JP2017214781A - コンクリート構造物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より確実にひび割れの進行を抑制するとともに、施工性向上も可能とする技術を提供する。【解決手段】引張強度に関する配向性を有し、且つ柔軟性を示す指標Lが20−80mmの範囲内であるネット部材が、型枠内面に仮止めされ、コンクリート打設後、コンクリート硬化によりネット部材が型枠からコンクリート構造物表層部へ転写されてコンクリート構造物と一体化され、型枠が開放され、コンクリート構造物が構築される。ただし、柔軟性を示す指標Lを以下のとおり定義する。ネット部材を縦寸法50mm、横寸法250mmの矩形状試験片とする。矩形状試験片を水平台の端辺から平行に150mm突出させて、残り部分の100mmを水平台上に固定する。この状態で自重により垂れ下がった矩形状試験片の先端と水平台の上面を延長した水平面との距離を柔軟性指標Lとする。【選択図】図1

Description

本発明はコンクリート構造物のひび割れ抑制技術に関する。
コンクリートは、型枠により自在に構造物を形成でき、比較的安価で入手が容易であり、圧縮強度が大きく、優れた建設材料であるが、引張強度や曲げ強度が小さく、ひび割れが発生しやすいという問題を有する。
コンクリート構造物にひび割れが発生すれば、経時変化とともにひび割れ幅が拡大する。ひび割れ幅が大きくなると、美観を損なうだけでなく、ひび割れから侵入した水分によってコンクリート構造物内部の鉄筋の錆が進行し、コンクリート構造物の強度が低下するおそれもある。
ただし、ひび割れ幅が許容範囲であれば、美観の点でも目立つこともなく、コンクリート構造物の使用上、問題となることはほぼない。また、ひび割れ幅が許容範囲であれば、容易に補修でき、使用を継続できる。
たとえば、コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針−2009−では、表1に示すように、特殊な使用環境でなければ、ひび割れ幅0.3mm以下に抑制できれば、構造物の部材性能に影響を及ぼさないとされている。
コンクリート構造物のひび割れは、コンクリート打設後に乾燥収縮等に起因して発生する場合(ケース1)と、コンクリート構造物供用後にコンクリート構造物に作用する力に起因して発生する場合(ケース2)がある。
コンクリート構造物のひび割れ対策としては、ひび割れ発生を極力防止する方法と、発生したひび割れの進行を抑制する方法とがある。
まず、ひび割れ発生を極力防止する方法について概説する。
ケース1のひび割れは、とくに型枠解放時に発生することが多い。したがって、型枠存置期間を長くする方法や型枠解放後に養生をしっかり行う方法により、ひび割れ発生を極力防止する。
たとえば、2012年制定−土木学会標準示方書(施工編)では、「型枠および支保工の取外しの時期及び順序は、コンクリートの強度、構造物の種類とその重要度、部材の種類および大きさ、部材の受ける荷重、気温、天候、風通し等を考慮して、適切に定めなければならない。」とされている。型枠存置期間は、コンクリート強度に大きく影響を及ぼすため、一般的に長い方が良いとされている。
また、2012年制定−土木学会標準示方書(施工編)では、表2に示すような湿潤養生期間の標準を定めている。ただし、表に定められた期間は、所定の強度を満足するように定められたものである。
湿潤養生期間もまた、コンクリート強度に大きく影響を及ぼすため、一般的に長い方が良いとされている。これらの方法は、2012年制定−土木学会標準示方書(施工編)にて「養生の基本」と定められた範囲のものであり、表3に示す通りとなっている。
一方で、施工実務では、工期短縮や型枠転用の観点から、型枠存置期間をあまり長くすることは好ましくない。また、大きなコンクリート構造物では、湿潤養生の適用に限界がある。したがって、所定の期間、型枠存置した後、型枠開放し、下記の対策方法を併用することもある。
特許文献1では、型枠解放後に膜養生剤を塗布する方法が開示されている。コンクリート表面に膜養生剤を散布または塗布して表面に膜を作り、水分の外部への蒸発を防止して水和を進める。これにより、ひび割れ発生を極力防止する。
