以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
先ず、図1、図2に於いて、本発明の第1の実施例に係る細胞培養装置1について説明する。尚、図1、図2中、紙面に対して右下側を前方向側、紙面に対して左上側を後方向側として説明する。
図1、図2中、2はインキュベータを示し、3はアイソレータを示している。前記インキュベータ2と前記アイソレータ3とは、例えばクリーンルーム内に配設されている。
前記インキュベータ2は、例えば直方形状の箱体であるインキュベータ本体4と、前面に設けられ該インキュベータ本体4の内部を気密に開閉可能な扉体部5と、該扉体部5と対向する面(後面)に形成された連結壁部6とを有している。
前記インキュベータ本体4の内部には培養室7が形成され、該培養室7内に細胞の培養を行う為の培養槽や細胞の培養状況を確認する為の顕微鏡等、細胞培養処理に必要な各種機器が設けられている。尚、前記培養室7内の各種機器は、無菌コネクタを介して接続され、外気からは隔離されているので、前記培養室7内の状態に拘わらず、機器内部の無菌状態が確保される様になっている。
前記扉体部5は、内扉8と外扉9とからなる2重構造となっている。前記内扉8は、例えばガラス扉であり、第1開口部である前記培養室7の開口部7aを開閉可能な大きさを有している。又、前記外扉9は、前記培養室7内を外部に対して気密に閉塞可能となっている。
又、前記インキュベータ本体4には、前記培養室7に対して挿脱可能に設けられた引き出し部11を有している。該引き出し部11に培養槽や顕微鏡等の各種機器が設けられ、前記引き出し部11を引き出すことで、前記インキュベータ2外で各種機器の設置や連結等の各種作業が行える様になっている。即ち、前記引き出し部11が作業台として機能する。尚、前記引き出し部11により前記開口部7aを閉塞可能としてもよい。この場合、前記内扉8は省略することができる。
前記インキュベータ本体4の、前記扉体部5及び前記連結壁部6とは異なる面(例えば側面)には、ポンプ部12とモニタ部13とが設けられている。
前記ポンプ部12は、培養槽に培地を供給する為の送液ポンプ等、各種ポンプが設けられ、前記ポンプ部12を介して培地等の供給や供給量の調整が可能となっている。
前記モニタ部13は、例えばタッチパネル式の液晶モニタであり、該モニタ部13により培養状況、例えば顕微鏡で確認できる培養状況を撮像した顕微鏡画像が表示されると共に、前記ポンプ部12の制御等が行える様になっている。
更に、前記インキュベータ本体4周面の前記連結壁部6側の端部には、全周に亘って断面が矩形のインキュベータ側枠部14が形成され、前記連結壁部6は前記インキュベータ側枠部14よりも後方に突出している。前記インキュベータ本体4の上面及び側面の前記インキュベータ側枠部14よりも前記扉体部5側には、所定箇所、例えば3箇所(図1、図2中では1箇所のみ図示)にクランプ等の係合部材15が設けられている。
前記インキュベータ2は、架台16上に載置されている。該架台16の脚部にはアジャスタ(図示せず)を介してキャスター17が取付けられ、該キャスター17を介して前記架台16が移動可能となっている。即ち、前記インキュベータ2は、前記架台16と一体に移動可能となっている。
又、該架台16には、冷蔵庫18が載置され、培地を貯蔵する培地タンク等が収納されている。該培地タンクにはチューブ(図示せず)が接続され、該チューブは前記ポンプ部12を介して前記培養室7内の所定の培養機器に接続されている。前記培地タンクからの培地は、前記培養室7内で加温等所定の処理が施された後、培養槽に供給される様になっている。
更に、前記架台16には制御盤19が取付けられている。該制御盤19は、前記モニタ部13、或は図示しないPC等の入力装置から入力された制御信号に基づき、前記ポンプ部12等の駆動を制御する。
前記アイソレータ3は、内部に作業室21が形成されている。前記アイソレータ3には図示しない除染ガス供給手段が設けられ、該除染ガス供給手段より除染ガス、例えば過酸化水素蒸気を供給することで、前記作業室21内の除染が行われ、該作業室21内を無菌状態とすることができる。
