JP2002016470A - 共振器型弾性表面波フィルタ - Google Patents

共振器型弾性表面波フィルタ

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JP2002016470A JP2000198119A JP2000198119A JP2002016470A JP 2002016470 A JP2002016470 A JP 2002016470A JP 2000198119 A JP2000198119 A JP 2000198119A JP 2000198119 A JP2000198119 A JP 2000198119A JP 2002016470 A JP2002016470 A JP 2002016470A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通過帯域の挿入損失を劣化させることなく、
通過帯域外の低域側減衰量を増加させる。 【解決手段】 並列アーム共振子90,100における
IDT91,101の接地側ボンディングパッド91
A,101Aと、左側の反射器92,102の接地側ボ
ンディングパッド92A,102Aと、右側の反射器9
3,103の接地側ボンディングパッド93A,103
Aとを、完全に電気的に分離している。各ボンディング
パッド91A,101A,…を、別々の独立したワイヤ
91W,101W,…等の導体で、パッケージ110側
の接地電極113に接続している。これにより、並列ア
ーム共振子90,100のアイソレーションが著しく改
善される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、帯域フィルタとし
て用いられる共振器型の弾性表面波(SurfaceAcoustic
Wave 、以下「SAW」という。)フィルタ、特にこの
通過帯域の低域側減衰量を増加させるためのフィルタ構
造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、SAWフィルタに関する技術とし
ては、例えば、次のような文献等に記載されるものがあ
った。 文献1;特開平10−93381号公報 文献2;特開平10−173469号公報 文献3;特開平10−294640号公報
【0003】一般的に、SAW装置は、例えば、文献2
等に記載されているように、SAWを励振するための簾
状トランスデューサ(Interdigital Transducer、以下
「IDT」という。)を有している。このIDTを加工
することにより、SAW装置にいろいろな特性や機能を
もたせることができる。IDTは、圧電基板(例えば、
LiTaO3 、LiNbO3 、水晶等)の上に形成され
る。IDTの材質は、純Al又はAlを主材料とする合
金が一般的であるが、場合によって純Au、純Ti又は
これらの金属を主材料とする合金が用いられる場合もあ
る。また、IDTの膜厚は、数百Å〜数千Åまでであ
る。
【0004】従来、SAW装置といえば、主にSAWフ
ィルタを指すことが多く、そしてこのSAWフィルタの
中では、多電極型SAWフィルタが主役である。近年、
多電極型SAWフィルタの他に、例えば、文献3等に記
載されているように、共振器型SAWフィルタの研究開
発も盛んになり、SAWフィルタと言えば必ずしも多電
極型SAWフィルタを意味しなくなってきた。
【0005】共振器型SAWフィルタは、古典的な電気
フィルタの設計方法に基づいて、SAW共振子を用いて
構成される帯域フィルタである。SAW共振子の本体は
IDTで、場合によって左右に反射器を有する。反射器
もIDTと同様に簾状電極指で構成され、この全電極指
は電気的に短絡される場合もあれば、開放される場合も
ある。反射器は、主にIDTの左右に漏洩するSAWを
音響的に反射するための装置であるので、全電極指の電
気的短絡又は開放とほとんど無関係である。このような
SAW共振子のインピーダンス特性は、LC共振器のイ
ンピーダンス特性に極めて類似しているため、電気フィ
ルタの設計方法が適用できるわけである。
【0006】図2は、一般的なSAW共振子を示す平面
図である。又、図3(a)〜(c)は図2の反射器の構
成図であり、同図(a)は反射器の略図、同図(b)は
全電極指が電気的に短絡された短絡型反射器の図、及び
同図(c)は全電極指が開放された開放型反射器の図で
ある。
【0007】図2に示すSAW共振子は、圧電基板11
