通信用途のための周波数選択的な電気信号フィルタは、電信および電話の使用のために、特に、長距離ケーブルや無線リンクで伝わった通信信号チャネルの多重化および逆多重化のために、1910年前後に開発が始まった。「画像」または「画像パラメータ」設計方法と名付けられたフィルタ設計方法は、1920年代にとりわけベル研究所によって開発された(ジョージA.キャンベル、電波フィルタの物理理論、ベルシステム技術ジャーナル、第1巻、No.2(1922年11月);オットーJ.ツォーベル、一様および複合電波フィルタの理論および設計、ベルシステム技術ジャーナル、第2巻、No.1(1923年1月)を参照)。これらの技術を使用することで、フィルタは、同じまたは近似した入力インピーダンスおよび同じまたは近似した出力インピーダンスを有する、位相的にしばしば同一のセクションに分割される伝達線として設計される。セクションは交互に接続され、隣接するセクションの入力が互いに接続し、隣接するセクションの出力が互いに接続する(すなわち、第1セクションの入力は第2セクションの入力に接続され、第2セクションの出力は第3セクションの出力に接続され、第3セクションの入力は第4セクションの入力に接続され、以下同様)。入力インピーダンスまたは出力インピーダンスは常に互いに向かい合い、信号がフィルタを介して伝達するため、セクション間の界面で反射はしない。
通常、画像設計方法は「初期フィルタ設計」を生成する。より多くの設計ステップが、製造される「最終フィルタ設計」を生成するために必要とされる。これらの付加的なステップは、同種の隣接要素を組み合わせること;フィルタ特性に所望の向上を生成するために、特定の回路要素を追加または削除すること;製造すべき実際の回路要素をより正確に表現するために、理想的な回路要素モデルに含まれていなかった寄生効果を追加すること;所望の要求をより良くマッチさせるために、回路要素値のコンピュータ最適化を実行すること;などの工程を含むことができる。
音響波(AW)共振器、特に、石英バルク音響波(BAW)共振器が、いくつかの電気信号フィルタで使用され始めた。AW共振器の等価回路は、「共振」周波数および「反共振」周波数と呼ばれる、周波数で密接な間隔の2つの共鳴を有している(K.S.バン・ダイク、圧電共振器およびその等価ネットワーク議事録、IRE、第16巻、1928、742−764頁を参照)。画像フィルタ設計方法は、これらの石英共振器を利用するフィルタ回路に適用され、2つのAWフィルタ回路タイプは、「ラダー」および「格子」AWフィルタ設計の結果となった(米国特許1,795,204;W.P.メーソン、要素として水晶振動子を用いる伝播フィルタ、ベルシステム・テクニカルジャーナル(1934)を参照)。その後10年間で、石英ラダー設計は、その極端に狭いバンド幅のため、単一チャンネルフィルタのために、通常唯一のものとして使用された。石英フィルタの多くは、幾分狭くないバンド幅を許すが通常インダクタを要求する、ハイブリッド格子設計であった。
ネットワーク合成設計は、1960年代に現れ始め、フィルタ回路設計のより広い多様性を認めるが、通常、キャパシタと比較して物理的に大きくて損失が多くなりがちな、インダクタを必要としていた。これらの設計は、RF周波数かそれよりも低い周波数(<100MHz)で行われており、バルク結晶しばしば水晶を使用して成されていた。表面弾性波(SAW)フィルタは、また、この時代に現れ始めた。これらの設計は、変換損失に起因する高い挿入損失に苦しみ、ラジオ周波数でない中間周波数でのみその使用が可能であり、「タップ付き遅延線」と称する横断線設計に基づいていた。
約1992年の初頭に、薄膜SAW共振器およびBAW共振器が発展してマイクロ波(周波数>500MHz)で使用され始めた。AWインピーダンス要素フィルタ(IEF)の設計は、エスペンシード型ラダー音響波フィルタ設計(オー・イカタら、携帯電話のためのSAW共振器を使用する低損失バンドパスフィルタの開発、1992超音波シンポジウム、111−115頁を参照)。SAWおよびBAW実装中の画像設計されたAW IEFバンドパスフィルタは、しばしば、移動通信装置のラジオ周波数(RF)フロントエンドにおけるマイクロ波フィルタリングの用途に使用される。移動通信業において最も重要なことは、約500−3500MHzの周波数レンジである。アメリカ合衆国において、移動体通信のために使用される多数の標準バンドがある。これらは、他の新興バンドとともに、バンド2(〜1800−1900MHz)、バンド4(〜1700−2100MHz)、バンド5(〜800−900MHz)、バンド13(〜700−800MHz)およびバンド17(〜700−800MHz)を含んでいる。
フィルタの特別な種類であるデュプレクサは、モバイル機器のフロントエンドにおいて、キーとなる構成要素である。近代のモバイル通信装置は、同時に送受信でき(LTE、WCDMAまたはCDMAを使用して)、同じアンテナを使用する。デュプレクサはピコワット程度の低い受信信号から、最大で0.5ワットまでの送信信号を分離する。送受信信号は、デュプレクサがそれらを選択することができるように、異なる周波数でキャリアにより変調され、たとえそうでも、デュプレクサは、大変小さなサイズしばしばたったの約2mm角のサイズで、周波数の選択、分離および低損失を提供しなければならない。二重モードSAW(DMS)(縦結合共振(LCR)とも呼ばれる)フィルタが、ときどき、それが提供する平衡出力のためデュプレクサにおいて受信フィルタとして使用されているが、画像設計されたバンドパスAW IEFフィルタは、それがこれらの要求を満たすため、デュプレクサにおいて一般的に好適に使用され、タップ付き遅延線(それはより高い損失を有しているため)および共振単相一方向性変換器(SPUDT)フィルタ(要求される狭いラインがマイクロ波周波数に対するスケーリングを防ぐため)のような代替物よりかなり良好である(デビットモーガン、電気通信および信号処理への用途としての表面弾性波フィルタ、モーガン、335−339頁、352−354頁(2007))。
