JP2017218682A - 血球凝集性繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】経血との接触で直ちに血球の凝集作用が発揮され、また経血と繰り返し接触しても血球の凝集作用が低下しにくい血球凝集性繊維を提供すること。【解決手段】本発明の血球凝集性繊維は、繊維表面に血球凝集剤を有し、繊維表面のフラクタル次元が1.0170以上である。前記繊維が親水性繊維であることが好適である。前記繊維がフィブリル化していることも好適である。前記繊維の叩解度が810ml以下であることも好適である。【選択図】図3

Description

本発明は、血球の凝集作用を有する繊維に関する。
カチオン性の高分子材料を吸収性物品に適用して、該吸収性物品の諸性能を向上させる技術が知られている。例えば特許文献1には、ポリカチオンからなる血液ゲル化剤及び液体吸収性材料を含む衛生ナプキンが記載されている。特許文献2には、綿や木材パルプ等のセルロース材料と、抗菌カチオン性多価電解質とを混合して、両者の間に非浸出可能な結合を形成した抗菌物質の製造方法が記載されている。この抗菌物質は、生理用ナプキンやタンポンに用いられる。抗菌カチオン性多価電解質としては、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが用いられる。
特開昭57−153648号公報 特開2009−506056号公報
特許文献1及び2に記載の技術において、液体吸収性材料の一つである繊維の表面にカチオン性の高分子材料を施した場合、該繊維が経血と接触したときに、該高分子材料の溶解性と繊維表面に由来する表面積が効果発現の律速段階となり、瞬時に高い効果を発現できない場合がある。
したがって本発明の課題は、経血を処理する材料の改良にあり、更に詳しくは経血との接触で直ちに剤の機能が発揮され、また経血との繰り返しの接触によっても剤の機能が低下しにくい繊維及びそれを含む物品を提供することにある。
本発明は、繊維表面に血球凝集剤を有し、繊維表面のフラクタル次元が1.0170以上である血球凝集性繊維を提供するものである。
また本発明は、血球凝集剤を含み、且つ塗布時の粘度が100mPa・s以上である溶液が含浸された基材と、乾燥した原料繊維とを接触させ、その後に、該基材から該原料繊維を剥離させる工程を含む、血球凝集性繊維の製造方法を提供するものである。
また本発明は、上述した血球凝集性繊維を含む繊維シート及び吸収性物品を提供するものである。
更に本発明は、血球凝集剤を含む溶液を、原料繊維に吹き付ける工程を含む、血球凝集性繊維の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、経血との接触で直ちに血球の凝集作用が発揮され、また経血と繰り返し接触しても血球の凝集作用が低下しにくい血球凝集性繊維が提供される。
図1は、本発明の血球凝集性繊維を含む吸収性物品の一実施形態を示す平面図である。 図2(a)及び図2(b)は、従来の吸収性物品における経血の吸収機構を示す模式図である。 図3は、本発明の血球凝集性繊維を含む吸収性物品における経血の吸収機構を示す模式図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の血球凝集性繊維は、血液と接触することによって血液中の赤血球を凝集させる作用を有する。ここで言う血液とは一般にはヒトの血液のことであるが、これに制限されない。血球凝集性繊維は、繊維に血球凝集剤が施されてなるものである。
本発明の血球凝集性繊維に用いられる繊維は、太さに対して長さが大きい、細長い形状を有するものである。太さとは、繊維の断面が円である場合には円の直径のことであり、断面が円以外の形状である場合には、当該断面の面積と同じ面積を有する円の直径のことである。繊維の長さは、太さに対して一般に5倍以上であり、上限値に制限はない。
本発明の血球凝集性繊維に用いられる繊維の太さは、血球凝集性繊維の具体的な用途に応じて適宜選択することができる。血球凝集性繊維を例えば生理用ナプキン等の経血吸収性物品に用いる場合には、前記繊維の太さは、繊維シートとして成形可能であり吸収性物品として耐え得る強度を持たせる観点から、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、10μm以上であることが一層好ましい。また、吸収性物品に用いたときに不快に感じない程度の風合いを持つという観点から1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、200μm以下であることが一層好ましい。前記繊維の太さは、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、1μm以上500μm以下であることが更に好ましく、10μm以上200μm以下であることが一層好ましい。なお、本発明においては、血球凝集性繊維の太さと、これを構成する繊維の太さとは実質的に同一視することができる。したがって、血球凝集性繊維の太さも上述のとおりの範囲であることが好ましい。また、前記の繊維シートとは、合成繊維からなる不織布や、紙も包含される概念である。
血球凝集性繊維の太さ、及びこれを構成する繊維の太さは、走査型電子顕微鏡による拡大観察で測定される。繊維の長手方向に対して直交する方向に沿った線分を繊維が横切る長さを繊維の太さとする。測定は、同一の又は異なる繊維における10箇所以上の位置で行い、その算出平均値をもって繊維の太さ、すなわち繊維径とする。パルプ繊維のように繊維の太さが長さ方向に沿って一定でない場合には、繊維の太さとは、繊維の断面を横切る線分のうち、最も長い一辺を長辺とし、最も短い一辺を短辺した場合の、長辺のことを言う。
本発明の血球凝集性繊維は、繊維に施されている血球凝集剤の存在状態に特徴の一つを有する。詳細には、血球凝集剤は繊維の表面に、不規則な厚みでもって存在している。つまり、血球凝集剤は、繊維の表面において、厚みが大きい部分と、厚みが小さい部分とが不規則に存在している。その結果、血球凝集剤は繊維の表面に、凹凸が形成されるように存在している。
血球凝集剤は、繊維の表面が露出することなく、繊維の表面の全域に存在していてもよい。あるいは血球凝集剤は、繊維の表面が一部露出するように不連続に繊維の表面に存在していてもよい。血球凝集剤は、少なくとも繊維の表面に存在していればよく、付加的に繊維の内部に存在していることは妨げられない。
血球凝集剤が繊維の表面に、不規則な厚みでもって存在していることには以下に述べる利点がある。すなわち、血球凝集性繊維が血液と接触することで、該血球凝集剤が血液中の赤血球を凝集させる。この場合、血球凝集剤が繊維の表面に均一な厚みでもって存在していると、該血球凝集剤と血液との接触面積を大きく確保することには限りがあり、血球凝集剤が血液中に瞬時に且つ十分な量で溶出することが容易でない。また、血球凝集剤が繊維の表面に均一な厚みでもって存在していると、繰り返しの血液との接触後には血球凝集剤のほとんどが流失してしまい徐放性が発揮され難い。これに対して、血球凝集剤が繊維の表面に、不規則な厚みでもって存在していると、繊維表面における血球凝集剤の表面積が大きくなり、そのことに起因して該血球凝集剤と血液との接触面積を大きく確保することが容易となり、血球凝集剤が血液中に瞬時に且つ十分な量で溶出する。また、繰り返し血液と接触しても血球の凝集効果が持続する。つまり徐放性がある。このように、本発明の血球凝集性繊維は、血球凝集剤の血液への溶出性が向上し、且つ徐放性を有するものである。したがって本発明の血球凝集剤は、血球の凝集作用が瞬時に発現し、且つその作用が長時間にわたって持続するものである。
繊維の表面における血球凝集剤の存在状態はフラクタル次元を尺度として定量的に表示することができる。フラクタル次元が高いほど、血球凝集剤は繊維の表面における表面積が大きくなる。フラクタル次元とは、フラクタル図面の複雑さを表す概念である。ある図形全体が1/Nに縮小した相似形のミニチュアM個によって構成されているとき、この図形のフラクタル次元DはD=log10M/log10Nで定義される。
本発明においては、フラクタル次元の算出にボックスカウント法を用いている。ボックスカウント法は、対象となる図形を複数のボックスに区切り、フラクタル図形が含まれるボックスの数を数えてフラクタル次元を計算する方法である。フラクタル次元をDとし、ボックスの幅をdとし、フラクタル図形を含むボックスの数をN(d)とすると、N(d)∝d−Dの関係が成立することが知られている。そして、種々のdの値についてN(d)をカウントし、log10dとlog10N(d)とをグラフにプロットして一次回帰計算をすると、その傾きが、ボックスカウント法で計算されたフラクタル次元Dとなる。
本発明の血球凝集性繊維においては、繊維表面のフラクタル次元が1.0170以上であることで優れた効果が奏される。本発明者の検討の結果、この変曲点以降のフラクタル次元において効果が認められることが見出された。血球凝集剤の表面積を十分に高くする観点から、上述したフラクタル次元が、繊維表面において1.0170以上であり、1.0900以上であることが好ましく、1.1500以上であることが更に好ましい。また、上述したフラクタル次元は、大きければ大きいほど好ましいが、投影像の輪郭線をフラクタル図形と見なし、この輪郭像が2次元であることから、上限は2.0000以下である。
