JP2017215478A - 回折光学素子及びそれを有する光学系、撮像装置、レンズ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 第1の回折格子と第2の回折格子の間に薄膜を有する回折光学素子において、格子面における反射率を低減することである。【解決手段】 回折光学素子10は第1の回折格子4と、第2の回折格子5と、第1の回折格子4および第2の回折格子5の間に設けられた薄膜6と、を有する。格子面4aと格子面5aの間に設けられている薄膜6aの膜厚の平均値をdsaとし、格子壁面4bと格子壁面5bの間に設けられている薄膜6bの膜厚の平均値をdhaとする。また、薄膜6bの波長550nmにおける屈折率の平均値をnhaとする。第1の回折格子4の波長550nmにおける屈折率をn1、第2の回折格子5の波長550nmにおける屈折率をn2、としたとき、DOE10は波長550nmにおいてn2<n1<nhadsa<dhaなる条件式を満たす。【選択図】 図1
Description
本発明は、デジタルカメラ等の光学系に用いられる回折光学素子に関する。
鋸刃状の回折格子(ブレーズ格子)を備える回折光学素子において、格子壁面に薄膜を設けて導波路を形成することで、回折効率が向上することが知られている。
特許文献1には、導波路を有する回折光学素子が記載されている。また、格子壁面に薄膜を設ける際、格子面にも薄膜を設けるように構成することで、容易かつ安価に導波路を有する回折光学素子が得られることが記載されている。
特許文献1の回折光学素子においては、格子壁面上に設けられた薄膜と同じかそれよりも厚い膜厚の膜を格子面上に設けることが記載されている。しかしながら、格子面に厚い膜を設ける場合、回折光学素子の格子面における反射率の波長依存性が増大してしまうおそれがある。
本発明の目的は、第1の回折格子と第2の回折格子の間に薄膜を有する回折光学素子において、格子面における反射率の波長依存性を低減することである。
本発明の回折光学素子は、第1の回折格子と、第2の回折格子と、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子の間に設けられた薄膜と、を有する回折光学素子であって、前記第1の回折格子の格子壁面と前記第2の回折格子の格子壁面の間に設けられている薄膜の波長550nmにおける屈折率を前記回折光学素子において平均した値をnha、前記第1の回折格子の格子壁面と前記第2の回折格子の格子壁面の間に設けられている薄膜の膜厚を前記回折光学素子において平均した値をdha、前記第1の回折格子の格子面と前記第2の回折格子の格子面の間に設けられている薄膜の膜厚を前記回折光学素子において平均した値をdsa、前記第1の回折格子の波長550nmにおける屈折率をn1、前記第2の回折格子の波長550nmにおける屈折率をn2、としたとき、
n2<n1<nha
dsa<dha
なる条件式を満たすことを特徴とする。
n2<n1<nha
dsa<dha
なる条件式を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、第1の回折格子と第2の回折格子の間に薄膜を有する回折光学素子において、格子面における反射率の波長依存性を低減することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)の各図は、本実施例の回折光学素子(以下、DOEと称する)10を示す概略図である。図1(a)に示すように、本実施例のDOE10は円形の形状を有する。また、図1(a)において、点線で示した同心円は、後述する第1の回折格子の形状を模式的に表したものである。
図1(b)は、DOE10の断面図である。図1(b)に示すように、DOE10は、第1の基板1と第2の基板2を有し、第1の基板1と第2の基板2の間には回折格子部3が設けられている。ここで、図1(b)に示したOは、DOE10の中心軸を表している。DOE10を撮像装置等の光学系に用いる場合、DOE10は中心軸Oと光学系の光軸が一致するように配置される。
回折格子部3の拡大図を図2に示す。なお、図2は回折格子部3の模式図であり、実際の寸法とは異なる。回折格子部3は、第1の回折格子4と、第2の回折格子5と、薄膜6を有する。
第1の回折格子4は第1の基板1に設けられている。第1の回折格子4の波長550nmにおける屈折率はn1である。また、第1の回折格子4は、格子面4aと格子壁面4bを交互に有しており、鋸刃状の回折格子(ブレーズ構造)となっている。ここで、格子面4aとは、鋸刃状の回折格子を構成する面のうち面法線と中心軸Oが成す角度が小さい方の面であり、格子壁面4bとは鋸刃状の回折格子を構成する面のうち面法線と中心軸Oが成す角度が大きい方の面である。
また、第2の回折格子5は第2の基板2に設けられている。第2の回折格子5の波長550nmにおける屈折率はn2である。n2はn1よりも小さくなっている。また、第2の回折格子5は、第1の回折格子4と同様に、格子面5aと格子壁面5bを交互に有しており、鋸刃状の回折格子(ブレーズ構造)となっている。ここで、格子面5aとは、鋸刃状の回折格子を構成する面のうち面法線と中心軸Oが成す角度が小さい方の面であり、格子壁面5bとは鋸刃状の回折格子を構成する面のうち面法線と中心軸Oが成す角度が大きい方の面である。
図1(a)において点線で示した複数の円は、第1の回折格子の格子面4aと格子壁面4bの境界を表したものである。図1(a)に示すように、第1の回折格子4は中心軸Oを中心とした同心円状の回折格子となっている。これは第2の回折格子5についても同様であり、第2の回折格子5は中心軸Oを中心とした同心円状の回折格子となっている。また、第1の回折格子の格子面4aと格子壁面4bの境界のうち、最も中心軸Oから離れている境界の半径はrmaxである。