特許文献2では、シート・フィルム被覆する方法が開示されている。直射日光や風による乾燥を物理的に防ぎ、さらに、水分逸散を長期間防止する。これにより、ひび割れ発生を極力防止する。
特許文献3では、上記機能を型枠に付与(添着・貼付)する方法が開示されている。コンクリートパネル用内張材をコンクリート用型枠に簡便に添着する。さらに、透水性を高めることで、コンクリートの余剰水分を排出し、密実なコンクリート製造を可能にする。コンクリート打込み後の排水脱気効率の向上を図る。
以上、ひび割れ発生を極力防止する方法について概説した。なお、ひび割れ発生を極力防止する方法は、ケース1には有効であるが、ケース2に対しては有効でないこともある。
次に、発生したひび割れの進行を抑制する方法について概説する。上述したとおり、ひび割れが発生しても、ひび割れ幅を許容範囲に抑制できれば、致命的にならない。
特許文献4では、配筋状態の鉄筋にガラス繊維からなるネット部材を取り付けたのち、コンクリートを打設する方法が開示されている。引張抵抗力の向上と応力均一分散により、ひび割れの進行を抑制する。
特開2013−193885号公報 特許第3695002号公報 特開平7−267121号公報 特開2012−132189号公報
ひび割れ発生を極力防止する方法は、ケース1には有効であるが、ケース2に対しては有効でないこともある。一方、発生したひび割れの進行を抑制する方法は、ケース1にもケース2にも有効である。さらに、ひび割れ発生を極力防止する方法と併用することで、より効果的となる。
ところで、発生したひび割れの進行を抑制する方法に係る従来技術(特許文献4)では、ネット部材は配筋状態の鉄筋に取り付けられていた。
しかしながら、ひび割れにおいてコンクリート構造物表面で最大幅が発生することが多い。したがって、コンクリート構造物表面になるべく近い位置でひび割れ抑制を試みた方が効果的である。
また、配筋間隔が狭くなったり、配筋が複雑になると、鉄筋にネット部材を取り付ける作業も手間になるおそれがある。さらに、ネット部材を取り付けることにより、打設時のコンクリートの流動性を阻害しないような検討が必要である。このように施工性に係る課題があった。
本発明は上記課題を解決するものであり、従来技術に比べて、より確実にひび割れの進行を抑制するとともに、施工性向上も可能とする技術を提供することを目的とする。
一般に、コンクリート構造物構築において、鉄筋を配筋し、型枠を組み立て、型枠内にコンクリートを打込み、コンクリートが硬化した後に型枠を解放(脱型)する工程を経る。型枠使用の理由は、型枠の形が不定であり、どのような形でも製造できること、また、型枠形状の自由度が高いため、コンクリートが打込み可能であれば、コンクリート構造物において構築可能な形状に限りがないことが挙げられる。つまり、型枠はコンクリート構造物構築にとって必要な建設資材である。
一方、このような自由度が高い型枠形状を用いる場合、使用するネット部材には柔軟性が必要となる。
したがって、本願出願人は、型枠および柔軟性を有するネット部材に着目し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する本発明は、コンクリート構造物の製造方法であって、コンクリート打設前の型枠内面にネット部材が設置され、コンクリートが打設され、前記ネット部材がコンクリート構造物表層部に埋め込まれ、コンクリート硬化により、前記ネット部材が前記コンクリート構造物と一体化され、前記型枠が解放され、コンクリート構造物が構築される。
ネット部材がコンクリート構造物表層部にあることにより、より確実にひび割れの進行を抑制することができる。
また、ネット部材がコンクリート打設前の型枠内面にネット部材が設置されることにより、施工性が向上する。
本発明において、前記ネット部材は、前記コンクリート構造物と一体化後、型枠解放時に、前記型枠内面から剥離可能なように、型枠内面に仮止めされている。
これにより、ネット部材が、型枠からコンクリート構造物に転写可能になる。