血球凝集性繊維のフラクタル次元を求めるときには、該血球凝集性繊維をその長手方向と直交する方向から見た拡大投影像を取得する。取得された投影像の上下の輪郭線をフラクタル図形と見なして、上述の方法でフラクタル次元を求める。具体的には、以下の手順を行う。まず、繊維の横断面を走査型電子顕微鏡で撮像する。撮像は倍率800倍で行い、繊維横断面の投影像が撮像視野に入るようにする。このとき、像のコントラストが強くなるように撮像することが好ましい。そして断面像を画像処理ソフトウエアである「ImageJ」で画像処理する。画像処理は以下の(1)−(4)の順で行う。
(1)断面像の二値化。
(2)二値化した像をアウトラインに変換。
(3)注目領域の切り出し。切り出しの範囲は、Width:250ピクセル、Height:500ピクセルとする。
(4)フラクタル次元の算出。
血球凝集性繊維に用いられる繊維としては、天然繊維及び合成繊維のいずれを用いてもよい。天然繊維としては、例えば植物由来のセルロース繊維、及びレーヨン繊維などが挙げられる。合成繊維としては、例えば繊維形成能を有する熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられる。繊維形成能を有する熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの各種のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの各種のポリエステル繊維、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチルなどの各種のアクリル系繊維、及びポリスチレンやポリ塩化ビニルなどの各種のビニル系繊維が挙げられる。これらの繊維は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然繊維及び合成繊維のいずれを用いる場合であっても、親水性繊維を用いることが、繊維の表面に血球凝集剤を容易に付着させ得ることから好ましい。繊維の表面が疎水的である場合は、親水化剤等を処理してもよい。特に親水性繊維であって、且つ繊維自体の表面が複雑な形状をしており表面積が大きいことから、セルロース繊維を用いることが好ましい。
繊維としてセルロース繊維を用いる場合には、叩解の程度の高いものを用いることが、繊維の表面積が一層大きくなることから好ましい。叩解とは、水の存在下でパルプ等のセルロース繊維を機械的に叩き、磨砕する操作である。セルロース繊維を機械的に磨砕して擦り潰すと、膨潤してフィブリル化する。フィブリル化とは、セルロース繊維が細かい枝状に分岐する現象である。セルロース繊維がフィブリル化することで、繊維の表面積が大きくなる。
セルロース繊維の叩解の程度は叩解度(濾水度とも呼ばれる)で定量的に表すことができる。叩解度で表したセルロース繊維の叩解の程度は、繊維の表面積を増大させる観点から、600ml以下であることが更に好ましく、400ml以下であることが一層好ましい。叩解度の下限値は繊維長を維持し、加工性を保つ観点から、100ml以上であることが好ましく、200ml以上であることが更に好ましく、300ml以上であることが一層好ましい。叩解度は、100ml以上780ml以下であることが好ましく、200ml以上600ml以下であることが更に好ましく、300ml以上400ml以下であることが一層好ましい。なお、繊維に血球凝集剤を施した後でも繊維の叩解度に実質的な変化はないので、血球凝集性繊維の好ましい叩解度の値は前記の範囲内となる。また、合成繊維の場合でも、同様の方法を用いて測定した濾水度を叩解度と定義する。叩解度は日本工業規格JIS P8121・2:2012パルプ−ろ水度試験方法−第2部:カナダ標準ろ水度法に従って測定することができる。
本発明の血球凝集性繊維に用いられる血球凝集剤としては、血液中の赤血球を凝集させ得る作用を有するものが用いられる。「血球凝集剤」とは、血液中の赤血球を凝集させる作用を有し、凝集した凝集塊と血漿成分が分離されるよう作用するものである。血球凝集剤によって凝集した赤血球は凝集塊となる。血球凝集剤としては、例えばアクリルアミドコポリマーやポリリシンを初めとする、強く正帯電した線形カチオン性ポリマーを用いることができる。あるいは、ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシドのトリブロックコポリマーを用いることができる。そのようなトリブロックコポリマーの例としてはBASF社から入手可能な「プルロニックF−98」が挙げられる。
本発明者の知見によれば、血球凝集剤としてはカチオン性ポリマーが有用である。その理由は次のとおりである。赤血球はその表面に赤血球膜を有する。赤血球膜は、2層構造を有している。この2層構造は、下層である赤血球膜骨格と上層である脂質皮膜からなる。赤血球の表面に露出している脂質皮膜には、グリコホリンと呼ばれるタンパク質が含まれている。グリコホリンはその末端にシアル酸と呼ばれるアニオン電荷を帯びた糖が結合した糖鎖を有している。その結果、赤血球はアニオン電荷を帯びたコロイド粒子として扱うことができる。コロイド粒子の凝集には一般に凝集剤が用いられる。赤血球がアニオン性のコロイド粒子であることを考慮すると、凝集剤としてはカチオン性の物質を用いることが、赤血球の電気二重層を中和する点から有利である。また凝集剤が高分子鎖を有していると、赤血球の表面に吸着した凝集剤の高分子鎖どうしの絡み合いが生じやすくなり、そのことに起因して赤血球の凝集が促進される。更に、凝集剤が官能基を有している場合には、該官能基間の相互作用によっても赤血球の凝集が促進されるので好ましい。血球凝集剤(カチオン性ポリマー)によれば、以上の作用機序によって経血中に赤血球の凝集塊を生成することが可能になる。
本発明で用いられる血球凝集剤は、擬似血液に、測定サンプルを1000ppm添加した際に、血液の流動性が維持された状態で、少なくとも2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成する性質を有するものである。
前記の「血液の流動性が維持された状態」は、測定サンプル剤が1000ppm添加された擬似血液10gをスクリュー管瓶(株式会社マルエム製 品番「スクリュー管No.4」、口内径14.5mm、胴径27mm、全長55mm)に入れ、該擬似血液を入れたスクリュー管瓶を180度反転した際に、5秒以内で80%以上の該擬似血液が流れ落ちる状態を意味する。擬似血液とは、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB−10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、60秒間)を用いて測定した粘度が25℃で8mPa・sになるように脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製)の血球・血漿比率を調整したものである。
前記の「2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成」しているか否かは、次のようにして判断される。すなわち、測定サンプル剤が1000ppm添加された擬似血液を、生理食塩水で4000倍に希釈し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製 型番:LA−950V2、測定条件:フロー式セル測定、循環速度1、超音波なし)を用いたレーザー回折散乱法によって、温度25℃にて測定した体積粒径平均のメジアン径が、2個以上の血球が凝集した凝集塊のサイズに相当する10μm以上である場合に、「2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成」していると判断する。
本発明で用いられる血球凝集剤は、前記の性質に当てはまる単一の化合物若しくは前記の性質に当てはまる単一の化合物の複数の組み合わせ、又は複数の化合物の組み合わせによって前記の性質を満たす(赤血球の凝集を発現し得る)剤である。つまり血球凝集剤とは、あくまで前記定義によるところの血球凝集作用があるものに限定した剤のことである。したがって、血球凝集剤に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、それを血球凝集剤組成物と表現し、血球凝集剤と区別する。ここで言う「単一の化合物」とは、同じ組成式を有するが、繰り返し単位数が異なることにより、分子量が異なる化合物を含める概念である。
本発明で用いる血球凝集剤としては、カチオン性ポリマーを含むものが好適なものとして挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、例えばカチオン化セルロースや、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン等のカチオン化デンプンなどが挙げられる。また、本発明で用いられる血球凝集剤は、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含むこともできる。本発明において「第4級アンモニウム塩」とは、窒素原子の位置にプラス一価の電荷を有している化合物、又は中和によって窒素原子の位置にプラス一価の電荷を生じさせる化合物を包含し、その具体例としては、第4級アンモニウムカチオンの塩、第3級アミンの中和塩、及び水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンが挙げられる。以下に述べる「第4級アンモニウム部位」も同様の意味で用いられ、水中で正に帯電する部位である。また、本発明において「共重合物」とは、2種以上の重合性単量体の共重合によって得られた重合物のことであり、二元系共重合物及び三元系以上の共重合物の双方を包含する。本発明において「重縮合物」とは、2種以上の単量体からなる縮合物を重合することで得られた重縮合物である。
