JP2008237203A - 自動細胞培養装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 RWVを用いた回転培養技術をもとに細胞播種、培養液交換、品質管理等を自動化したGMP対応のCPC不要のシステムを構築することが可能な自動細胞培養装置を提供する。
【解決手段】 密閉筐体内に、水平な回転軸14を有する円筒形培養容器2に、細胞液投入口11と、培養液交換用の供給口12と排出口13とが設けられた回転培養装置を備え、供給口と排出口は対となって培養容器の外周円筒面で回転中心に対して互に180°の回転角度離れた位置に設け、供給口と排出口を鉛直線上に配置し且つ供給口を上に位置させた状態で、供給口に新しい培養液が入った供給シリンジ4を気密状態で挿脱し、排出口に空の排出シリンジ5を気密状態で挿脱するシリンジ移動手段と、供給シリンジのピストンを押し込むと同時に、排出シリンジのピストンを引き抜く操作を行うピストン駆動手段とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動細胞培養装置に係わり、更に詳しくは回転培養装置に自動培養液交換機能を備えた自動細胞培養装置に関する。
従来から自動細胞培養装置は各種提供されている。例えば、本出願人の先願に係る特許文献1には、培養皿を収容した複数の培養カセットを取り扱い、分注作業等の際にロボットアームで自動的に移動させるこことが可能であるとともに、インキュベータ内のガス濃度や温度、湿度等の雰囲気を管理することが可能であり、インキュベータ内の汚染は勿論のこと、分注作業等で培養皿を移送する際にも汚染を確実に防止できる自動細胞培養システムが開示されている。
また、特許文献2には、被検者の細胞培養に必要な培養操作を行うための操作部と、細胞を培養するためのインキュベータ部と、培養に必要な試薬類や培養器具類を保管する保管部と、オートクレーブ滅菌を行うための蒸気供給部とを備え、前記インキュベータ部及び前記保管部は、それぞれ前記操作部に連通すると共に、前記操作部との間にそれぞれ密閉扉を備えており、該密閉扉を選択して開閉することにより、前記操作部と、該操作部に通ずる前記インキュベータ部及び前記保管部の何れかと、に前記蒸気供給部からの滅菌蒸気が供給されることを特徴とする自動細胞培養装置が開示され、また前記操作部は、操作ロボットと、遠心分離器と、細胞培養に必要な培養操作機器とを備えている点が記載されている。そして、特許文献3には、培養容器内の細胞を培養させる培養装置本体を設け、該培養装置本体内に、前記培養容器を収納するインキュベータと、該培養容器内の薬剤を吸引する薬剤吸引機と、該培養容器を搬送する多関節型ロボットとを設け、該多関節型ロボットに、前記培養容器の搬送と、該培養容器の蓋の着脱と、該培養容器内の薬剤吸引時に容器を傾斜させる機能とを具備させた、多関節型ロボットを備えた自動細胞培養装置が記載されている。
しかし、前述の特許文献2,3記載の自動細胞培養装置は、2次元培養装置において培養液の交換作業等を人から多関節型ロボットに置き換えて自動化したものであり、人の出入りを極力少なくして雑菌の侵入を防ぐという意味では効果的であるが、高価な汎用の産業用ロボットを用いて人と同等な作業を行わせるだけであり、装置コストの高騰は避けられないのである。しかも、通常の2次元細胞培養装置の域を脱せず、3次元培養を実現するための装置ではない。
ところで、骨髄に由来する間葉系幹細胞は、骨、軟骨、脂肪、靭帯などの組織に分化する多分化能を持つが、生体外での通常の培養では、細胞は地球重力によってシャーレの底に沈み、2次元シートしか作らず本来の細胞の形質を失うことが知られている。そこで、無重力に近い微小重力環境での3次元培養を実現するために開発されたのが、RWV(Rotating wall vessel)バイオリアクターによる培養方法であり、適切な分化誘導因子のもとで3次元培養を行うと細胞本来の組織に分化する。RWVは、シンセコン社から発売されており、図8及び図9に示すように、ガス透過膜を裏側に備えた偏平円筒形のベッセル100が、回転制御装置の水平な回転軸(図示せず)への取付部101を中心に回転することにより、細胞に及ぼす重力の方向を絶えず変化させ、時間平均すると、地上重力の100分の1という微小重力環境を作り出すことができ、それにより細胞塊が沈降せずふわふわと浮いた状態で培養できる装置である。この装置を一般的に回転培養装置と称する。そして、前記ベッセル100の取付部101と反対側の面には、細胞液投入口102と、培養液交換用の供給口103と排出口104とが設けられ、それぞれ供給口103と排出口104には回転により開閉するコック105と着脱可能なゴムキャップ106が設けられている。