図1(a)に示すように、第1の回折格子4および第2の回折格子5の格子ピッチを中心軸Oから離れるにつれて徐々に変化させることで、回折格子部3にレンズ作用(光の収斂作用や発散作用)を具備させることができる。
薄膜6は第1の回折格子4と第2の回折格子5の間に設けられている。本実施例において第1の回折格子4および第2の回折格子5は、共に薄膜6に密着するように構成されている。このとき、第1の回折格子4の谷部を結んだ包絡線と第2の回折格子5の谷部を結んだ包絡線の距離がDOE10の格子厚さd1となる。
以下の説明では、薄膜6において格子面4aと格子面5aの間に形成されている薄膜を薄膜6aと称する。また、薄膜6において格子壁面4bと格子壁面5bの間に形成されている薄膜を薄膜6bと称する。中心軸Oからrなる距離だけ離れた位置における薄膜6aの膜厚をds(r)とする。薄膜6aの膜厚とは格子面4aの面法線方向の厚みである。また、中心軸Oからrなる距離だけ離れた位置における薄膜6bの膜厚をdh(r)とする。薄膜6bの膜厚とは、格子壁面4bの面法線方向の厚みである。
また、中心軸Oからrなる距離だけ離れた位置での波長550nmにおける薄膜6aの屈折率をns(r)とする。また、中心軸Oからrなる距離だけ離れた位置での波長550nmにおける薄膜6bの屈折率をnh(r)とする。
なお、図2に示すように、DOE10において薄膜6aは格子面ごとに複数存在している。このため、ds(r)およびns(r)は薄膜6aが存在するようなrに対して定義される離散的な値である。また、薄膜6bは格子壁面ごとに複数存在している。このため、dh(r)およびnh(r)は薄膜6bが存在するようなrに対して定義される離散的な値である。
DOE10では、ds(r)のrに対する平均値dsaと、dh(r)のrに対する平均値dhaが異なるように構成されている。これによって格子面における反射率の波長依存性を低減している。ここで、DOE10の格子面における反射率とは、薄膜6aと格子面4aとの界面における反射光と、薄膜6aと格子面5aとの界面における反射光の干渉を考慮した正味の反射率を指す。
なお、dsaは格子面ごとに複数存在する薄膜6aの膜厚の和を格子面の数で除した値である。同様に、dhaは格子壁面ごとに複数存在する薄膜6bの膜厚の和を格子壁面の数で除した値である。
DOE10において、第m次の回折光の回折効率が最大となる条件は次の式(1)で与えられる。
Φ(λ)=−(n2(λ)−n1(λ))×d1=mλ (1)
Φ(λ)=−(n2(λ)−n1(λ))×d1=mλ (1)
Φ(λ)は回折格子部3によって生じる光路長差の最大値を表している。またλは光の波長を表しており、n1(λ)は第1の回折格子4の波長λにおける屈折率、n2(λ)は第2の回折格子5の波長λにおける屈折率である。
式(1)におけるmは回折次数であり、任意の整数値をとる。式(1)では、第1の回折格子4から第2の回折格子5へ向かって中心軸Oに平行な光が入射したときに、中心軸Oに近づく方向に回折する場合の回折次数を正(m>0)とし、中心軸Oから離れる方向に回折する場合の回折次数を負(m<0)としている。
DOE10は、式(1)に基づいて特定の回折次数(例えばm=1)における回折効率を高めるように設計される。ただし、現実には格子壁面4bや5bの周辺を透過する光束の波面には位相の乱れが生じる。このため、位相の乱れが無視できない程に大きくなると、実際の回折効率は式(1)の光路長差から見積もった回折効率よりも低くなってしまう。そこで、DOE10では以下の条件式(2)を満たすような薄膜6bを設けている。
n2<n1<nha (2)
n2<n1<nha (2)
ここで、nhaは薄膜6bの波長550nmにおける屈折率nh(r)をrに対して平均した値である。なお、nhaは格子面ごとに複数存在する薄膜6aの膜厚の和を格子面の数で除すことで得ることができる。
式(2)を満たすことにより、薄膜6bは光の閉じ込め効果を有し、導波路として機能する。格子壁面4bおよび格子壁面5b付近に入射した光束の一部は、薄膜6bの内部に閉じ込められ、格子面4aや格子面5aを通る光と略同じ位相で薄膜6b内を伝播するようになる。これによって格子壁面4bや5bの周辺を透過する光束の位相の乱れを低減することができ、結果としてDOE10の回折効率を高めることができる。
このような薄膜6bを格子壁面4bと格子壁面5bの間に設ける場合、格子面4aと格子面5aの間にも薄膜が形成されることを許容することで、DOE10を容易に得ることができる。しかしながら、格子面4aと格子面5aの間に屈折率の大きな薄膜が形成されると、DOE10の格子面における反射率の波長依存性が増大してしまい、フレアやゴーストが生じ得る。
そこで、DOE10の格子面における反射率の波長依存性を低減するために、薄膜6aは以下の条件式(3)を満たすように設けられている。
0<dsa<dha (3)
0<dsa<dha (3)
格子面における反射率の波長依存性は、薄膜6aの膜厚が薄いほど小さくなる傾向がある。したがって、式(3)を満足するように薄膜6aを設けることで、第1の回折格子4と第2の回折格子5の間に一様に薄膜を設ける場合と比較して、格子面における反射率の波長依存性を低減することができる。
また、dsaとdhaの値は以下の条件式(4)を満たすことが好ましい。
0.1<dsa/dha<0.9 (4)
0.1<dsa/dha<0.9 (4)
dsa/dhaを式(4)の下限よりも大きくすることで、DOE10を製造する際に薄膜6aと薄膜6bの膜厚の制御を容易に行うことができる。すなわち、dsa/dhaを式(4)の下限よりも大きくすることで、DOE10を容易に製造することができる。また、dsa/dhaを式(4)の上限よりも小さくすることで、格子面における反射率の波長依存性をより低減することができる。
なお、式(4)の範囲は好ましくは以下の式(4a)の範囲とすると良い。
0.3<dsa/dha<0.85 (4a)
0.3<dsa/dha<0.85 (4a)
