以下、図面を参照し、本発明の車両制御システム、車両制御方法、および車両制御プログラムの実施形態について説明する。
<共通構成>
図1は、車両制御システム100が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の構成要素を示す図である。車両制御システム100が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
図1に示すように、自車両Mには、ファインダ20−1から20−7、レーダ30−1から30−6、およびカメラ40等のセンサと、ナビゲーション装置50と、車両制御システム100とが搭載される。
ファインダ20−1から20−7は、例えば、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。例えば、ファインダ20−1は、フロントグリル等に取り付けられ、ファインダ20−2および20−3は、車体の側面やドアミラー、前照灯内部、側方灯付近等に取り付けられる。ファインダ20−4は、トランクリッド等に取り付けられ、ファインダ20−5および20−6は、車体の側面や尾灯内部等に取り付けられる。上述したファインダ20−1から20−6は、例えば、水平方向に関して150度程度の検出領域を有している。また、ファインダ20−7は、ルーフ等に取り付けられる。ファインダ20−7は、例えば、水平方向に関して360度の検出領域を有している。
レーダ30−1および30−4は、例えば、奥行き方向の検出領域が他のレーダよりも広い長距離ミリ波レーダである。また、レーダ30−2、30−3、30−5、30−6は、レーダ30−1および30−4よりも奥行き方向の検出領域が狭い中距離ミリ波レーダである。
以下、ファインダ20−1から20−7を特段区別しない場合は、単に「ファインダ20」と記載し、レーダ30−1から30−6を特段区別しない場合は、単に「レーダ30」と記載する。レーダ30は、例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体を検出する。
カメラ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ40は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ40は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの前方を撮像する。カメラ40は、複数のカメラを含むステレオカメラであってもよい。
なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
<第1の実施形態>
図2は、車両制御システム100を中心とした機能構成図である。自車両Mには、ファインダ20、レーダ30、およびカメラ40などを含む検知デバイスDDと、ナビゲーション装置50と、通信装置55と、車両センサ60と、HMI(Human Machine Interface)70と、車両制御システム100と、走行駆動力出力装置200と、ステアリング装置210と、ブレーキ装置220とが搭載される。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、特許請求の範囲における車両制御システムは、「車両制御システム100」のみを指しているのではなく、車両制御システム100以外の構成(検知部DDやHMI70など)を含んでもよい。
ナビゲーション装置50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置50は、GNSS受信機によって自車両Mの位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置50により導出された経路は、車両制御システム100の目標車線決定部110に提供される。自車両Mの位置は、車両センサ60の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、車両制御システム100が手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、自車両Mの位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置50とは独立して設けられてもよい。また、ナビゲーション装置50は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。この場合、端末装置と車両制御システム100との間で、無線または有線による通信によって情報の送受信が行われる。
通信装置55は、例えば、自車両Mの周囲に存在する移動物体と共に移動する端末装置に情報を発信する近距離通信回路を含む。通信装置55における近距離通信回路は、例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用した無線通信を行う。なお、通信装置55は、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)を介して、端末装置と通信を行ってもよい。
車両センサ60は、車速を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
図3は、HMI70の構成図である。HMI70は、例えば、運転操作系の構成と、非運転操作系の構成とを備える。これらの境界は明確なものでは無く、運転操作系の構成が非運転操作系の機能を備えること(或いはその逆)があってもよい。
HMI70は、運転操作系の構成として、例えば、アクセルペダル71、アクセル開度センサ72およびアクセルペダル反力出力装置73と、ブレーキペダル74およびブレーキ踏量センサ(或いはマスター圧センサなど)75と、シフトレバー76およびシフト位置センサ77と、ステアリングホイール78、ステアリング操舵角センサ79およびステアリングトルクセンサ80と、その他運転操作デバイス81とを含む。
アクセルペダル71は、車両乗員による加速指示(或いは戻し操作による減速指示)を受け付けるための操作子である。アクセル開度センサ72は、アクセルペダル71の踏み込み量を検出し、踏み込み量を示すアクセル開度信号を車両制御システム100に出力する。なお、車両制御システム100に出力するのに代えて、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、またはブレーキ装置220に直接出力することがあってもよい。以下に説明する他の運転操作系の構成についても同様である。アクセルペダル反力出力装置73は、例えば車両制御システム100からの指示に応じて、アクセルペダル71に対して操作方向と反対向きの力(操作反力)を出力する。
ブレーキペダル74は、車両乗員による減速指示を受け付けるための操作子である。ブレーキ踏量センサ75は、ブレーキペダル74の踏み込み量(或いは踏み込み力)を検出し、検出結果を示すブレーキ信号を車両制御システム100に出力する。
シフトレバー76は、車両乗員によるシフト段の変更指示を受け付けるための操作子である。シフト位置センサ77は、車両乗員により指示されたシフト段を検出し、検出結果を示すシフト位置信号を車両制御システム100に出力する。
