JP2017212971A - 米粉及び食品並びに米粉の製造方法 - Google Patents

米粉及び食品並びに米粉の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粘弾性のあるゲルを形成する米粉及び食品並びに米粉の製造方法を提供する。【解決手段】アミロース含量が20〜30%の範囲内であり、かつα化度が60〜95%の範囲内であることを特徴とする米粉である。また、上記の米粉の製造方法であって、アミロース含量が20〜30%の米に、米と水との総重量に対して18〜42重量%となるように水を添加して米に水を吸水させる吸水工程と、吸水後の米を70〜100℃の温度で混練して部分的にα化する部分α化工程と、部分α化された米を乾燥する乾燥工程と、乾燥後の米を粉砕して粉末化する粉砕工程と、を備えることを特徴とする米粉の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、米粉及び食品並びに米粉の製造方法に関し、特に、水と混合することでゲル化する特性を有する米粉及び食品並びに米粉の製造方法に関する。
和菓子素材などとして使用される米粉は、粳(うるち)種、糯(もち)種ともに精米された米を機械粉砕することで製造されている。一般に、米粉の原料としては、調理時の糊化しやすさとそのときの物性、食味の問題から、アミロース含量が20%以下の米が使用される。米粉の一種である餅粉には、餅にしてから焼き上げ粉砕した微塵粉や寒梅粉などもある。
アミロース含量が約25%以上の米は、高アミロース米と呼ばれている。高アミロース米は、α化しにくく通常の蒸煮では粘りが少なく食味が悪いため、日本では米飯としては、ほとんど利用されていない。海外では炒飯、ドライカレー、ピラフなどに利用されている。
近年、国内ではほとんど利用されていなかった高アミロース米をダイレクト糊化法により利用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この文献には、水を米に対して多く(1.5倍以上)加えて加熱調理し、冷却工程(15〜30℃)を経てから機械撹拌することにより、ゲル状の米加工素材を作製している。
特許第5840904号公報(請求項1、段落0016など)
特許文献1は、ゲル状の米加工素材を製造する方法が記載されているだけであり、米加工素材を米粉にすることは記載されていない。仮に、特許文献1の条件で製造した米加工食品を乾燥して米粉にしたとしても、製造時において米に対して添加する水分量が多いことから、得られる米粉は水を加えてゲル化させたときに粘弾性が小さく、食味が悪いという不都合があった。
また、特許文献1に記載された米加工素材の製造方法では、加熱処理の後に一度冷却工程を行うため、製造に時間を要するばかりか、含水量が多いために冷却時や冷却後に微生物が増殖しやすく、雑菌制御に注意を要する。
本発明は、従来の欠点を解消し、ゲル化したときに粘弾性のあるゲルを形成する米粉及びこれを用いた食品を提供することを目的とする。また、本発明は、粘弾性のあるゲルを形成する米粉を効率よく生産することが可能な米粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で製造した米粉が粘弾性の高いゲルを形成することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、アミロース含量が20〜30%の範囲内であり、かつα化度が60〜95%の範囲内であることを特徴とする米粉である。
この場合において、下記調整条件で調整したゲルに対して測定したゲル強度が20〜300g/cmの範囲内であり、破断距離が3〜25mmの範囲内であることが好ましい。
調整条件:前記米粉50gを20℃の水450gに分散し、その後95℃に加熱溶解し、直径50mm、高さ30mmの容器に充填を行い再び10℃に冷却した後、24時間後に測定を行う。
あるいは、下記調製条件で調製したゲルに対して測定したゲル強度が10〜150g/cm2の範囲内であることが好ましい。
調製条件:前記米粉75gを20℃の水425gに分散し2分間撹拌後、直径50mm、高さ30mmの容器に充填を行い、10℃に冷却後24時間後に測定を行う。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の米粉又は米粉に加水したゲルを含有することを特徴とする食品である。