本発明において、前記ネット部材は、引張強度に関する配向性を有し、且つ柔軟性を示す指標Lが20−80mmの範囲内である。ただし、柔軟性指標Lを以下のとおり定義する。ネット部材を縦寸法50mm、横寸法250mmの矩形状試験片とする。矩形状試験片を水平台の端辺から平行に150mm突出させて、残り部分の100mmを水平台上に固定する。この状態で自重により垂れ下がった矩形状試験片の先端と水平台の上面を延長した水平面との距離を柔軟性指標Lとする。
これにより、ネット部材とコンクリート構造物の一体性とひび割れ抵抗性とを実現する。
本発明において、好ましくは、前記ネット部材の格子間隔Dが10×10〜30×30mmである。
これにより、ネット部材とコンクリート構造物の一体性とひび割れ抵抗性とを実現する。
本発明において、好ましくは、前記ネット部材は、耐アルカリ性ガラス繊維の繊維束が製織され、樹脂によって表面が被覆されている。
本発明において、好ましくは、前記ネット部材の引張強度の強い方向軸が予測されるひび割れ方向軸と略直角に交わるように、前記ネット部材が型枠内面に設置される。
これにより、少ない枚数で効果的にひび割れ幅を抑制する。
本発明において、好ましくは、前記ネット部材の型枠内面への仮止めは、仮止め材によるものである。
本発明において、好ましくは、前記仮止め材がタッカー針である。
上記課題を解決する本発明は、引張強度に関する配向性を有し、且つ柔軟性を示す指標Lが20−80mmの範囲内であるネット部材が、コンクリート構造物表層部に配置されているコンクリート構造物である。ただし、柔軟性を示す指標Lを以下のとおり定義する。ネット部材を縦寸法50mm、横寸法250mmの矩形状試験片とする。矩形状試験片を水平台の端辺から平行に150mm突出させて、残り部分の100mmを水平台上に固定する。この状態で自重により垂れ下がった矩形状試験片の先端と水平台の上面を延長した水平面との距離を柔軟性指標Lとする。
本願発明によれば、従来技術に比べて、より確実にひび割れの進行を抑制できる。
本願発明によれば、従来技術に比べて、施工性が向上する。
柔軟性の評価方法を説明する概念図 格子間隔を説明する概念 配向性を説明する概念図 配向性のないネット部材の比較例 試験体作成の概念図 曲げ載荷試験の概念図
〜製造方法概略〜
本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法について概説する。
基本的工程については、一般的なコンクリート構造物の製造方法と同様である。すなわち、鉄筋を配筋し、型枠を組み立て、型枠内にコンクリートを打込み、コンクリートが硬化した後に型枠を解放する一連の工程を経る。
本実施形態の特徴として、コンクリート打設前の型枠内面にネット部材が設置される。ネット部材の材質、寸法、物理特性、設置場所等については後述する。
このとき、ネット部材は、型枠解放時に型枠内面から剥離可能なように、型枠内面に仮止めされている。この点についても後述する。
配筋後、配筋を囲むように型枠が組み立てられて、コンクリートが打設される。
なお、配筋後、型枠が組み立てられた状態で、ネット部材が設置される工程でもよい。
コンクリート打設時に、コンクリートのモルタルペーストが、ネット部材の裏に回り込む。これにより、ネット部材がコンクリート構造物表層部に埋め込まれる。さらに、コンクリート硬化により、ネット部材はコンクリート構造物と一体化される。
ここで、表層部とは表面から0〜10mmの範囲を意味する。さらに、0〜5mmであると好ましい。
所定の型枠存置期間経過後、型枠は解放される。適宜、適切な養生をおこなう。ひび割れ発生を極力防止する対策を併用してもよい。
これにより、コンクリート構造物が構築される。コンクリート構造物には、コンクリート構造物表層部(特に側面型枠や底面型枠に対向していた箇所)にて一体化されて、ネット部材が埋め込まれている。
〜仮止め〜
本実施形態において、ネット部材はコンクリート構造物と一体化後型枠解放時に型枠内面から剥離可能なように、型枠内面に仮止めされている。