本発明で用いる血球凝集剤が、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び/又は第4級アンモニウム塩共重合物及び/又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含む場合、該血球凝集剤は、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物のうちのいずれか1種を含んでいてもよく、あるいは任意の2種以上の組み合わせを含んでいてもよい。また第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。同様に、第4級アンモニウム塩共重合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に同様に、第4級アンモニウム塩重縮合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前述した各種のカチオン性ポリマーのうち、特に、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を用いることが、赤血球への吸着性の点から好ましい。以下の説明においては、簡便のため、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物を総称して「第4級アンモニウム塩ポリマー」と言う。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を1種用い、これを重合することで得られたものである。一方、第4級アンモニウム塩共重合物は、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を少なくとも1種用い、必要に応じ第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を少なくとも1種用い、これらを共重合することで得られたものである。すなわち第4級アンモニウム塩共重合物は、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を2種以上用い、これらを共重合させて得られたものであるか、又は第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い、これらを共重合させて得られたものである。第4級アンモニウム塩共重合物は、ランダム共重合物でもよく、交互共重合物でもよく、ブロック共重合物でもよく、あるいはグラフト共重合物でもよい。第4級アンモニウム塩重縮合物は、第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それら縮合物を重合することで得られたものである。すなわち第4級アンモニウム塩重縮合物は、第4級アンモニウム部位を有する単量体2種以上の縮合物を用い、これを重合させて得られたものであるか、又は、第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない単量体1種以上からなる縮合物を用い、これを縮重合させて得られたものである。
第4級アンモニウム塩ポリマーは、第4級アンモニウム部位を有するカチオン性のポリマーである。第4級アンモニウム部位は、アルキル化剤を用いた第3級アミンの第4級アンモニウム化によって生成させることができる。あるいは第3級アミンを酸若しくは水に溶解させ、中和で生じさせることができる。あるいは縮合反応を含む求核反応による第4級アンモニウム化によって生成させることができる。アルキル化剤としては、例えばハロゲン化アルキルや、硫酸ジメチル及び硫酸ジエチルなどの硫酸ジアルキルが挙げられる。これらのアルキル化剤のうち、硫酸ジアルキルを用いると、ハロゲン化アルキルを用いた場合に起こり得る腐食の問題が生じないので好ましい。酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、リン酸、フルオロスルホン酸、ホウ酸、クロム酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、グルコン酸、ギ酸、アスコルビン酸、ヒアルロン酸などが挙げられる。特に、アルキル化剤によって第3級アミン部位を第4級アンモニウム化した第4級アンモニウム塩ポリマーを用いると、赤血球の電気二重層を確実に中和できるので好ましい。縮合反応を含む求核反応による第4級アンモニウム化は、ジメチルアミンとエピクロルヒドリンの開環重縮合反応、ジシアンジアミドとジエチレントリアミンの環化反応のようにして生じさせることができる。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは、その分子量が2000以上であることが好ましく、1万以上であることが更に好ましく、3万以上であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以上であることによって、赤血球間でのカチオン性ポリマーどうしの絡み合いや、赤血球間でのカチオン性ポリマーの架橋が十分に生じる。分子量の上限値は1000万以下であることが好ましく、500万以下であることが更に好ましく、300万以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以下であることによって、カチオン性ポリマーが経血中へ良好に溶解する。カチオン性ポリマーの分子量は、2000以上1000万以下であることが好ましく、2000以上500万以下であることが更に好ましく、2000以上300万以下であることが一層好ましく、1万以上300万以下であることが更に一層好ましく、3万以上300万以下であることが特に好ましい。本発明に言う分子量とは、重量平均分子量のことである。カチオン性ポリマーの分子量は、その重合条件を適切に選択することで制御することができる。カチオン性ポリマーの分子量は、東ソー株式会社製のHLC−8320GPCを用いて測定することができる。具体的な測定条件は次のとおりである。
カラムとしては、東ソー株式会社製のガードカラムαと分析カラムα−Mを直列でつないだものを、カラム温度:40℃で用いる。検出器は、RI(屈折率)を用いる。測定サンプルとしては、溶離液1mLに対して1mgの測定対象の処理剤(第4級アンモニウム塩ポリマー)を溶解させる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合物は、水に150mmol/Lの硫酸ナトリウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合物は、溶離液10mLに対して、分子量5900のプルラン、分子量47300のプルラン、分子量21.2万のプルラン、分子量78.8万のプルラン、各2.5mg溶解させたプルラン混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合物は流速:1.0mL/min、注入量:100μLで測定する。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合物以外は、エタノール:水=3:7(体積比)に50mmol/Lの臭化リチウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合物以外は、溶離液20mLに対して、分子量106のポリエチレングリコール(PEG)、分子量400のPEG、分子量1470のPEG、分子量6450のPEG、分子量5万のポリエチレンオキシド(PEO)、分子量23.5万のPEO、分子量87.5万のPEO、各10mg溶解させたPEG−PEO混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合物以外は流速:0.6mL/min、注入量:100μLで測定する。
カチオン性ポリマーは、重量平均分子量が異なる2種以上のカチオン性ポリマーの混合物であることも好ましい。これによって、血球の凝集効果が一層向上する。詳細には、相対的に低分子量のカチオン性ポリマーが、血球表面の電荷を中和する役割を発揮する一方、相対的に高分子量のカチオン性ポリマーが、血球の凝集塊を形成する役割を発揮する。この観点から、カチオン性ポリマーが、重量平均分子量が異なる2種のカチオン性ポリマーの混合物である場合、相対的に低分子量のカチオン性ポリマーは、その重量平均分子量が、2000以上15万以下であることが好ましく、1万以上10万以下であることが更に好ましく、3万以上8万以下であることが一層好ましい。一方、相対的に高分子量のカチオン性ポリマーは、その重量平均分子量が、相対的に低分子量のカチオン性ポリマーの重量平均分子量よりも高いことを条件として、15万以上300万以下であることが好ましく、30万以上200万以下であることが更に好ましく、50万以上100万以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーが、重量平均分子量が異なる2種以上のカチオン性ポリマーの混合物である場合、例えば相対的に低分子量のカチオン性ポリマーAと、相対的に高分子量のカチオン性ポリマーBとの混合物である場合、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとは、重量平均分子量が異なる同種のポリマーであってもよく、あるいは重量平均分子量が異なり、且つ種類も異なるポリマーであってもよい。
