JP2017216998A - ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法 - Google Patents

ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、味の持続性が認められる、新しい香味を有するビールテイスト発酵アルコール飲料とその製造方法の提供。【解決手段】本発明によれば、麦芽等を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率が4.8%より大きい、ビールテイスト発酵アルコール飲料と、分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを配合する工程を含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料とその製造方法に関する。
ビールテイスト発酵アルコール飲料にコクや味の厚みを付与する技術としては、カルボキシメチルリジンを含むペプチドをコク付与物質として用いる技術(特許文献1)が知られている。しかし、ビールテイスト発酵アルコール飲料の香味の実現には依然として改善の余地があった。また、柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や、味の持続性の実現、余韻の付与などの観点から、ビールの香味の改良を試みた例は発明者らが知る限り報告されていない。
特開2014−158502号公報
ビールは、発泡酒や新ジャンルと比べて柔らかくスムーズなテクスチャーを有し、ボディ感が強いなどの好ましい味の特徴がある。本発明者らは、この違いに基づき、ビールの特徴をさらに強化する技術開発が実現すれば、これまでにない香味特徴のあるビールの製造を実現できると考えた。
本発明は、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、味の持続性が認められる、新しい香味を有するビールテイスト発酵アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤と風味改善方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、ビールテイスト発酵アルコール飲料において、特定分子量のペプチドと特定重合度のα−グルカンがビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や味の持続性に寄与することを見出した。本発明者らはまた、特定分子量のペプチドの比率や特定重合度のα−グルカンの含有量を特定範囲内にすることで、よりビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーや味の持続性が実現できることを見出した。本発明者らはさらに、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善に寄与するペプチドを具体的に特定した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率(以下、単に「ペプチド比率」ということがある)が4.8%より大きい、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
[2]重合度5〜10のα−グルカンの濃度が7.1mg/mL以上である、上記[1]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
[3]麦芽使用比率が50%以上である、上記[1]または[2]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
[4]分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを配合する工程を含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[5]前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、上記[4]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[6]重合度5〜10のα−グルカンを配合する工程をさらに含んでなる、上記[4]または[5]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[7]分子量10〜20kDaのペプチド(HPLCゲル濾過法)が飲料中の全タンパク量に対して4.8%より大きい比率となるよう配合される、上記[4]〜[6]のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[8]重合度5〜10のα−グルカンが7.1mg/mL以上の濃度となるよう配合される、上記[6]または[7]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[9]前記ペプチドを含む原料から該ペプチドを調製する工程をさらに含んでなる、上記[4]〜[8]のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[10]限外濾過法および硫安沈殿法により前記ペプチドを調製する、上記[9]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[11]前記ペプチドを含む原料が、麦芽および/または未発芽の麦類あるいはその加工品である、上記[9]または[10]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[12]前記ペプチドを含む原料が、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料である、上記[9]〜[11]のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[13]分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび/または重合度5〜10のα−グルカンを有効成分として含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
[14]前記ペプチドおよび/またはα−グルカンが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来するものである、上記[13]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
[15]分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび/または重合度5〜10のα−グルカンを添加する工程を含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。
[16]前記ペプチドおよび/またはα−グルカンが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来するものである、上記[15]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。
本発明によれば、分子量10〜20kDaのペプチドを配合するか、該ペプチドの比率を所定値の範囲内にすることによって、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、味の持続性が認められるビールテイスト発酵アルコール飲料を提供することができる。特に、麦芽使用比率が高いビールでは、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーと味の持続性が増強され、新しい香味特徴のビールを提供できることになり、消費者の多様な嗜好ニーズに応えることが出来る点で有利である。