さらに、本発明は、上記のいずれかに記載の米粉の製造方法であって、アミロース含量が20〜30%の米に、該米と水との総重量に対して18〜42重量%となるように水を添加して前記米に水を吸水させる吸水工程と、吸水後の米を70〜100℃の温度で混練して部分的にα化する部分α化工程と、部分α化された米を乾燥する乾燥工程と、乾燥後の米を粉砕して粉末化する粉砕工程と、を備えることを特徴とする米粉の製造方法である。
この場合において、前記部分α化工程は、前記吸水後の米をエクストルーダー処理して行うことが好ましい。
本発明によれば、ゲル化したときに粘弾性のあるゲルを形成する米粉及びこれを用いた食品を提供することが可能となる。また、本発明によれば、粘弾性のあるゲルを形成する米粉を効率よく生産することが可能な米粉の製造方法を提供することが可能となる。
1.米粉
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の米粉(以下、単に「米粉」という場合がある)は、アミロース含量が20〜30%の範囲内であり、かつα化度が60〜95%の範囲内である。
(1)アミロース含量
米粉のアミロース含量は、20〜30%の範囲内である。本発明の目的の一つは、高アミロース米を含むアミロース含量が高い米を有効利用することにある。また、アミロース含量が20%を下回ると、米粉に水を加えて得られるゲル(以下、「米ゲル」ということがある)の強度(ゲル強度)が低すぎてゲル性がほとんど無く、食感が悪くなる傾向がある。一方、アミロース含量が30%を上回ると、米粉に水を加えて得られる米ゲルのゲル強度が高すぎて咀嚼等で破断しやすく、食感が悪くなる傾向がある。また、アミロース含量が30%を上回る米粉に加水して得られた米ゲルは、時間が経つと澱粉の老化が大きく固く(ゲル強度が大きく)なりすぎる傾向がある。米粉のアミロース含量が20〜30%の範囲内であると、米粉に加水して得られる米ゲルは粘弾性を有し、かつ老化が少なく経時変化も小さいという優れた特性を有する。なお、本発明におけるアミロース含量とは、後述する実施例の方法で測定した結果と定義することができる。
(2)α化度
米粉のα化度は、60〜95%の範囲内である。α化度が60%を下回ると、米粉に加水して得られる米ゲルの強度(ゲル強度)が低すぎてゲル性がほとんど無く、食感が悪くなる傾向がある。一方、α化度が95%を上回ると、澱粉粒の破損(ブレークダウン)が大きく米粉に加水して得られる米ゲルのゲル強度が十分に上がらず、食感が悪くなる傾向がある。また、α化度が95%を上回る米粉に加水して得られる米ゲルは、時間が経つと澱粉の老化により固く(ゲル強度が大きく)なる傾向が大きい。米粉のα化度が60〜95%の範囲内であると、米粉に加水して得られる米ゲルは粘弾性を有し、かつ経時変化も小さいという優れた特性を有する。なお、本発明におけるα化度とは、後述する実施例の方法で測定した結果と定義することができる。
(3)平均粒径
米粉の平均粒径は、特に制限はないが、通常は40〜800μmの範囲内であり、70〜400μmの範囲内が好ましい。米粉の平均粒径が40μmを下回ると、粒子が小さすぎて凝集性が激しくなり取扱い性が困難になるばかりか澱粉粒の破損により十分なゲル強度が得られなくなり、800μmを上回ると、粒子が大きすぎて加水したときにゲル化しにくかったり、食品に粒子の粒感が残って食感が悪化しやすかったりする。
(4)ゲル強度・破断距離
米粉は、下記調整条件で調整したゲルに対して測定したゲル強度が20〜300g/cmの範囲内であり、破断距離が3〜25mmの範囲内であることが好ましい。
調整条件:前記米粉50gを20℃の水450gに分散し、その後95℃に加熱溶解し、直径50mm、高さ30mmの容器に充填を行い再び10℃に冷却した後、24時間後に測定を行う。
このように、米ゲルのゲル強度と破断距離が適度な範囲内であるため、米粉は粘弾性を有する優れた食感の米ゲルを形成することができる。なお、ゲル強度は、60〜200g/cmの範囲内がより好ましく、破断距離が5〜25mmの範囲内がより好ましい。
2.食品
