以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品は一般に、着用者の腹側から中間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。吸収性物品は、着用者前後方向に対応する長手方向において、着用者の排泄部を含む領域に配される中間部並びにその前後に延在する前方部及び後方部を有する。中間部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、中間部の幅方向の中央部又はその近傍に位置している。本発明の吸収性物品は血液の吸収のために好適に用いられ、例えば生理用ナプキン及びパンティライナーなどとして用いられる。尤も、これ以外の吸収性物品、例えば使い捨ておむつや失禁パッドなど、体液の吸収のために用いられる物品を広く包含する。
図1に示す実施形態の吸収性物品10は、表面シート11、裏面シート12及び両シート11,12間に配された吸収体13を備えている。表面シート11は液透過性のものであり、吸収性物品10の着用状態において着用者の身体に対向する位置に配されている。裏面シート12は液不透過性ないし難透過性のものであり、吸収性物品10の着用状態において着用者の身体から遠い側に配されている。
表面シート11としては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シート11は、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シート11の肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シート11の肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シート11を形成することもできる。
一方、裏面シート12としては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シート12の外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
吸収性物品10は、その具体的な用途に応じ、これらの部材の他に、該物品10の各種の性能を向上させるための部材を備えていてもよい。例えば吸収性物品10の肌対向面において、該物品10の幅方向Yの両側部に、該物品10の長手方向、すなわち図1中、紙面と直交する方向に延びる一対の防漏カフ(図示せず)を設けてもよい。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成することができる。各防漏カフは、吸収性物品10の長手方向に延びる固定端及び自由端を有し、該固定端の位置において吸収性物品10の肌対向面に固定することができる。自由端には、その延びる方向に沿って糸ゴム等の弾性部材を伸長状態で固定してもよい。吸収性物品10の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
また吸収性物品10は、長手方向の略中央部において、吸収体13の各側縁から幅方向Yの外方に延出したウイング部(図示せず)を有していてもよい。ウイング部は、吸収性物品10を使用者の着衣に固定するために用いられるものである。この目的のために、ウイング部における衣類対向面には固定用の粘着剤が付与されていてもよい。なお、吸収性物品10がウイング部を備える場合には、長手方向Xに関してウイング部が存在する領域が、上述した中間部に相当する。一方、吸収性物品10がウイング部を備えていない場合には、吸収性物品10を個包装する際に2つないし3つの幅方向に延びる折り線で折り畳むが、排泄部対向部を含む前後に隣り合う2つの折り線の間の領域が中間部に相当する。したがって、2つの折り線で3つ折りされている場合には、その2つの折り線で挟まれた領域が中間部である。
吸収性物品10は、更に、長手方向の後方部において、吸収体13の各側縁から幅方向Yの外方に延出した後方張り出し部(図示せず)を有していてもよい。後方張り出し部は、吸収性物品10の使用状態において使用者の臀部付近を覆い、後方からの液の漏れ出しを防止するために用いられるものである。
吸収性物品10は更に、非肌対向面の表面に粘着剤層(図示せず)を有していてもよい。粘着剤層は、吸収性物品10の使用状態において、該吸収性物品10を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。
吸収性物品10は更に、表面シート11と吸収体13とが一体的に圧密化されて形成された溝部を肌対向面に有していてもよい。溝部は例えば、吸収性物品10の側部域に、長手方向に沿って延びるように一対設けることができる。あるいは閉じた環状の溝部を形成してもよい。
吸収体13は吸収性コア14及び該吸収性コア14を被覆するコアラップシート15を有する。吸収性コア14は、各種の吸水性材料から構成することができる。吸水性材料としては、各種の親水性繊維を用いることができる。親水性繊維としては、疎水性の繊維を親水化処理したものと、それ自体が親水性であるものが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、それ自体が親水性で且つ保水性を有するものが好ましい。後者の親水性繊維としては、天然繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられる。親水性繊維としては、特にパルプやレーヨンが好ましく、パルプが一層好ましい。パルプには、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプなどの木材パルプの他に、木綿パルプ、藁パルプなどの非木材パルプなどがあるが、その種類に特に制限はない。また、セルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維、木材パルプをマーセル化処理して得られるような嵩高性のセルロース繊維を用いてもよい。