カチオン性ポリマーが、重量平均分子量が異なる2種以上のカチオン性ポリマーの混合物である場合、分子量分布に2つのピークを有することも好ましい。これによって、血球凝集剤の徐放性が一層向上する。詳細には、相対的に低分子量のカチオン性ポリマーが、血液との接触の初期に溶出する一方、相対的に高分子量のカチオン性ポリマーが、血液との接触の後期に溶出するようになる。この観点から、カチオン性ポリマーが、重量平均分子量が異なる2種のカチオン性ポリマーの混合物である場合、分子量分布のピークの差は、30万以上であることが好ましく、50万以上であることが更に好ましく、70万以上であることが一層好ましく、また、300万以下であることが好ましく、200万以下であることが更に好ましく、100万以下であることが一層好ましい。分子量分布のピークの差は、30万以上300万以下であることが好ましく、50万以上200万以下であることが更に好ましく、70万以上100万以下であることが一層好ましい。分子量分布のピークの差とは、相対的に高分子量の前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量と、相対的に低分子量の前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量との差のことである。カチオン性ポリマーが、重量平均分子量が異なる2種以上のカチオン性ポリマーの混合物である場合、例えば相対的に低分子量のカチオン性ポリマーAと、相対的に高分子量のカチオン性ポリマーBとの混合物である場合、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとは、重量平均分子量が異なる同種のポリマーであってもよく、あるいは重量平均分子量が異なり、且つ種類も異なるポリマーであってもよい。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは水溶性であることが好ましい。本発明において「水溶性」とは、100mLのガラスビーカー(5mmΦ)に0.05gの1mm以下の粉末状又は厚み0.5mm以下のフィルム状カチオン性ポリマーを25℃の50mLイオン交換水に添加混合したときに、長さ20mm、幅7mmのスターラーチップを入れ、アズワン株式会社製マグネチックスターラーHPS−100を用いて600rpm攪拌下、その全量が24時間以内に水に溶解する性質のことである。なお、本発明において、更に好ましい溶解性としては、全量が3時間以内に水に溶解することが好ましく、全量が30分以内に水に溶解することが更に好ましい。
カチオン性ポリマーは、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものであることが好ましい。特に第4級アンモニウム塩ポリマーは、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものであることが好ましい。第4級アンモニウム部位は側鎖に存在していることが好ましい。この場合、主鎖と側鎖とが1点で結合していると、側鎖の可撓性が阻害されにくくなり、側鎖に存在している第4級アンモニウム部位が赤血球の表面に円滑に吸着するようになる。尤も本発明において、カチオン性ポリマーの主鎖と側鎖とが2点又はそれ以上で結合していることは妨げられない。本発明において「1点で結合している」とは、主鎖を構成する炭素原子のうちの1個が、側鎖の末端に位置する1個の炭素原子と単結合していることを言う。「2点以上で結合している」とは、主鎖を構成する炭素原子のうちの2個以上が、側鎖の末端に位置する2個以上の炭素原子とそれぞれ単結合していることを言う。
カチオン性ポリマーが、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものである場合、例えば第4級アンモニウム塩ポリマーが、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものである場合、各側鎖の炭素数は4以上であることが好ましく、5以上であることが更に好ましく、6以上であることが一層好ましい。炭素数の上限値は、10以下であることが好ましく、9以下であることが更に好ましく、8以下であることが一層好ましい。例えば側鎖の炭素数は4以上10以下であることが好ましく、5以上9以下であることが更に好ましく、6以上8以下であることが一層好ましい。側鎖の炭素数とは、該側鎖における第4級アンモニウム部位(カチオン部位)の炭素数のことであり、対イオンであるアニオン中に炭素が含まれているとしても、その炭素は計数に含まない。特に、側鎖の炭素原子のうち、主鎖に結合している炭素原子から、第4級窒素に結合している炭素原子までの炭素数が前述の範囲であることが、第4級アンモニウム塩ポリマーが赤血球の表面の表面に吸着するときの立体障害性が低くなるので好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩ホモポリマーである場合、該ホモポリマーとしては、例えば第4級アンモニウム部位又は第3級アミン部位を有するビニル系単量体の重合物が挙げられる。第3級アミン部位を有するビニル系単量体を重合する場合には、重合前に及び/又は重合後に、第3級アミン部位をアルキル化剤によって第4級アンモニウム化した第4級アンモニウム塩ホモポリマーとなるか、重合前に及び/又は重合後に、第3級アミン部位を酸によって中和した第3級アミン中和塩となるか、重合後に水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンとなる。アルキル化剤や酸の例は、前述したとおりである。
特に第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、以下の式1で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と1点で結合しているものであるポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムメチル硫酸塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルトリメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩)、ポリ(3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩)、ポリメタクル酸ジメチルアミノエチル、ポリアリルアミン塩酸塩、カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ポリアミジンなどが挙げられる。一方、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と2点以上で結合しているホモポリマーの例としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルアミン塩酸塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩共重合物である場合には、該共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を2種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。更に、ビニル系重合性単量体に加えて、又はそれに代えて、他の重合性単量体、例えば−SO2−などを用いることもできる。第4級アンモニウム塩共重合物は、前述したとおり、二元系の共重合物又は三元系以上の共重合物であり得る。
特に、第4級アンモニウム塩共重合物は、前記の式1で表される繰り返し単位と、以下の式2で表される繰り返し単位とを有することが、赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から好ましい。
また、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体としては、カチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体、又はノニオン性重合性単量体を用いることができる。これらの重合性単量体中で、特にカチオン性重合性単量体又はノニオン性重合性単量体を用いることで、第4級アンモニウム塩共重合物内において第4級アンモニウム部位との電荷相殺が起こらないので、赤血球の凝集を効果的に生じさせることができる。カチオン性重合性単量体の例としては、特定の条件下でカチオンを帯びる窒素原子を有する環状化合物としてビニルピリジンなど、特定の条件下でカチオンを帯びる窒素原子を主鎖に有する直鎖状化合物としてジシアンジアミドとジエチレントリアミンの縮合化合物などが挙げられる。アニオン性重合性単量体の例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、及び、スチレンスルホン酸、並びに、これらの化合物の塩などが挙げられる。一方、ノニオン性重合性単量体の例としては、ビニルアルコール、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる。これらカチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体、又はノニオン性重合性単量体は、それらのうちの一つを用いることができ、あるいは任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。またカチオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることができ、アニオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることができ、あるいはノニオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることもできる。カチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体及び/又はノニオン性重合性単量体を重合性単量体として用いて共重合された第4級アンモニウム塩共重合物は、その分子量が、前述のとおり1000万以下であることが好ましく、特に500万以下、とりわけ300万以下であることが好ましい(以下に例示する第4級アンモニウム塩共重合物についても同様である。)。