ここで、RWVにおける培地の交換作業は、図10に示すように、ゴムキャップ106を外して新しい培養液が入った供給シリンジ107の先端を前記供給口103に密嵌し、他方空の排出シリンジ108の先端を前記排出口104に密嵌した後、両コック105を開き、一方の手で供給シリンジ107のピストンを押し込んでベッセル100内に培養液を供給し、それと同時に他方の手で排出シリンジ108のピストンを引き抜いてベッセル100内の古い培養液を吸い出すのである。通常、細胞の培養期間は2週間程度である場合が多く、数日毎に培地を交換する必要があるため、前述の煩雑で熟練を要する培地交換作業をその都度行わなければならない。この手作業による培地交換作業は、非常に手間と時間を要し、多数のRWVを稼動させている場合には大変な負担となるばかりでなく、培地交換作業中に予期せぬ環境汚染が生じる恐れもある。また、ベッセル100の正面に、細胞液投入口102や、供給口103と排出口104が設けられているので、内部の細胞の様子を確認する際に視野が狭まるといった不都合がある。
特開2006−014675号公報 特開2006−115798号公報 特開2006−149268号公報
通常の2次元培養装置の自動化技術はかなり進みつつあり、市販されているものもあるが、RWV3次元回転培養は、培養液の交換作業等を始めとして未だ手動に頼るところが大きく、RWV3次元回転培養装置の自動化は、これまでなされて来なかった。現在、試験研究レベルでは、細胞播種、培養液交換、滅菌操作、組織の採取などを研究者の手によるマニュアル操作によって行っている。また、現在の再生医療は、CPC(セルプロセッシングセンター)のような大規模施設が必要不可欠であり、立地条件、効率面及びコスト面など多くの問題を抱えており、高額医療を余儀なくされているのが現状である。
これからの培養装置に求められることは、(i)自動化を考慮した培養液交換手法を考案し、長期間(約1ケ月)の培養で汚染が発生しないこと、(ii)トレーサビリティ機能を有すること、(iii)長期間の培養過程の中で安定した培養が促進するように細胞塊が絶えず浮遊するように回転制御をすること、(iv)GMP(Good Manufacturing Practice)基準を満たした培養システムを構築することにある。
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、RWVを用いた回転培養技術をもとに細胞播種、培養液交換、品質管理等を自動化したGMP対応のCPC不要のシステムを構築することが可能な自動細胞培養装置を提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、密閉筐体内に、水平な回転軸を有する円筒形培養容器に、細胞液投入口と、培養液交換用の供給口と排出口とが設けられた回転培養装置を備え、前記供給口と排出口は対となって前記培養容器の外周円筒面で回転中心に対して互に180°の回転角度離れた位置に半径方向へ向けて設け、該供給口と排出口を鉛直線上に配置し且つ供給口を上に位置させた状態で、前記供給口に新しい培養液が入った供給シリンジを気密状態で挿脱するとともに、前記排出口に空の排出シリンジを気密状態で挿脱するシリンジ移動手段と、前記供給シリンジを供給口に挿入し且つ前記排出シリンジを排出口に挿入した状態で、供給シリンジのピストンを押し込むと同時に、排出シリンジのピストンを引き抜く操作を行うピストン駆動手段とを備えることを特徴とする自動細胞培養装置を構成した(請求項1)。