又、前記アイソレータ3の側面には、ガラス板やアクリル板等からなる窓部22が形成され、該窓部22を介して外部から前記作業室21内が確認できる様になっている。前記窓部22には、前記作業室21内に向って設けられたグローブ23が所定数、例えば2個設けられている。作業者は、外部より該グローブ23に手を差し込み、装着することで、前記作業室21内の無菌状態を維持しつつ、該作業室21内での作業を行うことができる。尚、前記グローブ23は2個に限られるものではなく、3個以上設けられていてもよい。
又、前記アイソレータ3の一面(例えば前面)には、第2開口部である開口部24が設けられ、該開口部24は前記連結壁部6よりも小さくなっている。前記開口部24には蝶番を介して回転可能な扉体(図示せず)が設けられ、該開口部24は前記扉体を介して開閉可能となっており、又該扉体により前記開口部24を気密に閉塞可能となっている。前記アイソレータ3前面の前記開口部24の周囲には、矩形形状のアイソレータ側枠部25が設けられている。該アイソレータ側枠部25は断面L字状であり、前方に向って突出する嵌合い部25aと内縁に形成されるフランジ部25bとを有する。
該アイソレータ側枠部25は前記インキュベータ本体4の後端部よりも大きくなっており、前記アイソレータ側枠部25に前記インキュベータ本体4の後端部が嵌合可能となっている。前記アイソレータ側枠部25周面の所定箇所、例えば3箇所(図1、図2中では1箇所のみ図示)に前記係合部材15と係合可能な被係合部材26が設けられている。又、前記アイソレータ側枠部25の内部には、例えばエラストマ樹脂等の軟質性樹脂が実装され、前記嵌合い部25a内に前記インキュベータ本体4の後端部が挿入され、前記係合部材15と前記被係合部材26とが係合した際には、前記連結壁部6と前記フランジ部25bとの間で軟質性樹脂が圧縮され、前記開口部24が気密に閉塞される様になっている。
次に、図3(A)、図3(B)に於いて、第1の実施例に係る前記連結壁部6の詳細について説明する。尚、図3(A)、図3(B)に於いて、紙面に対して左側を先端側、紙面に対して右側を基端側としている。
該連結壁部6には、前記培養室7と外部とを連通させる円形のチューブ挿通孔27が穿設されている。前記培養室7内の培養槽等に密閉系で接続された細胞吸排ライン、例えば細胞供給チューブ28と細胞回収チューブ29とが前記チューブ挿通孔27より外部に延出している。前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29の先端には、それぞれ無菌コネクタ31,31が取付けられている。前記細胞供給チューブ28や前記細胞回収チューブ29、培地タンクと培養槽とを接続するチューブ等のチューブ類は、すべて接続後に全体をまとめて滅菌する。滅菌の手段としては、オートクレーブやガンマ線滅菌等材質により適した方法を使用する。各チューブの先端は無菌コネクタが接続されていて、すべては密閉系で接続されている為、滅菌後は培養槽を含めたチューブに接続された系の内部空間は、無菌を保つことができる。
尚、本実施例では、接続した際に弁が開放されて連通し、取外した際に弁が気密に閉塞される構造のコネクタ、取外した際に先端部をピンチコック等で密閉可能な構造のチューブ等、外部に露出した状態でも密閉状態が維持される構造のものを総称して無菌コネクタと称しており、市販の無菌コネクタに限られるものではない。
前記チューブ挿通孔27はシール部30により閉塞される。該シール部30は、前記チューブ挿通孔27の周囲から全周に亘って面に対して垂直に突出するリング状のシール突起32と、該シール突起32を押圧する円板状のシール板33と、該シール板33を押圧する環状の押え板34とから構成される。
前記シール突起32は、例えばOリングや前記連結壁部6より突出する金属製のリングであり、半円状の断面形状を有している。又、前記シール板33は例えば前記シール突起32よりも径の大きいシリコンゴム製の板材となっており、該シール突起32と前記シール板33とは気密に接触可能となっている。
尚、前記シール突起32は、前記シール板33と気密に接触が可能な形状であればよく、例えば断面三角形状のリングであってもよい。又、前記シール板33は、金属板等の硬質な板材であってもよい。更に、前記シール突起32と前記シール板33は、少なくともいずれか一方がシリコンゴム等、弾性変形可能であり、雰囲気に対する耐性や耐薬性等所定の要求が満たされる材質であることが望ましい。