吸収性コア14を構成する吸水性材料の別の例として、高吸収性ポリマーが挙げられる。高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでもよい。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでもよい。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸やイタコン酸等のコモノマーを、高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
吸収性コア14は、例えば前記の親水性繊維の積繊体や、親水性繊維と高吸収性ポリマーとの混合積繊体から構成することができるが、これらの形態には限られない。
吸収性コア14は、その肌対向面、衣類対向面及び側面がコアラップシート15で被覆されている。吸収性コア14をコアラップシート15で被覆することで、吸収性コア14の保形性を高めることができる。また、吸収性コア14から、その構成材料が脱落することを効果的に防止することができる。この観点から、コアラップシート15は、吸収性コア14における肌対向面、衣類対向面及び側面の全域を被覆していることが好ましい。図1に示す実施形態では、吸収性コア14が1枚のコアラップシート15で被覆されている状態が示されているが、コアラップシート15の枚数はこれに限られず、例えば2枚又は3枚以上のコアラップシートを用いて吸収性コア14を被覆してもよい。
コアラップシート15は、液透過性を有する材料から構成することができる。そのような材料としては例えば薄葉紙や不織布が挙げられるが、これらに限られない。コアラップシート15として不織布を用いる場合には、その構成繊維の種類に応じて親水化処理が施されたものを用いてもよい。
吸収体13における吸収性コア14は、その厚さ方向Zに沿って見たとき、少なくとも中間部において、前記肌対向領域の密度が前記衣類対向領域の密度よりも低くなっている領域を有する。つまり、吸収性コア14は、厚み方向Zに沿って見たときに、少なくとも中間部において、密度が相対的に低い部位と、密度が相対的に高い部位とを有する。吸収性物品10は、中間部の幅方向Yの中央領域である排泄部対向部において、密度が相対的に低い部位と、密度が相対的に高い部位とを吸収体13の厚み方向Zに沿って有する。密度が相対的に低い部位は、肌対向面側に位置する肌対向領域16である。一方、密度が相対的に高い部位は、衣類対向面側に位置する衣類対向領域17である。肌対向領域16と、衣類対向領域17とは、吸収性コア14の厚み方向に沿って隣接している。吸収性物品10の具体的な用途に応じ、肌対向領域16と衣類対向領域17の間に肌対向領域16から衣類対向領域17に向かって密度が徐々に変化する領域があってもよい。
吸収性物品10においては、肌対向領域16と衣類対向領域17とは、それらの密度の大小で区別される。肌対向領域16はその密度が概ね一定であり、同様に衣類対向領域17もその密度が概ね一定である。したがって、吸収性コア14の密度をその厚み方向Zに沿って測定したときに、密度が有意に変化する位置が、肌対向領域16と衣類対向領域17との境界となる。なお、吸収性コア14の密度は、以下のようにして測定される。肌対向領域16及び衣類対向領域17それぞれから吸収性コア14を長手方向7cm×横方向7cmで切り取り、切り取った吸収性コア片に3.5mm×3.5mmのアクリル板(重さ5g)を乗せ、ピーコック厚み計を用いて厚さを測定する。切り取った吸収性コア片の質量、面積及び厚さの測定値から、密度を計算する。
なお、吸収性コア14の密度が肌対向領域16から衣類対向領域17に向かって徐々に変化する場合も本発明では除外しない。
図1に示す実施形態では、肌対向領域16と衣類対向領域17との境界Bが吸収性コア14の厚み方向Zにおける概ね中央に位置している状態が示されている。しかし、境界Bの位置はこれに限られず、吸収性コア14を構成する材料の種類や、吸収性物品10の具体的な用途に応じ、吸収性コア14の厚み方向Zにおける適切な位置に境界Bを設けることができる。境界Bにおいて肌対向領域16と衣類対向領域17とは単に接触しているだけでもよく、あるいは接着剤によって接合されていてもよい。
肌対向領域16と衣類対向領域17との密度の大小関係は、少なくとも中間部において満たされていればよく、吸収性コア14の全域において満たされていることが好ましい。この場合、吸収性コア14において厚み方向Zに沿う密度を変えて肌対向領域16と衣類対向領域17と形成するには例えば、衣類対向領域17のための中間体を製造し、その上に肌対向領域16のための中間体を重ねればよい。この場合、衣類対向領域17のための中間体には親水性繊維及び高吸収性ポリマーを含有させて相対的に密度を高める一方、肌対向領域16のための中間体には親水性繊維を含有させ且つ高吸収性ポリマーを非含有として相対的に密度を低めることが好ましい。