また、DOE10は上述の式(3)を満たすことによって、格子面における反射率の波長依存性を低減しているが、格子面における反射率は小さいことが好ましい。格子面4aと薄膜6aの界面における反射率は、第1の回折格子4と薄膜6aの屈折率の差が小さいほど小さくなる傾向がある。同様に、格子面5aと薄膜6aの界面における反射率は、第2の回折格子5と薄膜6aの屈折率の差が小さいほど小さくなる傾向がある。
このため、薄膜6aの屈折率は、薄膜6bの屈折率よりも小さくすることが好ましい。具体的には、薄膜6aの屈折率ns(r)のrに対する平均値nsaはnhaよりも小さくすることが好ましい。これによって、DOE10の格子面における反射率を低減することができる。なお、nsaは格子面ごとに複数存在する薄膜6aの波長550nmにおける屈折率の和を格子面の数で除すことで得ることができる。
また、DOE10の格子面における反射率をより低減するためには、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
(n1+n2−2ns(r))2<0.3 (5)
(n1+n2−2ns(r))2<0.3 (5)
式(4)は、格子面毎に存在する複数の薄膜6aのそれぞれについて、薄膜6aの屈折率と第1の回折格子4および第2の回折格子5の屈折率の差が小さいことを表している。したがって、式(3)に加えて式(5)を満たすことで、DOE10の格子面における反射率および反射率の波長依存性を共に低減することができる。
なお、DOE10の格子面における反射率は、格子面4aと薄膜6aの界面で生じた反射光と、薄膜6aと格子面5aの界面で生じた反射光の干渉によって決まる。ゆえに、反射率は薄膜6aの膜厚に依っても変化する。したがって、格子面における反射率を低減するためには、以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.2 (6)
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.2 (6)
ここで、ds(r)はnm(ナノメートル)を単位とした値であり、αは0.016564nm−1である。
式(6)はより好ましくは式(6a)の範囲、さらに好ましくは式(6b)の範囲とすると良い。
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.16 (6a)
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.12 (6b)
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.16 (6a)
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.12 (6b)
また、薄膜6bの光の閉じ込め効果をさらに向上させて格子壁面4bおよび格子壁面5bにおいて生じる不要光をより低減するためには、好ましくは式(7)を、より好ましくは式(7a)を満たすと良い。
0.5≦dh(r)/Wc≦2 (7)
0.75≦dh(r)/Wc≦1.75 (7a)
0.5≦dh(r)/Wc≦2 (7)
0.75≦dh(r)/Wc≦1.75 (7a)
式(7)におけるWcは、TE偏光に関するカットオフ幅Wc,TEとTM偏光に関するカットオフ幅Wc,TMを用いて以下の式(8)で与えられる値である。
Wc=(Wc,TE+Wc,TM)/2 (8)
Wc=(Wc,TE+Wc,TM)/2 (8)
ここで、Wc,TEおよびWc,TMについて説明する。上述のように第1の回折格子4、薄膜6b、第2の回折格子5は、式(2)を満たしている。このとき、格子壁面に着目すると、第1の回折格子4と薄膜6bと第2の回折格子5は、非対称な3層平板導波路を構成しているとみることができる。
一般に、導波層(導波路として機能する層)の屈折率をng、クラッド層(導波層を挟みこんでいる層)の屈折率をnc1、nc2としたとき、非対称な3層平板導波路の固有値方程式は以下の式で与えられることが知られている。ただし、ng>nc1>nc2である。なお、式(9)はTEモード、式(10)はTMモードに対応している。
ここで、Wは導波層の厚みであり、βTMはTM偏光の伝搬定数、βTEはTE偏光の伝搬定数である。また、k0は光の波長をλとしたときk0=2π/λなる式で与えられる値である。
このとき、単一モードが発生するカットオフ幅を考えると、TE偏光について式(11)、TM偏光について式(12)が得られる。
ただし、κcは次の式(13)で、δcは式(14)で与えられる値である。
本実施例においては、nc1が第1の回折格子4の屈折率n1、nc2が第2の回折格子5の屈折率n2、波長550nmにおけるngが薄膜6bの屈折率nh(r)に対応している。ゆえに、式(11)および(12)を用いることでDOE10におけるWc,TEおよびWc,TMを求めることができる。
DOE10においては、薄膜6bの膜厚dh(r)を、上述のようにして得られたWc程度の厚さにすることで、薄膜6bにおける光の閉じ込め効果をより大きくすることができる。このため、少なくとも一部のrにおいて式(7)を満たすことで、回折効率をさらに向上させることができる。また、DOE10に対して斜めに光が入射した場合においても、格子壁面において生じる不要光をより低減することができる。なお、好ましくはrの値に依らず式(7)を満足すると良い。
また、DOE10を全体として見た場合、薄膜6bの光の閉じ込め効果の大きさは(nha−n1)×dhaの値で見積もることができる。薄膜6bにおける光の閉じ込め効果をより大きくするためには、以下の式(15)を満たすことが好ましい。
7<(nha−n1)×dha<30 [nm] (15)
7<(nha−n1)×dha<30 [nm] (15)