参考例1でビール系麦芽アルコール飲料に添加したペプチド量を示した図である。 参考例1でビール系麦芽アルコール飲料に添加したα−グルカン量を示した図である。 参考例1の官能評価結果を示した図である。添加した画分ごとに官能評価スコアを示した。無添加のコントロールの官能評価スコアを2.5とした。 実施例1において実施したHPLCゲル濾過法の保持時間と既知物質の分子量から作成した検量線を示した図である。 実施例1および3の官能評価結果(味のスムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸を重合度5〜10のα−グルカン濃度(mg/mL)とし、横軸を10〜20kDaペプチド比率(%)として各サンプルをプロットした。横縞模様はサンプル番号1〜3(市販品)であり、菱型模様はサンプル番号4〜8(試醸品)であり、縦縞模様はサンプル番号1(市販品)にペプチドやグルカンを添加したサンプル番号9〜13(添加品)である。バブルサイズは「味のスムーズさ」のスコアを表す。 実施例1および3の官能評価結果(味の持続性)を示したバブルグラフである。縦軸を重合度5〜10のα−グルカン濃度(mg/mL)とし、横軸を10〜20kDaペプチド比率(%)として各サンプルをプロットした。横縞模様はサンプル番号1〜3(市販品)であり、菱型模様はサンプル番号4〜8(試醸品)であり、縦縞模様はサンプル番号1(市販品)にペプチドやグルカンを添加したサンプル番号9〜13(添加品)である。バブルサイズは「味の持続性」のスコアを表す。 重合度5〜10のα−グルカン濃度および10〜20kDaのペプチド濃度と官能評価結果との相関関係を評価した図である。図7Aは重合度5〜10のα−グルカン濃度に対して官能評価結果をプロットした図である。図7Bは10〜20kDaのペプチド濃度に対して官能評価結果をプロットした図である。図7Cは重合度5〜10のα−グルカン濃度に10〜20kDaのペプチド濃度を乗じた値に対して官能評価結果をプロットした図である。 参考例1で製造された飲料の試験区2についての2D−PAGE電気泳動の結果を示した図である。図左側は分子量マーカー(kDa)である。矢印で示されたバンドは表14のタンパク質同定結果と対応している。
発明の具体的説明
本発明において「ビールテイスト」とは通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを意味する。
本発明において「ビールテイスト発酵アルコール飲料」は、炭素源、窒素源および水などを原料として酵母により発酵させた飲料を意味し、ビール、発泡酒および原料として麦芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するものとすることができ、その場合、麦芽使用比率は、例えば、50%以上とすることができ、好ましくは60%以上である。ここで、「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料では、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率(ペプチド比率)(好ましくは、ビールテイスト発酵アルコール飲料の原料に由来する分子量10〜20kDaのペプチド比率)が特定値以上であることを特徴とする。ここで、ペプチド比率の算出に当たっては、飲料中のタンパク濃度(mg/mL)を全タンパク量とし、飲料中の分子量10〜20kDaのペプチド濃度(mg/mL)を分子量10〜20kDaのペプチド量とすることができる。また、本明細書において「ペプチド比率」の算出の元になるペプチド量は10〜20kDaの分子量を有する1種または2種以上のペプチドの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書においてペプチドの「分子量」はHPLCゲル濾過法により測定されるものであり、測定の具体例は後記実施例1に示される通りである。ペプチドおよびタンパクの定量はローリー法(Lowry法)により実施することができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、新しい香味を有すること、すなわち、味のスムーズさと味の持続性が増強されたことを特徴とする。ここで、「味のスムーズさ」とは、舌で味を感じる時の口当たりの柔らかさの度合いを意味する。また、「味の持続性」とは、溜飲後に持続する味の余韻の度合いを意味する。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料では、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を4.8%より大きい比率にすることができ、好ましくは4.9%以上、より好ましくは5.1%以上、さらに好ましくは5.2%以上、特に好ましくは5.4%以上、最も好ましくは5.7%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、重合度5〜10のα−グルカンの濃度が特定値以上であることを特徴とする。本明細書において「α−グルカン濃度」は重合度5〜10の1種または2種以上のα−グルカンの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書において「α−グルカン」とは複数のグルコース分子がα−1,4−グルコシド結合により結合して構成された直鎖状または分岐状のグルカン(例えば、α−1,4−グルコシド結合およびα−1,6グルコシド結合で構成された分岐状のグルカン)を意味する。さらに、本明細書においてα−グルカンの「重合度」はグルカンを構成するグルコース残基の個数を意味し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。α−グルカンの重合度と含有量の測定は、例えば、コロナCAD検出器を用いたHPLC分析により実施することができ、測定の具体例は後記実施例1に示される通りである。なお、本明細書および図面において重合度は単に「G」と表記されることがある。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料では重合度5〜10のα−グルカン濃度を7.1mg/mL以上の濃度にすることができ、好ましくは7.1mg/mLより大きい濃度であり、より好ましくは11.1mg/mL以上である。該α−グルカン濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、16.0mg/mLを上限とすることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料において味のスムーズさと味の持続性をより増強する観点から、分子量10〜20kDaのペプチド比率に加えて重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定値とすることが好ましい。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%以上のもの)において分子量10〜20kDaのペプチドを所定の比率にするとともに重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定の濃度に調整することにより味のスムーズさと味の持続性がより一層増強される。すなわち、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%以上のもの)では、全タンパク量に対する分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率を4.8%より大きい比率(好ましくは4.9%以上、より好ましくは5.1%以上、さらに好ましくは5.2%以上、特に好ましくは5.4%以上、最も好ましくは5.7%以上)にするとともに、重合度5〜10のα−グルカンの濃度を7.1mg/mL以上の濃度(好ましくは7.1mg/mLより大きい濃度、より好ましくは11.1mg/mL以上の濃度)にすることができる。ペプチド比率およびα−グルカン濃度はいずれも前記のような上限を設けることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は分子量10〜20kDaのペプチド比率および/または重合度5〜10のα−グルカン濃度が所定値の範囲内に調整される限り、通常のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵液を醸成させて、発酵麦芽飲料を製造することができる。得られたビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、濾過工程により酵母を除去することができる。なお、ビールテイスト発酵アルコール飲料のうちオールモルトビールは、麦芽、ホップ、水から製造できることはいうまでもない。