吸収性コア14の製造の別法として、衣類対向領域17のための中間体を製造し、該中間体を圧縮してその密度を高めた後、その上に肌対向領域16のための中間体を重ねる方法を採用することもできる。そのような中間体の製造には、例えば吸収性物品の技術分野において知られている各種の積繊装置を用いることができる。
吸収性コア14を被覆するコアラップシート15には血球凝集作用を有するカチオン性ポリマー、又は、血球凝集剤が含まれている。血球凝集作用とは、血液と接触することによって血液中の赤血球を凝集させる作用のことであり、血球凝集作用を有する剤を血球凝集剤と呼ぶ。ここで言う血液とは一般にはヒトの血液のことであるが、これに制限されない。つまり血球凝集剤とは、血液中の赤血球を凝集させる作用を有し、凝集した凝集塊と血漿成分が分離されるよう作用するものである。後述するように血球凝集剤の代表的な好ましい例はカチオン性ポリマーであり、吸収性コア14を被覆するコアラップシート15にはカチオン性ポリマーが含まれている場合がある。カチオン性ポリマーは血球凝集の効果を有する化合物の一つであるとも言える。
血球凝集剤をコアラップシート15に含ませることで、吸収性物品10が血液を吸収したときに、コアラップシート15に到達した血液は、血球凝集剤の作用によって血球の凝集体と血漿とに分離する。血球の凝集体と血漿とに分離する前の血液は非ニュートン流体的な特性を有するので、コアラップシート15に被覆されている吸収性コア14の毛管力が作用しづらく、吸収性コア14への吸収速度が著しく遅くなる。このこととは対照的に、血球凝集剤によって分離された血漿はニュートン流体的な特性を有するので、血液と異なり、吸収性コア14の毛管力が作用しやすく、吸収性コア14へ素早く吸収される。その上、吸収性コア14は、上述のとおり、密度が低い肌対向領域16と、密度が高い衣類対向領域17とを備えているので、コアラップシート15に接している肌対向領域16への液の移行はスポット的に行われつつ、肌対向領域16から密度が高い衣類対向領域17への液の移行は横方向への拡散を伴うものとなるので、衣類対向領域17の全域を液の吸収に有効利用できる。その結果、吸収性物品10の表面シート11側においては、凝集した血球がトラップされ且つ血漿の横方向への拡散が抑制されるとともに、血漿が使用者の身体から遠い位置、すなわち衣類対向領域17において素早く固定化される。
以上の観点から、血球凝集剤は、コアラップシート15のうち、吸収性コア14と表面シート11との間に少なくとも含まれていることが好ましい。この場合、血球凝集剤は、コアラップシート15のうち、吸収性コア14と表面シート11との間の全域に含まれていてもよく、ある特定の領域、例えば使用者の排泄部に対向する領域にのみ含まれていてもよい。血球凝集の効果を一層高める観点から、血球凝集剤は、コアラップシート15のうち、吸収性コア14と表面シート11との間に加えて、吸収性コア14と裏面シート12との間に含まれていることも好ましい。更に、血球凝集剤は、コアラップシート15の全域に含まれていることも好ましい。
血球凝集剤による血球凝集の効果を一層顕著なものとする観点から、コアラップシート15に含まれる血球凝集剤の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが一層好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが一層好ましい。コアラップシート15に含まれる血球凝集剤の割合は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上40質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上30質量%以下であることが一層好ましい。この割合は、血球凝集剤が含まれているコアラップシート15の質量に基づき算出される。
吸収性コア14による液の引き込み性及び液の固定性を一層高める観点から、該吸収性コア14における肌対向領域16の密度は0.001g/cm3以上であることが好ましく、0.005g/cm3以上であることが更に好ましく、0.01g/cm3以上であることが一層好ましい。また、1.0g/cm3以下であることが好ましく、0.5g/cm3以下であることが更に好ましく、0.1g/cm3以下であることが一層好ましい。具体的には、肌対向領域16の密度は0.001g/cm3以上1.0g/cm3以下であることが好ましく、0.005g/cm3以上0.5g/cm3以下であることが更に好ましく、0.01g/cm3以上0.1g/cm3以下であることが一層好ましい。なお、吸収性コア14の密度が肌対向領域16から衣類対向領域17に向かって徐々に変化する場合には、肌対向領域16の密度は、中間部における吸収性コア14の全厚み(最も厚い部分の厚み)の肌対向領域16表面から1/2までの厚み領域における密度とする。
前記と同様の観点から、吸収性コア14における衣類対向領域17の密度は、肌対向領域16の密度よりも高いことを条件として、0.01g/cm3以上であることが好ましく、0.05g/cm3以上であることが更に好ましく、0.1g/cm3以上であることが一層好ましい。また、10g/cm3以下であることが好ましく、5g/cm3以下であることが更に好ましく、0.5g/cm3以下であることが一層好ましい。具体的には、肌対向領域16の密度は0.01g/cm3以上10g/cm3以下であることが好ましく、0.05g/cm3以上5g/cm3以下であることが更に好ましく、0.1g/cm3以上0.5g/cm3以下であることが一層好ましい。なお、吸収性コア14の密度が肌対向領域16から衣類対向領域17に向かって徐々に変化する場合には、衣類対向領域17の密度は、中間部における吸収性コア14の全厚み(最も厚い部分の厚み)の衣類対向領域17表面から1/2までの厚み領域における密度とする。