本発明の食品は、上記の米粉や、上記の米粉に加水して得られる米ゲルを含有する。米粉や米ゲルは、それ自体を食品として喫食することができるほか、加工食品の原料の一部として用いることができる。加工食品としては、主食、副食、菓子などを挙げることができる。主食としては、米飯、パン、麺などを挙げることができる。副食としては、茶碗蒸し、卵焼き、伊達巻きなどを挙げることができる。菓子としては、団子、ケーキ、プリン、グミ、ゼリーなどを挙げることができる。
食品に含まれる米粉の含有量としては、特に制限はないが、食品全体に対して通常は1〜40重量%の範囲内である。米粉の含有量が1重量%を下回ると、米粉の含有量が低くなりすぎるため、所望の食感が得られにくくなる。一方、米粉の含有量が40重量%を上回ると、米粉の含有量が高くなりすぎるため、米粉の溶解が悪くなり十分に効果が出ず食感が悪くなりやすい。米ゲルは弾力のあるゲルを形成するためそれ自体でも食品として食することが可能である。
食品は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、米粉や米ゲル以外の他の成分を含有することができる。他の成分としては、例えば甘味料、香料、着色料、増粘剤などを挙げることができる。
また、食品には、特定の機能性成分を添加して、介護食やダイエット食、糖尿病治療食などとしてもよい。例えば、経腸栄養分を添加して介護食とするなどである。また、本発明の食品は、特定のアレルギー性成分の代用として米粉や米ゲルを含むことで、低アレルゲン食品としても有用である。例えば、卵や乳の代用として米粉を使用することなどである。
食品の製造方法としては、特に制限はないが、食品の材料として米粉を他の食材に添加して調理する方法や、予め米粉に水を加えて米ゲルとした後に他の食材に添加する方法などを挙げることができる。米ゲル中に含まれる米粉の量は、所望する食品の種類等によって適宜設定することができるが、通常は1〜30重量%の範囲内であり、5〜20重量%の範囲内が好ましい。米ゲル中に含まれる米粉の量が1重量%を下回ると、水分の割合が相対的に多くなりすぎるため、ゲル強度が低下して食感が悪くなりやすい。一方、上記の量が30重量%を上回ると、米粉の割合が相対的に多くなるため、米ゲルが硬くなりやすく食感が悪くなりやすい。
3.米粉の製造方法
本発明の米粉の製造方法は、原料となる米(原料米)に水を添加して吸水させる吸水工程と、吸水後の米を部分的にα化する部分α化工程と、部分α化された米を乾燥する乾燥工程と、乾燥後の米を粉砕して粉末化する粉砕工程と、を備える。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)吸水工程
吸水工程で使用する原料米としては、アミロース含量が20〜30%の米を使用する。このような米の品種としては、モミロマン、ホシユタカ、サチミライ、キタミズホなどを挙げることができる。原料米のアミロース含量と米粉のアミロース含量はほぼ一致する傾向がある。このため、原料米のアミロース含量が20%を下回ると得られる米粉のアミロース含量も20%を下回ることが多く、米粉に水を加えて得られる米ゲルの強度が低すぎてゲル性がほとんど無く、食感が悪くなる傾向がある。また、原料米のアミロース含量が30%を上回ると、得られる米粉のアミロース含量も30%を上回ることが多く、米粉に水を加えて得られる米ゲルのゲル強度が高すぎて咀嚼等で破断しやすく、食感が悪くなる傾向がある。また、アミロース含量が30%を上回るから製造された米ゲルは、時間が経つと固くなりすぎる傾向がある。
吸水工程で添加する水の量は、原料米と水との総重量に対して18〜42重量%となる量である。水の添加量が18重量%を下回ると、水の量が少なすぎてα化度が低くなりすぎ、その結果、米粉に水を加えて得られる米ゲルの強度が低すぎてゲル性がほとんど無く、食感が悪くなる傾向がある。一方、水の添加量が42重量%を上回ると、水の量が多すぎてα化度が高くなりすぎてブレークダウンをおこし、その結果、米粉に水を加えて得られる米ゲルのゲル強度が低く、食感が悪くなる傾向がある。また、α化度が高くなりすぎると、米粉から製造された米ゲルは、時間が経つと固くなりすぎる傾向がある。水の添加量を18〜42重量%の範囲内とすることで、得られる米粉に水を加えて得られる米ゲルは粘弾性を有し、かつ経時変化も小さいという優れた特性を有する。
吸水工程における吸水時間は、特に制限はないが、原料米が水を十分に吸水できる時間であることが好ましい。吸水時間としては、例えば10分〜10時間の範囲内が好ましく、30分〜5時間の範囲内がより好ましい。吸水時間が短すぎても長すぎても、適度に部分α化された米粉を得ることが困難になりやすい。