これらの伝統的なAW IEFフィルタ設計に対する小規模な変更は、特別の回路特性を高めるため、通常は1つ以上の回路要素(例えば、キャパシタ、インダクタ、またはAW共振器)をIEF設計に追加する、これらの応用例(米国特許8,026,776および米国特許8,063,717を参照)のために考慮されてきた。これは、基本AW IEF回路に対する影響が十分小さく、通常のコンピュータ最適化ツールがまとまって、従来のAW IEFフィルタ設計に対する改良された設計がなされる場合に達成できる。これは、AW IEFフィルタで使用される共振器のような、近接して設けられた共振器および反共振器を含むいかなる回路に対する厳しい要求であり、そのため基本的なAW IEF設計および昨日に対しごく小規模な変更を許可する。これは、改良された回路設計の解法に収れんするためのコンピュータ回路最適化ルーチンのための最初の要求が、初期の設計が最終の改良された設計として同じ回路構造になるべきであること、および、初期の回路要素値が最終値に大変近くなるべきであること、であるためである。そのため、AW IEFフィルタ設計の基本構成は、単純な一対の共振器構成、および、AWラダー設計に対する小規模な変更やこの伝統的な回路設計に対し「事後」成される変更に限られていた。移動体通信のためのコスト、サイズおよびパワーの点で、改良されたマイクロ波AWフィルタの必要がある。
本発明の第1の側面に従えば、周波数応答要求に従って音響マイクロ波フィルタを設計する方法が提供される。この方法は、周波数応答要求に基づくフィルタセクションを選択する工程を備えている。フィルタセクションが、入力、出力、および、入力と出力との間の複数の回路要素を含んでいる。複数の回路要素が、少なくとも2つのインライン音響共振器または少なくとも2つのインシャント音響共振器を有している。ある方法において、インライン共振器またはインシャント共振器の各々は、単一の圧電基板上に形成される。
この方法は、付加的に、回路要素の構成タイプを選択する工程を備えることができる。例えば、インライン共振器またはインシャント共振器の各々の構成タイプが、表面弾性波(SAW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、薄膜バルク弾性波共振器(FBAR)、および、微小電気機械システム(MEMS)共振器の1つから選択される。
この方法は、さらに、周波数応答要求に基づいた、回路要素の各々に対する値を選択する工程と、周波数応答要求に基づいた、複数のフィルタセクションを選択する工程と、 直近で隣接するフィルタセクションの少なくとも1つのペア(たぶんすべてのペア)が、それらの入力またはそれらの出力を介して互いに接続されるように、カスケードされたフィルタ回路設計を生成するために、選択された複数のフィルタセクション(同じであることもある)をカスケードする工程と、を備えている。
ある方法において、周波数応答要求が少なくとも1つのパスバンドおよびストップバンドを備えており、フィルタセクションが、パスバンドまたはストップバンドに基づき選択される。複数の回路要素が一対のインライン共振器およびインシャント共振器を有することができ、その場合、一対のインライン共振器およびインシャント共振器の値が、パスバンドまたはストップバンドを形成するために選択される。周波数応答要求がパスバンドおよびストップバンドを備える場合、一対のインライン共振器およびインシャント共振器の値がパスバンドを形成するために選択され、複数の回路要素が他の一対のインライン共振器およびインシャント共振器となり、他の一対のインライン共振器およびインシャント共振器の値がストップバンドを形成するために選択される。
付加的な方法は、さらに、周波数応答要求を正規化された設計スペースにマッピングする工程を備えており、その場合、回路要素の値が、マッピングされた周波数応答要求に基づいて決定される正規化された値となり、その後、カスケードされたフィルタ回路要素の正規化された回路要素の値を、実際の設計スペースにアンマッピングする。ある実施例において、複数の回路要素が一対のインライン共振器およびインシャント共振器を有し、パスバンドを形成するために約2だけ、インシャント共振器の正規化された共振周波数が、インライン共振器の正規化された非共振周波数より低い。他の実施例において、複数の回路要素が一対のインライン共振器およびインシャント共振器を有し、ストップバンドを形成するために約1だけ、インライン共振器の正規化された非共振周波数が、インシャント共振器の正規化された共振周波数より低い。