更に前記と同様の観点から、吸収性コア14における衣類対向領域17の密度は、肌対向領域16の密度の1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましく、2.0倍以上であることが一層好ましい。また衣類対向領域17の密度は、肌対向領域16の密度の50倍以下であることが好ましく、30倍以下であることが更に好ましく、20倍以下であることが一層好ましい。具体的には、衣類対向領域17の密度は、肌対向領域16の密度の1.1倍以上50倍以下であることが好ましく、1.5倍以上30倍以下であることが更に好ましく、2.0倍以上20倍以下であることが一層好ましい。
上述の密度との関係で、肌対向領域16の坪量は50g/m2以上であることが好ましく、80g/m2以上であることが更に好ましく、100g/m2以上であることが一層好ましい。また、600g/m2以下であることが好ましく、500g/m2以下であることが更に好ましく、400g/m2以下であることが一層好ましい。具体的には、肌対向領域16の坪量は50g/m2以上600g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以上500g/m2以下であることが更に好ましく、100g/m2以上400g/m2以下であることが一層好ましい。
一方、衣類対向領域17の坪量は50g/m2以上であることが好ましく、80g/m2以上であることが更に好ましく、100g/m2以上であることが一層好ましい。また、600g/m2以下であることが好ましく、500g/m2以下であることが更に好ましく、400g/m2以下であることが一層好ましい。具体的には、衣類対向領域17の坪量は50g/m2以上600g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以上500g/m2以下であることが更に好ましく、100g/m2以上400g/m2以下であることが一層好ましい。
肌対向領域16の坪量と衣類対向領域17の坪量との間の大小関係については、衣類対向領域17の密度を大きくするという観点からは、衣類対向領域17の坪量の方が高いことが好ましいが、これに限られない。
肌対向領域16及び衣類対向領域17を含む吸収性コア14全体の坪量は、100g/m2以上1200g/m2以下であることが好ましく、160g/m2以上1000g/m2以下であることが更に好ましく、200g/m2以上800g/m2以下であることが一層好ましい。
図2には、本発明の別の実施形態の吸収性物品10が示されている。この吸収性物品10においては、吸収性コアのうち、肌対向領域16のコア14Aが第1コアラップシート15Aで被覆されて第1吸収体13Aが形成されているとともに、衣類対向領域17のコア14Bが第2コアラップシート15Bで被覆されて第2吸収体13Bが形成されている。そして、第2吸収体13B上に第1吸収体13Aが重ね合わされて吸収体13が形成されている。このように、本実施形態の吸収性物品10においては、吸収体13が個々に区別される2つの吸収体13A,13Bから構成されている。
本実施形態においては、第1コアラップシート15A及び第2コアラップシート15Bのうちの少なくとも一方が血球凝集剤を含んでいることが好ましい。特に血球凝集剤は、表面シート11に対して最も近接して配置されている吸収性コアである肌対向領域16のコア14Aを被覆する第1コアラップシート15Aに含まれていることが好ましく、その場合、血球凝集剤は、第1コアラップシート15Aのうち、肌対向領域16のコア14Aと表面シート11との間に少なくとも含まれていることが好ましい。
血球凝集剤は、第1コアラップシート15A及び第2コアラップシート15Bの双方に含まれていてもよい。その場合、血球凝集剤は、第1コアラップシート15Aにおける肌対向領域16のコア14Aと表面シート11との間、及び肌対向領域16のコア14Aと衣類対向領域17のコア14Bとの間に少なくとも含まれており、且つ第2コアラップシート15Bにおける衣類対向領域17のコア14Bと肌対向領域16のコア14Aとの間、及び衣類対向領域17のコア14Bと裏面シート12との間に少なくとも含まれていることが好ましい。
本実施形態の吸収体13においては、図1に示す実施形態と同様に、肌対向領域16の密度が衣類対向領域17の密度よりも高くなっている。そして本実施形態においても、図1に示す実施形態と同様に、表面シート側で液の拡散が抑制されるとともに、吸収体中で血液を広く拡散させることができる。
特に本実施形態によれば、肌対向領域16のコア14Aと衣類対向領域17のコア14Bとが別個に第1及び第2コアラップシート15A,15Bによって被覆されている。第1コアラップシート15Aの肌対向面及び衣類対向面に血球凝集剤が含まれている場合には、血液が第1コアラップシート15Aと接触する機会が増え、溶出する血球凝集剤の量がより多くなるので、衣類対向領域17での血漿の拡散がより助長されるという有利な効果が奏される。また、第2コアラップシート15Bの肌対向面に血球凝集剤が含まれていると、コア14Aを通過した血液と血球凝集剤の接触機会が増えるので、コア14Bで血漿が吸収保持されやすくなるという有利な効果が奏される。
図2に示す実施形態において、肌対向領域16のコア14Aの密度と衣類対向領域17のコア14Bの密度との大小関係の詳細は、図1に示す実施形態と同様とすることができる。また、本実施形態に関し特に説明しない点については、図1に示す実施形態に関する説明が適宜適用される。