(2)部分α化工程
部分α化工程では、吸水工程で吸水させた原料米を高温で混練し、一部をα化(糊化)する。混練温度としては、通常は70〜100℃の範囲内であり、80〜90℃の範囲内がより好ましい。混練温度が70℃を下回ると、α化が進行しにくくなり、100℃を上回ると澱粉のブレークダウンや焦げ付きなどが生じやすくなる。
混練方法としては特に制限はなく、種々の混練装置を用いる方法を採用することができるが、特にエクストルーダー、特に二軸エクストルーダーを用いる方法が好ましい。エクストルーダーの混練条件は、適宜設定することができるが、例えば、バレル温度(混練温度)70〜100℃、バレル圧力30〜40kg/cm、スクリュー回転数200〜300rpm、ダイ穴径2〜3mmの範囲が好ましい。
(3)乾燥工程
上記の部分α化工程で得られた混練物は、乾燥機などを使用して乾燥する。乾燥方法としては、自然乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、真空凍結乾燥、ドラム乾燥などを挙げることができる。乾燥温度は、通常、10〜120℃の範囲内であり、熱風乾燥の場合は70〜95℃の範囲内が好ましい。
(4)粉砕工程
次に、乾燥後の米を粉砕して粉末化する。粉砕方法としては、公知の粉砕機を使用することができる。粉砕機としては、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ディスクミル、ジェットミル、ロールミル、石臼式、カッター式などを挙げることができる。粉砕後の米粉の平均粒径は、特に制限はないが、通常は40〜800μmの範囲内であり、70〜400μmの範囲内が好ましい。米粉の平均粒径が40μmを下回ると、粒子が小さすぎて凝集性が激しくなり取扱い性が困難になるばかりか澱粉粒の破損により十分なゲル強度が得られなくなり、800μmを上回ると、粒子が大きすぎて加水したときにゲル化しにくかったり、食品に粒子の粒感が残って食感が悪化しやすかったりする。
(5)本発明の米粉によるゲル化のメカニズム
米粉中のデンプンはグルコース主鎖が直線構造を主とするアミロース、グルコース主鎖が枝分かれしたアミロペクチンに大別される。本発明の製造方法によりアミロース含量が20〜30%で且つα化度が60〜95%の米粉とすることにより、以下のメカニズムでゲル化すると推測される。
・α化されているため常温程度の水にもデンプンが溶解しやすくなっており、冷水にも溶解し、加温することによりさらに完全に溶解する。
・通常はアミロース含量が多すぎると、ゲル強度は出るがアミロースの結晶化による老化が激しく食感が悪い。
・本発明では規定量のアミロース含量とすることにより、本発明の製造方法によりα化されたアミロース中にα化されたアミロペクチンが絡み合い溶解を容易にし、且つアミロペクチンとの相互作用により老化速度を遅くしている。
・規定量のアミロース、アミロペクチンを含む米を本発明の製造方法で処理すると、アミロースとアミロペクチンが複雑に絡み合う構造を形成し、従来にない特性(冷水にも可溶、ゲル化特性、老化しにくい、食感良好)を持つ米粉を作製することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。
(米のアミロース含量の測定方法)
平間理化研究所製の自動電流測定装置ART−3を使用して電流的滴定法で測定を行った。基準として馬鈴薯アミロース(SIGMA製 TYPEIII)を使用した。具体的には「澱粉・関連糖質実験法」中村道徳・貝沼圭二編、学会出版センター、1986年、90ページに記載された方法により測定した。
(米粉のα化度の測定方法)
試料(調整米粉粉末)0.1gに0.2NのKOH 10mLを加え30分間撹拌した後1000Gで10分間遠心分離により沈殿物を除いた。得られた上清を1NのHClで中和して適宜希釈した後3mLを取り、0.03mLのヨウ素液を加えて分光光度計(UVmini1240,島津製作所社製)を使用して600nmの吸光度を測定した。一方、0.6NのKOHを用いて同様な操作を行い、得られた吸光度の値を100として式1によりα化度を表した。
(式1) α化度(%)=(0.2N−KOHで溶解した時の吸光度/0.6N−KOHで溶解した時の吸光度)×100
(使用した原材料及び機器)