(nha−n1)×dhaの値を式(15)の範囲とすることで、薄膜6bにおける光の閉じ込め効果をより大きくすることができ、回折効率をよりに向上することができる。また、DOE10に対して斜めに光が入射した場合においても、格子壁面において生じる不要光をより低減することができる。
式(15)は、好ましくは以下の式(15a)の範囲とするとよい。
10<(nha−n1)×dha<20 [nm] (15a)
10<(nha−n1)×dha<20 [nm] (15a)
また、薄膜6bにおける光の閉じ込め効果の偏光依存性を低減するためには、比屈折率差は小さいことが好ましい。一方、比屈折率差が小さくなりすぎると薄膜6bにおける光の閉じ込め効果が小さくなる。すなわち、薄膜6bの導波路としての機能が低下する。そこで、薄膜6bにおける光の閉じ込め効果を維持しつつ偏光依存性を低減するためには、以下の式(16)を満たすことが好ましい。
0.005<Δ<0.045 (16)
0.005<Δ<0.045 (16)
ここで、Δは比屈折率差である。比屈折率差Δは以下の式(17)で与えられる。
また、式(16)は好ましくは以下の式(16a)の範囲とするとよい。
0.007<Δ<0.042 (16a)
さらに、波長700nmにおけるΔの値よりも、波長400nmにおけるΔの値を小さくすることが好ましい。これによって薄膜6bにおける光の閉じ込め効果の波長依存性を低減することができる。
さらに、波長700nmにおけるΔの値よりも、波長400nmにおけるΔの値を小さくすることが好ましい。これによって薄膜6bにおける光の閉じ込め効果の波長依存性を低減することができる。
次に、DOE10を製造する方法について説明する。まず、第1の回折格子4にスパッタリングや蒸着等を用いて一様に薄膜を成膜する。その後、格子面4a上に成膜された薄膜と、格子壁面4b上に成膜された薄膜が式(3)を満足するように膜厚を調整することで、薄膜6を得ることができる。
膜厚を調整する方法の一例としては、リソグラフィー法やナノインプリント法等を用いて、格子壁面4b上に成膜された薄膜のみに保護層を設けた後エッチングを行う方法がある。これによって、格子面4a上に成膜された薄膜のみの膜厚を変化させることができる。同様に、リソグラフィー法やナノインプリント法等を用いて格子面4a上に成膜された薄膜のみに保護層を設けた後、エッチングを行うことで格子壁面4b上に成膜された薄膜のみの膜厚を変化させることができる。このようにして、薄膜6を形成することができる。
このように薄膜6を形成したのち、第2の回折格子5を形成することによって、DOE10を得ることができる。
なお、DOE10を製造する方法は、式(2)および式(3)を満足する薄膜6を形成することができれば良く、上述した製造方法に限定されるものではない。また、DOE10における第1の回折格子4、第2の回折格子5、薄膜6を構成する材料は、式(2)を満足すれば特に限定されない。ただし、第1の回折格子4を構成する材料の屈折率分散と第2の回折格子5を構成する材料の屈折率分散は異なっていることが好ましい。具体的には、以下の条件式(18)、(19)を満たすことが好ましい。
νd1>35 (18)
νd2<25 (19)
νd1>35 (18)
νd2<25 (19)
ここで、式(18)におけるνd1は、第1の回折格子4のアッべ数である。また、式(19)におけるνd2は、第2の回折格子5のアッべ数である。なお、ある媒質のアッべ数はフラウンホーファー線のg線、F線、d線、C線に対する該媒質の屈折率をそれぞれNg,NF,Nd,NCとしたとき、次式(20)で与えられる。
νd=(Nd−1)/(NF−NC) (20)
νd=(Nd−1)/(NF−NC) (20)
これによって、可視波長の全域(400〜700nm)でより高い回折効率を得ることができる。
さらに、より高い回折効率を得るためには、第1の回折格子4と第2の回折格子5は、λ=550nmにおいて以下の条件式(21)を満足する整数mが存在するように設計することが好ましい。
0.960≦(n1−n2)×d1/(m×λ)≦1.040 (21)
0.960≦(n1−n2)×d1/(m×λ)≦1.040 (21)
これにより、m次の回折光の回折効率をより高めることができる。
光学系の一部にDOE10を用いる場合、DOE10を透過する光の量はDOE10の周辺部よりも中心部の方が多い。このため、DOE10の周辺部における反射光よりもDOE10の中心部における反射光の方がフレアやゴーストの原因となりやすい。一方、図1に示すDOE10のように第1の回折格子4が曲率を有する場合、蒸着等を用いて第1の回折格子4上に薄膜を成膜すると第1の回折格子4の中心部における膜厚と周辺部における膜厚は異なる場合がある。この場合、以下の条件式(22)を満たすように薄膜6aの膜厚を調節することが好ましい。
dsc<dse (22)
dsc<dse (22)
ここで、式(22)におけるdscは、DOE10の中心部における薄膜6aの膜厚の平均値であり、r=0からr=rmax/3までの範囲でds(r)を平均した値である。また、式(22)におけるdseは、DOE10の周辺部における薄膜6aの膜厚の平均値であり、r=2rmax/3からr=rmaxまでの範囲でds(r)を平均した値である。
式(22)を満たすことで、DOE10の中心部での反射率の波長依存性をより小さくすることができ、より広い波長範囲において反射率を低減することができる。これによって、DOE10を光学系の一部に用いる際に、DOE10の格子面における反射光に起因するフレアやゴーストの発生をより低減することができる。
また、図1に示すDOE10のように回折格子部3が曲率を有しているような場合、薄膜6を形成する際に、特にDOE10の周辺部において膜厚の製造誤差が大きくなる傾向がある。このため、薄膜6bの屈折率の変化による光の閉じ込め効果の変化を低減するためには、以下の条件式(23)を満足することが好ましい。
dhc<dhe (23)
dhc<dhe (23)