なお、図2に示す実施形態においては、図1に示す実施形態と異なり、肌対向領域16のコア14Aと衣類対向領域17のコア14Bとは直接に接しておらず、両者間に第1及び第2コアラップシート15A,15Bが介在している。しかしこのことは、肌対向領域16のコア14Aから衣類対向領域17のコア14Bへの液の円滑な移行を妨げるものではない。その理由は、第1及び第2コアラップシート15A,15Bとして一般に用いられる薄葉紙や不織布は、コア14A,14Bに比べて低密度のものであるからである。
図1及び図2に示す実施形態に関し、コアラップシート15,15A,15Bに血球凝集剤を含ませるためには、例えば血球凝集剤を含む繊維を原料として用い、公知の方法に従い繊維シートを製造すればよい。公知の方法とは、例えば湿式及び乾式抄紙法、スパンボンド法、スパンレース法、エアスルー法及びメルトブローン法などの各種の不織布製造方法などが挙げられる。別法として、公知の方法に従い繊維シートを製造した後、該繊維シートに対して血球凝集剤を付与する方法が挙げられる。血球凝集剤の付与のためには、各種の塗工方法、例えばスプレー法、ディッピング法、転写法、ダイ塗工、グラビア塗工、インクジェット法、スクリーン印刷法などが挙げられ、血球凝集剤をどのような塗工パターンで付与するかに応じて適切な塗工方法を採用すればよい。
図1及び図2に示す実施形態に関し、コアラップシート15,15A,15Bに含まれている血球凝集剤としては、例えばアクリルアミドコポリマーやポリリシンを初めとする、強く正帯電した線形カチオン性ポリマーを用いることができる。あるいは、ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシドのトリブロックコポリマーを用いることができる。そのようなトリブロックコポリマーの例としてはBASF社から入手可能な「プルロニックF−98」が挙げられる。また、血球凝集剤としては、国際公開第2016/093233号に記載のものを任意に用いることができる。
本発明者の知見によれば、血球凝集剤としてはカチオン性ポリマーが有用である。カチオン性ポリマーは例えば、高分子からなる主鎖から分岐する側鎖にカチオン性基が結合している高分子材料であるか、又は高分子からなる主鎖中にカチオン性基を有する高分子材料を包含する。血球凝集剤としてカチオン性ポリマーが有用である理由は次のとおりである。赤血球はその表面に赤血球膜を有する。赤血球膜は、2層構造を有している。この2層構造は、下層である赤血球膜骨格と上層である脂質皮膜からなる。赤血球の表面に露出している脂質皮膜には、グリコホリンと呼ばれるタンパク質が含まれている。グリコホリンはその末端にシアル酸と呼ばれるアニオン電荷を帯びた糖が結合した糖鎖を有している。その結果、赤血球はアニオン電荷を帯びたコロイド粒子として扱うことができる。コロイド粒子の凝集には一般に凝集剤が用いられる。赤血球がアニオン性のコロイド粒子であることを考慮すると、凝集剤としてはカチオン性の物質を用いることが、赤血球の電気二重層を中和する点から有利である。また凝集剤が高分子鎖を有していると、赤血球の表面に吸着した凝集剤の高分子鎖どうしの絡み合いが生じやすくなり、そのことに起因して赤血球の凝集が促進される。更に、凝集剤が官能基を有している場合には、該官能基間の相互作用によっても赤血球の凝集が促進されるので好ましい。カチオン性ポリマーによれば、以上の作用機序によって経血中に赤血球の凝集塊を生成することが可能になる。
カチオン性ポリマーを初めとする本発明で用いられる血球凝集剤は、擬似血液に、測定サンプルを1000ppm添加した際に、血液の流動性が維持された状態で、少なくとも2個以上の赤血球が凝集して凝集塊を形成する性質を有するものである。
前記の「血液の流動性が維持された状態」は、測定サンプル剤が1000ppm添加された擬似血液10gをスクリュー管瓶(株式会社マルエム製 品番「スクリュー管No.4」、口内径14.5mm、胴径27mm、全長55mm)に入れ、該擬似血液を入れたスクリュー管瓶を180度反転した際に、25℃において5秒以内で80%以上の該擬似血液が流れ落ちる状態を意味する。本明細書において擬似血液とは、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB−10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、60秒間)を用いて測定した粘度が25℃で8mPa・sになるように脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製)の血球・血漿比率を調整したものである。
前記の「2個以上の赤血球が凝集して凝集塊を形成」しているか否かは、次のようにして判断される。すなわち、測定サンプル剤が1000ppm添加された擬似血液を、生理食塩水で4000倍に希釈し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製 型番:LA−950V2、測定条件:フロー式セル測定、循環速度1、超音波なし)を用いたレーザー回折散乱法によって、温度25℃にて測定した体積粒径平均のメジアン径が、2個以上の赤血球が凝集した凝集塊のサイズに相当する10μm以上である場合に、「2個以上の赤血球が凝集して凝集塊を形成」していると判断する。
