせることができる。但し、開閉扉25を閉じた状態で、定着装置20のニップ部Nの加圧を解除すべく、モータ302を逆回転させる場合がある。
上述したように、一方向クラッチユニット100の駆動伝達カム102は、出力ギア103の内周面103aに弾性的に当接する複数の弾性当接部102aを有する(図7(b)など)。弾性当接部102aは、モータ302の正逆回転に関わらず、常に出力ギア103の内周面103aに弾性的に当接している。したがって、図15に示すように、出力ギア103の内周面103aには、弾性当接部102aから付勢力N1、N2、N3が加えられている。このため、モータ302が逆回転して入力ギア101と出力ギア103と駆動伝達が実質的に解除されるような場合であっても、入力ギア101と共に回転する駆動伝達カム102から出力ギア103に摩擦力f1、f2、f3が作用する。即ち、モータ302の逆回転時に弾性当接部102aが出力ギア103の内周面103aに弾性的に当接することで、出力ギア103が入力ギア101と連れ回って回転してしまう場合がある。
このように出力ギア103が回転すると、その回転が揺動ギア310まで伝達し、図14(b)に示すように、加圧ローラギア304との噛み合いにより揺動ギア310に力fが発生する。具体的には、モータ302の逆回転時には、入力ギア101が矢印E方向に回転し、出力ギア103が上述のように同方向に連れ回って回転する。そして、この回転が揺動ギア310に伝達すると、加圧ローラギア304から離れる方向の力fが発生する。そして、この力fにより揺動ユニット308に作用する揺動軸326を中心としたモーメントをVとした場合、このモーメントVを考慮して揺動ギア加圧バネ325の付勢力を設定することが求められる。
即ち、加圧解除動作時において、駆動伝達カム102と出力ギア103の摩擦力f1、f2、f3によって、加圧ローラギア304と揺動ギア310との間に力fが生じる。この力fによって、揺動ユニット308には、モーメントVが生じる。モーメントVは、モーメントTと反対方向になる。
ここで、T<W+Vの関係の場合、モーメントVが発生するときに揺動ギア310が加圧ローラギア304から離れてしまう。そして、揺動ギア310が離れる方向に移動することで揺動ギア加圧バネ325によるスライド部材324への加圧力が大きくなり、T>W+Vの関係になると、再び揺動ギア310と加圧ローラギア304の軸間が縮まって接触する。すると、再度、T<W+Vの関係となり、揺動ギア310が加圧ローラギア304から離れてしまう。このように、加圧解除動作時にモータ302が逆回転することで、揺動ギア310が加圧ローラギア304から離れたり、噛み合ったりして、ギアの歯飛び音と呼ばれる異音が発生する。
そこで、本実施形態では、揺動ギア310と加圧ローラギア304が噛み合っている状態において、T>W+Vを満たすようにしている。例えば、これを満たすように、揺動ギア加圧バネ325の付勢力を設定している。これにより、上述の異音の発生を抑制するようにしている。
なお、モーメントTの値を大きくすれば、上述のように異音の発生を抑制できるが、モーメントTを大きくすると、開閉扉25を閉める動作時に、スライド部材先端部324aを押す力を大きくすることになる。よって、モーメントTを大きくしてしまうと開閉扉25を閉める際の操作力が大きくなってしまう。したがって、モーメントTは、例えば、「W+V」の2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以下とする。
本実施形態では、揺動ユニット308の自重w1によるモーメントWを5N・mm、一方向クラッチユニット100内の摩擦力によって生じる加圧ローラギア304と揺動ギア310との間に生じる力fによるモーメントVを50N・mmに設定した。そして、揺動ギア加圧バネ325の加圧力tによるモーメントTを60N・mmに設定した。これにより、T>W+Vが成り立つようにし、且つ、モーメントTが過度に大きくならないようにしている。
本実施形態では、上述のようにモータ302の正逆回転によって加圧ローラ201の駆動と加圧解除機構208の駆動を切り替える駆動切替装置303を実現している。また、ジャム処理の際は、開閉扉25を開くことによって加圧ローラギア304と揺動ギア310の駆動伝達が遮断されるため、ジャム処理時の加圧ローラ201の回転によって駆動が加圧解除機構208にまで伝達してしまうことがない。また、T>W+Vとなるように揺動ギア加圧バネ325の加圧力を設定することで、揺動ギア310と加圧ローラギア304間で生じる歯飛び音を防止することができる。
以上の構成により、比較的少ない部品点数、且つ、簡易的な部品構成で、一つの駆動源による記録材の搬送とニップ部Nの加圧解除を可能にするとともに、定着装置20でのジャム処理性を向上することが可能となる。
[他の実施形態]
上述の説明では、弾性当接部102aを一方の部材としての駆動伝達カム102に設け、他方の部材としての出力ギア103に弾性的に当接させた構成について説明した。但し、弾性当接部は、出力ギアに設け、駆動伝達部材としての駆動伝達カムに弾性的に当接させる構成であっても良い。この場合でも、モータ302の逆回転時に出力ギアと駆動伝達カムとの間に摩擦力が発生し、出力ギアが入力ギアに連れ回って回転し、同様の問題が発生し得る。
また、上述の説明では、定着装置として、フィルム加熱方式の構成を説明した。但し、定着装置は、第1回転体、第2回転体が、それぞれローラであっても、複数のローラにより張架される無端状のベルトであっても良いし、一方の回転体がローラで他方の回転体がこのようなベルトであっても良い。