を有し、この圧電基板11上にIDT12で形成されて
いる。IDT12の両側には、所定距離dだけ隔てて反
射器13−1,13−2が形成されている。IDT12
には、入力端子14及び出力端子15が接続されてい
る。
【0008】各反射器13−1,13−2は、図3
(b)の短絡型、あるいは図3(c)の開放型のいずれ
かで構成されている。なお、反射器13−1,13−2
を必要としない場合は、これを除けばよい。
【0009】各反射器13−1,13−2の電極指の本
数は、50本〜100本程度が適当である。反射器13
−1,13−2の配置は、所望のインピーダンスを得る
ためにいろいろあるが、IDT12の一番外側の電極指
から励振するSAWの波長の1/4の距離d、即ちID
T12のピッチdの前後にするのが一般的である。製造
過程において、IDT12と反射器13−1,13−2
は同時に形成されるものなので、これらの膜厚及び材質
は同じである。このように構成されるSAW共振子は、
LC共振器とよく似たリアクタンス特性を示すため、そ
の等価回路を近似的に表されることが多い。
【0010】図4は、図2のSAW共振子の等価回路を
示す図である。又、図5は、図4のリアクタンス特性図
である。図4の等価回路において、インダクタL、キャ
パシタc及び抵抗rが、入力端子と出力端子の間に直
列に接続され、さらにこれと並列にキャパシタCが接
続されている。
【0011】図5に示すように、図4の等価回路のリア
クタンス特性は、共振周波数Fr及び反共振周波数Fa
の時にリアクタンスが0Ωとなる。このようなリアクタ
ンス特性のSAW共振子で電気フィルタを設計する方法
は、古くから知られている。SAW共振子でフィルタを
構成するにあたって、例えば、文献3等に記載されてい
るように、梯子型回路が基本回路である。
【0012】図6(a)、(b)は、一般的な1段梯子
型回路の二通りの構成例を示す図である。図6(a)の
1段梯子型回路は、端子21−1と端子22−1との間
に、直列アーム(但し、アームは英語のarmからきた
外来語)共振子30Sが接続されている。さらに、端子
22−1と端子21−2,22−2との間に、並列アー
ム共振子30Pが接続されている。
【0013】図6(b)の1段梯子型回路は、図6
(a)の回路と対称構造になっている。図6(a)の左
の端子21−1,21−2からみたインピーダンスは、
図6(b)の右の端子21−1,21−2からみたイン
ピーダンスに等しく、図6(a)の右の端子22−1,
22−2からみたインピーダンスは、図6(b)の左の
端子22−1,22−2からみたインピーダンスに等し
い。SAW共振子で共振器型SAWフィルタを構成する
ときは、梯子型回路間のインピーダンスを考えながら、
図6の(a)又は(b)の回路を選択する。
【0014】並列アーム共振子30Pの反共振周波数
と、直列アーム共振子30Sの共振周波数が非常に接近
又は一致すれば、系全体の入力端子と出力端子における
整合状態が極めて良好で、良好な帯域フィルタの特性が
得られる。
【0015】図7は、図6の伝送特性図である。この図
7の符号R30は、図6の直列アーム共振子30S及び
並列アーム共振子30Pのリアクタンス特性を示してい
る。XpとXsは、それぞれ並列アーム共振子30Pと
直列アーム共振子30Sのリアクタンス特性である。共
振周波数と反共振周波数は、リアクタンスが0Ωとなる
周波数である。結果的に、図6に示される1段梯子型回
路の伝送特性は、図7の符号C30の特性(挿入損失特
性と反射損失特性)のようになる。この特性は、帯域フ
ィルタの挿入損失特性であり、梯子型回路の段数を増や
すことによって挿入損失特性における通過帯域の左右の
減衰量が増加する。この段数は、帯域フィルタの仕様に
よって決まる。しかし、帯域フィルタを構成する梯子型
回路の段数が増加すると、共振子30S,30Pの数も
これに比例して増加する。
【0016】図8は、4段梯子型回路で構成される共振
器型SAWフィルタの一構成例を示す図である。この4
段共振器型SAWフィルタは、端子23−1,23−2
と端子24−1,24−2との間に、図6に示される1
段梯子型回路が縦続的に4段に接続されて構成されてい
る。端子23−2,24−2は、接地されている。各段
の梯子型回路は、各段の間の相互反射を考慮して、縦続
的に接続するときにインピーダンスの等しい端子同士で
接続させる。結果的に、直列アームにおいて1組の2個
直列接続SAW共振子系、並列アームにおいて2組の2