ここで、前記供給口と排出口の対を前記培養容器の外周円筒面に複数対設けるとともに、各供給口と各排出口は等角間隔毎に設けていることが好ましい(請求項2)。
また、前記供給口と排出口はセプタムシール構造とし、前記供給シリンジと排出シリンジはそれぞれ先端に前記セプタムシールを貫通可能な注射針を有していることがより好ましい(請求項3)。
また、前記細胞液投入口を前記培養容器の外周円筒面に設け、該細胞液投入口は回転により開閉するキャップを備え、該細胞液投入口が鉛直線上の上側に位置する状態で、前記キャップを自動的に開閉するキャッパーと、前記キャップを外した細胞液投入口から細胞液を投入する細胞液供給手段を備えていると更に好ましい(請求項4)。
ここで、密閉筐体内に、前記供給シリンジを保管する供給シリンジストッカラックを有する温度制御付きの保冷室と、前記排出シリンジを保管する排出シリンジストッカラックを備えるとともに、使用済みの供給シリンジと排出シリンジを廃棄する廃棄ボックスを備え、前記シリンジ移動手段にて、保冷室内の供給シリンジストッカラックから供給シリンジを取り出し、排出シリンジストッカラックから排出シリンジを取り出して、培養液交換後に廃棄ボックスに投入するようにしている(請求項5)。
また、前記ピストン駆動手段は、前記供給シリンジを供給口に挿入し且つ前記排出シリンジを排出口に挿入した状態で、該供給シリンジのピストンの端部と排出シリンジのピストンの端部に、それぞれ同時に係合可能な一対の操作アームを設けたリンクアームと、該リンクアームを鉛直方向へ平行移動させる鉛直移動機構とからなっている(請求項6)。
そして、前記供給シリンジと排出シリンジは、それぞれ供給用アダプターと排出用アダプターに保持されていることが好ましい(請求項7)。
また、前記供給用アダプターと排出用アダプターには、前記シリンジ移動手段を構成する移載ハンドを係合する係合部と、供給シリンジストッカラックと排出シリンジストッカラックにそれぞれ係止するフランジ部を有していることがより好ましい(請求項8)。
以上にしてなる本発明の自動細胞培養装置は、RWVを用いた回転培養技術を前提として、自動的に培養液を交換する機能を備えているので、研究者等の培養作業従事者の負担を大幅に低減し、細胞培養の効率化を図ることができるとともに、培養中における汚染の可能性を極力少なくすることができ、GMP対応のCPCを持たない医療機関でも再生医療の臨床適応を目指すことができるようになり、再生医療を飛躍的に普及させることができる。
本発明は、回転培養装置の培養容器に、供給口から供給シリンジで新しい培養液を注入すると同時に、排出口から排出シリンジで古い培養液を吸い出すといった従来から実績のある培養液交換作業を、完全に自動化することができるのである。つまり、円筒形培養容器の外周円筒面に供給口と排出口を設けたこと、供給口と排出口は回転中心に対して互に180°の回転角度離れた位置に半径方向へ向けて設けたこと、そして供給口と排出口を鉛直線上に配置し且つ供給口を上に位置させた状態で、前記供給口に新しい培養液が入った供給シリンジを気密状態で挿脱するとともに、前記排出口に空の排出シリンジを気密状態で挿脱するシリンジ移動手段と、前記供給シリンジを供給口に挿入し且つ前記排出シリンジを排出口に挿入した状態で、供給シリンジのピストンを押し込むと同時に、排出シリンジのピストンを引き抜く操作を行うピストン駆動手段とを備えたことにより培養液の自動交換を可能にしたのである。しかも、培養容器の正面には、視界を遮る供給口と排出口が存在しないので、培養経過の観察が非常にやり易くなるのである。
そして、前記供給口と排出口の対を前記培養容器の外周円筒面に複数対設けるとともに、各供給口と各排出口は等角間隔毎に設けていることにより、培養液の交換実施に際して常に新しい供給口と排出口を使うことができるので、培養液交換時の汚染を極力抑制することができ、また供給口と排出口の数が異なる培養容器を用意しておけば、培養日数に応じて最適な培養容器を選択することもできる。