ステアリングホイール78は、車両乗員による旋回指示を受け付けるための操作子である。ステアリング操舵角センサ79は、ステアリングホイール78の操作角を検出し、検出結果を示すステアリング操舵角信号を車両制御システム100に出力する。ステアリングトルクセンサ80は、ステアリングホイール78に加えられたトルクを検出し、検出結果を示すステアリングトルク信号を車両制御システム100に出力する。
その他運転操作デバイス81は、例えば、ジョイスティック、ボタン、ダイヤルスイッチ、GUI(Graphical User Interface)スイッチなどである。その他運転操作デバイス81は、加速指示、減速指示、旋回指示などを受け付け、車両制御システム100に出力する。
HMI70は、非運転操作系の構成として、例えば、表示装置82、スピーカ83、接触操作検出装置84およびコンテンツ再生装置85と、各種操作スイッチ86と、シート88およびシート駆動装置89と、ウインドウガラス90およびウインドウ駆動装置91と、車室内カメラ95とを含む。
表示装置82は、車室内の乗員により視認される表示装置である。表示装置82は、例えば、インストルメントパネルの各部、助手席や後部座席に対向する任意の箇所などに取り付けられる、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置などである。また、表示装置82は、車内から視認可能にフロントウインドシールドやその他のウインドウに画像を投影するHUD(Head Up Display)であってもよい。
接触操作検出装置84は、車内用ディスプレイ82Aがタッチパネルである場合に、車内用ディスプレイ82Aの表示画面における接触位置(タッチ位置)を検出して、車両制御システム100に出力する。なお、車内用ディスプレイ82Aがタッチパネルでない場合、接触操作検出装置84は省略されてよい。
スピーカ83は、音声を出力する。スピーカ83は、車室内に放音する。スピーカ83は、車室内に放音する車室内に内蔵されたスピーカである。
コンテンツ再生装置85は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)再生装置、CD(Compact Disc)再生装置、テレビジョン受信機、各種案内画像の生成装置などを含む。表示装置82、スピーカ83、接触操作検出装置84およびコンテンツ再生装置85は、一部または全部がナビゲーション装置50と共通する構成であってもよい。
各種操作スイッチ86は、車室内の任意の箇所に配置される。各種操作スイッチ86には、自動運転の開始(或いは将来の開始)および停止を指示する自動運転切替スイッチ87を含む。自動運転切替スイッチ87は、GUI(Graphical User Interface)スイッチ、機械式スイッチのいずれであってもよい。また、各種操作スイッチ86は、シート駆動装置89やウインドウ駆動装置91を駆動するためのスイッチを含んでもよい。
シート88は、車両乗員が着座するシートである。シート駆動装置89は、シート88のリクライニング角、前後方向位置、ヨー角などを自在に駆動する。ウインドウガラス90は、例えば各ドアに設けられる。ウインドウ駆動装置91は、ウインドウガラス90を開閉駆動する。
車室内カメラ95は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車室内カメラ95は、バックミラーやステアリングボス部、インストルメントパネルなど、運転操作を行う車両乗員の少なくとも頭部を撮像可能な位置に取り付けられる。カメラ40は、例えば、周期的に繰り返し車両乗員を撮像する。
車両制御システム100の説明に先立って、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、およびブレーキ装置220について説明する。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、自車両Mが内燃機関を動力源とした自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)を備え、自車両Mが電動機を動力源とした電気自動車である場合、走行用モータおよび走行用モータを制御するモータECUを備え、自車両Mがハイブリッド自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUとを備える。走行駆動力出力装置200がエンジンのみを含む場合、エンジンECUは、後述する走行制御部160から入力される情報に従って、エンジンのスロットル開度やシフト段等を調整する。走行駆動力出力装置200が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整する。走行駆動力出力装置200がエンジンおよび走行用モータを含む場合、エンジンECUおよびモータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、互いに協調して走行駆動力を制御する。
ステアリング装置210は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、車両制御システム100から入力される情報、或いは入力されるステアリング操舵角またはステアリングトルクの情報に従って電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
ブレーキ装置220は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、制動制御部とを備える電動サーボブレーキ装置である。電動サーボブレーキ装置の制動制御部は、走行制御部160から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。電動サーボブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置220は、上記説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。電子制御式油圧ブレーキ装置は、走行制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する。また、ブレーキ装置220は、走行駆動力出力装置200に含まれ得る走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
[車両制御システム]
以下、車両制御システム100について説明する。車両制御システム100は、例えば、一以上のプロセッサまたは同等の機能を有するハードウェアにより実現される。車両制御システム100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、記憶装置、および通信インターフェースが内部バスによって接続されたECU(Electronic Control Unit)、或いはMPU(Micro-Processing Unit)などが組み合わされた構成であってよい。