個並列接続SAW共振子系ができる。各段に2個の共振
子30S,30Pがあるので、合計8個の共振子30S
−1〜30S−4,30P−1〜30P−4が必要にな
ってくるが、一般的に、直列に接続する2個の共振子3
0S又は並列に接続する2個の共振子30Pは、1個の
共振子に合成することが可能である。この合成共振子
は、前記2個の共振子系とほぼ同じインピーダンス特性
をもっていることが特徴である。
【0017】図9は、図8の共振子を合成した後の4段
共振器型SAWフィルタの等価回路図である。例えば、
図8の1段目の直列アーム共振子30S−1と2段目の
直列アーム共振子30S−2、及び3段目の直列アーム
共振子30S−3と4段目の直列アーム共振子30S−
4は、それぞれ直列に接続し、2段目の並列アーム共振
子30P−2と3段目の並列アーム共振子30P−3は
並列に接続する。ここで、それぞれの共振子系を合成す
ると、図9に示されるような等価回路になる。
【0018】図8に示される共振器型SAWフィルタに
おいて、合計8個の共振子30S−1〜30S−4,3
0P−1〜30P−4が必要なのに、共振子合成を行う
ことによって図9に示されるように、5個の共振子40
S−1〜40S−3,40P−1,40P−2で同じ伝
送特性及びインピーダンス特性の共振器型SAWフィル
タを得ることができる。ここで、直列アーム共振子40
S−1及び40S−3は、それぞれ図8の直列アーム共
振子30S−1及び30S−4と同じで、並列アーム共
振子40P−1は、図8の並列アーム共振子30P−1
及び30P−2の合成共振子であり、並列アーム共振子
40P−2は、図8の並列アーム共振子30P−3及び
30P−4の合成共振子である。又、直列アーム共振子
40S−2は、図8の直列アーム共振子30S−2及び
30S−3の合成共振子である。
【0019】図10は、図9の4段共振器型SAWフィ
ルタの構成例を示す平面図である。この4段共振器型S
AWフィルタは、圧電基板41上に、図9の5個の共振
子40S−1〜40S−3,40P−1,40P−2が
形成されている。入力端子23−1には、直列アーム共
振子40S−1が接続されている。直列アーム共振子4
0S−1には、伝送路パターン42−1を介して直列ア
ーム共振子40S−2が接続されると共に、伝送路パタ
ーン43−1を介して並列アーム共振子40P−12が
接続されている。直列アーム共振子40S−2には、伝
送路パターン42−2を介して直列アーム共振子40S
−3が接続されると共に、伝送路パターン43−2を介
して並列アーム共振子40P−2が接続されている。直
列アーム共振子40S−3は、出力端子24−1に接続
されている。
【0020】従来、静電気除去対策をはじめとする特性
向上対策のために、各共振子40S−1〜40S−3,
40P−1,40P−2の反射器は、ワイヤボンディン
グ等で接地させることが一般的である。又、実装の簡素
化を図るために、並列アーム共振子40P−1の反射器
とIDTの接地電極指群は、互いに薄膜パターンからな
るアースパターン40P−1Aで接続し、このアースパ
ターン40P−1Aが同じワイヤで接地される。同様
に、並列アーム共振子40P−2の反射器とIDTの接
地電極指群は、互いに薄膜パターンからなるアースパタ
ーン40P−2Aで接続し、このアースパターン40P
−2Aが同じワイヤで接地されている。
【0021】このような共振器型SAWフィルタの通過
帯域外の減衰量は、梯子型回路の段数が4段であれば、
およそ28dB〜30dB程度である。これ以上の減衰
量を必要とする場合は、フィルタの梯子型回路の段数を
増やす必要があるが、段数を増やすと、通過帯域の挿入
損失もこれに比例して増加する。このため、従来、共振
器型SAWフィルタを使用する場合、通過帯域の低挿入
損失を必要とするときは、フィルタの梯子型回路の段数
を減らし、帯域外減衰量を犠牲にするが、高帯域外減衰
量を必要とするときは、フィルタの梯子型回路の段数を
増やし、通過帯域の挿入損失を犠牲にする。
【0022】図11は、図10の4段共振器型SAWフ
ィルタの挿入損失特性を示す図である。理論的には、共
振器型SAWフィルタを構成している並列アーム共振子
40P−1,40P−2が中心周波数Fより低域の特
性に強く影響している。経験的に、並列アーム共振子4
0P−1,40P−2の反射器とIDTを接続している
アースパターン40P−1A,40P−2Aが、共通の
ワイヤを用いて接地されているため、低域側減衰量La