また、供給口と排出口はセプタムシール構造とし、供給シリンジと排出シリンジはそれぞれ先端にセプタムシールを貫通可能な注射針を有しているので、注射針をセプタムシールに刺し抜きするだけで、気密状態を維持して供給口と排出口にそれぞれ供給シリンジと排出シリンジを挿脱することができる。
更に、細胞液投入口を培養容器の外周円筒面に設け、該細胞液投入口は回転により開閉するキャップを備え、該細胞液投入口が鉛直線上の上側に位置する状態で、前記キャップを自動的に開閉するキャッパーと、前記キャップを外した細胞液投入口から細胞液を投入する細胞液供給手段を備えることにより、最初の細胞液投入も自動化することができ、更に汚染の発生を極力抑制することができる。
また、前記シリンジ移動手段にて、保冷室内の供給シリンジストッカラックから供給シリンジを取り出し、排出シリンジストッカラックから排出シリンジを取り出して、培養液交換後に廃棄ボックスに投入するので、一連の操作を、シリンジを保持したままシリンジ移動手段で連続的に行うことができるので、装置構成が簡単になる。
また、ピストン駆動手段は、供給シリンジを供給口に挿入し且つ排出シリンジを排出口に挿入した状態で、該供給シリンジのピストンの端部と排出シリンジのピストンの端部に、それぞれ同時に係合可能な一対の操作アームを設けたリンクアームと、該リンクアームを鉛直方向へ平行移動させる鉛直移動機構とからなっているので、該リンクアームを鉛直方向下方へ移動させるだけで、供給シリンジのピストンを押し込むと同時に、排出シリンジのピストンを引き抜く操作を正確に同調させて行うことができる。
そして、供給シリンジと排出シリンジは、それぞれ供給用アダプターと排出用アダプターに保持されているので、シリンジの破損を防止することができる。
また、前記供給用アダプターと排出用アダプターには、前記シリンジ移動手段を構成する移載ハンドを係合する係合部と、供給シリンジストッカラックと排出シリンジストッカラックにそれぞれ係止するフランジ部を有しているので、シリンジ移動手段にて取り扱う際に正確な位置決めができる。
本発明の実施形態を添付図面に基づき更に詳細に説明する。図1は培養容器とシリンジの関係を示し、図2は本発明に係る自動細胞培養装置の全体概観を示し、図3及び図4は自動細胞培養装置における培養液の交換作業の様子を示し、図中符号1は回転培養装置、2は培養容器、3は回転制御装置、4は供給シリンジ、5は排出シリンジ、6はシリンジ移動手段、7はピストン駆動手段、8はキャッパー、9は保冷室をそれぞれ示している。
前記回転培養装置1は、図1、図2、図5及び図6に示すように、偏平な円筒形培養容器2と、該培養容器2を装着して回転させる回転制御装置3とから構成されている。そして、前記培養容器2には、その一側面(背面側)の回転中心と同心状に取付部10を設けるとともに、該培養容器2の外周円筒面に、細胞液投入口11と、培養液交換用の供給口12と排出口13とを設け、そして雌ネジ構造の前記取付部10を前記回転制御装置3の回転軸14の先端の雄ネジ部に接続し、前記培養容器2を水平な回転中心の回りに回転するようになっている。ここで、肝臓由来の細胞に限らず、分化誘導で用いるサイトカインなど培地への添加因子は高価であり、培養容器2の容量はできるだけ少ないことが望ましく、容量としては10〜20mlであり、10ml以下が望ましい。しかし、前記培養容器2の容量は、培養目的に応じて最適に決定すべきである。
図5及び図6に示すように、前記培養容器2の背面側で取付部10の周囲には、空気の取入口15を設け、その内側に設けたガス透過膜16を通して培養液中に酸素を供給し、二酸化炭素を排出できるようになっており、また正面側は内部を透視可能なように観察窓17となっている。
そして、図1及び図5に示すように、前記培養容器2の供給口12と排出口13は、対となって前記培養容器2の外周円筒面で回転中心に対して互に180°の回転角度離れた位置に半径方向へ向けて設けられている。本実施形態では、前記供給口12と排出口13を3対設けた例を示しているが、少なくとも一対あれば良く、その対の数は培養対象細胞の培養日数と培養液の交換頻度によって決定される。図1に示すように、前記培養容器2は正面視において時計周りに回転するとして、3個の供給口12は反時計回りにそれぞれ12A、12B、12Cと表示し、同様に3個の排出口13も反時計回りにそれぞれ13A、13B、13Cと表示することにする。ここで、例えば、供給口12Aと排出口13Aが対となり、回転中心Oを通る直径の線上に位置している。そして、前記供給口12と排出口13を3対設ける場合には、各供給口12A,12B,12Cと排出口13A,13B,13Cを等角間隔毎に設けている。前記供給口12と排出口13を3対以上の複数対設ける場合も同様である。