この方法は、さらに、事前に最適化されたフィルタ回路設計を生成するために、カスケードしたフィルタ回路設計に対し寄生効果を加える工程と、最終フィルタ回路設計を生成するために、事前に最適化されたフィルタ回路設計をコンピュータ化されたフィルタ最適化装置などのフィルタ最適化装置に入力する工程と、最終フィルタ回路設計に基づいて、音響マイクロ波フィルタを構成する工程と、を備えている。付加的な方法は、さらに、カスケードされたフィルタ設計に寄生効果を加える工程の前に、カスケードされたフィルタ設計中で互い電気的に隣接する類似の回路要素を組み合わせる工程を備えている。他の付加的な方法は、さらに、最終フィルタ回路設計を生成するために、事前に最適化された回路設計の要素除去最適化を行う工程を備えている。
ある方法において、最終フィルタ回路設計での複数の共振器の最も低い共振周波数と最も高い共振周波数との間の差が、複数の共振器中のいかなる共振器の周波数分離の少なくとも1.25倍、おそらく少なくとも2倍である。他の方法において、周波数応答要求がパスバンドを備えており、最終回路設計およびパスバンドのエッジのリターン損失の大きさの局所的な最少と局所的な最大との間の周波数の相違が、最終フィルタ回路設計における最も高い共振周波数を有する共振器の周波数分離の少なくとも1倍、おそらく1.25倍、さらにおそらく2倍である。
本発明の第2の側面に従えば、音響マイクロ波フィルタは、入力およびを出力と、入力と出力との間が結合された複数の音響共振器を備えている。最終フィルタ回路設計の複数の共振器の最も低い共振周波数と最も高い共振周波数との間の差が、複数の共振器中の最も高い共振周波数を有する共振器の共振周波数と非共振周波数との間の分離の少なくとも1.25倍、おそらく少なくとも2倍である。ある実施例において、複数の共振器が、少なくとも2つのインライン共振器および/または少なくとも2つのインシャント共振器を備える。複数の共振器が、少なくとも一対のインライン共振器およびインシャント共振器を備えることができる。複数の共振器の各々が、表面弾性波(SAW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、薄膜バルク弾性波共振器(FBAR))、および、微小電気機械システム(MEMS)共振器の1つである。
本発明の第3の側面に従えば、音響マイクロ波フィルタは、入力および出力と、パスバンドを形成するため入力と出力との間が結合された複数の音響共振器と、を備えている。音響マイクロ波フィルタのリターン損失の大きさの局所的な最少と局所的な最大が、最も高い共振周波数を有する共振器の共振周波数と非共振周波数との間の分離の少なくとも1倍、おそらく少なくとも1.25倍、さらにおそらく少なくとも2倍である。ある実施例において、複数の共振器が少なくとも2つのインライン共振器および/または少なくとも2つのインシャント共振器を備えている。複数の共振器が少なくとも一対のインライン共振器およびインシャント共振器を備えることができる。複数の共振器の各々が、表面弾性波(SAW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、薄膜バルク弾性波共振器(FBAR))、および、微小電気機械システム(MEMS)共振器の1つである。
本発明の他のあるいは更なる側面および特徴は、本発明を説明する意図であって限定するわけではない、好ましい実施例の以下の詳細な説明を読むことから明白となる。
本開示は、音波(AW)マイクロ波フィルタ(表面弾性波(SAW)、バルク弾性波(BAW)、薄層バルク弾性波(FBAR)のフィルタ、微小電気機械システム(MEMS)フィルタのような)を設計するための画像技術を記載する。フィルタ設計のカスケードされたセクションの各々において単純な一対の共振器構造の使用に限定される先行技術の画像設計技術と比べて、ここに記載された画像設計技術は、フィルタ設計のカスケードされたセクションの各々において、より複雑な回路要素構造を使用する。この画像設計技術によって可能となる増加した設計の複雑さは、改良された挿入損失、改良された排除率および/または低コストのような改良された性能を有する設計を可能とする。
ここに記載されたAWマイクロ波フィルタは、近接したストップバンドを有するパスバンドが要求される無線通信システムのデュプレクサで特に有益な、単一のパスバンドおよび単一のストップバンドを有する周波数応答を示す。例えば、図1を参照すると、移動通信装置で使用される無線通信システム10は、無線信号を送信および受信することができるトランシーバ12、および、トランシーバ12の機能を制御することができるコントローラ/プロセッサ14、を含むことができる。トランシーバ12は、一般的に、ブロードバンドアンテナ16、送信フィルタ24および受信フィルタ26を有するデュプレクサ18、デュプレクサ18の送信フィルタ24を介してアンテナ16と結合している送信機20、および、デュプレクサ18の受信フィルタ26を介してアンテナ16に結合している受信機22、を備えている。
送信機20は、コントローラ/プロセッサ14によって提供されたベースバンド信号をラジオ周波数(RF)信号に変換するよう構成されたアップコンバータ28、RF信号を増幅するよう構成された可変利得増幅器(VGA)30、コントローラ/プロセッサ14によって選択された動作周波数でRF信号を出力するよう構成されたバンドパスフィルタ32、および、フィルタを通過したRF信号を増幅し、次にデュプレクサ18の送信フィルタ24を介してアンテナ16に供給されるよう構成された電力増幅器34を含んでいる。