本発明で用いられる血球凝集剤は、前記の性質に当てはまる単一の化合物若しくは前記の性質に当てはまる単一の化合物を複数組み合わせた混合物、又は複数の化合物の組み合わせによって前記の性質を満たす(赤血球の凝集を発現し得る)剤である。つまり血球凝集剤とは、あくまで前記定義によるところの血球凝集作用があるものに限定した剤のことである。したがって、血球凝集剤に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、それを血球凝集剤組成物と表現し、血球凝集剤と区別する。なお、本明細書において「単一の化合物」とは、同じ組成式を有するが、繰り返し単位数が異なることにより、分子量が異なる化合物を含める概念である。
本発明で用いられる血球凝集剤としてのカチオン性ポリマーとしては、例えばカチオン化セルロースや、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン等のカチオン化デンプンなどが挙げられる。また、本発明で用いられる血球凝集剤は、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含むこともできる。本発明において「第4級アンモニウム塩」とは、窒素原子の位置にプラス一価の電荷を有している化合物、又は中和によって窒素原子の位置にプラス一価の電荷を生じさせる化合物を包含し、その具体例としては、第4級アンモニウムカチオンの塩、第3級アミンの中和塩、及び水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンが挙げられる。以下に述べる「第4級アンモニウム部位」も同様の意味で用いられ、水中で正に帯電する部位である。また、本発明において「共重合物」とは、2種以上の重合性単量体の共重合によって得られた重合物のことであり、二元系共重合物及び三元系以上の共重合物の双方を包含する。本発明において「重縮合物」とは、2種以上の単量体からなる縮合物を重合することで得られた重縮合物である。
本発明で用いる血球凝集剤が、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び/又は第4級アンモニウム塩共重合物及び/又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含む場合、該血球凝集剤は、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物のうちのいずれか1種を含んでいてもよく、あるいは任意の2種以上の組み合わせを含んでいてもよい。また第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。同様に、第4級アンモニウム塩共重合物は、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に同様に、第4級アンモニウム塩重縮合物は、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前述した各種のカチオン性ポリマーのうち、特に、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を用いることが、赤血球への吸着性の点から好ましい。
カチオン性ポリマーの一種である第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、以下の式1で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と1点で結合しているものであるポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムメチル硫酸塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルトリメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩)、ポリ(3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩)、ポリメタクル酸ジメチルアミノエチル、ポリアリルアミン塩酸塩、カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ポリアミジンなどが挙げられる。一方、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と2点以上で結合しているホモポリマーの例としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルアミン塩酸塩が挙げられる。
カチオン性ポリマーが、第4級アンモニウム塩共重合物である場合には、該共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を2種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。更に、ビニル系重合性単量体に加えて、又はそれに代えて、他の重合性単量体、例えば−SO2−などを用いることもできる。第4級アンモニウム塩共重合物は、前述したとおり、二元系の共重合物又は三元系以上の共重合物であり得る。