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。また、麦汁は、糖化工程中に市販の酵素製剤を添加して作製することもできる。例えば、タンパク分解のためにプロテアーゼ製剤を、糖質分解のためにα−アミラーゼ製剤、β−アミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等を、繊維素分解のためにβ−グルカナーゼ製剤、繊維素分解酵素製剤(例えば、ヘミセルラーゼ製剤)等をそれぞれ用いることができ、あるいはこれらの混合製剤を用いることもできる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では、麦芽以外に、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む));米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料;タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源;香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、醸造用水以外の使用原料を少なくとも麦芽およびホップとすることができ、場合によっては更に糖類、米、とうもろこし、でんぷん等を使用原料とすることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の分子量10〜20kDaのペプチド比率を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類の仕込み・糖化工程におけるタンパク分解を抑制することや、原料である麦芽の製麦工程におけるタンパク分解度を抑制することなどにより、調整することができる。なお、タンパク分解としては、麦芽や未発芽の麦類に内在するプロテアーゼ、あるいは外から添加するプロテアーゼ製剤によるものが挙げられる。分解の抑制は、プロテアーゼ製剤の添加量を減じる、タンパク分解の作用温度における処理時間を減じる、作用pHを至適条件から変更するなどにより行うことができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類の仕込みや糖化工程におけるα−グルカン分解を抑制すること、原料である麦芽の製麦工程におけるα−グルカン分解を抑制すること、あるいはα−グルカンの分解度が抑制された液糖を用いることなどにより、調整することができる。なお、α−グルカン分解としては、麦芽や未発芽の麦類に内在するαアミラーゼやβアミラーゼ等、あるいは外から添加するαアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等によるものが挙げられる。分解の抑制は、αアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等の添加量を減じる、α−グルカン分解の作用温度における処理時間を減じる、作用pHを至適条件から変更するなどにより行うことができる。
本発明においてはまた、分子量10〜20kDaのペプチドを含む原料や、重合度5〜10のα−グルカンを含む原料から、該ペプチドを含む画分や、該α−グルカンを含む画分を調製し、該画分をビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチド比率や、重合度5〜10のα−グルカン濃度がそれぞれ所定値の範囲内に調整されたビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。典型的には、ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から実施例1に記載された手順に従って分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や重合度5〜10のα−グルカンが含まれる画分を調製し、該画分をビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチド比率や、重合度5〜10のα−グルカン濃度がそれぞれ所定値の範囲内に調整されたビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。
すなわち、本発明によれば、分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチド(好ましくは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチド)を配合してなるビールテイスト発酵アルコール飲料が提供され、該飲料は本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の一部である。該ペプチドが配合されてなる飲料はビールテイスト発酵アルコール飲料としての風味が改善あるいは向上されており、具体的には、味のスムーズさと味の持続性が増強された飲料である。
本発明の飲料への該ペプチドの配合量は、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率が4.8%より大きくなるよう配合することができ、好ましくは4.9%以上、より好ましくは5.1以上、さらに好ましくは5.2%以上、特に好ましくは5.4%以上、最も好ましくは5.7%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。
分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチド(特に、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチド)の例としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、トリプシンインヒビター、α−アミラーゼ・インヒビター(BDAI−1)、非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)およびアベニン・ライクa1が挙げられ、好ましくは、これらのタンパク質およびペプチドは大麦由来、一部は小麦由来のものである。α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、トリプシンインヒビター、α−アミラーゼ・インヒビター(BDAI−1)、非特異的脂質転移タンパク1あるいはアベニン・ライクa1をビールテイスト発酵アルコール飲料に配合するときは、これらのペプチドあるいはタンパク質は麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料から調製したもの以外のペプチドあるいはタンパク質であってもよい。
本発明では、分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドに加えて、重合度5〜10のα−グルカンを配合することができる。該グルカンの配合量は、飲料中の重合度5〜10のα−グルカン濃度が7.1mg/mL以上になるよう配合することができ、好ましくは7.1mg/mLより大きくなるように、より好ましくは11.1mg/mL以上になるように配合することができる。該α−グルカン濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、16.0mg/mLを上限とする
ことができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料に配合することができるグルカンは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する重合度5〜10のα−グルカンを使用することができるが、これに限定されず、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料以外の原料から調製したグルカンであってもよい。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料において味のスムーズさと味の持続性をより増強する観点から、分子量10〜20kDaのペプチドに加えて重合度5〜10のα−グルカンを配合することが好ましい。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%以上のもの)において分子量10〜20kDaのペプチドを所定の比率にするとともに重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定の濃度に調整することにより味のスムーズさと味の持続性がより一層増強される。すなわち、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%以上のもの)では、全タンパク量に対する分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率が4.8%より大きく(好ましくは4.9%以上、より好ましくは5.1%以上、さらに好ましくは5.2%以上、特に好ましくは5.4%以上、最も好ましくは5.7%以上)なるように該ペプチドを配合するとともに、重合度5〜10のα−グルカンの濃度が7.1mg/mL以上(好ましくは7.1mg/mLより大きく、より好ましくは11.1mg/mL以上)なるように該グルカンを配合することができる。ペプチド比率およびα−グルカン濃度はいずれも前記のような上限を設けることができる。