受信機22は、受信フィルタ26を介してアンテナ16から入力されたRF信号から送信信号干渉を排除するよう構成されたノッチまたはストップバンドフィルタ36、比較的低ノイズのストップバンドフィルタ36からのRF信号を増幅するよう構成された低ノイズ増幅器(LNA)38、コントローラ/プロセッサ14によって選択された周波数で増幅されたRF信号を出力するよう構成された波長の調整が可能なバンドパスフィルタ40、および、RF信号をコントローラ/プロセッサ14に供給されるベースバンド信号へダウンコンバートするよう構成されたダウンコンバータ42を含んでいる。また、ストップバンドフィルタ36によって実行された送信信号干渉を排除する機能は、デュプレクサ18によって代わりに実行することもできる。あるいは、送信機20の電力増幅器34が送信信号干渉を低減するよう設計することもできる。
図2に示されたブロック図は実際には機能的であり、いくつかの機能が1つの電子部品によって実行でき、あるいは、1つの機能がいくつかの電子部品によって実行される、ことは理解されるべきである。例えば、アップコンバータ28、VGA30、バンドパスフィルタ40、ダウンコンバータ42、および、コントローラ/プロセッサ14によって実行された機能は、しばしば、単一のトランシーバチップによって実行される。バンドパスフィルタ32の機能は、電力増幅器34およびデュプレクサ18の送信フィルタ24にすることができる。
ここに記載された典型的な画像設計技術は、同じ技術がデュプレクサ18の受信フィルタ26のためおよび他のRFフィルタのための音響マイクロ波フィルタを設計するために使用されているが、無線通信システム10特にデュプレクサ18の送信フィルタ24のフロントエンド用音響マイクロ波フィルタを設計するために使用される。
図2を参照すると、AWマイクロ波フィルタを設計するためのある典型的な技術50が記載されている。まず第1に、サイズおよびコストの要求および操作温度範囲、振動、故障率などの環境要求のみならず、周波数応答要求(パスバンド、リターン損失、挿入損失、排出率、直線性、雑音指数、入力および出力インピーダンスなどを含む)を備えるフィルタ要求は、フィルタおよびユーザーの使用によって達成される(ステップ52)。
次に、AWフィルタで使用される回路要素の構造タイプが選択される;例えば、フィルタを製造するためのパッケージングおよびアセンブリ技術を含む、これらの回路要素を製造するために使用される材料とともに、共振器のタイプ(SAW、BAW、FBAR、MEMSなど)およびインダクタ、キャパシタおよびスイッチのタイプが、選択される(ステップ54)。ここに記載された特定の例において、回路要素タイプの選択は、42度XYカットのLiTaO3基板上に構成されたSAW共振器および42度XYカットのLiTaO3基板上に統合されたキャパシタである。
次に、パスバンドおよびストップバンドが周波数応答要求から選ばれて、設計すべきフィルタのセクションに対する回路が選択される(ステップ56)。第1に、要求に基づき、パスバンドおよびストップバンドが特定される。フィルタセクションは、フィルタの基本的な基礎であり、パスバンドおよび/またはストップバンドに基づいて選択される。例えば、一対のインライン共振器(すなわち直列に接続されている)/シャント共振器(すなわち並列に接続されている)が、パスバンドおよび/またはストップバンドの各々に対して選択でき、次に、フィルタセクションを形成するためにインラインで接続される。フィルタセクションは、また、キャパシタ、インダクタおよび/またはスイッチなどの、共振器以外の回路要素を備えることができる。
フィルタセクション100のそのような実施例の1つが図3に示されている。フィルタセクション100は、インライン共振器102aおよびインシャント共振器102bから構成される共振器ペア102、および、インライン共振器104aおよびインシャント共振器104bから構成される共振器ペア104、を備えている。2つの共振器ペア102、104は、図示のように互いにインラインに結合され、周波数応答要求のパスバンドおよびストップバンドにそれぞれ対応している。フィルタセクション100は、また、入力ターミナル106および出力ターミナル108を備えている。
音響共振器102a、102b、104a、104bの各々は、変形バダーワース・ファンダイク(MBVD)モデル110によって記載される。MBVDモデル110は、また、SAW共振器を記載しており、結晶性石英、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)結晶、BAW(FBARを含む)共振器、または、MEMS共振器などの、圧電基板上にインターデジタル変換器(IDTs)を配置することによって製造される。各MBVDモデル110は、動キャパシタンスC
m112、静キャパシタンスC
o114、動インダクタンスL
m116、および、抵抗R118を含んでいる。動キャパシタンスC
m112および動インダクタンスL
m116は、電気的および音響的な動作の相互作用に起因しており、そのため、MBVDモデル110の動アームとして参照される。静キャパシタンスC
o114は、構造のキャパシタンスに起因しており、そのため、MBVDモデル110の静(非動的)キャパシタンスとして参照される。抵抗R118は、音響共振器の電気抵抗に起因している。パラメータは以下の等式によって関係付けられる:
ここで、ω
Rおよびω
Aは、それぞれ、与えられた音響共振器に対する共振周波数と反共振周波数であり、ガンマγは材料の特性に依存し、更に以下のように定義されている:
典型的なγ値は、42度XYカットのLiTaO
3に対し約12から約18の範囲である。
音響共振器の共振周波数ωRは、インピーダンスの大きさが局所的最小に達し、インピーダンスの位相が零を横切る周波数を意味する。音響共振器の非共振周波数ωAは、インピーダンスの大きさが局所的最大に達し、インピーダンスの位相が零を横切る周波数を意味する。
等式[1]から、音響共振器の各々の共振周波数がMBVDモデル110の動アームに依存することが理解され、一方で、フィルタ特性(例えばバンド幅)は等式[2]のγによって大きく影響される。音響共振器102に対する品質係数(Q)は、フィルタ内の要素の損失に関して、音響フィルタ設計における重要な数字である。回路要素のQは、サイクル毎に蓄積されるエネルギーのサイクル毎に失ったエネルギーに対する比率を示している。Qファクタは、各音響共振器における実際の損失をモデル化しており、通常、1つ以上のQファクタが音響共振器の損失を表すために要求される。Qファクタは、フィルタの例に対し、以下のように定義される。動キャパシタンスCm112はQCm=108として定義される関連Qを有しており;静キャパシタンスCo114はQCo=200として定義される関連Qを有しており;動インダクタンスLm116はQLm=1000として定義される関連Qを有している。回路設計者は、通常、SAW共振器を、共振周波数ωR、静キャパシタンスCo、ガンマγおよび品質係数QLmによって特徴付ける。商用アプリケーションにおいて、QLmは、SAW共振器に対し約1000であり、BAW共振器に対しで約3000である。
図2に戻って参照すると、周波数応答要求は、次に、正規化された設計スペースにマッピングされる(ステップ58)。マッピングは、平方根/二次式マッピング技術のような、好適なアルゴリズムを使用して実行される(ジョージL.マサエイ、マイクロ波フィルタ、インピーダンス−マッチングネットワーク、および、結合構造、マクグローヒルブックカンパニー、95−97頁、438−440(1964)、または、音響マイクロ波フィルタに最も適合する対数/指数マッピング技術、を参照)。
ある魅力的な対数マッピング技術は以下の等式を使用する:
ここで、2πω
Pはパスバンドまたはストップバンドの幾何学的な中心周波数であり、2πωは実際の周波数であり、Ωはマップされた周波数であり、γは共振器の静キャパシタンスの動キャパシタンスに対する比率であり、Ω
Rは共振器のマップされた共振周波数であり、Ω
Aは共振器のマップされた非共振周波数である。
共振器ペアの、インライン共振器のマップされた非共振周波数とインシャント共振器のマップされた共振周波数との関係は、以下の等式に従って周波数応答の望ましい形状を定義するために都合良く使用される:
ここで、Ω
IL Aはインライン共振器のマップされた非共振周波数であり、Ω
IS Rはインシャント共振器のマップされた共振周波数であり、βは周波数応答の形を定義する周波数分離パラメータである。フィルタセクション内でβの選択が、パスバンド、ストップバンドまたはヌルバンドが形成されるかどうかを決定する。
例えば、図4a−4eは、それぞれ、インライン/インシャント共振器のペアに対する周波数応答の5つの異なるタイプを示している。特に、β〜2のとき、図4aに示すように、周波数応答がパスバンドを含む。この場合、インシャント共振器は−1の正規化された共振周波数を有し、インライン共振器は+1の正規化された非共振周波数(そのため、0の正規化された共振周波数)を有する。β〜1のとき、図4bに示すように、周波数応答がヌルバンドを含む。この場合、インシャント共振器は−0.5の正規化された共振周波数を有し、インライン共振器は+0.5の正規化された非共振周波数(すなわち、−0.5の正規化された共振周波数)を有する。β〜0のとき、図4cに示すように、周波数応答が狭いストップバンドを含む。この場合、インシャント共振器は0の正規化された共振周波数を有し、インライン共振器は0の正規化された非共振周波数(すなわち、1の正規化された共振周波数)を有する。β〜−0.5のとき、図4dに示すように、周波数応答が広いストップバンドを含む。この場合、インシャント共振器は0.25の正規化された共振周波数を有し、インライン共振器は−0.25の非共振周波数(すなわち0.75の正規化された共振周波数)を有する。β〜−1のとき、図4eに示すように、周波数応答がさらに広いストップバンドを含む。この場合、インシャント共振器は0.5の正規化された共振周波数を有し、インライン共振器は−0.5の正規化された非共振周波数(すなわち、0.5の正規化された共振周波数)を有する。
これらの原理、周波数応答要求、特定したパスバンドおよびストップバンドを使用することで、図3に示されたフィルタセクション100における全ての共振器の正規化された周波数が決定される(ステップ60)。例えば、周波数応答要求が図4aに(β〜2)と示された周波数応答のパスバンドに近似したパスバンドを含む場合、インライン共振器102aの正規化された非共振周波数は+1になるよう選択され、インシャント共振器102bの正規化された共振周波数は−1になるよう選択される。周波数応答要求が図4eに(β〜−1)と示された周波数応答のストップバンドに近似したストップバンドを含む場合、インライン共振器104aの正規化された非共振周波数は−0.5になるよう選択され、インシャント共振器104bの正規化された共振周波数は0.5になるよう選択される。周波数は各パスバンドおよび各ストップバンドに対し再正規化されること、を理解すべきである。