ここで、式(23)におけるdhcは、DOE10の中心部における薄膜6bの膜厚の平均値であり、中心軸Oからの距離が0以上rmax/3以下である範囲でdh(r)を平均した値である。また、式(23)におけるdheは、DOE10の周辺部における薄膜6bの膜厚の平均値であり、中心軸Oからの距離が2rmax/3以上rmax以下である範囲でdh(r)を平均した値である。
式(23)を満足することは、薄膜6bの膜厚はDOE10の中心部よりもDOE10の周辺部の方が厚いことを表す。このように薄膜6bの膜厚を調整し、DOE10の周辺部における薄膜6bの屈折率nheをDOE10の中心部における薄膜6bの屈折率nhcよりも小さくすることで、薄膜6bの膜厚の変化による光の閉じ込め効果の変化を低減することができる。これによって、DOE10を容易に製造することができる。
なお、DOE10の周辺部における薄膜6bの屈折率nhcは中心軸Oからの距離が0以上rmax/3以下である範囲でnh(r)を平均した値である。また、nheは、DOE10の周辺部における薄膜6bの膜厚の平均値であり、中心軸Oからの距離が2rmax/3以上rmax以下である範囲でnh(r)を平均した値である。
次に、本実施例のDOE10の特性について述べる。
DOE10において、第1の回折格子4はジルコニア(ZrO2)の微粒子を混合させたアクリル系の樹脂により形成されている。第1の回折格子4の屈折率は、波長550nmにおいて1.6230、フラウンホーファー線のd線に対して1.619である。また、第1の回折格子4のアッべ数νd1は43.2であり、部分分散比θgFは0.564である。ここで、部分分散比θgFとは、フラウンホーファー線のg線、F線、d線、C線に対する媒質の屈折率をそれぞれNg,NF,Nd,NCとしたとき、次の式(24)で与えられる値である。
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC) (24)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC) (24)
第2の回折格子5は酸化インジウムスズ(ITO)の微粒子を混合させたアクリル系の樹脂により形成されている。第2の回折格子5の屈折率は、波長550nmにおいて1.5724、フラウンホーファー線のd線に対して1.566である。また、第2の回折格子5のアッべ数νd2は19.0であり、部分分散比は0.418である。
薄膜6はアルミナ(Al2O3)とジルコニア(ZrO2)を混合した材料を用いて、薄膜6aの膜厚の平均値dsaと薄膜6bの膜厚の平均値dhaが異なるように形成されている。
また、格子厚さd1は10.79μmであり、格子ピッチは100〜3000μmである。
図3(a)に、本実施例のDOE10における薄膜6aの波長550nmの光に対する屈折率ns(r/rmax)と、薄膜6bの波長550nmの光に対する屈折率nh(r/rmax)を示す。図3(a)においてns(r/rmax)は実線で、nh(r/rmax)は点線で示している。なお、上述したようにns(r/rmax)はrに対して定義される離散的な値である。図3(a)では、それぞれのrに対応するns(r/rmax)の値を実線で結んで示している。これはnh(r/rmax)についても同様であり、それぞれのrに対応するnh(r/rmax)の値を点線で結んで示している。
図3(a)からわかるように、ほぼ全域でnh(r/rmax)よりもns(r/rmax)の方が小さくなっている。また、ns(r/rmax)をrに対して平均した値であるnsaは1.6216、nh(r/rmax)をrに対して平均した値であるnhaは1.6807となっている。従って、DOE10は式(2)を満足していることがわかる。
また、ns(r/rmax)はrが大きくなるに従って増加するように変化している。nh(r/rmax)はrが大きくなるに従って減少するように変化している。すなわち、DOE10の中心から周辺にかけて薄膜6aの屈折率は増加し、薄膜6bの屈折率は減少している。
図3(b)に、本実施例のDOE10における薄膜6aの膜厚ds(r/rmax)と、薄膜6bの膜厚dh(r/rmax)を示す。図3(b)においてds(r/rmax)は実線で、dh(r/rmax)は点線で示している。なお、上述したようにds(r/rmax)はrに対して定義される離散的な値である。図3(b)では、それぞれのrに対応するds(r/rmax)の値を実線で結んで示している。これはdh(r/rmax)についても同様であり、それぞれのrに対応するdh(r/rmax)の値を点線で結んで示している。
図3(b)に示すように、中心軸Oからの距離に依らずdh(r/rmax)はds(r/rmax)よりも大きくなっている。また、ds(r/rmax)をrに対して平均した値であるdsaは193nm、dh(r/rmax)をrに対して平均した値であるdhaは268nmとなっている。従って、DOE10は式(3)を満足していることがわかる。これによって、格子面における反射率の波長依存性を低減することができる。
また、ds(r/rmax)とdh(r/rmax)は、共に中心軸Oから離れるに従って増加するように変化している。すなわち、DOE10の中心から周辺にかけて薄膜6aおよび薄膜6bの膜厚は厚くなっている。
図4に、本実施例のDOE10におけるdh(r/rmax)、TE偏光のカットオフ幅とTM偏光のカットオフ幅の平均値Wcおよびdh(r/rmax)/Wcを示す。点線で示したdh(r/rmax)および一点鎖線で示したWcは左側の縦軸を参照する。実線で示したdh(r/rmax)/Wcは右側の縦軸を参照する。
図4に示す通り、DOE10は式(7)を満足している。
図5に、nh(r/rmax)とn1の差に、dh(r/rmax)を乗じた値とrの関係を示す。図5に示す通り、(nh(r/rmax)−n1)×dh(r/rmax)の値は、rに依らず略一定となっており、式(15)の範囲を満足していることがわかる。