第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体として、水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。このような重合性単量体を共重合に用いること、それから得られる第4級アンモニウム塩共重合物を用いて赤血球を凝集させたときに、硬い凝集塊が生じやすくなり、高吸収性ポリマーの吸収性能が一層阻害されにくくなる。水素結合をすることが可能な官能基としては、例えば−OH、−NH2、−CHO、−COOH、−HF、−SHなどが挙げられる。水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体の例としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアルコール、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。特に、水素結合が強く働く、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミドなどは、第4級アンモニウム塩ポリマーの赤血球への吸着状態が安定化するので好ましい。これらの重合性単量体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体として、疎水性相互作用をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。このような重合性単量体を共重合に用いることで、前述した、水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いる場合と同様の有利な効果、すなわち赤血球の硬い凝集塊が生じやすくなるという効果が奏される。疎水性相互作用をすることが可能な官能基としては、例えばメチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、アルキルナフタレン基、フッ化アルキル基などが挙げられる。疎水性相互作用をすることが可能な官能基を有する重合性単量体の例としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、スチレンなどが挙げられる。特に、疎水性相互作用が強く働き、第4級アンモニウム塩ポリマーの溶解性を大きく低下させない、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどは、第4級アンモニウム塩ポリマーの赤血球への吸着状態が安定化するので好ましい。これらの重合性単量体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第4級アンモニウム塩共重合物中での、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体とのモル比は、該第4級アンモニウム塩共重合物によって赤血球が十分に凝集するように適切に調整されることが好ましい。特に、第4級アンモニウム塩共重合物における第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体のモル比は10モル%以上であることが好ましく、22モル%以上であることが更に好ましく、32モル%以上であることが一層好ましく、38モル%以上であることが更に一層好ましい。また、100モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることが更に好ましく、65モル%以下であることが一層好ましく、56モル%以下であることが更に一層好ましい。具体的には、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体のモル比は10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、22モル%以上80モル%以下であることが更に好ましく、32モル%以上65モル%以下であることが更に好ましく、38モル%以上56モル%以下であることが一層好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩重縮合物である場合には、該重縮合物として、前述した第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それらの縮合物を重合することで得られた重縮合物を用いることができる。具体例としては、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン重縮合物、ジメチルアミン/エピクロルヒドリン重縮合物などが挙げられる。
前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び第4級アンモニウム塩共重合物は、ビニル系重合性単量体の単独重合法又は共重合法によって得ることができる。重合方法としては、例えばラジカル重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、開環重合、重縮合などを用いることができる。重合条件に特に制限はなく、目的とする分子量、流動電位、及び/又はIOB値を有する第4級アンモニウム塩ポリマーが得られる条件を適切に選択すればよい。
また、本発明で用いる血球凝集剤は、ポリカチオン(カチオン性ポリマー)以外に、第三成分、例えば、溶媒、可塑剤、香料、抗菌・消臭剤、スキンケア剤等の他の成分を1種以上含んだ組成物(血球凝集剤組成物)の形態であってもよい。溶媒としては、水、炭素数1ないし4の飽和脂肪族一価アルコール等の水溶性有機溶媒、又は該水溶性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどを用いることができる。香料としては、特開2007−244764号公報に記載されているグリーンハーバル様香気を有する香料、植物の抽出エキス、柑橘類の抽出エキスなどを用いることができる。抗菌・消臭剤としては、特開2004−244789号公報に記載されている抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物、特開2007−097953号公報に記載されているフェニル基を有する重合性モノマーから重合された多孔性ポリマー、特開2006−191966号公報に記載されている第4級アンモニウム塩、活性炭、粘土鉱物などを用いることができる。スキンケア剤としては、特開2004−255164号公報に記載されている植物エキス、コラーゲン、天然保湿成分、保湿剤、角質柔軟化剤、消炎剤などを用いることができる。
前記血球凝集剤組成物に占めるカチオン性ポリマーの割合は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。前記血球凝集剤組成物に占めるカチオン性ポリマーの割合をこの範囲内に設定することで、吸収性物品に有効量のカチオン性ポリマーを付与することができる。
本発明の血球凝集性繊維に含まれる血球凝集剤の割合は、十分な血球の凝集作用を発現させる観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが一層好ましい。また、繊維表面に存在させることが可能である観点から、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが一層好ましい。血球凝集性繊維に含まれる血球凝集剤の割合は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以上50質量%以下であることが一層好ましい。
血球凝集剤性繊維に含まれる血球凝集剤の総量や分子量分布などは、次の方法で測定される。
測定対象となるナプキン等の製品を、コールドスプレーを用いて接着材を弱化させ、丁寧に剥がして各部材に分ける。各部材を脱イオン水に60分間浸漬させ、血球凝集剤組成物を溶出させる。その後、得られた血球凝集剤組成物が溶出した脱イオン水を透析処理する。透析処理は、溶媒、可塑剤、香料、抗菌・消臭剤、スキンケア剤等の水溶性の低分子量成分を除去する処理であり、例えば透析チューブには分子量2000以下の成分を除去できるものを用いる。透析後、蒸発乾固又は凍結乾燥する。その後、H−NMRや質量分析法(MS)などを単独、又は複合して血球凝集剤を同定する。同定された血球凝集剤の質量を測定することで、血球凝集剤の総量を求めることができる。このようにして求められた血球凝集剤の総量と、血球凝集剤組成物を溶出させる前の繊維の質量とに基づいて、血球凝集剤繊維に含まれる血球凝集剤の割合を得ることができる。また、同定された血球凝集剤をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて測定することで、微分分子量分布曲線を得ることができる。