次に、回路要素の正規化されたサセプタンス値(共振器の場合、正規化されたサセプタンスはそれらのキャパシタンスC’
0と比例する)が、特定のフィルタセクションに対する望ましいバンド廃棄要求とともに、フィルタセクションのインラインおよびインシャントブランチの正規化されたサセプタンス値の間の固有の関係に基づいて、各パスバンドおよび各ストップバンドの中心周波数で選択される(ステップ62)。特に、等式[4]および[5]の対数/指数マッピングを使用するとした場合、各パスバンドおよび各ストップバンドに対し以下の通りとなる、
ここで、各共振器ペアに対し、β’
0(IL)はインラインブランチ例えば図3に示されたフィルタペア102のインライン共振器102aに対する正規化されたサセプタンスであり、β’
0(IS)はインシャントブランチ例えばフィルタペア102のインシャント共振器102bに対する正規化されたサセプタンスである。さらにまた、β’
0(IS)/β’
0(IL)の比率は、ケンヤハシモト、電気通信における表面弾性波装置、2000年春、チャプタ5.4−「インピーダンス要素フィルタ」の特に図5.41および5.42の教示に従う、フィルタペアの信号廃棄に関連する。
等式[7]およびβ’0(IS)/β’0(IL)の比率に対する信号廃棄関係を使用することで、回路要素に対するサセプタンス値が選択される。例えば、図3に戻って参照すると、インライン共振器102aおよびインシャント共振器102bの正規化されたサセプタンス値β’0(IS)、β’0(IL)は、等式[7]に付着して、フィルタセクションのパスバンド部の望ましい廃棄に等しいパスバンド要素による廃棄を有する予想されるパスバンド周波数応答を発生する方法で、選択される。同様に、インライン共振器104aおよびインシャント共振器104bの正規化されたサセプタンス値β’0(IS)、β’0(IS)は、等式[7]に付着して、フィルタセクションの望ましい廃棄の残りの部分に等しいストップバンドにおける廃棄を有する予想される周波数応答を発生する方法で、選択される。例えば、フィルタセクションの望ましい信号廃棄が10dBである場合、パスバンドに対応するインライン共振器102aおよびインシャント共振器102bのサセプタンス値は5dBの廃棄に寄与するよう選択され、ストップバンドに対応するインライン共振器102aおよびインシャント共振器102bのサセプタンス値は5dBの廃棄に寄与する。
次に、フィルタで使用されるフィルタセクションの数が、周波数応答要求、この場合、フィルタの望ましい廃棄、に基づき選択される(ステップ64)。例えば、望ましい廃棄が40dBより大きく、各フィルタセクションに対する廃棄が10dBである場合、回路セクションの選択された数は好適には少なくとも4である。
共振器の2つのペアが、フィルタの周波数応答におけるパスバンドおよびストップバンドを提供するために、ステップ56においてフィルタセクションに対し選択されたとしても、パスバンドおよびストップバンドが十分に近接する周波数である場合、共振器の1つはパスバンドおよびストップバンドの両者を生成するために役立つこと、を理解すべきである。例えば、代替フィルタセクション120が図5に示されている。フィルタセクション120は、インライン共振器122、2つのインシャント共振器124、126およびキャパシタ128を備えている。インライン共振器122は、パスバンドを形成するためにインシャント共振器124とペアにすることができ、また、ストップバンドを形成するためにインシャント共振器126とペアにすることもできる。すなわち、インライン共振器122は、パスバンドおよびストップバンドの両者を形成するために、インシャント共振器124、126の各々とシェアされる。フィルタセクション120は入力ターミナル130および出力ターミナル132を備えている。
選択されたフィルタセクションの回路にかかわらず、フィルタセクションの同一のものの選択された数は、フィルタセクションの少なくとも直近に隣接するペアがそれらの入力またはそれらの出力を介して互いに接続されるように、カスケードされたフィルタ回路設計を生成するためにカスケードされる(ステップ66)。例えば、図5に示されたフィルタセクション120が選択された場合、図6に示されたカスケードされたフィルタ回路設計150を生成するために5回カスケードされる。そこに示すように、第2のフィルタセクション120(2)の出力ターミナル132が第1のフィルタセクション120(1)の出力ターミナル132に接続され、第2のフィルタセクション120(2)の入力ターミナル130が第3のフィルタセクション120(3)の入力ターミナル130に接続され、第4のフィルタセクション120(4)の出力ターミナル132が第3のフィルタセクション120(3)の出力ターミナル132に接続され、第4のフィルタセクション120(4)の入力ターミナル130が第5のフィルタセクション120(5)の入力ターミナル130に接続するように、第2および第4のフィルタセクション120(2)、120(4)は逆になっている。他の実施例において、カスケードされたフィルタ回路設計で使用されたフィルタセクションのいくつかあるいは全ては、互いに同じではないが、オットーJツォーベル、均一および複合電波フィルタの理論および設計、ベルシステム技術ジャーナル、第2巻、No.1(1923年1月)に記載されたM由来の画像方法を使用して、初期フィルタセクション120から引き出せる。