図6に、式(6)の値とrの関係を示す。図6に示すように、DOE10はrに依らず式(6)を満たしている。これによって、格子面における反射率を低減することができる。
図7に、本実施例のDOE10の格子面における反射率とrの関係を示す。図7に示すように、格子面における反射率はrに依らず2%以下と低い値となっている。加えて、上述のように本実施例のDOE10では、式(3)を満たすことにより反射率の波長依存性を低減することができる。したがって、特定の波長のみならず、より幅広い波長帯域で反射率を低減することができる。
次に、実施例2のDOEについて説明する。本実施例のDOEは、実施例1と同様に、図2に示すような構成となっている。第1の回折格子4および第2の回折格子5は実施例1と同様の光学定数を有しており、薄膜6aおよび薄膜6bの屈折率や膜厚のみが実施例1と異なっている。
図8(a)に、本実施例のDOE10における薄膜6aの波長550nmの光に対する屈折率ns(r/rmax)と、薄膜6bの波長550nmの光に対する屈折率nh(r/rmax)を示す。図8(a)においてns(r/rmax)は実線で、nh(r/rmax)は点線で示している。
図8(a)からわかるように、本実施例のDOE10では、中心軸Oからの距離に依らずnh(r/rmax)よりもns(r/rmax)の方が小さくなっている。また、ns(r/rmax)をrに対して平均した値であるnsaは1.5298、nh(r/rmax)をrに対して平均した値であるnhaは1.6840となっている。従って、本実施例のDOE10は式(2)を満足していることがわかる。
また、ns(r/rmax)はrが大きくなるに従って増加するように変化している。nh(r/rmax)はrが大きくなるに従って減少するように変化している。すなわち、本実施例のDOE10では、DOE10の中心から周辺にかけて薄膜6aの屈折率は増加し、薄膜6bの屈折率は減少している。
図8(b)に、本実施例のDOE10における薄膜6aの膜厚ds(r/rmax)と、薄膜6bの膜厚dh(r/rmax)を示す。図8(b)においてds(r/rmax)は実線で、dh(r/rmax)は点線で示している。
図8(b)に示すように、中心軸Oからの距離に依らずdh(r/rmax)はds(r/rmax)よりも大きくなっている。また、ds(r/rmax)をrに対して平均した値であるdsaは153nm、dh(r/rmax)をrに対して平均した値であるdhaは246nmとなっている。従って、DOE10は式(3)を満足していることがわかる。これによって、格子面における反射率の波長依存性を低減することができる。
また、ds(r/rmax)とdh(r/rmax)は、共に中心軸Oから離れるにつれて増加するように変化している。すなわち、本実施例のDOE10では、DOE10の中心から周辺にかけて薄膜6aおよび薄膜6bの膜厚は共に厚くなっている。
図9に、本実施例のDOE10におけるdh(r/rmax)、TE偏光のカットオフ幅とTM偏光のカットオフ幅の平均値Wcおよびdh(r/rmax)/Wcを示す。点線で示したdh(r/rmax)および一点鎖線で示したWcは左側の縦軸を参照する。実線で示したdh(r/rmax)/Wcは右側の縦軸を参照する。
図9に示す通り、本実施例のDOE10は式(7)を満足している。
図10に、本実施例のDOE10におけるnh(r/rmax)とn1の差に、dh(r/rmax)を乗じた値とrの関係を示す。図10に示す通り、(nh(r/rmax)−n1)×dh(r/rmax)の値は、rに依らず略一定となっており、本実施例のDOE10は式(15)の範囲を満足していることがわかる。
図11に、本実施例のDOE10における式(6)の値とrの関係を示す。図11に示すように、本実施例のDOE10はrに依らず式(6)を満たしている。これによって、格子面における反射率を低減することができる。
図12に、本実施例のDOE10の格子面における反射率とrの関係を示す。図12に示すように、格子面における反射率はrに依らず2%以下と低い値となっている。加えて、上述のように本実施例のDOE10では、式(3)を満たすことにより反射率の波長依存性を低減することができる。したがって、特定の波長のみならず、より幅広い波長帯域で反射率を低減することができる。
次に、実施例3のDOEについて説明する。本実施例のDOEは、実施例1や実施例2と同様に、図2に示すような構成となっている。第1の回折格子4および第2の回折格子5は実施例1や実施例2と同様の光学定数を有しており、薄膜6aおよび薄膜6bの屈折率や膜厚のみ実施例1および実施例2と異なっている。
図13(a)に、本実施例のDOE10における薄膜6aの波長550nmの光に対する屈折率ns(r/rmax)と、薄膜6bの波長550nmの光に対する屈折率nh(r/rmax)を示す。図13(a)においてns(r/rmax)は実線で、nh(r/rmax)は点線で示している。
図13(a)からわかるように、本実施例のDOE10では、中心軸Oからの距離に依らずnh(r/rmax)よりもns(r/rmax)の方が小さくなっている。また、ns(r/rmax)をrに対して平均した値であるnsaは1.5099、nh(r/rmax)をrに対して平均した値であるnhaは1.6890となっている。
また、ns(r/rmax)はrが大きくなるに従って増加するように変化している。nh(r/rmax)はrが大きくなるに従って減少するように変化している。すなわち、本実施例のDOE10では、DOE10の中心から周辺にかけて薄膜6aの屈折率は増加し、薄膜6bの屈折率は減少している。
図13(b)に、本実施例のDOE10における薄膜6aの膜厚ds(r/rmax)と、薄膜6bの膜厚dh(r/rmax)を示す。図13(b)においてds(r/rmax)は実線で、dh(r/rmax)は点線で示している。