図2に戻り、車両制御システム100は、例えば、目標車線決定部110と、自動運転制御部120と、走行制御部160と、記憶部180とを備える。自動運転制御部120は、例えば、自動運転モード制御部130と、自車位置認識部140と、外界認識部142と、行動計画生成部144と、軌道生成部146と、切替制御部150と、発信制御部155とを備える。目標車線決定部110、自動運転制御部120の各部、および走行制御部160のうち一部または全部は、プロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
記憶部180には、例えば、高精度地図情報182、目標車線情報184、行動計画情報186、モード別操作可否情報188などの情報が格納される。記憶部180は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部180に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、そのプログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部180にインストールされてもよい。また、車両制御システム100は、複数のコンピュータ装置(車載コンピュータ)によって分散化されたものであってもよい。
目標車線決定部110は、例えば、MPUにより実現される。目標車線決定部110は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、高精度地図情報182を参照してブロックごとに目標車線を決定する。目標車線決定部110は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。目標車線決定部110は、例えば、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な走行経路を走行できるように、目標車線を決定する。目標車線決定部110により決定された目標車線は、目標車線情報184として記憶部180に記憶される。
高精度地図情報182は、ナビゲーション装置50が有するナビ地図よりも高精度な地図情報である。高精度地図情報182は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、高精度地図情報182には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。道路情報には、市街地道路、有料道路(高速道路を含む)、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事や交通事故、渋滞等によって車線が封鎖されているといった情報が含まれる。
自動運転モード制御部130は、自動運転制御部120が実施する自動運転のモードを決定する。本実施形態における自動運転のモードには、以下のモードが含まれる。なお、以下はあくまで一例であり、自動運転のモード数は任意に決定されてよい。
[モードA]
モードAは、最も自動運転の度合が高いモードである。モードAが実施されている場合、複雑な合流制御など、全ての車両制御が自動的に行われるため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視する必要が無い。
[モードB]
モードBは、モードAの次に自動運転の度合が高いモードである。モードBが実施されている場合、原則として全ての車両制御が自動的に行われるが、場面に応じて自車両Mの運転操作が車両乗員に委ねられる。このため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視している必要がある。
[モードC]
モードCは、モードBの次に自動運転の度合が高いモードである。モードCが実施されている場合、車両乗員は、場面に応じた確認操作をHMI70に対して行う必要がある。モードCでは、例えば、車線変更のタイミングが車両乗員に通知され、車両乗員がHMI70に対して車線変更を指示する操作を行った場合に、自動的な車線変更が行われる。このため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視している必要がある。
自動運転モード制御部130は、HMI70に対する車両乗員の操作、行動計画生成部144により決定されたイベント、軌道生成部146により決定された走行態様などに基づいて、自動運転のモードを決定する。自動運転のモードは、HMI制御部170に通知される。また、自動運転のモードには、自車両Mの検知デバイスDDの性能等に応じた限界が設定されてもよい。例えば、検知デバイスDDの性能が低い場合には、モードAは実施されないものとしてよい。いずれのモードにおいても、HMI70における運転操作系の構成に対する操作によって、手動運転モードに切り替えること(オーバーライド)は可能である。
自動運転制御部120の自車位置認識部140は、記憶部180に格納された高精度地図情報182と、ファインダ20、レーダ30、カメラ40、ナビゲーション装置50、または車両センサ60から入力される情報とに基づいて、自車両Mが走行している車線(走行車線)、および、走行車線に対する自車両Mの相対位置を認識する。
自車位置認識部140は、例えば、高精度地図情報182から認識される道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ40によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
図4は、自車位置認識部140により走行車線L1に対する自車両Mの相対位置が認識される様子を示す図である。自車位置認識部140は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線L1に対する自車両Mの相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部140は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。自車位置認識部140により認識される自車両Mの相対位置は、目標車線決定部110に提供される。
外界認識部142は、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等から入力される情報に基づいて、周辺車両の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。周辺車両とは、例えば、自車両Mの周辺を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、他車両の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、他車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、上記各種機器の情報に基づいて把握される、周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいは車線変更をしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部142は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者、自転車等に乗っている人などの移動物体、その他の物体の位置を認識してもよい。