特に、第4級アンモニウム塩共重合物は、前記の式1で表される繰り返し単位と、以下の式2で表される繰り返し単位とを有することが、赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩重縮合物である場合には、該重縮合物として、前述した第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それらの縮合物を重合することで得られた重縮合物を用いることができる。具体例としては、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン重縮合物、ジメチルアミン/エピクロルヒドリン重縮合物などが挙げられる。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは、その分子量が1万以上であることが好ましく、3万以上であることが更に好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以上であることによって、赤血球間でのカチオン性ポリマーどうしの絡み合いや、赤血球間でのカチオン性ポリマーの架橋が十分に生じる。分子量の上限値は1000万以下であることが好ましく、300万以下であることが更に好ましく、100万以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以下であることによって、カチオン性ポリマーが経血中へ良好に溶解する。カチオン性ポリマーの分子量は、1万以上1000万以下であることが好ましく、1万以上300万以下であることが更に好ましく、3万以上100万以下であることが一層好ましい。本発明に言う分子量とは、重量平均分子量のことである。カチオン性ポリマーの分子量は、その重合条件を適切に選択することで制御することができる。カチオン性ポリマーの分子量は、東ソー株式会社製のHLC−8320GPCを用いて測定することができる。具体的な測定条件は次のとおりである。
カラムとしては、東ソー株式会社製のガードカラムαと分析カラムα−Mを直列でつないだものを、カラム温度:40℃で用いる。検出器は、RI(屈折率)を用いる。測定サンプルとしては、溶離液1mLに対して1mgの測定対象の処理剤(第4級アンモニウム塩ポリマー)を溶解させる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は、水に150mmol/Lの硫酸ナトリウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は、溶離液10mLに対して、分子量5900のプルラン、分子量47300のプルラン、分子量21.2万のプルラン、分子量78.8万のプルラン、各2.5mg溶解させたプルラン混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は流速:1.0mL/min、注入量:100μLで測定する。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は、エタノール:水=3:7(体積比)に50mmol/Lの臭化リチウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は、溶離液20mLに対して、分子量106のポリエチレングリコール(PEG)、分子量400のPEG、分子量1470のPEG、分子量6450のPEG、分子量5万のポリエチレンオキシド(PEO)、分子量23.5万のPEO、分子量87.5万のPEO、各10mg溶解させたPEG−PEO混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は流速:0.6mL/min、注入量:100μLで測定する。
カチオン性ポリマーを含め、血球凝集剤に具体例等に関する詳細は、例えば特開2016−107100号公報に記載されている。
本発明で用いる血球凝集剤は、第三成分、例えば、溶媒、可塑剤、香料、抗菌・消臭剤、スキンケア剤等の他の成分を1種以上含んだ組成物(血球凝集剤組成物)の形態であってもよい。溶媒としては、水、炭素数1ないし4の飽和脂肪族一価アルコール等の水溶性有機溶媒、又は該水溶性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどを用いることができる。香料としては、特開2007−244764号公報に記載されているグリーンハーバル様香気を有する香料、植物の抽出エキス、柑橘類の抽出エキスなどを用いることができる。抗菌・消臭剤としては、特開2004−244789号公報に記載されている抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物、特開2007−097953号公報に記載されているフェニル基を有する重合性モノマーから重合された多孔性ポリマー、特開2006−191966号公報に記載されている第4級アンモニウム塩、活性炭、粘土鉱物などを用いることができる。スキンケア剤としては、特開2004−255164号公報に記載されている植物エキス、コラーゲン、天然保湿成分、保湿剤、角質柔軟化剤、消炎剤などを用いることができる。
前記血球凝集剤組成物に占める血球凝集剤の割合は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、99質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが一層好ましい。前記血球凝集剤組成物に占める血球凝集剤の割合をこの範囲内に設定することで、吸収性物品に有効量の血球凝集剤を付与することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図1及び図2に示す実施形態においては、吸収性コアにおける肌対向領域16と衣類対向領域17とは、長手方向の長さ及び幅方向Yの長さが概ね同一であったが、これに代えて、肌対向領域16の長手方向の長さ及び幅方向Yの長さを、衣類対向領域17の長手方向の長さ及び幅方向Yの長さよりも短くして、吸収性物品10のフィット性を一層高めてもよい。