仮止め方法は、特に限定されるものではないが、例えば、テープ、針(タッカー針)、ピンなどの仮止め材によって仮止めされる。特に、木枠の型枠を使用する場合は、タッカー(鋲打機)を用いて作業することで、簡便に仮止めすることができる。タッカー針の針長は、ネット部材が確実に仮止めされるとともに、タッカー針がきれいに剥離できる点から、4〜10mmが好ましい。仮止めされた以外の箇所では拘束が少なく、ネット部材が適宜変位し、モルタルペーストがネット部材の裏に回り込みやすくなる。
その後、コンクリート硬化により、ネット部材がコンクリート構造物と一体化された状態で、型枠が解放される。ネット部材がコンクリート構造物内に拘束される力が強いため、型枠解放とともに仮止め材はネット部材とともに型枠内面から剥離する。
〜材料〜
ネット部材は、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維など弾性係数が高い繊維により構成される。セメントとの親和性やコストを鑑みると、ガラス繊維製が好ましい。中でも、耐アルカリ性のガラス繊維(例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)を14質量%以上含有するガラス繊維)が好ましい。
さらに、繊維束が製織され、樹脂によって表面が被覆されている。樹脂の種類は特に限定されないが、後述の柔軟性を実現できるように適宜選択される。
また、上記繊維をネット部材として一軸配向性を有するように連続して形成することにより、補強効率が極めて高く、引張抵抗力の向上によるひび割れ抑制と応力の均一分散効果によるひび割れ幅の抑制が可能である。その補強効率は、3次元ランダム配向である繊維補強コンクリートの5倍とされている。
〜柔軟性〜
本実施形態では、ネット部材の柔軟性の指標Lについて以下のように定義する。図1は、柔軟性の評価方法を説明する概念図である。
ネット部材を縦寸法50mm、横寸法250mmの矩形状試験片とする。矩形状試験片を水平台Tの端辺から平行に150mm突出させて、残り部分の100mmを水平台上に固定する。この状態で自重により垂れ下がった矩形状試験片の先端と水平台Tの上面を延長した水平面との距離を柔軟性指標Lとする。
本実施形態において、柔軟性指標Lが20−80mmの範囲内であることが好ましい。
柔軟性指標Lが20mm未満となると、ネット部材の剛性が強すぎて、モルタルペーストがネット部材の裏に回り込みにくくなる。その結果、ネット部材とコンクリート構造物との一体性が損なわれ、コンクリート構造物表面にジャンカが発生するおそれがある。
一方、柔軟性指標Lが80mm超となると、ネット部材の剛性が弱すぎて、モルタルペーストがネット部材の裏に回り込みすぎる。細骨材もネット部材の裏に回り込むおそれもある。その結果、ネット部材がコンクリート構造物表層部から内部(たとえば10mm超)に入り込んでしまうおそれがある。ネット部材がコンクリート構造物表層部にないと、ひび割れ抑制効果が充分に得られない。
さらに、柔軟性指標Lが40−60mmの範囲内であると、より好ましい。
〜格子間隔〜
ネット部材は、略格子状に形成される。図2は、格子間隔を説明する概念図である。図示縦方向の繊維糸の束の中心の間隔および図示横方向の繊維糸の中心の間隔を格子間隔Dと定義する。
本実施形態において、ネット部材の格子間隔Dが10×10〜30×30mmであることが好ましい。
格子間隔Dが10×10mm未満となると、モルタルペーストが格子の間からネット部材の裏に回り込みにくくなる。その結果、ネット部材とコンクリート構造物との一体性が損なわれ、コンクリート構造物表面にジャンカが発生するおそれがある。
格子間隔Dが30×30mm超となると、繊維による拘束が弱くなり、ひび割れ抑制効果が充分に得られないおそれがある。
なお、本実施形態では各格子が正方形であることを想定するが、正方形に限定されない。菱形または長方形のような四角形が好ましい。その他の多角形であっても良い。
〜配向性と設置場所〜