tのレベルが、高域側減衰量Hatのレベルより低いこ
とが知られている。なお、図11に示す低域側減衰量L
atのレベルと高域側減衰量Hatのレベルは、おおよ
その目安である。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
共振器型SAWフィルタでは、次のような課題があっ
た。共振器型SAWフィルタの高性能化にはいろいろな
課題があるが、主に低損失化(通過帯域挿入損失の低
減)、帯域外減衰量の増加、高耐電力化等が重要視され
ている。特に、帯域外減衰量を増加させる課題は、低損
失化と同じく共振器型SAWフィルタの開発において非
常に重要な課題である。
【0024】従来の技術では、共振器型SAWフィルタ
における帯域外減衰量を増加させるためには、該フィル
タを構成する梯子型回路の段数を増やすことが一般的で
ある。しかし、このような方法では、帯域外減衰量は増
加するが、通過帯域の挿入損失の増加も避けられず、こ
の帯域外減衰量と通過帯域の挿入損失とがトレードオフ
の関係にあり、フィルタ高性能化の目的に反する結果に
なってしまう。
【0025】また、従来の例えば文献3の技術では、S
AW共振子のIDTの接地側電極パッドとパッケージの
接地端子とを接続する方法を工夫し、高域側減衰量Ha
tを改善する提案が行われている。しかし、このような
技術を用いても、共振器型SAWフィルタにおける通過
帯域の挿入損失を変えることなく、帯域外の低域側減衰
量Latだけを増加させることは困難であった。
【0026】本発明は、帯域外減衰量と通過帯域の挿入
損失とのトレードオフの関係によって生じる従来の矛盾
を解決し、通過帯域の挿入損失を劣化させることなく、
帯域外の低域側減衰量だけを増加させる共振器型SAW
フィルタを提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明は、複数本の電極指からなる簾状の電極指で
形成されたIDTと、前記IDTを挟んで左右に所定間
隔隔てて配置され、複数本の電極指で形成された反射器
と、をそれぞれ有する直列アーム共振子と並列アーム共
振子が、梯子型に接続された共振器型SAWフィルタで
あって、前記並列アーム共振子における前記IDTのア
−スパタ−ンと前記反射器のア−スパタ−ンとを完全に
電気的に分離し、前記各アースパターンをそれぞれ独立
したワイヤ、リボンボンド、バンプ等の導体によって接
地する構成にしている。
【0028】このような構成を採用したことにより、入
力された高周波信号の所定の帯域外の低域側及び高域側
の減衰量が大きくなってこの低域側及び高域側の周波数
が遮断され、入力された高周波信号の所定の帯域のみが
通過し、出力される。本発明では特に、並列アーム共振
子におけるIDTのアースパターンと反射器のアースパ
ターンとを、完全に電気的に分離し、この各アースパタ
ーンをそれぞれ独立した導体によって接地しているの
で、共振器型SAWフィルタにおける通過帯域の挿入損
失が変わることなく、帯域外の低域側減衰量だけが増加
する。
【0029】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)図1は、本発
明の第1の実施形態を示すワイヤボンディング方式にお
ける共振器型SAWフィルタの概略の平面図である。
又、図12は、図1の並列アーム共振子附近を示す概略
の拡大断面図である。この第1の実施形態のワイヤボン
ディング方式における共振器型SAWフィルタは、Li
TaO3 、LiNbO3 、水晶等で形成された圧電基板
51を有し、この圧電基板51の表面に、従来の図10
に対応する4段共振器型SAWフィルタの回路が形成さ
れている。
【0030】この回路では、圧電基板51の表面の上側
及び下側附近に入力端子52及び出力端子53が形成さ
れている。入力端子52には、直列アーム共振子60が
接続され、この直列アーム共振子60に、薄膜の伝送路
パターン54を介して直列アーム共振子70が接続され
ている。直列アーム共振子70には、薄膜の伝送路パタ
ーン55を介して直列アーム共振子80が接続され、こ
の直列アーム共振子80が、出力端子53に接続されて
いる。伝送路パターン54には、薄膜の伝送路パターン
56を介して並列アーム共振子90が接続されている。
伝送路パターン55にも、薄膜の伝送路パターン57を
介して並列アーム共振子100が接続されている。
【0031】各直列アーム共振子60,70,80は、
例えば、従来の図2及び図3(b)とほぼ同様に、ID