次に、カスケードされたフィルタ設計において互いに電気的に隣接する類似の回路要素は、数を減少させたカスケードされたフィルタ設計250を生成するために組み合わされる(ステップ68)。この明細書の目的のため、インライン回路要素は、それらの間にシャントされた電気パスが無い場合、互いに「電気的に隣接」しており、インシャント回路要素は、それらのターミナルが互いにショートされた場合、互いに「電気的に隣接」している。
例えば、図7に示すように、第1および第2のフィルタセクション120(1)、120(2)の各々の同一のインライン共振器122は互いに組み合わされ、同じ正規化された共振周波数を有するが、オリジナルのインライン共振器122のいずれか1つのように、正規化された静キャパシタンスの半分を有する、単一のインライン共振器222となり、第1および第2のフィルタセクション120(1)、120(2)の各々の同一のキャパシタ128は互いに組み合わされ、オリジナルのキャパシタ128のいずれか1つのように、正規化されたキャパシタンスの半分を有する単一のキャパシタ228となる。同様に、第3および第4のフィルタセクション120(3)、120(4)の各々の同一のインライン共振器122は互いに組み合わされ、同じ正規化された共振周波数を有するが、オリジナルのインライン共振器122のいずれか1つのように、正規化された静キャパシタンスの半分を有する、単一のインライン共振器222となり、第3および第4のフィルタセクション120(3)、120(4)の各々の同一のキャパシタ128は互いに組み合わされ、オリジナルのキャパシタ128のいずれか1つのように、正規化されたキャパシタンスの半分を有する単一のキャパシタ228となる。
第2および第3のフィルタセクション120(2)、120(3)の各々の同一のインシャント共振器124は互いに組み合わされ、同じ正規化された共振周波数を有するが、オリジナルのインシャント共振器124のいずれか1つのように、正規化された静キャパシタンスの2倍を有する、2つの単一のインシャント共振器224となり、第2および第3のフィルタセクション120(2)、120(3)の各々の同一のインシャント共振器126は互いに組み合わされ、同じ正規化された共振周波数を有するが、オリジナルのインシャント共振器126のいずれか1つのように、正規化された静キャパシタンスの2倍を有する、単一のインシャント共振器226となる。同様に、第4および第5のフィルタセクション120(4)、120(5)の各々の同一のインシャント共振器124は互いに組み合わされ、同じ正規化された共振周波数を有するが、オリジナルのインシャント共振器124のいずれか1つのように、正規化された静キャパシタンスの2倍を有する、2つの単一のインシャント共振器224となり、第4および第5のフィルタセクション120(4)、120(5)の各々の同一のインシャント共振器126は互いに組み合わされ、同じ正規化された共振周波数を有するが、オリジナルのインシャント共振器126のいずれか1つのように、正規化された静キャパシタンスの2倍を有する、単一のインシャント共振器226となる。
次に、減少したフィルタ回路設計の正規化された回路要素値は、最初に周波数応答要求を正規化された設計スペースにマップするために使用されたマッピング技術の逆に従って、現実の設計スペースにアンマップされる(ステップ70)。例えば、等式[4]の対数マッピング技術が周波数応答要求を正規化されたスペースにマップするために使用された場合、以下のような対数アンマッピング等式が、正規化された回路要素値を現実の設計スペースにアンマップするために使用される:
このフィルタ設計は初期フィルタ設計である。周波数応答要求(パスバンド:挿入ロス<1.5dBで1850MHzから1910MHz;ストップバンド:>40dB廃棄で1930MHzから1990MHz)、および、42度XYカットのLiTaO3基板上に構成されたSAW共振器および42度XYカットのLiTaO3基板上に統合されたキャパシタから構成される回路要素タイプの選択を考慮すると、初期フィルタ回路設計250をアンマッピングした後、各共振器の共振周波数ωRおよび静キャパシタンスC0、および、キャパシタのキャパシタンスが、シミュレートしたとき、図8bに示された周波数応答となる図8aに示されているように、選択される。
次に、寄生効果が、事前に最適化されたフィルタ回路設計を生成するために、以下のパラメータ(QC0=200、Qcap=200、QLm=1000、および、Rs=0.5オーム)を使用して、初期のフィルタ回路設計250に加えられる(ステップ72)。次に、事前に最適化されたフィルタ回路設計は、最終フィルタ回路設計を生成するために、コンピュータ化されたフィルタ最適化装置に入力される(ステップ74)。付加的な方法において、要素除去設計(ERD)技術が最適化の最中に実行され、不必要または「消去する」回路要素はより単純な回路要素へ除去または減少され、図9に示された最終フィルタ回路設計となる。ERD技術は、「マイクロ波フィルタにおける要素除去設計」との名称の、米国仮特許出願シリアルNo.61/802,114に記載されており、ここで参照することで本明細書に組み込まれる。最適化およびERD技術は、シミュレートすると、目的とする周波数応答要求と一致する図10bに示された周波数応答の結果となる、図10aに示されるように、各共振器に対し共振周波数ωRおよび静キャパシタンスC0およびキャパシタのキャパシタンスの結果となる。