そして、前記細胞液投入口11は、前記供給口12と排出口13の中間位置に、前記培養容器2の半径方向に軸中心を設定して設けている。この細胞液投入口11は、回転により開閉するキャップ18を備え、該キャップ18を外して細胞液を投入できるようになっている。
前記供給口12は、図7に示すように、前記培養容器2の外周円筒面の半径方向に連通するように接続したポート19の端面に、シリコンゴムからなるセプタムシール20を配置し、該セプタムシール20の外周部を、前記ポート19に螺合した押えキャップ21で押圧して密閉した構造となっている。つまり、前記供給口12はセプタムシール構造となっており、前記供給シリンジ4と排出シリンジ5の先端に装着した注射針22をセプタムシール20に貫通させて気密状態で接続することができ、また注射針22を抜いてもその弾性復元によって貫通穴が塞がり、気密状態を維持することができるようになっている。図示しないが、前記排出口13もセプタムシール構造となっている。
ここで、前記供給シリンジ4と排出シリンジ5は、通常の市販品であり、シリンダー23の端部に指掛けフランジ24を有するとともに、ピストン25の端部にも指当てフランジ26を有している。そして、前記供給シリンジ4と排出シリンジ5は、それぞれ供給用アダプター27と排出用アダプター28に保持されている。前記供給用アダプター27と排出用アダプター28は、合成樹脂製の円筒部材であり、内部にシリンダー23を密嵌し、指当てフランジ26を利用して抜止め状態で固定できるようになっており、基端部には前記シリンジ移動手段6で保持するための凹環状の係合部29を共通構造として設けている。具体的には、前記供給用アダプター27と排出用アダプター28の係合部29は、前記指掛けフランジ24を移動不能に包持する包持部30と該包持部30と所定間隔をおいて形成した円環状のフランジ部31を突設して形成している。更に、前記排出用アダプター28には、前記フランジ部31と所定間隔を置いた位置に第2のフランジ部32を突設している。
図2及び図3に示すように、新しい培養液が入った前記供給シリンジ4,…は、温度制御付きの保冷室9の内部に設けた供給シリンジストッカラック33に係止されて保管され、空の排出シリンジ5,…は適所に設けた排出シリンジストッカラック34に係止されて保管されている。前記供給シリンジストッカラック33と排出シリンジストッカラック34は同じ構造のものであり、前記供給用アダプター27又は排出用アダプター28の本体円筒部を嵌合する平面視U字形の係止部35,…を所定数等間隔に形成し、前記供給シリンジ4は注射針22を下方に向けて、供給用アダプター27のフランジ部31で係止し、前記排出シリンジ5は注射針22を上方に向けて、排出用アダプター28の第2のフランジ部32で係止している。
前記保冷室9は、図2に示すように、前記シリンジ移動手段6の動作に連動して扉36が開閉するようになっている。そして、前記シリンジ移動手段6を構成する移載ハンド37を開いた扉36から保冷室9の内部に進入させ、前記供給シリンジストッカラック33に保管されている供給シリンジ4の供給用アダプター27に設けた係合部29を移載ハンド37で掴み、係止部35から外して保冷室9の内部から取り出す。その際、前記扉36は自動的に閉じる。それから、前記移載ハンド37で保持したまま供給シリンジ4を前記培養容器2の直上まで移動させる。それと同時に、前記排出シリンジストッカラック34に保管されている排出シリンジ5の排出用アダプター28に設けた係合部29を、他の同様構造の移載ハンド37で掴み、係止部35から外して前記培養容器2の直下まで移動させる。