本発明において、繊維の表面に血球凝集剤を高フラクタル次元で存在させるには、種々の方法を採用することができる。例えば以下に述べる方法(1)及び(2)に示す方法を採用することができる。
・方法(1)血球凝集剤を含み、且つ塗布時の粘度が100mPa・s以上である溶液が含浸された基材と、乾燥した原料繊維とを接触させ、その後に、該基材から該原料繊維を剥離させる工程を含む方法。
・方法(2)血球凝集剤を含む溶液を、原料繊維に吹き付ける工程を含む方法。
前記の方法(1)においては、高粘度の前記溶液を用いることで、該溶液が含浸された基材と、乾燥した原料繊維との接触後に、該原料繊維を剥離するときに、血球凝集剤が毛羽立つように該原料繊維の表面に保持される。特に、基材に含浸する溶液の粘度が高いほど、剥離時に繊維表面で複雑な構造を形成しやすく、フラクタル次元は高くなるので好ましい。この観点から、前記溶液の粘度は、塗布時において200mPa・s以上であることが更に好ましく、300mPa・s以上であることが一層好ましい。前記溶液の塗布性の観点から、その粘度の上限値は、100000mPa・s以下であることが好ましく、50000mPa・s以下であることが更に好ましく、10000mPa・s以下であることが一層好ましい。前記溶液の粘度は、塗布時において100mPa・s以上であることが好ましく、200mPa・s以上であることが更に好ましく、300mPa・s以上であることが一層好ましい。
血球凝集剤を含む前記溶液の粘度はB型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB−10M)を用いて、対象の溶液粘度に適したローターを用い、25℃において30rpm、60秒間測定して求めた。
前記溶液において用いられる溶媒は、血球凝集剤を溶解させられるものであればその種類に特に制限はなく、例えば簡便には水を用いることができる。前記溶液を基材に含浸させた後に、高粘度状態で原料繊維を剥離させる観点からは、該溶液の乾燥時間を短縮化させることが望ましい。この観点から、溶媒は、血球凝集剤を溶解し得る有機溶媒であることが好ましい。そのような有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸及びギ酸などが挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み組み合わせて用いることができる。あるいはこれらの有機溶媒のうちの1種以上と水とを組み合わせて用いることもできる。安全性や揮発性の高さ、及び経済性の点から、エタノールを用いることが好ましい。
前記溶液を含浸させる基材としては、該溶液の含浸性を高める観点から、親水性のものを用いることが好ましい。例えば親水性繊維からなる繊維シート、具体的には紙を用いることが好ましいが、これに限られない。
これまでは一般に、前記溶液が高粘度である場合には、転写時に該溶液が基材に対して首尾よく濡れ拡がらず、該溶液を均一に塗布することが容易でなかった。これに対して本発明によれば、基材として、原料繊維の表面に存在する凹凸形状を吸収可能な弾性的な素材を用い、且つ弾性的な素材からなる基材と原料繊維とを接触させることで、前記溶液を均一に塗布することが可能となる。
原料繊維は、繊維そのままの状態で基材と接触させてもよく、あるいはウエブや繊維シートの状態で基材と接触させてもよい。ウエブや繊維シートの状態で接触させる場合には、その後に、必要に応じ解繊処理を行ってもよい。
前記溶液が含浸された基材と原料繊維とを接触させた後に、該原料繊維を剥離する時期は、該溶液から溶媒が完全に揮発する前の状態にある時期が好ましく、特に粘性の高い流動状態になっている時期が好ましい。尤も、前記溶液の粘度によっては、両者を接触させた直後に原料繊維を剥離してもよい。
前記の方法(2)においては、血球凝集剤を含む溶液が液滴の状態となり、溶媒が揮発し易くなる。その結果、液滴の粘度が高まり、液滴の状態で繊維の表面に固着しやすくなる。それによって、繊維の表面に、血球凝集剤による凹凸構造が形成される。特に、有機溶媒の揮発性が高いほど、吹き付け後溶液が平坦な構造をとる以前に固まり、フラクタル次元が高くなるので好ましい。
血球凝集剤を含む溶液としては、方法(1)で用いるものと同様のものが挙げられる。特に溶媒を揮発し易くするために、有機溶媒の溶液を用いることが好ましい。この溶液を原料繊維に吹き付ける方法は、スプレーノズルを用いる方法が代表的なものとして挙げられるが、これに限られない。この溶液を原料繊維に吹き付けるときの該溶液の粘度は、1mPa・s以上であることが更に好ましく、3mPa・s以上であることが一層好ましい。前記溶液の粘度の上限値は、100mPa・s以下であることが好ましく、80mPa・s以下であることが更に好ましく、50mPa・s以下であることが一層好ましい。この粘度の溶液を用いることで、吹き付けを容易に行うことができ、また溶媒が揮発しやすい液滴サイズを実現することができる。
前記の有機溶媒として揮発性の高いものを用いると、これまでは一般に、有機溶媒の揮発に起因してスプレーノズル内に目詰まりが発生しやすく、均一な塗布を行うことが容易でなかった。これに対して、本発明によれば、溶液の濃度を前記の範囲内に設定することで、有機溶媒はスプレーノズル内で揮発しづらくなり、液滴が原料繊維に着弾するときに増粘状態となっている理想的な挙動を容易に実現することができる。
原料繊維は、繊維そのままの状態で前記溶液が吹き付けられてもよく、あるいはウエブや繊維シートの状態で前記溶液が吹き付けられてもよい。ウエブや繊維シートの状態で接触させる場合には、その後に、必要に応じ解繊処理を行ってもよい。
本発明の血球凝集性繊維は、例えばこれを単独で積繊してなる積繊体の形態で用いることができ、あるいは他の繊維と混合積繊してなる積繊体の形態で用いることができる。また、本発明の血球凝集性繊維を単独で、又は他の繊維と混合して、該血球凝集性繊維を含む繊維シートの形態で用いることができる。これら積繊体や繊維シートは、生理用ナプキン等の経血吸収性物品の構成部材として好適に用いることができる。以下に、本発明の血球凝集性繊維を含む部材を有する吸収性物品の一例について説明する。
図1には生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有し、経血を吸収可能な吸収体4と、該吸収体4の肌対向面側に配され着用時に着用者の肌と接触し得る表面シート2とを構成部材として具備する。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここで言う「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
ナプキン1は、肌対向面を形成する表面シート2、非肌対向面を形成する裏面シート3、及び両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する吸収性本体10を備えている。吸収性本体10は、着用時に着用者の液排泄部(膣口等)に対向配置される領域である排泄部対向部Bと、該排泄部対向部Bより着用者の腹側すなわち前側に配される前方部Aと、該排泄部対向部Bよりも着用者の背側すなわち後側に配される後方部Cとを縦方向Xに有している。すなわち、ナプキン1又は吸収性本体10は、縦方向Xにおいて着用者の腹側から順に、前方部A、排泄部対向部B及び後方部Cの3つの領域に区分される。縦方向Xは、ナプキン1及び吸収性本体10の長手方向に一致し、横方向Yは、ナプキン1及び吸収性本体10の長手方向に直交する幅方向に一致する。
表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、その縦方向Xに沿う両側縁は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁と略同位置に存している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、後述するサイドシート6と共にサイドフラップ部10Sを形成している。裏面シート3とサイドシート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の縦方向Xの両端からの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。
表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば裏面シート3としては、液難透過性で且つ透湿性の樹脂フィルムや、該樹脂フィルムと不織布との積層シート等を用いることができる。一方、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。表面シート2は、液透過性を向上させるための各種の油剤、例えば各種の界面活性剤を塗布しておくことができる。表面シート2が多層構造のものである場合、該表面シート2として、着用者の肌に近い側に位置する第1繊維層と、着用者の肌から遠い側に位置する第2繊維層とを有し、両繊維層が、部分的に形成された多数の接合部によって厚さ方向に一体化されており、第1繊維層における、複数の該接合部どうし間に位置する部分が凸状に隆起して、前記凹凸形状の凸部を形成している凹凸シートを用いることができる。この凹凸シートにおける凸部は、その全体が繊維で満たされた中実構造のものであってもよく、あるいは内部に空間を有する中空構造のものであってもよい。凸部が中実構造である凹凸シートとしては、例えば特開2007−182662号公報や特開2002−187228号公報に記載のものを用いることができる。