・エクストルーダー・・TEX−32F,(日本製鋼所社製)
・粉砕機・・ハンマーミル(不二パウダル社製)
・レオロジー測定(ゲル強度,破断距離):テクスチャーアナライザー:TA.XT.Plus(英弘精機社製)
(※測定条件:プランジャー 断面積1cmの円柱状,進入速度 20mm/分、進入距離 40mm,測定温度 10℃、ゲル強度はゲルが破断したときの応力、破断距離はゲルが破断したときのプランジャー進入距離)
※嚥下食物性:厚生労働省 特別用途食品の表示許可基等について「えん下困難者用食品たる表示の許可基準」に従い測定を行った。)
(粒子径測定)
Microtrac MT3000(日機装社製)を使用して測定した。
1.実験例1(アミロース含量の検討:実施例1〜4,比較例1〜6)
表1に示したアミロース含量の精白米を原料にして、エクストルーダーを使用して以下の条件でα化澱粉した米粉を作製した。
Figure 2017212971
表1の米1kgに対し水0.5kgを含浸させ、これをエクストルーダーに投入し処理を行った。条件は、バレル温度70℃〜100℃、圧力:33〜37kg/cm、スクリュー回転数:250rpmである。
得られた処理物を90℃で熱風乾燥させた後に粉砕機にて粉砕して300μm以下に調整して調整米粉粉末を得た。
これらの調整米粉粉末50gを20℃水450gに分散した。その後95℃に加熱溶解し、直径50mm、高さ30mmの容器に充填を行い再び10℃に冷却した。10℃で24時間、3日、1週間、2週間、3週間保管したものについて、ゲル強度、破断距離を測定した。結果を表2に示した。さらに、調整米粉粉末のアミロース含量を測定し表3に示した。
Figure 2017212971

G:ゲル強度(g/cm
H:破断距離(mm):ゲルが破断するまでのプランジャーの進入距離
- :ゲル性がなく破断しない
Figure 2017212971
以上のように、アミロース含量が20〜30%の米粉(実施例1〜4)は、適度な強度でかつ破断距離が長いゲル、すなわち粘弾性のある米ゲルを作ることがわかった。
2.実験例2(水の量:実施例5〜7,比較例7〜10)
表4に示した配合にてハイアミロース米をエクストルーダー処理して調整米粉粉末を得た。米に水を含浸させた後にこれをエクストルーダーに投入し処理を行った。条件は、バレル温度80℃〜100℃、圧力:33〜37kg/cm、スクリュー回転数:250rpmで行った。
得られた処理物を90℃で熱風乾燥させた後に粉砕機にて粉砕して300μm以下に調整して調整米粉粉末を得た。これらの調整米粉粉末を実験例1と同様にして水に分散し物性を測定し結果を表5に記載した。さらに、調整米粉粉末のアミロース含量、α化度を測定し表6に示した。
Figure 2017212971

(数値は総重量に対する重量%、括弧()内の数値は総重量に対する水の重量%)
Figure 2017212971
Figure 2017212971
以上のように、水の量が18〜42重量%の範囲内で製造された米粉(実施例5〜7)は、α化度が60〜95%となり、適度な強度でかつ破断距離が長いゲル、すなわち粘弾性のある米ゲルを作ることがわかった。
3.実験例3(α化度:実施例8〜10、比較例11〜12)
モミロマン70重量%に水30重量%を含浸させ吸水させた。これを表7に示したシリンダー温度にてエクストルーダー処理した。他の条件は圧力:33〜37kg/cm、スクリュー回転数:250rpm、得られた処理物を90℃で熱風乾燥させた後に粉砕機にて粉砕して300μm以下に調整して調整米粉粉末を得た。この調整米粉粉末のα化度を測定し表7に記載した。これらの調整米粉粉末を実験例1と同様にして水に分散し物性を測定し結果を表8に記載した。さらに、調整米粉粉末のアミロース含量を測定し表9に示した。
Figure 2017212971
Figure 2017212971
Figure 2017212971
以上のように、α化度が60〜95%の範囲内の米粉(実施例8〜10)は、適度な強度でかつ破断距離が長いゲル、すなわち粘弾性のある米ゲルを作ることがわかった。
4.実験例4(ドラムドライヤー:比較例13)
モミロマン30重量%に水70重量%を加え吸水させた後、石臼式粉砕機で懸濁液にした(計5000g)。これを沸騰溶解させた後にドラムドライヤー(中央化工機社製,表面温度120℃)にて乾燥し、粉砕して300μm以下に調整して調整米粉粉末を得た。これらの調整米粉粉末を実験例1と同様にして水に分散し物性を測定し結果を表10に記載した。さらに、調整米粉粉末のアミロース含量とα化度を測定し表11に示した。