それから、前記シリンジ移動手段6の両移載ハンド37,37を同調させて接近するように上下方向に移動させて、前記供給シリンジ4の注射針22を前記供給口12のセプタムシール20に貫通させて気密状態で接続すると同時に、前記排出シリンジ5の注射針22を前記排出口13のセプタムシール20に貫通させて気密状態で接続する。このように、同時に上下から注射針22,22をそれぞれセプタムシール20,20に突き刺すので、前記培養容器2にかかる上下からの押圧力が相殺され、その取付部10や回転軸14に殆ど外力が作用しないのである。尚、逆に注射針22,22をそれぞれセプタムシール20,20から抜く場合も、同時に両移載ハンド37,37を同調させて離間するように上下方向に移動させるので、同様に取付部10や回転軸14に殆ど外力が作用しないのである。
このように、前記シリンジ移動手段6は、前記供給シリンジ4を装着した供給用アダプター27と、前記排出シリンジ5を装着した排出用アダプター28とをそれぞれ取り扱うことができるように、独立した二つの移載ハンド37,37を備えている。一方の移載ハンド37は、前記供給シリンジ4を保冷室9の内部の供給シリンジストッカラック33から取り出し、前記培養容器2の直上まで移動させ、その状態で上下動し、使用済みの供給シリンジ4を図示しない廃棄ボックスに投入する動作を行う。他方の移載ハンド37は、前記排出シリンジストッカラック34から取り出し、前記培養容器2の直下まで移動させ、その状態で上下動し、使用済みの排出シリンジ5を図示しない廃棄ボックスに投入する動作を行う。このような動作をすることができる機構は、リニアガイドとロータを組み合わせて構成することができ、その具体的な構造は本発明では特に限定されず任意である。
また、前記ピストン駆動手段7は、図4に示すように、前記供給シリンジ4を供給口12に挿入し且つ前記排出シリンジ5を排出口13に挿入した状態で、該供給シリンジ4のピストン25の端部に有する指当てフランジ26と、排出シリンジ5のピストン25の端部に有する指当てフランジ26に、それぞれ同時に係合可能な一対の操作アーム38,38を設けたリンクアーム39と、該リンクアーム39を鉛直方向へ平行移動させる鉛直移動機構(図示せず)とからなっている。前記リンクアーム39は、鉛直方向に配した杆体であり、その上下両端部に前記操作アーム38,38が全体として正面視コ字形になるように固定されている。各操作アーム38の先端部は、前記ピストン25の指当てフランジ26を係止し、若しくは挟持できるような構造になっている。
そして、前述のように、前記供給シリンジ4の注射針22を前記供給口12のセプタムシール20に貫通させて接続し且つ前記排出シリンジ5の注射針22を前記排出口13のセプタムシール20に貫通させて接続した状態で、前記シリンジ移動手段6の移載ハンド37,37で供給用アダプター27と排出用アダプター28をしっかりと保持したまま、前記ピストン駆動手段7の両操作アーム38,38を、供給シリンジ4のピストン25の指当てフランジ2と排出シリンジ5のピストン25の指当てフランジ2に係合させ(図4(a)参照)、それから前記リンクアーム39を下方へ移動させることにより、前記供給シリンジ4のピストン25を押し込んで新しい培養液を培養容器2に注入すると同時に、前記排出シリンジ5のピストン25を引き抜いて使用済みの古い培養液を吸い出して交換するのである(図4(b)参照)。この培養液の交換作業中に前記培養容器2には殆ど外力が作用しないので、精密機器である回転制御装置3にダメージを与える恐れがないのである。