図13(b)に示すように、rに依らずdh(r/rmax)はds(r/rmax)よりも大きくなっている。また、ds(r/rmax)をrに対して平均した値であるdsaは127nm、dh(r/rmax)をrに対して平均した値であるdhaは223nmとなっている。従って、DOE10は式(3)を満足していることがわかる。これによって、格子面における反射率の波長依存性を低減することができる。
また、ds(r/rmax)とdh(r/rmax)は、共に中心軸Oから離れるにつれて増加するように変化している。すなわち、本実施例のDOE10では、DOE10の中心から周辺にかけて薄膜6aおよび薄膜6bの膜厚は共に厚くなっている。
図14に、本実施例のDOE10におけるdh(r/rmax)、TE偏光のカットオフ幅とTM偏光のカットオフ幅の平均値Wcおよびdh(r/rmax)/Wcを示す。点線で示したdh(r/rmax)および一点鎖線で示したWcは左側の縦軸を参照する。実線で示したdh(r/rmax)/Wcは右側の縦軸を参照する。
図14に示す通り、本実施例のDOE10は式(7)を満足している。
図15に、本実施例のDOE10におけるnh(r/rmax)とn1の差に、dh(r/rmax)を乗じた値とrの関係を示す。図10に示す通り、(nh(r/rmax)−n1)×dh(r/rmax)の値は、rに依らず略一定となっており、本実施例のDOE10においても式(15)の範囲を満足していることがわかる。
図16に、本実施例のDOE10における式(6)の値とrの関係を示す。図16に示すように、本実施例のDOE10においてもrに依らず式(6)を満たしている。これによって、格子面における反射率を低減することができる。
図17に、本実施例のDOE10の格子面における反射率とrの関係を示す。図17に示すように、格子面における反射率はrに依らず2%以下と低い値となっている。加えて、上述のように本実施例のDOE10では、式(3)を満たすことにより反射率の波長依存性を低減することができる。したがって、特定の波長のみならず、より幅広い波長帯域で反射率を低減することができる。
以上の実施例1乃至3のDOEにおける種々の値を次の表1にまとめて示す。なお、表1に示した各値は、波長550nmにおける値である。
次に、実施例4の光学系について説明する。屈折光学素子とDOEを共に用いることで、光学系の色収差を低減することができることが知られている。本実施例の光学系も、DOEによって色収差を低減している。本実施例の光学系は、例えば撮像装置の光学系として用いることができる。
図18に本実施例の光学系100を示す。本実施例の光学系100は、複数の光学素子101を有している。複数の光学素子101のうちの1つはDOE10となっており、その他は屈折光学素子(レンズ)となっている。本実施例におけるDOE10は、上述した実施例1乃至3のいずれかと同様の特性を有している。また、図18において102は絞り、103は結像面を表している。
実施例1乃至3で述べたように、DOE10では格子面における反射率の波長依存性を低減している。これによって、DOE10の格子面における反射光に起因したフレアやゴーストの発生を低減することができる。これによって、高品位な像を得ることができる。
なお、本実施例では、絞り102の近傍に配置された平板ガラスにDOE10を設けているが、本発明はこれに限定されない。DOE10をレンズの凹面又は凸面上に設けてもよい。また、本実施例では光学系100が1つのDOE10を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。光学系100は複数のDOEを有していても良い。
次に、実施例5の光学系について説明する。本実施例の光学系は、例えば双眼鏡の光学系として用いることができる。
図19に本実施例の光学系200を示す。本実施例の光学系200は、対物レンズ部201と、プリズム205と、接眼レンズ部206を有する。207は瞳面である。
対物レンズ部201は、屈折光学素子(レンズ)とDOE10を有する。これによって結像面203における色収差を低減している。本実施例におけるDOE10は、上述した実施例1乃至3のいずれかと同様の特性を有している。
実施例1乃至3で述べたように、DOE10では格子面における反射率の波長依存性を低減している。これによって、DOE10の格子面での反射光に起因したフレアやゴーストの発生を低減することができる。これによって、本実施例の光学系200においても高品位な像を得ることができる。
なお、本実施例では、対物レンズ部201に配置された平板ガラスにDOE10を設けているが、本発明はこれに限定されない。DOE10をレンズの凹面又は凸面上に設けてもよい。また、本実施例では光学系200が1つのDOE10を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。光学系200は複数のDOEを有していても良い。
また、本実施例では、対物レンズ部201にDOE10が配置されている場合について説明したが、プリズム205の表面や接眼レンズ206にDOE10を配置しても良い。ただし、DOE10を結像面203よりも物体側に設けることで、対物レンズ部201における色収差を低減することができるため、DOE10は結像面203よりも物体側に設けることが好ましい。
また、本実施例では、双眼鏡の観察光学系について説明したが、本発明の回折光学素子は、望遠鏡等の光学系にも適用することができる。また、さらにはレンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式ファインダにも適用することができる。
次に実施例6の撮像装置について説明する。
図20は、本実施例の撮像装置としてのデジタルカメラ300である。デジタルカメラ300は、レンズ部301に前述した実施例4の光学系100を有する。また、光学系100の結像面103には、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子303が、本体部302に配置される。