行動計画生成部144は、自動運転のスタート地点、および/または自動運転の目的地を設定する。自動運転のスタート地点は、自車両Mの現在位置であってもよいし、自動運転を指示する操作がなされた地点でもよい。行動計画生成部144は、そのスタート地点と自動運転の目的地との間の区間において、行動計画を生成する。なお、これに限らず、行動計画生成部144は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、自車両Mを減速させる減速イベントや、自車両Mを加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、自車両Mに前走車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させたりする分岐イベント、本線に合流するための合流車線において自車両Mを加減速させ、走行車線を変更させる合流イベント、自動運転の開始地点で手動運転モードから自動運転モードに移行させたり、自動運転の終了予定地点で自動運転モードから手動運転モードに移行させたりするハンドオーバイベント等が含まれる。行動計画生成部144は、目標車線決定部110により決定された目標車線が切り替わる箇所において、車線変更イベント、分岐イベント、または合流イベントを設定する。行動計画生成部144によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報186として記憶部180に格納される。
図5は、ある区間について生成された行動計画の一例を示す図である。図示するように、行動計画生成部144は、目標車線情報184が示す目標車線上を自車両Mが走行するために必要な行動計画を生成する。なお、行動計画生成部144は、自車両Mの状況変化に応じて、目標車線情報184に拘わらず、動的に行動計画を変更してもよい。例えば、行動計画生成部144は、車両走行中に外界認識部142によって認識された周辺車両の速度が閾値を超えたり、自車線に隣接する車線を走行する周辺車両の移動方向が自車線方向に向いたりした場合に、自車両Mが走行予定の運転区間に設定されたイベントを変更する。例えば、レーンキープイベントの後に車線変更イベントが実行されるようにイベントが設定されている場合において、外界認識部142の認識結果によって当該レーンキープイベント中に車線変更先の車線後方から車両が閾値以上の速度で進行してきたことが判明した場合、行動計画生成部144は、レーンキープイベントの次のイベントを、車線変更イベントから減速イベントやレーンキープイベント等に変更してよい。この結果、車両制御システム100は、外界の状態に変化が生じた場合においても、安全に自車両Mを自動走行させることができる。
図6は、軌道生成部146の構成の一例を示す図である。軌道生成部146は、例えば、走行態様決定部146Aと、軌道候補生成部146Bと、評価・選択部146Cとを備える。
走行態様決定部146Aは、例えば、レーンキープイベントを実施する際に、定速走行、追従走行、低速追従走行、減速走行、カーブ走行、障害物回避走行などのうちいずれかの走行態様を決定する。この場合、走行態様決定部146Aは、自車両Mの前方に他車両が存在しない場合に、走行態様を定速走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、前走車両に対して追従走行するような場合に、走行態様を追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、渋滞場面などにおいて、走行態様を低速追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により前走車両の減速が認識された場合や、停車や駐車などのイベントを実施する場合に、走行態様を減速走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により自車両Mがカーブ路に差し掛かったことが認識された場合に、走行態様をカーブ走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により自車両Mの前方に人などの移動物体が認識された場合に、走行態様を障害物回避走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、車線変更イベント、追い越しイベント、分岐イベント、合流イベント、ハンドオーバイベントなどを実施する場合に、それぞれのイベントに応じた走行態様を決定する。
軌道候補生成部146Bは、走行態様決定部146Aにより決定された走行態様に基づいて、軌道の候補を生成する。図7は、軌道候補生成部146Bにより生成される軌道の候補の一例を示す図である。図7は、自車両Mが車線L1から車線L2に車線変更する場合に生成される軌道の候補を示している。
軌道候補生成部146Bは、図7に示すような軌道を、例えば、将来の所定時間ごとに、自車両Mの基準位置(例えば重心や後輪軸中心)が到達すべき目標位置(軌道点K)の集まりとして決定する。図8は、軌道候補生成部146Bにより生成される軌道の候補を軌道点Kで表現した図である。軌道点Kの間隔が広いほど、自車両Mの速度は速くなり、軌道点Kの間隔が狭いほど、自車両Mの速度は遅くなる。従って、軌道候補生成部146Bは、加速したい場合には軌道点Kの間隔を徐々に広くし、減速したい場合は軌道点の間隔を徐々に狭くする。
このように、軌道点Kは速度成分を含むものであるため、軌道候補生成部146Bは、軌道点Kのそれぞれに対して目標速度を与える必要がある。目標速度は、走行態様決定部146Aにより決定された走行態様に応じて決定される。
ここで、車線変更(分岐を含む)を行う場合の目標速度の決定手法について説明する。軌道候補生成部146Bは、まず、車線変更ターゲット位置(或いは合流ターゲット位置)を設定する。車線変更ターゲット位置は、周辺車両との相対位置として設定されるものであり、「どの周辺車両の間に車線変更するか」を決定するものである。軌道候補生成部146Bは、車線変更ターゲット位置を基準として3台の周辺車両に着目し、車線変更を行う場合の目標速度を決定する。図9は、車線変更ターゲット位置TAを示す図である。図中、L1は自車線を表し、L2は隣接車線を表している。ここで、自車両Mと同じ車線で、自車両Mの直前を走行する周辺車両を前走車両mA、車線変更ターゲット位置TAの直前を走行する周辺車両を前方基準車両mB、車線変更ターゲット位置TAの直後を走行する周辺車両を後方基準車両mCと定義する。自車両Mは、車線変更ターゲット位置TAの側方まで移動するために加減速を行う必要があるが、この際に前走車両mAに追いついてしまうことを回避しなければならない。このため、軌道候補生成部146Bは、3台の周辺車両の将来の状態を予測し、各周辺車両と干渉しないように目標速度を決定する。
図10は、3台の周辺車両の速度を一定と仮定した場合の速度生成モデルを示す図である。図中、mA、mBおよびmCから延出する直線は、それぞれの周辺車両が定速走行したと仮定した場合の進行方向における変位を示している。自車両Mは、車線変更が完了するポイントCPにおいて、前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間にあり、且つ、それ以前において前走車両mAよりも後ろにいなければならない。このような制約の下、軌道候補生成部146Bは、車線変更が完了するまでの目標速度の時系列パターンを、複数導出する。そして、目標速度の時系列パターンをスプライン曲線等のモデルに適用することで、図8に示すような軌道の候補を複数導出する。なお、3台の周辺車両の運動パターンは、図10に示すような定速度に限らず、定加速度、定ジャーク(躍度)を前提として予測されてもよい。