ビールテイスト発酵アルコール飲料に配合される分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドおよび重合度5〜10のα−グルカンは、該ペプチドを含む原料や、該α−グルカンを含む原料から調製することができる。分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを含む原料としては、麦芽および/または未発芽の麦類並びにその加工品、穀物タンパク分解物(例えば、大豆タンパク分解物、コーンタンパク分解物)が挙げられる。麦芽および/または未発芽の麦類の加工品としては、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする麦汁、未発芽麦類のエキス、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料が挙げられ、好ましくは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料、より好ましくは麦芽を麦由来の原料の一部または全部とするビールテイスト発酵アルコール飲料である。原料からの分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドの調製手段としては、限外濾過法および硫安沈殿法の組み合わせや、ゲル濾過分画および固相抽出カラムの組み合わせが挙げられ、工業的生産の観点からは限外濾過法および硫安沈殿法の組み合わせが好ましい。なお、限外濾過法および硫安沈殿法の組み合わせにより分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを調製するときには、限外濾過法を実施し、次いで、硫安沈殿法を実施することができる。重合度5〜10のα−グルカンを含む原料としては、麦芽および/または未発芽の麦類並びにその加工品や、米、とうもろこし、馬鈴薯、糖類が挙げられる。麦芽および/または未発芽の麦類の加工品としては、上記のものが挙げられる。原料からの重合度5〜10のα−グルカンの調製手段としては、ゲル濾過分画および固相抽出カラムの組み合わせや、限外濾過、クロマト分離などの分離手段が挙げられ、これらの調製手段をイオン交換樹脂や活性炭を用いた不純物除去手段と組み合わせて実施してもよい。
ビールテイスト発酵アルコール飲料に配合される分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドおよび重合度5〜10のα−グルカンは、好ましくは麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料(より好ましくは麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するビールテイスト発酵アルコール飲料、特に好ましくはオールモルトビール)から調製することができる。例えば、ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、ゲル濾過分画や固相抽出カラムを用いて該飲料から分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や重合度5〜10のα−グルカンが含まれる画分を調製することができる。分子量10〜20kDaのペプチドや重合度5〜10のα−グルカンは必ずしも単離・精製されている必要はなく、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分画処理されて得られたペプチド画分やα−グルカン画分をビールテイスト発酵アルコール飲料へ配合することができる。
ビールテイスト発酵アルコール飲料への分子量10〜20kDaのペプチドや重合度5〜10のα−グルカンの配合は、発酵前の発酵前液、発酵中の発酵液、あるいは発酵後の発酵液への添加により行うことができる。例えば、ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や重合度5〜10のα−グルカンが含まれる画分を調製し、該画分を発酵後のビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチドや重合度5〜10のα−グルカンが配合されたビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は分子量10〜20kDaのペプチドが所定の比率となるよう配合され、場合によってはさらに重合度5〜10のα−グルカン濃度が所定値となるよう配合されること以外は、通常のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵麦芽飲料を醸成させることができる。得られたビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することができる。
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では麦芽以外の原料を使用でき、具体的には、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料に関する記載に従って麦芽以外の原料を使用できる。
本発明の別の面によれば、分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび/または重合度5〜10のα−グルカンを有効成分として含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤が提供される。本発明のさらに別の面によれば、分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび/または重合度5〜10のα−グルカンを添加する工程を含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法が提供される。本明細書において「ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善」とは、味のスムーズさと味の持続性が増強されることを意味するものとする。また、分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび重合度5〜10のα−グルカンは、好ましくは麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来するものである。本発明の風味改善剤と風味改善方法は本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料および該飲料の製造方法についての記載に従って実施することができる。
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す。
参考例1:ビールテイスト飲料に好ましい香味を付与するペプチド画分とα−グルカン画分の特定
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
大麦麦芽、ホップ、酵素製剤を用いて、インフュージョン法にてビールテイスト発酵アルコール飲料を製造した。
試験区1は、50℃の湯300mLに大麦麦芽100gを入れ、酵素製剤を添加して60分保持後、65℃に昇温して60分保持し、さらに78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。試験区2は、50℃工程を行わず、酵素製剤を添加しない以外は同様に麦汁を得た。続いて、ホップを0.8g/L投入して100℃で90分煮沸したのち、濾過して発酵前液を得た。
その後、常法に従ってビール酵母により発酵を行い、発酵液の香味確認を行った。8名のパネルにより、「味の柔らかさ」、すなわち雑味が抑制され、ビールらしく柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがあることを指標に、最低は1点、最高は5点として五段階で官能評価を行い、平均点を算出した。結果は表1に示される通りであった。
Figure 2017216998
表1の通り、試験区1よりも試験区2の方が官能評価のスコア(味の柔らかさ)が良好であり、香味の印象も好ましかった
(2)ゲル濾過分画
上記(1)で得られた発酵液を0.45μmフィルターで濾過し、濾過済み発酵液を計量して凍結乾燥した。乾燥物を100mM NaCl溶液で溶解して5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。サンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:5mL
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29cv(カラム・ボリューム)から19.1mL(フラクション0)、その後0.35cvから5mLずつ分画(フラクション1〜51)
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、表2のようにフラクションをプレ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
Figure 2017216998
(3)ペプチド画分とα−グルカン画分の精製