ネット部材は、引張強度に関する配向性を有する。図3は、配向性を説明する概念図である。比較のため、図4に配向性のないネット部材を示す。図示の例では、縦方向(図示上下方向)の3本一組のガラス繊維糸と横方向(図示左右方向)の1本のガラス繊維糸とが繰り返し組み合わされることにより形成される。これにより、ネット部材において、横方向に比べて縦方向の引張強度は強くなる。
これにより、ネット部材は一軸配向連続繊維となり、補強効率が極めて高く、引張抵抗力の向上によるひび割れ抑制と応力の均一分散効果によるひび割れ幅の抑制が可能である。その補強効率は、3次元ランダム配向である繊維補強コンクリートの5倍とされている。
ところで、ひび割れが発生する箇所はある程度予測可能である。特に、コンクリート構造物供用後にコンクリート構造物に作用する力に起因して発生する場合(ケース2)では、開口部、入隅・出隅部、コンクリートの立ち上がり部、コンクリートの打継部、コンクリートの断面変化部(断面積が変化する部分)にひび割れが発生しやすいことが知られている。
本実施形態では、ネット部材の引張強度の強い方向軸(図示左右方向)が予測されるひび割れ方向軸(図示上下方向、点線で記載)と略直角に交わるように、ネット部材は型枠内面に設置される。
〜効果〜
従来技術(例えば特許文献4)と比較することで、本実施形態の効果について説明する。
従来技術では、ネット部材が鉄筋に取付けられるため、コンクリート構造物表面でのひび割れ抑制効果が充分ではなかった。
これに対し、本実施形態では、ネット部材がコンクリート構造物表層部にて一体化されるため、より確実にひび割れの進行を抑制することができる。
従来技術では、ネット部材が鉄筋に取付けられるため、配筋間隔が狭い場合や複雑な場合など、取付作業が煩わしいこともあった。さらに、打設時のコンクリートの流動性を阻害しないような検討が必要となることもあった。このように施工性に係る課題があった。
これに対し、本実施形態では、型枠内面にネット部材が設置されるため、鉄筋に取付けられる場合に比べて、施工が容易である。また、型枠内面にネット部材が設置されるため、打設時のコンクリートの流動性を阻害しないような検討は不要である。このように、従来技術に比べて施工性向上も期待できる。
さらに、本実施形態の効果について説明する。
特許文献4(従来技術)では、ネット部材の柔軟性について言及していないが、剛性が弱すぎると、鉄筋への取り付け作業に手間取るため、柔軟性指標L0〜5mm程度の剛性の強いネット部材を用いていた。
これに対し、本実施形態では、柔軟性指標L20−80mmのネット部材を用いる。これにより、上記効果を得る他、曲面部や隅角部にも適用できる。
本実施形態では、ひび割れが予測される箇所に効率良くネット部材を設置するため、少ない枚数で、ひび割れ抑制効果が得られる。上記施工性の観点と合せて少ない材料数の観点からも、経済性が向上する。
また、コンクリート構造物構築後のメンテナンス不要である点からも、経済性が向上する。
〜試験体作成・曲げ載荷試験〜
本実施形態を評価するため、試験体を作成した。図5は試験体作成の概念図である。700×200×100mmの矩形の型枠を組み立て、底面型枠内面に耐アルカリ性のガラス繊維製ネット部材の四隅をタッカー針にて仮止めした。タッカー針は針長8mmのものを使用した。
鉄筋かぶり30mmとなるように、D10鉄筋を2本配置した。この状態で、型枠にコンクリートを打ち込んだ。一般的な24−18−20Nのコンクリートを用いた。材齢28日とした。
ネット部材の柔軟性指標Lと格子間隔Dと配向性有無の要素を組み合わせて、計24種類の試験体を作成した。
上記試験体を用いて曲げ載荷試験を行った。図6は曲げ載荷試験の概念図である。載荷重は、ひび割れ発生荷重の2倍までとし、載荷パターンは漸増載荷とした。なお、試験体底面の長手方向中央位置に、短手方向にひび割れが発生しやすい。
〜評価結果および考察〜
一体性の観点およびひび割れ抵抗性の観点から、本実施形態を評価した。
一体性については、型枠解放後の試験体底面の目視観察により評価した。ネット部材がコンクリート構造物内に埋め込まれ、コンクリート表面が滑らかな状態を、一体化されていると評価した。ネット部材の一部がコンクリート構造物表面から飛び出したり、露出したり、コンクリート表面にジャンカが発生する状態を、一体化されていないと評価した。