とりわけ、図2に示された画像設計技術に従って設計されたマルチバンドフィルタは、先行技術の画像設計技術に従って設計されたマイクロ波音響フィルタと比較してかなり大きい範囲にわたる共振周波数を持つ共振器を有するであろうと予想される。
例えば、共振周波数のスパンを比較できるある測定は、最も大きい共振周波数を有する共振器の周波数分離である。音響共振器の周波数分離は、その共振周波数とその非共振周波数との間の相違を意味する。音響波共振器のパーセント分離は、その共振周波数とその非共振周波数との間のパーセント周波数分離であり、以下のように計算できる:
ここで、圧電材料の材料特性によって決定され、装置の配置によって変更されるように、γは共振器の動キャパシタンスに対する静キャパシタンスの比率である(等式[3])。
42度XYカットのLiTaO3基板に対し、γ0は約12より大きい。音響共振器の現実化からの寄生キャパシタンスは、γを増加させそのためパーセンテージ分離を減少させ、一方、寄生インダクタンスは効果的にγを減少させることができる。この例において、γ=12に対し、パーセンテージ分離は約4.1%であり、そのため、分離は、図10aの共振器(Res4に対し1988MHz)のなかで最も高い共振周波数で約81MHzの最大値を有する。音響共振器の周波数分離と対照的に、2つの音響共振器の間の「周波数差」は2つの共振器の共振周波数の間の絶対周波数差を意味する。図10aに示された最も高い共振器と最も低い共振器との間の周波数差は、184MHzまたは最大周波数分離の2.27倍である。この例において、図10aの共振器の全ての可能なペアの間の平均周波数差は、最大周波数分離の約0.9倍である。一対の共振器の共振周波数間における差の変化の平方根は、56MHzまたは最大周波数分離の0.69倍である。共振器の全部で21可能なペアの4つの間の周波数差は、最大周波数分離を超える。
そのため、最終フィルタ回路設計における最も低い共振周波数と最も高い共振周波数との間の差は、最も高い共振周波数を有する共振器における共振周波数と非共振周波数との間の分離の、少なくとも1.25倍、多くの場合、少なくとも2倍となることが予想される。
また、図2に示された画像設計技術に従って設計されたマルチバンドフィルタが、反射零点がパスバンドまたはそれに大変近い部分に限定される、先行技術の画像設計技術に従って設計されたフィルタと対比して、パスバンドからかなり遠くに位置する反射零点を有することが予想される。
特に、局所的なリターン損失(および/またはS11)の最小および局所的な挿入損失(および/またはS21)の最大が、最大周波数分離の約5パーセント未満−この例では約4MHz未満内で、同時に起きる周波数で生じる。あるいは、反射零点は、S11の遅延の局所的に最小の点および局所的に最大の点で起こる。図10cから分かるように、いくつかの反射零点(特に、マーカーA1およびA7に対応する反射零点)は、パスバンド(1850MHzから1910MHz)の範囲外でそれから遠くに位置する。反射零点と最も近接するパスバンドエッジとの間の周波数差は、最大周波数分離の、1倍より大きく、あるいは1.25倍より大きく、あるいは2倍より大きくなる。この特定の例において、マーカーA7に対応する反射零点は、パスバンドの上側のエッジから約91MHz(すなわち、81MHzの最大周波数分離の約1.1倍)である。この例のパスバンドは60MHzの幅である。パスバンド幅と関連して、図10cに示すように、反射零点は、パスバンドの下側エッジに対し25%および5%下側でパスバンドの上側エッジに対し6%および21%上側であり、パスバンド中の他の反射零点と近接している。また、マーカーA7でのある反射零点は、パスバンドの反射零点と近接しておらず、パスバンドの上側エッジに対し164%上側である。最終フィルタ回路設計の挿入損失は、好ましくは3dB未満である。
図2に戻って参照すると、一旦最終フィルタ回路設計が達成されると、実際のマイクロ波フィルタが最終フィルタ回路設計に基づいて組み立てられる(ステップ76)。好ましくは、実際のマイクロ波フィルタの回路要素値が、最終フィルタ回路設計における対応する回路要素値とマッチする。
本発明の特定の実施例が示されて記載されているが、上述した議論は本発明をそれらの実施例に限定することを意図していないことを理解すべきである。当業者にとって、各種の変更や変形が本発明の精神および範囲を逸脱しない限り可能であることは自明である。例えば、本発明は単一の入力および出力を有するフィルタを十分超える応用を有しており、本発明の特定の実施例は、低損失の選択回路が使用される、デュプレクサ、マルチプレクサ、チャンネライザ、リアクティブスイッチなどを形成するために使用される。そのため、本発明は、クレームで定義されているように、本発明の精神および範囲内の代替例、変形例および同等例をカバーすることを意図している。