T61,71,81と、この左右に所定距離d(=SA
Wの波長/4)だけ隔てて配置された第1の反射器6
2,72,82及び第2の反射器63,73,83とで
構成されている。各並列アーム共振子90,100は、
各直列アーム共振子60,70,80とほぼ同様に、I
DT91,101と、この左右に所定距離dだけ隔てて
配置された第1の反射器92,102及び第2の反射器
93,103とで構成されている。
【0032】本実施形態の各並列アーム共振子90,1
00は、従来の図10の各並列アーム共振子40P−
1,40P−2のようにIDTと左右の反射器の接地電
極指群がアースパターン40P−1A,40P−2Aで
接続されておらず、電気的に独立している。即ち、本実
施形態の各並列アーム共振子90,100では、各ID
T91,101を構成する複数本の電極指の接地側が、
薄膜パターンからなる第1のアースパターン(例えば、
ボンディングパッド)91A,101Aに共通接続さ
れ、各左側の反射器92,102を構成する複数本の電
極指の接地側が、薄膜パターンからなる第2のアースパ
ターン(例えば、ボンディングパッド)92A,102
Aに共通接続され、さらに各右側の反射器93,103
を構成する複数本の電極指の接地側が、薄膜パターンか
らなる第3のアースパターン(例えば、ボンディングパ
ッド)93A,103Aに共通接続されている。各ボン
ディングパッド91A,101Aと92A,102Aと
93A,103Aは、従来の図10と異なり、完全に電
気的に分離されている。
【0033】共振器型SAWフィルタ回路が搭載された
圧電基板51の裏面側は、このSAWフィルタを実装す
るためのパッケージ110上に載置され、接着剤等で固
定されている。パッケージ110には、高周波信号を入
力するための入力電極111と、出力信号を出力するた
めの出力電極112と、接地電極113,114とが形
成されている。入力電極111は、圧電基板51側の入
力端子52にワイヤ52Wで接続されている。出力電極
112は、圧電基板51側の出力端子53にワイヤ53
Wで接続されている。圧電基板51側の各直列アーム共
振子60,70,80の第1の反射器62,72,82
は、ワイヤ62W,72W,82Wによってパッケージ
110の接地電極113に接続され、第2の反射器6
3,73,83は、ワイヤ63W,73W,83Wによ
って接地電極114に接続されている。
【0034】さらに、圧電基板51側の並列アーム共振
子90のIDT91におけるボンディングパッド91
A、及び反射器92,93のボンディングパッド92
A,93Aは、それぞれ独立したワイヤ91W,92
W,93Wによってパッケージ110の接地電極113
に接続されている。同様に、並列アーム共振子100に
おけるIDT101のボンディングパッド101A、及
び反射器102,103のボンディングパッド102
A,103Aは、それぞれ独立したワイヤ101W,1
02W,103Wによって接地電極113に接続されて
いる。
【0035】このように電気的に独立しているボンディ
ングパッド91A,101Aと92A,102Aと93
A,103Aをそれぞれ独立したワイヤ91W,101
Wと92W,102Wと93W,103Wでパッケージ
110の接地電極113に接続したことが、従来の図1
0と異なる本実施形態の特徴である。なお、各ワイヤ5
2W,53W,62W,63W,72W,73W,82
W,83W,91W〜93W,101W〜103Wは、
Al、Au等の極細の金属線で構成されている。
【0036】次に、図1及び図12の動作を説明する。
本実施形態の共振器型SAWフィルタの動作原理は、従
来の図10のものと同じである。即ち、高周波信号がパ
ッケージ110の入力電極111に入力されると、この
高周波信号がワイヤ52Wを通して圧電基板51上の入
力端子52へ送られる。すると、SAWフィルタを構成
する直列アーム共振子60,70,80及び並列アーム
共振子90,100の全てのIDT61,71,81,
91,101の電極指間に電圧差が生じ、SAWが励振
される。この際、各IDT61,71,81,91,1
01の左右に漏洩したSAWは、左右に設けられた反射
器62,63,72,73,82,83,92,93,
102,103によって音響的に反射される。これによ
り、各共振子60,70,80,90,100が水晶共
振子又は従来のLC共振子のようなインピーダンス特性
を表し、各々の共振子60,70,80,90,100