ひび割れ抵抗性については、構造物の部材性能に影響を及ぼさない範囲であるひび割れ幅0.3mm以下に抑制できた場合を、ひび割れ抵抗性有りと評価した。ひび割れ幅0.3mm超になった場合を、ひび割れ抵抗性なしと評価した。
なお、ひび割れ抵抗性の評価は、コンクリート構造物供用後にコンクリート構造物に作用する力に起因して発生する場合(ケース2)のひび割れを想定しているが、コンクリート打設後に乾燥収縮等に起因して発生する場合(ケース1)のひび割れにも同様に有効である。
さらに、総合評価として、一体化有りと評価され、かつ、ひび割れ抵抗性有りと評価された試験体について、最適であると評価した。
試験体No.1〜24を比較し、柔軟性指標L、格子間隔D、配向性有無の各要素について下記の知見を得た。評価結果を表4に示す。
・柔軟性
柔軟性指標Lが20以上である試験体No.10〜12,No.16〜18,No.22〜24では、一体性有りとの評価であった。なお、試験体No.4〜6については、別途説明する。
これに対し、柔軟性指標Lが20mm未満である試験体No.1〜3,No.7〜9,No.13〜15,No.19〜21では、いずれも一体性なしとの評価であった。
これは、柔軟性指標Lが20mm未満となると、ネット部材の剛性が強すぎて、モルタルペーストがネット部材の裏に回り込みにくくなる結果、一体性が損なわれるものと推測される。
一方で、一体性有りとの評価された試験体No.10〜12,No.16〜18,No.22〜24のうち、柔軟性指標Lが90mm以上の試験体No.12,No.18,No.24では、いずれもひび割れ抵抗性なしとの評価であった。
これは、柔軟性指標Lが90mm以上となると、ネット部材の剛性が弱すぎて、モルタルペーストがネット部材の裏に回り込みすぎ、ネット部材がコンクリート構造物表層部から内部に入り込んでしまう結果、ひび割れ抑制効果が充分に得られないものと推測される。
・格子間隔
柔軟性指標Lが20以上である試験体No.4〜6,No.10〜12,No.16〜18,No.22〜24のうち、格子間隔Dが10×10mm以上である試験体No.10〜12,No.16〜18,No.22〜24では、一体性有りとの評価であった。
これに対し、格子間隔Dが10×10mm未満である試験体No.4〜6では、いずれも一体性なしとの評価であった。
これは、格子間隔Dが10×10mm未満となると、モルタルペーストが格子の間からネット部材の裏に回り込みにくくなる結果、一体性が損なわれるものと推測される。
一方で、一体性有りとの評価された試験体No.10〜12,No.16〜18,No.22〜24のうち、格子間隔Dが40×40mm以上の試験体No.22〜24では、いずれもひび割れ抵抗性なしとの評価であった。
これは、格子間隔Dが40×40mm以上となると、繊維による拘束が弱くなる結果、ひび割れ抑制効果が充分に得られないものと推測される。
・配向性
配向性を有しない試験体No.1と配向性を有する試験体No.2とを比較すると、配向性を有しない試験体No.1では、ひび割れ抵抗性なしとの評価であるのに対し、配向性を有する試験体No.2では、ひび割れ抵抗性有りとの評価であった。
配向性を有しない試験体No.7と配向性を有する試験体No.8との比較、および、配向性を有しない試験体No.13と配向性を有する試験体No.14との比較においても同様の結果であった。
したがって、試験体No.2,No.8,No.14において、配向性によるひび割れ抑制効果が認められる。
・総合評価
総合評価として、試験体No.11,No.12,No.16,No.17について最適であると評価した。
すなわち、柔軟性指標Lは20mm以上90mm未満であることが好ましい。80mm以下であることがより好ましい。また、格子間隔Dが10×10mm以上40×40mm未満であることが好ましい。さらに、配向性を有することが好ましい。
以上、本願発明の実施形態および実施例を示したが、本願発明はこれに限定されず、本願発明の技術思想の範囲で種々の変更が可能である。