上記(2)で得られた各画分は、固相抽出カラム(画分A1、A2、Bは、Bond Elute C18 EWP、画分C、D、E、F、GはBond Elute C18を使用、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行い、脱塩水で洗浄した後、50%エタノール水溶液にて溶出して、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした。これをペプチド画分とした。また、固相抽出カラムの素通り画分は、さらにアニオン・カチオン・イオン交換樹脂(アンバーライトIR120HおよびアンバーライトXE583、オルガノ社製)にて脱塩後、少量の活性炭にて脱臭処理し、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした。これをα−グルカン画分とした。
(4)ローリー法によるタンパク定量
上記(3)のゲル濾過分画によって得られたペプチド画分のタンパク定量は市販のキット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad社製)を用いたLowry法で行った。まず、上記分画液を50μL採って遠心減圧濃縮乾固し、超純水10μLを加えて再溶解して分析サンプルとした。そこにA液を50μL加えて撹拌し、続いてB液を400μL加えて攪拌した。室温で15分発色反応を行った後、96ウェルプレートに350μL移して750nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線に基づき、ペプチド量を算出した。なお、検量線はBSA(ウシ血清アルブミン)を用いて作成した。
(5)α−グルカンの定量
上記(3)で得られたα−グルカン画分中に含まれるα−グルカンの定量は、グルコアミラーゼと緩衝液(最終濃度10U/mL、100mM酢酸Na pH4.5)を添加して40℃一晩反応させた後、市販のグルコースC−IIテストワコー(和光純薬製)にてグルコースとして測定した。また、含まれるα−グルカンの鎖長分布状況は、グルコアミラーゼ処理を行わず、MCI−gel CK02ASカラム(20×250mm)およびコロナCAD検出器(コロナ荷電化粒子検出器)により、評価した。具体的には、以下の条件のようにして重合度(鎖長)を分析した。移動度の標準品として、G1〜G7マルトオリゴ糖およびアミロースDP17を用いた。
カラム:MCI−gel CK02ASカラム(20×250mm、三菱化学社製)
移動相:MQ水
流速:1.0mL/分
カラム温度:85℃
検出器:コロナCAD検出器
(6)官能評価
これらの分画・精製サンプルを、大麦と大麦麦芽を使用した市販の麦芽使用比率49%未満のビール系アルコール飲料に、その飲料に含まれる各画分量の50%上乗せとなるよう添加し(図1および図2参照)、5名のパネルにより官能評価を行った。
官能評価の指標は、「旨み、甘味、厚み、ボディ、およびオフフレーバーとしての渋み・味の不調和」の総合評価として、1〜5点の五段階スコアで評価した。無添加のコントロールをスコア2.5とした。官能評価スコアの平均値は図3に、官能評価コメントは表3に示される通りであった。
Figure 2017216998
ペプチド分画物は、プレ画分からDにかけて、試験区2の官能評価スコア(図3)が高く、分画前の発酵液の官能評価結果と一致した。また、試験区2の画分A1およびA2において、スコアが高く、柔らかさ、雑味低下との官能評価コメントだった(表3)。試験区2のプレ画分では、スコアは同等に高いが、柔らかいが味自体は少ないとの官能評価コメントだった。画分B〜Dは、スコアは同等に高いが、官能評価コメントでは厚み、ボディ、旨味の寄与がより強いと評価された。すなわち、プレ画分、A1、A2、B、C、Dで、試験区2の評価は高いが、それぞれ味質が異なっており、画分A1、A2は、ビールらしい柔らかさ、雑味低下等の効果があることがわかった。
α−グルカン画分では、画分BおよびCを添加した場合、官能評価スコア(図3)が高くなり、官能評価コメント(表3)では、甘味、まろやか、スムーズさと表現されることがわかった。画分A1、A2由来のα−グルカンは、明確な香味が感じられなかった。
ペプチド分画物は、実施例1に記載の、Superdex 75 10/300カラムにて分析を行い、分子量を推定したところ、画分A1のペプチドが分子量約10〜20kDaに分布し、SDS−PAGE電気泳動上でも、画分A1〜A2において、同様の分子量約10〜20kDaのペプチドが分布していることが確認された(データ示さず)。また、香味上優れていた試験区2では、そのペプチド量が多くなっていることが確認された(図1)。
また、α−グルカン分画物の重合度分布を確認したところ表4の通りであった。
Figure 2017216998
表4に示される通り、明確な香味が感じられた画分B、Cの主要な成分は、重合度(DP)が2〜10の範囲が含まれることが確認された。また、香味上優れていた試験区2では、その画分のα−グルカン量が多くなっていることが確認された。画分A1、A2由来のα−グルカンは、主要な成分の鎖長がそれよりも長く(8〜約40)、明確な香味が感じられなかった。
以上の結果より、分画・精製した分子量約10〜20kDaのペプチド画分A1およびA2並びにグルコースの重合度が2〜10のα−グルカン画分BおよびCは、雑味が抑制され調和のとれたビールらしい味わいをビール系飲料に付与できることが明らかとなった。
実施例1:ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造と官能評価
A:ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造においては、主原料として大麦麦芽を使用した。糖化に際しては酵素製剤を用い、糖化の温度、時間を調整し、濾過することで、異なる組成の麦汁を得た。すなわち、糖化の温度帯は62℃、64℃、65℃あるいは68℃など、62〜68℃の中で選択した。糖化の時間は、それぞれの温度工程において、5分〜40分の間で調整した。また、原料の熱処理温度は70℃〜100℃の間で選択した。具体的には以下のようにして麦汁を得た。
(ア)サンプル番号4の糖化条件
65℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽40質量部、酵素製剤を投入して40分保持後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(イ)サンプル番号5の糖化条件
65℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽33.4質量部、酵素製剤を投入して30分保持後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(ウ)サンプル番号6〜8の糖化条件
62℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽40質量部、酵素製剤を投入して40分保持後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。62℃保持中に、一部の醪を別の釜に移送し、熱処理した後に元の釜に返送した。
上記の麦汁調製工程(ア)〜(ウ)に続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップを投入して100℃で90分間煮沸した後、麦汁静置を行ない、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加し、常法に従って主発酵および後発酵を行なった。続いて、後発酵後の発酵液をより低温で保持することにより貯蔵を行ない、濾過して、清澄なビールテイスト発酵アルコール飲料(サンプル番号4〜8)を得た。
B:市販ビール
麦芽使用比率67%以上の市販ビール(サンプル番号1〜3)(市販品)を、それぞれ分析試験に供した。
C:ビールテイスト発酵アルコール飲料のα−グルカン量の定量
(ア)HPLC分析用のサンプル調製
サンプル番号1〜3(市販品)およびサンプル番号4〜8(試醸品)は、固相抽出カラムを用いて分離し、分画用サンプルを得た。具体的には、製品液を固相抽出カラム(Bond Elute C18、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行って素通り画分を回収し、回収液をさらにBond Elute C18 EWP(Agilent technologies社製)に吸着させ、素通り画分を回収した。回収した素通り画分は、さらにイオン交換樹脂Sep Pak QMAおよびSep PakCM(いずれもWaters社)で順に処理した。得られた液を遠心濃縮させ、乾燥物を復水して分画用サンプルとした。
(イ)HPLCによる糖分析