が梯子型回路を構成するので、共振子系全体が帯域フィ
ルタの特性を表すことになる。そして、通過帯域の周波
数をもつ信号だけが、少ない損失で圧電基板51上の出
力端子53から出力され、ワイヤ53Wを通して出力電
極112へ送られる。
【0037】以上のように、この第1の実施形態では、
次のような効果がある。図13は、図1の共振器型SA
Wフィルタの挿入損失特性図である。
【0038】この第1の実施形態では、共振器型SAW
フィルタの挿入損失特性の低域側に強く影響を及ぼして
いる並列アーム共振子90,100におけるIDT9
1,101のボンディングパッド91A,101Aと、
反射器92,102のボンディングパッド92A,10
2Aと、反射器93,103のボンディングパッド93
A,103Aとを完全に分離し、これらの各ボンディン
グパッド91A,101Aと92A,102Aと93
A,103Aをそれぞれ独立したワイヤ91W,101
Wと92W,102Wと93W,103Wによって、パ
ッケージ110の接地電極113に接続している。この
ため、並列アーム共振子90,100のアイソレーショ
ンが著しく改善され、この結果、共振器型SAWフィル
タの通過帯域外の低域側減衰量が増加し、改善される。
【0039】この理由としては、例えば、各ボンディン
グパッド91A〜93A,101A〜103Aの寄生容
量等の影響により、通過帯域外の低域側のアイソレーシ
ョンが改善されるものと考えられるが、現段階では理論
的解明が困難である。
【0040】図13の挿入損失特性において、LaとH
aがそれぞれ本実施形態の共振器型SAWフィルタの低
域側と高域側の減衰量のレベルの目安を示している。従
来の図11の損失特性と比較すると、本実施形態の低域
側減衰量Laが従来の低域側減衰量Latより増加し、
本実施形態の損失が従来よりも例えば4〜5dB程度低
下している。従って、本実施形態の共振器型SAWフィ
ルタでは、梯子型回路の段数を増加させることなく、通
過帯域外の低域側減衰量Laを改善できる。
【0041】(第2の実施形態)図14は、本発明の第
2の実施形態を示すワイヤレスボンディング方式におけ
る共振器型SAWフィルタの一部の概略の拡大断面図で
あり、第1の実施形態の図12に対応する図である。こ
の図14において、第1の実施形態の図12中の要素と
共通の要素には共通の符号が付されている。
【0042】この第2の実施形態の共振器型SAWフィ
ルタでは、図1のワイヤ52W,53W,…に代えて、
半田等で形成されたバンプ91B,92B,93B,…
を用いてパッケージ110に接続するようにしている。
即ち、並列アーム共振子90,100におけるIDT9
1,101のボンディングパッド91A,101A及び
反射器92,93,102,103のボンディングパッ
ド92A,93A,102A,103A等の上に、半田
等のバンプ91A,92A,93A,…が形成され、こ
のバンプ91A,92A,93A,…をパッケージ11
0の表面の接地電極113に溶着している。
【0043】このようなワイヤレスボンディング方式の
共振器型SAWフィルタでは、第1の実施形態とほぼ同
様の作用、効果が得られる上に、ワイヤ52W,53
W,…を用いたものに比べて接続作業を簡略化できると
いう効果がある。
【0044】(利用形態)上記実施形態のように通過帯
域外の低域側減衰量Laが改善された共振器型SAWフ
ィルタは、従来のものと比べて利用しやすく、応用範囲
が広くなる。一般的に、SAWフィルタは、例えば、自
動車電話、携帯電話等において段間フィルタとしてよく
使われるが、通過帯域外の減衰量が不十分なため、共用
器用フィルタとして利用しにくい。しかし、上記実施形
態では、共振器型SAWフィルタの通過帯域外の低域側
減衰量Laを改善できたことで、通過帯域外の低域側の
減衰量だけを多く必要とするフィルタとして十分利用で
きる。
【0045】図15は、自動車電話、携帯電話等の共用
器の概略を示す構成図である。この共用器では、アンテ
ナ121と接地電極122とに、伝送路123,124
を介して送信フィルタ125及び受信フィルタ126が
接続されている。送信フィルタ125には送信器127
が接続され、受信フィルタ126に受信器128が接続
される。送信器127から送信信号が出力されると、こ
の送信信号が送信フィルタ125及び伝送路123を通
してアンテナ121から送信される。外部から送られて
きた信号はアンテナ121で受信され、伝送路124及
び受信フィルタ126を通して受信器128に受信され