表面シート2にはエンボス加工が施されていてもよい。エンボスパターンに特に制限はなく、ナプキン1の具体的な用途に応じて種々のパターンを形成することができる。例えば、吸収体4の周縁よりも内側の位置に、該周縁に沿う閉じた形状の、いわゆるラウンドエンボスを形成することができる。このラウンドエンボスにおいては、吸収体4の側縁に対応する部位を、該吸収体4の幅方向の外方に向けて凸状に膨らんだ形状とすることが好ましい。このラウンドエンボスは、全体として見たときに連続していると見なせる範囲において、不連続なエンボスパターンの集合体から構成されていてもよい。
吸収性本体10はセカンドシート5を具備している。セカンドシート5は液透過性のものであり、表面シート2と吸収体4との間に配されている。セカンドシート5は、本技術分野においてサブレイヤーシートなどとも呼ばれる吸収性物品の構成部材であり、表面シート2から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りの低減などの役割を担う。本実施形態においては、セカンドシート5は吸収体4の肌対向面の略全域を被覆している。セカンドシート5としては、親水性不織布や親水性の繊維集合体を用いることができ、不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、レジンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布等が挙げられる。セカンドシート5の坪量は、好ましくは10g/m、更に好ましくは15g/m以上、そして、好ましくは50g/m以下、更に好ましくは40g/m以下である。また、セカンドシート5の厚みは、好ましくは0.1mm以上5mm以下である。
吸収性本体10の肌対向面、すなわち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体10の縦方向Xの略全長にわたって配されている。一対のサイドシート6,6は、それぞれ縦方向Xに延びる接合線61にて、公知の接合手段によって表面シート2に接合されている。
ナプキン1は、吸収性本体10に加えて更に、吸収性本体10における排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部10W,10Wを有している。つまりナプキン1は、吸収性本体10と、一対のウイング部10W,10Wとを有している。
ナプキン1がウイング部10Wを有する場合には、排泄部対向部Bは、ナプキン1の縦方向(図中のX方向)においてウイング部10Wを有する領域(一方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域)を意味する。ナプキン1がウイング部を有しない場合の排泄部対向部Bは、ナプキン1が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該ナプキン1を横方向(図中のY方向)に横断する2本の折り曲げ線(図示せず)について、該ナプキン1の縦方向Xの前端から数えて第1折り曲げ線と第2折り曲げ線とに囲まれた領域を意味する。
サイドフラップ部10Sは、排泄部対向部Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部10W,10Wが延設されている。ウイング部10Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)がナプキン1の側部側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、ウイング部10Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部10Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆される。
吸収体4は高吸収性ポリマーを含有する。吸収体4に含有される高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでもよい。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでもよい。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
吸収体4は、高吸収性ポリマーに加えて更に親水性繊維を含有する。吸収体4に含有される親水性繊維としては、疎水性の繊維を親水化処理したものと、それ自体が親水性であるものが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、それ自体が親水性で且つ保水性を有するものが好ましい。後者の親水性繊維としては、天然系の繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられる。親水性繊維としては、特にパルプやレーヨンが好ましく、パルプが一層好ましい。パルプには、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプなどの木材パルプの他に、木綿パルプ、藁パルプなどの非木材パルプなどがあるが、特に制限されない。また、セルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維、木材パルプをマーセル化処理して得られるような嵩高性のセルロース繊維を用いてもよい。
吸収体4にはエンボス加工を施すことができる。エンボス加工は、吸収体4にのみ施してもよく、あるいは先に述べた表面シート2及び吸収体4に対して一緒に行ってもよい。表面シート2及び吸収体4に対して一緒にエンボス加工を行うことで、これらの部材はエンボス部位において熱融着及び/又は圧着によって接合される。表面シート2に、先に述べたラウンドエンボス加工を施す場合には、このラウンドエンボス加工を吸収体4にも一緒に施して、ラウンドエンボスによって吸収体4と表面シート2とを接合することもできる。
吸収体4は、親水性繊維及び高吸収性ポリマーを含有する下部吸収性コア41及び上部吸収性コア42からなる吸収性コアを備えている。詳細には、吸収体4は、着用時に着用者の排泄部に対向配置される下部吸収性コア41と、該下部吸収性コア41に重ねられ、図1に示す如き平面視において該下部吸収性コア41の周縁の少なくとも一部から外方に延出する部分42Eを有する上部吸収性コア42とを含んで構成される積層構造を有する。ここで言う「中央吸収性シートの周縁」とは、下部吸収性コア41における、ナプキン1に組み込まれた状態における周縁を意味する。図1に示すナプキン1においては、上部吸収性コア42は、下部吸収性コア41の周縁全体から外方に延出している。吸収体4がこのような構造を有していることに起因して、排泄部対向部Bの横方向Yの中央部は、周辺部に比して厚みの厚い、いわゆる中高部となっている。
下部吸収性コア41及び上部吸収性コア42からなる吸収性コアは、被覆シート(図示せず)によって、少なくともその上下面が被覆されている。好ましくは、吸収性コアの全体が被覆シートによって被覆されている。つまり本実施形態においては、吸収体4は、高吸収性ポリマー及び/又は親水性繊維を含む吸収性コアが被覆シートによって被覆された構造を有している。被覆シートは液透過性のものである。被覆シートの例としては、セルロース繊維を主材料とする薄葉紙や、親水化処理の施された不織布などが用いられる。
ナプキン1は、そのいずれかの構成部材が血球凝集性繊維を含んで構成されていることで、該構成部材が血球凝集剤を含んでいる。血球凝集性繊維は、ナプキン1に排泄された経血と接触するような態様で、ナプキン1内に存在していることが有利である。この観点から、血球凝集性繊維は、裏面シート3における肌対向面側の面、又はそれよりも肌対向面側の部位に存在していることが好ましく、吸収体4、又はそれよりも肌対向面側の部位に存在していることが更に好ましく、吸収体4における被覆シート(図示せず)又はそれよりも肌対向面側の部位に存在していることが一層好ましい。例えば、血球凝集性繊維は、吸収体4における被覆シート、表面シート2、又は該被覆シートと該表面シート2との間に配置されたセカンドシートのうちのいずれか1つの部材又は任意の2つ以上の部材に含まれていることが好ましい。これらの部材に血球凝集性繊維が含まれていると、高吸収性ポリマーが含まれている部位である吸収性コアに経血が達する前に、該経血が血球凝集性繊維と接触することができ、吸収性コアに経血が達する前に該経血中の赤血球の凝集を生じさせることができるので有利である。吸収性コア中に血球凝集性繊維を含ませた場合にも、赤血球の凝集効果は認められる。特に、被覆シート、表面シート2及び/又はセカンドシート5に血球凝集性繊維を含ませると、赤血球の凝集効果が高くなるので好ましい。これらのシートに血球凝集性繊維が含まれている場合、該繊維は、シートの全域にわたって存在していてもよく、あるいはシートの一部にのみ存在していてもよい。
図1に示す生理用ナプキン1を初めとする各種の吸収性物品の構成部材として、血球凝集性繊維を含むシートを用いることの利点は以下に述べるとおりである。