〜備考〜
本願出願人は、型枠はコンクリート構造物構築にとって必要な建設資材であることに着目した。
型枠を用いてコンクリート構造物を製造する場合、コンクリート打設後コンクリート硬化時に、型枠天端は適切な養生ができるのに対し、側面型枠や底面型枠に相当する箇所では、型枠存置期間を適切に管理するくらいしか適切なひび割れ抑制方法がなかった。
また、側面型枠や底面型枠に対向する箇所は、そのままコンクリート構造物の側面や底面になることも多いが、当該箇所に型枠脱型後に、被膜等の処置を行うには、施工上の制約も多いのが実状であった。
そこで、本願出願人は、型枠にネット部材を仮止めし、ネット部材をコンクリート構造物表層部(特に側面型枠や底面型枠に対向していた箇所)に転写することを想いついた。
さらに、適切な転写が可能になるように、ネット部材の特性について検討を重ねた結果、柔軟性と格子間隔が重要な要素であることを見出した。
繰り返し実験を行った結果、適切な柔軟性の範囲および適切な格子間隔の範囲についての知見を得た。
本願発明は、上記着想と上記検討を経て完成に至ったものである。

Claims (7)

  1. 引張強度に関する配向性を有し、且つ柔軟性を示す指標Lが20−80mmの範囲内であるネット部材が、型枠内面に仮止めされ、
    コンクリート打設後、コンクリート硬化により前記ネット部材が型枠からコンクリート構造物表層部へ転写されてコンクリート構造物と一体化され、
    前記型枠が開放され、コンクリート構造物が構築される
    ことを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
    ただし、柔軟性を示す指標Lを以下のとおり定義する。
    ネット部材を縦寸法50mm、横寸法250mmの矩形状試験片とする。
    矩形状試験片を水平台の端辺から平行に150mm突出させて、残り部分の100mmを水平台上に固定する。
    この状態で自重により垂れ下がった矩形状試験片の先端と水平台の上面を延長した水平面との距離を柔軟性指標Lとする。
  2. 前記ネット部材の格子間隔Dが10×10〜30×30mmである
    ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の製造方法。
  3. 前記ネット部材は、耐アルカリ性ガラス繊維の繊維束が製織され、樹脂によって表面が被覆されている
    ことを請求項1または2記載のコンクリート構造物の製造方法。
  4. 前記ネット部材の引張強度の強い方向軸が予測されるひび割れ方向軸と略直角に交わるように、前記ネット部材が型枠内面に設置される
    ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のコンクリート構造物の製造方法。
  5. 前記ネット部材の型枠内面への仮止めは、仮止め材によるものである
    ことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のコンクリート構造物の製造方法。
  6. 前記仮止め材がタッカー針である
    ことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物の製造方法。
  7. 引張強度に関する配向性を有し、且つ柔軟性を示す指標Lが20−80mmの範囲内であるネット部材が、コンクリート構造物表層部に配置されていることを特徴とするコンクリート構造物。
    ただし、柔軟性を示す指標Lを以下のとおり定義する。
    ネット部材を縦寸法50mm、横寸法250mmの矩形状試験片とする。
    矩形状試験片を水平台の端辺から平行に150mm突出させて、残り部分の100mmを水平台上に固定する。
    この状態で自重により垂れ下がった矩形状試験片の先端と水平台の上面を延長した水平面との距離を柔軟性指標Lとする。
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