デジタルカメラ300が光学系100を有することで、フレアやゴーストの発生を低減した高品位な画像を得ることができる。
なお、図20では、本体部302とレンズ部301が一体となった例を示しているが、撮像装置本体に対して着脱可能なレンズ装置に本発明を適用してもよい。このようなレンズ装置は、例えば一眼カメラ用の交換レンズとして用いられる。この場合、図20は、光学系100を有するレンズ装置301が撮像装置本体302に装着されている状態と見ることもできる。
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
10 回折光学素子
4 第1の回折格子
5 第2の回折格子
6 薄膜
4 第1の回折格子
5 第2の回折格子
6 薄膜
Claims (14)
- 第1の回折格子と、第2の回折格子と、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子の間に設けられた薄膜と、を有する回折光学素子であって、
前記第1の回折格子の格子壁面と前記第2の回折格子の格子壁面の間に設けられている薄膜の波長550nmにおける屈折率を前記回折光学素子において平均した値をnha、
前記第1の回折格子の格子壁面と前記第2の回折格子の格子壁面の間に設けられている薄膜の膜厚を前記回折光学素子において平均した値をdha、
前記第1の回折格子の格子面と前記第2の回折格子の格子面の間に設けられている薄膜の膜厚を前記回折光学素子において平均した値をdsa、
前記第1の回折格子の波長550nmにおける屈折率をn1、
前記第2の回折格子の波長550nmにおける屈折率をn2、としたとき、
n2<n1<nha
dsa<dha
なる条件式を満たすことを特徴とする回折光学素子。 - 前記第1の回折格子の格子面と前記第2の回折格子の格子面の間に設けられている薄膜の波長550nmにおける屈折率を前記回折光学素子において平均した値をnsaとしたとき、nsaはnhaよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
- 7<(nha−n1)×dha<30 [nm]
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子。 - 前記回折光学素子において、
0.1<dsa/dha<0.9
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回折光学素子。 - 前記第1の回折格子および前記第2の回折格子は、共に同心円状の回折格子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回折光学素子。
- 前記同心円の中心からの距離がrである位置における前記第1の回折格子の格子面と前記第2の回折格子の格子面の間に設けられている薄膜の波長550nmにおける屈折率をns(r)としたとき、
(n1+n2−2ns(r))2<0.3
なる条件式を満たすことを特徴とする請求項6に記載の回折光学素子。 - 前記同心円の中心からの距離がrである位置における前記第1の回折格子の格子面と前記第2の回折格子の格子面の間に設けられている薄膜の膜厚をds(r)[nm]、波長550nmにおける屈折率をns(r)としたとき、
[sin{α×ds(r)}×{n1+n2−2ns(r)}]2<0.2
α=0.016564nm−1
なる条件式を満足することを特徴とする請求項6または7に記載の回折光学素子。 - 前記同心円の中心からの距離がrである位置における前記第1の回折格子の格子面と前記第2の回折格子の格子面の間に設けられている薄膜の膜厚をds(r)、前記第1の回折格子の格子面と格子壁面の境界のうち、前記同心円の中心から最も離れている境界の半径をrmaxとしたとき、
前記同心円の中心からの距離が0以上rmax/3以下である範囲においてds(r)を平均した値をdsc、前記同心円の中心からの距離が2rmax/3以上rmax以下である範囲においてds(r)を平均した値をdseとしたとき、
dsc<dse
なる条件式を満たすことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の回折光学素子。 - 前記同心円の中心から距離がrである位置における前記第1の回折格子の格子壁面と前記第2の回折格子の格子壁面の間に設けられている薄膜の波長550nmにおける屈折率をdh(r)、前記第1の回折格子の格子面と格子壁面の境界のうち、前記同心円の中心から最も離れている境界の半径をrmaxとしたとき、
前記同心円の中心からの距離が0以上rmax/3以下である範囲においてdh(r)を平均した値をdhc、前記同心円の中心からの距離が2rmax/3以上rmax以下である範囲においてdh(r)を平均した値をdheとしたとき、
dhc<dhe
なる条件式を満たすことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項に記載の回折光学素子。 - 複数の光学素子を有し、前記複数の光学素子のうち、少なくとも1つは、請求項1乃至11のいずれか一項に記載された回折光学素子であることを特徴とする光学系。
- 撮像素子と、請求項12に記載の光学系とを有することを特徴とする撮像装置。
- 撮像装置本体に対して着脱可能であり、請求項12に記載の光学系を有することを特徴とするレンズ装置。
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JP2020027130A (ja) * | 2018-08-09 | 2020-02-20 | キヤノン株式会社 | 回折光学素子およびそれを用いた光学機器 |
-
2016
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