評価・選択部146Cは、軌道候補生成部146Bにより生成された軌道の候補に対して、例えば、計画性と安全性の二つの観点で評価を行い、走行制御部160に出力する軌道を選択する。計画性の観点からは、例えば、既に生成されたプラン(例えば行動計画)に対する追従性が高く、軌道の全長が短い場合に軌道が高く評価される。例えば、右方向に車線変更することが望まれる場合に、一旦左方向に車線変更して戻るといった軌道は、低い評価となる。安全性の観点からは、例えば、それぞれの軌道点において、自車両Mと物体(周辺車両等)との距離が遠く、加減速度や操舵角の変化量などが小さいほど高く評価される。
切替制御部150は、自動運転切替スイッチ87から入力される信号に基づいて自動運転モードと手動運転モードとを相互に切り替える。また、切替制御部150は、HMI70における運転操作系の構成に対する加速、減速または操舵を指示する操作に基づいて、自動運転モードから手動運転モードに切り替える。例えば、切替制御部150は、HMI70における運転操作系の構成から入力された信号の示す操作量が閾値を超えた状態が、基準時間以上継続した場合に、自動運転モードから手動運転モードに切り替える(オーバーライド)。また、切替制御部150は、オーバーライドによる手動運転モードへの切り替えの後、所定時間の間、HMI70における運転操作系の構成に対する操作が検出されなかった場合に、自動運転モードに復帰させてもよい。
発信制御部155は、通信装置55の動作を制御する。発信制御部155は、外界認識部142により認識されている自車両Mの周辺状況に基づいて、端末装置に対して、端末装置に注意喚起を行わせるための情報を発信する動作の開始および停止を制御する。端末装置は、例えば、人などの移動物体と共に移動する。
走行制御部160は、軌道生成部146によって生成された軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、およびブレーキ装置220を制御する。
HMI制御部170は、自動運転制御部120により自動運転のモードの情報が通知されると、モード別操作可否情報188を参照して、自動運転のモードの種別に応じてHMI70を制御する。
図11は、モード別操作可否情報188の一例を示す図である。図11に示すモード別操作可否情報188は、運転モードの項目として「手動運転モード」、「自動運転モード」とを有する。また、「自動運転モード」として、上述した「モードA」、「モードB」、および「モードC」等を有する。また、モード別操作可否情報188は、非運転操作系の項目として、ナビゲーション装置50に対する操作である「ナビゲーション操作」、コンテンツ再生装置85に対する操作である「コンテンツ再生操作」、車内用ディスプレイ82Aに対する操作である「インストルメントパネル操作」等を有する。図11に示すモード別操作可否情報188の例では、上述した運転モードごとに非運転操作系に対する車両乗員の操作の可否が設定されているが、対象のインターフェース装置は、これに限定されるものではない。
HMI制御部170は、自動運転制御部120から取得したモードの情報に基づいてモード別操作可否情報188を参照することで、使用が許可される装置(ナビゲーション装置50およびHMI70の一部または全部)と、使用が許可されない装置とを判定する。また、HMI制御部170は、判定結果に基づいて、非運転操作系のHMI70、またはナビゲーション装置50に対する車両乗員からの操作の受け付けの可否を制御する。
例えば、車両制御システム100が実行する運転モードが手動運転モードの場合、車両乗員は、HMI70の運転操作系(例えば、アクセルペダル71、ブレーキペダル74、シフトレバー76、およびステアリングホイール78等)を操作する。また、車両制御システム100が実行する運転モードが自動運転モードのモードB、モードC等である場合、車両乗員には、自車両Mの周辺監視義務が生じる。このような場合、車両乗員の運転以外の行動(例えばHMI70の操作等)により注意が散漫になること(ドライバーディストラクション)を防止するため、HMI制御部170は、HMI70の非運転操作系の一部または全部に対する操作を受け付けないように制御を行う。この際、HMI制御部170は、自車両Mの周辺監視を行わせるために、外界認識部142により認識された自車両Mの周辺車両の存在やその周辺車両の状態を、表示装置82に画像などで表示させると共に、自車両Mの走行時の場面に応じた確認操作をHMI70に受け付けさせてよい。
また、HMI制御部170は、運転モードが自動運転のモードAである場合、ドライバーディストラクションの規制を緩和し、操作を受け付けていなかった非運転操作系に対する車両乗員の操作を受け付ける制御を行う。例えば、HMI制御部170は、表示装置82に映像を表示させたり、スピーカ83に音声を出力させたり、コンテンツ再生装置85にDVDなどからコンテンツを再生させたりする。なお、コンテンツ再生装置85が再生するコンテンツには、DVDなどに格納されたコンテンツの他、例えば、テレビ番組等の娯楽、エンターテイメントに関する各種コンテンツが含まれてよい。また、図11に示す「コンテンツ再生操作」は、このような娯楽、エンターテイメントに関するコンテンツ操作を意味するものであってよい。
以下、上述した実施形態において、自車両Mの周囲の端末装置300に対して端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を発信することについて説明する。人Pが保持するスマートフォンやタブレットなどの端末装置300は、移動物体と共に移動する端末装置300の一例であるが、これに限定されない。移動物体と共に移動する端末装置300は、二輪車に搭載された端末装置であってよく、車両に搭載されたナビゲーション装置などの端末装置であってよい。
図12は、自車両Mに設けられた複数の発信回路55F、55R、55L、および55Bのそれぞれの電波送信範囲と移動物体の認識範囲との関係の一例を示す図である。前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bは、上述した通信装置55に含まれる。前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bは、それぞれ、アンテナ素子およびアンテナ駆動回路を備える。前方発信回路55Fは、自車両Mのフロントバンパ付近に設けられる。前方発信回路55Fは、自車両Mの前方において所定の範囲に電波を発信する。右側方発信回路55Rは、自車両Mの右サイドドアノブ付近に設けられる。右側方発信回路55Rは、自車両Mの右側方において所定の範囲に電波を発信する。左側方発信回路55Lは、自車両Mの左サイドドアノブ付近に設けられる。左側方発信回路55Lは、自車両Mの左側方において所定の範囲に電波を発信する。後方発信回路55Bは、自車両Mのリアバンパ付近に設けられる。後方発信回路55Bは、自車両Mの後方において所定の範囲に電波を発信する。