又、該シール板33には、中心部に前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29が挿通される孔35,35が形成されると共に、外縁から該孔35,35に向って切れ目36が形成されている。該切れ目36を介して前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29が前記孔35,35に挿通されており、該孔35,35及び前記切れ目36をコーキングすることで、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とが前記シール板33を気密に貫通する。
前記押え板34の内径は、前記シール突起32の径よりも小さく、前記シール板33の径よりも小さくなっている。又、前記押え板34の外径は前記シール板33の径よりも大きくなっている。更に、前記シール板33の外径は、前記シール突起32の外径よりも大きくなっている。前記押え板34は前記連結壁部6に対してボルト等により固着可能となっており、前記押え板34を固着させることで、前記シール板33が前記シール突起32に押圧され、前記チューブ挿通孔27が前記シール突起32と前記シール板33とにより気密に閉塞される様になっている。
尚、本実施例では、前記連結壁部6から前記シール突起32が突出し、前記シール板33と気密に接触する様になっているが、該シール板33から前記連結壁部6に向って突出するシール突起を設けてもよい。又、前記連結壁部6と前記押え板34のいずれかから突出し、前記連結壁部6と前記押え板34とを気密に接触させるシール突起を設けると共に、前記シール板33と前記押え板34のいずれかから突出し、前記シール板33と前記押え板34とを気密に接触させるシール突起を設ける構成としてもよい。この場合、前記シール板33の外径は、前記連結壁部6と前記押え板34との間のシール突起の内径よりも小さくなる。
次に、図1〜図4を参照して前記インキュベータ2と前記アイソレータ3との連結について説明する。
先ず、例えば図2に示す様に、前記インキュベータ2が前記アイソレータ3から取外されて配置されている状態に於いて、作業者が、前記扉体部5を開いて前記開口部7aを開口させ、該開口部7aを介して前記培養室7の外側に、前記引き出し部11を引き出す。そして、前記培養室7の外側に於いて、作業者が、培養槽や顕微鏡等、細胞の培養や観察に必要な機器を前記引き出し部11に設置する。尚、ここで設置される必要な機器とは、例えば、培養槽56(図4参照)、培地を加温する加熱槽(図示せず)、顕微鏡(図示せず)等である。又、該培養槽56の無菌コネクタ55には、無菌コネクタ54が接続されている。前記培養槽56、加熱槽、前記無菌コネクタ54,55は、図4に示す様に予め接続されてユニット状にされており、又、密閉系として構成されている。更に、その様な密閉系とされた後に、オートクレーブ等による滅菌処理が施されたものとなっている。この様に滅菌処理された密閉系の前記培養槽56、加熱槽、前記無菌コネクタ54,55を、前記引き出し部11に取付ける。
一方、前記細胞供給チューブ28(図4参照)、前記細胞回収チューブ29(図4参照)には、予め両端に前記無菌コネクタ54,31が取付けられており、各チューブ内は密閉されて無菌状態となっている。この様な前記細胞供給チューブ28、前記細胞回収チューブ29を、作業者は、前記無菌コネクタ54,55を介して、前記培養槽56に対して無菌状態を維持しながら接続する。
こうして、密閉系の前記培養槽56等に対して、前記無菌コネクタ54,55を介して、前記細胞供給チューブ28、前記細胞回収チューブ29が接続される。
更に、培地供給チューブ58には予め両端に無菌コネクタ61,59が取付けられており、チューブ内は密閉されて無菌状態となっている。この様な前記培地供給チューブ58を、作業者は、前記無菌コネクタ61,55を介して、前記培養槽56と培地タンク57(図4参照)とを無菌状態を維持しながら接続する。
尚、前記培養槽56等の機器の構成、機能等については、後に詳しく説明する。
上記の様に前記引き出し部11に各種機器を取付けた後、作業者は、該引き出し部11を前記培養室7内に押し入れる。こうして、必要な機器を、引き出し部11と共に一体的に、培養室7内に一括して収納する。次に、前記培養槽56等に前記無菌コネクタ54,55等を介して接続された前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とを前記チューブ挿通孔27から前記培養室7の外部へ延出させる。即ち、該培養室7内に一括して収納された構成のうち、各チューブ28,29の先端部側と、各先端部に設けられた前記無菌コネクタ31のみを、培養室7の外部に露出させる。