MCI−gel CK02ASカラム(20×250mm)およびコロナCAD検出器により、サンプルに含まれるα−グルカンの鎖長分布状況を評価した。具体的には、以下の条件のようにして重合度(鎖長)を分析した。G5〜G10マルトオリゴ糖を標準品とした検量線で濃度を分析した。G5はマルトペンタオース(Maltopentaose)、G6はマルトヘキサオース(Maltohexaose)、G7はマルトヘプタオース(Maltoheptaose)、G8はマルトオクタオース(Maltooctaose)、G9はマルトノナオース(Maltononaose)、G10はマルトデカオース(Maltodecaose)である。マルトペンタオース(Maltopentaos
e)、マルトヘキサオース(Maltohexaose)およびマルトヘプタオース(Maltoheptaose)については東京化成社より標準品を購入し、マルトオクタオース(Maltooctaose)、マルトノナオース(Maltononaose)およびマルトデカオース(Maltodecaose)についてはElicityl SA社より標準品を購入し、質量分析器条件を設定した。
<HPLC分析条件>
カラム:MCI−gel CK02ASカラム(20×250mm、三菱化学社製)
移動相:MQ水
流速:1.0mL/分
カラム温度:85℃
検出器:コロナCAD検出器
上記(イ)で設定した分析条件のもとでサンプル番号1〜8の分析を行った結果は表5に示される通りである。
Figure 2017216998
D:タンパク定量
(ア)ゲル濾過分画用のサンプル調製
サンプル番号1〜3(市販品)およびサンプル番号4〜8(試醸品)は、計量して凍結乾燥した。乾燥物を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0 150mM NaCl含む)で溶解して2.5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。
(イ)HPLCゲル濾過法
HPLCゲル濾過法の条件は以下の通りであった。
<HPLCゲル濾過法分析条件>
カラム:Superdex 75 10/300(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:100μL
溶離液組成:50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、20%(v/v)アセトニトリル、150mM NaCl
流速:0.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分画プログラム:
Figure 2017216998
(ウ)分画範囲の設定
上記(イ)のHPLCゲル濾過法条件記載のカラム、溶離液、流速、検出波長において、分子量既知のペプチドを0.1〜5mg/mLで適宜超純水に溶解したものを50μL注入してHPLC分析を行い、保持時間を確認した(表7)。その保持時間、分子量から検量線(図4)を作成し、分子量範囲と分画範囲を決定した。
Figure 2017216998
(エ)分画液のLowry法によるタンパク定量
タンパク定量は、参考例1に記載のLowry法により行った。なお、得られた吸光度とBSA濃度から検量線を作成し、分画液のペプチド量(BSA換算)を計算し、分画液量、濃縮倍率から、当該画分の製品相当ペプチド濃度(mg/mL)を算出した。
(オ)10〜20kDaペプチドの定量
10〜20kDaペプチド濃度は、上記HPLCゲル濾過法における、検量線から決定した分子量10〜20kDaの範囲である画分3に含まれるタンパク濃度を、製品相当ペプチド濃度(mg/mL)に換算して求めた。また、10〜20kDaペプチド量が全タンパク量の中に占める比率、すなわち10〜20kDaのペプチド比率は、以下の算出式にて求めた。
Figure 2017216998
E:官能評価
サンプル番号1〜3(市販品)およびサンプル番号4〜8(試醸品)に関して、7名の訓練されたパネラーによって官能評価を実施した。評価項目の指標は、「味のスムーズさ」、「味の持続性」の2項目とし、それぞれ、1(弱い)〜9(強い)点の9段階スコアで評価した。各サンプルの分析結果と官能評価結果は表8に示される通りであった。また、後述の実施例3の結果と合わせて図5および図6に図示した。
Figure 2017216998
表8並びに図5および図6に示される通り、10〜20kDaのペプチド比率を4.8%より高くし、重合度5〜10のα−グルカンの量を7.1mg/mLより高くした試験醸造品において、「味のスムーズさ」と「味の持続性」が向上した。
なお、上記結果は、実施例1に記載した方法で分析した時の結果、すなわち、コロナCAD検出器(コロナ荷電化粒子検出器)を用いて得られた分析値である。本検出器は、物質の化学構造に依存せず、同一の分析条件下で、一貫した物質重量依存の応答性が得られる特徴がある(Thermofisher scientific社による)。
実施例2:α−グルカンおよびペプチドと官能評価の関係評価
市販のビール、発泡酒、新ジャンル飲料など、ビールテイスト発泡性アルコール飲料について、重合度が5〜10のα−グルカン濃度および10〜20kDaのペプチド濃度と、官能評価との相関係数(R2乗)を評価した。10〜20kDaのペプチド濃度の分析方法は実施例1に記載された手順に従って実施した。二つの成分の両方を加味した数値は、重合度が5〜10のα−グルカン濃度(mg/mL)と10〜20kDaのペプチド濃度(mg/mL)を乗じたものとして計算した。官能評価は、10名の訓練されたパネラーによって、「味の調和」、すなわちビールらしさに関わる味の調和を指標として、0〜10の11段階の幅で、0を全く感じない、10を評価者の認識の中でこれ以上感じたことがない、として評価した。
重合度5〜10のα−グルカン濃度は、以下のとおり分析した。
(ア)糖類分析用サンプルの調製
ビール製品、試験醸造設備で製造した製品サンプルを計量し、30%(v/v)アセトニトリル/70%(v/v)水溶液で50倍に希釈した物を定量用サンプルとした。
(イ)LC/MS/MSによる糖類定量
HPLC条件は下記の通りであった。
使用機器:1200 Series (Agilent technologies社製)
カラム:ACQUITY UPLC BEH Amide 2.1mm×50mm(粒径1.7μm)(Waters社製)
移動相A:95%(v/v)アセトニトリル水+0.1%(v/v)ギ酸+10mMギ酸アンモニウム
移動相B:水+0.1%(v/v)ギ酸+10mMギ酸アンモニウム
注入量:5μL
カラム温度:55℃
サンプル温度:20℃
グラジェント条件・流速:表9に示すとおりとした。
Figure 2017216998
(ウ)質量分析器条件の設定
実施例1.C.(イ)と同様にG5〜G10マルトオリゴ糖を標準品とした検量線で濃度を分析した。購入した標準品は50%(v/v)アセトニトリル/50%(v/v)水/0.1%(v/v)ギ酸/10mMギ酸アンモニウム溶液を用いて100ppmに調整し、ABSciex社製3200Qtrapに直接導入法にて注入し、各種パラメータの最適化を行った。
10〜20kDaのペプチド濃度分析は、実施例1.Dの記載に従って行なった。
重合度5〜10のα−グルカン濃度および10〜20kDaのペプチド濃度と官能評価結果は表10に示される通りであった。また、濃度と官能評価結果の関係は図7に示される通りであった。
Figure 2017216998
表10および図7に示される通り、重合度5〜10のα−グルカン濃度、10〜20kDaのペプチド濃度のそれぞれ単独で、官能評価結果との相関係数を求めたもの(それぞれ、R2=0.29、0.46)よりも、二つの成分(2成分の濃度を乗じた値)との相関係数の方が高くなる(R2=0.58)ことが明らかとなった。この結果から、重合度5〜10のα−グルカン、10〜20kDaのペプチドそれぞれ単独ではなく、二つの成分を指標とすることの有効性が確認された。
実施例3:α−グルカン、ペプチドのビールテイスト発酵アルコール飲料への添加と官能評価
A:ペプチド画分の調製
(A−1)ゲル濾過分画
サンプル番号3(市販品)(オールモルトビール)をガス抜きしたうえで凍結乾燥した。乾燥物を100mMNaCl溶液に溶解して5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとしたサンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
<ゲル濾過分画条件>
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社)
サンプル注入量:5mL
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29CV(カラム・ボリューム)から19.1mL(フラクション0)、その後0.35CVから5mLずつ画分(フラクション1〜51)
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、前記表2のようにフラクション