図13は、自車両Mにおける移動物体の認識範囲の一例を示す図である。外界認識部142は、検知デバイスDDにおけるカメラ40などから供給された信号に基づいて、自車両Mの前方範囲FA、右側方範囲RA、左側方範囲LA、後方範囲BAのそれぞれに人Pなどの移動物体が存在しているか否かを認識する。自車両Mの前方範囲FAは、前方発信回路55Fが電波を発信する範囲と重複している。自車両Mの右側方範囲RAは、右側方発信回路55Rが電波を発信する範囲と重複している。自車両Mの左側方範囲LAは、左側方発信回路55Lが電波を発信する範囲と重複している。自車両Mの後方範囲BAは、後方発信回路55Bが電波を発信する範囲と重複している。
図14は、車両制御システム100における各部と端末装置300との関係の一例を示す図である。発信制御部155には、外界認識部142から移動物体の位置情報が供給される。外界認識部142は、例えばカメラ40により撮像された画像に含まれる人を抽出し、画像内のおける人の代表画素の位置に基づいて、自車両Mに対する人の方向および距離を取得する。人の代表画素は、例えば、人として抽出された画像領域における中心画素である。外界認識部142は、人などの移動物体の位置情報を発信制御部155に出力する。位置情報には、例えば、自車両M周囲の歩行している人、自転車などに乗車する人の自車両Mに対する方向θ1、および自車両Mからの距離などの情報が含まれている。
発信制御部155は、位置情報に基づいて、通信装置55に含まれる前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bを駆動させる。発信制御部155は、前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bのうち、移動物体が存在しない方向に電波を発信する発信回路を動作させる。発信制御部155は、端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を無線信号に変換し、変換した無線信号を複数の発信回路のそれぞれに供給する。これにより、発信制御部155は、移動物体が存在しない方向に対応する発信回路のそれぞれから電波を発信させる。「端末装置300に注意喚起を行わせるための情報」は、例えば、端末装置300を保持する人Pに対して車両への注意を喚起させるように端末装置300を動作させる情報である。「端末装置300に注意喚起を行わせるための情報」は、例えば、端末装置300に強制的に通知音を出力させる命令であってよいが、これに限定されない。「端末装置300に注意喚起を行わせるための情報」は、強制的に振動を発生させる命令や、強制的にメッセージを表示させる命令などであってもよい。
端末装置300は、例えば、無線通信部302と、制御部304と、通知部306とを含む。無線通信部302は、例えば、アンテナ素子、およびDSRCなどを利用して無線通信を行う近距離通信回路を含む。制御部304は、例えば、端末装置300にインストールされたプログラムを実行することで各種の処理を行うCPU等により実現することができる。通知部306は、液晶ディスプレイ、スピーカ、または振動発生装置などにより実現することができる。
無線通信部302は、通信装置55から発信された電波がアンテナ素子に到来した場合に、受信信号を生成する。制御部304は、無線通信部302により生成された受信信号を解析し、解析した結果に基づいて通知部306を用いて注意喚起を行う。制御部304は、例えば、スピーカによる通知音の出力または振動発生装置による振動の発生と共に、液晶ディスプレイの画面331に「周囲の自動車に注意してください。」というメッセージ画像を表示する。
図15は、車両制御システム100において端末装置300に注意喚起を行わせる動作の流れの一例を示すフローチャートである。図15の処理は、車両制御システム100が起動している最中に繰り返して実行される。
発信制御部155は、まず、自車両Mの運転モードが自動運転モードであるか否かを判定する(ステップS100)。発信制御部155は、行動計画情報186を参照して、自車両Mの現在位置が自動運転を実行する区間であるか否かを判定する。また、発信制御部155は、自車両Mの現在位置が自動運転を実行する区間である場合に、切替制御部150により自動運転モードから手動運転モードに切り換えられていないか否かを判定する。
発信制御部155は、自車両Mの運転モードが自動運転モードである場合、前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bの全てを用いて、注意喚起を行わせるための情報を発信する(ステップS102)。
次に、発信制御部155は、自車両Mの周囲に存在する移動物体を認識したか否かを判定する(ステップS104)。発信制御部155は、外界認識部142により認識されている自車両Mの周囲に存在する物体のうち、移動物体を認識する。移動物体には、自車両Mに対して相対的に移動している物体、および自車両Mに対して相対的に移動しうる物体が含まれる。発信制御部155は、例えば、道路に対して固定的に設置された電柱やガードレール等の物体は移動物体として認識しない。発信制御部155は、周辺車両、歩行者、自転車等の二輪車両に乗った人などを移動物体として認識する。
発信制御部155は、移動物体を認識した場合、移動物体が自車両Mに近づいているか否かを判定する(ステップS106)。発信制御部155は、移動物体が自車両Mに近づいている場合、注意喚起を強調する(ステップS108)。発信制御部155は、例えば、スピーカによる通知音の出力強度を高くする方向に変更する命令、または振動発生装置による振動の出力強度を高くする方向に変更する命令を通信装置55から送信させる。
次に、発信制御部155は、外界認識部142により認識されている移動物体が人であるか否かを判定する(ステップS110)。発信制御部155は、外界認識部142により認識されている移動物体が人である場合、認識されている人の方向を判定する(ステップS112)。人の方向とは、自車両Mからの方向を意味するものとする。発信制御部155は、判定された人の方向への情報の発信を停止して(ステップS114)、本フローチャートの処理を終了する。端末装置300は、端末装置300に注意喚起を行わせる情報の送信が停止されたことを検出した場合、注意喚起を停止する。
具体的な一例を説明すると、発信制御部155は、人の方向が、自車両Mの前方範囲FA、自車両Mの右側方範囲RA、自車両Mの左側方範囲LA、および自車両Mの後方範囲BAのうちいずれに該当するかを判定する(ステップS112)。この場合、発信制御部155は、判定した範囲に対応する前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bのうちのいずれかを停止させる(ステップS114)。これにより、発信制御部155は、通信装置55が情報を発信することができる複数の方向のうち外界認識部142により認識された人を除く方向に、端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を発信する。通信装置55が情報を発信することができる複数の方向とは、前方発信回路55F、右側方発信回路55R、左側方発信回路55L、および後方発信回路55Bが設けられた4個所に対応する4方向であってよいが、これに限定されず、前方向と後方向であってもよく、自車両Mの全方向であってもよい。