Figure 2017212971
Figure 2017212971
5.実験例5(エクストルーダー条件:実施例11、比較例14〜17)
モミロマン65重量%に水35重量%を含浸させ吸水させた。これを表12に示したスクリュー設計、スクリュー回転数でエクストルーダー処理した。他の条件は圧力:33〜37kg/cm、スクリュー回転数:250rpmとし、得られた処理物を90℃で熱風乾燥させた後に粉砕機にて粉砕して300μm以下に調整して調整米粉粉末を得た。この調整米粉粉末のα化度を測定し表12に記載した。これらの調整米粉粉末を実験例1と同様にして水に分散し物性を測定し結果を表13に記載した。さらに、調整米粉粉末のアミロース含量を測定し表14に示した。
Figure 2017212971
Figure 2017212971
Figure 2017212971
以上のように、エクストルーダーを使用した実験例5では、使用しなかった実験例4よりも粘弾性のある米ゲルを作ることがわかった。また、エクストルーダーを使用した場合でもα化度が高すぎると弾力性のある米ゲルを作ることができなかった。
6.実験例6(実施例は付着性が少なく嚥下食に利用できるが比較例は付着性が高く嚥下食に向かないことを確認する実験:実施例12〜15、比較例18〜21)
実施例1〜4,比較例2,3,5,6で作製した調整米粉粉末を使用して嚥下食を作製した。具体的には調整米粉粉末30gを水170gに分散し90℃にて加熱溶解した。これを直径50mm、高さ15mmのシャーレに充填し20℃で24時間静置後、20℃及び60℃における硬さ、付着性、及び凝集性を測定し、結果を表15に記載した。
Figure 2017212971
実施例の調整米粉粉末を使用した嚥下食は硬さ、付着性、凝集性のいずれも嚥下食物性の許可基準I又はIIの基準を満たしていたことがわかった。
7.実験例7(本発明品を使用した食品:実施例16〜21)
(実施例16)
実施例3で作製した調整米粉粉末を使用してプリンを作製した(実施例16)。具体的には 調整米粉粉末40g、脱脂粉乳40g、砂糖30g、粉末油脂10gを水80gに分散後、90℃に加温して溶解し、プリンカップに充填した。5℃で冷蔵保存して24時間後と5日後の物性を確認し表16に示した。
Figure 2017212971
5日後においても物性の変化はほとんどなかった。
(実施例17)
実施例8で作製した調整米粉粉末を使用して経腸栄養液ゼリーを作製した(実施例17)。具体的にはエンシェアリキッド200gに調整米粉粉末20を分散し、90℃に加温して溶解した。これをカップに充填し20℃に冷却後、20℃と60℃の物性を測定した。結果を表17に示した。
Figure 2017212971
20℃、及び60℃においても嚥下食の物性に適した経腸栄養ゼリーができた。
(実施例18)
実施例9で作製した調整米粉粉末を使用して卵や乳を使用しない低アレルゲンプリンを作製した(実施例18)。具体的には調整米粉粉末45g、砂糖40g、粉末油脂15g、プリン香料を水80gに分散後、90℃に加温して溶解し、プリンカップに充填した。5℃で冷蔵保存して24時間後と5日後の物性を確認し表18に示した。
Figure 2017212971
5日後においても物性の変化はほとんどなかった。
(実施例19)
実施例11で作製した調整米粉粉末を使用して卵を使用しない茶碗蒸し風のゼリーを作製した(実施例19)。具体的には、通常の茶碗蒸しの作製方法において、液卵部分を調整米粉粉末の15重量%懸濁液に変えて使用し、さらに香料、色素を適量添加して加熱処理を行った。10℃に冷却後再び60℃に加温したところ茶碗蒸し風のゼリーとなった。再び10℃に冷却後、60℃に再加熱を行ったが通常の茶碗蒸しのように離水することなく、製造直後と同様の食感であった。
(実施例20)
実施例5で作製した調整米粉粉末を、液卵に対し3重量%添加して卵焼き及び伊達巻を作製した(実施例20)。調整米粉粉末を添加していないものに比べ、弾力があり美味しいものができた。また、4℃で5日間保管した場合においても添加していないものに比べ食感に変化はなく離水の発生もなかった。
(実施例21)