をプレ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
(A−2)ペプチド画分の精製
上記(A−1)で得られた画分のうち、A1画分(フラクション番号:F1〜12)について固相抽出カラム(Bond Elute C18 EWP)にて吸着処理を行い、脱塩水で洗浄した後、50%エタノール水溶液にて抽出して、濃縮乾固させて脱塩水で復水し、濃縮液とした。これをペプチド画分とした。
(A−3)Lowry法によるタンパク定量
上記(A−2)のゲル濾過分画によって得られたペプチド画分のタンパク定量は市販キット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad社)を用いたLowry法で行った。まず、上記ペプチド画分溶液を対製品で10倍希釈および40倍希釈となるように濃度調整し、サンプル5μLに対し、A液25μLを加えて撹拌し、続けてB液200μLを加えて撹拌した。室温で15分間発色反応を行った後、750nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線に基づき、ペプチド量を算出した。なお、検量線はBSA(ウシ血清アルブミン)を用いて作成した。
B:α−グルカン画分の調製
(B−1)α−グルカン画分の調製
サンプル番号1(市販品)(オールモルトビール)の糖組成に近づくよう市販マルトオリゴ糖から透析により低分子糖を除去してα−グルカン画分を調製した。透析膜はFloat-A-Lyzer G2(Spectrum Laboratories社)を使用し、オリゴ糖と透析膜のポアサイズは以下の通りであった。
Figure 2017216998
各マルトオリゴ糖1gをイオン交換水で10mLになるようにメスアップして溶解し、30時間透析を実施してα−グルカン画分とした。
(B−2)α−グルカンの定量
上記(B−1)で調製したα−グルカン画分中に含まれるα−グルカンの定量は、実施例1.C.(イ)に記載の方法に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により実施した。
(B−3)α−グルカン画分の糖組成分析
実施例1.C.(イ)に記載の方法に従ってHPLCによりα−グルカン画分の糖組成の分析を行なった。結果は下記表12に示される通りである。
Figure 2017216998
C:試飲サンプルの調製
サンプル番号1(市販品)(オールモルトビール)に上記Aで得られたペプチド画分および上記Bで得られたα−グルカン画分を添加し、サンプル番号9〜13(添加品)を調製した。具体的には、10〜20kDaのペプチド量が0.25mg/mLおよび0.30mg/mLとなるようにペプチド画分を添加した。同様に、重合度5〜10のα−グルカン量が11.1mg/mLおよび13.1mg/mLとなるように、α−グルカン画分を添加した。試飲サンプルと、ペプチドの量および比率並びにグルカンの量の対応関係は表13に記載した。
D:官能評価
無添加のサンプル番号1(市販品)と、前記Cで得られたサンプル番号9〜13(添加品)について、7名の訓練されたパネラーによって官能評価を実施した。評価項目の指標は、「味のスムーズさ」、「味の持続性」の2項目とし、評価は実施例1.Eに記載の方法に準じて実施した。各サンプルの官能評価結果は表13に示される通りであった。また、先述の実施例1.Eの結果と合わせて、図5および図6に図示した。
Figure 2017216998
表13並びに図5および図6に示される通り、10〜20kDaのペプチド比率を4.8%より高くし、重合度5〜10のα−グルカンの量を7.1mg/mLより高くすることにより、「味のスムーズさ」および「味の持続性」の評価が市販品1に対していずれも向上した。
実施例4:タンパク画分の分子種同定
本実施例では2D−PAGEおよび四重極−飛行時間型質量分析装置により、ビールらしく柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいに寄与するタンパク質の同定を試みた。
参考例1で得られたゲル濾過分画と固相抽出精製によるペプチド画分A1、A2の等量混合液200μLをTCAアセトン沈殿によってタンパク質を精製し、2D−PAGEによる電気泳動後、銀染色を行った。香味に違いの見られた試験区1と試験区2のサンプルの間では、分子量40kDa付近の太いバンドの量には違いがあまりなく、10〜20kDaに分布するバンドにおいて量的な差があることがわかった(データ示さず)。
次に、試験区2の2D−PAGEゲルから、図8で示す矢印のバンドを切り出し、トリプシン(ProteaseMAX(商標) Surfactant, Trypsin Enhancer、プロメガ社製)を用いてタンパク質を消化した。得られたトリプシン消化ペプチド溶液を四重極-飛行時間型質量分析装置(SCIEX社製)を用いてMS/MSスペクトルを取得し、SWISS−PROTに登録されているデータベースを用いてタンパク質の同定を行った。
四重極-飛行時間型質量分析装置によるタンパク質同定の結果は表14に示される通りであった。
Figure 2017216998
ゲル濾過画分(画分A1〜A2)中のタンパク質としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMa、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCMe、α−アミラーゼ・インヒビター(BDAI-1)、非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)およびアベニン・ライクa1が同定された。なお、同定されたタンパク質はオオムギ(Hordeum vulgare)由来、および一部、小麦(Triticum aestivum)由来のタンパク質として同定された。α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMa、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCMeは、プロテアーゼ阻害タンパク質として知られており、α−アミラーゼ・インヒビター(BDAI-1)はαアミラーゼ阻害蛋白質として知られる。また、non-specific lipid-transfer protein 1は、脂質転移タンパク質として知られている。
実施例5:限外濾過および硫安沈殿により調製されたペプチドのビールテイスト発酵アルコール飲料への添加と官能評価
本実施例では大規模生産に適したペプチドの調製方法と官能評価に及ぼす影響について検討した。
A:ペプチド画分の調製
(A−1)限外濾過による分画
サンプル番号1(市販品)(オールモルトビール)をガス抜きしたうえで、限外濾過膜(分画分子量;6000、AIP−1013D、旭化成社製)によりペプチドの濃縮および分画を行った。具体的には、サンプル番号1を約4倍濃縮して濃縮液を回収し、凍結乾燥した。次いで、乾燥物を市販品の6倍濃度となるように超純水で復水した後、分画分子量6000〜8000の透析膜Spectra/Por1(Spectrum Laboratories社製、以下同様)により透析した。
(A−2)硫安沈殿によるペプチドの分離
上記(A−1)で得られた溶液について40%飽和硫安沈殿分画を行うことにより、0〜40%飽和硫安沈殿物を得た。沈殿物を超純水に溶解し、透析膜Spectra/Por1により透析し塩を十分に除去した。次いで、凍結乾燥を行い超純水に溶解してペプチド濃縮液を得た。濃縮液について、10〜20kDaのペプチドが主成分となっていることをSDS−PAGE電気泳動の染色画像により確認した(データ示さず)。
B:α−グルカン画分の調製
α−グルカン画分の調製は、実施例3.Bの記載に従って行った。
C:試飲サンプルの調製
サンプル番号1に上記Bで得られたα−グルカン画分を添加し、サンプル番号14(添加品6)を調製した。サンプル番号14に、実施例3.(A−1)および(A−2)に記載された方法を用いてサンプル番号1から精製した10〜20kDaペプチド画分を添加し、サンプル番号15(添加品7)を調製した。また、サンプル番号14に上記Aで得られた10〜20kDaペプチド画分を添加し、サンプル番号16(添加品8)を調製した。具体的には、添加品7および8の10〜20kDaペプチド比率が5.6%となるように各ペプチド画分を添加した。また、添加品6〜8の重合度5〜10のα−グルカン量がいずれも8.5mg/mLとなるように、α−グルカン画分を添加した。試飲サンプルと、ペプチドの量および比率並びにα−グルカンの量の対応関係は表15に記載した。
D:官能評価
上記Cで得られたサンプル番号14〜16(添加品)について、4名の訓練されたパネラーによって実施例1.Eの記載に従って官能評価を実施した。各サンプルの官能評価結果は表15に示される通りであった。
Figure 2017216998