なお、発信制御部155は、自車両Mが自動運転モードでない場合、移動物体が認識されていない場合、および移動物体が人ではない場合、本フローチャートの処理を終了する。なお、図15に示したフローチャートにおいて、ステップS104、S106およびS108は必ずしも実施する必要が無く、ステップS102の次にステップS110以降の処理を実行してもよい。その際、移動物体は認識されていないため、ステップS110では人が認識されたかどうかを判定することになる。
以上説明したように、第1の実施形態の車両制御システム100によれば、外界認識部142により認識された人などの移動物体の方向を除く方向に、端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を発信するので、端末装置300によって注意喚起を行うことで自車両Mの周囲の人に与える不安感を低減することができる。
さらに、車両制御システム100によれば、移動物体を認識していない場合に端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を発信し、移動物体を認識した場合に移動物体を認識した方向への情報の発信を停止するので、端末装置300に注意喚起を停止させることで人に与える不安感を低減することができる。
さらに、車両制御システム100によれば、移動物体であることが認識されていない物体との距離が小さくなる傾向である場合に情報を強調するので、自車両Mの周囲の人に強い注意喚起を与えることで、人の不安感を低減することができる。その後、車両制御システム100によれば、物体が人であることが認識された場合に、端末装置300に注意喚起を行わせるための情報の発信を停止するので、人に与える不安感を低減することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の車両制御システム100は、自車両Mの位置が発信必要領域に含まれる場合に、注意喚起を行わせるための情報を発信する点で第1の実施形態の車両制御システム100とは異なる。以下、この相違点を中心に説明する。
図16は、第2の実施形態における高精度地図情報182と発信制御部155との関係の一例を示す図である。記憶部180における高精度地図情報182には、発信必要領域情報182Aが含まれている。発信必要領域とは、自車両Mから端末装置300に注意喚起をさせる情報を発信する必要がある領域である。発信制御部155は、自車両Mが走行している道路の道路リンクに対応付けられた道路種別を高精度地図情報182から抽出する。発信制御部155は、抽出した自車両Mが走行している道路の道路種別と発信必要領域情報182Aとに基づいて、自車両Mが発信必要領域を走行していることを認識する。
図17は、発信必要領域情報182Aの一例を示す図である。発信必要領域情報182Aは、道路種別182Aaと発信要否情報182Abとが対応付けられた情報である。道路種別182Aaは、高精度地図情報182に含まれる道路リンクに対応した道路種別としての「市街地道路」および「有料道路」などが含まれてよいが、これに限定されない。道路種別182Aaは、図17に例示したもの以外に、道路ノードなどの道路を特定する情報であってもよく、施設などの場所を表す情報であってもよい。
発信要否情報182Abは、端末装置300に注意喚起を行わせる情報の発信が必要か不要かを表す情報である。発信要否情報182Abには、自動車に乗車していない人が自車両Mの周辺に出現する可能性が高い道路種別を表す道路種別182Aaに対応して、情報の発信を必要とする情報が設定されている。発信要否情報182Abは、例えば、市街地道路の道路などを示す道路種別182Aaに、情報の発信を必要する情報として設定されている。発信要否情報182Abには、自動車に乗車していない人が自車両Mの周辺に出現する可能性が低い道路種別を表す道路種別182Aaに対応して、情報の発信を不要とする情報として設定されている。発信要否情報182Abは、例えば、有料道路や一般道の国道などを示す道路種別182Aaに、情報の発信を不要とする情報として設定されている。
発信制御部155は、ナビゲーション装置50から供給された自車両Mの位置が発信必要領域に含まれる場合に注意喚起を行わせるための情報を発信する。一方、発信制御部155は、自車両Mの位置が発信必要領域に含まれていない場合に注意喚起を行わせるための情報の発信を禁止する。
図18は、第2の実施形態において端末装置300に注意喚起を行わせる動作の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図18に示したフローチャートの処理のうち、第1の実施形態と同様の処理には同一のステップ番号を付することで詳細な説明を省略する。発信制御部155は、自車両Mの運転モードが自動運転モードである場合、自車両Mが情報の発信が必要な道路を走行しているか否かを判定する(ステップS101)。発信制御部155は、自車両Mが情報の発信が必要な道路を走行していない場合、本フローチャートの処理を終了する。発信制御部155は、自車両Mが情報の発信が必要な道路を走行している場合、ステップS102に処理を進めることで、第1の実施形態と同様にステップS102からステップS114までの処理を実行する。これにより、発信制御部155は、端末装置300に注意喚起を行わせる情報を発信する。
以上説明したように、第2の実施形態の車両制御システム100によれば、自車両Mが情報の発信が必要な道路を走行している場合に、端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を発信することができる。この結果、車両制御システム100によれば、歩行者等の人に注意喚起を端末装置300により行わせることで人に与える不安感を低減することができる。また、車両制御システム100によれば、自車両Mが情報の発信が不要な道路を走行している場合に情報の発信を実施しないので、例えば、周辺車両内の端末装置300へ情報を発信することを抑制することができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の車両制御システム100は、無線信号に代えて、光または音として端末装置300に注意喚起を行わせる情報を発信する点で、上述した実施形態とは異なる。以下、この相違点を中心に説明する。
図19は、自車両Mの車外に設けられた表示装置82およびスピーカ83の一例を示す図である。車外の表示装置82は、例えば、前方ディスプレイ82Fと、右側方ディスプレイ82Rと、左側方ディスプレイ82Lと、後方ディスプレイ82Bとを含む。前方ディスプレイ82Fは、フロントガラスの少なくとも一部に形成された液晶パネルであり、例えば、自車両Mの前方範囲FAに存在する人Pから視認可能な画像を表示する。右側方ディスプレイ82Rは、右サイドガラスの少なくとも一部に形成された液晶パネルであり、例えば、自車両Mの右側方範囲RAに存在する人Pから視認可能な画像を表示する。左側方ディスプレイ82Lは、左サイドガラスの少なくとも一部に形成された液晶パネルであり、例えば、自車両Mの左側方範囲LAに存在する人Pから視認可能な画像を表示する。後方ディスプレイ82Bは、後方ガラスの少なくとも一部に形成された液晶パネルであり、例えば、自車両Mの後方範囲BAに存在する人Pから視認可能な画像を表示する。なお、右側方ディスプレイ82Rおよび左側方ディスプレイ82Lは、自車両Mにおける後方座席のサイドウィンドウに形成されているものとするが、これに限らず、前方座席のサイドウィンドウに形成されていてもよく、前方座席および後方座席の両方に形成されていてもよい。