高吸収性ポリマーによる水分の吸収速度や吸収量は、水分の種類によって異なり、生理食塩水と血液とを比較すると、生理食塩水よりも血液の方が吸収速度が遅く、また吸収量も少ない。この理由を本発明者が種々検討したところ、以下に述べる事実が判明した。血液は血漿等の液体成分と赤血球等の非液体成分に大別されるところ、高吸収性ポリマーに吸収される成分は血漿等の液体成分である。図2(a)に示すとおり、経血11が高吸収性ポリマー14に接触すると、経血11中の液体成分12のみが高吸収性ポリマー14に吸収され、非液体成分13である赤血球は高吸収性ポリマー14に吸収されない。高吸収性ポリマー14への液体成分12の吸収が進行すると、図2(b)に示すとおり、高吸収性ポリマー14に吸収されない非液体成分13が、高吸収性ポリマー14の表面に蓄積して被膜15を形成する。この被膜15の形成に起因して、高吸収性ポリマー14の液吸収阻害が生じ、吸収速度が低下する。また被膜15の形成に起因して、高吸収性ポリマー14の膨潤阻害も生じ、吸収量が低下する。
図2(b)に示すとおりの現象が生じることを防止して、吸収性能の低下を阻止するための手段について本発明者が種々検討した結果、経血中の非液体成分の大半を占める成分である赤血球を、図3に示すとおり凝集させて凝集塊16を生成させることが効果的であることが判明した。赤血球の凝集塊16を生成させることで、該凝集塊の被膜が生成しづらくなり、又は、該凝集塊によって被膜が生成したとしても被膜内に液体成分12が透過できる空間が残存するため、液体成分12の吸収阻害が起こりづらくなる。その結果、高吸収性ポリマー14は、本来の吸収性能を十分に発揮することができる。このように吸収性能をより高めるために、赤血球の凝集塊粒径が大きいほど好ましく、凝集塊硬さが硬いほど好ましい。ここで、吸収性能は、吸収量及び吸収速度を尺度として表される。吸収量は、吸収前の高吸収性ポリマー14の体積と、吸収後の高吸収性ポリマー14の体積との比、つまり後述する体積膨潤倍率として表すことができる。また、吸収速度は、高吸収性ポリマー14の体積膨潤倍率の経時における傾きとして表すことができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
第4級アンモニウム塩ポリマーからなる血球凝集剤として、水溶性の第4級アンモニウム塩ホモポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(日本ルブリゾール株式会社、商品名「マーコート100」。重量平均分子量15万。)を用いた。これをエタノールに溶解して濃度5%、粘度10.4mPa・sの溶液を調製した。
繊維として、叩解度550mlのフィブリル化パルプ繊維を用いた。このパルプ繊維に前記の溶液をスプレー塗工した。塗工坪量は1.5g/mとした。エタノールを乾燥させて、血球凝集性繊維を得た。この血球凝集性繊維中の血球凝集剤の割合は9%であった。
〔実施例2〕
第4級アンモニウム塩ポリマーからなる血球凝集剤として、水溶性の第4級アンモニウム塩ホモポリマーであるポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルジエチル硫酸塩(花王株式会社製。重量平均分子量16万。)を用いた。これをエタノールに溶解して濃度5%、粘度5.5mPa・sの溶液を調製した。
繊維として、叩解度550mlのフィブリル化パルプ繊維を用いた。このパルプ繊維に前記の溶液をスプレー塗工した。塗工坪量は5g/mとした。エタノールを乾燥させて、血球凝集性繊維を得た。この血球凝集性繊維中の血球凝集剤の割合は31%であった。
〔実施例3〕
第4級アンモニウム塩ポリマーからなる血球凝集剤として、水溶性の第4級アンモニウム塩コポリマーであるポリ〔メタクリル酸ジメチルアミノエチルジエチル硫酸塩/メタクリル酸メチル〕共重合物(花王株式会社製。重量平均分子量35万。)を用いた。これを水に溶解して濃度20%、粘度235mPa・sの溶液を調製した。
この溶液を、基材としてのOHP用紙(コクヨ株式会社 再生OHPフィルム A4サイズ VF−1300N 透明)に塗工した。塗工坪量は5g/mとした。
繊維として、叩解度550mlのフィブリル化パルプ繊維を用いた。このパルプ繊維を、前記の基材上に配置し、圧力を加えて、基材に含浸されている前記溶液をパルプ繊維に転写させた。これによって、血球凝集性繊維を得た。この血球凝集性繊維中の血球凝集剤の割合は31%であった。
〔参考例1〕
実施例1において、血球凝集剤を脱イオン水に溶解して濃度5%、粘度18mPa・sの溶液を調製した。これ以外は実施例3と同様にして血球凝集性繊維を得た。この血球凝集性繊維中の血球凝集剤の割合は9%であった。
〔参考例2〕
実施例2において、血球凝集剤をイオン交換水に溶解して濃度5%、粘度を18mPa・sの溶液を調製した。これ以外は実施例3と同様にして血球凝集性繊維を得た。この血球凝集性繊維中の血球凝集剤の割合は31%であった。
〔参考例3〕
実施例3において、血球凝集剤の濃度を低くして溶液の粘度を18mPa・sとした。これ以外は実施例3と同様にして血球凝集性繊維を得た。この血球凝集性繊維中の血球凝集剤の割合は31%であった。
〔評価〕
実施例及び参考例で得られた繊維について、上述の方法で繊維表面のフラクタル次元を求めた。また、以下の方法で高吸収性ポリマーの体積膨潤倍率を経時的に測定した。体積膨潤倍率は高吸収性ポリマーの吸収量を表す尺度である。体積膨潤倍率の経時変化は、繊維からの血球凝集剤の放出の尺度となるものであり、時間経過後も体積膨潤倍率が高いほど、血球凝集剤が徐放されることを意味する。結果を以下の表1に示す。
〔高吸収性ポリマーの体積膨潤倍率〕
実施例及び参考例で得られた繊維をそれぞれ原料として用いて湿式抄紙を行い、10mm×50mmの繊維シートを製造した(坪量16g/m)。この繊維シートを1gの擬似血液中に20秒間浸漬した後、該繊維シートを引き上げ、再び先ほどと異なる1gの擬似血液中に20秒間浸漬した。この浸漬・引き上げの操作を10回繰り返し、各回の引き上げ後の血液を回収し、回収された各血液を用いて高吸収性ポリマーを以下の手順で膨潤させた。
直径約400μmの高吸収性ポリマー1粒をスライドガラス上に載置し、この高吸収性ポリマーに、回収された各血液を、パスツールピペットによって3滴滴下して、該高吸収性ポリマーに血液を吸収させて膨潤させた。高吸収性ポリマーとしては、架橋ポリアクリル酸ナトリウムを用いた。血液を滴下した後、水分の蒸散を防ぐために、小さなスクリュー蓋を用いて高吸収性ポリマーを密閉した。10分経過後に蓋を取り去り、更に吸収紙を用いて過剰量存在する擬似血液を吸収除去した。引き続き、高吸収性ポリマーの直径を光学顕微鏡観察で測定した。膨潤前の高吸収性ポリマーの直径をR(μm)、膨潤後の直径をR(μm)としたとき、体積膨潤倍率は(R/Rで定義される。なお、擬似血液は、本明細書で説明したとおり、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB−10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、25℃、60秒間)を用いて測定した粘度が8mPa・sになるように、脱繊維馬血(日本バイオテスト(株)製)の血球・血漿比率を調整したものである。
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた血球凝集性繊維は、参考例に比べて、1回目の擬似血液との接触時から、高吸収性ポリマーの体積膨潤倍率が高く、且つ体積膨潤倍率が経時的に減少しづらいことが判る。
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 下部吸収性コア
42 上部吸収性コア
5 セカンドシート
6 サイドシート
10 吸収性本体
11 経血
12 液体成分
13 非液体成分
14 高吸収性ポリマー
15 被膜
16 凝集塊
繊維の表面における血球凝集剤の存在状態はフラクタル次元を尺度として定量的に表示することができる。フラクタル次元が高いほど、血球凝集剤は繊維の表面における表面積が大きくなる。フラクタル次元とは、フラクタル図の複雑さを表す概念である。ある図形全体が1/Nに縮小した相似形のミニチュアM個によって構成されているとき、この図形のフラクタル次元DはD=log10M/log10Nで定義される。

Claims (11)

  1. 繊維表面に血球凝集剤を有し、繊維表面のフラクタル次元が1.0170以上である血球凝集性繊維。
  2. 前記繊維が親水性繊維である請求項1に記載の血球凝集性繊維。
  3. 前記繊維がフィブリル化している請求項1又は2に記載の血球凝集性繊維。
  4. 前記繊維の叩解度が810ml以下である請求項1又は2に記載の血球凝集性繊維。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の血球凝集性繊維を含む繊維シート。
  6. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の血球凝集性繊維又は請求項5に記載の繊維シートを含む吸収性物品。
  7. 血球凝集剤を含み、且つ塗布時の粘度が100mPa・s以上である溶液が含浸された基材と、乾燥した原料繊維とを接触させ、その後に、該基材から該原料繊維を剥離させる工程を含む、血球凝集性繊維の製造方法。
  8. 前記基材が親水性である請求項7に記載の製造方法。
  9. 血球凝集剤を含む溶液を、原料繊維に吹き付ける工程を含む、血球凝集性繊維の製造方法。
  10. 吹き付け時の前記溶液の粘度が3mPa・s以上である請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記原料繊維がセルロース繊維である請求項7ないし10のいずれか一項に記載の製造方法。
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