る。
【0046】このような自動車電話、携帯電話等の共用
器では、例えば、受信周波数が送信周波数より高域にあ
る場合、受信フィルタ126の通過帯域外の低域側減衰
量が多ければ多いほど、送信回路系と受信回路系のアイ
ソレーションが良くなる。上記実施形態の共振器型SA
Wフィルタは、通過帯域の挿入損失が劣化することな
く、通過帯域外の低域側減衰量が増加するため、場合に
よって自動車電話、携帯電話等の共用器の受信フィルタ
126として十分利用できる。
【0047】(変形例)なお、本発明は上記実施形態に
限定されず、種々の変形が可能である。この変形例とし
ては、例えば、次の(1)〜(4)のようなものがあ
る。 (1) 図1のワイヤ52W,53W,…に代えて、A
l,Au等のリボンボンドを用いても、同様の効果が得
られる。
【0048】(2) 図1では4段の共振器型SAWフ
ィルタについて説明したが、この段数は用途に応じて任
意の段数を採用でき、上記実施形態と同様の作用、効果
が得られる。
【0049】(3) 共振器型SAWフィルタを構成す
る直列アーム共振子60,70,80及び並列アーム共
振子90,100は、図1に示す配置形態や形状あるい
は構造に限定されず、種々の変形が可能である。
【0050】(4) 共振器型SAWフィルタを実装す
るパッケージ110は、種々の形状や構造のものが採用
できる。
【0051】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、直列アーム共振子及び並列アーム共振子を用いて
梯子型回路を構成し、この並列アーム共振子におけるI
DTのアースパターンと反射器のアースパターンとを完
全に電気的に分離し、この各アースパターンを別々に独
立した導体を用いて接地する構成にしたので、並列アー
ム共振子のアイソレーションが著しく改善され、この結
果、共振器型SAWフィルタの通過帯域の挿入損失を劣
化させることなく、通過帯域外の低域側減衰量を増加さ
せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す共振器型SAW
フィルタの平面図である。
【図2】一般的なSAW共振子の平面図である。
【図3】図2の反射器の構成図である。
【図4】図2の等価回路図である。
【図5】図4のリアクタンス特性図である。
【図6】一般的な1段梯子型回路の構成図である。
【図7】図6の伝送特性図である。
【図8】4段梯子型回路で構成される共振器型SAWフ
ィルタの構成図である。
【図9】図8の共振子を合成した後の等価回路図であ
る。
【図10】図9の4段共振器型SAWフィルタの構成例
を示す平面図である。
【図11】図10の挿入損失特性図である。
【図12】図1の並列アーム共振子附近の概略を示す拡
大断面図である。
【図13】図1の挿入損失特性図である。
【図14】本発明の第2の実施形態を示す共振器型SA
Wフィルタの一部の概略の拡大断面図である。
【図15】共用器の概略の構成図である。
【符号の説明】
52 入力端子 53 出力端子 60,70,80 直列アーム共振子 61,71,81,91,101 IDT 62,63,72,73,82,83,92,93,1
02,103 反射器 90,100 並列アーム共振子 91A,92A,93A,101A,102A,103
A ボンディングパッド 91B,92B,93B バンプ 91W,92W,93W,101W,102W,103
W ワイヤ 110 パッケージ 111 入力電極 112 出力電極 113,114 接地電極

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数本の電極指からなる簾状の電極指で
    形成された簾状のトランスデュ−サと、前記トランスデ
    ュ−サを挟んで左右に所定間隔隔てて配置され、複数本
    の電極指で形成された反射器と、をそれぞれ有する直列
    アーム共振子と並列アーム共振子が、梯子型に接続され
    た共振器型弾性表面波フィルタであって、 前記並列アーム共振子における前記トランスデュ−サの
    ア−スパタ−ンと前記反射器のア−スパタ−ンとを完全
    に電気的に分離し、前記各アースパターンをそれぞれ独
    立した導体によって接地する構成にしたことを特徴とす
    る共振器型弾性表面波フィルタ。
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