車外のスピーカ83は、例えば、前方スピーカ83Fと、右側方スピーカ83Rと、左側方スピーカ83Lと、後方スピーカ83Bとを含む。前方スピーカ83Fは、例えばフロントバンパ付近に設けられる。右側方スピーカ83Rは、例えば右サイドドア付近に設けられる。左側方スピーカ83Lは、例えば左サイドドアノブ付近に設けられる。後方スピーカ83Bは、例えばリアバンパ付近に設けられる。なお、車外のスピーカ83は、前後左右の4個に設けられたものに限られず、自車両Mの前方における幅方向の両端に設けられた2個のスピーカ装置と、自車両Mの後方における幅方向の両端に設けられた2個のスピーカ装置とであってもよい。
図20は、外界認識部142とHMI制御部170と車外の表示装置82およびスピーカ83との関係を示す図である。HMI制御部170には、外界認識部142から移動物体の位置情報が供給される。HMI制御部170は、位置情報に基づいて、表示装置82およびスピーカ83を駆動させる。HMI制御部170は、画像データをコンテンツ再生装置85から読み出して、車外の表示装置82を駆動する。また、HMI制御部170は、音声データをコンテンツ再生装置85から読み出して、車外のスピーカ83を駆動する。
前方ディスプレイ82F、右側方ディスプレイ82R、左側方ディスプレイ82L、および後方ディスプレイ82Bには、HMI制御部170から表示制御信号が供給される。前方ディスプレイ82F、右側方ディスプレイ82R、左側方ディスプレイ82L、および後方ディスプレイ82Bは、供給された表示制御信号に従って、それぞれ動作する。前方スピーカ83F、右側方スピーカ83R、左側方スピーカ83L、および後方スピーカ83Bには、HMI制御部170から音声制御信号が供給される。前方スピーカ83F、右側方スピーカ83R、左側方スピーカ83L、および後方スピーカ83Bは、供給された音声制御信号に従って、それぞれ動作する。HMI制御部170、表示装置82およびスピーカ83は、端末装置300に注意喚起をさせる情報を発信する発信部として機能する。
図21は、車外の表示装置82およびスピーカ83により情報を発信する一例を示す図である。HMI制御部170は、自車両Mの前方範囲FAに人Pなどの移動物体がいることが認識されている場合、図21に示すように、前方ディスプレイ82Fにより情報を表示させず、前方スピーカ83Fから情報を出力させない。一方、HMI制御部170は、自車両Mの左側方範囲LAに人Pなどの移動物体がいることが認識されていない場合、左側方ディスプレイ82Lによりウインドウガラスに黒画像を表示させ、左側方スピーカ83Lから注意を喚起する音声を出力させる。黒画像は、人に注意喚起をさせる情報の一例である。注意を喚起する音声は、例えば、「ピッピッピ・・・」という警報音や、「周囲の自動車に注意してください」というメッセージである。
以上説明したように、第3の実施形態の車両制御システム100によれば、外界認識部142により移動物体が認識されていない方向に注意喚起をさせる情報を発信するので、自車両Mの周囲の人に与える不安感を低減することができる。
<変形例>
以下、上述した実施形態の変形例について説明する。変形例の車両制御システム100は、移動物体を認識するために使用されている信号を検出している検知デバイスDDに異常がある場合に、異常がある検知デバイスDDが情報を検知する範囲に、端末装置300に注意喚起をさせる情報を発信する。図22は、変形例の車両制御システム100における処理の流れを示すフローチャートである。なお、図22に示したフローチャートの処理のうち、第1の実施形態と同様の処理には同一のステップ番号を付することで詳細な説明を省略する。また、図22に示したフローチャートの処理は、第1の実施形態における図15を参照して説明したフローチャートの処理を変形したものであるが、第2の実施形態において説明した処理、または第3の実施形態で説明した処理と組み合わせてもよい。
発信制御部155は、例えば全ての発信回路から情報を発信している状態で(ステップS102)、検知デバイスDDが異常であるか否かを判定する(ステップS103−1)。発信制御部155は、例えば、カメラ40により撮像されている画像の変化が所定の異常値を超えている場合やカメラ40におけるレンズの汚れにより画像内のエッジが検出できない場合などに、カメラ40が故障していると認識する。
発信制御部155は、検知デバイスDDが異常であると判定した場合、異常がある検知デバイスDDに対応する検知方向を特定する(ステップS103−2)。発信制御部155は、異常の検知デバイスDDに対応する検知方向に対応する発信回路から端末装置300に注意喚起をさせる情報を発信することを設定する(ステップS103−3)。発信制御部155は、例えば、自車両Mの前方範囲FAを撮像しているカメラ40に異常がある場合、カメラ40に対応した検知方向として自車両Mの前方範囲FAに情報を発信する前方発信回路55Fから端末装置300に注意喚起をさせる情報を発信することを設定する。
これにより、変形例の車両制御システム100によれば、外界認識部142により移動物体が認識されていない場合、および検知デバイスDDに異常がある場合に、端末装置300に注意喚起をさせる情報を発信することができる。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
上述した実施形態は、移動物体として人を認識することを主として説明したが、移動物体には、実際に移動している物体のみならず、移動する可能性がある物体を含んでよい。移動する可能性がある物体は、例えば、歩行していなく一定の範囲に止まっている人である。これにより、車両制御システム100は、移動する可能性がある物体の方向を除く方向に、端末装置300に注意喚起を行わせるための情報を発信することができる。
上述した実施形態は、車両制御システム100が自動運転を実行することを説明したが、自動運転には、車両乗員の運転操作を支援する運転支援を含んでよい。例えば、自動運転モード制御部130は、運転支援における制御を決定してもよい。運転支援における制御には、自車両Mが走行する車線を維持する運転操作を支援する制御が含んでもよい。この場合、自動運転モード制御部130は、運転支援の開始および終了の切替を制御し、目標車線決定部110、切替制御部150、高精度地図情報182および目標車線情報184は用いなくてもよい。また、運転支援における制御には、自車両Mが走行する道路から逸脱することを抑制する制御や、自車両Mの前方を走行する車両との車間距離を維持しながら走行速度を制御が含まれてよい。この場合、自動運転モード制御部130は、運転支援の開始および終了の切替を制御し、目標車線決定部110、自車位置認識部140、切替制御部150、高精度地図情報182および目標車線情報184は用いなくてもよい。