延出させた前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29を、前記切れ目36を介して前記シール板33の前記孔35,35に挿通させ、該孔35,35と前記切れ目36とをコーキングする(切れ目36を繋ぎ合わせて塞ぐ)。
その後、前記シール板33を前記シール突起32に接触させた状態で、前記押え板34を前記連結壁部6に固着させ、前記押え板34で前記シール板33を押圧することで、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とが前記連結壁部6から気密に延出した状態となる。
次に、前記アイソレータ3の扉体(図示せず)を開き、前記開口部24を開放した状態で、前記インキュベータ側枠部14と前記アイソレータ側枠部25との位置が一致する様、前記架台16を移動させる。この時、前記インキュベータ本体4の周面に設けられた複数の前記係合部材15と、前記開口部24の周囲を囲む様に前記アイソレータ側枠部25に設けられた複数の前記被係合部材26は、前記インキュベータ側枠部14と前記アイソレータ側枠部25との位置合せを行う為の目印として用いられる。又、前記アイソレータ側枠部25は前記連結壁部6を挿入し、前記開口部24を閉塞する際のガイドとして機能する。
前記インキュベータ本体4の後端部が前記嵌合い部25aに挿入され、複数の前記係合部材15と前記被係合部材26とがそれぞれ係合されることで、前記インキュベータ2と前記アイソレータ3とが連結される。この時、前記アイソレータ側枠部25内の軟質性樹脂が前記連結壁部6と前記フランジ部25bとで圧縮され、前記開口部24が前記連結壁部6により気密に閉塞される。即ち、前記培養室7内の雰囲気と前記作業室21内の雰囲気とが隔離された状態で、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とが前記作業室21内に延出する。前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29は培養槽等に密閉系で接続されており、又内部は滅菌されている為、前記培養室7内に培養槽を設置しても培養槽の無菌は保たれた状態にある。
前記インキュベータ2と前記アイソレータ3の連結後、前記作業室21内に過酸化水素蒸気等の除染ガスを供給して除染し、該作業室21内を無菌状態とする。この状態で、作業者が前記グローブ23を装着し、前記作業室21内で前記無菌コネクタ31,31をシリンジ等の細胞供給手段51とバイアル等の細胞回収手段52とからなる細胞吸排手段の無菌コネクタ53,53と接続する。これにより、細胞吸排手段と前記細胞供給チューブ28、前記細胞回収チューブ29及び前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29の基端に設けられた前記無菌コネクタ54,54と前記無菌コネクタ55,55を介して無菌的に接続されている前記培養槽56とが無菌状態で連通される。尚、前記細胞回収手段52には、空気の逃げ口としてのエアチューブ64が接続されている。該エアチューブ64にはエアフィルタ65が設けられているので、前記細胞回収手段52内の無菌状態は維持される。
次に、図4を参照して細胞培養処理の概略について説明する。
前記冷蔵庫18には前記培地タンク57が収納され、該培地タンク57は前記培地供給チューブ58を介して前記培養槽56に接続されている。前記培地供給チューブ58の両端には、それぞれ無菌コネクタ59,61が設けられ、前記無菌コネクタ59が前記培地タンク57の無菌コネクタ62と接続され、前記無菌コネクタ61が前記培養槽56の前記無菌コネクタ55と接続されることで、前記培地タンク57と前記培養槽56とが無菌状態で連通する様になっている。又、前記培地タンク57には、空気の逃げ口としてのエアチューブ66が接続されている。該エアチューブ66にはエアフィルタ67が設けられているので、前記培地タンク57内の無菌状態は維持される。
前記ポンプ部12の駆動により、前記培地タンク57より前記培養室7内に培地が無菌的に供給されると、培地は図示しない曝気槽にて細胞培養に適した酸素濃度、pHとなる様ガス濃度が調整されると共に、図示しない加温槽にて細胞培養に適した温度となる様温度調整され、前記培養槽56に供給される。