実施例6で作製した調整米粉粉末を、通常の食パンを作製する際、強力粉に対し2重量%添加して添加していないものと同一条件で焼成し食パンを作製した(実施例21)。4℃で5日間保管したところ、添加したものは老化が抑えられ軟らかい食感が保たれていたのに対し、添加していないものは老化が進みパサツキのある食感になっていた。
8.実験例8(ゲル強度の測定:実施例22〜25、比較例22〜27)
実施例1〜4、比較例1〜6で作製した調製米粉粉末について、各75gを20℃の425gの水に分散し2分間撹拌後、高さ30mmの容器に充填を行い、10℃に冷却後24時間後にゲル強度を測定した。さらに3日、1週間、2週間、3週間保管したものについてもゲル強度を測定した。さらに、一部のサンプルについては食感も評価した。
Figure 2017212971

G:ゲル強度(g/cm
-:測定限界以下
*:糊状感が強く食感が悪い
以上のように、実施例1〜4の調整米粉粉末(実施例22〜25)は、冷水に溶解した場合においてもゲル化特性があり、経時的な強度も安定していた。また、比較例26、27で得られたゲルは、24時間後ではゲル強度は出たが、糊状感の強いゲルであり、食感が悪かった。また、これらの比較例の米粉は、アミロース含量が多いため経時的ゲル強度の上昇があり、脆いゲルとなり食感もさらに悪くなった。
9.実験例9(本発明品を使用した食品:実施例26、27)
(実施例26:インスタントプリン)
実施例2で作製した調整米粉粉末を使用して、卵や乳を使用しない低アレルゲンプリンを作製した(実施例26)。具体的には、調整米粉粉末70g、砂糖40g、粉末油脂15g、プリン香料を水80gに分散後、90℃に加温して溶解し、プリンカップに充填した。これを5℃で冷蔵保存して24時間後と5日後の物性を確認した。その結果を下記表に示した。
Figure 2017212971

5日後においても物性の変化はほとんどなかった。
(実施例27)
実施例4で作製した調整米粉粉末を使用してインスタントスムージーを作製した。具体的には、調整米粉粉末5g、粉末果汁(いちご)30g、クエン酸0.5g、砂糖10gを混合し、牛乳200gに加え撹拌し溶解させた。これを冷蔵庫で24時間保管した後に確認したところ、糊状感がなくとろみのある美味しいいちご飲料となった。

Claims (6)

  1. アミロース含量が20〜30%の範囲内であり、かつα化度が60〜95%の範囲内であることを特徴とする米粉。
  2. 下記調整条件で調整したゲルに対して測定したゲル強度が20〜300g/cmの範囲内であり、破断距離が3〜25mmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の米粉。
    調整条件:前記米粉50gを20℃の水450gに分散し、その後95℃に加熱溶解し、直径50mm、高さ30mmの容器に充填を行い再び10℃に冷却した後、24時間後に測定を行う。
  3. 下記調製条件で調製したゲルに対して測定したゲル強度が10〜150g/cm2の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の米粉。
    調製条件:前記米粉75gを20℃の水425gに分散し2分間撹拌後、直径50mm、高さ30mmの容器に充填を行い、10℃に冷却後24時間後に測定を行う。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の米粉又は米粉に加水したゲルを含有することを特徴とする食品。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の米粉の製造方法であって、
    アミロース含量が20〜30%の米に、該米と水との総重量に対して18〜42重量%となるように水を添加して前記米に水を吸水させる吸水工程と、
    吸水後の米を70〜100℃の温度で混練して部分的にα化する部分α化工程と、
    部分α化された米を乾燥する乾燥工程と、
    乾燥後の米を粉砕して粉末化する粉砕工程と、を備えることを特徴とする米粉の製造方法。
  6. 前記部分α化工程は、前記吸水後の米をエクストルーダー処理して行うことを特徴とする請求項5に記載の米粉の製造方法。
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