ここで、前記培養容器2に複数対の供給口12,…と排出口13,…を設けた場合に、最初に培養液を交換する際には、先ず前記培養容器2を供給口12Aと排出口13Aが鉛直方向を向くように静止させて前述の操作により培養液を交換する。それから、培養容器2を所定の回転数で回転させて培養を行い、設定された時間が経過した後、今度は前記培養容器2を供給口12Bと排出口13Bが鉛直方向を向くように静止させて前述の操作により培養液を交換する。この操作を繰り返して培養を行うのである。この培養液の交換作業は、培養液を上から注入し、下から吸い出す方式であり、重力の作用も利用しているので、非常に効率が高い。また、交換作業中に気泡の混入も防止することができる利点がある。ここで、前記培養容器2の回転角度を正確に検出し、正確な回転角度の位置に静止させる必要があり、前記回転制御装置3にそのような機能が備わってない場合には、強制的に培養容器2の静止位置を修正する機能を付加する必要がある。それには、前記培養容器2の所定位置にマーカーを設け、該マーカーを光学的、電磁的に読み取る検出手段と、培養容器2を所定の回転角度位置まで回転させて静止させる回転駆動手段とで構成する。このような機能を、前記回転制御装置3に持たせることが最も好ましい。
また、細胞の培養を開始するにあたり、前記培養容器2の細胞液投入口11からの細胞液の投入も自動的に行うことも可能である。それには、前記培養容器2を細胞液投入口11が鉛直線上の上側に位置するように静止させ、その状態で前記キャップ18をキャッパー8で回転させて外し、該キャップ18を外した細胞液投入口11から図示しない細胞液供給手段にて細胞液を投入し、それから細胞液供給手段を退避させて前記キャッパー8でキャップ18を回転させて閉じる。
これらの機構は、全て密閉筐体内に組み込まれおり、一連の細胞培養期間中は一切人手に頼らなくてもよいようになっているので、汚染の危険性は皆無に近くなる。但し、管理されたバイオ実験専用のクリーンルーム内に構築する等、汚染の恐れがない場合には、全ての機構を密閉筐体内に組み込まなくても良いことは勿論である。
本発明で採用している回転培養装置1は、細胞は沈降することなく三次元集合体を形成することができること、攪拌ストレスによる壊死を回避することができること、効率的に分化誘導物質を作用させることができること、老廃物の除去・養分の供給が可能であること、といった利点がある。本発明では、複数の供給シリンジ4,…を用いて順次培養液を供給することができるので、細胞の培養ステージに応じて最適な成分配合の培養液を用いることができる。
培養期間中に、培養の状況を確認することは重要である。培養の状況としては、(1)培養中にpHの変化や培地添加物の消費、老廃物の蓄積等による培地の色の変化の確認、(2)コンタミネーションによる培地の濁りの有無、(3)浮遊細胞から三次元の組織が形成されたかどうかの確認等が挙げられる。本発明では、前記培養容器2の正面には視界を遮るものがないので、正面の観察窓17に向けて配置した撮像カメラや各種の分析機器を通して内部の状況を観察することができ、また画像処理によって現状を分析し、それに基づいて回転制御装置3をフィードバック制御したり、培養液の交換タイミングを自動的に探るといったことも可能となる。
本発明の自動細胞培養装置は、代表的にはヒト骨髄細胞から移植可能な軟骨組織を構築するために使用することができる。更に、軟骨再生以外にも再生医療の研究は、網膜剥離症や白内障などを対象とした角膜再生、骨欠損や骨粗しょう症を対象とした骨再生、糖尿病などを対象とした膵臓(ラ氏島)再生、拡張型心筋症などを対象とする心筋再生、パーキンソン病やアルツハイマー症を対象とする神経再生などにも及んでいるので、これら軟骨再生以外の再生医療においても、本発明の自動細胞培養装置が有効であると考えられる。本発明の自動細胞培養装置は、将来的には軟骨再生医療のみならず再生医療全般に適応され得るものであり、再生医療の普及のための必須かつ重要な基盤技術となるものと確信する。
本発明の自動細胞培養装置の要部を示し、回転培養容器とシリンジの関係を示す部分正面図である。 本発明の自動細胞培養装置の概略配置図である。 シリンジを用いた培養液の交換操作の概念を示す説明図である。 供給シリンジと排出シリンジを同時に操作して培養液を交換する操作を示し、(a)は初期状態を示す部分断面図、(b)は培養液の交換中の状態を示す部分断面図である。 培養容器の簡略縦断正面図である。 培養容器の簡略縦断側面図である。 培養容器の供給口の拡大部分断面図である。 従来の回転培養容器の正面図である。 従来の回転培養容器の平面図である。 従来の回転培養容器における培養液交換操作を示す説明図である。
符号の説明
1 回転培養装置
2 培養容器