又、培地の供給と並行して、前記細胞供給手段51により、細胞或は担体等に付着させた細胞が無菌的に前記培養槽56に供給される。尚、前記細胞供給手段51による細胞の供給は、前記グローブ23を介して前記アイソレータ3内で行われる。
前記培養槽56内にて所定の培養処理が無菌的に行われると、担体に細胞を付着させた場合は、図示しない剥離槽にて担体から細胞を剥離させた後、ポンプ部63を駆動させ、前記細胞回収手段52により前記培養槽56から無菌的に細胞を回収する。
前記細胞回収手段52が前記アイソレータ3内に設けられていることで、培養された細胞に対して前記アイソレータ3内で無菌的に任意の加工を行うことができる。
細胞の回収が完了すると、前記係合部材15と前記被係合部材26との係合を解除し、前記インキュベータ2と前記アイソレータ3との連結を解除する。
尚、細胞回収手段は、連結解除前に前記作業室21内で取外して回収してもよいし、連結解除後に無菌室等所定の回収場所にて取外して回収してもよい。
前記インキュベータ2と前記アイソレータ3との連結解除後は、前記押え板34を取外し、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29を前記チューブ挿通孔27から抜脱する。
再度別の処理を行なう際には、上記したものと同様の手順で、別の前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29を前記連結壁部6から気密に延出させる。又、前記インキュベータ2とアイソレータ3とを連結させ、無菌状態の前記作業室21内で前記無菌コネクタ31,31を細胞吸排手段の無菌コネクタと接続し、細胞の吸排処理を行う。更に、前記インキュベータ2と前記アイソレータ3との連結を解除し、細胞回収手段を回収する。
上述の様に、第1の実施例では、無菌状態の前記作業室21内に前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29からなる細胞吸排ラインのみを延出させている。従って、前記作業室21内で行う作業は、無菌空間での作業が必要な前記無菌コネクタ31,31と細胞吸排手段の無菌コネクタとの接続、及び細胞吸排手段による細胞の供給回収のみとなる。
従って、前記グローブ23を介して行う作業は、無菌空間で行う必要がある最低限の作業のみでよいので、培養容器の出し入れ等、該グローブ23を介して細かな作業を行う必要がなく、作業性を向上させることができる。
又、前記インキュベータ2の前記扉体部5と対向する面に前記連結壁部6を設け、該連結壁部6が前記開口部24を気密に閉塞した状態で前記インキュベータ2と前記アイソレータ3とが連結される。即ち、前記作業室21内の雰囲気と前記培養室7内の雰囲気とが隔離された状態で前記インキュベータ2と前記アイソレータ3とが連結される。
従って、前記培養室7内の状態に拘わらず前記作業室21内の無菌状態を維持できるので、無菌空間内で行う必要がない作業、例えば無菌コネクタと無菌状態で接続された培養槽や培地タンク等の設置、各チューブ類の前記ポンプ部12への取付け作業等、従来前記作業室21で行っていた作業については、前記内扉8と前記外扉9を開放し、前記培養室7内での作業が可能となり、作業性を向上させることができる。
又、培養槽を前記培養室7内に設置したままで、細胞の出し入れが行えるので、細胞の給排の為に必要な作業量を低減させることができる。
又、前記培養室7内に前記引き出し部11が設けられ、該引き出し部11上に培養槽や顕微鏡等の各種機器が設置される様になっているので、前記引き出し部11が作業台として機能する。従って、該引き出し部11を引き出すことで前記培養室7内の作業を外部空間で行うことができ、作業性を更に向上させることができる。
尚、前記培養室7の奥行きが小さく、該培養室7内での作業が容易に行える場合等には、前記引き出し部11は省略してもよい。
又、本実施例では、前記インキュベータ2に対する連結対象として、前記アイソレータ3を例示しているが、前記無菌コネクタ31,31を介して連結が可能であり、且つ該無菌コネクタ31,31の連結先とは別に前記培養室7内の作業が必要な装置であれば他の装置であってもよい。例えば、安全キャビネットやクリーンベンチ等の無菌空間を有する装置の背面や側面に前記インキュベータ2を取付けられる構造を設け、両者を連結させてもよい。