また前記の各実施形態においては、吸収性コアが相対的に低密度の肌対向領域16と、相対的に高密度の衣類対向領域17との2つの領域から構成されていたが、吸収性コアにおいて肌対向領域16が最も肌対向面側に位置し且つ衣類対向領域17が最も衣類対向面側に位置する限りにおいて、肌対向領域16と衣類対向領域17との間に、任意の密度を有する別の領域が存在していてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
図2に示す構造の生理用ナプキン10を製造した。表面シート11として坪量30g/m2のエアスルー不織布を用いた。裏面シート12としてポリプロピレンの透湿性シートを用いた。第1吸収体13A及び第2吸収体13Bの第1コアラップシート15A及び第2コアラップシート15Bとして、坪量16g/m2の薄葉紙を用いた。この薄葉紙の全域に、4級アンモニウム塩ポリマーとして、水溶性の第4級アンモニウム塩ホモポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ニットーボーメディカル社製、PAS−H−5L)を用いた。このポリマーを水に溶解して濃度5質量%の水溶液を調製し、この水溶液を薄葉紙に噴霧した後に乾燥させた。ポリマーが付着した薄葉紙の質量を基準とするポリマーの割合は23質量%であった。
第1吸収体13Aのコア14Aとして、パルプ積繊体からなり、密度が0.055g/cm3であり、坪量が300g/m2、厚さが5.5mmである積繊体を用いた。第2吸収体13Bのコア14Bとして、パルプ積繊体からなり、密度が0.2g/cm3であり、坪量が300g/m2、厚さが1.5mmである積繊体を用いた。
〔比較例1〕
実施例1において、第1コアラップシート15A及び第2コアラップシート15Bとして用いた薄葉紙に4級アンモニウム塩ポリマーを付着させなかった。また、第1吸収体13Aのコア14A及び第2吸収体13Bのコア14Bとして密度がいずれも0.055g/cm3、厚さが5.5mmのものを用いた。これ以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
〔比較例2〕
第2吸収体13Bのコア14Bとして、密度が0.055g/cm3、パルプ坪量が300g/m2、厚さが5.5mmのものを用いた。これ以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
〔比較例3〕
第1コアラップシート15A及び第2コアラップシート15Bに4級アンモニウム塩ポリマーを付着させなかった。これ以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた生理用ナプキンについて、液戻り量、厚さ方向の血液分布、及び液広がり面積の表裏比を以下の方法で測定した。その結果を以下の表1に示す。
〔液戻り量〕
生理用ナプキンを、その表面シートが上方を向くように水平に置いた。底部に直径1cmの注入口が付いた円筒付きアクリル板を表面シート上に載置し、該注入口から擬似血液を6g注入し、注入後5分間その状態を保持した。次に、円筒付きアクリル板を取り除き、表面シート上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/m2の吸収紙(市販のティッシュペーパー)を16枚重ねて載せた。更にその上に圧力が5gf/cm2になるように重りを載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後での紙の質量差を求め、その値を吸収紙に吸収された擬似血液の液戻り量とした。
〔厚さ方向の血液分布〕
生理用ナプキンを、その表面シートが上方を向くように水平に置いた。底部に直径1cmの注入口が付いた円筒付きアクリル板を表面シート上に載置し、該注入口から擬似血液を6g注入し、注入後3分間その状態を保持した。次に、円筒付きアクリル板を取り除き、生理用ナプキンをその構成部材に分解した。分解後、吸収性コア14における肌対向領域16及び衣類対向領域17について、擬似血液の注入前後での質量差を求め、その値を肌対向領域16及び衣類対向領域17のそれぞれに吸収された擬似血液の血液分布とした。
〔液広がり面積の表裏比〕
生理用ナプキンを、その表面シートが上方を向くように水平に置いた。底部に直径1cmの注入口が付いた円筒付きアクリル板を表面シート上に載置し、該注入口から擬似血液を6g注入し、注入後3分間その状態を保持した。次に、円筒付きアクリル板を取り除き、生理用ナプキンの肌対向面及び衣類対向面の血液の広がり面積をOHPシートに書き写し、面積を計算した。〔肌対向面での液広がり面積/衣類対向面での液広がり面積〕の値を算出し、その値を液広がり面積の表裏比とした。
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例のナプキンは、比較例のナプキンに比べて、液戻り量が少ないことが判る。また実施例のナプキンは、比較例のナプキンに比べて、上側の吸収性コアにおいて液が保持されるだけでなく、下側の吸収性コアにおいても液が保持されることが判る。すなわち上側の吸収性コアに保持される液量が減少し、下側の吸収性コアへ液が効果的に移行していることが分かる。更に実施例のナプキンは、比較例のナプキンに比べて、肌対向面側の液広がり面積よりも衣類対向面側の液広がり面積が大きいことが判る。