3 回転制御装置
4 供給シリンジ
5 排出シリンジ
6 シリンジ移動手段
7 ピストン駆動手段
8 キャッパー
9 保冷室
10 取付部
11 細胞液投入口
12,12A,12B,12C 供給口
13,13A,13B,13C 排出口
14 回転軸
15 取入口
16 ガス透過膜
17 観察窓
18 キャップ
19 ポート
20 セプタムシール
21 押えキャップ
22 注射針
23 シリンダー
24 指掛けフランジ
25 ピストン
26 指当てフランジ
27 供給用アダプター
28 排出用アダプター
29 係合部
30 包持部
31 フランジ部
32 フランジ部
33 供給シリンジストッカラック
34 排出シリンジストッカラック
35 係止部
36 扉
37 移載ハンド
38 操作アーム
39 リンクアーム
100 ベッセル
101 取付部
102 細胞液投入口
103 供給口
104 排出口
105 コック
106 ゴムキャップ
107 供給シリンジ
108 排出シリンジ

Claims (8)

  1. 密閉筐体内に、水平な回転軸を有する円筒形培養容器に、細胞液投入口と、培養液交換用の供給口と排出口とが設けられた回転培養装置を備え、前記供給口と排出口は対となって前記培養容器の外周円筒面で回転中心に対して互に180°の回転角度離れた位置に半径方向へ向けて設け、該供給口と排出口を鉛直線上に配置し且つ供給口を上に位置させた状態で、前記供給口に新しい培養液が入った供給シリンジを気密状態で挿脱するとともに、前記排出口に空の排出シリンジを気密状態で挿脱するシリンジ移動手段と、前記供給シリンジを供給口に挿入し且つ前記排出シリンジを排出口に挿入した状態で、供給シリンジのピストンを押し込むと同時に、排出シリンジのピストンを引き抜く操作を行うピストン駆動手段とを備えることを特徴とする自動細胞培養装置。
  2. 前記供給口と排出口の対を前記培養容器の外周円筒面に複数対設けるとともに、各供給口と各排出口は等角間隔毎に設けている請求項1記載の自動細胞培養装置。
  3. 前記供給口と排出口はセプタムシール構造とし、前記供給シリンジと排出シリンジはそれぞれ先端に前記セプタムシールを貫通可能な注射針を有している請求項1又は2記載の自動細胞培養装置。
  4. 前記細胞液投入口を前記培養容器の外周円筒面に設け、該細胞液投入口は回転により開閉するキャップを備え、該細胞液投入口が鉛直線上の上側に位置する状態で、前記キャップを自動的に開閉するキャッパーと、前記キャップを外した細胞液投入口から細胞液を投入する細胞液供給手段を備えている請求項1〜3何れかに記載の自動細胞培養装置。
  5. 密閉筐体内に、前記供給シリンジを保管する供給シリンジストッカラックを有する温度制御付きの保冷室と、前記排出シリンジを保管する排出シリンジストッカラックを備えるとともに、使用済みの供給シリンジと排出シリンジを廃棄する廃棄ボックスを備え、前記シリンジ移動手段にて、保冷室内の供給シリンジストッカラックから供給シリンジを取り出し、排出シリンジストッカラックから排出シリンジを取り出して、培養液交換後に廃棄ボックスに投入してなる請求項1〜4何れかに記載の自動細胞培養装置。
  6. 前記ピストン駆動手段は、前記供給シリンジを供給口に挿入し且つ前記排出シリンジを排出口に挿入した状態で、該供給シリンジのピストンの端部と排出シリンジのピストンの端部に、それぞれ同時に係合可能な一対の操作アームを設けたリンクアームと、該リンクアームを鉛直方向へ平行移動させる鉛直移動機構とからなる請求項1〜5何れかに記載の自動細胞培養装置。
  7. 前記供給シリンジと排出シリンジは、それぞれ供給用アダプターと排出用アダプターに保持されている請求項1〜6何れかに記載の自動細胞培養装置。
  8. 前記供給用アダプターと排出用アダプターには、前記シリンジ移動手段を構成する移載ハンドを係合する係合部と、供給シリンジストッカラックと排出シリンジストッカラックにそれぞれ係止するフランジ部を有している請求項7記載の自動細胞培養装置。
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