尚、本実施例では、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29を前記チューブ挿通孔27から延出させた後、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29にシール板33を取付け、外部より前記チューブ挿通孔27を閉塞しているが、該チューブ挿通孔27の閉塞方法はこれに限られるものではない。
例えば、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29に予め前記シール板33を取付けておき、該シール板33を撓ませて前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29と共に前記チューブ挿通孔27から延出させた後、外部より前記チューブ挿通孔27を閉塞する様にしてもよい。この場合、前記シール板33はシリコンゴム等軟質性の材質で形成される必要がある。
又、次の様に前記チューブ挿通孔27を閉塞する様にしてもよい。前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29の基端にもそれぞれ無菌コネクタを設け、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29の内部を密閉された状態とし、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29に前記シール板33を取付ける。
次に、基端側の無菌コネクタを前記チューブ挿通孔27より前記培養室7の内部に挿通させ、予め無菌状態で組立てられた細胞培養系の無菌コネクタと接続する。最後に、外部より前記シール板33により前記チューブ挿通孔27を閉塞する様にしてもよい。この場合、前記シール板33は軟質性の材質だけではなく、金属板等硬質性の材質を用いることができる。
第1の実施例では、前記細胞供給手段51としてシリンジを用い、シリンジにより細胞を直接押込む様にしているが、図5に示す変形例の様に、バイアル68と、該バイアル68にエアチューブ69を介して接続されたシリンジ71とにより、前記細胞供給手段51が構成される様にしてもよい。
前記バイアル68内には細胞が封入され、前記シリンジ71により前記エアチューブ69を介して前記バイアル68内にエアを供給することで、該バイアル68内が昇圧され、該バイアル68内の細胞が前記培養槽56へと押出される様になっている。尚、前記エアチューブ69にはエアフィルタ72が設けられ、前記シリンジ71からエアが供給されても前記バイアル68内の無菌状態が維持される。
又、図示はしないが、前記細胞回収手段52についても、変形例に於ける前記細胞供給手段51と同様の構成としてもよい。即ち、シリンジによりエアを吸引し、バイアル内を減圧することで、前記培養槽56内の細胞を吸出す様にしてもよい。この場合、前記ポンプ部63は省略することができる。
次に、図6〜図8に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図6〜図8中、図3(A)中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、図6、図8(A)、図8(B)に於いて、紙面に対して左側を先端側、紙面に対して右側を基端側とする。
図6に示される様に、第2の実施例では、チューブ挿通孔27を気密に閉塞するシール部30が、例えばシリコンゴム製の第1シール部材37と第2シール部材38とから構成される。
前記第1シール部材37は、基端側が第1閉塞面39により閉塞され、先端側が開放された筒形状であり、先端側に向って拡径する円錐台形状の外形形状を有している。前記第1シール部材37の先端部には、傾斜が大きくなり径が拡大された第1挿入部41が形成されている。
尚、前記第1閉塞面39の径は前記チューブ挿通孔27の径よりも小さくなっており、前記第1挿入部41の径は前記チューブ挿通孔27の径よりも大きくなっている。
又、前記第1閉塞面39には、細胞供給チューブ28、細胞回収チューブ29からなる細胞吸排ラインが貫通する孔42,42が形成され、該孔42,42を介して前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とが前記第1閉塞面39を気密に貫通している。