表15に示される通り、10〜20kDaペプチドを添加していない飲料(サンプル番号14)と比べ、限外濾過と硫安沈殿を組み合わせて得られた10〜20kDaペプチドを添加した飲料(サンプル番号16)では、ゲル濾過分画と固相抽出により得られた10〜20kDaペプチドを添加した飲料(サンプル番号15)と同様に、「味のスムーズさ」および「味の持続性」が向上することが確認された。
実施例6:異なる精製方法により調製されたペプチドのビールテイスト発酵アルコール飲料への添加と官能評価
A:ペプチド画分の調製
実施例3.(A−1)および(A−2)に記載された方法に従って、サンプル番号1(市販品)(オールモルトビール)から精製サンプル1(ペプチドA1画分)を調製した。また、実施例3.(A−1)に記載された方法に従って調製されたA1画分を、実施例3.(A−2)に記載の方法(固相抽出カラムによる精製)で精製する代わりに、70%飽和硫酸アンモニウムで沈殿した後、透析膜Spectra/Por1にて透析して塩を十分に除去することにより、精製サンプル2を調製した。
また、サンプル番号1(市販品)(オールモルトビール)を実施例5.(A−1)に記載された方法と同じ方法で限外濾過濃縮した後、40%飽和硫安沈殿分画および透析を行い、塩を十分に除去することにより、精製サンプル3(10〜20kDaペプチド画分)を調製した。さらに、その上清画分から40〜70%飽和硫安沈殿分画および透析を行い、塩を十分に除去することにより、精製サンプル4(40kDaペプチド画分)を調製した。また、70%飽和硫安沈殿分画した以外は実施例5.Aに記載された方法と同じ方法に従って、精製サンプル5(10〜40kDaペプチド画分)を調製した。各精製サンプル(精製サンプル1〜5)については、10〜20kDa、40kDaまたは10〜40kDaのペプチドがそれぞれ主成分となっていることをSDS−PAGE電気泳動の染色画像により確認した(データ示さず)。
B:試飲サンプルの調製
上記Aで得られた各精製サンプル(精製サンプル1〜5)を、サンプル番号1に含まれる各画分量の25%上乗せとなる量で、サンプル番号17(市販品)(麦芽50%未満のビールテイスト発酵アルコール飲料)に添加することでペプチド比率を増加させ、サンプル番号18〜22を調製した。
C:官能評価
サンプル番号17(市販品)を対照とし、前記Bで調製したサンプル番号18〜22(添加品)について、訓練されたパネラーによって官能評価を実施した。サンプル番号18および19は12人、サンプル番号20〜22は13人のパネラーが評価した。評価項目の指標は、「ビールらしい味わい」、「口内に残るざらつき」および「厚み、ボディ感」の3項目とした。ここで、「ビールらしい味わい」とは、ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられる、調和がとれていることをいい、1(弱い)〜9(強い)点の9段階で評価した。「口内に残るざらつき」とは、渋みや舌に残るざらざらした感触といった雑味をいい、1(弱い)〜9(強い)点の9段階で評価した。「ビールらしい味わい」、「口内に残るざらつき」の2項目については、得られた個人ごとの官能評価スコアを基準化して、その値の平均値として示した。なお、基準化スコアとは、個人ごとの官能評価スコア(評価スコア)の平均値と標準偏差を用いて、各官能評価スコア(評価スコア)から平均値を差し引いた後、標準偏差で割った値をいう。基準化スコアの式は、以下に示される通りである。
Figure 2017216998
「厚み、ボディ感」とは、飲みこんだ後の味の厚み、強さのこと、味や余韻が残ることをいい、その指摘が見られたパネルの数が0人を−、1〜2人を+、3〜4人を++、5〜6人を+++として評価した。なお、「ビールらしい味わい」では、前記の通りスムーズなテクスチャーが評価されていることから、実施例3および5で評価した「味のスムーズさ」が本実施例でも評価されている。また、「厚み、ボディ感」では、味の余韻が残ることが評価されていることから、実施例3および5で評価した「味の持続性」が本実施例でも評価されている。各サンプルの官能評価結果は表16に示される通りであった。
Figure 2017216998
表16に示される通り、麦芽50%未満のビールテイスト発酵アルコール飲料(市販品)に各精製画分を添加した場合においても、10〜20kDaペプチド比率を増加させることにより、「ビールらしい味わい」、「口内に残るざらつき」、および「厚み、ボディ感」の評価が、市販品(サンプル番号17)に対して向上した。具体的には、ゲル濾過で分画した後に、固相抽出法ではなく、70%飽和硫安沈殿でさらに分画精製した画分を添加したサンプル番号19において、固相抽出法で精製した画分を添加したサンプル番号18と同等の効果が得られた。また、オールモルトビール(市販品)から限外濾過と硫安沈殿分画によって精製された10〜20kDaペプチド画分(精製サンプル3)を添加した飲料(サンプル番号20)や、10〜40kDaペプチド画分(10〜20kDaペプチドも含む画分)(精製サンプル5)を添加した飲料(サンプル番号22)において、サンプル番号18と同等の効果が得られた。また、40kDaペプチド画分(精製サンプル4)を添加した飲料(サンプル番号21)においても弱いながら、効果が得られた。

Claims (14)

  1. 麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド量の比率が4.8%より大きい、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
  2. 重合度5〜10のα−グルカンの濃度が7.1mg/mL以上である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
  3. 麦芽使用比率が50%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
  4. 分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを配合する工程を含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  5. 前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、請求項4に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  6. 重合度5〜10のα−グルカンを配合する工程をさらに含んでなる、請求項4または5に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  7. 分子量10〜20kDaのペプチド(HPLCゲル濾過法)が飲料中の全タンパク量に対して4.8%より大きい比率となるよう配合される、請求項4〜6のいずれか一項に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  8. 重合度5〜10のα−グルカンが7.1mg/mL以上の濃度となるよう配合される、請求項6または7に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  9. 前記ペプチドを含む原料から該ペプチドを調製する工程をさらに含んでなる、請求項4〜8のいずれか一項に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  10. 限外濾過法および硫安沈殿法により前記ペプチドを調製する、請求項9に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  11. 前記ペプチドを含む原料が、麦芽および/または未発芽の麦類あるいはその加工品である、請求項9または10に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  12. 前記ペプチドを含む原料が、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料である、請求項9〜11のいずれか一項に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
  13. 分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび/または重合度5〜10のα−グルカンを有効成分として含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
  14. 分子量10〜20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドおよび/または重合度5〜10のα−グルカンを添加する工程を含んでなる、ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。
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