尚、該第1閉塞面39と前記細胞供給チューブ28、前記細胞回収チューブ29との気密性は、前記孔42,42に前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とを挿入した後、前記孔42,42をコーキングすることで確保してもよい。又、先端部から基端部迄母線に沿って、又母線から径方向に前記孔42,42に至る切れ目を形成し、該切れ目から前記孔42,42に前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とを嵌込んだ後、前記孔42,42と前記切れ目とをコーキングすることで確保してもよい。
前記第2シール部材38は、前記第1シール部材37と同形状となっている。前記第2シール部材38の基端側に第2閉塞面43が形成され、先端部に第2挿入部44が形成され、前記第2閉塞面43には前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とが貫通する孔45,45が形成されている。
又、前記第2シール部材38には、先端部から基端部迄母線に沿って、又母線から径方向に前記孔45,45に至る切れ目46が形成され、該切れ目46を介して前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とを前記孔45,45に嵌込める様になっている。
次に、図8(A)、図8(B)を参照し、前記シール部30による前記チューブ挿通孔27のシールについて説明する。
先ず、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29を気密に貫通させた前記第1シール部材37を、前記第1閉塞面39側から前記第1挿入部41の基端部迄前記チューブ挿通孔27に挿入する。
次に、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29を貫通させた前記第2シール部材38を前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29に沿って基端側へと摺動させ、前記第1挿入部41より前記第1シール部材37内に挿入する。
該第1シール部材37内に前記第2シール部材38が挿入されることで、該第2シール部材38の復元力により前記第1シール部材37が半径方向外側へと押圧される。又、該第1シール部材37が前記チューブ挿通孔27に押圧されることで、該チューブ挿通孔27が前記第1シール部材37により気密に閉塞される。
更に、インキュベータ2(図1参照)とアイソレータ3(図1参照)が連結された際には、作業室21(図1参照)が培養室7(図1参照)よりも高圧となっているので、前記チューブ挿通孔27に対する前記第1シール部材37の押圧力が更に増加し、気密性を更に向上させることができる。
上述の様に、第2の実施例では、前記シール部30がシリコンゴム製の前記第1シール部材37と前記第2シール部材38とから構成され、前記第1シール部材37と前記第2シール部材38とで前記チューブ挿通孔27を気密に閉塞可能となっている。
従って、前記作業室21内の無菌状態を維持しつつ前記培養室7で作業を行うことができ、又前記作業室21内で実施する作業が最低限となり、作業性を向上させることができる。
又、前記チューブ挿通孔27の閉塞処理は、前記第1シール部材37を前記チューブ挿通孔27に挿入し、前記第2シール部材38を前記第1シール部材37に挿入するだけである。従って、ボルト等の固着具を必要とせず、部品点数の削減が図れると共に、着脱が容易に行え、作業性をより向上させることができる。
尚、第1の実施例、第2の実施例では、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29の先端(延出端)にそれぞれ1つの無菌コネクタ31,31が取付けられた構成となっているが、前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29とをそれぞれ複数に分岐させ、分岐させたチューブの先端にそれぞれ無菌コネクタを取付ける様にしてもよい。
前記細胞供給チューブ28と前記細胞回収チューブ29にそれぞれ複数の前記無菌コネクタ31が取付けられることで、処理毎に該無菌コネクタ31を使い分けることができる。従って、1度処理が完了する毎に前記インキュベータ2と前記アイソレータ3の連結を解除する必要がなくなり、より作業性を向上させることができる。